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特許7495171医療用ドレープ及び医療用ドレープユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】医療用ドレープ及び医療用ドレープユニット
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20240101AFI20240528BHJP
   A61B 46/10 20160101ALI20240528BHJP
   B65D 65/04 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
A61B6/00 590Z
A61B46/10
B65D65/04 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023207036
(22)【出願日】2023-12-07
【審査請求日】2023-12-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521256377
【氏名又は名称】有海 明央
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有海 明央
【審査官】松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3191672(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2015/0173836(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0166323(US,A1)
【文献】登録実用新案第3120152(JP,U)
【文献】特開平9-313469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/58、46/10ー46/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Cアーム型線撮影装置アームを被覆する医療用ドレープであって、
上部が閉塞され、下部が開放されたドレープ本体と、
前記ドレープ本体の下部に形成され、装着時に前記アームを取付ける支持部を跨ぐ形状の切り欠けと、
前記切り欠けの頂部領域配置され、前記ドレープ本体を前記支持部に接続する係止部と、
を備える医療用ドレープ。
【請求項2】
Cアーム型X線撮影装置のアームを被覆する医療用ドレープであって、
上部が閉塞され、下部が開放されたドレープ本体と、
前記ドレープ本体の下部に形成され、装着時に前記アームを取付ける支持部を跨ぐ形状の切り欠けと、
前記切り欠けの頂部領域に配置され、前記ドレープ本体を前記支持部に接続する係止部と、を備え、
前記切り欠けは、前記アームが順方向に回動するとき、前記切り欠けの頂部が前記支持部に当接して前記ドレープ本体の上部の前記アームへの追従を妨げ、
前記係止部は、前記アームが逆方向に回動するとき、前記ドレープ本体の下部の前記アームへの追従を妨げる
医療用ドレープ。
【請求項3】
Cアーム型X線撮影装置のアームを被覆する医療用ドレープであって、
上部が閉塞されて前記アームに接続可能に構成され、下部が開放されたドレープ本体と、
前記ドレープ本体の下部に形成され、装着時に前記アームを取付ける支持部を跨ぐ形状の切り欠けと、を備え、
前記ドレープ本体の上部側は、前記支持部の上方の清潔領域内で、前記アームの回動に追従して変位する、
医療用ドレープ。
【請求項4】
記ドレープ本体の内側で前記アームが回転可能なように、前記ドレープ本体の外周幅を調整する調整部材を更に有する
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の医療用ドレープ。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の医療用ドレープと前記医療用ドレープと組み合わせて使用する手術台用ドレープと、を含む医療用ドレープユニットであって、
前記手術台用ドレープは、
側面側に、手術台裏面側から上昇するCアームの先端部を収容する収容部を有する、
医療用ドレープユニット。
【請求項6】
前記手術台用ドレープは、
前記手術台用ドレープの側端部を床面に固定る固定部位を更に備える、
請求項5に記載の医療用ドレープユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療用ドレープ及び医療用ドレープユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
X線透視撮影装置として、C字形状のアームであるCアームを備えるX線透視撮影装置が知られている。一般的に、手術用の医療機器は、術野を汚染することがないよう、滅菌されたサージカルドレープ等で被覆して使用される。
【0003】
例えば特許文献1には、X線透視撮影装置のCアームを被覆するドレープが開示されている。特許文献1に開示されたドレープは、接着性ストリップを複数備えており、これらの接着性ストリップをアーム部分に順次貼り付けていくことで、アーム部分を密着状態で被覆する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2013-502286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、X線透視撮影装置のアームは、患者の患部を様々な角度からX線で撮影できるよう、回転自在に構成されていることが多い。このため、X線透視撮影においては、アームのある部分を清潔野から不潔野に移動させて患部を撮影した後に再度清潔野に戻すということも行われ得る。
【0006】
この場合、上述した従来技術のようにアームをドレープで被覆していても、ドレープ自体が不潔野で汚染されてしまうので、汚染されたドレープが清潔野に戻ることになる。このため、汚染されたドレープが原因で術野が汚染され、術後感染症などを招いてしまう恐れがある。なお、術後感染症を回避するためにアームのドレープを手術中に交換するとなると、ドレープの費用コストだけでなく、手術における時間的コストや人的コストなどの種々のコストが発生してしまう。
【0007】
本開示は、上記事情を鑑みてなされたものであり、種々のコストの発生を抑えつつ、術野汚染の発生リスクを抑えることができる医療用ドレープ及び医療用ドレープユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の医療用ドレープの一つの態様は、Cアーム型線撮影装置アームを被覆する医療用ドレープであって、上部が閉塞され、下部が開放されたドレープ本体と、前記ドレープ本体の下部に形成され、装着時に前記アームを取付ける支持部を跨ぐ形状の切り欠けと、前記切り欠けの頂部領域配置され、前記ドレープ本体を前記支持部に接続する係止部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、種々のコストの発生を抑えつつ、術野汚染の発生リスクを抑えることができる医療用ドレープ及び医療用ドレープユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態のAPビューにおけるX線透視撮影装置の外観構成例を示す側面図である。
図2図2は、本実施形態のLATERALビューにおけるX線透視撮影装置の外観構成例を示す側面図である。
図3図3は、従来技術のアーム用ドレープでアームが被覆されたX線透視撮影装置、及び従来技術の手術台用ドレープで被覆された手術台の外観構成例を示す側面図である。
図4図4は、従来技術のアーム用ドレープ及び手術台用ドレープのAPビューにおける汚染状態を示す図である。
図5図5は、図4に示すAPビューからLATERALビューに変化させた後における従来技術のアーム用ドレープ及び手術台用ドレープの汚染状態を示す図である。
図6図6は、図5に示すLATERALビューからAPビューに戻した後における従来技術のアーム用ドレープ及び手術台用ドレープの汚染状態を示す図である。
図7図7は、従来技術におけるアーム用ドレープの汚染部分が術野汚染のリスクとなる原理の一例を示す説明図である。
図8図8は、本実施形態のアーム用ドレープの外観構成例を示す正面図である。
図9図9は、本実施形態のアーム用ドレープの外観構成例を示す背面図である。
図10図10は、本実施形態のアーム用ドレープの外観構成例を示す側面図である。
図11図11は、本実施形態のX線透視撮影装置が備えるアームを本実施形態のアーム用ドレープで被覆した状態の例を示す側面図である。
図12図12は、本実施形態のX線透視撮影装置が備えるアームを本実施形態のアーム用ドレープで被覆した状態の例を示す背面図である。
図13図13は、本実施形態のアーム用ドレープのAPビューにおける汚染状態を示す図である。
図14図14は、図13に示すAPビューからLATERALビューに変化させた後における本実施形態のアーム用ドレープの汚染状態を示す図である。
図15図15は、本実施形態の手術台用ドレープにおいて、X線検出器及びアームの一部を収容するポケットを形成するためのポケット部位が折り畳まれて手術台上に収納されている状態の例を示す側面図である。
図16図16は、本実施形態の手術台用ドレープにおいて、ポケット部位が開口してポケットを形成している状態の例を示す側面図である。
図17図17は、変形例のX線透視撮影装置が備えるアームを変形例のアーム用ドレープで被覆した状態の例を示す側面図である。
図18図18は、変形例の調整部材が配置された位置におけるアーム用ドレープの断面図である。
図19図19は、変形例の調整部材によるドレープ本体の外周幅の調整例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態(以下、単に「本実施形態」と称する)について詳細に説明する。
【0012】
まず、本実施形態の医療用ドレープについて説明する前に、本実施形態の医療用ドレープでアームが被覆されるX線透視撮影装置について説明する。
【0013】
本実施形態では、C字形状のアームであるCアームを有する整形外科用のX線透視撮影装置を例にとり説明する。Cアームを有するX線透視撮影装置は、外傷、関節、及び脊椎手術などの整形外科手術で頻用される。但し、本実施形態の医療用ドレープが適用されるX線透視撮影装置はこれに限定されるものではない。詳細は後述するが、少なくともアームを回転可能に支持するX線透視撮影装置であれば、本実施形態の医療用ドレープは適用可能であるし、整形外科以外の用途で用いられるX線透視撮影装置にも本実施形態の医療用ドレープは適用可能である。
【0014】
図1は、本実施形態のAPビュー(Anterior - Posterior View)におけるX線透視撮影装置10の外観構成例を示す側面図である。APビューとは、X線の照射方向が患者の前(Anterior)から後ろ(Posterior)方向であることを意味する。図2は、本実施形態のLATERALビューにおけるX線透視撮影装置10の外観構成例を示す側面図である。LATERALビューとは、X線の照射方向が患者の側面方向であることを意味する。
【0015】
図1及び図2に示すように、X線透視撮影装置10は、X線源11と、X線検出器12と、アーム13と、アーム支持部14(支持部の一例)と、本体部15と、台車16と、を備える。以下では、図1及び図2をはじめとする各図面に記載しているように、X線透視撮影装置10の前後方向をx軸、X線透視撮影装置10の左右方向をy軸、X線透視撮影装置10の鉛直方向をz軸として、X線透視撮影装置10について説明する。
【0016】
X線透視撮影装置10は、手術台Oに仰臥されている患者Pの患部をX線で透視することで、当該患部のX線画像を撮影する装置である。X線透視撮影装置10が撮影するX線画像は、静止画像であっても動画像であってもどちらでもよい。X線透視撮影装置10は、台車16を有する移動型の装置であるため、設置場所を個別に移動したり、向きを変化させたりすることが可能である。
【0017】
X線源11は、アーム13の一方の端部に設けられている。X線源11は、X線を発生させ、発生させたX線を患者Pの患部に向けて照射する。詳細には、X線源11は、放射線管及びコリメータ(いずれも図示省略)を備えている。放射線管は、陰極から発生する電子を陽極に衝突させることによりX線を発生する。コリメータは、放射線管が発生させたX線の照射野を絞る。これにより、放射線管が発生させたX線が患者Pの患部に向けて照射される。
【0018】
X線検出器12は、アーム13の他方の端部に設けられている。つまり、X線検出器12は、X線源11が設けられているアーム13の端部と反対側の端部に設けられている。これにより、X線検出器12とX線源11とは、対向する位置関係となる。
【0019】
X線検出器12は、X線源11から照射され患者Pの患部を透過したX線を検出し、当該患部のX線画像を生成する。具体的には、X線検出器12は、入射されたX線を電気信号に変換し、変換した電気信号に基づいて患者Pの患部を示すX線画像を生成する。X線検出器12は、放射線を直接電気信号に変換する直接変換型であっても、放射線をシンチレータによって可視光に変換し、変換した可視光を電気信号に変換する間接変換型であってもどちらでもよい。X線検出器12は、例えば、デジタルラジオグラフィ(DR:Digital Radiography)方式のフラットパネルディテクタ(FPD:Flat Panel Detector)などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0020】
アーム13は、X線透視撮影装置10を側面視した場合の形状がC字形状となるCアームである。図1に示す例では、-y方向、即ち、奥側から手前側にX線透視撮影装置10を側面視した場合に、アーム13がC字形状となる。アーム13の形状はこれに限定されるものではないが、本実施形態の医療用ドレープを適用する上では、アーム13は、軌道回転が可能なよう、少なくとも一部に円弧形状を有することが好ましい。軌道回転とは、円弧状のアーム13の外形を軌道とし、y方向に延びる仮想の軸線を中心とする回転である。
【0021】
アーム13は、2つの端部を有している。アーム13の一方の端部にはX線源11が設けられ、アーム13の他方の端部にはX線検出器12が設けられている。アーム13は、前述したようにC字形状をしているため、X線源11とX線検出器12とを対向する姿勢で保持可能である。本実施形態では、アーム13がC字形状となるように側面視した場合に上側となるアーム13の端部にX線源11が設けられ、アーム13の反対側の端部にX線検出器12が設けられている場合を例にとり説明する。但し、これに限定されず、X線源11及びX線検出器12の配置はこの逆であってもよい。X線源11とX線検出器12との間には、患者P及び手術台Oを挿入可能な間隔が確保されている。
【0022】
アーム13は、アーム支持部14に回動可能に支持されている。詳細には、アーム13は、軌道回転、即ち、アーム13の周方向(矢印a方向)に回転可能なようにアーム支持部14に支持されている。例えば、X線の照射方向を図1に示すAPビューから図2に示すLATERALビューに変更する場合には、X線透視撮影装置10は、アーム13を矢印a1方向(時計回り)に90度回転させればよい。また例えば、X線の照射方向を図2に示すLATERALビューから図1に示すAPビューに戻す場合には、X線透視撮影装置10は、アーム13を矢印a2方向(反時計回り)に90度回転させればよい。なお、以下では、アーム13の矢印a1方向(時計回り)への回転を順方向への回転、アーム13の矢印a2方向(反時計回り)への回転を逆方向への回転と称する場合がある。
【0023】
アーム支持部14は、アーム13を回転可能に支持する。アーム支持部14は、ガイド部14Aと、接続部14Bと、を備える。ガイド部14Aは、アーム13を、アーム13の周方向(矢印A方向)に回転可能なように支持するとともに、アーム13の周方向への回転をガイドする。接続部14Bは、アーム支持部14と本体部15とを接続する。なお詳細な説明は省略するが、接続部14Bは、本体部15に対してz軸方向に昇降可能である。このため、接続部14B(アーム支持部14)は、手術台Oの高さに合わせてアーム13を昇降させることができる。
【0024】
本体部15は、X線透視撮影装置10の各種機能を実現するための各種制御基板や電源などを収容している。本体部15は、台車16に搭載されている。
【0025】
台車16は、キャスター16A、16Bなどの複数のキャスターを有しており、床面を走行可能である。また、キャスター16A、16Bなどの少なくとも一部は旋回する操舵輪となっている。台車16は、操舵輪を有するため、進行方向を容易に変更することができる。
【0026】
なお詳細な説明は省略するが、X線透視撮影装置10は、X線を照射するためのスイッチ、及びアーム13の回転指示を与えたりX線画像を表示したりするための操作パネルなど(いずれも図示省略)も備えている。
【0027】
次に、X線透視撮影装置のCアームの被覆に使用されている従来技術の医療用ドレープであるアーム用ドレープ、及び手術台の被覆に使用されている従来技術の医療用ドレープである手術台用ドレープについて説明する。
【0028】
以下では、従来技術のアーム用ドレープでCアームが被覆されるX線透視撮影装置が、本実施形態のX線透視撮影装置10と同様の機能及び構造を有するものとして説明する。但し、本開示と従来技術とを区別するため、従来技術の説明に用いるX線透視撮影装置には、本実施形態のX線透視撮影装置10と異なる符号を付して説明する。
【0029】
図3は、従来技術のアーム用ドレープ910でアーム93が被覆されたX線透視撮影装置90、及び従来技術の手術台用ドレープ990で被覆された手術台Oの外観構成例を示す側面図である。なお図3は、APビューにおけるX線透視撮影装置90を示している。
【0030】
図3に示すように、X線透視撮影装置90は、X線源91と、X線検出器92と、アーム93と、アーム支持部94と、本体部95と、台車96と、を備える。アーム支持部94は、ガイド部94Aと、接続部94Bと、を備える。台車96は、キャスター96A、96Bなどの複数のキャスターを有する。
【0031】
前述のとおり、X線透視撮影装置90は、X線透視撮影装置10と同様の機能及び構造を有している。従って、X線源91、X線検出器92、アーム93、アーム支持部94、ガイド部94A、接続部94B、本体部95、台車96、キャスター96A、96Bは、それぞれ、X線源11、X線検出器12、アーム13、アーム支持部14、ガイド部14A、接続部14B、本体部15、台車16、キャスター16A、16Bと同様の機能及び構造を有している。このため、これらの各部の説明は省略する。また、図3に示す矢印k方向、矢印k1方向、矢印k2方向は、それぞれ、図1及び図2に示す矢印a方向、矢印a1方向、矢印a2方向に対応する。
【0032】
アーム用ドレープ910は、アーム93を密着状態で被覆する従来技術の医療用ドレープである。具体的には、アーム用ドレープ910は、Cアームであるアーム93を密着状態で被覆する滅菌されたCアームカバーである。アーム用ドレープ910は、ポリエチレンフィルムなどから形成可能である。図3に示す例では、アーム用ドレープ910は、斜線のハッチングで表されている。
【0033】
密着状態で被覆とは、アーム93を矢印k方向に回転させた際に、アーム93とアーム用ドレープ910とが同期して回転できる程度に被覆されていればよいことを意味する。従って、アーム用ドレープ910がアーム93に固定されていることは必ずしも必要としない。例えば、アーム93が回転した際に発生する摩擦力により、アーム93とアーム用ドレープ910とが同期して動く程度の距離感でアーム用ドレープ910がアーム93を被覆していれば、アーム用ドレープ910がアーム93に固定されていなくても、アーム用ドレープ910がアーム93を密着状態で被覆しているといえる。
【0034】
アーム用ドレープ910でアーム93を密着状態で被覆する方法としては、例えば、上述の特許文献1に開示されているように、接着性ストリップでアーム用ドレープ910をアーム93に貼り付けるなどの手法が挙げられる。また例えば、アーム93の断面幅に合わせたサイズのアーム用ドレープ910をアーム93に被せるなどの手法も挙げられる。なお、アーム用ドレープ910によるアーム93の被覆は、必要に応じて、アーム93をアーム支持部94から取り外して行えばよい。
【0035】
図3に示す例では、アーム用ドレープ910は、アーム93に加えX線源91及びX線検出器92を一体的に被覆しているが、アーム93のみを被覆できるものであってもよい。後者の場合、アーム用ドレープ910に加え、X線源91及びX線検出器92を被覆するイメージカバーなどを別途用意すればよい。
【0036】
手術台用ドレープ990は、手術台Oを被覆する従来技術の医療用ドレープである。手術台用ドレープ990は、ポリエチレンフィルムなどから形成可能である。図3に示す例では、本体部95に近い側(-x方向側)の手術台用ドレープ990の垂れ部分990Aは、アーム93による手術台Oの下部への進入を阻害しない長さとなっている。一方、本体部95に遠い側(+x方向側)の手術台用ドレープ990の垂れ部分990Bは、アーム93が手術台Oの下部を通り抜けた後に清潔野を汚染しないよう、アーム93及びX線検出器92を十分に被覆できる長さとなっている。清潔野は、手術室において清潔さを担保しなければならない領域であり、一般的には、手術台の下部よりも上の領域(空間)とされているが、これに限定されるものではない。図3に示すように、垂れ部分990Bは垂れ部分990Aよりも長くなっている。
【0037】
次に、従来技術のアーム用ドレープ及び従来技術の手術台用ドレープの問題点について説明する。具体的には、従来技術の各医療用ドレープを用いた場合に生じうる術野汚染のリスクについて説明する。
【0038】
図4は、従来技術のアーム用ドレープ910及び手術台用ドレープ990のAPビューにおける汚染状態を示す図である。なお図4は、従来技術のアーム用ドレープ910でアーム93が被覆されたX線透視撮影装置90、及び従来技術の手術台用ドレープ990で被覆された手術台Oの外観構成例を側面から示している。
【0039】
前述の通り、一般的な手術室においては、手術台の下部よりも上の領域は清潔さを担保しなければならない領域(清潔野)とされ、これよりも下の領域は清潔さを担保しなくてもかまわない領域(不潔野)とされている。以下本実施形態では、清潔野と不潔野との境界となる領域を境界領域と称して説明する。
【0040】
図4に示す例では、境界領域BAよりも下側(-z方向側)の領域は不潔野である。このため、アーム用ドレープ910のうち境界領域BAよりも下側の領域に位置する部分が、アーム用ドレープ910の汚染部分APP1として示されている。図4に示す例では、汚染部分APP1は、アーム用ドレープ910よりも間隔の狭い斜線のハッチングで表されている。なお実際には、X線検出器92を被覆するドレープ部分も汚染されているが、当該部分がそのままの状態で(何も対策されずに)清潔野に移動することは通常ありえないため、ここでは説明を省略している。
【0041】
また、手術台用ドレープ990の垂れ部分990Bのうち、境界領域BAよりも下側(-z方向側)の領域に位置する部分も、手術台用ドレープ990の汚染部分OPP1として示されている。図4に示す例では、汚染部分OPP1は、斜線のハッチングで表されている。なお実際には、手術台用ドレープ990の垂れ部分990Aのうち、境界領域BAよりも下側の領域に位置する部分も汚染されているが、当該部分が清潔野に移動することは通常ありえないため、ここでは説明を省略している。
【0042】
図5は、図4に示すAPビューからLATERALビューに変化させた後における従来技術のアーム用ドレープ910及び手術台用ドレープ990の汚染状態を示す図である。補足すれば、図5に示すLATERALビューは、図4に示すAPビューからアーム93が矢印k1方向に90度回転された状態である。なお図5は、従来技術のアーム用ドレープ910でアーム93が被覆されたX線透視撮影装置90、及び従来技術の手術台用ドレープ990で被覆された手術台Oの外観構成例を側面から示している。
【0043】
図5に示す例では、図4に示す汚染部分APP1に加え、図5に示すLATERALビューにおいて、アーム用ドレープ910のうち境界領域BAよりも下側(-z方向側)の領域に位置する部分が、アーム用ドレープ910の汚染部分APP2として示されている。汚染部分APP2は、図4に示す汚染部分APP1と同様のハッチングで表されている。図5に示すように、アーム用ドレープ910の汚染部分APP2は、アーム用ドレープ910のうちX線源91の下部の部分を除くほぼ全域まで広がっている。
【0044】
また図5に示す例では、アーム93が手術台Oの下部を通過しており、本体部95側と手術台Oを跨いで反対側において、X線検出器92が、手術台用ドレープ990の垂れ部分990Bを持ち上げた状態で、境界領域BAよりも上側(+z方向側)に位置している。
【0045】
ここで、X線検出器92を被覆する汚染されたドレープ部分及びアーム用ドレープ910の汚染部分APP2の一部は、境界領域BAよりも上側の清潔野に位置するが、手術台用ドレープ990の垂れ部分990Bでカバーされているので、これらが術野汚染のリスクとなる可能性は低い。しかしながら、手術台用ドレープ990の垂れ部分990Bの汚染部分OPP1は、境界領域BAよりも上側の清潔野に位置してしまうため、こちらは術野汚染のリスクとなる可能性は高い。
【0046】
例えば、整形外科医(執刀医)や助手などのオペレータが、X線検出器92による手術台用ドレープ990の垂れ部分990Bの持ち上げをサポートするために、汚染部分OPP1に触れてしまえば、オペレータの手も汚染されてしまい、術野汚染のリスクとなる。また例えば、X線検出器92により手術台用ドレープ990の垂れ部分990Bが持ち上げられ、汚染部分OPP1が清潔領域に位置している状態で、汚染部分OPP1とオペレータの手術着とが接触してしまえば、オペレータの手術着も汚染されてしまい、術野汚染のリスクとなる。
【0047】
このように、従来技術の手術台用ドレープ990では、APビューからLATERALビューに変化した際に汚染部分OPP1が清潔野に移動してしまうため、術野汚染を招いてしまう可能性があり問題となる。
【0048】
図6は、図5に示すLATERALビューからAPビューに戻した後における従来技術のアーム用ドレープ910及び手術台用ドレープ990の汚染状態を示す図である。補足すれば、図6に示すAPビューは、図5に示すLATERALビューからアーム93が矢印k2方向に90度回転された状態である。なお図6は、従来技術のアーム用ドレープ910でアーム93が被覆されたX線透視撮影装置90、及び従来技術の手術台用ドレープ990で被覆された手術台Oの外観構成例を側面から示している。
【0049】
図6に示す例では、アーム用ドレープ910に新たに汚染された部分はなく、アーム用ドレープ910の汚染部分は、汚染部分APP2のままである。しかしながら、LATERALビューからAPビューに戻った結果、汚染部分APP2のうちLATERALビューにおいて汚染された部分が境界領域BAよりも上側の清潔野に移動してしまっているため、術野汚染のリスクとなる可能性は高い。
【0050】
図7は、従来技術におけるアーム用ドレープ910の汚染部分APP2が術野汚染のリスクとなる原理の一例を示す説明図である。図7は、図6に示す状態からX線透視撮影装置90を退け、整形外科医S及び助手ASが手術台Oに仰臥されている患者Pの手術を再開する状態を示している。
【0051】
なお、図6に示す状態からX線透視撮影装置90を退ける際に、アーム用ドレープ910の汚染部分APP2が手術台用ドレープ990の垂れ部分990Aに接触してしまったものとする。この場合、図7に示すように、手術台用ドレープ990の垂れ部分990Aのうち、境界領域BAよりも上側の領域に位置する部分が、汚染部分OPP2となる。
【0052】
そして、この状態で手術を再開すると、手術台用ドレープ990の垂れ部分990Aの汚染部分OPP2と助手ASの手術着とが高い確率で接触してしまう。この結果、助手ASの手術着のうち汚染部分OPP2と接触した部分が、汚染部分ASPPとなって汚染されてしまい、術野汚染のリスクとなる。
【0053】
また、手術中においては、整形外科医Sと助手ASとが立ち位置を入れ替えることもある。この場合も、整形外科医Sの手術着が汚染部分OPP2と接触してしまうことで、整形外科医Sの手術着が汚染されてしまい、術野汚染のリスクとなる。また、立ち位置を入れ替えた助手ASの汚染部分ASPPが、手術台用ドレープ990の垂れ部分990Bに接触してしまうことで、垂れ部分990Bの境界領域BAよりも上側の領域に位置する部分も汚染されてしまい、術野汚染のリスクとなる。
【0054】
以上説明したように、従来技術のアーム用ドレープ910及び手術台用ドレープ990では、いずれも不潔野で汚染されてしまうにも関わらず、汚染された状態で清潔野に進入してしまうことがあるため、術野汚染のリスクが生じてしまう。
【0055】
以下では、術野汚染の発生リスクを低減する本実施形態の医療用ドレープについて説明する。まず、本実施形態のアーム用ドレープについて説明する。
【0056】
図8は、本実施形態のアーム用ドレープ110の外観構成例を示す正面図である。図9は、本実施形態のアーム用ドレープ110の外観構成例を示す背面図である。図10は、本実施形態のアーム用ドレープ110の外観構成例を示す側面図である。
【0057】
アーム用ドレープ110は、X線透視撮影装置10が備えるアーム13を被覆するための医療用ドレープである。アーム用ドレープ110は、ドレープ本体111と、係止部材114(係止部の一例)と、を有する。
【0058】
ドレープ本体111は、アーム13を覆うアーム用ドレープ110の本体部分である。ドレープ本体111は、袋状であって、少なくとも下端112が開口している。本実施形態のアーム用ドレープ110は、ドレープ本体111がこのような袋状をしているため、ドレープ本体111をアーム13に上から被せることでアーム13を被覆する。つまり本実施形態では、アーム用ドレープ110は、X線源11とともに当該X線源11が設けられた側のアーム13の端部からドレープ本体111を被せることで、アーム13を被覆する。従って、ドレープ本体111は、少なくとも、アーム13だけでなくX線源11も覆えるような外周幅を有している。
【0059】
またドレープ本体111は、アーム13が順方向に回転するときにアーム支持部14に係止され、ドレープ本体111のアーム13への追従を妨げる切り欠け113が形成されている。具体的には、切り欠け113は、ドレープ本体111の下端に形成され、ドレープ本体111の上端側のアーム13への追従を妨げる。本実施形態では、図8図10に示すように、ドレープ本体111はその背面の下端側に半楕円形状の切り欠け113を有する。なお本実施形態では、図8図10に示すように、切り欠け113が位置するドレープ本体111の下端側を下端部111A、ドレープ本体111の切り欠け113よりも上端側を上端部111Bと称する場合がある。
【0060】
切り欠け113の形状は、図8図10に示す例に限定されるものではない。詳細は後述するが、切り欠け113は、アーム用ドレープ110でアーム13を被覆した際にX線透視撮影装置10のアーム13以外の部位をこの切り欠け113内に位置させるために、ドレープ本体111に設けられたものである。これにより、アーム13が矢印a1方向に回転した際に、ドレープ本体111の上端部111Bを不潔野に進入させずに、X線透視撮影装置10のアーム13以外の部位に集積させることができる。なお本実施形態では、X線透視撮影装置10のアーム13以外の部位がアーム支持部14である場合を例にとり説明するが、これに限定されるものではない。X線透視撮影装置10の構造によっては、本体部15などアーム支持部14以外の部位も考えられる。
【0061】
従って、上記目的を達成できるのであれば、切り欠け113の形状は問わない。例えば、切り欠け113は、矩形形状や三角形状などであってもよい。また、切り欠け113は、平面的な形状であってもよいし、立体的な形状であってもよい。また、上記目的を達成できるのであれば、そもそも切り欠け113ではなく、ドレープ本体111の下端側に形成されるスリットなどとしてもよい。以下では、切り欠け113はスリットに置き換え可能であるものとして説明する。
【0062】
係止部材114は、ドレープ本体111に設けられ、ドレープ本体111をアーム支持部14に係合し、アーム13が逆方向に回転するときにドレープ本体111の少なくとも一部のアーム13への追従を妨げる。具体的には、係止部材114は、切り欠け113の上部に設けられ、ドレープ本体111の下端側のアーム13への追従を妨げる。ドレープ本体111において、切り欠け113の上部に設けられている。係止部材114は、ドレープ本体111をX線透視撮影装置10のアーム13以外の部位に接続するための部材である。前述したように本実施形態では、X線透視撮影装置10のアーム13以外の部位がアーム支持部14である場合を例にとり説明するが、これに限定されるものではない。なお本実施形態では、図9図10に示すように、アーム用ドレープ110は、係止部材114として円弧形状の粘着テープを有している。
【0063】
詳細は後述するが、係止部材114は、アーム13が矢印a2方向に回転した際に、ドレープ本体111の下端部111Aが清潔野に進入しないように、アーム支持部14に係合して下方向(-z方向)への張力を与えるための部材である。従って、上記目的を達成できるのであれば、係止部材114の種類や形状は問わない。例えば、係止部材114は、ドレープ本体111をアーム支持部14に固着するための粘着部材であってもよい。粘着部材としては、例えば、粘着テープやマグネットテープなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また例えば、係止部材114は、ドレープ本体111をアーム支持部14に係合させるための係合部材であってもよい。係合部材としては、例えば、アーム支持部14に引っかけるフックなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また本実施形態では、係止部材114を設けるドレープ本体111上の位置を切り欠け113の上部としたが、上記目的を達成できるのであれば、その位置も問わない。
【0064】
図11は、本実施形態のX線透視撮影装置10が備えるアーム13を本実施形態のアーム用ドレープ110で被覆した状態の例を示す側面図である。図12は、本実施形態のX線透視撮影装置10が備えるアーム13を本実施形態のアーム用ドレープ110で被覆した状態の例を示す背面図である。なお図11及び図12は、APビューにおけるX線透視撮影装置10を示している。また、図11では手術台O及び患者Pも図示しているが、図12では手術台O及び患者Pの図示を省略している。
【0065】
前述したように、ドレープ本体111は、下端112が開口しており、下端部111Aに半楕円形状の切り欠け113を有する。このため、X線透視撮影装置10を側面視した場合に上側となるアーム13の一端からドレープ本体111を被せることで、アーム用ドレープ110はアーム13を被覆する。具体的には、図11及び図12に示すように、X線源11とともに当該X線源11が設けられた側のアーム13の端部からドレープ本体111を被せることで、アーム用ドレープ110はアーム13を被覆している。
【0066】
またアーム用ドレープ110は、アーム支持部14にドレープ本体111の切り欠け113が位置するように位置決めされている。具体的には、図11及び図12に示すように、アーム支持部14にドレープ本体111の半楕円形状の切り欠け113を位置させることで、ドレープ本体111がアーム支持部14を跨ぐような形となっている。これにより、ドレープ本体111の上端部111B側では、ドレープ本体111がX線源11及びアーム13を覆う形となり、ドレープ本体111の下端部111A側では、ドレープ本体111がエプロン状又はスカート状にアーム13を覆う形となっている。
【0067】
またアーム用ドレープ110は、係止部材114でドレープ本体111がアーム支持部14に接続されている。具体的には、図11及び図12に示すように、切り欠け113の上部に設けられた粘着シールである係止部材114をアーム支持部14の接続部14Bに貼り付けることで、ドレープ本体111をアーム支持部14に固着している。
【0068】
本実施形態のアーム用ドレープ110は、以上のようにしてアーム13を被覆する。なお、アーム13の外周幅に対してドレープ本体111の外周幅が大きすぎる場合には、テープ部材や紐等でドレープ本体111の上端部111Bをアーム13に固定するようにしてもよい。但し詳細は後述するが、本実施形態では、アーム13はドレープ本体111に対して回転可能であることが必要である。このため、テープ部材や紐等でドレープ本体111の上端部111Bをアーム13に固定する際にはある程度余裕を残しておく必要がある。
【0069】
次に、本実施形態のアーム用ドレープ110が術野汚染の発生リスクを低減することができる原理について説明する。
【0070】
図13は、本実施形態のアーム用ドレープ110のAPビューにおける汚染状態を示す図である。図13では、本実施形態のアーム用ドレープ110でアーム13が被覆されたX線透視撮影装置10の外観構成例を側面から示している。なお図13では、アーム用ドレープ110が術野汚染の発生リスクを低減することができる原理を説明することを主目的としているため、本実施形態の手術台用ドレープについては図示を省略している。
【0071】
図13に示す例では、境界領域BAよりも下側(-z方向側)の領域は不潔野である。このため、アーム用ドレープ110のうち境界領域BAよりも下側の領域に位置する部分が、アーム用ドレープ110の汚染部分APPとして示されている。図13に示す例では、汚染部分APPは、アーム用ドレープ110よりも間隔の狭い斜線のハッチングで表されている。汚染部分APPは、主として、アーム13をエプロン状又はスカート状に覆うドレープ本体111の下端部111Aの部分となっている。
【0072】
図14は、図13に示すAPビューからLATERALビューに変化させた後における本実施形態のアーム用ドレープ110の汚染状態を示す図である。補足すれば、図14に示すLATERALビューは、図13に示すAPビューからアーム13が矢印a1方向に90度回転された状態である。なお図14は、本実施形態のアーム用ドレープ110でアーム13が被覆されたX線透視撮影装置10の外観構成例を側面から示している。
【0073】
本実施形態では、前述したように、アーム13はドレープ本体111に対して回転可能となっており、従来技術のように、アームとドレープ本体とが最初から最後まで同期して回転するものではない。このため本実施形態では、ドレープ本体111は、アーム13の一端がアーム支持部14に近づく方向に回転された場合に、ドレープ本体111における切り欠け113よりも上側の部分が潰れながらアーム支持部14に集積される。具体的には、図14に示すように、アーム13が矢印a1方向に回転しても、ドレープ本体111の上端部111Bは、アーム支持部14までしかアーム13に同期して回転しない。そして、ドレープ本体111の上端部111Bが、切り欠け113が位置しているアーム支持部14に達すると、当該アーム支持部14上に潰れながら集積される。つまり、アーム13が矢印a1方向(順方向)に回転するときには、切り欠け113がアーム支持部14に係止されるため、ドレープ本体111の上端部111Bは、アーム13に追従することなく、集積されてアーム支持部14上に留まることになる。仮に、アーム支持部14が図示するような形状でない場合には、ドレープ本体111の上端部111Bの適当位置に、追従防止用の固定具、係止部などを設けてもよい。
【0074】
また、主として汚染部分APPとなっているドレープ本体111の下端部111Aは、アーム13に固定されておらず、エプロン状又はスカート状にアーム13を覆っているだけなので、アーム13が矢印a1方向に回転しても、その位置は変わらない。
【0075】
以上のように本実施形態のアーム用ドレープ110は、APビューからLATERALビューに変化しても、境界領域BAよりも上側(+z方向側)の清潔野に位置する部分は、アーム支持部14上に潰れながら集積されるだけで、清潔野に残っている。
【0076】
続いて、図14に示すLATERALビューから、アーム13が矢印a2方向に90度回転され、APビューに戻った後の状態について説明する。なお、この状態は、前述した図13に示すAPビューの状態となるため、以下では、図13を参照しながら説明する。
【0077】
本実施形態では、アーム13の一端がアーム支持部14から遠ざかる方向に逆回転された場合に、アーム支持部14に潰れながら集積されたドレープ本体111の上側の部分が、アーム13の回転に連動してアーム13を被覆する状態に戻される。具体的には、図14に示すLATERALビューからアーム13が矢印a2方向に90度回転されると、アーム支持部14に集積されたドレープ本体111の上端部111Bがアーム13の回転に引っ張られて、図13に示すアーム13を被覆する元の状態に戻される。つまり、アーム13が矢印a2方向(逆方向)に回転するときには、ドレープ本体111の上端部111Bがアーム13に追従して元の状態に復帰するよう、係止部材114が切り欠け113の頂部をアーム支持部114に固定する。
【0078】
なお本実施形態では、係止部材114は、アーム13の一端がアーム支持部14から遠ざかる方向に逆回転された場合に、ドレープ本体111における切り欠け113よりも下側の部分がアーム支持部114よりも上側に持ち上げられることを防止するため、切り欠け113の頂部に配置されアーム支持部114に貼付される粘着テープとしている。具体的には、図14に示すLATERALビューからアーム13が矢印a2方向に90度回転された際に、アーム13の回転に引っ張られて、ドレープ本体111の汚染部分APPが境界領域BAよりも上側(+z方向側)の清潔野に移動しないよう、係止部材114は、ドレープ本体111の下端部111Aが境界領域BAよりも下側(-z方向側)の領域に残るよう、下向き(-z方向側)の張力を発生させる。
【0079】
以上のように本実施形態のアーム用ドレープ110は、アーム13が順方向に回転するときには、ドレープ本体111の切り欠け113がドレープ本体111のアーム13への追従を妨げる一方、アーム13が逆方向に回転するときには、係止部材114がドレープ本体111を係止してドレープ本体111のアーム13への追従を妨げる構成である。本実施形態のアーム用ドレープ110は、LATERALビューからAPビューに変化しても、アーム支持部14上に潰れながら集積された部分が元の被覆状態に戻るだけで、境界領域BAよりも上側の清潔野に位置したままである。なおアーム用ドレープ110は、LATERALビューからAPビューに変化すると元の被覆状態に戻るので、アーム13がアーム用ドレープ110で被覆されずに境界領域BAよりも上側の清潔野に移動することもない。また本実施形態のアーム用ドレープ110は、LATERALビューからAPビューに変化しても、係止部材114が下向きの張力を発生させるので、ドレープ本体111の汚染部分APPが境界領域BAよりも上側(+z方向側)の清潔野に移動することもない。
【0080】
以上説明したように、本実施形態のアーム用ドレープ110は、APビュー及びLATERALビュー問わず、ドレープ本体111のうちの清潔野に位置する部分が不潔野に移動することもなく、ドレープ本体111のうちの不潔野に位置する部分が清潔野に移動することもない。従って本実施形態のアーム用ドレープ110によれば、ドレープ本体111の汚染された部分が清潔野に進入してしまうような事態は発生せず、術野汚染のリスクを抑えることができる。
【0081】
次に、術野汚染の発生リスクを低減する本実施形態の医療用ドレープとして、本実施形態の手術台用ドレープについて説明する。
【0082】
図15は、本実施形態の手術台用ドレープ190において、X線検出器12及びアーム13の一部を収容するポケット195を形成するためのポケット部位192が折り畳まれて手術台O上に収納されている状態の例を示す側面図である。図16は、本実施形態の手術台用ドレープ190において、ポケット部位192が開口してポケット195を形成している状態の例を示す側面図である。なお図15は、本実施形態の手術台用ドレープ190で被覆される手術台Oに加え、APビューにおけるX線透視撮影装置10及びアーム用ドレープ110の外観構成例を側面から示している。図16は、本実施形態の手術台用ドレープ190で被覆される手術台Oに加え、LATERALビューにおけるX線透視撮影装置10及びアーム用ドレープ110の外観構成例を側面から示している。
【0083】
図15及び図16に示すように、手術台用ドレープ190は、被覆部位191と、ポケット部位192と、固定部位193と、を有する。被覆部位191、ポケット部位192、および固定部位193は、手術台用ドレープ190上に一体的に形成されている。
【0084】
被覆部位191は、手術台用ドレープ190のうち、手術台Oを被覆する部位である。
【0085】
ポケット部位192は、手術台用ドレープ190のうち、X線検出器12及びアーム13の一部を収容するポケット195を形成するための部位である。ポケット部位192は、手術台Oよりも上方にポケット195を形成可能であって、手術台Oに折り畳んで収納可能である。具体的には、図15に示すように、ポケット部位192は、通常、折り畳まれて手術台Oの上に収納されている。図15に示す例では、ポケット部位192は、患者Pと手術台Oとの間に収納されている。
【0086】
またポケット部位192は、X線透視撮影装置10を側面視した場合に下側となるアーム13の他端がアーム支持部14から遠ざかる方向に回転した際に、手術台Oの側部を下から上方向に通過する当該アーム13の他端を収容するポケット195を形成する。具体的には、図16に示すように、ポケット部位192は、アーム13が矢印a1方向に回転した際に手術台Oの側部を下から上方向に通過するX線検出器12及びアーム13の一部を収容するポケット195を、境界領域BAよりも上側(+z方向側)の清潔野に形成する。なお、ポケット部位192によるポケット195の形成は、例えば助手などのオペレータが手動で行うことを想定しているが、これに限定されるものではない。
【0087】
固定部位193は、手術台用ドレープ190のうち、手術台Oが載置された床面に固定される部位である。例えば、図15及び図16に示すように、固定部位193は、重し194が載置されることで、床面に固定される。
【0088】
以上のように本実施形態の手術台用ドレープ190は、APビューの際などポケット部位192を使用しない場合には、境界領域BAよりも上側(+z方向側)の清潔野に位置する手術台Oの上に収納されている。また、本実施形態の手術台用ドレープ190は、LATERALビューの際などポケット部位192を使用する場合にも、境界領域BAよりも上側(+z方向側)の清潔野にポケットを形成することができる。
【0089】
以上説明したように、本実施形態の手術台用ドレープ190では、APビュー及びLATERALビュー問わず、ポケット部位192は常に清潔野に位置し、不潔野に移動することはない。従って本実施形態の手術台用ドレープ190によれば、ポケット部位192が不潔野で汚染されることはないので、ポケット部位192の汚染された部分が清潔野に進入してしまうような事態は発生せず、術野汚染のリスクを抑えることができる。更に本実施形態によれば、固定部位193は、重し194により床面に固定されるので、ポケット195がX線検出器12及びアーム13の一部を収容した際に、手術台用ドレープ190が反動で跳ね上がり、境界領域BAよりも下側(-z方向側)の不潔野に位置する汚染部位が清潔野に移動してしまうような事態は発生せず、術野汚染のリスクを抑えることができる。
【0090】
このように本実施形態のアーム用ドレープ110及び手術台用ドレープ190によれば、従来技術のように、不潔野で汚染された部位が清潔野に進入してしまうような事態は発生しないので、術野汚染のリスクを大幅に抑えることができ、術後感染症などを招いてしまうリスクも大幅に抑えることができる。また本実施形態のアーム用ドレープ110及び手術台用ドレープ190によれば、従来技術のように、不潔野で汚染された部位が清潔野に進入してしまうような事態は発生しないので、手術中にこれらのドレープを交換する必要もなく、ドレープの費用コスト、手術における時間的コスト、および人的コストなどの種々のコストの発生も抑えられる。
【0091】
(変形例1)
上記実施形態では、アーム13へのドレープ本体111の上端部111Bの固定方法を、整形外科医や助手などのオペレータに委ねていたが、初見など不慣れなオペレータにとっては、どの程度余裕を残して上端部111Bをアーム13へ固定すればよいか分からない可能性がある。このため変形例では、初見など不慣れなオペレータであっても簡単に上端部111Bをアーム13へ固定できる手法について説明する。
【0092】
図17は、変形例のX線透視撮影装置10が備えるアーム13を変形例のアーム用ドレープ210で被覆した状態の例を示す側面図である。図17に示す例では、アーム用ドレープ210がドレープ本体111の外周幅を調整するための調整部材220A、220Bを更に有している点で、上記実施形態と相違する。なお、調整部材220A、220Bは、同様の機能及び構造の部材であるため、以下では、調整部材220Aについて説明し、調整部材220Bについての説明は省略する。
【0093】
調整部材220Aは、アーム13がドレープ本体111で被覆された状態でアーム13がドレープ本体111に対して回転可能なように、ドレープ本体111の外周幅を調整する部材である。調整部材220Aは、例えば、ドレープ本体の幅方向に配置されたテープ部材が挙げられるが、これに限定されるものではない。なお変形例では、調整部材220A、220Bをドレープ本体111の縦方向に配置しているが、ドレープ本体111に配置される調整部材の数はこれに限定されるものではなく、1以上であればいくつであってもよい。但し、調整部材が配置される個所は、ドレープ本体111の上端部111Bであることが好ましい。
【0094】
図18は、変形例の調整部材220Aが配置された位置におけるアーム用ドレープ210の断面図である。図18に示すように、調整部材220Aは、その一端に粘着部221を有しており、ドレープ本体111に固着されている。また調整部材220Aは、反対側の他端に、粘着力の弱い弱粘着部222と、台紙でシールされた粘着部223とを有している。弱粘着部222は、調整部材220Aをドレープ本体111に仮止めするための粘着部である。また、ドレープ本体111には、調整部材220Aが配置された位置の幅方向に粘着部223の粘着箇所231~234が示されている。粘着箇所231~234には、それぞれ、当該粘着箇所を粘着部223で固着した場合に、ドレープ本体111の外周幅をどの程度の長さに調整できるかが示されている。
【0095】
例えば、ドレープ本体111の半径を20cm、ドレープ本体111の外周幅を120cm、調整部材220Aの長さを60cmとする。この場合、粘着箇所231には、粘着部223を粘着箇所231で固着すればドレープ本体111の外周幅を100cmに調整できることが示される。また、粘着箇所232には、粘着部223を粘着箇所232で固着すればドレープ本体111の外周幅を90cmに調整できることが示される。また、粘着箇所233には、粘着部223を粘着箇所233で固着すればドレープ本体111の外周幅を80cmに調整できることが示される。また、粘着箇所234には、粘着部223を粘着箇所234で固着すればドレープ本体111の外周幅を70cmに調整できることが示される。従って、例えば図19に示すように、粘着部223を粘着箇所233で固着すれば調整部材220Aによりドレープ本体111の外周幅を120cmから80cmに調整することができる。
【0096】
以上のように変形例によれば、初見など不慣れなオペレータであっても簡単にドレープ本体111の上端部111Bの幅を狙った長さに調整でき、アーム13がアーム用ドレープ210に対して可能な程度に、アーム用ドレープ210をアーム13に固定できる。また変形例によれば、ドレープ本体111の上端部111Bの幅を複数段階で調整できるため、アーム幅が異なる複数種類のX線透視撮影装置10に対しても幅広く対応できる。
【0097】
(変形例2)
上記実施形態では、係止部材114が粘着テープである場合を例にとり説明したが、マグネットテープとしてもよい。この場合、ドレープ本体111側だけでなくアーム支持部14側にもマグネットテープを設けるようにすればよい。
【0098】
(変形例3)
上記実施形態では、ドレープ本体111が袋状である場合を例にとり説明したが、これに限定されず、両端とも開口した筒状としてもよい。この場合、上端を紐等で縛るようにすればよい。また例えば、ドレープ本体111を袋状とせずに1枚布の形状とし、上端部に該当する部分だけ、ファスナー、テープ、ボタン等で側部の両端を接続できるようにして実現してもよい。
【0099】
上述の実施形態及び各変形例は、本開示を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本開示の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本開示はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することの無い範囲で、様々な形で実施することができる。また、上述の実施形態及び各変形例は適宜組み合わせて実施可能である。
【符号の説明】
【0100】
10 X線透視撮影装置
11 X線源
12 X線検出器
13 アーム
14 アーム支持部
14A ガイド部
14B 接続部
15 本体部
16 台車
16A、16B キャスター
110、210 アーム用ドレープ
111 ドレープ本体
111A 下端部
111B 上端部
112 下端
113 切り欠け
114 係止部材
190 手術台用ドレープ
191 被覆部位
192 ポケット部位
193 固定部位
194 重し
195 ポケット
220A、220B 調整部材
221、223 粘着部
222 弱粘着部
231~234 粘着箇所
O 手術台
P 患者
BA 境界領域
APP 汚染部分
90 X線透視撮影装置
91 X線源
92 X線検出器
93 アーム
94 アーム支持部
95 本体部
96 台車
94A ガイド部
94B 接続部
95 本体部
96A、96B キャスター
910 アーム用ドレープ
990 手術台用ドレープ
990A、990B 垂れ部分
S 整形外科医
AS 助手
APP1 汚染部分
APP2 汚染部分
OPP1 汚染部分
OPP2 汚染部分
ASPP 汚染部分
【要約】
【課題】種々のコストの発生を抑えつつ、術野汚染の発生リスクを抑えることができる医療用ドレープ、医療用ドレープユニット、及び医療用ドレープ装着方法を提供する。
【解決手段】本開示の医療用ドレープの一つの態様は、X線透視撮影装置が備える支持部に回動可能に設けられたアームを被覆するための医療用ドレープであって、前記アームを覆うドレープ本体と、前記ドレープ本体に形成され、前記アームが順方向に回転するときに前記支持部に係止され、前記ドレープ本体の上部の前記アームへの追従を妨げる切り欠けと、前記ドレープ本体に設けられ、前記ドレープ本体を前記支持部に係合し、前記アームが逆方向に回転するときに前記ドレープ本体の下部の前記アームへの追従を妨げる係止部と、を備える。
【選択図】図14
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19