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特許7495209経営指標評価装置、経営指標評価方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】経営指標評価装置、経営指標評価方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/06 20230101AFI20240528BHJP
   G05B 19/418 20060101ALI20240528BHJP
   G06Q 50/04 20120101ALI20240528BHJP
【FI】
G06Q10/06
G05B19/418 Z
G06Q50/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019057096
(22)【出願日】2019-03-25
(65)【公開番号】P2020160602
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-01-27
【審判番号】
【審判請求日】2023-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】河内 駿
(72)【発明者】
【氏名】筒井 誠
(72)【発明者】
【氏名】笠野 学
(72)【発明者】
【氏名】岸田 直久
(72)【発明者】
【氏名】田村 和久
(72)【発明者】
【氏名】今田 亮祐
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 博志
(72)【発明者】
【氏名】細田 康行
【合議体】
【審判長】松田 直也
【審判官】古川 哲也
【審判官】相崎 裕恒
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-182769(JP,A)
【文献】国際公開第2018/150646(WO,A1)
【文献】特開2017-174334(JP,A)
【文献】特開2003-271797(JP,A)
【文献】国際公開第2012/063589(WO,A1)
【文献】特開2012-181626(JP,A)
【文献】特開2017-187979(JP,A)
【文献】特開2006-4021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生産対象物の生産に要する複数の工程の各々の工程情報を定義した基準工程情報に含まれる前記複数の工程の各々に製造コストに計上される費用を求めるための費用情報を含む財務情報を管理するデータベースと、
経営指標の評価期間において生産される前記生産対象物の前記基準工程情報に基づいて前記生産対象物の生産に関して予め登録された前記生産に従事可能な人員数、使用可能な設備の数、能力の少なくとも1つを含むリソースに関する制約条件を満たしつつ、生産計画の総期間が短くなるように前記生産対象物の生産スケジューリングを実行することで生成された生産計画を取得するよう構成された生産計画取得部と、
前記生産計画に基づいて、前記生産対象物の前記基準工程情報に含まれる前記複数の工程についての前記財務情報を前記データベースから取得し、前記工程ごとに前記費用情報を加算することで求められる前記製造コストを含む前記評価期間における前記経営指標を算出するよう構成された経営指標算出部と、
前記経営指標の算出結果を変化させることが可能な、前記基準工程情報または前記財務情報に含まれる前記製造コストの算出に用いられる属性情報の登録値を調整するための調整情報をそれぞれ含む複数の施策情報の任意の1以上の施策について、カテゴリごとに、前記調整情報を任意の値の一時的な修正と、前記経営指標の算出とを順番に繰り返すことで、複数の前記属性情報のうちから、前記経営指標の算出値への寄与が相対的に高い少なくとも1つの前記属性情報のカテゴリを判別するよう構成された感度解析部と、
前記複数の施策情報について、各々の前記施策情報に対応する施策の実施の有無に基づく全ての組合せのうち、前記感度解析部によって前記経営指標の算出値への寄与が相対的に高いと判別された前記カテゴリに分類される前記属性情報を調整する前記施策を含む一部の前記組合せを取得する施策組合せ取得部と、
前記施策組み合わせ取得部によって取得された前記組合せについて、前記実施が有りの前記施策に対応する前記施策情報の前記調整情報に基づいて、前記基準工程情報または前記財務情報における前記属性情報の値を修正する施策反映部と
備え、
前記経営指標算出部は、前記施策組み合わせ取得部によって取得された前記組合せについて、前記施策反映部によって修正された前記属性情報を含む前記基準工程情報または前記財務情報に基づいて、前記経営指標を算出することを特徴とする経営指標評価装置。
【請求項2】
前記評価期間における管理余地がない環境条件に関し、前記財務情報に含まれる少なくとも1つの指標の想定値を含む外部環境条件をそれぞれ定義した複数のシナリオを取得するよう構成されたシナリオ取得部を、さらに備え、
前記経営指標算出部は、前記複数のシナリオの各々で定義された前記外部環境条件に基づいて、前記複数のシナリオの各々についての前記経営指標を算出することを特徴とする請求項1に記載の経営指標評価装置。
【請求項3】
前記財務情報は、前記複数の工程の各々についての入金時期または出金時期の少なくとも一方を含む入出金条件をさらに含み、
前記経営指標算出部は、入出金に関する前記経営指標であるキャッシュフロー又はCCCについては、前記入出金条件に従って算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の経営指標評価装置。
【請求項4】
前記生産計画取得部は、前記生産対象物の納期遅延が生じた第1生産計画における前記納期遅延に起因した第1遅延コストと、前記第1生産計画に比べて前記生産対象物の納期を前倒しした第2生産計画における第2遅延コスト及び前記納期の前倒しに要した追加コストの和との比較結果に基づいて、前記第1生産計画および前記第2生産計画の中から前記生産計画を選択することにより、前記生産計画を取得することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の経営指標評価装置。
【請求項5】
前記第2生産計画は、
前記第1生産計画に対する前記生産対象物の生産開始時期の前倒し、前記第1生産計画に対する外注率の増加、または、前記第1生産計画に対して前記生産対象物の生産に携わる労働者の時間外労働の増加の少なくとも一つの施策を含むことを特徴とする請求項4に記載の経営指標評価装置。
【請求項6】
コンピュータが、経営指標の評価期間において生産される生産対象物の生産に要する複数の工程の各々の工程情報を定義した基準工程情報に基づいて前記生産対象物の生産に関して予め登録された前記生産に従事可能な人員数、使用可能な設備の数、能力の少なくとも1つを含むリソースに関する制約条件を満たしつつ、生産計画の総期間が短くなるように前記生産対象物の生産スケジューリングを実行することで生成された生産計画を取得する生産計画取得ステップと、
前記コンピュータが、前記生産計画に基づいて、前記生産対象物の前記基準工程情報に含まれる前記複数の工程に製造コストに計上される費用を求めるための費用情報を含む財務情報を、前記基準工程情報に含まれる前記複数の工程の各々に要する前記費用情報を含む前記財務情報を管理するデータベースから取得し、前記工程ごとに前記費用情報を加算することで求められる前記製造コストを含む前記評価期間における前記経営指標を算出する経営指標算出ステップと、
前記経営指標の算出結果を変化させることが可能な、前記基準工程情報または前記財務情報に含まれる前記製造コストの算出に用いられる属性情報の登録値を調整するための調整情報をそれぞれ含む複数の施策情報の任意の1以上の施策について、カテゴリごとに、前記調整情報を任意の値の一時的な修正と、前記経営指標の算出とを順番に繰り返すことで、複数の前記属性情報のうちから、前記経営指標の算出値への寄与が相対的に高い少なくとも1つの前記属性情報のカテゴリを判別する感度解析ステップと、
前記複数の施策情報について、各々の前記施策情報に対応する施策の実施の有無に基づく全ての組合せのうち、前記感度解析部によって前記経営指標の算出値への寄与が相対的に高いと判別された前記カテゴリに分類される前記属性情報を調整する前記施策を含む一部の前記組合せを取得する施策組合せ取得ステップと、
前記施策組み合わせ取得ステップで取得された前記組合せについて、前記実施が有りの前記施策に対応する前記施策情報の前記調整情報に基づいて、前記基準工程情報または前記財務情報における前記属性情報の値を修正する施策反映ステップと
備え
前記経営指標算出ステップでは、前記施策組み合わせ取得部によって取得された前記組合せについて、前記施策反映部によって修正された前記属性情報を含む前記基準工程情報または前記財務情報に基づいて、前記経営指標を算出することを特徴とする経営指標評価方法。
【請求項7】
コンピュータに、
生産対象物の生産に要する複数の工程の各々の工程情報を定義した基準工程情報に含まれる前記複数の工程の各々に製造コストに計上される費用を求めるための費用情報を含む財務情報を管理するデータベースと、
経営指標の評価期間において生産される前記生産対象物の前記基準工程情報に基づいて前記生産対象物の生産に関して予め登録された前記生産に従事可能な人員数、使用可能な設備の数、能力の少なくとも1つを含むリソースに関する制約条件を満たしつつ、生産計画の総期間が短くなるように前記生産対象物の生産スケジューリングを実行することで生成された生産計画を取得する生産計画取得部と、
前記生産計画に基づいて、前記生産対象物の前記基準工程情報に含まれる前記複数の工程についての前記財務情報を前記データベースから取得し、前記工程ごとに前記費用情報を加算することで求められる前記製造コストを含む前記評価期間における前記経営指標を算出する経営指標算出部と、
前記経営指標の算出結果を変化させることが可能な、前記基準工程情報または前記財務情報に含まれる前記製造コストの算出に用いられる属性情報の登録値を調整するための調整情報をそれぞれ含む複数の施策情報の任意の1以上の施策について、カテゴリごとに、前記調整情報を任意の値の一時的な修正と、前記経営指標の算出とを順番に繰り返すことで、複数の前記属性情報のうちから、前記経営指標の算出値への寄与が相対的に高い少なくとも1つの前記属性情報のカテゴリを判別する感度解析部と、
前記複数の施策情報について、各々の前記施策情報に対応する施策の実施の有無に基づく全ての組合せのうち、前記感度解析部によって前記経営指標の算出値への寄与が相対的に高いと判別された前記カテゴリに分類される前記属性情報を調整する前記施策を含む一部の前記組合せを取得する施策組合せ取得部と、
前記施策組み合わせ取得部によって取得された前記組合せについて、前記実施が有りの前記施策に対応する前記施策情報の前記調整情報に基づいて、前記基準工程情報または前記財務情報における前記属性情報の値を修正する施策反映部と
備え、
前記経営指標算出部は、前記施策組み合わせ取得部によって取得された前記組合せについて、前記施策反映部によって修正された前記属性情報を含む前記基準工程情報または前記財務情報に基づいて、前記経営指標を算出することを実現させるためのプログラムであることを特徴とする経営指標評価プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、経営指標の評価に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、製品の生産計画を、生産に利用可能なリソースに関する制約を考慮して立案する生産スケジューリング(有限能力スケジューリング)が知られている(特許文献1~4参照)。例えば特許文献1には、予め決められた所定期間ごとの需要予測を行い、生産すべき数量と生産のリソース・能力に関する情報を入力として与えると、設備的、人員的、品質的などの各種制約条件を充足するような日々の生産日程を出力する生産スケジューリングシステムが開示されている。
【0003】
また、製造コストの将来予測を過去実績から行うコスト計上モデルを作成し、経営指標を算出する経営シミュレーションが知られている(特許文献5~6参照)。例えば特許文献5では、企業の過去所定年数分の財務データと、現在あるいは将来見込まれる金利、税率を含む企業の外的環境データとを入力し、将来の所定期間における企業経営シミュレーションをするための必要十分な財務科目と、企業の実績に応じて算出した財務科目の値などを含むシミュレーション条件を入力し、財務データ計算ルールモジュールを参照して当該企業の将来的な財務データを算出する経営シミュレーションを実行するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-202038号公報
【文献】特開2013-250713号公報
【文献】特開2011-65626号公報
【文献】特表2017-514247号公報
【文献】特許第6363740号公報
【文献】特開2001-125962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
経営目標達成に必要な改善策(コストダウン、リードタイム短縮等)を検討・評価する担当者は、管理余地がないような様々な外部環境(為替や需要変動など)の想定の下で、数年先を対象に様々な施策の実施による財務改善効果を試算し、最適な改善策を提案する必要がある。しかし、上述したコスト計上モデルに基づく経営シミュレーションでは、リソース制約(作業工数を基にした生産可否)を考慮しないため、その結果に基づいて選択した改善策は実際には実現困難である可能性がある。また、様々の施策を全て実施することは資金、時間などから困難であるところ、経営指標の目標を達成可能な施策の組合せの導出や、最適な施策の組合せの導出に多大な時間を要する場合があり、適切な経営判断・意思決定を困難化させる一因となっている。
【0006】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、実現性の高い生産計画に基づいた経営シミュレーションを実行する経営指標評価装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る経営指標評価装置は、
生産対象物の生産に要する複数の工程の各々の工程情報を定義した基準工程情報に含まれる前記複数の工程の各々に要する費用情報を含む財務情報を管理するデータベースと、
経営指標の評価期間において生産される前記生産対象物の前記基準工程情報に基づいて、前記生産対象物の生産スケジューリングを実行することで得られる生産計画を取得するよう構成された生産計画取得部と、
前記生産計画に基づいて、前記生産対象物の前記基準工程情報に含まれる前記複数の工程についての前記財務情報を前記データベースから取得し、前記評価期間における前記経営指標を算出するよう構成された経営指標算出部と、を備える。
【0008】
上記(1)の構成によれば、生産対象物の基準工程情報には、その基準工程情報が有する設計、製造などの各工程に対して財務情報が関連付けられており、複数の生産対象物の生産を各々の基準工程情報に基づいて生産スケジューリングを実行した結果得られる生産計画に基づいて、例えば粗利、キャッシュフロー、CCC(Cash Conversion Cycle)、人員数など経営指標を算出する。生産スケジューリングにより生成された生産計画は、その生産に携わる人や機械などによるリソースの制約の下で生成されたものである。また、生産計画では、工程毎の開始および終了が定められている。したがって、生産計画および工程毎の財務情報に基づいて経営指標を算出することにより、リソース制約を満たす現実的な生産計画に対応する経営指標を、より精度良く求めることができる。
【0009】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記評価期間における外部環境条件をそれぞれ定義した複数のシナリオを取得するよう構成されたシナリオ取得部を、さらに備え、
前記経営指標算出部は、前記複数のシナリオの各々で定義された前記外部環境条件に基づいて、前記複数のシナリオの各々についての前記経営指標を算出する。
【0010】
上記(2)の構成によれば、例えば評価期間において想定される為替や、材料価格、売価、生産対象物毎の受注数などの条件(外部環境条件)を定義したシナリオを、想定される外部環境条件を複数用意し、各シナリオに応じた経営指標をそれぞれ算出する。これによって、複数のシナリオの各々に応じた経営指標を算出することができる。
【0011】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)~(2)の構成において、
前記経営指標の算出結果を変化させることが可能な、前記基準工程情報または前記財務情報に含まれる属性情報の登録値を調整するための調整情報をそれぞれ含む複数の施策情報について、各々の前記施策情報に対応する施策の実施の有無に基づく全ての組合せのうちの少なくとも一部を取得する施策組合せ取得部と、
取得された複数の前記組合せの各々について、前記実施が有りの前記施策に対応する前記施策情報の前記調整情報に基づいて、前記基準工程情報または前記財務情報における前記属性情報の値を修正する施策反映部と、をさらに備え、
前記経営指標算出部は、前記複数の組合せの各々に応じて生成された前記生産計画および前記財務情報に基づいて、前記経営指標を算出する。
【0012】
上記(3)の構成によれば、経営指標や、工程ごとのリードタイムなどの管理指標を改善する改善策などとなる複数の施策が有った場合に、各施策の実施によって変化される基準工程情報または財務情報に含まれる属性情報がどのように変化されるのかを定義した施策情報を導入する。これと共に、複数の施策の各々の実施の有無に応じた複数の組合せを取得し、各組合せにおいて実施が有りとされた1以上の施策の施策情報(調整情報)に基づいて、基準工程情報または財務情報に含まれる属性情報を修正した上で、各組合せに応じた経営指標を算出する。これによって、各施策を実施した場合の経営指標を求めることができ、各施策の実施の有無に応じた予測効果を定量的に求めることができる。したがって、経営指標Iの目標を達成するのに効果的な、実現可能な改善策を求めることができる。また、このようにして実施が判断された施策は、具体的な施策内容に対応しているので、現場レベルで行う施策の適用のための作業も明確になると共に、実施の効果が適切に反映された、より精度の高い経営指標を求めることができる。
【0013】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)の構成において、
複数の前記属性情報のうちから、前記経営指標の算出値への寄与が相対的に高い少なくとも1つの前記属性情報のカテゴリを判別するよう構成された感度解析部を、さらに備え、
前記施策組合せ取得部は、前記全ての組合せのうち、判別された前記カテゴリに分類される前記属性情報を調整する前記施策を含む一部の前記組合せを取得する。
【0014】
属性情報を変化させる各施策の実施の有無に基づく組合せの数は、施策の数(n)に応じて2の数となるため、全ての調整条件(2個)について、それぞれ経営指標を算出するのは、計算数に応じた時間を要する。
【0015】
上記(4)の構成によれば、属性情報を、例えばリードタイムに影響を与える属性、人員数に影響を与える属性、内作率に影響を与える属性などカテゴリに分類した場合に、経営指標への影響が高いカテゴリを判別すると共に、経営指標を算出する対象となる組合せを、判別したカテゴリに分類される属性情報を調整する施策の実施が有りとされる組合せに絞る。これによって、経営指標Iの算出を、複数の施策の実施の有無に応じた全ての組合せを対象とすることなく、経営指標の調整に効果的な組合せに絞って実施することができ、最適な改善策をより迅速に求めることができる。
【0016】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)~(4)の構成において、
前記財務情報は、前記複数の工程の各々についての入金時期または出金時期の少なくとも一方を含む入出金条件をさらに含み、
前記経営指標算出部は、入出金に関する前記経営指標については、前記入出金条件に従って算出する。
【0017】
上記(5)の構成によれば、財務情報は工程毎の入出金条件を含んでおり、例えばキャッシュフローなどの経営指標を、この入出金条件に基づいて算出する。生産対象物の構成部品を外部から調達する場合の取引先に支払う費用の出金時期や、生産対象物の購入先から支払われる売価の入金時期は、取引先や購入先に応じて異なっている場合がある。よって、入出金条件が工程に対して関連付けられていることにより、各工程の実施時期が定められた生産計画に基づいて、入金の時期、出金の時期をもとめることができる。したがって、入出金の時期に基づいてキャッシュを算出することで、キャッシュフローやCCCなどの入出金に関する経営指標を、より精度良く求めることができる。
【0018】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)~(5)の構成において、
前記生産計画取得部は、前記生産対象物の納期遅延が生じた第1生産計画における前記納期遅延に起因した遅延コストと、前記第1生産計画に比べて前記生産対象物の納期を前倒しした第2生産計画における前記遅延コスト及び前記納期の前倒しに要した追加コストの和との比較結果に基づいて、前記第1生産計画および前記第2生産計画の中から前記生産計画を選択することにより、前記生産計画を取得する。
【0019】
納期遅延が生じると、その遅延に対するペナルティとして生産対象物の納入先に支払うペナルティ(遅延コスト)が生じる場合がある。他方、このような納期遅延を起こさないためには、外注率や、人や装置などのリソースの増大、生産の早期着手などの対応策が考えられるが、このような対応策は納期遅延に対する遅延コストを下げることが可能である一方で、対応策の内容に応じた追加コストが必要となる。
【0020】
上記(6)の構成によれば、納期遅延が生じた生産計画(第1生産計画)と、上記の対応策によって第1生産計画に比べて生産対象物の納期を前倒しした生産計画(第2生産計画)との各々についての遅延コストおよぶ追加コストの和の比較に基づいて、いずれかの生産計画を選択する。これによって、トータルコストがより小さい生産計画を選択することができる。
【0021】
(7)幾つかの実施形態では、上記(6)の構成において、
前記第2生産計画は、
前記第1生産計画に対する前記生産対象物の生産開始時期の前倒し、前記第1生産計画に対する外注率の増加、または、前記第1生産計画に対して前記生産対象物の生産に携わる労働者の時間外労働の増加の少なくとも一つの施策を含む。
【0022】
上記(7)の構成によれば、第2生産計画は、複数の施策の少なくとも一つの施策を行うことによる生産計画である。これによって、第2生産計画のトータルコストが第1生産計画のトータルコストよりも低い場合において、実際に実施すべき施策(短縮期間、前倒し期間、外注の有無、残業や休日出勤の増大費)を適切に選択することができる。
【0023】
(8)本発明の少なくとも一実施形態に係る経営指標評価方法は、
経営指標の評価期間において生産される生産対象物の生産に要する複数の工程の各々の工程情報を定義した基準工程情報に基づいて、前記生産対象物の生産スケジューリングを実行することで得られる生産計画を取得するよう構成された生産計画取得ステップと、
前記生産計画に基づいて、前記生産対象物の前記基準工程情報に含まれる前記複数の工程についての費用情報を含む財務情報を、前記基準工程情報に含まれる前記複数の工程の各々に要する前記費用情報を含む前記財務情報を管理するデータベースから取得し、前記評価期間における前記経営指標を算出するよう構成された経営指標算出ステップと、を備える。
上記(8)の構成によれば、上記(1)と同様の効果を奏する。
【0024】
(9)本発明の少なくとも一実施形態に係る経営指標評価プログラムは、
コンピュータに、
生産対象物の生産に要する複数の工程の各々の工程情報を定義した基準工程情報に含まれる前記複数の工程の各々に要する費用情報を含む財務情報を管理するデータベースと、
経営指標の評価期間において生産される前記生産対象物の前記基準工程情報に基づいて、前記生産対象物の生産スケジューリングを実行することで得られる生産計画を取得するよう構成された生産計画取得部と、
前記生産計画に基づいて、前記生産対象物の前記基準工程情報に含まれる前記複数の工程についての前記財務情報を前記データベースから取得し、前記評価期間における前記経営指標を算出するよう構成された経営指標算出部と、を実現させるためのプログラムである。
上記(9)の構成によれば、上記(1)と同様の効果を奏する。
【発明の効果】
【0025】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、実現性の高い生産計画に基づいた経営シミュレーションを実行する経営指標評価装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態に係る経営指標評価装置を備える経営指標評価システムの構成を概略的に示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係るデータベースの論理的な構造を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る経営指標の出力例を示す図であり、(a)粗利、(b)キャッシュフローである。
図4】本発明の一実施形態に係るシナリオを示す図である。
図5】本発明の一実施形態に係る施策情報を示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係る複数の施策の実施の有無に応じた組合せCを示す図である。
図7】本発明の一実施形態に係る感度解析の結果を示す図である。
図8】本発明の一実施形態に係る生産計画取得部を概略的に示す図である。
図9】本発明の一実施形態に係るコスト評価方法を説明するための図である。
図10】本発明の一実施形態に係る経営指標評価方法を示す図である。
図11】本発明の一実施形態に係る複数の生産計画を取得するまでのフローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0028】
図1は、本発明の一実施形態に係る経営指標評価装置1を備える経営指標評価システム9の構成を概略的に示す図である。図1に示すように、経営指標評価システム9は、生産スケジューラ8と、経営指標評価装置1と、を備える。
【0029】
生産スケジューラ8は、生産対象となる1以上の生産対象物Tの生産スケジューリング(有限能力スケジューリング)を実行し、生産計画Pを生成する。より詳細には、生産スケジューリングは、複数の工程を経てそれぞれ生産される1以上の生産対象物Tの各工程の実施時期を、生産に従事可能な人員数や、使用可能な設備(機械)の数、能力など、予め記憶(登録)されたリソースに関連する情報に起因する制約条件(リソース制約)を満たしつつ、例えば生産全体のリードタイム(生産計画Pの総期間)が短くなるようになど、効率的な生産が行われるように決定する。つまり、生産スケジューリングを実行することによって、リソース制約を満たす範囲で複数の工程が時間軸上に順次または並列に配置された生産計画Pが生成される。
【0030】
一方、経営指標評価装置1は、生産スケジューラ8が生成した生産計画Pに応じた経営指標Iを算出する。経営指標Iは、生産対象物Tの生産による影響を受ける経営に関する指標であり、例えば、売上、粗利、キャッシュフロー、CCC(Cash Conversion Cycle)の少なくとも1つを含んでも良い。図1に示すように、生産スケジューラ8によって生成された生産計画Pは経営指標評価装置1に入力されるようになっており、経営指標評価装置1は、生産計画Pが入力されると、経営指標Iの算出を開始するようになっている。つまり、生産スケジューラ8による生産スケジューリングを経営指標評価装置1による経営シミュレーションに連携させるようになっている。
【0031】
以下、この経営指標評価装置1について、図1図3を用いて説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係るデータベース2の論理的な構造を示す図である。また、図3は、本発明の一実施形態に係る経営指標Iの出力例を示す図であり、(a)粗利、(b)キャッシュフローである。
【0032】
図1(後述の図8も同様)に示すように、経営指標評価装置1は、財務情報Fを管理するデータベース2と、生産計画取得部31と、経営指標算出部4と、を備える。これらの構成について、それぞれ説明する。
【0033】
なお、経営指標評価装置1(生産スケジューラ8も同様)は、例えばコンピュータで構成されており、図示しないCPU(プロセッサ)や、ROMやRAMといったメモリ、外部記憶装置などの記憶装置を備えている。そして、主記憶装置にロードされたプログラム(経営指標評価プログラムや、生産スケジューラプログラム)の命令に従ってCPUが動作(データの演算など)することで、動作する。経営指標評価プログラムおよび生産スケジューラプログラムは、互いに異なるコンピュータ(OS:Operating System)上で動作しても良いし、同じコンピュータ上で動作しても良い。
【0034】
また、後述する各種のテーブルは、例えば関係データベースでの論理的な構造を構成し、複数の属性情報(情報フィールド)の値を記憶するが、以下の説明中のテーブルの構成は一例であり、各種の情報をどのような種類のテーブルで管理するかは任意である。また、各種のテーブルは、同じデータベース上で管理されても良いし、異なるデータベース上で管理されていても良い。また、経営指標評価装置1の外部記憶装置などの記憶装置mに記憶されていても良いし、他の装置の記憶装置に記憶されていても良い。
【0035】
データベース2(財務情報データベース)は、生産対象物Tの生産に要する複数の工程の各々の工程情報を定義した基準工程情報Bに含まれる複数の工程の各々に要する費用情報Fcを含む財務情報Fを管理するデータベースである。生産対象物Tは、1つの製品に対応しても良いし、複数の製品を含んでも良い。この製品は、例えば航空機や、ガスタービン、ボイラ、交通システム、エアコン、風車などであっても良い。例えばガスタービンコンバインドサイクル(GTCC)などの場合には、生産対象物Tは、このGTCCを構成するガスタービンや廃熱回収ボイラ、蒸気タービンなどの複数の製品を含んでも良いし、これらの各製品に対応しても良い。つまり、生産対象物Tは、生産対象物Tを購入する顧客のオーダーに対応していても良い。
【0036】
また、各工程情報は、設計、製造、調達、サービスなどとなる各工程についての、生産スケジューラ8による生産スケジューリングに必要な情報を含む。具体的には、図2に示すように、工程情報は、工程のリードタイムや、その工程を実施する部門情報(部門ID)、他の工程との工程順序(前後関係)を示す情報(不図示)を有しても良い。また、外部で実施する外作工程や、製造する部品などを外部から購入する場合には、発注から受け入れまでの期間など外作工程を実施するのに必要な期間がリードタイムとなる。この外作工程は、内部の生産に用いるリソース(費用以外)を費やさずに実施することが可能な工程であり、外作工程の成果物に対しては、後述するように購入代金の支払いが必要となる。なお、詳細は省略するが、部門IDには、部門の情報(人員や機械の情報)が関係付けられる。また、不図示の工程順序を示す情報により、内作工程の個々の工程の順序や、工程同士の並列実行の可否、外作工程の成果物を用いてある内作工程を実施する場合などには外作工程の完了を待って内作工程を行う必要があるなどといった、各工程を時間軸上に配置する際の制約が得られる。
【0037】
図2に示す実施形態では、各工程情報は、製品および工程の組に対応している。これは、型式が異なるなど、異なる種類の生産対象物Tの生産に互いに同様の工程(例えば塗装工程など)が存在したとしも、生産対象物Tに違いがあれば費用も異なる場合があるため、生産対象物Tの種類ごとの工程に対して費用情報Fcを関連付けている。これによって、生産対象物Tが特定されれば、その生産に要する各工程の費用情報Fcを財務情報テーブルから得ることが可能となる。
【0038】
また、内部(社内)で実施する設計や加工などの内作工程、および外部(社外)で実施する外作工程を別々のテーブルで管理しており、工程IDで関係付けている。外作工程テーブルT2には、リードタイムの他、内作工程テーブルT1の部門IDの代わりに取引先を特定する取引先IDフィールドを有している。また、外作工程の成果物(部品や、加工後の部材など)の単価(購入品単価)と、成果物の数量(購入品数量)、通貨コードの情報フィールドを有しているが、後述する費用情報Fcである。
【0039】
このような複数の工程情報を含む基準工程情報Bは、幾つかの実施形態では、製品の生産で標準的に要する複数の工程を、製品の種類毎(型式毎など)に定義した工程情報(標準工程情報)であっても良い。このようにすれば、製品が特定されれば、製品の種類に応じて予め定められている標準工程情報が特定されるので、生産対象物Tに対応した基準工程情報Bが容易に得られる。例えば、生産対象物Tが複数の製品で構成されている場合には、各製品の基準工程情報Bを組合せることで、その生産対象物Tの基準工程情報Bが容易に得られる。なお、図1に示す実施形態では、基準工程情報Bは、基準工程情報データベース22で管理されている。
【0040】
他方、上記の費用情報Fcは、任意の生産対象物Tの各工程で要する費用を求めるための情報である。より詳細には、費用情報Fcは、製造コストに計上される人件費(設計、製造など)や部門費、購入費、素材費(材料費)などの費用を求めるための情報を含む。具体的には、図2に示すように、費用情報Fcは、各工程を実行するリソース種別(人、設備の種類など)と、そのリソース種別を用いた場合の工数(リソース種別×時間(H)など)を含んでも良い(図2の工程工数テーブルT3参照)。工数と、リソース種別の工数当たりの単価(レート)とを乗算するなどすれば、人件費や部門費の算出が可能である。なお、人件費や部門費そのものを登録しても良い。また、各工程において、使用する材料(素材)の購入や、一部の材料の加工を外部に委託し、その成果物を購入する場合には、費用情報Fcは、購入品の単価、購入数量を含んでも良い(図2の外作工程テーブルT2参照)。また、費用情報Fcに通貨の情報を含めることで、為替を考慮したより正確な費用の算出が可能となる(図2の外作工程テーブルT2参照)。よって、各工程に関連づけられた工数に基づく費用と、購入金額(単価×数量)とを合計することにより、工程ごとの総費用が求められる。
【0041】
図2に示す実施形態では、内作工程テーブルT1、および、財務情報Fを管理する工程工数テーブルT3の各々の主キーは、生産対象物Tの種類および工程の組であり、この主キーによって両テーブルが関連付けられている。また、外作工程については、工程情報と財務情報Fとを同じテーブルで管理しているが、例えば、購入品ID、購入品単価、購入品数量、通貨コード、取引先IDなど、財務情報Fを抜き出して、別のテーブルで管理しても良い。この場合、この別のテーブルは、外作工程テーブルT2に対して、購入品IDで関連付ける。
【0042】
生産計画取得部31は、経営指標Iの評価期間において生産される生産対象物T(1以上の製品)の基準工程情報Bに基づいて、生産対象物Tの生産スケジューリングを実行することで得られる生産計画Pを取得するよう構成された機能部である。評価期間は所望の期間で良く、例えば1年以上の期間であっても良い。図1に示す実施形態では、生産スケジューラ8で生産スケジューリングを実行しており、その結果得られる生産計画Pが入力されることで、生産計画取得部31は生産計画Pを取得するようになっている。
【0043】
経営指標算出部4は、上述した生産計画取得部31によって取得された生産計画Pに基づいて、生産対象物Tの基準工程情報Bに含まれる複数の工程についての財務情報Fを、データベース2から取得し、評価期間における経営指標Iを算出するよう構成された機能部である。換言すれば、経営指標算出部4は、生産計画Pおよび財務情報Fに基づいて、経営シミュレーションを実行する。
【0044】
生産計画Pにおいては、リソース制約を満たした状態で、評価期間で生産される生産対象物T(1以上)の生産に要する複数の工程が時間軸上に並べられている。よって、管理余地がないような外部環境条件(為替や需要変動など)を考慮して、各工程で要する費用情報Fcを時間軸に沿って、年、四半期、月、日などの単位期間ごとに積み上げる(合計する)ことで、評価期間における単位期間ごとの費用や総費用などの費用予測を求めることができる。よって、このように求めた費用予測に基づいて、経営指標Iを算出することが可能となる。例えば、粗利であれば、各生産対象物Tの販売額に基づいて売上を算出すると共に、費用予測から人件費を差し引いた売上原価を算出する。そして、売上から売上原価を差し引くことで粗利を算出できる。キャッシュフローについても、時間軸に沿った費用予測に基づいて求めることが可能となる。
【0045】
よって、経営目標達成に必要な改善策(コストダウン、リードタイム短縮等)を検討・評価する担当者は、様々な外部環境(為替や需要変動など)の下で、リソース制約を考慮した実現性の高い生産計画Pに基づいて、後述するように、様々な施策による財務改善効果を試算することが可能となる。図1図3に示す実施形態では、経営指標算出部4は、ディスプレイ91に接続されており、複数の経営指標Iの年度別(単位期間別)の値、および、それらの経営指標Iの単位期間別の推移(図4)を表示させるようになっている。
【0046】
上記の構成によれば、生産対象物Tの基準工程情報Bには、その基準工程情報Bが有する設計、製造などの各工程に対して財務情報Fが関連付けられており、複数の生産対象物の生産を各々の基準工程情報Bに基づいて生産スケジューリングを実行した結果得られる生産計画Pに基づいて、例えば粗利、キャッシュフロー、CCC(Cash Conversion Cycle)、人員数など経営指標Iを算出する。生産スケジューリングにより生成された生産計画Pは、その生産に携わる人や機械などによるリソースの制約の下で生成されたものである。また、生産計画Pでは、工程毎の開始および終了が定められている。したがって、生産計画Pおよび工程毎の財務情報Fに基づいて経営指標Iを算出することにより、リソース制約を満たす現実的な生産計画Pに対応する経営指標Iを、より精度良く求めることができる。
【0047】
幾つかの実施形態では、図1に示すように、上述した経営指標評価装置1は、上述した経営指標Iの評価期間における外部環境条件をそれぞれ定義した複数のシナリオS(図4参照)を取得するよう構成されたシナリオ取得部32を、さらに備えても良い。そして、上述した経営指標算出部4は、複数のシナリオSの各々で定義された外部環境条件に基づいて、複数のシナリオSの各々についての経営指標Iを算出する。
【0048】
図4は、本発明の一実施形態に係るシナリオSを示す図である。外部環境条件は、自社及び取引先では変更できない、管理余地がないような環境条件である。例えば、外部環境条件は、為替(円/ドルなど)や、材料価格、売価、生産対象物T毎の受注数など少なくとも1つの指標の想定値を含んでも良い。また、シナリオSで定義される外部環境条件は、評価期間全体に対するものであっても良いし、評価期間における単位期間毎の推移であっても良い。
【0049】
図4に示す実施形態では、外部環境条件は、需要、為替、素材費(材料費)の条件を含んでいる。そして、少なくとも1つの条件が相互に異なる複数のシナリオSを用意し、その各々について、経営指標Iを算出するようになっている。なお、シナリオSは、経営指標評価装置1の記憶装置mに記憶されている(図1参照)。
【0050】
上記の構成によれば、例えば評価期間において想定される為替や、材料価格、売価、生産対象物毎の受注数などの条件(外部環境条件)を定義したシナリオSを、想定される外部環境条件を複数用意し、各シナリオSに応じた経営指標Iをそれぞれ算出する。これによって、複数のシナリオSの各々に応じた経営指標Iを算出することができる。
ただし、本実施形態に本発明は限定されず、他の幾つかの実施形態では、シナリオ取得部32は1以上のシナリオSを取得しても良い。
【0051】
次に、経営目標達成に必要な施策(改善策)の評価に関する実施形態について、図5図7を用いて説明する。
図5は、本発明の一実施形態に係る施策情報Mを示す図である。図6は、本発明の一実施形態に係る複数の施策の実施の有無に応じた組合せCを示す図である。また、図7は、本発明の一実施形態に係る感度解析の結果を示す図である。
【0052】
従来から、生産に関与者などから提案される改善策を実施することで、リードタイムの短縮や費用の削減などが行われている。例えば、ある施策によって機械の性能が向上されれば、その機械を用いる工程での生産性が向上し、リードタイムの短縮効果が得られる。さらに、工程の実施に携わる人員数の削減や、より少ない材料による製造が可能になるなど、工程の費用削減効果も得られる場合もある。また、自社で実施していた工程の外注や工程で製造する部品などを外部から購入するようにすれば、外注費や購入費が増大する一方で、その分のリソースを他の工程に分配することが可能になるなど、生産計画Pの全体のリードタイムの短縮効果が得られる場合がある。また、取引先との交渉などを通じて支払いのタイミングを変更できれば、生産計画Pへの影響はないものの、キャッシュフローなどの経営指標Iの改善効果が得られる場合がある。
【0053】
このような施策の実施後の生産計画Pの立案にあたっては、施策の効果を考慮して行う必要がある。具体的には、基準工程情報Bや財務情報Fの属性情報を、施策の実施後の状況に合わせて修正することになる。つまり、実施した施策は、それに応じて基準工程情報Bや財務情報Fを修正することにより、生産スケジューリングや経営シミュレーションに反映可能である。よって、施策による期待効果を定義し、この期待効果に応じて施策が影響する属性情報を修正した上で生産計画Pの生成および経営指標Iの算出を行うことで、施策が経営指標Iへ与える期待効果を評価する。
【0054】
具体的には、幾つかの実施形態では、図1に示すように、経営指標評価装置1は、経営指標Iの算出結果を変化させることが可能な、基準工程情報Bまたは財務情報Fに含まれる特定の属性情報の登録値(データベースの登録値)を調整するための調整情報Mt(図5参照)をそれぞれ含む複数の施策情報Mについて、各々の施策情報Mに対応する施策の実施の有無に基づく全ての組合せのうちの少なくとも一部(図6参照)を取得する施策組合せ取得部51と、この施策組合せ取得部51によって取得された複数の組合せCの各々について、実施が有りの施策に対応する施策情報Mの調整情報Mtに基づいて、基準工程情報Bまたは財務情報Fにおける属性情報の値を修正する施策反映部52と、をさらに備えても良い。この場合、経営指標算出部4は、複数の組合せCの各々に応じて生成された生産計画Pおよび財務情報Fに基づいて、経営指標Iを算出する。例えば、上記の特定の属性情報は、自社又は取引先において調整可能な属性情報である。例えば基準工程情報Bが有する工程毎のリードタイムや人員、工数、購入費、支払い条件(後述)などであっても良い。
【0055】
すなわち、本実施形態では、図5に示すように、各施策を、施策によって調整される属性情報と、属性情報を調整するための調整情報Mtとを有する施策情報Mとして管理する。また、実施する1以上の施策を決定した後、決定した施策情報M(調整情報Mt)に基づいて属性情報を修正した上で、上述した生産スケジューリングや経営シミュレーションを実行する。こうして得られた生産計画Pや経営指標Iは、施策の影響が反映されたものであり、各施策の影響が定量化されたものである。
【0056】
図5に示す実施形態では、施策情報Mは、施策の識別子(施策ID)と、影響を与える属性情報の種類(施策分類)、施策の実施による期待効果としての調整情報Mt、および施策による影響を受ける工程(適用工程)の情報フィールドを有している。さらに、施策情報Mは、その施策による生産が可能となる時期を示す適用開始時期(年月日など)、その施策のための投資額、投資時期を含めていることで、経営指標Iの算出精度の向上を図っている。例えば、ある工作機械の追加を示すAで特定される施策によって、A工程、B工程のリードタイムがα%短縮する場合、施策情報Mの1レコードには、施策IDフィールドがA、属性情報の種類フィールドがリードタイム、調整情報フィールドがα%、適用工程フィールドがA工程およびB工程が記憶される。
【0057】
また、複数の施策が存在する場合、複数の施策の実施の有無に応じた全ての組合せCの数は、施策の数をnとすると2となるが、そのうちの全ての組合せCを対象に、それぞれ経営指標Iを算出しても良いし、少なくとも一部(1以上)の組合せC(図6参照)を対象に、その各々について経営指標Iを算出しても良い。このように施策の実施の有無に応じた複数の組合せCの各々についての経営指標Iの算出結果を得ることで、経営指標Iを改善可能ないずれの施策を実施するかの判断の容易化を図ることが可能となる。
【0058】
なお、複数の組合せCについて経営指標Iをそれぞれ算出すると、その組合せCと同数の経営指標Iが得有れるが、各組合せCに応じた経営指標Iをリスト表示などにより、それぞれ表示しても良い。その際、いずれの施策も行わない現状の場合を一緒に表示することで、現状と、施策実施時とを対比可能に表示しても良い。また、この対比可能に表示するにあたっては、各組合せCについて経営指標Iの算出値を表示するのではなく、現状に対してどう変わったかが把握可能に表示しても良い。組合せC毎に算出した粗利、売上、CCC、キャッシュフロー、人員などの個々の経営指標Iから、それぞれ、現状のものを差し引いたものを、組合せC毎にリスト表示しても良い。例えば、各軸を個々の経営指標Iに対応させたレーダーチャートに、各組合せCの現状に対する値をマッピングしても良い。これによって、各組合せCによる改善効果を容易に把握することができ、組合せCの選択の容易化を図ることが可能となる。
【0059】
上記の構成によれば、経営指標Iや、工程ごとのリードタイムなどの管理指標を改善する改善策などとなる複数の施策が有った場合に、各施策の実施によって変化される基準工程情報Bまたは財務情報Fに含まれる属性情報がどのように変化されるのかを定義した施策情報Mを導入する。これと共に、複数の施策の各々の実施の有無に応じた複数の組合せCを取得し、各組合せCにおいて実施が有りとされた1以上の施策の施策情報M(調整情報Mt)に基づいて、基準工程情報Bまたは財務情報Fに含まれる属性情報を修正した上で、各組合せCに応じた経営指標Iを算出する。これによって、各施策を実施した場合の経営指標Iを求めることができ、各施策の実施の有無に応じた予測効果を定量的に求めることができる。したがって、経営指標Iの目標を達成するのに効果的な、実現可能な改善策を求めることができる。また、このようにして実施が判断された施策は、具体的な施策内容に対応しているので、現場レベルで行う施策の適用のための作業も明確になると共に、実施の効果が適切に反映された、より精度の高い経営指標Iを求めることができる。
【0060】
ただし、上述した各施策の実施の有無に基づく組合せCの数は、施策の数(n)に応じてべき乗で増えるため、全ての組合せCについてそれぞれ経営指標Iを算出するのは、施策の数に応じて多大な計算時間を要する。そこで、全ての組合せCのうち、どの組合せについて経営指標Iの算出を行うかを、パラメータスタディ(感度解析)を通して決定しても良い。
【0061】
具体的には、幾つかの実施形態では、図1に示すように、経営指標評価装置1は、複数の属性情報のうちから、経営指標Iの算出値への寄与が相対的に高い少なくとも1つの属性情報のカテゴリを判別するよう構成された感度解析部53を、さらに備えても良い。この場合、施策組合せ取得部51は、全ての組合せのうち、判別されたカテゴリに分類される属性情報を調整する施策を含む一部の組合せCを取得する。例えば、図7に示すように、感度解析(パラメータスタディ)の実行によって、例えば、工程毎のリードタイムなど、生産全体のリードタイムに影響を与えるカテゴリ、部門別の人員数など生産のいずれかの工程に従事する人員数に影響を与えるカテゴリ、生産全体の工程のうち内作工程を割合(内作率)や外作率(=1-内作率)に影響を与えるカテゴリのうちのいずれが経営指標Iの算出値への感度が高いかを判別しても良い。
【0062】
具体的には、感度解析は、施策情報Mの任意の1以上の施策について、カテゴリごとに、調整情報Mtを任意の値の一時的な修正と、経営指標Iの算出とを順番に繰り返すことで実行しても良い。これによって、図7に示すように、カテゴリ別の経営指標Iに対する感度が求められるので、感度の高いカテゴリを判別することが可能となる。例えば、図7のような結果が得られた場合には、リードタイムや人員の変化が粗利(経営指標I)への感度が高いと判断できる。よって、全ての組合せCのうちから、リードタイムあるいは人員に関する属性情報を変化させる期待効果が得られる施策の実施を有りとしている組合せCを抽出し、抽出した1以上の組合せCについて、経営指標Iを算出しても良い。この際、全ての抽出した組合せCについて経営指標Iを算出しなくても良く、経営指標Iの目標値が達成できる組合せCの探索を適切な刻み幅でできるような、一部の組合せCのみに対して行っても良い。これによって、経営指標Iの目標値を達成可能な組合せCの導出の迅速化を図ることが可能となる。なお、感度解析の際には、直交表を用いても良く、感度解析を全ての組合せCのうちから選択した組合せCによって効率良い感度解析が可能となる。
【0063】
上記の構成によれば、属性情報を、例えばリードタイムに影響を与える属性、人員数に影響を与える属性、内作率に影響を与える属性などカテゴリに分類した場合に、経営指標への影響が高いカテゴリを判別すると共に、経営指標を算出する対象となる組合せを、判別したカテゴリに分類される属性情報を調整する施策の実施が有りとされる組合せに絞る。これによって、経営指標Iの算出を、複数の施策の実施の有無に応じた全ての組合せを対象とすることなく、経営指標の調整に効果的な組合せに絞って実施することができ、最適な改善策をより迅速に求めることができる。
【0064】
次に、上述した財務情報Fについての幾つかの実施形態について、説明する。
幾つかの実施形態では、図2に示すように、上述した財務情報Fは、上述した生産対象物Tの生産に要する複数の工程の各々についての入金時期Crまたは出金時期Cdの少なくとも一方を含む入出金条件Faをさらに含んでも良い。この場合、経営指標算出部4は、入出金に関する経営指標Iについては、上記の入出金条件Faに従って算出する。入出金に関する経営指標Iは、例えばキャッシュフローや、CCCなどとなる。
【0065】
より詳細には、入金時期Crや出金時期Cdは、入出金発生基準と、入出金発生基準から実際に支払うまでの猶予期間である支払サイトとによって規定しても良い。例えば、入出金発生基準は、工程の開始あるいは完了であっても良く、入金サイトが+β月の場合には、工程の開始あるいは完了から+β月経過後までに支払いが生じるものとして、経営指標Iが算出される。図2に示す実施形態では、入出金条件Faは、取引先テーブルT4で管理されており、入金または出金に関するいずれか一方の入出金発生基準および支払いサイトが必須項目となっている。なお、入金や出金は、例えば+β月経過後に総額のx割、+β月に総額のx割、+β月経過後に残りを入金あるいは出金する場合など、2つ以上に分割して行われる場合があり、この場合に対応するために、入金時期Crや出金時期Cdは2以上が登録可能になっていても良い。
【0066】
上記の構成によれば、財務情報Fは工程毎の入出金条件Faを含んでおり、例えばキャッシュフローなどの経営指標Iを、この入出金条件Faに基づいて算出する。生産対象物Tの構成部品を外部から調達する場合の取引先に支払う費用の出金時期Cdや、生産対象物Tの購入先から支払われる売価の入金時期Crは、取引先や購入先に応じて異なっている場合がある。よって、入出金条件Faが工程に対して関連付けられていることにより、各工程の実施時期が定められた生産計画Pに基づいて、入金の時期、出金の時期をもとめることができる。したがって、入出金の時期に基づいてキャッシュを算出することで、キャッシュフローやCCCなどの入出金に関する経営指標Iを、より精度良く求めることができる。
【0067】
次に、上述した生産計画Pの生成についての幾つかの実施形態について、図8を用いて説明する。図8は、本発明の一実施形態に係る生産計画取得部31を概略的に示す図である。また、図9は、本発明の一実施形態に係るコスト評価方法を説明するための図である。
【0068】
上述した生産スケジューラ8によって生成された生産計画Pにおいて納期遅延が生じている場合、生産対象物Tの納入先に対して、その納期遅延に対するペナルティコスト(以下、遅延コスト)の支払いが生じる可能性がある。納期遅延を生じさせないためには、当初の計画よりも早い段階での生産着手や、何らかの方法により同時に使用可能なリソースを増やすことが考えらえるが、このような対策の実施には追加の費用(以下、追加コスト)が通常必要となる。そこで、遅延コストおよび追加コストの和(トータルコスト)を下げることが可能な対策案を導出する。
【0069】
具体的には、幾つかの実施形態では、上述した生産計画取得部31は、生産対象物Tの納期遅延が生じた生産計画P(以下、第1生産計画Pa)における納期遅延に起因した遅延コストと、第1生産計画Paに比べて生産対象物Tの納期を前倒しした生産計画P(以下、第2生産計画Pb)における遅延コスト及び納期の前倒しに要した追加コストの和との比較結果に基づいて、第1生産計画Paおよび第2生産計画Pbの中から生産計画Pを選択することにより、1つの生産計画Pを取得しても良い。
【0070】
具体的には、遅延コストは、生産対象物T毎の納期遅延の日数に、生産対象物T毎の単位期間(1日など)あたりのペナルティコストをそれぞれ乗算する評価関数を用いて算出しても良い。
他方、追加コストは、第1生産計画Paに対する生産対象物Tの生産開始時期の前倒し、第1生産計画Paに対する外注率(外作工程率)の増加、または、第1生産計画Paに対して生産対象物Tの生産に携わる労働者の時間外労働の増加の少なくとも一つの施策を実施した場合のコストを算出することが可能な評価関数を用いて算出しても良い。
【0071】
より具体的には、図9に示すように、上記の生産開始時期を前倒しした場合の追加コストは、早期着手による前倒し日数に応じた仕掛金に関するコストを算出する評価関数により算出しても良い。また、上記の他の施策については、基準工程情報Bや財務情報Fを修正した上で第2生産計画Pbを算出し、その結果に基づいて算出しても良い。例えば、外注率の増加による追加コストは、外注を使用した場合のコストから、その工程を内作で実施した場合のコストを減算する評価関数により算出しても良い。時間外労働(残業や休日出勤)の増加による追加コストは、時間外労働の合計時間に時間外労働時の単価を乗算する評価関数により算出しても良い。
【0072】
そして、これらの評価関数の合計コスト(金額)を算出し、その算出結果が最小や目標値以下などとなる場合の納期遅延期間、早期着手期間、外注する工数、時間外労働の工数を、最適化計算で探索するなどして求め、この結果に基づいて納期遅延に対する対策を実施するか、あるいは、いずれの施策をどの程度実施するかを決定しても良い。図9に示す実施形態では、各施策を単独で実施した場合よりも、複数の施策を組合せた場合の合計コストが小さくなっており、この結果が導出された、複数の施策が反映された生産計画Pを採用するのが適切であるとの結果が得られたことになる。これによって、第2生産計画Pbのトータルコストが第1生産計画Paのトータルコストよりも低い場合において、実際に実施すべき施策(短縮期間、前倒し期間、外注の有無、残業や休日出勤の増大費)を適切に選択することが可能となる。
【0073】
図8に示す実施形態では、生産計画取得部31は、第1生産計画Paの納期遅延が生じている場合に、遅延コスト(第1計画コスト)を算出する第1計画コスト算出部61と、この場合に上記の第2生産計画Pbを取得し、第2生産計画Pbでの遅延コストおよび追加コストの和(第2計画コスト)を算出する第2計画コスト算出部62と、第1生産計画Paのコスト(遅延コスト)および第2生産計画Pbのコスト(トータルコスト)に基づいて、コストが最も小さい方の生産計画Pを選択する決定部63と、を有している。なお、第2生産計画Pbは、基準工程情報Bまたは財務情報Fの少なくとも一方を適用する施策の内容に応じ修正し得るが、1以上の第2生産計画Pb(図9では少なくとも4つ)について第2計画コストおよび、決定部63による処理を行うことで、最適解を得る。
【0074】
上記の構成によれば、納期遅延が生じた生産計画P(第1生産計画Pa)と、上記の対応策によって第1生産計画Paに比べて生産対象物Tの納期を前倒しした生産計画P(第2生産計画Pb)との各々についての遅延コストおよぶ追加コストの和の比較に基づいて、いずれかの生産計画を選択する。これによって、トータルコストがより小さい生産計画Pを選択することができる。
【0075】
以下、上述した経営指標評価装置1が実行する処理に対応する経営指標評価方法について、図10図11を用いて説明する。図10は、本発明の一実施形態に係る経営指標評価方法を示す図である。また、図11は、本発明の一実施形態に係る複数の生産計画Pを取得するまでのフローを示す図である。
【0076】
図10に示すように、経営指標評価方法は、生産計画取得ステップ(S1)と、経営指標算出ステップ(S3)と、を備える。図10に示す実施形態では、経営指標評価方法は、シナリオ取得ステップ(S2)をさらに備えている。
経営指標評価方法について、図10のステップ順に説明する。
【0077】
図10のステップS1において、生産計画取得ステップを実行する。生産計画取得ステップ(S1)は、経営指標Iの評価期間において生産される生産対象物T(1以上の製品)の基準工程情報Bに基づいて、生産対象物Tの生産スケジューリングを実行することで得られる生産計画Pを取得するステップである。この生産計画取得ステップ(S1)は、既に説明した生産計画取得部31が実行する処理内容と同様であるため、詳細は省略する。
【0078】
図10のステップS2において、シナリオ取得ステップを実行する。シナリオ取得ステップ(S2)は、経営指標Iの評価期間における1以上の複数のシナリオSを取得するステップである。このシナリオ取得ステップ(S2)は、既に説明したシナリオ取得部32が実行する処理内容と同様であるため、詳細は省略する。
【0079】
図10のステップS3において、経営指標算出ステップを実行する。経営指標算出ステップ(S3)は、上述した生産計画取得ステップ(S1)によって取得された生産計画Pに基づいて、生産対象物Tの基準工程情報Bに含まれる複数の工程についての財務情報Fを、データベース2から取得し、評価期間における経営指標Iを算出するステップである。この経営指標算出ステップ(S3)は、既に説明した経営指標算出部4が実行する処理内容と同様であるため、詳細は省略する。
【0080】
幾つかの実施形態では、上述した生産計画取得ステップ(S1)は、複数の生産計画Pを取得しても良い。この場合、図11に示すように、複数の生産計画Pについて、それぞれ、上述したステップS1~S3(図11のステップS07)を実行する。
【0081】
具体的には、幾つかの実施形態では、図11に示すように、経営指標評価方法は、上述した調整情報Mtをそれぞれ含む複数の施策情報Mについて、各々の施策情報Mに対応する施策の実施の有無に基づく全ての組合せのうちの少なくとも一部(図6参照)を取得する施策組合せ取得ステップ(S03)と、この施策組合せ取得ステップによって取得された複数の組合せCの各々について、実施が有りの施策に対応する施策情報Mの調整情報Mtに基づいて、基準工程情報Bまたは財務情報Fにおける属性情報の値を修正する施策反映ステップ(S04)と、をさらに備えても良い。この場合、経営指標算出ステップ(S3)では、複数の組合せCの各々に応じて生成された生産計画Pおよび財務情報Fに基づいて、経営指標Iを算出する。この施策組合せ取得ステップ、施策反映ステップは、それぞれ、既に説明した施策組合せ取得部51、施策反映部52が実行する処理内容と同様であるため、詳細は省略する。
【0082】
また、幾つかの実施形態では、図11に示すように、経営指標評価方法は、複数の属性情報のうちから、経営指標Iの算出値への寄与が相対的に高い少なくとも1つの属性情報のカテゴリを判別するよう構成された感度解析ステップ(S01~S02)を、さらに備えても良い。この場合、上記の施策組合せ取得ステップは、全ての組合せのうち、感度解析ステップによって判別されたカテゴリに分類される属性情報を調整する施策を含む一部の組合せCを取得する。この感度解析ステップは、既に説明した感度解析部53が実行する処理内容と同様であるため、詳細は省略する。
【0083】
図11に示す実施形態では、ステップS01~S02において感度解析ステップを実行する。すなわち、ステップS01において、複数の施策の実施の有無に基づく全ての組合せを導出し、ステップS02において上述した感度解析を実施する。ステップS03において施策組合せ取得ステップを実行し、感度解析の結果に基づいて、全ての組合せのうちの一部の組合せCを取得する。ステップS04において施策反映ステップを実行し、取得した複数の組合せCについて、それぞれ基準工程情報Bおよび財務情報Fを修正した後、ステップS05において、取得した複数の組合せCについて、それぞれ生産スケジューリングを実行する。そして、ステップS05において、上述したように得えられた複数の生産計画Pについて、それぞれ、各生産計画Pに対応して修正された財務情報Fに基づいて、経営シミュレーションを実行(図10)する。なお、施策組合せ取得ステップ(S03)により複数の組合せCを取得した後は、組合せCに応じた施策反映ステップ(S04)、生産スケジューリングの実行および経営シミュレーションの実行をセットとして、複数の組合せCの全てについて実行するまで繰り返しても良い。
【0084】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【符号の説明】
【0085】
1 経営指標評価装置
m 記憶装置
2 データベース(財務情報データベース)
22 基準工程情報データベース
31 生産計画取得部
32 シナリオ取得部
4 経営指標算出部
51 施策組合せ取得部
52 施策反映部
53 感度解析部
61 第1計画コスト算出部
62 第2計画コスト算出部
63 決定部
8 生産スケジューラ
9 経営指標評価システム
91 ディスプレイ

I 経営指標
P 生産計画
Pa 第1生産計画
Pb 第2生産計画
B 基準工程情報
F 財務情報
Fc 費用情報
Fa 入出金条件
Cd 出金時期
Cr 入金時期
S シナリオ
M 施策情報
Mt 調整情報
C 組合せ
T 生産対象物
T1 内作工程テーブル
T2 外作工程テーブル
T3 工程工数テーブル
T4 取引先テーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11