(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】部品実装装置及び部品実装方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/52 20060101AFI20240528BHJP
H05K 13/04 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
H01L21/52 F
H05K13/04 B
H05K13/04 M
(21)【出願番号】P 2020083947
(22)【出願日】2020-05-12
【審査請求日】2023-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】500171707
【氏名又は名称】株式会社ブイ・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(72)【発明者】
【氏名】下浦 厚志
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 良和
【審査官】豊島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-064118(JP,A)
【文献】特開2017-208522(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/52
H01L21/58
H05K 3/30
H05K13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品を基板に転写して実装する部品実装装置であって、
ロール状に巻き取り可能な細長状の光透過性のテープを送出することにより、該テープの一方の面に予め定められた配列ピッチで接着されている部品を、前記基板に転写する転写位置の直上に順次位置付けると共に、前記テープの送出した分をロール状に巻き取る搬送部と、
光源からの照明光を転写対象の部品及び前記基板に照射し、該部品及び該基板からの反射光を2系統に分岐させて、前記転写対象の部品及び前記基板を同時観察する光学観察部と、
前記テープの他方の面から前記転写対象の部品を押さえる光透過性の押圧部材を有し、前記押圧部材と前記基板とを相対的に移動させることにより、前記転写位置に前記部品を押圧し、該部品を前記基板に転写して実装する転写部と、
前記搬送部、前記光学観察部及び前記転写部を統括して制御する制御部と、
を備え
、
前記押圧部材の上面の形状は、前記反射光が球面波として該押圧部材の上面を通過するときに、該球面波の曲率半径と一致するように定められていることを特徴とする部品実装装置。
【請求項2】
部品を基板に転写して実装する部品実装装置であって、
ロール状に巻き取り可能な細長状の光透過性のテープを送出することにより、該テープの一方の面に予め定められた配列ピッチで接着されている部品を、前記基板に転写する転写位置の直上に順次位置付けると共に、前記テープの送出した分をロール状に巻き取る搬送部と、
光源からの照明光を転写対象の部品及び前記基板に照射し、該部品及び該基板からの反射光を2系統に分岐させて、前記転写対象の部品及び前記基板を同時観察する光学観察部と、
前記テープの他方の面から前記転写対象の部品を押さえる光透過性の押圧部材を有し、前記押圧部材と前記基板とを相対的に移動させることにより、前記転写位置に前記部品を押圧し、該部品を前記基板に転写して実装する転写部と、
前記搬送部、前記光学観察部及び前記転写部を統括して制御する制御部と、
を備え、
前記光学観察部は、特定の被写体にピントが合うようにする自動合焦処理による観察を選択的に採用し、前記2系統のうちの少なくとも一方から導かれる前記基板からの反射光に基づいて、該基板の基板面に対して前記自動合焦処理を行なうことを特徴とする部品実装装置。
【請求項3】
前記押圧部材の上面の形状は、前記反射光が球面波として該押圧部材の上面を通過するときに、該球面波の曲率半径と一致するように定められていることを特徴とする請求項
2に記載の部品実装装置。
【請求項4】
光反応型の接着剤が予め塗布された前記転写位置に向けて、光反応用に予め定められた波長の光を照射する光照射部をさらに備え、
前記転写部は、前記波長の光の照射で前記転写対象の部品を前記基板に接着して、該部品を前記テープから剥離する転写により、該部品を前記基板に実装することを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の部品実装装置。
【請求項5】
基板に部品を転写して実装する部品実装方法であって、
ロール状に巻き取り可能な細長状の光透過性のテープを送出することにより、該テープの一方の面に予め定められた配列ピッチで接着されている部品を、前記基板に転写する転写位置の直上に順次位置付けると共に、前記テープの送出した分をロール状に巻き取る搬送処理の工程と、
光源からの照明光を転写対象の部品及び前記基板に照射し、該部品及び該基板からの反射光を2系統に分岐させ、前記転写対象の部品及び基板を同時観察する工程と、
前記テープの他方の面から前記転写対象の部品を押さえる光透過性の押圧部材
であって、前記押圧部材の上面の形状は、前記反射光が球面波として該押圧部材の上面を通過するときに、該球面波の曲率半径と一致するように定められており、前記押圧部材と前記基板とを相対的に移動させることにより、前記転写位置に前記部品を押圧する工程と、
前記部品を前記基板に転写して実装する工程と、
を実行することを特徴とする部品実装方法。
【請求項6】
基板に部品を転写して実装する部品実装方法であって、
ロール状に巻き取り可能な細長状の光透過性のテープを送出することにより、該テープの一方の面に予め定められた配列ピッチで接着されている部品を、前記基板に転写する転写位置の直上に順次位置付けると共に、前記テープの送出した分をロール状に巻き取る搬送処理の工程と、
光源からの照明光を転写対象の部品及び前記基板に照射し、該部品及び該基板からの反射光を2系統に分岐させ、前記転写対象の部品及び基板を同時観察する工程であって、特定の被写体にピントが合うようにする自動合焦処理による観察を選択的に採用し、前記2系統のうちの少なくとも一方から導かれる前記基板からの反射光に基づいて、該基板の基板面に対して前記自動合焦処理を行なって同時観察する工程と、
前記テープの他方の面から前記転写対象の部品を押さえる光透過性の押圧部材と前記基板とを相対的に移動させることにより、前記転写位置に前記部品を押圧する工程と、
前記部品を前記基板に転写して実装する工程と、
を実行することを特徴とする部品実装方法。
【請求項7】
前記転写位置に前記部品を押圧する工程の後に、光反応型の接着剤が予め塗布された前記転写位置に向けて、光反応用に予め定められた波長の光を照射する工程をさらに実行することを特徴とする請求項5
又は6に記載の部品実装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品の実装技術に関し、特に、ロール状に巻き取り可能な細長状の光透過性のテープの一方の面に予め定められた配列ピッチで接着されている微小な部品を基板に高精度に実装する部品実装装置及び部品実装方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
上記のような微小な部品(例えば、外形の各寸法が数十~数百μm程度)を、いわゆるロール・トゥ・ロール方式で基板に高精度に実装する場合、テープの一方の面に接着されている部品の位置と、基板に実装する位置とを位置合わせする精度を高める必要がある。実装する部品のサイズがミクロンオーダの場合、予め定められた配列ピッチでテープを移動させたとしても、部品を実装位置の直上に位置付けられないことが起こり得る。これは、例えば、テープが搬送方向に伸縮した場合、その影響が無視できなくなるからである。
【0003】
そこで、部品の位置を例えば撮像カメラで観察して、基板を移動させて位置合わせする方法が考えられる。但し、この場合、部品をテープの他方の面から押さえる部材を利用すると、テープ及びその部材が光透過性を有していないと、直接観察できない。
【0004】
一方、ロール・トゥ・ロール方式ではないものの、部品の位置を透明な部材を介して撮像カメラで観察する部品実装装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の部品実装装置のように透明なガラス板を採用した場合、テープの他方の面から部品を基板に押さえるためには、ある程度の強度(厚み)が必要となる。そのため、例えば顕微鏡で観察する場合、テープの一方の面に配置されている部品と、その部品を基板に実装する目安となる基板面とが光軸方向に離れている段階において、焦点深度が浅いとピントの合う範囲が狭くなるので、同時に観察することが難しくなる。その結果、部品を基板に高精度に転写して実装することが困難となる。
【0007】
そこで、本発明は、このような問題に対処し、ロール状に巻き取り可能な細長状の光透過性のテープの一方の面に予め定められた配列ピッチで接着されている部品(特に上記のような微小な部品)を基板に高精度に転写して実装する部品実装装置及び部品実装方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第1の発明は、部品を基板に転写して実装する部品実装装置であって、ロール状に巻き取り可能な細長状の光透過性のテープを送出することにより、該テープの一方の面に予め定められた配列ピッチで接着されている部品を、上記基板に転写する転写位置の直上に順次位置付けると共に、上記テープの送出した分をロール状に巻き取る搬送部と、光源からの照明光を転写対象の部品及び上記基板に照射し、該部品及び該基板からの反射光を2系統に分岐させて、上記転写対象の部品及び上記基板を同時観察する光学観察部と、上記テープの他方の面から上記転写対象の部品を押さえる光透過性の押圧部材を有し、上記押圧部材と上記基板とを相対的に移動させることにより、上記転写位置に上記部品を押圧し、該部品を上記基板に転写して実装する転写部と、上記搬送部、上記光学観察部及び上記転写部を統括して制御する制御部と、を備えたものである。
【0009】
また、第2の発明は、基板に部品を転写して実装する部品実装方法であって、ロール状に巻き取り可能な細長状の光透過性のテープを送出することにより、該テープの一方の面に予め定められた配列ピッチで接着されている部品を、上記基板に転写する転写位置の直上に順次位置付けると共に、上記テープの送出した分をロール状に巻き取る搬送処理の工程と、光源からの照明光を転写対象の部品及び上記基板に照射し、該部品及び該基板からの反射光を2系統に分岐させ、上記転写対象の部品及び基板を同時観察する工程と、上記テープの他方の面から上記転写対象の部品を押さえる光透過性の押圧部材と上記基板とを相対的に移動させることにより、上記転写位置に上記部品を押圧する工程と、上記部品を上記基板に転写して実装する工程と、を実行するものである。
【発明の効果】
【0010】
第1の発明による部品実装装置によれば、上記構成により、ロール状に巻き取り可能な細長状の光透過性のテープの一方の面に予め定められた配列ピッチで接着されている部品を基板に高精度に転写して実装する装置を提供できる。
【0011】
また、第2の発明による部品実装方法によれば、上記工程により、ロール状に巻き取り可能な細長状の光透過性のテープの一方の面に予め定められた配列ピッチで接着されている部品を基板に高精度に転写して実装できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明による部品実装装置の第1実施形態を示す主な構成図である。
【
図2】
図1に示す部品を複数配置したテープの一実施形態を示す模式図である。
【
図3】
図1に示す部品実装装置の詳細な構成図である。
【
図5】押圧部材の上面の形状に関する説明図である。
【
図6】押圧部材の上面の形状を考察するための撮像写真である。
【
図7】押圧部材の下面の形状に関する説明図である。
【
図8】
図1に示す制御部のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図9】本発明による部品実装方法の第1実施形態を示す流れ図である。
【
図10】第1実施形態の部品実装方法を説明する工程図(1)である。
【
図11】第1実施形態の部品実装方法を説明する工程図(2)である。
【
図12】焦点位置の異なる観察面の同時観察を説明する第1の模式図である。
【
図13】焦点位置の異なる観察面の同時観察を説明するための撮像写真である。
【
図14】焦点位置の異なる観察面の同時観察を説明する第2の模式図である。
【
図15】本発明による部品実装装置の第2実施形態を示す主な構成図である。
【
図16】本発明による部品実装方法の第2実施形態を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は、本発明による部品実装装置の第1実施形態を示す主な構成図である。
【0014】
[第1実施形態]
図1に示す部品実装装置は、ロール状に巻取り可能な細長状の光透過性のテープ1の一方の面(以下、「テープ1の表面」という)上に予め定められた配列ピッチで接着された微小な部品2を基板3に高精度に実装するものである。微小な部品2の外形の各寸法は、上述したとおり、例えば数十~数百μm程度である。なお、この部品実装装置は、例えば、他の転写技術を用いて部品2が予め定められた配列パターンに従って基板3に実装され、検査段階で発見された欠陥部品が取り除かれた後に使用されることを想定している。
【0015】
すなわち、この部品実装装置は、良品の部品2を基板3上の欠陥箇所に選択的に転写する修復に用いるものである。なお、欠陥箇所は、例えば欠陥部品を取り除いた後の未実装箇所を指す。但し、未実装箇所には、部品2の実装漏れも含まれる。
【0016】
この部品実装装置は、主な構成として、搬送部4と、光学観察部5と、光照射部7と、転写部8と、制御部9と、を備える。なお、
図1に示す押圧部材6は、空間的に離れているが転写部8に含まれるものとする。
【0017】
搬送部4は、例えば、ロール・トゥ・ロール方式で上記テープ1を送出することにより、そのテープ1の表面に同一の配列ピッチで接着されている部品2を、基板3に転写する転写位置の直上に順次位置付けると共に、そのテープ1の送出した分をロール状に巻き取る処理を行なうものである。搬送部4は、送出機構41と、巻取り機構42と、テープ制御部43(
図3参照)と、を有する。
【0018】
送出機構41は、基板3に設けられている転写位置の直上に部品2を順次位置付けるため、テープ1を一定方向に連続的又は断続的に搬送する処理を実行するものである。巻取り機構42は、転写により部品2が剥離されたテープ1を巻き取るものである。なお、断続的に搬送するとは、例えば、部品2の配列ピッチに合わせてステップ移動させることをいう。
【0019】
図2は、
図1に示す部品2を配置したテープ1の一実施形態を示す模式図である。(a)は平面図、(b)は(a)に示すA―A線断面図である。(c)は、(b)に示すR1で囲まれた領域の拡大断面図である。
【0020】
但し、
図2(a)では、テープ1を一部切り出した状態を例示している。また、
図2(b)では、テープ1の厚み(例えば0.7mm程度)に対して、部品2の厚みは数十μm(一例として20μm)程度であり、実際には、テープ1の厚みの方が大きい構成になっている。
【0021】
なお、部品2は、例えば、UV(Ultra Violet)励起方式のマイクロLEDディスプレイの製造段階において、組み込まれる特定の部品であってよい。UV励起方式では、UV発光するマイクロLED(Light Emitting Diode)チップと、光の三原色である赤(R)、緑(G)、青(B)で構成されるRGB蛍光体を色変換層として用いる色変換チップとを組み合わせてフルカラー表示を実現する。上記特定の部品には、マイクロLEDチップや色変換チップが含まれる。第1実施形態では、
図2(a)において、例えば色変換チップを部品2として適用することができる。
【0022】
テープ1は、紫外線の照射により粘着力が低下する紫外線硬化型の粘着テープであって、
図2(c)に示すとおり、複数の部品2の一方の端面(以下、「第1面」という)を粘着により固定して支持するものである。テープ1は、部品2を、予め定められた配列として同一の配列ピッチPに基づいて、独立した状態でテープ1上に配置している。この配列ピッチPの距離間隔は、部品2を効率良く実装可能とするために定められている。すなわち、転写対象の部品2を基板3の転写位置に設置したときに、他の部品2が基板3に接触しないようにしている。したがって、このような構成のテープ1を使用すれば、部品2を効率良く実装することができる。なお、紫外線照射に使用する紫外線の波長は、例えば紫外線硬化用として一般に利用されている365nmであることが好ましい。
【0023】
そして、このテープ1は、
図2(c)に示すとおり、ベース部材1aと、そのベース部材1aの一方の面上に積層された粘着剤層1bと、を有する。部品2は、第1面が粘着剤層1bを介してテープ1に粘着により貼り付けられている。
【0024】
ベース部材1aは、紫外線硬化型の粘着テープとして紫外線透過性の樹脂からなるものである。粘着剤層1bは、そのベース部材1aの一方の面上に積層された紫外線硬化型の粘着剤である。但し、粘着剤層1bは、紫外線を全て吸収するものではなく、紫外線を透過させることができる。
【0025】
テープ1は、部品2を固定する際には、その部品2を充分に固定し、紫外線(以下「紫外光」ということがある)を照射することで粘着剤が硬化することにより、粘着力を低下させ、剥離させやすくすることができる。したがって、テープ1としては、紫外線硬化型の粘着テープを使用することが好ましい。
【0026】
また、テープ1は、可視光から紫外光までの波長領域の光透過性を有している。なお、テープ1は、紫外線硬化型の粘着テープに限られず、表面に粘着剤が塗布された樹脂フィルムであってもよいし、各種の粘着テープであってもよい。但し、部品2を基板3に転写して実装するためには、テープ1に部品2の第1面が粘着している粘着力は、基板3の転写位置に部品2の他方の端面(以下、「第2面」という)が固定される接着力よりも小さいことが条件となる。
【0027】
図3は、
図1に示す部品実装装置の詳細な構成図である。
図3では、
図1に示す搬送部4、光学観察部5、転写部8の構成をさらに詳細に示している。搬送部4のテープ制御部43は、制御部9からの指示を受けて、送出機構41におけるテープ1の送出と、巻取り機構42におけるテープ1の巻取りを制御するものである。
【0028】
光学観察部5は、照明用の光源57からの照明光を転写対象の部品2及び基板3に照射し、部品2及び基板3からの反射光を2系統に分岐させて、転写対象の部品2及び基板3を同時観察するものである。但し、光学観察部5は、光照射部7から射出された紫外線を部品2と基板3とに向けて照射する光学的手段を提供する。
【0029】
光学観察部5は、特定の被写体にピントが合うようにする自動合焦処理による観察を選択的に採用し、2系統のうちの少なくとも一方から導かれる基板3からの反射光に基づいて、その基板3の基板面に対して自動合焦処理を行なう。詳細については後述する。
【0030】
光学観察部5は、
図3に示すとおり、対物レンズ51と、第1結像レンズ52と、第2結像レンズ53と、第1撮像部54と、第2撮像部55と、結像レンズ制御部56と、照明用の光源57と、ミラーM1~M6と、を備える。ミラーM1,M3はハーフミラーであり、ミラーM2,M4,M5は反射ミラーであり、ミラーM6は、紫外光を反射させ、可視光を透過させるダイクロックミラーである。
【0031】
対物レンズ51は、光源57から照射された照明光を部品2と基板3に集光するものである。詳細には、対物レンズ51は、その対物レンズ51と対向する部品2の第1面に光を集光すると共に、その対物レンズ51と対向する基板3の基板面に光を集光するものである。ミラーM1は、ビームスピリッタとしての機能を有し、対物レンズ51の直上に設けられ、部品2及び基板3からの反射光を2系統(第1光路、第2光路)に分岐させるものである。
【0032】
第1結像レンズ52は、ミラーM2の上方に設けられており、ミラーM1により形成される第1光路を利用して部品2からの反射光を結像するものである。この第1光路は、光源57から照射された照明光が対物レンズ51により部品2に集光され、その部品2からの反射光が対物レンズ51を介して、ミラーM6,M3を透過した後、ミラーM1で90度反射し、続いてミラーM2でさらに90度反射して、第1結像レンズ52に導かれる光路に含まれる。
【0033】
第2結像レンズ53は、ミラーM1の上方に設けられており、そのミラーM1により形成される第2光路を利用して基板3からの反射光を結像するものである。この第2光路は、光源57から照射された照明光が対物レンズ51により基板3に集光され、その基板3からの反射光が対物レンズ51を介して、ミラーM6,M3を透過した後、ミラーM1を透過し、第2結像レンズ53に導かれる光路に含まれる。
【0034】
第1撮像部54は、第1結像レンズ52の上方に設けられており、その第1結像レンズ52を通して結像された部品2の像を撮像して第1画像のデータに変換し、そのデータを解析するために制御部9に送信するものである。第2撮像部55は、第2結像レンズ53の上方に設けられており、その第2結像レンズ53を通して結像された基板3の基板面の像を撮像して第2画像のデータに変換し、そのデータを解析するために制御部9に送信するものである。
【0035】
結像レンズ制御部56は、基板3の鉛直上向き方向への移動の前後において、自動合焦処理としてコントラストオートフォーカスにより基板3の焦点位置が各々合うように第2結像レンズ53を移動させる。詳細には、結像レンズ制御部56は、第2結像レンズ53をフォーカスレンズとして光軸方向に移動させながら得られる画像のコントラストを制御部9が計算し、最大コントラストになるレンズ位置を合焦点とするように第2結像レンズ53を位置決めするものである。なお、第1実施形態では、説明を分かりやすくするため、転写対象の部品2がテープ1を介して押圧部材6と間接的に接触する場合、上下方向のずれは無視できる程度なので、第1結像レンズ52の位置は予め焦点位置が合うように固定されている。但し、光学観察部5は、自動合焦処理による観察を選択的に採用しているので、結像レンズ制御部56は、第1結像レンズ52をフォーカスレンズとして駆動し、コントラストオートフォーカスを実行する設定にしてもよい。
【0036】
照明用の光源57は、対物レンズ51の直下に位置する転写用の部品2及び基板3を照明するものである。光源57から照射された照明光は、ミラーM5,M3,M6を経由して対物レンズ51を透過して、部品2及び基板3を特定の被写体として照射する。
【0037】
図4は、押圧部材6の構成例を示す説明図である。押圧部材6は、可視光から紫外光の波長帯域の光透過性を有し、テープ1の他方の面(以下、「テープ1の裏面」という)から転写対象の部品2を押さえるものである(
図3参照)。押圧部材6は、具体的には、透明な石英ガラス材であることが好ましい。そして、押圧部材6の上面61と下面62とは、各々異なる曲率を持った曲面を有している。すなわち、押圧部材6の上面61は、光学的な観点に基づいて曲面が定められている。また、下面62は、機械工学的な観点に基づいて曲面が定められている。但し、その下面62の曲面の形状は、別途、所定の光学的な条件を満たすことが、光学的に影響を与えないという観点から好ましい。詳細については、
図7を用いて後述する。そして、押圧部材6は、
図1に示すとおり、テープ1を湾曲させて支持する押さえ治具としても機能する。
【0038】
ここで、
図4において、対物レンズ51を透過した光(照明光)は、押圧部材6を透過して、その対物レンズ51の作用により焦点が合う観察面63の焦点位置に集光される。そして、観察面63から反射された反射光は、球面波SWを形成し、再び、押圧部材6を透過して対物レンズ51に戻って行く。なお、
図4には図示していないが、部品2の第1面を観察面63とした場合、第1結像レンズ52は、対物レンズ51を透過してくる部品2の第1面からの反射光を結像することになる。また、
図4には図示していないが、基板3の基板面を観察面63とした場合、第2結像レンズ53は、対物レンズ51を透過してくる基板面からの反射光を結像することになる。
【0039】
押圧部材6は、反射光が球面波SWとして、押圧部材6の上面61を通過するときに、球面波SWの曲率半径と一致するように上面61の形状が定められている。詳細には、押圧部材6の上面61の曲率半径Rは、焦点位置である曲率中心C1を中心とする曲率半径Rtで表わされる。曲率半径Rtは、球面波SWが上面61を通過する際、その球面波SWの曲率半径と同じ値になるように設計されている。これは、観察面63の焦点位置から発生する球面波SWの波面が変化しないようにするため、すなわち、上面61での収差の発生を抑制するためである。観察面63が押圧部材6の下面62に接している場合、押圧部材6の厚みTは、曲率半径Rtと一致することになる。
【0040】
図5は、押圧部材6の上面61の形状に関する説明図である。(a)は、押圧部材6の上面61が曲面形状を有している場合を例示しており、この場合、
図4を用いて上述したとおり、球面波SWの波面が変化しない。すなわち、上面61では光の屈折が起こらないため、収差が発生しない。(b)は、押圧部材6の上面61の形状と異なり、上面61aが平面形状を有している押圧部材6aを例示している。その上面61aが平面形状の場合、上面61aで光の屈折が起こり、収差が発生するため、光学系の分解能が低下し、高精度な転写の妨げとなる。
【0041】
図6は、押圧部材6の上面の形状を考察するための撮像写真である。説明を分かりやすくするため、顕微鏡で観察した撮像写真を用いて説明する。
図6(a)は、数字等がくり抜かれたテスト用プレートの撮像写真を示しており、数字の1の行が、線幅が0.977μmの孔であり、数字の2の行が、線幅が0.870μmの孔であり、数字の3の行が、線幅が0.775μmの孔である。
図6(a)に示す撮像写真は、焦点が合った状態を例示している。
【0042】
図6(b)は、
図6(a)の状態で、厚さ3mmの光透過性の平板を通して観察した撮像写真を例示している。この場合、画像の分解能が
図6(a)の撮像写真と比較して、低下している。
【0043】
これに対し、
図6(c)は、厚さが2.5mm、曲率半径が2.5mmであって、光透過性の半球体を通して観察した撮像写真を例示している。但し、顕微鏡の観察倍率は、顕微鏡倍率×半球体の屈折率としている。この場合、画像の分解能が
図6(b)の撮像写真と比較して向上している。これは、屈折率分だけ開口数が大きくなるので分解能が高くなるからである。
【0044】
図6(a)~(c)の撮像写真から、押圧部材6の上面61の形状は、
図4に示すとおり、反射光が球面波SWとして上面61を通過するときに、球面波SWの曲率半径と一致するように上面61の形状を設計することが好ましいことが分かる。この設計により、既存の対物レンズ51に押圧部材6を組み合わせるだけで、新たに部品実装装置専用の対物レンズの設計や製造を行うことなく、高精度な転写を行う部品実装装置を実現できる。
【0045】
図7は、押圧部材6の下面62の形状に関する説明図である。押圧部材6(全体の図示省略)の下面62の形状は、光学的な観点に立つと平面が望ましいが、
図7に示す視野(半径)s内での光路差が対物レンズ51の焦点深度d内に収まる範囲内であれば、曲面でも問題がない。この点に関し、
図7において、下面62を平面にせず、正面視で湾曲させて敢えて曲面にしているのは、以下の理由に基づいている。すなわち、テープ1をロール・トゥ・ロール方式で搬送しているので、
図1に示すテープ1が湾曲しているのに合わせて機械工学的な観点から曲面(シリンドリカル面)の形状にすることが好ましいからである。
【0046】
押圧部材6は、例えば合成石英の場合、屈折率1.458、波長毎の屈折率の違いの度合いを表すアッベ数67.70であるものが採用されている。
【0047】
詳細には、
図7において、押圧部材6の下面62の形状については、以下の関係式が成立することを条件としている。
z=R
b(1-cosθ) (1)
(n-1)z<d (2)
tanθ=s/R
b (3)
【0048】
ここで、各パラメータについて、zは、押圧部材6の曲面形状の下面62と観察面63との距離、Rbは、下面62の形状に応じて定まる曲率中心をC2としたときの下面の曲率半径、nは、押圧部材6の材質の屈折率、dは、対物レンズ51の焦点深度、sは、視野(半径)である。zは、視野s位置での光路長に相当し、中心部分の光路長は、屈折率nの媒質中なので、nzとなり、光路長の差は、nz―z=(n-1)zとなる。なお、押圧部材6の曲面形状の下面62と観察面63との距離(z)は、cosθが0度の場合には、一致することになる。
【0049】
以上より、押圧部材6の下面62の形状を規定する曲率半径R
bは、上記(1)~(3)の関係式を満たすようにすることが好ましい。すなわち、搬送部4は、ロール・トゥ・ロール方式を採用し、
図1に示すとおり、押圧部材6を介してテープ1が円弧状に配置されている。押圧部材6の下面62が曲面形状であると、テープ1が押圧部材6で押圧されたときに、下面62の両側のエッジにおいて、押圧部材6の荷重によりテープ1が余計な応力と歪みを発生せずに済む。
【0050】
光照射部7は、光反応型の接着剤が予め塗布された転写位置に向けて、光反応用に予め定められた波長(例えば365nm)の光を照射するものである。光反応型の接着剤は、例えば、紫外線の照射により硬化する紫外線硬化型の接着剤である。テープ1は、上述したとおり、紫外線の照射により粘着力が低下する粘着テープである。光照射部7は、転写対象の部品2を基板3に転写するタイミングで転写位置に向けて紫外線を照射する。なお、上記のタイミングとは、光照射部7が紫外線等の光を照射するのに最も適した時機を意味する。
【0051】
図3を参照すると、光照射部7が紫外線を射出すると、その紫外線は、ミラーM5,M6で反射し、対物レンズ51を透過して転写位置へと導かれる。詳細には、光照射部7は、紫外線の光路に従って、テープ1上の転写対象の部品2の第1面及び第2面を照射し、部品2の第1面をテープ1から剥離すると共に、部品2の第2面を基板3の転写位置に接着して固定させる。つまり、光照射部7は、紫外線の照射により、テープ1の粘着剤層1bの粘着剤が硬化することにより、粘着力を低下させ、部品2をテープ1から剥離させる。
【0052】
一方、基板3上の部品2の未実装箇所には紫外線硬化型の接着剤が予め塗布されており、部品2の第2面が基板3の転写位置(未実装箇所)に設置されることで、接着剤と接触することになる。そして、紫外線の照射により、その接着剤が紫外線硬化される。これにより、部品2が基板3上に接着され固定される。つまり、光照射部7から射出された紫外線は、押圧部材6を透過して、部品2の第1面と粘着している粘着剤層1bに作用する。さらに、紫外線は、部品2に一部吸収されるものの、部品2を透過して、紫外線硬化型の接着剤に作用する構成になっている。
【0053】
転写部8は、押圧部材6を有し、同時観察の下で部品2及び基板3の位置を合わせ、押圧部材6と基板3とを相対的に移動させることにより、その押圧部材6を利用して転写位置に部品2を押圧し、その部品2を基板3に転写して実装するものである。なお、相対的に移動させるとは、(1)押圧部材6を固定し基板3を移動させることと、(2)押圧部材6を移動させ基板3を固定することと、(3)押圧部材6と基板3とを移動させることと、が含まれる。第1実施形態では、(1)を採用している。ここで、(2)、(3)を採用する場合には、別途、制御部9の指示により押圧部材6を昇降させる昇降機構(図示省略)が部品実装装置に組み込まれる。また、転写するとは、上位概念的には、転写対象の部品2を基板3の転写位置に接着して、その部品2をテープ1から剥離することをいう。
【0054】
具体的には、転写部8は、先ず、光学観察部5の同時観察の下で基板3を鉛直上向き方向に移動させることにより、テープ1の裏面から押圧部材6を利用して基板3の転写位置に部品2を押圧する。つまり、転写位置に部品2を押圧するとは、押圧部材6がテープ1を介して部品2を押さえることにより、部品2が基板3の転写位置に位置決めされることを意味する。次に、転写部8は、紫外線の照射により転写対象の部品2を基板3の転写位置に接着し、紫外線の照射により部品2をテープ1から剥離して、その部品2を基板3に実装する。
【0055】
詳細な構成については、転写部8は、
図3に示すとおり、押圧部材6と、XYZステージ81と、吸着ステージ82と、塗布装置83と、ステージ制御部84と、を備える。XYZステージ81は、3軸方向に基板3を移動させる機構を有している。吸着ステージ82は、XYZステージ81上に設けられ、基板3を吸着して支持するものである。
【0056】
塗布装置83は、基板3上の部品2の未実装箇所に紫外線硬化型の接着剤を予め塗布するものである。塗布装置83は、例えば、外形の各寸法が数十~数百μm程度の領域に紫外線硬化型の接着剤の溶剤を塗布できる高精度のディスペンサーである。ステージ制御部84は、制御部9からの指示により、XYZステージ81を移動させることにより、塗布装置83は、部品2の未実装箇所にピンポイントでその接着剤を塗布することができる。
【0057】
制御部9は、搬送部4、光学観察部5、光照射部7及び転写部8を統括して制御するものである。
【0058】
図8は、
図1に示す制御部9のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。制御部9は、制御用のコンピュータであって、プロセッサ9a、ストレージ9b、メモリ9c、入力装置9d、通信インターフェース9e、表示装置9f及びバス9gを備える。プロセッサ9a、ストレージ9b、メモリ9c、入力装置9d、通信インターフェース9e及び表示装置9fは、バス9gを介して、互いに接続されている。なお、制御部9は、搬送部4、光学観察部5、光照射部7及び転写部8に例えば動作内容の指示を示す制御信号を送信するため、通信回線により接続されている。
【0059】
プロセッサ9aは、制御部9の制御を実行するものである。また、ストレージ9bは、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリ等の記憶装置であり、プログラムや各種データが格納される。
【0060】
メモリ9cは、RAM(Random Access Memory)等の記憶装置であり、例えば、プロセッサ9aで実行されるプログラムがロードされる。入力装置9dは、例えば、キーボード方式又はタッチパネル方式の入力デバイスである。通信インターフェース9eは、例えば、データ通信を行なうための通信インターフェースを具備する。表示装置9fは、例えば、液晶モニタであって、プロセッサ9aの指示に応じて、操作用のメニュー画面や出力結果を表示する。
【0061】
また、制御部9は、プロセッサ9a、ストレージ9b及びメモリ9c等のハードウェアと、プログラムとが協働することにより、各種機能を実現する。このプログラムには、本発明による部品実装方法を実現するための制御プログラム(部品実装プログラム)が含まれる。
【0062】
具体的には、この制御プログラムは、
図3を参照して説明すると、上記テープ1を送出することにより、そのテープ1の一方の面に予め定められた配列ピッチで接着されている部品2を、基板3に転写する転写位置の直上に順次位置付けると共に、テープ1の送出した分をロール状に巻き取る搬送ステップと、光源57からの照明光を転写対象の部品2及び基板3に照射し、その部品2及びその基板3からの反射光を2系統に分岐させ、転写対象の部品2及び基板3を同時観察するステップと、同時観察の下で部品2及び基板3の位置を合わせ、テープ1の裏面から転写対象の部品2を押さえる光透過性の押圧部材6と基板3とを相対的に移動させることにより、その押圧部材6を利用して転写位置に部品2を押圧するステップと、転写対象の部品2を基板3に転写するタイミングで、光反応型(例えば紫外線硬化型)の接着剤が予め塗布された転写位置に向けて、光反応用に予め定められた波長の光(例えば紫外線)を照射するステップと、転写対象の部品2を転写位置に接着して、その部品2をテープ1から剥離する転写により、その部品2を基板3に実装するステップと、を含むものである。制御部9は、この制御プログラムに従って、搬送部4、光学観察部5、光照射部7及び転写部8を統括して制御する。
【0063】
次に、このように構成された部品実装装置を使用し、基板3に部品2を転写して実装する実行する部品実装方法について説明する。
【0064】
図9は、本発明による部品実装方法の第1実施形態を示す流れ図である。
図10~
図11は、第1実施形態の部品実装方法を説明する工程図(1)、(2)である。先ず、部品実装装置の電源(図示省略)がオンされ、
図8に示す制御部9が、入力装置9dを介して部品実装方法の動作開始を示す指示入力を受け付ける。すると、制御部9は、部品実装方法を実行するための制御プログラムに基づいて、
図9に示す流れ図の処理を開始する。
【0065】
工程S1では、基板3に部品2を転写する転写位置に接着剤を塗布する処理を実行する。具体的には、
図3に示すXYZステージ81は、ステージ制御部84の制御により、先ず、基板3を吸着している吸着ステージ82を移動させ、部品2の未実装箇所を、塗布装置83の吐出ヘッド(図示省略)の直下に位置付ける。なお、転写位置とは、部品2の未実装箇所を意味する。具体的には、転写位置は、
図10(a)に示す部品2の未実装箇所を示す窪んだ形状の凹部31である。塗布装置83は、例えば紫外線硬化型の接着剤を凹部31の底面に塗布する。
【0066】
第1実施形態では、予め、基板3において、部品2の未実装箇所の座標データが制御部9のストレージ9bに記憶されており、XYZステージ81は、ステージ制御部84の制御により、この座標データに基づいて、部品2の未実装箇所を塗布装置83の吐出ヘッドの直下に位置付けることができる。
【0067】
続いて、塗布装置83は、吐出ヘッドから接着剤の溶剤を吐出し、基板3の転写位置(凹部31)に塗布する。部品2の未実装箇所が複数ある場合には、工程S1の処理を繰り返すことにより、塗布装置83は、基板3の転写位置に接着剤を塗布することができる。
【0068】
工程S2では、基板3の転写位置が対物レンズ51(
図3参照)下になるように基板3を移動させる処理を実行する。具体的には、ステージ制御部84は、XYZステージ81を制御して、基板3を吸着している吸着ステージ82を移動させることにより、部品2を転写する転写位置が対物レンズ51下になるように基板3を移動させる。
図3において、基板3を吸着している吸着ステージ82が移動した状態を例示している。
図10(a)は、基板3の転写位置を
図3に示す対物レンズ51下に移動させた状態を例示した模式図である。なお、
図10~
図13に示す基板3は、その基板3の部分拡大正面図である。
【0069】
工程S3では、
図3に示す第2結像レンズ53を駆動し、基板面上に焦点を合わせる処理を実行する。具体的には、
図3に示す第2撮像部55は、第2結像レンズ53を通して結像された基板3の基板面の像を撮像して第2画像のデータに変換し、該データを解析するために制御部9に送信する。そして、制御部9は、上記のコントラストオートフォーカスにより、第2結像レンズ53を駆動し、基板面上に焦点を合わせる処理を実行する。そして、制御部9は、第2画像を解析して基板3の転写位置を検出する。
【0070】
工程S4では、テープ1上の部品2を対物レンズ51下に移動させる処理を実行する。具体的には、工程S4では、テープ1の表面に配列ピッチPで配置された部品2を、基板3に転写する転写位置31の直上に位置付ける処理を実行する。
図10(b)は、テープ1上の部品2を
図3に示す対物レンズ51下に移動させた状態を例示した模式図である。この状態が、転写位置の直上に部品2が位置付けられたことを意味する。そして、この部品2が転写対象の部品2となる。
【0071】
工程S5では、第1撮像部54で部品2の位置を検出する処理を実行する。具体的には、
図3に示す第1撮像部54は、第1結像レンズ52を通して結像された部品2の像を撮像して第1画像のデータに変換し、該データを解析するために制御部9に送信する。制御部9は、第1画像を解析して転写対象の部品2の現在位置を検出する。
【0072】
工程S6では、転写対象の部品2及び基板3を同時観察する。
図12は、焦点位置の異なる観察面の同時観察を説明する第1の模式図である。なお、説明の便宜上、
図3に示すミラーM3、M6の図示を省略している。工程S6では、対物レンズ51を共通にして、対物レンズ51上部においてミラーM1をビームスピリッタとして2系統に分岐させ、第1撮像部54で、第1画像として部品2(テープ1の表面と部品2の第1面との境界面)を観察し、第2撮像部55で、第2画像として基板3の基板面を観察する。
【0073】
この場合、部品2を観察するとは、第1撮像部54が、ミラーM1,M2を介して、第1結像レンズ52を通して結像された部品2の像を撮像して第1画像のデータに変換し、そのデータを解析するために制御部9に送信することを意味する。また、基板3を観察するとは、第2撮像部55が、ミラーM1を介して、第2結像レンズ53を通して結像された基板3の基板面の像を撮像して第2画像のデータに変換し、そのデータを解析するために制御部9に送信することを意味する。したがって、実際の画像解析は、制御部9において実行される。
【0074】
図13は、焦点位置の異なる観察面の同時観察を説明するための撮像写真である。
図13(a)は、撮像写真として、押圧部材6から100μm離れた面の画像を示している。この撮像写真は、説明を分かりやすくするため、基板3を
図6で示したテスト用プレートに置き換えて撮像したものである。但し、この撮像写真は、第2結像レンズ53を移動させる前の状態であって、第2結像レンズ53が標準位置にある状態で撮像したものである。そのため、
図13(a)では、焦点位置が合っていない画像になっている。
【0075】
図13(b)は、撮像写真として、上記のコントラストオートフォーカスにより、第2結像レンズ53を移動させて焦点を合わせた画像を示している。
図12は、
図13(b)の状態を例示している。なお、標準位置は、例えば、
図14に示す第2結像レンズ53の位置であってもよい。
【0076】
既に
図4において、押圧部材6の上面61について説明したとおり、反射光が球面波SWとして上面61を通過するときに、球面波SWの曲率半径と一致するように上面61の形状を設計しているので、例えば
図5(b)に示す平面形状の上面61aと比較して、より分解能が高い画像が得られる。
【0077】
また、
図12において、部品2についても第1結像レンズ52により焦点が合うようにして、第1撮像部54が撮像しているので、制御部9は、部品の画像(第1画像)と、基板3の基板面の画像(第2画像)に基づいて、部品2の位置と、基板3の転写位置とを画像解析して位置ずれを判断することができる。これにより、次の工程S7で説明するとおり、制御部9は、同時観察の下でその位置ずれを補正するように、XYZステージ81に指示を出して基板3を移動させることができる。
【0078】
工程S7では、部品2の位置と転写位置との位置合わせの処理を実行する。ここで、既に、工程S4において、部品2を転写する転写位置が対物レンズ51下になるように基板3を移動させているが、搬送部4がテープ1を停止させたときに、転写対象の部品2が前後方向に位置ずれを起こすことがあり得る。制御部9は、例えば、同時観察の下で、空間を隔てて観察される部品2の第2面の領域と転写位置の領域との重なる領域を解析して、位置ずれの有無を判定することができる。工程S7では、部品2と基板3との同時観察の下で位置ずれが起きていた場合には、制御部9は、XYZステージ81に指示を出して基板3を移動させて位置を合わせる。すなわち、制御部9は、部品2と基板3との相対位置を微調整する。したがって、位置ずれが起きていない場合には、部品2の位置と転写位置との位置合わせは、現在の状態を維持し、そのまま次の工程S8に移行する。
【0079】
工程S8では、基板3をZ軸方向(鉛直上向き方向)に上昇させて転写位置に部品2を押圧する処理を実行する。具体的には、工程S8では、光軸方向に基板3を移動させると共に、テープ1の裏面から押圧部材6を利用して、基板3の転写位置に転写対象の部品2を押圧する処理を実行する。
図10(c)は、基板3の転写位置に転写対象の部品2を押圧する処理を例示した模式図である。工程S8では、転写位置に部品2を押圧して設置することにより、その転写位置に部品2が位置決めされることになる。
【0080】
図14は、焦点位置の異なる観察面の同時観察を説明する第2の模式図である。図中の符号の説明は、
図12と同じである。工程S8では、上記のコントラストオートフォーカスにより、制御部9の解析結果に基づいて、基板3のZ軸方向の上昇に連動して、基板3の基板面に焦点位置が合うように第2結像レンズ53を光軸方向に移動させる。
図14に示した状態が、転写対象の部品2を基板3に転写するタイミングとなる。
【0081】
工程S9では、紫外線を照射し、転写対象の部品2を基板3に接着して固定する処理を実行する。
図11(a)は、転写対象の部品2を基板3に転写するタイミングで、UV(紫外線)を照射した状態を例示している。
【0082】
工程S10では、光照射部7をオフにして、紫外線の照射を停止する処理を実行する。具体的には、制御部9は、紫外線の照射時間を計測して予め定めた照射時間に達した時に、
図2(c)に示すテープ1の粘着剤層1bの粘着力が低下し、
図11(a)に示す部品2の第2面と接触している接着剤が硬化して、基板3の転写位置に固定させたと判定し、紫外線の照射を停止する。
【0083】
工程S11では、部品2を基板3に実装する処理を実行する。具体的には、制御部9は、ステージ制御部84に指示を出し、転写対象の部品2を転写位置に接着した後、基板3を下降させて、テープ1から転写対象の部品2を剥離させて、その部品2を基板3に実装する。
図11(b)は、転写対象の部品2を基板3に転写して実装した状態を例示している。
【0084】
また、
図9の流れ図には示していないが、制御部9は、工程S11の処理を終了すると、予め定められた数の部品2が基板3に転写されて実装されたかをチェックする。予め定められた数に達していない場合には、次の部品2を基板3に転写して実装するため、工程S2に戻り、本発明による部品実装方法では、工程S2~工程S11までの処理を繰り返す。
図11(c)は、次に転写する部品2について、転写位置が
図3に示す対物レンズ51下になるように基板3を移動させると共に、部品2を対物レンズ51下に移動させる処理を例示している。
【0085】
一方、予め定められた数に達した場合には、制御部9は、
図9に示す流れ図の処理を終了する。
【0086】
以上より、第1実施形態によれば、
図3に示すとおり、対物レンズ51を共通にして、対物レンズ51の上方に設けられたミラーM1で、部品2の反射光と基板3の反射光とを2系統に分岐して部品2と基板3とを同時に観察することにより、部品2の位置と基板3の位置とを確認することができ、位置合わせが容易となり、部品2を基板3に高精度に転写して実装することができる。
【0087】
なお、第1実施形態の部品実装装置では、光照射部7が紫外線を照射する構成としたが、本発明はこれに限られない。光照射部7は、基板3に実装する部品2に応じて、(1)紫外線照射装置(2)赤外線照射装置、(3)紫外線と赤外線とを選択的に照射する照射装置の何れかであってもよい。例えば、部品2をマイクロLEDチップとした場合、基板3をハンダ固着とし、テープ1側の接着剤を赤外線の照射により熱剥離性を発現する光反応型の接着剤とすることが可能である。この場合、光照射部7は、光源としてその熱剥離性を発現する赤外波長の光を照射する赤外線照射装置とすることが可能である。ここで、赤外線照射装置は、例えば発振波長が915nmの赤外線レーザを、赤外波長の光として照射するものである。
【0088】
また、部品2をマイクロLEDチップとした場合、テープ1側の接着剤を紫外線硬化型の接着剤にすることも可能である。そして、光照射部7は、紫外線(例えば365nm)と赤外線(例えば915nm)とを選択的に照射する照射装置とすることが可能である。すなわち、光照射部7は、上記紫外線照射装置と上記赤外線照射装置とを備え、制御部9の制御により紫外線と赤外線とを選択的に照射するものとしてもよい。但し、紫外線と赤外線とを選択的に照射する場合、部品実装装置では、
図3に示すミラーM6を、紫外領域、可視領域、赤外領域の広い波長帯域で使用できるハーフミラー(例えば、シグマ光機株式会社製のPMH-30C03-10-25/7)に置き換える等、適宜ミラーの配置を変更すればよい。
【0089】
この場合における部品実装方法では、
図9に示す流れ図において、工程S1では、基板3の転写位置にハンダ付けに利用される合金を設けることとする。そして、工程S2~S7を実行し、工程S8において、基板3をZ軸方向に上昇させて、転写位置に部品2(マイクロLEDチップ)を設置する処理を実行する。続いて、工程S9に移行する前に、光照射部7からの赤外線照射により基板3の合金を溶融し、冷却してその合金で部品2の第2面と基板3とを固着させる。
【0090】
次に、工程S9では、光照射部7は、部品2の第1面とテープ1との間で接着している接着剤に向けて紫外線を照射する処理を行なう。そして、工程S10に続いて、工程S11では、基板3を下降させることにより部品2をテープ1から剥離させて、部品2を基板3に実装する処理を行なう。
【0091】
以上より、本発明によれば、部品2をマイクロLEDチップとした場合であっても、部品2を基板3に高精度に転写して実装することができる。
【0092】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態の部品実装装置と同一の構成については、同じ符号を付して説明を省略又は簡略し、相違点を主に説明する。
【0093】
図15は、本発明による部品実装装置の第2実施形態を示す主な構成図である。
図15に示す部品実装装置は、
図1に示す部品実装装置と比較して、光照射部7を備えていない点を特徴としている。
【0094】
すなわち、
図15に示す部品実装装置は、主な構成として、搬送部4と、光学観察部5と、転写部8と、制御部9と、を備える。なお、
図15に示す押圧部材6は、
図1と同様、空間的に離れているが転写部8に含まれるものとする。また、部品実装装置は、
図3において、光照射部7と、ミラーM5が取り除かれた構成となる。
【0095】
第2実施形態において、テープ1aは、表面に粘着剤が塗布された樹脂フィルムであって、可視光を透過させる光透過性を有している。
【0096】
図16は、本発明による部品実装方法の第2実施形態を示す流れ図である。第2実施形態の部品実装方法では、
図9に示す流れ図及び上述した制御プログラムを一部変更している。工程S20では、基板3の転写位置に、例えば乾燥して固まる接着剤が予め塗布される。但し、説明を分かりやすくするため、部品2の未実装箇所が複数ある場合であっても、毎回、転写する転写位置のみに接着剤が塗布されることとする。
【0097】
続いて、工程S21~S27では、
図9に示す流れ図に示す工程S2~工程S8と同様の処理を実行する。続いて、工程S28では、第1実施形態と異なり、紫外線を照射することなく、部品2を基板3に接着して固定する。続いて、工程S29では、部品2を基板3に実装する処理を行なう。但し、部品2を基板3に接着し、テープ1aから部品2を剥離する転写により、その部品2を基板3に実装するためには、テープ1aに部品2の第1面が粘着している粘着力は、基板3の転写位置に部品2の第2面が固定される接着力よりも小さいことが条件となる。
【0098】
そして、
図16の流れ図には示していないが、転写する部品2が予め定められた数に達していない場合には、次の部品2を基板3に転写して実装するため、工程S20に戻り、第2実施形態の部品実装方法では、再度、工程S20~S29の処理を繰り返す。
【0099】
したがって、第2実施形態においても、第1実施形態と同様、部品2を基板3に高精度に転写して実装することができる。
【0100】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【0101】
また、特許請求の範囲、明細書及び図面中において示した装置及び方法における動作等の各処理の実行順序は、任意の順序で実行してもよい場合がある点に留意すべきである。例えば、
図9に示す流れ図の処理において、工程S2,S3については、工程S4,S5の後に実行してもよい。また、
図16に示す流れ図の処理において、工程S21,S22については、工程S23,S24の後に実行してもよい。
【符号の説明】
【0102】
1…テープ
2…部品
3…基板
4…搬送部
5…光学観察部
6…押圧部材
7…光照射部
8…転写部
9…制御部