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特許7495161風力タービンを組み立てる方法および風力タービンシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】風力タービンを組み立てる方法および風力タービンシステム
(51)【国際特許分類】
   F03D 80/50 20160101AFI20240528BHJP
   F03D 13/25 20160101ALI20240528BHJP
   B63B 35/00 20200101ALI20240528BHJP
   B63B 75/00 20200101ALI20240528BHJP
   B63B 77/10 20200101ALI20240528BHJP
【FI】
F03D80/50
F03D13/25
B63B35/00 T
B63B75/00
B63B77/10
【請求項の数】 19
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023019612
(22)【出願日】2023-02-13
(62)【分割の表示】P 2020508086の分割
【原出願日】2018-04-19
(65)【公開番号】P2023071708
(43)【公開日】2023-05-23
【審査請求日】2023-03-08
(31)【優先権主張番号】1706390.0
(32)【優先日】2017-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】519377233
【氏名又は名称】センス ウィンド リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】ゲレツ、パトリック
(72)【発明者】
【氏名】バラード、ジョージ
【審査官】山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/055598(WO,A1)
【文献】韓国登録特許第1435376(KR,B1)
【文献】特開2012-025272(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 80/50
F03D 13/25
B63B 35/00
B63B 75/00
B63B 77/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船(71)であって、往復台‐ナセルアセンブリ(27,9)、または往復台‐ローター‐ナセルアセンブリ(27,11,9)を前記船から洋上風力タービンタワー(3)の側部へ移すプラットフォームシステム(77)を含み、
前記プラットフォームシステム(77)は、前記往復台‐ナセルアセンブリ(27,9)または前記往復台‐ローター‐ナセルアセンブリ(27,11,9)を支持する可動プラットフォーム(79)と、プラットフォーム制御システムと、少なくとも1つのアクチュエータ(83)と、少なくとも1つのセンサーとを含み、
前記プラットフォーム制御システムは、前記少なくとも1つのセンサーから受信された信号に応答して前記少なくとも1つのアクチュエータの動作を制御し、前記可動プラットフォーム(79)の配向を調整して、前記往復台‐ナセルアセンブリ(27,9)または前記往復台‐ローター‐ナセルアセンブリ(27,11,9)を前記船(71)の前記可動プラットフォーム(79)から前記洋上風力タービンタワー(3)の側部に移す間、風と波により生じる前記船の動きに対応するよう構成されるものである、船。
【請求項2】
請求項1記載の船において、前記プラットフォーム制御システムは、前記往復台‐ナセルアセンブリ(27,9)または前記往復台‐ローター‐ナセルアセンブリ(27,11,9)を前記船(71)から前記風力タービンタワー(3)に移す間、前記可動プラットフォーム(79)が前記風力タービンタワーに対して実質的に不動に保たれるよう構成されるものである、船。
【請求項3】
請求項1または2に記載の船において、前記プラットフォーム制御システムが、前記可動プラットフォーム(79)を実質的に水平方向に維持するように構成されているものである、船。
【請求項4】
請求項1、2、3のいずれか1項に記載の船において、前記可動プラットフォーム(79)は、前記往復台‐ナセルアセンブリ(27,9)または前記往復台‐ローター‐ナセルアセンブリ(27,11,9)を前記風力タービンタワー(3)に輸送するためのプラットフォームレール(84)を有するものである、船。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の前記船と往復台‐ナセルアセンブリ(27,9)または往復台‐ローター‐ナセルアセンブリ(27,11,9)を有する風力タービンシステムであって、前記往復台‐ナセルアセンブリ(27,9)または前記往復台‐ローター‐ナセルアセンブリ(27,11,9)は、エレベーター往復台(27)を有するものである、風力タービンシステム。
【請求項6】
請求項5記載の船を有する風力タービンシステムであって、前記エレベーター往復台(27)は、前記風力タービンタワー(3)上の少なくとも1つのタワー支持構造(20)と係合して、前記風力タービンタワー(3)の側部で前記往復台‐ナセルアセンブリ(27,9)または前記往復台‐ローター‐ナセルアセンブリ(27,11,9)の重量を支持するための少なくとも1つの往復台支持構造(39)を有し、
前記エレベータ往復台(27)は、前記風力タービンタワー(3)上の少なくとも1つのエレベータレール(21a、21b)にリリース可能に取り付けるためのレール取付システム(31)を有し、
前記エレベータ往復台(27)は、前記風力タービンタワー(3)上の前記少なくとも1つのエレベータレール(21a、21b)に沿って、前記風力タービンタワー(3)の頂部まで前記往復台ロータ・ナセルアセンブリ(27、11、9)を上昇させるための駆動システムを有するものである、船。
【請求項7】
往復台‐ナセルアセンブリ(27,9)、または往復台‐ローター‐ナセルアセンブリ(27,11,9)を船(71)から洋上風力タービンタワー(3)の側部へ移す方法であって、
前記船(71)は、可動プラットフォーム(79)と、プラットフォーム制御システムと、少なくとも1つのアクチュエータ(83)と、少なくとも1つのセンサーとを含むプラットフォームシステム(77)を含み、
前記方法は、
前記往復台‐ナセルアセンブリ(27,9)または前記往復台‐ローター‐ナセルアセンブリ(27,11,9)を、前記船(71)で前記風力タービンタワー(3)に輸送する工程と、
前記風力タービンタワー(3)の側部に隣接して前記可動プラットフォーム(79)を配置するために、前記船(71)を操作する工程と、
前記可動プラットフォーム(79)上で前記往復台‐ナセルアセンブリ(27,9)または前記往復台‐ローター‐ナセルアセンブリ(27,11,9)を支持する工程と、
前記プラットフォーム制御システムを用いて前記少なくとも1つのアクチュエータ(83)の動作を制御し、前記少なくとも1つのセンサから受信した信号に応答して前記可動プラットフォーム(79)の向きを調整し、前記往復台‐ナセルアセンブリ(27,9)または前記往復台‐ローター‐ナセルアセンブリ(27,11,9)を前記船(71)の前記可動プラットフォーム(79)から前記洋上風力タービンタワー(3)の側部に移す際の風と波によって生じた前記船(71)の動きに対応する工程と、
前記往復台‐ナセルアセンブリ(27,9)または前記往復台‐ローター‐ナセルアセンブリ(27,11,9)を前記船(71)の前記可動プラットフォーム(79)から前記洋上風力タービンタワー(3)の側部に移して取り付ける工程と、
を有する、方法。
【請求項8】
請求項7記載の方法において、前記往復台‐ナセルアセンブリ(27,9)または前記往復台‐ローター‐ナセルアセンブリ(27,11,9)を前記船から前記風力タービンタワー(3)に移す間、前記可動プラットフォーム(79)を前記風力タービンタワー(3)に対して実質的に不動に保つ工程を有するものである、方法。
【請求項9】
請求項7または8記載の方法において、前記可動プラットフォーム(79)を実質的に水平方向に保持する工程を含むものである、方法。
【請求項10】
請求項7、8、及び9のいずれかに記載の方法において、
前記往復台‐ナセルアセンブリ(27,9)または前記往復台‐ローター‐ナセルアセンブリ(27,11,9)を前記可動プラットフォーム(79)上のプラットフォームレール(84)に沿って前記風力タービンタワー(3)に移動させる工程を含むものである、方法。
【請求項11】
請求項7~10のいずれか一項に記載の方法において、前記往復台‐ローター‐ナセルアセンブリ(27,11,9)は、ローターハブ(13)を有するロータ(11)を含み、前記方法は、前記往復台‐ローター‐ナセルアセンブリ(27,11,9)を、前記ローターハブ(13)がほぼ下向きになる配向で前記風力タービンタワー(3)に取り付ける工程を有するものである、方法。
【請求項12】
請求項11記載の方法において、前記ロータ(11)は、ローターブレード(15)を有し、前記方法は、前記ナセルに接続された張力のかかったストラップ(40)で前記ローターブレード(15)の先端を支持する工程を有するものである、方法。
【請求項13】
請求項7~10のいずれか1項に記載の方法において、前記往復台‐ナセルアセンブリ(27,9)が、ローターハブ(13)を有するロータ(11)を受け入れるように構成され、前記方法が、ほぼ下向きに配向されたローターハブ(13)を受け入れるように配向された前記風力タービンタワー(3)上に前記往復台‐ナセルアセンブリ(27,9)を取り付ける工程を有するものである、方法。
【請求項14】
請求項7~13のいずれか1項に記載の方法において、
前記往復台‐ナセルアセンブリ(27,9)または前記往復台‐ローター‐ナセルアセンブリ(27,11,9)は、エレベータ往復台(27)およびナセル(9)を有し、前記ナセル(9)は、エレベータ往復台(27)にリリース可能に枢動可能に取り付けられ、前記方法は、前記エレベータ往復台(27)の向きを実質的に水平な向きから実質的に垂直な向きに変更する工程を有するものである、方法。
【請求項15】
請求項7~14のいずれか1項に記載の方法において、前記往復台‐ナセルアセンブリ(27,9)または前記往復台‐ローター‐ナセルアセンブリ(27,11,9)は、エレベータ往復台(27)を備え、前記方法は、プラットフォーム制御システム(81)が、前記エレベータ往復台(27)上のセンサーからの制御信号及びステータス情報を使って、前記エレベータ往復台(27)を前記風力タービンタワー(3)上に位置合わせする工程を有するものである、方法。
【請求項16】
請求項7~15のいずれか1項に記載の方法において、前記風力タービンタワー(3)は、少なくとも1つのタワー支持構造(20)を有し、前記往復台‐ナセルアセンブリ(27,9)または前記往復台‐ローター‐ナセルアセンブリ(27,11,9)は、少なくとも1つの往復台支持構造(39)を有するエレベータ往復台(27)を含み、前記方法は、前記少なくとも1つの往復台支持構造(39)を前記少なくとも1つのタワー支持構造(20)と係合させ、前記風力タービンタワー(3)の側部で前記往復台‐ナセルアセンブリ(27,9)または前記往復台‐ローター‐ナセルアセンブリ(27,11,9)の重量を支える工程を有するものである、方法。
【請求項17】
請求項7~15のいずれか1項に記載の方法において、前記往復台‐ナセルアセンブリ(27,9)または前記往復台‐ローター‐ナセルアセンブリ(27,11,9)が、レール取り付けシステム(31)を有するエレベータ往復台(27)を有し、前記方法は、前記風力タービンタワー(3)上の少なくとも1つのエレベータレール(21a、21b)に前記レール取り付けシステム(31)をリリース可能に取り付ける工程を有するものである、方法。
【請求項18】
請求項17記載の方法において、前記少なくとも1つのエレベータレール(21a、21b)に沿って前記往復台‐ローター‐ナセルアセンブリ(27,11,9)を前記風力タービンタワー(3)の頂部まで上昇させ、前記ローター‐ナセルアセンブリ(11,9)を前記風力タービンタワー(3)の頂部に取り付ける工程を有するものである、方法。
【請求項19】
請求項7~18のいずれか1項に記載の方法において、前記往復台‐ナセルアセンブリ(27,9)または前記往復台‐ローター‐ナセルアセンブリ(27,11,9)が、エレベータ往復台(27)を電源および制御システムのうちの少なくとも1つに接続するためのアンビリカル・ケーブルを有するエレベータ往復台(27)を有し、この方法は、前記往復台‐ナセルアセンブリ(27,9)または前記往復台‐ローター‐ナセルアセンブリ(27,11,9)を前記風力タービンタワー(3)の側部に移し及び取り付けする間に、前記アンビリカルケーブルの接続を前記船(71)上に配置された制御システムから前記風力タービンタワー(3)に移す工程を有するものである、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力タービンを組み立てる方法と、風力タービンシステムとに関する。また、本発明は、船舶、例えばローター‐ナセルアセンブリを輸送するために使用できる船舶と、風力タービン用エレベーターの往復台(キャリッジ)と、風力タービンの保守点検を行う方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
風力タービンの設置は、すべての風力エネルギー事業、特に洋上風力発電事業において、高リスク、高コストの要素となっている。この実施法、設備の使用法、工程、および計画が事業プログラムおよび予算要件を満たす鍵となる。
【0003】
洋上風力発電事業は、現在、より大容量のものが、より沖合いおよび深度の大きい海で、より大きなタービンを使って開発されている。これらの開発は、費用効果の高い設備に加え、事業の運用期間中における主要な構成要素の保守点検および交換の点で、付加的な技術的課題を生じている。
【0004】
これまで、洋上タービンの設備開発は、より深度の大きい海での運用能力を備えたより大型のジャッキアップ型クレーン船を配備するという道筋をたどってきたが、非常にコストがかかり、技術的におよび商業的に実現可能な最大水深には限界がある。現在開発中の一部の領域では、沿岸水域の深度が、ジャッキアップ型舶の現在の限界値60mを急激に超えてしまい、この設置方法の使用は非実用的である。それに代わる解決策である大きなセミサブマージブル型クレーン船の使用は、ジャッキアップ型船よりいっそう高価で、可用性も低い。
【0005】
また、沖合の気象状況は変わりやすく、設置工程が風と波の影響を受けるため、しばしば風力タービンの設置に使える時間は比較的短かい。風と波は特にローター‐ナセルアセンブリを船からタワーに移す際に困難を生じ、設置できる時間長をさらに縮めてしまうこともある。そのため、ローター‐ナセルアセンブリをタワーに移す手段を改善して、風と波が船に及ぼす影響をある程度軽減することが望ましい。
【0006】
同様な問題は、陸上で風力タービンを設置する際にも起こる。より大きなタワーは、立ち上げと、タワーへのローター‐ナセルアセンブリ取り付けが難しく、風力タービンの設置スピードを上げてウィンドファーム(風力発電所)の経済性を改善することが強く望まれている。また、保守および修理のためタービンにアクセスする際も困難が伴う。
【0007】
そのため、タービンの運搬、設置、および保守点検に新たなアプローチが必要とされている
これらの問題の一部に対処するため、エレベーターシステムを使ってタワーの基部から頂部までローター‐ナセルアセンブリを上昇させ、定位置へと前記ローター‐ナセルアセンブリを回転させることが提案されてきている(例えばUS6888264およびUS2012/0328442を参照)。これらの構成は地上の風力タービン用に意図されているが、送達車からタワー頂部までの一体型の移し替えシステムでは、満足のいく問題解決が得られていない。これらの例において、エレベーターの往復台はタワーの基部でレールに取り付けられる。ナセルがエレベーターの往復台に取り付けられ、ローターが前記ナセルの頂部に取り付けられて、ローター‐ナセルアセンブリが完成する。ローターハブは略上向きになる。これにより、前記ナセルは略垂直配向になる。前記ローターは略水平配向になる。次いで前記エレベーターが前記タワー頂部までローター‐ナセルアセンブリを上昇させ、約90度回転させる。前記タービンは前記タワー頂部の定位置に固定される。この方法は陸上タワーの文脈で提案されたもので、これは大型トラックで構成要素部品を送達し、クレーンを提供して現場での組み立て工程を行いローター‐ナセルアセンブリを構築することが可能なためであるが、この方法は、現場での組み立て工程がはるかに難しい洋上タワーの文脈での使用には比較的適していない。また、風と波、そして劣悪な気象条件の影響により、通常、風力タービンを組み立てる時間は非常に限られるため、エレベーター構想は、アプローチ全体を洋上の文脈に適合させるよう再検討する必要がある。
【0008】
既知のシステムに伴うさらに別の問題は、ローター‐ナセルアセンブリがエレベーターの往復台により支持される態様である。ローター‐ナセルアセンブリがエレベーターの往復台により支持される態様は、垂直配向から水平配向へとナセルを回転させるために必要な駆動力の大きさに著しい影響を及ぼす。
【0009】
提案されたシステムに伴うさらに別の問題は、タワーの大半が基部よりも細い頂部を有することである。そのため、タワーに取り付けられたエレベーターのレール間の間隔は、タワーの基部へ向かうほど大きくなり、タワーの頂部へ向かうほど小さくなる場合がある。エレベーターに使用されるいかなる駆動システムにも、この問題があるはずである。
【0010】
言うまでもなく、そのようないかなる改良も主に洋上の文脈を対象としたものであるが、当業者であれば、その改良は陸上のウィンドファームにも適用できることが理解されるであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記を受け、本発明の目的は、上述した問題のうち少なくとも1つを軽減し、または少なくとも既存システムの代替形態を提供する、風力タービンを組み立てる方法および風力タービンシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様によれば、風力タービンを組み立てる方法が提供され、この方法は、往復台‐ナセルアセンブリを形成するため、エレベーター往復台をナセルに取り付ける工程と、前記往復台‐ナセルアセンブリをタワーに取り付ける工程とを含む。
【0013】
本発明は、事前に組み立てられた往復台‐ナセルアセンブリ(ローターを伴い、または伴わない)を提供し、これはユニットとして前記タワーの側部に取り付けられる。すなわち、前記ナセルは、前記エレベーター往復台が前記ナセルに取り付けられたのち、前記タワーに取り付けられる。これにより、現場での前記組み立て工程が迅速化される。本発明は、陸上および洋上の風力発電タービンに使用することができる。本発明は、特に洋上風力発電タービンに適用可能であり、これは、気象状況が変わりやすく風力タービン組み立てが可能な時間長が限られることが多いためである。本発明は、ローター‐ナセルアセンブリの運搬および設置だけでなく、風力タービンの保守点検を容易にする上でも、新たな解決策を提供し、設置も保守点検も迅速化・安全化し、現行のクレーンシステムおよびいかなるエレベーターシステム提案の双方よりも経済的にすることを目的としている。これにより、前記タービンの前記ローター‐ナセルアセンブリは、大型クレーン船を必要とすることなく、気象が作業に適した短い時間内に、設置および取り外しが可能になる。本発明は、特に、タービンが底の深い海域および/または沿岸から遠い場所で設置される場合に競争力がある。これは、より深い沖合の海へ向かう動きが世界各地で高まっている点で、現在の洋上風力発電開発の発展とも適合している。本発明は、タービンが大型化され、タワーがより高くなるに伴い、いっそう望ましいものになっていく。これは、より大型なタービンほど設置に特殊な機械設備、例えばより高いクレーン、より大型船などを要するためである。リスクを増大させるウィンドファーム設置用のこの特殊な機械設備には、より多額の投資が必要である。また、これはウィンドファーム設置に利用できる専門機械設備が少なくなっていく可能性も意味する。
【0014】
前記方法は、前記往復台‐ローター‐ナセルアセンブリをユニットとして前記タワーに運搬する工程を含むことができる。例えば、前記往復台‐ナセルアセンブリは、製造場所で組み立てたのち、ユニットとして風力タービンタワーへ運搬することができる。あるいは、前記ナセル、ローターハブ、ローターブレード、およびエレベーター往復台を、別個の構成要素としてタワーへ運搬することもできる。地上タワーの場合は、前記ナセル、ローターハブ、ローターブレード、およびエレベーター往復台を、大型トラックでタワーまで運搬できる。少なくとも前記往復台およびナセルは、タワーに取り付ける前に、事前に組み立てて往復台‐ナセルアセンブリとする。
【0015】
本方法は、前記ナセルにローターを取り付ける工程と、前記往復台‐ローター‐ナセルアセンブリを前記タワーに取り付ける工程とを含むことができる。このように、本方法は、前記往復台‐ローター‐ナセルアセンブリを、ユニットとして前記タワーに取り付ける工程を提供する。すなわち、前記往復台‐ローター‐ナセルアセンブリは、前記アセンブリを前記タワーに取り付ける前に製造される。これは、沖合での設置に好適な方法である。
【0016】
タワーは沖合にある場合があり、本方法は、船、例えば船舶により、前記タワーへ、前記往復台‐ナセルアセンブリ、または往復台‐ローター‐ナセルアセンブリを輸送する工程と、前記船から前記タワーへ、前記往復台‐ナセルアセンブリ、または往復台‐ローター‐ナセルアセンブリを移し替える工程とを含む。好適な実施形態において、前記船は本質的に、少なくとも1つのアセンブリを運搬するよう修正された従来船舶である。すなわち、本発明によれば、前記船は、ジャッキアップ型クレーン船である必要も、大型のセミサブマージブル型クレーン船である必要もない。
【0017】
前記船は、当該船から洋上風力発電タービンタワーへ、前記往復台‐ナセルアセンブリ、または往復台‐ローター‐ナセルアセンブリを移し替える、プラットフォームシステムを含むことができる。好適な実施形態において、前記プラットフォームシステムは、可動プラットフォームと、制御システムと、少なくとも1つのアクチュエータと、少なくとも1つのセンサーとを含み、前記制御システムは、前記少なくとも1つのセンサーから受信された信号に応答し、前記少なくとも1つのアクチュエータの動作を自動的に制御して前記可動プラットフォームの配向を調整して、風と波により生じる前記船の動きに対応するよう構成される。前記制御システムは、例えば風と波により生じる、積み替え中の前記船の動きに対応するよう構成される。このように、前記プラットフォームシステムは、前記往復台‐ナセルアセンブリ、または往復台‐ローター‐ナセルアセンブリを前記船から前記洋上タワーへ移し替える間、前記可動プラットフォームの配向を自動的に調整する。前記可動プラットフォーム制御システムは、前記プラットフォームの位置決めを制御して、当該プラットフォームが取り付けられている船の動きにかかわらず、当該プラットフォームが前記タワーに対して実質的に動かずに保たれるようにする。これにより、移し替え中、前記船舶の動きに対応する。
【0018】
本方法は、前記船上に位置する可動支持部に、前記往復台‐ナセルアセンブリ、または往復台‐ローター‐ナセルアセンブリを取り付ける工程と、前記可動支持部を使って格納位置から前記可動プラットフォームへ、前記往復台‐ナセルアセンブリ、または前記往復台‐ローター‐ナセルアセンブリを移動する工程と、前記可動プラットフォームから前記タワーへ、前記往復台‐ナセルアセンブリ、または往復台‐ローター‐ナセルアセンブリを移し替える工程とを含むことができる。前記可動支持部は、レールに取り付けられる。好適な実施形態において、前記可動支持部は、前記船の長さ方向に沿って移動可能である。前記可動プラットフォームは、前記船の一端の方に、好ましくは前記船の後方に取り付けることができる。一部の実施形態において、前記可動プラットフォームは、前記船の長手方向の側方に、例えば当該船の左舷側または右舷側に取り付けることができる。当該可動プラットフォームは、前記船の縁部から張り出すよう、渡り板として構成できる。前記往復台‐ナセルアセンブリ、または往復台‐ローター‐ナセルアセンブリを、前記プラットフォームの高さまで持ち上げるには、斜面またはエレベーターを提供することができる。
【0019】
前記方法は、前記往復台‐ローター‐ナセルアセンブリを、前記船上の可動支持部に取り付ける工程を含むことができる。好ましくは、前記往復台‐ローター‐ナセルアセンブリは、ローターハブが前記船の船体へ向かって下向きになるよう、前記可動部上に搭載される。前記ローターブレードは、前記ハブから実質的に水平に外側へ突出する。前記可動支持部は前記ハブを支持する。前記可動支持部は、車輪付き台枠を含むことができる。前記船のデッキに取り付けられたレールには、前記車輪付き台枠が取り付けられる。前記可動支持部は、スライド可能な台座支持部を含むことができる。前記台座支持部は、前記車輪付き台枠上に取り付けられる。前記台座支持部は、前記台枠に取り付けられたレール上でスライドするよう構成される。前記台座は、基部、ならびに前記ローターハブを受容および支持するよう構成された上方へ突出したアームを含む。
【0020】
本方法は、ストラップによりローターブレードの端部を支持する工程を含むことができる。前記ストラップは、前記ナセルの最上端に固定され、張力がかけられる。これらのストラップは、運搬中に前記ローターが過度に動かないようにし、船上に搭載された前記ローターのブレード先端と海面の間隔を伸ばす。
【0021】
本方法は、最初に、前記往復台‐ナセルアセンブリ、または往復台‐ローター‐ナセルアセンブリを、前記タワーの第1の側部の第1の位置に取り付ける工程を含むことができる。前記第1の位置は、前記タワーの下端の方に位置することが好ましい。
【0022】
本方法は、前記ローターハブが地面または海へ向かって略下向きになる配向で、前記タワーの第1の位置に、前記往復台‐ローター‐ナセルアセンブリを取り付ける工程を含むことができる。前記ローターブレードは、前記ハブから実質的に水平に外側へ突出する。この配向で前記タワーに前記往復台‐ローター‐ナセルアセンブリを取り付けるのは、前記タワー頂部の定位置へ前記ナセルを枢動させることが必要な場合に有益であり、これは、前記往復台が前記ナセルの重心近くで前記ナセルを支持して、当該枢動工程をより容易にできるためである。
【0023】
前記タワーは、少なくとも1つの支持構造を含むことができる。前記往復台‐ナセルアセンブリ、または往復台‐ローター‐ナセルアセンブリは、少なくとも1つの支持構造を含むことができる。本方法は、前記往復台‐ナセルアセンブリ、または往復台‐ローター‐ナセルアセンブリ、支持構造を、前記タワー支持構造に係合させることにより、前記往復台‐ナセルアセンブリ、または往復台‐ローター‐ナセルアセンブリの重量を、前記タワーの第1の側部で支持する工程を含む。好適な実施形態において、前記タワーは複数の支持構造を含み、前記往復台‐ナセルアセンブリ、または往復台‐ローター‐ナセルアセンブリは、複数の支持構造を含む。前記支持構造は、前記タワーの下端の方に位置することが好ましい。前記支持構造は、前記タワーの第1の側部上に位置することが好ましい。前記支持構造は、多数の形状および構成、例えばラグ(lugs)、位置決めピン、フック、オスおよびメス(例えば凹部)、嵌合部材を有してよいことが理解されるであろう。前記支持構造の目的は、前記往復台‐ナセルアセンブリ、または往復台‐ローター‐ナセルアセンブリと、前記タワーとの初期係合を提供すること、ならびに前記エレベーター往復台が、前記タワーに形成されたレールと係合するまで、前記往復台‐ナセルアセンブリ、または往復台‐ローター‐ナセルアセンブリの重量を支持するすることである。
【0024】
前記往復台‐ナセルアセンブリ、または往復台‐ローター‐ナセルアセンブリは、ほぼ加速度ゼロで、前記タワーに取り付けることができる。前記往復台‐ナセルアセンブリ、または往復台‐ローター‐ナセルアセンブリは、非常に重く、通常、400~700トンの範囲である。そのため、前記往復台‐ナセルアセンブリ、または往復台‐ローター‐ナセルアセンブリは、非常に低スピードおよび最低限の加速度で、前記タワーに取り付けられる。
【0025】
前記タワーは、当該タワーの長手方向に沿って構成された少なくとも1つのエレベーターレールを含むことができる。そのレールは、新規製造されるタワーに含めることができる。前記レールは、既存の風力タービンタワーを、例えば保守目的で、または既存のローター‐ナセルアセンブリを新たなローター‐ナセルアセンブリと交換するため、改修して取り付けることが可能である。
【0026】
前記エレベーター往復台は、前記レールにリリース可能に係合する手段を含むことができる。
【0027】
前記リリース可能に前記レールに係合する手段は、選択的に前記レールに係合するよう構成された少なくとも1つの調整可能なベアリングを含むことができる。前記調整可能なベアリングは、前記レールに対し係合および係合解除するよう移動可能である。例えば、前記調整可能なベアリングは、転がり軸受け(ローラーベアリング)またはすべり軸受などの座面を含むことができる。アクチュエータは、前記レールに対し係合および係合解除するよう前記座面を移動させる。前記座面は支持部、例えば枢動可能なアームに取り付けることができる。前記ベアリングまたは各ベアリングは、コントローラから受信される制御信号に基づいて、各々のレールに選択的に係合するよう構成できる。
【0028】
前記リリース可能に前記レールに係合する手段は、前記レールに係合するよう構成された少なくとも1つの調整不能なベアリングを含むことができる。一部の実施形態において、前記調整不能なベアリング、または各調整不能なベアリングは、ローラー要素を含む。一部の実施形態において、前記調整不能なベアリング、または各調整不能なベアリングは、すべり軸受を含む。
【0029】
前記レールまたは各レールは、実質的にT字状の横断面を有するものであってよい。これは前記レールの長さを横切る断面である。
【0030】
前記往復台は、前記エレベーターレールに沿って前記エレベーター往復台を移動させる駆動システムを含むことができる。本方法は、前記駆動システムを作動させて、前記タワーの前記第1の位置から第2の位置まで、前記往復台‐ナセルアセンブリ、または往復台‐ローター‐ナセルアセンブリを移動させる工程を含む。前記第2の位置は、前記タワーの頂部に隣接することが好ましい。
【0031】
前記駆動システムは、少なくとも1つの駆動源、例えば電動機または油圧モーターを含むことができる。前記駆動システムは動力伝達装置、好ましくは減速用動力伝達装置(step-down transmission)を含むことができる。
【0032】
前記駆動システムは、少なくとも1つの駆動ユニットを含むことができる。その駆動ユニットは、少なくとも1つの駆動ギアを含むことが好ましい。前記少なくとも1つの駆動ギアは、エレベーターシステム駆動歯に、例えばラックピニオン構成の形態でリリース可能に係合するよう構成される。前記駆動ユニットまたは各駆動ユニットは、複数の駆動ギアを含むことが好ましい。前記駆動ギアまたは各駆動ギアを移動させると、前記エレベーターシステム駆動歯に対し係合および係合解除するようにできる。例えば、コントローラにより制御されるアクチュエータは、前記駆動ギアまたは各駆動ギアを移動させるよう構成でき、それによりその駆動ギアは前記エレベーター駆動歯に対し係合および係合解除する。好適な実施形態において、前記エレベーターレールは、前記駆動歯を含む。好適な実施形態において、前記エレベーターレールまたは各エレベーターレールは、内側の駆動歯および外側の駆動歯を含む。前記駆動ユニットまたは各駆動ユニットは、前記内側の駆動歯にリリース可能に係合するよう構成された少なくとも1つの駆動ギアと、前記外側の駆動歯にリリース可能に係合するよう構成された少なくとも1つの駆動ギアとを含むことが好ましい。
【0033】
前記駆動システムは、第1および第2の駆動ユニットを含むことができる。前記エレベーターシステムは、第1および第2の駆動歯セットを含むことができる。前記第1の駆動ユニットは、第1の駆動歯セットにリリース可能に係合するよう構成される。前記第2の駆動ユニットは、第2の駆動歯セットにリリース可能に係合するよう構成される。有利なことに、少なくとも1つの、好ましくは各々の前記第1および第2の駆動ユニットの位置は、前記往復台が前記レール上を移動している間に調整可能である。前記第1および第2の駆動ユニットの少なくとも一方は、他方へ向かって、また他方から遠ざかるよう動く。これにより、前記タワーは、レール間の距離が前記タワーの長手方向に沿って変化する複数セットのレールを有する。例えば、一部のタワーは頂部のほうが基部よりも細い。
【0034】
前記駆動システムは、前記タワーに対して、前記往復台‐ナセルアセンブリ、または往復台‐ローター‐ナセルアセンブリの位置をロックするロック手段を含むことができる。例えば、前記駆動源は、前記レールに対して前記往復台の位置をロックするよう構成できる。それに加えて、またはその代わりに、前記駆動システムは、前記レールに対して前記往復台の位置をロックするよう構成されたラチェット機構を含むことができる。
【0035】
前記ナセルは、前記エレベーター往復台に枢着できる。好適な実施形態において、枢軸は、前記ローター‐ナセルまたはナセルの重心に若しくは重心に隣接して位置する。そのため、前記ローター‐ナセルまたはナセルは、その重心を中心として回転する。例えば、前記往復台は、少なくとも1つのコネクタアームを含むことができ、前記ナセルは、少なくとも1つのフランジを含むことができる。前記コネクタアームまたは各コネクタアームは、枢動ピンにより前記少なくとも1つのフランジに枢着される。
【0036】
本方法は、アクチュエータ手段、例えばリニア駆動装置、例えば油圧ラムを含むことができ、そのアクチュエータ手段を使って、前記エレベーター往復台に対して、前記ナセル、またはナセル‐ローターを枢動させることができる。前記アクチュエータは、前記ローター‐ナセルまたはナセルの重心に若しくは重心に隣接して位置する前記枢軸を中心として、前記ローター‐ナセルまたはナセルを回転させる。前記リニア駆動装置は、前記シャーシに枢着され、好ましくは当該シャーシの一端の方に、例えば前記ナセルが当該シャーシに枢着される端部と反対側にある当該シャーシの端部に枢着される。これにより、前記ナセル、またはナセル‐ローターは、前記往復台‐ナセルアセンブリ、または往復台‐ローター‐ナセルアセンブリが前記タワーの頂部に達した時点で、前記往復台に対する配向を変えることが可能になる。前記ナセル、またはナセル‐ローターは、前記往復台‐ナセルアセンブリ、または往復台‐ローター‐ナセルアセンブリの上昇時に使用される前記実質的に垂直配向から、実質的に水平配向へと、前記タワーの頂部において枢動される。前記ナセルが水平配向のとき、前記ローターは、実質的に垂直配向に構成される。これが、前記ナセルの通常運用配向である。
【0037】
本方法は、前記タワーの頂部に前記ナセルを固定する工程を含むことができる。通常、ヨー軸受はボルトでタワーフランジに連結される。通常、前記ボルト締めは手作業で行われる。
【0038】
前記エレベーター往復台は、前記ナセルにリリース可能に取り付けられる。本方法は、前記エレベーター往復台を前記ナセルから係合解除する工程を含み、これは例えば、前記アームを前記フランジに連結する前記枢動ピンを取り外すことにより行われる。これにより、前記エレベーター往復台を前記ナセルから分離し、前記前記タワーの下端に戻して再利用できるようになる。
【0039】
本方法は、前記往復台を前記ナセルから自動的にリリースする工程を含むことができる。前記往復台とナセルの枢着を係合解除するため、アクチュエータを提供することができる。
【0040】
本方法は、前記往復台‐ナセルアセンブリが前記タワーに取り付けられている間に、ローター、またはその構成要素を、前記ナセルに取り付ける工程を含むことができる。例えば、前記往復台‐ローター‐ナセルアセンブリが、前記タワーの下方部分にある場合である。これは、陸上での設置に好適な方法である。通常、前記ローターは、ハブおよびローターブレードを有する。前記ハブおよびブレードは、前記タワーに取り付けられている間に前記往復台‐ナセルアセンブリに別個に取り付け、または完成されたローターとして取り付けることができる。
【0041】
本発明の別の態様によれば、風力タービンシステムが提供され、この風力タービンシステムは、タワーと、ナセルと、エレベーター往復台とを含み、前記エレベーター往復台は、前記ナセルに事前に取り付けられて、前記タワーに取り付け可能な往復台‐ナセルアセンブリを形成する。
【0042】
前記システムは、ローターを含むことができ、前記ローターは、前記ナセルに事前に取り付けられて、前記タワーに取り付け可能な往復台‐ローター‐ナセルアセンブリを形成するものである
前記タワーは、少なくとも1つの支持構造を含むことができる。前記往復台‐ナセルアセンブリ、または往復台‐ローター‐ナセルアセンブリは、少なくとも1つの支持構造を含み、当該支持構造は、前記往復台‐ナセルアセンブリ、または往復台‐ローター‐ナセルアセンブリの重量を前記タワーの第1の側部で支持するために、前記タワー支持構造に係合するよう構成される。好適な実施形態において、前記タワーは複数の支持構造を含み、前記往復台‐ナセルアセンブリ、または往復台‐ローター‐ナセルアセンブリは、複数の支持構造を含む。前記支持構造は、前記タワーの下端の方に位置することが好ましい。前記支持構造は、前記タワーの第1の側部上に位置することが好ましい。前記支持構造は、多数の形状および構成、例えばラグ(lugs)、位置決めピン、フック、オスおよびメス(例えば凹部)、嵌合部材を有してよいことが理解されるであろう。前記支持構造の目的は、前記往復台‐ナセルアセンブリ、または往復台‐ローター‐ナセルアセンブリと、前記タワーとの初期係合を提供すること、ならびに前記エレベーター往復台が、前記タワーに形成されたレールと係合するまで、前記往復台‐ナセルアセンブリ、または往復台‐ローター‐ナセルアセンブリの重量を支持するすることである。
【0043】
前記タワーは、当該タワーの長手方向に沿って構成された少なくとも1つのエレベーターレールを含むことができる。
【0044】
前記エレベーター往復台は、前記レールにリリース可能に係合する取り付け手段を含むことができる。
【0045】
前記リリース可能に前記レールに係合する手段は、選択的に前記レールに係合するよう構成された少なくとも1つの調整可能なベアリングを含むことができる。前記調整可能なベアリングは、前記レールに対し係合および係合解除するよう移動可能である。例えば、前記調整可能なベアリングは、転がり軸受けまたはすべり軸受などの座面を含むことができる。アクチュエータは、前記レールに対し係合および係合解除するよう前記座面を移動させる。前記座面は支持部、例えば枢動可能なアームに取り付けることができる。前記ベアリングまたは各ベアリングは、コントローラから受信される制御信号に基づいて、各々のレールに選択的に係合するよう構成できる。
【0046】
前記リリース可能に前記レールに係合する手段は、前記レールに係合するよう構成された少なくとも1つの調整不能なベアリングを含むことができる。一部の実施形態において、前記調整不能なベアリング、または各調整不能なベアリングは、ローラー要素を含む。一部の実施形態において、前記調整不能なベアリング、または各調整不能なベアリングは、すべり軸受を含む。
【0047】
前記レールまたは各レールは、実質的にT字状の横断面を有するものであってよい。これは前記レールの長さを横切る断面である。
【0048】
前記往復台は、前記エレベーターレールに沿って前記エレベーター往復台を移動させる駆動システムを含むことができる。
【0049】
前記駆動システムは、少なくとも1つの駆動源、例えば電動機または油圧モーターを含むことができる。前記駆動システムは動力伝達装置、好ましくは減速用動力伝達装置(step-down transmission)を含むことができる。
【0050】
前記駆動システムは、少なくとも1つの駆動ユニットを含むことができる。その駆動ユニットは、少なくとも1つの駆動ギアを含むことが好ましい。前記少なくとも1つの駆動ギアは、エレベーターシステム駆動歯に、例えばラックピニオン構成の形態でリリース可能に係合するよう構成される。前記駆動ユニットまたは各駆動ユニットは、複数の駆動ギアを含むことが好ましい。前記駆動ギアまたは各駆動ギアを移動させると、前記エレベーターシステム駆動歯に対し係合および係合解除するようにできる。例えば、コントローラにより制御されるアクチュエータは、前記駆動ギアまたは各駆動ギアを移動させるよう構成でき、それによりその駆動ギアは前記エレベーター駆動歯に対し係合および係合解除する。好適な実施形態において、前記エレベーターレールは、前記駆動歯を含む。好適な実施形態において、前記エレベーターレールまたは各エレベーターレールは、内側の駆動歯および外側の駆動歯を含む。前記駆動ユニットまたは各駆動ユニットは、前記内側の駆動歯にリリース可能に係合するよう構成された少なくとも1つの駆動ギアと、前記外側の駆動歯にリリース可能に係合するよう構成された少なくとも1つの駆動ギアとを含むことが好ましい。
【0051】
前記駆動システムは、第1および第2の駆動ユニットを含むことができる。前記エレベーターシステムは、第1および第2の駆動歯セットを含むことができる。前記第1の駆動ユニットは、第1の駆動歯セットにリリース可能に係合するよう構成される。前記第2の駆動ユニットは、第2の駆動歯セットにリリース可能に係合するよう構成される。有利なことに、少なくとも1つの、好ましくは各々の前記第1および第2の駆動ユニットの位置は、前記往復台が前記レール上を移動している間に調整可能である。前記第1および第2の駆動ユニットの少なくとも一方は、他方へ向かって、また他方から遠ざかるよう動く。これにより、前記タワーは、レール間の距離が前記タワーの長手方向に沿って変化する複数セットのレールを有する。例えば、一部のタワーは頂部のほうが基部よりも細い。
【0052】
前記駆動システムは、前記タワーに対して、前記往復台‐ナセルアセンブリ、または往復台‐ローター‐ナセルアセンブリの位置をロックするロック手段を含むことができる。例えば、前記駆動源は、前記レールに対して前記往復台の位置をロックするよう構成できる。それに加えて、またはその代わりに、前記駆動システムは、前記レールに対して前記往復台の位置をロックするよう構成されたラチェット機構を含むことができる。
【0053】
前記ナセルは、前記エレベーター往復台に枢着できる。好適な実施形態において、枢軸は、前記ローター‐ナセルまたはナセルの重心に若しくは重心に隣接して位置する。そのため、前記ローター‐ナセルまたはナセルは、その重心を中心として回転する。例えば、前記往復台は、少なくとも1つのコネクタアームを含むことができ、前記ナセルは、少なくとも1つのフランジを含むことができる。前記コネクタアームまたは各コネクタアームは、枢動ピンにより前記少なくとも1つのフランジに枢着される。
【0054】
前記往復台は、前記エレベーター往復台に対して、前記ナセル、またはナセル‐ローターを枢動させるよう構成されたアクチュエータ手段、例えば油圧ラムまたはリニア駆動装置を含むことができる。これにより、前記ナセル、またはナセル‐ローターは、前記往復台‐ナセルアセンブリ、または往復台‐ローター‐ナセルアセンブリが前記タワーの頂部に達した時点で、前記往復台に対する配向を変えることが可能になる。前記ナセル、またはナセル‐ローターは、前記往復台‐ナセルアセンブリ、または往復台‐ローター‐ナセルアセンブリの上昇時に使用される前記実質的に垂直配向から、実質的に水平配向へと、前記タワーの頂部において枢動される。前記ナセルが水平配向のとき、前記ローターは、実質的に垂直配向に構成される。これが、前記ナセルの通常運用配向である。
【0055】
前記エレベーター往復台は、前記ナセルにリリース可能に取り付けられる。例えば、前記枢動ピンを取り外すことにより、前記ナセルフランジから前記コネクタアームを分離することができる。これにより、前記エレベーター往復台を前記ナセルから分離し、前記前記タワーの下端に戻して再利用できるようになる。
【0056】
前記システムは、前記往復台を前記ナセルから自動的にリリースするアクチュエータ手段を含むことができる。前記往復台とナセルの枢着を係合解除するため、アクチュエータを提供することができる。
【0057】
前記システムは、電源および制御システムの少なくとも一方に前記往復台を接続するアンビリカルケーブルを含むことができる。
【0058】
前記システムは、前記往復台‐ナセルアセンブリ、または往復台‐ローター‐ナセルアセンブリを、前記タワーへ運搬する船、例えば船舶を含むことができる。前記船は、前記船から前記タワーへ、前記往復台‐ナセルアセンブリ、または往復台‐ローター‐ナセルアセンブリを移し替えるプラットフォームシステムを含む。前記プラットフォームシステムは、可動プラットフォームと、制御システムと、少なくとも1つのアクチュエータと、少なくとも1つのセンサーとを含む。前記制御システムは、前記少なくとも1つのセンサーから受信された信号に応答し、前記少なくとも1つのアクチュエータの動作を自動的に制御して前記可動プラットフォームの配向を調整して、前記船の動きに対応するよう構成される。前記船の動きは、例えば風と波により生じる。このように、前記プラットフォームシステムは、前記往復台‐ナセルアセンブリ、または往復台‐ローター‐ナセルアセンブリを前記船から前記タワーへ移し替える間、前記可動プラットフォームの配向を自動的に調整する。前記可動プラットフォーム制御システムは、前記プラットフォームの位置決めを制御して、当該プラットフォームが取り付けられている船の動きにかかわらず、当該プラットフォームが前記タワーに対して実質的に動かずに保たれるようにする。これにより、移し替え中、前記船舶の動きに対応する。
【0059】
前記システムは、前記船上に位置する少なくとも1つの可動支持部を含むことができる。前記可動支持部は、格納位置から前記可動プラットフォーム上へ、前記往復台‐ナセルアセンブリ、または前記往復台‐ローター‐ナセルアセンブリを移動するよう構成される。前記可動支持部は、ローターハブが前記船の船体へ向かって下向きになるよう、前記往復台‐ローター‐ナセルアセンブリを受容するよう構成される。前記ローターブレードは、前記ハブから実質的に水平に外側へ突出する。前記可動支持部は、前記ハブに係合するよう構成される。前記可動支持部は、レールに取り付けられる。好適な実施形態において、前記可動支持部は、前記船の長さ方向に沿って移動可能である。前記可動支持部は、車輪付き台枠を含むことができる。前記船のデッキに取り付けられたレールには、前記車輪付き台枠が取り付けられる。前記可動支持部は、スライド可能な台座支持部を含むことができる。前記台座は前記ハブを支持する。前記台座支持部は、前記車輪付き台枠上に取り付けられる。前記台座支持部は、前記台枠に取り付けられたレール上でスライドするよう構成される。前記台座は、基部、ならびに前記ローターハブを受容および支持するよう構成された上方へ突出したアームを含む。前記可動プラットフォームは、前記船の一端の方に、好ましくは前記船の後方に取り付けることができる。一部の実施形態において、前記可動プラットフォームは、前記船の長手方向の側方に、例えば当該船の左舷側または右舷側に取り付けることができる。当該可動プラットフォームは、前記船の縁部から張り出すよう、渡り板として構成できる。前記往復台‐ナセルアセンブリ、または往復台‐ローター‐ナセルアセンブリを、前記プラットフォームの高さまで持ち上げるには、斜面またはエレベーターを提供することができる。
【0060】
前記可動支持部は、前記船上で、ローターハブが前記船の底部へ向かって下向きになる配向で、前記往復台‐ローター‐ナセルアセンブリを支持するよう構成できる。前記ローターブレードは、前記ハブから実質的に水平に外側へ突出する。前記可動支持部は前記ハブを支持する。
【0061】
前記可動プラットフォームは、前記往復台‐ナセルアセンブリ、または往復台‐ローター‐ナセルアセンブリを、前記タワーの第1の側部の第1の位置に取り付けるよう構成できる。前記第1の位置は、前記タワーの下端の方に位置することが好ましい。
【0062】
前記可動プラットフォームは、前記ローターハブが地面または海へ向かって略下向きになる配向で、前記タワーの第1の位置に、前記往復台‐ローター‐ナセルアセンブリを取り付けるよう構成できる。前記ローターブレードは、前記ハブから実質的に水平に外側へ突出する。この配向で前記タワーに前記往復台‐ローター‐ナセルアセンブリを取り付けるのは、前記タワー頂部の定位置へ前記ナセルを枢動させることが必要な場合に有益であり、これは、前記往復台が前記ナセルの重心近くで前記ナセルを支持して、当該枢動工程をより容易にできるためである。
【0063】
本発明の別の態様によれば、風力タービンを組み立てる方法が提供され、この方法は、前記ナセルにローターを取り付ける工程と、往復台‐タービン‐ローターアセンブリを形成するため、エレベーター往復台をナセルに取り付ける工程と、前記往復台‐タービン‐ローターアセンブリを前記タワーに取り付ける工程とを含む。
【0064】
本発明の別の態様によれば、船、例えば船舶が提供され、この船は、プラットフォームシステムであって、前記船から受容構造、例えば洋上風力発電タービンタワーへ、積載物、例えば前記往復台‐ナセルアセンブリ、または往復台‐ローター‐ナセルアセンブリを移し替えるプラットフォームシステムを含む。前記プラットフォームシステムは、可動プラットフォームと、制御システムと、少なくとも1つのアクチュエータと、少なくとも1つのセンサーとを含み、前記制御システムは、前記少なくとも1つのセンサーから受信された信号に応答し、前記少なくとも1つのアクチュエータの動作を制御して前記可動プラットフォームの配向を調整するよう構成される。これにより、前記積載物を前記受容構造に移し替える間、例えば風と波により生じる前記船の動きに対応できる。
【0065】
前記可動プラットフォームは、前記船の一端の方に、好ましくは前記船の船首に取り付けることができる。当該可動プラットフォームは、前記船の縁部から張り出すよう、渡り板として構成できる。前記制御システムは、前記可動プラットフォームを実質的に水平配向に保つよう構成されることが好ましい。前記可動プラットフォーム制御システムは、前記プラットフォームの位置決めを制御して、当該プラットフォームが取り付けられている船の動きにかかわらず、当該プラットフォームが前記タワーに対して実質的に動かずに保たれるようにすることが好ましい。これにより、移し替え中、前記船舶の動きに対応する。
【0066】
前記アクチュエータは、油圧ラムを有することができる。複数の油圧ラムが提供されることが好ましい。例えば、前記可動プラットフォームの配向を制御するため、3~6のアクチュエータが提供される。
【0067】
前記船は、前記可動支持部と、したがって往復台‐ナセルアセンブリ、または往復台‐ローター‐ナセルアセンブリとを、前記可動プラットフォームへと上方移動させる斜面を含むことができる。
【0068】
前記船は、前記可動支持部と、したがって往復台‐ナセルアセンブリ、または往復台‐ローター‐ナセルアセンブリとを、前記可動プラットフォームへと上方移動させるリフトを含むことができる。
【0069】
前記可動プラットフォームは、可動支持部から積載物を受容する位置に移動させることができる。
【0070】
前記可動支持部は、車輪付き台枠を含むことができる。前記船のデッキに取り付けられたレールには、前記車輪付き台枠が取り付けられる。
【0071】
前記可動支持部は、スライド可能な支持部を含むことができる。前記スライド可能な支持部は、前記車輪付き台枠上に取り付けられる。前記スライド可能な支持部は、前記台枠に取り付けられたレール上でスライドするよう構成される。前記スライド可能な支持部は、基部、ならびに前記ローターハブを受容および支持するよう構成された上方へ突出したアームを含む。
【0072】
前記可動プラットフォームは、レールを含むことができる。前記スライド可能な支持部は、前記台枠レールから、前記可動プラットフォームレール上へとスライドするよう構成される。
【0073】
本発明の別の態様によれば、少なくとも1つのエレベーターレールを含む風力タービンタワー用に使用するエレベーター往復台が提供される。
【0074】
前記エレベーター往復台は、前記レールにリリース可能に係合する取り付け手段を含むことができる。
【0075】
前記リリース可能に前記レールに係合する手段は、選択的に前記レールに係合するよう構成された少なくとも1つの調整可能なベアリングを含むことができる。前記調整可能なベアリングは、前記レールに対し係合および係合解除するよう移動可能である。例えば、前記調整可能なベアリングは、転がり軸受けまたはすべり軸受などの座面を含むことができる。アクチュエータは、前記レールに対し係合および係合解除するよう前記座面を移動させる。前記座面は支持部、例えば枢動可能なアームに取り付けることができる。前記ベアリングまたは各ベアリングは、コントローラから受信される制御信号に基づいて、各々のレールに選択的に係合するよう構成できる。
【0076】
前記リリース可能に前記レールに係合する手段は、前記レールに係合するよう構成された少なくとも1つの調整不能なベアリングを含むことができる。一部の実施形態において、前記調整不能なベアリング、または各調整不能なベアリングは、ローラー要素を含む。一部の実施形態において、前記調整不能なベアリング、または各調整不能なベアリングは、すべり軸受を含む。
【0077】
前記レールまたは各レールは、実質的にT字状の横断面を有するものであってよい。これは前記レールの長さを横切る断面である。
【0078】
前記往復台は、前記エレベーターレールに沿って前記エレベーター往復台を移動させる駆動システムを含むことができる。
【0079】
前記駆動システムは、少なくとも1つの駆動源、例えば電動機または油圧モーターを含むことができる。前記駆動システムは動力伝達装置、好ましくは減速用動力伝達装置(step-down transmission)を含むことができる。
【0080】
前記駆動システムは、少なくとも1つの駆動ユニットを含むことができる。その駆動ユニットは、少なくとも1つの駆動ギアを含むことが好ましい。前記少なくとも1つの駆動ギアは、エレベーターシステム駆動歯に、例えばラックピニオン構成の形態でリリース可能に係合するよう構成される。前記駆動ユニットまたは各駆動ユニットは、複数の駆動ギアを含むことが好ましい。前記駆動ギアまたは各駆動ギアを移動させると、前記エレベーターシステム駆動歯に対し係合および係合解除するようにできる。例えば、コントローラにより制御されるアクチュエータは、前記駆動ギアまたは各駆動ギアを移動させるよう構成でき、それによりその駆動ギアは前記エレベーター駆動歯に対し係合および係合解除する。好適な実施形態において、前記エレベーターレールは、前記駆動歯を含む。好適な実施形態において、前記エレベーターレールまたは各エレベーターレールは、内側の駆動歯および外側の駆動歯を含む。前記駆動ユニットまたは各駆動ユニットは、前記内側の駆動歯にリリース可能に係合するよう構成された少なくとも1つの駆動ギアと、前記外側の駆動歯にリリース可能に係合するよう構成された少なくとも1つの駆動ギアとを含むことが好ましい。
【0081】
前記駆動システムは、第1および第2の駆動ユニットを含むことができる。前記エレベーターシステムは、第1および第2の駆動歯セットを含むことができる。前記第1の駆動ユニットは、第1の駆動歯セットにリリース可能に係合するよう構成される。前記第2の駆動ユニットは、第2の駆動歯セットにリリース可能に係合するよう構成される。有利なことに、少なくとも1つの、好ましくは各々の前記第1および第2の駆動ユニットの位置は、前記往復台が前記レール上を移動している間に調整可能である。前記第1および第2の駆動ユニットの少なくとも一方は、他方へ向かって、また他方から遠ざかるよう動く。これにより、前記タワーは、レール間の距離が前記タワーの長手方向に沿って変化する複数セットのレールを有する。例えば、一部のタワーは頂部のほうが基部よりも細い。
【0082】
前記駆動システムは、前記タワーに対して、前記往復台‐ナセルアセンブリ、または往復台‐ローター‐ナセルアセンブリの位置をロックするロック手段を含むことができる。例えば、前記駆動源は、前記レールに対して前記往復台の位置をロックするよう構成できる。それに加えて、またはその代わりに、前記駆動システムは、前記レールに対して前記往復台の位置をロックするよう構成されたラチェット機構を含むことができる。
【0083】
前記エレベーター往復台は、ナセルに枢着されるよう構成される。好適な実施形態において、枢軸は、前記ローター‐ナセルまたはナセルの重心に若しくは重心に隣接して位置する。そのため、前記ローター‐ナセルまたはナセルは、その重心を中心として回転する。例えば、前記往復台は、少なくとも1つのコネクタアームを含むことができ、前記ナセルは、少なくとも1つのフランジを含むことができる。前記コネクタアームまたは各コネクタアームは、枢動ピンにより前記少なくとも1つのフランジに枢着される。
【0084】
前記往復台は、前記エレベーター往復台に対して、前記ナセル、またはナセル‐ローターを枢動させるよう構成されたアクチュエータ手段、例えば油圧ラムまたはリニア駆動装置を含むことができる。これにより、前記ナセル、またはナセル‐ローターは、前記往復台‐ナセルアセンブリ、または往復台‐ローター‐ナセルアセンブリが前記タワーの頂部に達した時点で、前記往復台に対する配向を変えることが可能になる。前記ナセル、またはナセル‐ローターは、前記往復台‐ナセルアセンブリ、または往復台‐ローター‐ナセルアセンブリの上昇時に使用される前記実質的に垂直配向から、実質的に水平配向へと、前記タワーの頂部において枢動される。前記ナセルが水平配向のとき、前記ローターは、実質的に垂直配向に構成される。これが、前記ナセルの通常運用配向である。
【0085】
前記エレベーター往復台は、前記ナセルにリリース可能に取り付けられる。例えば、前記枢動ピンを取り外すことにより、前記ナセルフランジから前記コネクタアームを分離することができる。これにより、前記エレベーター往復台を前記ナセルから分離し、前記前記タワーの下端に戻して再利用できるようになる。
【0086】
前記往復台は、当該往復台を前記ナセルから自動的にリリースするアクチュエータ手段を含むことができる。前記往復台とナセルの枢着を係合解除するため、アクチュエータを提供することができる。
【0087】
前記往復台は、電源および制御システムの少なくとも一方に前記往復台を接続するアンビリカルケーブルを含むことができる。
【0088】
一部の実施形態において、前記往復台は、保守作業者および/または保守機器を支持するための、当該往復台に取り付けられたプラットフォームを含む。
【0089】
本発明の別の態様によれば、風力タービンの保守点検を行う方法が提供され、この方法は、風力タービンタワーであって、それに取り付けられた少なくとも1つのエレベーターレールを有する、風力タービンタワーを提供する工程と、エレベーター往復台を前記少なくとも1つのエレベーターレールに取り付ける工程であって、前記エレベーター往復台は、保守作業者および/または保守機器用に、当該エレベーター往復台に取り付けられたプラットフォームを含む、工程と、前記少なくとも1つのレールに沿って、前記エレベーター往復台を保守点検位置へ移動させる工程とを含む。保守作業は、前記保守点検位置で行われる。これには、既存の風力タービン機器を取り外し、新たな機器を設置し、および/または既存の機器を修理する作業を伴う場合がある。
【0090】
本発明の別の態様によれば、タワーおよびエレベーターシステムを含む風力タービンシステムが提供され、前記エレベーターシステムは、前記タワーに取り付けられた少なくとも1つのレールと、前記少なくとも1つのレールに移動可能に取り付けられた往復台とを含み、前記往復台は、保守作業者および/または保守機器を支持する、当該往復台に取り付けられたプラットフォームを含む。前記少なくとも1つのエレベーターレールは、既存の風力タービンタワーを改修してそれに取り付け、または新たなタワーに含めることができる。
【0091】
好適な実施形態において、前記エレベーターレールは、前記タワーの下方部分から前記タワーの上方部分に向かって延長する。
【0092】
一部の実施形態において、前記プラットフォームは、ローターブレードを受容する開口部または凹部を含む。そのため、前記プラットフォームは前記ブレードの周囲を囲う。これにより、前記ブレードの全側部を点検することができる。
【0093】
一部の実施形態において、前記往復台‐プラットフォームアセンブリは、クレーンを含む。前記クレーンは、油圧式シングルアームクレーンを有することが好ましい。
【0094】
前記エレベーターシステムは、前記タワーの外側に取り付けられる。
【0095】
前記往復台はシャーシを含み、前記プラットフォームは、それに実質的に垂直に構成される。前記プラットフォームは、前記往復台が前記少なくとも1つのレールに取り付けられるとき、実質的に水平に構成される。
【0096】
好適な実施形態において、プラットフォームは安全柵を含む。例えば、前記安全柵は、前記プラットフォームの外周に沿って延長させることができる。
【0097】
前記往復台は、本明細書で説明した当該往復台の他のいかなる特徴も含んでよく、例えば前記取り付けシステムおよび駆動システムを含んでよい。
【0098】
本発明の別の態様によれば、風力タービンシステムが提供され、この風力タービンシステムは、タワーと、ナセルと、エレベーター往復台を含むエレベーターシステムとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0099】
以下、本発明の実施形態について、単に例として添付の図面を参照して説明する。
図1図1は、本発明に係る風力タービンシステムを示した図である。
図2図2は、往復台の底面と、図1の前記風力タービンシステムのレールシステムとの等角投影図である。
図3図3は、図2の前記往復台およびレールシステムの底面の平面図である。
図4A図4Aは、図2の前記往復台およびレールシステムの一端から見た等角投影図である。
図4B図4Bは、図2の前記往復台およびレールシステムの一端から見た端面図である。
図5図5は、図2の前記往復台およびレールシステムの側面図である。
図6図6は、本発明に係る風力タービン組み立て方法における工程を示した図である。
図7A図7Aは、本発明に係る風力タービン組み立て方法における工程を示した図である。
図7B図7Bは、本発明に係る風力タービン組み立て方法における工程を示した図である。
図8図8は、本発明に係る風力タービン組み立て方法における工程を示した図である。
図9図9は、本発明に係る風力タービン組み立て方法における工程を示した図である。
図10図10は、本発明に係る風力タービン組み立て方法における工程を示した図である。
図11図11は、本発明に係る風力タービン組み立て方法における工程を示した図である。
図12図12は、本発明に係る風力タービン組み立て方法における工程を示した図である。
図13図13は、本発明に係る風力タービン組み立て方法における工程を示した図である。
図14A図14Aは、保守作業用プラットフォームを含んだ往復台およびレールシステムの等角投影図である。
図14B図14Bおよび14cは、それぞれクレーンを含む代替保守プラットフォームを示した図である。
図14C図14Bおよび14Cは、それぞれクレーンを含む代替保守プラットフォームを示した図である。
図15図15は、往復台により、前記往復台‐ローター‐ナセルアセンブリを船舶に積み替える工程を例示した図である。
図16図16は、船舶設計の変形形態を示した図であり、可動プラットフォームが船舶の片側に位置する。
図17図17は、前記往復台の変形形態を示した図であり、駆動ユニットの位置を調整可能にする態様で、前記駆動ユニットが往復台フレームに取り付けられている。
【発明を実施するための形態】
【0100】
図1は、本発明に係る風力タービンシステム1を示した図である。この風力タービンシステム1は、タワー3と、ナセル9と、ローター11と(本明細書では以下、ローター11およびナセル9を合わせたものをローター‐ナセルアセンブリ11、9という)、このローター‐ナセルアセンブリ11、9を前記タワー3で上昇させるエレベーターシステム7とを含む。前記ローター11は、ハブ13、ならびに複数のブレード15であって、通常2枚または3枚のブレード15を有する。
【0101】
前記タワー3は洋上タワーである。当該タワー3は、単一の管状構造を有することが好ましい。ただし、他の構成も可能である。例えば、このタワー3は、複数の管状構造であって、通常、鋼製格子で連結された3つの管状構造を有するものであってよい。このタワー3は、基部17および頂部19を有する。このタワー3は、当該タワーの外面に取り付けられる複数の支持構造20を含む。これらの支持構造20はフックの形態をしているが、他の構造も使用できる。
【0102】
前記エレベーターシステム7は、前記タワー3の外面に取り付けられた一対のレール21を含む。これらのレール21a、21bは、少なくとも前記タワー長の実質的な一部に沿って、通常、前記タワーの前記基部17に隣接した位置から前記頂部に隣接した位置まで延長する。レール21a、21bの各々は、実質的にT字状の断面を有し、それは図4aおよび4bに最もよく見られる。各21は、前記レールの長手方向に沿って延長する内側および外側の歯23a、23b、25a、25bを含む。
【0103】
前記エレベーターシステム7は、往復台27を含む。この往復台27は、シャーシ29と、当該往復台を前記レール21a、21bに取り付けるレール取り付けシステム31と、前記レール21a、21bに沿って当該往復台27を移動させる駆動システム33とを有する。また、この往復台27は、枢動するよう当該往復台27を前記ナセル9に取り付けるコネクタアセンブリ35と、前記シャーシ29に対して前記ナセル9を枢動させる駆動装置37とを含む。
【0104】
前記レール取り付けシステム31は、前記レール21に係合する4セットのローラーベアリング41を含む。前記ローラーベアリング41のうち2セットは第1のレール21aに係合し、当該ローラーベアリング41のうち2セットは第2のレール21bに係合する。前記ローラーベアリング41は、前記シャーシの底面43、すなわち、前記往復台27が前記タワーに取り付けられたとき前記タワー3に向かい面する側部に位置する。前記ローラーベアリング41は、前記レールの最外面45に係合する。前記レール取り付けシステム31は、前記レール21に選択的に係合する4セットの調整可能なローラーベアリング47を含む。前記調整可能なローラーベアリング47のうち2セットは選択的に第1のレール21aに係合し、当該調整可能なローラーベアリング47のうち2セットは選択的に第2のレール21bに係合する。これらの調整可能なローラーベアリング47は、前記シャーシの前記底面43に係合する。調整可能なローラーベアリング47は、それぞれ一対の湾曲したアーム51を有する。各アーム51の一端は、前記シャーシ29に枢着される。各アーム51の自由端に向けて、ローラー53のセットが設置される。コントローラから受信される制御信号に応答して、アクチュエータが前記アーム51の位置を調整する。そのコントローラは、前記ローラー53のセットを選択的に移動させて、前記各々のレール21a、21bに対し係合および係合解除させるよう構成される。前記ローラー53は、前記タワーに向かい面するレール表面49に係合するよう構成される。前記往復台27が前記タワーに取り付けられたとき、前記ベアリング47は、開いた係合されていない位置にある。前記コントローラは、前記アクチュエータを作動させて前記ローラー53を動かし、各々のレール21a、21bに係合させる。これにより、前記往復台27が前記レール21a、21bに強固に取り付けられ、前記往復台27は、前記レールに沿って移動する準備が整う。
【0105】
前記駆動システム33は、少なくとも1つの駆動源55、例えば電動機と、前記レールの前記内側および外側の歯23a、23b、25a、25bに係合するギア装置とを含む。6つの歯車のセットを含む第1の駆動ユニット56は、前記第1のレール21aの前記歯に噛合するよう構成される。内側の3つの歯車57のセットは内側の歯23aに噛合し、外側の3つの歯車59のセットは外側の歯25aに噛合する。6つの歯車のセットを含む第2の駆動ユニット56は、前記第2のレール21bの前記歯に噛合するよう構成される。内側の3つの歯車57のセットは内側の歯23bに噛合し、外側の3つの歯車59のセットは外側の歯25bに噛合する。前記駆動源55は、直接的に若しくは動力伝達装置を通じて前記歯車57を回転させるよう構成される。前記歯車57、59が回転するに伴い、前記往復台27は、レール21a、21b上を移動する。前記駆動システム33は、前記往復台27が前記タワー3から落ちないようにするため、ラチェット構成を含む。このラチェットは、前記往復台27が前記タワーを下降できるようリリース可能である。好適な構成において、前記駆動システム33は、前記レール21a、21bに選択的に係合するよう構成される。例えば、この駆動システム33は、前記第1および第2の駆動ユニット56の動作を制御するコントローラおよびアクチュエータを含むことができる。前記アクチュエータは、前記コントローラからの制御信号に応答して、前記ローラー57、59のセットを移動させて、前記各々の歯23a、25a、23b、25bに対し係合および係合解除させるよう構成される。そのため、前記歯車57、59は、前記往復台27が前記タワー3に取り付けられるときには係合されていない位置にあってよく、前記往復台を前記レール21a、21bに沿って駆動するよう係合位置に移動させることができる。
【0106】
前記往復台9は、支持構造39を含む。この往復台支持構造39は、初期に前記往復台‐タービンアセンブリが前記タワー3に取り付けられる際、前記タワー3上の前記支持構造20に係合するよう構成される。前記タワー支持構造20は、前記レール取り付けシステム31が前記レールに係合して前記駆動システム33が係合されるまで、前記往復台‐ローター‐ナセルアセンブリ27、11、9の重量を支持するよう構成される。
【0107】
前記コネクタアセンブリ35は、前記シャーシ29から上方へ突出するアーム59を含む。前記アーム59は、前記シャーシの平面へと傾斜している。このアーム59は、前記シャーシの前縁61を超えて突出する。枢動ピン63は、前記ナセルケーシング上の受容構造65、または別個のアダプタプレート(図示せず)に、アーム59を連結し、前記アダプタプレートは、ヨー軸受とタワー頂部フランジ間に固定できる。このように、前記ローター‐ナセルアセンブリ11、9は、前記往復台シャーシ29に枢着される。前記受容構造65は、前記ローター‐ナセルアセンブリ11、9のほぼ重心に位置することが好ましい。これにより、前記シャーシ27に対して前記ローター‐ナセルアセンブリ11、9を枢動させるために必要な力が軽減される。前記駆動装置37は、リニア駆動装置、例えば油圧ラムを有することが好ましい。前記リニア駆動装置37の長さは調整可能で、通常、入れ子式に調整できる。このリニア駆動装置の長さを制御可能に調整するため、コントローラ、例えば液圧式コントローラが提供される。前記駆動装置37は、前記リニア駆動装置の第1の端部67に向けて、前記シャーシ27に枢着される。前記リニア駆動装置の第2の端部69は、前記シャーシ27に対して前記風力ローター‐ナセルアセンブリ11、9を枢動させるよう、前記ナセル9またはハブ13に係合するよう構成される。これは、適時に前記リニア駆動装置37の長さを調整することにより達成される。
【0108】
前記往復台27は、前記ローター‐ナセルアセンブリ11、9を前記タワー3の側部に取り付けるよりも前に、当該アセンブリ11、9に取り付けられる。これにより迅速な組み立て時間が可能になり、これは特に天気が変わりやすく風力タービン組み立てが可能な時間長が限られる洋上ウィンドファームについては重要である。特に、前記往復台27は、前記枢動ピン63により前記ナセル9にリリース可能に取り付けられる。手作業またはアクチュエータにより前記枢動ピン63を取り外すことにより、前記往復台27は、ヘッドが前記タワーの前記頂部19に位置しているときに、前記ローター‐ナセルアセンブリ11、9から分離することができる。これにより、前記往復台27を前記タワーの前記底部に戻して再使用することが可能になる。
【0109】
前記往復台27は、前記往復台‐ローター‐ナセルアセンブリ27、11、9の前記タワー3への取り付けを補助する位置合わせセンサーも含む。
【0110】
洋上ウィンドファームの場合、前記往復台‐ローター‐ナセルアセンブリ27、11、9は、船舶71で前記タワー3へ運搬される。その船舶71は、本質的に従来の船舶を変更して、少なくとも1つ、通常2つまたは3つの往復台‐ローター‐ナセルアセンブリ27、11、9を運搬するようにしたものである。すなわち、本発明によれば、前記船舶は、それ自体の船体を水上へ持ち上げられるクレーン船タイプの船舶またはセミサブマージブル型クレーン船である必要はない。
【0111】
各往復台‐ローター‐ナセルアセンブリ27、11、9は、前記船舶デッキ上の個々の可動支持部73に取り付けられる。前記往復台‐ローター‐ナセルアセンブリ27、11、9は、前記ローターハブ13が前記船舶デッキへ向かって全体として下向きになり前記ローター11が実質的に水平方向に構成される態様で、前記可動支持部73により支持される。前記可動支持部73は、前記ハブ13を支持する。前記ナセル9は、前記ハブ13から上方へ突出する。前記可動支持部73は、レール75に取り付けられる。前記可動支持部73と、したがってその上に取り付けられた前記往復台‐ローター‐ナセルアセンブリ27、11、9も、前記レール75に沿って移動可能である。前記レール75は、前記可動支持部73、したがってその上に取り付けられた前記往復台‐ローター‐ナセルアセンブリ27、11、9をも、移し替え場所へと導くことができる。
【0112】
前記可動支持部73は、車輪付き台枠74を含む。この車輪付き台枠は、上面にレール76を含む。前記可動支持部73は、スライド可能な台座78を含む。このスライド可能な台座78は、台枠74の上に取り付けられ、前記レール76に沿ってスライドするよう構成される。この台座78は、基部80、ならびに前記ローターハブ13に係合してこれを支持するよう構成された支持アーム82を含む。
【0113】
前記船舶71は、前記往復台‐ローター‐ナセルアセンブリ27、11、9を前記船舶71から前記タワー3に移すためのプラットフォームシステム77を含む。このプラットフォームシステム77は、可動プラットフォーム79と、制御システム81と、アクチュエータ83、例えば油圧ラムと、センサーとを含む。前記制御システム81は、前記センサーから受信された信号に応答し、前記アクチュエータ83の動作を自動的に制御して前記可動プラットフォーム79の配向を調整することにより、前記船舶71から前記タワー3に前記往復台‐ローター‐ナセルアセンブリ27、11、9を移している間、風と波により生じる前記船舶の動きに対応するよう構成される。前記制御システム81は、前記船舶のデッキの配向にかかわらず、前記プラットフォーム79を実質的に水平方向に保つことを目指す前記可動プラットフォーム79の配向を調整する。前記可動プラットフォーム制御システムは、前記プラットフォームの位置決めを制御して、当該プラットフォームが取り付けられている船の動きにかかわらず、当該プラットフォームが前記タワーに対して実質的に動かずに保たれるようにする。これにより、移し替え中、前記船舶の動きに対応する。通常、前記システムは、3~6のアクチュエータ83を含む。
【0114】
前記可動プラットフォーム79は、前記船舶71の一端の方に、好ましくは前記船舶の後方に設置できる。当該可動プラットフォーム79は、前記船舶の縁部から張り出すよう、渡り板として構成される。
【0115】
前記可動プラットフォームはレール84を含むことが好ましく、前記台座78は、前記レール84に沿って前記プラットフォーム上でスライドするよう構成される。そのため、前記可動支持部73と、したがって前記往復台‐ローター‐ナセルアセンブリ27、11、9も、前記プラットフォーム79上の格納位置から移動可能である。ここから、前記往復台‐ローター‐ナセルアセンブリ27、11、9は前記タワー3に移し替えが可能である。前記船舶は、前記往復台‐ローター‐ナセルアセンブリ27、11、9を前記可動プラットフォーム79の高さまで上方移動させる斜面78を含むことが好ましい。前記レール75は前記斜面78まで延長する。
【0116】
ここで、図1および6~13を参照して、洋上風力発電タービンを組み立てる方法について説明する。
【0117】
タワー3は洋上ウィンドファーム場所に建てられる。このタワー3は、エレベーターレール21a、21bを含む。
【0118】
往復台‐ローター‐ナセルアセンブリ27、11、9は、前記ローター11を前記ナセル9に取り付け、前記往復台27を前記ナセル9に枢着することにより組み立てられる。これは、通常、波止場で行われる。支持ストラップ40は、付加的な支持用に前記ローター13の先端を前記ナセル9に連結するため使用できる。前記ローターブレード15は非常に柔軟で、移動中、重力負荷により下方へ曲がる傾向があり、動きを制約されないと大きな振幅で振動する。前記ストラップ40は、前記ローターブレード15が移動中に湾曲しないようにし、前記ローターブレード先端と水との間隔を伸ばす。当該ストラップ40は、前記ローターに取り外し可能に取り付け可能である。前記往復台27は、通常、運搬のため水平配向にロックされる(図1および6を参照)。各往復台‐ローター‐ナセルアセンブリ27、11、9は、前記船舶71に積載される。各往復台‐ローター‐ナセルアセンブリ27、11、9のヘッドは、前記ローターハブ13が前記船舶のデッキへ向かって全体として下向きになり前記ローター11が実質的に水平方向に構成されるよう、可動支持部73に搭載される(図1参照)。
【0119】
前記船舶71は前記タワー3へと移動する。前記船舶71は前記可動プラットフォーム79が前記タワーの前記基部17に隣接する位置へと移動操作される。前記往復台‐ローター‐ナセルアセンブリ27、11、9は、前記可動プラットフォーム79上に移動される。
【0120】
前記往復台27にはアンビリカルケーブルが接続される。このアンビリカルケーブルは前記往復台27に電力を供給する。このアンビリカルケーブルは、前記往復台27と、前記船舶71に設置された制御システムとの間で制御信号およびステータス情報の送信を容易にする。当該アンビリカルケーブルには遠隔制御コンソールが接続される。この遠隔制御コンソールは、制御信号を前記往復台27に送信するよう構成される。当該遠隔制御コンソールは、手動介入による制御信号の前記往復台27への送信を可能にして、例えば前記取り付けシステム31、前記駆動システム33を制御して前記レール21a、21b上での前記往復台27の位置を調整し、前記リニア駆動装置37を制御して前記ローター‐ナセルアセンブリ11、9の配向を調整し、および/またはアクチュエータを操作して前記枢動ピン63を取り外せるようにする。
【0121】
前記往復台27の配向は、前記タワーレール21a、21bに係合する準備をする際、実質的に水平配向から実質的に垂直配向へと変更される。
【0122】
前記往復台‐ローター‐ナセルアセンブリ27、11、9は、前記可動プラットフォーム79の位置を調整することにより前記タワー3へと移される。前記往復台支持構造39は、前記タワー支持構造20と係合する。前記移し替えは、前記タワーおよび往復台‐ローター‐ナセルアセンブリ27、11、9の破損を防ぐため、スピードを最低にし、実質的に加速度ゼロで行われる。前記往復台‐ローター‐ナセルアセンブリ27、11、9の前記タワー3への移し替え中、前記アンビリカルケーブルは前記船舶の前記制御システムに取り付けられ、前記往復台27上のセンサーからの制御信号およびステータス情報は、前記往復台27を得タワーレール21a、21bに正しく位置合わせするため、前記プラットフォーム制御システム81により使用される。この段階で、前記往復台‐ローター‐ナセルアセンブリ27、11、9が前記タワーの下側に取り付けられる。前記往復台‐ローター‐ナセルアセンブリ27、11、9の重量は、前記タワー支持構造20により支持される。
【0123】
次に往復台アクチュエータが操作されて、前記レール21a、21bを前記調整可能なローラーベアリング47に係合させ、前記内側および外側の歯23a、23b、25a、25bを前記歯車57、57、59、59に係合させる。この段階で、前記往復台‐ローター‐ナセルアセンブリ27、11、9の重量は前記タワー支持構造20と、前記ベアリング41、47と、前記駆動システム33とにより支持されており、当該往復台‐ローター‐ナセルアセンブリ27、11、9は、前記タワーの前記頂部19へと上方移動される準備が整う。前記往復台‐ローター‐ナセルアセンブリ27、11、9が前記レール21a、21bに固定されると、前記アンビリカルケーブルの接続が前記タワー3へ移され、前記船舶71は前記タワーから遠ざかる。
【0124】
前記駆動システム33が作動され、前記往復台‐ローター‐ナセルアセンブリ27、11、9が駆動されて前記タワー3を昇る。前記アセンブリが前記タワーの前記頂部19に達すると、前記駆動システム33が前記往復台‐ローター‐ナセルアセンブリ27、11、9の位置をロックし、それ以上動かないようにする。
【0125】
前記リニア駆動装置37が作動され、前記ローター‐ナセルアセンブリ11、9を回転させる。前記ナセル9は、実質的に垂直配向から実質的に水平配向へと枢動する。前記ローター13は、実質的に水平配向から実質的に垂直配向へと枢動する。この段階で、ナセルヨー軸受87およびタワー頂部フランジ89の嵌合面は実質的に平行であるが、接触はしていない。
【0126】
タワー頂部フランジ89と前記ヨー軸受87をボルト固定して連結するための穴が位置合わせされ、ガイドボルトが挿入される。
【0127】
前記駆動システム33がその駆動モーター33をロック解除し、前記ローター‐ナセルアセンブリ11、9を徐々に垂直に下降させて、前記ヨー軸受87が前記頂部フランジ89に係合するようにする。十分なボルトが前記ローター‐ナセルアセンブリ11、9に固定用に嵌装されると、前記アクチュエータが前記ハブの端部で切り離され、前記枢動ピン63が取り外されて、前記往復台27が前記タワーの前記基部に戻れるようにする。
【0128】
前記駆動システム33が作動され、前記往復台27を前記タワーの前記基部へ向かって下方に駆動する。前記基部で受容されると、前記調整可能なベアリング47および駆動ギア57a、59a、57b、59bが前記レール21a、21bから係合解除され、再利用可能な前記往復台27を回収するため前記船舶71が戻ってくる。
【0129】
前記往復台27の上昇、回転、接続解除、返還中における当該往復台27の制御機能は、自動制御と、前記アンビリカルケーブルを通じて前記往復台27に接続された遠隔制御コンソールによる手動介入制御を組み合わせている。
【0130】
任意選択的に、前記往復台27は保守プラットフォーム91を含むようにもできる(図14参照)。これにより、本風力タービン支柱設備上で、前記プラットフォーム91のエレベーターとして前記往復台27を使って保守作業を行うことが可能になる。前記プラットフォーム91は、前記ローターブレード15を受容するよう構成された開口部93を含むことができる。前記ローター11は、前記ブレード15の回転を防ぐよう定位置にロックできる。前記ブレード15の1つは実質的に垂直方向下向きにできる(図14aに示す)。前記往復台27が前記レール21a、21bを昇るに伴い、前記ブレード15は前記開口部93に入る。前記往復台27を前記レール上の適切な高さでロックすると、保守作業者が前記ローターを点検できるようにする。前記プラットフォームを使用すると、前記ナセルへのアクセスを作業者に提供し、機器および交換部品を運搬することができる。前記ナセルの適切な構成により、これは、大きな部品を交換するための作業プラットフォームとして使用できる。このプラットフォームには安全柵を含めることが好ましい。
【0131】
このプラットフォームは、保守機器、例えばクレーン94を含むことができる(図14bおよび14cを参照)。往復台支持部96は、前記プラットフォームを定位置に保持するよう提供される。前記プラットフォームは、安全柵98を含む。
【0132】
通常のウィンドファーム設備に対する本発明の利点は、以下のとおりである。
【0133】
・設置コストの削減:説明を行った本発明は、現行の設置方法に対して競争力があると推定されており、底の深い沖合の場所に洋上風力タービンを設置する場合または高いタワーを伴う陸上風力タービンの場合に著しく廉価であり、これは、より小さく廉価で可用性の高い設置機器が必要とされるためであり、これにより、より迅速な設置が実現される。
【0134】
・より迅速で、より気象に依存しない設置:説明を行った本発明は、気象が作業に適した時間帯を生産的に使用して、一般的な事業の設置および委託にかかる時間を短縮し、運用中の風力タービンの大がかりな修理中、ダウンタイムを最小限に抑える。
【0135】
・改善されたタービン可用性:大きな障害が生じた場合または計画再嵌合を行う場合は、完成済みローターナセルアセンブリを1回の作業ですみやかに取り外して交換することにより、障害の発生したユニットの修理を陸上で行えるようにし、現場(in situ)での修理作業と比べダウンタイムを短縮する。これにより、一般的な事業の運用期間全体にわたりリスクとコストが軽減される。
【0136】
・改善された安全性:複雑なリフト操作回数を減らし、主要な構成要素に関する作業および保守を簡易化する。
【0137】
全体的に、これらの要因が組み合さり、結果的に一般的な洋上ウィンドファームの均等化発電原価(Levelised Cost of Energy:LCoE)の大幅な節約につながるだけでなく、設置および保守作業の効率と安全性も向上する。
【0138】
以上、本発明について特定の好適な実施形態に関して説明したが、特許請求の範囲に記載された本発明は、そのような具体的な実施形態により必要以上に限定されないことを理解すべきである。さらに、当業者であれば、以上の実施形態には、本発明の範囲内で変更形態が可能であることが明確に理解されるであろう。
【0139】
例えば、前記往復台27を使用すると、前記ローター‐ナセルアセンブリ11、9を前記船舶71に移し替えることができる(図15参照)。
【0140】
前記船舶71は、前記往復台‐ローター‐ナセルアセンブリ27、11、9を前記可動プラットフォーム79のレベルへと上方移動させるエレベーター95を含むことができる(図15および16参照)。前記エレベーター95は、前記斜面78に加え若しくはその代わりに使用できる。
【0141】
前記可動プラットフォーム79は、前記船舶の側部、例えば当該船舶の左舷側または右舷側に取り付けることができる(図16参照)。
【0142】
前記タワーの前記レール21a、21bは、種々の方法で当該タワーの壁に構成および固定して、製造を最適化し、当該タワーの動特性および長期運用への影響を最低限にとどめることができる。例えば、前記一対のレール21a、21bを単一のレールで置き換えることもできる。その単一レールは、T字状の断面を有するものとできる。前記往復台27は、前記タワー3に対して前記往復台‐ローター‐ナセルアセンブリ27、11、9の配向を維持するスタビライザーを含むことができる。
【0143】
従来の管状タワーよりも、三脚型ラチスタワーを使用することができる。T字状のレールは、タワーの各脚部に固定でき、当該タワーの3つの「面」(faces)により、前記船舶による前記往復台‐ローター‐ナセルアセンブリ27、11、9の積み下ろしの気象状況に応じた柔軟性が高まる。
【0144】
一部のタワーでは、前記第1および第2のレール21a、21b間の距離が一定ではない。例えば、前記レール21a、21b間の距離は前記タワーの頂部19近くで狭まる可能性がある。前記タワーレール間の距離を変化可能にするため、前記往復台27上の駆動ユニット101をスライドベアリング103で支持して(図17参照)、前記往復台が前記レール上で動いている間に、前記駆動ユニット101間の距離を調整できるようにできる。例えば、前記第1のレール21aに伴う駆動ギア105と、前記第2のレール21bに伴う駆動ギア105との間の距離は、調整可能である。前記距離は、前記レール上を前記往復台が移動している間、アクチュエータにより自動的に調整できる。前記往復台27は、ロッド107の構成を含むことができる。当該ロッド107は、前記往復台の動く方向に対して横方向に配置構成される。前記駆動ユニット101は、スライドベアリング103を含む。これらのスライドベアリング103は、前記ロッド107に取り付けられる。前記ロッドに対する前記駆動ユニット101の位置は調整できる。
【0145】
示した駆動システム33は、ギア付きリニア駆動装置の多数の代替構成の1つである。前記駆動モーターは液圧式でも電動式でもよく、直接的に、または減速用動力伝達システム(step-down transmission system)を通じて、ピニオンギアに駆動トルクを伝達する。
【0146】
他種の駆動装置37も使用できる。例えば、前記ローター‐ナセルアセンブリ11、9を回転させる前記駆動装置37は、少なくとも1つの電動式直動アクチュエータを含むことができる。
【0147】
前記タワーレール21a、21bに沿って負荷下の前記往復台27の直線的な動きを可能にする前記ベアリング41、47は、スライドベアリング、例えばPTFEパッドであってよい。
【0148】
陸上風力タービンアセンブリの場合、前記ローター‐ナセルアセンブリ11、9の主な構成要素(ナセル9、ハブ13、およびブレード15)は、一般に、別個の構成要素として現場へ運搬される。前記往復台27も別個に現場に運搬できる。
【0149】
往復台‐ナセルアセンブリ27、9は、前記往復台27に前記ナセル9を取り付けることにより、現場で組み立て可能である。前記往復台‐ナセルアセンブリ27、9は、前記ローター11が前記ナセル9に取り付けられた若しくは取り付けられていない状態で、前記タワー3に搭載することができる。後者の場合、前記ローター11は、前記往復台‐ナセルアセンブリ27、9が前記タワーに取り付けられている間に前記ナセル9に取り付けられて、往復台‐ローター‐ナセルアセンブリ27、11、9をもたらす。次いで前記往復台‐ローター‐ナセルアセンブリ27、11、9は前記タワーの頂部へと上方移動される。
【0150】
T字状断面の代わりに種々の断面を有したレール21a、21bが使用可能である。
【0151】
異なる数のエレベーターレール21a、21bを使うこともできる。例えば、前記タワーは、単一のエレベーターレール、3本または4本のレールを使用することができる。実施可能ないかなる数のレールを使ってもよい。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図14C
図15
図16
図17