(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】最適化システム、最適化方法、プログラム、リチウム二次電池用電解液、及び、リチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0567 20100101AFI20240528BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20240528BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240528BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20240528BHJP
H01M 12/08 20060101ALI20240528BHJP
G01N 27/42 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/0568
H01M10/052
H01M10/0569
H01M12/08 K
G01N27/42 M
(21)【出願番号】P 2022561282
(86)(22)【出願日】2021-08-12
(86)【国際出願番号】 JP2021029699
(87)【国際公開番号】W WO2022102188
(87)【国際公開日】2022-05-19
【審査請求日】2022-12-05
(31)【優先権主張番号】P 2020187676
(32)【優先日】2020-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(72)【発明者】
【氏名】松田 翔一
(72)【発明者】
【氏名】袖山 慶太郎
(72)【発明者】
【氏名】ラムバール ギヨム
【審査官】井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-121609(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0287218(US,A1)
【文献】国際公開第2019/093161(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/189252(WO,A1)
【文献】Shoichi MATSUDA, Kiho NISHIOKA, Shuji NAKANISHI,High-throughput combinatorial screening of multi-component electrolyte additives to improve the perf,Scientific Reports,Springer Science and Business Media LLC,2019年04月17日,9,6211,doi:10.1038/s41598-019-42766-x
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M、G01N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
六フッ化リン酸リチウム、ホウフッ化リチウム、リチウムビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、過塩素酸リチウム、臭化リチウム、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(V)、リチウムビスオキサレートボラート、塩化リチウム、フッ化リチウム、ジメチルカーボネート、1,2-ジメトキシエタン、1,3-ジオキソラン、及びビニレンカーボネートのいずれかの添加剤を含む添加剤リストから複数の添加剤を選択して組合せてなる電解液の配合を探索するための最適化システムであって、
配合Aに基づき、前記電解液を調製して、前記電解液の
クーロン効率を測定して測定値を得る評価部と、
初期データセットに基づき、局所探索法を用いて、前記添加剤リストから複数の添加剤を組合わせて前記配合Aを生成する、局所探索部と、
前記配合A、及び、それに対応する前記測定値を含むデータセットをベイズ最適化法に適用して、前記添加剤リストから複数の添加剤を組合わせて新たな配合Bを生成する配合生成部と、
前記配合Aを前記配合Bにより更新する更新部と、
予め定められた終了条件が満たされたか否かを判定する終了判定部と、を有し、
前記終了条件が満たされるまで、前記配合Bの生成と、前記配合Aの更新と、前記電解液の調製と、前記測定と、を含む処理を繰り返す、最適化システム。
【請求項2】
更に、リスト更新部を有し、
前記リスト更新部は、
前記電解液における使用割合が閾値を超えて頻用される添加剤を頻用添加剤として検知し、前記添加剤リストから前記頻用添加剤を除いた更新済みリストを生成し、前記添加剤リストを更新する、請求項1に記載の最適化システム。
【請求項3】
前記評価部は、複数種類の前記電解液がそれぞれ収容されて配列される複数個のリアクタに対して移動可能に設けられた挿入デバイスと、
前記複数個のリアクタに収容された複数種類の前記電解液に挿入可能に前記挿入デバイスに取り付けられた第1電極と、
前記挿入デバイス、又は、前記リアクタに取り付けられた第2電極と、を有する、請求項1又は2に記載の最適化システム。
【請求項4】
前記第2電極が前記リアクタに取り付けられている請求項3に記載の最適化システム。
【請求項5】
前記複数個のリアクタが、マイクロプレートにマトリックス状に配置された複数個のウェルに形成され、
前記マイクロプレートに配置された複数個のウェルに、前記複数の添加剤を分注して前記電解液を調製する分注デバイスと、
前記電解液が調製された前記マイクロプレートを前記挿入デバイスの下に搬送する搬送デバイスと、
前記挿入デバイスの下に搬送された前記マイクロプレートに対して移動可能に設けられ、前記第2電極に結合可能に取り付けられた移動デバイスとを更に有する請求項4に記載の最適化システム。
【請求項6】
六フッ化リン酸リチウム、ホウフッ化リチウム、リチウムビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、過塩素酸リチウム、臭化リチウム、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(V)、リチウムビスオキサレートボラート、塩化リチウム、フッ化リチウム、ジメチルカーボネート、1,2-ジメトキシエタン、1,3-ジオキソラン、及びビニレンカーボネートのいずれかの添加剤を含む添加剤リストから複数の添加剤を選択して組合せてなる電解液の配合を探索するための最適化方法であって、
初期データセットに基づき、局所探索法を用いて、前記添加剤リストから複数の添加剤を組合わせて配合Aを生成するステップと、
前記配合Aに基づき、前記電解液を調製して、前記電解液の
クーロン効率を測定して測定値を得るステップと、
前記配合A、及び、それに対応する前記測定値を含むデータセットを用いてベイズ最適化により新たな配合Bを生成するステップと、
前記配合Aを前記配合Bにより更新するステップと、
予め定められた終了条件が満たされたか否かを判定するステップと、
前記終了条件が満たされるまで、前記配合Bの生成と、前記配合Aの更新と、前記電解液の調製と、前記測定と、を含む処理を繰り返すステップと、を有する最適化方法。
【請求項7】
複数の前記配合Aに使用される前記添加剤のうち、
前記電解液における使用割合が閾値を超えて頻用される前記添加剤を頻用添加剤として検知し、前記添加剤リストから前記頻用添加剤を除いた更新済みリストを作成するステップと、前記添加剤リストを前記更新済みリストで更新するステップと、を更に有する請求項6に記載の最適化方法。
【請求項8】
六フッ化リン酸リチウム、ホウフッ化リチウム、リチウムビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、過塩素酸リチウム、臭化リチウム、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(V)、リチウムビスオキサレートボラート、塩化リチウム、フッ化リチウム、ジメチルカーボネート、1,2-ジメトキシエタン、1,3-ジオキソラン、及びビニレンカーボネートのいずれかの添加剤を含む添加剤リストから複数の添加剤を選択して組合わせてなる電解液の配合に基づき、前記電解液を調製して、前記電解液の
クーロン効率を測定して測定値を得る評価部を有する装置に、
初期データセットに基づき、局所探索法を用いて、前記添加剤リストから複数の添加剤を組合わせて配合Aを生成する手順と、
前記配合Aに基づき、前記電解液を調製して、前記電解液の前記
クーロン効率を測定して前記測定値を得る手順と、
前記配合A、及び、それに対応する前記測定値を含むデータセットを用いてベイズ最適化により新たな配合Bを生成する手順と、
前記配合Aを前記配合Bにより更新する手順と、
予め定められた終了条件が満たされたか否かを判定する手順と、
前記終了条件が満たされるまで、前記配合Bの生成と、前記配合Aの更新と、前記電解液の調製と、前記測定と、を含む処理を繰り返す手順と、をコンピュータによって実行させるプログラム。
【請求項9】
更に、
前記電解液における使用割合が閾値を超えて頻用される添加剤を頻用添加剤として検知する手順と、
前記添加剤リストから前記頻用添加剤を除いた更新済みリストを生成する手順と、
前記添加剤リストを前記更新済みリストで更新する手順と、を更に実行させる、請求項8に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、最適化システム、最適化方法、プログラム、リチウム二次電池用電解液、及び、リチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電解液の電気化学的特性の評価を行うためのオートメーションシステムが知られている。
【0003】
このようなオートメーションシステムとして、特許文献1には、「複数種類の溶液がそれぞれ収容されて配列される複数個のリアクタに対して移動可能に設けられた挿入機構と、前記複数個のリアクタに収容された複数種類の溶液に挿入可能に前記挿入機構に取り付けられて電気化学測定装置に接続される電極部材とを備えることを特徴とする電気化学測定システム。」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
Li(リチウム)金属負極用の電解液の開発では、複数の添加剤の協調作用が注目されている。しかし、添加剤の組合せは多岐にわたり、新たな電解液の開発にあっては、経験を積んだ技術者による新たな添加剤配合の立案と、その配合に基づき調製された電解液の電気化学的評価とを行い、その評価をもとに新たな配合を立案する、という作業が繰り返されてきた。
【0006】
このような作業のうち、特許文献1に記載の電気化学測定システムを用いることで、電解液の電気化学的評価のスピード、すなわち、単位時間当たりに実施できる評価数が飛躍的に向上した。一方で、配合の立案は依然として経験に頼って行われることが多かった。
【0007】
電解液の配合は、ベースとなる溶媒(電解質を含む場合もある)に、複数種類の添加剤を加えてなるものである。技術者により提案され得る新たな配合は、既に評価済みの配合や優れた特性を有する配合に影響を受け、これらの改良配合となる場合が多かった。
【0008】
本発明者らは、優れた電気化学的特性を有するものとして既知である電解液の配合には、一般に、共通して用いられる特定の添加剤(以下、「頻用添加剤」)があることを知見している。例えば、VC(ビニレンカーボネート)は電解液の劣化による電池性能の低下を抑制する効果があることが知られていて、VCを含む溶液は、優れた特性を有する多くの電解液の添加剤として採用されている。
【0009】
従来、新たな電解液の開発においては、頻用添加剤を含みその他の成分の含有量を少しずつ変更するような方法で新たな手法が探索されてきた。この方法によれば、多くの組合せから最適(と思われる)配合に少ない試行回数で到達できると考えられてきた。
【0010】
しかし、本発明者らは、上記方法では得られる電解液の性能が十分ではない場合があることを知見している。その理由について鋭意検討した結果、頻用成分を含む配合を中心に探索を行うことによって、従来の配合の延長、すなわち、探索空間のうちの局所的最適解に収束してしまっている可能性があることを着想した。
【0011】
そこで、本発明は従来の探索法が陥っていた上記課題を解決し、優れた電気化学的特性を有する新たな電解液の配合をより簡便に得ることができるシステム、言い換えれば、優れた電気化学特性を有する電解液の配合を効率的に探索するための最適化システムを提供することを課題とする。
また、本発明は、最適化方法、プログラム、リチウム二次電池用電解液、及び、リチウム二次電池を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、以下の構成により上記課題を達成することができることを見出した。
【0013】
[1] 添加剤リストから複数の添加剤を選択して組合せてなる電解液の配合を探索するための最適化システムであって、配合Aに基づき、上記電解液を調製して、上記電解液の電気化学特性を測定して測定値を得る評価部と、初期データセットに基づき、局所探索法を用いて、上記添加剤リストから複数の添加剤を組合せて上記配合Aを生成する、局所探索部と、上記配合A、及び、それに対応する上記測定値を含むデータセットをベイズ最適化法に適用して、上記添加剤リストから複数の添加剤を組合わせて新たな配合Bを生成する配合生成部と、上記配合Aを上記配合Bにより更新する更新部と、予め定められた終了条件が満たされたか否かを判定する終了判定部と、を有し、上記終了条件が満たされるまで、上記配合Bの生成と、上記配合Aの更新と、上記電解液の調製と、上記測定と、を含む処理を繰り返す、最適化システム。
[2] 更に、リスト更新部を有し、上記リスト更新部は、予め定められた基準を超えて頻用される添加剤を頻用添加剤として検知し、上記添加剤リストから上記頻用添加剤を除いた更新済みリストを生成し、上記添加剤リストを更新する、[1]に記載の最適化システム。
[3] 上記評価部は、複数種類の上記電解液がそれぞれ収容されて配列される複数個のリアクタに対して移動可能に設けられた挿入デバイスと、上記複数個のリアクタに収容された複数種類の上記電解液に挿入可能に上記挿入デバイスに取り付けられた第1電極と、上記挿入デバイス、又は、上記リアクタに取り付けられた第2電極と、を有する、[1]又は[2]に記載の最適化システム。
[4] 上記第2電極が上記リアクタに取り付けられている[3]に記載の最適化システム。
[5] 上記複数個のリアクタが、マイクロプレートにマトリックス状に配置された複数個のウェルに形成され、上記マイクロプレートに配置された複数個のウェルに、上記複数の添加剤を分注して上記電解液を調製する分注デバイスと、上記電解液が調製された上記マイクロプレートを上記挿入デバイスの下に搬送する搬送デバイスと、上記挿入デバイスの下に搬送された上記マイクロプレートに対して移動可能に設けられ、上記第2電極に結合可能に取り付けられた移動デバイスとを更に有する[4]に記載の最適化システム。
[6] 添加剤リストから複数の添加剤を選択して組合せてなる電解液の配合を探索するための最適化方法であって、初期データセットに基づき、局所探索法を用いて、上記添加剤リストから複数の添加剤を組合せて配合Aを生成するステップと、上記配合Aに基づき、上記電解液を調製して、上記電解液の電気化学特性を測定して測定値を得るステップと、上記配合A、及び、それに対応する上記測定値を含むデータセットを用いてベイズ最適化により新たな配合Bを生成するステップと、上記配合Aを上記配合Bにより更新するステップと、予め定められた終了条件が満たされたか否かを判定するステップと、上記終了条件が満たされるまで、上記配合Bの生成と、上記配合Aの更新と、上記電解液の調製と、上記測定とを含む処理を繰り返すステップと、を有する最適化方法。
[7] 複数の上記配合Aに使用される上記添加剤のうち、予め定められた基準を超えて頻用される上記添加剤を頻用添加剤として検知し、上記添加剤リストから上記頻用添加剤を除いた更新済みリストを作成するステップと、上記添加剤リストを上記更新済みリストで更新するステップと、を更に有する[6]に記載の最適化方法。
[8] 添加剤リストから複数の添加剤を選択して組合せてなる電解液の配合に基づき、上記電解液を調製して、上記電解液の電気化学特性を測定して測定値を得る評価部を有する装置に、初期データセットに基づき、局所探索法を用いて、上記添加剤リストから複数の添加剤を組合せて配合Aを生成する手順と、上記配合Aに基づき、上記電解液を調製して、上記電解液の上記電気化学特性を測定して上記測定値を得る手順と、上記配合A、及び、それに対応する上記測定値を含むデータセットを用いてベイズ最適化により新たな配合Bを生成する手順と、上記配合Aを上記配合Bにより更新する手順と、予め定められた終了条件が満たされたか否かを判定する手順と、上記終了条件が満たされるまで、上記配合Bの生成と、上記配合Aの更新と、上記電解液の調製と、上記測定とを含む処理を繰り返す手順と、をコンピュータによって実行させるプログラム。
[9] 更に、予め定められた基準を超えて頻用される添加剤を頻用添加剤として検知する手順と、上記添加剤リストから上記頻用添加剤を除いた更新済みリストを生成する手順と、上記添加剤リストを上記更新済みリストで更新する手順と、を更に実行させる、[8]に記載のプログラム。
[10] [6]に記載された最適化方法により得られた配合により調製されたリチウム二次電池用電解液。
[11] 六フッ化リン酸リチウム、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、及び、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(V)を含むリチウム二次電池用電解液。
[12] リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、臭化リチウム、リチウムビスオキサレートボラート、塩化リチウム、及び、1,3-ジオキソランを含むリチウム二次電池用電解液。
[13] 更に、ジメチルアミンを含む、[11]又は[12]に記載のリチウム二次電池用電解液。
[14] [10]~[12]のいずれかに記載のリチウム二次電池用電解液を含むリチウム二次電池。
[15] リチウム空気電池である、[13]に記載のリチウム二次電池。
【0014】
以下の説明において、下記の略号は、「:」以下に記載された化合物を表す。
LiPF6:六フッ化リン酸リチウム
LiBF4:ホウフッ化リチウム
LiTFSI:リチウムビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド
LiFSI:リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド
LiTfO:トリフルオロメタンスルホン酸リチウム
LiClO4:過塩素酸リチウム
LiBr:臭化リチウム
LiAsF6:ヘキサフルオロヒ酸リチウム(V)
LiBOB:リチウムビスオキサレートボラート
LiCl:塩化リチウム
LiF:フッ化リチウム
DMC:ジメチルカーボネート
DME:1,2-ジメトキシエタン
DOL:1,3-ジオキソラン
VC:ビニレンカーボネート
DMA:ジメチルアミン
【0015】
〔12〕LiPF6、LiFSI、LiTfO、LiAsF6、LiNO3、及び、DMAを含む、リチウム二次電池用電解液。
〔13〕LiBr、LiAsF6、DOL、LiNO3、及び、DMAを含む、リチウム二次電池用電解液。
〔14〕LiTFSI、LiTfO、LiBr、LiAsF6、LiNO3、及び、DMAを含む、リチウム二次電池用電解液。
〔15〕LiFSI、LiTfO、LiBr、DME、LiNO3、及び、DMAを含む、リチウム二次電池用電解液。
〔16〕LiBF4、LiTFSI、LiBOB、LiF、VC、LiNO3、及び、DMAを含む、リチウム二次電池用電解液。
〔17〕LiBF4、LiFSI、LiClO4、LiF、DMC、LiNO3、及び、DMAを含む、リチウム二次電池用電解液。
〔18〕LiPF6、DME、LiAsF6、LiF、LiNO3、及び、DMAを含む、リチウム二次電池用電解液。
〔19〕LiTfO、LiPF6、DME、DOL、LiBOB、LiNO3、及び、DMAを含む、リチウム二次電池用電解液。
〔20〕LiBF4、LiTFSI、LiClO4、DME、VC、LiNO3、及び、DMAを含む、リチウム二次電池用電解液。
〔21〕LiTfO、LiF、LiAsF6、LiNO3、及び、DMAを含む、リチウム二次電池用電解液。
〔22〕LiBF4、LiAsF6、LiCl、LiF、LiNO3、及び、DMAを含む、リチウム二次電池用電解液。
〔23〕LiPF6、LiFSI、LiTfO、LiF、DOL、及び、DMAを含む、リチウム二次電池用電解液。
〔24〕LiPF6、LiBF4、LiFSI、LiBOB、DOL、及び、DMAを含む、リチウム二次電池用電解液。
〔25〕LiTFSI、LiTfO、LiBOB、LiCl、及び、DMAを含む、リチウム二次電池用電解液。
〔26〕LiBF4、LiClO4、DMC、VC、及び、DMAを含む、リチウム二次電池用電解液。
〔27〕LiBF4、LiBOB、LiCl、及び、DMAを含む、リチウム二次電池用電解液。
〔28〕LiClO4、LiCl、LiBOB、及び、DMAを含む、リチウム二次電池用電解液。
〔29〕LiPF6、LiTFSI、LiFSI、LiBr、DME、及び、DMAを含む、リチウム二次電池用電解液。
〔30〕LiPF6、LiBr、LiBOB、VC、及び、DMAを含む、リチウム二次電池用電解液。
〔31〕LiTFSI、LiBr、LiBF4、DMC、DOL、及び、DMAを含む、リチウム二次電池用電解液。
〔32〕LiFSI、LiBr、LiBOB、LiCl、及び、DMAを含む、リチウム二次電池用電解液。
〔33〕VC、DMC、DME、VC、及び、DMAを含む、リチウム二次電池用電解液。
〔34〕LiCl、DME、DOL、VC、:5vol%、及び、DMAを含む、リチウム二次電池用電解液。
〔35〕LiPF6、LiTFSI、DOL、LiBOB、及び、DMAを含む、リチウム二次電池用電解液。
〔36〕LiPF6、LiBr、LiF、VC、及び、DMAを含む、リチウム二次電池用電解液。
〔37〕LiTfO、LiBF4、DME、VC、及び、DMAを含む、リチウム二次電池用電解液。
〔38〕LiBF4、LiCl、DMC、VC、及び、DMAを含む、リチウム二次電池用電解液。
〔39〕LiTfO、LiAsF6、DMC、DOL、及び、DMAを含む、リチウム二次電池用電解液。
〔40〕LiTFSI、LiBr、LiAsF6、VC、及び、DMAを含む、リチウム二次電池用電解液。
〔41〕LiPF6、LiF、VC、DME、及び、DMAを含む、リチウム二次電池用電解液。
〔42〕LiPF6、LiFSI、LiTfO、LiAsF6、及び、DMAを含む、リチウム二次電池用電解液。
〔43〕LiBr、DOL、LiAsF6、及び、DMAを含む、リチウム二次電池用電解液。
〔44〕LiTFSI、LiTfO、LiBr、LiAsF6、及び、DMAを含む、リチウム二次電池用電解液。
〔45〕LiFSI、LiTfO、LiBr、DME、及び、DMAを含む、リチウム二次電池用電解液。
〔46〕LiBF4、LiFSI、LiClO4、LiF、DMC、及び、DMAを含む、リチウム二次電池用電解液。
〔47〕LiPF6、DME、LiAsF6、LiF、及び、DMAを含む、リチウム二次電池用電解液。
〔48〕LiTfO、LiPF6、DME、DOL、LiBOB、及び、DMAを含む、リチウム二次電池用電解液。
〔49〕LiTfO、LiF、LiAsF6、及び、DMAを含む、リチウム二次電池用電解液。
〔50〕LiBF4、LiAsF6、LiCl、LiF、及び、DMAを含む、リチウム二次電池用電解液。
〔51〕LiPF6、LiFSI、LiTfO、LiF、DOL、及び、DMAを含む、リチウム二次電池用電解液。
〔52〕LiPF6、LiBF4、LiFSI、LiBOB、DOL、及び、DMAを含む、リチウム二次電池用電解液。
〔53〕LiTFSI、LiTfO、LiBOB、LiCl、及び、DMAを含む、リチウム二次電池用電解液。
〔54〕LiBF4、LiBOB、LiCl、及び、DMAを含む、リチウム二次電池用電解液。
〔55〕LiClO4、LiCl、LiBOB、及び、DMAを含む、リチウム二次電池用電解液。
〔56〕LiPF6、LiTFSI、LiFSI、LiBr、DME、及び、DMAを含む、リチウム二次電池用電解液。
〔57〕LiTFSI、LiBr、LiBF4、DMC、DOL、及び、DMAを含む、リチウム二次電池用電解液。
〔58〕LiFSI、LiBr、LiBOB、LiCl、及び、DMAを含む、リチウム二次電池用電解液。
〔59〕LiPF6、LiTFSI、DOL、LiBOB、及び、DMAを含む、リチウム二次電池用電解液。
〔60〕LiTfO、LiAsF6、DMC、DOL、及び、DMAを含む、リチウム二次電池用電解液。
〔61〕LiBr、LiCl、LiF、DME、及び、DMAを含む、リチウム二次電池用電解液。
〔62〕LiClO4、LiClO4、LiTFSI、LiBOB、及び、DMAを含む、リチウム二次電池用電解液。
〔63〕LiPF6、LiClO4、LiFSI、LiF、DMC、及び、DMAを含む、リチウム二次電池用電解液。
〔64〕LiPF6、LiClO4、LiAsF6、DME、DOL、及び、DMAを含む、リチウム二次電池用電解液。
〔65〕LiBr、LiTfO、LiF、LiBOB、LiCl、及び、DMAを含む、リチウム二次電池用電解液。
〔66〕LiClO4、LiBr、LiCl、LiF、DOL、及び、DMAを含む、リチウム二次電池用電解液。
〔67〕LiTFSI、LiTfO、LiClO4、LiAsF6、及び、DMAを含む、リチウム二次電池用電解液。
〔68〕LiTfO、LiClO4、LiBr、LiF、LiAsF6、及び、DMAを含む、リチウム二次電池用電解液。
〔69〕LiBF4、LiTFSI、LiCl、DME、及び、DMAを含む、リチウム二次電池用電解液。
〔70〕LiFSI、LiBr、LiBOB、LiCl、DOL、及び、DMAを含む、リチウム二次電池用電解液。
〔71〕DME、DOL、LiCl、及び、DMAを含む、リチウム二次電池用電解液。
【0016】
〔72〕 〔12〕~〔71〕からなる群より選択される少なくとも1種の電解液を含むリチウム二次電池。
〔73〕 リチウム空気電池である〔72〕に記載のリチウム二次電池。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、優れた電気化学特性を有する電解液の配合を効率的に探索するための最適化システムを提供できる。また、本発明によれば、最適化方法、プログラム、リチウム二次電池用電解液、及び、リチウム二次電池も提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施例1の最適化方法のフロー図である。
【
図2】本発明の実施例2の最適化方法のフロー図である。
【
図3】本発明の実施例3の最適化システムのハードウェア構成図である。
【
図4】実施例の最適化システムの機能ブロック図である。
【
図6】本発明の実施例4の最適化システムの機能ブロック図である。
【
図7】本発明の実施例4の最適化システムの動作フロー図である。
【
図8】Li/Li対称セルにおいて、標準電解液としてDMA中1.5M LiNO
3を用いるか、又は、電解液No.183750を用いた場合のLi析出-溶解サイクルの電気化学的プロファイルを表す図である。
【
図9】電解液としてDMA中1.5M LiNO
3を用いた場合のLi/Li対称セルにおける1サイクル目のLi析出-溶解サイクルの電気化学的プロファイルを表す図である。
【
図10】電解液としてDMA中1.5M LiNO
3を用いた場合のLi/Li対称セルにおける10サイクル目のLi析出-溶解サイクルの電気化学的プロファイルを表す図である。
【
図11】電解液としてDMA中1.5M LiNO
3を用いた場合のLi/Li対称セルにおける50サイクル目のLi析出-溶解サイクルの電気化学的プロファイルを表す図である。
【
図12】電解液としてNo.183750を用いた場合のLi/Li対称セルにおける1サイクル目のLi析出-溶解サイクルの電気化学的プロファイルを表す図である。
【
図13】電解液としてNo.183750を用いた場合のLi/Li対称セルにおける10サイクル目のLi析出-溶解サイクルの電気化学的プロファイルを表す図である。
【
図14】No.183750を用いた場合のLi/Li対称セルにおける50サイクル目のLi析出-溶解サイクルの電気化学的プロファイルを表す図である。
【
図15】No.183750を用いた場合のLi/Li対称セルにおける100サイクル目のLi析出-溶解サイクルの電気化学的プロファイルを表す図である。
【
図16】No.183750を用いた場合のLi/Li対称セルにおける150サイクル目のLi析出-溶解サイクルの電気化学的プロファイルを表す図である。
【
図17】Li-O
2セルにおいて、標準電解液としてDMA中1.5M LiNO
3を用いるか、又は、電解液No.183750を用いた場合の放電/充電プロファイルを表す図である。
【
図18】DMA中1.5M LiNO
3を用いた場合のLi-O
2セルにおける1サイクル目の放電/充電プロファイルを表す図である。
【
図19】DMA中1.5M LiNO
3を用いた場合のLi-O
2セルにおける10サイクル目の放電/充電プロファイルを表す図である。
【
図20】DMA中1.5M LiNO
3を用いた場合のLi-O
2セルにおける50サイクル目の放電/充電プロファイルを表す図である。
【
図21】DMA中1.5M LiNO
3を用いた場合のLi-O
2セルにおける67サイクル目の放電/充電プロファイルを表す図である。
【
図22】No.183750を用いた場合のLi-O
2セルにおける1サイクル目の放電/充電プロファイルを表す図である。
【
図23】No.183750を用いた場合のLi-O
2セルにおける10サイクル目の放電/充電プロファイルを表す図である。
【
図24】No.183750を用いた場合のLi-O
2セルにおける50サイクル目の放電/充電プロファイルを表す図である。
【
図25】No.183750を用いた場合のLi-O
2セルにおける100サイクル目の放電/充電プロファイルを表す図である。
【
図26】No.183750を用いた場合のLi-O
2セルにおける123サイクル目の放電/充電プロファイルを表す図である。
【
図27】リチウム二次電池の積層構造を説明するための模式図である。
【
図28】リチウム空気電池(Li-O
2二次電池)の積層構造を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施形態に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に制限されるものではない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0020】
(用語の説明)
本明細書において、「電解液」は、溶媒と、必要に応じて電解質とを含む溶液をベースとして、そこに、添加剤が加えられたものを意味する。
「添加剤」は、化合物が溶媒に溶解、又は、分散した溶液である。本明細書における添加剤の名称は、溶解している化合物名に由来する。
【0021】
本明細書において、「配合」とは、ベースに添加される添加剤の種類と量の組合せを意味する。典型的には、添加剤は、ベースの溶媒、又は、ベースそのものと、そこに溶解した化合物から構成されており、「配合」は、ベースに添加される添加剤の数、各添加剤に含まれる化合物(溶質)名、添加剤における上記化合物の濃度、添加剤の添加量から構成される。
例えば、(A:5mM,B:5mM,C:5mM)と表される配合であれば、調製された電解液における化合物Aの終濃度が5mmol/L、化合物Bが5mmmol/L、及び、化合物Cが5mmmol/Lとなる配合を表す。
【0022】
本明細書において、「添加剤リスト」とは、電解液の配合において、使用される候補となる添加剤のリストを意味する。
添加剤リストは、電解液に添加される添加剤に含まれる化合物の種類、添加剤におけるその濃度、及び、添加剤溶液の添加量等を含むデータの集合体である。
例えば、化合物としてVCを含有する添加剤であっても、その濃度や添加量が異なる場合は、それらは、リスト上、別の添加剤として管理してよい。
すなわち、(化合物、濃度、添加量)で表すとすれば、(VC、5vol%、150μL)、(VC、0.5vol%、100μL)はそれぞれ別のレコードとしてテーブルに含まれてよい。
通常、この添加剤は有限であり、このリストに含まれるレコードの数と、1配合においていくつの添加剤を使用するか(すなわち、最大でいくつのレコードを使うか)によって可能な組合せの数(探索空間)が定まる。
【0023】
本明細書において、「電気化学特性」とは、電解液が有する電気化学特性のうち、最適化の目標とされる特性を意味する。電気化学特性は、1つであってもよいし、複数であってもよい。電気化学特性としては、例えば、クーロン効率等が挙げられ、後述する評価部の機能により測定され、その測定値、又は、その測定値に応じて予め定められた基準に照らして評価される。
【0024】
本明細書において、「データセット」とは、電解液の配合と、その配合に基づいて調製された電解液の電気化学特性の評価結果とから構成されるデータのまとまりである。
典型的には、データセットは、電解液の配合、及び、電気化学特性の評価結果等のフィールド(項目)を有するレコードの集合であるテーブルであってよい。なお、データセットにおける各レコードの電解液の配合には、添加剤の種類、濃度、及び、その添加量等のフィールドが、使用される添加剤の種類に応じた数含まれる。このとき、各フィールドには重複があってよい。例えば、5種類の添加剤を用いて電解液を調製する場合に、1つめのフィールドがVC、5vol%(終濃度)、5μLで、2つめのフィールドがVC、5vol%、5μLであってもよい。この場合、調製される電解液にはVCの5μLが2回(計10μL)添加されることを意味する。データセットのレコードには上記配合に関するフィールドと、評価結果に関するフィールドが含まれる。
【0025】
本明細書において、「局所探索法」とは、山登り法(hill climbing)、アニーリング法(simulated annealing)、タブー探索法(tabu search)等が挙げられる。局所探索法として、例えば、山登り法を選択すると、必要な計算がより少なくて済み、迅速な処理が行える点で好ましい。一方で、アニーリング法、及び、タブー探索法等を用いる場合、解の移動の設定がより容易であり、より精度の高い局所解に到達できる可能性がある。
【0026】
本明細書において、「ベイズ最適化」とは、N個の実験データ(配合1,電気化学特性1),・・・,(配合N,電気化学特性N)から、ガウス過程法により関数の推定を事後確率の形で求め、事後確率の期待値と標準偏差の組合せである獲得関数を最大化する配合N+1を求める方法を意味する。
この推定結果のうち、標準偏差は、N個の実験データのうち、実験結果の少ない領域(手薄な配合)で大きな値を取る。そのため、獲得関数の定義方法により、よりデータ密度の低い領域の探索を優先して進めることもできる。なお、獲得関数の定義方法としては特に制限されないが、例えば、信頼性上限関数(upper cinfidence bound)、及び、期待改善度(expected improvement)等が挙げられる。
【実施例1】
【0027】
図1は、本発明の実施例1の最適化方法のフロー図である。
本最適化方法では、まず、初期データセットに基づき、局所探索法を用いて、添加剤リストから複数の添加剤を組合せて配合Aを生成する(ステップS101)。
【0028】
この初期データセットは添加剤リストから選択された複数の添加剤を組合せて作成された配合と、それに基づき調製された電解液の電気化学特性のデータとを含む。初期データセットは、1つレコード、すなわち、1つの配合(電解液)と、それに関する電気化学特性に関するデータから構成されていてもよいが、配合Aを効率よく生成できる観点では、複数の電解液に係るデータの集合であることが好ましい。
【0029】
なお、初期データセットは、用手的に取得されたものであってもよいし、公知のデータであってもよい。公知のデータとしては、例えば、文献値が挙げられる。
【0030】
表1は添加剤リストの例である。各添加剤に関するデータは行(row)ごとにまとめられている。例えば、記号「A」の添加剤は、化合物として「LiPF6」を含み、所定の条件(後述する)で添加されたとき、最終的な電解液中における化合物の終濃度が100mMとなるよう調製されていることを示している。なお、表1の添加剤は、各「化合物」のDimethylacetamide(DMA)溶液である。
なお、表1の添加剤リストは、各添加剤の添加量のデータを有していない。各添加剤を同じ量添加するという条件(例えば、一律5μL添加)の下では、添加剤リストが添加量のデータを有していなくてもよい。
【0031】
表1からわかるとおり、記号Aと記号aの添加剤は、それぞれ化合物としてLiPF6を含んでおり、その濃度が異なっている。このように、添加剤リストには、同じ化合物を含んで、濃度の水準の異なる添加剤が含まれていてもよく、これらをデータ上は別の添加剤として取り扱ってもよい。
【0032】
【0033】
初期データセットに含まれる配合は、例えば、表1の添加剤の中から、1種類以上(好ましくは2種類以上)、5種類以下の添加剤を選択したものである。例えば、配合は(A,B,C,D,O)、(A,B,C,-,O)等と表すこともできる。
【0034】
電解液の全量を50μLとし、添加剤(化合物のDMA溶液)の総添加量を25μLとする条件では、(A,B,C,D,O)配合は、それぞれの添加剤を5μL加えたときに、電解液における化合物の終濃度が「濃度」「単位」の欄にある値となることを示している。
【0035】
すなわち、LiPF6溶液を5μL、LiBF4溶液を5μL、LiTFSI溶液を5μL、LiFSI溶液を5μL、VC溶液を5μL添加し、それぞれの終濃度が100mM(mmol/L)、100mM、100mM、100mM、及び、5vol%となる配合である。
なお、電解液は、ベースとなる3M LiNO3のDMA溶液の25μLを含んでいるため、全量で50μLとなる。
【0036】
上記と同条件とすると、(A,B,C,-,O)配合は、LiPF6溶液を5μL、LiBF4溶液を5μL、LiTFSI溶液を5μL、VC溶液を5μL含み、全体として、50μL(25μLの3M(mol/L)LiNO3のDMA溶液と、5μLのDMAを含む)に調製される電解液の配合である。
【0037】
初期データセットは、上記各配合と、それに基づき調製された電解液に関する電気化学特性の評価データとを含む。電気化学特性は1つであってもよいし、複数であってもよい。本工程では、このデータをもとに局所探索法を実行して、上記電気化学特性の評価データを更に向上させる新たな配合Aを生成する。局所探索法としては公知のアルゴリズムが適用でき、その方法も当業者にとって公知である。
【0038】
生成される配合Aは、上記の(A、B、C、D、O)のような1種の電解液の個別配合を1つ、又は、複数含み、複数含むことが好ましい。
【0039】
次に、配合Aに基づき、電解液が調製される。そして、調製された電解液について電気化学特性が測定され、測定値が取得される(ステップS102)。電気化学特性の測定方法としては特に制限されないが、例えば、特許文献1に記載された装置を用いることが好ましい。多くの測定値を短時間で取得することができれば、より効率よく探索を行うことができる。
【0040】
次に、配合A、及び、それに対応する測定値を含むデータセットを用いてベイズ最適化により新たな配合Bを生成する(ステップS103)。ベイズ最適化の方法としては特に制限されず、公知の方法が適用できる。本工程によれば、例えば、実験結果の少ない領域、すなわち、配合Aにおいてあまり使用されていない添加剤を含む配合等を含む配合Bが生成される。
【0041】
次に、配合Aが配合Bにより更新され(ステップS104)、更新された配合Aに基づき、電解液の電気化学特性が測定される(ステップS105)。
【0042】
なお、上記工程における電解液の調製、及び、電気化学特性の測定は、すでに説明したステップS101、及び、ステップS102における電解液の調製方法、及び、電気化学特性の測定方法と同様である。
【0043】
次に、終了条件が満たされたかについて判定される(ステップS106)。終了条件としては、例えば、配合Bの生成、配合Aの更新、更新された配合Aによる電解液の調製、及び、評価を含む一連の工程の繰り返し回数が予め定められた回数を超えるか、調製された電解液の電気化学特性が予め定めた基準を超えるか(基準を超える電解液が存在したか)等であってよい。
【0044】
ここで、終了条件が満たされない場合(ステップS106:NO)再度、ステップS103、ステップS104、及び、ステップS105が繰り返され、新たな配合Aに基づき電解液が調製され、その電気化学特性が評価される。
一方、終了条件が満たされる場合(ステップS106:YES)、最適化は終了し、終了時の配合Aが結果物となる。
【0045】
本方法によれば、配合Aの更新に、ベイズ最適化法を用いるため、頻用添加剤に偏らない最適化配合が得られる可能性が高い。
【実施例2】
【0046】
図2は、本発明の実施例2の最適化方法のフロー図である。
本最適化方法では、まず、初期データセットに基づき、局所探索法を用いて、添加剤リストから複数の添加剤を組合せて配合Aを生成する(ステップS201)。なお、本工程は、実施例1の最適化方法のステップS101と同様であり、好適形態も同様であるので、説明を省略する。
【0047】
次に、配合Aに使用される添加剤のうち、予め定められた頻度を超えて配合Aに使用される添加剤を頻用添加剤として検知し、頻用添加剤を除いて更新済み添加剤リストを作成する(ステップS202)。
すでに説明したとおり、配合Aは、複数の添加剤の組合せである。本工程では、その配合に用いられている添加剤のうち、一定以上の頻度で使用される添加剤を「頻用添加剤」として検知、すなわち、ラベル付けする。
【0048】
予め定められた条件は、特に制限されないが、配合Aに含まれる配合への使用割合等であってもよい。例えば、閾値が7割である場合、配合Aに10個の個別配合が含まれていて、そのうち、8つの個別配合に「VC-5vol%-5μL」が使用されている場合、「VC-5vol%-5μL」を「頻用添加剤」とラベル付けすればよい。
【0049】
また、ラベル付けの条件において、添加量を勘案しない条件とすれば、上記の例で、「VC-5vol%-5μL」が5回、「VC-0.5vol%-5μL」が3回使用されている場合、VCを含む添加剤を全て「頻用添加剤」とラベル付けすればよい。
【0050】
本工程では、「頻用添加剤」としてラベル付けされた添加剤を添加剤リストから除き、新たな添加剤リスト(「更新済みリスト」)を生成する。
次に、更新済みリストで添加剤リストを更新する(ステップS203)。本工程により、初期データセットから頻用添加剤が除かれた添加剤リストを用いて、以降の工程が実施されることとなり、後段の繰り返し処理の早い段階から、実験結果の少ない領域(未探索領域)での探索が進行しやすくなり、より効率的に探索を行うことができる。
【0051】
なお、実施例2の最適化方法におけるステップS204以降の工程、すなわち、配合Aに基づき、電解液を調製して、電解液の電気化学特性を測定して測定値を得る工程(ステップS204)、配合A、及び、それに対応する測定を含むデータセットを用いてベイズ最適化により新たな配合Bを生成する工程(ステップS205)、配合Aを配合Bにより更新する工程(ステップS206)、配合Aに基づき、電解液を調製して、電解液の電気化学特性を測定して測定値を得る工程(ステップS207)、及び、終了条件が満たされたか判断する工程(ステップS208)は、それぞれ、実施例1に係る最適化方法におけるステップS102、ステップS103、ステップS104、ステップS105、及び、ステップS106と同様であり、好適形態も同様であるので説明を省略する。
【0052】
実施例2の最適化方法は、ステップS202を有していることで、頻用添加剤が添加剤リストから除かれるため、ステップS205~ステップS207の繰り返しの回数を減らすことができる場合が多い。すなわち、ベイズ最適化を適用する前に、頻用添加剤を除くことで解を移動させ、ベイズ最適化の試行回数を減じながらより効率的に最適化を行うことができる。
【0053】
上記の方法に従って、電解液の配合を最適化する具体例について説明する。
以下の配合は、表1の添加剤リストを用い、電気化学特性をクーロン効率として生成されたものである。
添加剤の配合の条件は、電解液の全量を50μLとし、ベースを3M LiNO3のDMA溶液の25μLに、5μLの添加剤を最大5種類添加するものである。
なお、添加剤を添加しない場合には、代わりに、DMAの5μLを添加した。従って、いずれの配合も全量50μLとして調製された。
【0054】
調製した電解液のクーロン効率は、集電体基板上にLiを析出し、その後、電気化学的に溶解したLiのクーロン数から算出する方法を用い、電流密度0.6mA/cm2、容量0.4mAh/cm2の条件で評価した。
【0055】
まず、上記添加剤リストを用い、ランダム探索によって作成した配合によって電解液を調製し、電気化学特性(クーロン効率)を評価した。次の、その結果を用いて局所探索法を実施した。
具体的には、864サンプルを1セットとし、1セット中の電解液のクーロン効率を評価して、その高い順にリスト化した。
次に、上位サンプルの近傍サンプルを生成した。このとき、「近傍」は、5種類の添加剤のうち、1種類を別のものとする方法とした。生成した配合から864サンプルをランダムに選定し、次の1セットとした。
【0056】
この操作によって得られた初期データセットでは、VCが頻用添加剤として検出された。そのため、VCを添加剤リストから除いて更新済みリストを作成して添加剤リストを更新し、ベイズ最適化を適用して、更に探索を行った。得られた電解液の配合は以下のとおりであり、そのクーロン効率は、表2、及び、表3に記載したとおりである。
【0057】
なお、各配合は全量が50μLであり、ベースとして、25μLの3M LiNO3のDMA溶液の25μLを含む。添加剤は、各化合物のDMA溶液であり、各5μL添加され、「-」は、添加剤に代えてDMAの5μLが添加されたことを示す。いずれの電解液もアルゴン雰囲気で調製された。
【0058】
例えば、例1であれば、総量50μLで、LiPF6溶液、LiFSI溶液、LiFSI溶液、LiTfO溶液、及び、LiAsF6溶液をそれぞれ5μLと、3M LiNO3のDMA溶液の25μL含む。なお、各添加剤の電解液中の終濃度は、「:」以下の数値、すなわち、LiPF6なら100mM、LiFSIなら100mM、LiFSIなら100mM、LiTfOなら100mM、LiAsF6なら10mMである。その他の例についても同様である。
【0059】
例1:(LiPF6:100mM,LiFSI:100mM,LiFSI:100mM,LiTfO:100mM,LiAsF6:10mM)
例2:(-,LiBr:100mM,LiAsF6:0.5mM,DOL:0.25vol%,LiAsF6:10mM)
例3:(LiTFSI:100mM,LiTfO:100mM,LiBr:100mM,LiAsF6:10mM,LiAsF6:10mM)
例4:(LiFSI:5mM,LiFSI:5mM,LiTfO:100mM,LiBr:100mM,DME:5vol%)
例5:(LiBF4:5mM,LiTFSI:100mM,LiBOB:10mM,LiF:10mM,VC:5vol%)
例6:(LiBF4:5mM,LiFSI:5mM,LiClO4:5mM,LiF:0.5mM,DMC:5vol%)
例7:(LiPF6:100mM,LiAsF6:0.5mM,DME:0.25vol%,LiAsF6:10mM,LiF:10mM)
例8:(LiTfO:5mM,LiPF6:100mM,DME:0.25vol%,DOL:0.25vol%,LiBOB:10mM)
例9:(LiBF4:5mM,LiTFSI:100mM,LiClO4:100mM,DME:0.25vol%,VC:5vol%)
例10:(-,LiTfO:100mM,LiAsF6:0.5mM,LiF:0.5mM,LiAsF6:10mM)
例11:(-,LiBF4:5mM,LiAsF6:0.5mM,LiCl:0.5mM,LiF:10mM)
例12:(LiPF6:100mM,LiFSI:100mM,LiTfO:100mM,LiF:10mM,DOL:5vol%)
例13:(LiPF6:5mM,LiBF4:5mM,LiFSI:5mM,LiBOB:0.5mM,DOL:5vol%)
例14:(-,LiTFSI:5mM,LiTfO:5mM,LiBOB:0.5mM,LiCl:10mM)
例15:(LiBF4:5mM,LiClO4:100mM,DMC:0.25vol%,DMC:5vol%,VC:5vol%)
例16:(LiBF4:100mM,LiBF4:100mM,LiBOB:0.5mM,LiBOB:0.5mM,LiCl:10mM)
例17:(-,LiClO4:100mM,LiBOB:0.5mM,LiCl:0.5mM,LiBOB:10mM)
例18:(LiPF6:5mM,LiTFSI:5mM,LiFSI:5mM,LiBr:100mM,DME:5vol%)
例19:(LiBr:5mM,LiPF6:100mM,LiBr:100mM,LiBOB:0.5mM,VC:0.25vol%)
例20:(LiTFSI:5mM,LiBr:5mM,LiBF4:100mM,DMC:0.25vol%,DOL:0.25vol%)
例21:(LiFSI:5mM,LiFSI:5mM,LiBr:5mM,LiBOB:0.5mM,LiCl:0.5mM)
例22:(-,VC:0.25vol%,DMC:5vol%,DME:5vol%,VC:5vol%)
例23:(LiCl:0.5mM,DME:0.25vol%,DOL:0.25vol%,LiCl:10mM,VC:5vol%)
例24:(LiPF6:5mM,LiTFSI:5mM,LiBOB:0.5mM,DOL:0.25vol%,LiBOB:10mM)
例25:(LiPF6:5mM,LiBr:100mM,LiF:0.5mM,VC:0.25vol%,VC:5vol%)
例26:(-,LiTfO:5mM,LiBF4:100mM,DME:0.25vol%,VC:5vol%)
例27:(LiBF4:5mM,DMC:0.25vol%,LiCl:10mM,DMC:5vol%,VC:5vol%)
例28:(LiTfO:5mM,LiTfO:5mM,LiAsF6:10mM,DMC:5vol%,DOL:5vol%)
例29:(-,LiTFSI:5mM,LiBr:5mM,LiAsF6:10mM,VC:5vol%)
例30:(LiPF6:5mM,LiF:0.5mM,VC:0.25vol%,DME:5vol%,VC:5vol%)
【0060】
例31:(LiPF6:100mM,LiFSI:100mM,LiFSI:100mM,LiTfO:100mM,LiAsF6:10mM)
例32:(-,LiBr:100mM,LiAsF6:0.5mM,DOL:0.25vol%,LiAsF6:10mM)
例33:(LiTFSI:100mM,LiTfO:100mM,LiBr:100mM,LiAsF6:10mM,LiAsF6:10mM)
例34:(LiFSI:5mM,LiFSI:5mM,LiTfO:100mM,LiBr:100mM,DME:5vol%)
例35:(LiBF4:5mM,LiFSI:5mM,LiClO4:5mM,LiF:0.5mM,DMC:5vol%)
例36:(LiPF6:100mM,LiAsF6:0.5mM,DME:0.25vol%,LiAsF6:10mM,LiF:10mM)
例37:(LiTfO:5mM,LiPF6:100mM,DME:0.25vol%,DOL:0.25vol%,LiBOB:10mM)
例38:(-,LiTfO:100mM,LiAsF6:0.5mM,LiF:0.5mM,LiAsF6:10mM)
例39:(-,LiBF4:5mM,LiAsF6:0.5mM,LiCl:0.5mM,LiF:10mM)
例40:(LiPF6:100mM,LiFSI:100mM,LiTfO:100mM,LiF:10mM,DOL:5vol%)
例41:(LiPF6:5mM,LiBF4:5mM,LiFSI:5mM,LiBOB:0.5mM,DOL:5vol%)
例42:(-,LiTFSI:5mM,LiTfO:5mM,LiBOB:0.5mM,LiCl:10mM)
例43:(LiBF4:100mM,LiBF4:100mM,LiBOB:0.5mM,LiBOB:0.5mM,LiCl:10mM)
例44:(-,LiClO4:100mM,LiBOB:0.5mM,LiCl:0.5mM,LiBOB:10mM)
例45:(LiPF6:5mM,LiTFSI:5mM,LiFSI:5mM,LiBr:100mM,DME:5vol%)
例46:(LiTFSI:5mM,LiBr:5mM,LiBF4:100mM,DMC:0.25vol%,DOL:0.25vol%)
例47:(LiFSI:5mM,LiFSI:5mM,LiBr:5mM,LiBOB:0.5mM,LiCl:0.5mM)
例48:(LiPF6:5mM,LiTFSI:5mM,LiBOB:0.5mM,DOL:0.25vol%,LiBOB:10mM)
例49:(LiTfO:5mM,LiTfO:5mM,LiAsF6:10mM,DMC:5vol%,DOL:5vol%)
例50:(LiBr:5mM,LiCl:10mM,LiF:10mM,DME:5vol%,DME:5vol%)
例51:(LiClO4:5mM,LiClO4:5mM,LiTFSI:100mM,LiTFSI:100mM,LiBOB:10mM)
例52:(LiPF6:5mM,LiClO4:5mM,LiFSI:100mM,LiF:0.5mM,DMC:5vol%)
例53:(LiPF6:100mM,LiClO4:100mM,LiAsF6:0.5mM,DME:0.25vol%,DOL:0.25vol%)
例54:(LiBr:5mM,LiTfO:100mM,LiF:0.5mM,LiBOB:10mM,LiCl:10mM)
例55:(LiClO4:5mM,LiBr:5mM,LiCl:0.5mM,LiF:0.5mM,DOL:5vol%)
例56:(-,LiTFSI:100mM,LiTfO:100mM,LiClO4:100mM,LiAsF6:0.5mM)
例57:(LiTfO:5mM,LiClO4:100mM,LiBr:100mM,LiF:0.5mM,LiAsF6:10mM)
例58:(-,LiBF4:100mM,LiTFSI:100mM,LiCl:0.5mM,DME:0.25vol%)
例59:(LiFSI:100mM,LiBr:100mM,LiBOB:10mM,LiCl:0.5mM,DOL:5vol%)
例60:(DME:0.25vol%,DOL:0.25vol%,LiCl:10mM,LiCl:10mM,DME:5vol%)
【0061】
LiPF6:六フッ化リン酸リチウム
LiBF4:ホウフッ化リチウム
LiTFSI:リチウムビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド
LiFSI:リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド
LiTfO:トリフルオロメタンスルホン酸リチウム
LiClO4:過塩素酸リチウム
LiBr:臭化リチウム
LiAsF6:ヘキサフルオロヒ酸リチウム(V)
LiBOB:リチウムビスオキサレートボラート
LiCl:塩化リチウム
LiF:フッ化リチウム
DMC:ジメチルカーボネート
DME:1,2-ジメトキシエタン
DOL:1,3-ジオキソラン
VC:ビニレンカーボネート
DMA:ジメチルアミン
【0062】
表2、及び、表3は、上記各配合に基づき調製された電解液の電気化学特性である。表2、及び、表3はそれぞれ2つの表に分割されており、各電解液に係る電気化学特性は、表2(その1)及び表2(その2)の各行、並びに、表3(その1)及び表3(その2)の各行(row)にわたって記載されている。
【0063】
例えば、例1の電解液のクーロン効率は1回目が86.2%、2回目が92.6%、3回目が92.9%であり、2回目と3回目の平均が92.8%であり、2回目の析出過電位が57.6mV、溶解過電位が57.0mVであり、合計が114.6mV、3回目の析出過電位が61.4mV、溶解過電位が64.5mVであり、合計が125.9mVである。
例2~例30(表2)、例31~例60(表3)についても同様である。
【0064】
表1、及び、表2の結果から、本最適化方法を用いることによって、VCを含まない配合であっても同様のクーロン効率を有する配合が見出されている。
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【実施例3】
【0069】
図3は、本発明の実施例3に係る最適化システムのハードウェア構成図である。最適化システム300は、プロセッサ301と、記憶デバイス302と、入力デバイス303と、出力デバイス304と、測定デバイス305と、挿入デバイス306と、電極ユニット307と、搬送デバイス308と分注デバイス309とを有しており、電極ユニット307は第1電極と第2電極とを有している。各ハードウェアはデータバスを介して相互にデータを授受できるよう構成されている。
【0070】
プロセッサ301は、例えば、マイクロプロセッサ、プロセッサコア、マルチプロセッサ、ASIC(application-specific integrated circuit)、FPGA(field programmable gate array)、及び、GPGPU(General-purpose computing on graphics processing units)等である。
【0071】
記憶デバイス302は、各種プログラム、及び、データを一時的に、及び/又は、非一時的に記憶する機能を有し、プロセッサ301の作業エリアを提供する。
記憶デバイス302は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ、及び、SSD(Solid State Drive)等である。
【0072】
入力デバイス303は、電極への電位の印加条件、測定条件、及び、検体名等の入力を受け付け、また、最適化システム300への指示の入力を受け付けることができる。入力デバイス303は、キーボード、マウス、スキャナ、及び、タッチパネル等でよい。
【0073】
出力デバイス304は、測定結果、電極への電位の印加状況、検体名、及び、操作手順等を表示できる。出力デバイス304は、液晶ディスプレイ、及び、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等でよい。
また、出力デバイス304は、入力デバイス303と一体として構成されていてもよい。この場合、出力デバイス304がタッチパネルディスプレイであって、GUI(Graphical User Interface)を提供する形態が挙げられる。
【0074】
データバスにより相互にデータを通信可能なプロセッサ301、記憶デバイス302、入力デバイス303、及び、出力デバイス304は、典型的にはコンピュータである。
【0075】
測定デバイス305は、挿入デバイス306によりマイクロプレート310の各ウェル(リアクタ)に挿入される電極ユニット307により、マイクロプレート310の各ウェル内の電解液の電気化学特性を測定する。測定デバイス305は、例えば、ポテンシオスタット等であってよい。
【0076】
挿入デバイス306は、搬送デバイス308により搬送されたマイクロプレート310の各ウェルに電極ユニット307が有する第1電極、及び、第2電極を挿入する。典型的には、挿入デバイス306の直下に搬送されたマイクロプレート310に対して下降する。
【0077】
搬送デバイス308は、分注デバイス309により、各ウェルに電解液が準備されたマイクロプレート310を挿入デバイス306の下に搬送する。搬送デバイス308はロボット、ベルトコンベア、ローラーコンベア、及び、これらの組合せであってよい。
【0078】
分注デバイス309は、マイクロプレート310の各ウェルに複数種類の添加剤を分注し、ウェル内で電解液を作製する。分注デバイスは、添加剤リストの各添加剤が保管される容器と、添加剤をウェルに注入するためのノズルとを有しており、ノズルは容器とマイクロプレート310間を自由に移動できる。
【0079】
図4は、実施例の最適化システム400の機能ブロック図である。最適化システム400は制御部401と、記憶部402と、入力部403と、出力部404と、評価部405と、局所探索部406と、配合生成部407と、更新部408と、終了判定部409とを有している。
【0080】
制御部401は、プロセッサ301を含んで構成される。制御部401は、各部を制御して、最適化システム400の機能を実現する。
記憶部402は、記憶デバイス302を含んで構成される。記憶部402によりプログラム、測定方法、及び、測定データ等が記憶される。
【0081】
入力部403は入力デバイス303を含んで構成される。出力部404は、出力デバイス304を含んで構成される。制御部401がこれらを制御することで、最適化システム400の使用者からの入力を受け付けてそれを記憶部402に記憶させたり、記憶部402に記憶された測定データや更新部408により更新された配合を最適化システム400の使用者に対して表示したりできる。
【0082】
評価部405は、測定デバイス305、挿入デバイス306、電極ユニット307、搬送デバイス308、及び、分注デバイス309を含んで構成される。評価部405は、局所探索部406又は更新部408によって生成又は更新された配合Aに基づき、電解液を調製し、調製した電解液の電気化学特性を評価する。
【0083】
局所探索部406は、記憶部402に記憶されたプログラムが制御部401によって実行されることで実現する機能である。制御部401によって制御される局所探索部406は、初期データセットから局所探索法により、添加剤リストから複数の添加剤を組合せて配合Aを生成する。初期データセットは、評価部405によって取得されたデータであってもよいし、他の装置で測定されたデータ、例えば文献値等であってもよい。
【0084】
配合生成部407は、記憶部402に記憶されたプログラムが制御部401によって実行されることで実現する機能である。制御部401によって制御される配合生成部407は、局所探索部406又は更新部408によって生成、又は、更新された配合Aに基づき、評価部405によって調製、評価された電解液の電気化学特性の測定値と対応する配合Aとを含むデータセットをベイズ最適化法に適用して、新たな配合Bを生成する。
【0085】
更新部408は、記憶部402に記憶されたプログラムが制御部401によって実行されることで実現する機能である。制御部401によって制御された更新部408は、記憶部402に記憶された配合Aを、配合生成部407によって生成された配合Bにより更新する。配合Bは新たな配合Aとして記憶部402に記憶され、それに基づき評価部405により電解液が調製され、評価される。
【0086】
終了判定部409は、記憶部402に記憶されたプログラムが制御部401によって実行されることで実現する機能である。制御部401によって制御される終了判定部409は、予め定められた基準に従い、配合の更新と、配合の生成と、電解液の調製と、測定と、を含む処理、及び、繰り返しを制御する。すなわち、繰り返しの実行と停止を制御する。具体的には、上記繰り返し毎に、予め定められた繰り返し条件に合致するかを確認し、繰り返しの終了を判定する。
上記終了条件は、例えば、繰り返し回数等であってよい。
【0087】
(最適化方法)
次に、最適化システム300の動作について説明する。
図5は最適化システム300の動作フローである。まず、制御部401によって制御された局所探索部406が、初期データセットに基づき、局所探索法を用いて、添加剤リストから複数の添加剤を組合せて配合Aを生成する(ステップS501)。配合Aの生成方法自体は、実施例1として説明した最適化方法におけるステップS101と同様であるので、説明を省略する。以下の各工程においても、既に説明した最適化方法と同様であるものについては説明を省略する。
【0088】
次に、制御部401により制御された評価部405が、配合Aに基づき、電解液を調製して、電解液の電気化学特性を測定して測定値を得る(ステップS502)。
【0089】
次に、制御部401により制御された配合生成部407が配合A、及び、それに対応する測定値を含むデータセットを用いてベイズ最適化により新たな配合Bを生成する(ステップS503)。
【0090】
次に、制御部401に制御された更新部408が配合Aを配合Bにより更新する(ステップS504)。
次に、制御部401に制御された評価部405が配合Aに基づき、電解液を調製して、電解液の電気化学特性を測定して測定値を得る(ステップS505)。
【0091】
次に、制御部401に制御された終了判定部409によって、終了条件が満たされたかが判定される(ステップS506)。終了条件が満たされる場合には、(ステップS506:YES)、最適化は終了する。
一方、終了条件が満たされない場合は、ステップS503、ステップS504、及び、ステップS505が再び実行される。
【実施例4】
【0092】
図6は本発明の実施例4に係る最適化システムの機能ブロック図である。最適化システム600は、リスト更新部601を有していること以外は、その他の機能、及び、ハードウェア構成は実施例3に係る最適化システム400と同様である。以下では、実施例3に係る最適化システム400との相違点について説明する。
【0093】
リスト更新部601は、記憶部402に記憶されたプログラムが制御部401によって実行されることで実現する機能である。制御部401によって制御されるリスト更新部601は、予め定められた頻度を超えて配合Aに使用される添加剤を頻用添加剤として検知し、添加剤リストから上記頻用添加剤を除いた更新済みリストを作成し、添加剤リストを更新済みリストで更新する。
【0094】
次に、最適化システム600の動作について説明する。
図7は、本発明の実施例4に係る最適化システムの動作フロー図である。
まず、制御部401により制御された局所探索部406が、初期データセットに基づき、局所探索法を用いて、添加剤リストから複数の添加剤を組合せて配合Aを生成する(ステップS701)。
【0095】
次に、制御部401に制御された評価部405が配合Aに基づき、電解液を調製して、電解液の電気化学特性を評価して測定値を得る(ステップS702)。
【0096】
次に、制御部401に制御されたリスト更新部601が、予め定められた頻度を超えて配合Aに使用される添加剤を頻用添加剤として検知し、添加剤リストから頻用添加剤を除いた更新済みリストを作成し、添加剤リストを更新済みリストで更新する(ステップS703)。
【0097】
次に、制御部401に制御された配合生成部407が、配合A、及び、それに対応する測定値を含むデータセットを用いてベイズ最適化により新たな配合Bを生成する(ステップS704)。
【0098】
次に、制御部401に制御された更新部408が、配合Aを配合Bにより更新する(ステップS705)。
【0099】
次に、制御部401に制御された評価部405が配合Aに基づき、電解液を調製して、電解液の電気化学特性を測定して測定値を得る(ステップS706)。
【0100】
次に、制御部401に制御された終了判定部409によって終了条件が満たされたかが判定される(ステップS707)。終了条件が満たされた場合(ステップS707:YES)最適化は終了する。終了条件が満たされない場合、ステップS704、ステップS705、及び、ステップS706が繰り返される。
【0101】
本最適化システムは、リスト更新部601を有しており、頻用添加剤を除いた添加剤リストが配合生成部407で利用されるため、最初のベイズ最適化の時点で、局所解から十分に遠い解が得られる可能性が高く、より効率的に最適化を行うことができる。具体的には、ベイズ最適化、電解液の調製、評価の一連の繰り返し回数をより少なくすることができる。
【実施例5】
【0102】
次に、上記最適化システムによって得られた電解液のリチウム二次電池用電解液としての性能を評価した結果について説明する。
使用した電解液は、すでに説明した、例59:(LiFSI:100mM,LiBr:100mM,LiBOB:10mM,LiCl:0.5mM,DOL:5vol%)の配合の電解液である。この電解液は、実験におけるサンプルナンバーが183750であったため、以下の説明、及び、関係する図面においては、この電解液のことを「No.183750」等ということがある。
【0103】
この電解液は、(i)VCを含まないこと、(ii)添加剤として5種類の化学物質を含んでおり,相乗効果の観点から魅力的であり、(iii)Li-O2電池(リチウム空気電池)の酸素正極の性能向上に寄与するLiBrを含んでおり、充電プロセス中にレドックスメディエーターとして機能することが期待できることから選択された。
【0104】
まず、Ni箔を作用極、Li箔を対極として、Liの析出・溶解を繰り返した場合の電気化学的プロファイルを調べた。具体的には、電池の性能試験によく用いられる2032型コイン型セルを使用し、ロングサイクル試験、及び、定電解(galvanostatic)試験を行った。
【0105】
具体的な実験方法について説明する。
まず、セルに、作用極としてニッケル箔(16mm、厚さ30μm、ニラコ製)、対極として金属リチウム箔(φ:16mm、厚さ400μm、本城金属製)を入れた。セパレータには、ガラスフィルター(φ:20mm、グレード:GF/A、Whatman製)を使用し、真空下、60℃で15時間乾燥させた。セルには100μLの電解液を注入した。
【0106】
図27は作成したリチウム二次電池の積層構造を説明するための模式図である。リチウム二次電池80は、ニッケル箔81と、金属リチウム箔83と、ニッケル箔81及び金属リチウム箔83とを隔てるセパレータ82とを有しており、これらが図示しない容器(セル)内に電解液と共に封入されている。なお、本実施例において使用した各部材(正極、負極、及び、セパレータ)の材質はそれぞれ一例であり、本発明の実施形態に係る電解液を含むリチウム二次電池用に用いられる各部材の材質は、公知のものを特に制限なく適用できる。
【0107】
ロングサイクル試験には、対称型のリチウムセル(φ:16mm、厚さ200μm、本城金属製)を用いた。定電流電解(galvanostatic)試験は、電池充放電装置(HJ1020mSD8、北斗電工製)を用いて行った。電流密度0.5mA/cm2、容量0.5mAh/cm2、カットオフ電圧-0.5V/0.5Vの条件で、Liの析出/溶解を繰り返し行った。
【0108】
図8~16は、Li/Li対称型セルにおけるLi析出・溶解サイクルの電気化学的プロファイルである。ここで、
図8a、
図9~11は、電解液として多成分の添加剤を含まない1.5M LiNO
3のDMA溶液を用いた場合の結果であり、
図8b、
図12~16は、電解液として、No.183750を用いた場合の結果である。
【0109】
どちらの電解液を用いたセルも100mVの過電圧で安定した電圧プラトーを示しており、可逆的なLiの析出/溶解反応を示唆している。1.5M LiNO
3のDMA溶液では、70サイクル目あたりから電圧が徐々に上昇した(
図8aおよび
図9~11)。その結果、103サイクル目にはLiの樹状突起が成長して短絡し、セルが停止した。
【0110】
一方、No.183750を使用したセルでは、100サイクルまで安定してLiの析出/溶解が進行した。これは、その場で形成されたSEI(solid electrolyte interface)がDMA溶媒の不要な分解反応を効果的に抑制し、電極表面の抵抗成分の形成を最小限に抑えていることを示唆している。過電圧は100サイクルの間、大きな上昇は見られなかったが、153サイクル目にLiの樹枝状成長による短絡でセルが停止した。
【0111】
次に、No.183750の電解液がLi-O2電池(リチウム空気電池)の性能に及ぼす影響についても調べた。
具体的なセルの組立方法、及び、実験方法は以下のとおりである。
【0112】
正極には、厚さ270μm、炭素量5.4mg/cm2のKB(導電性カーボンブラック「ケッチェンブラック」)系自立性炭素膜を用いた。
「ケッチェンブラックEC600J)(ライオン・スペシャルティ・ケミカルズ製)を65質量%、炭素繊維(平均繊維径6μm、平均長さ3mm)を12質量%、PAN(polyacrylonitrile)を23質量%、均一に分散させるための溶媒としてNMP(N-メチルピロリドン)を用いて、混合スラリーを調製した。この混合スラリーを、ドクターブレードを用いた湿式製膜法により均一な厚さに成形してシート状にした。
【0113】
成形後、貧溶媒であるメタノールに浸し、非溶媒誘起相分離法(NIPS)により多孔質フィルムに変換した。さらに,80℃で10時間乾燥させて揮発性溶媒を除去した後,箱型炉(デンケン・ハイデンタル製)を用いて、大気中、230℃で3時間の加熱処理(不融化処理)を行った。
【0114】
水分含有量が10ppm以下の乾燥した室内で、金属リチウム箔(直径=16mm、厚さ=0.2mm、本城金属製)、ポリオレフィン、ポリカーボネートを順次積層して、Li-O2セルを組み立てた。
【0115】
より具体的には、金属リチウム箔(直径=16mm、厚さ=0.2mm、本城金属製)、ポリオレフィン系セパレータ(直径=18mm、厚さ=0.02mm)、ガラス繊維系セパレータ(直径=18mm、厚さ=0.27mm、グレード「GF-A」、Whatman製)、カーボン電極(直径=16mm、厚さ=0.27mm)、ガス拡散層(直径=16mm、厚さ=0.19mm、商品名「TGP-H-060」、東レ製)を順次積層して、水分含有量10ppm以下のドライルームで組み立てた。
【0116】
組み立ての際には,各セパレータに100μLの電解液を加えた。セル内の酸素圧力は0.8MPaに設定した。電流密度0.5mA/cm2、容量0.5mAh/cm2、カットオフ電圧2.0V/5.0Vの条件で、繰り返しの放電・充電試験を行った。
【0117】
図28は、作成したリチウム空気電池(Li-O
2二次電池)の積層構造を説明するための模式図である。リチウム空気電池90は、ガス拡散層91、カーボン電極92、セパレータ96(ガラス繊維系セパレータ93、ポリオレフィン系セパレータ94)、及び、金属リチウム箔95が順次積層されて構成され、セパレータ96には、電解液が含まれている。なお、本実施例において使用した各部材(ガス拡散層、正極、負極、及び、セパレータ)の材質はそれぞれ一例であり、本発明の実施形態に係る電解液を含む、リチウム空気電池であるリチウム二次電池用に用いられる各部材の材質は、公知のものを特に制限なく適用できる。
【0118】
図17~
図26は、Li-O
2セルの放電/充電プロファイルである。ここで、
図17a、
図18~21は、電解液として多成分の添加剤を含まない1.5M LiNO
3のDMA溶液を用いた場合の結果であり、
図17b、
図22~26は、電解液として、No.183750を用いた場合の結果である。
【0119】
上記の結果から、いずれのセルも,Li-O2電池の代表的な放電/充電プロファイルを示している。放電過程では,約2.7Vの安定した電圧プラトーを示した。充電プロセスでは、1.5M LiNO3のDMA溶液を用いたセルでは、3.0Vから4.2Vへと徐々に電圧が上昇した。
【0120】
一方、電解液としてNo.183750を用いたセルでは,充電過程でLi2O2を効果的に分解するためのレドックスメディエーターとして働く電解液中のBrイオンの効果により、充電電圧の低下が観察された。
【0121】
次に、ロングサイクル試験を行った。
図17a、
図18~21の結果から、1.5M LiNO
3のDMA溶液を用いたLi-O
2セルでは,電流密度0.5 mA/cm
2、容量制限0.5 mA/cm
2で50サイクル目までは安定した放電/充電サイクルが進行することがわかった。しかし、60サイクル目頃から過電位の増加が見られた。
【0122】
一方、No.183750を使用したLi-O2セルの場合、電流密度0.5 mA/cm2、容量制限0.5 mA/cm2で、100サイクル以上にわたって安定した放電/充電反応が進行した。
【0123】
本探索方法によって発見された配合の電解液は、リチウム(イオン)二次電池の安定動作を持続させるために優れた効果を発揮することが明らかになった。
【符号の説明】
【0124】
80 :リチウム二次電池
81 :ニッケル箔
82 :セパレータ
83 :金属リチウム箔
90 :リチウム空気電池
91 :ガス拡散層
92 :カーボン電極
93 :ガラス繊維系セパレータ
94 :ポリオレフィン系セパレータ
95 :金属リチウム箔
96 :セパレータ
300 :最適化システム
301 :プロセッサ
302 :記憶デバイス
303 :入力デバイス
304 :出力デバイス
305 :測定デバイス
306 :挿入デバイス
307 :電極ユニット
308 :搬送デバイス
309 :分注デバイス
310 :マイクロプレート
400 :最適化システム
401 :制御部
402 :記憶部
403 :入力部
404 :出力部
405 :評価部
406 :局所探索部
407 :配合生成部
408 :更新部
409 :終了判定部
600 :最適化システム
601 :リスト更新部