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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】印刷装置及び印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240528BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20240528BHJP
   C09D 11/30 20140101ALI20240528BHJP
   D06P 5/30 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
B41J2/01 129
B41J2/01 501
B41J2/01 401
B41M5/00 100
B41M5/00 120
B41M5/00 114
C09D11/30
D06P5/30
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020038984
(22)【出願日】2020-03-06
(65)【公開番号】P2021138089
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【弁理士】
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142653
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】大西 勝
(72)【発明者】
【氏名】橋詰 博徳
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-76639(JP,A)
【文献】特開2020-15299(JP,A)
【文献】特開2017-128040(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0025736(US,A1)
【文献】特開2019-25693(JP,A)
【文献】特開2019-130719(JP,A)
【文献】特開2020-82460(JP,A)
【文献】特開2020-44757(JP,A)
【文献】特開2019-89300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
B41M 5/00
C09D 11/30
D06P 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に対して印刷を行う印刷装置であって、
前記媒体へインクを吐出する吐出ヘッドと、
前記媒体に付着した前記インクへエネルギー線を照射するエネルギー線照射部と、
前記エネルギー線照射部の動作を制御する制御部と
を備え、
前記吐出ヘッドが吐出する前記インクは、前記エネルギー線照射部により照射される前記エネルギー線を吸収することで発熱する前記エネルギー線の吸収剤を含むインクであり、
水性の溶媒と、
前記エネルギー線照射部により照射される前記エネルギー線に応じて前記インクを硬化させる硬化性物質と
を含み、
前記制御部は、前記エネルギー線照射部に、
第1の条件で前記エネルギー線を照射することで前記インクを発熱させて、前記インクに含まれる前記溶媒の少なくとも一部を蒸発させる第1条件照射と、
前記第1条件照射よりも後に前記第1の条件と異なる第2の条件で前記エネルギー線を照射することで前記インクに含まれる前記硬化性物質を硬化させる第2条件照射と
を行わせ、
前記エネルギー線は、紫外線であり、
前記第1の条件は、前記第2の条件と比べて相対的に強い紫外線を相対的に短い時間だけ照射する条件であり、
前記第2の条件は、前記第1の条件と比べて相対的に弱い紫外線を相対的に長時間照射する条件であることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記吐出ヘッドは、布の前記媒体へ前記インクを吐出することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記吐出ヘッドは、滲み防止の前処理が行われていない前記布の媒体へ前記インクを吐出することを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記硬化性物質は、前記第2条件照射によって水に対して不溶性の状態に前記インクを硬化させる物質であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項5】
前記エネルギー線照射部は、
前記第1条件照射により、前記媒体上の前記インクの粘度について、前記媒体上で滲みが発生せず、かつ、粘着性を有する粘度にまで高め、
前記第2条件照射により、前記媒体上の前記インクの硬化を完了させることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項6】
前記第1条件照射において、前記エネルギー線照射部は、第1の波長を中心波長とする前記エネルギー線を照射し、
前記第2条件照射において、前記エネルギー線照射部は、前記第1の波長と異なる第2の波長を中心波長とする前記エネルギー線を照射することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項7】
前記第1条件照射において、前記エネルギー線照射部は、前記媒体における単位面積に対して単位時間に照射される前記エネルギー線のエネルギー量である単位照射エネルギー量が第1の量になる条件で前記エネルギー線を照射し、
前記第2条件照射において、前記エネルギー線照射部は、前記単位照射エネルギー量が前記第1の量と異なる第2の量になる条件で前記エネルギー線を照射することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項8】
前記第1の量は、前記第2の量よりも大きく、
前記第1条件照射において、前記エネルギー線照射部は、前記媒体における同じ位置へ
の前記エネルギー線の照射時間が第1の時間になるように、前記エネルギー線を照射し、
前記第2条件照射において、前記エネルギー線照射部は、前記媒体における同じ位置への前記エネルギー線の照射時間が前記第1の時間よりも長い第2の時間になるように、前記エネルギー線を照射することを特徴とする請求項7に記載の印刷装置。
【請求項9】
媒体に対して印刷を行う印刷方法であって、
前記媒体へインクを吐出する吐出ヘッドと、
前記媒体に付着した前記インクへエネルギー線を照射するエネルギー線照射部と
を用い、
前記吐出ヘッドが吐出する前記インクは、前記エネルギー線照射部により照射される前記エネルギー線を吸収することで発熱する前記エネルギー線の吸収剤を含むインクであり、
水性の溶媒と、
前記エネルギー線照射部により照射される前記エネルギー線に応じて前記インクを硬化させる硬化性物質と
を含み、
前記エネルギー線照射部に、
第1の条件で前記エネルギー線を照射することで前記インクを発熱させて、前記インクに含まれる前記溶媒の少なくとも一部を蒸発させる第1条件照射と、
前記第1条件照射よりも後に前記第1の条件と異なる第2の条件で前記エネルギー線を照射することで前記インクに含まれる前記硬化性物質を硬化させる第2条件照射と
を行わせ、
前記エネルギー線は、紫外線であり、
前記第1の条件は、前記第2の条件と比べて相対的に強い紫外線を相対的に短い時間だけ照射する条件であり、
前記第2の条件は、前記第1の条件と比べて相対的に弱い紫外線を相対的に長時間照射する条件であることを特徴とする印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置及び印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な用途において、インクジェットプリンタが広く用いられている。例えば、近年、布の媒体(メディア)に対してインクジェットプリンタで印刷を行うデジタルテキスタイル捺染(デジタル捺染)技術が、大きな広がりを見せつつある(例えば、特許文献1参照)。デジタル捺染技術の分野においては、例えば、水性顔料インクを使い、縫製済みのTシャツ等の衣類へ印刷することが、実際に広く実施されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-98581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、水性系顔料インクを用いて布の媒体への印刷を行う場合、例えば媒体が浸透性であること等の影響で、インクの滲みが生じやすくなる。また、この場合、複数のインクの層を重ねて印刷を行う重ねプリントを行うことが難しくなるため、濃い色を表現するための高濃度の印刷を行うことが難しくなる。また、布を構成する繊維の内部へインクが浸透しやすくなることで、布の表面におけるインクの濃度が低下しやすくなる。また、従来の方法でデジタル捺染を行う場合、洗濯堅牢度や湿潤堅牢度を適切に高めることが難しい場合がある。そのため、従来、布等の様々な媒体に対してより適切に印刷を行い得る構成が望まれていた。そこで、本発明は、上記の課題を解決できる印刷装置及び印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の発明者は、布の媒体等の様々な媒体に対してより適切に印刷を行い得る構成について、鋭意研究を行った。そして、水性の溶媒を用いる特徴、瞬間乾燥方式で溶媒を蒸発させる特徴、及び紫外線等のエネルギー線の照射によりインクを硬化させる特徴を組み合わせることで、様々な媒体に対して適切に印刷を行い得ることを見出した。この場合、瞬間乾燥方式とは、例えば、エネルギー線を照射することでインク自体を発熱させて溶媒の少なくとも一部を蒸発させる方式のことである。
【0006】
より具体的に、水性の溶媒を用いる場合、例えば、溶媒を蒸発させることで生じる環境への負荷が小さくなることで、様々な環境においてより容易に印刷を行うことが可能になる。そのため、このようなインクを用いる場合、例えば、布の媒体への印刷を行う構成において、容易かつ適切に用いることができる。また、この場合において、瞬間乾燥方式でインク中の溶媒を蒸発させることで、媒体へのインクの着弾後、短時間でインクの粘度を高めることができる。また、これにより、例えば、インクの滲みが発生することを適切に防ぐことができる。また、媒体へ多くのインクが浸透する前にインクを乾燥させることで、例えば、媒体の表面におけるインクの濃度を適切に高めることもできる。また、瞬間乾燥方式で溶媒を蒸発させることにより、例えば、様々な媒体に対してより適切に印刷を行うことが可能になる。また、これにより、例えば、滲み防止等の前処理を行っていない布の媒体を用いる場合等にも、より適切に印刷を行うことが可能になる。また、この場合、様々な布の媒体等を用いることが可能になるため、例えば、少量生産のみを行うオリジナル品(オリジナルテキスタイル)について、必要なタイミングにおいてオンデマンドで簡単に作成することが可能になる。また、この場合において、単に瞬間乾燥方式でインクを乾燥させるのではなく、紫外線等のエネルギー線の照射によりインクを硬化させることで、媒体に対してより強固にインクを定着させることができる。また、これにより、例えば、洗濯堅牢度や湿潤堅牢度を適切に高めることが可能になる。
【0007】
しかし、上記のような構成のインクを用いる場合、エネルギー線の照射により、瞬間乾燥方式でインクを加熱し、かつインクを硬化させることになる。そして、この場合、単にエネルギー線を照射するのみでは、例えば溶媒の蒸発及びインクの硬化のうちの少なくともいずれかが不十分になり、媒体にインクを適切に定着させることが難しくなること等も考えられる。これに対し、本願の発明者は、瞬間乾燥用のエネルギー線の照射と、インクを硬化させるためのエネルギー線の照射とで、照射の条件を異ならせ、それぞれの目的に合わせた条件を用いることを考えた。このように構成すれば、例えば、エネルギー線の照射を行うことで、インク中の溶媒を適切に蒸発させ、かつ、インクを適切に硬化させることができる。また、これにより、例えば、媒体に対してインクをより適切に定着させることができる。
【0008】
また、本願の発明者は、更なる鋭意研究により、このような効果を得るために必要な特徴を見出し、本発明に至った。上記の課題を解決するために、本発明は、媒体に対して印刷を行う印刷装置であって、前記媒体へインクを吐出する吐出ヘッドと、前記媒体に付着した前記インクへエネルギー線を照射するエネルギー線照射部と、前記エネルギー線照射部の動作を制御する制御部とを備え、前記吐出ヘッドが吐出する前記インクは、前記エネルギー線照射部により照射される前記エネルギー線を吸収することで発熱するインクであり、水性の溶媒と、前記エネルギー線照射部により照射される前記エネルギー線に応じて前記インクを硬化させる硬化性物質とを含み、前記制御部は、前記エネルギー線照射部に、第1の条件で前記エネルギー線を照射することで前記インクを発熱させて、前記インクに含まれる前記溶媒の少なくとも一部を蒸発させる第1条件照射と、前記第1条件照射よりも後に前記第1の条件と異なる第2の条件で前記エネルギー線を照射することで前記インクに含まれる前記硬化性物質を硬化させる第2条件照射とを行わせる。
【0009】
このように構成した場合、例えば、インクの溶媒として水性の溶媒を用いることで、環境への負荷を適切に抑えることができる。そのため、このように構成すれば、例えば、様々な媒体への印刷を行う構成において、安全かつ適切にインクを用いることができる。また、この場合、エネルギー線を吸収することで発熱するインクを用いることで、例えば、瞬間乾燥方式でインク中の溶媒の少なくとも一部を適切に蒸発させることができる。そのため、このように構成すれば、例えば、媒体へのインクの着弾後、短時間でインクの粘度を高めて、インクの滲みを適切に防ぐことが可能になる。また、例えば浸透性の媒体を用いる場合にも、媒体へ多くのインクが浸透する前にインクを乾燥させることで、媒体の表面におけるインクの濃度を適切に高めることもできる。そのため、このように構成すれば、例えば、様々な素材の媒体に対して印刷が可能なメディアフリーの構成を適切に実現することができる。また、この場合、エネルギー線の照射によりインクを硬化させることで、媒体に対して強固にインクを定着させることができる。
【0010】
また、この場合、例えば、インクを発熱させるためのエネルギー線の照射を行うタイミングである発熱用照射時とインクを硬化させるためのエネルギー線の照射を行うタイミングである硬化用照射時とでエネルギー線の照射条件を異ならせることで、それぞれの目的に合わせた照射条件でのエネルギー線の照射を行うことが可能になる。また、これにより、例えば、エネルギー線の照射を行うことで、インク中の溶媒を適切に蒸発させ、かつ、インクを適切に硬化させることができる。そのため、このように構成すれば、例えば、媒体に対してインクをより適切に定着させることができる。また、これにより、例えば、様々な媒体に対し、より適切に印刷を行うことができる。
【0011】
ここで、この構成において、媒体としては、例えば、布の媒体を用いることが考えられる。このように構成すれば、例えば、印刷装置においてデジタル捺染を適切に行うことができる。また、この場合、媒体としては、例えば、滲み防止の前処理が行われていない布の媒体を用いることが考えられる。このように構成すれば、例えば、様々な布の媒体(例えば、市販のTシャツ等)に対し、より容易に印刷を行うことができる。また、この構成において、インクは、色材等を更に含んでよい。色材としては、例えば、顔料を用いることが考えられる。このように構成すれば、例えば、様々な色での印刷を適切に行うことができる。また、印刷装置は、例えば、互いに異なる色のインクをそれぞれが吐出する複数の吐出ヘッドを備えてもよい。
【0012】
また、この構成において、エネルギー線照射部は、エネルギー線として、例えば、紫外線を照射する。このように構成すれば、例えば、瞬間乾燥方式でのインクの加熱やインクの硬化を適切に実行することができる。硬化物質としては、公知のモノマーやオリゴマ等を好適に用いることができる。また、硬化性物質としては、例えば、第2条件照射によって水に対して不溶性の状態にインクを硬化させる物質を用いることが考えられる。このように構成すれば、例えば、印刷後の媒体の耐水性等を適切に高めることができる。より具体的に、例えば、布の媒体を用いてデジタル捺染を行う場合において、印刷後の媒体である印刷物の洗濯堅牢度や湿潤堅牢度等を適切に高めることができる。
【0013】
また、この構成において、エネルギー線照射部は、例えば、第1条件照射により、媒体上のインクの粘度について、媒体上で滲みが発生せず、かつ、粘着性を有する粘度にまで高める。この場合、媒体上で滲みが発生しないことについては、例えば、印刷に求められる品質や仕様等において問題となる滲みが発生しないこと等と考えることができる。また、この場合、滲みが発生しないことについては、例えば、第2条件照射を行うまでの間に滲みが発生しないこと等と考えることができる。また、この場合、エネルギー線照射部は、例えば、第2条件照射により、媒体上のインクの硬化を完了させる。この場合、インクの硬化を完了させることについては、例えば、印刷の仕様において求められる所定の状態になるまでインクの硬化を進行させること等と考えることができる。また、インクの硬化を完了させることについては、例えば、少なくともインクの表面が粘着性を有さない状態になるまでインクの硬化を進行させること等と考えることもできる。
【0014】
また、第1条件照射及び第2条件照射については、例えば、照射するエネルギー線の波長を異ならせることで条件を相違させることが考えられる。この場合、第1条件照射において、エネルギー線照射部は、例えば、第1の波長を中心波長とするエネルギー線を照射する。そして、第2条件照射において、エネルギー線照射部は、例えば、第1の波長と異なる第2の波長を中心波長とするエネルギー線を照射する。このように構成すれば、例えば、互いに異なる条件で第1条件照射及び第2条件照射を適切に実行することができる。また、この場合、エネルギー線の中心波長については、例えば、照射されるエネルギー線において最大の強度になる波長等と考えることができる。また、例えばLED(UVLED等)を用いてエネルギー線を発生する場合、中心波長について、エネルギー線を発生させるLEDの発光中心波長等と考えることができる。この場合、例えば、発光中心波長が互いに異なる複数種類のLEDを含むエネルギー線照射部を用いて、第1条件照射において用いるLEDと、第2条件照射において用いるLEDとを異ならせることが考えられる。
【0015】
また、第1条件照射及び第2条件照射については、例えば、照射するエネルギー線の強度や照射時間を異ならせることで、条件を相違させてもよい。この場合、第1条件照射において、エネルギー線照射部は、例えば、媒体における単位面積に対して単位時間に照射されるエネルギー線のエネルギー量である単位照射エネルギー量が第1の量になる条件でエネルギー線を照射する。そして、第2条件照射において、エネルギー線照射部は、例えば、単位照射エネルギー量が第1の量と異なる第2の量になる条件でエネルギー線を照射する。このように構成すれば、例えば、互いに異なる条件で第1条件照射及び第2条件照射を適切に実行することができる。
【0016】
また、より具体的に、発熱用照射時には、インクの温度を短時間で上昇させるために、強いエネルギー線を照射することが好ましいと考えられる。しかし、この場合において、強いエネルギー線を長時間照射すると、媒体やインクに焦げ等が発生するおそれがある。そのため、第1条件照射においては、強いエネルギー線を短時間だけ照射することが好ましいと考えられる。これに対し、硬化用照射時には、発熱用照射時よりも弱いエネルギー線であっても、インクを硬化させることが可能である。しかし、この場合、照射されるエネルギーの積算量(積算光量)がある程度以上になるように、発熱用照射時よりも長時間のエネルギー線の照射を行うことが考えられる。そのため、例えば、第1条件照射では相対的に強いエネルギー線を相対的に短時間だけ照射し、第2条件照射では相対的に弱いエネルギー線を相対的に長時間照射すること等が考えられる。より具体的に、この場合、第1条件照射での上記の第1の量について、第2条件照射での上記の第2の量よりも大きくすることが考えられる。そして、この場合、第1条件照射において、エネルギー線照射部は、例えば、媒体における同じ位置へのエネルギー線の照射時間が第1の時間になるように、エネルギー線を照射する。また、第2条件照射において、エネルギー線照射部は、例えば、媒体における同じ位置へのエネルギー線の照射時間が第1の時間よりも長い第2の時間になるように、エネルギー線を照射する。このように構成すれば、例えば、第1条件照射及び第2条件照射をより適切に行うことができる。
【0017】
また、瞬間乾燥方式で溶媒を蒸発させることとインクを硬化させることとの両立については、例えば、エネルギー線の照射の条件を異ならせる方法以外の方法で実現すること等も考えられる。より具体的に、本願の発明者は、エネルギー線が照射されてからインクが硬化するまでの時間が長くなる性質(遅延硬化性)のインクを用いることで、必ずしも複数種類の条件でのエネルギー線の照射を行わなくても、瞬間乾燥方式で溶媒を蒸発させることとインクを硬化させることとを適切に両立し得ることを見出した。この場合、例えば、エネルギー線照射部により照射されるエネルギー線を吸収することで発熱し、かつ、水性の溶媒及び所定の硬化性物質を含むインクを用いることが考えられる。また、硬化性物質として、例えば、エネルギー線が照射された後、30秒以上かけてインクを硬化させる物質を用いることが考えられる。また、この場合、エネルギー線照射部は、例えば、媒体上のインクへエネルギー線を照射することで、インクを発熱させて、インクに含まれる溶媒の少なくとも一部を蒸発させ、かつ、インクを発熱させるためのエネルギー線の照射を行うことで、エネルギー線照射部によるエネルギー線の照射が完了した後に、インクを硬化させる。このように構成すれば、例えば、瞬間乾燥方式でインク中の溶媒を蒸発させた後に、インクを適切に硬化させることができる。
【0018】
また、この場合、硬化性物質としては、遅延硬化特性を有する公知の硬化性物質等を好適に用いることができる。また、この場合、例えば、硬化性物質が硬化するまでの時間(遅延時間)の間に、インクのドットを適切に平坦化することができる。また、これにより、例えば、光沢性の高い印刷等を適切に行うこと等も可能になる。また、この場合、硬化性物質の遅延時間について、例えば、インクのドットの平坦化を進行させる時間等と考えることもできる。また、遅延時間は、より長い時間であってもよい。例えば、遅延時間について、数分以上又は数十分以上にすること等も考えられる。
【0019】
また、本発明の構成として、上記と同様の特徴を有する印刷方法等を用いることも考えられる。この場合も、例えば、上記と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、例えば、様々な媒体に対し、より適切に印刷を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る印刷装置10の一例を示す図である。図1(a)、(b)は、印刷装置10の要部の構成の一例を簡略化して示す上面図及び側断面図である。
図2】媒体50の各位置に対してインクを定着するために行う動作の一例を簡略化して示すフローチャートである。
図3】印刷装置10の構成の変形例を示す図である。
図4】マイクロLEDアレイを用いる場合の紫外線光源202の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る印刷装置10の一例を示す。図1(a)、(b)は、印刷装置10の要部の構成の一例を簡略化して示す上面図及び側断面図である。以下において説明をする点を除き、印刷装置10は、公知の印刷装置と同一又は同様の特徴を有してよい。例えば、印刷装置10は、以下において説明をする構成に加え、公知の印刷装置と同一又は同様の様々な構成を更に備えてもよい。
【0023】
本例において、印刷装置10は、印刷対象の媒体(メディア)50に対してインクジェット方式で印刷を行うインクジェットプリンタである。また、媒体50としては、布(テキスタイル)の媒体50を用いる。この場合、印刷装置10について、例えば、テキスタイル印刷用のインクジェットプリンタ等と考えることができる。また、印刷装置10において実行する印刷の動作について、例えば、デジタル捺染の動作等と考えることもできる。印刷装置10において、布の媒体50としては、例えば、様々な布帛や布製品を用いることが考えられる。この場合、布製品としては、例えば衣服(例えば、Tシャツ等)等を用いることが考えられる。また、本例において、印刷装置10は、例えば、滲み防止の前処理が行われていない布の媒体50に対し、印刷を行う。この場合、滲み防止の前処理とは、例えば、滲みを防止するための前処理剤を媒体50に塗布する処理のことである。
【0024】
また、このような印刷の動作を行うために、本例において、印刷装置10は、ヘッド部12、プラテン14、Yバー16、走査駆動部18、プリントヒータ20、プレヒータ22、アフターヒータ24、及び制御部30を備える。ヘッド部12は、媒体50に対してインクの吐出を吐出する部分である。また、本例において、ヘッド部12は、媒体50に対し、エネルギー線の一例である紫外線(UV光)の照射を更に行う。また、インクとして、紫外線が照射されることで発熱する瞬間乾燥型のインクの特徴と、紫外線が照射されることで硬化(UV硬化)する特徴とを有する水性のインクを用いる。また、本例において、ヘッド部12は、複数のインクジェットヘッド及び紫外線照射部等を有する。ヘッド部12の具体的な構成については、印刷装置10の全体の構成の説明をした後に、本例において使用するインクの特徴と関連付けて、改めて説明をする。
【0025】
プラテン14は、媒体50を支持する台状部材であり、ヘッド部12と対向させて媒体50を支持する。また、本例において、プラテン14は、内部にプリントヒータ20、プレヒータ22、及びアフターヒータ24を収容する。Yバー16は、主走査動作時にヘッド部12の移動をガイド部材である。この場合、主走査動作とは、媒体50に対して相対的に主走査方向へ移動しつつインクを吐出する動作のことである。また、本例において、主走査方向は、図中のY方向と平行な方向である。Yバー16としては、例えば、レール部材(ガイドレール)等を好適に用いることができる。
【0026】
走査駆動部18は、ヘッド部12におけるインクジェットヘッド102に主走査動作及び副走査動作を行わせる駆動部である。この場合、副走査動作とは、主走査方向と直交する副走査方向へ媒体50に対して相対的に移動する動作のことである。また、本例において、副走査方向は、図中のX方向と平行な方向である。主走査動作時において、走査駆動部18は、例えば、Yバー16に沿ってヘッド部12を移動させつつ、ヘッド部12における複数のインクジェットヘッドにインクを吐出させ、紫外線照射部に紫外線を照射させる。また、これにより、後に更に詳しく説明をするように、媒体50にインクを定着させる。また、本例において、走査駆動部18は、片方向の主走査動作をインクジェットヘッド102に行わせる。この場合、片方向の主走査動作を行わせることについては、例えば、主走査動作時におけるヘッド部12の相対移動の向きを主走査方向における一方の向きのみにすること等を考えることができる。また、図1においては、主走査動作時のヘッド部12の移動の向きが図中の右から左へ移動する向きになる場合について、ヘッド部12の構成の一例を図示している。
【0027】
また、走査駆動部18は、主走査動作の合間に副走査動作の駆動を行うことにより、媒体50においてヘッド部12と対向する領域を変更する。副走査動作の実行時において、走査駆動部18は、例えば、図示を省略したローラ等を駆動することで、副走査方向と平行な搬送方向(メディア搬送方向)へ媒体50を移動させる。また、これにより、媒体50に対して相対的にヘッド部12を移動させて、副走査動作の駆動を行う。また、印刷装置10においては、例えば、媒体50の各位置に対して複数回の主走査動作(パス数分の主走査動作)を行うマルチパス方式での動作を行うことが考えられる。この場合、1回の副走査動作での移動量(送り量)については、パス数に応じて設定することが考えられる。本例によれば、例えば、媒体50の各位置へ適切にインクの吐出を行うことができる。
【0028】
プリントヒータ20は、ヘッド部12と対向する位置において媒体50を加熱するヒータである。本例において、プリントヒータ20は、媒体50を加熱することにより、媒体50の温度を調整する。また、後に詳しく説明をするように、本例においては、ヘッド部12における紫外線照射部によって媒体50に付着しているインク(以下、媒体50上のインクという)へ紫外線を照射することで、インクを加熱する。この場合、プリントヒータ20について、例えば、ヘッド部12における紫外線照射部112と共にインクを加熱すると考えることもできる。
【0029】
尚、プリントヒータ20での加熱温度が高い場合、例えばヘッド部12におけるインクジェットヘッドが加熱されることで、ノズル詰まり等の問題が生じやすくなる。この場合、ノズル詰まりとは、例えば、インクジェットヘッドにおけるノズルがインクの乾燥により詰まることである。そのため、プリントヒータ20による加熱温度については、60℃以下にすることが好ましい。プリントヒータ20での加熱温度は、50℃以下であることがより好ましい。また、より具体的に、本例のプリントヒータ20においては、例えば、環境温度の影響を抑えること等を目的に、低い温度(例えば50℃以下、好ましくは40℃以下、更に好ましくは35℃以下)での加熱を行うことが考えられる。
【0030】
プレヒータ22は、媒体50の搬送方向においてヘッド部12よりも上流側で媒体50を加熱(予備加熱)するヒータである。プレヒータ22を用いることにより、例えば、ヘッド部12の位置へ到達する前に、媒体50の初期温度を適切に調整することができる。また、この場合、プレヒータ22による媒体50の加熱温度についても、例えば、環境温度の影響を抑えること等を目的に、低い温度(例えば50℃以下、好ましくは40℃以下、更に好ましくは35℃以下)にすることが好ましい。
【0031】
アフターヒータ24は、搬送方向においてヘッド部12よりも下流側で媒体50を加熱するヒータである。アフターヒータ24については、例えば、乾燥促進のための後乾燥手段等と考えることができる。アフターヒータ24を用いることにより、例えば、印刷を完了するまでの間に、インクの層の中に水分等の蒸発する溶媒が残らないように、インクをより確実に乾燥させることができる。アフターヒータ24による媒体50の加熱温度については、使用する媒体50の耐熱温度以下の範囲で、ある程度の高い温度に設定してもよい。例えば、アフターヒータ24による加熱温度については、60℃以上にすることが考えられる。また、アフターヒータ24において高温の加熱を行うことで、例えば、媒体50に対するインクの層の接着強度を向上させることや、インクの層のひび割れや剥がれ等を生じにくくすること等も考えられる。この場合、アフターヒータ24による加熱温度については、例えば80℃以上にすることが好ましい。また、この場合、後に詳しく説明をするインクの成分である硬化性物質として、例えば、硬化後のインクの層が熱可塑性になる物質を用いることが考えられる。
【0032】
尚、プリントヒータ20、プレヒータ22、及びアフターヒータ24のそれぞれとしては、公知の様々な加熱手段を用いることが考えられる。また、印刷装置10を使用する環境や求められる印刷の品質によっては、プリントヒータ20、プレヒータ22、及びアフターヒータ24のうちの一部又は全てを省略してもよい。
【0033】
制御部30は、例えば印刷装置10のCPUを含む構成であり、印刷装置10の各部の動作を制御する。より具体的に、本例において、制御部30は、例えば、ヘッド部12におけるインクジェットヘッドにインクを吐出させる制御や、ヘッド部12における紫外線照射部に紫外線を照射させる制御等を行う。本例によれば、例えば、媒体50に対する印刷の動作を適切に行うことができる。
【0034】
続いて、本例において使用するインクの特徴や、ヘッド部12の具体的な構成等について、更に詳しく説明をする。上記においても説明をしたように、本例においては、紫外線が照射されることで発熱する瞬間乾燥型のインクの特徴と、紫外線が照射されることで硬化する特徴とを有する水性のインクを用いる。この場合、このインクについて、例えば、水等の水性の溶媒を含んでいると考えることができる。また、この場合、水等の水性の溶媒を用いることで、例えば、環境への負荷を適切に抑えることができる。また、これにより、例えば、印刷装置10において、安全かつ適切にインクを用いることができる。また、本例のインクに関し、瞬間乾燥型のインクの特徴については、例えば、ヘッド部12における紫外線照射部112により照射される紫外線を吸収することで発熱して、溶媒の少なくとも一部を蒸発させること等と考えることができる。また、瞬間乾燥型のインクの特徴については、例えば、国際公開第2017/135425号公報に記載されているインクと同様の特徴等と考えることもできる。
【0035】
また、紫外線が照射されることで硬化する特徴を有すること及び水性のインクであることについては、例えば、水性の溶媒及び硬化性物質を含んでいること等と考えることができる。この場合、硬化性物質については、例えば、ヘッド部12における紫外線照射部112により照射される紫外線に応じてインクを硬化させる物質等と考えることができる。また、硬化性物質がインクを硬化させることについては、例えば、重合反応等によって硬化性物質自体が硬化することでインクを硬化させること等と考えることができる。より具体的に、硬化物質としては、例えば、公知のモノマーやオリゴマ等を好適に用いることができる。また、本例において、硬化物質については、例えば、硬化性の樹脂等と考えることができる。また、本例において、硬化性物質としては、硬化前の状態において水溶性になる物質を用いる。この場合、硬化性物質について、例えば、水溶性UV硬化成分等と考えることもできる。また、本例において用いるインクは、公知のインクと同一又は同様の様々な成分を更に含んでもよい。より具体的に、本例において用いるインクは、インクの色に応じた色材等を更に含んでもよい。また、色材としては、例えば顔料等を好適に用いることができる。本例において用いるインクの組成の具体例等については、後に更に詳しく説明をする。
【0036】
また、このようなインクを用い、インクを媒体50に適切に定着させるために、本例において、ヘッド部12は、キャリッジ100、複数のインクジェットヘッド102、及び紫外線照射部112を有する。キャリッジ100は、ヘッド部12における各構成を保持する保持部材である。複数のインクジェットヘッド102は、インクを吐出する吐出ヘッドの一例である。複数のインクジェットヘッド102のそれぞれとしては、例えば、公知のインクジェットヘッドを好適に用いることができる。また、本例において、ヘッド部12は、図中にインクジェットヘッド102c、m、y、k、b、g、r、wと区別して示すように、互いに異なる色のインクをそれぞれが吐出する複数のインクジェットヘッド102を有する。この場合、インクジェットヘッド102cは、シアン(C)色のインクを吐出する。インクジェットヘッド102mは、マゼンタ(M)色のインクを吐出する。インクジェットヘッド102yは、イエロー(Y)色のインクを吐出する。インクジェットヘッド102kは、ブラック(K)色のインクを吐出する。インクジェットヘッド102bは、ブルー(B)色のインクを吐出する。インクジェットヘッド102gは、グリーン(G)色のインクを吐出する。インクジェットヘッド102rは、レッド(R)色のインクを吐出する。インクジェットヘッド102wは、ホワイト(W)色のインクを吐出する。
【0037】
また、これらの複数のインクジェットヘッド102のうち、CMYの各色用のインクジェットヘッド102は、減法混色法での基本色となる1次色用のインクジェットヘッド102である。また、BGRの各色用のインクジェットヘッド102は、2色の1次色の混色により得られる2次色用のインクジェットヘッド102である。K色用のインクジェットヘッド102は、3色の1次色の混色により得られる3次色用のインクジェットヘッド102である。また、この場合、CMYKの4色用のインクジェットヘッド102について、例えば、4色分版方式での色表現に用いるインクジェットヘッド102(4色分版方式用のインクジェットヘッド102)等と考えることができる。また、CMYKBGRの7色用のインクジェットヘッド102について、例えば、7色分版方式での色表現に用いるインクジェットヘッド102(7色分版方式用のインクジェットヘッド102)等と考えることができる。また、本例において、W色用のインクジェットヘッド102は、特色用のインクジェットヘッド102の一例である。
【0038】
また、これらの複数のインクジェットヘッド102は、例えば、図中に示すように、副走査方向における位置をずらした複数の列に分けて並べて配設される。より具体的に、図1に図示した構成においては、1次色用及び3次色用のインクジェットヘッド102について、副走査方向における位置を揃えて主走査方向へ複数のインクジェットヘッド102が並ぶ第1の列に並べて配設している。また、2次色用及び特色用のインクジェットヘッド102について、副走査方向における位置を揃えて主走査方向へ複数のインクジェットヘッド102が並ぶ第2の列に並べて配設している。また、第1の列と、第2の列とについて、副走査方向における位置が重ならないように、副走査方向における位置をずらしている。このように構成すれば、例えば、各回の主走査動作において媒体50における単位面積に対して吐出するインクの合計量を適切に低減することができる。
【0039】
紫外線照射部112は、媒体50上のインクへ紫外線を照射するための構成である。また、本例において、紫外線照射部112は、エネルギー線照射部の一例であり、ヘッド部12における互いに異なる位置で紫外線をそれぞれ発生する複数の紫外線光源202、204、206を有する。これらのうち、紫外線光源202は、複数のインクジェットヘッド102の並びにおける第1の列に対応して配設される光源であり、インクジェットヘッド102の第1の列と主走査方向において隣接した位置に配設される。また、これにより、紫外線光源202は、例えば、各回の主走査動作において、第1の列におけるインクジェットヘッド102から媒体50へ吐出されるインクに対し、紫外線を照射する。紫外線光源202については、例えば、紫外線照射部112における第1のUV照射手段等と考えることができる。また、紫外線光源204は、複数のインクジェットヘッド102の並びにおける第2の列に対応して配設される光源であり、インクジェットヘッド102の第2の列と主走査方向において隣接した位置に配設される。また、これにより、紫外線光源204は、例えば、各回の主走査動作において、第2の列におけるインクジェットヘッド102から媒体50へ吐出されるインクに対し、紫外線を照射する。紫外線光源204については、例えば、紫外線照射部112における第2のUV照射手段等と考えることができる。
【0040】
また、上記においても説明をしたように、本例において、走査駆動部18は、片方向の主走査動作をヘッド部12に行わせる。そして、この場合、紫外線光源202、204については、例えば図中に示すように、インクジェットヘッド102の並びに対する主走査方向の一方側のみに配設することが考えられる。また、この場合、紫外線光源202、204について、主走査動作時のヘッド部12の相対移動の向きにおいてインクジェットヘッド102よりも後方側になる位置に配設することが考えられる。このように構成すれば、例えば、各回の主走査動作において、媒体50への着弾直後のインクに対する紫外線の照射を適切に行うことができる。また、印刷装置10の構成の変形例において、走査駆動部18は、双方向の主走査動作をヘッド部12におけるインクジェットヘッド102に行わせてもよい。この場合、双方向の主走査動作を行わせることについては、例えば、主走査動作時におけるヘッド部12の相対移動の向きを主走査方向における一方及び他方の向きにすること等を考えることができる。また、この場合、紫外線光源202、204について、インクジェットヘッド102の並びに対する主走査方向の一方側及び他方側に配設することが考えられる。
【0041】
また、本例において、紫外線光源202、204は、インクを加熱することでインク中の溶媒を蒸発させることを主な目的として、媒体50上のインクへ紫外線を照射する。この場合、インク中の溶媒を蒸発させることを主な目的とすることについては、例えば、紫外線光源202又は紫外線光源204により紫外線を照射している間に溶媒の蒸発によりインクの粘度が十分に高まり、かつ、その間にはインクの硬化が完了しないように紫外線を照射すること等と考えることができる。紫外線光源202、204としては、例えば、紫外線を発生するLED(UVLED)を用いて紫外線を発生する光源を好適に用いることができる。この場合、例えば、300n~405nmの間に発光中心波長(発光ピーク波長)を有するUVLED等を好適に用いることができる。また、紫外線光源202、204のそれぞれから媒体50へ照射する紫外線のエネルギーについては、例えば200mJ/cm以上、好ましくは500J/cm以上にすることが考えられる。紫外線光源202、204による紫外線の照射の仕方等については、後に更に詳しく説明をする。
【0042】
また、紫外線照射部112における紫外線光源206は、紫外線光源202、204による紫外線の照射が行われた後のインクに対して更に紫外線を照射するための光源である。紫外線光源206については、例えば、紫外線照射部112における第3のUV照射手段等と考えることができる。また、本例において、紫外線光源206は、媒体50の搬送方向において紫外線光源202、204よりも下流側に配設されることで、紫外線光源202、204での紫外線の照射により粘度が高まっているインクに対し、更に紫外線を照射する。また、これにより、紫外線光源206は、媒体50上のインクの硬化を完了させる。インクの硬化を完了させることについては、例えば、印刷の仕様において求められる所定の状態になるまでインクの硬化を進行させること等と考えることができる。また、インクの硬化を完了させることについては、例えば、少なくともインクの表面が粘着性を有さない状態になるまでインクの硬化を進行させること等と考えることもできる。また、この場合、紫外線光源206について、例えば、インクを硬化させることを主な目的として媒体50上のインクへ紫外線を照射すると考えることができる。この場合、インクを硬化させることを主な目的とすることについては、例えば、その後に更に紫外線を照射することが必要ない状態にまでインクが硬化するように紫外線を照射すること等と考えることができる。
【0043】
また、本例において、紫外線光源206は、図1(b)に距離Lとして示すように、副走査方向において紫外線光源204との間を所定の距離Lだけ空けて配設されている。この場合、例えば、距離Lを調整することで、紫外線光源202、204による紫外線の照射を行った後、紫外線光源206による紫外線の照射を行うまでの時間を様々に調整することができる。また、これにより、例えば必要に応じて、インクのドットを平坦化させてから硬化を完了させること等も可能になる。また、紫外線光源206としても、例えば、紫外線を発生するLED(UVLED)を用いて紫外線を発生する光源を好適に用いることができる。また、後に更に詳しく説明をするように、紫外線光源206においては、例えば、紫外線光源202、204と異なる波長範囲の紫外線を発生することが考えられる。この場合、紫外線光源206用のUVLEDとしては、紫外線光源202、204用のUVLEDと発光中心波長が異なるUVLEDを用いることが考えられる。また、紫外線光源206においては、例えば、紫外線光源202、204と同じ波長範囲の紫外線を発生することも考えられる。この場合、紫外線光源206用のUVLEDとして、紫外線光源202、204用のUVLEDと発光中心波長が同じUVLEDを用いることが考えられる。また、紫外線光源206による紫外線の照射の仕方等についても、後に更に詳しく説明をする。
【0044】
本例によれば、例えば、布の媒体50に対し、複数色のインクを用いて、様々な色での印刷を適切に行うことができる。また、紫外線照射部112により媒体50上のインクへ紫外線を照射することで、媒体50にインクを適切に定着させることができる。
【0045】
続いて、紫外線照射部112における複数の紫外線光源202、204、206による紫外線の照射の仕方等について、更に詳しく説明をする。図2は、媒体50(図1参照)の各位置に対してインクを定着するために行う動作の一例を簡略化して示すフローチャートであり、媒体50の各位置へインクを吐出して、媒体50に定着させるために行う動作の一例を示す。
【0046】
上記においても説明をしたように、本例においては、ヘッド部12におけるインクジェットヘッド102(図1参照)に主走査動作を行わせることで、媒体50の各位置へのインクの吐出をインクジェットヘッド102に行わせる(S102)。この場合、インクジェットヘッド102にインクの吐出を行わせることについては、例えば、ヘッド部12における各色用のインクジェットヘッド102に対し、媒体50に描く画像に応じて設定される吐出位置へのインクの吐出を行わせること等と考えることができる。また、上記においても説明をしたように、各回の主走査動作では、インク中の溶媒を蒸発させることを主な目的として、ヘッド部12の紫外線照射部112における紫外線光源202、204(図1参照)により、媒体50に上へのインクへの紫外線の照射を行う(S104)。この場合、ステップS104の動作については、例えば、瞬間乾燥方式でインクを乾燥させるための紫外線の照射(瞬間乾燥用照射、発熱用照射)の動作等と考えることができる。
【0047】
また、より具体的に、ステップS104において、紫外線光源202は、1次色及び3次色用のインクジェットヘッド102によりCMYKの各色のインクが媒体50へ吐出された直後(例えば、数秒以内)に、紫外線の照射を行う。また、紫外線光源204は、2次色及び特色用のインクジェットヘッド102によりBGR及びWの各色のインクが媒体50へ吐出された直後(例えば、数秒以内)に、紫外線の照射を行う。また、これにより、紫外線光源202、204は、インク中の溶媒の少なくとも一部を瞬間的に蒸発させ、インクの粘度を高める。また、本例においては、媒体50上のインクの粘度について、例えば、媒体50上で滲みが発生せず、かつ、粘着性を有する粘度にまで高めることが考えられる。この場合、媒体50上で滲みが発生しないことについては、例えば、印刷に求められる品質や仕様等において問題となる滲みが発生しないこと等と考えることができる。滲みが発生しないことについては、例えば、紫外線光源206による紫外線の照射を行うまでの間に滲みが発生しないこと等と考えることもできる。また、実用上、滲みが発生しないことについては、例えば、少なくとも数十秒(例えば、10秒以上)の間に滲みが発生しないこと等と考えることもできる。インクが粘着性を有することについては、例えば、インクのドットにおける少なくとも表面が粘着性を有すること等と考えることができる。このように構成すれば、例えば、媒体50上でインクが滲むことを適切に防止することができる。
【0048】
また、紫外線光源202、204により照射する紫外線については、例えば、インク中の溶媒である水等がほぼ蒸発し、かつ、インクが完全硬化には至らない程度の低エネルギーの紫外線等と考えることができる。また、より具体的に、紫外線光源202、204による紫外線の照射については、例えば、媒体50において紫外線が照射される照射面の単位面積に対して単位時間に照射される紫外線の強度を2W/cm以上(例えば、2~10W/cm程度)にして、0.2秒間以下(例えば、0.01~0.2秒、好ましくは、0.05~0.2秒程度)の短時間で、500mJ/cm以上のエネルギーとなる紫外線を照射することが考えられる。
【0049】
尚、紫外線光源(例えば、紫外線光源202、204等)から主走査動作中に照射される紫外線のエネルギーについては、紫外線光源の主走査方向における幅W、主走査動作時の移動速度V、及び紫外線の照射強度Iから、次式によって求めることができる。
E=I×(W/V)
また、通常の構成の印刷装置の場合、幅Wについては、固定されていると考えることができる。そして、この場合、例えば、強度I又は速度Vを変更することで、照射されるエネルギーを調整することが考えられる。
【0050】
また、紫外線光源202、204によって紫外線を照射した後の媒体50上のインクの状態については、例えば、インク中の水分の大部分が蒸発して、滲みが止まった状態等と考えることができる。また、この状態について、例えば、媒体50に対して仮定着状態であり、かつ、完全には硬化していない仮硬化状態になっている等と考えることもできる。この場合、仮定着状態については、例えば、媒体50へのインクの定着が完全には完了していないが、インクのドットの位置が実質的に固定されている状態等と考えることができる。また、仮硬化状態については、例えば、他のインクのドットと接触しても滲まない粘度のゲル状の状態にまで硬化が進んだ状態等と考えることができる。
【0051】
また、上記においても説明をしたように、媒体50の各位置に対して紫外線光源202、204による紫外線の照射が行われた後には、紫外線照射部112における紫外線光源206(図1参照)による紫外線の照射を行うことで、インクの硬化を完了させる(S106)。この場合、ステップS106の動作については、例えば、インクを硬化させるための紫外線の照射(硬化用照射)の動作等と考えることができる。
【0052】
また、この場合、紫外線光源206によってインクの硬化を完了させる動作については、例えば、仮硬化状態のインクを完全に硬化させる動作等と考えることもできる。また、ステップS106での紫外線の照射については、例えば、ステップS104での紫外線の照射により溶媒が蒸発しているインクに対して行うと考えることができる。そして、この場合、インクや媒体50に焦げ等が生じない強度の紫外線を照射することが考えられる。また、本例において、紫外線光源206により紫外線を照射する位置については、例えば、インクジェットヘッド102による主走査動作が行われた後の領域等と考えることができる。また、媒体50に対してマルチパス方式での印刷を行う場合、インクジェットヘッド102による主走査動作が行われた後の領域については、例えば、パス数分の主走査動作が行われた後の領域等と考えることができる。
【0053】
以上のように、本例においては、複数の目的での紫外線の照射を行う。そして、この場合、それぞれの目的に応じて、紫外線を照射する条件を異ならせることが考えられる。例えば、本例においては、紫外線光源202、204による紫外線の照射を所定の第1の条件で行い、紫外線光源206による紫外線の照射について、第1の条件と異なる第2の条件で行う。
【0054】
また、本例において、紫外線光源202、204により紫外線を照射する動作は、第1条件照射の動作の一例である。紫外線光源206により紫外線を照射する動作は、第2条件照射の動作の一例である。また、この場合、第1条件照射とは、例えば、第1の条件でエネルギー線を照射することでインクを発熱させて、インクに含まれる溶媒の少なくとも一部を蒸発させるようなエネルギー線の照射のことである。第2条件照射とは、例えば、第1条件照射よりも後に第2の条件でエネルギー線を照射することでインクに含まれる硬化性物質を硬化させるようなエネルギー線の照射のことである。また、この場合、印刷装置10における制御部30(図1参照)の動作に着目すると、ステップS104での動作について、例えば、紫外線照射部112に第1条件照射を行わせる動作等と考えることができる。また、ステップS106での動作について、例えば、紫外線照射部112に第2条件照射を行わせる動作等と考えることができる。また、本例において、ステップS104で行う紫外線の照射については、例えば、発熱用照射時に行う紫外線の照射等と考えることができる。発熱用照射時については、例えば、インクを発熱させるための紫外線の照射を行うタイミング等と考えることができる。また、ステップS106で行う紫外線の照射については、例えば、硬化用照射時に行う紫外線の照射等と考えることができる。硬化用照射時については、例えば、インクを硬化させるための紫外線の照射を行うタイミング等と考えることができる。
【0055】
また、上記のように、本例においては、紫外線を照射する条件として、互いに異なる第1の条件、及び第2の条件を用いる。そして、この場合、これらの条件について、例えば、照射する紫外線の波長を異ならせることで相違させることが考えられる。より具体的に、インクが硬化する性質については、例えば、特定の波長の紫外線が照射された場合に硬化が行われるようにインクの成分を調整することが考えられる。より具体的に、硬化性物質としては、例えばモノマーやオリゴマ等のような、重合反応を生じて硬化する硬化性物質を用いることが考えられる。そして、この場合、インクの成分として、硬化性物質に重合を開始させる開始剤を用いることが考えられる。また、開始剤として、特定の波長の紫外線が照射された場合に硬化性物質に重合を開始させる物質を用いることが考えられる。そして、この場合、第2の条件での紫外線の照射について、硬化性物質に重合を開始させる波長の紫外線を用いて行うことが考えられる。また、この場合、第2の条件で照射する紫外線の波長について、このような開始剤が吸収可能な範囲の波長にすると考えることもできる。
【0056】
また、この場合、瞬間乾燥方式でインクを加熱するための紫外線の波長としては、第2の条件での紫外線の波長と異なる波長を用いることが考えられる。より具体的に、この場合、開始剤が反応する波長とは異なる波長の紫外線の紫外線を吸収することで発熱する物質をインクの成分として用いることで、インクを加熱することが考えられる。そして、この場合、第1の条件での紫外線の照射について、第2の条件での紫外線の波長と異なる波長の紫外線を用いて行うことが考えられる。また、この場合、第1の条件で照射する紫外線を吸収することで発熱する物質について、紫外線を吸収することで発熱する紫外線吸収剤等と考えることができる。また、第1の条件で照射する紫外線の波長について、このような紫外線吸収剤が吸収可能な範囲の波長にすると考えることもできる。
【0057】
このように構成すれば、例えば、ステップS104での紫外線の照射時において、例えば、インクの硬化を進行させずに、インクを適切に加熱することができる。また、これにより、例えば、瞬間乾燥方式により、インク中の溶媒の少なくとも一部を適切に蒸発させることができる。また、この場合、主走査動作中に紫外線光源202、204により紫外線を照射することで、例えば、媒体50へのインクの着弾後、短時間でインクの粘度を高めて、インクの滲みを適切に防ぐことが可能になる。また、この場合、例えば、媒体50へ多くのインクが浸透する前にインクを乾燥させることで、媒体50の表面におけるインクの濃度を適切に高めることもできる。更には、この場合、ステップS106での紫外線の照射時において、インクを適切に硬化させることができる。また、これにより、例えば、媒体50に対して強固にインクを定着させることができる。
【0058】
ここで、硬化性物質としては、例えば、ステップS106において紫外線を照射することで水に対して不溶性の状態にインクを硬化させる物質を用いることが好ましい。このように構成すれば、例えば、印刷装置10において作成する印刷物の耐水性等を適切に高めることができる。また、これにより、例えば、印刷物の洗濯堅牢度や湿潤堅牢度等を適切に高めることができる。
【0059】
また、第1の条件及び第2の条件における紫外線の波長については、例えば、照射する紫外線の中心波長に着目して考えることもできる。この場合、ステップS104で照射する紫外線の照射について、例えば、第1の波長を中心波長とする紫外線を照射すると考えることができる。また、ステップS106で照射する紫外線の照射について、例えば、第1の波長と異なる第2の波長を中心波長とする紫外線を照射すると考えることができる。また、この場合、紫外線の中心波長については、例えば、照射される紫外線において最大の強度になる波長等と考えることができる。また、例えばLED(UVLED)を用いて紫外線を発生する場合、中心波長について、LEDの発光中心波長(発光ピーク波長)等と考えることができる。また、この場合、例えば、紫外線光源202、204において用いるLEDの発光中心波長と、紫外線光源206において用いるLEDの発光中心波長とを互いに異ならせることが考えられる。このように構成すれば、例えば、第1の条件と第2の条件とを適切に異ならせることができる。また、このようにして第1の条件と第2の条件とを異ならせる構成については、例えば、瞬間乾燥用(発熱用)と硬化用に2波長の紫外線の照射を行う構成等と考えることもできる。
【0060】
また、第1の条件と第2の条件とについては、波長以外の条件を異ならせてもよい。この場合、例えば、照射する紫外線の強度や照射時間を異ならせることで、条件を相違させることが考えられる。より具体的に、この場合、瞬間乾燥用照射を行うステップS104において、紫外線照射部112は、紫外線光源202、204からの紫外線の照射を行うことで、例えば、単位照射エネルギー量が第1の量になる条件で紫外線を照射する。この場合、単位照射エネルギー量については、例えば、媒体50における単位面積に対して単位時間に照射されるエネルギー線のエネルギー量等と考えることができる。また、この場合、硬化用照射を行うステップS106において、紫外線照射部112は、紫外線光源206からの紫外線の照射を行うことで、例えば、単位照射エネルギー量が第1の量と異なる第2の量になる条件で紫外線を照射する。このように構成した場合も、例えば、第1の条件と第2の条件とを適切に異ならせることができる。
【0061】
また、更に具体的に、インク中の溶媒を蒸発させるためにステップS104において行う紫外線の照射時には、例えば、インクの温度を短時間で上昇させるために、強い紫外線を照射することが好ましいと考えられる。しかし、この場合において、強い紫外線を長時間照射すると、媒体50やインクに焦げ等が発生するおそれがある。そのため、ステップS104において行う紫外線光源202、204からの紫外線の照射については、強い紫外線を短時間だけ照射する条件で行うことが好ましいと考えられる。これに対し、インクを硬化させるためにステップS106において行う紫外線の照射時には、例えば、ステップS104での紫外線の照射時よりも弱い紫外線であっても、インクを硬化させることが可能である。しかし、この場合、照射される紫外線のエネルギーの積算量(積算光量)がある程度以上になるように、ステップS104での紫外線の照射時よりも長時間の紫外線の照射を行うことが考えられる。
【0062】
そのため、ステップS104においてインク中の溶媒を適切に蒸発させ、ステップS106においてインクを適切に硬化させるためには、例えば、ステップS104では相対的に強い紫外線を相対的に短時間だけ照射し、ステップS106では相対的に弱い紫外線を相対的に長時間照射することが考えられる。また、この場合、上記において第1の量として示したステップS104での単位照射エネルギー量について、第2の量として示したステップS106での単位照射エネルギー量よりも大きくすることが考えられる。そして、この場合、ステップS104において、紫外線照射部112は、例えば、媒体50における同じ位置への紫外線の照射時間が第1の時間になるように、紫外線照射部112における紫外線光源202、204によって媒体50上のインクへ紫外線を照射する。また、ステップS106において、紫外線照射部112は、例えば、媒体50における同じ位置への紫外線の照射時間が第1の時間よりも長い第2の時間になるように、紫外線照射部112における紫外線光源206によって媒体50上のインクへ紫外線を照射する。このように構成すれば、例えば、ステップS104及びS106における紫外線の照射について、照射の目的に合わせて適切に行うことができる。また、このようにして第1の条件と第2の条件とを異ならせる構成については、例えば、瞬間乾燥用に短時間の強い紫外線の照射を行い、硬化用に中~強強度の紫外線の照射を行う構成等と考えることもできる。また、この場合、紫外線を短時間のみ照射する瞬間乾燥用の単位照射エネルギー量については、例えば、硬化用の紫外線の照射時の単位照射エネルギー量の10倍以上にすること等も考えられる。
【0063】
以上のように、本例においては、例えば、瞬間乾燥用照射時と硬化用照射時とで紫外線の照射条件を異ならせることで、それぞれの目的に合わせた照射条件での紫外線の照射を行うことが可能になる。また、これにより、例えば、紫外線の照射を行うことで、インク中の溶媒を適切に蒸発させ、かつ、インクを適切に硬化させることができる。より具体的に、本例においては、例えば、水性のインクを用いることで、環境や健康へ影響等を適切に低減して、安全な印刷をより適切に行うこと等も可能になる。また、この場合において、瞬間乾燥方式でインク中の溶媒を蒸発させることで、水性のインクでありながら、滲みの発生を適切に防止することができる。また、これにより、特に滲みが発生しやすい媒体である布の媒体50を用いる場合においても、高い品質の印刷をより適切に行うことができる。
【0064】
また、この点に関し、従来の方法で布への印刷を行う場合、通常、滲み防止のための前処理が必要になる。これに対し、本例によれば、例えば、前処理を行っていない布の媒体50を用いる場合にも、滲みの発生を適切に防止することができる。また、これにより、例えば、前処理を行っていない布に対し、高い品質での印刷をより適切に行うことが可能になる。また、従来の方法で布への印刷を行う場合、例えばインクの組成との関係で、使用可能な布が特定の素材の布に制限される場合がある。例えば、色材として顔料を用いる場合、化学繊維の布等を用いると、布に対する色材の定着性が不十分になりやすい。そのため、色材として顔料を含むインクを用いる場合、通常、綿等の特定の素材の布の媒体50のみが使用可能になる。これに対し、本例においては、インクを硬化させることで媒体50にインクを定着させるため、色材として顔料(例えば水性顔料)を含むインクを用いる場合であっても、顔料を媒体50により適切に定着させることができる。また、これにより、例えば、色材として顔料を含むインクを用い、かつ、化学繊維の布の媒体50等を用いる場合であっても、より適切に印刷を行うことが可能になる。また、この場合、色材として顔料を用いることで、例えば、色材を発色させるための発色処理を行うこと等も不要になる。
【0065】
更には、本例において、硬化後のインクについては、例えば、分子量の大きな樹脂になっていると考えることができる。そして、この場合、このような樹脂と共に色材を媒体50に定着させることで、例えば、媒体50に対して強固に色材を付着させることができる。また、これにより、例えば、印刷後の媒体50について、耐候性や耐洗濯性等を適切に高めることができる。また、この場合、通常の紫外線硬化型インク等と異なり、水性の溶媒を含むインクを用いることで、例えば、マット状にインクが硬化することを防いで、スジ斑等を生じにくくすること等も可能になる。また、例えば、硬化後のインクの層の厚みを薄くすること等も可能になる。また、これにより、例えば、硬化したインクの影響で印刷後の布の風合い等に過度に変化すること等を適切に防ぐこと等も可能になる。
【0066】
このように、本例によれば、例えば、様々な素材の布に対し、前処理等を行わない場合であっても、高い品質での印刷を行うことが可能になる。また、色材として顔料を用いる場合には、発色処理等を行うこと等も不要になる。そして、この場合、例えば、前処理用の装置や発色処理用の装置等と用いることなく、布の媒体50への印刷を適切に行うことができる。また。これにより、例えば、オンデマンドでのテキスタイル印刷を容易かつ適切に行うことが可能になる。
【0067】
また、本例においては、瞬間乾燥方式でインク中の溶媒を蒸発させることで滲みを防止できることから、布の媒体50に限らず、様々な媒体50を用いること等も可能になる。より具体的に、媒体50としては、例えば、紙等の浸透性の媒体や、プラスチック、ガラス、金属等の非浸透性の媒体等の様々な素材の媒体50を用いることが可能である。また、この場合、安全性が高く、かつ、様々な素材の媒体50への印刷が可能な特徴により、例えば安全性の観点等で従来の紫外線硬化型インク(UV硬化インク)等を用いることが難しかった用途の媒体50等に対して印刷を行うこと等も可能になる。より具体的に、本例によれば、例えば、肌に触れる布、食品包装、食品ラベル、子供が扱う玩具等に対する印刷等をより適切に行うことができる。また、様々な素材の媒体50への印刷が可能なメディアフリーの特徴を有していることから、本例の印刷装置10については、例えば、様々な用途の印刷に用いることが考えられる。この場合、例えば、サイングラフィックス、アパレル、デジタル加飾、デジタル印刷、及び軟包装等の様々な分野において、本例の印刷装置10を用いることが考えられる。
【0068】
また、上記においては、紫外線照射部112の構成について、主に、瞬間乾燥用の紫外線光源202、204とは別に硬化用の紫外線光源206を用いる場合の構成を説明した。しかし、印刷装置10の構成の変形例においては、例えば、紫外線光源202、204について、瞬間乾燥用及び硬化用の両方の目的で使用すること等も考えられる。より具体的に、例えば、溶媒及び硬化性物質を含むインクを用いる場合、溶媒が多く残っている状態では、例えば硬化物質間の距離が大きくなること等の影響で、インクの硬化が進行しにくい状態になっていると考えられる。そのため、例えば紫外線光源206を用いずに、紫外線光源202、204のみを用いて紫外線を照射したとしても、最初に溶媒の蒸発が進行し、その後に硬化が進行すると考えられる。そのため、紫外線光源206を用いないとしても、例えば、瞬間乾燥方式でインクを乾燥させ、その後にインクを硬化させることもできる。
【0069】
しかし、この場合において、単に紫外線光源206を省略するのみであると、インク中の溶媒を適度に蒸発させ、かつ、インクを完全に硬化させることが難しくなることも考えられる。これに対し、本願の発明者は、紫外線等のエネルギー線が照射されてからインクが硬化するまでの時間が長くなる性質(遅延硬化性)のインクを用いることで、紫外線光源206を用いずに、インク中の溶媒を適度に蒸発させ、かつ、インクを完全に硬化させることを適切に実現できることを見出した。
【0070】
より具体的に、瞬間乾燥型のインクの特徴と、紫外線が照射されることで硬化する特徴とを有する水性のインクとしては、例えば、溶媒が蒸発した状態で所定の波長の紫外線を照射した場合に短時間(例えば、数秒以内から数十秒以内程度)で硬化する高速硬化性のインク(以下、瞬間乾燥水溶性UV高速硬化インクという)と、溶媒が蒸発した状態で所定の波長の紫外線を照射した後にある程度の時間をかけてゆっくりと硬化する遅延硬化性のインク(以下、瞬間乾燥水溶性UV遅延硬化インクという)とが考えられる。この場合、瞬間乾燥水溶性UV高速硬化インクについては、例えば、1回の主走査動作に要する時間内に硬化が進行するインク等と考えることもできる。また、瞬間乾燥水溶性UV遅延硬化インクについては、例えば、1回の主走査動作に要する時間よりも長い時間をかけて低速で硬化が進行するインク等と考えることもできる。そして、例えば図1に図示した構成の印刷装置10においては、瞬間乾燥水溶性UV高速硬化インク及び瞬間乾燥水溶性UV遅延硬化インクのいずれについても、好適に用いることができる。
【0071】
これに対し、紫外線光源206を用いない場合において、瞬間乾燥水溶性UV高速硬化インクを単に用いると、上記のように、インク中の溶媒を適度に蒸発させ、かつ、インクを完全に硬化させることが難しくなることが考えられる。これに対し、瞬間乾燥水溶性UV遅延硬化インクを用いる場合、紫外線光源206を用いず、紫外線光源202、204による紫外線の照射を行ったとしても、インク中の溶媒を適度に蒸発させ、かつ、インクを完全に硬化させることが難しくなることが可能になる。
【0072】
また、この場合、例えば図3に示す構成の印刷装置10を用いることが考えられる。図3は、印刷装置10の構成の変形例を示す。また、以下において説明をする点を除き、図3において、図1と同じ符号を付した構成は、図1における構成と、同一又は同様の特徴を有してよい。この場合も、図1を用いて説明をした場合と同一又は同様にして主走査動作を行うことで、各回の主走査動作において、ヘッド部12におけるそれぞれのインクジェットヘッド102からインクを吐出し、媒体50への着弾直後(例えば、1秒以内)に紫外線光源202、204により紫外線の照射を行う。また、この場合も、紫外線光源202、204による紫外線の照射については、例えば、例えば図1を用いて上記において説明をした場合と同一又は同様の強度及び照射時間で行うことが考えられる。また、この場合、照射するエネルギーについては、図1の構成のように紫外線光源206(図1参照)を用いる場合よりも大きくすることが考えられる。より具体的に、照射するエネルギーについては、例えば1000mJ/cm以上にすることが考えられる。
【0073】
また、本変形例において、インクとしては、瞬間乾燥水溶性UV遅延硬化インクを用いることが考えられる。そして、この場合、紫外線光源202又は紫外線光源204により紫外線を照射した直後の段階では、インクが完全には硬化しておらず、その後に数十秒から数分以上の時間をかけて徐々に硬化が進行していく状態になる。そのため、この場合、主走査動作の後に紫外線光源206による紫外線の照射を行わなくても、インクを適切に硬化させることができる。また、この場合、紫外線照射部112の動作について、例えば、媒体50上のインクへ紫外線を照射することで、インクを発熱させて、インクに含まれる溶媒の少なくとも一部を蒸発させ、かつ、インクを発熱させるための紫外線の照射を行うことで、紫外線照射部112による紫外線の照射が完了した後にインクを硬化させる動作等と考えることができる。このように構成した場合も、例えば、瞬間乾燥方式でインク中の溶媒を蒸発させた後に、インクを適切に硬化させることができる。また、これにより、例えば、瞬間乾燥方式で溶媒を蒸発させること、及びインクを硬化させることを適切に両立することができる。
【0074】
ここで、瞬間乾燥水溶性UV遅延硬化インクを用いる場合において、硬化性物質としては、例えば、紫外線が照射された後に30秒以上かけてインクを硬化させる物質等を用いることが考えられる。また、このような硬化性物質としては、例えば、遅延硬化特性を有する公知の硬化性物質等を好適に用いることができる。また、この場合、例えば開始剤として用いる物質を選択することで、硬化性物質の硬化を遅延させること等も考えられる。また、インクが硬化するまでの遅延時間は、例えば数分以上又は数十分以上にすることも考えられる。また、瞬間乾燥水溶性UV遅延硬化インクを用いる場合、例えば、硬化性物質が硬化するまでの時間(遅延時間)の間に、インクのドットを平坦化することもできる。また、これにより、例えば、光沢性の高い印刷等を適切に行うことができる。また、この場合、硬化性物質の遅延時間について、例えば、インクのドットの平坦化を進行させる時間等と考えることもできる。また、瞬間乾燥水溶性UV遅延硬化インクを用いる場合においても、例えばアフターヒータ24(図1参照)等を用いて、印刷完了後のインクの層の中に溶媒が残らないように加熱を行うことが好ましい。アフターヒータ24による加熱については、例えば、図1に関連して上記において説明をした場合と同一又は同様に行うことができる。
【0075】
また、図3に示す構成の印刷装置10においても、硬化用の紫外線の照射について、瞬間乾燥用の紫外線の照射と別のタイミングで行うこともできる。この場合、例えば、主走査動作中に紫外線光源202、204に瞬間乾燥用の紫外線の照射を行わせ、その後、インクジェットヘッド102にインクを吐出させずにヘッド部12を移動させつつ紫外線光源202、204に硬化用の紫外線の照射を行わせることが考えられる。そして、この場合、瞬間乾燥用の紫外線の照射と硬化用の紫外線の照射とを別のタイミングで行うことで、瞬間乾燥水溶性UV遅延硬化インクに限らず、瞬間乾燥水溶性UV高速硬化インクを用いることも可能になる。また、より具体的に、例えば、片方向の主走査動作を行う場合において、主走査動作時におけるヘッド部12の移動の向きである往路の移動時には瞬間乾燥用の紫外線の照射を行い、ヘッド部12の位置を復帰させるために往路とは反対の向きにヘッド部12を移動させる復路の移動時には硬化用の紫外線の照射を行うことが考えられる。また、この場合、例えば、往路と復路とで紫外線を照射する条件を互いに異ならせることが考えられる。このように構成すれば、例えば、紫外線光源206を用いることなく、硬化用の紫外線の照射について、瞬間乾燥用の紫外線の照射と別のタイミングで行うこともできる。また、この場合、例えば瞬間乾燥水溶性UV高速硬化インクを用いても、瞬間乾燥方式で溶媒を蒸発させること、及びインクを硬化させることを適切に両立することが可能になる。
【0076】
また、図1に関連して上記においても説明をしたように、瞬間乾燥用の紫外線の照射の条件と、硬化用の紫外線の照射の条件については、照射する紫外線の波長を異ならせることで相違させることが考えられる。そのため、紫外線光源202、204により瞬間乾燥用及び硬化用の紫外線の照射を行う場合、紫外線光源202、204として、例えば、照射する紫外線の波長を変更可能な構成を用いることが考えられる。また、この場合、例えば、発光中心波長が互いに異なる複数種類のUVLEDを含む紫外線光源202、204を用いることが考えられる。また、このような構成の紫外線光源202としては、例えば図4に示すような、複数種類のLED素子が並ぶマイクロLEDアレイを用いることが考えられる。また、紫外線光源204としても、例えば、紫外線光源202と同一又は同様の構成のマイクロLEDアレイを用いることが考えられる。
【0077】
図4は、マイクロLEDアレイを用いる場合の紫外線光源202の構成の一例を示す。図4に示す構成において、紫外線光源202は、LED素子302a、bを用いて紫外線を照射するLED照射器であり、基板300及び複数のLED素子302a、bを有する。基板300は、複数のLED素子302a、bへ電力を供給する回路基板である。また、紫外線光源202は、複数のLED素子a、bとして、図中に2種類の網掛け模様で区別して示すように、複数のLED素子302aと、複数のLED素子302bとを有する。また、複数のLED素子302a、bは、例えば図中に示すように配列状に並ぶ。この場合、紫外線光源202における複数のLED素子302a、bの並びについて、LED素子が複数個並ぶLED配列の一例と考えることができる。
【0078】
LED素子302a、bは、紫外線を発生するLED(UVLED)の素子である。また、図示した構成において、複数のLED素子302aとしては、同じ特性のLED素子を用いる。この場合、LED素子の特性が同じであることについては、例えば、仕様が同じであること等と考えることができる。仕様が同じであるとは、例えば、型番が同じであることである。また、LED素子の特性が同じであることについては、例えば、設計上の発光中心波長が同じであること等と考えることもできる。また、複数のLED素子302bとしては、同じ特性であり、かつ、LED素子302aとは特性が異なるLED素子を用いる。この場合、紫外線光源202の構成について、例えば、特性の異なる複数種類のLED素子が並ぶLED配列を有していると考えることができる。
【0079】
また、より具体的に、LED素子302bとしては、発光中心波長がLED素子302aと異なるLED素子を用いる。この場合、LED配列における一部のLED素子である複数のLED素子302aは、第1の波長が発光中心波長になる紫外線を発生する。そして、LED配列における他の少なくとも一部のLED素子である複数のLED素子302bは、第1の波長と異なる第2の波長が発光中心波長になる紫外線を発生する。このように構成すれば、例えば、LED配列において、2種類の中心波長の紫外線を適切に照射することができる。
【0080】
また、この場合、例えば、LED素子302a又はLED素子302bのうちのいずれか一方が発生する紫外線を瞬間乾燥用の紫外線として用い、他方が発生する紫外線を硬化用の紫外線として用いることが考えられる。そして、例えば、図3に示す構成の印刷装置10においてこのような構成を用いて、ヘッド部12(図1参照)を往路方向へ移動させる主走査動作時にはLED素子302a又はLED素子302bのうちの一方に紫外線を発生させ、復路方向へヘッド部12を移動させる移動時には他方に紫外線を照射させることが考えられる。このように構成すれば、例えば、瞬間乾燥用の紫外線を照射する条件と、硬化用の紫外線を照射する条件とを、適切に異ならせることができる。また、これにより、例えば、瞬間乾燥方式で溶媒を蒸発させること、及びインクを硬化させることを適切に両立することができる。
【0081】
また、この構成において、それぞれのLED素子302a、bとしては、例えば、最大辺の長さが数100μm以下(例えば、200μm以下)の素子を用いることが好ましい。LED素子a、bの最大辺については、例えば、LED素子において最も長い辺等と考えることができる。また、LED素子302a、bとしては、例えば、長方形状に切り出された素子を用いることが考えられる。この場合、それぞれのLED素子302a、bの最大辺については、例えば、長方形状の長辺と考えることができる。
【0082】
また、この紫外線光源202において、それぞれのLED素子302a、bは、例えば、基板300に対して、フリップチップ実装によって実装される。この場合、LED素子302a、bが基板300に対してフリップチップ実装によって実装されることについては、例えば、ワイヤボンディングを用いずに基板300と電気的に接続されていること等と考えることができる。このように構成すれば、例えば、狭い素子間ピッチで多数のLED素子302a、bを並べたLED配列を適切に構成することができる。また、この場合、それぞれのLED素子302a、bについて、例えば、フリップチップ実装の対象となる半導体素子(半導体チップ)等と考えることができる。また、この場合、LED配列については、例えば、マイクロサイズのLED素子が並ぶマイクロLEDアレイ等と考えることもできる。また、このようなLED配列としては、例えば、マイクロLEDパネルと同様の構成で複数のLED素子が並ぶ配列等を用いることが考えられる。この場合、マイクロLEDパネルについては、例えば、マイクロLEDアレイを用いた表示装置用パネル等と考えることができる。
【0083】
また、紫外線光源202におけるLED配列は、例えば図中に示すように、主走査方向へ複数のLED素子302a、bが並び、かつ、副走査方向へも複数のLED素子302a、bが並ぶ配列である。複数のLED素子302a、bの並び方については、例えば、主走査方向及び副走査方向のそれぞれにおいてLED素子302aとLED素子302bとが交互に並んでいると考えることもできる。また、LED配列において、複数のLED素子302a、bは、副走査方向における素子間ピッチが所定の距離Pxになり、主走査方向における素子間ピッチが所定の距離Pyになるように、一定の間隔で並ぶ。この場合、LED素子の素子間ピッチについては、例えば、隣接するLED素子の中心間の距離等と考えることができる。素子間ピッチについては、例えば、所定の方向へ並ぶLED素子の配置周期に対応する距離等と考えることもできる。また、より具体的に、図示した構成では、LED素子302aと、LED素子302bとが、交互に並んでいる。この場合、LED素子302a、bの素子間ピッチについては、主走査方向又は副走査方向において隣接するLED素子302aとLED素子302bとの中心間の距離等と考えることができる。
【0084】
また、上記においても説明をしたように、LED素子302a、bは、基板300に対し、狭い素子間ピッチで実装されている。また、より具体的に、この場合、素子間ピッチPx、Pyは、ヘッド部12における複数のインクジェットヘッド102(図1参照)のギャップ長よりも小さくなっている。また、更に具体的に、素子間ピッチPx、Pyは、例えば1mm以下、好ましくは0.5mm以下、更に好ましくは0.2mm以下である。
【0085】
この点に関し、インクジェットヘッド102のギャップ長については、例えば、インクジェットヘッド102においてノズルが形成されているノズル面と媒体50との間の距離等と考えることができる。そして、素子間ピッチPx、Pyがギャップ長よりも大きい場合、例えば、媒体50上において、LED素子の中心と対向する位置と、LED素子の合間と対向する位置との間で、照射される紫外線の光量の差が大きくなることが考えられる。また、その結果、例えば、媒体50へ照射される紫外線の強度分布が不均一になることが考えられる。これに対し、上記のように素子間ピッチPx、Pyを小さくした場合、例えば、媒体50への着弾後のインクに対し、均一かつ適切に紫外線を照射することができる。また、この場合、紫外線光源202におけるLED素子302a、bについて、例えば、狭いピッチで並ぶマイクロピッチLED等と考えることができる。
【0086】
また、この場合、紫外線光源202において紫外線を発生する発光面と媒体50との間の距離(以下、照射ギャップという)についても、ギャップ長と同程度の距離にすることが考えられる。この場合、紫外線光源202において紫外線を発生する発光面については、例えば、LED素子302a、bにおける発光面等と考えることができる。また、より具体的に、照射ギャップについては、例えば、4mm以下程度(例えば、2~4mm程度)にすることが考えられる。また、素子間ピッチPx、Pyについては、照射ギャップよりも小さくすることが好ましいと考えることもできる。
【0087】
また、紫外線光源202において、複数の波長での紫外線の照射を行う場合、それぞれの波長の紫外線について、均一な強度で照射することが好ましい。そして、この場合、例えば同じ特性のLED素子(LED素子302a又はLED素子302b)の素子間ピッチが大きいと、それぞれの波長の紫外線について、照射される紫外線の強度分布が不均一になることも考えられる。そのため、LED配列においては、同じ特性のLED素子の素子間ピッチについて、ギャップ長よりも小さくすることが好ましい。より具体的に、例えば、図示した構成の場合、同じ特性のLED素子の素子間ピッチである距離2Px及び2Pyについて、ギャップ長よりも小さくすることが好ましい。このように構成すれば、例えば、それぞれの波長の紫外線について、より均一に照射を行うことができる。
【0088】
また、紫外線光源202におけるLED素子302a及びLED素子302bの並べ方については、図示した具体的な構成に限らず、様々に変更することも可能である。この場合、例えば、所定の方向の列に並ぶLED素子をLED素子302a又はLED素子302bのいずれかのみにして、LED素子302aの列とLED素子302bの列とを交互に並べること等が考えられる。また、それぞれの列におけるそれぞれのLED素子の位置について、隣接する列における対応するLED素子とずらすこと等も考えられる。また、上記においても説明をしたように、紫外線光源204としても、紫外線光源202と同一又は同様の構成のマイクロLEDアレイを用いることが考えられる。
【0089】
続いて、上記において説明をした各構成に関する補足説明や、更なる変形例の説明等を行う。また、以下においては、説明の便宜上、上記において説明をした各構成をまとめて、本例という。
【0090】
上記においても説明をしたように、本例においては、例えば、CMYKBGRの7色用のインクジェットヘッド102(図1参照)を用いて、7色分版方式での色表現を行うことが考えられる。また、図1等に図示した構成では、1次色用及び3次色用のインクジェットヘッド102を第1の列に並べ、2次色用のインクジェットヘッド102について、副走査方向における位置をずらした第2の列に並べている。そして、この場合、例えば、各回の主走査動作において媒体50における単位面積に対して吐出するインクの合計量を適切に低減することが可能になる。より具体的に、この場合、例えば、各回の主走査動作においてそれぞれのインクジェットヘッド102にインクを吐出させる制御について、7色分版方式での分版処理を行うことで生成されるデータに基づいて行う。そして、この場合、例えばCMYKの4色のみを用いる4色分版方式での分版処理を行う場合と比べて、各回の主走査動作において媒体50における単位面積に対して吐出するインクの合計量を適切に低減することが可能になる。
【0091】
また、本例においては、1次色用及び3次色用のインクジェットヘッド102と、2次色用のインクジェットヘッド102とについて、上記のように異なる列に配設することで、媒体の各位置へ1次色用のインクを吐出する主走査動作と異なる回の主走査動作において2次色用のインクを吐出する構成である完全7色分版方式の構成を実現することができる。また、完全7色分版方式については、例えば、1次色、2次色、及び3次色のインクに関する印刷濃度(プリント濃度)Dと、各回の主走査動作において媒体50における単位面積に着弾するインクの量(容量)Vとの関係を以下のように設定した方式等と考えることができる。
【0092】
より具体的に、CMYKBGRの各色のインクについて、印字濃度を100%にして印刷する場合(100%プリント時)に1回の主走査動作で媒体50の単位面積当たりに着弾するインク容量をVc、Vm、Vy、Vk、Vb、Vg、Vrとし、100%プリント時に媒体50に付着するインクの濃度(インクプリント濃度)をDc、Dm、Dy、Dk、Db、Dg、Drとした場合、完全7色分版方式においては、次の関係が成り立つことになる。この場合、α、βのそれぞれは、インク容量及びインクプリント濃度のそれぞれの最大値を100とした場合の比率を示し、0~100の間の値をとる。
【0093】
インクの容積
1次色インク容積:Vy=Vm=Vc=Vr=Vg=Vb=Vk
2次色インク容量:α(Vy+Vm)=αVr、α(Vm+Vc)=αVb、α(Vc+Vy)=αVg
3次色インク容積:αVy=αVm=αVc=αVk
【0094】
インクプリント濃度
1次色プリント濃度:2次色が次のようになる濃度
2次色プリント濃度:β(Dy+Dm)=βDr、β(Dm+Dc)=βDb、β(Dc+Dy)=βDg
3次色プリント濃度:β(Dy+Dm+Dc)=βDk
【0095】
瞬間乾燥水溶性UV高速硬化インクや瞬間乾燥水溶性UV遅延硬化インクを完全7色分版方式で使用することにより、例えば、滲みの発生等をより適切に防ぐことや、より演色性の高い印刷を行うことが可能になる。また、印刷装置10においては、例えば、4色分版方式と7色分版方式とをモードによって切り替えて実行してもよい。この場合、7色分版方式で印刷を行うモードについて、より高品質な印刷を行うモード等と考えることができる。
【0096】
また、上記においても説明をしたように、本例において用いるインクは、紫外線に応じて発熱する瞬間乾燥型のインクの特徴と、紫外線が照射されることで硬化(UV硬化)する特徴とを有する水性のインクである。この場合、本例において用いるインクについて、例えば、UV瞬間乾燥及び水溶性のUV硬化機能を有する瞬間乾燥水溶性UV硬化インク等と考えることができる。また、この場合、水溶性のUV硬化機能については、例えば、硬化前の硬化性物質が水溶性であること等と考えることができる。また、上記においても説明したように、インクの色材としては、例えば、顔料等を用いることが考えられる。この場合、本例において用いるインクについて、例えば、瞬間乾燥水溶性UV硬化顔料インク等と考えることができる。
【0097】
また、上記においても説明をしたように、インクの主成分となる溶媒としては、例えば水を用いることが考えられる。この場合、水の含有量について、例えば10~85重量%程度にすることが考えられる。また、インクの溶媒成分(溶剤成分)としては、水に加えて、水に対して相溶性がある有機溶剤(例えば、1、2-ブタンジオール+ジエチレングリコールモノブチルエーテル、2-メチルプロパンジオール等)を更に用いてもよい。また、瞬間乾燥型のインクとしての特徴をインクに持たせるためには、例えば、紫外線吸収剤(UV吸収剤)を添加することが考えられる。この場合、瞬間乾燥用に使用する紫外線の波長に対する吸収係数が高い物質を紫外線吸収剤として用いることが好ましい。また、紫外線吸収剤の含有量については、例えば0.1~5重量%程度にすることが考えられる。また、紫外線吸収剤については、溶媒中に溶解又は分散させることが考えられる。
【0098】
また、媒体50上に形成されるインクの層の厚み内での紫外線の吸収率を考えた場合、この吸収率が10%程度以上(好ましくは、30%程度以上)になる吸収係数を有する紫外線吸収剤を用いることが好ましい。より具体的に、紫外線吸収剤としては、例えば、20μm厚程度のインクの層に紫外線照射部112から250~400nm程度の波長領域の紫外線を照射した場合の吸収率が10%以上になる物質を好適に用いることができる。この場合、吸収率が10%以上になることについては、例えば、印刷の品質に対して問題にならない範囲の量の紫外線吸収剤を添加した場合の吸収率等と考えることができる。
【0099】
また、上記においても説明をしたように、インクの成分としては、硬化性物質に重合を開始させる開始剤を用いることが考えられる。そして、この場合、瞬間乾燥方式でインクを加熱するための紫外線吸収剤として、開始剤と同一又は同様の物質を用いることも考えられる。また、この場合、重合の開始剤に瞬間乾燥方式用の紫外線吸収剤を兼ねさせること等も考えられる。また、このような紫外線吸収剤としては、例えば、ラジカル重合に用いる開始剤(光硬化開始剤)やカチオン重合に用いる開始剤(光硬化開始剤)等と同一又は同様の物質を用いることが考えられる。ラジカル重合に用いる開始剤と同一又は同様の物質としては、例えば、ベンジルジメチルケタール(型)1、α-ヒドロキシアセトフェノン(型)2~6、α-アミノアセトフェノン(型)7~9等のアセトフェノン系の開始剤、モノアシルフォスフィンオキサイド(MAPO)、ビスアシルフォスフィンオキサイド(BAPO)等のアシルフォスフィンオキサイド系光硬化開始剤、O-アシルオキシム16、17等のO-アシルオキシム系光硬化開始剤、IRGACURE01~02等のオキシムエステル系光硬化開始剤、チタノセン等のチタノセン系光硬化開始剤、ベンゾフェノン、チオキサントン、ケトクマリン等の2分子反応型光硬化開始剤等を用いることが考えられる。カチオン重合に用いる開始剤と同一又は同様の物質としては、例えば、オニウム塩27~29等のオニウム塩系開始剤、ヨードニウム塩24、非イオン性ジアリールヨードニウム塩、トリアリールヨードニウム塩、ジフェニールヨードニウム塩、スルフォニウム塩等のヨードニウム塩系開始剤、イミドスルホネイト、オキシムスルホネイト等の非イオン性光カチオン重合開始剤等と用いることが考えられる。
【0100】
また、瞬間乾燥方式用の紫外線吸収剤としては、重合の開始剤とは別の物質を用いてもよい。このように構成すれば、例えば、硬化性物質の重合を進行させずに、瞬間乾燥方式でのインクの加熱を適切に行うことができる。また、より具体的に、例えば、硬化性物質をラジカル重合反応で重合させる場合、瞬間乾燥方式用の紫外線吸収剤として、紫外線の照射による発熱時にラジカルを発生しない物質を用いること等が考えられる。また、このような紫外線吸収剤としては、例えば、金属酸化物の紫外線吸収剤等を好適に用いることができる。
【0101】
また、上記においても説明をしたように、インクの成分のうち、硬化性物質としては、硬化前の状態では水に溶解し、かつ、インクの硬化後には水に不溶解となる物質を用いることが考えられる。また、本例において、硬化性物質については、例えば、紫外線を照射することで重合反応を生じて樹脂化する成分(UV硬化成分)等と考えることができる。そして、このような硬化性物質としては、例えば、水溶性のUV硬化モノマーやオリゴマ等を好適に用いることができる。また、この場合、硬化性物質について、例えば、水溶性UV硬化樹脂成分等と考えることもできる。硬化性物質の含有量については、例えば、10~80重量%程度にすることが考えられる。また、より具体的に、重合性物質としては、例えば、ラジカル重合を主反応とするウレタンアクリレート、アクリル酸エステル、ポリエステルアクリレート等の各種アクリレート系のモノマーやオリゴマ等を用いることが考えられる。また、重合性物質として、例えば、オキセタン樹脂、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合等を使うカチオン系のモノマーやオリゴマ等を用いてもよい。
【0102】
また、上記においても説明をしたように、インクの色材としては、例えば顔料を用いることが考えられる。この場合、顔料としては、例えば、有機顔料、無機顔料、又はその双方を用いることが考えられる。また、顔料の含有量については、例えば、2~10重量%程度にすることが考えられる。色材として顔料を用いることにより、例えば、様々な素材の媒体50に対して印刷が可能になるメディアフリーの構成を適切に実現することができる。また、印刷の用途等によっては、色材として、染料を用いること等も考えられる。
【0103】
また、上記においても説明をしたように、インクの成分としては、重合性物質の重合反応を開始させる開始剤を用いることが考えられる。開始剤についても、例えば、水溶性の物質、又は水と相溶性の溶剤に溶かすことで水と混和できる物質を用いることが好ましい。また、上記においても説明をしたように、本例において用いるインクは、公知のインクと同一又は同様の様々な成分を更に含んでもよい。例えば、使用するインクジェットヘッドやインクの供給系とのマッチング等のために、必要に応じて、表面張力や粘度の調整剤や分散剤等を更に添加すること等が考えられる。
【0104】
また、印刷装置10の具体的な構成等については、上記において説明をした構成に限らず、様々に変更が可能である。例えば、上記においては、図1及び図3を用いて、ヘッド部12が有する複数のインクジェットヘッド102について、CMYK用のインクジェットヘッド102とBGR用のインクジェットヘッド102等とを2列に分けて配置する例を説明した。このように構成すれば、例えば高い演色性や滲みの低減等の効果をより適切に得ることができる。しかし、使用するインクの色やインクジェットヘッド102の配置については、様々に変更が可能である。例えば、従来から広く用いられている構成のように、CMYKの4色用のインクジェットヘッド102を1列に配置する構成や、M色及びC色用のライト色であるLm色及びLc色用のインクジェットヘッド102を加えた6色用のインクジェットヘッド102を1列に配置する構成を用いること等も考えられる。また、CMYKBGR以外の特色のインクとしては、図1及び図3に図示したW色のインクに限らず、パール色、蛍光色、メタリック色、又はクリア色等の様々な色のインクを用いてもよい。
【0105】
また、図1及び図3においては、シリアル側の印刷装置10における紫外線照射部112の構成に関し、インクジェットヘッド102に対する主走査方向の片側のみに紫外線光源202、204を配設する構成を図示している。しかし、印刷装置10の構成の変形例において、紫外線照射部112における紫外線光源202、204については、主走査方向におけるインクジェットヘッド102の両側に配設してもよい。また、上記の説明等から理解できるように、紫外線照射部112により照射する紫外線のエネルギーの積算量(照射エネルギーの最大供給エネルギー)については、紫外線の照射強度や照射時間に応じて決まると考えることができる。そして、この場合、紫外線の照射強度や照射時間について、印刷の速度(プリント速度)、パス数、及び媒体上に形成されるインクのドットの密度(プリントドット密度等)等に応じて、例えば自動的に、又はユーザの手動操作等により、媒体やインクに焦げ等が発生しないように設定をすることが考えられる。
【0106】
また、上記においては、主に、インクジェットヘッド102に主走査動作を行わせるシリアル型の印刷装置10の構成について、説明をした。しかし、印刷装置10の構成の変形例においては、例えば、ライン型の構成で印刷を行う印刷装置10を用いること等も考えられる。この場合、紫外線照射部112の構成について、インクの着弾後に瞬間乾燥用及び硬化用の紫外線を照射できるように、適宜変更をすることが考えられる。また、この場合、例えば、媒体の搬送方向におけるインクジェットヘッド102の下流側にインクジェットヘッド102毎に個別又は複数のインクジェットヘッド102に対してまとめて1カ所に紫外線光源を配設することが考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明は、例えば印刷装置において好適に利用できる。
【符号の説明】
【0108】
10・・・印刷装置、12・・・ヘッド部、14・・・プラテン、16・・・Yバー、18・・・走査駆動部、20・・・プリントヒータ、22・・・プレヒータ、24・・・アフターヒータ、30・・・制御部、50・・・媒体、100・・・キャリッジ、102・・・インクジェットヘッド、112・・・紫外線照射部、202・・・紫外線光源、204・・・紫外線光源、206・・・紫外線光源、300・・・基板、302・・・LED素子
図1
図2
図3
図4