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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】腐食検査器具
(51)【国際特許分類】
   G01N 17/00 20060101AFI20240528BHJP
   H05K 7/20 20060101ALN20240528BHJP
【FI】
G01N17/00
H05K7/20 P
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020132128
(22)【出願日】2020-08-04
(65)【公開番号】P2021192023
(43)【公開日】2021-12-16
【審査請求日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】P 2020096676
(32)【優先日】2020-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000104397
【氏名又は名称】カワソーテクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】稲付 嘉明
(72)【発明者】
【氏名】朝比奈 正通
(72)【発明者】
【氏名】礒本 良則
【審査官】野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-028803(JP,A)
【文献】特開平10-123077(JP,A)
【文献】特開平03-249546(JP,A)
【文献】特開2017-020683(JP,A)
【文献】実開昭52-015290(JP,U)
【文献】特表2019-528433(JP,A)
【文献】特開2003-083870(JP,A)
【文献】特開2008-241558(JP,A)
【文献】特開2014-052195(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 17/00-17/04
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製被検査体の内部に形成された流体流通路の腐食状態を検査する腐食検査器具であって、
一端が上記流通路の端部に着脱可能に接続され、上記流通路に流体を流入させるか、或いは、上記流通路から流体を流出させる内部通路を筒中心線上に有する検査用配管を備え、
該検査用配管は、上記内部通路に上記被検査体と同じ金属材で形成された観察用部材を着脱可能に構成され
上記観察用部材は、帯板状をなす観察用プレートであり、
上記検査用配管には、上記観察用プレートを上記内部通路に着脱可能なプレート着脱部が設けられ、
上記検査用配管は、内方に取り付けられた上記観察用プレートを外側から観察可能に透明な樹脂材で形成された配管本体を備え、
上記プレート着脱部は、中心軸が上記内部通路に沿って延びる姿勢で上記配管本体の内部に嵌挿可能で、且つ、内部に上記観察用プレートを上記中心軸に沿う姿勢で収容可能な筒体を備え、
該筒体の外周面における収容した上記観察用プレートに対応する位置には、上記筒体内部に連通する観察用窓が形成され、
上記配管本体の一方の端部には、上記被検査体に接続される金属製の継手が取り付けられ、
上記筒体は、上記継手と同じ金属材で形成されるとともに、上記配管本体に嵌挿された状態において、端部が上記継手に接触する位置になっており、
上記観察用プレートは、上記継手と同じ金属材で形成された固定手段により上記筒体の中央に固定されることを特徴とする腐食検査器具。
【請求項2】
請求項に記載の腐食検査器具において、
上記筒体に取り付けられた上記観察用プレートの領域を除く上記筒体内部の断面積は、上記流通路の断面積と同じに設定されていることを特徴とする腐食検査器具。
【請求項3】
金属製被検査体の内部に形成された流体流通路の腐食状態を検査する腐食検査器具であって、
一端が上記流通路の端部に着脱可能に接続され、上記流通路に流体を流入させるか、或いは、上記流通路から流体を流出させる内部通路を筒中心線上に有する検査用配管を備え、
該検査用配管は、上記内部通路に上記被検査体と同じ金属材で形成された観察用部材を着脱可能に構成され、
上記観察用部材は、一端から他端に亘る管内通路の断面形状を上記被検査体における流体流通路の所定領域の断面形状に一致させた円筒状をなす観察用パイプであり、
上記検査用配管の内部通路に上記観察用パイプを上記管内通路が上記内部通路に沿うように嵌挿可能に構成されていることを特徴とする腐食検査器具。
【請求項4】
請求項に記載の腐食検査器具において、
上記観察用パイプは、断面凹状をなす第1半割体及び第2半割体からなることを特徴とする腐食検査器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ヒートシンクの如き機器の内部に形成された熱媒体が循環する流通路の腐食状態を検査する腐食検査器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、内部に形成された流通路に液体冷媒を循環させる水冷式のヒートシンクが一般的に知られている。例えば、特許文献1に開示されているヒートシンクは、厚みを有する矩形板状の金属製基板を備え、該基板は、矩形板状の基板本体と、該基板本体の一方の面を覆う矩形板状の蓋板とを備えている。そして、基板本体の一方の面には、平面視でひだ状をなすとともに各端部が基板本体の側面にまで延びる溝部が形成され、基板本体の一方の面にろう付け等により蓋板を溶着させて溝部の開放部分を蓋板で覆うことにより、内部に流通路が設けられたヒートシンクを得るようにしている。
【0003】
ところで、特許文献1の如きヒートシンクを安価で、且つ、軽量なものにするために、基板本体をアルミニウム合金材で形成する場合がある。この場合、工場等の環境下において使用する際に、基板の流通路に工業用水を液体冷媒として長きにわたって循環させると、流通路が腐食してしまい、ひいては、腐食部分から水漏れが発生してしまうおそれがある。したがって、基板内部を周期的に検査する必要があるが、特許文献1の如きヒートシンクは、基板がろう付け等により一体になっているので、分解して内部の状態を観察することができないという問題があった。
【0004】
これに対応するために、例えば、特許文献2の如き非破壊検査方法により、基板内部の状態を当該基板の外側から検査することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-109012号公報
【文献】特開2006-71464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献2の如き非破壊検査は、検査に時間がかかるだけでなく、費用が嵩むという問題がある。また、検査器具を基板の外面に接触させなければならず、検査するたびに冷却する対象物から基板を取り外す必要があるといったように、作業が煩雑であるという問題もある。
【0007】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ヒートシンクの如き機器の内部に形成された熱媒体を流通させる流通路の腐食状態を費用をかけずに簡単に、且つ、効率的に検査可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、金属製被検査体に検査用配管を接続するとともに、当該検査用配管の内部通路に被検査体と同じ金属材で形成された観察用部材を着脱可能に取り付けるようにしたことを特徴とする。
【0009】
具体的には、金属製被検査体の内部に形成された流体流通路の腐食状態を検査する腐食検査器具を対象とし、次のような対策を講じた。
【0010】
すなわち、第1の発明では、一端が上記流通路の端部に着脱可能に接続され、上記流通路に流体を流入させるか、或いは、上記流通路から流体を流出させる内部通路を筒中心線上に有する検査用配管を備え、該検査用配管は、上記内部通路に上記被検査体と同じ金属材で形成された観察用部材を着脱可能に構成され、上記観察用部材は、帯板状をなす観察用プレートであり、上記検査用配管には、上記観察用プレートを上記内部通路に着脱可能なプレート着脱部が設けられ、上記検査用配管は、内方に取り付けられた上記観察用プレートを外側から観察可能に透明な樹脂材で形成された配管本体を備え、上記プレート着脱部は、中心軸が上記内部通路に沿って延びる姿勢で上記配管本体の内部に嵌挿可能で、且つ、内部に上記観察用プレートを上記中心軸に沿う姿勢で収容可能な筒体を備え、該筒体の外周面における収容した上記観察用プレートに対応する位置には、上記筒体内部に連通する観察用窓が形成され、上記配管本体の一方の端部には、上記被検査体に接続される金属製の継手が取り付けられ、上記筒体は、上記継手と同じ金属材で形成されるとともに、上記配管本体に嵌挿された状態において、端部が上記継手に接触する位置になっており、上記観察用プレートは、上記継手と同じ金属材で形成された固定手段により上記筒体の中央に固定されることを特徴とする。
【0011】
の発明では、第の発明において、上記筒体に取り付けられた上記観察用プレートの領域を除く上記筒体内部の断面積は、上記流通路の断面積と同じに設定されていることを特徴とする。
【0012】
の発明では、金属製被検査体の内部に形成された流体流通路の腐食状態を検査する腐食検査器具であって、一端が上記流通路の端部に着脱可能に接続され、上記流通路に流体を流入させるか、或いは、上記流通路から流体を流出させる内部通路を筒中心線上に有する検査用配管を備え、該検査用配管は、上記内部通路に上記被検査体と同じ金属材で形成された観察用部材を着脱可能に構成され、上記観察用部材は、一端から他端に亘って管内通路の断面形状を上記被検査体における流体流通路の所定領域の断面形状に一致させた円筒状をなす観察用パイプであり、上記検査用配管の内部通路に上記観察用パイプを上記管内通路が上記内部通路に沿うように嵌挿可能に構成されていることを特徴とする。
【0013】
の発明では、第の発明において、上記観察用パイプは、断面凹状をなす第1半割体及び第2半割体からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
第1の発明では、被検査体と検査用配管とが連続するとともに被検査体と検査用配管の内部通路に位置する観察用部材とが同じ金属材から形成されているので、熱媒体が循環する被検査体の内部に設けられた流通路と検査用配管の内部通路に位置する観察用部材とが同じ状態で劣化していくようになる。したがって、検査用配管の内部通路から観察用部材を周期的に取り出して当該観察用部材を観察することで被検査体内部の腐食状態を精度良く推定可能になり、費用をかけずに簡単に、且つ、効率的に被検査体の内部状態を検査することができる。また、被検査体の内部の腐食状態を確認する際の準備作業は、被検査体に接続された検査用配管の内部から観察用部材を取り出すだけであるので、冷却又は加温する対象物から被検査体を検査のたびに取り外すといった作業の必要が無く、検査にかかる手間を少なくすることができる。
【0015】
また、の発明では、検査用配管の内部通路から観察用プレートを取り外して腐食状態を確認した後、確認後の観察用プレートを検査用配管の内部通路における取り外す前と同じ位置に戻せるようになる。したがって、定期的な検査を行いながら被検査体内部の腐食状態を精度良く推定することができる。
【0016】
また、の発明では、被検査体の稼働を止めることなく観察用プレートの状態を目視で観察できるようになる。したがって、被検査体の内部の状態を知るための目視検査のような簡易的な検査を、簡単に、且つ、効率良く実施することができる。
【0017】
また、の発明では、内部通路の断面において配管本体の内部に取り付ける筒体及び観察用プレートの占める領域が狭くなるので、観察用プレートが熱媒体に浸された状態で当該熱媒体が内部通路をスムーズに流れるようになる。したがって、被検査体の性能を低下させることなく当該被検査体内部の腐食状態を検査することができる。また、観察用プレートを観察用窓から目視で観察することで被検査体の稼働を止めることなく被検査体内部の腐食状態を知ることができる。このように、被検査体の性能を低下させることなく目視検査のような簡易的な検査も実施可能な腐食検査器具にすることができる。
【0018】
また、の発明では、腐食検査器具における被検査体との接続部分から観察用プレートの固定部分までが同じ金属材で形成されたものになるとともに互いに接触した状態になり、さらには、観察用プレートが被検査体との接続箇所から離れた位置になる。したがって、例えば、漏れ電流が発生する高電圧機器に被検査体を接触させて当該被検査体の流通路を流れる流体によって高電圧機器を冷却するような場合であっても観察用プレートに電荷が集中しなくなり、観察用プレートが被検査体内部と同じ速さで腐食していくようになるので、被検査体内部の検査を精度良く実施することができる。
【0019】
の発明では、被検査体の流通路を流れる流体の流動状態、特に流速と、筒体内部を流れる流体の流動状態とが同じか、或いは、同等になる。したがって、被検査体内部の腐食進度と観察用プレートの腐食進度とが同じになるので、被検査体内部の検査をさらに精度良く行うことができる。
【0020】
の発明では、被検査体の流通路における所定領域を流れる流体の流動状態と観察用パイプの管内通路を流れる流体の流動状態とを同じ状態にできるので、被検査体内部の所定領域の腐食進度と観察用パイプの内面の腐食進度とが同じになる。このように、被検査体内部において腐食進度を観察したい領域の断面形状を観察用パイプの内部に再現しておくことで、被検査体内部の特定領域を精度良く検査することができる。
【0021】
の発明では、検査用配管から取り外した観察用パイプが半割れ状態になるので、観察用パイプの内面の状態を確認するために観察用パイプを覗き込む必要が無くなる。したがって、作業者は観察用パイプの腐食状態を簡単に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に1係る腐食検査器具が取り付けられた水冷式ヒートシンクを示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態1に係る腐食検査器具の部分断面図である。
図3図2のIII-III線における断面図である。
図4図2のIV-IV線における断面図である。
図5】各部品を分解した図2相当図である。
図6】実施形態2に係る図2相当図である。
図7】観察用パイプの分解断面図である。
図8図6のVIII-VIII線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0024】
《発明の実施形態1》
図1は、本発明の実施形態1に係る腐食検査器具1が取り付けられた水冷式ヒートシンク10(被検査体)を示す。該ヒートシンク10は、例えば、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)やIEGT(注入促進型絶縁ゲートトランジスタ)のような機器を冷却するためのものであり、厚みを有する矩形板状のアルミニウム合金製基板2を備えている。
【0025】
該基板2は、矩形板状をなす基板本体3と、該基板本体3の表面(一方の面)側を覆う矩形板状をなす蓋板4とを備え、該蓋板4は、基板本体3に対応する形状であるとともに、その厚みが基板本体3の厚みより小さく設定されている。
【0026】
基板本体3には、当該基板本体3の表面側に開放する平面視でひだ状をなす溝部3aが形成され、該溝部3aは、各端部が基板本体3の4つの側面のうちの1つにまで延びている。
【0027】
そして、基板2は、基板本体3の表面側に蓋板4をろう付けで溶着させることにより組み立てられるようになっていて、溝部3aの開放部分を蓋板4で覆うことにより、基板2の内部に液体冷媒を流通させる断面積S1の流通路2aが形成されるようになっている。
【0028】
流通路2aの一方の端部には、当該流通路2aに液体冷媒を流入させる樹脂製の流入管5aが着脱可能に接続されている。
【0029】
一方、流通路2aの他方の端部には、当該流通路2aから液体冷媒を流出させる樹脂製の流出管5bが腐食検査器具1を介して着脱可能に接続されている。
【0030】
腐食検査器具1は、図2に示すように、流通路2aから液体冷媒を流出させる内部通路6aを筒中心線C1上に有する検査用配管6を備えている。
【0031】
該検査用配管6は、透明なフッ素樹脂材で形成された可撓性を有する円筒状の配管本体7と、該配管本体7の一端を基板2における流通路2aの端部に着脱可能に接続するステンレス材からなる第1配管継手8と、配管本体7の他端と流出管5bとを着脱可能に接続するステンレス材からなる第2配管継手9とを備えている。
【0032】
配管本体7の内部には、基板2における流通路2aの腐食状態を検査する検査ユニット11が着脱可能に嵌挿されている。
【0033】
該検査ユニット11は、図2乃至図5に示すように、外径が配管本体7の内径に対応するとともに第1及び第2配管継手8,9と同じ金属材であるステンレス材からなる円筒体12と、基板2と同じ金属材であるアルミニウム合金材で形成されるとともに幅寸法が円筒体12の内径より小さく設定された帯板状をなす観察用プレート13(観察用部材)とを備えている。
【0034】
円筒体12は、その中心軸が内部通路6aの筒中心線C1に一致して延びる姿勢で配管本体7の内部に嵌挿可能であり、当該配管本体7に嵌挿された状態において、各端部が第1配管継手8及び第2配管継手9にそれぞれ接触する位置になっている。
【0035】
円筒体12の外周面には、当該円筒体12の内部に貫通するとともに筒中心線C1方向に間隔D1をあけて形成された一対の取付用孔14が、筒中心線C1を挟んで対称に二組形成され、各取付用孔14は、円筒体12と同じ金属材であるステンレス材からなる固定用ピン15(固定手段)を挿通可能になっている。尚、以下では、便宜上、筒中心線C1方向に間隔D1をあけて形成された一方の一対の取付用孔14をそれぞれ取付用孔14Aと呼び、他方の一対の取付用孔14をそれぞれ取付用孔14Bと呼ぶことにする。
【0036】
また、円筒体12外周面の両取付用孔14の間と両取付用孔14Bの間とには、当該円筒体12の内部に連通するとともに筒中心線C1を挟んで対称に位置する一対の観察用窓12aが形成されている。
【0037】
観察用プレート13は、円筒体12の内部にその中心軸に沿う姿勢で収容可能になっている。
【0038】
観察用プレート13には、板厚方向に貫通する一対の挿通孔13aが長手方向に間隔D1をあけて形成され、各挿通孔13aは、固定用ピン15を挿通可能になっている。
【0039】
そして、円筒体12の内部に観察用プレート13を収容すると、当該観察用プレート13の挿通孔13aは、筒中心線C1を挟んで対称に位置する取付用孔14Aと取付用孔14Bとの間に位置するようになっていて、取付用孔14A、挿通孔13a及び取付用孔14Bの順に固定用ピン15を挿通させることにより、観察用プレート13を円筒体12に固定できるようになっている。
【0040】
すなわち、円筒体12と一対の固定用ピン15とで本発明のプレート着脱部16を構成しており、両固定用ピン15を抜き差しすることで、円筒体12に観察用プレート13を着脱できるようになっている。
【0041】
円筒体12に取り付けられた観察用プレート13の領域を除く円筒体12の内部の断面積S2は、図4に示すように、流通路2aの断面積S1と略同じに設定されている。
【0042】
また、図2及び図4に示すように、円筒体12が透明な配管本体7の内方に取り付けられるとともに、各観察用窓12aが円筒体12の内部に取り付けられた観察用プレート13に対応する位置になっているので、配管本体7の外側から観察用プレート13を観察できるようになっている。
【0043】
次に、本発明の実施形態1の腐食検査器具1を用いたヒートシンク10内部の腐食状態の検査方法について詳述する。
【0044】
まず、被冷却体に対してヒートシンク10を取り付ける際、流通路2aの液体冷媒を流入させる側の端部に流入管5aを接続する一方、流通路2aの液体冷媒を流出させる側の端部に腐食検査器具1の第1配管継手8を接続するとともに第2配管継手9に流出管5bを接続した後、流通路2aに液体冷媒を循環させる。すると、円筒体12の内部に取り付けられた観察用プレート13は、内部通路6aを通過する液体冷媒に常に浸された状態になる。
【0045】
作業者は、例えば、予め決めた所定の期間毎に腐食検査器具1の配管本体7を目視で確認する。すると、配管本体7は、透明な樹脂材で形成されているので、配管本体7の内部に収容された円筒体12を見ることができる。円筒体12の外周面には、当該円筒体12の内部を観察可能な観察用窓12aが形成されているので、作業者は、ヒートシンク10の稼働を止めることなく円筒体12の内部に取り付けられた観察用プレート13の状態を目視で観察できる。本発明の腐食検査器具1の検査用配管6は、ヒートシンク10に連続しており、また、検査用配管6の内部通路6aに位置する観察用プレート13とヒートシンク10の基板2とが同じアルミニウム合金材で形成されているので、液体冷媒が循環する基板2の流通路2aと検査用配管6の内部通路6aに位置する観察用プレート13とが同じ状態で劣化していくようになる。したがって、観察用プレート13を観察用窓12aから観察することで基板2の内部の腐食状態を知ることができる。このように、本発明の腐食検査器具1は、ヒートシンク10の内部の状態を知るための目視検査のような簡易的な検査を、簡単に、且つ、効率良く実施することができる。
【0046】
作業者は、ヒートシンク10内部の腐食状態について、例えば、電子顕微鏡での観察や成分分析等の詳細な検査を実施する場合、ヒートシンク10の稼働を停止させて基板2の流通路2aに液体冷媒を循環させないようにした後、図5に示すように、腐食検査器具1を分解して、観察用プレート13を円筒体12の内部から取り出し、その腐食状態を検査する。このように、本発明の腐食検査器具1は、例えば周期的に検査用配管6の内部通路6aから観察用プレート13を取り出して当該観察用プレート13を観察することでヒートシンク10内部の腐食状態を精度良く推定できるので、費用をかけずに簡単に、且つ、効率的にヒートシンク10の内部の状態を検査することができる。
【0047】
また、ヒートシンク10の内部の腐食状態を詳細に検査する際の準備作業は、ヒートシンク10に接続された検査用配管6の内部から観察用プレート13を取り出すだけであるので、冷却する機器からヒートシンク10を検査のたびに取り外すといった作業の必要が無く、検査にかかる手間を少なくすることができる。
【0048】
このように、本発明の実施形態1の腐食検査器具1は、ヒートシンク10を分解することなく当該ヒートシンク10内部の簡易的な検査と詳細な検査との両方を実施することができる。
【0049】
また、プレート着脱部16によって観察用プレート13を検査用配管6の内部通路6aに着脱できるので、検査用配管6の内部通路6aから観察用プレート13を取り外して腐食状態を確認した後、確認後の観察用プレート13を検査用配管6の内部通路6aにおける取り外す前と同じ位置に戻せるようになる。したがって、定期的な検査を行いながらヒートシンク10内部の腐食状態を精度良く推定することができる。
【0050】
また、観察用プレート13は、配管本体7の内部に嵌挿された円筒体12の内部にその中心軸に沿って延びる姿勢となるように収容されているので、内部通路6aの断面において配管本体7の内部に取り付ける円筒体12及び観察用プレート13の占める領域が狭くなる。したがって、観察用プレート13が液体冷媒に浸された状態で当該液体冷媒が内部通路6aをスムーズに流れるようになるので、ヒートシンク10の性能を低下させることなくヒートシンク10の内部の腐食状態を検査することができる。
【0051】
また、腐食検査器具1におけるヒートシンク10との接続部分から観察用プレート13の固定部分まで(第1配管継手8、円筒体12及び固定用ピン15)が同じ金属材で形成されたものになるとともに互いに接触した状態になり、さらには、観察用プレート13がヒートシンク10との接続箇所である第1配管継手8から離れた位置になる。したがって、例えば、IEGTのような漏れ電流が発生する高電圧機器にヒートシンク10を接触させて当該ヒートシンク10の流通路2aを流れる液体冷媒によって高電圧機器を冷却するような場合であっても観察用プレート13に電荷が集中しなくなり、観察用プレート13がヒートシンク10の内部と同じ速さで腐食していくようになるので、ヒートシンク10の内部の検査を精度良く実施することができる。
【0052】
さらに、円筒体12に取り付けられた観察用プレート13の領域を除く円筒体12の内部の断面積S2が流通路2aの断面積S1と略同じに設定されているので、ヒートシンク10の流通路2aを流れる流体の流動状態、特に流速と、円筒体12の内部を流れる液体冷媒の流動状態とが同じか、或いは、同等になる。したがって、ヒートシンク10の内部の腐食進度と観察用プレート13の腐食進度とが略同じになるので、ヒートシンク10の内部の検査をさらに精度良く行うことができる。
【0053】
また、本発明の実施形態1では、円筒体12及び固定用ピン15が金属材であるステンレス材で形成されているが、これに限らず、例えば、非金属材である樹脂材で形成されたものであってもよい。もし仮に、ヒートシンク10で冷却する被冷却体から漏れ電流が発生しないような場合には、円筒体12及び固定用ピン15を樹脂材で形成可能であるとともに、観察用プレート13の固定位置は円筒体12の内部に限定されない。
【0054】
また、本発明の実施形態1では、円筒体12を用いて観察用プレート13を配管本体7の内側に着脱するようになっているが、その他の手段を用いて観察用プレート13を配管本体7の内側に着脱するようにしてもよい。
【0055】
また、本発明の実施形態1では、円筒体12の外周面に2つの観察用窓12aが形成されているが、観察用窓12aは1つだけ形成されていてもよいし、3つ以上形成されていてもよい。
【0056】
《発明の実施形態2》
図6乃至図8は、本発明の実施形態2の腐食検査器具1を示す。この実施形態2は、配管本体7内部に検査ユニット11ではなく、円筒状をなす観察用パイプ17(観察用部材)が着脱可能に嵌挿されている点が実施形態1と異なっている以外は実施形態1と同様であるので、実施形態1と同様の部分には同じ符号を付し、その他、異なる部分のみを説明する。
【0057】
観察用パイプ17は、流通路2aにおいて第1配管継手8が接続される部分(図1のX1部分)の腐食状態を検査するものであり、基板2と同じ金属材であるアルミニウム合金材で形成されている。
【0058】
観察用パイプ17は、図7及び図8に示すように、断面凹状をなす第1半割体17a及び第2半割体17bからなっている。
【0059】
観察用パイプ17の一端から他端に亘る管内通路の断面形状Zは、流通路2aにおいて第1配管継手8が接続される部分の断面形状に一致する形状になっている。
【0060】
観察用パイプ17の管内通路における一側半分の断面形状Z1は、中央部分が管中心線に一致する長方形状をなす一方、他側半分の断面形状Z2は、中央部分が管中心線から偏心する円形状をなしている。
【0061】
そして、観察用パイプ17は、図7に示すように、配管本体7の内側に嵌挿させると、観察用パイプ17の管内通路が検査用配管6の内部通路6aに沿うようになっていて、流通路2aを流通する液体冷媒が観察用パイプ17の管内通路を通過するようになっている。
【0062】
以上のように、本発明の実施形態2の腐食検査器具1によると、ヒートシンク10の流通路2aにおいて第1配管継手8が接続する部分を流れる液体冷媒の流動状態と観察用パイプ17の管内通路を流れる液体冷媒の流動状態とを同じ状態にできるので、流通路2aにおいて第1配管継手8が接続する部分の腐食進度と観察用パイプ17の内面の腐食進度とが同じになる。このように、ヒートシンク10内部において腐食進度を観察したい領域の断面形状を観察用パイプ17の内部に再現しておくことで、ヒートシンク10内部の特
定領域を精度良く検査することができる。
【0063】
また、検査用配管6から取り外した観察用パイプ17が第1半割体17aと第2半割体17bとの半割れ状態になるので、観察用パイプ17の内面の状態を確認するために観察用パイプ17を覗き込む必要が無くなる。したがって、作業者は観察用パイプ17の腐食状態を簡単に確認することができる。
【0064】
尚、本発明の実施形態2では、観察用パイプ17の管内通路の断面形状Zを流通路2aにおいて第1配管継手8が接続する部分の断面形状に一致させているが、流通路2aにおいてその他の腐食状態を観察したい所定の領域の断面形状に一致させるようにしてもよい。
【0065】
また、本発明の実施形態2では、観察用パイプ17を半割れ構造にしているが、半割れ構造にするのが必須ではない。
【0066】
また、本発明の実施形態1,2では、配管本体7が透明な樹脂材で形成されているが、透明でなくてもよく、他の材料で形成されていてもよい。
【0067】
また、本発明の実施形態1,2では、腐食検査器具1がアルミニウム合金材で形成された基板2の内部の腐食状態を検査しているが、腐食検査器具1は、その他の材料で形成された基板2の内部の腐食状態も検査することができる。
【0068】
また、本発明の実施形態1,2の腐食検査器具1は、基板2の流通路2aにおける液体冷媒の流出側の端部に接続されているが、流通路2aにおける液体冷媒の流入側の端部に接続しても検査を実施することができる。
【0069】
また、本発明の腐食検査器具1は、ヒートシンク10内部の腐食状態の検査に適用したが、液体や気体に関わらず内部に熱媒体のような流体を循環させるその他の機器の内部の腐食状態を検査するのにも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、例えば、ヒートシンクの如き機器の内部に形成された熱媒体が循環する流通路の腐食状態を検査する腐食検査器具に適している。
【符号の説明】
【0071】
1 腐食検査器具
2a 流通路
6 検査用配管
6a 内部通路
7 配管本体
8 第1配管継手
9 第2配管継手
10 ヒートシンク(被検査体)
12 円筒体
12a 観察用窓
13 観察用プレート(観察用部材)
15 固定用ピン(固定手段)
16 プレート着脱部
17 観察用パイプ(観察用部材)
C1 筒中心線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8