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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】フレキソ印刷版支持体
(51)【国際特許分類】
   B41F 27/12 20060101AFI20240528BHJP
   B41N 1/12 20060101ALI20240528BHJP
   B41N 6/00 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
B41F27/12 B
B41N1/12
B41N6/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020018814
(22)【出願日】2020-02-06
(65)【公開番号】P2021123044
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2023-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】594101226
【氏名又は名称】株式会社コムラテック
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(72)【発明者】
【氏名】天野 正典
(72)【発明者】
【氏名】有田 忠弘
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-031985(JP,A)
【文献】特開2002-086676(JP,A)
【文献】特開2001-171082(JP,A)
【文献】特開2013-031934(JP,A)
【文献】特開2018-114631(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0174791(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第10224301(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 27/12
B41N 1/12
B41N 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキソ印刷版と、上記フレキソ印刷版の刷り方向の端部を表面側および裏面側から挟み込んで支持するバイスとを備えたフレキソ印刷版支持体であって、
上記フレキソ印刷版は、表面に印刷用の凸部が形成された印刷版シートと、上記印刷版シートの裏面側に一体的に設けられ上記印刷版シートを補強する基材シートとで構成されており、
上記バイスは、上記フレキソ印刷版端部の表側に配置される表側部材と、上記フレキソ印刷版端部の裏側に配置される裏側部材と、上記表側部材と裏側部材との間に上記フレキソ印刷版を挟み込んだ状態で両者を締め付け固定する固定手段とを備え、
上記フレキソ印刷版の刷り方向の端部において、上記基材シートの端部が印刷版シートの端部より外側にはみ出しており、
上記バイスの表側部材が、上記印刷版シートの端部表面を押し付けるための第1の平面部と、上記印刷版シートの端部からはみ出した基材シートのはみ出し部表面を押し付けるための第2の平面部と、上記印刷版シートの端部端面に対向する段差部とを有しており、
上記バイスの表側部材と裏側部材の間に、上記基材シートのはみ出し部が挟み込まれた状態で固定されていることを特徴とするフレキソ印刷版支持体。
【請求項2】
フレキソ印刷版と、上記フレキソ印刷版の刷り方向の端部を表面側および裏面側から挟み込んで支持するバイスとを備えたフレキソ印刷版支持体であって、
上記フレキソ印刷版は、表面に印刷用の凸部が形成された印刷版シートと、上記印刷版シートの裏面側に一体的に設けられ上記印刷版シートを補強する基材シートとで構成されており、
上記バイスは、上記フレキソ印刷版端部の表側に配置される表側部材と、上記フレキソ印刷版端部の裏側に配置される裏側部材と、上記表側部材と裏側部材との間に上記フレキソ印刷版を挟み込んだ状態で両者を締め付け固定する固定手段とを備え、
上記フレキソ印刷版の刷り方向の端部において、上記基材シートの端部が印刷版シートの端部より外側にはみ出しており、
上記基材シートのはみ出し部の端縁が、上記バイスの表側部材の、基材シートがはみ出す側の端縁から、平面視において刷り方向に0mmを超え10mm以下はみ出しており、
上記バイスの表側部材と裏側部材の間に、上記基材シートのはみ出し部が挟み込まれた状態で固定されていることを特徴とするフレキソ印刷版支持体。
【請求項3】
フレキソ印刷版と、上記フレキソ印刷版の刷り方向の端部を表面側および裏面側から挟み込んで支持するバイスとを備えたフレキソ印刷版支持体であって、
上記フレキソ印刷版は、表面に印刷用の凸部が形成された印刷版シートと、上記印刷版シートの裏面側に一体的に設けられ上記印刷版シートを補強する基材シートとで構成されており、
上記バイスは、上記フレキソ印刷版端部の表側に配置される表側部材と、上記フレキソ印刷版端部の裏側に配置される裏側部材と、上記表側部材と裏側部材との間に上記フレキソ印刷版を挟み込んだ状態で両者を締め付け固定する固定手段とを備え、
上記フレキソ印刷版の刷り方向の端部において、上記基材シートの端部が印刷版シートの端部より外側にはみ出しており、
上記バイスの固定手段が、上記表側部材および裏側部材のいずれか一方に設けられたねじ穴と、同じく他方に設けられた貫通穴と、上記ねじ穴にねじ込まれるねじ部材とで構成されており、上記基材シートのはみ出し部に、上記ねじ部材を挿通させるための貫通穴が形成されており、上記ねじ部材のねじ部の直径Dが2~10mmであり、上記基材シートの貫通穴の直径Hが上記ねじ部の直径Dよりも0.3~8mm大きい寸法に設定されており、
上記バイスの表側部材と裏側部材の間に、上記基材シートのはみ出し部が挟み込まれた状態で固定されていることを特徴とするフレキソ印刷版支持体。
【請求項4】
フレキソ印刷版と、上記フレキソ印刷版の刷り方向の端部を表面側および裏面側から挟み込んで支持するバイスとを備えたフレキソ印刷版支持体であって、
上記フレキソ印刷版は、表面に印刷用の凸部が形成された印刷版シートと、上記印刷版シートの裏面側に一体的に設けられ上記印刷版シートを補強する基材シートとで構成されており、
上記バイスは、上記フレキソ印刷版端部の表側に配置される表側部材と、上記フレキソ印刷版端部の裏側に配置される裏側部材と、上記表側部材と裏側部材との間に上記フレキソ印刷版を挟み込んだ状態で両者を締め付け固定する固定手段とを備え、
上記フレキソ印刷版の刷り方向の端部において、上記基材シートの端部が印刷版シートの端部より外側にはみ出しており、
上記バイスの固定手段が、上記表側部材および裏側部材のいずれか一方に設けられたねじ穴と、同じく他方に設けられた貫通穴と、上記ねじ穴にねじ込まれるねじ部材とで構成されており、上記基材シートのはみ出し部に、上記ねじ部材を挿通させるための貫通穴が形成されており、上記表側部材および裏側部材のいずれか他方に設けられた貫通穴の直径Jとすると、この直径Jと、上記基材シートの貫通穴の直径Hとの大きさの関係が、下記の式(1)で示される関係に設定されており、
上記バイスの表側部材と裏側部材の間に、上記基材シートのはみ出し部が挟み込まれた状態で固定されていることを特徴とするフレキソ印刷版支持体。
(J-H)≦3mm …(1)
【請求項5】
上記基材シートの厚みが、0.1~1.2mmである請求項1~4のいずれか一項に記載のフレキソ印刷版支持体。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキソ印刷版に版胴装着用のバイスを取り付けてなるフレキソ印刷版支持体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フレキソ印刷は、表面に印刷用の凸部(画像や文字等)が形成された樹脂製やゴム製の柔軟(フレキシブル)なフレキソ印刷版(以下、単に「印刷版」ともいう)を用いて、上記印刷用凸部の頂面に保持したインキを、低印圧で被印刷体に転写する印刷方式である。このフレキソ印刷は、上記印刷用凸部が比較的柔らかく、種々の形状の被印刷体表面に追従可能なことから、様々な材質や厚みのある被印刷体等への印刷に賞用されている。
【0003】
上記フレキソ印刷版を用いた印刷には、一般に、図7に模式的に示すような、輪転式のフレキソ印刷機が用いられている。このフレキソ印刷機を用いて印刷するには、まず、柔軟なシート状の印刷版10の両端に、版胴装着用のバイス3A、3Bを取り付けて印刷版支持体とした後、印刷版10を版胴11に巻き付けた状態で、上記バイス3A、3Bを版胴11に固定する。そして、アニロックスロール12から印刷版10にインキを供給しながら版胴11を回転させることにより、印刷版10の印刷用凸部に保持されたインキを被印刷体Rに転写して印刷することができる。そして、上記一連の動作を繰り返すことにより、同一模様(画像や文字)を、被印刷体Rに連続的に印刷することができる。
【0004】
なお、図7において、13はアニロックスロール12から印刷版10の表面に均一にインキを供給するためのドクター(ブレード)であり、14はインキタンクである。また、16は、被印刷体Rを印刷版10に対して適正な位置に位置決めし、これを印刷版10に押し付けながら前方に送る移動ステージである。
【0005】
上記印刷版支持体における印刷版10は、その平面図である図8(a)と、その正面図である図8(b)に示すように、平面視が略長方形状で、印刷面となる表面側が、フレキシブル性を備えたシート状体からなる印刷版シート1で構成され、その裏面側が、上記印刷版シート1を補強するための基材シート2で構成されている。なお、基材シート2は、単一のシートであっても複数枚のシートを重ねた多層シートであってもよく、この例では、2枚のシートを重ねた構成になっている。
【0006】
上記印刷版10の表面、すなわち印刷版シート1の表面には、印刷用凸部1aが設けられており、その周囲は、印刷に関与しない非印刷部1bになっている。また、上記印刷版シート1の刷り方向(図において太矢印で示す)の両端部には、それぞれ、比較的薄肉の曲げ部1cを介して、版胴11(図7を参照)への取り付けに用いられるくわえ部1dが設けられており、各くわえ部1dには、版胴装着用のバイス3A,3B(二点鎖線で示す)側に所定間隔で設けられる複数の位置決めピン4を挿通するための位置決め穴5が設けられている(図9を参照)。
【0007】
そして、上記印刷版10の刷り方向の両端部もしくは片端部(図9では両端部)に、版胴装着用のバイス3A(くわえ元側)およびバイス3B(くわえ尻側)をそれぞれ取り付けることにより、印刷版支持体が得られる。このようにバイス3A、3Bを両端部に取り付ける場合は、その取り付け構造は左右対称になっていることが多い。そこで、図8(a)の、向かって右側に取り付けられるバイス3Bを例にとって、その取り付け構造を説明する。
【0008】
上記バイス3Bは、図9に示すように、上記印刷版10の端部の表側に配置される表側部材6と、同じくその裏側に配置される裏側部材7とを備えており、上記表側部材6と裏側部材7との間に上記印刷版10の端部(くわえ部1d)を挟み込んだ状態で、両者6、7がねじ部材8で締め付け固定されるようになっている。9は、裏側部材7に設けられたねじ穴である。この状態において、上記印刷版10のくわえ部1dの表面、すなわち印刷版シート1の表面が、バイス3Bの表側部材6の、下向きの平面部6aによって下向きに押し付けられて、印刷版10の端部全体が、バイス3Bの表側部材6の平面部6aと、裏側部材7の平面部7aとの間に挟持される。また、印刷版10の刷り方向の端面10aは、上記表側部材6の段差部6bと対向しており、上記印刷版10の端面10aが、上記表側部材6の段差部6bと平面部6aとで囲われて、外部から保護されるようになっている。
【0009】
上記バイス3A、3Bを取り付けてなる印刷版支持体の構成によれば、バイス3A、3Bに手をかければ、印刷版10の印刷用凸部1aの形状や印刷版10全体の物性を損なうことなく取り扱うことができ、版胴11への装着や交換を容易に行うことができるという利点を有する。また、上記印刷版10の裏面側に設けられた基材シート2が、上記印刷版10に加わる張力を主として支持する「テンション・メンバー」として機能して、柔軟な印刷版シート1を伸びや変形から守る役割を果たしている。
【0010】
ところで、フレキソ印刷は、従来、水系のインキを用いてダンボール等の被印刷体に転写を行う、環境に優しい印刷を特色としていたが、近年、フラットパネルディスプレイや太陽電池パネル等の大形化(大面積化)に伴い、基板や配線等を傷つけることなく、均一な薄膜を再現性よく高速で印刷できるという特徴を生かして、液晶、有機EL、有機TFT等の基板上に設けられる電極層やシール剤,マスキング剤等の印刷(転写形成)への需要が高まっている。
【0011】
このため、フレキソ印刷に対して、より微細な印刷パターンを高い精度で印刷することが要求されるようになってきているが、印刷版の印刷面が柔軟な印刷版シートで構成されているため、いかに裏面側の基材シートでその強度を補強しているとはいえ、刷り方向に張力をかけた状態で繰り返し印刷に供すると、印刷面に伸びや歪みが生じて、印刷パターンにズレや変形が生じるおそれがある。そこで、印刷版とバイスとの取り付け構造をより強固にして印刷面の動きを抑制することが検討されており、例えば、両者の嵌合部をハトメ構造にして、印刷版がバイスからずれにくくすることが提案されている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特許第6355879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記特許文献1のように、印刷版とバイスの嵌合部をハトメ構造にしたものは、両者の位置決めと締め付け固定を、この嵌合部のみで行っているため、印刷版の端部に、多数のハトメ部材を、高い位置決め精度で取り付けなければならず、印刷版の準備に多大な労力を要するという問題がある。
【0014】
また、印刷版に、ハトメ部材との嵌合のために凹部を形成するため、印刷版の端部の厚みが、その部分だけ薄くなって強度が低くなり、印刷版が伸びたり歪んだりして印刷パターンがずれるおそれもある。
【0015】
そこで、印刷版に伸びやズレが生じにくく、微細な印刷パターンを再現性よく繰り返し印刷することができるバイスと印刷版との取り付け構造を、その取り付け構造が複雑にならない形で実現することが強く望まれている。
【0016】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、簡単な構成でありながら印刷版の安定性に優れ、それによって微細な印刷パターンの再現性に優れた印刷版支持体の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の目的を達成するため、本発明は、以下の[1]~[6]を要旨とする。
[1]フレキソ印刷版と、上記フレキソ印刷版の刷り方向の端部を表面側および裏面側から挟み込んで支持するバイスとを備えたフレキソ印刷版支持体であって、
上記フレキソ印刷版は、表面に印刷用の凸部が形成された印刷版シートと、上記印刷版シートの裏面側に一体的に設けられ上記印刷版シートを補強する基材シートとで構成されており、
上記バイスは、上記フレキソ印刷版端部の表側に配置される表側部材と、上記フレキソ印刷版端部の裏側に配置される裏側部材と、上記表側部材と裏側部材との間に上記フレキソ印刷版を挟み込んだ状態で両者を締め付け固定する固定手段とを備え、
上記フレキソ印刷版の刷り方向の端部において、上記基材シートの端部が印刷版シートの端部より外側にはみ出しており、
上記バイスの表側部材と裏側部材の間に、上記基材シートのはみ出し部が挟み込まれた状態で固定されているフレキソ印刷版支持体。
【0018】
[2]上記バイスの表側部材が、上記印刷版シートの端部表面を押し付けるための第1の平面部と、上記印刷版シートの端部からはみ出した基材シートのはみ出し部表面を押し付けるための第2の平面部と、上記印刷版シートの端部端面に対向する段差部とを有している上記[1]記載のフレキソ印刷版支持体。
[3]上記基材シートのはみ出し部の端縁が、上記バイスの締め付け固定部の端縁から、平面視において刷り方向に0~10mmはみ出している上記[1]または[2]記載のフレキソ印刷版支持体。
[4]上記バイスの固定手段が、上記表側部材および裏側部材のいずれか一方に設けられたねじ穴と、同じく他方に設けられた貫通穴と、上記ねじ穴にねじ込まれるねじ部材とで構成されており、上記基材シートのはみ出し部に、上記ねじ部材を挿通させるための貫通穴が形成されており、上記ねじ部材のねじ部の直径Dが2~10mmであり、上記基材シートの貫通穴の直径Hが上記ねじ部の直径Dよりも0.3~8mm大きい寸法に設定されている上記[1]~[3]のいずれかに記載のフレキソ印刷版支持体。
[5]上記バイスの固定手段が、上記表側部材および裏側部材のいずれか一方に設けられたねじ穴と、同じく他方に設けられた貫通穴と、上記ねじ穴にねじ込まれるねじ部材とで構成されており、上記基材シートのはみ出し部に、上記ねじ部材を挿通させるための貫通穴が形成されており、上記表側部材および裏側部材のいずれか他方に設けられた貫通穴の直径Jとすると、この直径Jと、上記基材シートの貫通穴の直径Hとの大きさの関係が、下記の式(1)で示される関係に設定されている上記[1]~[4]のいずれかに記載のフレキソ印刷版支持体。
(J-H)≦3mm …(1)
[6]上記基材シートの厚みが、0.1~1.2mmである上記[1]~[5]のいずれかに記載のフレキソ印刷版支持体。
【0019】
本発明者らは、前記課題を解決するための研究を重ねる過程で、印刷版のズレを防止するために、バイスに挟み込む印刷版の端部(くわえ部)を、バイスによってきつく締め込むと、比較的柔軟な印刷版シート部分(一般に、JISゴム硬度ショアAが35~70度程度)が徐々に変形し、例えば伸びやよじれ等が発生して、かえって印刷パターンにずれが生じやすくなるとの認識を得た。
【0020】
また、印刷版側の位置決め穴とバイス側の位置決めピンとの係合によって両者を位置決めした上でバイスを締め込んで固定する構造の印刷版支持体(図9を参照)を用い、この印刷版支持体に高い張力をかけて繰り返し印刷に供すると、印刷版の裏面側に補強用として設けられている基材シートにおける位置決め穴の開口縁部に、無理に引っ張られたような変形や亀裂が生じやすいことを突き止めた。このような変形や亀裂が基材シートに生じると、柔軟な印刷版シートがそれに追従する形で変形し、それによって印刷パターンの再現性が低下することが考えられる。
【0021】
そこで、印刷版の表面側の、柔軟な印刷版シートを強く締め込む構造にするのではなく、裏面側の基材シートを確実に固定して全体が動かないようにする構造について、さらに検討した。
【0022】
その結果、印刷版において、表面側の印刷版シートの端部よりも裏面側の基材シートの端部が外側にはみ出した構成にして、そのはみ出した部分を、バイスの表側部材と裏側部材とで挟み込んで締め付け固定するすると、基材シートが確実に固定されて動かないため、表側の印刷版シートの端部の端面が、バイス内に囲われただけでフリーであっても、印刷版全体としては、伸びもズレも殆ど生じることがなく、微細な印刷パターンを良好に再現できることを見いだし、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0023】
すなわち、本発明の印刷版支持体は、従来、面一に揃えられていた印刷版の印刷版シートの端部と基材シートの端部のうち、基材シートの端部が、印刷版シートの端部よりも外側にはみ出しており、そのはみ出した部分がバイスの締め付け固定部で締め込まれるようになっている。
【0024】
この構成によれば、従来、比較的自由度のあった印刷版の端部のうち、弾性に乏しい基材シートの端部が、締め付け固定部に締め込まれて固定されるため、基材シートの位置決め穴周辺に無理な力がかかって変形することがない。また、印刷版の端部の、比較的柔軟な印刷版シート部分も、無理にきつく締め込まれることがなく、この部分が変形することもない。
【0025】
したがって、印刷版全体に伸びやズレが生じにくく、微細な印刷パターンを再現性よく繰り返し印刷することができる。そして、この構成によれば、印刷版にもバイスにも余分な部品を付加しておらず、バイスとして従来のものをそのまま取り付けることができるため、印刷版へのバイスの取り付け作業が簡単で汎用性が高いという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施の形態である印刷版支持体の部分的な断面図である。
図2】上記印刷版支持体に用いられる印刷版の部分的な斜視図である。
図3】本発明の他の実施の形態である印刷版支持体の部分的な断面図である。
図4】本発明の実施例における伸びとズレの評価方法の模式的な説明図である。
図5】本発明の実施例における伸びとズレの評価結果を示すグラフ図である。
図6】本発明の比較例における伸びとズレの評価結果を示すグラフ図である。
図7】一般的なフレキソ印刷機の一例を示す模式的な構成図である。
図8】上記フレキソ印刷機に用いられる従来の印刷版の一例を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。
図9】従来のフレキソ印刷版支持体の一例を示す部分的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
つぎに、本発明の実施の形態を、図面にもとづいて詳しく説明する。
【0028】
図1は、本発明の一実施の形態である印刷版支持体の部分的な断面図であり、印刷版20とバイス3A、3Bとで構成されている。この印刷版支持体は、例えば図7に示すようなフレキソ印刷機に装着して印刷に供することができるようになっており、上記印刷版20に取り付けられるバイス3A、3Bは、図8(a)、(b)および図9に示すような、従来公知のバイスを用いることができる。したがって、バイス3A、3Bについては、これらの図と同一部分に同一番号を付して、その説明を省略する。
【0029】
一方、上記印刷版20は、その部分的な斜視図である図2に示すように、平面視が略長方形状で、印刷面となる表面側が、フレキシブル性を備えたシート状体からなる印刷版シート21で構成されており、その裏面側が、上記印刷版シート21を補強するための基材シート22で構成されている[全体の形状については、図8(a)、(b)を参照]。
【0030】
そして、上記印刷版20の、刷り方向(図2において太矢印で示す)の端部、すなわち、バイス3A、3Bを取り付ける側の端部において、上記基材シート22の端部が印刷版シート21の端部より外側に延びてはみ出しており、このはみ出し部30に、バイス3A、3Bの表側部材6と裏側部材7とを締め付け固定するためのねじ部材8を挿通させるための貫通穴31が形成されている。そして、上記印刷版20のはみ出し部30が、上記表側部材6と裏側部材7とで挟んで締め付け固定されるようになっている。これが、本発明の最大の特徴である。
【0031】
なお、上記印刷版20の表面、すなわち印刷版シート21の表面には、従来の印刷版と同様、印刷用凸部21aが設けられており、その周囲は、印刷に関与しない非印刷部21bになっている。また、上記印刷版シート21の刷り方向(矢印で示す)の端部には、比較的薄肉の曲げ部21cを介して、版胴11(図7を参照)への取り付けに用いられるくわえ部21dが設けられており、くわえ部21dには、バイス3A,3B側に所定間隔で設けられる複数の位置決めピン4を挿通するための位置決め穴25が設けられている。そして、上記印刷版シート21のくわえ部21dの表面が、表側部材6の平坦部6aによって下向きに押し付けられている。また、印刷版シート21のくわえ部21dの刷り方向の端面21fが、上記表側部材6の段差部6bと対向している。
【0032】
上記印刷版20のうち、印刷版シート21を構成する材料としては、樹脂やゴム等、版成形後にも一定の弾性を有する材料が用いられる。なお、本発明の印刷版支持体は、先に述べたように、液晶,有機EL,有機TFT等の製造工程において、基板等の被印刷体上に、電極層やシール剤,マスキング剤等の有機溶剤系のインキを、転写形成するのに用いられることを想定しているため、上記工程の使用インキや版洗浄液等の種類に応じて、その影響を受けない材質のものを選択することが好ましい。
【0033】
また、上記印刷版シート21において、印刷用凸部21aや位置決め用アライメントマーク等の形状の精度が求められることから、印刷版シート21の作製には、これらを正確な形状・位置に形成することのできる、フォトリソグラフィ法が好適に用いられる。この場合、上記印刷版シート21を構成する材料として、感光性樹脂組成物が用いられ、なかでも、ウレタン系,ポリエステル系,ポリブタジエン系等のアクリレートを主骨格としたプレポリマー,アクリレートオリゴマー,アクリレートモノマーと、光重合禁止剤,光重合開始剤等の混合物からなる感光性樹脂組成物が用いられる。
【0034】
そして、上記印刷版シート21の硬さは、JISゴム硬度ショアAが35~70度の範囲に設定することが望ましい。上記ショアA硬度が35度未満の場合は、印刷版シート21に形成される印刷用凸部21aが被印刷体(基板等)に対して柔らかすぎて印刷時に変形するおそれがあり、高精細な印刷を維持する上で好ましくない。逆に、上記印刷版シート21のショアA硬度が70度を超えた場合は、被印刷体の表面や、その表面に形成された電極や配線等を傷つけてしまうおそれがあり、好ましくない。
【0035】
さらに、上記印刷版シート21の外形寸法は、被印刷体や版胴11(図7を参照)のサイズに応じて設定されるが、一般に、刷り方向の長さ寸法は1000~3000mm程度、刷り方向に垂直な幅寸法は700~2700mm程度である。そして、比較的薄肉の曲げ部21cの刷り方向の長さ寸法は0~100mm程度(曲げ部21cを設けない場合、長さ=0mm)、くわえ部21dの刷り方向の長さ寸法は15~40mm程度に設定される。また、印刷版シート21の端部に設けられる、バイス3A、3Bの位置決めピン4を挿通させるための位置決め穴25は、印刷版シート21の寸法にもよるが、通常、少なくても5個程度、多いものでは30個以上設けられる。
【0036】
一方、上記印刷版シート21の裏面側に、その補強のために設けられる基材シート22は、比較的強度のあるシート(一般に「フィルム」といわれる形態も含む)を1層または2層以上積層して形成されており、この例では、ポリエチレンテレフタレート(PET)製の2層シートが用いられているが、シートの材料は、上記PETの他、ポリ塩化ビニル(PVC)等の他の樹脂を用いることができる。また、アルミニウムやステンレス(SUS)等の金属を用いることもできる。
【0037】
なお、上記基材シート22を構成する材料も、印刷版シート21の場合と同様、液晶,有機EL,有機TFT等の製造工程において用いられるインキや版洗浄液等の種類に応じて、その影響を受けないものを選択することが好ましい。
【0038】
また、上記印刷版シート21と基材シート22とで構成される印刷版20の刷り方向の両端部に取り付けられるバイス3A、3B(図1に戻る)は、すでに述べたとおり、図9に示す従来品と同一の構成のものである。なお、バイス3A、3Bの表側部材6の、印刷版シート21の表面を押し付けるための平面部6aと、基材シート22を介して裏側部材7を締め付ける底面部6cと、裏側部材7の平面部7aには、印刷版20の刷り方向のずれを防止するために、刷り方向に対し直角方向に、波形や鋸刃状、あるいはリブ状の凹凸形状が形成されていてもよい。
【0039】
つぎに、上記印刷版シート21と基材シート22とを一体的に積層して印刷版20とし、その両端部にバイス3A、3Bを取り付けて印刷版支持体とする方法の一例を、簡単に説明する。
【0040】
まず、印刷版20に用いる印刷版シート21の、印刷用凸部21a等の凹凸形状を転写しうる成形型(反転型)を準備し、安定した水平板等の上に載置する。そして、印刷版シート21の材料である液状の印刷版形成用感光性樹脂組成物を、上記成形型内に注型し、その水平な表面に、透明な基材シート22(目的とする寸法よりも大きい寸法の中間体)を被せて密着させ、その状態で、上記基材シート22(中間体)の上から紫外線等の硬化用照射線を照射して感光性樹脂組成物を硬化させた後、脱型する。これにより、上記基材シート22(中間体)が印刷版シート21の裏面側に積層一体化された印刷版20(中間体)を得ることができる。なお、硬化を完全に完了させるために、別途加熱等を行ってもよい。
【0041】
そして、得られた印刷版20(中間体)における基材シート22(中間体)を、その刷り方向の両端部が、印刷版シート21の両端部よりも外側にはみ出した所定寸法に切断するとともに、上記基材シート22のはみ出し部30(図2を参照)に、所定の配置で貫通穴31を形成して、不要部分を除去する。このようにして、目的とする印刷版20(完成品)を得ることができる。
【0042】
つぎに、得られた印刷版20の、刷り方向の両端部に、バイス3A、3Bをそれぞれ取り付ける。取り付け作業において、まず、バイス3A、3Bの裏側部材7に設けられた各位置決めピン4に、印刷版20の位置決め穴25をそれぞれ嵌め入れて、印刷版20のくわえ部21dと、印刷版シート21の端部よりも外側にはみ出した基材シート22の端部のはみ出し部30とを、この裏側部材7の平面部7aの上に、適正な位置で載置する。このとき、基材シート22のはみ出し部30の貫通穴31が、裏側部材7のねじ穴9の上に重なって配置される。
【0043】
そして、上記バイス3A、3Bの裏側部材7の上に、印刷版20の両端部が位置決めされ係合した状態で、この印刷版20を挟み込む形で、その上に、表側部材6を重ねる。そして、ねじ部材8によって、表側部材6を裏側部材7側に締め込むことによって、目的とする印刷版支持体を得ることができる。
【0044】
このようにして得られた印刷版支持体は、従来と同様にして、例えば図7に示すフレキソ印刷機に装着され、フレキソ印刷に供することができる。
【0045】
この印刷版支持体によれば、従来、位置決め穴25と位置決めピン4との係合部において、印刷版シート21の端部と一体的に係止され比較的自由度のあった基材シート22の端部が、バイス3A、3Bの締め付け固定部に締め込まれて固定されるため、基材シート22において、位置決め穴25の周辺に無理な力がかかって変形するようなことがない。また、比較的柔軟な印刷版シート21の端部を無理に締め込む必要がないため、この部分に伸びやよじれ等の変形が生じることもない。
【0046】
したがって、印刷版20全体に伸びやズレが生じにくく、微細な印刷パターンを再現性よく繰り返し印刷することができる。そして、この構成によれば、印刷版シート21の端部の表面をバイス3A、3Bの表側部材6の平面部6aが押し付けており、同じくその端面21fが上記表側部材6の段差部6bと対向していることから、上記表側部材6が印刷版シート21の端部を外部から保護した構造になっている。しかも、印刷版20にもバイス3A、3Bにも余分な部品を付加しておらず、バイス3A、3Bとして従来のものをそのまま取り付けることができるため、印刷版20へのバイス3A、3Bの取り付け作業が簡単で、汎用性が高いという利点を有する。
【0047】
なお、本発明の印刷版支持体において、印刷版シート21の端部からはみ出る基材シート22のはみ出し部30は、バイス3A、3Bの表側部材6と裏側部材7との間の、締め付け固定部に挟み込まれていることが重要であり、上記はみ出し部30は、この部分に締め込まれるねじ部材8によって充分に締め込まれることが必要である。そのためには、上記はみ出し部30の端縁30aが、表側部材6の端縁6dと面一になっているか、外側に少しはみ出していることが好ましい。そのはみ出し幅P(図1を参照)の寸法は、印刷版20の大きさにもよるが、通常、0~20mmが好ましく、なかでも、0~10mmがとりわけ好ましい。すなわち、上記はみ出し幅Pが狭すぎるとバイス3A、3Bによる基材シート22への締め付けが不充分になるおそれがあり、逆に広すぎると、バイス3A、3Bを介してこの印刷版支持体を版胴(図7を参照)に取り付ける際の作業がしにくくなるおそれがあり、好ましくない。
【0048】
また、本発明の印刷版支持体において、上記基材シート22のはみ出し部30には、締め付け手段であるねじ部材8を挿通させるための貫通穴31が形成されているが、上記ねじ部材8のねじ部の直径Dが例えば2~10mm程度である場合、上記はみ出し部30の貫通穴31の直径Hは、上記ねじ部の直径Dよりも0.3~8mm程度大きい寸法に設定することが好ましく、なかでも、0.5~5mm程度大きい寸法にすることがとりわけ好適である。すなわち、上記ねじ部材8のねじ部に対して、これを挿通させるための貫通穴31を大きく設定しすぎると、バイス3A、3Bに対するはみ出し部30の締め込み面積が小さくなり、基材シート22に対する締め込み力が充分に反映しなくなるおそれがあり、好ましくない。また、上記貫通穴31が小さすぎると、ねじ部材8を締め込みにくく、その作業性が損なわれるおそれがあり、好ましくない。
【0049】
さらに、上記基材シート22のはみ出し部30を上から締め付ける表側部材6に設けられる、ねじ部材8を挿通させるための貫通穴50の直径J(図1を参照、符号Jは図示せず)と、上記基材シート22の貫通穴31の直径Hは、下記の式(1)に示す関係に設定されることが好適である。
(J-H)≦3mm …(1)
【0050】
すなわち、表側部材6側の貫通穴50の開口周縁部は、上記基材シート22側の貫通穴31の開口周縁部を上から押さえ付けて動かないようにする作用を果たすだけでなく、上記貫通穴31の開口周縁部に無理な力がかかってその部分がめくり上がったり伸びたりして変形するのを防止する作用を果たしている。したがって、上記貫通穴31の開口周縁部を、表側部材6側の貫通穴50の開口周縁部でしっかりと押さえ付けることが望ましく、そのためには、例えば表側部材6側の貫通穴50の直径Jが、基材シート22側の貫通穴31の直径Hよりも小さく設定されていることが好適である。その一方、上記直径Jを、上記直径Hよりも3mmを超えて大きくすると、基材シート22側の貫通穴31の開口周縁部の自由度が大きくなってその部分に変形が生じるおそれがあり、好ましくない。この関係を式で表すと、上記の式(1)となる。
【0051】
ただし、これら貫通穴50、31に挿通されるねじ部材8の大きさや、基材シート22側の貫通穴31を上記ねじ部に対してどの程度大きく設定するか、といった設定との兼ね合いから、上記表側部材6側の貫通穴50の直径Jは、基材シート22側の貫通穴31の直径Hに対し、最大で5mm小さくなっていることが好ましい。
【0052】
また、本発明の印刷版支持体において、上記基材シート22は、印刷版シート21を裏面側から補強し、かつ、その外側へのはみ出し部30が、バイス3A、3Bに挟み込まれることにより、印刷版20の全体を固定して伸びやズレを抑制する役割を果たすものであり、フレキシブル性を有するものの、ある程度の強度や品質安定性が求められる。そのために、基材シート22の厚みは、0.1~1.2mm、なかでも0.1~0.8mmであることがとりわけ好適である。すなわち、基材シート22の厚みが薄すぎると、はみ出し部30をバイス3A、3Bに挟み込んだときの挟み込み部における強度が弱くなるおそれがあり、逆に、基材シート22が厚すぎると、印刷版全体のフレキシブル性を損なうおそれが好ましくない。
【0053】
なお、上記の例では、図1図2に示すように、印刷版20の端部側に位置決め穴25を設け、この位置決め穴25よりさらに端部側に、印刷版20を締め付け固定するためのねじ穴9を設けて、段差部6aを有する表側部材6と、位置決めピン4とねじ穴9を有する裏側部材7とを用いて、上記印刷版20を挟み込むようにしたが、上記表側部材6として、段差部6aを有しない板状のものを用いることもできる。
【0054】
例えば、図3に示すように、印刷版20に位置決め穴25を設けず、裏側部材7’に位置決めピン4を設けないで、基材シート22のはみ出し部30に設けられた貫通穴31と、裏側部材7’に設けられたねじ穴9とを互いに揃えて配置することにより位置決めを行い、その状態で、板状の表側部材6’を上から載せてねじ部材8でねじ固定することにより、印刷版20の位置決めと固定を一度に行うことができる。
【0055】
この構成によれば、表側部材6’として平たい板状のものを用いることができるため、全体の構成が簡単になり、好適である。
【0056】
また、図3の構成において、基材シート22のはみ出し部30に、ねじ部材8を挿通させるための貫通穴31とは別に、位置決め穴(図2における位置決め穴25に相当)を設けるとともに、裏側部材7’側に、位置決めピン(図1における位置決めピン4に相当)を設け、さらに、表側部材6’にも、位置決めピン挿通用の貫通穴を設けることにより、まず、裏側部材7’の位置決めピンと基材シート22の位置決め穴を係合させることによって位置決めを行い、その状態で、表側部材6’を上から載せてねじ部材8でねじ固定するようにしてもよい。この構成においても、平たい板状の表側部材6’を用いることができるため、構成が比較的簡単になり、好適である。
【0057】
そして、上記一連の実施形態において、バイス3A、3Bにおける締め付け固定のための固定手段として、ねじ部材8とねじ穴9によるねじ固定を例示しているが、固定手段はこれに限らず、ばねを用いたクランプ機構等、各種の固定手段を用いることができる。
【0058】
また、上記一連の実施形態は、左右のバイス3A、3Bによる印刷版20の固定部において、その刷り方向両端部の両方において、本発明の構成(基材シート22にはみ出し部30を延設し、そのはみ出し部30をバイス3A、3Bで締め込んで固定する構成)を適用したものであるが、必ずしもその両端部の両方に本発明の構成を適用する必要はなく、少なくとも片方に適用するだけでもよい。そして、いずれか一方の端部に適用する場合は、刷り方向の上流側(くわえ元側)の端部に適用することが、効果の上で、より好適である。
【実施例
【0059】
つぎに、本発明の実施例について、比較例と併せて説明する。すなわち、まず、以下のとおり、実施例品と比較例品とを準備した。
【0060】
[実施例1]
図1に示す印刷版支持体を作製した。構成の詳細は以下のとおりである。なお、印刷版20の表面、すなわち印刷版シート21の表面の上流側と下流側に、図4に模式的に示すように、アライメントマーク40、41を形成した。
<印刷版シート21>
材質:アクリレートブタジエンゴム(ショア硬度55度)
くわえ部21dの厚み:2.36mm
印刷版シート21の大きさ:刷り方向長さ×幅=100mm×50mm
<基材シート22>
材質:PET(2層積層PETシート)
厚み:0.76mm
基材シート22の大きさ:刷り方向長さ×幅=150mm×50mm
はみ出し部30の刷り方向長さ:5mm
はみ出し部30の端縁30aが表側部材6の端縁6dからはみ出した長さP:25mm
ねじ部材8挿通用の貫通穴31の直径H:7.5mm
<バイス3A、3B>
材質:ステンレス
ねじ部材8のねじ径D:4.0mm
【0061】
[実施例2]
上記基材シート22のはみ出し部30の端縁30aが、バイス3A、3Bの表側部材6の端縁6dと面一となるように刷り方向の長さを短くした。それ以外は、実施例1と同じ印刷版支持体を得た。
【0062】
[実施例3]
上記基材シート22のはみ出し部30の端縁30aが、バイス3A、3Bの表側部材6の端縁6dから10mm外側にはみ出すように、刷り方向の長さを長くした。それ以外は、実施例1と同じ印刷版支持体を得た。
【0063】
[実施例4]
上記基材シート22のはみ出し部30における貫通穴31の直径Hを8.0mmにした。それ以外は、実施例1と同じ印刷版支持体を得た。
【0064】
[実施例5]
上記基材シート22のはみ出し部30における貫通穴31の直径Hを11mmにした。それ以外は、実施例1と同じ印刷版支持体を得た。
【0065】
[比較例1]
図9に示す構成の印刷版支持体を作製した。このものは、印刷版10において、印刷版シート1の端部と基材シート2の端部とが面一になっており、実施例1のような、はみ出し部30は設けられていない。それ以外の構成は、実施例1と同じである。
【0066】
<評価>
上記実施例1品と比較例1品をそれぞれ、図7に示す輪転式のフレキソ印刷機の版胴に装着して、被印刷体(紙)に対して印刷を繰り返し、所定枚数の印刷経過ごとに、印刷版支持体におけるアライメントマーク40、41の変位を計測した。その結果を図5(実施例1)と図6(比較例1)に示す。
なお、上流側のアライメントマーク40と下流側のアライメントマーク41の変位は、それぞれの当初の位置からのズレを示す。そして、2つの変位の差は、印刷版20自体が2つのアライメントマーク40、41の間で伸びた距離を示す。
【0067】
上記図5図6の結果から、実施例1品は、アライメントマーク40、41の変位が小さく、しかも互いの変位が重なっていることから、両者の間で伸びていないことがわかる。これに対し、比較例1品は、アライメントマーク40、41のそれぞれの変位が大きく、しかも両者の間で大きく伸びていることがわかる。このため、印刷枚数が多くなると、印刷にズレが生じて正確な印刷を再現することができなくなると思われる。
【0068】
また、上記実施例2~5品についても、同様にして印刷を繰り返し、アライメントマーク40、41の変位を計測した。その結果、実施例1品に比べてやや変位が大きくなるものの、いずれも、両者の間で伸びることがなく、比較例1品に比べて、はるかに印刷再現性に優れたものであることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明のフレキソ印刷版支持体は、簡単な構成でありながら印刷版に伸びやズレが生じにくく、高い印刷再現性を長期にわたり維持できることから、液晶、有機EL、有機TFT等の基板上に設けられる電極層やシール剤、マスキング剤等の微細印刷に利用することができる。
【符号の説明】
【0070】
3A,3B バイス
6 表側部材
7 裏側部材
20 印刷版
21 印刷版シート
22 基材シート
30 はみ出し部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9