(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】匍匐害虫用忌避剤
(51)【国際特許分類】
A01N 31/02 20060101AFI20240528BHJP
A01P 17/00 20060101ALI20240528BHJP
A01N 25/10 20060101ALI20240528BHJP
A01N 25/18 20060101ALI20240528BHJP
A01M 29/12 20110101ALI20240528BHJP
【FI】
A01N31/02
A01P17/00
A01N25/10
A01N25/18 102B
A01M29/12
(21)【出願番号】P 2020059038
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2023-03-15
(31)【優先権主張番号】P 2019064850
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390000527
【氏名又は名称】住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】杉目 康広
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第03/065804(WO,A1)
【文献】特開平10-316507(JP,A)
【文献】特開2018-166521(JP,A)
【文献】特開2014-177475(JP,A)
【文献】特開2005-320550(JP,A)
【文献】国際公開第2014/065150(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N,A01P
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファルネシルアセトンと
樹脂としてポリオレフィン系樹脂とカルボン酸エステルの共重合体およびスチレン系エラストマーからなる群より選択される1種以上とを含有する樹脂成形体からなる匍匐害虫用忌避剤であって、
ファルネシルアセトンは前記忌避剤全体量に対し1~30重量%であり、
前記の樹脂としてポリオレフィン系樹脂とカルボン酸エステルの共重合体を含む場合は、ファルネシルアセトンとカルボン酸エステル共重合体のカルボン酸エステルの重量比が1:0.51~2.5であり、
前記の樹脂としてスチレン系エラストマーを含む場合は、ファルネシルアセトンとスチレン系エラストマーにおけるスチレンの重量比が1:0.3~5であり、
該樹脂成形体を25℃で24時間静置した際に、該樹脂成形体から1日あたり4~110μg/cm
2のファルネシルアセトンがブリードしてなる匍匐害虫用忌避剤。
【請求項2】
前記の樹脂としてポリオレフィン系樹脂とカルボン酸エステルの共重合体を含む場合は、ファルネシルアセトンとカルボン酸エステルの重量比が1:0.55~0.7であり、
前記の樹脂としてスチレン系エラストマーを含む場合は、ファルネシルアセトンとスチレンの重量比が1:0.8~2である請求項1に記載の匍匐害虫用忌避剤。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の匍匐害虫用忌避剤を基材に積層した積層体。
【請求項4】
請求項1
または2に記載の匍匐害虫用忌避剤の二次加工品。
【請求項5】
請求項1
または2に記載の匍匐害虫用忌避剤に匍匐害虫を接触させて忌避することを特徴とする匍匐害虫忌避方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、匍匐害虫用忌避剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アリやゴキブリなどの匍匐害虫は、食品を餌として好む。日常生活において、アリやゴキブリなどの匍匐害虫が食品を嗅ぎ付け、食事の場に現れる、または食品に関する装置に侵入するなど問題となる場合が多い。
前記匍匐害虫を忌避するに際し、消費者の安全志向、天然物志向が強まっており、これら要求を満たす忌避成分として、テルペン系化合物のファルネシルアセトンが注目されている。
【0003】
例えば特許文献1の実施例12には、ファルネシルアセトンを熱可塑性樹脂に含有したシートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記シートでは匍匐害虫に対して十分な忌避効果を得られないことがあり、より優れた匍匐害虫用忌避剤が求められていた。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑み、匍匐害虫に対して優れた忌避効果を発揮する忌避剤を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を満足するために鋭意検討した結果、ファルネシルアセトンを含有した樹脂成形体表面から1日あたり4~110μg/cm2のファルネシルアセトンをブリードさせることで、匍匐害虫に対して優れた忌避効果を発揮することを見出した。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、匍匐害虫に対して優れた忌避効力を発揮する。さらには本発明の匍匐害虫用忌避剤に接触しても薬剤の汚損が抑制されているので、例えば、衣服、陶器、金属などを薬剤で汚損する心配が少ない。このため本発明の匍匐害虫用忌避剤は、使用場面を考慮することなく使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例10および比較例4に記載の匍匐害虫用忌避剤をカットした試験片をアルミ箔上に24時間静置した状態図。
【
図3】実施例10および比較例4に記載の匍匐害虫用忌避剤をカットした試験片をアルミ箔上に24時間静置した状態図その2。
【
図4】試験片を
図1の位置から移動させた状態図その2。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の匍匐害虫用忌避剤は、ファルネシルアセトンを含有する樹脂成形体表面から1日あたり4~110μg/cm2のファルネシルアセトンがブリードしてなるものである。
【0011】
前記樹脂成形体表面からの1日あたりのファルネシルアセトンのブリード量は、匍匐害虫用忌避剤の全面を1mLのヘプタンをしみこませたパルプ製ワイプで拭き取った後直射日光が当たらない25℃の室内に1日静置し、その後ヘプタンを染み込ませたパルプ製ワイプを用いて該匍匐害虫用忌避剤の一部の面または全面を拭き取り、拭き取り後のパルプ製ワイプからファルネシルアセトンを抽出し、ガスクロマトグラフにより定量分析する。そして、定量分析されたファルネシルアセトン量を拭き取った面の面積で除することで算出できる。
【0012】
本発明に使用される樹脂としては、熱可塑性樹脂が挙げられ、熱可塑性樹脂としては例えばポリオレフィン系樹脂とカルボン酸エステルの共重合体が挙げられ、またはスチレン系エラストマーが挙げられる。
【0013】
前記ポリオレフィン系樹脂とカルボン酸エステルの共重合体におけるポリオレフィン系樹脂としては、例えばポリエチレンおよびポリプロピレンが挙げられる。
【0014】
前記ポリオレフィン系樹脂とカルボン酸エステルの共重合体におけるカルボン酸エステルとしては、不飽和カルボン酸エステルまたはカルボン酸ビニルエステルが挙げられる。
【0015】
前記不飽和カルボン酸エステルとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸の低級アルキルエステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等のメタクリル酸の低級アルキルエステルが挙げられ、前記カルボン酸ビニルエステルとしては、例えば酢酸ビニル等の低級脂肪酸のビニルエステルが挙げられる。
【0016】
前記ポリオレフィン系樹脂とカルボン酸エステルの共重合体としては、例えばエチレン-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸ブチル共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-メタクリル酸エチル共重合体、プロピレン-アクリル酸メチル共重合体、プロピレン-アクリル酸エチル共重合体、プロピレン- アクリル酸ブチル共重合体、プロピレン-メタクリル酸メチル共重合体およびプロピレン-メタクリル酸エチル共重合体が挙げられる。
【0017】
前記スチレン系エラストマーとしては、スチレンとオレフィンとのブロック共重合体、スチレンと共役ジエンとのブロック共重合体およびこれら共重合体の水素添加物が挙げられる。
【0018】
前記スチレンとオレフィンとのブロック共重合体としては、例えばスチレン-エチレン-プロピレンブロック共重合体、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体およびスチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体が挙げられる。
【0019】
前記スチレンと共役ジエンとのブロック共重合体としては、例えばスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体およびスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体が挙げられる。
【0020】
本発明の匍匐害虫用忌避剤には、前記ファルネシルアセトンと前記ポリオレフィン系樹脂とカルボン酸エステルの共重合体、または前記ファルネシルアセトンと前記スチレン系エラストマーの他にポリエチレン、ポリプロピレン等を含有させてもよい。
【0021】
前記ポリエチレンとしては、例えば直鎖低密度ポリエチレン(以下、LLDPEと記すこともある)、低密度ポリエチレン(以下、LDPEと記すこともある)および高密度ポリエチレン(以下、HDPEと記すこともある)が挙げられる。
【0022】
前記LLDPEとしては、例えば住友化学株式会社製のスミカセンL、スミカセンE、スミカセンα/Hiα、エクセレンFX、エクセレンVL、日本ポリエチレン株式会社製のノバテックLL、株式会社プライムポリマー製のネオゼックス、ウルトゼックス、エボリュー、旭化成株式会社製のサンテック-LD、東ソー株式会社製のニポロン-L、ニポロン-Z、宇部丸善ポリエチレン株式会社製のユメリット等が挙げられる。
【0023】
前記LDPEとしては、例えば住友化学株式会社製のスミカセン、日本ポリエチレン株式会社製のノバテックLD、東ソー株式会社製のペトロセン、宇部丸善ポリエチレン株式会社製の∪BEポリエチレン等が挙げられる。
【0024】
前記HDPEとしては、例えば日本ポリエチレン株式会社製のノバテックHD、株式会社プライムポリマー製のハイゼックス、エボリューH、東ソー株式会社製のニポロンハード、旭化成株式会社製のサンテック-HD、クレオックス、三井化学株式会社製のハイゼックスミリオン、ミペロン、京葉ポリエチレン株式会社製のKEIYOポリエチ等が挙げられる。
【0025】
前記ポリプロピレンとしては、例えばプロピレン単独重合体(以下、ホモPPと記すこともある)、エチレンとのランダム共重合体(以下、ランダムPP)およびホモPPとエチレンプロピレンゴムとのブロック共重合体(ブロックPP)が挙げられる。
【0026】
前記ホモPP、ランダムPPおよびブロックPPとしては、例えば住友化学株式会社の住友ノーブレン、株式会社プライムポリマー製のプライムポリプロ、サンアロマー株式会社製のサンアロマー、日本ポリプロ株式会社製のノバテックPP等が挙げられる。
【0027】
本発明に使用されるファルネシルアセトンの含有量としては、忌避剤全体量に対して通常1~30重量%の範囲である。
【0028】
本発明の匍匐害虫用忌避剤は、前記ファルネシルアセトンと前記ポリオレフィン系樹脂とカルボン酸エステルの共重合体におけるカルボン酸エステルの重量比が通常1:0.51~2.5、好ましくは1:0.55~0.7である。本範囲内にあることにより樹脂成形体表面からのファルネシルアセトンのブリード量を本発明の範囲内に制御することができるので、匍匐害虫に対して優れた忌避効果を発揮すると同時に匍匐害虫用忌避剤からの薬剤の汚損を抑制することができる。
【0029】
本発明の匍匐害虫用忌避剤は、前記ファルネシルアセトンと前記スチレン系エラストマーにおけるスチレンの重量比は通常1:0.3~5、好ましくは1:0.8~2がより好ましい割合となる。本範囲内にあることにより樹脂成形体表面からのファルネシルアセトンのブリード量を本発明の範囲内に制御することができるので、匍匐害虫に対して優れた忌避効果を発揮すると同時に匍匐害虫用忌避剤からの薬剤の汚損を抑制することができる。
【0030】
本発明の匍匐害虫用忌避剤には、樹脂成形体に種々の性能を付与するため、酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤、可塑剤、軟化剤、粘度調節剤、防汚剤、顔料、染料、脱臭剤、芳香剤、香料、展着剤、滑剤、アンチブロッキング剤、界面活性剤、帯電防止剤、透明化剤、発泡剤、有機充填剤、無機充填剤等を含有させてもよい。
前記酸化防止剤としては、例えば、ビタミンE類、ブチルヒドロキシトルエン(以下BHTと称する)、イルガノックス1010、イルガノックス1076などのフェノール型の酸化防止剤、またはタンニン酸、没食子酸などのポリフェノール型の酸化防止剤が挙げられる。前記酸化防止剤は、ファルネシルアセトンに対して0.001~10重量%の範囲で含有させるのが好ましい。
【0031】
本発明の匍匐害虫用忌避剤は、例えば、前記ポリオレフィン系樹脂とカルボン酸エステルの共重合体、または前記スチレン系エラストマーを50~200℃に調整したヘンシェルミキサー等の混練機を用いて予め混練した後、前記ファルネシルアセトンを加えて均一になるまで混練して得られた混練物を、射出成形、押出成形、プレス成形、真空成形等することで得られる。
【0032】
本発明の匍匐害虫用忌避剤は、例えば前記成形によりフィルム状、シート状、繊維状、網状および格子状に成形される。
【0033】
本発明の匍匐害虫用忌避剤は、例えば、基材に積層することができる。積層体の基材としては、例えば、市販のレジャーシート、建築工事用シート、輸送コンテナ用シート、輸送パレット、ランチョンマット、ゴミ袋、押し入れ用シート、電線被覆、工場用クリーンマット、粘着テープ等が挙げられる。
また本発明の匍匐害虫用忌避剤を二次加工して使用することもできる。二次加工品としては、例えば、繊維状の匍匐害虫用忌避剤を、寝具、カーペット、ラグ、マットなどへの二次加工が挙げられる。
網状または格子状の匍匐害虫用忌避剤を緩衝用ネットシート、ゴミ置き場用飛散防止ネットなどへの二次加工が挙げられる。
上記積層体および二次加工品は、匍匐害虫を忌避したい箇所に設置して使用することができる。
【0034】
本発明の匍匐害虫用害虫忌避剤は、アリ類、ゴキブリ、トコジラミ、チャタテムシ、シバンムシ、コクゾウムシ、ムカデ、ヤスデ、ダンゴムシ等の忌避に用いられる。中でも、アリ類に対して特に高い忌避効果を発揮する。
【0035】
前記アリ類としてはヒメサスライ亜科、ノコギリハリアリ亜科、クビレハリアリ亜科、カタアリ亜科、ヤマアリ亜科、ムカシアリ亜科、フタフシアリ亜科、ハリアリ亜科、カギバラアリ亜科、クシフタフシアリ亜科が挙げられる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例によって本発明をさらに説明する。
【0037】
(実施例1)
直鎖低密度ポリエチレン(商品名:ノバテックLL UJ790、日本ポリエチレン株式会社製)38g及びエチレン-メタクリル酸メチル共重合体(共重合体中のメタクリル酸メチルの割合:25重量% 、商品名:アクリフトWK307、住友化学株式会社製)9.5gを140℃に予め加温したミキサー混練機(PLASTI-CORDER、ブラベンダー社製)で5分間溶融混練し、その後ファルネシルアセトン(E,E=98%、TAIWAN TEKHO FINE-CHEM.CO.,LTD.製)2.5gを加えて3分間再混練して混練物を得た。
この混練物14gを150mm×150mm×0.5mmの型枠に入れて140℃に予め加温した卓上用テストプレス機(神籐金属工業所株式会社製)に3分間静置した後、同温にて50kg/cm2で3分間、次いで同温にて100kg/cm2で3分間加圧した後、冷却して型枠から外し本発明の匍匐害虫用忌避剤を得た。
【0038】
(実施例2)
実施例1において、直鎖低密度ポリエチレンを36.8g、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体を9.2g、ファルネシルアセトンを4gに変更し、本発明の匍匐害虫用忌避剤を得た。
【0039】
(参考例1)
エチレン-プロピレンランダム共重合体(商品名:ノバテックPP EG8B、日本ポリプロ株式会社製)とファルネシルアセトンを含有するコンパウンド(商品名:SROPE-FAC20-PP、クラレトレーディング株式会社製、ファルネシルアセトン含有量20重量%)12.5g、及び前述のエチレン-プロピレンランダム共重合体37.5g、及びBHT0.025gを160℃に予め加温したミキサー混練機(PLASTI-CORDER、ブラベンダー社製)で5分間溶融混練して混練物を得た。
この混練物14gを150mm×150mm×0.5mmの型枠に入れて160℃に予め加温した卓上用テストプレス機(神籐金属工業所株式会社製)で3分間静置した後、同温にて50kg/cm2で3分間、次いで同温にて100kg/cm2で3分間加圧した後、冷却して型枠から外し参考例1の匍匐害虫用忌避剤を得た。
【0040】
(参考例2)
参考例1におけるコンパウンドを17.5g、エチレン-プロピレンランダム共重合体を32.5g、BHTを0.035gに変更し、参考例2の匍匐害虫用忌避剤を得た。
【0041】
(参考例3)
参考例1におけるコンパウンドを25g、エチレン-プロピレンランダム共重合体を325g、BHTを0.05gに変更し、参考例3の匍匐害虫用忌避剤を得た。
【0042】
(参考例4)
参考例1におけるコンパウンドを2.5g、エチレン-プロピレンランダム共重合体を47.5g、BHTを0.005gに変更し、参考例4の匍匐害虫用忌避剤を得た。
【0043】
(実施例7)
エチレン-メタクリル酸メチル共重合体(共重合体中のメタクリル酸メチルの割合:25重量% 、商品名:アクリフトWK307、住友化学株式会社製)45gを140℃に予め加温したミキサー混練機(PLASTI-CORDER、ブラベンダー社製)で5分間溶融混練し、その後ファルネシルアセトン(E,E=98%、TAIWAN TEKHO FINE-CHEM.CO.,LTD.製)5gを加えて3分間再混練して混練物を得た。
この混練物14gを150mm×150mm×0.5mmの型枠に入れて140℃に予め加温した卓上用テストプレス機(神籐金属工業所株式会社製)で3分間静置した後、同温にて50kg/cm2で3分間、次いで同温にて100kg/cm2で3分間加圧した後、冷却して型枠から外し本発明の匍匐害虫用忌避剤を得た。
【0044】
(実施例8)
エチレン-プロピレンランダム共重合体(商品名:ノバテックPP EG8B、日本ポリプロ株式会社製)15g、及びスチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(共重合体中のスチレンの割合:30重量% 、商品名:セプトン2007、株式会社クラレ製)25gを165℃に予め加温したミキサー混練機(PLASTI-CORDER、ブラベンダー社製)で5分間溶融混練し、その後ファルネシルアセトン(E,E=98%、TAIWAN TEKHO FINE-CHEM.CO.,LTD.製)10gを加えて3分間再混練して混練物を得た。
この混練物14gを150mm×150mm×0.5mmの型枠に入れて160℃に予め加温した卓上用テストプレス機(神籐金属工業所株式会社製)で3分間静置した後、同温にて50kg/cm2で3分間、次いで同温にて100kg/cm2で3分間加圧した後、冷却して型枠から外し本発明の匍匐害虫用忌避剤を得た。
【0045】
(実施例9)
実施例8において、エチレン-プロピレンランダム共重合体を25g、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体を20g、ファルネシルアセトンを5gに変更し、本発明の匍匐害虫用忌避剤を得た。
【0046】
(実施例10)
実施例8において、エチレン-プロピレンランダム共重合体を30g、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体を10g、ファルネシルアセトンを10gに変更し、本発明の匍匐害虫用忌避剤を得た。
【0047】
(実施例11)
実施例8において、エチレン-プロピレンランダム共重合体を24.5g、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体を24g、ファルネシルアセトンを1.5gに変更し、本発明の匍匐害虫用忌避剤を得た。
【0048】
(実施例12)
実施例8において、エチレン-プロピレンランダム共重合体を47g、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体を1.5g、ファルネシルアセトンを1.5gに変更し、本発明の匍匐害虫用忌避剤を得た。
【0049】
(比較例1)
実施例3において、コンパウンドを0.25g、エチレン-プロピレンランダム共重合体を49.75g、BHTを0.0005gに変更し、比較用の匍匐害虫用忌避剤を得た。
【0050】
(比較例2)
実施例7において、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体を32g、ファルネシルアセトンを18gに変更し、比較用の匍匐害虫用忌避剤を得た。
【0051】
(比較例3)
アクリル酸ブチル-メタクリル酸メチル共重合体(共重合体中のメタクリル酸メチルの割合:50重量% 、商品名:パラペットGR-F、株式会社クラレ製)40gを170℃に予め加温したミキサー混練機(PLASTI-CORDER、ブラベンダー社製)で5分間溶融混練し、その後ファルネシルアセトン(E,E=98%、TAIWAN TEKHO FINE-CHEM.CO.,LTD.製)10gを加えて3分間再混練して混練物を得た。
この混練物14gを150mm×150mm×0.5mmの型枠に入れて170℃に予め加温した卓上用テストプレス機(神籐金属工業所株式会社製)で3分間静置した後、同温にて50kg/cm2で3分間、次いで同温にて100kg/cm2で3分間加圧した後、冷却して型枠から外し比較用の匍匐害虫用忌避剤を得た。
【0052】
(比較例4)
実施例8において、エチレン-プロピレンランダム共重合体を35g、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体を5g、ファルネシルアセトンを10gに変更し、比較用の匍匐害虫用忌避剤を得た。
【0053】
(比較例5)
実施例8において、エチレン-プロピレンランダム共重合体を25.5g、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体を24g、ファルネシルアセトンを0.5gに変更し、比較用の匍匐害虫用忌避剤を得た。
【0054】
(製剤例)
直鎖低密度ポリエチレン(商品名:スミカセンE FV405、住友化学株式会社製)50gを140℃に予め加温したミキサー混練機(PLASTI-CORDER、ブラベンダー社製)で5分間溶融混練して混練物を得た。
この混練物14gを150mm×150mm×0.5mmの型枠に入れて170℃に予め加温した卓上用テストプレス機(神籐金属工業所株式会社製)で3分間静置した後、同温にて50kg/cm2で3分間、次いで同温にて100kg/cm2で3分間加圧した後、冷却して型枠から外しファルネシルアセトンを含有しない樹脂成形体を得た。
【0055】
<試験1 アルミ箔への汚損の確認>
実施例1ないし12及び比較例1ないし5に記載の匍匐害虫用忌避剤をそれぞれ30mm×150mm×0.5mmにカットし試験片を準備した。次に195mm×125mmのパルプ製ワイプ(商品名:プロワイプ、大王製紙株式会社製)を約35mm×25mmとなるように5回折りたたんだ。そして、ヘプタン1mLを折りたたんだワイプに滴下し、該試験片の長手方向に沿って、30mm×150mmとなる一つの面拭き取った。前述と同様ワイプをもう一枚用意し、5回折りたたんでヘプタン1mLを滴下し、該試験片の30mm×150mmのもう一方の面を拭き取った。
匍匐害虫用忌避剤を金属製の輸送コンテナ上に設置した場面を想定し、前記拭き取り作業をした試験片をアルミ箔の上に置き、25℃条件下で24時間静置した。24時間後に試験片を持ち上げアルミ箔観察し、ファルネシルアセトンによる汚損の有無を目視で確認した。
【0056】
図1~4に代表的な例を示すが、実施例10に記載の匍匐害虫用忌避剤をカットした試験片はアルミ箔を汚損しなかった。比較例4に記載の匍匐害虫用忌避剤をカットした試験片はアルミ箔を汚損し、油性マーカーで記載した文字が滲んだ(
図4の丸印内)。このような汚損や文字の滲みは他の比較用の匍匐害虫用忌避剤で認められた。
【0057】
<試験2 忌避剤からのブリード量の測定>
匍匐害虫用忌避剤からのファルネシルアセトンのブリード量については、前記樹脂成形体がアルミ拍と接触していない面を前述同様のヘプタン1mLを滴下したパルプ製ワイプで拭き取り作業を行い、拭き取り後のパルプ製ワイプを容量60ccのガラスバイアルに入れ、ヘプタン18mLを加えて超音波(42kHlz)処理を20分間行ってワイプからファルネシルアセトンを抽出し、該抽出液をガスクロマトグラフで測定した。分析データは株式会社島津製作所製のソフトウエア(GCsolutiton)を用いて解析した。
【0058】
<試験3 イエヒメアリの忌避試験>
実施例1ないし12及び比較例1ないし5に記載の匍匐害虫用忌避剤を100mm×100mm×0.5mmにカットした試験片をそれぞれ1枚準備した。
ステンレスバット(24cm×20cm×高さ3cm)の側面にイエヒメアリの逃亡防止のためのフルオンを塗布したものを17枚準備し、夫々のステンレスバットの中央部付近に、各試験片をセロテープで貼りつけた。
当該バット内にイエヒメアリのワーカー30頭を放虫し、試験片の中央部付近に餌としてアカイエカ雌成虫の死骸6頭を設置し、ステンレスバット上に5%砂糖水を含ませた綿球を1個置いて試験開始とした。
試験は、室温約25±1℃の実験室内で実施し、試験開始から24時間後における餌の喫食状態からイエヒメアリに対する忌避効力を評価した。評価は、餌が喫食されている場合はイエヒメアリが「侵入」、餌が喫食されていない場合はイエヒメアリを「忌避」とした。
【0059】
前記試験2および試験3の結果を表1に示す。
【0060】
【0061】
<試験4 イエヒメアリの忌避試験2>
実施例8及び比較例4に記載の匍匐害虫用忌避剤を100mm×100mm×0.5mmにカットした試験片をそれぞれ2枚準備し、このうち試験片各1枚は試験片を作製した翌日に後述する試験を実施した。
残りの試験片は、実地試験を想定して住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社の資材倉庫前に2週間静置した後に、後述する試験を実施した。
ステンレスバット(24cm×20cm×高さ3cm)の側面にイエヒメアリの逃亡防止のためのフルオンを塗布したものを4枚準備し、夫々のステンレスバットの中央部付近に、各試験片をセロテープで貼りつけた。
当該バット内にイエヒメアリのワーカー50頭を放虫し、試験片の中央部付近に餌としてチャバネゴキブリの死骸1頭を設置し、ステンレスバット上に5%砂糖水を含ませた綿球を1個置いて試験開始とした。
試験は、室温約25±1℃の実験室内で実施し、試験開始から24時間後における餌の喫食状態からイエヒメアリに対する忌避効力を評価した。評価は、餌が喫食されている場合はイエヒメアリが「侵入」、餌が喫食されていない場合はイエヒメアリを「忌避」とした。下表に結果を示す。
【0062】
【0063】
< 試験5 アルゼンチンアリの忌避試験>
アルゼンチンアリの生息地に参考例1ないし3に記載の匍匐害虫用忌避剤及び製剤例に記載の樹脂成形体を設置した。各忌避剤の中央に昆虫ゼリー(商品名:ワイドカップ 樹
液の森育成50、株式会社フジコン製)1個を置いて試験開始とした。試験開始後から1、2、3、5、7、8時間の時点で各忌避剤を観察し、アルゼンチンアリに対する忌避効力を評価した。結果を表3に示す。
【0064】
【表3】
〇: アルゼンチンアリは侵入せず
△ : アルゼンチンアリは侵入したが、行列は成していない
× : アルゼンチンアリが侵入し、行列を形成