(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】固形化粧料、及びそれを用いた化粧方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/31 20060101AFI20240528BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20240528BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20240528BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20240528BHJP
A61K 8/63 20060101ALI20240528BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20240528BHJP
A61K 8/893 20060101ALI20240528BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20240528BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20240528BHJP
A61K 8/25 20060101ALI20240528BHJP
A61K 8/29 20060101ALI20240528BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20240528BHJP
A61K 8/46 20060101ALI20240528BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
A61K8/31
A61K8/02
A61K8/81
A61K8/37
A61K8/63
A61K8/34
A61K8/893
A61K8/49
A61K8/86
A61K8/25
A61K8/29
A61K8/19
A61K8/46
A61Q1/00
(21)【出願番号】P 2020003187
(22)【出願日】2020-01-10
【審査請求日】2022-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 康彦
【審査官】▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-094788(JP,A)
【文献】特開2005-220035(JP,A)
【文献】特開2011-032181(JP,A)
【文献】特開昭52-024984(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
B01J 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外観又は組成が異なる2種以上の固形化粧料(ただし、液状化粧料中に分散されている固形化粧料を除く。)を潰し、
潰された前記固形化粧料を身体に塗布する、化粧方法であって、
前記固形化粧料は、融点が50℃以上150℃以下であるコア部と、該コア部の表面の少なくとも一部に付着している粉体とを有し、
且つ粒状であ
り、
前記コア部は油性成分からなる連続相と、該連続相中に分散した粉体成分とを含み、
前記コア部は油性成分を40質量%以上含んでおり、
前記コア部は20℃で固体状である油性成分を30質量%以下含んでおり、
前記コア部はその平均投影面積が0.5mm
2
以上2500mm
2
以下であり、
前記コア部の硬度が0.5g以上500g以下であり、
前記硬度は、加熱溶解した前記コア部を、直径が30mmであり、且つ高さが14mmである樹脂製軟膏壺に高さ10mmまで充填した後、20℃で2時間冷却固化し、30℃で6時間以上静置した後でレオメーターを用いて、直径φ2mmの冶具にて2mm/sの速さで冶具を深さ2mmまで針入させたときの最大値であり、
前記粉体はシリカである、化粧方法。
【請求項2】
前記粉体を構成する粒子の粒径D
50が0.01μm以上500μm以下である、請求項
1に記載の
化粧方法。
【請求項3】
前記コア部の表面において、前記粉体によって覆われていない領域のうち、最も面積の広い領域の面積が、該コア部の表面の面積に対して50%以下である、請求項1
又は2に記載の
化粧方法。
【請求項4】
前記粉体を構成する粒子のうちの少なくとも一部の粒子は、その一部分が前記コア部の内部に入り込んでいる、請求項1ないし
3のいずれか一項に記載の
化粧方法。
【請求項5】
前記粉体を構成する粒子のうちの少なくとも一部の粒子は、その全体が前記コア部の内部に入り込んでいる、請求項1ないし
4のいずれか一項に記載の
化粧方法。
【請求項6】
前記コア部をその半径方向に沿って見たとき、中心側に比べて表面側で、前記粉体を構成する粒子の存在密度が相対的に高くなっている、請求項1ないし
5のいずれか一項に記載の
化粧方法。
【請求項7】
前記コア部が20℃で液状である油性成分を18質量%以上含んでいる、請求項1ないし
6のいずれか一項に記載の
化粧方法。
【請求項8】
前記粉体のJIS K5101-13-1:2004に準拠した吸油量が5ml/100g以上500ml/100g以下である、請求項1ないし
7のいずれか一項に記載の
化粧方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は固形化粧料に関する。また本発明は、該固形化粧料を用いた化粧方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで知られている固形化粧料は一般に、ファンデーションのように粉体を圧縮成形して浅底のトレイ内に収容した形態や、口紅のように室温で固体の組成物を所定形状に成形した形態のものであった。このような形態の固形化粧料のほかに、近年では粒状の形態をした固形化粧料が提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、液状化した固形化粧料を、該化粧料と相溶性がない液状オイル中に滴下して粒状に成形し、粒状に成形された化粧料の温度を下げて固形化した後、該液状オイルから分離する方法で、1~5mmの粒状に賦形された化粧料を得ることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の粒状固形化粧料は、その製造過程において液状オイルを用いているので、該液状オイルの分離を十分に行わないと、粒状固形化粧料の表面に該液状オイルが残存してしまう。そのことに起因して、粒状固形化粧料が他の物、例えば容器や他の固形化粧料と結合しやすくなり、取り扱い性が低下してしまう。また、仮に粒状固形化粧料の表面から液状オイルを完全に除去したとしても、該粒状固形化粧料には油性成分が含まれていることから、該油性成分に起因して、やはり粒状固形化粧料が他の物と結合しやすくなり、取り扱い性が低下してしまう。
【0006】
したがって本発明の課題は粒状固形化粧料の改良にあり、更に詳しくは粒状固形化粧料と他の物との結合を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、融点が50℃以上150℃以下であるコア部と、該コア部の表面の少なくとも一部に付着している粉体とを有し、粒状である固形化粧料を提供することによって前記の課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、粒状の固形化粧料と他の物との結合が抑制されるので、取り扱い性の低下が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1(a)ないし(d)は、本発明の一実施形態の粒状固形化粧料の製造方法の工程を順次示す模式図である。
【
図2】
図2(a)は、本発明の一実施形態の粒状固形化粧料の模式断面図であり、
図2(b)及び(c)はそれぞれ、
図2(a)に示す粒状固形化粧料の別の実施形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。本発明は粒状をした固形化粧料(以下、単に「化粧料」という場合もある。)に関するものである。本発明の化粧料は、粒状である固形のコア部と、該コア部の表面の少なくとも一部に付着している粉体とを有している。
「固形化粧料」とは、室温(25℃)において固体であり、室温よりも高い温度、例えば40℃~150℃に加熱したときに軟化又は溶融し得る性質を有する化粧料のことである。例えば油剤を含む油性化粧料や、寒天ゲルのような水性化粧料が、本発明にいう固形化粧料に包含される。粉体を圧縮成形してなる化粧料は、本発明にいう固形化粧料から除外される。
「粒状」とは、球状や略球状のみならず、扁平状、紡錘状、多面体状、繊維状の形状や、不定形の形状を包含し、更に、何らかの文字や記号を象った形状、並びに人物、動物及び物などのキャラクターを象った形状なども包含する。本発明の固形化粧料は、これらの形状のうちの1種であり得るか、又は2種以上の組み合わせであり得る。
「付着している粉体」とは、固形化粧料の原料に含まれている粉体と区別する意味で用いられ、前記のコア部が有する粘着力、濡れ性、表面張力等によって、該コア部の表面に比較的弱い力で結合している粉体のことである。
【0011】
本発明の固形化粧料は上述のとおり粒状のものであり、その大きさに特に制限はないが、手に取りやすい等の使用のしやすさ、転がりにくさ、潰しやすさ、意匠性、及び製造のしやすさなどの点から、平面上に載置したときの平均投影面積が好ましくは0.5mm2以上であり、更に好ましくは1mm2以上であり、一層好ましくは1.5mm2以上である。また固形化粧料は、手に取りやすい等の使用のしやすさ、潰しやすさ、及び意匠性などの点から、前記平均投影面積が好ましくは2500mm2以下であり、更に好ましくは1500mm2以下であり、一層好ましくは900mm2以下である。特に、固形化粧料は、前記平均投影面積が好ましくは0.5mm2以上2500mm2以下であり、更に好ましくは1mm2以上1500mm2以下であり、一層好ましくは1.5mm2以上900mm2以下である。「平均投影面積」とは、10個以上の粒状固形化粧料を対象として、該粒状固形化粧料が、水平面上において最も安定した状態で載置された状態において該水平面に投影される面積の算術平均値を意味する。
【0012】
本発明においては、固形化粧料の大きさと、該固形化粧料を構成するコア部の大きさとは実質的に同じである。したがって、固形化粧料の平均投影面積とコア部の平均投影面積とは実質的に同じである。それゆえコア部の大きさは、コア部を平面上に載置したときの平均投影面積で表して上述の範囲であることが好ましい。
【0013】
コア部は、本発明の固形化粧料の主体をなす部位である。コア部は室温(25℃)において固体であり、且つ融点が好ましくは50℃以上であり、更に好ましくは55℃以上であり、一層好ましくは60℃以上である。コア部がこの温度以上の融点を有することで、固形化粧料の使用感を良好にすることができる。また、コア部はその融点が好ましくは150℃以下であり、更に好ましくは120℃以下であり、一層好ましくは110℃以下である。コア部がこの温度以下の融点を有することでも、固形化粧料の使用感を良好にすることができる。特に、コア部の融点は、好ましくは50℃以上150℃以下であり、更に好ましくは55℃以上120℃以下であり、一層好ましくは60℃以上110℃以下である。
【0014】
コア部は通常複数の物質を含む組成物から構成されている。この場合、コア部の融点は、医薬部外品原料規格一般試験法の第1法、第2法、又は第3法のいずれかにより測定される。いずれの方法を採用するかは、主に融点によって選択され、融点が80℃を超えるような高い場合には第1法を、これより融点が低い場合には第2法を、更に融点が低い場合には第3法を用いることができる。
【0015】
コア部は好ましくは、1種又は2種以上の油性成分からなる連続相を有する。場合によっては、コア部は連続相中に分散した顔料等の粉体成分を含む。
油性成分としては、オゾケライト、セレシン等の鉱物系ワックス;パラフィン、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス、合成ワックス等の合成炭化水素;カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ライスワックス、サンフラワーワックス、水添ホホバ油、モクロウ等の植物系ワックス;ミツロウ、鯨ロウ等の動物性ワックス;シリコーンワックス、合成ミツロウ、合成モクロウ等の合成ワックス等のワックス;パルミチン酸デキストリン、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸イヌリン、12-ヒドロキシステアリン酸、ジブチルラウロイルグルタミド、ジブチルエチルヘキサノイルグルタミド、ポリアミド樹脂等の油性ゲル化剤;ワセリン、ビニルレザーワックス、ヘキサ(ベヘン酸/安息香酸/エチルヘキサン酸)ジペンタエリスリチル、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、テトラ(ヒドロキシステアリン酸/イソステアリン酸)ジペンタエリスリチル、水添パーム油、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、トリ(カプリル酸/カプリン酸/ミリスチン酸/ステアリン酸)グリセリル、ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル、オレイン酸フィトステリル、(エチルヘキサン酸/ステアリン酸/アジピン酸)グリセリル、ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル)、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルビス(ベヘニル/イソステアリル/フィトステリル)、硬質ラノリン、還元ラノリン、ビスジグリセリルポリアシルアジペート-2等のペースト油;流動パラフィン、軽質流動イソパラフィン、重質流動イソパラフィン、ミネラルオイル、スクワラン、α-オレフィンオリゴマー、ポリイソブチレン、ポリブテン、水添ポリイソブテン、水添ポリデセン等の直鎖又は分岐の炭化水素油;イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル、イソノナン酸トリシクロデカンメチル、イソステアリン酸エチル、イソステアリン酸イソブチル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸2-ヘキシルデシル、コハク酸ジ2-へチルヘキシル、コハク酸ビスエトキシジグリコール、ラウリン酸ヘキシル、ジ(カプリル酸/カプリン酸)プロパンジオール、ジイソノナン酸ネオペンチルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジイソステアリン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、ジイソステアリン酸プロパンジオール、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸グリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、テトライソステアリン酸ジグリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、リンゴ酸オクチルドデシル、グリセリン脂肪酸エステル、ホホバ油、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸イソプロピル、2-エチルヘキサン酸セチル、トリ2-ヘチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、2-エチルヘキサン酸2-ヘキシルデシル、ジ2-エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、ヒドロキシステアリン酸エチルヘキシル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、トリオクタン酸グリセリル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、トリメリト酸トリトリデシル、テトライソステアリン酸ジペンタエリスリチル、テトライソステアリン酸ペンタエリトリット、メトキシケイヒ酸オクチル、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、ダイマー酸ジイソプロピル、炭酸プロピレン等のエステル油;ラウリルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール等の高級アルコール;ジメチルポリシロキサン、ジメチルシクロポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、トリメチルペンタフェニルトリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、高級アルコール変性オルガノポリシロキサン等のシリコーン油;フルオロポリエーテル、パーフルオロアルキルエーテルシリコーン、フッ素変性シリコーン等のフッ素油;フェノキシエタノール等が挙げられる。これらの油性成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0016】
コア部は油性成分を40質量%以上含むことが、固形化粧料の使用感の点から好ましい。この観点から、コア部は油性成分を更に好ましくは50質量%以上、一層好ましくは55質量%以上含む。同様の観点から、コア部は油性成分を好ましくは100質量%以下、更に好ましくは99質量%以下、一層好ましくは98質量%以下含む。特にコア部は、油性成分を好ましくは40質量%以上100質量%以下、更に好ましくは50質量%以上99質量%以下、一層好ましくは55質量%以上98質量%以下含む。
【0017】
コア部は20℃で固体状である油性成分(例えば上記ワックス)を含むことが、固形化粧料の保形性を高める観点から好ましい。コア部は、20℃で固体状である油性成分を3質量%以上含むことが保形性の観点から好ましく、20℃で固体状である油性成分を30質量%以下含むことが使用感の観点から好ましい。また、コア部は20℃で液状である油性成分を含むことが、固形化粧料の使用感を高める観点から好ましい。この観点から、コア部は20℃で液状である油性成分を好ましくは18質量%以上、更に好ましくは25質量%以上、一層好ましくは35質量%以上含む。同様の観点から、コア部は20℃で液状である油性成分を好ましくは97質量%以下、更に好ましくは95質量%以下、一層好ましくは93質量%以下含む。特にコア部は、20℃で液状である油性成分を好ましくは18質量%以上97質量%以下、更に好ましくは25質量%以上95質量%以下、一層好ましくは35質量%以上93質量%以下含む。
【0018】
油性成分が20℃で液状であるか否かは、各成分の安全データシート(SDS)・物理的状態に記載されている内容によって判定できる。コア部に20℃で液状である油性成分が上述の範囲で含まれていると、コア部の表面に該油性成分が存在することになり、そのことに起因してコア部が他の物と結合しやすくなってしまうという不都合がある。しかし本発明の固形化粧料では、コア部の表面に粉体が付着しており、該粉体によってコア部の表面が被覆されていることから、固形化粧料と他の物との意図しない結合が抑制される。
【0019】
コア部に含まれる粉体成分としては、化粧料に従来用いられている各種のもの等を特に制限なく用いることができる。粉体成分は無機粉体でもよく、あるいは有機粉体でもよい。無機粉体と有機粉体とを併用してもよい。粉体成分を構成する粒子の形状に特に制限はなく、例えば球状、多面体状、フレーク状、紡錘状、繊維状、不定形、又はそれらの組み合わせであり得る。
【0020】
コア部に含まれる粉体成分としては、例えば着色顔料、光輝顔料及び体質顔料等の顔料を用いることができる。コア部に占める粉体成分の割合は0.01質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることが更に好ましく、1質量%以上であることが一層好ましい。また、コア部に占める粉体成分の割合は60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることが更に好ましく、45質量%以下であることが一層好ましい。特に、コア部に占める粉体成分の割合は0.01質量%以上60質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上50質量%以下であることが更に好ましく、1質量%以上45質量%以下であることが一層好ましい。
【0021】
コア部の硬度は、本発明の固形化粧料の使用感等に影響を与える要素の一つである。この観点からコア部の硬度は500g以下であることが好ましく、350g以下であることが更に好ましく、250g以下であることが一層好ましい。一方、コア部の硬度を好ましくは0.5g以上、更に好ましくは5g以上、一層好ましくは15g以上とすることで、コア部と他の物との意図しない結合を抑制できる。これらの観点から、コア部の硬度は0.5g以上500g以下であることが好ましく、5g以上350g以下であることが更に好ましく、15g以上250g以下であることが一層好ましい。コア部の硬度は、115℃にて加熱溶解した剤を樹脂製軟膏壺(直径30mm、高さ14mm)に高さ10mmまで充填した後、20℃で2時間冷却固化し、30℃で6時間以上静置した後でレオテック社製レオメーターを用いて、直径φ2mmの冶具にてtable speedが2mm/sの速さで冶具を深さ2mmまで針入させたときの最大値を読み取ることによって測定できる。
【0022】
先に述べたとおり、本発明の固形化粧料においては、粒状であるコア部の表面に粉体が付着している。コア部の表面に付着している粉体は多層でも単層でもよい。粉体を構成する粒子間に隙間があってもよい。このように設けられた粉体によって、コア部と他の物とが意図せず結合することが抑制される。その結果、本発明の固形化粧料はその取り扱い性が良好なものとなる。この利点を一層顕著なものとする観点から、コア部の表面において、粉体によって覆われていない領域のうち、最も面積の広い領域の面積が、該コア部の表面の面積に対して50%以下であることが好ましく、30%以下であることが更に好ましく、10%以下であることが一層好ましく、最も好ましくは0%である。
【0023】
前記の「粉体によって覆われていない領域」及びその面積は、種々の方法により決定及び測定することが可能であるが、例えばコア部の表面における単位面積(1mm2)当たりの粉体のカバー率が50%未満であれば、「粉体によって覆われていない」と判断できる。例えばデジタルマイクロスコープを用いて固形化粧料の表面を観察及び計測することにより上記カバー率を測定可能である(必要に応じて2値化等の画像処理を用いてもよい)。また、コア部の表面の面積は、種々の方法により測定することが可能であるが、例えば球状形態であればノギス等を用いて直径Rを測定し、表面積S=4×円周率π×(R/2)2により算出することが可能である。
【0024】
コア部への粉体の付着を強固なものとする観点から、
図2(a)に示すとおり、粉体11を構成する粒子11aのうちの少なくとも一部の粒子11aは、当該一部の粒子11aの一部分がコア部30の内部に入り込んでいることが好ましい。とりわけ、
図2(b)に示すとおり、粉体11を構成する粒子11aのうちの少なくとも一部の粒子11aは、当該一部の粒子11aの全体がコア部30の内部に入り込んでいることが好ましい。このような状態になっているか否かの確認には、例えば光学顕微鏡観察を用いることができる。
【0025】
本発明において粉体は、コア部と他の物との意図しない結合を抑制するために用いられるものであるから、該粉体は該コア部の表面に存在している場合にその機能が発揮される。換言すれば、粉体がコア部の奥深くに存在していても該粉体に期待される機能は発揮されない。この観点から、
図2(c)に示すとおり、コア部30をその半径方向に沿って見たとき、中心側Cに比べて表面側Fで、粉体11を構成する粒子11aの存在密度が相対的に高くなっていることが好ましい。
【0026】
例えばコア部の表面に粉体が付着した固形化粧料の断面を光学顕微鏡観察することで前記の存在密度を相対的に比較することができる。
【0027】
粉体としては、コア部と他の物との付着が効果的に防止されるような大きさのものが好適に用いられる。例えば粉体を構成する粒子の大きさを、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による累積体積50容量%における体積累積粒径D50で表した場合、D50は0.01μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることが更に好ましく、1μm以上であることが一層好ましい。この大きさの粉体を用いることで、固形化粧料を製造する過程で行われる粉体の除去操作(これについては後述する。)を容易に行える。また、D50は500μm以下であることが好ましく、300μm以下であることが更に好ましく、160μm以下であることが一層好ましい。この大きさの粉体を用いることで、粉体をコア部に容易に付着させることができる。特にD50は0.01μm以上500μm以下であることが好ましく、0.1μm以上300μm以下であることが更に好ましく、1μm以上160μm以下であることが一層好ましい。
【0028】
コア部と他の物との付着を効果的に防止する観点から、粉体はその吸油量が5ml/100g以上であることが好ましく、15ml/100g以上であることが更に好ましく、20ml/100g以上であることが一層好ましい。また粉体の吸油量は、コア部に含まれる油性成分が過度に粉体に吸収されないようにする観点から、500ml/100g以下であることが好ましく、400ml/100g以下であることが更に好ましく、350ml/100g以下であることが一層好ましい。吸油量はJIS K5101-13-1:2004に準拠して測定される。
【0029】
粉体としては、化粧料に一般的に用いられるものと同様のものを特に制限なく用いることができる。例えばシリカ、マイカ、合成フルオロフロゴパイト、ガラス末、硫酸バリウム、カオリン、ベントナイト、ヘクトライト、ゼオライト、オキシ塩化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、及びタルク等の無機粉体;ナイロン、ポリエチレン、(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー等のシリコーンエラストマー、ポリメタクリル酸メチル、ラウロイルリシン、シルクパウダー、セルロース末、及び各種ワックスパウダー等の有機粉体などの体質顔料:マイカ、合成フルオロフロゴパイト、ガラス、シリカ、アルミナ、タルク等の板状粉体等の表面を酸化チタン、酸化鉄、酸化ケイ素、紺青、酸化クロム、酸化スズ、水酸化クロム、金、銀、カルミン、赤色202号や黄色4号等の有機顔料等の着色剤で被覆したもの、及びポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層末、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム蒸着末、ポリエチレンテレフタレート・金蒸着積層末等のフィルム原反を任意形状に断裁したもの等の光輝顔料:酸化チタン、酸化亜鉛、黄酸化鉄、ベンガラ、黒酸化鉄、紺青、群青、酸化クロム、水酸化クロム等の金属酸化物;マンガンバイオレット、チタン酸コバルト等の金属錯体;更にカーボンブラック等の無機顔料;赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色227号、赤色228号、赤色230号、赤色401号、赤色405号、赤色505号、橙色203号、橙色204号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、黄色401号、青色1号、青色404号等の合成有機顔料;β-カロチン、カラメル、パプリカ色素等の天然有機色素などの着色顔料などを用いることができる。これらの粉体は1種を単独で用いることができ、あるいは2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0030】
次に、本発明の固形化粧料の好適な製造方法について説明する。本製造方法は、製造の対象である固形化粧料の原料を複数の粒状に分割する工程を備えている。「分割」とは、固形化粧料の原料のバルク体をそれよりも小さな複数の単位に分けることをいう。化粧料の原料を分割することで得られる粒状体の大きさは、本発明の固形化粧料の大きさと実質的に同じである。つまり粒状体の大きさは、粒状体を平面上に載置したときの平均投影面積で表して、本発明の固形化粧料の平均投影面積の範囲であることが好ましい。
【0031】
化粧料の原料を分割するには種々の手法を採用することが可能である。分割の手法としては例えば以下の(a)ないし(c)が挙げられる。
(a)原料が固形の塊状のものである場合には、公知の粉砕機等を用いて塊状の原料を粒状に分割することができる。
(b)原料が軟化可能なものである場合には、固形の原料を例えば加熱して軟化させ、軟化した該原料を所定の手段を用いて分割することができる。
(c)原料が液状化可能なものである場合には、固形の原料を軟化させるだけでなく液状化させ、液状化した原料を複数の液滴に分割することができる。つまり本発明において「液状化」は「軟化」の一態様である。
【0032】
前記の(c)の手法を採用する場合、液状化の具体的な方法としては以下の(c1)ないし(c3)が挙げられる。
(c1)化粧料の原料が熱によって溶融可能である場合には、該原料を加熱して溶融させて液状化させる。
(c2)化粧料の原料が溶媒に溶解可能である場合には、該原料を溶媒、例えば揮発性有機溶媒に溶解させて溶液となす。
(c3)化粧料の原料が外力によって結晶構造が変化し液状化可能である場合、例えばカードハウス構造、網目構造、アルキル鎖の結晶構造、又は分子どうしの水素結合を有する油性固形物のような場合には、混練等によって外力を加えることで結晶構造を破壊して液状化させる。
【0033】
前記の(a)ないし(c)の手法のうち、原料が例えば油剤を含む固形物である場合には前記の(b)又は(c)の手法を採用することが簡便である。(c)の手法を採用する場合には、前記の(c1)ないし(c3)のうち、(c1)の手法を採用することが簡便である。
【0034】
上述した手法を採用して化粧料の原料を分割することで複数の粒状体が得られる。この粒状体は固体であり得るか又は液体であり得る。本製造方法は、この粒状体の表面に粉体を付着させる工程を備える。
図1(a)及び(b)には粒状体10に粉体11を付着させる工程が示されている。
【0035】
図1(a)に示すとおり、容器12内には粉体11が充填されている。粉体11は、例えばアンカー翼等の撹拌手段(撹拌装置)13によって撹拌されるようになっている。粉体11の直上には、化粧料の原料の分割装置14が配置されている。分割装置14は、例えば化粧料の固形原料を粉砕する装置、化粧料の固形原料を軟化させ、軟化した該原料を分割する装置、又は化粧料の固形原料を加熱によって溶融させ液状化し、液状化した原料を液滴に分割する装置であり得る。分割装置14によって複数の粒状体10に分割された化粧料の原料は、撹拌手段13によって流動状態になっている粉体11に供給される。
【0036】
粒状体10が粉体11に供給された後も粉体11の撹拌を引き続き継続する。粉体11の撹拌によって粒状体10は粉体中への分散が促進され、粒状体10の表面に粉体11が付着する。
【0037】
前記の(a)の手法を用いる場合、粒状体10の表面に粉体11を付着させる時点において、粒状体10は硬化している。
前記の(b)又は(c)の手法を用いる場合、粒状体10の表面に粉体11を付着させる時点において、粒状体10は硬化していてもよく、あるいは硬化していなくてもよい。換言すれば、化粧料の原料を軟化させ分割した後のいずれかの工程において、分割によって得られた粒状体10を硬化させることができる。化粧料の原料を軟化させる場合における「硬化」とは、軟化した化粧料の原料が、軟化する前の固さに向けて戻ることをいう。したがって、化粧料の固形原料を加熱によって溶融させ液状化させ、液状化した原料を液滴に分割してなる粒状体を「固化」させることは「硬化」の一態様である。
【0038】
粒状体10を硬化させる手段は、粒状体10の状態に応じて適切に選択すればよい。
例えば化粧料の原料を加熱によって軟化させた後に分割を行い粒状体10を得た場合には、粒状体10を冷却することで粒状体10を硬化させることが可能である。
化粧料の原料を加熱によって溶融させて液状化させ、液状化した原料を液滴に分割して粒状体を得た場合にも、粒状体10を冷却することで粒状体10を硬化させる(固化させる)ことが可能である。
化粧料の原料を例えば揮発性有機溶媒に溶解させて溶液となし、該溶液を液滴に分割して粒状体10を得た場合には、粒状体10から揮発性有機溶媒を揮発させて除去することで固形分を残留させ、粒状体10を硬化させることが可能である。
化粧料の原料が例えばカードハウス構造、網目構造、アルキル鎖の結晶構造、又は分子どうしの水素結合を有する油性固形物のような場合には、原料に対して混練等の外力を加える操作により流動体となっている粒状体10を、加熱により軟化、又は融解させて液状化させた後に冷却することで硬化させることが可能である。
【0039】
粒状体10を硬化させたものが、冒頭に述べたコア部である。つまり、前記の(b)又は(c)の手法を用いる場合において粒状体10とは、化粧料の原料を分割して得られたものであり、且つ硬化する前の状態のものである。したがって粒状体10には、溶融液や溶液の状態のものも包含される。
なお、前記の(a)の手法を用いる場合において、粒状体10とは、化粧料の原料を分割して得られたものであり、且つ硬化した状態のものである。
【0040】
粒状体10を硬化させるタイミングと、粒状体10の表面に粉体11を付着させるタイミングとは、粒状体10の性質等に応じて適切に設定が可能である。例えば(i)未硬化の状態にある粒状体10の表面に粉体11を付着させた後に、粒状体10を硬化させることができる。あるいは(ii)粒状体10を硬化させた後に、粒状体10の表面に粉体11を付着させることができる。あるいは(iii)未硬化の状態にある粒状体10の表面に粉体11を付着させつつ、粒状体10を硬化させることができる。
【0041】
上述した(i)ないし(iii)の態様のうち、(i)又は(iii)の態様を採用すると、粒状体10の内部へ粉体11が入り込みやすくなるので、粉体11を粒状体10へ比較的強固に付着させることが可能となる。一方、(ii)の態様を採用すると、粒状体10の内部へ粉体11が入り込み難くなるので、粒状体10への粉体11の付着は比較的弱いものとなる。
【0042】
以上の工程によって粒状体10の表面に粉体11を付着させることができる。前記の(a)の手法を用いる場合、粒状体10の表面に粉体11を付着させることで、本発明の固形化粧料が得られる。前記の(b)又は(c)の手法を用いる場合、粒状体10の表面に粉体11を付着させ、且つ粒状体10を硬化させることで、本発明の固形化粧料が得られる。固形化粧料が得られたら、その後、付加的な工程として固形化粧料の冷却を行うことができる。なお、先に述べたとおり、粒状体10の硬化物(固化物)が、冒頭に述べた固形化粧料のコア部に相当する。冷却を行うことでコア部への粉体の付着を一層確実なものとすることができる。冷却は例えば自然冷却であってもよく、あるいは強制冷却であってもよい。
自然冷却する場合、コア部の表面に粉体が付着してなる化粧料、つまり本発明の固形化粧料を室温下に静置すればよい。
強制冷却する場合には、固形化粧料に気体を吹き付けたり、固形化粧料を冷蔵庫内に載置したり、固形化粧料を冷媒に接触させたりすればよい。
【0043】
粒状体10の表面に粉体11を付着させた後、固形化粧料の冷却に先立ち、又は冷却後に、又は冷却と同時に、コア部の表面に固着していない粉体11を除去することができる。コア部の表面に固着していない粉体とは、固形化粧料を例えば搬送するときに加わる振動等の外力によってコア部から脱落する程度にコア部に弱く固着しているか、又はコア部に全く固着していない粉体のことである。
【0044】
粉体の除去工程の一例が
図1(c)及び(d)に示されている。詳細には、
図1(c)に示すとおり、上方が開口した受け容器15を用意し、受け容器15の開口部をフィルタ部材16で覆う。フィルタ部材16としては、粉体11を通過させるが、固形化粧料1は通過させない程度の目開きを有する篩を用いることができる。フィルタ部材16を受け容器15に設置した状態下に、複数の固形化粧料1が分散してなる粉体11をフィルタ部材16上に供給する。これによってフィルタ部材16による篩がけが行われ、
図1(d)に示すとおり固形化粧料1がフィルタ部材16上に残存するとともに、粉体11がフィルタ部材16を通過して受け容器15内に集められる。このようにして粉体11が除去される。
【0045】
なお、固形化粧料1として、上述のように分割して得られた粒状体10をそのまま用いるのではなく、型を用いて成形したものを用いてもよい。例えば、内表面に粉体11が存在する型を用意し、この型内に軟化させた固形化粧料1の原料を供給してこれを硬化させることで、型の形状に沿った所望の形状の粒状固形化粧料を形成してもよい。この場合、型の内表面の粉体11が、粒状固形化粧料の表面に付着する。
【0046】
以上の方法で得られた粒状の固形化粧料は、コア部の表面に粉体が付着してなるものであることから、コア部が例えば粘着性を有しているとしても、その粘着性が粉体の付着によって減殺されるので、固形化粧料と他の物との意図しない付着が防止されるという利点がある。例えば、容器に充填された複数の固形化粧料どうしが容器内で結合することに起因して容器外へ取り出し難くなるという不都合が解消される。このように本発明によれば、固形化粧料のハンドリング性が向上する。また本発明の固形化粧料は、後述するとおり、その製造が容易である。
【0047】
本発明の固形化粧料は、例えばこれを潰して美容の目的でヒトの身体に塗布するという化粧方法に用いることができる。具体的には、本発明の固形化粧料を化粧料パレット上に載置し、化粧筆を用いて潰した後に、該化粧筆を用いて口紅のように口唇に塗布することができる。あるいは、固形化粧料を手の甲上で潰してチークやコンシーラーのように頬に指で塗布することができる。あるいは、固形化粧料を手の甲上で潰してハンドクリームのように指や手の甲に指で塗布することができる。更に、固形化粧料を手の甲上で潰してオイルクレンジングのように使用することもできる。更に、固形化粧料を手や道具を用いて潰し髪に塗布することで、トリートメントやヘアワックスのように使用することもできる。
【0048】
前記の化粧方法を首尾よく行うことを目的として、本発明の固形化粧料と、該固形化粧料の収容が可能な容器と、該固形化粧料を肌に塗布するための塗布具とを有する化粧料セットを用いることが好ましい。前記の容器としては、例えば上述した化粧料パレットが典型的なものとして挙げられるが、これに限られない。前記の塗布具としては、筆状、チップ状、パフ状のものが挙げられるが、これらに限られない。この化粧料セットを用いて化粧を行う場合には、本発明の固形化粧料を、前記の化粧料パレット等の容器内に配置し、該容器内に配置された固形化粧料を塗布具によって潰し、潰された固形化粧料を該塗布具によって肌に塗布すればよい。容器内に配置する固形化粧料の数は1個でもよく、あるいは2個以上でもよい。
【0049】
本発明の固形化粧料は、上述のとおり、これを単独で用いることができる。これに代えて、本発明の固形化粧料を他の化粧料と組み合わせて用いることもできる。例えば、粒状である本発明の固形化粧料と異なる固形化粧料又は液状化粧料からなるマトリックス中に、本発明の固形化粧料を少なくとも1個、望ましくは2個以上存在させて、複合化粧料となすことができる。この複合化粧料においては、マトリックス、すなわち連続相となる固形化粧料又は液状化粧料が透明又は半透明であると、このマトリックス中に粒状である本発明の固形化粧料が1個又は2個以上散在している状態が外部から視認できるので、該複合化粧料は意匠性が極めて高いものとなる。なお、粒状である固形化粧料の一部が前記のマトリックスに接していなくてもよい。
【0050】
前記の複合化粧料におけるマトリックスである固形化粧料としては、例えば油性ゲル化剤として、各種ワックス、パルミチン酸デキストリン、ジブチルラウロイルグルタミド、及びジブチルエチルヘキサノイルグルタミドのうち少なくとも1種を有するものを用いることができる。一方、液状化粧料としては、例えば油性ゲル化剤として、パルミチン酸デキストリンを有するものを用いることができる。
【0051】
前記の複合化粧料は、化粧筆やチップ等の化粧道具を用いて該複合化粧料中の粒状の固形化粧料を潰してマトリックスと混合することで、該固形化粧料が本来有する色を変えることができる。したがって使用者の好みに応じた色を使用者自身が作ることができるという利点がある。
【0052】
前記の複合化粧料においてマトリックス中に本発明の固形化粧料を2個以上存在させる場合には、色、形若しくは大きさなどの各種の外観が異なるか、又は組成が異なる2種以上の固形化粧料を用いることができる。こうすることで、複合化粧料の意匠性が一層高まる。これとともに、粒状である本発明の固形化粧料を潰してマトリックスと混合し該固形化粧料の色を変えるときに、異なる2種以上の固形化粧料を使用できるので、混合によって生じた色のバリエーションが広がるという利点がある。
【0053】
本発明の固形化粧料の別の実施形態として、本発明の固形化粧料を複数個用いて固形化粧料集合体とした形態が挙げられる。この固形化粧料集合体を構成する複数個の固形化粧料は、その組成が異なるものを少なくとも2種含んでいることが好ましい。この固形化粧料集合体においては、該集合体を構成する個々の粒状の固形化粧料は、他の固形化粧料と強固に結合していてもよく、あるいは弱く結合していてもよい。この固形化粧料集合体は、その使用時に、これを化粧筆等の化粧道具を用いて潰して2個以上の固形化粧料を混合することで、混合前に該固形化粧料が本来有する色、艶又はマット感を変えることができるという利点を有する。
【0054】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば前記実施形態においては粉体11の撹拌手段13としてアンカー翼を例示したが、粉体11中での粒状体10の形状が損なわれない限りアンカー翼以外の撹拌手段を用いてもよい。
【0055】
また前記実施形態においては、粒状の固形化粧料1と粉体11との分離に用いるフィルタ部材16として篩を例示したが、篩以外のフィルタ部材を用いて粒状の固形化粧料1と粉体11とを分離してもよい。
【実施例】
【0056】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味する。
【0057】
〔実施例1〕
(1)化粧料の原料の調製
以下の表1に原料の組成を示す。基材原料(色材及び体質顔料以外)を110℃で30分間加熱溶解し、ディスパーにて均一混合した。次に、色材原料及び体質顔料を加えて更に15分間均一混合し、脱泡後に自然冷却にて固化させることで化粧料の固形原料のバルク体を得た。バルク体の硬度を、先に述べた方法で測定した。その結果、硬度は35gであった。なお、粉体がコア部の硬度に及ぼす影響は殆どないので、固形化粧料の硬度とバルク体により形成されるコア部の硬度とは実質的に同一と判断して差し支えない。
【0058】
【0059】
(2)粒状体の製造
図1(a)に示す操作によって、化粧料の固形原料のバルク体を分割して複数の粒状物を得た。バルク体の分割は、該バルク体を110℃に加熱して溶融させた状態でシリンジ内に充填し、この溶融原料をシリンジの先端から吐出させ、液滴を粉体11に滴下することで行った。粉体11は、撹拌手段13を回転させて流動状態となっているものとした。粉体11としては、平均粒径D
50が15μmであり、吸油量が150ml/100gである球状シリカを用いた。粉体11に滴下されて形成された粒状体10は、その平均投影面積が6mm
2である略球状のものであった。
【0060】
(3)粉体の付着及び冷却
次に
図1(b)に示すとおり、粒状体10が粉体11に供給された後も粉体11の撹拌を継続した。その後、粉体11の撹拌を停止し、2分静置して粒状体10を自然冷却した。これによって目的とする粒状の固形化粧料を得た。
以上の(2)及び(3)操作はいずれも室温(25℃)下で行った。
【0061】
(4)粉体の除去
その後、
図1(c)及び(d)に示すとおり、粉体11と固形化粧料1とを分離するとともに、固着していない粉体11を除去した。
(5)評価
このようにして得られた粒状の固形化粧料の断面を光学顕微鏡観察した。その結果、
図2(b)に示すように、粉体を構成するシリカ粒子のうちの一部の粒子は、その一部分がコア部の内部に入り込んでおり、また一部の粒子は、その全体がコア部の内部に入り込んでいることが確認された。更に、コア部をその半径方向に沿って見たとき、中心側に比べて表面側で、粉体を構成するシリカ粒子の存在密度が相対的に高くなっていることが確認された。
また、先に述べた方法によって、コア部の表面において、粉体によって覆われていない領域のうち、最も面積の広い領域の面積Aと、コア部の表面の面積Bとを測定し、A/B×100を算出した。その結果、この値は0%であった。
更に、得られた粒状の固形化粧料をプラスチック製の容器に充填した。その後、容器を傾けて固形化粧料を該容器から取り出した。取り出しに際して固形化粧料どうしの結合は観察されず、取り出しを円滑に行うことができた。
【0062】
〔比較例1〕
(1)化粧料の原料の調製
本比較例は特許文献1(特開2009-274974号公報)の実施例を追試したものである。
以下の表2に原料の組成を示す。表2に示す原料を90℃で溶融し、液状の原料を得た。
【0063】
【0064】
(2)粒状体の製造
60℃に加熱したシリコーンオイル(信越化学工業社製、ジメチルシリコーンオイル KF-96A-100cs)を溜めた槽内に、液状にした上記原料を、ノズル径2mmの滴下ノズルを用いて滴下し、シリコーンオイル中で球状に固形化して取り出し、粒状固形化粧料を得た。
【0065】
(3)評価
このようにして得られた粒状の固形化粧料をプラスチック製の容器に充填した。その後、容器を傾けて固形化粧料を該容器から取り出そうとした。容器内で固形化粧料どうしが結合している状態が観察され、取り出しを容易に行えなかった。
【符号の説明】
【0066】
1 固形化粧料
10 粒状体
11 粉体
12 容器
13 撹拌手段
14 分割装置
15 受け容器
16 フィルタ部材