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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】容器蓋
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/36 20060101AFI20240528BHJP
   B65D 51/22 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
B65D47/36 310
B65D51/22 120
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019156934
(22)【出願日】2019-08-29
(65)【公開番号】P2021031164
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000228442
【氏名又は名称】日本クロージャー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100194629
【弁理士】
【氏名又は名称】小嶋 俊之
(72)【発明者】
【氏名】佐原 亨
(72)【発明者】
【氏名】杉山 尚
【審査官】長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-078930(JP,A)
【文献】特開2010-030656(JP,A)
【文献】特開2014-080237(JP,A)
【文献】特開2009-179380(JP,A)
【文献】特開2019-038597(JP,A)
【文献】特開2005-313964(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/36
B65D 51/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓋本体と、該蓋本体を覆う閉位置と該蓋本体を露呈させる開位置との間を旋回自在に該蓋本体に接続された上蓋とを具備する合成樹脂から一体に成形された容器蓋であって、
該蓋本体は閉塞壁及び該閉塞壁の周縁から垂下する筒状側壁を含み、該閉塞壁には無端薄肉破断可能ラインが形成されており、該閉塞壁の上面には該薄肉破断可能ラインよりも半径方向外側において上方に隆起する筒状シール壁が付設されており、
該上蓋は天面壁及び該天面壁の周縁から垂下するスカート壁を含み、該スカート壁の内周面には、該蓋本体の該シール壁の外周面に係止する環状シール突条が形成されている容器蓋において、
該閉塞壁の上面には上方に延びる円筒形状注出筒も形成されており、該薄肉破断可能ラインは該注出筒の該内周面の下部に沿って円形に形成されていて、
該閉塞壁における該薄肉破断可能ラインの内側には中栓が規定され、該中栓は該薄肉破断可能ラインから下方に垂下する被係止壁を含んでおり、
該蓋本体の該閉塞壁の下面には、該薄肉破断可能ラインよりも半径方向外側で且つ該シール壁よりも半径方向内側に位置する下面側環状凹部が形成されており、該下面側環状凹部の上端は該薄肉破断可能ラインよりも上方に位置している、
ことを特徴とする容器蓋。
【請求項2】
該蓋本体の該閉塞壁の上面には、該下面側環状凹部よりも半径方向外側で且つ該シール壁よりも半径方向内側に位置する上面側環状凹部が形成されている、請求項1記載の容器蓋。
【請求項3】
該上面側環状凹部の下端は該下面側環状凹部の上端と同高である、請求項2記載の容器蓋。
【請求項4】
蓋本体と、該蓋本体を覆う閉位置と該蓋本体を露呈させる開位置との間を旋回自在に該蓋本体に接続された上蓋とを具備する合成樹脂から一体に成形された容器蓋であって、
該蓋本体は閉塞壁及び該閉塞壁の周縁から垂下する筒状側壁を含み、該閉塞壁には無端薄肉破断可能ラインが形成されており、該閉塞壁の上面には該薄肉破断可能ラインよりも半径方向外側において上方に隆起する筒状シール壁が付設されており、
該上蓋は天面壁及び該天面壁の周縁から垂下するスカート壁を含み、該スカート壁の内周面には、該蓋本体の該シール壁の外周面に係止する環状シール突条が形成されている容器蓋において、
該閉塞壁の上面には上方に延びる円筒形状注出筒も形成されており、該薄肉破断可能ラインは該注出筒の該内周面の下部に沿って円形に形成されていて、
該閉塞壁における該薄肉破断可能ラインの内側には中栓が規定され、該中栓は該薄肉破断可能ラインから下方に垂下する被係止壁を含んでおり、
該蓋本体の該閉塞壁の上面には、該薄肉破断可能ラインよりも半径方向外側で且つ該シール壁よりも半径方向内側に位置する上面側環状凹部が形成されており、該上面側環状凹部の下端は該薄肉破断可能ラインよりも下方に位置している、
ことを特徴とする容器蓋。
【請求項5】
該蓋本体の該閉塞壁の下面には、該上面側環状凹部よりも半径方向外側で且つ該シール壁よりも半径方向内側に位置する下面側環状凹部が形成されている、請求項4記載の容器蓋。
【請求項6】
該下面側環状凹部の上端は該上面側環状凹部の下端と同高である、請求項5記載の容器蓋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓋本体とこの蓋本体に旋回自在に接続された上蓋とを具備する、合成樹脂から一体に成形された容器蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1及び2に開示されている如く、液体調味料及び飲料等のための容器の口頸部に適用される容器蓋として、蓋本体と、蓋本体を覆う閉位置と蓋本体を露呈させる開位置との間を旋回自在に接続される上蓋とを具備する、射出成形によって合成樹脂から一体に成形された容器蓋が広く実用に供されている。蓋本体は閉塞壁及び該閉塞壁の周縁から垂下する筒状側壁を含み、閉塞壁には無端薄肉破断可能ラインが形成されており、閉塞壁の上面には薄肉破断可能ラインよりも半径方向外側において上方に隆起する筒状シール壁が付設されている。上蓋は天面壁及び天面壁の周縁から垂下するスカート壁を含み、スカート壁の内周面には、蓋本体の該シール壁の外周面に係止する環状シール突条が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-35061号公報
【文献】特開2019-11131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
而して、本発明者等の経験によれば、上述したとおりの形態の容器蓋においては、蓋本体におけるシール壁の外周面に微小な窪みが生成される傾向があり、かかる窪みが生成されると、上蓋を閉位置にせしめた状態においてシール壁の外周面と上蓋に形成されているシール突条との係止によるシール効果が不充分になってしまって、例えば容器の口頸部に容器蓋を装着した後に容器蓋に洗浄水を噴射した時に容器蓋内に洗浄水が浸入してしまうという問題が発生する虞がある。
【0005】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、蓋本体におけるシール壁の外周面に微小な窪みが生成されることが可及的に回避される、新規且つ改良された容器蓋を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、蓋本体におけるシール壁の外周面に微小な窪みが生成される現象について検討を加えた結果、容器蓋を射出成形する際に、閉塞壁の中央部から流入される溶融状態の合成樹脂が閉塞壁に配設されている無端薄肉破断可能ラインを通って流動する瞬間に空気を巻き込み、巻き込んだ空気が開放されることなくシール壁まで溶融状態の合成樹脂によって流動せしめられることに起因して、シール壁の外周面に微小な窪みが生成されてしまうことを認識した。そして、更に検討を重ねた結果、無端薄肉破断可能ラインを通って流動する溶融状態の合成樹脂が直接的に且つ円滑にシール壁まで流動することを阻止する、換言すれば無端薄肉破断可能ラインを通過した溶融状態の合成樹脂の流動に適宜に干渉し、溶融状態の合成樹脂から巻き込んだ空気を開放することによって、シール壁の外周面に微小な窪みが生成されるのを可及的に回避することができることを認識した。
【0007】
上記のとおりの認識を踏まえ、本発明者等は、蓋本体の閉塞壁の下面及び/又は上面には、薄肉破断可能ラインよりも半径方向外側で且つシール壁よりも半径方向内側に位置する下面側環状凹部及び/又は上面側環状凹部が形成されており、下面側環状凹部の上端及び/又は上面側環状凹部の下端は薄肉破断可能ラインよりも上方及び/又は下方に位置している形態に容器蓋を改良すれば、成形型における下面側環状凹部及び/又は上面側環状凹部を規定する部片によって、無端薄肉破断可能ラインを通過した溶融状態の合成樹脂の流動が干渉され、溶融状態の合成樹脂から巻き込んだ空気が開放され、かくして上記主たる技術的課題が達成されることを見出した。
【0008】
即ち、本発明の第一の局面によれば、上記主たる技術的課題を達成する容器蓋として、蓋本体と、該蓋本体を覆う閉位置と該蓋本体を露呈させる開位置との間を旋回自在に該蓋本体に接続された上蓋とを具備する合成樹脂から一体に成形された容器蓋であって、
該蓋本体は閉塞壁及び該閉塞壁の周縁から垂下する筒状側壁を含み、該閉塞壁には無端薄肉破断可能ラインが形成されており、該閉塞壁の上面には該薄肉破断可能ラインよりも半径方向外側において上方に隆起する筒状シール壁が付設されており、
該上蓋は天面壁及び該天面壁の周縁から垂下するスカート壁を含み、該スカート壁の内周面には、該蓋本体の該シール壁の外周面に係止する環状シール突条が形成されている容器蓋において、
該閉塞壁の上面には上方に延びる円筒形状注出筒も形成されており、該薄肉破断可能ラインは該注出筒の該内周面の下部に沿って円形に形成されていて、
該閉塞壁における該薄肉破断可能ラインの内側には中栓が規定され、該中栓は該薄肉破断可能ラインから下方に垂下する被係止壁を含んでおり、
該蓋本体の該閉塞壁の下面には、該薄肉破断可能ラインよりも半径方向外側で且つ該シール壁よりも半径方向内側に位置する下面側環状凹部が形成されており、該下面側環状凹部の上端は該薄肉破断可能ラインよりも上方に位置している、
ことを特徴とする容器蓋が提供される。
【0009】
好ましくは、該蓋本体の該閉塞壁の上面には、該下面側環状凹部よりも半径方向外側で且つ該シール壁よりも半径方向内側に位置する上面側環状凹部が形成されている。この場合には、該上面側環状凹部の下端は該下面側環状凹部の上端と同高であるのがよい。
【0010】
本発明の第二の局面によれば、上記主たる技術的課題を達成する容器蓋として、蓋本体と、該蓋本体を覆う閉位置と該蓋本体を露呈させる開位置との間を旋回自在に該蓋本体に接続された上蓋とを具備する合成樹脂から一体に成形された容器蓋であって、
該蓋本体は閉塞壁及び該閉塞壁の周縁から垂下する筒状側壁を含み、該閉塞壁には無端薄肉破断可能ラインが形成されており、該閉塞壁の上面には該薄肉破断可能ラインよりも半径方向外側において上方に隆起する筒状シール壁が付設されており、
該上蓋は天面壁及び該天面壁の周縁から垂下するスカート壁を含み、該スカート壁の内周面には、該蓋本体の該シール壁の外周面に係止する環状シール突条が形成されている容器蓋において、
該閉塞壁の上面には上方に延びる円筒形状注出筒も形成されており、該薄肉破断可能ラインは該注出筒の該内周面の下部に沿って円形に形成されていて、
該閉塞壁における該薄肉破断可能ラインの内側には中栓が規定され、該中栓は該薄肉破断可能ラインから下方に垂下する被係止壁を含んでおり、
該蓋本体の該閉塞壁の上面には、該薄肉破断可能ラインよりも半径方向外側で且つ該シール壁よりも半径方向内側に位置する上面側環状凹部が形成されており、該上面側環状凹部の下端は該薄肉破断可能ラインよりも下方に位置している、
ことを特徴とする容器蓋が提供される。
【0011】
好ましくは、該蓋本体の該閉塞壁の下面には、該上面側環状凹部よりも半径方向外側で且つ該シール壁よりも半径方向内側に位置する下面側環状凹部が形成されている。この場合には、該下面側環状凹部の上端は該上面側環状凹部の下端と同高であるのがよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の容器蓋においては、蓋本体の閉塞壁の下面及び/又は上面には、薄肉破断可能ラインよりも半径方向外側で且つシール壁よりも半径方向内側に位置する下面側環状凹部及び/又は上面側環状凹部が形成されており、下面側環状凹部の上端及び/又は上面側環状凹部の下端は薄肉破断可能ラインよりも上方及び/又は下方に位置している。そのため、成形型における下面側環状凹部及び/又は上面側環状凹部を規定する部片によって、無端薄肉破断可能ラインを通過した溶融状態の合成樹脂の流動は干渉され、溶融状態の合成樹脂がシール壁の先端に到達するよりも先に、溶融状態の合成樹脂が巻き込んだ空気が開放されることとなる。これにより、シール壁の外周面に微小な窪みが生成されることが可及的に回避され、上蓋を閉位置にせしめた状態においてシール壁の外周面と上蓋に形成されたシール突条との係止によって充分なシール効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に従って構成された容器蓋の好適実施形態の断面図。
図2図1に示す容器蓋の平面図。
図3図1に示す容器蓋の底面図。
図4図1に示す容器蓋を射出成形によって形成する際の成形型の要部を示す断面図。
図5図1に示す容器蓋において、中栓が閉塞壁から分離し、上蓋によって保持された状態の断面図。
図6】本発明に従って構成された容器蓋の変形例を射出成形によって成形する際の成形型の要部を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に従って構成された容器蓋の好適実施形態を図示している添付図面を参照して、更に詳細に説明する。
【0015】
図1乃至図3を参照して説明すると、本発明に従って構成された、全体を番号2で示す容器蓋はポリプロピレン又はポリエチレンの如き適宜の合成樹脂から全体を一体に射出成形することによって形成される。かかる容器蓋2は蓋本体4及び上蓋6を含んでいる。上蓋6はヒンジ手段7を介して蓋本体4に接続されており、上蓋6は蓋本体4の上面を覆う閉位置(図1及び図5において二点鎖線で示す状態)と蓋本体4の上面を露呈させる開位置(図1及び図5において実線で示す状態)との間を旋回自在である。
【0016】
蓋本体4は、閉塞壁8及び閉塞壁8の周縁から垂下する筒状側壁10を含んでいる。閉塞壁8は平面視において円形であって実質上水平に延在する。閉塞壁8の略中央領域には無端薄肉破断可能ライン12が形成されており、閉塞壁8は薄肉破断可能ライン12の内側の内側領域14と、薄肉破断可能ライン12の外側の環状外側領域16とに区画される。肉破断可能ライン12は円形であって、その中央位置(つまり内側領域14の中央位置)は閉塞壁8の中央位置に対してヒンジ手段7とは直径方向反対側(図1乃至図3において左側)に幾分偏心している。内側領域14には中栓18が規定されている。中栓18については後述する。外側領域16の上面には、上方に延びる円筒形状注出筒20が形成されている。注出筒20は外側領域16の内周縁(つまり薄肉破断可能ライン12)に沿って形成されている。注出筒20の内周面の下端部には径方向内側に突出する突条22が周方向に間隔をおいて3個設けられている。注出筒20の上端部は径方向外方にカールせしめられている。更に、注出筒20は、ヒンジ手段7側の軸方向高さが反対側の軸方向高さよりも低く設定されており、上蓋6を開位置から閉位置に旋回せしめた際に、注出筒20が上蓋6に形成された後述する係止壁と干渉することを回避している。閉塞壁8の上面には薄肉破断可能ライン12よりも径方向外側において上方に隆起する筒状シール壁24も付設されている。シール壁24は閉塞壁8の外周縁部に設けられている。シール壁24の上端位置は注出筒20の上端位置よりも低く、シール壁24の上端部には径方向外方に突出する環状突条26が形成されている。外側領域16の下面には、下方に延びる円筒形状シール片28が形成されている。シール片28は、径方向に見てシール壁24と注出筒20との間に設けられている。
【0017】
本発明の容器蓋にあっては、蓋本体4の閉塞壁8の下面には、薄肉破断可能ライン12よりも半径方向外側で且つシール壁24よりも半径方向内側に位置する下面側環状凹部30が形成されており、下面側環状凹部30の上端は薄肉破断可能ライン12よりも上方に位置していることが重要である。図示の実施形態においては、下面側環状凹部30はシール片28よりも径方向内側に位置している。下面側環状凹部30の断面形状は上下方向に長い矩形である。図示の実施形態においては更に、蓋本体4の閉塞壁8の上面には、下面側環状凹部30よりも半径方向外側で且つシール壁24よりも半径方向内側に位置する上面側環状凹部32も形成されている。図1及び図2を参照することによって理解されるとおり、上面側環状凹部32の中心はシール片28の中心と整合し、上面側環状凹部32の外径はシール片28の径と略同等であるが、上述したとおり、薄肉破断可能ライン12の中央位置が閉塞壁8の中央位置に対してヒンジ手段7とは直径方向反対側(図1及び図2において左側)に幾分偏心していることに起因して、上面側環状凹部32の底面は、直径方向に見てヒンジ手段7が形成されている側がヒンジ手段7が形成されていない側に比べて(図1及び図2においては左側が右側に比べて)幅広となっている。上面側環状凹部32の断面の径方向内側面は上下方向に実質上鉛直に延びているが、径方向外側面は上方に向かって径方向外側に傾斜して延びている。上面側環状凹部32の下端は下面側環状凹部30の上端と同高である。
【0018】
図1乃至図3を参照して説明を続けると、中栓18は、破断可能薄肉ライン12から下方に垂下する被係止壁34と、被係止壁34の下端を閉塞する底壁36とを含んでいる。被係止壁34は、上端から下方に向かって実質上鉛直に垂下した後、径方向内側に幾分傾斜しており、破断可能薄肉ライン12は被係止壁34の外周面の上端部に接続されている。被係止壁34の外周面の下端部には径方向外方に幾分膨出する環状膨出部38が形成されている。被係止壁34の内周面の上端部には径方向内方に突出する環状被係止突条40が形成されている。底壁36は円形であって実質上水平に延在する。底壁36の中央には番号42によって示される下方に幾分突出した部位が形成されている。かかる部位42は、射出成形によって容器蓋2を成形した際の、成形型内への溶融状態の合成樹脂の入口(所謂ゲート)である。これについては後に言及する。底壁36の径方向中間部には上方に延びる円筒形状の案内壁44が形成されている。上下方向に見ると、案内壁44の上端は、被係止壁34の上端を超えて幾分上方に位置している。案内壁44の外周面の上端部は径方向外方に幾分膨出している。
【0019】
側壁10は全体的に円筒形状である。側壁10の内周面の下部の内径は上部の内径よりも拡径せしめられており、内周面の下端部には、径方向内側に突出する嵌合突条46が周方向に間隔をおいて複数形成されている。側壁10の外周面の上端部にはヒンジ手段7の一端が接続されている。側壁10の外周面の上端部における、ヒンジ手段7とは直径方向反対側には、外径が比較的大きく低減せしめられた第一の切欠き50が円弧状に形成されている。第一の切欠き50の下方には、外径が比較的小さく低減せしめられた第二の切欠き52も円弧状に形成されている。
【0020】
図1乃至図3を参照して説明を続けると、上蓋6は、円形天面壁54と、天面壁54の周縁から垂下するスカート壁56とを備えている。ここで、上蓋6の上下方向は、上蓋6が閉位置にあるときを基準として、以下説明を続ける。
【0021】
天面壁54の下面の所要位置には、下方に垂下する円筒形状の係止壁58が設けられている。係止壁58は、上蓋6が閉位置にある状態において、中栓18の案内壁44及び被係止壁34の間に規定される環状空間部と対応するように配置される。つまり、係止壁58の中心も天面壁54の中心に対してヒンジ手段7とは直径方向反対側に幾分偏心している。係止壁58の下端部の外周面には径方向外方に突出する係止突条60が周方向に等角度間隔をおいて8個形成されている。係止壁58の基端部の外周面には、断面矩形のリブ62が周方向に等角度間隔をおいて8個形成されている。夫々のリブ62は周方向に隣接する2つの係止突条60の間に設けられており、いずれのリブ62も天面壁54の下面に固着されている。天面壁54の下面には、リブ62を囲繞する2条の円環溝から構成される既知の液だれ防止手段64が設けられている。
【0022】
スカート壁56は、天面壁54の周縁から径方向外方に向かって下方に弧状に湾曲せしめられた後、実質上鉛直に下方に向かって延びている。スカート壁56の外周面の下端部にはヒンジ手段7の他端が接続されている。スカート壁56の内周面の上下方向中間部には既知の環状捨てアンダーカット66が形成されている。捨てアンダーカットについては、例えば本願の出願人によって本願より先に出願されて公開された特開2003-2348号公報を参照されたい。捨てアンダーカット66の下方には、蓋本体4のシール壁24の外周面に係止する環状シール突条68が形成されている。スカート壁56の外周面における、ヒンジ手段7とは直径方向反対側の下端部には、径方向外方に突出して使用者の指がかけられる鍔部70が形成されている。スカート壁56の下面における、ヒンジ手段7とは直径方向反対側には、下方に垂下する円弧形状の垂下片72が形成されている。スカート壁56の下面には、4個の突部74が周方向に間隔をおいて形成されている。
【0023】
次に、上述したように構成された容器蓋2の射出成形の一例を図1及び図4に基づいて説明する。容器蓋2は図1に示す状態で射出成形される。図4は容器蓋2を射出成形するための成形型76の要部の断面を示している。同図においては、容易に理解できるよう、成形型76によって成形される容器蓋2に薄墨を付して示している。成形型76は、上型78と、下型80とを具備している。上型78は、枠体82と、外側コア84と、中間コア86と、内側コア88とを具備しており、夫々上下方向に移動可能である。枠体82は略円筒形状であって、容器蓋2の蓋本体4における、側壁10の上端部の外周面及びシール壁24の外周面を規定している。外側コア84は略円筒形状であって、その端面は、容器蓋2の蓋本体4における閉塞壁8の上面の、シール壁24と注出筒20との間の領域(上面側環状凹部32を含む)を規定している。外側コア84の外周面下端部は、上面側環状凹部32の外周面を規定している。外側コア84の内周面下端部は、上面側環状凹部32の内周面及び注出筒20の外周面を規定している。中間コア86は略円筒形状であって、その端面は、容器蓋2の蓋本体4における閉塞壁8の上面の、注出筒20と案内壁44との間の領域(薄肉破断可能ライン12を含む)を規定している。内側コア88は略円柱形状であって、その端面は、容器蓋2の蓋本体4における閉塞壁8の上面の、底壁36を規定している。内側コア88の外周面下端部は、案内壁44の内周面を規定している。図示は省略するが、内側コア88の中央には上下方向に延びる溶融樹脂供給通路が形成されており、溶融樹脂は内側コア88の下端面の中央から成形型76に供給される。下型80は、枠体90と、外側コア92と、中間コア94と、内側コア96とを具備しており、夫々上下方向に移動可能である。枠体90は略円筒形状であって、容器蓋2の蓋本体4における、側壁10の上記上端部よりも下方の外周面を規定している。外側コア92は略円筒形状であって、その端面は、容器蓋2の蓋本体4における側壁10と、閉塞壁8の下面のシール片28との間の領域を規定している。外側コア92の外周面上端部は、側壁10の内周面を規定している。外側コア92の内周面上端部は、シール片28の外周面を規定している。中間コア94は略円筒形状であって、その端面は、容器蓋2の蓋本体4における閉塞壁8の下面の、シール片28と被係止壁34との間の領域(下面側環状凹部32及び薄肉破断可能ライン12を含む)を規定している。中間コア94の外周面上端部は、シール片28の内周面及び下面側環状凹部30の外周面を規定している。中間コア94の内周面上端部は、下面側環状凹部30の内周面及び被係止壁34の外周面を規定している。内側コア96は略円柱形状であって、その端面は、容器蓋2の蓋本体4における閉塞壁8の下面の、底壁36を規定している。
【0024】
本発明の容器蓋においては、蓋本体4の閉塞壁8の下面及び/又は上面には、薄肉破断可能ライン12よりも半径方向外側で且つシール壁24よりも半径方向内側に位置する下面側環状凹部30及び/又は上面側環状凹部32が形成されており、下面側環状凹部30の上端及び/又は上面側環状凹部32の下端は薄肉破断可能ライン12よりも上方及び/又は下方に位置している。そのため、成形型76における下面側環状凹部30及び/又は上面側環状凹部32を規定する部片によって、無端薄肉破断可能ライン12を通過した溶融状態の合成樹脂の流動は干渉され、溶融状態の合成樹脂がシール壁24の先端に到達するよりも先に、溶融状態の合成樹脂が巻き込んだ空気が開放されることとなる。これにより、シール壁24の外周面に微小な窪みが生成されることが可及的に回避され、上蓋6を閉位置にせしめた状態においてシール壁24の外周面と上蓋6に形成されたシール突条68との係止によって充分なシール効果が得られる。
【0025】
上述したとおりにして成形された容器蓋2は、これが容器の口頸部に装着されるより前に、予め、閉塞壁8に一体的に形成された中栓18を閉塞壁8から分離させておく。かかる操作は上蓋6が閉位置にある状態において行われる。これについて図1及び図5を比較参照して説明すると、図1に示す状態から中栓18が図示しない適宜の押し上げ具によって上方に押し上げられることで薄肉破断可能ライン12が破断し、中栓18(内側領域14)は閉塞壁8の外側領域16から分離せしめられる。閉塞壁8から分離せしめられた中栓18は、閉塞壁8の外側領域16に対して上方に移動し、中栓18の被係止突条40が上蓋6の係止突条60を弾性的に乗り越えてこれに係止せしめられると共に、中栓18の膨出部38が蓋本体6の突条22を弾性的に乗り越えて注出筒20の内周面に密着せしめられる。この際、突条22は上蓋6内の内圧を開放するための通気路として作用し、案内筒44は中栓18が傾倒することを防止し、リブ62は中栓18が過剰に上昇してしまうのを防止する。これらについては、本願の出願人によって本願よりも先に出願された特願2019-5369の明細書の記載を参照されたい。
【0026】
上述したとおりの容器蓋2は、図5において二点鎖線で示されるとおり、ガラス或いはポリエチレンテレフタレートの如き適宜の合成樹脂から形成することができる容器の口頸部98に装着される。口頸部98は上面が開口された略円筒形状であり、その外周面上端には環状被嵌合突条100が形成されている。容器蓋2は、その蓋本体4のシール片28を口頸部98内に挿入し、その側壁10を口頸部98の外周に被嵌せしめることによって口頸部98に装着される。シール片28の外周面は口頸部98の内周面に密接せしめられる。側壁10の内周面に形成されている嵌合突条46は、口頸部98の被嵌合突条100を弾性的に乗り越えて、これに係止せしめられ、容器の口頸部98に容器蓋2が保持される。本発明の容器蓋にあっては、上述したとおり、シール壁24の外周面に微小な窪みが生成されることが可及的に回避され、上蓋6を閉位置にせしめた状態においてシール壁24の外周面と上蓋6に形成されたシール突条68との係止によって充分なシール効果が得られる。それ故に、容器の口頸部98に装着された容器蓋2に洗浄水を噴射した際に、容器蓋2に洗浄水が浸入してしまうことが防止される。
【0027】
容器の内容物を消費する際は、鍔部70に指を掛けて、図5に二点鎖線で示す閉位置に位置する上蓋6を上方に強制することで、上蓋6のシール突条68が、蓋本体4のシール壁24に形成された環状突条26を弾性的に乗り越える。上蓋6はヒンジ手段7を旋回中心として旋回開動せしめられ、注出筒20を露呈せしめる。この際には、上蓋6の係止突条60と中栓18の被係止突条40との係止によって、中栓18も上蓋6と一体となって旋回開動せしめられ、かくして、閉塞壁8に排出開口が形成される。次いで、容器を適宜に傾斜せしめれば、容器内の内容物が上記排出開口を通過した後に注出筒20に案内されて排出される。内容物を所定量排出した後、ヒンジ手段7を旋回中心として上蓋6を旋回閉動せしめると、上蓋6は、蓋本体4の閉塞壁8及びその上面に形成されている注出筒20を覆う。この際も、中栓18は上蓋6と一体となって旋回閉動せしめられる。このとき、上述したとおり注出筒20は、ヒンジ手段7側の軸方向高さが反対側の軸方向高さよりも低く設定されていることに起因して、中栓18が上蓋6と一体となって開位置から閉位置に旋回閉動せしめられる際に、中栓18の被係止壁34又は底壁36が注出筒20の上端部と干渉することが回避される。そして、上蓋6が閉位置に到達すると、中栓18の膨出部38が注出筒20の内周面と密着して上記排出開口は解除自在に閉塞せしめる。
【0028】
上述した実施形態にあっては、下面側環状凹部30は上面側環状凹部32よりも径方向内側に配置されていたが所望ならば、図6に示すように、下面側環状凹部30は上面側環状凹部32よりも径方向外側に配置することができる。このように下面側環状凹部30及び上面側環状凹部32を配置しても薄肉破断可能ライン12を通過した溶融状態の合成樹脂の流動は干渉されるため、図1等に示す容器蓋と同一の作用効果が得られる。更に、下面側環状凹部30及び上面側環状凹部32は、薄肉破断可能ライン12よりも半径方向外側で且つシール壁24よりも半径方向内側に配置され、下面側環状凹部30の上端が薄肉破断可能ライン12よりも上方に、上面側環状凹部32の下端が薄肉破断可能ライン12よりも下方に夫々位置するのであれば、いずれか一方のみを配置し他方を省略してもよい。
【0029】
以上本発明の容器蓋について添付図面を参照して詳述したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形が可能である。例えば、上述した実施形態においては、中栓18は閉塞壁8の一部としてこれと一体的に成形され、容器蓋3が容器の口頸部98に装着されるのに先立って閉塞壁8から分離されている形式であったが、これに替えて、例えば特開2005-289389号公報に開示されているような、外蓋を最初に旋回開動せしめる際に蓋本体の閉塞壁の一部を分離して排出開口を形成する形式のものにも適用することができる。また、本発明の容器蓋は、上述した所謂プルリングレスタイプの容器蓋に限定されず、例えば特開2003-2348号公報に記載されるような、従来から広く使用されているプルリングタイプの容器蓋に対しても適用することができる
【符号の説明】
【0030】
2:容器蓋
4:蓋本体
6:上蓋
8:閉塞壁
10:側壁
12:薄肉破断可能ライン
24:シール壁
30:下面側環状凹部
32:上面側環状凹部
54:天面壁
56:スカート壁
68:シール突条
図1
図2
図3
図4
図5
図6