(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】情報処理システムおよび情報処理方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/0635 20230101AFI20240528BHJP
G06Q 50/08 20120101ALI20240528BHJP
【FI】
G06Q10/0635
G06Q50/08
(21)【出願番号】P 2019224470
(22)【出願日】2019-12-12
【審査請求日】2022-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(74)【復代理人】
【識別番号】100187230
【氏名又は名称】佐藤 晶司
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】右山 剛
(72)【発明者】
【氏名】戸倉 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】永元 直樹
【審査官】野元 久道
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-206880(JP,A)
【文献】特開2019-067207(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者を識別するための作業者識別情報を含む作業者の属性および該作業者の作業工程を示す作業者データを記憶する第1のデータベースと、
過去に発生した事故に関わる事故データを記憶する第2のデータベースと、
外部から受け付ける操作に基づいて情報を入力する入力部と、
前記入力部が入力した情報のうち前記作業者識別情報に基づいて、前記作業者データを前記第1のデータベースから検索する検索部と、
前記検索部が検索した作業者データ
のうち前記作業者識別情報を除く作業者データに基づいて、前記事故データを前記第2のデータベースから読み出す読み出し部と、
前記読み出し部が読み出した事故データに基づいた出力情報を出力する出力部とを有する情報処理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理システムにおいて、
前記読み出し部は、前記検索部が検索した作業者データ
のうち前記作業者識別情報を除く作業者データが示す項目と、前記事故データが示す項目とを比較し、互いに一致した項目がある事故データを読み出し、前記一致した項目の数をスコアとしてカウントし、
前記出力部は、前記出力情報を前記スコアの高い順に出力する情報処理システム。
【請求項3】
請求項1に記載の情報処理システムにおいて、
前記読み出し部は、前記検索部が検索した作業者データ
のうち前記作業者識別情報を除く作業者データと、
現在の環境を示す環境データとに基づいて、前記事故データを前記第2のデータベースから読み出す情報処理システム。
【請求項4】
請求項3に記載の情報処理システムにおいて、
前記読み出し部は、前記検索部が検索した作業者データ
のうち前記作業者識別情報を除く作業者データが示す項目および前記環境データが示す項目と、前記事故データが示す項目とを比較し、互いに一致した項目がある事故データを読み出し、前記一致した項目の数をスコアとしてカウントし、
前記出力部は、前記出力情報を前記スコアの高い順に出力する情報処理システム。
【請求項5】
請求項2または請求項4に記載の情報処理システムにおいて、
前記出力部は、前記スコアの高い事故データであるほど、該事故データに基づいた出力情報を、それ以外の事故データに基づいた出力情報よりも強調して出力する情報処理システム。
【請求項6】
請求項2または請求項4または請求項5に記載の情報処理システムにおいて、
前記出力部は、前記スコアの高い方から所定の数だけ、前記出力情報を出力する情報処理システム。
【請求項7】
請求項2または請求項4または請求項5に記載の情報処理システムにおいて、
前記出力部は、前記スコアが所定の閾値を超えた事故データに基づいた出力情報を出力する情報処理システム。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の情報処理システムにおいて、
前記出力部は、前記作業者に対して前記読み出し部が読み出した事故データが示す事故が発生しないように注意を促す情報を前記出力情報として出力する情報処理システム。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の情報処理システムにおいて、
前記作業者が作業を行う作業場所に到着したことを検知する検知部を有し、
前記出力部は、前記作業者が前記作業場所に到着したことを前記検知部が検知したタイミングで前記出力情報を出力する情報処理システム。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の情報処理システムおいて、
前記作業者の属性と前記作業工程とに応じた提案情報を記憶する第3のデータベースを有し、
前記出力部は、所定のタイミングで前記提案情報を前記第3のデータベースから読み出し、前記作業者が作業を終了した結果を前記入力部に入力することを促す情報と前記提案情報とを出力する情報処理システム。
【請求項11】
請求項10に記載の情報処理システムにおいて、
前記第1のデータベースに記憶されている情報を更新する更新部を有し、
前記第1のデータベースは、前記作業者に付与するポイントを記憶し、
前記更新部は、前記入力部に入力された前記結果に基づいて、前記第1のデータベースに記憶されているポイントを更新していく情報処理システム。
【請求項12】
外部から受け付ける操作に基づいて入力した情報のうち作業者を識別するための作業者識別情報に基づいて、前記作業者識別情報を含む作業者の属性および該作業者の作業工程を示す作業者データを、前記作業者データを記憶する第1のデータベースから検索する処理と、
前記検索した作業者データ
のうち前記作業者識別情報を除く作業者データに基づいて、過去に発生した事故に関わる事故データを、前記事故データを記憶する第2のデータベースから読み出す処理と、
前記読み出した事故データに基づいた出力情報を出力する処理とを行う情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理システムおよび情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、製造現場や建設現場等の作業現場では、事故の発生を防止するための取り組みとして、KYK(危険予知活動)や朝礼等が行われている。しかしながら、想定外に発生する事故の予測は非常に困難である。また、このような作業者全体に対して注意喚起を行っても、各作業者によっては不要な情報もありうる。そこで、各作業者に労働安全衛生に関するチェックリストを提示し、作業者に回答を入力させて労働安全衛生の管理を行う技術が考えられている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたような技術においては、各作業者がこれから行う作業において、過去に発生した事故事例に基づいた注意喚起を作業者ごとには行うことができないという問題点がある。
【0005】
本発明の目的は、各作業者がこれから行う作業において、過去に発生した事故事例に基づいた注意喚起を作業者ごとに行うことができる情報処理システムおよび情報処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の情報処理システムは、
作業者を識別するための作業者識別情報を含む作業者の属性および該作業者の作業工程を示す作業者データを記憶する第1のデータベースと、
過去に発生した事故に関わる事故データを記憶する第2のデータベースと、
外部から受け付ける操作に基づいて情報を入力する入力部と、
前記入力部が入力した情報のうち前記作業者識別情報に基づいて、前記作業者データを前記第1のデータベースから検索する検索部と、
前記検索部が検索した作業者データに基づいて、前記事故データを前記第2のデータベースから読み出す読み出し部と、
前記読み出し部が読み出した事故データに基づいた出力情報を出力する出力部とを有する。
【0007】
また、本発明の情報処理方法は、
外部から受け付ける操作に基づいて入力した情報のうち作業者を識別するための作業者識別情報に基づいて、前記作業者識別情報を含む作業者の属性および該作業者の作業工程を示す作業者データを、前記作業者データを記憶する第1のデータベースから検索する処理と、
前記検索した作業者データに基づいて、過去に発生した事故に関わる事故データを、前記事故データを記憶する第2のデータベースから読み出す処理と、
前記読み出した事故データに基づいた出力情報を出力する処理とを行う。
【発明の効果】
【0008】
本発明においては、各作業者がこれから行う作業において、過去に発生した事故事例に基づいた注意喚起を作業者ごとに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の情報処理システムの第1の実施の形態を示す図である。
【
図2】
図1に示した作業者データベースに記憶されている作業者データの一例を示す図である。
【
図3】
図1に示した事故データベースに記憶されている事故データの一例を示す図である。
【
図4】
図1に示した情報処理システムにおける情報処理方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図5】
図1に示した出力部600が出力情報を出力した態様の第1の例を示す図である。
【
図6】
図1に示した出力部600が出力情報を出力した態様の第2の例を示す図である。
【
図7】
図1に示した出力部600が出力情報を出力した態様の第3の例を示す図である。
【
図8】本発明の情報処理システムの第2の実施の形態を示す図である。
【
図9】
図8に示した情報処理システムにおける情報処理方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図10】
図8に示した出力部が出力情報を出力した態様の一例を示す図である。
【
図11】本発明の情報処理システムの第3の実施の形態を示す図である。
【
図12】
図11に示した提案情報データベースに記憶されている提案情報の一例を示す図である。
【
図13】
図11に示した情報処理システムにおける情報処理方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図14】ステップS23にて出力部が表示する画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
【0011】
図1は、本発明の情報処理システムの第1の実施の形態を示す図である。本形態における情報処理システムは
図1に示すように、作業者データベース100と、事故データベース200と、入力部300と、検索部400と、読み出し部500と、出力部600とを有する。
【0012】
作業者データベース100は、作業者の属性および作業者の作業工程を示す作業者データを記憶する第1のデータベースである。
図2は、
図1に示した作業者データベース100に記憶されている作業者データの一例を示す図である。
【0013】
図1に示した作業者データベース100には
図2に示すように、作業者識別情報と、性別と、年齢と、経験年数と、作業工程と、本日の作業内容とが対応付けられて記憶されている。作業者識別情報、性別、年齢および経験年数は作業者の属性を示す情報である。作業者識別情報は、作業者を識別するために各作業者固有にあらかじめ付与された情報である。作業者識別情報は、例えば、英数字を組み合わせてものであっても良く、他の作業者と識別できるものであれば良い。性別は、作業者の性別であり、作業者識別情報とともにあらかじめ記憶されている。年齢は、作業者の年齢であり、作業者識別情報の登録時に記憶され、年の経過とともに加算されていく。経験年数は、作業者の作業の経験年数であり、作業者識別情報の登録時に記憶され、年の経過とともに加算されていく。なお、上述したような作業者の属性には、
図2に示した項目以外の項目が含まれていても良い。例えば、作業者の属性には「職種」が含まれていても良い。職種は、鳶工、型枠工、鉄筋工等、業務内容に応じて分けられた仕事の種類を示す情報である。作業工程は、工程表にあらかじめ設定された複数の作業工程のうち、作業者が担当している作業の工程を示す。本日の作業内容は、作業者がその日に行う予定の作業内容を示す。本日の作業内容は、作業終了時に更新されていく。全体の作業工程および作業内容を含む工程表は別途記憶、管理されており、例えば、他のデータベース(例えば、事故データベース200)に記憶されている。その工程表からその作業者の作業工程を検索できる情報(検索キー)が、作業者データベース100に記憶されている作業工程となる。本日の作業内容の更新は、作業終了後に、作業者が「本日の作業内容」が完了したかどうか等の進捗状況を入力部300に入力することで行われる。作業内容の更新は、作業終了後の作業者からの入力に基づいて、システムの管理者や保守者が行うものであっても良い。
【0014】
例えば、
図2に示すように作業者データベース100には、作業者識別情報「10000001」と、性別「男」と、年齢「45」と、経験年数「20」と、作業工程「C-5」と、本日の作業内容「最終組み立て」とが対応付けられて記憶されている。これは、作業者識別情報「10000001」が付与されている作業者の性別は男性で、年齢は45歳で、20年のキャリアがあり、作業工程はC-5であって、今日の作業内容は最終組み立ての予定であることを示している。また、作業者識別情報「11000003」と、性別「男」と、年齢「28」と、経験年数「6」と、作業工程「A-1」と、本日の作業内容「資材搬入」とが対応付けられて記憶されている。これは、作業者識別情報「11000003」が付与されている作業者の性別は男性で、年齢は28歳で、6年のキャリアがあり、作業工程はA-1であって、今日の作業内容は資材搬入の予定であることを示している。また、作業者識別情報「50100002」と、性別「女」と、年齢「32」と、経験年数「14」と、作業工程「D-3」と、本日の作業内容「耐久試験」とが対応付けられて記憶されている。これは、作業者識別情報「50100002」が付与されている作業者の性別は女性で、年齢は32歳で、14年のキャリアがあり、作業工程はD-3であって、今日の作業内容は耐久試験の予定であることを示している。また、作業者識別情報「51100030」と、性別「女」と、年齢「20」と、経験年数「2」と、作業工程「A-1」と、本日の作業内容「検品作業」とが対応付けられて記憶されている。これは、作業者識別情報「51100030」が付与されている作業者の性別は女性で、年齢は20歳で、2年のキャリアがあり、作業工程はA-1であって、今日の作業内容は検品作業の予定であることを示している。
【0015】
事故データベース200は、過去に発生した事故に関わる事故データを記憶する第2のデータベースである。
図3は、
図1に示した事故データベース200に記憶されている事故データの一例を示す図である。
【0016】
図1に示した事故データベース200には
図3に示すように、発生日と、時刻と、天候と、作業者情報である作業者の性別および年齢層と、作業工程と、作業内容と、事故内容とが対応付けられて記憶されている。また、それぞれの対応付けには、事故を識別するための番号(No.)が付与されている。発生日は、事故が発生した日にちを示す。時刻は、事故が発生した時刻を示す。天候は、事故が発生した時の天候を示す。作業者情報の性別および年齢層は、事故を起こした作業者の性別および年齢層を示す。作業工程は、事故がどの作業工程で発生したかを示す。作業内容は、事故が発生したときに作業者が行っていた作業の内容を示す。事故内容は、発生した事故の内容を示す。また、事故が発生した日の天候だけでなく、気温や湿度等の他の環境データも記憶されていても良い。
【0017】
例えば、
図3に示すように事故データベース200には、発生日「20101021」と、時刻「16:00」と、天候「雨」と、作業者情報の性別「男」と、作業者情報の年齢層「30代」と、作業工程「A-1」と、作業内容「資材搬入」と、事故内容「資材落下による右足損傷」とが対応付けられて記憶されている。これは、雨が降っていた2010年10月21日の16時に、30代の男性作業者がA-1の作業工程の資材搬入を行っていた時に、資材を落下させて右足を損傷する事故が発生したことを示している。また、発生日「20171219」と、時刻「10:30」と、天候「晴れ」と、作業者情報の性別「男」と、作業者情報の年齢層「40代」と、作業工程「C-5」と、作業内容「組み立て」と、事故内容「部品に指を挟んで人差し指損傷」とが対応付けられて記憶されている。これは、晴れていた2017年12月19日の10時30分に、40代の男性作業者がC-5の作業工程の組み立てを行っていた時に、部品に指を挟んで人差し指を損傷する事故が発生したことを示している。このように、事故データベース200には、過去に発生した事故のデータがリスト化されて記憶されている。事故データベース200には、
図3に示した項目以外に、例えば、作業者の経験年数等、作業者データベース100に記憶された作業者データと比較できる項目が記憶されていても良い。
【0018】
入力部300は、外部から受け付ける操作に基づいて情報を入力する。入力部300は、一般的なPC(Personal Computer)であっても良いし、携帯端末装置であっても良く、作業者が外部からキーボードやマウス、操作キー、タッチパネル等を操作することで、その操作に応じた情報を入力できるものであれば良い。また、入力部300は、出退勤や入退出を管理するために作業者が作業者所有のIDカードをかざしてIDカードに書き込まれた作業者識別情報を読み取るカードリーダを用いても実現されても良い。この場合、IDカードに書き込まれた作業者識別情報等の作業に関する情報をカードリーダがIDカードから読み出す。
【0019】
検索部400は、入力部300が入力した情報のうち作業者を識別するための作業者識別情報に基づいて、作業者データを作業者データベース100から検索する。例えば、
図2に示した作業者データが作業者データベース100に記憶されており、入力部300が入力した作業者識別情報が「10000001」である場合、検索部400は、作業者識別情報「10000001」と対応付けられている作業者データを作業者データベース100から検索する。
【0020】
読み出し部500は、検索部400が検索した作業者データに基づいて、事故データを事故データベース200から読み出す。また、読み出し部500は、検索部400が検索した作業者データと、その日の環境を示す環境データとに基づいて、事故データを事故データベース200から読み出す。ここで、環境データとは、現在の(その日の)作業の環境を示すデータであって、天候、気温、湿度、季節等を示すデータである。環境データは、他のデータベースに記憶されていても良い。他のデータベースが天候のデータを記憶する場合、天候情報を提供するサイト等から情報を随時取得し、取得した天候情報を記憶するものであっても良い。このとき、読み出し部500は、検索部400が検索した作業者データが示す項目および環境データが示す項目と、事故データが示す項目とを比較し、互いに一致した項目がある事故データを事故データベース200から読み出す。具体的には、読み出し部500は、検索部400が検索した作業者データの各項目が示す内容および環境データが示す各項目が示す内容と、互いに一致する内容が示された項目が1つでも含まれる事故データを事故データベース200から読み出す。例えば、
図2に示した作業者データのうち、検索部400が検索した作業者データが、作業者識別情報「10000001」の作業者データであって、
図3に示した事故データが事故データベース200に記憶されており、その日の天候が晴れである場合、読み出し部500は、
図2に示した作業者識別情報「10000001」の作業者データの性別「男」と、
図3に示した事故データのNo.1およびNo.2に作業者の性別「男」とが一致する。そのため、読み出し部500は、事故データベース200からNo.1の事故データとNo.2の事故データとを読み出す。なお、読み出し部500が比較する項目は、検索部400が検索した作業者データの項目と、事故データベース200に記憶されている事故データの項目とのすべてではなく、その中の任意の項目であっても良い。環境データの項目についても同様である。また、環境データを比較項目から除外するものであっても良い。
【0021】
さらに、読み出し部500は、上記一致した項目の数をスコアとしてカウントする。作業者識別情報「10000001」の作業者データの各項目および環境データ(ここでは、天候)と、No.1の事故データの各項目とを比較すると、作業者の性別のみが互いに一致する。そのため、読み出し部500は、No.1の事故データについて、スコアを「1」とする。また、作業者識別情報「10000001」の作業者データの各項目および環境データ(ここでは、天候)と、No.2の事故データの各項目とを比較すると、天候、作業者の性別、年齢層、作業工程および作業内容が互いに一致する。そのため、読み出し部500は、No.2の事故データについて、スコアを「5」とする。なお、読み出し部500は、項目に応じてあらかじめ設定された重みづけを考慮してスコアをカウントするものであっても良い。つまり、一致した項目の数が「5」であっても、天候が一致した場合には「1」、作業者の性別が一致した場合には「0.5」、年齢層が一致した場合には「0.8」、作業工程が一致した場合には「1」、作業内容が一致した場合には「1.2」としておき、それらを合計した「4.5」をそのスコアとしてカウントするものであっても良い。
【0022】
出力部600は、読み出し部500が読み出した事故データに基づいた出力情報を出力する。この出力情報は、事故データそのものであっても良いし、事故内容を示すものであっても良い。また、この出力情報は、事故データが示す事故が発生(再発)しないように注意を促す情報であっても良い。この場合、注意を促す情報が事故内容と対応付けられて事故データベース200に記憶されていても良い。出力部600は、出力情報をスコアの高い順に出力するものであっても良いし、スコアの高い事故データであるほど、それ以外の事故データに基づいた出力情報よりも強調して出力するものであっても良い。さらに、出力部600は、スコアの高い方から所定の数だけ出力情報を出力するものであっても良いし、スコアが所定の閾値を超えた事故データに基づいた出力情報を出力するものであっても良い。なお、出力部600は、出力情報を表示、音声出力、印刷等で外部へ出力する。
【0023】
以下に、
図1に示した情報処理システムにおける情報処理方法について説明する。
図4は、
図1に示した情報処理システムにおける情報処理方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【0024】
まず、入力部300が、外部から受け付ける操作に基づいて、作業者識別情報が含まれる情報を入力すると(ステップS1)、検索部400は、入力された作業者識別情報に基づいて作業者データを作業者データベース100から検索する(ステップS2)。すると、読み出し部500が、環境データおよび検索部400が検索した作業者データと、事故データベース200に記憶されている事故データとを互いに比較する(ステップS3)。読み出し部500は、比較の結果、環境データおよび検索部400が検索した作業者データの各項目と、事故データベース200に記憶されている事故データの各項目とで、互いに一致する項目があるかどうかを判定する(ステップS4)。互いに一致する項目がある場合、読み出し部500は、その項目がある事故データを事故データベース200から読み出す(ステップS5)。また、読み出し部500は、互いに一致する項目の数に応じて、その事故データのスコアをカウントする(ステップS6)。その後、出力部600は、スコアに応じて、事故データ(出力情報)を出力する(ステップS7)。
【0025】
以下に、ステップS7における出力態様についていくつか例を挙げる。以下の例においては、出力部600は、情報を表示する出力装置610に搭載されているものである。出力装置610は、表示機能を具備しており、作業者が作業者識別情報を入力する装置に設けられたものであっても良いし、作業者が作業を行う前にその画面を見ることができる位置に設置されている表示装置であっても良いし、作業者が所持する携帯端末等の表示装置であっても良い。
【0026】
図5は、
図1に示した出力部600が出力情報を出力した態様の第1の例を示す図である。
図5に示すように、出力装置610は、事故データを示す出力情報を複数表示する。ここでは、2015年12月15日の事故データのスコアが一番高く、次に2009年8月20日の事故データのスコアが高く、その次に2019年9月8日の事故データのスコアが高い場合を示す。このように、出力装置610は、事故データを出力情報としてスコアの高い順に表示する。
【0027】
図6は、
図1に示した出力部600が出力情報を出力した態様の第2の例を示す図である。
図6に示すように、出力装置610は、事故データを示す出力情報を1つだけ表示する。この場合、出力装置610は、環境データおよび作業者データと、項目の内容が一致する事故データのうちスコアが最も高いものだけを表示する。
【0028】
図7は、
図1に示した出力部600が出力情報を出力した態様の第3の例を示す図である。
図7に示すように、出力装置610は、環境データおよび作業者データと、項目の内容が一致する事故データが示す事故が発生(再発)しないように注意を促す情報を複数表示する。
【0029】
このように、作業者ごとに、その作業者の属性やそのときの環境に基づいて、過去の事故データを抽出して、抽出した事故データに応じた出力情報を出力する。そのため、各作業者がこれから行う作業において、過去に発生した事故事例に基づいた注意喚起を作業者ごとに行うことができる。
(第2の実施の形態)
【0030】
図8は、本発明の情報処理システムの第2の実施の形態を示す図である。本形態における情報処理システムは
図8に示すように、作業者データベース100と、事故データベース200と、入力部300と、検索部400と、読み出し部500と、出力部601と、検知部701とを有する。作業者データベース100、事故データベース200、入力部300、検索部400および読み出し部500は、
図1に示した第1の実施の形態におけるものと同じものである。
【0031】
検知部701は、作業者が作業を行う作業場所に到着したことを検知する。例えば、検知部701は、作業者が作業を行う作業場所に設置された、作業者が作業場所に入るときにIDカードをかざしてIDカードに書き込まれた作業者識別情報を読み取るカードリーダであっても良い。また、検知部701は、作業者が作業を行う作業場所に設置されたICタグリーダであって、作業者が所持するICタグに書き込まれた作業者識別情報を読み取って、作業者を検知するものであっても良い。また、検知部701は、ドローンのような無人航空機に搭載され、作業者を追跡して作業者が作業を行う作業場所に到着したことを検知するものであっても良い。
【0032】
出力部601は、
図1に示した第1の実施の形態における出力部600が具備する機能に加えて、作業者が作業場所に到着したことを検知部701が検知したタイミングで出力情報を出力する。出力部601が出力する出力情報を当該作業者が見ることが必要となるため、出力部601は、その作業場所に設置された出力装置や、作業者が所持する携帯端末装置に具備されている。
【0033】
以下に、
図8に示した情報処理システムにおける情報処理方法について説明する。
図9は、
図8に示した情報処理システムにおける情報処理方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【0034】
まず、入力部300が、外部から受け付ける操作に基づいて、作業者識別情報が含まれる情報を入力すると(ステップS11)、検索部400は、入力された作業者識別情報に基づいて作業者データを作業者データベース100から検索する(ステップS12)。すると、読み出し部500が、環境データおよび検索部400が検索した作業者データと、事故データベース200に記憶されている事故データとを互いに比較する(ステップS13)。読み出し部500は、比較の結果、環境データおよび検索部400が検索した作業者データの各項目と、事故データベース200に記憶されている事故データの各項目とで、互いに一致する項目があるかどうかを判定する(ステップS14)。互いに一致する項目がある場合、読み出し部500は、その項目がある事故データを事故データベース200から読み出す(ステップS15)。また、読み出し部500は、互いに一致する項目の数に応じて、その事故データのスコアをカウントする(ステップS16)。
【0035】
その後、検知部701が、作業者が作業場所に到着したことを検知すると(ステップS17)、出力部601は、スコアに応じて、事故データ(出力情報)を出力する(ステップS18)。
【0036】
図10は、
図8に示した出力部601が出力情報を出力した態様の一例を示す図である。
図10に示すように、出力部601が具備された出力装置611は、環境データおよび作業者データと、項目の内容が一致する事故データが示す事故が発生(再発)しないように注意を促す情報を複数表示する。
図10に示すように、出力装置611はスマートフォンのような携帯端末装置であっても良い。なお、出力装置611は、
図5や
図6に示したような事故データを表示しても良い。
【0037】
このように、作業者ごとに、その作業者の属性やそのときの環境に基づいて、過去の事故データを抽出して、抽出した事故データに応じた出力情報を出力する。さらに、その出力情報の出力のタイミングが、作業者が作業場所に到着した時となるような構成とする。そのため、各作業者がこれから行う作業において、過去に発生した事故事例に基づいた注意喚起を作業者ごとに行うことができる。さらに、作業者が作業場所に到着した時に出力情報が出力されるため、作業者が作業を行う直前の当該作業者への通知となり、作業者への注意喚起の効果が高まる。
(第3の実施の形態)
【0038】
図11は、本発明の情報処理システムの第3の実施の形態を示す図である。本形態における情報処理システムは
図11に示すように、作業者データベース102と、事故データベース200と、入力部300と、検索部400と、読み出し部500と、出力部602と、提案情報データベース802と、更新部902とを有する。事故データベース200、入力部300、検索部400および読み出し部500は、
図1に示した第1の実施の形態におけるものと同じものである。
【0039】
提案情報データベース802は、作業者の属性と作業工程とに応じた提案情報を記憶する第3のデータベースである。提案情報データベース802に記憶されている提案情報は、保守者や管理者等によって作業者の属性と作業工程とにあらかじめ対応付けられて設定されている。
【0040】
図12は、
図11に示した提案情報データベース802に記憶されている提案情報の一例を示す図である。
図11に示した提案情報データベース802には
図12に示すように、作業工程と年齢層とアドバイスとが対応付けられて記憶されている。アドバイスは、作業が終了した作業者に対する提案の内容(提案情報)である。例えば、
図12に示すように、作業工程「A-1」と、年齢層「20~30代」と、アドバイス「真っすぐ家に帰りましょう。」とが対応付けられて記憶されている。これは、A-1の作業工程を行った、年齢層が20から30代の作業者に対する提案情報が「真っすぐ家に帰りましょう。」であることを示している。また、作業工程「A-1」と、年齢層「40代~」と、アドバイス「今日は8時間以上の睡眠をとりましょう。」とが対応付けられて記憶されている。これは、A-1の作業工程を行った、年齢層が40代以上の作業者に対する提案情報が「今日は8時間以上の睡眠をとりましょう。」であることを示している。また、作業工程「A-2」と、年齢層「20~30代」と、アドバイス「なるべく遠くを見つめましょう。」とが対応付けられて記憶されている。これは、A-2の作業工程を行った、年齢層が20から30代の作業者に対する提案情報が「なるべく遠くを見つめましょう。」であることを示している。また、作業工程「A-2」と、年齢層「40代~」と、アドバイス「まぶたを温めましょう。」とが対応付けられて記憶されている。これは、A-2の作業工程を行った、年齢層が40代以上の作業者に対する提案情報が「まぶたを温めましょう。」であることを示している。
【0041】
出力部602は、第1の実施の形態における出力部600および第2の実施の形態における出力部601に具備する機能に加えて、所定のタイミングで作業者の属性と作業工程とに応じた提案情報を提案情報データベース802から読み出し、作業者が作業を終了した結果を入力部300に入力することを促す情報と提案情報とを出力する。この所定のタイミングは、あらかじめ設定されたものであって、例えば、作業が終了する定時や、作業者が作業現場を退出するために作業者識別情報を専用のリーダに読み取らせたタイミング、作業者の退社時刻等、作業者がその日の作業が終了した結果を入力することができるタイミングであれば良い。出力部602は、作業者の作業工程と年齢層とを検索キーとして提案情報(
図12に示したアドバイス)を提案情報データベース802から読み出す。
【0042】
作業者データベース102は、
図1に示した作業者データベース100が記憶している情報に加えて、作業者に付与するポイントを記憶する。更新部902は、作業者が作業終了後に入力部300を操作することで入力部300に入力された作業を終了した結果に基づいて、作業者データベース102に記憶されているポイントを更新していく。更新部902は、作業者が作業終了後に入力部300を操作することで入力部300に入力された作業を終了した結果が、所定のものである場合、作業者データベース102に記憶されているポイントを所定の数だけ増加させる。
【0043】
以下に、
図11に示した情報処理システムにおける情報処理方法について説明する。
図13は、
図11に示した情報処理システムにおける情報処理方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【0044】
所定のタイミングになると(ステップS21)、出力部602は、提案情報データベース802から提案情報を読み出す(ステップS22)。ここで、所定のタイミングになったかどうかは、例えば、出力部602が設置されている場所に設けられた時計があらかじめ設定された時刻を示しているかどうかや、作業者が作業場所を退出するために作業者識別情報が書き込まれたIDカードをカードリーダにかざしたかどうか(IDカードに書き込まれた作業者識別情報を読み取ったかどうか)を検知することによって、判定されるものであっても良い。また、出力部602は、第1の実施の形態におけるステップS7や第2の実施の形態におけるステップS18において出力の対象となる作業者の作業者識別情報(属性)および作業工程を認識しているため、その作業者ごとの属性と作業工程とに応じた提案情報を提案情報データベース802から読み出す。
【0045】
続いて出力部602は、作業結果を入力するための画面とステップS22で読み出した提案情報とを出力(表示)する(ステップS23)。作業結果を入力するための画面は、あらかじめ設定されている質問事項が含まれる表示画面である。
【0046】
図14は、ステップS23にて出力部602が表示する画面の一例を示す図である。
図14に示した出力装置612は、出力部602の機能と入力部300の機能とを兼ね備えている。
図14に示すように、出力装置612は、その日の作業が予定通りに完了したかどうかの入力を促す内容と、その作業者に応じた提案情報とが含まれる画面を表示する。
図14に示した例では、その日の作業が予定通りに完了したかどうかの入力を選択できるような表示画面となっている。また、
図14に示した例では、提案情報が「今日は8時間以上の睡眠をとりましょう。」という表示となっている。これは、例えば、その作業者が20~30代であって、その日の作業工程がA-2である場合、提案情報データベース802に記憶されている提案情報が
図12に示したような対応付けであると、出力部602がその対応付けから読み出した「今日は8時間以上の睡眠をとりましょう。」が提案情報となる。
【0047】
その後、出力装置612に具備された入力部300が、結果の入力があったかどうかを判定する(ステップS24)。具体的には、入力部300は、出力部602が
図14に示したように表示した選択肢にしたがって選択が行われたかどうかを判定する。結果の入力があった場合、更新部902は入力部300が入力した内容(結果)が、ポイントを更新すべき内容であるかどうかを判定する(ステップS25)。更新部902は入力部300が入力した内容(結果)が、ポイントを更新すべき内容である場合、作業者データベース102に記憶されている、その作業者の作業者識別情報と対応付けられたポイントを更新する(アップさせる)(ステップS26)。ポイントを更新すべき内容とは、例えば、入力された結果情報が、その日の作業が予定通りに完了したというものが挙げられる。一方、更新部902は入力部300が入力した内容(結果)が、ポイントを更新すべき内容ではない場合は、ステップS26の処理は行わない。
【0048】
なお、本形態においても、
図8に示した検知部701が設けられていても良い。また、提案情報データベース802は、各作業工程に応じた安全や健康に関する情報やクイズを記憶しておき、出力部602は、作業者が行った作業工程に基づいて情報やクイズを提案情報データベース802から読み出して、提案情報を出力するタイミングでその情報やクイズを出力するものであっても良い。
【0049】
このように、作業者が終了した後、その作業に応じた情報を出力する。また、作業の結果に基づいて、ポイントを付与する。そのため、各作業者がその日の作業についての情報や作業状況に応じたモチベーションを得ることができ、その後の作業の効率が向上する期待を持つことができる。
【0050】
以上、各構成要素に各機能(処理)それぞれを分担させて説明したが、この割り当ては上述したものに限定しない。また、構成要素を所定の割り当てでいくつかの装置に搭載するものであっても良い。
【0051】
上述した各構成要素が行う処理は、目的に応じてそれぞれ作製された論理回路で行うようにしても良い。また、処理内容を手順として記述したコンピュータプログラム(以下、プログラムと称する)を、各構成要素を具備した装置(以下、情報処理装置と称する)にて読取可能な記録媒体に記録し、この記録媒体に記録されたプログラムを情報処理装置に読み込ませ、実行するものであっても良い。情報処理装置にて読取可能な記録媒体とは、フロッピー(登録商標)ディスク、光磁気ディスク、DVD(Digital Versatile Disc)、CD(Compact Disc)、Blu-ray(登録商標) Disc、USB(Universal Serial Bus)メモリなどの移設可能な記録媒体の他、情報処理装置に内蔵されたROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のメモリやHDD(Hard Disc Drive)等を指す。この記録媒体に記録されたプログラムは、情報処理装置に設けられたCPUにて読み込まれ、CPUの制御によって、上述したものと同様の処理が行われる。ここで、CPUは、プログラムが記録された記録媒体から読み込まれたプログラムを実行するコンピュータとして動作するものである。
【符号の説明】
【0052】
100,102 作業者データベース
200 事故データベース
300 入力部
400 検索部
500 読み出し部
600,601,602 出力部
610,611,612 出力装置
701 検知部
802 提案情報データベース
902 更新部