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特許7495188フラーレンの製造装置およびフラーレンの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】フラーレンの製造装置およびフラーレンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/154 20170101AFI20240528BHJP
   F27D 9/00 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
C01B32/154
F27D9/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020105489
(22)【出願日】2020-06-18
(65)【公開番号】P2021195296
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2022-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005979
【氏名又は名称】三菱商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(72)【発明者】
【氏名】飯野 匡
【審査官】浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-008456(JP,A)
【文献】特開2005-060196(JP,A)
【文献】特開2005-008500(JP,A)
【文献】特開2005-162544(JP,A)
【文献】特開2005-060174(JP,A)
【文献】特表2010-502552(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0126110(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/152-32/156
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素原料を酸素含有ガスと混合して不完全燃焼させてフラーレンを生成する反応炉と、
生成したフラーレンを回収するフラーレン回収装置と、
前記反応炉と前記フラーレン回収装置とを接続する接続通路と、
水を含む流体を前記接続通路内に導入させる水導入手段と、
を有し、
前記水導入手段により前記接続通路内に導入された前記流体の前記水の流量と前記反応炉内に導入された前記酸素含有ガスの流量との比が、0.001~5.000であり、
前記接続通路内に導入された前記流体の前記水は気化し、前記接続通路内で水蒸気が凝縮せずに、前記接続通路内に流入させた排ガスを冷却するフラーレンの製造装置。
【請求項2】
前記水導入手段は、水導入口を有し、前記水導入口が前記接続通路において、前記反応炉の排出口の近傍に設けられている、請求項1に記載のフラーレンの製造装置。
【請求項3】
前記水導入手段は前記水を微粒子化する微粒子化部を有する、請求項1又は2に記載のフラーレンの製造装置。
【請求項4】
前記フラーレン回収装置は液体貯蔵容器を備える、請求項1~3のいずれか一項に記載のフラーレンの製造装置。
【請求項5】
不活性ガスを前記接続通路内に導入させる不活性ガス導入手段を更に有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のフラーレンの製造装置。
【請求項6】
求項1~5のいずれか一項に記載のフラーレンの製造装置を用いたフラーレンの製造方法。
【請求項7】
反応炉において、炭化水素原料を酸素含有ガスと混合して不完全燃焼させることによってフラーレンを含む排ガスを得る反応工程と、
前記反応工程で得られた排ガスを、前記反応炉とフラーレン回収装置とを接続する接続通路内に導入された水を含む流体によって冷却する冷却工程と、
排ガスからフラーレンを前記フラーレン回収装置で回収する回収工程と、
を順次行い、
前記冷却工程において、前記接続通路内に導入された前記流体の前記水の流量と前記反応炉内に導入された前記酸素含有ガスの流量との比が、0.001~5.000であり、
前記接続通路内に導入された前記流体の前記水は気化し、前記接続通路内で水蒸気が凝縮せずに、前記接続通路内に流入させた排ガスを冷却するフラーレンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼法によるフラーレンの製造装置及び、フラーレンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フラーレンを安価に効率よく大量に製造する方法として、炭化水素を含む原料を反応炉内で不完全燃焼させることによりフラーレンを製造する燃焼法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この燃焼法により生成したフラーレンは、主に煤状物質に含まれる。この煤状物質が排ガスと共に、反応炉から排出されて、フラーレン回収装置で回収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-170695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたフラーレンの製造装置を用いて、燃焼法でフラーレンを製造すると、得られるフラーレンの収率は高くない。その原因の一つは、フラーレン回収装置に到達した時点のフラーレン含有煤状物質を含む排ガスの温度が高く、フラーレン回収装置でフラーレンが分解、重合又は昇華してしまうことだと考えられる。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、フラーレンの収率を向上させることができる、フラーレンの製造装置及びフラーレンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]炭化水素原料を不完全燃焼させてフラーレンを生成する反応炉と、生成したフラーレンを回収するフラーレン回収装置と、前記反応炉と前記フラーレン回収装置とを接続する接続通路と、水を含む流体を前記接続通路内に導入させる水導入手段と、を有するフラーレンの製造装置。
[2]前記水導入手段は、水導入口を有し、前記水導入口が前記接続通路において、前記反応炉の排出口の近傍に設けられている、[1]に記載のフラーレンの製造装置。
[3]前記水導入手段は水を微粒子化する微粒子化部を有する、[1]又は[2]に記載のフラーレンの製造装置。
[4]前記フラーレン回収装置は液体貯蔵容器を備える、[1]~[3]のいずれか一項に記載のフラーレンの製造装置。
[5]不活性ガスを前記接続通路内に導入させる不活性ガス導入手段を更に有する、[1]~[4]のいずれか一項に記載のフラーレンの製造装置。
[6][1]~[5]のいずれか一項に記載のフラーレンの製造装置を用いたフラーレンの製造方法。
[7]炭化水素原料を不完全燃焼させることによってフラーレンを含む排ガスを得る反応工程、前記反応工程で得られた排ガスを、水を含む流体によって冷却する冷却工程、排ガスからフラーレンを回収する回収工程、を順次行うフラーレンの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、フラーレンの収率を向上させることができるフラーレンの製造装置及びフラーレンの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第一実施形態のフラーレンの製造装置1の一例を示す図である。
図2】水導入部28の構造の一例を示す図である。
図3】水導入口31の配置の一例を示す断面図である。
図4a】断面A内の水を含む流体の流れ方向を示す図である。
図4b】断面B内の水を含む流体の流れ方向を示す図である。
図5】第二実施形態のフラーレンの製造装置2の一例を示す図である。
図6】第三実施形態のフラーレンの製造装置3の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係るフラーレンの製造装置について説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上、特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が同一であるとは限らない。
【0010】
(第一実施形態)
本発明の第一実施形態にかかるフラーレンの製造装置1は、図1に示すように、燃焼法によるフラーレンの生成に用いられる反応炉10と、反応炉10から排出されるフラーレンを含有する煤状物質を含む高温排ガスを通過させる接続通路11aと、接続通路11a内に水を含む流体を導入させる水導入手段12と、排ガスが流入して排ガス中からフラーレンを含有する煤状物質を捕集するフラーレン回収装置13aと、フラーレン回収装置13aから流出するフラーレンを含有する煤状物質が取り除かれたガスを冷却するガス冷却器14と、ガス冷却器14によって液体化された水や炭化水素等液体を回収する液体回収タンク15aと、真空ポンプからなる減圧装置16と、を備える。ここでは、本実施形態のフラーレンの製造装置の一例として、図1に沿って、フラーレンの製造装置1を説明するが、本実施形態のフラーレンの製造装置は、フラーレンの製造装置1に限定されない。図1では、反応炉10は鉛直方向に配置され、上方から炭化水素を含む原料(以下、「炭化水素原料」ともいう)が供給されるが、反応炉10の配置方向は、例えば、水平方向でも、斜め方向でも構わない。反応炉10は、フラーレンを含む煤状物の滞留の影響が少ない鉛直方向に配置されていることが好ましく、炭化水素原料は、上方から供給されることが好ましい。
また、後述する第二実施形態と第三実施形態も同様である。
【0011】
反応炉10を構成する材料としては、例えば、ジルコニア、タングステン、モリブデン、タンタル、白金、チタン、窒化チタン、アルミナ等の耐熱材料が挙げられる。また、その外側の一部又は全部には、例えばアルミナ質の耐火煉瓦やアルミナ質の不定形耐火材等の断熱材がライニングされていていてもよい。
【0012】
反応炉10は、上流側に、供給された炭化水素原料を酸素含有ガスの下で不完全燃焼させるバーナー21が設けられている。ここで、酸素含有ガスは、酸素ガスを含むカスを指す。
バーナー21には、ガス状の炭化水素原料を供給する配管22と、酸素含有ガスを供給する配管23が接続されている。配管22には、液体の炭化水素原料をガス状化にする気化装置24が配置されることもある。また、炭化水素原料を供給する配管22及び酸素含有ガスを供給する配管23には、バーナー21に供給する炭化水素原料及び酸素含有ガスの流量を調整する流量調節器25、26がそれぞれ設けられている。
【0013】
バーナー21は、ガス状の炭化水素原料と酸素含有ガスを所定の混合比で混合して混合ガスを作製する混合室と、混合ガスを所定の圧力で保持する蓄圧室と、多数の噴出口が平面上に形成されており、混合ガスを鉛直下向きに噴出させる噴出部を有する。噴出部は、多孔質のセラミックス焼結体、金属粉末の焼結体で構成されていてもよい。
【0014】
反応炉10で、バーナー21を用いて、減圧状態下で炭化水素原料を酸素含有ガスと混合して不完全燃焼させ、フラーレンを含む排ガスを生成する。フラーレンの生成と共に、煤状物質、一酸化炭素ガス、水蒸気等も発生する。生成したフラーレンは主に煤状物質に含まれる。排ガスが、反応炉10の排出口27(反応炉10の下端面に相当する部位)から排出され、接続通路11aを通過して、フラーレン回収装置13aに流入する。
【0015】
炭化水素としては、例えば、トルエン、ベンゼン、キシレン、ナフタレン、メチルナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の炭素数6~15の芳香族炭化水素、クレオソート油、カルボン酸油等の石炭系炭化水素、アセチレン系不飽和炭化水素、エチレン系炭化水素、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族飽和炭化水素等が挙げられ、これらのうち二種以上が併用されてもよい。これらの中でも、芳香族炭化水素が好ましい。
【0016】
また、ガス状又はガス状化された炭化水素原料は、必要に応じて、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスで希釈されていてもよい。
【0017】
酸素含有ガスとしては、例えば、酸素ガス、空気等が挙げられる。また、酸素ガスは、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスで希釈されていてもよい。
【0018】
本実施形態に係るフラーレンの製造装置1は、接続通路11a内に水を含む流体を導入させる水導入手段12を有する。水導入手段12の一実施形態は、水導入部28と、水を微粒子化する微粒子化部29と、水導入配管30、及び図に示していない流体供給部を備える。
【0019】
接続通路11aは、反応炉10とフラーレン回収装置13aと、を接続し、水導入部28と、配管35、及び配管36、を備える。
【0020】
水導入部28は、図2に示すように、水導入口31と、排ガス流入口32と、排ガス流出口33と、排ガス流入口32及び排ガス流出口33を形成する側壁34と、を備える。水導入部28が接続通路11aの一部分として、筒状であることが好ましく、タングステンや、ステンレス鋼等の耐熱材料で構成されている。水導入口31は側壁34に設けられている孔であり、水を含む流体を接続通路11a内(水導入部28内)に流入させる。排ガス流入口32は、反応炉10の排出口27と接続し、排ガスを水導入部28内に流入させる。排ガス流出口33は、配管35と接続し、排ガスを水導入部28から流出させる。水導入部28の長さは、接続通路11aの全長の10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましい。また、水導入部28の排ガス流入口32が、配管を介して、排出口27と接続されていてもよい。なお、水導入部28の水導入口31が排出口27の近傍に設けられるのは好ましい。ここで、排出口27の近傍とは、接続通路11aに沿って、排出口27から、接続通路11aの全長の30%までとなる範囲である。
また、水導入部28の側壁34の外側が冷却されてもよい。
【0021】
接続通路11a内に導入される水を含む流体は、水のみからなる流体であってもよく、水と不活性ガスを含む混合流体であってもよい。水は、例えば、ポンプにより加圧して、供給される。不活性ガスは、例えば、不活性ガスボンベにより供給される。接続通路11a内に導入される流体に含まれる水が微粒子化されたものであれば、水が速やかに気化して、排ガスを効率よく、均一に冷却することができる。そのため、水導入手段12には、水を微粒子化する微粒子化部29を備えることが好ましい。微粒子化部29は、水を微粒子化することができれば、特に限定しない。例えば、一流体スプレーノズル、二流体スプレーノズル、超音波霧化機等が挙げられる。水の微粒子の粒子径は特に限定しないが、粒子径が小さいほど、反応炉10から排出される排ガスを均一に冷却する効果が向上できる。なお、本発明において、説明がない限り、水は液体を指す。
【0022】
排出口27から排出される排ガスの温度は、通常700~1500℃であり、接続通路11aにおいて、水を含む流体により冷却される。水導入手段12により導入された水を含む流体の水の流量(g/min)と反応炉10内に導入された酸素含有ガスの流量(NL/min)との比(水の流量/酸素含有ガスの流量(g/NL))が、0.001~5.000であることが好ましく、0.010~3.000であることがより好ましい。導入された水の量が上記範囲内であれば、接続通路11a内に水蒸気が凝縮せずに、排ガスを効率よく冷却することができる。また、本発明において、NLはノルマリットルであり、気体の標準状態(0℃、1気圧)における体積を表す。
【0023】
水と不活性ガスを含む混合流体を用いる場合、不活性ガスの流量は反応炉1内に導入された酸素含有ガスの流量の0.1~5.0倍であることが好ましい。不活性ガスの流量が酸素含有ガスの流量の0.1倍以上であれば、冷却効果が得られる。不活性ガスの流量が酸素含有ガスの流量の5.0倍以下であれば、減圧装置16の真空ポンプに大きな負荷をかけずに冷却をすることができる。
【0024】
水として、導電率が10μS/cm(25℃)以下、TOC(全有機炭素)含有量が50質量ppm以下のものを用いることが好ましく、導電率が1μS/cm(25℃)以下、TOC含有量は20質量ppm以下のものを用いることがより好ましい。不活性ガスとして、排ガスと反応しないガスであれば、特に限定されない。例えば、窒素ガス、アルゴンガス、二酸化炭素ガス等が挙げられる。冷却効果を得るために、不活性ガスの温度は、0℃以上、100℃以下が好ましく、0℃以上、室温以下であることがより好ましい。
【0025】
また、上述した水導入手段12は一例示に過ぎず、限定するものではない。接続通路11a内に、水を含む流体を導入することができる水導入手段であれば、適宜用いることができる。例えば、微粒子化部29を備えず、水の中を通過させた不活性ガスを、配管30を介して、接続通路11a内に導入させる手段も水導入手段12として、用いることができる。
【0026】
なお、図2に示す水導入部28は、水導入口31を一つのみ有しているが、水導入口31を二つ以上有してもよい。二つ以上の水導入口31が、水導入部28の中心軸Cに対して垂直である同一断面上に設けられることが好ましく、二つ以上の水導入口31が同一断面の円周上に均等に配置されていることがよりに好ましい。
【0027】
図3は、水導入口31の配置の一例を示す断面図である。断面Aは水導入部28の中心軸Cに垂直する。四つの水導入口31(31a、31b、31c、31d)の中心が、断面Aに設けられていて、かつ、断面Aの円周上に均等に配置されている。
【0028】
水を含む流体を接続通路11a内に導入させる際の流れ方向について、特に限定しないが、接続通路11a内に、旋回流を形成させるようにするのが好ましい。旋回流を形成させることにより、接続通路11aの側壁への煤状物質の付着が抑制される。旋回流を形成させる方法は、例えば、図4aに示すように、四つの水導入口31から導入させた水を含む流体の中心の断面A内における流れ方向(矢印で示している方向)と、水導入口31の中心と断面Aの中心を連結する点線となる角θ~θの角度は、それぞれ20~80°の範囲内(好ましくは40~70°範囲内)となるように、水を含む流体を導入させることが挙げられる。或いは、θ~θの角度は、それぞれ-20~-80°の範囲内(好ましくは-40~-70°範囲内)となるように、水を含む流体を導入させることも例として挙げられる。
【0029】
図4bには、断面B内の水を含む流体の流れ方向が示されている。排ガスの流れ方向は断面Bの上方からか下方になる。断面Bは、水導入部28の断面であり、水導入部28の中心軸Cと少なくとも一つの水導入口31の中心が断面Bに位置する。水を含む流体の中心の断面B内における流れ方向(矢印で示している方向)と、水導入部28の中心軸Cとなす角θの角度が、70~110°であることが好ましい。θがこの角度範囲内であれば、水を含む流体が炭化水素原料の流れを乱すことが少なくなるため、炭化水素原料の燃焼火炎を安定させることができる。
【0030】
配管35は、円筒部と、この円筒部の下端に接続される徐々に縮径する円錐台部を有し、下部の円錐台部の水平面に対する傾斜角度は50~85°(より好ましくは70~80°)となって、配管35内部に溜まろうとする煤状物質が円滑に下方に滑り落ちる角度となっている。配管35の円錐台部の下端は、円筒状配管36と接続する。配管35、36として、例えば、ステンレス鋼、銅などからなる配管が挙げられる。排ガスの冷却効果をより向上させるため、配管の全部又は一部に冷却手段を設けることが好ましい。冷却手段としては、例えば、配管の外側に冷却ジャケットを設けることが挙げられる。
【0031】
配管36の下流側端部と接続するフラーレン回収装置13aは、排ガス中のフラーレンを含む煤状物質とガスを分離する高温耐熱フィルター37を備える。高温耐熱フィルター37は、排ガス中の未反応の炭化水素原料ガス、一酸化炭素、水蒸気等のガスを通過させて、フラーレンを含む煤状物質を回収する。
【0032】
高温耐熱フィルター37は、通常の集塵機等に使用されるバッグフィルター構造で構成される。高温耐熱フィルター37の耐熱温度は、200~600℃が好ましい。高温耐熱フィルター37に用いられる物質としては、PTFE(ポリテトラフロロエチレン)、アラミド繊維、PPS(ポリフェニレンスルフィド)等の樹脂があげられる。また、高温耐熱フィルター37は汎用されているものを用いることができ、市販品としては、例えば、焼結金属フィルター(日本ポール製)、焼結金属フィルター(富士フィルター製)等があげられる。
【0033】
接続通路11aを通過して、フラーレン回収装置13aに流入する排ガスの温度は、100℃~400℃であることが好ましい。この範囲内であれば、高温耐熱フィルター37の劣化を防ぎ、耐用時間を長くすることができる。また、フラーレン回収装置13aにおけるフラーレンの気化又は分解を抑制することもでき、フラーレンの収率を向上させる。なお、フラーレン回収装置13aへの排ガスの温度は、低すぎると、高温耐熱フィルター37が排ガス中で凝縮した水を捕集して、内部に目詰まりが発生するので、十分な温度管理をするのが好ましい。
【0034】
フラーレン回収装置13aの上部に、付着したフラーレンを含む煤状物質を落下させる逆洗浄機構38が設けられている。逆洗浄機構38は、高圧の不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガス)等を貯留するタンクと、電磁弁と、排出弁を有する。電磁弁を定期的に短時間開けることにより、高温耐熱フィルター37内に不活性ガスを入れ、高温耐熱フィルター37に付着したフラーレンを含む煤状物質を落下させ、排出弁39を開けて、フラーレンを含む煤状物質を外部に排出する。このように、フラーレンを含む煤状物質は、非酸化性雰囲気で保持されている。
【0035】
フラーレン回収装置13aは、配管40を介して、ガス冷却器14と連結する。フラーレンを含む煤状物質が取り除かれたガスは、ガス冷却器14において、更に冷却される。ガス冷却器14は、通常の熱交換器と同一又は類似した構造である。ガス冷却器14内のガスの温度を低下させて、ガスを減容すると共に、減圧装置16の負荷を低減させる。また、ガス冷却器14は、ガス中の未反応のガス状の炭化水素原料、水蒸気を液化させる。液化した炭化水素原料、水蒸気がガス冷却器14の下部と繋ぐ液体回収タンク15aに溜まり、下部の排出弁41により排出される。
【0036】
(第二実施形態)
図5には、第二実施形態に係るフラーレンの製造装置2を示す。第二実施形態に係るフラーレン製造装置2は、第一実施形態のフラーレン製造装置1と同様に、反応炉10と、水導入手段12と、フラーレン回収装置13aと、ガス冷却装置14と、液体回収タンク15aと、減圧装置16と、を備える。ただし、反応炉10とフラーレン回収装置13aとを接続する接続通路11bには、サイクロン型分離部17を更に備える点でフラーレンの製造装置1と相違する。
【0037】
接続通路11bは、水導入部28と、配管35と、配管35と接続する配管42と、サイクロン型分離部17と、配管46とを、備える。
【0038】
サイクロン型分離部17は、配管42と接続する円筒部43と、この円筒部43の下端に一体的に接続される円錐台部44とを有する。円錐台部44の下端には排出弁45が設けられていて、溜まった煤状物質を外部に排出できるようになっている。サイクロン型分離部17の全体は冷却されていてもよい。そして、円筒部43の上端部は配管46と接続し、配管46を介して、フラーレン回収装置13aと連結する。
【0039】
サイクロン型分離部17を備えることにより、フラーレンを含む高温排ガスの旋回流を簡単に形成することができるため、接続通路11bの内壁への煤状物質の付着が抑制される。また、排ガス中に凝縮した液体や、凝集した煤状物質等はサイクロン型分離部17内に溜まり、排出弁45により外部に排出されるため、フラーレン回収装置13aの高温耐熱フィルター37内部での目詰まりの発生リスクが低減される。
【0040】
配管42、46として、例えば、ステンレス鋼、銅などからなる配管が挙げられる。排ガスの冷却効果をより向上させるため、配管の全部又は一部に冷却手段を設けることが好ましい。冷却手段としては、例えば、配管の外側に冷却ジャケットを設けることが挙げられる。
【0041】
(第三実施形態)
続いて、第三実施形態に係るフラーレンの製造装置3について、説明する。フラーレン製造装置3は、図6に示すように、反応炉10と、接続通路11cと、水導入手段12と、液体貯蔵容器50を備えるフラーレン回収装置13bと、ガス冷却器14と、液体回収タンク15bと、バッグフィルターを備える固体捕集装置18と、減圧装置16と、を備える。ここで、フラーレンの製造装置1と同様の記号を付与した部分は同様の構造を有するため、詳細な説明を省略する。
【0042】
接続通路11cは、水導入手段12の水導入部28と、配管35と、配管47と、を備える。
【0043】
配管47の一端は配管35と接続し、配管47の他端は、液体貯蔵容器50の側壁を挿通して、液体貯蔵容器50の下端部に向かって曲がるようにフラーレン回収装置13b内部に設けられている。また、配管47の他端は、液体貯蔵容器50の高さの半分より低い位置に終端しているのが好ましい。
【0044】
フラーレン回収装置13bは、液体を貯蔵する液体貯蔵容器50を備える。フラーレン回収装置13bは、接続通路11cを介して流入した排ガスを液体貯蔵容器50の液体に通過させることによって、排ガス中のフラーレンを含む煤状物質や、凝縮した水等を捕集する。液体貯蔵容器50は、円筒部と、円筒部と一体的に接続されている円錐台部を備え、円錐台部の水平面に対する傾斜角度は20~60°であることが好ましい。また、液体貯蔵容器50の外側が冷却されるのが好ましい。液体貯蔵容器50内の液体の液面は、液体貯蔵容器50の高さの半分より高い位置にあることが好ましい。また、フラーレンを製造する際に、配管47を通過して、フラーレン回収装置13bに流入した排ガスが液体と接触することにより、冷却されると共に、液体が昇温して、気化する可能性がある。そのため、配管47のフラーレン回収装置13b内の他端が、常に液体の液面の下に終端となるように、液体の量を調節する必要がある。液体として、排ガスと反応せず、かつ、高い沸点を有する液体であれば、特に限定しないが、安全性及びコスト低減の観点で、水を用いることが好ましい。
【0045】
接続通路11cを通過して、フラーレン回収装置13bに流入する排ガスの温度は、100℃~400℃であることが好ましく、液体の気化を抑えるため、排ガスの温度は、100℃~200℃であることがより好ましい。
【0046】
配管47として、例えば、ステンレス鋼、銅などからなる配管が挙げられる。排ガスの冷却効果をより向上させるため、配管の全部又は一部に冷却手段を設けることが好ましい。冷却手段としては、例えば、配管の外側に冷却ジャケットを設けることが挙げられる。
【0047】
フラーレンの製造装置3は、液体貯蔵容器50の上端部(液体の液面より高い位置)と、配管47のフラーレン回収装置13bの外部に配置された部分とを連結する配管48を有する。配管48にバルブ49が配置されている。フラーレンの製造装置3が稼働停止する際に、バルブ49を開けることにより、液体貯蔵容器50から反応炉10への液体の逆流を防ぐことができる。
【0048】
また、フラーレン回収装置13bの円錐台部の下端部には排出弁51が設けられていて、この排出弁51により、溜まった煤状物質及び液体を外部に排出することができる。
【0049】
液体貯蔵容器50は、上端部にバルブ51が設けられており、バルブ51を介して、大気と連結することができる。異常時に、バルブ51を開放することにより、フラーレンの製造装置3の内圧を調節することができる。また、液体貯蔵容器50は、配管53を介して、ガス冷却装置14と連結している。煤状物質等が取り除かれたガスが、配管53を通過して、ガス冷却器14に流入する。
【0050】
ガス冷却器14は、ガス中の未反応のガス状炭化水素原料、水蒸気等を液化させる。液化された炭化水素原料、水蒸気等はガス冷却器14の下部と接続する液体回収タンク15bに溜まる。液体回収タンク15bの下端部は、配管54を介して、液体貯蔵容器50の上端部と接続する。配管54に設けられているバルブ55を開け、ポンプ56を稼働することにより、液体回収タンク15bに溜まった液体を液体貯蔵容器50に戻すことが可能である。
【0051】
また、液体回収タンク15bの上端部にガス排出口が設けられており、ガス排出口と接続している配管57を通過して、煤状物質等が取り除かれたガスが高温耐熱フィルター37を備える固体回収装置18に到着する。高温耐熱フィルター37がフラーレン回収装置13bで捕集できなかった固体物質を取り除く。固体回収装置18の上部に、付着した固体物質を落下させる逆洗浄機構38が設けられている。逆洗浄機構38は、高圧の不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガス)等を貯留するタンクと、電磁弁と、排出弁を有する。電磁弁を定期的に短時間開けることにより、高温耐熱フィルター37内に不活性ガスを入れ、高温耐熱フィルター37に付着した固体物質を落下させ、排出弁58を介して、外部に排出する。
【0052】
また、上記フラーレンの製造装置1~3は、反応炉とフラーレン回収装置を接続する接続通路において、水導入手段12と異なる不活性ガスを導入する不活性ガス導入手段を更に有してもよい。不活性ガス導入手段は、例えば、水導入手段12の水導入部28と同様な構造を有する不活性ガス導入部と、不活性ガス導入配管と、不活性ガス供給部とを備えるものを例として、挙げられる。接続通路における不活性ガス導入部の位置は特に限定しないが、排出口27と近いほど、好ましい。不活性ガス導入手段を更に有することにより、排ガスを効率よく冷却することができる。不活性ガスとして、排ガスと反応しないガスであれば、特に限定しない。例えば、窒素ガス、アルゴンガス、二酸化炭素ガス等が挙げられる。不活性ガスが冷却されていてもよい。
【0053】
本発明において、フラーレンの製造装置を用いて、燃焼法によるフラーレンの製造方法が供される。より具体的には、炭化水素原料を不完全燃焼させることによってフラーレンを含む排ガスを得る反応工程、前記反応工程で得られた排ガスを、水を含む流体によって冷却する冷却工程、排ガスからフラーレンを回収する回収工程、を順次行うフラーレンの製造方法が供される。
【実施例
【0054】
以下の実施例及び比較例により、本実施形態の効果をより明らかなものとする。なお、本実施形態は、実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0055】
[フラーレンの収率]
本実施例では、C60及びC70の収率の合計をフラーレンの収率として、算出した。
JIS Z 8981に準拠して、回収した煤状物質に含まれるC60及びC70の含有率を、以下のように測定した。具体的には、回収した煤状物0.05gに対して、15gの1,2,3,5-テトラメチルベンゼン(TMB)を添加した後、15分間超音波処理し、懸濁液を得た。得られた懸濁液を孔径0.5μmメンブランフイルターで濾過した後、高速液体クロマトグラフ(HPLC)で濾液(試料液)を分析してC60及びC70を定量し、煤状物質に含まれるC60及びC70の含有率[質量%]を算出した。ここで、煤状物質に含まれるC60及びC70の含有率を算出する際には、事前に複数の既知濃度のC60及びC70のTMB溶液により作成した検量線を用いた。
【0056】
HPLCの測定条件は、以下の通りである。
装置:Infinity1260(Agilent製)
試料液の注入量:5μL
溶離液:トルエン(47体積%)/メタノール(53体積%)混合溶媒
溶離液の流速:1ml/分
カラム:YMC-Pack ODS-AM 100*4.6mmID S-3μm,12nm
測定温度:40℃
検出器:UV 325nm(JIS)
次に、煤状物質に含まれるフラーレンの含有率(C60及びC70の含有率の合計)から、式{(煤状物質の回収量[g])/(炭化水素を含む原料の消費量[g])}×(フラーレンの含有率[質量%])により、フラーレン収率[質量%]を算出した。
【0057】
[水の導電率・TOC含有量の測定]
水の導電率は、2極式導電率センサ(メトラー・トレド製)を用いて、測定した。
水のTOC含有量は、島津製作所製TOC5000Aを用いて、測定した。
【0058】
[実施例1]
図1に示すフラーレンの製造装置1を用いて、フラーレンを製造した。
【0059】
ここで、反応炉10は、タングステン製の円筒で、長さは800mm、内径は74mmである。反応炉10の上流川に設けられているバーナー21の吐出部は、外径が58mmの円板状の多孔質のセラミックス焼結体で構成されており、このセラミックス焼結体に直径0.5mm~1.0mm程度の孔(噴出口)が、1cm当たりに60~80個形成されている。
【0060】
水導入手段12の水導入部28は、長さが150mm、内径が74mmのステンレス鋼製円筒である。排ガス流入口32が、排出口27と接続する。また、水導入部28は、図3に示すように、水導入部28の中心軸Cに対する垂直な断面に、等間隔で直径6mmの導入口31が四つ設けられている。導入口31の中心と、排ガス流入口32の最短直線距離は、100mmである。水導入口31は、微粒子化部とする一流体スプレーノズルと接続している。なお、水導入部28の側壁34の外側には水冷ジャケットが設けられている。
【0061】
配管35は、ステンレス鋼製で、長さが150mm、円筒部の内径が74mm、円錐台部の最小内径が50mmである。また、配管35の円錐台部は、水平面に対する傾斜角度が70°である。配管35の円錐台部と繋ぐ配管36は、ステンレス鋼製のパイプであり、内径が50mm、長さが5000mmである。配管35、配管36の外側には水冷ジャケットが設けられている。
【0062】
炭化水素を含む原料として、トルエンを使用し、酸素含有ガスとして、純酸素ガス(純度99.9体積%)を使用した。ここで、トルエンを、一旦気化装置24で加熱してガス状とした後に、バーナー21に供給した。トルエンガスの流量を12.0g/minとし、純酸素の流量を8.3NL/minとした。また、トルエンを不完全燃焼させる際に、反応炉10の内部の圧力を5.33kPaとした。
【0063】
水導入手段12を用いて、水のみからなる水を含む流体を接続通路11a内に導入した。水として、25℃での導電率が1μS/cm、TOC含有量が20質量ppmのものを用い、ポンプにより供給された。各水導入口31から接続通路11a内に導入した水の流量はそれぞれ5.0g/minであった。微粒子化部として、一流体スプレーノズル(スプレーパターン:フルコーン)を用いた。一流体スプレーノズルのパラメーター、流体の圧力、流量により、水の微粒子の粒子径は0.20~0.50mmと推定した。また、水のみからなる流体の中心の流れ方向は、θ~θを50°とし、θを90°とした。水導入部28の側壁34、配管35、配管36の外側に設けられている水冷ジャケットに室温の水を流して側壁を水冷した。水の流量は10.0L/minであった。
【0064】
反応炉10から排出された排ガスの温度は、排出口27にて、測定した。フラーレン回収装置13aに到着する時点の排ガス温度(以下「冷却後排ガス温度」ともいう)を、フラーレン回収装置13aと配管36の接続部にて測定した。
【0065】
上記の条件で、フラーレンの製造装置1を3時間稼働させて、生成した煤状物質をフラーレン回収装置13aから回収して、フラーレン収率を測定した。
【0066】
[実施例2~4]
トルエン流量、純酸素ガス流量を、表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にフラーレンを生成した。
【0067】
[実施例5]
水導入手段12を用いて、水(25℃での導電率が1μS/cm、TOC含有量が20質量ppm)と窒素ガスからなる水を含む流体を接続通路11a内に導入した。水はポンプにより供給され、窒素ガスは窒素ガスボンベにより供給された。微粒子化部として、二流体スプレーノズル(スプレーパターン:フルコーン)を用い、水を微粒子化した。各水導入口31から接続通路11a内に導入した水を含む流体の流量は、水の流量が3.0g/min、窒素ガスの流量が1.0NL/minであった。二流体スプレーノズルのパラメーター、水を含む流体の圧力、流量により、水の微粒子の粒子径は、0.05~0.10mmと推定した。また、上記以外は、実施例1と同様に、フラーレンを生成して、フラーレン収率を測定した。
【0068】
[実施例6]
純酸素ガス流量を、表1に示すように変更した以外は、実施例5と同様に、フラーレンを生成した。
【0069】
[実施例7]
図5に示すフラーレンの製造装置2を用いて、フラーレンを生成した。
【0070】
配管42、配管46は、内径が50mmのステンレス鋼製のパイプである。長さは、それぞれ2000mm、3000mmである。
サイクロン型分離部17の円筒部43の高さが600mm、内径が500mm、円筒部43の下端に一体的に接続される円錐台部44の高さが400mm、最小内径が100mmである。
配管42、配管46、及びサイクロン型分離部17の外側には水冷ジャケットを設けた。
上記の点以外は、フラーレンの製造装置2がフラーレンの製造装置1と同様である。
【0071】
配管42、配管46、及びサイクロン型分離部17の外側の水冷ジャケットに室温の水(流量:10.0L/min)を流して、水冷した以外は、実施例1と同様の条件で、フラーレンの製造装置2を3時間運転させた。生成した煤状物質をサイクロン型分離部17とフラーレン回収装置13aから回収して、フラーレン収率を測定した。
【0072】
反応炉10から排出された排ガスの温度は、排出口27にて、測定した。フラーレン回収装置13aに到着する時点の排ガス温度(以下「冷却後排ガス温度」ともいう)を、フラーレン回収装置13aと配管46の接続部にて測定した。
【0073】
[実施例8]
水導入手段12を用いて、水(25℃での導電率が1μS/cm、TOC含有量が20質量ppm)と窒素ガスからなる水を含む流体を接続通路11b内に導入した。水はポンプにより供給され、窒素ガスは窒素ガスボンベにより供給された。微粒子化部として、二流体スプレーノズル(スプレーパターン:フルコーン)を用い、水を微粒子化した。各水導入口31から接続通路11b内に導入された水を含む流体の流量は、水の流量が3.0g/min、窒素ガスの流量が1.0NL/minであった。二流体スプレーノズルのパラメーター、水を含む流体の圧力、流量により、水の微粒子の粒子径が、0.05~0.10mmと推定した。上記以外は、実施例7と同様に、フラーレンを生成して、フラーレン収率を測定した。
【0074】
[実施例9]
図6に示すフラーレンの製造装置3を用いて、フラーレンを生成した。
【0075】
ここで、フラーレンの製造装置3の反応炉10、バーナー21、及び水導入手段12は実施例1と同様なものを用いた。
配管47は、内径が50mmのステンレス鋼製のパイプであり、総長さは6000mmである。配管47の液体貯蔵容器50の外部の部分の長さは4000mmである。液体貯蔵容器50は、ステンレス鋼製で、円筒部の高さが2500mm、内径が1000mmであり、円錐台部の最小内径は150mm、高さが500mmである。配管47は、液体貯蔵容器50の円錐台部の下端部との垂直距離が600mmの位置に終端している。
【0076】
炭化水素を含む原料として、トルエンを使用し、酸素含有ガスとして、純酸素ガス(純度99.9体積%)を使用した。ここで、トルエンを、一旦気化装置24で加熱してガス状とした後に、バーナー21に供給した。トルエンガスの流量を12.0g/minとし、純酸素の流量を8.3NL/minとした。また、トルエンを不完全燃焼させる際に、反応炉10の内部の圧力を5.33kPaとした。
水導入手段12を用いて、水(25℃での導電率が1μS/cm、TOC含有量が20質量ppm)のみからなる水を含む流体を接続通路11c内に導入した。水はポンプにより供給された。各水導入口31から接続通路11c内に導入した水の流量はそれぞれ5.0g/minであった。微粒子化部として、一流体スプレーノズル(スプレーパターン:フルコーン)を用いた。一流体スプレーノズルのパラメーター、流体の圧力、流量により、水の微粒子の粒子径が、0.20~0.50mmと推定した。水のみからなる水を含む流体の中心の流れ方向は、θ~θを50°とし、θを90°とした。水導入部28の側壁34の外側に設けられている水冷ジャケットに室温の水を流して側壁を水冷した。水の流量は、それぞれ、10.0L/minであった。
フラーレン回収用液体として、水(25℃での導電率が1μS/cm、TOC含有量が20質量ppm)を用いた。フラーレンの製造装置3を稼働させる際に、液体貯蔵容器50内の水の液面が、常に液体貯蔵容器50の高さの半分より高い位置になるように水の量を調節した。
上記の条件で、フラーレンの製造装置3を3時間稼働させ、生成した煤状物質をフラーレン回収装置13bから回収してフラーレン収率を測定した。
反応炉10から排出された排ガスの温度は、排出口27にて、測定した。フラーレン回収装置13bに到着する時点の排ガス温度(以下「冷却後排ガス温度」ともいう)を、フラーレン回収装置13bと配管47の接続部(液体貯蔵容器50の側壁と配管47の接触部)にて測定した。
【0077】
[比較例1]
水を含む流体を接続通路11a内に導入しなかった以外は、実施例1と同様にして、フラーレンを生成した。
【0078】
[比較例2]
水を含む流体を接続通路11b内に導入しなかった以外は、実施例7と同様にして、フラーレンを生成した。
【0079】
[比較例3]
水を含む流体を接続通路11c内に導入しなかった以外は、実施例9と同様にして、フラーレンを生成した。
【0080】
上記実施例及び比較例の排ガス温度と、冷却後排ガス温度、及びフラーレン収率を表1に纏めた。また、上記の実施例に用いた水を含む流体を構成する水及び窒素ガスはいずれも室温であった。
【0081】
【表1】
【0082】
表1に示すように、実施例1~9は、比較例1~3と比べて、フラーレンの収率が向上していることがわかる。即ち、炭化水素を含む原料を不完全燃焼させてフラーレンを生成させる際に、反応炉から排出される煤状物質を含む排ガスが、反応炉とフラーレン回収装置とを接続する接続通路において、接続通路内に導入される水を含む流体によって冷却されることで、フラーレンの収率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0083】
1、2、3:フラーレンの製造装置、10:反応炉、11a、11b、11c:接続通路、12:水導入手段、13a、13b:フラーレン回収装置、14:ガス冷却装置、15a、15b:液体回収タンク、16:減圧装置、17:サイクロン型分離部、18:固体捕集装置、21:バーナー、22、23:配管、24:気化装置、25、26:流量調節器、27:排出口、28:水導入部、29:微粒子化部、30:水導入配管、31、31a、31b、31c、31d:水導入口、32:排ガス流入口、33:排ガス流出口、34:側壁、35、36:配管、37:高温耐熱フィルター、38:逆洗浄機構、39:排出弁、40:配管、41:排出弁、42:配管、43:円筒部、44:円錐台部、45:排出弁、46、47、48:配管、49:バルブ、50:液体貯蔵容器、51:排出弁、52:バルブ、53、54:配管、55:バルブ、56:ポンプ、57:配管、58:排出弁

図1
図2
図3
図4a
図4b
図5
図6