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特許7495131木柱のジャッキアップによる家屋修繕方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】木柱のジャッキアップによる家屋修繕方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/06 20060101AFI20240528BHJP
【FI】
E04G23/06 B
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021091150
(22)【出願日】2021-05-31
(65)【公開番号】P2022183706
(43)【公開日】2022-12-13
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】517219443
【氏名又は名称】株式会社山翠舎
(74)【代理人】
【識別番号】100078695
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 司
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100154748
【弁理士】
【氏名又は名称】菅沼 和弘
(72)【発明者】
【氏名】山上 浩明
【審査官】櫻井 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-312160(JP,A)
【文献】特公昭56-049270(JP,B2)
【文献】特開平06-081492(JP,A)
【文献】登録実用新案第3189210(JP,U)
【文献】特開2002-303051(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G23/02、23/06
E04H9/02
E02D27/34、35/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
家屋を構成する木柱のうち、沈下が生じている木柱に垂直または略垂直方向に持ち上げるための凸部材を固定し、隣り合う2本の木柱の前記凸部材に固定部材を架渡し、凸部材を垂直または略垂直方向に持ち上げることで、木柱を垂直または略垂直方向に持ち上げ、これにより、木柱と木柱との間の距離を一定にしつつ、さらに、木柱を同時に持ち上げることを特徴とした木柱のジャッキアップによる家屋修繕方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木柱のジャッキアップによる家屋修繕方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建造から相当な年数が経過している古民家等の家屋をリフォームすることで、住宅資源を有効活用する技術は既に提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-59539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば古民家など建造から相当な年数が経過している家屋は、地盤沈下等により一部に歪みが生じているものも多い。このような場合には、地盤沈下等が生じている箇所の木柱と、その木柱を支持する礎石との間に木片等をかませることで歪みを矯正する手法が用いられることがある。ただし、この手法を用いる際、木柱をむやみに持ち上げると、家屋の床、壁、梁等に意図しない歪みが生じ、破損するおそれがある。これに対して、特許文献1に記載された技術を含め従来の技術では、家屋を構成する床、壁、梁等に破損を生じさせることなく一部の歪みを効率良く矯正する手法について何ら検討がなされていない状況にあった。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、家屋を構成する床、壁、梁等に歪みを生じさせることなく一部の歪みを効率良くかつ安価に矯正することができる木柱のジャッキアップによる家屋修繕方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は家屋を構成する木柱のうち、沈下が生じている木柱に垂直または略垂直方向に持ち上げるための凸部材を固定し、隣り合う2本の木柱の前記凸部材に固定部材を架渡し、凸部材を垂直または略垂直方向に持ち上げることで、木柱を垂直または略垂直方向に持ち上げ、これにより、木柱と木柱との間の距離を一定にしつつ、さらに、木柱を同時に持ち上げることを要旨とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、家屋を構成する床、壁、梁等に破損を生じさせることなく一部の歪みを効率良くかつ安価に矯正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の対象となる家屋の外観の例を示す図である。
図2】本発明の使用の流れを示す図である。
図3図1の家屋を構成する複数の木柱のうち、本発明の対象となる木柱の側面を示す図である。
図4図3の木柱の正面を示す図である。
図5】本発明により歪みが矯正された様子を示す図である。
図6図1の家屋を構成する複数の木柱のうち、本発明の対象となる2本の木柱の正面を示す図である。
図7図6の木柱の正面を示す図である。
図8】木柱に2つの凸部材を固定させた場合の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0010】
まず、図1乃至図5を参照して、本発明の木柱のジャッキアップによる家屋修繕方法の概要について説明する。
【0011】
図1は、本発明の対象となる家屋の外観の例を示す図である。
図2は、本発明の流れを示す図である。
図3は、図1の家屋を構成する複数の木柱のうち、本発明の対象となる木柱の側面を示す図である。
図4は、図3の木柱の正面を示す図である。
図5は、本発明により歪みが矯正された様子を示す図である。
【0012】
図1に示すように、床Eの歪みを矯正するための修繕が必要になった家屋Bは、地面Gに対して垂直又は略垂直方向に配置された複数の木柱Pや、床Eを含むように構成されている。また、それ以外にも、家屋Bを構成する要素には、壁、梁、垂木等が含まれる。
【0013】
家屋Bに生じた歪みを矯正するための修繕を担当する施工者は、家屋Bに生じた歪みが、複数の木柱Pのうち少なくとも一部の木柱Pが沈下により生じたものであるか否かを判断する(ステップS1)。家屋Bに生じた歪みが、複数の木柱Pのうち少なくとも一部の木柱Pが沈下により生じたものでないと判断された場合には(ステップS1がNO)、本修繕方法は行われないので終了する。
【0014】
ここで、施工者が、家屋Bを構成する複数の木柱Pのうち、一部木柱P及び礎石Vに沈下が生じていると判断したとする(ステップS1がYES)。この場合、施工者は、図3及び図4に示すように、沈下が生じている箇所の木柱の所定の位置に、木柱Pを垂直または略垂直方向(例えば図3の矢印の方向)に持ち上げるための凸部材Dを固定する(ステップS2)。
凸部材Dとは、その部材(部品)単体で凸状の形状を有しているという意ではなく、木柱Pに固定された際に、当該木柱Pの面を基準とすると、当該部材の箇所が当該面に対して凸状になるという意である。このように、凸部材Dは、木柱Pに固定されると、木柱Pに対して凸状となっているため持ち上げられることが可能となり、木柱Pと固定されているため、それと同時に木柱Pも持ち上げられることになる。
なお、凸部材Dの材質は特に限定されない。凸部材Dを持ち上げると、それと同時に木柱Pを垂直または略垂直方向に持ち上げることができる程度の強度を有する材質であればよい。また、凸部材Dを木柱Pに固定する手法も特に限定されない。凸部材Dを持ち上げると、それと同時に木柱Pを垂直または略垂直方向に持ち上げることができる程度の強度で木柱Pに固定されていればよい。なお、本実施形態では、凸部材Dの材質として安価な角材が採用され、凸部材Dを木柱Pに固定する手法として、凸部材D及び木柱Pに共通するネジ穴Hを1箇所に設けて、ボルトF、座金M、及びナットTで固定する手法が採用されている。
このように、木柱Pを直接持ち上げるのではなく、凸部材Dを用いることで、持ち上げるための力を駆動する図示せぬ機器にとっては、凸部材Dを容易に保持できるため容易に力を駆動することが可能になる。換言すると、木柱Pを直接持ち上げる場合には大掛かりな仕掛けが必要になるが、凸部材Dを持ち上げる場合にはそのような仕掛けは不要になる、安価になる。
さらに、凸部材Dを用いることで、木柱Pを破壊することなく(それゆえ、基石Vを破壊することなく)、家屋Bの修繕が可能となるので、安価で短工期での家屋Bの修繕が可能になる。即ち、従来の修繕方法においては、木柱Pを真下から直接持ち上げたりして、基石Vや周辺の壁面等を破壊する必要があるため、大掛かりな修繕となり、コストが高くなり、工期も長期必要であった。これに対して、本修繕方法では凸部材Dを用いるため、上述したように、このような従来の修繕方法に比較して、安価で短工期での修繕が可能となる。
また、木柱Pを直接持ち上げると木柱Pを損傷させたりする恐れがあるが、凸部材Dを用いることで、このような恐れがなくなり木柱Pを保護することができる。この点、特に木柱Pが古木(こぼく)(商標)である場合には、このような保護はとても重要である。
【0015】
ボルトF等で木柱Pに凸部材Dを固定する場合、施工者は、木柱Pの特徴に応じて、ネジ穴Hの夫々の位置、大きさ、範囲、数、及び形状を決定する。本修繕方法の適用対象となる家屋Bの特徴、及び家屋Bを木柱Pの特徴は特に限定されないが、例えば木柱Pの特徴として、建造から長い年月が経過した古民家を構成する古木(商標)であったとする。この場合には、木柱Pそのものに価値が認められるので、古木(商標)としての特徴に応じて、1以上のネジ穴Hの位置、大きさ、範囲、数、及び形状が決定される。これにより、1以上のネジ穴Hを設けることに伴い生じ得る、古木(商標)としての価値の減少を最小化させることが可能となる。なお、本実施形態では、木柱Pの下端Nから上端方向に向かって数十センチの程度の位置に、円形状のネジ穴Hが設けられている。
【0016】
ここで、「古木」(商標)について詳しく説明する。古木(商標)とは、古民家の柱や梁等に用いられていた、又は用いられる予定であった古材のうち、人々の想いや愛着が込められた上質で立派な古材であって、トレーサビリティが確保された古材のことをいう。このため、古木(商標)には、夫々固有のストーリーが存在する。一般的に、建築物は、新しければ新しいほど価値が高いとされることが多い。しかしながら、木造の建築物、及び木造の建築物を構成している木材の再利用や移築の分野では、導入先の場所や状況、利用する人によってはその古さに付加価値が見出される場合がある。即ち、木材の煤け具合や刻まれた傷等が、かえって趣を感じさせる要因となり、そのような木材(即ち古木(商標))の再利用先(例えば、住居、店舗等)では、「味(味わい)」のある佇まいが醸し出され、再利用先の魅力を向上させることがある。
【0017】
古木(商標)の「味(味わい)」とは、古木(商標)の外観の特徴に関するものであり、人に対して何らかの趣を感じさせ得る物品の様子のことをいう。「外観の特徴」とは、風合いや、外観から受ける感じ、又は手触りといったものであり、人間の五感のうち視覚及び触覚の少なくとも一方より得られる、物品の印象に関わる特徴のことをいう。具体的には、古木(商標)の「味(味わい)」には、古木(商標)の煤け具合(例えば煤けの有無、ある場合はその割合やその位置等)、色、ほぞ穴に関するもの(例えば数や位置等)、傷に関するもの(例えば数や位置等)、模様に関するもの(例えば数や位置等)、木材が棒状である場合は曲がり具合、表面の状態(例えばざらざら感、すべすべ感等の質感)等、といったものが含まれる。本修繕方法によれば、この「味(味わい)」と「ストーリー」とを有する古木(商標)の価値を毀損することなく、古木(商標)が使用された古民家の一部に生じた歪みを矯正するための施工を行うことができる。
【0018】
次に、施工者は、木柱Pに固定された凸部材Dを垂直または略垂直方向に持ち上げることで、家屋Bに生じた歪みを矯正する(ステップS3)。
従来、木柱Pを持ち上げる手法として、例えば木柱Pにロープやワイヤーを括り付けてクレーン装置等で持ち上げる手法が用いられていた。ただし、この手法では、木柱Pとクレーン装置等との間に水平方向の距離が不可避的に生じる。このため、凸部材Dを垂直または略垂直方向に持ち上げることができず、家屋Bの床E、壁、梁、垂木等に意図せぬ方向の力が加わり破損が生じてしまう。
【0019】
これに対して、本実施形態では、木柱Pに凸部材Dが固定されるので、この凸部材Dを垂直または略垂直方向に持ち上げることで、同時に木柱Pを垂直または略垂直方向に持ち上げることができる。また、施工者は、木柱Pに固定された凸部材Dを垂直または略垂直方向に持ち上げる際、家屋B全体のバランスを考慮しながら、徐々に凸部材Dを持ち上げる。具体的には例えば、家屋Bの水平状態を確認するためのレーザー水平器等が用いられる。
これにより、他の木柱P、床E、壁、梁、垂木等に意図せぬ方向に力が加わることなく、木柱Pに生じていた沈下を無駄なく修復することが可能となる。その結果、家屋Bの床E、壁、梁、垂木等に破損を生じさせることなく一部の歪みを効率良く矯正することが可能となる。
【0020】
なお、凸部材Dを垂直または略垂直方向に持ち上げる際の手法はジャッキアップの方法は特に限定されず、あらゆる手法を用いることができる。例えば、凸部材Dの下端を地面G方向から垂直または略垂直方向に押し上げる機能を有するジャッキ等の機器等を用いてもよい。また例えば、凸部材Dにフックを固定して垂直または略垂直方向に引っ張り上げる機能を有する機器等を用いてもよい。
【0021】
ここで、木柱Pが古木(商標)等であることから見栄えや強度等を確保する必要がある場合には、凸部材Dが固定された側と反対側の面等に、補助部材Jを配置させるとよい。これにより、凸部材Dが垂直または略垂直方向に持ち上げられる際に木柱Pが保護されるので、木柱Pの見栄えや強度等を確実に確保することができるようになる。木柱Pが古木(商標)ならば、その価値を維持することができる。
【0022】
次に、施工者は、家屋Bに生じた歪みを矯正させた状態で、木柱Pの上下方向の位置を固定する(ステップS4)。
具体的には、凸部材Dを垂直または略垂直方向に徐々に持ち上げると、家屋Bの一部に生じていた歪みが矯正され、それとともに、図5に示すように、木柱Pの下端Nと礎石Vとの間に距離Xの空間が形成される。施工者は、この空間に固定部材Zを噛まして木柱Pを固定する。すると、図1に示す状態であった家屋Bの一部が図5に示す状態に矯正された状態で安定する。
これにより、地面Gと床Eとの間の距離は、距離Y(図1)に距離X(図5)を加えた距離Y´(図5)になる。なお、距離Xの具体的な値は家屋Bに生じている歪みの大さに応じて異なるが、例えば数センチ乃至数十センチ程度の距離となる。
【0023】
施工者は、家屋Bの一部に生じていた歪みを矯正し、そのうえで木柱Pを固定すると、木柱Pに固定させていた凸部材Dを取り外す。凸部材Dが取り外されるとネジ穴Hが残るので、ネジ穴Hを埋めるための加工が施される。具体的には例えば、木柱Pの材質や色が近い細長い円柱形状の木材等を用いてネジ穴Hを埋める。これにより、木柱Pの見栄えや強度等を確保することができる。
ここで、木柱Pが所定年代の古木(商標)ならば、当該古木(商標)と同年代で同一樹種の木材を用いてネジ穴Hを埋めるとよい。これにより、古木(商標)の価値を保つことができる。
【0024】
次に、図6乃至図8を参照して、本発明のバリエーションについて説明する。
【0025】
図6は、図1の家屋を構成する複数の木柱のうち、本発明の対象となる2本の木柱の正面を示す図である。
図7は、図6の木柱の側面を示す図である。
【0026】
図1に示す家屋Bの一部に生じた歪みの原因は、上述した図3乃至図5に示すように、1本の木柱P及び礎石Vの沈下によるものがある。ただし、地面Gの地盤沈下等が広範囲に及んでいる場合には、隣接する複数本の木柱P及び礎石Vが沈下して家屋Bの一部に歪みが生じているものもある。その一例として、図6及び図7には、2本の木柱P及び礎石Vの沈下により生じた家屋Bの歪みを矯正する手法の概要が示されている。
【0027】
ここで、隣り合う2本の木柱P及び夫々の礎石Vの沈下により家屋Bの一部に歪みが生じていたとする。具体的には例えば、図6に示すように、木柱P1及び礎石V1と、木柱P2及び礎石V2との夫々の沈下により、家屋Bの一部に歪みが生じていたとする。このような場合、上述した図3及び図4と同様に、木柱P1及びP2の夫々に凸部材D1及びD2の夫々を固定するとともに、1本の固定部材Wを用いて木柱P1及び木柱P2を固定する。そして、固定部材Wを垂直または略垂直方向(例えば図6及び図7の矢印の方向)に持ち上げることで、木柱P1及びP2を垂直または略垂直方向に持ち上げる。これにより、木柱P1と木柱P2との間の距離を一定にしつつ、さらに、木柱P1及びP2を同時に持ち上げることができるので、他の木柱P、床E、壁、梁、垂木等に意図せぬ方向に力が加わることなく、木柱P1及び礎石V1と、木柱P2及び礎石V2との夫々に生じていた沈下を無駄なく効率良く修復することが可能となる。その結果、家屋Bの床E、壁、梁、垂木等に破損を生じさせることなく一部の歪みを効率良く矯正することが可能となる。
【0028】
図8は、木柱に2つの凸部材を固定させた場合の例を示す図である。
【0029】
本修繕方法では、木柱Pに凸部材Dが固定され、当該凸部材Dが垂直または略垂直方向に持ち上げられることで、当該木柱Pも持ち上がる。
この場合、木柱Pの一面にのみ凸部材Dが固定されると、凸部材Dを持ち上げるための力(ジャッキアップ等の力)が弱くて木柱Pがうまく持ち上がらなかったり、木柱Pに偏った力が加わり木柱Pに影響を及ぼす場合もあり得る。このような場合には、図8に示すように、木柱Pの2以上の面に夫々凸部材Dを固定してもよい。図8の例では木柱Pの対となる2面の夫々に、凸部材D1及び凸部材D2の夫々が固定されている。
【0030】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものとみなす。
【0031】
例えば、図6及び図7には、2本の木柱P1及びP2に固定部材Wを固定して、木柱P1及びP2を同時に持ち上げる例が示されているが、固定部材Wを用いて固定する木柱Pの本数は特に限定されない。3本以上の木柱Pに固定部材Wを固定して、3本以上の木柱Pを同時に持ち上げる構成とすることもできる。これにより、家屋Bの広範囲に歪みが生じている場合に対応することができる。
【0032】
また例えば、図8には、2本のボルトF1及びF2を用いて木柱Pに凸部材D1及びD2を固定する例が示されているが、ボルトFの本数は特に限定されない。3本以上のボルトFを用いて木柱Pに凸部材Dを固定する構成とすることもできる。これにより、どうしても木柱Pに太いネジ穴Hを設けることができないような事情がある場合にも対応することができる。
【0033】
以上まとめると、本発明が適用される施工法は、次のような構成を取れば足り、各種各様な実施形態を取ることができる。
即ち、本発明が適用される家屋修繕方法は、
地面(例えば図1の地面G)に対して垂直又は略垂直方向に配置された複数の木柱(例えば図1の木柱P)を有する家屋(例えば図1の家屋B)に生じた歪みを矯正する家屋修繕方法において、
前記歪みが、前記複数の木柱のうち少なくとも一部の沈下によるものであるか否かを判断する判断ステップ(例えば図2のステップS1)と、
前記判断ステップにおいて前記沈下が肯定された場合に、前記沈下が生じている箇所の木柱の所定の位置(例えば上述のネジ穴Hを設ける位置)に、当該木柱を垂直または略垂直方向に持ち上げるための凸部材(例えば図3の凸部材D)を固定する凸部材固定ステップ(例えば図2のステップS2)と、
前記木柱に固定された前記凸部材を垂直または略垂直方向に持ち上げることで前記歪みを矯正する歪み矯正ステップ(例えば図2のステップS3)と、
前記歪みが矯正された状態で前記木柱の上下方向の位置を固定する(例えば図5の固定部材Zで位置を固定する)位置固定ステップ(例えば図2のステップS4)と、
を含む。
【0034】
つまり、地面に対して垂直又は略垂直方向に配置された複数の木柱を有する家屋に生じた歪みを矯正する家屋修繕方法では、家屋の歪みが、複数の木柱のうち少なくとも一部の沈下によるものであるか否かが判断される。そして、その沈下が肯定された場合には、その沈下が生じている箇所の木柱の所定の位置に、その木柱を垂直または略垂直方向に持ち上げるための凸部材が固定される。そして、その木柱に固定された凸部材を垂直または略垂直方向に持ち上げることで家屋の歪みが矯正される。そして、家屋の歪みが矯正された状態で、その木柱の上下方向の位置が固定される。これにより、家屋を構成する木柱、床、壁、梁、垂木等に意図せぬ方向に力が加わることなく、木柱に生じていた沈下を無駄なく修復することが可能となる。その結果、家屋Bの一部に生じた歪みを効率良く矯正することができる。
【0035】
具体的には例えば、上述の実施形態では、地面Gに対して垂直又は略垂直方向に配置された複数の木柱Pを有する家屋Bに生じた歪みを矯正する家屋修繕方法では、家屋Bの歪みが、複数の木柱Pのうち少なくとも一部の沈下によるものであるか否かが判断される。そして、その沈下が肯定された場合には、その沈下が生じている箇所の木柱Pの所定の位置に、その木柱Pを垂直または略垂直方向に持ち上げるための凸部材Dが固定される。そして、その木柱Pに固定された凸部材Dを垂直または略垂直方向に持ち上げることで家屋Bの歪みが矯正される。そして、家屋Bの歪みが矯正された状態で、その木柱Pの上下方向の位置が固定される。これにより、木柱P、床E、壁、梁、垂木等に意図せぬ方向に力が加わることなく、木柱Pに生じていた沈下を無駄なく修復することが可能となる。その結果、家屋Bの一部に生じた歪みを効率良く矯正することができる。
【0036】
また、木柱Pを垂直または略垂直方向に持ち上げるためには、当該木柱Pに対して、木材等の凸部材Dが固定され、当該凸部材Dがジャッキアップ等により垂直または略垂直方向に持ち上げるといった簡便な方法で済むため、安価に家屋Bの修繕(歪みの矯正)が可能になる。 さらに、凸部材Dを用いることで、木柱Pを破壊することなく(それゆえ、基石Vを破壊することなく)、家屋Bの修繕が可能となるので、安価で短工期での家屋Bの修繕が可能になる。即ち、従来の修繕方法においては、木柱Pを真下から直接持ち上げたりして、基石Vや周辺の壁面等を破壊する必要があるため、大掛かりな修繕となり、コストが高くなり、工期も長期必要であった。これに対して、本修繕方法では凸部材Dを用いるため、上述したように、このような従来の修繕方法に比較して、安価で短工期での修繕が可能となる。
【0037】
また、前記歪み矯正ステップでは、
前記凸部材を垂直または略垂直方向に持ち上げることにより生じ得る、前記家屋を構成する複数の部品(例えば上述した床E、壁、梁、垂木等)の夫々の損傷が最小化されることが考慮されるようにすることができる。
【0038】
つまり、家屋の歪みを矯正する際には、木柱に固定された凸部材を垂直または略垂直方向に持ち上げることにより生じ得る、その家屋を構成する複数の部品の夫々の損傷が最小化されることが考慮されるようにすることができる。これにより、木柱、床、壁、梁、垂木等に意図せぬ方向に力が加わることなく、木柱に生じていた沈下を無駄なく修復することが可能となる。
【0039】
具体的には例えば、上述の実施形態では、家屋Bの歪みを矯正する際には、木柱Pに固定された凸部材Dを垂直または略垂直方向に持ち上げることにより生じ得る、家屋Bを構成する複数の部品の夫々の損傷が最小化されることが考慮されるようにすることができる。これにより、木柱P、床E、壁、梁、垂木等に意図せぬ方向に力が加わることなく、木柱Pに生じていた沈下を無駄なく修復することが可能となる。
【0040】
また、前記凸部材固定ステップでは、
前記木柱の特徴に応じて、当該木柱に前記凸部材を固定するための1以上の通し穴(例えば図1のネジ穴H、図8のネジ穴H1及びH2)の夫々の位置、大きさ、範囲、数、及び形状が決定されるようにすることができる。
【0041】
つまり、対象となる木柱の特徴に応じて、その木柱に凸部材を固定するための1以上の通し穴の夫々の位置、大きさ、範囲、数、及び形状が決定されるようにすることができる。これにより、可能な限り木柱に設ける通し穴を小さくしたい事情がある場合に対応することができる。
【0042】
具体的には例えば、上述の実施形態では、木柱Pの特徴に応じて、木柱Pに凸部材Dを固定するための1以上のネジ穴Hの夫々の位置、大きさ、範囲、数、及び形状が決定されるようにすることができる。これにより、可能な限り木柱Pに設けるネジ穴Hを小さくしたい事情がある場合に対応することができる。
【0043】
また、前記凸部材固定ステップでは、
前記木柱の特徴として、建造から所定期間が経過した家屋(例えば上述した「古民家」等)を構成する古材(例えば上述した「古木(商標)」)であることが認められた場合には、古材としての特徴に応じて、前記1以上の通し穴の前記位置、前記大きさ、前記範囲、前記数、及び前記形状が決定されるようにすることができる。
【0044】
つまり、対象となる木柱の特徴として、建造から所定期間が経過した家屋を構成する古材であることが認められた場合には、古材としての特徴に応じて、1以上の通し穴の位置、大きさ、範囲、数、及び形状が決定されるようにすることができる。これにより、古材の価値を毀損しないように通し穴の位置、大きさ、範囲、数、及び形状を決定することができる。
【0045】
具体的には例えば、上述の実施形態では、対象となる木柱Pの特徴として、建造から所定期間が経過した古民家を構成する古木(商標)であることが認められた場合には、古木(商標)としての特徴に応じて、1以上のネジ穴Hの位置、大きさ、範囲、数、及び形状が決定されるようにすることができる。これにより、古木(商標)である木柱Pの価値を毀損しないようにネジ穴Hの位置、大きさ、範囲、数、及び形状を決定することができる。
【符号の説明】
【0046】
B・・・家屋、P,P1,P2・・・木柱、D,D1,D2・・・凸部材、V,V1,V2・・・礎石、E・・・床、G・・・地面、H,H1,H2・・・ネジ穴、F,F1,F2・・・ボルト、T,T1,T2・・・ナット、M,M1,M2・・・座金、J・・・補助部材,N・・・木柱の下端、W・・・固定部材、Z・・・固定部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8