(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】漏水対策装置
(51)【国際特許分類】
F16J 15/3268 20160101AFI20240528BHJP
F16J 15/18 20060101ALI20240528BHJP
F16K 41/04 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
F16J15/3268
F16J15/18 A
F16K41/04
(21)【出願番号】P 2019079291
(22)【出願日】2019-04-18
【審査請求日】2022-03-24
【審判番号】
【審判請求日】2023-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】野田 広明
【合議体】
【審判長】平城 俊雅
【審判官】中屋 裕一郎
【審判官】尾崎 和寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-88138(JP,A)
【文献】特開2008-25696(JP,A)
【文献】特開2004-286162(JP,A)
【文献】特開2019-39467(JP,A)
【文献】特開2018-9671(JP,A)
【文献】国際公開第2015/190365(WO,A1)
【文献】実開昭59-125652(JP,U)
【文献】実開昭58-130178(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 1/00 - 11/08
F16J 15/16 - 15/32
F16J 15/324 - 15/3296
F16J 15/46 - 15/53
F16K 39/00 - 51/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンバルブにより開閉される水路と当該ピストンバルブのメンテナンスをおこなうバルブ室とを隔絶する隔絶部材より前記バルブ室側であって、前記隔絶部材を貫通する前記ピストンバルブのピストン軸の外周面に沿って環状に配置される付加パッキンと、
前記ピストン軸の軸心方向に沿って前記付加パッキンを間にして前記隔絶部材とは反対側に配置され、前記ピストン軸の外周面と前記隔絶部材との境界位置に前記付加パッキンを位置づける止水具と、
前記ピストン軸の軸心方向に沿って前記止水具を間にして前記付加パッキンとは反対側に配置され、前記ピストン軸の外周面に沿って環状に配置されるグリスコットンと、
前記ピストン軸の軸心方向に沿って前記グリスコットンを間にして前記止水具とは反対側に配置され、前記ピストン軸の外周面と前記止水具との境界位置に前記グリスコットンを位置づけるグリスコットン固定具と、
前記グリスコットン固定具を前記止水具に固定する固定具固定部材と、からなり、前記隔絶部材に対する前記止水具の位置を固定する止水具固定部材と、
を備え、
前記止水具は、組み合わされることによって前記ピストン軸の外径寸法と同等の内径寸法の開口を形成する複数の止水パーツによって構成され、前記隔絶部材側ほど広がるように傾斜するテーパー部を備え、当該テーパー部を鉛直方向下側に位置づけた状態で取り付け、
前記グリスコットン固定具は、組み合わされることによって前記ピストン軸の外径寸法と同等の内径寸法の開口を形成する複数の固定パーツによって構成され、当該固定パーツは、それぞれ、前記ピストン軸の外周の曲率に応じた曲率で内側に凹む凹形状に湾曲し、半円形状をなす円弧部を備え、前記円弧部を連続させることによって前記開口を形成し
、一方の前記固定パーツを前記固定パーツどうしの対向方向に平行に貫通し、他方の固定パーツに螺合される漏油防止ボルト
によって互いに固定され、
前記漏油防止ボルトは、前記ピストン軸を間にして両側に設けられ、相反する方向から前記固定パーツに螺合されることを特徴とする漏水対策装置。
【請求項2】
ピストンバルブにより開閉される水路と当該ピストンバルブのメンテナンスをおこなうバルブ室とを隔絶する隔絶部材より前記バルブ室側であって、前記隔絶部材を貫通する前記ピストンバルブのピストン軸の外周面に沿って環状に配置される付加パッキンと、
前記ピストン軸の軸心方向に沿って前記付加パッキンを間にして前記隔絶部材とは反対側に配置され、前記ピストン軸の外周面と前記隔絶部材との境界位置に前記付加パッキンを位置づける止水具と、
前記ピストン軸の軸心方向に沿って前記止水具を間にして前記付加パッキンとは反対側に配置され、前記ピストン軸の外周面に沿って環状に配置されるグリスコットンと、
前記ピストン軸の軸心方向に沿って前記グリスコットンを間にして前記止水具とは反対側に配置され、前記ピストン軸の外周面と前記止水具との境界位置に前記グリスコットンを位置づけるグリスコットン固定具と、
前記グリスコットン固定具を前記止水具に固定する固定具固定部材と、からなり、前記隔絶部材に対する前記止水具の位置を固定する止水具固定部材と、
を備え、
前記止水具は、組み合わされることによって前記ピストン軸の外径寸法と同等の内径寸法の開口を形成する複数の止水パーツによって構成され、前記隔絶部材側ほど広がるように傾斜するテーパー部を備え、当該テーパー部を鉛直方向下側に位置づけた状態で取り付け、
前記グリスコットン固定具は、組み合わされることによって前記ピストン軸の外径寸法と同等の内径寸法の開口を形成する複数の固定パーツによって構成され、当該固定パーツは、それぞれ、前記ピストン軸の外周の曲率に応じた曲率で内側に凹む凹形状に湾曲し、半円形状をなす円弧部を備え、前記円弧部を連続させることによって前記開口を形成し
、一方の前記固定パーツを前記固定パーツどうしの対向方向に平行に貫通し、他方の固定パーツに螺合される漏油防止ボルト
によって互いに固定され、
前記漏油防止ボルトは、前記ピストン軸を間にして両側に設けられ、同じ方向から前記固定パーツに螺合されることを特徴とする漏水対策装置。
【請求項3】
前記止水パーツは、それぞれ、前記ピストン軸の外周の曲率に応じた曲率で内側に凹む凹形状に湾曲する円弧部を備え、前記円弧部を連続させることによって前記開口を形成することを特徴とする請求項1または2に記載の漏水対策装置。
【請求項4】
前記止水パーツの円弧部は、それぞれ、前記ピストン軸の外周の半径以下の円弧をなすことを特徴とする請求項3に記載の漏水対策装置。
【請求項5】
前記止水パーツの円弧部は、それぞれ、半円形状をなすことを特徴とする請求項4に記載の漏水対策装置。
【請求項6】
前記止水具は、前記グリスコットン固定具側に設けられて、前記開口と同心円上に沿って当該隔絶部材から離間する方向に突出するコットン保持用リブを備えたことを特徴とする請求項1~5のいずれか一つに記載の漏水対策装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水路を開閉するピストンバルブからの漏水を防止する漏水対策装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水力発電所においては、ダムの底部に排水用のバルブ(底部排水バルブ)が設けられている。底部排水バルブは、たとえば、弁体を上下動させて流路を開閉するピストンバルブによって実現される。ピストンバルブは、ケーシング内に収容される弁体が先端に設けられたピストン軸を備え、当該ピストン軸を動作させることによって弁体を上下動させる。ピストンバルブは、耐久性が高く、長期間の使用に耐えることができる。
【0003】
底部排水バルブを実現するピストンバルブにおけるケーシングは、各種の設備の点検などに際して作業員が立ち入る底部排水バルブ室の床下などに配置される。底部排水バルブを実現するピストンバルブにおけるピストン軸は、床下から床板を貫通して底部排水バルブ室に突出するように配置される。ピストン軸と床板と間には、水路から底部排水バルブ室内への漏水を防止するためのUF(Urea Formaldehyde Resin:ユリア樹脂、尿素樹脂)パッキンが設けられている。
【0004】
底部排水バルブ室には、底部排水バルブボンネットカバーが設けられている。作業員は、ピストンバルブの点検などに際し、底部排水バルブ室側から底部排水バルブボンネットカバーを開けて底部排水バルブを開放する。経年にともなってUFパッキンが劣化すると、ピストン軸と床板との境界の隙間を介して、床下から底部排水バルブ室内への漏水を発生させることがある。
【0005】
従来、底部排水バルブ室内への漏水が発生した場合は、UFパッキンを交換する漏水対策をおこなっていた。具体的に、漏水対策においては、底部排水バルブを全閉するとともに、底部排水バルブにかかる水圧を低減するためにダムの水位を低下させる。そして、底部排水バルブをカバーする底部排水バルブボンネットカバーを一時撤去し、UFパッキンを押さえるパッキン押さえを取り外した後に、UFパッキンを取り替える。その後、パッキン押さえを取りつけて、底部排水バルブボンネットカバーを設置することにより、漏水対策をおこなっていた。
【0006】
関連する技術として、具体的には、従来、たとえば、水力機械の主軸の外周部に3段のパッキンを設け、中段パッキン室と上段パッキン室との間に設けられた圧力調整手段を、両パッキン室を連通させるバイパス管と、バイパス管上の減圧弁と、バイパス管から分岐する排水管と、排水管上の逃し弁とによって構成し、中段パッキン室が高圧の場合には中段パッキン室の高圧水を減圧弁を通して上段パッキン室に導き、上段パッキン室が高圧の場合には上段パッキン室の高圧水を逃し弁を通して排水するようにした水力機械の軸封装置に関する技術があった(たとえば、下記特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した従来の技術は、漏水対策に際して、底部排水バルブを全閉するとともにダムの水位を低下させなくてはならず、作業が大がかりになって煩雑であり、作業者にかかる負担が大きいという問題があった。
【0009】
また、上述した従来の技術は、漏水対策に際して、底部排水バルブボンネットカバーを一時撤去し、UFパッキンを押さえるパッキン押さえを取り外した後にUFパッキンを取り替え、その後、パッキン押さえを取りつけて底部排水バルブボンネットカバーを設置するという煩雑な作業をおこなわなくてはならず、作業者にかかる負担が大きいという問題があった。
【0010】
また、上述した従来の技術は、ダムの水位を低下させるために発電を停止しなくてはならず、漏水対策に際して、発電を停止すると、発電機を動作させるための燃料が不要な水力発電を停止した分の電力を、二酸化炭素などの温室効果ガスを排出する火力発電などによって補わなくてはならず、環境負荷が増大したり発電にかかるコストが増大したりするという問題があった。
【0011】
また、上述した特許文献1に記載された従来の技術は、パッキンにより得られるシール効果を高める技術であって、一旦漏水が発生すると、大がかりな作業をともなう漏水対策が必要となり煩雑であって、作業者にかかる負担が大きいという問題があった。
【0012】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、漏水対策にかかる作業者の作業負担の軽減を図ることができる漏水対策装置を提供することを目的とする。
【0013】
また、この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、環境負荷や発電にかかるコストを増大することなく漏水対策を施すことができる漏水対策装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明にかかる漏水対策装置は、ピストンバルブにより開閉される水路と当該ピストンバルブのメンテナンスをおこなうバルブ室とを隔絶する隔絶部材より前記バルブ室側であって、前記隔絶部材を貫通する前記ピストンバルブのピストン軸の外周面に沿って環状に配置される付加パッキンと、前記ピストン軸の軸心方向に沿って前記付加パッキンを間にして前記隔絶部材とは反対側に配置され、前記ピストン軸の外周面と前記隔絶部材との境界位置に前記付加パッキンを位置づける止水具と、前記隔絶部材に対する前記止水具の位置を固定する止水具固定部材と、を備え、前記止水具が、組み合わされることによって前記ピストン軸の外径寸法と同等の内径寸法の開口を形成する複数の止水パーツによって構成されていることを特徴とする。
【0015】
また、この発明にかかる漏水対策装置は、上記の発明において、前記止水パーツが、それぞれ、前記ピストン軸の外周の曲率に応じた曲率で内側に凹む凹形状に湾曲する円弧部を備え、前記円弧部を連続させることによって前記開口を形成することを特徴とする。
【0016】
また、この発明にかかる漏水対策装置は、上記の発明において、前記止水パーツの円弧部が、それぞれ、前記ピストン軸の外周の半径以下の円弧をなすことを特徴とする。
【0017】
また、この発明にかかる漏水対策装置は、上記の発明において、前記止水パーツの円弧部が、それぞれ、半円形状をなすことを特徴とする。
【0018】
また、この発明にかかる漏水対策装置は、上記の発明において、前記止水具が、前記隔絶部材側ほど広がるように傾斜するテーパー部を備えたことを特徴とする。
【0019】
また、この発明にかかる漏水対策装置は、上記の発明において、前記ピストン軸の軸心方向に沿って前記止水具を間にして前記付加パッキンとは反対側に配置され、前記ピストン軸の外周面に沿って環状に配置されるグリスコットンと、前記ピストン軸の軸心方向に沿って前記グリスコットンを間にして前記止水具とは反対側に配置され、前記ピストン軸の外周面と前記止水具との境界位置に前記グリスコットンを位置づけるグリスコットン固定具と、前記グリスコットン固定具を前記止水具に固定する固定具固定部材と、を備えたことを特徴とする。
【0020】
また、この発明にかかる漏水対策装置は、上記の発明において、前記グリスコットン固定具が、組み合わされることによって前記ピストン軸の外径寸法と同等の内径寸法の開口を形成する複数の固定パーツによって構成され、当該固定パーツが、それぞれ、前記ピストン軸の外周の曲率に応じた曲率で内側に凹む凹形状に湾曲し、前記ピストン軸の外周の半径以下の円弧をなす円弧部を備え、前記円弧部を連続させることによって前記開口を形成することを特徴とする。
【0021】
また、この発明にかかる漏水対策装置は、上記の発明において、前記固定パーツの円弧部が、それぞれ、半円形状をなすことを特徴とする。
【0022】
また、この発明にかかる漏水対策装置は、上記の発明において、一方の前記固定パーツを前記固定パーツどうしの対向方向に平行に貫通し、他方の固定パーツに螺合される漏油防止ボルトを備えたことを特徴とする。
【0023】
また、この発明にかかる漏水対策装置は、上記の発明において、前記漏油防止ボルトが、前記ピストン軸を間にして両側に設けられ、相反する方向から前記固定パーツに螺合されることを特徴とする。
【0024】
また、この発明にかかる漏水対策装置は、上記の発明において、前記漏油防止ボルトが、前記ピストン軸を間にして両側に設けられ、同じ方向から前記固定パーツに螺合されることを特徴とする。
【0025】
また、この発明にかかる漏水対策装置は、上記の発明において、前記止水具が、前記グリスコットン固定具側に設けられて、前記開口と同心円上に沿って当該隔絶部材から離間する方向に突出するコットン保持用リブを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
この発明にかかる漏水対策装置によれば、漏水対策にかかる作業者の作業負担の軽減を図ることができるという効果を奏する。
【0027】
また、この発明にかかる漏水対策装置によれば、環境負荷や発電にかかるコストを増大することなく漏水対策を施すことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】この発明にかかる実施の形態の漏水対策装置の設置環境を示す説明図である。
【
図2】この発明にかかる実施の形態の漏水対策装置の構成を示す説明図(その1)である。
【
図3】この発明にかかる実施の形態の漏水対策装置の構成を示す説明図(その2)である。
【
図4】止水具の構成を示す説明図(その1)である。
【
図5】止水具の構成を示す説明図(その2)である。
【
図6】グリスコットン固定具の構成を示す説明図(その1)である。
【
図7】グリスコットン固定具の構成を示す説明図(その2)である。
【
図8】この発明にかかる実施の形態の漏水対策装置の取付手順を示す説明図(その1)である。
【
図9】この発明にかかる実施の形態の漏水対策装置の取付手順を示す説明図(その2)である。
【
図10】この発明にかかる実施の形態の漏水対策装置の取付手順を示す説明図(その3)である。
【
図11】この発明にかかる実施の形態の漏水対策装置の取付手順を示す説明図(その4)である。
【
図12】2つの固定パーツの固定方法の別の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる漏水対策装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0030】
(漏水対策装置の設置環境)
まず、この発明にかかる実施の形態の漏水対策装置の設置環境について説明する。
図1は、この発明にかかる実施の形態の漏水対策装置の設置環境を示す説明図である。この発明にかかる実施の形態の漏水対策装置(
図2、
図3などを参照)は、水力発電設備が備える水路に設けられたバルブにおける漏水対策に用いる。
【0031】
図1において、水力発電設備100は、河川などの水流の途中に設けられたダム101に溜められた水を利用して発電をおこなう。ダム101は、河川において水力発電設備100より上流側に設けられている。水力発電設備100は、発電用の水が流れる水路102を備えている。水路102の下流側には、水車や発電機が設けられている(いずれも図示を省略する)。ダム101の底部101aには、発電用の水が流れる水路102とは別に、ダム101の水量調整などに用いられる水路103が接続されている。水路103は、数百メートルの長さにおよぶ。
【0032】
水路103の途中には、ダム101の水量調整など際して開閉される排水用のバルブが設けられている。排水用バルブは、たとえば、ピストン軸(
図2および
図3を参照)の往復動にともない、水路103中に設けられた弁箱の中で、ピストン軸の先端に設けられた弁体を動作させることによって水路103を開閉するピストンバルブによって実現することができる。
【0033】
水路103の途中には、ピストンバルブを含む各種の設備の点検などに際して作業員が立ち入る底部排水バルブ室104が設けられている。底部排水バルブ室104は、鉛直方向において水路103の上側に設けられている。底部排水バルブ室104は、水路103と隔絶されており、水密構造をなす。作業員は、設備の点検などに際して、水路103の入り口から水路103に入り、
図1における矢印Dで示す距離を歩いて、底部排水バルブ室104に移動する。具体的に、底部排水バルブ室104に移動するまでに、作業員は、たとえば、水路103内を150メートル程度移動する。
【0034】
ピストンバルブにおけるピストン軸は、底部排水バルブ室104の床板を貫通して、他端側が底部排水バルブ室104に位置づけられている。ピストン軸と床板との間には、底部排水バルブ室104の水密性を確保するためのUFパッキンが設けられている(
図2および
図3を参照)。
【0035】
経年にともなってUFパッキンが劣化すると、ピストン軸と床板との境界の隙間を介して、水路103から底部排水バルブ室104内への漏水を発生させることがある。漏水量が増加すると、底部排水バルブ室104内に漏水が溢れてピストンバルブの操作ができなくなるおそれがあるため、底部排水バルブ室104における設備の点検などに際しては、水路103から底部排水バルブ室104内への漏水の有無を確認する。
【0036】
水路103から底部排水バルブ室104内への漏水が発生した場合にUFパッキンを交換する従来の方法は、底部排水バルブを全閉するとともにダム101の水位を低下させなくてはならず、作業が大がかりになって煩雑であった。これに対し、この実施の形態の漏水対策装置を用いることにより、漏水対策にかかる作業者の負担軽減を図ることができる。
【0037】
(漏水対策装置の構成)
つぎに、この発明にかかる実施の形態の漏水対策装置の構成について説明する。
図2および
図3は、この発明にかかる実施の形態の漏水対策装置の構成を示す説明図である。
図2および
図3に示すように、この発明にかかる実施の形態の漏水対策装置200は、ピストンバルブにおけるピストン軸201に取り付けられる。
【0038】
ピストン軸201は、底部排水バルブ室104の床板の上に設置された隔絶部材202を貫通して、底部排水バルブ室104に位置づけられている。隔絶部材202には、パッキン固定部材203によりUFパッキン204が固定されている。UFパッキン204は、ピストン軸201の外周面に沿って環状に配置される。パッキン固定部材203は、環形状をなし、設置時においては、パッキン固定部材203を貫通して隔絶部材202に螺合されるボルトによって、鉛直方向上側からUFパッキン204を押さえつけるようにして隔絶部材202に固定されている。
【0039】
漏水対策装置200は、鉛直方向において、パッキン固定部材203の上側から隔絶部材202に取り付けられている。漏水対策装置200は、付加パッキン205、止水具206、止水具固定部材207、グリスコットン208、グリスコットン固定具209、固定具固定部材210を備えている。付加パッキン205は、ピストン軸201の外周面に沿って環状に配置される。付加パッキン205は、加えられた外力に応じて変形する弾性を呈する材料を用いて形成されている。具体的に、付加パッキン205は、たとえば、UFパッキン204と同様に、ユリア樹脂によって形成することができる。
【0040】
止水具206は、ピストン軸201の軸心方向に沿って、付加パッキン205を間にして隔絶部材202とは反対側に配置される。止水具206は、複数の止水パーツ(
図4および
図5を参照)によって構成されており、環形状をなす。止水具固定部材207は、隔絶部材202に対する止水具206の位置を固定する。具体的に、止水具固定部材207は、たとえば、止水具206を貫通してパッキン固定部材203に螺合されるボルトによって実現することができる。
【0041】
止水具206は、ピストン軸201に取り付けられた状態において、パッキン固定部材203を隔絶部材202に固定するボルトが螺合されるボルト穴と重複する位置に設けられて、止水具206を板厚方向に貫通するボルト孔(雌ネジが切られた貫通孔)を備えている。止水具206は、ボルト孔を隔絶部材202に設けられたボルト穴と重ね合わせた状態で、止水具固定部材207を実現するボルトをボルト孔およびボルト穴に螺合させることによって、隔絶部材202に対する位置が固定されている。
【0042】
これにより、止水具206とパッキン固定部材203との間に、パッキン固定部材203を固定するためのスペース(パッキン固定部材203を固定するボルトの頭部が収まるスペース)を確保することなく、止水具206によってパッキン固定部材203を押さえつけることができる。そして、これによって、付加パッキン205に加えて、パッキン固定部材203を介して既設のUFパッキン204をピストン軸201に押しつけることができるので、漏水をより確実に抑えることができる。
【0043】
付加パッキン205は、止水具206におけるテーパー部(
図5を参照)と、ピストン軸201の外周面と、隔絶部材202に固定されたパッキン固定部材203とによって形成されるパッキン保持空間211の内側に位置づけられる。付加パッキン205は、パッキン保持空間211の内側において、ピストン軸201の外周面、および、隔絶部材202に押し付けられた状態で位置づけられている。
【0044】
グリスコットン208は、ピストン軸201の軸心方向に沿って、止水具206を間にして付加パッキン205とは反対側に配置される。グリスコットン208は、綿糸などの繊維を紐状に編み込んで形成されており、繊維および繊維どうしの隙間にグリス(特殊潤滑油)が含浸されている。グリスコットン208は、ピストン軸201の外周面に沿って環状に配置される。
【0045】
グリスコットン固定具209は、ピストン軸201の軸心方向に沿って、グリスコットン208を間にして止水具206とは反対側に配置される。グリスコットン固定具209は、複数の固定パーツ(
図6および
図7を参照)によって構成されており、環形状をなす。グリスコットン固定具209は、固定具固定部材210によって止水具206に固定されることによって、ピストン軸201の外周面と止水具206との境界位置にグリスコットン208を位置づける。固定具固定部材210は、たとえば、グリスコットン固定具209を貫通して止水具206に螺合されるボルトによって実現することができる。
【0046】
(止水具206の構成)
つぎに、止水具206の構成について説明する。
図4および
図5は、止水具206の構成を示す説明図である。
図4においては、止水具206を、漏水対策装置200をピストン軸201に取り付けた状態における鉛直方向上側から見た状態を示している。
図5においては、
図4におけるA-A断面を示している。
【0047】
図4および
図5に示すように、止水具206は、開口401を備えた環形状をなす。開口401の内径寸法は、ピストン軸201の外径寸法と略同一とされている。止水具206の一面側において、開口401の周縁には、端面側ほど広がるように傾斜するテーパー部501が設けられている。テーパー部501は、ピストン軸201に取り付けられた状態において、ピストン軸201の外周面および隔絶部材202によって、パッキン保持空間211を形成する。
【0048】
止水具206の他面側には、当該他面から突出するコットン保持用リブ402が設けられている。コットン保持用リブ402は、開口401と同心円上に位置する環形状をなす。止水具206において、コットン保持用リブ402の内周側、および、コットン保持用リブ402の外周側には、それぞれ、段差部403、404が形成されている。コットン保持用リブ402の内周側の段差部403は、ピストン軸201に取り付けられた状態の止水具206とピストン軸201の外周面との間に、グリスコットン保持溝(
図9、
図10を参照)を形成する。
【0049】
止水具206は、略半円形状をなす2つの止水パーツ405を備えている。各止水パーツ405は、それぞれ、凹形状に湾曲した円弧部405aを備えている。円弧部405aは、それぞれ、ピストン軸201の外周の曲率に応じた曲率で内側に凹むように湾曲している。円弧部405aは、それぞれ、ピストン軸201の外周の半径以下の円弧をなす。止水具206は、止水パーツ405の円弧部405aが連続するように止水パーツ405を組み合わせることによって構成されている。止水具206は、たとえば、ステンレスなどのように、発錆の少ない金属材料を用いて形成することができる。
【0050】
(グリスコットン固定具209の構成)
つぎに、グリスコットン固定具209の構成について説明する。
図6および
図7は、グリスコットン固定具209の構成を示す説明図である。
図6においては、グリスコットン固定具209を、漏水対策装置200をピストン軸201に取り付けた状態における鉛直方向上側から見た状態を示している。
図7においては、
図6におけるB-B断面を示している。
【0051】
図6および
図7に示すように、グリスコットン固定具209は、開口601を備えた環形状をなす板状部材によって実現することができる。グリスコットン固定具209の一面側には、当該一面から突出するコットン押さえ用リブ602が設けられている。コットン押さえ用リブ602は、開口601と同心円上に位置し、開口601の内径寸法と同じ内径寸法の環形状をなす。コットン押さえ用リブ602の幅寸法(コットン押さえ用リブ602の半径方向における寸法)は、グリスコットン保持溝の幅寸法と同等以下に設定されている。
【0052】
グリスコットン固定具209は、略半円形状をなす2つの固定パーツ603を備えている。各固定パーツ603は、それぞれ、凹形状に湾曲した円弧部603a、603bを備えている。2つの固定パーツ603は、一方の固定パーツ603を、固定パーツ603どうしの対向方向に平行に貫通し、他方の固定パーツ603に螺合される2本の漏油防止ボルト604によって互いに固定されている。
【0053】
2本の漏油防止ボルト604は、グリスコットン固定具209の開口601を間にして両側に設けられる。これにより、ピストン軸201を挟み込むようにして配置される2つの固定パーツ603どうしを、ピストン軸201の両側において固定することができる。そして、これにより、固定パーツ603どうしの間に隙間が生じることを防止し、グリスコットン208に含浸されたグリスがグリスコットン保持溝から漏れ出すことを確実に防止できる。
【0054】
2本の漏油防止ボルト604のうちの一方の漏油防止ボルト604(604a)は、グリスコットン固定具209を構成する2つの固定パーツ603のうちの一方の固定パーツ603(603a)の外周縁から、固定パーツ603どうしの対向方向に平行に挿入され、他方の固定パーツ603(603b)に設けられた雌ネジに螺合される。2本の漏油防止ボルト604のうちの他方の漏油防止ボルト604(604b)は、他方の固定パーツ603(603b)の外周縁から、固定パーツ603どうしの対向方向に平行に挿入され、一方の固定パーツ603(603a)に設けられた雌ネジに螺合される。
【0055】
(漏水対策装置200の取付手順)
つぎに、この発明にかかる実施の形態の漏水対策装置200の取付手順について説明する。
図8~
図11は、この発明にかかる実施の形態の漏水対策装置200の取付手順を示す説明図である。漏水対策装置200の取り付けに際しては、まず、
図8に示すように、漏水の発生箇所に付加パッキン205を設置する。具体的に、ピストン軸201の外周面に巻き付けるようにして、ピストン軸201の外周面とパッキン固定部材203との境界位置に付加パッキン205を設置する。
【0056】
つぎに、
図8および
図9に示すように、2つの止水パーツ405によってピストン軸201を挟むようにして、止水具206を取り付ける。止水具206を取り付けることにより、
図9に示すように、止水具206とピストン軸201の外周面との間に、グリスコットン保持溝801が形成される。
【0057】
止水具206は、テーパー部501を鉛直方向下側に位置づけた状態で取り付ける。これにより、止水具206におけるテーパー部501と、ピストン軸201の外周面と、パッキン固定部材203とによってパッキン保持空間211が形成され、当該パッキン保持空間211内に付加パッキン205が位置づけられる。
【0058】
付加パッキン205は、パッキン保持空間211内において、テーパー部501によって付勢されて、ピストン軸201の外周面とパッキン固定部材203との境界位置に押し付けられる。付加パッキン205は、押し付けられることにより、ピストン軸201の外周面およびパッキン固定部材203のそれぞれに密着するように変形する。これにより、付加パッキン205とピストン軸201の外周面との間、および、付加パッキン205とパッキン固定部材203との間における密閉性を確保し、漏水を確実に防止することができる。
【0059】
そして、ピストン軸201を挟むようにして2つの止水パーツ405を組み合わせた後、止水具固定部材207を実現するボルトを、止水具206を貫通してパッキン固定部材203に螺合する。これによって、隔絶部材202に対する止水具206の位置を固定することができる。
【0060】
つぎに、グリスコットン208を取り付ける。グリスコットン208は、
図10に示すように、グリスコットン保持溝801に押し込むようにして取り付ける。そして、
図11に示すように、2つの固定パーツ603によってピストン軸201を挟むようにして、グリスコットン固定具209を取り付ける。グリスコットン固定具209は、コットン押さえ用リブ602をグリスコットン保持溝801に嵌め込むようにして取り付ける。そして、漏油防止ボルト604を螺合して、固定パーツ603どうしを固定する。
【0061】
つぎに、ピストン軸201を挟むようにして2つの固定パーツ603を組み合わせた後、固定具固定部材210を実現するボルトを、グリスコットン固定具209を貫通して止水具206に螺合する。これによって、止水具206に対するグリスコットン固定具209の位置を固定し、隔絶部材202に対するグリスコットン固定具209の位置を固定することができる。
【0062】
上述した実施の形態においては、グリスコットン固定具209における2つの固定パーツ603の合わせ目方向における両端に、各固定パーツ603に対して互いに反対方向から挿入される2本の漏油防止ボルト604によって、2つの固定パーツ603を固定する例について説明したが、2つの固定パーツ603の固定方法はこれに限るものではない。
【0063】
図12は、2つの固定パーツ603の固定方法の別の一例を示す説明図である。
図12に示すように、2つの固定パーツ603(603a、603b)は、同じ方向から挿入される2本の漏油防止ボルト604によって固定してもよい。これにより、2本のボルトを同じ方向から挿入することができるため、ピストン軸201の周囲全体にわたって、ボルトを挿入し、螺合するための充分な空間を確保できない場合にも、2つの固定パーツ603を確実に固定することができる。
【0064】
以上説明したように、この発明にかかる実施の形態の漏水対策装置200は、ピストンバルブにより開閉される水路103と底部排水バルブ室104とを隔絶する隔絶部材202より底部排水バルブ室104側であって、隔絶部材202を貫通するピストンバルブのピストン軸201の外周面に沿って環状に配置される付加パッキン205と、ピストン軸201の軸心方向に沿って付加パッキン205を間にして隔絶部材202とは反対側に配置され、ピストン軸201の外周面とパッキン固定部材203との境界位置に付加パッキン205を位置づける止水具206と、隔絶部材202に対する止水具206の位置を固定する止水具固定部材207と、を備え、止水具206が、組み合わされることによってピストン軸201の外径寸法と同等の内径寸法の開口を形成する複数の止水パーツ405によって構成されていることを特徴としている。
【0065】
この発明にかかる実施の形態の漏水対策装置200によれば、ピストン軸201の周囲においてパッキン固定部材203に重ねるようにして組み合わせた複数の止水パーツ405によって構成される止水具206を、止水具固定部材207によってパッキン固定部材203に固定することにより、付加パッキン205をピストン軸201の外周面に固定することができるので、パッキン固定部材203や既設のUFパッキン204を取り外したり交換したりすることなく、既設のUFパッキン204の劣化などに起因したピストン軸201と隔絶部材202(床板)との境界の隙間から底部排水バルブ室104内への漏水を防止することができる。
【0066】
これにより、ダム101の水位を低下させたり既設のUFパッキン204を取り替えたりする煩雑な作業を要することなく、水路103から底部排水バルブ室104内への漏水を防止することができる。これによって、漏水対策にかかる作業者の作業負担の軽減を図ることができる。
【0067】
また、この発明にかかる実施の形態の漏水対策装置200によれば、ダム101の水位を低下させることなく、ピストンバルブの動作を停止するだけで取り付けることができるので、発電機を動作させるための燃料が不要な水力発電を継続しておこなうことができ、漏水対策のために環境負荷が増大したり発電にかかるコストが増大したりすることを抑制できる。
【0068】
このように、この発明にかかる実施の形態の漏水対策装置200によれば、環境負荷や発電にかかるコストを増大することなく漏水対策を施すことができ、かつ、漏水対策にかかる作業者の作業負担の軽減を図ることができる。
【0069】
また、この発明にかかる実施の形態の漏水対策装置200は、止水パーツ405が、それぞれ、ピストン軸201の外周の曲率に応じた曲率で内側に凹む凹形状に湾曲する円弧部405aを備え、円弧部405aを連続させることによって開口を形成することを特徴としている。
【0070】
この発明にかかる実施の形態の漏水対策装置200によれば、複数の止水パーツ405を、各止水パーツ405の円弧部405aが円を形成するように組み合わせるだけで止水具206を構成し、付加パッキン205をピストン軸201の外周面に固定することができる。これにより、止水具206の設置にかかる作業者の作業負担を軽減し、漏水対策にかかる作業者の作業負担の軽減を図ることができる。
【0071】
また、この発明にかかる実施の形態の漏水対策装置200は、止水パーツ405の円弧部405aが、それぞれ、ピストン軸201の外周の半径以下の円弧をなすことを特徴としている。
【0072】
この発明にかかる実施の形態の漏水対策装置200によれば、ピストンバルブの解体をともなうことなく、ピストン軸201の周囲に止水パーツ405を配置して、止水具206を構成することができる。これにより、ピストンバルブの動作を停止するだけで止水具206を容易に設置することができる。これにより、止水具206の設置にかかる作業者の作業負担を軽減し、漏水対策にかかる作業者の作業負担の軽減を図ることができる。
【0073】
また、この発明にかかる実施の形態の漏水対策装置200は、止水パーツ405の円弧部405aが、それぞれ、半円形状をなすことを特徴としている。
【0074】
この発明にかかる実施の形態の漏水対策装置200によれば、2つの止水パーツ405によって止水具206を構成することができる。これにより、止水パーツ405の組み合わせおよび組み合わせた止水パーツ405の固定にかかる作業者の作業負担の軽減を図ることができる。
【0075】
また、この発明にかかる実施の形態の漏水対策装置200は、止水具206が、隔絶部材202側ほど広がるように傾斜するテーパー部501を備えたことを特徴としている。
【0076】
この発明にかかる実施の形態の漏水対策装置200によれば、止水具206を取り付けるだけで、テーパー部501により付加パッキン205をピストン軸201の外周面とパッキン固定部材203との境界位置に押し付け、付加パッキン205とピストン軸201の外周面との間、および、付加パッキン205とパッキン固定部材203との間における密閉性を確保することができる。これにより、作業者に負担をかけることなく、かつ、簡易な構成によって、確実な漏水対策を施すことができる。
【0077】
また、この発明にかかる実施の形態の漏水対策装置200は、ピストン軸201の軸心方向に沿って止水具206を間にして付加パッキン205とは反対側に配置され、ピストン軸201の外周面に沿って環状に配置されるグリスコットン208と、ピストン軸201の軸心方向に沿ってグリスコットン208を間にして止水具206とは反対側に配置され、ピストン軸201の外周面と止水具206との境界位置にグリスコットン208を位置づけるグリスコットン固定具209と、グリスコットン固定具209を止水具206に固定する固定具固定部材210と、を備えたことを特徴としている。
【0078】
この発明にかかる実施の形態の漏水対策装置200によれば、ピストン軸201の外周面に沿って環状に配置されるグリスコットン208を、止水具固定部材207によって隔絶部材202に対する位置が固定された止水金具に、グリスコットン固定具209によって固定することにより、ピストンバルブが動作するごとにピストン軸201をグリスアップすることができる。これにより、作業者によるピストン軸201のグリスアップ作業頻度を減らし、作業者にかかる負担軽減を図るとともに、ピストンバルブの長寿命化を図ることができる。
【0079】
また、ピストン軸201の軸心方向に沿って、止水具206を間にして付加パッキン205とは反対側にグリスコットン208を配置することより、ピストン軸201と隔絶部材202との境界の隙間から底部排水バルブ室104内への漏水が生じた場合にも、ダム101の水位を低下させたりUFパッキン204を取り替えたりする煩雑な作業を要することなく漏水を防止するとともに、ピストン軸201の周囲に固定される漏水対策装置200を取り付けた場合にもピストン軸201の良好な摺動性を確保することができる。
【0080】
また、この発明にかかる実施の形態の漏水対策装置200によれば、ピストン軸201の軸心方向に沿って、止水具206を間にして付加パッキン205とは反対側にグリスコットン208を配置することにより、止水具206を取り付けた状態のまま、グリスコットン208を交換することができる。これにより、ピストン軸201のグリスアップにかかる作業者の作業負担の軽減を図ることができる。
【0081】
また、この発明にかかる実施の形態の漏水対策装置200は、グリスコットン固定具209が、組み合わされることによってピストン軸201の外径寸法と同等の内径寸法の開口を形成する複数の固定パーツ603によって構成され、当該固定パーツ603は、それぞれ、ピストン軸201の外周の曲率に応じた曲率で内側に凹む凹形状に湾曲し、ピストン軸201の外周の半径以下の円弧をなす円弧部405aを備え、円弧部405aを連続させることによって開口を形成することを特徴としている。
【0082】
この発明にかかる実施の形態の漏水対策装置200によれば、複数の固定パーツ603を、各固定パーツ603の円弧部405aが円を形成するように組み合わせるだけでグリスコットン固定具209を構成し、グリスコットン208をピストン軸201の外周面に固定することができる。これにより、グリスコットン固定具209の設置にかかる作業者の作業負担を軽減し、漏水対策にかかる作業者の作業負担の軽減を図ることができる。
【0083】
また、この発明にかかる実施の形態の漏水対策装置200によれば、ピストンバルブの解体をともなうことなく、ピストン軸201の周囲に固定パーツ603を配置して、グリスコットン固定具209を構成することができる。これにより、ピストンバルブの動作を停止するだけでグリスコットン固定具209を設置することができ、グリスコットン固定具209の設置にかかる作業者の作業負担を軽減し、漏水対策にかかる作業者の作業負担の軽減を図ることができる。
【0084】
また、この発明にかかる実施の形態の漏水対策装置200は、固定パーツ603の円弧部405aが、それぞれ、半円形状をなすことを特徴としている。
【0085】
この発明にかかる実施の形態の漏水対策装置200によれば、2つの固定パーツ603によってグリスコットン固定具209を構成することができる。これにより、固定パーツ603の組み合わせおよび組み合わせた固定パーツ603の固定にかかる作業者の作業負担の軽減を図ることができる。
【0086】
また、この発明にかかる実施の形態の漏水対策装置200は、一方の固定パーツ603を固定パーツ603どうしの対向方向に平行に貫通し、他方の固定パーツ603に螺合される漏油防止ボルト604を備えたことを特徴としている。
【0087】
この発明にかかる実施の形態の漏水対策装置200によれば、固定パーツ603どうしを漏油防止ボルト604によって固定することにより、固定パーツ603どうしの間に隙間が生じることを防止して、グリスコットン208に含浸されたグリスがグリスコットン保持溝801から漏れ出すことを確実に防止することができる。
【0088】
また、この発明にかかる実施の形態の漏水対策装置200は、漏油防止ボルト604が、ピストン軸201を間にして両側に設けられ、相反する方向から固定パーツ603に螺合されることを特徴としている。
【0089】
この発明にかかる実施の形態の漏水対策装置200によれば、ピストン軸201を間にして両側に設け漏油防止ボルト604を設けることにより、固定パーツ603どうしの間に隙間が生じることを確実に防止するとともに、2本の漏油防止ボルト604を相反する方向から固定パーツ603に螺合して、漏油防止ボルト604の緩み方向を異ならせることにより、ピストン軸201の動作によってグリスコットン固定具209が振動した場合にも漏油防止ボルト604を緩みにくくすることができる。
【0090】
また、この発明にかかる実施の形態の漏水対策装置200は、漏油防止ボルト604が、ピストン軸201を間にして両側に設けられ、同じ方向から固定パーツ603に螺合されることを特徴としている。
【0091】
この発明にかかる実施の形態の漏水対策装置200によれば、ピストン軸201を間にして両側に設け漏油防止ボルト604を設けることにより、固定パーツ603どうしの間に隙間が生じることを確実に防止するとともに、2本の漏油防止ボルト604を同じ方向から螺合することにより、ピストン軸201の周囲全周にわたって充分な作業空間を確保することが難しい環境においても、固定パーツ603どうしを漏油防止ボルト604によって固定することができる。
【0092】
また、この発明にかかる実施の形態の漏水対策装置200は、止水具206が、グリスコットン固定具209側に設けられて、開口と同心円上に沿って当該隔絶部材202から離間する方向に突出するコットン保持用リブ402を備えたことを特徴としている。
【0093】
この発明にかかる実施の形態の漏水対策装置200によれば、鉛直方向においてグリスコットン208より下側に位置づけられる止水具206にコットン保持用リブ402を設けることにより、簡易な構成によって、グリスコットン208から染み出すグリスが周囲に飛散することを防止し、ピストン軸201に確実に供給することができる。これにより、ピストン軸201のグリスアップにかかる作業者の作業負担の軽減を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
以上のように、この発明にかかる漏水対策装置は、水路を開閉するピストンバルブからの漏水を防止する漏水対策装置に有用であり、特に、水力発電所などに設置される大型のピストンバルブからの漏水を防止する漏水対策装置に適している。
【符号の説明】
【0095】
100 水力発電設備
101 ダム
103 水路
104 底部排水バルブ室
201 ピストン軸
202 隔絶部材
203 パッキン固定部材
204 UFパッキン
205 付加パッキン
206 止水具
207 止水具固定部材
208 グリスコットン
209 グリスコットン固定具
210 固定具固定部材
211 パッキン保持空間
401 開口
402 コットン保持用リブ
403、404 段差部
405 止水パーツ
501 テーパー部
601 開口
602 コットン押さえ用リブ
603、603a、603b 固定パーツ
604、604a、604b 漏油防止ボルト
801 グリスコットン保持溝