(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】レール取付け構造
(51)【国際特許分類】
E01B 9/02 20060101AFI20240528BHJP
E01B 9/14 20060101ALI20240528BHJP
E04F 17/08 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
E01B9/02
E01B9/14
E04F17/08 B
(21)【出願番号】P 2019185029
(22)【出願日】2019-10-08
【審査請求日】2022-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】323005120
【氏名又は名称】センクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小林 淳彦
(72)【発明者】
【氏名】大島 浩敬
(72)【発明者】
【氏名】川島 泰之
(72)【発明者】
【氏名】小林 佑太
【審査官】豊田 真弓
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-028780(JP,A)
【文献】特開2003-031975(JP,A)
【文献】特開2006-152755(JP,A)
【文献】実開昭58-043251(JP,U)
【文献】韓国登録特許第10-0725619(KR,B1)
【文献】特開平09-215529(JP,A)
【文献】特開2016-116606(JP,A)
【文献】特開2017-066691(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 9/02
E01B 9/14
E04F 17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に床材が設けられないで使用されるスラブ上にレールを固定するレール取付け構造であって、レール全体が前記スラブの外部に露出しており、
前記スラブ上に
前記レールの長手方向に間隔を空けて補強板が固定され、該補強板上に前記レールの複数が間隔をあけて平行に配置されて固定されている
ことを特徴とするレール取付け構造。
【請求項2】
前記レールは、断面形状が底板を有する溝形であり、内部を金具が摺動するものであって、
前記補強板及びレールが金属製であり、前記レールの前記底板を貫通する皿ビスによって、前記レールが前記補強板に固定されていることを特徴とする請求項1に記載のレール取付け構造。
【請求項3】
前記レールは、サーバーラック取り付け用であり、断面形状がリップ付き溝形であることを特徴とする請求項1又は2に記載のレール取付け構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーバー等をはじめとする大型の電子機器を設置するためのレールの取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サーバー等をはじめとする大型の電子機器を設置するには、コンクリートスラブの上方の空間を介してフロアパネルを配置し、フロアパネルに埋め込んだレールに電子機器を取り付けていた(非特許文献1参照)。
このような構造では、電子機器をレールに沿って移動させることにより、取付け及び入れ替え工事が容易となり、電子機器の寸法やレイアウトに応じて設置位置を変えることも可能で、フロアパネルの下方の空間を空調空間および配線空間として利用できる、等の利点がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】センクシア株式会社「センクシア フリーアクセス フロアシステム」、2019年5月発行、p.32-p.36
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記非特許文献1に記載のような構造は、フロアパネル及びフロアパネルを浮いた状態で支持する支持装置が必要であり、それらの施工も必要となり、コストも高くなる。特に、近年、サーバー等の性能が向上して、以前ほど厳格な空調を必要としなくなっているので、二重床にするための経費は削減したいとの要望も高まっている。
本発明が解決しようとする課題は、既存のスラブにレールを簡単に取り付けることができ、コストが低廉で済むレール取付け構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、上面に床材が設けられないで使用されるスラブ上にレールを固定するレール取付け構造であって、レール全体が前記スラブの外部に露出しており、前記スラブ上に前記レールの長手方向に間隔を空けて補強板が固定され、該補強板上に前記レールの複数が間隔をあけて平行に配置されて固定されていることを特徴とするレール取付け構造である。
請求項2に係る発明は、前記レールは、断面形状が底板を有する溝形であり、内部を金具が摺動するものであって、前記補強板及びレールが金属製であり、前記レールの前記底板を貫通する皿ビスによって、前記レールが前記補強板に固定されていることを特徴とする請求項1に記載のレール取付け構造である。
請求項3に係る発明は、前記レールは、サーバーラック取り付け用であり、断面形状がリップ付き溝形であることを特徴とする請求項1又は2に記載のレール取付け構造である。
また、別発明として、以下のものでもよい。
構成1は、上面に床材が設けられないで使用されるスラブ上にレールを固定するレール取付け構造であって、レール全体が前記スラブの外部に露出しており、前記スラブ上に補強板が固定され、該補強板上に前記レールの複数が間隔をあけて平行に配置されて固定されていることを特徴とするレール取付け構造である。
構成2は、前記レールは、断面形状が底板を有する溝形であり、内部を金具が摺動するものであって、前記補強板及びレールが金属製であり、前記レールの前記底板を貫通する皿ビスによって、前記レールが前記補強板に固定されていることを特徴とする構成1に記載のレール取付け構造である。
構成3は、前記レールは、サーバーラック取り付け用であり、断面形状がリップ付き溝形であることを特徴とする構成1又は2に記載のレール取付け構造である。
さらに、別発明として、以下のものでもよい。
手段1は、スラブにレールを固定するレール取付け構造であって、レール全体が前記スラブの外部に露出していることを特徴とするレール取付け構造である。
【0006】
手段2は、前記スラブに補強板が固定され、該補強板に前記レールが固定されていることを特徴とする手段1に記載のレール取付け構造である。
【0007】
手段3は、前記補強板及びレールが金属製であり、前記レールの底板を貫通する皿ビスによって前記レールが前記補強板に固定されていることを特徴とする手段2に記載のレール取付け構造である。
【0008】
手段4は、前記スラブに前記レールが直接固定されていることを特徴とする手段1に記載のレール取付け構造である。
【0009】
手段5は、前記スラブに打ち込んだスリーブと、前記レールの底板を貫通して前記スリーブに螺合した極低頭ボルトよりなるホールインアンカーを介して前記レールが前記スラブに固定されていることを特徴とする手段4に記載のレール取付け構造である。
【0010】
手段6は、複数のレールが間隔をあけて平行に配置されていることを特徴とする手段1乃至手段5のうちいずれかに記載のレール取付け構造である。
【0011】
手段7は、前記レールは、サーバーラック取り付け用であり、断面形状がリップ付き溝形であることを特徴とする手段1乃至手段6のうちいずれかに記載のレール取付け構造である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、既存のスラブに簡単にレールを取り付けることができ、スラブの上方にフロアパネルを設置する必要がないので、部品数が減少し、施工に要する手間が軽減され、コストも低廉で済む。
【0013】
加えて、スラブに補強板を固定し、補強板にレールを固定すれば、レールで支持される物品の重量でスラブが破損するのを防ぐことができる。
【0014】
加えて、レールの底板を貫通する皿ビスによってレールを補強板に固定することにより、サーバー等の大型の電子機器側の金具等がレール内を摺動するのを阻害する突出部分が小さくて済み、補強板及びレールを金属製とすることにより、皿ビスが貫通するレールの貫通孔及び皿ビスをねじ込む補強板の螺子孔を、予め工場で精度よく形成することができる。
【0015】
加えて、スラブにレールを直接固定すれば、部品数をさらに削減できる。
【0016】
加えて、スラブに打ち込んだスリーブと、レールの底板を貫通する頭部の薄い低頭ボルトよりなるホールインアンカーでレールを固定することにより、レール内の突出部分が小さくなり、サーバー等の大型の電子機器側の金具等がレール内を摺動するのを邪魔しにくい。
【0017】
加えて、複数のレールを間隔をあけて平行に配置すれば、大型電子機器等の物品を安定して支持できる。
【0018】
加えて、サーバーラック取り付け用のレールの断面形状をリップ付き溝形とすることにより、サーバーラックを固定する取付金具をレールの内部に係合したとき、取付金具がリップに引っかかって外れにくいため、サーバーラックの転倒を防止する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1の実施形態を示すレール取付け構造の断面図。
【
図2】本発明の第2の実施形態を示すレール取付け構造の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態につき図面を参照する等して説明する。なお、本発明は、実施形態に限定されないことはいうまでもない。
【0021】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明の第1の実施形態を
図1と共に説明する。
図1は第1の実施形態を示すレール取付け構造の断面図である。
【0022】
第1の実施形態において、レール取付け構造は、サーバーラック取り付け用のレール1をコンクリートスラブ2の上面に固定するものである。
レール1は、サーバーラック取り付け用であって、金属板を曲げ加工して形成され、その断面形状はリップ付き溝形である。
コンクリートスラブ2の上面には、金属製の補強板3が固定され、補強板3の上面に複数の(本実施例では2本の)レール1が平行に間隔をあけて固定されている。
【0023】
補強板3は、レール1の長手方向に沿った長さを有する長尺板であってもよいし、レール1の長手方向に適宜間隔を空けて配置される短尺板であってもよい。
また、補強板3は、2本のレール1の間と、両端部において、ホールインアンカー4を介してコンクリートスラブ2に固定されている。ホールインアンカー4は、十分な取付け強度を有するものであれば、特に種類は限定されず、必要とする取付け強度に応じて、ホールインアンカー4の数を増減することもできる。
【0024】
また、補強板3のレール取り付け位置には螺子孔5が形成され、レール1の底板(ウェブ)において、螺子孔5と対応する位置には皿ビスを挿通させる挿通孔6が形成される。挿通孔6は、皿ビス7の頭がちょうど入り込むような形状となっている。
そして、補強板3の上面にレール1の底板を載せ、螺子孔5と挿通孔6を位置合わせして、皿ビス7をレール1の底板の上方から挿通孔6に通して螺子孔5へねじ込むことにより、レール1がコンクリートスラブ2に、その全体がコンクリートスラブ2の外部に露出した状態で固定される。
【0025】
このようにレール1の底板の下面が補強板3の上面に接しており、他の部分はコンクリートスラブ2の上方に配置された補強板3のさらに上方に位置することになるので、コンクリートスラブ2上に発生する埃などが溝形のレール1の内部に溜まりにくくなる。レール1の内部に埃などが溜まりにくいのでサーバーを再移動する際にも、サーバーの取付金具をスムーズに移動させることができる。
また、補強板3及びレール1は共に金属製なので、螺子孔5及び挿通孔6は、予め工場で位置及び寸法を高精度で形成することができる。
【0026】
サーバーラックをコンクリートスラブ2上に設置するには、レール1内に摺動・固定自在に係合した取付金具をサーバーラックに取り付けて、サーバーラックを2本のレール1上に架け渡し、その後、取付金具を摺動させてサーバーラックを設置位置まで動かし、取付金具をレール1に対して固定する。
レール1の底板の上面と皿ビス7の頭部とはほぼ面一なので、取付金具の摺動は阻害されず、サーバーラックをスムーズに移動することができる。
【0027】
寸法の異なる複数のサーバーラックを設置する場合は、2本のレール1上に一対の短いチャンネル材を架け渡し、レール1内に摺動・固定自在に係合した接続金具でチャンネル材とレール1を接続する。
さらに、チャンネル材内に摺動・固定自在に係合した取付金具を、一対のチャンネル材の上に載せたサーバーラックの寸法に応じて摺動させ、取付金具をサーバーラックに取り付けてからチャンネル材に固定する。
次いで、接続金具をレール1に沿って摺動させてチャンネル材をサーバーラックの設置位置まで摺動させ、その後、接続金具をレール1に対して固定する。
【0028】
〔第2の実施形態〕
以下、本発明に係る第2の実施形態について図面の
図2と共に説明する。なお、第1の実施形態と同様の部分については説明を省略し、主に異なる部分について説明する。
第2の実施形態では、レール1がコンクリートスラブ2に直接固定される。
【0029】
コンクリートスラブ2に精度の高い螺子孔を形成するのは難しいので、本実施形態では、コンクリートスラブ2に打ち込んだスリーブ11と、レール1の底板に設けられた挿通孔6に挿通されスリーブ11に螺合された極低頭ボルト12よりなるホールインアンカー4’によって、レール1をコンクリートスラブ2に固定してある。
挿通孔6は、第1の実施形態のように皿ビス7の頭に合わせた形状ではなく、極低頭ボルト12の首下部が挿通されることが可能な形状となっている。
【0030】
第2の実施形態において、レール取付け構造の使用方法は、第1の実施形態と同様である。
極低頭ボルト12の頭部は非常に薄く、薄いワッシャ13を介してレール1の底板の上に重なっているので、レール1の内部に大きく突出することはなく、金具はレール1内をスムーズに摺動することができる。
【0031】
また、レール1の底板の下面がコンクリートスラブ2の上面に接しており、他の部分はコンクリートスラブ2の上方に位置することになるので、コンクリートスラブ2上に発生する埃などが溝形のレール1の内部に溜まりにくくなる。レール1の内部に埃などが溜まりにくいのでサーバーを再移動する際にも、サーバーの取付金具をスムーズに移動させることができる。
【0032】
〔その他の変形例〕
本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。例えば以下のようなものも含まれる。
【0033】
本実施形態では、レールは、サーバーラック取り付け用であるが、他の物品を取り付けるためのものであっても良い。
【0034】
本実施形態では、レールの断面形状をリップ付き溝形としてあるが、レール内を摺動する金具の構造によって、H形等のように断面形状を変えることもできる。
【0035】
いずれの実施形態における各技術的事項を他の実施形態に適用して実施例としても良い。例えば、第1の実施形態における皿ビス7を第2の実施形態に適用しても良い。この際には、第2の実施形態において、薄いワッシャ13を採用せず、挿通孔6を皿ビス7の頭に合わせた形状とする。
【符号の説明】
【0036】
1 レール
2 コンクリートスラブ
3 補強板
4,4’ ホールインアンカー
5 螺子孔
6 挿通孔
7 皿ビス
11 スリーブ
12 極低頭ボルト
13 ワッシャ