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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】着用可能なタッチ感応型衣服
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20240528BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20240528BHJP
   G06F 3/01 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
G06F3/041 430
G06F3/041 480
G06F3/041 495
G06F3/044 Z
G06F3/01 560
G06F3/01 570
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019229056
(22)【出願日】2019-12-19
(65)【公開番号】P2020113264
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2022-10-12
(31)【優先権主張番号】18214450.1
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507343327
【氏名又は名称】サンコ テキスタイル イスレットメレリ サン ベ ティク エーエス
【氏名又は名称原語表記】SANKO TEKSTIL ISLETMELERI SAN. VE TIC. A.S.
【住所又は居所原語表記】Organize Sanayi Bolgesi 3. Cadde 16400 Inegol-Bursa(TR)
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【弁理士】
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【弁理士】
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】オズギュル シバノグル
(72)【発明者】
【氏名】アディル ベルク カラカヤ
(72)【発明者】
【氏名】レイラ ゼンギ
(72)【発明者】
【氏名】デニズ イイドアン
(72)【発明者】
【氏名】エルトゥグ エルクシュ
【審査官】前地 純一郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0199045(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0310644(US,A1)
【文献】特表2015-530631(JP,A)
【文献】特開2008-092330(JP,A)
【文献】特開2017-211985(JP,A)
【文献】特開2018-041961(JP,A)
【文献】特開平02-234901(JP,A)
【文献】特開2014-182540(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0069695(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0301603(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/033- 3/039
G06F 3/03
G06F 3/041- 3/047
H01H 36/00 -36/02
H01H 13/00 -13/88
G06F 3/02 - 3/027
H03M 11/00 -11/26
G06F 3/01
G06F 3/048- 3/04895
H03K 17/74 -17/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣服(100)に組み込まれた1つの電子容量センサ群のアレイ(12)を備える着用可能なタッチ感応型衣服(100)であって、
前記1つの電子容量センサ群のアレイ(12)は、複数の電極(E1~E5)を含み、
前記各電極(E1~E5)は1つの電子制御ユニット(30)に個別に電気的に接続されており、
前記アレイ(12)は、複数の信号線(51~55)によって前記電子制御ユニット(30)に接続され、
前記各信号線は、寄生容量結合の信号を前記電子制御ユニット(30)に伝達するために、それぞれの前記電極(E1~E5)を前記電子制御ユニット(30)に接続しており、
前記各電極(E1~E5)は、フレキシブルバス(25)を介して前記電子制御ユニット(30)に個別に電気的に接続されており、
前記フレキシブルバス(25)及び前記電子制御ユニット(30)は前記1つのアレイ(12)の下に配置され、
前記電子制御ユニット(30)、前記フレキシブルバス(25)及び前記アレイ(12)は、前記衣服(100)内に組み込まれており、
前記電子制御ユニット(30)は、前記各電極(E1~E5)と着用者のタッチとの間の前記寄生容量結合の値を算出するように構成されており、
前記電子制御ユニット(30)には、前記アレイ(12)上で実行されたジェスチャを表現する表示を行うように構成された読み取り可能なディスプレイ(35)が設けられており、
前記1つのアレイ(12)は、前記電子制御ユニット(30)によって実行されるジェスチャの取得またはタッチイベントの決定アルゴリズムの呼び出しを知らせるために、触覚フィードバックを提供するように構成された1つのバイブレーター(20)に接続されていることを特徴とするタッチ感応型衣服(100)。
【請求項2】
前記タッチイベントの決定アルゴリズムは、所定の時間の動作モードにおける前記レイ(12)上で実行された前記複数の電極(E1~E5)での上下のスワイプジェスチャの有無により、前記着用者のタッチが意図的か意図しないものかを識別するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の着用可能なタッチ感応型衣服(100)。
【請求項3】
前記アレイ(12)は、耐洗濯性のカプセル化材によって、カプセル化されていることを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載のタッチ感応型衣服(100)。
【請求項4】
前記アレイ(12)は、前記衣服の1つの縫い目に沿って配置されていることを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載のタッチ感応型衣服(100)。
【請求項5】
前記アレイ(12)は、銅層が設けられた1つの両面カプトン層、または、PETフィルムに導電性インクを使用したデジタル印刷された1つの可撓性の基板、または、可撓性リボンで互いに接続された剛性の孤立した複数の領域を有する1つの可撓性のプリント配線板(PCB)として構成されていることを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載のタッチ感応型衣服(12)。
【請求項6】
前記アレイ(12)は、樹脂被覆され、及び又はシリコン被覆されていることを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載のタッチ感応型衣服(100)。
【請求項7】
前記電子制御ユニット(30)は、ブルートゥース(登録商標)(BT)モジュール、またはブルートゥース(登録商標)低エネルギー(BLE)モジュールのインターフェースを介して、タブレット、スマートフォン、ファブレットなどの遠隔のシステムにワイヤレスで接続できるように構成されていることを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載のタッチ感応型衣服(100)。
【請求項8】
着用可能なタッチ感応型衣服(100)で実行されたタッチイベントを検知する方法であって、
請求項1に記載の1枚の前記タッチ感応型衣服(100)を提供し、
-前記電子制御ユニット(30)により、前記複数の電極(E1~E5)と前記着用者のタッチとの間の前記寄生容量結合の変化を算出し、
-前記複数の電極(E1~E5)によって提供された前記寄生容量結合の変化の関数として、前記1枚のタッチ感応型衣服(100)で実行された前記タッチイベントを決定し、
前記電子制御ユニット(30)によって実行されるジェスチャの取得またはタッチイベントの決定アルゴリズムの呼び出しを知らせるために、前記触覚フィードバックを提供するように前記バイブレーター(20)を作動させることを特徴とするタッチイベントを検知する方法。
【請求項9】
前記タッチイベントの決定アルゴリズムにより、所定の時間の動作モードにおける前記アレイ(12)上で実行された前記複数の電極(E1~E5)での上下のスワイプジェスチャの有無により、前記着用者のタッチが意図的か意図しないものかを識別することを特徴とする請求項8に記載のタッチイベントを検知する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、着用可能なタッチ感応型衣服に関する。特に、本発明は、タッチ感応型衣服のヒューマンインターフェースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、糸などの繊維を、検知電極としたり、織物層の間に固体電極として配置したりすることは公知である
織物自体を検知電極として使用するためには、まず、センサ糸を開発し、次にこれを織る必要があるが、これらの作業は、一般的な繊維材料とは異なる材料が使用されるため、簡単ではなく、実施が容易ではない
【0003】
また、使用される材料は、たとえば多数回の剥ぎ取りとねじりによって、構成し準備する必要があり、さらに、はんだ付けや積層などのプロセスにより電子回路に接続する必要がある。
これらの織物構造は、堅牢で単一の電子回路と比較して、多くの障害のある回路やメカニズムを含んでいる場合がある。
【0004】
上記のような繊維の使用例として、特許文献1には、複数の双方向性の繊維が記載されている。この双方向性の繊維は、タッチ入力を検知するように構成された静電容量型タッチセンサを形成するために、織り込まれた導電性糸のグリッドを備えている。検知されたタッチ入力は、遠隔の装置を制御するのに使用できる。
【0005】
他の従来技術として、例えば、特許文献2には、可撓性パッドに組み込まれた容量性触覚センサの格子(マトリックス)を備える触覚制御装置が開示されている。このセンサの格子は、外部の処理回路モジュール、例えば、各センサによって発せられた信号の取得および処理のために配置されたマイクロコントローラと接続するための、対応する複数の接点を有している。
これらの接点と処理モジュールとの接続は、可撓性の多極平面導体細片によって実現でき、一方、処理モジュールは、従来の技術によるハイブリッド回路によって、剛性のあるプリント回路支持体上、または可撓性の支持体(flex-PCB)上に実装できる利点がある。この解決手段により、制御電子回路を、感知部分に対して遠隔の位置に配置することができる。
センサマトリックスのボードに、アンテナと、これに関連する供給、駆動電子回路が実装されている場合には、多極導体細片を使用して接続を切り離すことにより、前記制御電子回路を前記感知領域から分離するか、恒久的に分離し、無線で接続することができる。
前記装置の導体細片は、好ましくは、導電性繊維から作られている。
【0006】
特許文献2に開示されている複数の電子装置の配置によると、ジャケットの下から左上に、時計回りに、スマートフォン、レーダー、時計、1対のヘッドフォン、及びチェストストラップを、使用者が自身の身体に結び付けるか、あるいは自身のジャケットJのポケット内に保持した配置とすると、可撓性の制御インターフェースを介して管理するのに使用することができる。
【0007】
特許文献3には、衣服に組み込まれたセンサ電子回路群のアレイ、このセンサ電子回路群のアレイに接続され、衣服内を通り抜けるバス、およびジェスチャを検知した結果を示すディスプレイを有するコンピュータを備える装置が開示されている。
また、特許文献3には、静電容量センサ群のアレイ(CSA)アセンブリと、コントローラーを備える近接ベースの動体検知システムが開示されている。このCSAアセンブリは、少なくとも2つのコンデンサプレートと、これらのコンデンサプレートから信号を伝達する複数の導線とで構成されるCSAを含んでいる。
この装置のコンデンサプレートやその他の構成要素は、衣類、ベッドリネンなどの他の繊維に組み込むことができるか、または環境形成体(家具、車椅子、自動車のシートなど)に組み込むことができる導電性繊維で作られていることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】US2016/0048235A1
【文献】US2015/0301603A1
【文献】US2015/0199045A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2および特許文献3の装置に使用されている導電性繊維は、この導電性繊維からなる部材の故障の可能性を大きくするとともに、これらの装置をかさばらせるように見受けられる。
【0010】
本発明の目的は、上記従来技術の問題を回避するために、衣服自体の中に1つの可撓性のタッチアレイを実装した、着用可能な衣服を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的及び他の目的は、本発明の独立請求項に記載の着用可能なタッチ感応型衣服によって達成される。
従属請求項は、本発明の好ましい、および/または特に有利な様相を詳細に記載している。
【0012】
本発明の一実施例は、1枚の衣服に組み込まれた1つの電子容量センサ群のアレイを備える、着用可能なタッチ感応型衣服を提供するものである。前記1つの電子容量センサ群のアレイは、複数の電極を有し、前記各電極は、1つの電子制御ユニット(ECU)に、個別に電気的に接続されている。前記ECUは、前記各電極と着用者のタッチとの間の寄生容量結合の値を算出するように構成されている。前記ECUには、前記1つのアレイ上で実行されたジェスチャを現わす表示を行うように構成された読み取り可能な1つのディスプレイが設けられている。
【0013】
前記「寄生容量結合」という用語は、本明細書では、1つの容量性電極と、一人の着用者のタッチに伴う寄生容量との間の容量性結合を意味する。通常、寄生容量を提供できる1つの物体(例えば、着用者のタッチ)が、本発明による装置の1つの容量性電極に近づくと、この容量性電極の容量が増加する。この事実は、前記容量性電極と、前記容量性電極に近づく前記物体の寄生容量との間の容量性結合によるものである。
このような静電容量の増加とその変動を、以下で説明するさらなる計算のために、ECUに送信することができる。
【0014】
上記に加えて、本発明は、前記1つのアレイ上で実行された1つのジェスチャが検知されたときに、触覚フィードバックを提供する1つのバイブレーターを含んでいる。
【0015】
本発明による1枚のタッチ感応型衣服は、ファブレット端末などの他の装置を制御するための、または他の用途のためのユーザーインターフェースとして使用することができる。
本発明によれば、1つの電子回路自体はタッチ感応型であり、この電子回路は、ユーザ入力が予想されるエリアに対応して配置される。例えば、1つの電子容量性センサ群のアレイが、衣服の1つの縫い目に沿って配置される。
【0016】
本発明の幾つかの実施形態では、タブレット、スマートフォン、またはファブレットなどの遠隔のシステムに無線で接続するために、1つのECUを、ブルートゥース(登録商標、BT)モジュール、またはブルートゥース(登録商標)低エネルギー(BLE)モジュールと、インターフェースすることができる。
【0017】
本発明の別の利点は、前記した、検知電極として織物自体を使用することによる問題を回避しうることである。すなわち、検知電極として織物自体を使用することは、繊維材料に異なる材料が使用されているため、実際に製作するのは簡単ではない。また、検知電極として繊維材料を使用する場合、センサ糸を複数の剥ぎ取りと撚り合わせによって準備し、はんだ付けと積層によって電子回路に接続する必要がある。本発明によれば、これらの問題は全て解決される。
【0018】
本発明のさらなる利点は、繊維をベースにしたタッチ感応型の適用例と比較して、本発明の装置全体が、肉眼では完全に見えない1つの縫い目の中に配置されるため、ロールでの大量生産が容易であり、1つの伸縮性バスを備える柔軟な1つの「リボン」として、衣服製造プロセスに組み込み易いことである。
【0019】
本発明の一実施例によれば、1つのECUを衣服内に組み込んで、本発明の装置を作製することができる。
一例として、本発明の装置を、小さな寸法のものとして作るか、衣服のロゴパッチ内に組み込むことにより、前記ECUを外から完全に見えなくすることができる。
本発明の装置は、ほぼ100%の正確さと精度で、ジェスチャイベントを取得することができる。
また、衣服上でジェスチャを検知することにより、制御対象のモバイル装置に転送されるデータの量が減少するため、この装置のエネルギー消費は少なくなる。
【0020】
本発明はさらに、着用可能なタッチ感応型衣服で実行されるタッチイベントを検知する方法にも関し、この方法は、次のステップを含んでいる。
-着用可能な1枚のタッチ感応型衣服を提供する。
-前記衣服に、複数の電極を有する、1つの電子容量センサ群のアレイを組み込む。
-前記複数の電極によって提供される静電容量の変動の値を算出する。
-前記複数の電極から提供される前記静電容量の変化の関数として、前記タッチ感応型衣服で実行されたタッチイベントを決定する。
-前記タッチ感応型衣服に関連付けられ、前記1つのアレイ上で実行されたジェスチャが検知されたときに、触覚フィードバックを提供するように構成されたバイブレーターを作動させる。
最後に、本発明はまた、着用可能なタッチ感応型衣服で実行されるジェスチャを体系化するコンピュータ実装のデータ構造を含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施例になる装置の前面部の平面図である。
図2図1に示した装置の背面部の平面図である。
図3】本発明の一実施例に基づく衣服を示す図である。
図4】本発明の実施形態の概略を示す図である。
図5】本発明の可能な動作モードを例示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明のさらなる態様および利点について、本発明の用途および使用を制限する意図なしに、非限定的な例である添付の図面を参照して、より詳細に説明する。
【0023】
最初に、図1を参照して本発明を説明する。この図は、本発明の一実施例の前面部の平面図である。
図1は、1枚の衣服100に組み込むことのできる1つの電子容量センサ群のアレイ12を示している。この1つの電子容量センサ群のアレイ12は、複数個の電極E1~E5と1つの電子制御ユニット(ECU)30を含んでいる。このECU30には、1つのアレイ12上で実行されたジェスチャを示す表示を行うように構成された、読み取り可能な1つのディスプレイ35が設けられている。
1つのアレイ12の電極E1~E5は、個々に電子制御ユニット(ECU)30に電気的に接続されており、タッチ感応型衣服のヒューマンインターフェースの縮小版(RHI)として動作するシステム10を形成している。
ECU30には、1つのアレイ12上で実行されたジェスチャを表現する表示を行うように構成された、読み取り可能なディスプレイ35が設けられている。
【0024】
さらに、1つの電子容量センサ群のアレイ12は、このアレイ12上で実行されたジェスチャが検知されたときに、タッチ感応型衣服を着用しているユーザーに触覚フィードバックを提供するように構成された1つのバイブレーター20に接続することができる。したがって、このシステム10は、ジェスチャの監視に使用できる、可撓性でタッチ感応型の一次元又は二次元の複数の電極からなる1つのアレイ12を含むことができる。
このアレイ12は、衣服100の洗濯に耐えることができるようにするために、耐洗濯性のカプセル化材によって、カプセル化することができる。
【0025】
図2は、図1に示した本発明の実施例の背面部分の平面図である。図2は、特に、電源線42、44と、信号線51~55とを概略的に示している。各信号線51~55は、それぞれの電極E1~E5を、ECU30に接続している。
【0026】
アレイ12の電極E1~E5は、1つの可撓性のバス25を介して、電子制御ユニット30に接続されている。これにより、可撓性でタッチ感応型の一次元又は二次元の複数の電極からなるアレイ12と電子制御ユニット(ECU)300との間で、相互に電力およびデータの送受を行うことができる。このような実施形態は、図4に示されている。
本発明の一態様によれば、ECU30は、容量性電極の容量値の増加(または変動)を検出することによって、寄生容量結合の値を算出するように構成されている。
このような寄生容量結合は、例えば、衣服(100)の着用者によるジェスチャまたはタッチによって生成される。
【0027】
また、本発明の別の実施形態として、1つのセンサ群のアレイ12を、センサ出力を処理するフロントエンド電子回路群の上に配置することもできることに留意しなければならない。これは、スペースとバッテリー電力を節約する実施形態である。
特に、図3に示した、本発明の別の実施形態による衣服のように、全てのバスおよび衣服コンピュータを、最終製品である1つのセンサ群のアレイの下に配置することができる。この実施形態によりバスを削除する利点は、次のように要約できる。
検知電極群から電子回路に信号を伝送するバスは、容量性信号を適切にルーティングするために、面倒で、かつ高価な非感作の経路が必要であり、まだ完全に解決されていない問題につながる可能性がある。
したがって、このバスを削除しても、容量性信号のルーティングの問題は発生しない。逆に、そのような問題を排除する効果がある。
【0028】
このシステム10をさらに、タブレット、スマートフォンまたはファブレットなどの遠隔のシステムに無線で接続するために、このシステム10は、ブルートゥース(登録商標)(BT)モジュール、または代替案として、ブルートゥース(登録商標)低エネルギー(BLE)モジュールを備えることができる。
したがって、タッチ感応型衣服(100)で実行されたジェスチャは、そのような遠隔のシステムを制御または操作するために使用できる。
【0029】
1つのセンサ群のアレイ12は、可撓性のプリント配線板(PCB)で作成することができる。例えば、限定されないが、銅層付き両面カプトン層、または、PETフィルムに導電性インクを使用したデジタル印刷された可撓性の基板、または、可撓性リボンで互いに接続された剛性の孤立した複数の領域等により、1つのセンサ群のアレイ12を形成することができる。
【0030】
大まかに言えば、本発明は、一次元のジェスチャイベント、例えば、i)タップのみ、ii)スワイプアップ、及び、iii)スワイプダウンなどを検知するために、衣服の1つの縫い目内に組み込むことのできる、1つのヒューマンインターフェースの縮小版(RHI)を提供するものである。
本明細書では、「縫い目」という言葉は、ジーンズまたはズボンの1つの脇縫い、又は、一般的な衣類の縫い目、又は、衣服の少なくとも2つの重ねられた部分を含む衣服の任意の部分を指している。
【0031】
非限定的な例として、センサの電子回路の幅を、1.5cmに、衣服コンピュータのサイズを、6×3×1.5cmに制限できる。
このようなセンサ電子回路の幅は、この電子回路が衣服100の縫い目65、例えばポケット60の縫い目65や他の縫い目に沿って、延びることを可能にする利点がある(図3)。
複数の電極E1~E5を1つのセンサアレイ12に配置した後、その回路の全体を樹脂で被覆し、さらに、シリコンで被覆する。
別の実施形態では、シリコン被覆を設けない。シリコンで被覆された回路は、シリコン被覆のない回路に比べて、感度が低くなる。
【0032】
タッチイベントの決定を行う毎に、バイブレーター20を介して触覚フィードバックが提供され、所定の時間、例えば50ミリ秒間、振動により、ジェスチャの取得またはタッチイベントの決定アルゴリズムの呼び出しを通知する。
【0033】
本発明の機能を発揮するのには、少なくとも2つまたは3つのセンサ電極が必要であるか、またはそれで十分である。しかし、精度と堅牢性を得るには、ある程度の冗長性が必要である。したがって、本明細書で説明する実施形態では、5つのセンサ、すなわち電極E1~E5を備えている。
【0034】
このシステムの操作は信頼でき、前記タッチイベントの決定は、ほぼ100%正確である。前記決定アルゴリズムは、意図しないタップを抑制する。
図5は、本発明の可能な動作モードを例示するグラフである。特に、図5には、1つのセンサアレイ12によって生成された生のタッチデータとして、意図的な「下」および「上」のスワイプジェスチャと、意図的しないタッチの事例とが示されている。
描かれた非意図的なタッチの事例またはノイズは、意図的な「下」および「上」のスワイプジェスチャを識別する際の、前記タッチイベントの決定アルゴリズムの正確さに影響を与えることなく、正常に抑制することができる。
対応する表現を、ディスプレイ35に表示してもよい。
【0035】
前記した本発明の概要および詳細な説明において、少なくとも1つの例示的な実施形態を提示したが、他に膨大な数の変形の形態が存在することを理解するべきである。また、1つまたは複数の例示的な実施例は、単なる例に過ぎず、本発明の範囲、適用可能性、または構成を限定することを意図するものではない。
むしろ、前記した発明の概要および詳細な説明は、少なくとも1つの例示的な実施形態を実施するための便利なロードマップを当業者に提供するものであり、添付の特許請求の範囲、およびそれらの法的同等物に記載されている範囲から逸脱することなく、例示的な実施形態で説明した要素の機能および配置に、様々な変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0036】
10 システム
12 電子容量センサ群のアレイ
20 バイブレーター
25 可撓性のバス
30 電子制御ユニット(ECU)
35 ディスプレイ
42 電源線
44 電源線
51~55 信号線
60 ポケット
65 縫い目
100 衣服
E1~E5 電極
図1
図2
図3
図4
図5