(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】掘削・撹拌具
(51)【国際特許分類】
E02D 3/12 20060101AFI20240528BHJP
【FI】
E02D3/12 102
(21)【出願番号】P 2024025141
(22)【出願日】2024-02-22
【審査請求日】2024-02-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516021382
【氏名又は名称】有限会社 櫂設計事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 篤哉
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-156208(JP,A)
【文献】実開昭53-127704(JP,U)
【文献】特開2007-191951(JP,A)
【文献】特開2014-125781(JP,A)
【文献】特開2004-137750(JP,A)
【文献】特開平07-076820(JP,A)
【文献】実開平05-073034(JP,U)
【文献】特開2013-234557(JP,A)
【文献】登録実用新案第3148363(JP,U)
【文献】特開2023-044467(JP,A)
【文献】特開2020-084695(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤を掘削・撹拌しながら掘削土と改良材を混練することにより地盤改良を行うための掘削・撹拌具において、
上下方向に伸延する掘削・撹拌軸と、
前記掘削・撹拌軸の下端に設けられた掘削翼と、
前記掘削・撹拌軸の内部に設けられ、改良材を前記掘削・撹拌軸の下端側に供給する改良材供給路と、
前記掘削・撹拌軸の下端側に設けられ、前記改良材供給路を介して供給された改良材を前記掘削・撹拌軸の外部に吐出する吐出口を有する吐出部と、
を備え、
前記吐出部は、前記改良材供給路の下端側において前記掘削・撹拌軸の軸線から外周側に向かう吐出路に連通して設けられ、前記吐出路により規定される前記改良材の吐出方向に対して前記吐出口の開口面を傾斜させて設け、
前記吐出口には、側面視において前記開口面を傾斜させたことにより前記吐出路の長さが短くなる側を固定端とするフラップ状の弁体を改良材の吐出圧に応じて前記吐出口に離接可能に設け、
前記弁体は、前記改良材が前記吐出口を通過するときには、前記弁体が前記固定端とは逆側となる先端部分を前記吐出口に対して離隔するよう構成されていることを特徴とする掘削・撹拌具。
【請求項2】
前記吐出部は、前記掘削翼の掘削回転方向後方側に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の掘削・撹拌具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤を掘削・撹拌しながら掘削土と改良材を混練することにより地盤改良を行うための地盤改良装置の掘削・撹拌具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軟弱地盤上に構造物を建設するときに、構造物の沈下並びに傾きの事前の防止策として、地盤改良が行われている。地盤改良を行う地盤改良装置には、セメント系固化材を主成分とするスラリー状の改良材を吐出する吐出口を有する掘削・撹拌具が備えられており、地盤を掘削しながら掘削土と改良材とを混練して柱状改良体を構築している。
【0003】
改良材は、垂直方向を軸方向とする掘削・撹拌具の回転軸内に設けられた改良材供給路を経て、掘削・撹拌具の所定の位置に設けられた吐出口から外部に吐出される。吐出口には、改良土の逆流防止を目的として吐出口を覆う逆流防止弁が設けられ、逆流防止弁は、吐出口からの改良材を吐出するときには吐出圧により開き、吐出しないときには吐出口を閉塞するように構成されている(特許文献1から特許文献4参照)。
【0004】
また、掘削・撹拌具の吐出口が、回転軸に対して斜め下方を向くように吐出ノズルを傾斜して設けることで、改良材による地盤の軟化を促進し撹拌性を向上させた地盤改良装置が提案されている(特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-156208号公報
【文献】特開2007-277983号公報
【文献】特開2013-234557号公報
【文献】実用新案登録3148363号公報
【文献】特開2013-119733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来から、掘削土と改良材とを混練して柱状改良体を構築する地盤改良においては、吐出口の回転軸に対する開口の向きと実際の改良材の吐出方向の不一致により、改良材が回転する撹拌翼の外周部まで到達せず、掘削土と改良材の混練不良による柱状改良体の品質低下が生じていた。
【0007】
特許文献1に係る技術では、掘削軸に対して、掘削軸に設けた改良材の円形出口周辺を覆う略箱状のアダプターを装着し、当該アダプターにより、アダプター内に注入された改良材の吐出流を回転軸の軸方向に直交する方向から軸方向に対して斜め上方又は斜め下方を開口方向とするアダプターに設けた吐出口に向かわせることで、改良材の吐出方向を所望の方向に変更している。一方で、アダプターに形成した吐出口を覆うフラップ状の弁体の開度は、改良材の吐出圧により変化するものである。すなわち、単位時間当たりの改良材の吐出量が少なく吐出圧が低い場合には、吐出口が全開とならず、弁体により所望の方向とは異なる方向に改良材の吐出方向がさらに変更されてしまうことになる。このため、掘削土と改良材の混練不良による柱状改良体の品質低下が生じる。
【0008】
特許文献2に係る技術では、回転軸の軸方向に対して直交する方向が改良材の吐出方向となり、逆流防止のための弁体は、吐出方向に正対するように設けられている。弁体の固定端は、回転軸の幅方向の正面視左側に設けられており、弁体を全開とする吐出圧で改良材を吐出できなければ、所定の角度で開いた弁体の右側に形成される掘削軸の外周面の隙間から吐出した改良材は、改良径の外周部にまで到達することなく掘削軸の周辺に留まり掘削土と改良材の混練不良が生じる。
【0009】
特許文献3の技術では、円錐ヘッドの周面に逆流防止のための弁体が設けられているが、円錐ヘッド部分では改良材の供給路が円錐ヘッドの周面の傾斜に対して供給路の軸心が直交するよう傾斜している。したがって、弁体は改良材の吐出方向に正対するように設けられていることになる。このため、特許文献3の技術においても、特許文献2の技術と同様の問題が生じる。
【0010】
特許文献4の技術では、回転軸の軸方向に対して直交する方向が改良材の吐出方向となり、逆流防止のための弁体は、下側を固定端ととして吐出方向に正対するように設けられている。特許文献4に開示された逆流防止のための弁体は、撹拌翼に沿って改良径の外周部に改良材が流れるように、弁体が所定の開度で開くことにより改良材を撹拌翼が位置する上方に導くように構成されている。特許文献4に開示された逆流防止のための弁体は、吐出圧が不足し適度の開度が実現できなければ改良径の外周部にまで改良材を流すことができない。すなわち、特許文献2および特許文献3の技術と同様の問題が生じる。
【0011】
上述のような問題は、改良径が大きい(例えば、改良径が1600mm)土壌改良の施工において指摘されていたが、近年の改良材の固化性能の向上と経済性を追求した固化材の少ない配合の改良材を用いた地盤改良の施工の増加に伴い、改良径の大小を問わず、より問題が顕在化し改善の要求が高まってきている。
【0012】
特許文献5に係る技術では、改良材吐出用のノズルを備え、ノズルを吐出口が斜め下方を向くように回転軸に配置することで、改良材を斜め下方に吐出させるように構成している。特許文献5に係る技術では、特許文献1~4に開示された吐出口を覆う弁体がなく、このような弁体により改良材の吐出方向が変化するものではないが、改良材が改良径の外周部にまで到達できるかは、改良材供給側の供給流量による吐出圧に依存する。このため、改良材の単位時間当たりの供給量が少ない近年の固化材の少ない改良材を用いた地盤改良で特許文献5のような構成の装置を用いた場合、吐出圧不足により掘削土と改良材の混練不良が生じる。さらに、特許文献5に係る技術では、ノズルの先端に逆流防止の対策が施されていないため、改良土によるノズル詰まりの問題も生じやすい。ノズルの吐出口が一度詰まると、メンテンナンスに多大な労力を費やすことになる。
【0013】
撹拌・掘削具における改良材の吐出口において、改良土による吐出口の詰まりを避けるには、逆流防止用の弁体を設けることが有効な対策ではある。一方で、弁体の開度および開き方向が吐出圧により変動するため、所望の方向に改良材を流し改良径の外周部にまで改良材を到達させることができない。このため、吐出口に逆流防止用の弁体を設けることと、所望の方向に改良材を流すことを両立させる技術が要請されている。
【0014】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、簡素な構成でありながら、改良材を改良径の外周部にまで確実に到達させ、掘削土と改良材とを均一に撹拌混錬することが可能な掘削・撹拌具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記従来の課題を解決するために、本発明の一実施形態に係る掘削・撹拌具は、(1)地盤を掘削・撹拌しながら掘削土と改良材を混練することにより地盤改良を行うための掘削・撹拌具において、上下方向に伸延する掘削・撹拌軸と、前記掘削・撹拌軸の下端に設けられた掘削翼と、前記掘削・撹拌軸の内部に設けられ、改良材を前記掘削・撹拌軸の下端側に供給する改良材供給路と、前記掘削・撹拌軸の下端側に設けられ、前記改良材供給路を介して供給された改良材を前記掘削・撹拌軸の外部に吐出する吐出口を有する吐出部と、を備え、前記吐出部は、前記改良材供給路の下端側において前記掘削・撹拌軸の軸線から外周側に向かう吐出路に連通して設けられ、前記吐出路により規定される前記改良材の吐出方向に対して前記吐出口の開口面を傾斜させて設け、前記吐出口には、側面視において前記開口面を傾斜させたことにより前記吐出路の長さが短くなる側を固定端とするフラップ状の弁体を改良材の吐出圧に応じて前記吐出口に離接可能に設け、前記弁体は、前記改良材が前記吐出口を通過するときには、前記弁体が前記固定端とは逆側となる先端部分を前記吐出口に対して離隔するよう構成されていることに特徴を有する。
【0016】
また、本発明の他の態様に係る掘削・撹拌具は、前記掘削・撹拌具において(2)前記吐出部は、前記掘削翼の掘削回転方向後方側に設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る掘削・撹拌具によれば、スラリー状の改良材の吐出方向に対して逆流防止のための弁体を所定の傾斜を持って配置したことにより、弁体の開度によらず、所定の吐出圧で改良材を吐出することが可能となる。これにより、改良材を改良径の外周部にまで到達させて掘削土に対して改良材を均一に拡散させることができ、柱状改良体の品質を向上させることできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る掘削・撹拌具の構成を模式的に示す側面図である。
【
図2】本発明の第1実施施形態に係る掘削・撹拌具の構成を模式的に示す底面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る掘削・撹拌具の吐出部周辺の構成を示す正面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る掘削・撹拌具における改良材の吐出の様子を説明する概要図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る掘削・撹拌具の吐出部を模式的に示す断面概要図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係る掘削・撹拌具の吐出部を模式的に示す断面概要図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係る掘削・撹拌具の構成を模式的に示す側面図である。
【
図8】本発明の第2実施施形態に係る掘削・撹拌具の構成を模式的に示す底面図である。
【
図9】本発明の第2実施形態に係る掘削・撹拌具の作用効果についての説明図である。
【
図10】本発明の第2実施形態に係る掘削・撹拌具の作用効果についての説明図である。
【
図11】本発明に係る掘削・撹拌具を適用する地盤改良装置の概要図である。
【
図12】比較例に係る掘削・撹拌具の吐出部を説明する側面図である。
【
図13】比較例に係る掘削・撹拌具の吐出部を説明する断面概要図である。
【
図14】比較例に係る掘削・撹拌具の吐出部を説明する断面概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、地盤を掘削・撹拌しながら掘削土と改良材を混練することにより地盤改良を行う地盤改良装置の掘削・撹拌具に関し、複数の撹拌翼を備えた構成において、掘削・撹拌軸の下端側に設ける改良材の吐出部の構成を工夫することにより、改良材の拡散効率の向上と柱状改良体の品質向上を図るものである。以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0020】
<1.地盤改良装置>
本発明に係る掘削・撹拌具を備える地盤改良装置の構成について説明する。
図11は、本発明に係る掘削・撹拌具Aを具備した地盤改良装置Kを示す。
図11に示すように、地盤改良装置Kは、主要な装置部分が地盤Gの改良部分の地上面に設置される。
【0021】
地盤改良装置Kは、自走可能なベースマシン本体200に設けられ、上下方向に伸延するリーダ210と、リーダ210に昇降自在に取り付けられる回転駆動部220と、上下方向に伸延して形成され、回転駆動部220の下端に取り付けられる掘削・撹拌軸1と、改良材を供給する改良材供給部230と、を備えることを基本構成としている。
【0022】
ベースマシン本体200の後方に配置された改良材供給部230は、スラリー系の改良材を掘削孔内へ供給する。改良材供給部230は、改良材供給管231を介して回転駆動部220に接続した掘削・撹拌軸1内部の改良材供給路11と連通連設している。
【0023】
改良材は、地盤を改良するために掘削土と混練される材料であって、水とセメント系固化材を主成分としたスラリー状の混合物であり、地盤改良の目的に合わせて他に、セメント系以外の固化材、混和材、添加剤、中和剤、薬剤、化学剤等を添加することができる。
【0024】
改良材供給部230から供給される改良材は、掘削・撹拌軸1内の改良材供給路を経由し、掘削・撹拌具Aに形成した吐出口から吐出され、掘削地盤および土中へ散布・拡散されて掘削・撹拌具Aにより掘削土とともに撹拌される。
【0025】
回転駆動部220は、ベースマシン本体200に内蔵した駆動回転ドラムにより吊下げワイヤ221を介してリーダ210の伸延方向に沿った上下動を可能としている。
【0026】
吊下げワイヤ221は、一端を駆動回転ドラムに連結し、中途部をリーダ210の最頂部を経由して回転駆動部220上部に設けたプーリ222に巻き掛けて、他端をリーダ210の上端部に固定している。
【0027】
すなわち、吊下げワイヤ221は、駆動回転ドラムの回転駆動力を回転駆動部220のリーダ210に沿った上下昇降力に変換し、地盤改良における貫入・引抜き時の堀削・撹拌具Aの上下動を可能にしている。
【0028】
回転駆動部220内部には図示しない駆動機が搭載されており、掘削・撹拌軸1はその基端で駆動機に連結して回転駆動する。
【0029】
なお、回転駆動部220内部の駆動機は、駆動力を掘削・撹拌軸の回転力として付与するものであればよい。また、回転駆動部220およびその内部の駆動機は、単軸式の掘削・撹拌軸1に対応するものに限定されるものではなく、例えば、2本以上の回転軸を有する多軸式の掘削・攪拌軸に対応する駆動機、或いは、相対駆動する二重軸構造を有した掘削・撹拌軸に対応する二重駆動機であってもよい。
【0030】
このように構成した地盤改良装置Kは、地盤を掘削・撹拌しながら掘削土と改良材とを混練して地盤改良を行う主要部である掘削・撹拌具Aを備えている。
【0031】
<2.第1実施形態>
〔全体構成〕
以下、本発明の第1実施形態に係る掘削・撹拌具A1の構成について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る掘削・撹拌具A1の構成を模式的に示す側面図であり、
図2はその底面図である。
図3は、掘削・撹拌具A1の吐出口周辺を拡大して示す側面概要図である。なお、
図1および
図2においては、仮想的な掘削穴の壁面9を二点鎖線で示している。また、
図2においては、掘削翼2以外の撹拌翼4および共回り防止翼5の図示を省略している。
【0032】
本実施形態に係る掘削・撹拌具A1は、地盤を掘削・撹拌しながら掘削土とスラリー状の改良材を混練することにより地盤改良を行うためのものであり、上下方向に伸延する掘削・撹拌軸1と、掘削・撹拌軸1の下端に設けられ、地盤を掘削する掘削翼2と、複数の撹拌翼4と、共回り防止翼5を備える。
【0033】
掘削・撹拌軸1の内部には、改良材供給路11が掘削・撹拌軸1の軸線Sに沿って延設されている。改良材供給路11の下端側には、掘削・撹拌軸1の側面に開口を形成するように略90度方向を曲がった形状に吐出路11aが設けられている。すなわち、改良材供給路11における吐出路11aは、掘削・撹拌軸1の軸線Sから外周側に向かって設けたことにより改良材の吐出方向Xを規定している(
図5参照)。また、吐出路11aは、改良材の吐出方向Xが軸線Sと直交する方向となるように、掘削・撹拌軸1の内部に設けられている。
【0034】
掘削・撹拌軸1の下端側の側面部には、改良材を吐出する吐出口31が形成された吐出部3が設けられている。吐出部3は、基端が掘削・撹拌軸1の外側面に開口する改良材供給路11の終端側の吐出路11aに連設され、掘削・撹拌軸1の側面から外向きに突出した筒状部分である。筒状部分としての吐出部3は、筒の内径を改良材供給路11と同径としている。吐出部3の先端は、側面視において筒状部分の突出方向に対して所定の角度だけ傾斜させて形成されている。吐出口31は、側面視における筒状部材の先端側の傾斜断面であり、改良材供給路11と連通する開口である。吐出口31は、掘削・撹拌軸1の軸線Sに対して、斜め下方を向くように開口している。言い換えると、吐出口31の上端側をより外側に向けて傾斜させている。吐出口31が描く楕円(正面視で円)の中心を通り掘削・撹拌軸1の軸線Sと直交する直線を吐出軸線Qとして、改良材の吐出口31に至るまでの吐出方向Xが定まる。つまり、改良材は、改良材供給路11を上から下に流れ、下端の吐出路11aに流入することで掘削・撹拌軸2の外周に向かうよう略90度流れを変える。しかる後、改良材は、吐出軸線Qに沿った水平方向を吐出方向Xとして流れ、弁体32に当たることになる。
【0035】
吐出部3には、吐出口31を覆う弁体32が設けられている。弁体32は、所定の厚みの弾性ゴム板または樹脂等の可撓性材料から形成される板状部材である。弁体32は、
図5および
図6に示すように、側面視において吐出口31の開口面31aを傾斜させて設けたことにより吐出路11aの掘削・撹拌軸1の軸線Sから外周側に向かう方向の長さが短くなる側を固定端32aとして、吐出口31に取り付けられている。より具体的には、弁体32の下端側は、ネジ等の固定部材33により吐出口31の下端側に固定されている。弁体32は、吐出口31の楕円形の開口を塞いで下端側を固定部材33で固定することにより、弁体32の板面を吐出軸線Qに対して所定の角度θだけ傾斜させて設けられる(
図5参照)。
【0036】
また、フラップ状の弁体32は、改良材の吐出圧に応じて吐出口31の開口面31a(
図6参照)に対して離接可能に設けられている。したがって、弁体32は、改良材供給部230を駆動させ、改良材が所定の流量(例えば、50~200L/分)で改良材供給路11に供給されているときには、改良材の吐出圧により弁体32の固定端32a側と逆側となる先端部分32bからめくれるように変形する。このように先端部分32bが吐出口31の開口面31aから離れることで、弁体32は、吐出口31を吐出圧に応じた開度で開口させる。また、改良材供給部230の駆動を停止して改良材供給路11において改良材が流動していないときには、弁体32は弾性力(復元力)により吐出口31の開口面31aに接して吐出口31を封止し、改良土が逆流して改良材供給路11に侵入することを阻止する。
【0037】
掘削翼2は、掘削・撹拌軸1の径方向外方に向かって伸延する帯板状の掘削翼本体部21と、掘削翼本体部21の下端から前方に向けて突出する複数のビット22を有する。掘削翼本体部21は、その下端を掘削回転方向前方側に向けて所定角度傾斜させた状態で掘削・撹拌軸1に支持されている。複数のビット22は、掘削翼本体部21に翼長方向に沿って所定間隔で配設されている。
【0038】
また、掘削・撹拌軸1の下端側の掘削翼本体部21の下端に近い位置には、改良材を吐出する吐出部3が設けられている。吐出部3は、正面視において先端側に形成した吐出口31の中心が掘削・撹拌軸1の回転の軸線Sに一致するように配置されている(
図3参照)。そして、吐出口31は、改良材の吐出時には掘削・撹拌軸1外周面から掘削翼2の延伸方向に沿って開口するよう構成されている。掘削翼2は、掘削翼本体部21を所定角度傾斜させて掘削・撹拌軸1に支持されることにより、ビット22によって地盤を掘削しつつ、吐出口31から吐出された改良材とともに土砂を上方に吐き出させるようにしている。
【0039】
本実施形態では、2本の掘削翼2が掘削・撹拌軸1の下端に軸線Sを中心に点対称に設けられている(
図1参照)。言い換えると、掘削翼2は、平面視で掘削・撹拌軸1の外周の左右両側に互いに180度の位相差を設けた配置状態で2つ設けられている。掘削・撹拌軸1に設けられる掘削翼2の数は、特に限定されるものではなく、例えば、掘削・撹拌軸1の外周面から放射状に複数本(3本以上)あってもよい。また、掘削翼2の翼長、翼幅、翼厚は、所望とする改良径および/または改良対象とする地盤の種類に合わせて適宜選択することができる。
【0040】
掘削翼2の上方に設けられた複数の撹拌翼4は、掘削翼2により掘削されて上方に吐き出された土砂と吐出口31から吐出された改良材とを混練するものである。
【0041】
撹拌翼4は、帯板状に形成され、側面視で翼板面を掘削・撹拌軸1の軸線Sに対して所定角度傾斜する傾斜面をなして一端が掘削・撹拌軸1に支持されている。撹拌翼4は、掘削・撹拌軸1に対して複数(4本)設けられている。4本の撹拌翼4は、平面視において掘削・撹拌軸1の軸線Sを中心に点対称に配置された2本を一組とし、二組の撹拌翼4を、軸線Sを中心とする回転位相が90度異なるように上下2段として掘削・撹拌軸1に支持させている。
【0042】
撹拌翼4の翼長は、掘削・撹拌軸1の軸線Sから先端までの長さが、掘削翼2のそれと略同一となる長さとしている。撹拌翼4は、一端が掘削・撹拌軸1に支持されていることにより、掘削・撹拌軸1と一体に回転する駆動撹拌翼である。なお、撹拌翼4の数は特に限定されることはなく、例えば、平面視において外周面から放射状に、上下方向において所定の回転位相でらせん状に複数本配設してもよい。
【0043】
共回り防止翼5は、帯板状に形成され、ボス部7に一端が支持されている。ボス部7は、内径が掘削・撹拌軸1よりやや大きい円筒状の部材であり、掘削・撹拌軸1に対し遊嵌されている。これにより、ボス部7は掘削・撹拌軸1の回転運動に従うことがない。なお、掘削・撹拌軸1におけるボス部7の上下には、ボス部7の上下方向の移動を規制する一対のストッパー8,8が配設されている。一対のストッパー8,8のそれぞれは掘削・撹拌軸1に固定されたフランジ状の部材である。ボス部7は、その円筒周縁部が一対のストッパー8,8における互いに対向するフランジ面に摺接して支持されることにより、掘削・撹拌軸1の所定の高さ位置に配置される。
【0044】
共回り防止翼5は、掘削・撹拌軸1の軸線Sから先端までの長さが、掘削翼2のそれよりも長く構成されている。共回り防止翼5は、その先端を掘削穴の壁面9に対して食い込み接触させることにより、掘削穴内で静止、または、所定の速度で回転する掘削・撹拌軸1とは異なる速度で回転する。共回り防止翼5は、土砂等をせん断し、撹拌翼4と改良土が一体となって塊状になり共回りすることを防止する共回り防止機能を発揮する。なお、共回り防止翼5の数は特に限定されることはなく、例えば、平面視において略十字を形成するように4本配設してもよい。
【0045】
本実施形態に係る掘削・撹拌具A1では、下端から上方に向かって、掘削翼2、共回り防止翼5、撹拌翼4の順に配置されている。
【0046】
以上のような構成を備えた掘削・撹拌具A1においては、地盤改良装置Kの回転駆動部220内部の駆動機に、掘削・撹拌軸1の基端を連結して該掘削・撹拌軸1を回転駆動することにより、地盤の掘削および掘削土と改良材の混練が実行される。
【0047】
〔比較例〕
本実施形態に係る掘削・撹拌具A1では、改良材を吐出する吐出部3の吐出口31が、斜め下方を向く開口であり、かつ、吐出口31を覆う板状の弁体32の板面が、吐出軸線Qに対して角度θを成して傾斜させて配置されている点において、従来とは異なる特徴を有している。以下に従来の吐出口の問題点について、
図12から
図14に示す比較例を参照しつつ説明する。
図12は、比較例に係る掘削・撹拌具Bの吐出口131を説明する側面図である。
図13及び
図14は、その断面概要図である。なお、
図12から
図14に示す比較例に係る掘削・撹拌具Bにおいては、本実施形態との対比の便宜上、同等の部材には同一の符号を付している。
【0048】
比較例に係る掘削・撹拌具Bにおける吐出部130は、側面視において掘削・撹拌軸1の軸線Sに直交する吐出軸線Qに対して直交する断面で開口した吐出口131と、吐出口131を覆う弁体132とを有する。弁体132は、下端側をネジ部材等の固定部材133により固定されている。したがって、弁体132は、改良材供給路11を介して改良材が供給されたときには、弁体132の上側がめくれるように湾曲変形し、吐出口131を吐出圧に応じた開度で開口させる。
【0049】
比較例に係る掘削・撹拌具Bにおける吐出部130において、吐出口131を塞ぐ弁体132は、吐出軸線Qに対して、その板面が直交するように設けられている(
図13参照)。したがって弁体132が改良材供給路11を介して吐出口131に向かう改良材の流れ(
図13に白抜き矢印で示す)に対して正対することになる。
【0050】
弁体132が、例えば、200L/分の流量で改良材供給部230から改良材供給路11に改良材を供給したときに、吐出口131が全開となるように構成されていると仮定する。ここで吐出口131が全開となるとは、
図14に破線で示すように弁体132が変形している状態を意味する。ここで、200L/分或いはそれよりもやや少ない流量(例えば、150L/分)で改良材供給部230から改良材供給路11に改良材を供給した場合には、少なくとも弁体132は吐出軸線Qよりも下側となる位置まで変形して吐出口131を開くことになる。このような場合には、改良材は、掘削翼本体部21の下面側を吐出軸線Qに概略沿うように流れ、掘削翼2の先端部にまで到達可能である。
【0051】
一方で、200L/分よりも十分に小さい流量(例えば、50L/分)で改良材供給部230から改良材供給路11に改良材を供給した場合には、弁体132は
図14に実線で示すように上端部のみが吐出圧により変形するにとどまり、吐出口131の開度は全開時の3分の1程度となる。つまり、
図13に示すように弁体132が改良材の吐出方向X1に正対しているため、改良材の流れが正対した弁体132と正面で衝突することにより、改良材の吐出圧の低下をまねく。このため、改良材は吐出軸線Qに沿った方向ではなく、これより上方の弁体132と吐出口131の隙間より噴き出すように吐出される(
図14に白抜き矢印で示す)。また、吐出口131は、掘削翼2の所定の角度だけ傾斜させて掘削・撹拌軸1に支持させた掘削翼本体部21の傾斜下面の下側に位置している。したがって、弁体132の変形により上方側だけが開口した吐出口131から上向きに吐出された改良材は、掘削翼本体部21の背面側の傾斜面に当たり、掘削翼2の外周端(先端)側まで達することなく、
図12に白抜き矢印で示すように、その流れる方向を下方寄りに変える。そうすると、改良材が掘削土中に十分に拡散されず、柱状改良体の品質不良の原因となる。
【0052】
〔吐出部の詳細および効果〕
本実施形態に係る掘削・撹拌具A1においては、以下に詳細に説明する吐出部3を採用したことにより、比較例を参照して説明した問題点を克服している。
図5および
図6は、掘削・撹拌具A1の吐出部3を模式的に示す断面概要図である。
【0053】
本実施形態では、吐出部3の吐出口31は、その開口面31aを吐出軸線Qに対して所定の角度θだけ傾斜させて形成されている。したがって、その傾斜させて形成された吐出口31を覆う弁体32についても、その板面を吐出軸線Qに対して所定の角度θを成して傾斜させて配設されることになる。なお、所定の角度θは、15度~75度程度の鋭角であることが好ましく、本実施形態では、所定の角度θを略45度としている。
【0054】
本実施形態では、
図13および
図14に示した比較例とは異なり、改良材供給路11に供給され吐出口13に向かう改良材の流れは、吐出軸線Qに対して斜めに配置された弁体32の傾斜面に当たることになる。吐出軸線Qに沿って流れる改良材のうち、吐出軸線Qよりも下側を流れ吐出軸線Qよりも上方側を流れる改良材よりも先に弁体32の下方側(固定部材33による固定端32aに近い側)に当たる改良材は、弁体32の傾斜面に沿って吐出口31の上方に向けて流動する。すなわち、改良材の流れが吐出口31の最も外側に突出した部分に集束されていくことになる。このように、側面視において改良材の流れを吐出口31の斜め上方側に弁体32の傾斜に沿って集めることにより、弁体32が変形することで開口した吐出口31の上方部分から外側に向かう改良材の流量が実質的に増える。つまり、供給流量に由来した吐出量に応じた弁体32の開角度の差を小さくすることができ、弁体32による吐出エネルギーのロスを最小限にとどめることに成功している。したがって、改良材が吐出口31から吐出されるときには、改良径の外周部に到達可能な吐出圧が得られる状態となる。
【0055】
また、
図6に示すように、改良材は、側面視において吐出口31の傾斜した開口面31aと変形した弁体32とが成す扇状の形状により斜め前方に案内される。本実施形態の吐出部3では、比較例のように改良材が吐出口131と弁体132との間の隙間から上方に飛散し、掘削翼本体部21の背面に衝突して下方に向かうことが防止される。本実施形態の吐出部3では、小さい流量(例えば、50L/分)で改良材供給部230から改良材供給路11に改良材が供給された場合でも、
図4に白抜き矢印で示すように、改良径の外周部である掘削穴の壁面9にまで改良材を到達させることが可能となる。これにより、改良材が均一に拡散し、柱状改良体の品質が向上する。
【0056】
また、本実施形態の吐出部3のように構成することで、弁体32の材料の違い(可撓性の違い、弁体の固定態様など)による開角度の差を小さくすることができる。したがって、弁体32の材料等の選択肢が増える。また、対応可能な流量の幅が広がることで、流量の違いに応じて弁体32を可撓性の異なる弁体に取り換える作業も少なくて済む。
【0057】
また、本実施形態の吐出部3では、可撓性を有するフラップ状の弁体32を固定部材33で取り付けた態様を採用したが、これに限定されない。可撓性を有する板状部材としては、硬質ゴム等が採用可能であることは勿論、可撓性を有さない硬質材を採用してもよい。例えば、ヒンジ部を有する金属、プラスチック、鋳物等の硬質材を採用してもよい。また、フラップ状の弁体と同等の機能を有する板状物の取付方法として、溶接、ボルト締め等のそれぞれの材質に応じた取付方法が適宜選択される。
【0058】
<3.第2実施形態>
次に本発明の第2実施形態に係る掘削・撹拌具A2について、
図7から
図10を参照して説明する。
図7は、本実施形態に係る掘削・撹拌具A2の構成を模式的に示す正面図であり、
図8はその底面図である。
図9および
図10は、掘削・撹拌具A2のさらなる作用効果を説明する図である。
図9は
図7において一点鎖線で囲んだ領域D部分の拡大図であり、
図10は、吐出口31を正面に見た状態での、掘削翼2および整流体23付近の部分拡大図である。また、
図8においては、掘削翼2以外の撹拌翼4および共回り防止翼5の図示を省略している。また、
図10においては、吐出部3に対して紙面前側に位置する整流体23を破線で示している。なお、第1実施形態と同等の部材は同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0059】
第2実施形態においては、
図7に示すように、掘削・撹拌具A2が、掘削・撹拌軸1と、地盤を掘削する掘削翼2と、撹拌翼4と、掘削・撹拌軸1に遊嵌されたボス部7に一端が支持された共回り防止翼5とを有している点は、第1実施形態と同様である。一方で、第2実施形態においては、掘削翼2の端部に整流体23を設けた点において、第1実施形態と異なる。
【0060】
整流体23は、掘削翼2の掘削翼本体部21の先端部に、その背面側から掘削回転方向後方側に突出して設けられた板状部材であり、掘削回転方向に板厚面が向くように配置される。整流体23は、掘削翼2のビット22により削られた掘削土の流れ方向を調整する機能を有する(
図10参照)。
【0061】
図8に示すように、整流体23を取り付けた掘削翼2が回転運動するのに伴い、整流体23よりも改良径の径方向の中心に向かう側には、回転方向に対して後方側が開放状態で底面視または平面視において、略扇状の空間(負圧空間R)が連続して形成される。負圧空間Rは、ビット22によって削られる前の掘削面G1の領域よりも圧力が低い低圧領域であり、掘削翼2の回転方向を前方として、掘削翼2の後方に形成される。整流体23は、
図10に示すように、掘削翼2の後方に負圧空間Rを形成したことにより生じる掘削翼2の前後の圧力差を利用して、掘削翼2の後方に回り込むようにできる流れの遅い渦流である後流BFを発生させる。これにより、掘削後の掘削面G2より上側の掘削翼2の背面側では、吐出口31から吐出された改良材が、後流BFの渦流により掘削翼2の後方に流れた掘削土に均一に拡散され混練される。
【0062】
また、
図9に白抜き矢印で示すように、整流体23は、掘削土の流れを調整するだけでなく吐出部3の吐出口31と弁体32の間の開口から吐出され掘削翼2の外周端まで到達した改良材を再び掘削・撹拌軸1方向に還流させる物理的障壁としての役割を果たしている。したがって、本実施形態では吐出部3から吐出された改良材は、整流体23によってもたらされた掘削翼2の前後における圧力差による渦流の作用と、改良材の掘削・撹拌軸1方向への還流作用とにより、より一層、拡散が促進される。したがって、柱状改良体の品質をより一層向上させることができる。
【0063】
なお、整流体23の形状は、整流体としての機能を果たし得る所定の範囲内で変更可能であることは勿論である。
【0064】
以上のような構成を備えた第1実施形態及び第2実施形態の掘削・撹拌具(A1,A2)は、次のような構成を備えていると言える。すなわち、地盤を掘削・撹拌しながら掘削土と改良材を混練することにより地盤改良を行うための掘削・撹拌具(A1,A2)は、次のような構成を備えていると言える。において、上下方向に伸延する掘削・撹拌軸1と、掘削・撹拌軸1の下端に設けられた掘削翼2と、掘削・撹拌軸1の内部に設けられ、改良材を掘削・撹拌軸1の下端側に供給する改良材供給路11と、掘削・撹拌軸1の下端側に設けられ、改良材供給路11を介して掘削・撹拌軸1の下端側に供給された改良材を掘削・撹拌軸1の外部に吐出する吐出口31を有する吐出部3と、を備え、吐出部3は、改良材供給路11の下端側において掘削・撹拌軸1の軸線Sから外周側に向かう吐出路11aに連通して設けられ、吐出路11aにより規定される改良材の吐出方向Xに対して吐出口31の開口面31aを傾斜させて設け、吐出口31には、側面視において開口面31aを傾斜させたことにより吐出路11aの長さが短くなる側を固定端32aとするフラップ状の弁体32を改良材の吐出圧に応じて吐出口31に離接可能に設け、弁体32は、改良材が吐出口31を通過するときには、弁体32が固定端32aとは逆側となる先端部分32bを吐出口31に対して離隔するよう構成されていることを特徴とするものである。
【0065】
また、以上のような構成を備えた第1実施形態および第2実施形態の掘削・撹拌具(A1,A2)は、次のような構成を備えているとも言える。すなわち、吐出部3は、吐出口31の中心を通り掘削・撹拌軸1の軸線Sと交差する吐出軸線Qに対して吐出口31の開口面31aを傾斜させて設け、吐出口31には、改良材の吐出圧に応じて吐出口31に離接するフラップ状の弁体32を設けたものである。
【0066】
ここで、吐出口31の中心を通り掘削・撹拌軸1の軸線Sと交差する吐出軸線Qは、各実施形態に示したように、掘削・撹拌軸1の軸線Sと直交する場合だけでなく、所定の傾斜角を持って交差するものも含む。また、直交は完全な直交だけでなく、例えば、プラスマイナス5度程度のズレを許容するものである。さらに、直交には、軸線Sと吐出軸線Qが1点において互いに交わらなくとも、改良材供給路11の半径の範囲内で側面視において略直交するものも含む。すなわち、改良材供給路11と吐出部3との位置関係による軸線Sと吐出軸線Qとの関係には、設計および各部材の組立・取付過程において許容される誤差が当然に含まれるものである。
【0067】
また、吐出軸線Qに対して斜めに配置された弁体32は、上述した各実施形態の斜め下方を向く傾斜以外、斜め上方でも斜め水平方向でも良く、吐出軸線Qに対して斜めに配置であればどの方向に傾斜しても良い。
【0068】
このような構成によれば、吐出口31に対してフラップ上の弁体32を設けて改良材の逆流を防止しつつ、弁体32を吐出方向Xに対して傾斜させて設けたことで、弁体32による吐出圧の低下を低減することができる。これにより、吐出部3から吐出された改良材は、掘削・撹拌軸1の周辺に留まることなく、掘削翼2の外周端部(掘削翼本体部21の先端)にまで到達する。このように改良材が効率的かつ確実に拡散されることで、柱状改良体の品質を向上させることができる。
【0069】
また、本実施形態に係る掘削・撹拌具(A1,A2)では、吐出部3は、掘削翼2の掘削回転方向後方側に設けられていることを特徴とするものである。
【0070】
このような構成によれば、より効率的に改良材を拡散させることができる。
【0071】
上述した各実施形態は、地盤改良工法として、スラリー状の改良材を供給して柱状改良体を構築する場合を例に説明したが、本発明が粉粒状の改良材を供給して柱状改良体を構築する地盤改良工法に用いられる掘削・撹拌具に適用可能であることは勿論である。
【0072】
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、上述した実施形態および変形例に限られず、上述した実施形態で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術並びに上述した実施形態の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も含まれる。また、本発明は上述の実施の形態に限定されることはなく、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。そして、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。また、本開示に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、また他の効果があってもよい。
【符号の説明】
【0073】
A,A1,A2 掘削・撹拌具
1 掘削・撹拌軸
2 掘削翼
3 吐出部
4 第1撹拌翼
5 共回り防止翼
7 ボス部
8 ストッパー
9 掘削穴の壁面
11 改良材供給路
11a 吐出路
21 掘削翼本体部
22 ビット
31 吐出口
31a 開口面
32 弁体
32a 固定端
32b 先端部分
33 固定部材
S 軸線
Q 吐出軸線
X 吐出方向
【要約】
【課題】簡素な構成でありながら、改良材を改良径の外周部にまで確実に到達させ、掘削土と改良材とを均一に撹拌混錬することが可能な掘削・撹拌具を提供する。
【解決手段】 掘削・撹拌具A1は、地盤を掘削・撹拌しながら掘削土とスラリー状の改良材を混練することにより地盤改良を行うためのものであり、上下方向に伸延する掘削・撹拌軸1と、掘削・撹拌軸1の下端に設けられ、地盤を掘削する掘削翼2と、掘削・撹拌軸1内を設けた改良材供給路を介して供給されたスラリー状の改良材を吐出する吐出口を有する吐出部3を備え、吐出口の開口面が吐出口の中心を通り掘削・撹拌軸1の回転の軸線Sと交差する吐出軸線Qに対して傾斜して設けられ、吐出部3には、吐出口を覆うフラップ状の弁体配設されている。
【選択図】
図1