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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】治具及びこれを用いた画像処理システム
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/00 20060101AFI20240528BHJP
【FI】
G01B11/00 H
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020211049
(22)【出願日】2020-12-21
(65)【公開番号】P2022097851
(43)【公開日】2022-07-01
【審査請求日】2023-10-16
(73)【特許権者】
【識別番号】599016785
【氏名又は名称】株式会社シーマイクロ
(74)【代理人】
【識別番号】100167047
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸典
(74)【代理人】
【氏名又は名称】石原 昌典
(72)【発明者】
【氏名】岩本 裕
【審査官】佐藤 久則
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-008876(JP,A)
【文献】特開2008-032449(JP,A)
【文献】特表昭62-503121(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03418681(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元カメラシステムにおいて、システム座標系に対するカメラの自己位置を推定するために、撮影対象物の撮影よりも前に前記撮影対象物の代わりに撮影されるべき治具であって、該治具は、
撮影時に前記カメラから前記治具へ向かうべき方向を基準として、前記カメラから見て、基礎平面と、前記基礎平面と一定の距離を保って異なる高さを有する第一平面と、さらに前記基礎平面及び前記第一平面と異なる高さを有する第二平面と、を備え、
前記基礎平面と前記第一平面とは共通して、その高さが、前記カメラから見て上下方向に亘って漸次高く又は低く形成されており、
前記第二平面は、前記基礎平面及び前記第一平面と異なる角度をもって、前記カメラから見て上下方向に亘って、その高さが漸次低く、高く又は一定に形成されており、
前記基礎平面と、前記第一平面と、前記第二平面との少なくとも一つが、前記カメラから見て上下方向に亘って横幅が漸次広く又は狭くなるように形成されている治具。
【請求項2】
請求項1に記載の治具であって、
前記第二平面の高さが、前記基礎平面と前記第一平面との間の高さであって、且つ、前記基礎平面と前記第一平面とに対して、前記カメラから見て上下方向が入れ替わるように漸次低く又は高く形成されている治具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の治具であって、
撮影時に前記カメラから前記治具へ向かうべき方向を基準として、前記カメラから見て、
前記基礎平面を構成する平面部として、中央部に中央平面部を、
前記第一平面を構成する平面部として、左端部及び右端部に第一左平面部及び第一右平面部を、
前記第二平面を構成する平面部として、前記中央平面部及び前記第一左平面部の間に第二左平面部を、前記中央平面部と前記第一右平面部の間に第二右平面部を、備える治具。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の治具であって、
回転機構を備えて前記撮影対象物の移動方向の軸回りに回転可能に構成されており、
前記基礎平面と、前記第一平面と、前記第二平面とからなる一組の統合平面を、該治具を回転させることで順次複数の前記カメラで撮影可能な治具。
【請求項5】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の治具であって、
前記基礎平面と、前記第一平面と、前記第二平面とからなる一組の統合平面を、異なる位置に二組以上備える治具。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載の治具と、
前記カメラと、
前記カメラによって撮影した前記治具のプロファイルデータを取得するプロファイル取得部と、前記プロファイルデータに基づいて前記カメラの自己位置を算出する処理部とを有する画像処理装置と、
を備える画像処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、システム座標系に対するカメラの自己位置を推定するための治具及びこれを用いた画像処理システムに関し、より詳しくは、対象ワーク(撮影対象物)に対して複数台の3Dカメラで外周の全部又は一部を撮影(撮像)するように構成されている3Dカメラシステムにおいて、システム座標系に対する各カメラの自己位置を簡易・高速に推定するための治具及びこれを用いた画像処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
対象ワークに対して複数台の3Dカメラで外周の全部又は一部を撮影するように構成されている3Dカメラシステム等において、従来のシステムでは、カメラの位置情報の基礎パラメータを取得するために、何らかの固定パターンの治具を撮影して取得したプロファイルを見ながら、カメラの位置を逆推定する必要が生じていた。また、従来の他のシステムでは、専用の治具をスライダーまたはベルトコンベア等で搬送し、その形状を各3Dカメラで撮影することで自己位置を推定していた。従来用いられている専用の治具の一例を図24に示す。図24に示される治具400は、平板401に円形の穴402を開けてなるものであり、平板401の平面と穴402の位置を用いてキャリブレーションを行っていた。しかしながら、その場合は搬送系とカメラを組み合わせた状態で行う必要があり、事前に設置調整を行っておくことが難しかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明は、カメラシステムの中央部に設置・固定した状態で、各カメラで同時に又は順次撮影するのみで自己位置の推定を行うことができる治具、及びこれを用いた画像処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題を解決するために、本発明に係る治具は、撮影時にカメラから治具へ向かうべき方向を基準として、カメラから見て、基礎平面と、基礎平面と一定の距離を保って異なる高さを有する第一平面と、さらに基礎平面及び第一平面と異なる高さを有する第二平面と、を備え、基礎平面と第一平面とは共通して、その高さが、カメラから見て上下方向に亘って漸次高く又は低く形成されており、第二平面は、基礎平面及び第一平面と異なる角度をもって、カメラから見て上下方向に亘って、その高さが漸次低く、高く又は一定に形成されており、基礎平面と、第一平面と、第二平面との少なくとも一つが、カメラから見て上下方向に亘って横幅が漸次広く又は狭くなるように形成されている。
【0005】
また、本発明に係る治具は、第二平面の高さが、基礎平面と第一平面との間の高さであって、且つ、基礎平面と第一平面とに対して、カメラから見て上下方向が入れ替わるように漸次低く又は高く形成されていても良い。
【0006】
また、本発明に係る治具は、撮影時にカメラから治具へ向かうべき方向を基準として、カメラから見て、基礎平面を構成する平面部として、中央部に中央平面部を、第一平面を構成する平面部として、左端部及び右端部に第一左平面部及び第一右平面部を、第二平面を構成する平面部として、中央平面部及び第一左平面部の間に第二左平面部を、中央平面部と第一右平面部の間に第二右平面部を、備えても良い。
【0007】
また、本発明に係る治具は、回転機構を備えて撮影対象物の移動方向の軸回りに回転可能に構成されており、基礎平面と、第一平面と、第二平面とからなる一組の統合平面を、該治具を回転させることで順次複数のカメラで撮影可能としても良い。
【0008】
また、本発明に係る治具は、基礎平面と、第一平面と、第二平面とからなる一組の統合平面を、異なる位置に二組以上備えても良い。
【0009】
また、本発明に係る画像処理システムは、治具と、カメラと、カメラによって撮影した治具のプロファイルデータを取得するプロファイル取得部とプロファイルデータに基づいてカメラの自己位置を算出する処理部とを有する画像処理装置とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、カメラシステムの中央部に設置・固定した状態で、各カメラで同時に又は順次撮影するのみで自己位置の推定を行うことができる治具、及びこれを用いた画像処理システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る治具の斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る治具の平面図である。
図3】本発明の実施形態に係る治具の側面図である。
図4】本発明の実施形態に係る画像処理システムである。
図5】本発明の実施形態に係る画像処理装置において自己位置を推定する処理フローである。
図6】本発明の実施形態に係るカメラシステムを三次元で示した図である。
図7】本発明の実施形態に係る画像処理装置において自己位置を推定する処理を示した図である。
図8】本発明の実施形態に係る画像処理装置において自己位置を推定する処理を示した図である。
図9】本発明の実施形態に係る画像処理装置において自己位置を推定する処理を示した図である。
図10】本発明の実施形態に係る画像処理装置において自己位置を推定する処理を示した図である。
図11】本発明の実施形態に係る画像処理装置において自己位置を推定する処理を示した図である。
図12】本発明の実施形態に係る画像処理装置において自己位置を推定する処理を示した図である。
図13】本発明の実施形態に係る画像処理装置において自己位置を推定する処理を示した図である。
図14】本発明の実施形態に係る画像処理装置において自己位置を推定する処理を示した図である。
図15】本発明の実施形態に係る画像処理装置において自己位置を推定する処理を示した図である。
図16】本発明の実施形態に係る画像処理装置において自己位置を推定する処理を示した図である。
図17】本発明の実施形態に係る画像処理装置において自己位置を推定する処理を示した図である。
図18】本発明の実施形態に係る画像処理装置において自己位置を推定する処理を示した図である。
図19】本発明の実施形態に係る画像処理装置において自己位置を推定する処理を示した図である。
図20】本発明の実施形態に係る画像処理装置において自己位置を推定する処理を示した図である。
図21】本発明の実施形態に係る画像処理装置において自己位置を推定する処理を示した図である。
図22】本発明の実施形態に係る画像処理装置において自己位置を推定する処理を示した図である。
図23】本発明の他の実施形態に係る治具の斜視図である。
図24】従来の治具の一例を示した斜視図である。
図25】本発明の他の実施形態に係る治具の斜視図である。
図26】本発明の他の実施形態に係る治具の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る治具並びに画像処理システムの構成を説明する。なお、各図を通して、同一の参照符号が付されているものは、同一または同等のものである。
【0013】
まず、図1乃至図3を参照しながら、撮影対象物の撮影よりも前に撮影対象物の代わりに撮影される、本発明に係る治具100について説明する。
【0014】
図1は、本発明に係る治具100を示す斜視図である。また、図2は、本発明に係る治具100を示す平面図である。また、図3は、本発明に係る治具100を示す側面図である。なお、以下の説明における上側もしくは上とは、図2における上側(図1では左手前側)を指し示し、下側もしくは下とは、図2における下側(図1では右奥側)を指し示す。また、図3は、当該図における左側が図1における左手前側にあたり、当該図における右側が図1における右奥側にあたる。図示されるように、治具100は、中央部に中央平面部101を、左端部に第一左平面部102を、右端部に第一右平面部103を、中央平面部101と第一左平面部102との間に第二左平面部104を、中央平面部101と第二左平面部103との間に第二右平面部105とを備えている。また、中央平面部101(便宜上、基礎平面と呼ぶ。)と、第一平面を構成する第一左平面部102及び第一右平面部103(即ち、第一左平面部102及び第一右平面部103は第一平面という同一平面上にある。)と、第二平面を構成する第二左平面部104及び第二右平面部105(即ち、第二左平面部104及び第二右平面部105は第二平面という同一平面上にある。)とは、それぞれ異なる高さをもって構成されている。また、第二左平面部104及び第二右平面部105は、中央平面部101と、第一左平面部102及び第一右平面部103との間の高さをもって構成されている。また、中央平面部101と、第一左平面部102と、第一右平面部103とは、共通して、上側から下側に向かって横幅が漸次狭くなるように構成されており、また、上側から下側に向かって高さが漸次低くなるように(換言すると、側面から見てカメラとの距離が漸次遠くなるような角度をもって)構成されている。また、第二左平面部104と、第二右平面部105とは、共通して、中央平面部101と、第一左平面部102と、第一右平面部103とに対して上下方向が入れ替わるように、上側から下側に向かって横幅が漸次広くなるように構成されており、また、上側から下側に向かって高さが漸次高くなるように(換言すると、側面から見てカメラとの距離が漸次近くなるような角度をもって)構成されている。なお、中央平面部101と、第一平面を構成する第一左平面部102及び第一右平面部103とは、平行になるように(換言すると、側面から見て、中央平面部101と、第一平面を構成する第一左平面部102及び第一右平面部103とが一定の距離を保つようにしてそれらの間の高さが一定となるような角度をもって)構成されている。また、第二平面を構成する第二左平面部104及び第二右平面部105は、カメラのレーザー平面と治具100のヨー角が0度のときに中央平面部101と平行になるように(換言すると、治具100のヨー角が0度のときにカメラのレーザー平面が中央平面部101のレーザー平面と平行になるように)構成されている(ヨー角の定義は後述する。)。
【0015】
ここで、図1乃至図3に示す治具100は、上下左右から四台のカメラで同時に撮影できるように構成された状態を示している。具体的には、基礎平面と、第一平面と、第二平面とからなる一組の平面部(統合平面と呼ぶ。)を異なる位置に四組備えている。そのため、横(右又は左)から撮影するカメラにおいては、参照符号201で示す平面が中央平面部101にあたり、参照符号202で示す平面が第一左平面部101にあたり、参照符号203で示す平面が第一右平面部103にあたり、参照符号204で示す平面が第二左平面部104にあたり、参照符号205で示す平面が第二右平面部105にあたる。なお、治具100は、撮影対象物の移動方向の軸回りに回転可能とする回転機構、例えば、軸やベアリングを備えても良い。治具100が回転機構を備えることで、統合平面を一組のみ備える場合であっても、治具100を回転させることで順次複数台のカメラで撮影し、各カメラの自己位置を推定することができる。必要により、回転機構としてギヤやモーターをさらに備えることで、治具100を自動的に回転可能としても良い。
【0016】
なお、図1乃至図3では、中央平面部101が最も高く(換言すると、側面から見てカメラとの距離が最も近く)、また、第一平面を構成する第一左平面部102及び第一右平面部103が最も低く(換言すると、側面から見てカメラとの距離が最も遠く)構成されているが、これと反対に、中央平面部101が最も低く、また、第一平面を構成する第一左平面部102及び第一右平面部103が最も高く構成されていても良い。このように構成することで、レーザーの死角の発生を防ぐことができる。また、図1乃至図3では、中央平面部101と、第一左平面部102と、第一右平面部103とが、共通して、上側から下側に向かって横幅が漸次狭くなるように構成されており、また、上側から下側に向かって高さが漸次低くなるように構成されているが、これと反対に、中央平面部101と、第一左平面部102と、第一右平面部103とが、共通して、図25及び図26に示すように、上側から下側に向かって横幅が漸次広くなるように構成され、また、上側から下側に向かって高さが漸次高くなるように構成されていても良い。これは、第二左平面部104と、第二右平面部105とについても同様である。また、図1乃至図3では、治具100は、中実のごとく示されているが、内部が空洞の中空であっても良く、また、軸(図示せず)を挿通できるような穴が形成されていても良い。また、治具100の素材については特に限定されず、例えば金属やプラスチックなどから適宜選択して良い。また、治具100の製法についても特に限定されず、例えば削り出しや鋳造などから適宜選択して良い。また、治具100は、例えば各平面部を有する部品ごとに分解可能であっても良く、この場合、各部品を別々に設置してカメラで撮影しても良い。
【0017】
治具100の構成についてさらに補足すると、図1乃至図3では、中央平面部101、第一左平面部102、第一右平面部103、第二左平面部104及び第二右平面部105のいずれもが上側から下側に向かって横幅が漸次広く又は狭くなるように形成されているが、これに限定せず、中央平面部101、第一左平面部102、第一右平面部103、第二左平面部104及び第二右平面部105の少なくとも一つが上側から下側に向かって横幅が漸次広く又は狭くなるように形成されていても良い。あるいは、基礎平面(中央平面部101)、第一平面及び第二平面の少なくとも一つが上側から下側に向かって横幅が漸次広く又は狭くなるように形成されていても良い。また、中央平面部101が左方向又は右方向にシフトして形成されていても良く、中央平面部101が左方向又は右方向にシフトされていることで第二左平面部104と第二右平面部105とが一体化して形成されていても良い。
【0018】
治具100の構成についてさらに補足すると、図1乃至図3では、第二平面(第二左平面部104及び第二右平面部105)は、基礎平面(中央平面部101)と、第一平面(第一左平面部102及び第一右平面部103)との間の高さをもって構成されているが、第二平面の高さは、必ずしも基礎平面と、第一平面との間の高さでなくても良い。また、図1乃至図3では、第二左平面部104と、第二右平面部105とは、共通して、中央平面部101と、第一左平面部102と、第一右平面部103とに対して上下方向が入れ替わるように、上側から下側に向かって高さが漸次高くなるように(換言すると、側面から見てカメラとの距離が漸次近くなるような角度をもって)構成されているが、少なくとも、側面から見たときの角度が、中央平面部101と、第一左平面部102と、第一右平面部103と異なっていれば良い。即ち、第二左平面部104と、第二右平面部105とは、中央平面部101と、第一左平面部102と、第一右平面部103とに対して側面から見たときの角度が異なっていれば、中央平面部101と、第一左平面部102と、第一右平面部103と同様に上側から下側に向かって高さが漸次低くなるように構成されていても良く、図25及び図26に示すように上側から下側に向かって高さが一定に(換言すると、側面から見てカメラとの距離が一定となるような水平の角度をもって)構成されていても良い。第二左平面部104と、第二右平面部105とが、上側から下側に向かってその高さが一定に構成されていると、後述するZ座標の算出が簡易となる。
【0019】
次に、図4を参照しながら、本発明に係る画像処理システム150について説明する。
【0020】
図4は、本発明に係る画像処理システム150を示すブロック図である。図示されるように、画像処理システム150は、治具100と、一台以上のカメラ120と、画像処理装置140とを備えている。
【0021】
カメラ120は、ラインスキャンカメラなどの撮像装置であり、治具100にレーザーなどの光を投光する投光部121と、投光部121から投光されて治具100において反射した光を、レンズ123を介して受光する受光部122とを備えている。
【0022】
画像処理装置140は、記憶部141と、制御部142と、投光制御部143と、受光制御部144と、プロファイル取得部145と、処理部146と、出力部147とを備えている。
【0023】
記憶部141は、RAM(ランダムアクセスメモリ)、ROM(リードオンリーメモリ)、ハードディスク又は半導体メモリなどによって構成され、カメラ120の自己位置を演算・算出・推定するプログラムなどの各種プログラムを記憶している。
【0024】
制御部142は、例えばCPU(中央演算処理装置)であり、制御部142が記憶部141に記憶されたプログラムを実行することにより、処理部146を含む画像処理装置140の各種機能部が実現される。なお、画像処理装置140の各種機能部の一部又は全部が、電子回路などのハードウェアによって実現されて良い。
【0025】
投光制御部143は、投光部121の光の照射タイミングや光の強度などを制御する。
【0026】
受光制御部144は、受光部122の光の受光タイミングなどを制御する。
【0027】
プロファイル取得部145は、受光部122より出力された受光量の分布や、キーボードなどの入力手段(図示せず)からの入力・指令に基づいて、治具100のプロファイルを示すデータを取得する。
【0028】
処理部146は、プロファイル取得部145によって取得されたプロファイルデータに対する演算処理などの処理を行う。ここで、演算処理とは、プロファイルデータに基づいて当該プロファイルデータに係るカメラ120の自己位置を演算・算出・推定する処理である。
【0029】
出力部147は、処理部146による処理結果を、ディスプレイなどの外部装置(図示せず)などに出力する。
【0030】
次に、図5を参照しながら、本発明に係る画像処理装置140の処理部146において自己位置を推定する処理の流れを説明する。
【0031】
図5は、本発明に係る画像処理装置140の処理部146において自己位置を推定する処理の流れを示すフロー図である。まず、処理部146は、ステップS160において、ピッチ角を算出する。次に、ステップS161において、ヨー角を算出する。次に、ステップS162において、ロール角を算出する。次に、ステップS163において、暫定のZ座標を算出する。次に、ステップS164において、X座標及びY座標を算出する。次に、ステップS165において、Z座標を算出する。
【0032】
ここで、図6を参照しながら、ピッチ角、ヨー角、ロール角、Z座標、X座標及びY座標の定義について、説明する。
【0033】
図6は、本発明に係る画像処理システム150における治具100とカメラ120(カメラシステムと呼ぶ。)を三次元で示した図である。図示されるように、XYZ座標系において、X、Y及びZは、治具100の原点(上側の側面の中心)と、カメラ原点との位置関係を表し、また、ピッチ角、ヨー角及びロール角は、治具100の原点から垂直に立てた基準軸に対するカメラ軸(カメラのレーザー射出口を基準として、射出するレーザーの中心となる線)の傾きをオイラー角で表す。治具100の表面上に表されている五つの線(A、B、C、D及びE)は、それぞれ、治具100に対してレーザーを照射して得られた、中央平面部101、第二右平面部105、第二左平面部104、第一右平面部103及び第一左平面部102のプロファイルである。なお、各角度及び各座標方向は、図6において矢印で示す方向をプラス方向とする。
【0034】
次に、図7乃至図22を参照しながら、図5に示す各ステップの処理について説明する。
【0035】
ステップS160「ピッチ角算出」
【0036】
まず、ピッチ角を算出する。
ピッチ角は、図7に示すように、A面と、D面及びE面との間の距離Hを求めることでピッチ角を算出することができる(B面及びC面は図示していない。)。
この場合、A面の線と、D面及びE面を結んだ線とに直交する線の高さHを求める必要がある。
これは、ピッチ角以外にロール角又はヨー角がある場合、プロファイルが斜めになるためである。
ピッチ角が0度の場合、X度の場合とで、プロファイルを側方から見たイメージを図8に示す。
なお、治具100には予め傾きを付けている。治具100には予め傾きを付けている。これは、水平の場合だと、ピッチ角を算出しようとするとプラスマイナスのどちらに傾いているかが判別できないためである。よって、治具100の傾き角以上にピッチ角が付いている場合は、この方法では補正できない(ただし、手動でプラスマイナスを指定するような手法であれば可能である)。
治具100のA面と、D面及びE面との間の高さは既知である(Hmとする。)ため、仮に治具100の傾き角と同じ量のピッチ角が付いている場合は、
H=Hm
である。
このとき、
H×cos(θ+θm)=Hm
が成り立つ。よって、
θ=arccos(Hm/H)-θm
を計算すれば、ピッチ角を求めることができる。
【0037】
ステップS161「ヨー角算出」
【0038】
次に、ヨー角を算出する。
ヨー角の算出には、A面、D面及びE面に加えて、B面及びC面を使用する。
まず、A面、D面及びE面は、ヨー角がある場合でも必ず平行となる。
一方で、B面及びC面は、ヨー角がある場合は、A面、D面及びE面に対して傾斜する
その際のA面、D面及びE面との角度を、図9に示すようにθyとすると、θyは、ヨー角が大きくなるとそれに従って増加する。
仮に、ヨー角が90度ある場合は、θyは90度となる。
治具100のA面、D面及びE面の平面と、B面及びC面の平面との角度を20度とした場合に、スロープ部分のみ(レーザー輝線Xが映っている面がC面とする)を抽出したイメージを、図10に示す。
このとき、ヨー角は図10に示す図形上のθを真上から見た場合の角度(θyaw)である。
レーザー輝線Xを図10に示す図形に当てはめるには、プロファイルから、図10に示す図におけるF及びHを求めなければならない。
ここで、X、F及びHの関係を示すと、図11のようになる(A面、D面及びE面が傾いている場合は、その面も傾ける必要がある。)。
よって、
θyaw=arctan(K/F)(ここで、K=H/tan(20°))
となり、ヨー角が計算できる。
なお、プロファイルはピッチ角がある場合にZ方向が伸びるため、ヨー角を求める場合にはピッチ角によるZの変位を以下より計算しておく必要がある。
Zの変位量Z'=Z×cos(θpitch)
【0039】
ステップS162「ロール角算出」
【0040】
次に、ロール角を算出する。
ロール角の算出には、A面、D面及びE面を使用する。
D面及びE面は同一平面上にあり、A面とD面及びE面とは、平行となっている。
治具100に対してロール角が0度のときは、それぞれの面は水平となり、傾きがある場合はその傾きがロール角となる。
ただし、ただし、ヨー角がある場合も同様に傾きが発生するため、得られた暫定ロール角からヨー角及びピッチ角の影響を差し引く必要がある。
予め付けられた治具100の傾き角をθmとし、ヨー角θyawとピッチ角θpitchがある場合の、A面、D面及びE面への影響は、図13のように示すことができる。
図13における平面に対するカメラ軸Uは、
θm-θpitch
となる。
そこで、カメラ軸を中心にヨー角θyawを回転させると、平面に対して斜めの輝線が得られる。この場合の基準軸(Z軸)と直交する正面方向から見た場合(図13における手前側に表した大きな矢印方向)の輝線の傾きθfを、以下より求める。
θf=arctan(tan(θyaw)×tan(θm-θpitch))
【0041】
ステップS163「暫定Z座標算出」
【0042】
次に、暫定のZ座標を算出する。
ここで、X、Y及びZの座標は、システム全体の原点と、カメラ原点(出力プロファイル:X=0、Z=0)とのズレを各方向成分に分解したものである。
Z座標の推定は、治具100のA面とD面及びE面との間の高さで行う。Z=0の平面を図示すると、仮に、A面とD面及びE面の面とがZ=0の平面と平行の場合は、比較的単純に計算できる。
しかし、本発明に係る治具100では、全ての面はZ=0の平面と一定の角度を持っているため、Y方向の座標が決定していない状態では、一意に決めることができない。
具体的には、図14において、Y軸がZ=0の平面となるが、どの面もY軸と平行にはなっていない。
よって、まずは図15に示すように、A、D面及びE面と平行で、且つ、原点を通過する仮想のY軸を設定し、その仮想のY軸上の点、即ち、暫定のZ座標(暫定Z座標)の算出を行う。
図16に示すように、A面とD面及びE面との間の高さをH1、D面及びE面と仮想のZ=0の平面との間の高さをH2とした場合、この高さは既知であるため、H1:H2の比率も既知となる。
図16から、実際に取得されるプロファイルのイメージを表したのが図17である。
このとき、ピッチ角が付いている場合は、H1とH2は本来と異なる値に伸びるが、比率は変わらない。
よって、ピッチ角による影響を補正すれば、暫定のZ座標を求めることができる。
【0043】
ステップS164「X座標及びY座標算出」
【0044】
次に、X座標及びY座標を算出する。
まず、Y座標の算出は以下の方法で行う。即ち、Y座標はピッチ角の影響を受けるため、まずは暫定のY座標を求める。
治具100は真上から見ると図18に示すような形状となっている。
このとき、得られるプロファイルのX座標(図18における点PO)は、Y方向に大きくなるにつれ、左右に広がる。反対に、点PBのX座標は、狭くなる。
ここで、X方向の幅に影響を及ぼす回転角は、ヨー角のみとなる。
また、ヨー角がある場合には、X座標のみが変化するだけで、幅が変化する。よって、X座標のオフセットを考慮して、幅を求めなければならない。
一例を図19に示す。
図19に示されるように、点PO同士を結んだ線のどこかに、D面及びE面とカメラのX=0の座標(点PB)が存在する。その場合、その点を中心にヨー角から逆算すると、点PGの位置を推定することができる。
なお、そのとき二つの点PGの中心点とX=0の点との水平位置が暫定X座標(Xw)となる。
同様に、X座標がオフセットされると、レーザー輝線は、上下方向に移動したように見える。その場合も、X=0の点を中心にヨー角を補正すると、点PGが得られる。これは、X座標のオフセットにかかわらず、同一の点となる(極端にX座標をオフセットした図を図20に示すが、実際には、これだけオフセットしているとレーザー輝線が治具100の影になって見えないため、計測はできない。)。
同様の計算を他の点でも実施し、暫定Y座標群とする。
この暫定Y座標は、例えば図20に示す図であれば、D面及びE面のプロファイルの直線上のX=0の点の位置が原点に対してどれだけオフセットしているかを示している。
ピッチ角がない場合は、この暫定Y座標は、Y座標と同一となる。
ピッチ角が0度のときと、10度のときの、A面とD面及びE面のY座標と暫定Y座標の位置関係を図21に示す。
ピッチ角が0度のときは、Y=0の面とカメラ軸とが平行のため、暫定Y座標は、Y座標と等しい。
ピッチ角が10度のときは、暫定Y座標をカメラ軸に対して延長した点(カメラX=0,Z=0)と、Y=の平行距離がY座標となる。暫定Y座標でのX座標及びZ座標は分かっているため、単純に、tanθpitchを計算すれば良い。
同様に、暫定X座標は、暫定Y座標に対応したX座標のため、ロール角がある場合は、X方向に応じてズレていく。この時点で、A面とD面及びE面が、Z=0の平面とどれだけ離れているかはまだ不定のため、この時点では、X座標はまだ確定することはできない。
【0045】
ステップS165「Z座標算出」
【0046】
次に、Z座標を算出する。
Z座標は、Y座標が得られたら、暫定Z座標(Zw)から計算することができる。
その際の計算は、図22に示すように、
Z=Y×tanθm+Zw
となる。
この時点でX座標以外の全てのパラメータが確定したことになる。よって、X座標は、暫定Z座標、ロール角及びZ座標から用意に算出することができる。
【0047】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変が可能である。
【0048】
例えば、本発明に係る治具は、図23に示す治具300のように、統合平面を120度おきに三組備えて、三台のカメラで同時に撮影できるよう構成しても良い。
【符号の説明】
【0049】
100 治具
101 中央平面部
102 第一左平面部
103 第一右平面部
104 第二左平面部
105 第二右平面部
120 カメラ
121 投光部
122 受光部
123 レンズ
140 画像処理装置
141 記憶部
142 制御部
143 投光制御部
144 受光制御部
145 プロファイル取得部
146 処理部
147 出力部
150 画像処理システム
300 治具
400 治具
401 平板
402 穴
500 治具
図1
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