(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】異物測定方法、異物測定装置および校正基板
(51)【国際特許分類】
G01N 21/94 20060101AFI20240528BHJP
G01N 21/88 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
G01N21/94
G01N21/88 Z
(21)【出願番号】P 2023189667
(22)【出願日】2023-11-06
【審査請求日】2023-11-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591282711
【氏名又は名称】アクア化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003029
【氏名又は名称】弁理士法人ブナ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】出井 岳人
(72)【発明者】
【氏名】定平 幸子
(72)【発明者】
【氏名】仲野 真一
(72)【発明者】
【氏名】和田 龍一
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-178843(JP,A)
【文献】特開平10-170450(JP,A)
【文献】特開2017-207380(JP,A)
【文献】特開昭62-250345(JP,A)
【文献】特開昭49-031396(JP,A)
【文献】実開昭57-061557(JP,U)
【文献】特開平11-064239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/958
G01N 15/00 - G01N 15/1492
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物の清浄度を調べる異物測定方法であって、
前記被検査物から異物をフィルタに捕捉する異物採取工程と、
前記フィルタをドーム型反射照明部内のステージ上に載置する撮像準備工程と、
前記フィルタの背面側に配置した第1の光源から光を照射し、前記フィルタを透過した透過光をフィルタの前面側に設けた撮像部で撮像する透過光撮像工程と、
前記フィルタの前面側において、第2の光源から前記ドーム型反射照明部を介して前記フィルタに光を照射し、前記フィルタから反射した反射光を上記撮像部で撮像する反射光撮像工程と、
前記透過光撮像工程で得た画像情報に基づいて、所定の径または長さと同じか、それ以上の径もしくは長さを有する前記異物の総数をカウントし、かつ前記反射光撮像工程で得た画像情報に基づいて、所定の径または長さと同じか、それ以上の径もしくは長さを有する前記異物のうち反射性異物および非反射性異物の少なくともいずれか一方の異物の数をカウントする処理工程と、
を含み、
前記透過光および/または前記反射光を撮像するにあたり、事前に校正基板にて前記所定の径または長さと同じか、それ以上の径または長さの前記異物がカウントされ、前記所定の径または長さより短い前記異物がカウントされないように調整する工程を含み、
前記異物採取工程において、前記フィルタは透水性および透光性を有する台座上に保持された状態で、前記被検査物から前記異物を洗い流した抽出液をろ過し、前記異物を捕捉した後、前記フィルタは前記台座に保持された状態で前記ドーム型反射照明部内の前記ステージ上に配置される、
異物測定方法。
【請求項2】
前記校正基板には、少なくとも、前記所定の径または長さを有する前記異物に相当する擬似異物と、前記所定の径または長さより短い擬似異物が印刷されている、請求項1に記載の異物測定方法。
【請求項3】
カウントされる前記所定の径または長さを有する前記異物は、50μmの径または長さを有する、請求項1または2に記載の異物測定方法。
【請求項4】
前記校正基板において前記擬似異物が印刷されている領域は、前記フィルタ
の異物捕捉領域と等しく、
前記擬似異物が印刷されている領域を、前記撮像部で撮像する測定領域と一致するように前記台座と共に前記ステージ上に配置する、請求項2に記載の異物測定方法。
【請求項5】
請求項1または2に記載の異物測定方法に使用する異物測定装置であって
、
被検査物から異物を捕捉したフィルタを
保持する、透水性および透光性を有する台座
と、
前記フィルタを保持した
前記台座を前面に載置する、透光性を有するステージと、
前記ステージの背面側に配置され、前記ステージの背面から光照射する第1の光源と、
前記ステージの前面側で、前記ステージの周囲に配置した第2の光源と、
前記ステージの前面側で、前記ステージ上に載置された前記フィルタおよび前記第2の光源を覆うように配置され、前記第2の光源からの光を前記フィルタに全方位から照射するドーム型反射照明部と、
前記ステージの前面側に配置され、前記第1の光源から前記ステージ
、前記台座および前記フィルタを透過した透過光、および前記第2の光源か
ら前記
ドーム型反射照明部を介して前記フィルタに光
を照射し
、前記フィルタから反射し
た反射光を撮像する撮像部と、
前記撮像部に接続され、前記透過光を撮像した画像情報に基づいて、所定の径または長さと同じか、それ以上の径もしくは長さを有する前記異物の総数をカウントし、前記反射光を撮像した画像情報に基づいて、所定の径または長さと同じか、それ以上の径もしくは長さを有する前記異物のうち反射性異物および非反射性異物の少なくともいずれか一方の異物の数をカウントするための処理部と、
を備え
た、
異物測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄部品等の被検査物の清浄度を調べる異物測定方法、これに使用する異物測定装置および校正基板に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用電池部品の他、各種の自動車部品等には高い清浄度が要求される。ISO16232は、清浄度測定に関する規格であり、自動車部品の清浄度検査に用いられ、通常は50μm以上の異物粒子が清浄度分析対象とされている。
【0003】
通常、異物の測定は、まず部品の表面から異物を洗い流し、次に異物を含む抽出液をフィルタにてろ過し、最後に当該フィルタに捕捉された異物を測定する3つのステップからなる。
異物測定システムとしては、既存スキャナを使用するスキャナ方式、既存の顕微鏡を使用する光学顕微鏡方式、CCDセンサを使用するカメラ方式が知られている。
【0004】
特許文献1には、基板の異物の検出を行う検出判別装置が記載されている。この検出判別装置は、基板の異物を撮像系にて検出して該異物の位置情報および画像情報を得る検出系と、該検出系により検出された異物にレーザー光を照射する照射系と、前記検出系で得られたレーザー光照射前の前記異物の領域の画像情報とレーザー光照射後の対応領域の画像情報とに基づいて異物の種類を判別する判別部とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
自動車用の部品等の表面に付着する異物には、金属粉等の反射性異物と、カーボン等の非反射性異物とが存在している。検査では、異物の総数に加えて、このような反射性異物と非反射性異物とを識別してそれぞれの個数をカウントすることが求められることがある。しかも異物粒子を検出するうえで、高い精度が要求される一方、異物測定装置自体が比較的安価であることも要望されている。
本発明の課題は、被検査物に付着することがある反射性異物および/または非反射性異物を含む異物の測定を高精度で行うことが可能な異物測定方法と、比較的安価に製造できる異物測定装置、および高精度な測定を行うために実施される異物測定装置の校正に使用する校正基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の異物測定方法は、被検査物の清浄度を調べるのに使用されるものであって、
被検査物から異物をフィルタに捕捉する異物採取工程と、
フィルタをドーム型反射照明部内のステージ上に載置する撮像準備工程と、
フィルタの背面側に配置した第1の光源から光を照射し、フィルタを透過した透過光をフィルタの前面側に設けた撮像部で撮像する透過光撮像工程と、
フィルタの前面側において、第2の光源からドーム型反射照明部を介してフィルタに光を照射し、フィルタから反射した反射光を上記撮像部で撮像する反射光撮像工程と、
透過光撮像工程で得た画像情報に基づいて異物の総数をカウントし、かつ反射光撮像工程で得た画像情報に基づいて反射性異物および非反射性異物の少なくともいずれか一方の異物の数をカウントする処理工程と、
を含む。
【0008】
本発明の異物測定装置は、被検査物の清浄度を調べるためのものであって、
被検査物から異物を捕捉したフィルタを前面に載置する、透光性を有するステージと、
ステージの背面側に配置され、ステージの背面から光照射する第1の光源と、
ステージの前面側で、ステージの周囲に配置した第2の光源と、
ステージの前面側で、ステージ上に載置されたフィルタおよび第2の光源を覆うように配置され、第2の光源からの光をフィルタに全方位から照射するドーム型反射照明部と、
ステージの前面側に配置され、第1の光源からステージおよびフィルタを透過した透過光、および第2の光源からドーム型反射照明部を介してフィルタに光を照射し、反射した反射光を撮像する撮像部と、
撮像部に接続され、透過光を撮像した画像情報に基づいて異物の総数をカウントし、かつ反射光を撮像した画像情報に基づいて反射性異物および非反射性異物の少なくともいずれか一方の異物の数をカウントするための処理部と、を備える。
【0009】
本発明の校正基板は、上記異物測定装置の校正に使用するものであって、透光性基板の表面に、フォトリソグラフィによって擬似異物が印刷された複数の領域が形成されており、擬似異物は、領域ごとに異なる径または長さを有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の異物測定方法は、被検査物に付着することがある、反射性異物および/または非反射性異物を含む異物の測定を高精度で行うことが可能である。
この異物測定方法に使用するのに適した本発明の異物測定装置は、背面から光照射する第1の光源と、前面側に配置した第2の光源と、第2の光源からの光をフィルタに照射するドーム型反射照明部とを備え、第1の光源からの透過光と、第2の光源からドーム型反射照明部で反射した反射光とを1つの撮像部で撮像することができるので、比較的安価に製造することができる。また、カメラを用いる撮像部は、従来のスキャナ方式、光学顕微鏡方式に比べて安価である。
本発明の校正基板は、フォトリソグラフィによって擬似異物が正しい寸法で正確に印刷することができるので、異物測定装置の校正に使用することにより、高精度な異物測定が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る異物測定装置の概略を示す図である。
【
図2】
図1に示すドーム型反射照明部の詳細を示す図である。
【
図3】洗浄後の被検査物から洗い流した異物をフィルタにて捕捉するろ過装置の一例を示す概略断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る校正基板を示す平面図である。
【
図6】(a)~(e)は校正基板の製造工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係る異物測定方法および異物測定装置を図面に基づいて説明する。但し、以下で参照する各図は、説明の便宜上、本発明の実施形態を簡略化して示したものである。従って、以下に開示する異物測定装置は、参照する各図に示されていない任意の構成部材を備え得る。また、各図中の部材の寸法は、実際の構成部材の寸法および各部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。
【0013】
図1は本実施形態に係る異物測定装置1の概略を示す図である。
図1において、2はメンブランフィルタであり、被検査物から捕捉した異物を保持している。メンブランフィルタ2は、台座21の前面に保持されており、メンブランフィルタ2および台座21は、ステージ3の前面に保持される。メンブランフィルタ2は、後述する異物採取工程において、ろ過装置に装着して異物を捕捉するのに使用される。台座21は、メンブランフィルタ2を支持し、取り扱いを容易にするために使用される。
異物を捕捉したメンブランフィルタ2およびこれを支持する台座21は、ステージ3の前面に、載置されるが、固定具等を用いて固定してもよい。
なお、本明細書において、
前面とは、図1に示す撮像部10に対向する面をいい、背面とは前面の反対面をいう。
【0014】
メンブランフィルタ2としては、50μm以上の粒径の異物を捕捉する場合は、空孔径が0.8μm以上のメンブランフィルタを選択すればよい。メンブランフィルタ2は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂からなる。
台座21としては、例えば、透水性および透光性を有する多孔質ガラス等が挙げられる。多孔質ガラスは、一般に焼結フィルタとして使用されている。
ステージ3としては、例えば、光を散乱させる機能を有する、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等からなる拡散板が使用可能であり、さらに多孔質ガラス、透明ガラス等の透光性基板も使用可能である。
ステージ3の前面において、台座21が保持される部位を除く全面には遮光シート9が配置され、光の透過および反射を抑止している。
【0015】
ステージ3の背面側には、第1の光源4が配置される。第1の光源4は、ステージ3の背面から光照射する。第1の光源4から照射された光は、ステージ3、台座21およびメンブランフィルタ2を透過し、上方の撮像部5にて撮像される。透過光を撮像した画像情報に基づいて異物のサイズを実測し、所定の粒径範囲に入っているか判断し、当該範囲に入っていればカウントされる。これにより、例えば、径または長さが50μm以上の異物の総数をカウントすることができる。
第1の光源4は、フラット形で構成され、ステージ3の背面に配置される。第1の光源4としては、例えば白色の発光ダイオード(LED)等の照明装置が使用可能である。
【0016】
また、ステージ3の前面側で、ステージ3の周囲には、第2の光源6が配置される。第2の光源6は、ステージ3の周囲にリング状に配置された発光ダイオード(LED)等で構成されている。第2の光源6は、リング状である限りは、連続的および間欠的のいずれの形態で配置されていてもよい。ステージ3の前面側には、ドーム型反射照明部7が配置される。このドーム型反射照明部7は、
図2に示すように、ステージ3に保持されたメンブランフィルタ2および第2の光源6を覆うように配置され、第2の光源6からの光を反射して、メンブランフィルタ2に照射するように構成されている。第2の光源6は、ドーム型反射照明部7の内周側の底部に配置するのがよい。メンブランフィルタ2への照射は、全方位からの照射であるのが好ましい。
【0017】
ドーム型反射照明部7は、例えばプラスチック、金属、ガラス等から形成されたドーム型(半球型)の基体から構成されており、該基体それ自体が光反射特性を有しない場合は、基体の内面に反射膜を形成してもよい。反射膜は、例えば、銀、アルミニウム、金などの金属コーティング膜、光反射塗料の塗膜、光反射テープの貼付等によって形成される。ドーム型反射照明部7は、頂部に上方からメンブランフィルタ2を撮影するための開口8が設けられる。
【0018】
メンブランフィルタ2は、その中心がドーム型反射照明部7の曲率半径の中心と一致するように配置するのがよい。ドーム型反射照明部7の開口8も中心がドーム型反射照明部7の曲率半径の中心と一致する円形で形成するのがよい。
【0019】
開口8には、撮像部10が配置される。撮像部10は、開口8を介してメンブランフィルタ2の表面(前面)を撮影できるように配設されている。撮像部10は、テレセントリックレンズ等の集光光学系101と、カメラ102とを備える。カメラ102は、集光光学系101によって結像された光像を電気的な信号に変換することによって撮像する撮像素子、および該撮像素子の出力に対し所定の処理を行うことで前記光像の画像を生成する画像処理部等を備える。撮像素子としては、例えばCCD(Charge-Coupled Devices)イメージセンサ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等が使用可能であり、特に全視野観察(例えば25mm径内の視野観察)が可能であるという点でCMOSイメージセンサを使用するのがよい。使用するCMOSイメージセンサは、例えば2000万画素以上であるのがよい。
【0020】
撮像部10は、第1の光源4からステージ3、台座21およびメンブランフィルタ2を透過した透過光と、第2の光源6からドーム型反射照明部7を介してメンブランフィルタ2に照射され、反射した反射光とをそれぞれ撮像する
撮像部10は、撮像した画像情報を処理部11へ出力する。なお、撮像部10は、画像処理等を行うことなく撮像素子の出力(例えば、いわゆるRAWデータ)を処理部11へ出力し、処理部11で画像処理等を行って画像形成してもよい。
【0021】
処理部11は、メンブランフィルタ2に保持された異物の数を検出するものである。処理部11は、撮像した画像情報から所定の径または長さ(以下、単に「サイズ」ということがある)の異物を検出する。所定のサイズとは、例えば、50μm以上の径または長さを有する異物である。異物は、粒状、繊維状等の種々の形状を有する。
【0022】
処理部11は、2つの画像情報を処理する機能を有する。1つは、メンブランフィルタ2を透過した透過光を撮像した画像情報であり、当該画像情報に基づいて所定のサイズ以上の異物の総数をカウントする。2つ目は、反射光を撮像した画像情報であり、当該画像情報に基づいて所定のサイズ以上の反射性異物および非反射性異物の少なくとの一方の数をカウントする。さらに、処理部11は、異物の総数から反射性異物および非反射性異物の一方の数を差し引く演算機能も有していてもよく、これにより他方の数を出力する機能をも有する。
これらの処理結果は、処理部11に接続された画像表示部12に出力される。また、処理部11にプリンタ等の印刷装置等を接続し、印刷装置等に処理結果を出力させることもできる。これら処理部11および画像表示部12は、例えば、パーソナルコンピュータ等によって実現可能である。
【0023】
次に、本発明の異物測定方法を説明する。
<異物採取工程>
図3に示すように、被検査物14から異物をメンブランフィルタ2に捕捉する。具体的には、被検査物14の表面から異物を洗い流し、異物を含む抽出液をメンブランフィルタ2にてろ過する。
【0024】
図3は、異物採取工程に使用する自動ろ過装置の一例を示す概略断面図である。
図3に示すように、このろ過装置は、洗浄槽13を有し、該洗浄槽13で被検査物14の表面から異物を洗い流す。すなわち、洗浄槽13内には、洗浄台15が設置されており、該洗浄台15は上部に設けたモータ等の回転機構20によって回転可能である。洗浄槽13内には、抽出液16のシャワー装置17が設けられており、該シャワー装置17から被検査物14に向かって上、下および横から抽出液16を噴霧して異物を洗い流す。これにより、被検査物14の全体から異物を洗い流すことができる。洗浄槽13の上部は蓋体22で封止される。
異物を洗い流す抽出液16としては、例えば 水(好ましくは純水)、アルコール系溶剤、炭化水素系溶剤等が使用可能である。
【0025】
異物を洗い流した抽出液16は、洗浄槽13の下方に位置する貯留槽18に流れ落ちる。貯留槽18内の抽出液16はシャワーポンプ23によってフィルタ24を通ってシャワー装置17に送られ、再び洗浄槽13内の被検査物14に噴霧される、循環路を形成する。また、貯留槽18には、吸引ポンプ25が接続されており、貯留槽18内のエアーを吸引することにより抽出液16のろ過効率向上を図っている。
【0026】
洗浄槽13と貯留槽18とを接続する通路19には、メンブランフィルタ2が取り付けられている。メンブランフィルタ2は、台座21上に載置されている。メンブランフィルタ2および台座21は通路19に着脱自在に取り付けられている。メンブランフィルタ2は、例えば径が20~30mmの範囲が異物捕捉領域となる。
【0027】
図4は、簡易的な手動式のろ過装置の例を示す概略断面図である。
図4に示すように、このろ過装置は、ファンネル131と、このファンネル131の下方に配置された吸引瓶181とを備える。吸引瓶181には、吸引ポンプ25が接続されている。
メンブランフィルタ2は、ファンネル131と吸引瓶181との間に、台座21と共に配置され、図示しないクランプ等によって挟持されている。あらかじめ異物を洗い流した抽出液16をファンネル131に注入し、抽出液16が吸引瓶181に落下する過程で、洗い流された異物をメンブランフィルタ2で捕捉する。その他は、
図3に示すろ過装置と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0028】
<校正工程>
異物を捕捉したメンブランフィルタ2を使用して異物測定装置1にセットして被検査物の清浄度検査を行う。清浄度検査を正確に行ううえで、異物測定装置1の校正は重要である。異物測定装置1の校正が不十分であると、例えばサイズが50μm以上の異物を確実に検出できないおそれがある。異物測定装置1の校正には、例えば、
図5に示すような校正基板26を使用するのがよい。
【0029】
図5に示す校正基板26は、プラスチックシート、ガラス板等の透光性シート27の表面に、測定領域(前記した異物捕捉領域)と同じ円形領域30(例えば直径Dが25μmの円形領域)を設け、この円形領域30を4等分して4つの領域29A、29B、29C、29Dが形成されている。各領域29A、・・・29Dには、それぞれサイズが異なる擬似異物28a、28b、28c、28dが印刷されている。擬似異物28a、・・・28dは、前記した反射異物および非反射性異物のいずれに相当するものであってもよい。擬似異物28a、・・・28dとしては、例えば、酸化クロム等の金属酸化物からなる印刷像が挙げられる。
【0030】
擬似異物28a、・・・28dの形状は特に制限されるものではなく、
図5に例示するような●形、■形、▲形等の形状が採用可能である。擬似異物28a、・・・28dは、領域29A、・・・29Dごとに異なる径または長さを有する。例えば50μm以上の異物を検出する場合、各擬似異物28a、・・・28dの寸法は表1に示すように設定される。
【表1】
【0031】
なお、
図5では、4つの領域29A、・・・29Dに、それぞれ径または長さが異なる擬似異物28a、・・・28dを印刷したが、4つの領域29A、・・・29Dに限定されるものではなく、径または長さが異なる擬似異物を印刷した2つ以上の複数の領域があればよい。また、少なくとも、異物測定装置1でカウントすべき最小の径または長さ(上記の例では50μm)を有する異物と同じ径または長さを有する擬似異物を有する校正基板であってもよい。
【0032】
校正基板26を使って異物測定装置1の校正を行うには、メンブランフィルタ2に代えて、校正基板26を台座21と共にステージ3上に配置する。このとき、校正基板26の円形領域30が測定領域と一致するように配置する。この状態で、第1の光源4または第2の光源6を用いて、擬似異物28a、・・・28dをカウントする。第1の光源4を用いて、かつサイズが50μm以上の異物を捕捉できるソフトを利用して、擬似異物28a、・・・28dの総数をカウントした結果を表2に示す。
【表2】
【0033】
表2から明らかなように、40μmと50μmの境界を区別出来ていることがわかる。一方、50μm領域29Cまたは60μm領域29Dで検出されていない擬似異物28c、28dが存在する場合は、照明の強さ、光源の高さ等の調整を行い、50μm領域29Cおよび60μm領域29Dですべての擬似異物28c、28dが検出されるようにするのがよい。校正は、異物測定のたびに実施するのが好ましいが、期間を定めて、期間ごとに校正を行ってもよい。
【0034】
校正基板26の擬似異物28a・・・28dは、校正を高精度で行ううえで高い寸法精度が必要である。本実施形態では、フォトリソグラフィによって擬似異物28a・・・28dを印刷するのがよい。
図6(a)~(e)は、フォトリソグラフィによる校正基板26の製造方法を示している。まず、
図6(a)に示すように、透光性シート27の表面にパターニングする薄膜32をコーティングする。薄膜32としては、例えば、酸化クロム等の金属酸化物が挙げられる。コーティングには、スパッタリング法を使用することができる。次に、薄膜32の上にフォトレジスト33(感光材)を塗布し乾燥させる。ここでは、ポジ型のフォトレジスト33を使用している。
【0035】
次に、
図6(b)に示すように、フォトレジスト33に、矢印で示すように光(紫外線)を照射してパターンを形成する。本実施形態では、いわゆるマスクレス露光装置を使用して、設計データに応じて光照射を行っているが、フォトマスク(不図示)を使用してパターンを形成してもよい。露光後、透光性シート27を公知の現像液に浸して現像する(
図6(c))。
【0036】
次に、エッチングにより、薄膜32をパターンに従って除去する(
図6(d))。エッチングには、化学薬品を使用するウエットエッチングと、プラズマを利用するドライエッチングとが知られており、いずれを使用してもよい。このとき、矢印Eで示すエッジ部では、いわゆるサイドエッジが発生し、設計よりも擬似異物28a・・・28dの寸法が小さくなっている。そのため、擬似異物28a・・・28dの設計寸法は、エッチングで削られることを考慮して、狙いの値よりも少し大きくするのがよい。具体的には、例えば、寸法が50μmの擬似異物28cを得る場合には、適切な値が得られるように設計値は51~53μmの範囲内で選択するのがよい。
【0037】
最後に、
図6(e)に示すように、不要になったフォトレジスト33を除去して、校正基板26が得られる。このように、校正基板26の擬似異物28a・・・28dをフォトリソグラフィによって作製すると、信頼性の高い高精度な校正が可能になり、使用する異物測定装置1の調整を正確に行うことができる。これにより以下に述べる異物測定を高精度で行うことができる。
【0038】
<撮像準備工程および透過光撮像工程>
異物を捕捉したメンブランフィルタ2は、
図1に示すように、台座21の表面に保持された状態でステージ3の所定位置に載置・固定される。この状態で、メンブランフィルタ2の背面側に配置した第1の光源4から光を照射し、メンブランフィルタ2を透過した透過光を撮像する。透過光撮像工程で得た画像情報は処理部11に送られる。
【0039】
<反射光撮像工程>
透過光撮像工程とは別に、反射光撮像工程を行う。メンブランフィルタ2の前面側において、第2の光源6からドーム型反射照明部7を介してメンブランフィルタ2に光を照射し、メンブランフィルタ2から反射した反射光を撮像する。反射光撮像工程で得た画像情報も処理部11に送られる。
反射光撮像工程では、反射性異物および非反射性異物の両方または一方の数をカウントすることができる。すなわち、反射性異物の場合、ドーム型反射照明部7の全方位からの光照射によって反射性異物から反射した反射光により、前記した透過光で撮影した異物画像よりも黒色領域が減少する(黒色部分の面積が減る)。従って、減少した黒色領域の面積から反射性異物の数をカウントすることができる。
【0040】
一方、非反射性異物は、ドーム型反射照明部7の全方位からの光照射によって非反射性異物は黒く見える。従って、カウントされた異物は、非反射性異物と判断できる。
なお、反射光撮像工程で反射性異物および非反射性異物の一方の数をカウントした後、透過光撮像工程でカウントした異物の全数から、反射性異物および非反射性異物の一方の数を引けば、他方の異物の数を計算することができる。
【0041】
<処理工程>
処理部11では、透過光撮像工程で得られた画像情報に基づいて前記異物の総数をカウントする。得られた異物の総数の情報は、処理部11内に保存格納される。
また、処理部11では、反射光撮像工程で得られた画像情報に基づいて反射性異物および非反射性異物の少なくともいずれか一方の数をカウントする。得られた反射性異物および非反射性異物の数の情報は、処理部11内に保存格納される。
【0042】
これら異物の総数、反射性異物の数および非反射性異物の数は画像表示部12に出力される。このようにして、所定の大きさ以上の異物の総数を知ることができるので、被検査物14の清浄度を正確に測定することができる。また、異物の種類、すなわち反射性異物および非反射性異物を高精度で識別できるので、被検査物14の製造工程における点検等に役立てることができる。
【0043】
なお、上記の実施形態では、透過光撮像工程および反射光撮像工程の順で異物測定を行ったが、その逆、すなわち反射光撮像工程および透過光撮像工程の順で異物測定を行ってもよい。
【0044】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の異物測定方法、異物測定装置1および校正基板26は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変更や改善が可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 異物測定装置
2 メンブランフィルタ
3 ステージ
4 第1の光源
5 撮像部
6 第2の光源
7 ドーム型反射照明部
8 開口
9 遮光シート
10 撮像部
101 集光光学系レンズ
102 カメラ
11 処理部
12 画像表示部
13 洗浄槽
131 ファンネル
14 被検査物
15 洗浄台
16 抽出液
17 シャワー装置
18 貯留槽
181 吸引瓶
19 通路
20 回転機構
21 台座
22 蓋体
23 シャワーポンプ
24 フィルタ
25 吸引ポンプ
26 校正基板
27 透光性シート(透光性基板)
28a、28b、28c、28d 擬似異物
29A、29B、29C、29D 領域
30 円形領域
32 薄膜
33 フォトレジスト
E エッジ部
【要約】
【課題】被検査物に含まれることがある反射性異物および/または非反射性異物の測定を高精度で行うことが可能な異物測定方法を提供する。
【解決手段】本発明の異物測定方法は、被検査物の清浄度を調べるのに使用されるものであって、被検査物から異物をフィルタに捕捉する異物採取工程と、フィルタをドーム型反射照明部内のステージ上に載置する撮像準備工程と、フィルタの背面側に配置した第1の光源から光を照射し、フィルタを透過した透過光を撮像する透過光撮像工程と、フィルタの前面側において、第2の光源からドーム型の反射照明部を介してフィルタに光を照射し、フィルタから反射した反射光を撮像する反射光撮像工程と、透過光撮像工程で得た画像情報に基づいて異物の総数をカウントし、かつ反射光撮像工程で得た画像情報に基づいて反射性異物および非反射性異物の少なくともいずれか一方の異物の数をカウントする処理工程と、を含む。
【選択図】
図1