(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】電気掃除機
(51)【国際特許分類】
A47L 9/28 20060101AFI20240528BHJP
A47L 9/02 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
A47L9/28 K
A47L9/28 E
A47L9/02 Z
(21)【出願番号】P 2018219583
(22)【出願日】2018-11-22
【審査請求日】2021-06-04
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】鹿山 俊洋
【合議体】
【審判長】窪田 治彦
【審判官】西 秀隆
【審判官】柿崎 拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-211362(JP,A)
【文献】特開2002-369778(JP,A)
【文献】米国特許第6039817(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L9/02
A47L9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池を電源として動作する電気掃除機であって、
電動送風機である吸引源と、
吸込口と、
二つの吸引部に分割され、前記吸引源と一つの前記吸込口とを連通する風路と、
一方の前記吸引部と他方の前記吸引部との間に配置され、一方の前記吸引部の風路面積を増加させることに応じて
他方の前記吸引部の風路面積を減少させるように動作して前記風路における前記吸引部の風路面積の配分を変える弁体であって、前記吸引源による吸引力を各前記吸引部に割り振る割合を、塵埃量が多いまたは塵埃量が多いと推定される前記吸引部ほど大きくするように調整可能な調整手段と、
を備えることを特徴とする電気掃除機。
【請求項2】
前記吸引部毎の塵埃量を検出する塵埃量検出手段を備え、
前記調整手段は、前記塵埃量検出手段により検出された塵埃量が多い
一方の前記吸引部の前記割合を塵埃量が少ない
他方の前記吸引部の前記割合よりも大きくするように前記風路における前記吸引部の風路面積の配分を調整する
ことを特徴とする請求項1記載の電気掃除機。
【請求項3】
前記吸引部毎の塵埃量の多寡を推定する推定手段を備え、
前記調整手段は、前記推定手段により塵埃量が相対的に多いと推定された
一方の前記吸引部の前記割合を塵埃量が相対的に少ないと推定された
他方の前記吸引部の前記割合よりも大きくするように前記風路における前記吸引部の風路面積の配分を調整する
ことを特徴とする請求項1記載の電気掃除機。
【請求項4】
前記推定手段は、床面から突出する突出部を認識する認識手段であり、
前記調整手段は、前記認識手段により認識された前記突出部側に位置する
一方の前記吸引部の前記割合を
他方の前記吸引部の前記割合よりも大きくするように前記風路における前記吸引部の風路面積の配分を調整する
ことを特徴とする請求項3記載の電気掃除機。
【請求項5】
前記調整手段は、含塵空気が流れる方向において前記吸引部に対して前記吸引源とは反対側である上流側の位置で風路面積を変えることで前記割合を調整する
ことを特徴とする請求項1ないし4いずれか一記載の電気掃除機。
【請求項6】
前記調整手段は、含塵空気が流れる方向において前記吸引部に対して前記吸引源側である下流側の位置で風路面積を変えることで前記割合を調整する
ことを特徴とする請求項1ないし4いずれか一記載の電気掃除機。
【請求項7】
自律走行式の電気掃除機である
ことを特徴とする請求項1ないし6いずれか一記載の電気掃除機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、吸引源に連通する吸込口を備える電気掃除機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気掃除機においては、被掃除面の塵埃の多寡をセンサにより判断し、塵埃が多い場合には吸引源である電動送風機の出力を増加させて、塵埃を効率よく吸い込むようにする制御が広く実施されている。この制御の場合、例えば掃除ロボットやコードレス掃除機等の電池を用いる電気掃除機では、稼働可能な時間が短縮されることとなるので、限られた電池容量を有効に利用するために、電動送風機の出力を増加させることなく塵埃を効率よく吸い込めるようにすることが望ましい。
【0003】
例えば、吸込口を複数に分割した電気掃除機や、電動送風機の吸込側に連通する複数の風路を備える電気掃除機が知られている。このような電気掃除機において、塵埃が多い位置に電動送風機の吸引力を集中させることで吸塵効率を向上可能とすることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-104334号公報
【文献】特開2013-232156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、吸引源の出力を増加させなくても吸塵効率を向上できる電気掃除機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の電気掃除機は、電池を電源として動作する電気掃除機である。電気掃除機は、電動送風機である吸引源と、吸込口と、風路と、調整手段と、を備える。風路は、二つの吸引部に分割され、吸引源と一つの吸込口とを連通する。調整手段は、一方の吸引部と他方の吸引部との間に配置され、一方の吸引部の風路面積を増加させることに応じて他方の吸引部の風路面積を減少させるように動作して風路における吸引部の風路面積の配分を変える弁体であって、吸引源による吸引力を各吸引部に割り振る割合を、塵埃量が多いまたは塵埃量が多いと推定される吸引部ほど大きくするように調整可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施形態の電気掃除機を床面側から模式的に示す平面図である。
【
図3】(a)は塵埃量検出手段を用いて同上電気掃除機の一の吸引部の吸引力を大きくする状態を模式的に示す平面図、(b)は塵埃量検出手段を用いて同上電気掃除機の他の吸引部の吸引力を大きくする状態を模式的に示す平面図、(c)は塵埃量検出手段を用いて同上電気掃除機の各吸引部の吸引力を等しくする状態を模式的に示す平面図である。
【
図4】(a)は推定手段を用いて同上電気掃除機の一の吸引部の吸引力を大きくする状態を模式的に示す平面図、(b)は推定手段を用いて同上電気掃除機の他の吸引部の吸引力を大きくする状態を模式的に示す平面図、(c)は推定手段を用いて同上電気掃除機の各吸引部の吸引力を等しくする状態を模式的に示す平面図である。
【
図5】第2の実施形態の電気掃除機の一部を模式的に示す平面図である。
【
図6】第3の実施形態の電気掃除機の一部を模式的に示す平面図である。
【
図7】第4の実施形態の電気掃除機の吸込口体を床面側から模式的に示す平面図である。
【
図9】第5の実施形態の電気掃除機の一部を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0009】
図1及び
図2において、1は電気掃除機である。電気掃除機1は、床面上を自律走行しつつ床面を掃除する。本実施形態では、自律走行式のロボットクリーナを例に挙げて説明する。なお、以下、本実施形態において、走行方向である前後方向、左右方向、及び、上下方向は、電気掃除機1を床面等の平面に載置した状態を基準として説明する。図面においては、前方向を矢印FR、後方向を矢印RRで示すものとする。
【0010】
電気掃除機1は、本体2を備えている。本体2は、走行面となる被掃除面に対し走行輪3により支持される。走行輪3は、ロボットクリーナの場合、モータ等の駆動手段により駆動される駆動輪を備える。駆動手段は、走行制御手段により制御される。
【0011】
また、本体2には、吸込口4が形成されている。吸込口4は、塵埃を空気とともに吸い込む。吸込口4は、本実施形態では、左右方向に沿って長手状に形成されている。吸込口4は、本実施形態において、本体2の被掃除面に対向する下部に開口されている。これに限られず、吸込口4は本体2の前部等に配置されていてもよい。吸込口4には、回転清掃体5が配置されていてもよい。回転清掃体5としては、例えば回転により床面を掃除する回転ブラシが用いられる。回転清掃体5は、例えばモータ等の回転駆動手段により回転駆動される。回転駆動手段は、回転制御手段により制御される。
【0012】
さらに、吸込口4には、含塵空気が通過する風路6が接続されている。風路6は、本体2の内部に形成されている。風路6は、吸込口4よりも幅狭に形成されている。また、風路6には、下流端に集塵部7が連通されている。集塵部7は、吸込口4から吸い込まれた塵埃を集積する。また、集塵部7は、吸引源である電動送風機8の吸込側に接続されている。電動送風機8は、集塵部7及び風路6を介して吸込口4に負圧を作用させる。電動送風機8は、送風機制御手段により制御される。
【0013】
また、風路6には、隔壁10が形成されている。隔壁10は、風路6を複数に分割するように形成されている。隔壁10は、風路6を通過する含塵空気の流れ方向に沿って形成されている。また、隔壁10は、一端部が風路6から吸込口4まで延びて、複数の吸引部を形成している。複数の吸引部は、集塵部7と連通している。集塵部7が電動送風機8の吸込側と連通していることで、複数の吸引部が電動送風機8の吸込側と吸込口4とを連通する。隔壁10の一端部は、吸込口4の縁部と連なって、又は、吸込口4の縁部に近接して形成されてもよい。本実施形態において、隔壁10は一つ形成され、風路6及び吸込口4を左右方向の中央部で左右二つに分割している。すなわち、隔壁10を挟んで、左右方向の一側に吸引部である第一吸引部4aが形成され、左右方向の他側に吸引部である第二吸引部4bが形成される。また、隔壁10は、他端部が風路6中の一定位置まで延びている。このため、風路6には、各吸引部が合流して集塵部7と連通する合流部6aが形成されている。また、第一吸引部4aと第二吸引部4bとは、共通の電動送風機8の吸込側に連通されている。
【0014】
また、隔壁10には、調整手段12が設けられている。調整手段12は、吸込口4の複数の吸引部のそれぞれの吸引力を調整可能なものである。本実施形態の調整手段12は、吸引部の風路面積を変えることで各吸引部の吸引力をそれぞれ調整する弁体である。調整手段12は、隔壁10の他端部に基端部が回動可能に支持され、先端部が自由端状となっている。つまり、調整手段12は、吸込口4の吸引部の下流側の位置で風路部の風路面積を変えることにより、各吸引部に流れる風量を調整して、各吸引部の吸引力をそれぞれ調整するようになっている。調整手段12は、風路面積を小さくする場合、風路を完全に閉塞してもよいし、風路の開き具合を狭くするのみであってもよい。
【0015】
また、調整手段12は、吸込口4の各吸引部の塵埃量に応じて、各吸引部の吸引力を調整する。つまり、調整手段12は、塵埃量が相対的に多い吸引部の吸引力を塵埃量が相対的に少ない吸引部の吸引力よりも大きくするように、各吸引部の吸引力を調整する。各吸引部の塵埃量は、塵埃量検出手段により検出してもよいし、推定手段により推定してもよい。
【0016】
塵埃量検出手段は、吸込口4の各吸引部の塵埃量を直接的又は間接的に検出する。塵埃量検出手段としては、例えば発光部と受光部とが対向配置された光センサ等が用いられる。本実施形態の場合、塵埃量検出手段は、
図3(a)ないし
図3(c)に示すように、第一吸引部4aに配置される塵埃量検出手段である第一塵埃量検出手段14aと、第二吸引部4bに配置される塵埃量検出手段である第二塵埃量検出手段14bとを設定してよい。
【0017】
一方、推定手段は、吸込口4の各吸引部のうち、相対的に塵埃量が多い吸引部を推定する。推定手段としては、床面である被掃除面から突出する突出部を認識する認識手段が用いられてよい。被掃除面から突出する突出部とは、部屋の壁や設置物、机や椅子の脚、電気掃除機1が乗り越え不能な凸段差等の走行障害の他に、部屋の扉等であり、その近傍の被掃除面に塵埃が溜まりやすい所定高さ以上の対象物をいう。つまり、推定手段として認識手段を用いる場合においては、突出部を認識した側に近い吸引部の塵埃量が、それ以外の吸引部の塵埃量よりも多く、その吸引部から離れるほど塵埃量が少ないと推定できる。なお、被掃除面から突出していても、電気掃除機1が乗り越えられる又は乗り上げられる程度のものは、平面状の被掃除面と同様に掃除できるので、認識手段によって突出部と認識しなくてもよい。
【0018】
推定手段は、所定高さ以上の突出部を検出するセンサを備えていてもよい。センサの場合、光センサ、超音波センサ、画像センサ等の非接触センサでもよいし、マイクロスイッチ等の接触センサでもよいし、それらの任意の組み合わせでもよい。センサは、好ましくは、吸込口4の各分室の位置に応じてそれぞれ本体2に配置されている。本実施形態の場合、第一吸引部4aと第二吸引部4bとが左右に配置されていることから、
図4(a)ないし
図4(c)に示すように、本体2の左右にそれぞれ推定手段である第一センサ16aと推定手段である第二センサ16bとが配置されていることが好ましい。
【0019】
また、推定手段は、電気掃除機1が走行領域の地図データを有する場合、その地図データを用いてもよい。地図データとしては、電気掃除機1がセンサ等を用いて既知のSLAM(simultaneous localization and mapping)技術等により作成してメモリ等に保持しているものや、ユーザにより入力されてメモリ等に保持しているものでもよいし、外部装置等から受け取るものでもよい。
【0020】
調整手段12は、塵埃量検出手段、又は推定手段からのいずれかの情報に基づき、モータ等の駆動手段によって動作されるものでもよい。電気掃除機1が塵埃量検出手段を備える場合には、塵埃量検出手段により検出された塵埃量が多い吸引部の吸引力を塵埃量が少ないと検出された吸引部の吸引力よりも大きくするように調整手段12で調整すれば、推定手段を備えなくてもよい。また、電気掃除機1が推定手段を備える場合には、推定手段により塵埃量が相対的に多いと推定された吸引部の吸引力を塵埃量が相対的に少ないと推定された吸引部の吸引力よりも大きくするように調整手段12で調整すれば、塵埃量検出手段を備えなくてもよい。このように、塵埃量検出手段と、推定手段とは、いずれか一方のみを備える構成としてもよいし、双方を備える構成としてもよい。
【0021】
また、電気掃除機1は、
図1及び
図2に示すように、サイドブラシ等の掃除手段18を備えていてもよい。
【0022】
さらに、電気掃除機1は、自律走行のための情報を取得するセンサ等の情報取得手段、外部装置又はネットワーク等との通信手段等をさらに備えていてもよい。
【0023】
また、電気掃除機1は、電動送風機8や各制御部等の電動部に給電する電源部として二次電池を備えていてもよい。二次電池は、充電装置により充電可能となっている。
【0024】
次に、第1の実施形態の動作を説明する。
【0025】
電気掃除機1は掃除を開始すると、被掃除面上を走行しながら、電動送風機8の吸引力を吸込口4から被掃除面に作用させ、塵埃を空気とともに吸い込む。掃除の際、電気掃除機1は、走行領域の地図データに基づき予め決められた走行ルートに沿って走行してもよいしセンサにより検出した走行障害を回避しながら任意に、又は、予め決められた所定のルールに従って走行してもよい。
【0026】
通常、被掃除面上の塵埃量は、位置によって偏りがある。塵埃量が多い位置を走行する際、電気掃除機1が、塵埃量が多い位置の中央部を吸込口4の中央部が通るように走行する場合、吸込口4の吸引力を各位置で均等又は略均等とする。また、電気掃除機1が、塵埃量が多い位置の中央部に対して吸込口4の中央部がずれて走行する場合、吸込口4において、塵埃量が多い側の吸引力を相対的に大きくする。このようにすることにより、吸塵効率を向上することができる。
【0027】
そこで、
図3(a)に示すように、第一塵埃量検出手段14aによって検出された塵埃量が第二塵埃量検出手段14bによって検出された塵埃量よりも所定以上多い場合には、調整手段12により、第二吸引部4bの風路面積を狭くすることで、第一吸引部4aに作用する吸引力を第二吸引部4bに作用する吸引力よりも大きくする。一方、
図3(b)に示すように、第二塵埃量検出手段14bによって検出された塵埃量が第一塵埃量検出手段14aによって検出された塵埃量よりも所定以上多い場合には、調整手段12により、第一吸引部4aの風路面積を狭くすることで、第二吸引部4bに作用する吸引力を第一吸引部4aに作用する吸引力よりも大きくする。また、第一塵埃量検出手段14aによって検出された塵埃量と第二塵埃量検出手段14bによって検出された塵埃量との差が所定未満である場合には、
図3(c)に示すように、調整手段12は、いずれか一方に偏らずに隔壁10に沿う中間の位置となることで、第一吸引部4aと第二吸引部4bとに作用する吸引力を略均等とする。
【0028】
また、被掃除面から突出する突出部の近傍の被掃除面は、空気の流れが突出物により阻害されていることから、塵埃が溜まりやすい。そこで、電気掃除機1が壁や障害物等の突出部に沿って走行する場合、調整手段12が風路を調整することで突出部側の吸引力を相対的に大きくすることにより、吸塵効率を向上することができる。
【0029】
そこで、
図4(a)に示すように、第一センサ16aによって突出部Pを検出した場合には、第二吸引部4bの風路面積を狭くすることで、第一吸引部4aに作用する吸引力を第二吸引部4bに作用する吸引力よりも大きくする。一方、
図4(b)に示すように、第二センサ16bによって突出部Pを検出した場合には、調整手段12により、第一吸引部4aの風路面積を狭くすることで、第二吸引部4bに作用する吸引力を第一吸引部4aに作用する吸引力よりも大きくする。また、第一センサ16a及び第二センサ16bによって突出部Pを検出しない場合には、
図4(c)に示すように、調整手段12は、いずれか一方に偏らずに隔壁10に沿う中間の位置となることで、第一吸引部4aと第二吸引部4bとに作用する吸引力を略均等とする。
【0030】
本実施形態において、調整手段12は、隔壁10に対して交差する方向に回動することで、第一吸引部4a又は第二吸引部4bの風路面積を狭くする。調整手段12は、隔壁10に対する傾斜角度を所定角度以下に小さくすることで、含塵空気が通過する風路を調整手段12に沿って徐々に拡げて、調整手段12に回り込む含塵空気の乱流を抑制し、円滑に空気を流すことができる。
【0031】
含塵空気は、風路6を通過した後、集塵部7に吸い込まれる。集塵部7では、塵埃が分離されて集積され、空気が電動送風機8に吸い込まれる。電動送風機8は、吸い込まれた空気により冷却され、本体2の排気口から排気される。
【0032】
掃除が終了すると、電気掃除機1は、掃除を開始した位置、又は充電用の充電装置等に帰還する。
【0033】
このように、第1の実施形態によれば、吸込口4の複数の吸引部の吸引力を調整手段12により調整することで、吸込口4の必要箇所に吸引力を集中させ、電動送風機8の出力を増加させなくても吸塵効率を向上できる。
【0034】
調整手段12が、塵埃量検出手段により検出された塵埃量が多い吸引部の吸引力を塵埃量が少ない吸引部の吸引力よりも大きくするように調整することで、塵埃を効率よく吸い込むことができる。
【0035】
また、調整手段12が、推定手段により塵埃量が相対的に多いと推定された吸引部の吸引力を塵埃量が相対的に少ないと推定された吸引部の吸引力よりも大きくするように調整することで、塵埃を効率よく吸い込むことができる。
【0036】
また、推定手段として、被掃除面から突出する突出部を認識する認識手段を用い、調整手段12が、認識手段により認識された突出部側の吸引部の吸引力をそれ以外の吸引部の吸引力よりも大きくするように調整することで、一般に塵埃が溜まりやすい突出部の近傍の被掃除面を効率よく掃除できる。認識手段は、電気掃除機1がロボットクリーナである場合、自律走行の制御用として予め備えられているセンサや地図データ等を利用できるため、部品等をさらに追加する必要がなく、安価で容易に構成できる。
【0037】
また、調整手段12は、風路面積を変えることで各吸引部の吸引力を容易に調整可能となる。本実施形態では、調整手段12が、吸引部の下流側の位置で風路面積を変えることで、各吸引部の吸引力を容易に調整可能となる。
【0038】
そして、自律走行式の電気掃除機1であるため、塵埃量検出手段や推定手段を用いて調整手段12により吸込口4の吸引部の吸引力を自動的に調整することで、全自動で効率よい掃除が可能となる。
【0039】
特に、二次電池を用いる電気掃除機1の場合、単に電動送風機8の出力を大きくすると、稼働時間が短縮され、静音性も損なわれやすい。したがって、上記のように、電動送風機8の出力を大きくすることなく吸引力を変えることで、二次電池の容量を有効に利用して稼働時間の短縮を抑制し、静音性を保ちつつ、効率よく掃除をすることが可能になる。また、電動送風機8も大型のものを用いる必要がなく、電動送風機8や電源基板の大型化を防ぐことができる。
【0040】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について
図5を参照して説明する。なお、第1の実施形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0041】
本実施形態の電気掃除機1は、調整手段12が、吸込口4の長手方向の両側に配置されているものである。つまり、調整手段12は、吸込口4の吸引部に対して、含塵空気が流れる方向において電動送風機8側とは反対の上流側の位置で風路面積を変えることで吸引力を調整する弁体である。吸込口4に回転清掃体5を設置する場合には、隔壁10を基準として左右に設置してよい。
【0042】
このように、調整手段12が、吸引部の上流側の位置で風路面積を変えることで、各分室の吸引力を容易に調整可能となる。
【0043】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について
図6を参照して説明する。なお、上記第1の実施形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0044】
本実施形態の電気掃除機1は、吸込口4が複数の隔壁により、複数の吸引部と、これら吸引部に連通する連通部とに分割されているものである。
【0045】
図6に示す例では、隔壁10a,10bにより吸込口4が第一吸引部4aと第二吸引部4bとに分割され、これら第一吸引部4aと第二吸引部4bとの間に、風路6と連通する連通部4cが形成されている。連通部4cを挟んで第一吸引部4aと第二吸引部4bとが位置する。また、隔壁10a,10bには、第一吸引部4a及び第二吸引部4bと連通部4cとを連通する開口部21a,21bがそれぞれ形成されている。開口部21a,21bは、開口量が第一調整手段12aと第二調整手段12bとにより調整されるようになっている。
【0046】
また、第1及び第2の実施形態と同様に塵埃量検出手段や推定手段を適用してもよい。
【0047】
このため、第3の実施形態によれば、吸込口4の複数の吸引部の吸引力を調整手段12a,12bにより調整することで、吸込口4の必要箇所に吸引力を集中させ、電動送風機8の出力を増加させなくても吸塵効率を向上できる等、第1の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0048】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について
図7及び
図8を参照して説明する。なお、上記各実施形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0049】
図8に示すように、本実施形態の電気掃除機1は、本体2に接続される風路形成体である管部23を備える。電気掃除機1は、ユーザが床面上で本体2を走行させつつ、管部23を介して床面を掃除する。本実施形態では、キャニスタ型の電気掃除機を例に挙げて説明する。また、本実施形態の電気掃除機1は、二次電池を電源部として備えるコードレス式のものを例に挙げて説明するが、これに限られず、商用電源を用いるものでもよい。
【0050】
管部23は、基端部が本体2に接続されるホース体24と、ホース体24の先端部に基端部が接続される管体である延長管25と、延長管25の先端部に接続される吸込口体26とを備える。
【0051】
図7及び
図8に示すように、吸込口体26は、ケース体28を備えている。ケース体28には、吸込口4及び風路6が形成されている。吸込口4及び風路6は、本体2に配置された集塵部7と連通している。また、吸込口4、風路6、調整手段12は、第1の実施形態と同様に構成されているが、第2の実施形態や第3の実施形態と同様に構成されていてもよい。また、吸込口体26には、塵埃量検出手段や推定手段が配置されていてもよい。
【0052】
このように、キャニスタ型の電気掃除機1であっても、第1ないし第3の実施形態と同様に構成することで、ユーザが被掃除面上で吸込口体26を塵埃量が多い箇所に移動させた際に、塵埃量が多い箇所に吸引力を集中させて効率よく塵埃を吸い込むことができ、同様の効果を奏することができる。
【0053】
特に、二次電池を電源部として駆動するコードレス式の電気掃除機1の場合には、単に電動送風機8の出力を大きくすると、稼働時間が短縮され、静音性も損なわれやすいので、電動送風機8の出力を大きくすることなく吸引力を変えることで、二次電池の容量を有効に利用して稼働時間の短縮を抑制し、静音性を保ちつつ、効率よく掃除をすることが可能になる。
【0054】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態について
図9を参照して説明する。なお、上記各実施形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0055】
図9に示すように、隔壁10の一端部は、吸込口4の前端まで延びていなくてもよい。このように、隔壁10によって風路6で複数の吸引部を形成することにより、上記各実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0056】
なお、各実施形態において、調整手段12は、塵埃量検出手段や推定手段からの情報に応じて自動的に動作されるものに限られず、キャニスタ型の電気掃除機1等の場合、被掃除面の塵埃量等に応じてユーザが手動で切り換えるものとしてもよい。
【0057】
調整手段12は、吸込口4の吸引部を流れる含塵空気の風量を調整することで吸引力を調整するものとしたが、吸引部の真空度を調整することで吸引力を調整するものとしてもよい。
【0058】
また、調整手段12は、推定手段がスイッチ等の接触センサの場合、推定手段が突出部と接触して突出部を検出する動作に機械的に連動されるものでもよい。
【0059】
吸込口4の吸引部は、二つに限られず、三つ以上形成されていてもよい。その場合、塵埃量検出手段や推定手段は、吸引部毎に対応して設けられていることが好ましい。
【0060】
電気掃除機1は、自律走行式やキャニスタ型に限定されず、本体2に延長管25を介して吸込口体26が接続されるスティック型や、本体2に吸込口体26が直接接続されるアップライト型やハンディ型等でも適用可能である。
【0061】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0062】
1 電気掃除機
4 吸込口
4a 吸引部である第一吸引部
4b 吸引部である第二吸引部
6 風路
8 吸引源である電動送風機
12 調整手段
14a 塵埃量検出手段である第一塵埃量検出手段
14b 塵埃量検出手段である第二塵埃量検出手段
16a 推定手段及び認識手段である第一センサ
16b 推定手段及び認識手段である第二センサ