IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ノボマー, インコーポレイテッドの特許一覧

特許7495123ポリプロピオラクトンフィルム及びその製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】ポリプロピオラクトンフィルム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/285 20190101AFI20240528BHJP
   B29C 48/32 20190101ALI20240528BHJP
   B29C 48/08 20190101ALI20240528BHJP
   B29C 48/10 20190101ALI20240528BHJP
   B29C 48/21 20190101ALI20240528BHJP
   B29C 48/40 20190101ALI20240528BHJP
   B29C 48/305 20190101ALI20240528BHJP
   B29C 55/28 20060101ALI20240528BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20240528BHJP
   C08J 3/12 20060101ALI20240528BHJP
   C08G 63/08 20060101ALI20240528BHJP
   B29K 67/00 20060101ALN20240528BHJP
   B29L 7/00 20060101ALN20240528BHJP
【FI】
B29C48/285
B29C48/32
B29C48/08
B29C48/10
B29C48/21
B29C48/40
B29C48/305
B29C55/28
B32B27/36
C08J3/12 A CFD
C08G63/08
B29K67:00
B29L7:00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020543848
(86)(22)【出願日】2019-04-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-26
(86)【国際出願番号】 US2019025184
(87)【国際公開番号】W WO2019195168
(87)【国際公開日】2019-10-10
【審査請求日】2022-03-02
(31)【優先権主張番号】62/654,197
(32)【優先日】2018-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511046391
【氏名又は名称】ノボマー, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バキル,ウツパル・マヘンドラ
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-526317(JP,A)
【文献】特開2018-052955(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105903090(CN,A)
【文献】国際公開第2010/147176(WO,A1)
【文献】米国特許第05882787(US,A)
【文献】特開2000-238194(JP,A)
【文献】特開平06-313063(JP,A)
【文献】特開平11-268751(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/00 - 48/96
B32B 1/00 - 43/00
C08J 3/00 - 3/28
C08J 99/00
C08G 63/00 - 64/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
80℃~160℃の温度でPPLポリマーを押し出す工程、及び
押し出された前記PPLポリマーをブロー成形してフィルムを形成する工程
を含
前記PPLポリマーが100,000g/モル~200,000g/モルの平均分子量(M )を有する、フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記フィルムが多層である、請求項に記載の方法。
【請求項3】
押出成形されたポリプロピオラクトン(PPL)を含むフィルムであって、
(a)少なくとも60%(w/w)のバイオコンテンツを有し、
(b)100%まで堆肥化可能であり、
(c)800MPa~1100MPaの引張弾性率の範囲を有し、
(d)25MPa~35MPaの引張破断強度の範囲を有し、若しくは
(e)440%~660%の破断伸度の範囲を有し、又は
(a)~(e)の任意の組合せ
を有し、
前記PPLが、100,000g/モル~200,000g/モルの平均分子量(M )を有するフィルム。
【請求項4】
包装材料として使用する、請求項に記載のフィルム。
【請求項5】
生物を原料とし、堆肥化可能なフィルムからアクリル酸を製造する方法であって、
請求項3又は4に記載のフィルムを提供する工程、及び
前記フィルムの少なくとも一部を熱分解しアクリル酸を製造する工程
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年4月6日に出願された米国仮特許出願第62/654,197号に基づく優先権及びその利益を主張するものであり、該出願を参照することにより、該出願全体を本明細書の一部として援用する。
【0002】
本開示は、一般的に高分子フィルムに関し、より具体的には生物学的起源に由来する場合があるポリプロピオラクトン(PPL)フィルムに関する。そのようなPPLフィルムは、例えば包装用途を含む様々な用途での使用に適する場合がある。
【背景技術】
【0003】
従来のポリオレフィンフィルムは、多くの用途で一般的に使用される。従来のポリオレフィンフィルムの使用には多くの問題点がある。例えば、従来のポリオレフィンフィルムは、一般的に再使用及び/又は再生利用できない。さらに、従来のポリオレフィンフィルムの製造では高温を必要とする結果、エネルギー原単位が高い工程となり、規模的に望ましくない場合がある。
【0004】
従って、当分野には、従来のポリオレフィンフィルムの代替としての新規フィルム、好ましくは再使用、再生利用が可能であり、より経済的に工業規模で製造できるフィルムの開発が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書ではポリプロピオラクトン(PPL)フィルムの製造方法を提供する。得られるフィルムは、従来のポリオレフィンフィルムを上回る多数の利点を有する。例えば、ある変形形態において、本明細書の方法に従って製造されるフィルムは、従来フィルムより低い温度でほとんど熱分解もなく押出成形(例えば、インフレーション成形を含む)を受け得る。本明細書の方法から得られるフィルムは、再使用及び/又は再生利用も可能である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
いくつかの態様において、極低温でPPLを粉砕して粉末を形成する工程、及びこの粉末を押出成形してフィルムを形成する工程を含むフィルムの製造方法を提供する。いくつかの変形形態において、PPLを極低温で粉砕する工程は、極低温でPPLを冷却した後、冷却PPLを粉砕する工程を含んでもよい。
【0007】
本方法のいくつかの変形形態において、押出成形は約80℃~約160℃の温度で実施される。他の変形形態において、粉末は、フィルムを製造するために、溶融押出、流延押出、若しくはインフレーション成形、又はこれらの任意の組合せを経てもよい。
【0008】
他の態様において、PPLポリマーの混合物を混練する工程、及びこの混合物をブロー成形してフィルムを形成する工程を含むフィルムの製造方法が提供される。一変形形態において、PPLポリマーの混合物は異なる平均分子量(M)を有する2以上のPPLポリマーを含む。
【0009】
他の態様において、本明細書に記載する方法のいずれかに従って製造されるフィルムを提供する。PPLが再生可能な供給原料から得られるいくつかの変形形態において、得られるフィルムは少なくとも60%(w/w)のバイオコンテンツ(biocontent)を有し、並びに/又は得られるフィルムは最大100%堆肥化可能である。
【0010】
本明細書に記載のフィルムは、包装材料として使用され、又はさらに包装材料に加工され得る。そのような包装材料には、例えば収縮包装が含まれてもよい。
【0011】
さらに他の態様において、アクリル酸の製造方法であって、本明細書に記載する方法のいずれかに従うフィルムを提供する工程、及びこのフィルムの少なくとも一部分を熱分解し(thermolyzing)、アクリル酸を製造する工程を含む製造方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の記載は、例示的な方法、パラメータ等を示す。かかる記載は、本開示の範囲を限定する意図はないが、例示的な実施形態の記載として提供されることが認識されるべきである。
【0013】
いくつかの態様において、フィルムの製造方法が提供される。いくつかの実施形態において、フィルムは、極低温でポリプロピオラクトン(PPL)を粉砕して粉末を形成し、この粉末を押出成形してフィルムを形成することにより製造され得る。ある態様において、本明細書に記載する方法のいずれかに従って製造されるフィルムも提供される。いくつかの変形形態において、フィルムを製造するために使用されるPPLが、生物学的起源から得られることにより、製造フィルムも同様に生物学的起源となり得る。他の変形形態において、得られるフィルムは堆肥化も可能である。
【0014】
そのようなフィルムを製造するために使用される方法及び原料、並びにフィルムの特性をさらに詳細に以下に記載する。
【0015】
フィルムの製造方法
いくつかの態様において、極低温でポリプロピオラクトン(PPL)を粉砕して粉末を形成する工程、及びこの粉末を押出成形してフィルムを形成する工程を含むフィルムの製造方法を提供する。
【0016】
PPL
いくつかの実施形態において、PPLは中間分子量PPL(MMW PPL)である。他の実施形態において、PPLは高分子量PPL(HMW PPL)である。
【0017】
いくつかの変形形態において、PPLは、約100,000g/モル~約200,000g/モルの平均分子量(M)を有する。いくつかの変形形態において、PPLは、約120,000g/モル~約150,000g/モルの平均分子量(M)を有する。他の変形形態において、PPLは、約800,000g/モル~約1,000,000g/モルの平均分子量(M)を有する。
【0018】
使用するPPLは、市販で入手してもよく、又は当分野で知られる任意の方法に従って製造してもよい。いくつかの変形形態において、PPLは、BPLを重合し、PPLを形成することにより得てもよい。ある変形形態において、PPLは、エチレンオキシドと一酸化炭素とをカルボニル化触媒の存在下で反応させてBPLを形成し、BPLを重合させてPPLを形成することにより得てもよい。他の変形形態において、PPLは、エチレンオキシドをカルボニル化してBPLを形成し、BPLを重合させてPPLを形成することにより得てもよい。
【0019】
使用するPPLは、再生可能な供給原料から得てもよい。例えば、PPLがエチレンオキシド及び一酸化炭素から製造される場合、当分野で知られる方法を用いて、エチレンオキシド及び一酸化炭素のいずれか又は両方を再生可能な供給原料から得てもよい。PPLが一部又は全て再生可能な供給原料から得られる場合、そのようなBPLから製造されるPPLは、0%(w/w)より大きいバイオコンテンツを有する。原料のバイオコンテンツを測定するための種々の技術が当分野で知られている。例えば、いくつかの変形形態において、原料のバイオコンテンツは、ASTM D6866法を用いて測定してもよい。この方法により、加速器質量分析、液体シンチレーション測定及び同位体質量分析による放射性炭素分析を用いて原料のバイオコンテンツを測定できる。バイオコンテンツの結果は、100%相当を107.5pMC(パーセント現代炭素)、0%相当を0pMCに割り当てることにより導き出せる。例えば、99pMCと測定される試料は、93%に相当するバイオコンテンツ結果となるであろう。一変形形態において、バイオコンテンツは、ASTM D6866改訂版12(即ち、ASTM D6866-12)に従って決定してもよい。他の変形形態において、バイオコンテンツは、ASTM-D6866-12の方法Bの手順に従って決定してもよい。原料のバイオコンテンツを評価する他の技術は、米国特許第3,885,155号、第4,427,884号、第4,973,841号、第5,438,194号及び第5,661,299号、並びにWO2009/155086号に記載されている。
【0020】
PPL粉末の製造
本明細書に記載する方法においては、PPLは、極低温で粉砕し、PPL粉末を形成してもよい。極低温でのPPLの粉砕は、一段階又は二段階で行える。
【0021】
いくつかの実施形態において、極低温でのPPLの粉砕は、極低温での冷却とPPLの粉砕とを一段階で含む。いくつかの変形形態において、PPLは、約-50℃~約-300℃、約-50℃~約-275℃、約-50℃~約-150℃、約-100℃~約-200℃、又は約-125℃~約-150℃の温度で極低温で粉砕される。いくつかの変形形態において、極低温でのPPLの冷却とPPLの粉砕とを一段階に組み合わせることにより、PPL粉末の混合特性を改良し得る。ある変形形態において、極低温でのPPLの冷却とPPLの粉砕とを一段階に組み合わせることにより、ほとんど熱分解がなく製造されるフィルムを得られる。
【0022】
他の実施形態において、極低温でのPPLの粉砕は二段階で行う。まずPPLを極低温で冷却した後、極低温で冷却したPPLを粉砕し、粉末を形成する。いくつかの変形形態において、PPLは、約-50℃~約-275℃、約-50℃~約-150℃、約-100℃~約-200℃、又は約-125℃~約-150℃の温度まで極低温で冷却される。
【0023】
PPL粉末の特性
いくつかの実施形態において、粉末は、粉砕されたPPLの粒子を含む。いくつかの実施形態において、粉末は、微細に粉砕されたPPLの粒子を含む。いくつかの実施形態において、粉末は実質的に均一なサイズの微細に粉砕されたPPLの粒子を含む。いくつかの実施形態において、粉末は、約300μm~約3,000μm、約500μm~約2,000μm、又は約700μm~約1,000μmの粒径を有する粒子を含む。
【0024】
ある変形形態において、微細に粉砕されたPPLの粒子を含む粉末を用いることにより、より好適に粉末を混合し得る。ある変形形態において、微細に粉砕されたPPLの粒子を含む粉末を用いることは、粉末を押出機へより好適に供給するのに役立ち得る。
【0025】
極低温でのPPLの粉砕により製造される粉末は、特定のかさ密度を有する。いくつかの実施形態において、粉末は、押出機への供給に適したかさ密度を有する。
【0026】
PPLフィルムの製造
本明細書に記載の方法において、極低温でPPLを粉砕することにより製造される粉末は、フィルムを製造するために押出成形される。種々の押出技術がフィルムを製造するために用いられ得る。いくつかの実施形態において、溶融押出、流延押出又はインフレーション成形が用いられ得る。
【0027】
押出成形を実施する温度は、用いる押出技術に応じて異なる場合がある。例えば、溶融押出が用いられるいくつかの変形形態において、押出成形は約80℃~約160℃の温度範囲で実施される。
【0028】
いくつかの変形形態において、極低温でポリプロピオラクトン(PPL)を粉砕して粉末を形成する工程、この粉末を押出機に供給する工程及びこの粉末を押出機で加工しフィルムを形成する工程を含む方法が提供される。いくつかの変形形態において、粉末を押出機で加工する工程は、この粉末を溶融して溶融PPLを形成する工程を含む。
【0029】
いくつかの実施形態において、押出機は、約10℃の供給温度である。他の実施形態において、押出機は、約50℃~約170℃又は約50℃~約110℃のバレル温度である。さらに他の実施形態において、押出機は、約110℃~約170℃のダイ温度、又は約110℃若しくは約170℃のダイ温度である。さらに他の実施形態において、押出機は、約110℃~約166℃のフィルムダイ温度、又は約110℃、約160℃、若しくは約160℃のフィルムダイ温度である。
【0030】
本明細書に記載の方法において、種々の押出機を使用してもよい。いくつかの変形形態において、溶融押出機、平行二軸押出機、又はスリットダイを含む押出機を使用してもよい。
【0031】
ある変形形態において、溶融PPLは、本明細書に記載の押出条件下で最小限の熱分解しか受けない。一変形形態において、溶融PPLは、本明細書に記載の押出条件下で最小限の熱分解を受け、熱分解によりアクリル酸を生じる。一変形形態において、溶融PPLには、5重量%未満、4重量%未満、3重量%未満、2重量%未満又は1重量%未満のアクリル酸を含む。他の変形形態において、5重量%未満、4重量%未満、3重量%未満、2重量%未満又は1重量%未満のアクリル酸が溶融PPLで検出される。
【0032】
他の方法
他の変形形態において、粉末は、ブロー成形され、バルク包装用途での使用に適切な大きな直径及び/又は幅の広いフィルムを製造し得る。例えば、一態様において、極低温でPPLを粉砕して粉末を形成する工程、及びこの粉末をブロー成形してフィルムを形成する工程を含むフィルムの製造方法を提供する。
【0033】
他の態様において、PPLポリマーの混合物を混練する工程、及びこの混合物をブロー成形してフィルムを形成する工程を含むフィルムの製造方法が提供される。いくつかの実施形態において、PPLポリマーの混合物は、異なる平均分子量(M)を有する2以上、3以上、4以上又は5以上のPPLポリマーを含む。いくつかの変形形態において、PPLポリマーの混合物は、異なる平均分子量(M)を有する2、3又は4のPPLポリマーを含む。
【0034】
いくつかの実施形態において、PPLポリマーの少なくとも1つは、中間分子量PPL(MMW PPL)である。他の実施形態において、PPLポリマーの少なくとも1つは、高分子量PPL(HMW PPL)である。いくつかの変形形態において、PPLポリマーの少なくとも1つは、約100,000g/モル~約200,000g/モルの平均分子量(M)を有する。いくつかの変形形態において、PPLポリマーの少なくとも1つは、約120,000g/モル~約150,000g/モルの平均分子量(M)を有する。いくつかの変形形態において、PPLポリマーの少なくとも1つは、約800,000g/モル~約1,000,000g/モルの平均分子量(M)を有する。
【0035】
一態様において、前述の方法に従って製造されるフィルムが提供される。一変形形態において、製造されるフィルムは多層である。
【0036】
PPLフィルム
ある態様において、本明細書に記載する方法のいずれかに従って製造されるフィルムが提供される。他の態様において、一定のバイオコンテンツ及び堆肥化能(compostability)、並びに一定の機械特性及び物性を有するPPLフィルムが提供される。
【0037】
バイオコンテンツ
本明細書に記載の方法に従って製造されるフィルムは再生可能な供給原料から得られる。例えば、使用するPPLが一部又は全て再生可能な供給原料から得られる場合、そのようなPPLから製造されるPPLフィルムは、0%(w/w)より大きなバイオコンテンツを有する。上述するように、原料のバイオコンテンツを測定するための種々の技術が当分野で知られている。
【0038】
いくつかの実施形態において、フィルムは、少なくとも10%(w/w)、少なくとも20%(w/w)、少なくとも30%(w/w)、少なくとも40%(w/w)、少なくとも50%(w/w)、少なくとも60%(w/w)、少なくとも70%(w/w)、少なくとも80%(w/w)、少なくとも90%(w/w)、少なくとも95%(w/w)、少なくとも96%(w/w)、少なくとも97%(w/w)、少なくとも98%(w/w)、少なくとも99%(w/w)、少なくとも99.5%(w/w)、少なくとも99.9%(w/w)、少なくとも99.99%(w/w)若しくは100%(w/w)、又は約80%(w/w)~約100%(w/w)、約90%(w/w)~約100%(w/w)若しくは約95%(w/w)~約100%(w/w)のバイオコンテンツを有する。
【0039】
堆肥化能
いくつかの実施形態において、本明細書の方法に従って製造されるフィルムは、従来のポリオレフィンフィルムを含む従来のフィルムより優れた堆肥化能特性を有する。
【0040】
いくつかの変形形態において、フィルムは、10%まで、20%まで、30%まで、40%まで、50%まで、60%まで、70%まで、80%まで、90%まで若しくは100%まで、又は約80%~約100%、約90%~約100%、若しくは約95%~約100%堆肥化可能であり得る。
【0041】
フィルム特性
いくつかの実施形態において、フィルムは、約800MPa~1100MPa、又は約835MPa~約1065MPaの引張弾性率を有する。他の実施形態において、フィルムは、約0.5GPa~約3.6GPa、約1GPa~1.5GPa又は約1GPa~1.1GPaの引張弾性率を有する。
【0042】
いくつかの実施形態において、フィルムは、約20MPa~約35MPa、又は約25MPa~約35MPaの引張破断強度を有する。他の実施形態において、フィルムは、約5MPa~約50MPa、約10MPa~40MPa又は約20MPa~約30MPaの引張破断強度を有する。
【0043】
いくつかの実施形態において、フィルムは、約300%~800%、約400%~約700%、又は約440%~約660%の破断伸度を有する。他の実施形態において、フィルムは、約0.1%~1000%、約50%~700%、100%~700%、200%~600%、約500%~700%又は約600%~約700%の破断伸度を有する。
【0044】
いくつかの実施形態において、フィルムは、約-150℃~約70℃、約-50℃~約0℃、又は約-30℃~約-10℃、又は約-20℃のガラス転移温度(T)を有する。
【0045】
他の実施形態において、フィルムは、約50℃~約180℃、約60℃~約150℃、約70℃~100℃又は約70℃~約80℃の溶融温度(T)を有する。
【0046】
さらに他の実施形態において、フィルムは最大約50%の結晶化度を有する。一変形形態において、結晶化度は示差走査熱量測定により測定される。
【0047】
いくつかの変形形態において、フィルムは均一である。
【0048】
他の変形形態において、フィルムは多層である。
【0049】
本明細書に記載するPPLフィルムのいずれの特性も、あらゆる組合せを個々に列挙する場合と同様に組み合わされ得ることが理解されよう。例えば、いくつかの実施形態において、(a)少なくとも90%のバイオコンテンツ、(b)約835MPa~約1065MPaの引張弾性率、(c)約25MPa~約35MPaの引張破断強度の範囲若しくは(d)約440%~約660%の破断伸度の範囲、又は(a)~(d)の任意の組合せを有するフィルムを提供する。
【0050】
本明細書の「約」のつく値又はパラメータについての言及は、その値又はパラメータ自体を対象にする実施形態を含む(並びに記載する)ことが理解されよう。例えば、「約x」について言及する記載には、「x」自体の記載が含まれる。他の例において、他の測定に関連して用いられる場合、又は値、単位、定数、又は値の範囲を変更するために用いられる場合の「約」という用語は、+/-10%の変動を指す。
【0051】
本明細書の「~」のつく2つの値又はパラメータについての言及は、これらの2つの値又はパラメータ自体を含む実施形態を含む(並びに記載する)ことも理解されよう。例えば、「x~y」について言及する記載には、「x」及び「y」自体の記載を含む。
【0052】
PPLフィルムの使用
包装
本明細書に記載のPPLフィルムは、再生利用及び/又は再使用が可能であり、種々の用途での使用に適し得る。例えば、いくつかの変形形態において、PPLフィルムは包装(例えば、包装製品など)に使用してもよい。例えば、一変形形態において、フィルムは、包装材料として使用される、又はさらに包装材料に加工される。他の実施形態において、フィルムは収縮包装として使用される。そのようなフィルムは再生利用可能な収縮包装であってもよい。
【0053】
アクリル酸の製造
いくつかの実施形態において、フィルムは、熱分解を受けてアクリル酸を生じ得る。例えば、フィルムを包装材料として使用した後、そのような包装材料を、アクリル酸を製造するために使用してもよい。
【0054】
一態様において、アクリル酸の製造方法であって、本明細書に記載する方法のいずれかに従うフィルムを製造する工程、及びこのフィルムを熱分解し、アクリル酸を製造する工程を含む製造方法を提供する。
【実施例
【0055】
下記の実施例は、単に例示なものであって、決して本開示のいずれの態様をも限定する意図はない。
【0056】
[実施例1]
2等級のポリプロピオラクトン(PPL)フィルムの製造及び特性評価
この実施例は、中間分子量PPL及び高分子量PPLからのフィルム製造を実証するものである。
【0057】
一方のフィルムは中間分子量PPLから製造し、他方のフィルムは下記の一般的な手法に従って、高分子量PPLから製造した。PPLは極低温で粉砕し、押出機への供給に適した所望のかさ密度の粉末を得た。PPL粉末の両ロットは、別々の押出試験で平行二軸押出機を用いてフィルムに溶融押出した。PPLの加工温度は80℃~160℃までであり、一般的にフィルム用途で使用される他の熱可塑性樹脂よりはるかに低い。かかる加工温度により、商業生産でのエネルギーを有意に削減できる。押出成形中、アクリル酸の臭気は検出されなかった。従って、押出成形の工程中に明らかなPPLの熱分解はなかったことが示唆される。
【0058】
この実施例に記載する2つの異なる等級のPPLフィルムを押出成形するための代表的な押出機温度プロファイルは、下記の通りである。
【0059】
【表1】
【0060】
押出成形後、製造される両フィルムは均一であり、以下の表1に要約される機械特性を示すことが認められた。
【0061】
【表2】
【0062】
MMW PPLとは中間分子量PPLから作製されたPPLフィルムを指す。
【0063】
HMW PPLとは高分子量PPLから作製されたPPLフィルムを指す。
【0064】
[実施例2]
ポリプロピオラクトン(PPL)フィルムの製造及び特性評価
本実施例において、PPLフィルムは一般的に実施例1で上述した手法に従って製造した。PPLを溶融押出し、以下の表2に要約される下記特性を有するフィルムを製造した。
【0065】
【表3】