(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】クレーンシステム
(51)【国際特許分類】
B66C 13/22 20060101AFI20240528BHJP
B66C 1/06 20060101ALI20240528BHJP
B66C 13/48 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
B66C13/22 V
B66C1/06 F
B66C13/48 B
(21)【出願番号】P 2020016365
(22)【出願日】2020-02-03
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】503002732
【氏名又は名称】住友重機械搬送システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】亀井 不二男
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-170576(JP,U)
【文献】特開平05-097272(JP,A)
【文献】特開2018-115078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00-15/06
B66C 1/00- 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予めレーザー切断された複数の個片を含むワークの中から所定の前記個片を運搬するクレーンと、
前記クレーンに設けられ、前記クレーンの下方の画像を取得する画像取得部と、
前記ワーク及び前記個片の少なくとも一方の対象物を識別する識別部と、
前記画像取得部で取得された前記画像
中におけるワーク基準位置と、基準ラインの傾きと、により前記クレーンと前記ワークとの相対位置を傾きも含めて把握する位置把握部と、を備え、
前記識別部は、前記画像取得部によって取得された前記対象物の画像を、予め取得された前記対象物の形状データと照合することで、前記対象物を識別する、クレーンシステム。
【請求項2】
前記識別部は、前記対象物として前記個片を識別する、請求項1に記載のクレーンシステム。
【請求項3】
前記識別部は、前記対象物として前記ワーク全体を識別する、請求項1又は2に記載のクレーンシステム。
【請求項4】
複数の前記画像取得部で、前記ワーク全体の画像を取得する、請求項3に記載のクレーンシステム。
【請求項5】
前記識別部は、前記形状データとして前記対象物の作図データを取得する、請求項1~4の何れか一項に記載のクレーンシステム。
【請求項6】
位置把握部は、ワークのある角部を
前記ワーク基準位置と
し、当該ワーク基準位置を通過するワークの縁部を
前記基準ラインと
することにより前記クレーンと前記ワークとの相対位置を把握する、請求項1~5の何れか一項に記載のクレーンシステム。
【請求項7】
前記位置把握部は、個片の搬送から戻ってきたときの前記クレーンの復帰位置として、台車に付されたマークを把握する、請求項6に記載のクレーンシステム。
【請求項8】
前記マークは、前記ワーク基準位置の付近に付される、請求項7に記載のクレーンシステム。
【請求項9】
予めレーザー切断された複数の個片を含むワークの中から所定の前記個片をリフティングマグネットで運搬するクレーンと、
前記クレーンに設けられ、前記クレーンの下方の画像を取得する画像取得部と、
前記リフティングマグネットの複数の磁石部の励磁パターンを制御する励磁パターン制御部と、
前記画像取得部で取得された前記画像
中におけるワーク基準位置と、基準ラインの傾きと、により前記クレーンと前記ワークとの相対位置を傾きも含めて把握する位置把握部と、を備え、
前記励磁パターン制御部は、前記画像取得部によって取得された前記ワーク及び前記個片の少なくとも一方の対象物の画像を、予め取得された前記対象物の形状データと照合させた結果に基づいて、前記励磁パターンを制御する、クレーンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のクレーンシステムとして、特許文献1に記載されたものが知られている。クレーンは、天井側を移動しながら、鋼板を吸着した状態で、当該鋼板を搬送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のクレーンシステムを用いて、予め切断された複数の個片を含むワークの中から所定の個片を運搬する場合、個片が多種多様な形状を有していることがある。この場合、作業者は、個片の形状に応じて、クレーンの吊具と個片とを位置合わせをして、搬送を行う必要がある。しかしながら、当該位置合わせの作業は難しく、このような個片を搬送する場合であってもクレーンの自動化を図ることが求められていた。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、予め切断された複数の個片を含むワークの中から所定の個片を自動的に搬送することができるクレーンシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るクレーンシステムは、予め切断された複数の個片を含むワークの中から所定の個片を運搬するクレーンと、クレーンに設けられ、クレーンの下方の画像を取得する画像取得部と、ワーク及び個片の少なくとも一方の対象物を識別する識別部と、を備え、識別部は、画像取得部によって取得された対象物の画像を、予め取得された対象物の形状データと照合することで、対象物を識別する。
【0007】
本発明に係るクレーンシステムは、クレーンの下方の画像を取得する画像取得部と、ワーク及び個片の少なくとも一方の対象物を識別する識別部と、を備えている。この識別部は、画像取得部によって取得された対象物の画像を、予め取得された対象物の形状データと照合することで、対象物を識別する。この場合、複数の種類のワーク及び個片が存在している場合であっても、識別部は、画像中の対象物と形状データを照合することで、対象物がどのようなものであるかを把握することができる。これにより、クレーンが当該ワークに含まれる個片を自動的に搬送するときに、複雑な演算などを行うことなく、個片に合わせた適切な搬送を容易に行うことが可能となる。以上より、クレーンシステムは、予め切断された複数の個片を含むワークの中から所定の個片を自動的に搬送することができる。
【0008】
識別部は、対象物として個片を識別してよい。これにより、識別部は、搬送対象となる個片を直接識別することができる。
【0009】
識別部は、対象物としてワーク全体を識別してよい。これにより、識別部は、ワークを識別することで、当該ワークが有する複数の個片の情報を同時に把握することができる。
【0010】
クレーンシステムにおいて、複数の画像取得部で、ワーク全体の画像を取得してよい。この場合、ワークが大きい場合であっても、ワーク全体の画像を取得することができる。
【0011】
識別部は、形状データとして対象物の作図データを取得してよい。この場合、識別部は、作図データから対象物の寸法情報などの詳細な情報を取得することができる。
【0012】
クレーンシステムは、画像取得部で取得された画像に基づいて、クレーンとワークとの相対位置を把握する位置把握部を更に備えてよい。この場合、クレーンは、位置把握部によって把握された相対位置に基づいて、適切にワークを搬送することができる。
【0013】
本発明に係るクレーンシステムは、予め切断された複数の個片を含むワークの中から所定の個片をリフティングマグネットで運搬するクレーンと、クレーンに設けられ、クレーンの下方の画像を取得する画像取得部と、リフティングマグネットの複数の磁石部の励磁パターンを制御する励磁パターン制御部と、を更に備え、励磁パターン制御部は、画像取得部によって取得されたワーク及び個片の少なくとも一方の対象物の画像を、予め取得された対象物の形状データと照合させた結果に基づいて、励磁パターンを制御する。
【0014】
本発明に係るクレーンシステムは、クレーンの下方の画像を取得する画像取得部と、リフティングマグネットの複数の磁石部の励磁パターンを制御する励磁パターン制御部と、を備える。この励磁パターン制御部は、画像取得部によって取得されたワーク及び個片の少なくとも一方の対象物の画像を、予め取得された対象物の形状データと照合させた結果に基づいて、励磁パターンを制御する。この場合、複数の種類のワーク及び個片が存在している場合であっても、励磁パターン制御部は、画像中の対象物と形状データを照合した結果に基づくことで、対象物がどのようなものであるかを正確に把握した上で、励磁パターンを制御できる。これにより、クレーンが当該ワークに含まれる個片を自動的に搬送するときに、複雑な演算などを行うことなく、個片に合わせた適切な励磁パターンでの搬送を容易に行うことが可能となる。以上より、クレーンシステムは、予め切断された複数の個片を含むワークの中から所定の個片を自動的に搬送することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、予め切断された複数の個片を含むワークの中から所定の個片を自動的に搬送を行うことができるクレーンシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係るクレーンシステムを備えた加工システムを示す概略図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るクレーンシステムを示す概略図である。
【
図3】作業管理装置の処理内容を示すフローチャートである。
【
図4】ワーク及び個片の一例を示すと共に、作図データとのマッチングの様子を示す概念図である。
【
図5】クレーンが個片を搬送しているときの様子を示す斜視図である。
【
図6】画像に基づく位置把握について説明するための図である。
【
図7】リフティングマグネットの励磁パターンについて説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明によるクレーンシステムの好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係るクレーンシステム100を備えた加工システム200を示す概略図である。
図2は、本実施形態に係るクレーンシステムを示す概略図である。
【0018】
加工システム200は、鋼板をレーザー切断によって個片に切断し、切断した個片を個別に搬送するシステムである。このように搬送された個片は、例えば、船舶の構造部材などに利用される。なお、本明細書では、切断する前の部材を鋼板SPと称し、切断して所望の大きさ・形状になった部材を個片WPと称し、鋼板SPに複数の個片WPの切れ目が入った状態(すなわち個片WPを取り出す前の状態)をワークWと称する。
【0019】
図1に示すように、加工システム200は、クレーンシステム100と、切断システム101と、搬送システム102と、を備える。切断システム101は、鋼板SPをレーザー加工によって複数の個片WPの形状に切断するシステムである。切断システム101は、鋼板SPを載せる台車101aと、台車101a上の鋼板SPを切断するレーザー切断部101bと、を備える。クレーンシステム100は、予め切断された複数の個片WPを含むワークWの中から所定の個片WPを運搬するシステムである。クレーンシステム100は、ワークWの中から所定の順序で、台車101a上のワークWから個片WPを選択的に保持し、搬送システム102へ運搬する。クレーンシステム100の詳細な構成については後述する。搬送システム102は、クレーンシステム100によって運搬された個片WPを個別に搬送するシステムである。搬送システム102は、個片WPを載せるテーブル102aと、テーブル102aと共に個片WPを搬送する搬送コンベア102bと、を備える。
【0020】
ここで、ワークWの一例を
図4に示す。
図4に示すように、ワークWは、予め切断された複数の個片WPを含む。個片WPは、当該個片WPの外形や大きさを定める切断線L1と、個片WP内に形成される貫通孔やスリットなどの切断線L2を有する。ここで、船舶で用いられる部材は、一つ一つが異なる形状・大きさを有しているという特徴がある。従って、
図4に示すように、一つのワークWの中には、互いに異なる形状(似ていたとしても僅かに寸法が異なる場合がある)の個片WPが存在している。更に、複数のワークWを比べても、一つ一つが異なる個片WPを有している。例えば、一つのワークWが「N個」の個片WPを有し、搬送すべきワークWが「M個」存在している場合、個片WPのパターンは「N×M個」存在する。ここで、一つのワークW中の個片WPが全て同じ形状・大きさであったり、全てのワークWが同じ切断パターンであるような場合、クレーンシステム100は、一定の制御プログラムで個片WPを搬送することができるかもしれない。しかし、船舶の生産ラインのように、個片WPの形状・大きさやワークWの切断パターンが異なっているような場合、一定の制御プログラムではそれぞれの個片WPを適切に搬送することができない。そこで、本実施形態に係るクレーンシステム100は、以下の構成を備えることで、それぞれの個片WPを適切に搬送することができる。
【0021】
次に、クレーンシステム100の詳細な構成について説明する。クレーンシステム100は、クレーン1と、機上側制御システム2と、地上側制御システム3と、を備える。機上側制御システム2は、クレーン1の機械上に設けられるシステムである。機上側制御システム2は、クレーン制御装置4と、画像処理装置6と、を備える。地上側制御システム3は、工場の地上側に設けられるシステムである。地上側制御システム3は、生産管理装置7と、作業管理装置8と、建屋設備管理装置9と、を備える。なお、機上側制御システム2と地上側制御システム3との間は、無線や有線による情報伝達手段によって、情報交換が可能な状態となっている。なお、機上側制御システム2と地上側制御システム3との間で無線で通信する場合、25GHz伝送無線装置を用いてよい。
【0022】
クレーン1は、予め切断された複数の個片WPを含むワークWの中から所定の個片WPを運搬する装置である。
図5(a)に示すように、クレーン1は、ガーダー11と、ガーダー11の両端に設けられる一対の走行部12と、ガーダー11に沿って横行するトロリ13と、トロリ13に吊り下げられる吊部14と、を備える。吊部14は、搬送対象物である個片WPを保持する機器である。本実施形態では、吊部14はリフティングマグネット20を有している。リフティングマグネット20は、複数の磁石部21を励磁させて金属製の個片WPを吸着することによって当該個片WPを保持する。トロリ13は、ガーダー11に沿って横行することにより、吊部14及び個片WPを横行方向へ移動させる。走行部12は、図示されないレールに沿って、ガーダー11及びトロリ13と共に走行することにより、吊部14及び個片WPを走行方向へ移動させる。
【0023】
クレーン1のトロリ13には、画像処理装置6が備えるカメラ24(画像取得部)が設けられている。カメラ24は、クレーン1に設けられ、クレーン1の下方の画像を取得する機器である。例えば、カメラ24は、トロリ13に設けられる。カメラ24は、吊部14に遮られることなく、当該吊部14より下方の様子も撮影することができる。従って、カメラ24は、吊部14の下方に配置された個片WP及びワークWの画像を取得することができる。なお、画像処理装置6は、複数のカメラ24を備えてもよい。画像処理装置6が複数のカメラ24を備える場合、各カメラ24の画像を組み合わせることで、ワークW全体の画像を容易に取得することができる。また、各カメラ24は、例えば、吊部14をはさんでトロリ13の横行方向両側に設けられてもよい。各カメラ24をこのように配置し、同時に撮影することで、吊部14の両側の個片WPを認識することができる。
【0024】
図2に戻り、機上側制御システム2のクレーン制御装置4は、動作指示に応じて、走行部12および/またはトロリ13位置の移動、個片WPの地切、及び個片WPの積み付けの動作を実行するように、クレーン1を制御する装置である。クレーン制御装置4は、作業管理装置8から動作指示を受信する。なお、クレーン制御装置4は、指示毎に完了報告を作業管理装置8へ送信する。クレーン制御装置4は、例えば、巻上中の荷重に基づいて動作状態を判定してもよい。巻上中の荷重が規定値よりも大きい場合、個片WPの地切が完了したと判定してもよい。巻下中の荷重が規定値よりも小さい場合、個片WPの積み付けが完了したと判定してもよい。
【0025】
機上側制御システム2の画像処理装置6は、作業管理装置8からの要求に応じて、カメラ24で取得した画像を用いて各種情報を測定・検出し、それらの結果を作業管理装置8へ送信する。画像処理装置6は、台車101aの基準位置の検出、ワークWの基準位置の検出、及び両基準位置の比較によるワークWの位置及び方向きの測定などを行う(詳細は後述)。また、画像処理装置6は、搬送対象となる個片WPの画像を取得して、マッチングのために作業管理装置8へ送信する。
【0026】
地上側制御システム3の生産管理装置7は、作業管理装置8に搬送指示を出す装置である。生産管理装置7は、搬送指示を送信する際、搬送対象となる全ての個片WPの個別の作図データ(形状データ)、及びワークWの切断パターンを示す作図データを合わせて送信する。作図データは、例えば、ネスティング(CAD)データであり、寸法情報などの詳細な情報を含むデータである。なお、切断システム101は、当該作図データに基づいて切断を行う。
【0027】
地上側制御システム3の作業管理装置8は、生産管理装置7からの搬送指示に基づいて、クレーン制御装置4に個片WPの位置、及びリフティングマグネット20の励磁パターンを送信して、クレーン1を制御する。また、作業管理装置8は、個片WPの位置情報を取得するために、クレーン制御装置4に指示して、トロリ13のカメラ24を個片WPを撮影可能な位置へ移動させた後、画像処理装置6に計測指示を送信し、当該画像処理装置6から必要な情報を取得する。また、作業管理装置8は、個片WPの搬送が完了する度に、生産管理装置7へ実績を送信する。作業管理装置8は、加工システム200を用いて加工を行う製造者に属する装置である。
【0028】
作業管理装置8の更に詳細な構成について説明する。作業管理装置8は、プロセッサ、メモリ、ストレージ、通信インターフェース及びユーザインターフェースを備え、一般的なコンピュータとして構成されている。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)などの演算器である。メモリは、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などの記憶媒体である。ストレージは、HDD(Hard Disk Drive)などの記憶媒体である。通信インターフェースは、データ通信を実現する通信機器である。ユーザインターフェースは、液晶やスピーカなどの出力器、及び、キーボードやタッチパネルやマイクなどの入力器である。プロセッサは、メモリ、ストレージ、通信インターフェース及びユーザインターフェースを統括し、後述する機能を実現する。作業管理装置8では、例えば、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムをCPUで実行することにより各種の機能を実現する。具体的に、作業管理装置8は、識別部31と、位置把握部32と、クレーン制御部33(励磁パターン制御部)、管理部34と、を備える。なお、他の装置4,6,7,9も上述のようなコンピュータによって構成される。
【0029】
識別部31は、ワークW及び個片WPの少なくとも一方の対象物を識別する。識別部31は、カメラ24によって取得された対象物の画像を、予め取得された対象物の形状データと照合することで、対象物を識別する。このように、本明細書において「識別する」とは、事前にどのような対象物が搬送対象となるかを生産管理装置7や作業管理装置8が把握している状態で、画像に写されている対象物が、事前に把握したものの中のどの対象物であるかを合致させることである。本実施形態では、識別部31は、対象物として個片WPを識別する場合について説明する。
【0030】
識別部31は、形状データとして対象物の作図データを取得する。作業管理装置8は、例えば、搬送対象となる全ての個片WPの個別の作図データ(形状データ)を生産管理装置7から受信してもよい。識別部31は、搬送対象となる個片WPをカメラ24で撮影すると共に画像を取得し、当該画像を全ての個片WPの作図データをマッチング処理することにより、搬送対象となる個片WPが、作図データのうちのどの個片WPと一致するかを照合する。これにより、識別部31は、画像とマッチングした作図データが存在する場合、当該作図データに対応する個片WPが、搬送対象になっている個片WPであると識別する。識別部31の動作の具体例については、後述する。
【0031】
位置把握部32は、カメラ24で取得された画像に基づいて、クレーン1とワークWとの相対位置を把握する。クレーン1とワークWとの相対位置の把握には、後述するワークW基準位置の検出結果など用いる。また、位置把握部32は、クレーン1が個片WPを搬送した後に戻ってくる復帰位置を把握する。位置把握部32の動作の具体例については、後述する。
【0032】
クレーン制御部33は、クレーン1の各種動作を制御する指令情報を演算すると共に、当該指令情報をクレーン制御装置4へ送信する。また、クレーン制御部33は、リフティングマグネット20の複数の磁石部21の励磁パターンを制御する。クレーン制御部33は、カメラ24によって取得された個片WPの画像を、予め取得された個片WPの作図データと照合させた結果に基づいて、励磁パターンを制御する。クレーン制御部33は、識別部31にて識別した個片WPに対応する作図データに基づいて、どの磁石部21を励磁すべきかを演算すると共に、当該指令情報をクレーン制御装置4へ送信する。なお、クレーン制御部33は、リフティングマグネット20の複数の磁石部21の励磁パターンをリフティングマグネット20のレイアウト図(
図7参照)に表示してもよい。
【0033】
管理部34は、各種データや、作業状況などを管理する。管理部34は、生産管理装置7から受信した個片WP及びワークWの作図データを記憶して保管する。また、識別部31がマッチングを行うときに、当該記憶した作図データを読み出す。管理部34は、クレーン制御装置4から作業の完了報告を受信したら、搬送対象であった個片WPの搬送が完了したことを記憶する。管理部34は、記憶した作業完了状況を示す情報を生産管理装置7へ送信する。
【0034】
地上側制御システム3の建屋設備管理装置9は、クレーン制御装置4に建屋側の設備情報を送信する。送信情報は、安全柵の状態、搬送先のコンベアの状態、台車の状態等、安全インターロックに必要な情報を含んでいる。これにより、クレーン制御装置4は、建屋側の設備と干渉しないようにクレーン1を制御することができる。
【0035】
次に、
図3~
図7を参照して、本発明のクレーンシステム100の動作について説明する。
図3は、作業管理装置8の処理内容を示すフローチャートである。
図3は、新たなワークWがクレーン1の搬送位置に到達した時から、当該ワークW中の全ての個片が搬送されるまでの処理内容を示す。
図4は、ワークW及び個片WPの一例を示すと共に、作図データとのマッチングの様子を示す概念図である。
図5は、クレーン1が個片WPを搬送しているときの様子を示す斜視図である。
図6は、画像に基づく位置把握について説明するための図である。
図7は、リフティングマグネット20の励磁パターンについて説明するための図である。
【0036】
図3に示すように、作業管理装置8のクレーン制御部33は、台車101a上のワークW基準位置をカメラ24で撮影できる位置までトロリ13を移動させるように、クレーン制御装置4へ動作指示を送信する(ステップS10)。ワークW基準位置は、予め定められる位置であり、例えばワークWの角部である。これにより、クレーン制御装置4は、カメラ24がワークWの角部を撮影可能な位置に来るように、クレーン1を制御する(
図5(a)参照)。
【0037】
次に、作業管理装置8の位置把握部32は、カメラ24で取得された画像に基づいて、クレーン1とワークWとの相対位置を把握する(ステップS20)。また、位置把握部32は、クレーン1が個片WPを搬送コンベア102bへ搬送した後に、復帰する復帰位置も把握する。位置把握部32は、画像処理装置6に対し、画像を取得すると共に、位置把握に必要な検出及び測定を行うように指示を行う。具体的に、
図6(a)に示すように、画像処理装置6は、ワークWのある角部をワーク基準位置SP1とし、当該ワーク基準位置SP1を通過するワークWの縁部を基準ラインSLとする。また、台車101aの上面のうち、ワーク基準位置SP1付近の所定位置には、マークが付されている。画像処理装置6は、マークを台車基準位置SP2として設定する。従って、
図6(b)に示すように、画像処理装置6は、画像中にマークを捕捉したら、当該マークの位置を台車基準位置SP2として検出すると共に、当該台車基準位置SP2の位置を測定する。これにより、位置把握部32は、個片WPの搬送から戻ってきたときのクレーン1の復帰位置として、台車基準位置SP2を把握する。また、
図6(c)に示すように、画像処理装置6は、画像中におけるワーク基準位置SP1を検出して位置を測定すると共に、基準ラインSLの傾きを測定する。これにより、位置把握部32は、クレーン1とワークWとの相対位置を傾きも含めて把握する。
【0038】
次に、作業管理装置8の識別部31は、搬送対象となる個片WPを識別する(ステップS30)。識別部31は、ワーク基準位置SP1を有している個片WPの画像を、予め取得された個片の作図データと照合することで、個片WPを識別する。具体的に、
図4では、搬送が行われる順に、個片WP1,WP2,WP3,WP4…という符号を付している。なお、作図データについても、各個片WPの作図データに「X-1」「X-2」「X-3」「X-4」…というデータ名を付している。画像処理装置6は、画像中から搬送対象となる個片WP1の画像を抽出し、識別部31へ送信する。識別部31は、得られた個片WP1を全ての個片WPの作図データとマッチングする処理を行う。
図4に示す例では、搬送対象の個片WP1は、作図データのうち「X-2」というデータ名を有する作図データとマッチングする。これにより、識別部31は、搬送対象の個片WP1が、作図データX-2に対応する個片であると識別する。これにより、識別部31は、作図データX-2の情報を参照することで、搬送対象の個片WP1の正確な寸法情報等を取得することができる。
【0039】
次に、作業管理装置8のクレーン制御部33は、ステップS30で作図データから得られた寸法情報等に基づいて、リフティングマグネット20の励磁パターンを制御する(ステップS40)。具体的に、リフティングマグネット20は、
図7(a)に示すような配列で複数の磁石部21を有し、個々の磁石部21を個別に励磁することができる。ここで、ステップS30で識別された個片WPが
図7(b)に示すような小さなものであった場合、クレーン制御部33は、対応する狭い領域の磁石部21を励磁する。励磁された磁石部21はハッチングで示される。これに対し、ステップS30で識別された個片WPが
図7(c)に示すように大きいものであった場合、クレーン制御部33は、広い範囲の磁石部21を励磁する。クレーン制御部33は、作図データから得られる正確な寸法情報等を用いることで、励磁パターンを正確に設定することができる。
図7(c)に示すように、個片WP内に形成される貫通孔が磁石部よりも大きい場合には、貫通孔に対応する磁石部を励磁しなくてもよい。
【0040】
次に、作業管理装置8のクレーン制御部33は、ステップS20で取得された位置情報に基づいてリフティングマグネット20と個片WPの位置合わせをすると共に、ステップS40で設定された励磁パターンにて個片WPを吸着し、搬送コンベアへ搬送するように、クレーン制御装置40に動作指令を行う(ステップS50)。これにより、クレーン1は、搬送コンベア102bに個片WPを載せた後、台車101aの位置に戻る。この際、クレーン1は、ステップS20で取得された台車基準位置SP2に基づく位置に復帰する。
【0041】
次に、管理部34は、ワークW中の個片WPの搬送が全て終了したか否かを判定する(ステップS60)。ステップS60において終了したと判定された場合、
図3に示す処理は終了し、次の新たなワークWの搬送を開始する。一方、ステップS60において終了していないと判定された場合、ステップS10から再び処理が繰り返される。なお、
図4に示す個片WP1の搬送が完了したら、次に個片WP2の搬送が行われ、以降、個片WP3、WP4…の順で搬送が行われる。なお、個片WP2の搬送を行う場合、
図6(d)に示すように、位置把握部32は、個片WP2の角部を新たなワーク基準位置SP1として取得する。以降、同趣旨の動作が繰り返される。
【0042】
次に、本実施形態に係るクレーンシステム100の作用・効果について説明する。
【0043】
本実施形態に係るクレーンシステム100は、クレーン1の下方の画像を取得するカメラ24と、個片WPを識別する識別部31と、を備えている。この識別部31は、カメラ24によって取得された個片WPの画像を、予め取得された個片WPの形状データと照合することで、個片WPを識別する。この場合、複数の種類の個片WPが存在している場合であっても、識別部31は、画像中の個片WPと形状データを照合することで、個片WPがどのようなものであるかを把握することができる。これにより、クレーン1が当該ワークWに含まれる個片WPを自動的に搬送するときに、複雑な演算などを行うことなく、個片WPに合わせた適切な搬送を容易に行うことが可能となる。以上より、クレーンシステム100は、予め切断された複数の個片WPを含むワークWの中から所定の個片WPを自動的に搬送することができる。
【0044】
識別部31は、対象物として個片を識別する。これにより、識別部31は、搬送対象となる個片WPを直接識別することができる。
【0045】
識別部31は、形状データとして個片WPの作図データを取得してよい。この場合、識別部31は、作図データから個片WPの寸法情報などの詳細な情報を取得することができる。
【0046】
クレーンシステム100は、カメラ24で取得された画像に基づいて、クレーン1とワークWとの相対位置を把握する位置把握部32を更に備えてよい。この場合、クレーン1は、位置把握部32によって把握された相対位置に基づいて、適切にワークWの個片WPを搬送することができる。
【0047】
本実施形態に係るクレーンシステム100は、クレーン1の下方の画像を取得するカメラ24と、リフティングマグネット20の複数の磁石部21の励磁パターンを制御するクレーン制御部33と、を備える。このクレーン制御部33は、カメラ24によって取得された個片WPの画像を、予め取得された個片WPの作図データと照合させた結果に基づいて、励磁パターンを制御する。この場合、複数の種類のワークW及び個片WPが存在している場合であっても、クレーン制御部33は、画像中の個片WPと作図データを照合した結果に基づくことで、対象物がどのようなものであるかを正確に把握した上で、励磁パターンを制御できる。これにより、クレーン1が当該ワークWに含まれる個片WPを自動的に搬送するときに、複雑な演算などを行うことなく、個片WPに合わせた適切な励磁パターンでの搬送を容易に行うことが可能となる。以上より、クレーンシステム100は、予め切断された複数の個片WPを含むワークWの中から所定の個片WPを自動的に搬送することができる。
【0048】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0049】
識別部31は、対象物としてワークW全体を識別してよい。すなわち、識別部31は、ワークW全体の画像と、ワークWの切断パターンを示す作図データとをマッチングすることで、搬送対象となっているワークWがどのワークWであるかを識別してよい。なお、ワークWの作図データには、当該ワークW中に、どのような個片WPがどのような順序で並んでいるかの情報も含まれている。すなわち、ワークWの作図データには、個々の個片WPの情報が紐付けられている。よって、識別部31は、実際の画像を用いてマッチングを行わなくとも、個片WP1,WP2,WP3,WP4…の順で、各個片WPの形状・大きさ及び位置を推定することができる。従って、
図3のステップS30の処理では、個々の個片WPについてのマッチングによる識別を行うことに代えて、ワークWの作図データを用いた個片WPの推定による識別を行うことができる。これにより、識別部31は、ワークWを識別することで、当該ワークWが有する複数の個片の情報を同時に把握することができる。ただし、識別部31は、ワークW全体についてマッチングによる識別を行った上で、個々の個片WPについてマッチングによる識別を行ってもよい。なお、ワークW全体のマッチングを行う場合、複数のカメラ24を用いることで、大きなワークWであっても全体が映った画像を取得することができる。
【0050】
上述の実施形態では、クレーンとして、リフティングマグネットを用いた天井クレーンを例示した。しかし、本発明は、他の種類のクレーンにも適用可能であり、例えば門型クレーンなどのクレーンにも適用可能である。
【0051】
上述の実施形態では、応答速度などを考慮して機上側制御システム2と地上側制御システム3とを分離して設置した構成を例に説明したが、これに限られない。例えば、機上側制御システム2を地上に設置してもよい。それとは逆に、地上側制御システム3をクレーン1の機械上に設けてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1…クレーン、20…リフティングマグネット、21…磁石部、24…カメラ(画像取得部)、31…識別部、32…位置把握部、33…クレーン制御部(励磁パターン制御部)、100…クレーンシステム。