(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】測定装置
(51)【国際特許分類】
G01R 31/28 20060101AFI20240528BHJP
G01R 27/02 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
G01R31/28 K
G01R27/02 A
(21)【出願番号】P 2020001808
(22)【出願日】2020-01-09
【審査請求日】2022-11-25
(31)【優先権主張番号】P 2019004025
(32)【優先日】2019-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019138416
(32)【優先日】2019-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104787
【氏名又は名称】酒井 伸司
(72)【発明者】
【氏名】竹内 悟朗
(72)【発明者】
【氏名】小林 昌史
(72)【発明者】
【氏名】重田 洋二郎
(72)【発明者】
【氏名】酒井 啓至
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-267928(JP,A)
【文献】特開2006-184069(JP,A)
【文献】特開平11-295375(JP,A)
【文献】特開平05-034398(JP,A)
【文献】米国特許第06452410(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/28
G01R 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象を保持可能に構成された保持部と、
前記測定対象にプロービングさせられて当該測定対象から第1の高周波信号を入力するプローブと、
前記保持部によって保持された前記測定対象に対して前記プローブをプロービング可能に少なくとも当該保持部に対する当該プローブの移動が可能に構成された第1の移動機構と、
前記第1の高周波信号をA/D変換して第1のデータを生成する第1のA/D変換部を有すると共に前記プローブが接続されるプローブ接続部が設けられた信号処理部と、
前記第1の移動機構を制御して前記プローブを前記測定対象にプロービングさせると共に前記第1のデータに基づいて当該測定対象についての予め規定された被測定量を特定可能な測定結果データを生成する測定処理を実行する処理部とを備えた測定装置であって、
複数の前記信号処理部を備えると共に、前記第1の移動機構による前記プローブの前記保持部に対する相対的な移動によって当該プローブをプロービング可能なプロービング可能領域内に配設された校正基準部を備え、
前記保持部は、前記測定対象および前記校正基準部を前記プロービング可能領域内に並べて載置可能に構成され、
前記第1の移動機構は、前記保持部および前記校正基準部に対して前記各信号処理部を別個独立して移動可能に構成され、
前記信号処理部は、前記プローブ接続部、前記第1のA/D変換部
、当該プローブ接続部から当該第1のA/D変換部に至る第1の信号伝達経路を構成する第1の構成要素
、第2の高周波信号を生成する信号生成部、当該第2の高周波信号をA/D変換して第2のデータを生成する第2のA/D変換部、当該信号生成部から前記プローブ接続部に至る第2の信号伝達経路を構成する第2の構成要素、および当該信号生成部から当該第2のA/D変換部に至る第3の信号伝達経路を構成する第3の構成要素を備え、
前記プローブ接続部、前記第1のA/D変換
部、前記第1の構成要素
、前記信号生成部、前記第2のA/D変換部、前記第2の構成要素および前記第3の構成要素は、相互に位置決めされて相互間の位置ずれが規制された状態で前記プローブと共に前記第1の移動機構に取り付けられ、
前記処理部は、前記第1の移動機構を制御して前記プローブを前記校正基準部にプロービングさせて当該校正基準部から前記第1の高周波信号を入力させると共に、前記第1のA/D変換部によって生成された前記第1のデータに基づき、前記測定対象についての前記測定結果データを補正するための補正用データを生成する補正用データ生成処理を実行
可能に構成され、前記測定処理において、前記第1の移動機構を制御して前記プローブを前記測定対象にプロービングさせ、かつ前記信号生成部によって生成される前記第2の高周波信号を当該測定対象に対して当該プローブを介して出力させた状態で前記第1のA/D変換部によって生成された前記第1のデータおよび前記第2のA/D変換部によって生成された前記第2のデータに基づいて前記測定結果データを生成し、かつ前記補正用データ生成処理において、前記第1の移動機構を制御して前記プローブを前記校正基準部にプロービングさせ、かつ前記信号生成部によって生成される前記第2の高周波信号を当該校正基準部に対して当該プローブを介して出力させた状態で前記第1のA/D変換部によって生成された前記第1のデータおよび前記第2のA/D変換部によって生成された前記第2のデータに基づいて前記補正用データを生成すると共に、いずれかの前記信号処理部に接続された前記プローブから前記第2の高周波信号を出力させ、かつ当該いずれかの信号処理部に接続された当該プローブから前記第1の高周波信号を入力させた状態で、当該いずれかの信号処理部における前記第1のA/D変換部によって生成される前記第1のデータ、および当該いずれかの信号処理部における前記第2のA/D変換部によって生成される前記第2のデータに基づいて、前記測定処理時には前記測定結果データを生成し、かつ前記補正用データ生成処理時には前記補正用データを生成する第1の処理と、いずれかの前記信号処理部に接続された前記プローブから前記第2の高周波信号を出力させ、かつ他のいずれかの信号処理部に接続された前記プローブから前記第1の高周波信号を入力させた状態で、当該他のいずれかの信号処理部における前記第1のA/D変換部によって生成される前記第1のデータ、および当該いずれかの信号処理部における前記第2のA/D変換部によって生成される前記第2のデータに基づいて、前記測定処理時には前記測定結果データを生成し、かつ前記補正用データ生成処理時には前記補正用データを生成する第2の処理とを実行可能に構成され、当該第2の処理において第1の周波数の前記第2の高周波信号を出力させる前記測定処理としての第1の測定処理の後に、前記第2の処理において前記第1の周波数とは異なる第2の周波数の前記第2の高周波信号を出力させる前記測定処理としての第2の測定処理を実行するときに、前記第2の処理において前記第2の周波数の前記第2の高周波信号を出力させる前記補正用データ生成処理を実行する測定装置。
【請求項2】
測定対象を保持可能に構成された保持部と、
前記測定対象にプロービングさせられて当該測定対象から第1の高周波信号を入力するプローブと、
前記保持部によって保持された前記測定対象に対して前記プローブをプロービング可能に少なくとも当該保持部に対する当該プローブの移動が可能に構成された第1の移動機構と、
前記第1の高周波信号をA/D変換して第1のデータを生成する第1のA/D変換部を有すると共に前記プローブが接続されるプローブ接続部が設けられた信号処理部と、
前記第1の移動機構を制御して前記プローブを前記測定対象にプロービングさせると共に前記第1のデータに基づいて当該測定対象についての予め規定された被測定量を特定可能な測定結果データを生成する測定処理を実行する処理部とを備えた測定装置であって、
複数の前記信号処理部を備えると共に、前記第1の移動機構による前記プローブの前記保持部に対する相対的な移動によって当該プローブをプロービング可能なプロービング可能領域内に配設された校正基準部を備え、
前記保持部は、前記プロービング可能領域内に前記校正基準部と並べて配置され、
前記第1の移動機構は、前記保持部および前記校正基準部に対して前記各信号処理部を別個独立して移動可能に構成され、
前記信号処理部は、前記プローブ接続部、前記第1のA/D変換部
、当該プローブ接続部から当該第1のA/D変換部に至る第1の信号伝達経路を構成する第1の構成要素
、第2の高周波信号を生成する信号生成部、当該第2の高周波信号をA/D変換して第2のデータを生成する第2のA/D変換部、当該信号生成部から前記プローブ接続部に至る第2の信号伝達経路を構成する第2の構成要素、および当該信号生成部から当該第2のA/D変換部に至る第3の信号伝達経路を構成する第3の構成要素を備え、
前記プローブ接続部、前記第1のA/D変換
部、前記第1の構成要素
、前記信号生成部、前記第2のA/D変換部、前記第2の構成要素および前記第3の構成要素は、相互に位置決めされて相互間の位置ずれが規制された状態で前記プローブと共に前記第1の移動機構に取り付けられ、
前記処理部は、前記第1の移動機構を制御して前記プローブを前記校正基準部にプロービングさせて当該校正基準部から前記第1の高周波信号を入力させると共に、前記第1のA/D変換部によって生成された前記第1のデータに基づき、前記測定対象についての前記測定結果データを補正するための補正用データを生成する補正用データ生成処理を実行
可能に構成され、前記測定処理において、前記第1の移動機構を制御して前記プローブを前記測定対象にプロービングさせ、かつ前記信号生成部によって生成される前記第2の高周波信号を当該測定対象に対して当該プローブを介して出力させた状態で前記第1のA/D変換部によって生成された前記第1のデータおよび前記第2のA/D変換部によって生成された前記第2のデータに基づいて前記測定結果データを生成し、かつ前記補正用データ生成処理において、前記第1の移動機構を制御して前記プローブを前記校正基準部にプロービングさせ、かつ前記信号生成部によって生成される前記第2の高周波信号を当該校正基準部に対して当該プローブを介して出力させた状態で前記第1のA/D変換部によって生成された前記第1のデータおよび前記第2のA/D変換部によって生成された前記第2のデータに基づいて前記補正用データを生成すると共に、いずれかの前記信号処理部に接続された前記プローブから前記第2の高周波信号を出力させ、かつ当該いずれかの信号処理部に接続された当該プローブから前記第1の高周波信号を入力させた状態で、当該いずれかの信号処理部における前記第1のA/D変換部によって生成される前記第1のデータ、および当該いずれかの信号処理部における前記第2のA/D変換部によって生成される前記第2のデータに基づいて、前記測定処理時には前記測定結果データを生成し、かつ前記補正用データ生成処理時には前記補正用データを生成する第1の処理と、いずれかの前記信号処理部に接続された前記プローブから前記第2の高周波信号を出力させ、かつ他のいずれかの信号処理部に接続された前記プローブから前記第1の高周波信号を入力させた状態で、当該他のいずれかの信号処理部における前記第1のA/D変換部によって生成される前記第1のデータ、および当該いずれかの信号処理部における前記第2のA/D変換部によって生成される前記第2のデータに基づいて、前記測定処理時には前記測定結果データを生成し、かつ前記補正用データ生成処理時には前記補正用データを生成する第2の処理とを実行可能に構成され、当該第2の処理において第1の周波数の前記第2の高周波信号を出力させる前記測定処理としての第1の測定処理の後に、前記第2の処理において前記第1の周波数とは異なる第2の周波数の前記第2の高周波信号を出力させる前記測定処理としての第2の測定処理を実行するときに、前記第2の処理において前記第2の周波数の前記第2の高周波信号を出力させる前記補正用データ生成処理を実行する測定装置。
【請求項3】
測定対象を保持可能に構成された保持部と、
前記測定対象にプロービングさせられて当該測定対象から第1の高周波信号を入力するプローブと、
前記保持部によって保持された前記測定対象に対して前記プローブをプロービング可能に少なくとも当該保持部に対する当該プローブの移動が可能に構成された第1の移動機構と、
前記第1の高周波信号をA/D変換して第1のデータを生成する第1のA/D変換部を有すると共に前記プローブが接続されるプローブ接続部が設けられた複数の信号処理部と、
前記第1の移動機構を制御して前記プローブを前記測定対象にプロービングさせると共に前記第1のデータに基づいて当該測定対象についての予め規定された被測定量を特定可能な測定結果データを生成する測定処理を実行する処理部とを備えた測定装置であって、
校正基準部と、
前記第1の移動機構による前記プローブの前記保持部に対する相対的な移動によって当該プローブをプロービング可能なプロービング可能領域内への前記校正基準部の移動が可能に構成された第2の移動機構とを備え、
前記信号処理部は、前記プローブ接続部、第2の高周波信号を生成する信号生成部、前記第1のA/D変換部、前記第2の高周波信号をA/D変換して第2のデータを生成する第2のA/D変換部、当該プローブ接続部から当該第1のA/D変換部に至る第1の信号伝達経路を構成する第1の構成要素、当該信号生成部から当該プローブ接続部に至る第2の信号伝達経路を構成する第2の構成要素、および当該信号生成部から当該第2のA/D変換部に至る第3の信号伝達経路を構成する第3の構成要素を備え、
前記プローブ接続部、前記信号生成部、前記第1のA/D変換部、前記第2のA/D変換部、前記第1の構成要素、前記第2の構成要素および前記第3の構成要素は、相互に位置決めされて相互間の位置ずれが規制された状態で前記プローブと共に前記第1の移動機構に取り付けられ、
前記第1の移動機構は、前記保持部および前記校正基準部に対して前記各信号処理部を別個独立して移動可能に構成され、
前記処理部は、
前記第2の移動機構を制御して前記校正基準部を前記プロービング可能領域内に移動させ、かつ前記第1の移動機構を制御して前記プローブを前記校正基準部にプロービングさせて当該校正基準部から前記第1の高周波信号を入力させると共に、前記第1のA/D変換部によって生成された前記第1のデータに基づき、前記測定対象についての前記測定結果データを補正するための補正用データを生成する補正用データ生成処理を実行可能に構成され、
前記測定処理において、前記第1の移動機構を制御して前記プローブを前記測定対象にプロービングさせ、かつ前記信号生成部によって生成される前記第2の高周波信号を当該測定対象に対して当該プローブを介して出力させた状態で前記第1のA/D変換部によって生成された前記第1のデータおよび前記第2のA/D変換部によって生成された前記第2のデータに基づいて前記測定結果データを生成し、かつ前記補正用データ生成処理において、前記第2の移動機構を制御して前記校正基準部を前記プロービング可能領域内に移動させ、前記第1の移動機構を制御して前記プローブを前記校正基準部にプロービングさせ、かつ前記信号生成部によって生成される前記第2の高周波信号を当該校正基準部に対して当該プローブを介して出力させた状態で前記第1のA/D変換部によって生成された前記第1のデータおよび前記第2のA/D変換部によって生成された前記第2のデータに基づいて前記補正用データを生成すると共に、
いずれかの前記信号処理部に接続された前記プローブから前記第2の高周波信号を出力させ、かつ当該いずれかの信号処理部に接続された当該プローブから前記第1の高周波信号を入力させた状態で、当該いずれかの信号処理部における前記第1のA/D変換部によって生成される前記第1のデータ、および当該いずれかの信号処理部における前記第2のA/D変換部によって生成される前記第2のデータに基づいて、前記測定処理時には前記測定結果データを生成し、かつ前記補正用データ生成処理時には前記補正用データを生成する第1の処理と、いずれかの前記信号処理部に接続された前記プローブから前記第2の高周波信号を出力させ、かつ他のいずれかの信号処理部に接続された前記プローブから前記第1の高周波信号を入力させた状態で、当該他のいずれかの信号処理部における前記第1のA/D変換部によって生成される前記第1のデータ、および当該いずれかの信号処理部における前記第2のA/D変換部によって生成される前記第2のデータに基づいて、前記測定処理時には前記測定結果データを生成し、かつ前記補正用データ生成処理時には前記補正用データを生成する第2の処理とを実行可能に構成され、かつ当該第2の処理において第1の周波数の前記第2の高周波信号を出力させる前記測定処理としての第1の測定処理の後に、前記第2の処理において前記第1の周波数とは異なる第2の周波数の前記第2の高周波信号を出力させる前記測定処理としての第2の測定処理を実行するときに、前記第2の処理において前記第2の周波数の前記第2の高周波信号を出力させる前記補正用データ生成処理を実行する測定装置。
【請求項4】
前記処理部は、前記測定装置が起動されたとの条件、前記プローブが交換されたとの条件、前記信号処理部の温度が予め設定された温度を超えて変化したとの条件、前記測定対象および前記校正基準部に対する前記プローブのプロービング回数が予め設定された回数に達したとの条件、当該測定装置の連続稼働時間が予め設定された時間に達したとの条件、および前記測定結果データの値と対応する基準値とが予め設定された相違量を超えて相違するとの条件のうちの予め規定された条件が満たされたか否かを監視すると共に、当該予め規定された条件が満たされたときに前記補正用データ生成処理を実行する請求項1から
3のいずれかに記載の測定装置。
【請求項5】
前記処理部は、前記測定対象についての前記測定結果データを前記補正用データに基づいて補正するデータ補正処理を実行する請求項1から
4のいずれかに記載の測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象から入力した高周波信号に基づいて予め規定された被測定量を測定可能に構成された測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の測定装置として、複数の実装用電極が設けられた回路基板の部品実装面がシールド導電層によって覆われたモジュールを検査対象として電気的に検査可能な検査装置が下記の特許文献に開示されている。この検査装置は、測定基板、ノズル、駆動機構および制御装置を備えている。
【0003】
測定基板は、モジュールの回路基板における各実装用電極を制御装置に接続するための接続具であって、各実装用電極にそれぞれ接触させられる複数の測定端子がモジュールの載置面に設けられている。この測定基板の外側面には、各測定端子にそれぞれ接続された複数の接続端子が設けられており、この接続端子に接続したケーブルを介して各実装用電極を制御装置に接続することが可能となっている。ノズルは、シールド導電層を吸着してモジュールを保持可能に構成されると共に、シールド導電層に接触する部分が導電性材料で形成されて「プローブ」として機能するように構成されている。このノズルは、制御装置に対してケーブルによって電気的に接続されている。
【0004】
駆動機構は、モジュールを保持した状態のノズルを移動させることでモジュールを測定基板上に搬送して載置面に載置すると共に、測定基板に向けてモジュールを押圧することで各実装用電極を各測定端子に対して押し付けた状態とする。制御装置は、ノズルによるモジュールの保持、および駆動機構によるノズルの移動を制御する。また、制御装置は、各測定端子を介してモジュール(各実装用電極)に検査用信号を順次入出力してモジュールの電気的特性を測定すると共に、シールド導電層に接触させたノズルと、実装用電極に接触させた測定端子との間の抵抗値を測定して導通状態の検査などを実行する。
【0005】
この検査装置によるモジュールの検査時には、最初に、駆動機構によってノズルを移動させて検査対象のモジュールにおけるシールド導電層に当接させると共に、ノズルによってモジュールを吸着して保持させる。この際には、シールド導電層がノズル(プローブ)およびケーブルを介して制御装置に接続された状態となる。次いで、モジュールを保持した状態のノズルを測定基板上に移動させて測定基板の載置面にモジュールを載置する。この際には、モジュールの各実装用電極が測定基板の各測定端子にそれぞれ接触させられて各実装用電極が制御装置に接続された状態となる。
【0006】
続いて、各測定端子を介してモジュールに検査用信号を入力してモジュールの電気的特性を測定すると共に、ノズル(プローブ)が接しているシールド導電層と各測定端子が接している各実装用電極との間の抵抗値の測定などを実行する。これにより、測定結果に基づいてモジュールの良否が検査される。この後、検査を完了したモジュールを検査済みモジュールの回収用トレイに搬送することにより、一連の検査処理が完了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2012-159359号公報(第4-5頁、第1-4図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、上記特許文献に開示の検査装置には、以下のような解決すべき課題が存在する。具体的には、上記の検査装置では、モジュールのシールド導電層にノズル(プローブ)を接触させると共に、モジュールの回路基板(回路基板に形成された各実装用電極)に測定基板の各測定端子をそれぞれ接触させることによって制御装置にモジュールを接続して検査をする構成が採用されている。この場合、各測定端子を接触させるべき実装用電極の数や配置は、検査対象のモジュールの種類に応じて相違する。したがって、上記の検査装置では、異なる種類のモジュールを検査しようとしたときに、新たな検査対象のモジュールにおける実装用電極の数や配置に対応して測定端子を配設した新たな測定基板を製作する必要があり、これに起因して検査コストの低減が困難となっている。
【0009】
このような課題を解決すべく、出願人は、上記特許文献に開示の検査装置における測定基板の測定端子に代えて数本のコンタクトプローブ(以下、単に「プローブ」ともいう)を使用して、モジュールの回路基板における各実装用電極にプローブを順次プロービングさせることでモジュールを制御装置に接続させる構成の検査装置を試作した。出願人が試作した検査装置によれば、回路基板に形成されている実装用電極の数や配置に対応してプロービングの回数やプロービング位置を変更するだけで各種のモジュールを検査することが可能となる。このため、出願人が試作した検査装置では、モジュールの種類に対応させて測定基板を製作する必要がなくなり、検査コストを低減することができている。
【0010】
しかしながら、出願人は、上記特許文献に開示の検査装置の構成に代えて、モジュール(回路基板)の各実装用電極にプローブを順次接触させる構成を採用したときに、各実装用電極の形成位置に応じて測定値に誤差が生じることがあるのを見出した。
【0011】
具体的には、出願人が試作した検査装置では、信号生成部と、モジュールに信号を出力するプローブとが信号ケーブルを介して接続され、かつモジュールから信号を入力するプローブと、入力した信号を処理する信号処理回路(A/D変換部等)とが他の信号ケーブルを介して接続されている。また、出願人が試作した検査装置では、信号生成部や信号処理回路が移動機構の基部と共に静置された状態で、両プローブが移動機構によって任意のプロービング位置(各実装用電極の形成位置)に移動させられる構成が採用されている。
【0012】
また、この種の検査装置では、例えば、検査対象のモジュールにおける各実装用電極の間のインピーダンス測定(スルー測定)に際して、一対の実装用電極のいずれか一方に検査装置から高周波信号を出力しつつ、両実装用電極の他方から検査装置にこの信号を入力して、出力した信号と入力した信号とに基づいて(一例として、出力信号の振幅および位相と、入力信号の振幅および位相とに基づいて)、両実装用電極間のスルー測定を実行する構成が採用されている。
【0013】
この場合、各実装用電極に対するプロービングのために、高周波信号を入出力するプローブを移動させたときには、プロービングする実装用電極の形成位置(すなわち、プロービング位置)に応じて、信号生成部および信号処理回路と両プローブとの間の距離や、両者を接続しているケーブルの形状などが変化して、この変化の度合いに応じて、出力信号の振幅と入力信号の振幅のレベル差や出力信号の位相と入力信号の位相との位相差などが増減する。このため、一対の実装用電極の間の電気的特性に起因する出力信号と入力信号とのレベル差や位相差だけでなく、実装用電極の形成位置、すなわち、実装用電極にプロービングさせたプローブと信号生成部および信号処理回路との位置の相違に起因する出力信号と入力信号とのレベル差や位相差が加味されて検出されることがあり、スルー測定を高精度に実行するのが困難となるおそれがある。したがって、この点を改善するのが好ましい。
【0014】
一方、上記特許文献に開示の検査装置では、測定基板における測定端子およびノズル(プローブ)の減耗等や、検査装置の温度変化などの影響を受けて、検査対象についての測定値が変化することがある。したがって、検査装置の状態に応じて測定値を補正可能な補正用データを取得する校正作業を定期的に実施するのが好ましい。この場合、この種の検査装置(測定装置)を対象とする校正作業では、一例として、検査対象(測定対象)と同様の測定値が測定される校正基準部(校正用測定体)を用意して、この校正基準部についての測定値に基づいて補正用データを生成する作業手順が広く採用されている。しかしながら、上記特許文献に開示の検査装置では、検査対象のモジュールにおける実装用電極に対応させて測定基板に測定端子が配設されているため、このような測定基板に接続可能とするために、モジュールの種類毎に校正基準部を用意する必要がある。このため、上記特許文献に開示の検査装置では、装置の校正に要するコストの低減が困難となっている。
【0015】
また、この種の検査装置(測定装置)では、上記のように検査対象の種類毎に校正基準部を用意するのが困難であるとの現状に鑑み、例えば、制御装置から測定基板を切り離し、代わりに、校正基準部を制御装置に直接接続した状態(測定基板を介さずに校正基準部を制御装置に接続した状態)で測定処理を行って、その測定値に基づいて補正用データを生成することも行われている。このような校正作業によれば、1種類の校正基準部を用意するだけで、制御装置の温度変化等に起因する測定値の変化を検出することができる。しかしながら、モジュールの検査時に各実装用電極に対して実際に接触させられる測定基板の温度変化や、測定基板における各測定端子の減耗の影響については一切検出することができないため、検査対象のモジュールについての測定値を正確に補正可能な補正用データを得ることはできない。また、校正作業前の測定基板の切り離しおよび校正基準部の接続の作業や、校正作業後の校正基準部の切り離しおよび測定基板の接続の作業に長時間を要することから、検査を中断しなくてはならない時間が長くなり、検査効率の低下を招くという問題点もある。
【0016】
本発明は、かかる解決すべき課題に鑑みてなされたものであり、測定に要するコストの高騰や測定効率の低下を招くことなく、測定対象についての被測定量を正確に測定し得る測定装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成すべく、請求項1記載の測定装置は、測定対象を保持可能に構成された保持部と、前記測定対象にプロービングさせられて当該測定対象から第1の高周波信号を入力するプローブと、前記保持部によって保持された前記測定対象に対して前記プローブをプロービング可能に少なくとも当該保持部に対する当該プローブの移動が可能に構成された第1の移動機構と、前記第1の高周波信号をA/D変換して第1のデータを生成する第1のA/D変換部を有すると共に前記プローブが接続されるプローブ接続部が設けられた信号処理部と、前記第1の移動機構を制御して前記プローブを前記測定対象にプロービングさせると共に前記第1のデータに基づいて当該測定対象についての予め規定された被測定量を特定可能な測定結果データを生成する測定処理を実行する処理部とを備えた測定装置であって、複数の前記信号処理部を備えると共に、前記第1の移動機構による前記プローブの前記保持部に対する相対的な移動によって当該プローブをプロービング可能なプロービング可能領域内に配設された校正基準部を備え、前記保持部は、前記測定対象および前記校正基準部を前記プロービング可能領域内に並べて載置可能に構成され、前記第1の移動機構は、前記保持部および前記校正基準部に対して前記各信号処理部を別個独立して移動可能に構成され、前記信号処理部は、前記プローブ接続部、前記第1のA/D変換部、当該プローブ接続部から当該第1のA/D変換部に至る第1の信号伝達経路を構成する第1の構成要素、第2の高周波信号を生成する信号生成部、当該第2の高周波信号をA/D変換して第2のデータを生成する第2のA/D変換部、当該信号生成部から前記プローブ接続部に至る第2の信号伝達経路を構成する第2の構成要素、および当該信号生成部から当該第2のA/D変換部に至る第3の信号伝達経路を構成する第3の構成要素を備え、前記プローブ接続部、前記第1のA/D変換部、前記第1の構成要素、前記信号生成部、前記第2のA/D変換部、前記第2の構成要素および前記第3の構成要素は、相互に位置決めされて相互間の位置ずれが規制された状態で前記プローブと共に前記第1の移動機構に取り付けられ、前記処理部は、前記第1の移動機構を制御して前記プローブを前記校正基準部にプロービングさせて当該校正基準部から前記第1の高周波信号を入力させると共に、前記第1のA/D変換部によって生成された前記第1のデータに基づき、前記測定対象についての前記測定結果データを補正するための補正用データを生成する補正用データ生成処理を実行可能に構成され、前記測定処理において、前記第1の移動機構を制御して前記プローブを前記測定対象にプロービングさせ、かつ前記信号生成部によって生成される前記第2の高周波信号を当該測定対象に対して当該プローブを介して出力させた状態で前記第1のA/D変換部によって生成された前記第1のデータおよび前記第2のA/D変換部によって生成された前記第2のデータに基づいて前記測定結果データを生成し、かつ前記補正用データ生成処理において、前記第1の移動機構を制御して前記プローブを前記校正基準部にプロービングさせ、かつ前記信号生成部によって生成される前記第2の高周波信号を当該校正基準部に対して当該プローブを介して出力させた状態で前記第1のA/D変換部によって生成された前記第1のデータおよび前記第2のA/D変換部によって生成された前記第2のデータに基づいて前記補正用データを生成すると共に、いずれかの前記信号処理部に接続された前記プローブから前記第2の高周波信号を出力させ、かつ当該いずれかの信号処理部に接続された当該プローブから前記第1の高周波信号を入力させた状態で、当該いずれかの信号処理部における前記第1のA/D変換部によって生成される前記第1のデータ、および当該いずれかの信号処理部における前記第2のA/D変換部によって生成される前記第2のデータに基づいて、前記測定処理時には前記測定結果データを生成し、かつ前記補正用データ生成処理時には前記補正用データを生成する第1の処理と、いずれかの前記信号処理部に接続された前記プローブから前記第2の高周波信号を出力させ、かつ他のいずれかの信号処理部に接続された前記プローブから前記第1の高周波信号を入力させた状態で、当該他のいずれかの信号処理部における前記第1のA/D変換部によって生成される前記第1のデータ、および当該いずれかの信号処理部における前記第2のA/D変換部によって生成される前記第2のデータに基づいて、前記測定処理時には前記測定結果データを生成し、かつ前記補正用データ生成処理時には前記補正用データを生成する第2の処理とを実行可能に構成され、当該第2の処理において第1の周波数の前記第2の高周波信号を出力させる前記測定処理としての第1の測定処理の後に、前記第2の処理において前記第1の周波数とは異なる第2の周波数の前記第2の高周波信号を出力させる前記測定処理としての第2の測定処理を実行するときに、前記第2の処理において前記第2の周波数の前記第2の高周波信号を出力させる前記補正用データ生成処理を実行する。
【0018】
請求項2記載の測定装置は、測定対象を保持可能に構成された保持部と、前記測定対象にプロービングさせられて当該測定対象から第1の高周波信号を入力するプローブと、前記保持部によって保持された前記測定対象に対して前記プローブをプロービング可能に少なくとも当該保持部に対する当該プローブの移動が可能に構成された第1の移動機構と、前記第1の高周波信号をA/D変換して第1のデータを生成する第1のA/D変換部を有すると共に前記プローブが接続されるプローブ接続部が設けられた信号処理部と、前記第1の移動機構を制御して前記プローブを前記測定対象にプロービングさせると共に前記第1のデータに基づいて当該測定対象についての予め規定された被測定量を特定可能な測定結果データを生成する測定処理を実行する処理部とを備えた測定装置であって、複数の前記信号処理部を備えると共に、前記第1の移動機構による前記プローブの前記保持部に対する相対的な移動によって当該プローブをプロービング可能なプロービング可能領域内に配設された校正基準部を備え、前記保持部は、前記プロービング可能領域内に前記校正基準部と並べて配置され、前記第1の移動機構は、前記保持部および前記校正基準部に対して前記各信号処理部を別個独立して移動可能に構成され、前記信号処理部は、前記プローブ接続部、前記第1のA/D変換部、当該プローブ接続部から当該第1のA/D変換部に至る第1の信号伝達経路を構成する第1の構成要素、第2の高周波信号を生成する信号生成部、当該第2の高周波信号をA/D変換して第2のデータを生成する第2のA/D変換部、当該信号生成部から前記プローブ接続部に至る第2の信号伝達経路を構成する第2の構成要素、および当該信号生成部から当該第2のA/D変換部に至る第3の信号伝達経路を構成する第3の構成要素を備え、前記プローブ接続部、前記第1のA/D変換部、前記第1の構成要素、前記信号生成部、前記第2のA/D変換部、前記第2の構成要素および前記第3の構成要素は、相互に位置決めされて相互間の位置ずれが規制された状態で前記プローブと共に前記第1の移動機構に取り付けられ、前記処理部は、前記第1の移動機構を制御して前記プローブを前記校正基準部にプロービングさせて当該校正基準部から前記第1の高周波信号を入力させると共に、前記第1のA/D変換部によって生成された前記第1のデータに基づき、前記測定対象についての前記測定結果データを補正するための補正用データを生成する補正用データ生成処理を実行可能に構成され、前記測定処理において、前記第1の移動機構を制御して前記プローブを前記測定対象にプロービングさせ、かつ前記信号生成部によって生成される前記第2の高周波信号を当該測定対象に対して当該プローブを介して出力させた状態で前記第1のA/D変換部によって生成された前記第1のデータおよび前記第2のA/D変換部によって生成された前記第2のデータに基づいて前記測定結果データを生成し、かつ前記補正用データ生成処理において、前記第1の移動機構を制御して前記プローブを前記校正基準部にプロービングさせ、かつ前記信号生成部によって生成される前記第2の高周波信号を当該校正基準部に対して当該プローブを介して出力させた状態で前記第1のA/D変換部によって生成された前記第1のデータおよび前記第2のA/D変換部によって生成された前記第2のデータに基づいて前記補正用データを生成すると共に、いずれかの前記信号処理部に接続された前記プローブから前記第2の高周波信号を出力させ、かつ当該いずれかの信号処理部に接続された当該プローブから前記第1の高周波信号を入力させた状態で、当該いずれかの信号処理部における前記第1のA/D変換部によって生成される前記第1のデータ、および当該いずれかの信号処理部における前記第2のA/D変換部によって生成される前記第2のデータに基づいて、前記測定処理時には前記測定結果データを生成し、かつ前記補正用データ生成処理時には前記補正用データを生成する第1の処理と、いずれかの前記信号処理部に接続された前記プローブから前記第2の高周波信号を出力させ、かつ他のいずれかの信号処理部に接続された前記プローブから前記第1の高周波信号を入力させた状態で、当該他のいずれかの信号処理部における前記第1のA/D変換部によって生成される前記第1のデータ、および当該いずれかの信号処理部における前記第2のA/D変換部によって生成される前記第2のデータに基づいて、前記測定処理時には前記測定結果データを生成し、かつ前記補正用データ生成処理時には前記補正用データを生成する第2の処理とを実行可能に構成され、当該第2の処理において第1の周波数の前記第2の高周波信号を出力させる前記測定処理としての第1の測定処理の後に、前記第2の処理において前記第1の周波数とは異なる第2の周波数の前記第2の高周波信号を出力させる前記測定処理としての第2の測定処理を実行するときに、前記第2の処理において前記第2の周波数の前記第2の高周波信号を出力させる前記補正用データ生成処理を実行する。
【0019】
請求項3記載の測定装置は、測定対象を保持可能に構成された保持部と、前記測定対象にプロービングさせられて当該測定対象から第1の高周波信号を入力するプローブと、前記保持部によって保持された前記測定対象に対して前記プローブをプロービング可能に少なくとも当該保持部に対する当該プローブの移動が可能に構成された第1の移動機構と、前記第1の高周波信号をA/D変換して第1のデータを生成する第1のA/D変換部を有すると共に前記プローブが接続されるプローブ接続部が設けられた複数の信号処理部と、前記第1の移動機構を制御して前記プローブを前記測定対象にプロービングさせると共に前記第1のデータに基づいて当該測定対象についての予め規定された被測定量を特定可能な測定結果データを生成する測定処理を実行する処理部とを備えた測定装置であって、校正基準部と、前記第1の移動機構による前記プローブの前記保持部に対する相対的な移動によって当該プローブをプロービング可能なプロービング可能領域内への前記校正基準部の移動が可能に構成された第2の移動機構とを備え、前記信号処理部は、前記プローブ接続部、第2の高周波信号を生成する信号生成部、前記第1のA/D変換部、前記第2の高周波信号をA/D変換して第2のデータを生成する第2のA/D変換部、当該プローブ接続部から当該第1のA/D変換部に至る第1の信号伝達経路を構成する第1の構成要素、当該信号生成部から当該プローブ接続部に至る第2の信号伝達経路を構成する第2の構成要素、および当該信号生成部から当該第2のA/D変換部に至る第3の信号伝達経路を構成する第3の構成要素を備え、前記プローブ接続部、前記信号生成部、前記第1のA/D変換部、前記第2のA/D変換部、前記第1の構成要素、前記第2の構成要素および前記第3の構成要素は、相互に位置決めされて相互間の位置ずれが規制された状態で前記プローブと共に前記第1の移動機構に取り付けられ、前記第1の移動機構は、前記保持部および前記校正基準部に対して前記各信号処理部を別個独立して移動可能に構成され、前記処理部は、前記第2の移動機構を制御して前記校正基準部を前記プロービング可能領域内に移動させ、かつ前記第1の移動機構を制御して前記プローブを前記校正基準部にプロービングさせて当該校正基準部から前記第1の高周波信号を入力させると共に、前記第1のA/D変換部によって生成された前記第1のデータに基づき、前記測定対象についての前記測定結果データを補正するための補正用データを生成する補正用データ生成処理を実行可能に構成され、前記測定処理において、前記第1の移動機構を制御して前記プローブを前記測定対象にプロービングさせ、かつ前記信号生成部によって生成される前記第2の高周波信号を当該測定対象に対して当該プローブを介して出力させた状態で前記第1のA/D変換部によって生成された前記第1のデータおよび前記第2のA/D変換部によって生成された前記第2のデータに基づいて前記測定結果データを生成し、かつ前記補正用データ生成処理において、前記第2の移動機構を制御して前記校正基準部を前記プロービング可能領域内に移動させ、前記第1の移動機構を制御して前記プローブを前記校正基準部にプロービングさせ、かつ前記信号生成部によって生成される前記第2の高周波信号を当該校正基準部に対して当該プローブを介して出力させた状態で前記第1のA/D変換部によって生成された前記第1のデータおよび前記第2のA/D変換部によって生成された前記第2のデータに基づいて前記補正用データを生成すると共に、いずれかの前記信号処理部に接続された前記プローブから前記第2の高周波信号を出力させ、かつ当該いずれかの信号処理部に接続された当該プローブから前記第1の高周波信号を入力させた状態で、当該いずれかの信号処理部における前記第1のA/D変換部によって生成される前記第1のデータ、および当該いずれかの信号処理部における前記第2のA/D変換部によって生成される前記第2のデータに基づいて、前記測定処理時には前記測定結果データを生成し、かつ前記補正用データ生成処理時には前記補正用データを生成する第1の処理と、いずれかの前記信号処理部に接続された前記プローブから前記第2の高周波信号を出力させ、かつ他のいずれかの信号処理部に接続された前記プローブから前記第1の高周波信号を入力させた状態で、当該他のいずれかの信号処理部における前記第1のA/D変換部によって生成される前記第1のデータ、および当該いずれかの信号処理部における前記第2のA/D変換部によって生成される前記第2のデータに基づいて、前記測定処理時には前記測定結果データを生成し、かつ前記補正用データ生成処理時には前記補正用データを生成する第2の処理とを実行可能に構成され、かつ当該第2の処理において第1の周波数の前記第2の高周波信号を出力させる前記測定処理としての第1の測定処理の後に、前記第2の処理において前記第1の周波数とは異なる第2の周波数の前記第2の高周波信号を出力させる前記測定処理としての第2の測定処理を実行するときに、前記第2の処理において前記第2の周波数の前記第2の高周波信号を出力させる前記補正用データ生成処理を実行する。
【0024】
請求項4記載の測定装置は、請求項1から3のいずれかに記載の測定装置において、前記処理部は、前記測定装置が起動されたとの条件、前記プローブが交換されたとの条件、前記信号処理部の温度が予め設定された温度を超えて変化したとの条件、前記測定対象および前記校正基準部に対する前記プローブのプロービング回数が予め設定された回数に達したとの条件、当該測定装置の連続稼働時間が予め設定された時間に達したとの条件、および前記測定結果データの値と対応する基準値とが予め設定された相違量を超えて相違するとの条件のうちの予め規定された条件が満たされたか否かを監視すると共に、当該予め規定された条件が満たされたときに前記補正用データ生成処理を実行する。
【0025】
請求項5記載の測定装置は、請求項1から4のいずれかに記載の測定装置において、前記処理部は、前記測定対象についての前記測定結果データを前記補正用データに基づいて補正するデータ補正処理を実行する。
【発明の効果】
【0026】
請求項1,2記載の測定装置では、第1の移動機構によるプローブの保持部に対する相対的な移動によってプローブをプロービング可能なプロービング可能領域内に配設された校正基準部を備え、信号処理部が、プローブ接続部、第1のA/D変換部、および第1の信号伝達経路を構成する第1の構成要素を備え、これらが相互に位置決めされて相互間の位置ずれが規制された状態でプローブと共に第1の移動機構に取り付けられ、処理部が、第1の移動機構を制御してプローブを校正基準部にプロービングさせて校正基準部から第1の高周波信号を入力させると共に、第1のA/D変換部によって生成された第1のデータに基づき、測定対象についての測定結果データを補正するための補正用データを生成する補正用データ生成処理を実行する。
【0027】
したがって、請求項1,2記載の測定装置によれば、上記特許文献に開示の検査装置とは異なり、種類が異なる測定対象毎に測定基板や校正基準部を製作することなく、各種の測定対象や校正基準部に対して第1の移動機構によってプローブを移動させてプロービングさせることで測定対象や校正基準部から第1の高周波信号を入力することができ、測定処理や補正用データ生成処理を行うことができる。このため、測定処理や補正用データ生成処理に要するコストを十分に低減することができる。また、測定対象や校正基準部に対するプローブのプロービング時に、プローブ接続部、第1のA/D変換部および第1の構成要素の相互間の位置ずれが生じないため、これらの位置ずれ(位置関係の変化)に起因して測定値に誤差が生じる事態が好適に回避される結果、正確な測定結果データを確実かつ容易に生成することができる。さらに、測定対象に対してプロービングさせるプローブを第1の移動機構によって移動させて校正基準部にプロービングさせた状態で測定処理を行い、その際に生成される第1のデータに基づいて補正用データを生成することができるため、第1の移動機構によるプローブの移動に要する時間、および測定処理に要する時間を合計した非常に短い時間で補正用データの生成を完了させることができる。この結果、測定対象についての測定(検査)処理を中断する時間を短時間とすることができ、新たな補正用データを頻繁に生成したとしても測定(検査)処理の効率を大きく低下させることがないため、最新の補正用データに基づいて測定結果データを高精度に補正することができる。
【0028】
また、請求項1,2記載の測定装置では、信号処理部が、信号生成部、第2のA/D変換部、第2の信号伝達経路を構成する第2の構成要素、および第3の信号伝達経路を構成する第3の構成要素をさらに備え、プローブ接続部、第1のA/D変換部、第2のA/D変換部、信号生成部、第1の構成要素、第2の構成要素および第3の構成要素が、相互に位置決めされて相互間の位置ずれが規制された状態でプローブと共に前記第1の移動機構に取り付けられ、処理部が、補正用データ生成処理において、第1の移動機構を制御してプローブを校正基準部にプロービングさせ、かつ信号生成部によって生成される第2の高周波信号を校正基準部に対してプローブを介して出力させた状態で第1のA/D変換部によって生成された第1のデータおよび第2のA/D変換部によって生成された第2のデータに基づいて補正用データを生成する。
【0029】
したがって、請求項1,2記載の測定装置によれば、各種の測定対象や校正基準部に対して第1の移動機構によってプローブを移動させてプロービングさせ、その状態で測定対象や校正基準部に対して第2の高周波信号を出力して第1の高周波信号を入力することで、測定処理や補正用データの生成処理を行うことができる。このため、測定処理や補正用データの生成処理に要するコストを十分に低減することができる。また、測定対象や校正基準部に対するプローブのプロービング時に、信号生成部、プローブ接続部、第1のA/D変換部、第2のA/D変換部、第1の構成要素、第2の構成要素および第3の構成要素の相互間の位置ずれが生じないため、これらの位置ずれ(位置関係の変化)に起因して測定値に誤差が生じる事態が好適に回避される結果、正確な測定結果データを容易に生成することができる。さらに、測定対象に対してプロービングさせるプローブを第1の移動機構によって移動させて校正基準部にプロービングさせた状態で測定処理を行い、その際に生成される第1のデータおよび第2のデータに基づいて補正用データを生成することができるため、第1の移動機構によるプローブの移動に要する時間、および測定処理に要する時間を合計した非常に短い時間で補正用データの生成を完了させることができる。この結果、測定対象についての測定(検査)処理を中断する時間を短時間とすることができ、新たな補正用データを頻繁に生成したとしても測定(検査)処理の効率を大きく低下させることがないため、最新の補正用データに基づいて測定結果データを高精度に補正することができる。
【0030】
請求項3記載の測定装置では、校正用基準部と、第1の移動機構によるプローブの保持部に対する相対的な移動によってプローブをプロービング可能なプロービング可能領域内に校正用基準部を移動可能な第2の移動機構とを備え、信号処理部が、プローブ接続部、第1のA/D変換部、および第1の信号伝達経路を構成する第1の構成要素を備え、これらが相互に位置決めされて相互間の位置ずれが規制された状態でプローブと共に第1の移動機構に取り付けられ、処理部が、第2の移動機構を制御して校正用基準部をプロービング可能領域内に移動させ、かつ第1の移動機構を制御してプローブを校正基準部にプロービングさせて校正基準部から第1の高周波信号を入力させると共に、第1のA/D変換部によって生成された第1のデータに基づき、測定対象についての測定結果データを補正するための補正用データを生成する補正用データ生成処理を実行する。
【0031】
したがって、請求項3記載の測定装置によれば、上記特許文献に開示の検査装置とは異なり、種類が異なる測定対象毎に測定基板や校正基準部を製作することなく、各種の測定対象や校正基準部に対して第1の移動機構によってプローブを移動させてプロービングさせることで測定対象や校正基準部から第1の高周波信号を入力することができ、測定処理や補正用データ生成処理を行うことができる。このため、測定処理や補正用データ生成処理に要するコストを十分に低減することができる。また、測定対象や校正基準部に対するプローブのプロービング時に、プローブ接続部、第1のA/D変換部および第1の構成要素の相互間の位置ずれが生じないため、これらの位置ずれ(位置関係の変化)に起因して測定値に誤差が生じる事態が好適に回避される結果、正確な測定結果データを確実かつ容易に生成することができる。さらに、測定対象に対してプロービングさせるプローブを第1の移動機構によって移動させて校正基準部にプロービングさせた状態で測定処理を行い、その際に生成される第1のデータに基づいて補正用データを生成することができるため、第2の移動機構による校正用基準部の移動に要する時間、第1の移動機構によるプローブの移動に要する時間、および測定処理に要する時間を合計した非常に短い時間で補正用データの生成を完了させることができる。この結果、測定対象についての測定(検査)処理を中断する時間を短時間とすることができ、新たな補正用データを頻繁に生成したとしても測定(検査)処理の効率を大きく低下させることがないため、最新の補正用データに基づいて測定結果データを高精度に補正することができる。
【0032】
また、請求項3記載の測定装置では、信号処理部が、信号生成部、第2のA/D変換部、第2の信号伝達経路を構成する第2の構成要素、および第3の信号伝達経路を構成する第3の構成要素をさらに備え、プローブ接続部、第1のA/D変換部、第2のA/D変換部、信号生成部、第1の構成要素、第2の構成要素および第3の構成要素が、相互に位置決めされて相互間の位置ずれが規制された状態でプローブと共に前記第1の移動機構に取り付けられ、処理部が、補正用データ生成処理において、第2の移動機構を制御して校正用基準部をプロービング可能領域内に移動させると共に、第1の移動機構を制御してプローブを校正基準部にプロービングさせ、かつ信号生成部によって生成される第2の高周波信号を校正基準部に対してプローブを介して出力させた状態で第1のA/D変換部によって生成された第1のデータおよび第2のA/D変換部によって生成された第2のデータに基づいて補正用データを生成する。
【0033】
したがって、請求項3記載の測定装置によれば、各種の測定対象や校正基準部に対して第1の移動機構によってプローブを移動させてプロービングさせ、その状態で測定対象や校正基準部に対して第2の高周波信号を出力して第1の高周波信号を入力することで、測定処理や補正用データの生成処理を行うことができる。このため、測定処理や補正用データの生成処理に要するコストを十分に低減することができる。また、プロービング可能領域内への校正基準部の移動時、および測定対象や校正基準部に対するプローブのプロービング時に、信号生成部、プローブ接続部、第1のA/D変換部、第2のA/D変換部、第1の構成要素、第2の構成要素および第3の構成要素の相互間の位置ずれが生じないため、これらの位置ずれ(位置関係の変化)に起因して測定値に誤差が生じる事態が好適に回避される結果、正確な測定結果データを容易に生成することができる。さらに、校正用基準部を第2の移動機構によってプロービング可能領域内へ移動させ、かつ測定対象に対してプロービングさせるプローブを第1の移動機構によって移動させて校正基準部にプロービングさせた状態で測定処理を行い、その際に生成される第1のデータおよび第2のデータに基づいて補正用データを生成することができるため、第2の移動機構による校正用基準部の移動に要する時間、第1の移動機構によるプローブの移動に要する時間、および測定処理に要する時間を合計した非常に短い時間で補正用データの生成を完了させることができる。この結果、測定対象についての測定(検査)処理を中断する時間を短時間とすることができ、新たな補正用データを頻繁に生成したとしても測定(検査)処理の効率を大きく低下させることがないため、最新の補正用データに基づいて測定結果データを高精度に補正することができる。
【0034】
また、請求項1,2,3記載の測定装置では、第1の移動機構が、保持部および校正基準部に対して各信号処理部を別個独立して移動可能に構成されている。また、処理部が、いずれかの信号処理部に接続されたプローブから第2の高周波信号を出力させ、かついずれかの信号処理部に接続されたプローブから第1の高周波信号を入力させた状態で、いずれかの信号処理部における第1のA/D変換部によって生成される第1のデータ、およびいずれかの信号処理部における第2のA/D変換部によって生成される第2のデータに基づいて、測定処理時には測定結果データを生成し、補正用データ生成処理時には補正用データを生成する第1の処理と、いずれかの信号処理部に接続されたプローブから第2の高周波信号を出力させ、かつ他のいずれかの信号処理部に接続されたプローブから第1の高周波信号を入力させた状態で、他のいずれかの信号処理部における第1のA/D変換部によって生成される第1のデータ、およびいずれかの信号処理部における第2のA/D変換部によって生成される第2のデータに基づいて、測定処理時には測定結果データを生成し、補正用データ生成処理時には補正用データを生成する第2の処理とを実行可能に構成されている。
【0035】
したがって、請求項1,2,3記載の測定装置によれば、測定対象や校正基準部における複数箇所で第1の処理を並行して実行することで、これらの複数箇所についての第1のデータおよび第2のデータの生成に要する時間を短縮することができると共に、測定対象や校正基準部においてある程度離間した部位については、いずれかの信号処理部のプローブのプロービング位置と他の信号処理部のプローブのプロービング位置とを任意に変更して第2の処理を実行することができるため、各種の測定対象や校正基準部についての第1のデータおよび第2のデータを確実かつ容易に生成して測定結果データや補正用データを生成することができる。
【0036】
また、請求項1,2,3記載の測定装置では、処理部が、第2の処理において第1の周波数の第2の高周波信号を出力させる第1の測定処理の後に、第2の処理において第2の周波数の第2の高周波信号を出力させる第2の測定処理を実行するときに、第2の処理において第2の周波数の第2の高周波信号を出力させる補正用データ生成処理を実行することにより、第2の高周波信号の周波数の変更に伴って、第2の高周波信号を出力する信号処理部と、第1の高周波信号を入力する信号処理部との位相関係が変化するときに、そのような信号処理部から出力される測定値に基づいて演算される測定結果データを正確な値に補正可能な補正用データを得ることができる。
【0037】
請求項4記載の測定装置では、処理部が、測定装置が起動されたとの条件、プローブが交換されたとの条件、信号処理部の温度が予め設定された温度を超えて変化したとの条件、測定対象および校正基準部に対するプローブのプロービング回数が予め設定された回数に達したとの条件、測定装置の連続稼働時間が予め設定された時間に達したとの条件、および測定結果データの値と対応する基準値とが予め設定された相違量を超えて相違するとの条件のうちの予め規定された条件が満たされたか否かを監視すると共に、予め規定された条件が満たされたときに補正用データ生成処理を実行する。したがって、請求項4記載の測定装置によれば、測定装置の動作状態等を監視していなくても、測定結果データを正確な値に補正可能な補正用データを自動的に取得させることができる。
【0038】
請求項5記載の測定装置では、処理部が、測定対象についての測定結果データを補正用データに基づいて補正するデータ補正処理を実行することにより、データ補正処理後の正確な測定結果データを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、測定装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0041】
図1に示す検査装置1は、「測定装置」の一例であって、保持部2、信号処理ユニット3,3、プローブ4a,4a,4b,4b、移動機構5,5、操作部6、表示部7、処理部8、記憶部9および校正基準部10を備え、検査対象X(「測定対象」の一例)についての測定処理、および測定結果に基づく検査対象Xの検査を実行可能に構成されている。なお、検査対象Xについては、特に限定されるものではないが、一例として、前述の特許文献に開示されている検査装置の検査対象であるモジュールを検査対象Xとして検査する例について説明する。また、校正基準部10は、「校正基準部」の一例であって、検査対象Xを含む各種の「検査対象(測定対象)」に対する測定処理時と同様の測定処理を実行可能な被測定回路(ダミー回路:図示せず)が形成されている。
【0042】
保持部2は、「保持部」に相当し、一例として、図示しない真空ポンプに接続されて検査対象Xを吸着して保持する構成や、検査対象Xの側面に当接可能な当接具を介して検査対象Xを挟持して保持する構成など(いずれも図示せず)が採用されている。この場合、前述のモジュールを検査対象Xとして検査する本例では、検査対象Xにおけるシールド導電層を保持部2に接触させるように(つまり、回路基板における各実装用電極の形成面が上向きとなるように)して検査対象Xを保持させることにより、検査対象Xの各実装用電極に対するプロービングを可能となる。また、本例では、保持部2において検査対象X(シールド導電層)に接する部位の少なくとも一部が電極として機能し、この電極として機能する部位が信号ケーブルCaを介して処理部8に接続されることにより、検査対象X(シールド導電層)が処理部8に接続される構成が採用されている。
【0043】
信号処理ユニット3は、「信号処理部」の一例であって、
図2に示すように、信号生成部11、A/D変換部12o,12iおよび信号分離部13を備えている。この信号処理ユニット3は、プローブ4a,4bを接続可能なプローブ接続部14a,14b(以下、区別しないときには「プローブ接続部14」ともいう)、および処理部8に接続されたデータケーブルCbを接続可能なケーブル接続部15a~15c(以下、区別しないときには「ケーブル接続部15」ともいう)が設けられると共に、移動機構5に対して着脱可能に構成されている。
【0044】
この場合、本例の信号処理ユニット3では、プローブ4aが「プローブ」に相当すると共に、このプローブ4aが接続されるプローブ接続部14aが「プローブ接続部」に相当する。また、プローブ4bが接続されるプローブ接続部14bは、信号処理ユニット3内のグランド電位に接続されており、これにより、検査対象Xや校正基準部10においてプローブ4bがプロービングされた部位がグランド電位に接続されることとなる。この場合、本例の検査装置1では、プローブ4a,4b(以下、区別しないときには「プローブ4」ともいう)に減耗や破損が生じたときに、減耗や破損が生じたプローブ4を信号処理ユニット3から取り外して新たなプローブ4に交換することが可能となっている。
【0045】
信号生成部11は、「信号生成部」の一例であって、ケーブル接続部15aに接続されたデータケーブルCbの信号線を介して「第2の高周波信号」に相当する出力信号Soを生成する。この場合、信号生成部11は、良否を検査すべき導体の形状、大きさおよび材質や、プローブ4a,4bのプロービング位置(後述の検査ポイント)の離間距離などに応じて予め規定された周波数の出力信号Soを、処理部8から出力される制御データDcに従って生成する。A/D変換部12oは、「第2のA/D変換部」の一例であって、信号生成部11によって生成されて検査対象Xに対して出力される出力信号SoをA/D変換して「第2のデータ」の一例である測定値データDmoを生成し、ケーブル接続部15bに接続されているデータケーブルCbの信号線を介して処理部8に出力する。
【0046】
A/D変換部12iは、「第1のA/D変換部」の一例であって、検査対象Xから入力される入力信号Si(「第1の高周波信号」の一例)をA/D変換して「第1のデータ」の一例である測定値データDmiを生成し、ケーブル接続部15cに接続されているデータケーブルCbの信号線を介して処理部8に出力する。信号分離部13は、いわゆるカップラーで構成されて、信号生成部11によって生成された出力信号Soとプローブ接続部14aから入力される入力信号Siとを分離して、出力信号Soをプローブ接続部14aおよびA/D変換部12oに出力すると共に、入力信号SiをA/D変換部12iに出力する。
【0047】
この場合、この信号処理ユニット3では、信号生成部11からプローブ接続部14aに至る信号伝達経路L1が「第2の信号伝達経路」に相当すると共に、この信号伝達経路L1を構成する構成要素(配線パターンや信号分離部13等)が「第2の構成要素」に相当する。また、この信号処理ユニット3では、信号生成部11からA/D変換部12oに至る信号伝達経路L2が「第3の信号伝達経路」に相当すると共に、この信号伝達経路L2を構成する構成要素(配線パターンや信号分離部13等)が「第3の構成要素」に相当する。さらに、この信号処理ユニット3では、プローブ接続部14aからA/D変換部12iに至る信号伝達経路L3が「第1の信号伝達経路」に相当すると共に、この信号伝達経路L3を構成する構成要素(配線パターンや信号分離部13等)が「第1の構成要素」に相当する。
【0048】
また、この信号処理ユニット3では、信号生成部11、A/D変換部12o,12i、プローブ接続部14a,14bおよび信号伝達経路L1~L3の各構成要素(配線パターンや信号分離部13等)がパッケージングされて一体化されている。これにより、本例の信号処理ユニット3では、信号生成部11、A/D変換部12o,12i、プローブ接続部14a,14bおよび信号伝達経路L1~L3の各構成要素が相互に位置決めされて、信号生成部11、A/D変換部12o,12i、プローブ接続部14a,14bおよび信号伝達経路L1~L3の各構成要素の相互間の位置ずれが規制された状態となっている(「プローブ接続部、第1のA/D変換部および第1の構成要素が相互に位置決めされて、相互間の位置ずれが規制される」との状態、および「信号生成部、プローブ接続部、第2のA/D変換部、第2の構成要素および第3の構成要素が相互に位置決めされて、相互間の位置ずれが規制される」との状態の一例)。
【0049】
移動機構5は、「第1の移動機構」の一例であって、処理部8の制御に従い、保持部2によって保持されている検査対象Xに対して各プローブ4を移動させて任意のプロービング位置(検査対象Xにおける実装用電極の形成位置:検査ポイント)にプロービングさせる。この場合、本例の検査装置1では、
図1に示すように、一例として、静置状態の保持部2に検査対象Xを保持させると共に、X軸方向(保持部2の載置面に沿った方向)に移動させるX軸移動機構、Y軸方向(保持部2の載置面に沿った方向であってX軸と交差(例えば、直交)する方向)に移動させるY軸移動機構、θ方向に回動させる(保持部2の載置面に沿って回転させる)θ軸回転機構、およびZ軸方向(保持部2の載置面に対して交差(例えば、直交)する方向)に移動させるZ軸移動機構の4つ(いずれも図示せず)を備えた移動機構5によって検査対象Xにプローブ4をプロービングさせる構成が採用されている。
【0050】
なお、移動機構5に取り付けられる信号処理ユニット3のプローブ接続部14にプローブ4を接続して信号処理ユニット3にプローブ4を取り付ける本例の検査装置1では、保持部2に対して信号処理ユニット3を移動させることにより(「保持部に対して各信号処理部を別個独立して移動可能」との構成の一例)、信号処理ユニット3と共にプローブ4が保持部2に対して移動させられることとなる。したがって、本例の検査装置1では、移動機構5による信号処理ユニット3の移動が「第1の移動機構によるプローブの保持部に対する相対的な移動」に相当する。
【0051】
また、本例の検査装置1では、移動機構5による信号処理ユニット3(プローブ4)の移動可能範囲が「プロービング可能領域」に相当し、この移動可能範囲(プロービング可能領域)内に保持部2や校正基準部10が配設されている。なお、
図1では、保持部2の上に検査対象Xおよび校正基準部10を載置した状態を図示しているが、上記の移動可能範囲(プロービング可能領域)内に保持部2と並べて校正基準部10を配置することもできる。
【0052】
操作部6は、検査対象Xについての検査処理の実行条件や、後述する校正処理(補正用データ生成処理)の実行条件などの設定、および検査処理や校正処理の開始の指示が可能な各種の操作スイッチを備え、スイッチ操作に応じた操作信号を処理部8に出力する。表示部7は、処理部8の制御に従い、上記の各実行条件を設定する設定画面や、検査装置1の動作状態を示す画面、および検査対象Xについての検査結果の表示画面など(いずれも図示せず)を表示する。
【0053】
処理部8は、検査装置1を総括的に制御する。具体的には、処理部8は、「処理部」の一例であって、移動機構5によるプローブ4(信号処理ユニット3)の移動、および信号生成部11による出力信号Soの生成(検査対象Xへの出力信号Soの出力)を制御すると共に、A/D変換部12o,12iによって生成された測定値データDmo,Dmiに基づく被測定量の演算、および演算結果に基づく測定結果データDr(「測定結果データ」の一例)の生成に関する処理(「測定処理」の一例)などを実行する。
【0054】
なお、本例の検査装置1では、検査対象Xについての検査時に、両信号処理ユニット3を単独で使用して各信号処理ユニット3毎に行う「オープン測定(検査)」、「ショート測定(検査)」および「ロード測定検査」と、両信号処理ユニット3,3を併用して行う「スルー測定(検査)」との4つの測定(検査)のいずれかを検査すべき内容に応じて実行可能に構成されている。
【0055】
この場合、「オープン測定(検査)」、「ショート測定(検査)」および「ロード測定検査」としては、一例として、両信号処理ユニット3,3のいずれかに取り付けられたプローブ4を用いてプロービングポイントにおける例えば電圧値や反射電力値などを「測定対象についての予め規定された被測定量」として上記の測定結果データDrを生成する処理(「第1の処理」の一例)が実行される。また、「スルー測定(検査)」としては、両信号処理ユニット3,3の一方に取り付けられたプローブ4のプロービングポイント(実装用電極)と、両信号処理ユニット3,3の他方に取り付けられたプローブ4のプロービングポイント(実装用電極)との間のインピーダンスや位相差を「測定対象についての予め規定された被測定量」として上記の測定結果データDrを生成する処理(「第2の処理」の一例)が実行される。
【0056】
さらに、検査すべき内容によっては、両信号処理ユニット3,3のいずれかに取り付けられたプローブ4のプロービングポイント(実装用電極)と、保持部2が接触しているシールド導電層との間のインピーダンス値を「測定対象についての予め規定された被測定量」として上記の測定結果データDrを生成する処理が実行される。
【0057】
また、本例の検査装置1における処理部8は、上記の「測定処理」によって生成した測定結果データDrの値を、後述の校正処理(補正用データ生成処理)によって生成した補正用データDpに基づいて補正し(「データ補正処理」の一例)、補正後の値と比較用基準値との比較によって検査対象Xの良否を検査可能に構成されている。
【0058】
さらに、処理部8は、後述の「予め設定された開始条件」が満たされたか否かを監視すると共に、「開始条件」が満たされたときに、両移動機構5,5を制御して各プローブ4a,4bを校正基準部10の所定のプロービングポイント(被測定回路(ダミー回路))にプロービングさせて信号生成部11から校正基準部10に対して出力信号Soを出力させつつ、校正基準部10から入力信号Siを入力させると共に、A/D変換部12o,12iによって生成された測定値データDmo,Dmiと、記憶部9に記憶されている校正基準部10についての基準値データDsとに基づき、検査対象Xについての測定結果データDrを補正するための補正用データDpを生成する「補正用データ生成処理」を実行する。
【0059】
なお、本例の検査装置1では、上記の「開始条件(校正処理の実行条件)」として、「検査装置1が起動された」との条件、「プローブ4が交換された」との条件、「図示しない温度センサによって検出される信号処理ユニット3の温度が設定温度(「予め設定された温度」の一例)を超えて変化した」との条件(「信号処理部の温度が予め設定された温度を超えて変化した」との条件の一例)、「検査対象Xおよび校正基準部10に対するプローブ4のプロービング回数が設定回数(「予め設定された回数」の一例)に達した」との条件、「検査処理の連続実行時間(検査装置1の連続稼働時間)が設定時間(予め設定された時間)に達した」との条件、「測定結果データDrの値と、対応する基準値データDsの値(基準値)とが予め設定された相違量を超えて相違する」との条件、「[第2の処理]において[第1の周波数]の出力信号Soを出力させる[測定処理としての第1の測定処理]の後に、[第2の処理]において[第1の周波数]とは異なる[第2の周波数]の出力信号Soを出力させる[測定処理としての第2の測定処理]を実行する」との条件、および「利用者から実行を指示された」との条件のうちから任意の条件を選択して設定することが可能となっている。
【0060】
この場合、本例では、上記の各条件のうちから利用者によって選択された条件が「予め規定された条件」に相当する。また、本例の検査装置1では、上記の各条件のうちの「設定温度」、「設定回数」、「設定時間」および「相違量」については、検査対象Xの種類や、検査装置1の設置環境(動作環境)に応じて利用者が任意に変更することが可能となっている。さらに、本例の検査装置1では、上記のように予め設定した条件に従って実行した「補正用データ生成処理」において有効な測定結果データDrを得ることができなかったとき(例えば、測定結果データDrの値が、対応する基準値データDsの値に対して予め規定された相違量を超え大きく相違するとき))に「補正用データ生成処理」を再び実行する構成が採用されている。
【0061】
記憶部9は、処理部8の動作プログラムや、校正基準部10についての基準値データDs(プローブ4に減耗や汚れの付着が発生していない状態で、常温下で校正基準部10に対する測定処理を行った際に測定されるべき測定値や、校正基準部10に対してプローブ4が正常な接触状態でプロービングさせられた状態において測定されるべき測定値(一例としてインピーダンスや反射係数)が記録されたデータ)、および検査対象Xについての基準値データDs(プローブ4に減耗や汚れの付着が発生していない状態で、常温下で良品の検査対象Xに対する測定処理を行った際に測定されるべき測定値や、検査対象Xに対してプローブ4が正常な接触状態でプロービングさせられた状態において測定されるべき測定値(一例としてインピーダンスや反射係数)が記録されたデータ)などを記憶すると共に、処理部8によって生成される測定結果データDrや補正用データDpを記憶する。
【0062】
この検査装置1では、電源が投入されて起動させられたときに、処理部8が、校正処理の実行条件(予め規定された開始条件)の1つが満たされたとして、校正処理(補正用データ生成処理)を開始する。この校正処理では、処理部8は、最初に、例えば50Ωの基準器で構成されて一対の電極(一例として、「ロード測定」用の電極部)の一方が基準電位に接続されている校正基準部10を対象とする反射係数についての測定処理を実行する。
【0063】
具体的には、処理部8は、移動機構5を制御して、信号処理ユニット3の両プローブ4を校正基準部10に設けられた他方の電極部にプロービングさせると共に、信号生成部11に制御データDcを出力して出力信号Soを生成させる。この際には、信号生成部11によって生成された出力信号Soが信号伝達経路L1およびプローブ接続部14aを介してプローブ4aから校正基準部10に出力されると共に、A/D変換部12oが信号伝達経路L2を介して入力される出力信号SoをA/D変換して測定値データDmoを生成し、生成した測定値データDmoを処理部8に出力する。また、校正基準部10からプローブ4aを介して信号処理ユニット3に入力された入力信号Siとしての反射信号が信号伝達経路L3を介してA/D変換部12iに入力されると共に、A/D変換部12iが入力された入力信号SiをA/D変換して測定値データDmiを生成し、生成した測定値データDmiを処理部8に出力する。
【0064】
この場合、本例の検査装置1では、前述したように、信号処理ユニット3の信号生成部11、A/D変換部12o,12i、プローブ接続部14aおよび信号伝達経路L1~L3の各構成要素(配線パターンや信号分離部13)が相互に位置決めされて相互間の位置ずれが規制されると共に、そのような信号処理ユニット3のプローブ接続部14a,14bにプローブ4a,4bが接続されて取り付けられている。したがって、本例の検査装置1では、校正基準部10についての測定処理時や、後述する検査対象Xについての測定処理時におけるプロービングに際して、入力信号Siおよび出力信号So(高周波信号)が通過するすべての構成要素が、相互間の位置関係が変化することなく、移動機構5によってプローブ4a,4bと共に移動させられる。
【0065】
このため、本例の検査装置1では、信号生成部11とプローブ4aとの距離、プローブ4aとA/D変換部12o,12iとの距離、および各信号伝達経路L1~L3の形状などが、プロービング時に変化することがない。したがって、本例の検査装置1では、移動機構5による信号処理ユニット3(プローブ4)の移動可能範囲内のいずれの部位にプローブ4をプロービングさせたとしても、プローブ4のプロービング位置の相違に応じて例えば出力信号Soや入力信号Siの振幅、および出力信号Soの位相と入力信号Siの位相との位相差などが変化することがないため、後述する測定値データDmo,Dmiに基づく反射係数の測定の際の測定誤差の発生が好適に回避されている。
【0066】
一方、処理部8は、信号処理ユニット3のA/D変換部12oから出力された測定値データDmoの値に基づいて特定される出力信号Soの振幅および位相と、A/D変換部12iから出力された測定値データDmiの値に基づいて特定される入力信号Siの振幅および位相とに基づき、校正基準部10についての反射係数を測定すると共に校正基準部10のインピーダンス値を示す測定結果データDrを生成する(校正基準部10を対象とする「第1の処理」の一例)。また、処理部8は、生成した測定結果データDrの値と、記憶部9から読み出した基準値データDs(基準のインピーダンス値)とに基づき、後に検査対象Xについての測定処理時(本例では、「ロード測定」時)に生成する検査対象Xについての測定結果データDrを補正するための補正用データDpを生成し(「補正用データ生成処理」の一例)、生成した補正用データDpを記憶部9に記憶させる。
【0067】
なお、詳細な説明を省略するが、「補正用データ生成処理」時には、「オープン測定」用の補正用データDpや、「ショート測定」用の補正用データDpについても、校正基準部10を対象とする「測定処理」によって生成される測定結果データDrおよび基準値データDsに基づいて順次生成して記憶部9に記憶させる。また、1つの信号処理ユニット3に取り付けられたプローブ4aから出力信号Soを出力し、同じ信号処理ユニット3に取り付けられたプローブ4aから入力信号Siを入力して測定値データDmo,Dmiを生成し、生成した測定値データDmo,Dmiに基づいて測定結果データDrを演算して補正用データDpを生成する処理(「ロード測定」の測定結果データDrを補正可能な補正用データDp等を生成する例)について説明したが、「スルー測定」の測定結果データDrを補正可能な補正用データDpを生成する際には、以下のような処理が行われる。
【0068】
具体的には、処理部8は、移動機構5,5を制御して一方の信号処理ユニット3に取り付けられているプローブ4aを校正基準部10に設けられた「スルー測定」用の導体部の一端部にプロービングさせると共に、プローブ4bを校正基準部10に設けられた「スルー測定」用の基準電位にプロービングさせ、かつ他方の信号処理ユニット3に取り付けられているプローブ4aを校正基準部10の「スルー測定」用の導体部の他端部にプロービングさせると共に、プローブ4bを校正基準部10に設けられた「スルー測定」用の基準電位にプロービングさせる。次いで、処理部8は、一方の信号処理ユニット3の信号生成部11に対して制御データDcを出力して出力信号Soを生成させ、生成された出力信号Soを、その信号処理ユニット3に取り付けられているプローブ4aから校正基準部10に出力させる。
【0069】
この際には、他方の信号処理ユニット3に取り付けられているプローブ4aを介して校正基準部10からの入力信号Siがその信号処理ユニット3に入力される。続いて、処理部8は、上記の一方の信号処理ユニット3におけるA/D変換部12oから出力された出力信号Soの振幅および位相についての測定値データDmo、および上記の他方の信号処理ユニット3におけるA/D変換部12iから出力された入力信号Siの振幅および位相についての測定値データDmiに基づいて、「スルー測定」用の導体部のインピーダンスについての測定結果データDrを演算する測定処理(「第2の処理」の一例)を実行し、演算した測定結果データDrと、対応する基準値データDsとに基づいて補正用データDpを生成する。このように各種の測定結果データDrを補正可能な各種の補正用データDpを順次生成することにより、一連の校正処理が完了する。
【0070】
一方、上記のように校正処理が完了して各種の補正用データDpの記憶部9への記憶が完了し、かつ図示しない搬送機構によって搬送された検査対象Xが保持部2上に保持されたときに、処理部8は、検査対象Xについての検査処理を開始する。なお、検査対象Xについての検査処理時にも、検査の内容に応じて、「オープン測定」、「ショート測定」および「ロード測定」や「スルー測定」が行われるが、以下、一例として、「ロード測定」を行うときの手順、および「スルー測定」を行うときの手順について説明する。
【0071】
最初に、「ロード測定」を行うときの手順について説明する。処理部8は、校正処理時と同様にして、移動機構5を制御して、信号処理ユニット3の両プローブ4を検査対象Xの電極部にプロービングさせると共に、信号生成部11に制御データDcを出力して出力信号Soを生成させる。この際には、信号生成部11によって生成された出力信号Soが信号伝達経路L1およびプローブ接続部14aを介してプローブ4aから検査対象Xに出力されると共に、A/D変換部12oが信号伝達経路L2を介して入力される出力信号SoをA/D変換して測定値データDmoを生成し、生成した測定値データDmoを処理部8に出力する。また、検査対象Xからプローブ4aを介して信号処理ユニット3に入力された入力信号Siが信号伝達経路L3を介してA/D変換部12iに入力されると共に、A/D変換部12iが入力される入力信号SiをA/D変換して測定値データDmiを生成し、生成した測定値データDmiを処理部8に出力する。
【0072】
この場合、本例の検査装置1では、前述した「補正用データ生成処理」時と同様にして、入力信号Siおよび出力信号So(高周波信号)が通過するすべての構成要素が、相互間の位置関係が変化することなく、移動機構5によってプローブ4a,4bと共に移動させられる。したがって、本例の検査装置1では、移動機構5による信号処理ユニット3(プローブ4)の移動可能範囲内のいずれの部位にプローブ4をプロービングさせたとしても、プローブ4のプロービング位置の相違に応じて出力信号Soの位相と入力信号Siの位相との位相差が変化することがないため、測定値データDmo,Dmiに基づく反射係数の測定誤差の発生が好適に回避されている。
【0073】
次いで、処理部8は、信号処理ユニット3(A/D変換部12o,12i)から出力された測定値データDmo,Dmiの値に基づいて特定される反射係数を示す測定結果データDrを生成する(検査対象Xを対象とする「第1の処理」の一例)。続いて、処理部8は、生成した測定結果データDrの値を、補正用データDpに基づいて補正し(「データ補正処理」の一例)、補正後の測定結果データDrを記憶部9に記憶させる。
【0074】
この場合、検査対象Xについての検査処理の開始直後であるこの時点においては、多数の検査対象Xを連続して検査した後の状態と比較して、検査装置1の各部の温度(信号処理ユニット3の温度)が低い状態となっている。このため、この時点において測定された測定結果データDrの値は、稼働時における標準的な温度まで検査装置1の各部(信号処理ユニット3)が温度上昇した状態において測定される測定結果データDrとは相違する可能性がある。そこで、本例の検査装置1では、最初の検査対象である検査対象Xについての測定結果データDrを、先に生成した補正用データDpに基づいて補正することにより、検査装置1(信号処理ユニット3)が温度上昇していないことに起因する測定誤差を好適に補正して正確な測定結果データDrを得ることが可能となっている。これにより、1つの検査対象Xについての「ロード測定」の結果を示す正確な測定結果データDrが記憶部9に記憶された状態となる。
【0075】
一方、「スルー測定」に際しては、処理部8は、移動機構5,5を制御して一方の信号処理ユニット3に取り付けられている両プローブ4を検査対象Xにおける任意の一対の実装用電極の一方と基準電位とにプロービングさせると共に、他方の信号処理ユニット3に取り付けられている両プローブ4を検査対象Xにおける任意の一対の実装用電極の他方と基準電位とにプロービングさせる。次いで、処理部8は、一方の信号処理ユニット3の信号生成部11に対して制御データDcを出力して出力信号Soを生成させ、生成された出力信号Soを、その信号処理ユニット3に取り付けられているプローブ4aから出力させる。
【0076】
この際には、他方の信号処理ユニット3に取り付けられているプローブ4aを介して検査対象Xからの入力信号Siがその信号処理ユニット3に入力される。続いて、処理部8は、上記の一方の信号処理ユニット3におけるA/D変換部12oから出力された出力信号Soの振幅および位相についての測定値データDmo、および上記の他方の信号処理ユニット3におけるA/D変換部12iから出力された入力信号Siの振幅および位相についての測定値データDmiに基づいて検査対象Xにおける任意の一対の実装用電極の間のインピーダンスについての測定結果データDrを演算する(「第2の処理」の一例)。
【0077】
また、処理部8は、演算した測定結果データDrを補正用データDpに基づいて補正し(「データ補正処理」の他の一例)、補正後の測定結果データDrを記憶部9に記憶させる。これにより、検査対象Xにおける任意の一対の実装用電極についての「スルー測定」の結果を示す正確な測定結果データDrが記憶部9に記憶された状態となる。なお、補正用データDpに基づく測定結果データDrの「データ補正処理」については、各検査ポイントについての測定結果データDrの生成の都度実行してもよいし、複数の検査ポイント(例えば、検査対象Xについてのすべての検査ポイント)についての測定結果データDrの生成が完了したときに実行してもよい。
【0078】
この場合、検査対象Xには、形状、大きさおよび材質が異なる各種の導体が存在する。また、検査対象Xには、良否を検査すべき導体の形状、大きさおよび材質に応じて、各種の離間距離で複数の検査ポイント(プローブ4a,4bをプロービングさせるプロービング位置)が規定されている。さらに、上記したような「スルー測定」に際しては、測定(検査)対象の導体の形状、大きさおよび材質や、プローブ4a,4bのプロービング位置間の距離(離間距離)に応じて、高精度な測定結果を得ることが可能な周波数の出力信号Soを出力させるのが好ましい。そこで、本例の検査装置1では、信号生成部11が、各種周波数の出力信号Soを生成可能に構成されて、処理部8からの制御データDcに従って任意の周波数の出力信号Soを出力する構成が採用されている。
【0079】
また、本例の検査装置1では、前述したように、「スルー測定」において、別個独立して配設された2つの信号処理ユニット3,3の一方から出力信号Soを出力させ、他方の信号処理ユニット3に入力信号Siとして入力させて出力信号Soの振幅および位相(測定値データDmo)と、入力信号Siの振幅および位相(測定値データDmi)とに基づいて一対の検査ポイント間のインピーダンスを測定する構成が採用されている。この場合、一方の信号処理ユニット3において出力信号Soを生成する信号生成部11や出力信号SoをA/D変換するA/D変換部12oと、他方の信号処理ユニット3において入力信号SiをA/D変換するA/D変換部12iとが同期されていないため、2つの信号処理ユニット3,3を使用する「スルー測定」において一方の信号処理ユニット3から出力させる出力信号Soの周波数を変更したときには、信号処理ユニット3,3における位相関係が、周波数の変更前とは相違する状態となる。
【0080】
したがって、最後に実行した「スルー測定(「第1の測定処理」の一例)」において出力させた出力信号Soの周波数(「第1の周波数」の一例)とは相違する周波数(「第2の周波数」の一例)の出力信号Soを出力させる「スルー測定(「第2の測定処理」の一例)」を実行するときには、「[第2の処理]において[第2の周波数]の出力信号Soを出力させる補正用データ生成処理」を実行して、出力信号Soの振幅および位相と、入力信号Siの振幅および位相とに基づいて正確なインピーダンスを測定可能な(正確なインピーダンスに補正可能な)補正用データDpを生成する必要がある。なお、上記の「第2の測定処理」によって生成される測定結果データDrを補正するための補正用データDpを生成する「補正用データ生成処理」時の「測定処理」については、検査対象Xを対象として実行する「スルー測定」時の処理と同様のため、詳細な説明を省略するが、このような「補正用データ生成処理」は、「第2の測定処理」を実行する前、および「第2の測定処理」を実行した後のいずれの時点で実行してもよい。
【0081】
一方、本例の検査装置1では、「補正用データ生成処理」の開始条件として、前述したように、上記のような「検査装置1が起動された」との条件、および「[第2の処理]において[第1の周波数]の出力信号Soを出力させる[測定処理としての第1の測定処理]の後に、[第2の処理]において[第1の周波数]とは異なる[第2の周波数]の出力信号Soを出力させる[測定処理としての第2の測定処理]を実行する」との条件の他にも任意の条件を選択して「補正用データ生成処理」を実行させることが可能となっている。
【0082】
例えば、信号処理ユニット3に接続されたプローブ4a,4bを新たなプローブ4a,4bに交換したときには、出力信号Soや入力信号Siが通過する構成要素の相互間の位置関係が変化することとなる。このため、出力信号Soの振幅および位相と、入力信号Siの振幅および位相との関係がプローブ4a,4bの交換前とは相違する状態となる。したがって、「プローブ4が交換された」との条件を開始条件として選択し、いずれかのプローブ4が交換されたときに「補正用データ生成処理」を実行させることにより、プローブ4の交換後における新たな位置関係に応じて、測定結果データDrを正確な値に補正可能な補正用データDpを生成するのが好ましい。
【0083】
また、移動機構5からの発熱や、信号処理ユニット3自身の発熱によって信号処理ユニット3の温度が上昇したような場合であったり、処理の中断(一時停止)時の放熱によって信号処理ユニット3の温度が低下したような場合には、信号生成部11、A/D変換部12o,12iおよび信号分離部13などの動作速度が変化したり、信号処理ユニット3内における各導体部の膨張/収縮などが生じたりして、正確な測定値データDmo,Dmiの出力が困難となるおそれがある。したがって、「図示しない温度センサによって検出される信号処理ユニット3の温度が設定温度を超えて変化した」との条件を開始条件として選択し、信号処理ユニット3の温度が設定温度を超えて上昇または低下したときに「補正用データ生成処理」を実行させることにより、測定値データDmo,Dmiに基づいて生成される測定結果データDrを、変化後の温度に応じた正確な値に補正可能な補正用データDpを生成するのが好ましい。なお、信号処理ユニット3の温度については、信号処理ユニット3の近傍に配設した温度センサや、輻射式温度センサ等によって信号処理ユニット3の温度を直接的に検出する構成に限定されず、検査装置1において信号処理ユニット3と共に温度変化する任意の部位の温度を検出したり、検査装置1の設置場所の温度を検出したりして、信号処理ユニット3の温度変化を間接的に検出する構成を採用することもできる。
【0084】
さらに、検査対象Xについての検査に長時間を要するときや、後述するように他の検査対象Xについての検査を連続して実行するときには、検査環境(温度、湿度や、検査装置1に混入する外乱の影響など)が変化することがある。したがって、「検査対象Xおよび校正基準部10に対するプローブ4のプロービング回数が設定回数に達した」との条件や、「検査処理の連続実行時間が設定時間に達した」との条件を開始条件として選択し、いずれかの条件が満たされたときに「補正用データ生成処理」を実行させることにより、変化後の検査環境に応じた補正用データDpを定期的に生成するのが好ましい。
【0085】
また、上記のような要因の他にも、各種の原因(不定期に発生する事象)によって正確な測定結果データDrを生成するのが困難な状態となることがある。したがって、「測定結果データDrの値と、対応する基準値データDsの値とが予め設定された相違量を超えて相違する」との条件を開始条件として選択し、基準値との相違量が大きく相違する状態となったときに「補正用データ生成処理」を実行させることにより、測定結果データDrを正確な値に補正可能な補正用データDpを生成するのが好ましい。
【0086】
この場合、本例の検査装置1では、検査対象Xについての「測定処理時」や、校正基準部10についての「補正用データ生成処理」時に、検査対象Xや校正基準部10に対してプローブ4a,4bをプロービングさせる都度、プローブ4a,4bが正常にプロービング(接触)されたか否かを確認する「コンタクトチェック」を実行する構成が採用されている。この「コンタクトチェック」時にプローブ4a,4bが正常にプロービングされたか否かを判定するために測定する測定値は、いずれのプロービングポイントにおいても同程度の値が測定される。このため、判定用の基準値については、各プロービングポイントにおいて共通の値が使用される。
【0087】
したがって、「コンタクトチェック時における測定結果データDrの値と、コンタクトチェック用の基準値データDsの値とが予め設定された相違量を超えて相違する」との条件を開始条件として選択して処理部8に監視させることにより、不定期に発生する事象によって正確な測定結果データDrを生成するのが困難な状態となったときに「補正用データ生成処理」を的確なタイミングで実行させることができ、しかも、共通の基準値との比較によって「補正用データ生成処理」を実行すべきか否かを判定できるため、処理部8に大きな負荷を掛ける事態を回避することができる。
【0088】
以上のような各種の条件のうちから任意の条件を選択し、条件が満たされたか否かを処理部8に監視させることにより、操作部6の操作等によって指示をすることなく、「補正用データ生成処理」を任意のタイミングで自動的に実行させることができる。また、利用者が希望するタイミングで「補正用データ生成処理」を実行させるときには、操作部6に対するスイッチ操作によって処理開始を指示する。これにより、利用者が希望するタイミングで補正用データDpが生成される。
【0089】
次いで、処理部8は、補正後の正確な測定結果データDrと、検査対象Xについての基準値データDsとを比較し、両データの値の差が良否判定用の基準範囲内のときに、プローブ4a,4bを接触させた検査ポイント(両実装用電極間)が良好であると検査する。この場合、補正後の測定結果データDrおよび基準値データDsに基づく各検査ポイントの良品判定については、複数の検査ポイント(例えば、検査対象Xについてのすべての検査ポイント)についての補正後の測定結果データDrが取得されたときに実行してもよいし、1つの検査ポイントについての補正後の測定結果データDrを生成する都度、各検査ポイント毎に個別に実行してもよい。以上のような一連の処理により、検査対象Xについての検査処理が完了する。
【0090】
この後、処理部8は、検査を完了した検査対象Xに代えて、他の検査対象の検査対象Xについての検査処理を順次実行する。また、処理部8は、設定した「校正処理の実行条件」が満たされたときに、前述の校正処理時と同様にして校正基準部10についての測定処理を実行して測定結果データDrを生成し、生成した測定結果データDrと校正基準部10についての基準値データDsとを比較して補正用データDpを生成して記憶部9に上書きする。
【0091】
これにより、検査装置1が再起動されたとき、プローブ4が交換されたとき、図示しない温度センサによって検出される信号処理ユニット3の温度が設定温度を超えて変化したとき、検査対象X等に対するプローブ4のプロービング回数が設定回数を超えたとき、検査処理の連続実行時間が設定時間を超えたとき、測定結果データDrの値と基準値データDsの値とが予め設定された相違量を超えて相違するとき、「第2の処理」において「第1の周波数」の出力信号Soを出力させる「測定処理としての第1の測定処理」の後に、「第2の処理]において「第2の周波数」の出力信号Soを出力させる「測定処理としての第2の測定処理」を実行するとき、および利用者によって指示されたときなどに校正処理が自動的に実行されて最新の補正用データDpが記憶部9に記憶される結果、その校正処理後の検査対象Xについての測定結果データDrを正確に補正される。
【0092】
このように、この検査装置1では、信号処理ユニット3が、信号生成部11、A/D変換部12o,12i、プローブ接続部14、信号伝達経路L3を構成する「第1の構成要素(本例では、信号分離部13および配線パターン)」、信号伝達経路L1を構成する「第2の構成要素(本例では、信号分離部13および配線パターン)」および信号伝達経路L2を構成する「第3の構成要素(本例では、信号分離部13および配線パターン)」を備え、これらが相互に位置決めされて相互間の位置ずれが規制された状態でプローブ4と共に移動機構5に取り付けられ、処理部8が、「補正用データ生成処理」において、移動機構5を制御してプローブ4を校正基準部10にプロービングさせ、かつ信号生成部11によって生成される出力信号Soを校正基準部10に対してプローブ4を介して出力させた状態でA/D変換部12iによって生成された測定値データDmiおよびA/D変換部12oによって生成された測定値データDmoに基づいて補正用データDpを生成する。
【0093】
したがって、この検査装置1によれば、各種の検査対象Xや校正基準部10に対して移動機構5によってプローブ4を移動させてプロービングさせ、その状態で検査対象Xや校正基準部10に対して出力信号Soを出力して入力信号Siを入力することで、測定処理や補正用データDpの生成処理を行うことができる。このため、測定処理や補正用データDpの生成処理に要するコストを十分に低減することができる。また、検査対象Xや校正基準部10に対するプローブ4のプロービング時に、信号生成部11、プローブ接続部14、A/D変換部12o,12i、「第1の構成要素」、「第2の構成要素」および「第3の構成要素」の相互間の位置ずれが生じないため、これらの位置ずれ(位置関係の変化)に起因して測定値に誤差が生じる事態が好適に回避される結果、正確な測定結果データDrを容易に生成することができる。さらに、検査対象Xに対してプロービングさせるプローブ4を移動機構5によって移動させて校正基準部10にプロービングさせた状態で測定処理を行い、その際に生成される測定値データDmo,Dmiに基づいて補正用データDpを生成することができるため、移動機構5によるプローブ4の移動に要する時間、および測定処理に要する時間を合計した非常に短い時間で補正用データDpの生成を完了させることができる。この結果、検査対象Xについての測定(検査)処理を中断する時間を短時間とすることができ、新たな補正用データDpを頻繁に生成したとしても測定(検査)処理の効率を大きく低下させることがないため、最新の補正用データDpに基づいて測定結果データDrを高精度に補正することができる。
【0094】
また、この検査装置1では、移動機構5が、保持部2および校正基準部10に対して各信号処理ユニット3を別個独立して移動可能に構成されている。また、この検査装置1では、処理部8が、いずれかの信号処理ユニット3に接続されたプローブ4から出力信号Soを出力させ、かつその信号処理ユニット3に接続されたプローブ4から入力信号Siを入力させた状態で、その信号処理ユニット3におけるA/D変換部12iによって生成される測定値データDmi、およびその信号処理ユニット3におけるA/D変換部12oによって生成される測定値データDmoに基づいて、測定処理時には測定結果データDrを生成し、かつ補正用データ生成処理時には補正用データDpを生成する「第1の処理」と、いずれかの信号処理ユニット3に接続されたプローブ4から出力信号Soを出力させ、かつ他のいずれかの信号処理ユニット3に接続されたプローブ4から入力信号Siを入力させた状態で、他のいずれかの信号処理ユニット3におけるA/D変換部12iによって生成される測定値データDmi、および上記のいずれかの信号処理ユニット3におけるA/D変換部12oによって生成される測定値データDmoに基づいて、測定処理時には測定結果データDrを生成し、かつ補正用データ生成処理時には補正用データDpを生成する「第2の処理」とを実行可能に構成されている。
【0095】
したがって、この検査装置1によれば、検査対象Xや校正基準部10における複数箇所(本例では2箇所)で「第1の処理」を並行して実行することで、これらの複数箇所(2箇所)についての測定値データDmo,Dmiの生成に要する時間を短縮することができると共に、検査対象Xや校正基準部10においてある程度離間した部位については、いずれかの信号処理ユニット3のプローブ4のプロービング位置と他の信号処理ユニット3のプローブ4のプロービング位置とを任意に変更して「第2の処理」を実行することができるため、各種の検査対象Xや校正基準部10についての測定値データDmo,Dmiを確実かつ容易に生成して測定結果データDrや補正用データDpを生成することができる。
【0096】
さらに、この検査装置1では、処理部8が、「第2の処理」において「第1の周波数」の出力信号Soを出力させる「第1の測定処理」の後に、「第2の処理」において「第2の周波数」の出力信号Soを出力させる「第2の測定処理」を実行するときに、「第2の処理」において「第2の周波数」の出力信号Soを出力させる「補正用データ生成処理」を実行することにより、出力信号Soの周波数の変更に伴って、出力信号Soを出力する信号処理ユニット3と、入力信号Siを入力する信号処理ユニット3との位相関係が変化するときに、そのような信号処理ユニット3,3から出力される測定値データDmo,Dmiに基づいて演算される測定結果データDrを正確な値に補正可能な補正用データDpを得ることができる。
【0097】
また、この検査装置1では、処理部8が、「検査装置1が起動された」との条件、「プローブ4が交換された」との条件、「信号処理ユニット3の温度が予め設定された温度を超えて変化した」との条件、「検査対象Xおよび校正基準部10に対するプローブ4のプロービング回数が予め設定された回数に達した」との条件、「検査装置1の連続稼働時間が予め設定された時間に達した」との条件、および「測定結果データDrの値と対応する基準値データDsの値とが予め設定された相違量を超えて相違する」との条件のうちの予め規定された条件が満たされたか否かを監視すると共に、予め規定された条件が満たされたときに「補正用データ生成処理」を実行する。したがって、この検査装置1によれば、検査装置1の動作状態等を監視することなく、測定結果データDrを正確な値に補正可能な補正用データDpを自動的に取得させることができる。
【0098】
さらに、この検査装置1では、処理部8が、検査対象Xについての測定結果データDrを補正用データDpに基づいて補正する「データ補正処理」を実行することにより、「データ補正処理」後の正確な測定結果データDrを提供することができる。
【0099】
なお、「測定装置」の構成は、上記の検査装置1の構成の例に限定されない。例えば、「第1の移動機構」による「プローブ」の「保持部」に対する相対的な移動によって「プローブ」をプロービング可能なプロービング可能領域内に配設された「校正基準部」を備え、「処理部」が、「第1の移動機構」を制御して「プローブ」を「校正基準部」にプロービングさせる構成を備えた例に挙げて説明したが、このような構成に代えて、「第1の移動機構」による「プローブ」の「保持部」に対する相対的な移動によって「プローブ」をプロービング可能なプロービング可能領域内への「校正基準部」の移動が可能に構成された「第2の移動機構」を備え、「処理部」が、「第2の移動機構」を制御して「校正用基準部」をプロービング可能領域内に移動させ、かつ「第1の移動機構」を制御して「プローブ」を「校正基準部」にプロービングさせる構成を採用することもできる。
【0100】
具体的には、
図3に示す検査装置1Aは、「測定装置」の他の一例であって、前述の検査装置1の各構成要素に加え、「第2の移動機構」に相当する移動機構5aを備え、校正用基準部10が移動機構5aに取り付けられると共に、処理部8が、移動機構5aを制御して校正用基準部10を移動機構5による信号処理ユニット3(プローブ4)の移動可能範囲(「プロービング可能領域」の一例)内に移動させる構成が採用されている。なお、この検査装置1Aにおいて前述の検査装置1の構成要素と同様の構成要素については、同一の符号を付して重複する説明を省略すると共に、前述の検査装置1において実行される各処理と同様の処理についての重複する説明を省略する。
【0101】
この検査装置1Aでは、校正処理を実行しないとき(例えば、検査処理を実行しているとき)に、移動機構5aが処理部8の制御に従って校正用基準部10を移動機構5による信号処理ユニット3(プローブ4)の移動可能範囲外に移動させた状態(「プロビング可能範囲外に退避させた状態」)を維持する構成が採用されている。また、この検査装置1Aでは、前述の各「開始条件(校正処理の実行条件)」のうちから選択されて設定された「開始条件」が満たされたときに、処理部8が校正処理(補正用データ生成処理)を開始する。
【0102】
この校正処理では、処理部8は、まず、移動機構5aを制御して校正用基準部10を移動機構5による信号処理ユニット3(プローブ4)の移動可能範囲内に移動させる。次いで、処理部8は、移動機構5を制御して、信号処理ユニット3の両プローブ4を校正基準部10にプロービングさせる。この後、処理部8は、一例として、前述の検査装置1における校正処理時と同様に測定値データDmo,Dmiを取得して測定結果データDrを生成し、測定結果データDrの値と、基準値データDsとに基づいて補正用データDpを生成して記憶部9に記憶させる。また、検査対象Xについての検査処理時には、補正用データDpに基づいて補正した正確な測定結果データDrと基準値データDsとの比較によって検査対象X状の各検査ポイントの良否が検査される。
【0103】
このように、この検査装置1Aでは、信号処理ユニット3が、信号生成部11、A/D変換部12o,12i、プローブ接続部14、信号伝達経路L3を構成する「第1の構成要素(本例では、信号分離部13および配線パターン)」、信号伝達経路L1を構成する「第2の構成要素(本例では、信号分離部13および配線パターン)」および信号伝達経路L2を構成する「第3の構成要素(本例では、信号分離部13および配線パターン)」を備え、これらが相互に位置決めされて相互間の位置ずれが規制された状態でプローブ4と共に移動機構5に取り付けられると共に、校正基準部10が移動機構5aに取り付けられ、処理部8が、「補正用データ生成処理」において、移動機構5aを制御して校正用基準部10を「プロービング可能領域」内に移動させると共に、移動機構5を制御してプローブ4を校正基準部10にプロービングさせ、かつ信号生成部11によって生成される出力信号Soを校正基準部10に対してプローブ4を介して出力させた状態でA/D変換部12iによって生成された測定値データDmiおよびA/D変換部12oによって生成された測定値データDmoに基づいて補正用データDpを生成する。
【0104】
したがって、この検査装置1Aによれば、前述した検査装置1と同様にして、各種の検査対象Xや校正基準部10に対して移動機構5によってプローブ4を移動させてプロービングさせ、その状態で検査対象Xや校正基準部10に対して出力信号Soを出力して入力信号Siを入力することで、測定処理や補正用データDpの生成処理を行うことができる。このため、測定処理や補正用データDpの生成処理に要するコストを十分に低減することができる。また、「プロービング可能領域」内への校正基準部10の移動時、および検査対象Xや校正基準部10に対するプローブ4のプロービング時に、信号生成部11、プローブ接続部14、A/D変換部12o,12i、「第1の構成要素」、「第2の構成要素」および「第3の構成要素」の相互間の位置ずれが生じないため、これらの位置ずれ(位置関係の変化)に起因して測定値に誤差が生じる事態が好適に回避される結果、正確な測定結果データDrを容易に生成することができる。さらに、校正用基準部10を移動機構5aによって「プロービング可能領域」内へ移動させ、かつ検査対象Xに対してプロービングさせるプローブ4を移動機構5によって移動させて校正基準部10にプロービングさせた状態で測定処理を行い、その際に生成される測定値データDmo,Dmiに基づいて補正用データDpを生成することができるため、移動機構5aによる校正用基準部10の移動に要する時間、移動機構5によるプローブ4の移動に要する時間、および測定処理に要する時間を合計した非常に短い時間で補正用データDpの生成を完了させることができる。この結果、検査対象Xについての測定(検査)処理を中断する時間を短時間とすることができ、新たな補正用データDpを頻繁に生成したとしても測定(検査)処理の効率を大きく低下させることがないため、最新の補正用データDpに基づいて測定結果データDrを高精度に補正することができる。
【0105】
また、検査対象Xや校正基準部10に対して出力した出力信号Soを、検査対象Xや校正基準部10から入力信号Siとして入力してA/D変換部12o,12iにおいてA/D変換処理して測定値データDmo,Dmiを生成する例について説明したが、検査対象X等の「測定対象」や、校正基準部10等の「校正基準部」等に対して出力信号So等の「第2の高周波信号」を出力せずに、「測定対象」や「校正基準部」などから出力される「第1の高周波信号」を入力して「A/D変換部」においてA/D変換処理して「第1のデータ」を生成することもできる。
【0106】
具体的には、「第1の移動機構」による「プローブ」の「保持部」に対する相対的な移動によって「プローブ」をプロービング可能なプロービング可能領域内に配設された「校正基準部」を備え、「プローブ接続部」、「第1のA/D変換部」および「第1の構成要素」が相互に位置決めされて、「プローブ接続部」、「第1のA/D変換部」および「第1の構成要素」の相互間の位置ずれが規制されると共に、「プローブ接続部」、「第1のA/D変換部」および「第1の構成要素」が「プローブ」と共に「第1の移動機構」に取り付けられ、「処理部」が、「第1の移動機構」を制御して「プローブ」を「校正基準部」にプロービングさせて「校正基準部」から「第1の高周波信号」を入力させると共に、「第1のA/D変換部」によって生成された「第1のデータ」に基づき、「測定対象」についての「測定結果データ」を補正するための「補正用データ」を生成する「補正用データ生成処理」を実行可能に「測定装置」を構成することができる。
【0107】
また、「校正用基準部」と、「第1の移動機構」による「プローブ」の「保持部」に対する相対的な移動によって「プローブ」をプロービング可能なプロービング可能領域内に「校正用基準部」を移動させる「第2の移動機構」とを備え、「プローブ接続部」、「第1のA/D変換部」および「第1の構成要素」が相互に位置決めされて、「プローブ接続部」、「第1のA/D変換部」および「第1の構成要素」の相互間の位置ずれが規制されると共に、「プローブ接続部」、「第1のA/D変換部」および「第1の構成要素」が「プローブ」と共に「第1の移動機構」に取り付けられ、「処理部」が、「第2の移動機構」を制御して「校正基準部」をプロービング可能領域内に移動させ、かつ「第1の移動機構」を制御して「プローブ」を「校正基準部」にプロービングさせて「校正基準部」から「第1の高周波信号」を入力させると共に、「第1のA/D変換部」によって生成された「第1のデータ」に基づき、「測定対象」についての「測定結果データ」を補正するための「補正用データ」を生成する「補正用データ生成処理」を実行可能に「測定装置」を構成することができる。
【0108】
この場合、「第2の高周波信号(前述の検査装置1における出力信号So)」の出力が不要な場合には、上記の検査装置1の信号処理ユニット3におけるケーブル接続部15a,15b、信号生成部11、A/D変換部12o、信号分離部13および信号伝達経路L1,L2を設けずに、ケーブル接続部15c、A/D変換部12i、プローブ接続部14a,14b、信号伝達経路L3、およびプローブ接続部14a,14bに接続されたプローブ4a,4bを相互に位置決めして相互間の位置ずれを規制した「信号処理部」を使用することで、両プローブ4のプロービング位置の相違に起因する反射係数などの測定誤差の発生を好適に回避することができる。
【0109】
また、そのような「信号処理部」を使用する「測定装置」では、「第1の高周波信号」としての基準信号を生成する(出力する)基準信号生成部を設けた「校正基準部」を「第1の移動機構によるプローブの保持部に対する相対的な移動によってプローブをプロービング可能なプロービング可能領域」内に配設するか、そのような「校正基準部」を「第2の移動機構」によって「プロービング可能領域」内に移動させる構成を採用し、「補正用データ生成処理」時には、そのような「校正基準部」から出力される高周波信号を入力して、その信号の振幅や位相等に基づいて「補正用データ」を生成する。
【0110】
したがって、このような構成の「測定装置」によれば、上記特許文献に開示の検査装置とは異なり、種類が異なる「測定対象」毎に測定基板や校正基準部を製作することなく、各種の「測定対象」や「校正基準部」に対して「第1の移動機構」によって「プローブ」を移動させてプロービングさせることで「測定対象」や「校正基準部」から「第1の高周波信号」を入力することができ、「測定処理」や「補正用データ生成処理」を行うことができる。このため、「測定処理」や「補正用データ生成処理」に要するコストを十分に低減することができる。また、「測定対象」や「校正基準部」に対する「プローブ」のプロービング時に、「プローブ接続部」、「第1のA/D変換部」および「第1の構成要素」の相互間の位置ずれが生じないため、これらの位置ずれ(位置関係の変化)に起因して測定値に誤差が生じる事態が好適に回避される結果、正確な「測定結果データ」を確実かつ容易に生成することができる。
【0111】
さらに、「測定対象」に対してプロービングさせる「プローブ」を「第1の移動機構」によって移動させて「プロービング可能領域」内の「校正基準部」にプロービングさせた状態で「測定処理」を行い、その際に生成される「第1のデータ」に基づいて「補正用データ」を生成することができるため、「校正用基準部」を「プロービング可能領域」内に配設した構成を採用したときには、「第1の移動機構」による「プローブ」の移動に要する時間、および「測定処理」に要する時間を合計した非常に短い時間で「補正用データ」の生成を完了させることができ、「校正用基準部」を「第2の移動機構」によって「プロービング可能領域」内に移動させる構成を採用したときには、「第2の移動機構」による「校正用基準部」の移動に要する時間、「第1の移動機構」による「プローブ」の移動に要する時間、および「測定処理」に要する時間を合計した非常に短い時間で「補正用データ」の生成を完了させることができる。この結果、「測定対象」についての測定(検査)処理を中断する時間を短時間とすることができ、新たな「補正用データ」)を頻繁に生成したとしても測定(検査)処理の効率を大きく低下させることがないため、最新の「補正用データ」に基づいて「測定結果データ」を高精度に補正することができる。
【0112】
また、X軸移動機構、Y軸移動機構、θ軸回転機構、およびZ軸移動機構の4つを備えた移動機構5によって検査対象X(保持部2)や校正基準部10に対してプローブ4を移動させる構成を例に挙げて説明したが、「第1の移動機構」の構成はこれに限定されず、X軸移動機構、Y軸移動機構、θ軸回転機構、およびZ軸移動機構のうちの少なくとも1つの機構を備えた「第1の移動機構」によってプローブ4を移動させ、かつ、X軸移動機構、Y軸移動機構、θ軸回転機構、およびZ軸移動機構のうちの他の機構によって検査対象X(保持部2)や校正基準部10をプローブ4に対して移動させる構成を採用することもできる(図示せず)。
【0113】
また、1系統の「信号処理部(信号生成部11、A/D変換部12o,12i、信号分離部13およびプローブ接続部14a,14b)」をパッケージングして一体化した1つの信号処理ユニット3に対して1組のプローブ4a,4bを接続(装着)して移動機構5に取り付けることで、1つの移動機構5によって1系統の「信号処理部」および1組のプローブ4a,4bを移動させる構成を例に挙げて説明したが、複数系統の「信号処理部」をパッケージングして一体化した1つの「信号処理ユニット」に対して複数組の「プローブ」を接続(装着)して「第1の移動機構」に取り付けることで、1つの「第1の移動機構」によって複数系統の「信号処理部」および複数組の「プローブ」を移動させる構成を採用することもできる。
【0114】
さらに、処理部8が検査対象Xについての測定結果データDrを補正用データDpに基づいて補正する構成を例に挙げて説明したが、このような構成に代えて、補正前の測定結果データDrおよび補正用データDpを外部装置(一例として、パーソナルコンピュータ等のデータ処理端末)に出力し、外部装置において測定結果データDrを補正用データDpに基づいて補正させる構成を採用することもできる。また、検査対象Xについての測定結果データDrと基準値データDsとの比較によって検査対象Xの良否を検査する処理を行う構成を例に挙げて説明したが、測定結果データDrと基準値データDsとの比較の処理、すなわち、検査対象Xの良否の判定については、外部装置において実行させる構成(検査装置1を測定結果データDrや補正用データDpを生成する「測定装置」として機能させる構成)を採用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本願発明は、測定対象から入力した高周波信号に基づいて予め規定された被測定量を測定可能に構成された測定装置に関するものであり、種類が異なる測定対象毎に測定基板や校正基準部を製作することなく、各種の測定対象や校正基準部に対して第1の移動機構によってプローブを移動させてプロービングさせることで測定対象や校正基準部から第1の高周波信号を入力することができ、測定処理や補正用データ生成処理を行うことができるため、測定処理や補正用データ生成処理に要するコストを十分に低減することができ、測定対象や校正基準部に対するプローブのプロービング時に、プローブ接続部、第1のA/D変換部および第1の構成要素の相互間の位置ずれが生じないため、これらの位置ずれ(位置関係の変化)に起因して測定値に誤差が生じる事態が好適に回避される結果、正確な測定結果データを確実かつ容易に生成することができる。
【符号の説明】
【0116】
1,1A 検査装置
2 保持部
3 信号処理ユニット
4a,4b プローブ
5,5a 移動機構
8 処理部
9 記憶部
10 校正基準部
11 信号生成部
14a,14b プローブ接続部
15a~15c ケーブル接続部
12 A/D変換部
Ca 信号ケーブル
Cb データケーブル
Dc 制御データ
Dmo,Dmi 測定値データ
Dp 補正用データ
Dr 測定結果データ
Ds 基準値データ
L1,L2,L3 信号伝達経路
Si 入力信号
So 出力信号
X 検査対象