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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】産業用ロボット
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/08 20060101AFI20240528BHJP
   B25J 9/06 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
B25J15/08 C
B25J9/06 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020079082
(22)【出願日】2020-04-28
(65)【公開番号】P2021171890
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】永田 宏明
(72)【発明者】
【氏名】戸崎 康一
【審査官】樋口 幸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-010689(JP,A)
【文献】特開2003-136448(JP,A)
【文献】特開2012-056052(JP,A)
【文献】特開2000-207228(JP,A)
【文献】特開2011-194504(JP,A)
【文献】特開2019-093504(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 15/08
B25J 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アームと前記アームの先端に手首軸を介して取り付けられたハンドとを含む水平多関節型のロボット本体と、前記ロボット本体に接続したロボットコントローラと、を備え、前記ハンド上に載置された搬送対象物を搬送する産業用ロボットであって、
前記ハンドは、前記手首軸に接続するハンド基部と、前記ハンド基部から一方向に延びて前記搬送対象物を下から支持する複数のフォークと、前記複数のフォークのうちの少なくとも一部を前記ハンド基部に沿って移動させることによって前記フォークの間隔であるフォークピッチを変更するエンコーダ付きの第1サーボモータと、前記エンコーダでの検出結果に基づいて前記第1サーボモータをサーボ制御により駆動する第1サーボドライバと、前記第1サーボドライバに対する指令が入力するリモートI/Oと、センサと、を備え、
前記複数のフォークには前記ハンド基部に固定されているフォークが含まれるともに2以上のフォークが前記ハンド基部に沿って移動可能であって、移動可能な前記フォークごとに前記第1サーボモータと前記第1サーボドライバとが設けられ、
前記リモートI/Oは複数の前記第1サーボドライバをデイジーチェーン接続またはバス接続で接続できるインタフェースであり、
前記第1サーボモータ、前記エンコーダ前記第1サーボドライバ及び前記リモートI/Oは前記ハンド基部に設けられ
前記ロボットコントローラは、前記アームの位置及び姿勢の少なくとも一方を変化させる第2サーボモータをサーボ制御により駆動する第2サーボドライバを内蔵し、
前記ロボットコントローラからの前記指令が、前記ロボットコントローラと前記ハンド基部を接続する信号線と前記リモートI/Oとを介して前記第1サーボドライバに送信され、前記センサからの信号が前記リモートI/Oと前記信号線とを介して前記ロボットコントローラに伝送される、産業用ロボット。
【請求項2】
前記エンコーダはアブソリュートエンコーダである、請求項1に記載の産業用ロボット。
【請求項3】
前記リモートI/Oは、RS-485によるインタフェースである、請求項1または2に記載の産業用ロボット。
【請求項4】
第1サーボドライバに対して前記ロボットコントローラを介して駆動用の電力が供給され、
前記ロボットコントローラの内部に、前記駆動用の電力を遮断するスイッチが設けられている、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の産業用ロボット。
【請求項5】
第1サーボドライバと前記ロボットコントローラの間でデータ通信を行うためのデータ通信線が前記信号線とは別個に設けられ、
前記データ通信は、少なくとも、前第1サーボモータの位置情報の取得のために行われる、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の産業用ロボット。
【請求項6】
前記ロボットコントローラは、前記ロボットの動作の実行及び管理を行う動作制御部と、前記データ通信線による前記データ通信の処理を行うドライバ通信部と、前記動作制御部及び前記ドライバ通信部の両方からアクセス可能な共有メモリと、前記第1サーボドライバに対する指令を前記動作制御部から受け取って前記信号線を介して前記リモートI/Oに送信するリモートI/O制御部と、を備え、
前記ドライバ通信部は、前記データ通信線を介して前記第1サーボモータの前記位置情報を取得したときに、前記位置情報を前記共有メモリに格納する、請求項に記載の産業用ロボット。
【請求項7】
前記ロボットコントローラにペンダントが接続可能であり、前第1サーボドライバに対する指令が前記ペンダントから入力したときに、当該指令が前記リモートI/O制御部に入力して前記信号線を介して前記リモートI/Oに送信される、請求項に記載の産業用ロボット。
【請求項8】
前記データ通信により、前第1サーボドライバに設定されている設定値の読み出しと、前第1サーボドライバへの設定値の設定が可能であり、
前記ドライバ通信部は、前記設定値を読み出したときに当該設定値を前記共有メモリに格納し、
前記ペンダントは、前記共有メモリに格納された前記設定値を編集可能であって、前記ペンダントからの指令により、前記共有メモリに格納された前記設定値を前記ドライバ通信部が前記データ通信によって前第1サーボドライバに設定する、請求項に記載の産業用ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用ロボット(以下、単に「ロボット」とも言う)に関し、特に、ロボットのハンドに設けられるフォークの間隔を変更できる、搬送用のロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置用のガラス基板などの大型の板状の搬送対象物を搬送する産業用ロボットは、1または複数のアームを連結した上でアームの先端にハンドを取り付け、ハンドの上に搬送対象物を載置するように構成されている。ハンドはハンド基部とフォークと呼ばれる棒状の部材とからなる。ハンドでは、複数本のフォークが、相互に平行にかつハンド基部から一方向に延びるように配置され、搬送対象物は、複数本のフォークに跨るように載置された状態で保持されて搬送される。ハンド上に板状の搬送対象物を保持するためには最低限2本のフォークが存在すればよいが、2本のフォークのみを用いて板状の搬送対象物を搬送する場合、2本のフォークの間や2本のフォークの外側で搬送対象物がその自重によって大きくたわむことがある。搬送対象物の大きなたわみは、搬送中の搬送対象物を不安定な状態とするとともに、搬送対象物に対して機械的なダメージを与えることもある。そこで、ハンドに設けられるフォークの本数を3本以上、例えば4本とすることが検討されている。
【0003】
近年、多品種混合生産の普及などにより搬送用のロボットを用いて多様な寸法の板状の搬送対象物を搬送することについての需要が増している。異なる寸法の搬送対象物を安定して搬送するためには、ハンドにおけるフォーク間の間隔すなわちフォークピッチを変更できることが必要である。特許文献1~3は、ハンド基部にモータを設け、モータによってフォークを駆動することによってフォークピッチを可変とした搬送用のロボットを開示している。モータとしてはDC(直流)モータなどが使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-19061号公報
【文献】特開2019-10689号公報
【文献】特開2019-10693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1~3に開示された産業用ロボットでは、モータによるフォークの移動可能範囲の端部にセンサを設けることはあっても、フォークの位置をフィードバックすることによって移動可能範囲内の任意の位置に正確にフォークを移動させる構成とはなっていない。また、ロボットを制御するロボットコントローラの電源を遮断した後、再起動した場合に、フォークについて原点復帰動作を行う必要がある。モータにDCモータなどを用いた場合には、フォークの移動速度が比較的遅いので、フォークピッチを高頻度で変更することができない。ハンド基部にサーボモータを設けてロボットコントローラからこのサーボモータを駆動してフォークを移動させることにより、フォークの位置精度を高め、移動速度も速くすることも考えられるが、サーボモータが三相モータであるとするとサーボモータを1つ設けるごとに3本の電力用の導体配線が必要となる。ハンドはアームの先端に取り付けられるからハンドへの導体配線はアーム間の関節の中を通す必要があるが、フォークを駆動するサーボモータのための多数の導体配線を関節の中を通すことは難しい。
【0006】
本発明の目的は、ハンドにおけるフォークピッチを変更できる搬送用の産業用ロボットであって、フォークの位置を正確に制御できるとともに高速でフォークを動かすことができる産業用ロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の産業用ロボットは、アームとアームの先端に手首軸を介して取り付けられたハンドとを含む水平多関節型のロボット本体と、ロボット本体に接続したロボットコントローラと、を備え、ハンド上に載置された搬送対象物を搬送する産業用ロボットであって、ハンドは、手首軸に接続するハンド基部と、ハンド基部から一方向に延びて搬送対象物を下から支持する複数のフォークと、複数のフォークのうちの少なくとも一部をハンド基部に沿って移動させることによってフォークの間隔であるフォークピッチを変更するエンコーダ付きの第1サーボモータと、エンコーダでの検出結果に基づいて第1サーボモータをサーボ制御により駆動する第1サーボドライバと、第1サーボドライバに対する指令が入力するリモートI/Oと、センサと、を備え、複数のフォークにはハンド基部に固定されているフォークが含まれるとともに2以上のフォークがハンド基部に沿って移動可能であって、移動可能なフォークごとに第1サーボモータと第1サーボドライバとが設けられ、リモートI/Oは複数の第1サーボドライバをデイジーチェーン接続またはバス接続で接続できるインタフェースであり、第1サーボモータ、エンコーダ、第1サーボドライバ及びリモートI/Oはハンド基部に設けられ、ロボットコントローラは、アームの位置及び姿勢の少なくとも一方を変化させる第2サーボモータをサーボ制御により駆動する第2サーボドライバを内蔵し、ロボットコントローラからの指令が、ロボットコントローラとハンド基部を接続する信号線とリモートI/Oとを介して第1サーボドライバに送信され、センサからの信号がリモートI/Oと信号線とを介してロボットコントローラに伝送される。
【0008】
本発明の産業用ロボットは、エンコーダ付きの第1サーボモータによってフォークを移動させるので、フォークピッチの変更に際し、複数のフォークのうちの移動可能なフォークの位置を正確に制御できるとともに、高速でフォークを動かすことができる。その結果、本発明の産業用ロボットによれば、高頻度でフォークピッチを変更する場合においても工程の効率を低下させることがなくなる。またこの産業用ロボットは、第1サーボモータを駆動する第1サーボドライバ自体をハンド基部に設けているので、手首軸を通して配置される導体配線の本数を低減することができ、ロボットのアームや手首軸における寸法的な制約を受けずに導体配線を配置できるようになるので、第1サーボモータをハンド基部に設けることを可能にしている。
【0009】
本発明においては、第1サーボモータに設けられるエンコーダをアブソリュートエンコーダとすることが好ましい。アブソリュートエンコーダを用いることにより、ロボット本体あるいはロボットコントローラの電源を遮断し、その後、再起動を行うときに、フォークについては原点復帰動作を行う必要がなくなる。
【0010】
本発明においては、複数のフォークがハンド基部に沿って移動可能であるともに、移動可能なフォークごとに第1サーボモータと第1サーボドライバとを設けるので、移動可能なフォークの本数を増やすことによって、搬送対象物に合わせてより好適にフォークピッチを変更できるようになる。本発明によれば、第1サーボドライバをハンド基部に設けているので、フォークごとに第1サーボモータを設けることにより全体としての第1サーボモータの数が増加したとしても、ロボットコントローラに設けられるサーボドライバが不足することがない。また、電力用の導体配線としては第1サーボドライバに対して共通に設けられる電源線だけを設ければよいので、移動可能なフォークを数を増したときであっても、アームとハンドとの間に介在する手首軸を通る導体配線の数の増加を抑えることができる。
【0011】
本発明では、ハンド基部に設けられているリモートI/Oを介して第1サーボドライバに対する指令が入力する。もともと搬送用の産業用ロボットのハンドでは、そのハンドにおける搬送対象物の位置を検出するセンサなどが設けられ、センサなどからの信号を出力するためにリモートI/Oが設けられていることが多い。そのような既設のリモートI/Oを用いることによって、ハンド基部への第1サーボモータと第1サーボドライバとの配置が容易になる。
【0012】
ハンド基部に設けられるリモートI/Oとして、RS-485によるインタフェースであるリモートI/Oを用いることができる。RS-485によるインタフェースはデイジーチェーン接続あるいはバス接続が可能であるので、移動可能なフォークの本数が増えた場合であって、サーボドライバに対して手首軸を通して接続される信号線の数を増やさなく済むようになる。
【0013】
本発明の産業用ロボットでは、ロボット本体に接続し、アームの位置及び姿勢の少なくとも一方を変化させる第2サーボモータをサーボ制御により駆動する第2サーボドライバを内蔵するロボットコントローラ設けられており、ロボットコントローラからの指令、ロボットコントローラとハンド基部を接続する信号線とリモートI/Oとを介して第1サーボドライバに送信される。ロボット本体にはアームの位置や姿勢を変化させるための複数の第2サーボモータが設けられるが、これらの第2サーボモータについてはロボットコントローラ内の第2サーボドライバによりサーボ制御し、フォークピッチ変更のための第1サーボモータについてはハンド基部の第1サーボドライバにより駆動することによって、ロボットコントローラに設けられるサーボドライバの数に制約がある場合においても第1サーボモータを用いてフォークピッチを変更することが可能になる。
【0014】
ハンド基部に設けられる第1サーボドライバには駆動用の電力を供給する必要があるが、本発明では、ロボットコントローラを介してこの駆動用の電力を第1サーボドライバに供給し、かつ、駆動用の電力を遮断するスイッチをロボットコントローラの内部に設けることが好ましい。このように構成することによって、ロボットコントローラにおける非常停止状態と連動してスイッチにより駆動用の電力を遮断することが可能となり、メンテナンス時などにおける産業用ロボットの安全性が高まる。
【0015】
本発明の産業用ロボットでは、第1サーボドライバとロボットコントローラの間でデータ通信を行うためのデータ通信線を信号線とは別個に設け、ハンド基部に設けられる第1サーボモータの位置情報の取得のためにデータ通信が行われるようにしてもよい。この構成によれば、信号線だけではなく通信線を設けることで、ロボットコントローラ側において、第1サーボモータの正確な絶対位置、すなわちハンドにおける移動可能なフォークの正確な絶対位置を知ることが可能になって制御の精度を向上させることが可能になる。
【0016】
データ通信線を備える本発明の産業用ロボットでは、ロボットコントローラは、ロボットの動作の実行及び管理を行う動作制御部と、データ通信線によるデータ通信の処理を行うドライバ通信部と、動作制御部及びドライバ通信部の両方からアクセス可能な共有メモリと、第1サーボドライバに対する指令を動作制御部から受け取って信号線を介してリモートI/Oに送信するリモートI/O制御部と、を備え、ドライバ通信部は、データ通信線を介して第1サーボモータの位置情報を取得したときに、位置情報を共有メモリに格納するようにしてもよい。この構成によれば、動作制御部からの指令がリモートI/O制御部から信号線を介してハンド基部側に送られるので、動作制御部によって第1サーボドライバを制御することが可能になる。また、第1サーボモータの位置情報が共有メモリを介して動作制御部に供給されるので、動作制御部は、共有メモリに格納されている位置情報に基づいて的確な制御を速やかに実施できるようになる。
【0017】
データ通信線を備える本発明の産業用ロボットでは、ロボットコントローラにペンダントを接続可能として、第1サーボドライバに対する指令がペンダントから入力したときに、その指令がリモートI/O制御部に入力して信号線を介してリモートI/Oに送信されるようにしてもよい。この構成によれば、第1サーボドライバに対してもペンダントによって指令を出力することができ、例えば教示を容易に行えるようになる。
【0018】
データ通信線を備える本発明の産業用ロボットでは、データ通信により、第1サーボドライバに設定されている設定値の読み出しと、第1サーボドライバへの設定値の設定が可能であるようにして、ドライバ通信部が、設定値を読み出したときに当該設定値を共有メモリに格納し、ペンダントが、共有メモリに格納された設定値を編集可能であって、ペンダントからの指令により、共有メモリに格納された設定値をドライバ通信部がデータ通信によって第1サーボドライバに設定するようにしてもよい。この構成によれば、第1サーボドライバに対する直接作業を行うことなく、この第1サーボドライバに対する初期値などの設定作業をロボットコントローラに接続されているペンダントから行うことが可能になる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ハンドにおけるフォークピッチを変更できる搬送用の産業用ロボットであって、フォークの位置を正確に制御できるとともに高速でフォークを動かすことができる産業用ロボットを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】(a),(b)はそれぞれ本発明の第1の実施形態の産業用ロボットの側面図及び平面図である。
図2】水平多関節機構が上昇した状態での産業用ロボットを示す側面図である。
図3】第1の実施形態の産業用ロボットでのハンドの構成を説明する図である。
図4】第2の実施形態の産業用ロボットでのハンドの構成を説明する図である。
図5】第2の実施形態の産業用ロボットにおけるロボットコントローラの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施形態の産業用ロボットのロボット本体を示しており、(a),(b)はそれぞれ側面図及び平面図である。図1に示すロボットは、液晶表示パネルの製造に用いるガラス基板などの略長方形の板状の搬送対象物を搬送する水平多関節型のものであり、搬送対象物をそれぞれ保持する2つのハンド13A,13Bを備えるいわゆるダブル・ハンド・ロボットである。また図2は、図1に示すロボット本体において水平多関節機構が上昇した状態を示している。図1及び図2には示していないが、本実施形態の産業用ロボットでは、ロボット本体に対し、各軸のサーボモータを制御するロボットコントローラ70(図3参照)が接続する。
【0022】
ロボット本体は、床面に直線で設けられた相互に平行な1対のレール21上を移動可能な基台22と、基台22の上に設けられ、基台22に内蔵されたサーボモータ(不図示)によって回転軸31の周りで水平面内で回転する回転台23と、回転台23に対して直立するように設けられた昇降機構24を備えている。基台22のレール21上での移動も基台22に内蔵された別のサーボモータ(不図示)によって駆動される。レール21にはそれを覆うカバー25が取り付けられている。昇降機構24は、回転台23に取り付けられている固定部24Aと、不図示のサーボモータによって固定部24Aに対して昇降する移動部24Bとを備えている。図1(a)は昇降機構24の移動部24Bがその昇降範囲での最も下に位置している状態でのロボット本体を示すのに対し、図2は、移動部24Bが上昇した状態でのロボット本体を示している。
【0023】
移動部24Bには水平多関節機構を保持する支持部26が水平方向に延びるように設けられており、支持部26の先端には2組の水平多関節機構が上下方向に配列して取り付けられている。上側の水平多関節機構は、支持部26に取り付けられて共通軸32の周りで水平面内を回転可能な第1アーム11Aと、第1アーム11Aの先端に取り付けられて軸33Aの周りで水平面内を回転可能な第2アーム12Aを備えており、第2アーム12Aの先端にハンド13Aが取り付けられている。同様に下側の水平多関節機構は、支持部26に取り付けられて共通軸32の周りで水平面内を回転可能な第1アーム11Bと、第1アーム11Bの先端に取り付けられて軸33Bの周りで水平面内を回転可能な第2アーム12Bを備えており、第2アーム12Bの先端にハンド13Bが取り付けられている。第1アーム11A,11B、第2アーム12A,12B及びハンド13A,13Bもロボット本体に含まれる。
【0024】
ハンド13A,13Bは同一の構成のである。いずれのハンド13A,13Bもハンド基部14と棒状の部材である複数のフォーク15,16とを備え、フォーク15,16によって下から保持することによって、板状の搬送対象物を水平状態に保ったまま搬送できるように構成されている。図示した例では、ハンド13A,13Bの各々は、ハンド基部14に沿って移動できる2本のフォーク15とハンド基部14に固定された2本のフォーク16との合計4本のフォーク15,16を備え、これらのフォーク15,16は、相互に平行にかつハンド基部14から一方向に延びるように、ハンド基部14に配置されている。具体的には、フォーク15,16の延びる方向とは直交する方向に沿って、内側の2本がハンド基部14に固定されたフォーク16であり、外側の2本が移動可能なフォーク15である。ハンド13A,13Bは、例えばロードロック室などに収納されている搬送対象物を取り出してハンド13A,13B上に保持するときや保持している搬送対象物をロードロック室内などに収納するときに搬送対象物に対して前進または後退するが、このときにハンド13A,13Bの前進したり後退する方向は、フォーク15,16の延びる方向と平行な方向とされる。
【0025】
このロボットにおいて水平多関節機構は、第1アーム11A,11Bと第2アーム12A,12Bとに組み込まれたリンク機構により、支持部26が延びる方向とは直交する方向で直線運動でハンド13A,13Bが前進及び後退運動を行うように構成されている。すなわち両方のハンド13A,13Bは同一方向に前進及び後退を行う。中心軸32に対してハンド13A,13Bの先端が遠ざかる動きが前進運動であり、前進運動とは反対方向の動きが後退運動である。第1アーム11A,11Bと第2アーム12A,12Bとは全体して屈曲運動を行い、それにも関わらず水平面内でのハンド13A,13Bの向きを一定とするために、ハンド13A,13Bは、それぞれ、第2アーム12A,12Bの先端の位置で手首軸34A,34Bの周りで水平面内を回転可能に取り付けられている。上側の水平多関節機構は、支持部26に設けられたサーボモータ(不図示)が駆動されることによって、第1アーム11A及び第2アーム12Aが動き、ハンド13Aはその向きを保ったまま、支持部26の延びる方向とは直交する方向に移動する。同様に下側の水平多関節機構は、支持部26に設けられたサーボモータ(不図示)が駆動されることによって、第1アーム11B及び第2アーム12Bが動き、ハンド13Bはその向きを保ったまま、支持部26の延びる方向とは直交する方向に移動する。このロボットでは、ハンド13Aとハンド13Bとを独立して移動させることができる。
【0026】
次に、図3を用いてハンド13A,13Aについて説明する。ハンド13A,13Bは同一構成であるのでここではハンド13Aの構成を説明するが、ハンド13Bについても、それが手首軸34Bを介して第2アーム12Bに取り付けられている点を除けば、ここでの説明がそのまま当てはまる。
【0027】
ハンド13Aは、そのハンド基部14が手首軸34Aを介して第2アーム12Aに取り付けられている。ハンド基部14には、移動可能なフォーク15ごとに、そのフォーク15を移動させるボールねじ52と、ボールねじ52の一端に取り付けられてボールねじ52を回転駆動するサーボモータ53と、サーボモータ53の駆動軸に取り付けられたアブソリュート(絶対)型のエンコーダ54と、エンコーダ54での検出結果と外部から入力する指令とに基づいてサーボモータを駆動するサーボドライバ55と、を備えている。ボールねじ52は、フォーク15の長手方向とは直交する方向に延びており、フォーク15ではその根元側においてボールねじ52がかみ合いつつ貫通している。サーボモータ53によってボールねじ52が回転駆動されることによって、ボールねじ52が延びる方向にフォーク15が移動する。エンコーダ54によってボールねじ52の回転量を検出することによって、ハンド基部14におけるフォーク15の位置を正確に知ることができる。
【0028】
ハンド基部14には、さらに、ロボットコントローラ70との通信を行うためのリモートI/O(入出力部)60が設けられている。リモートI/O60は、シリアルデータ通信を行う入出力インタフェースであって、ロボットコントローラ70に対し、昇降機構24、第1アーム11A及び第2アーム12Aの内部に配置された信号線62を介して接続する。サーボドライバ55の制御用信号の入力端子は、リモートI/O60に接続している。サーボドライバ55の制御用信号とは、サーボドライバ55に対する位置指令などの動作指令、サーボドライバ55の内部に格納されたテーブルを選択する指令、サーボドライバ55の動作確認を行うための指令などのことである。フォーク15の移動に関する指令は、ロボットコントローラ70から信号線62を介してリモートI/O60に伝達され、リモートI/O60からサーボドライバ55に送られる。指令を受けたサーボドライバ55は、エンコーダ54で検出した位置と指令とに基づいてサーボモータ53を駆動し、その結果、ボールねじ52が回転して、指令によって指定された位置までフォーク15が迅速かつ正確に移動する。なお、ハンド上に搬送対象物を搭載した状態でフォークピッチの変更を行うことはなく、フォークピッチの変更のためにフォーク15に要求される動きも複雑なものではないので、サーボドライバ55に与えられる指令は複雑なものではなく、複数のサーボドライバ55に対する指令をシリアルインタフェースであるリモートI/O60を介して供給することとしても、フォークピッチの迅速な変更に支障をきたすことはない。
【0029】
ハンド13Aには、ハンド13Aにおける搬送対象物の載置位置などを検出するためのセンサ(不図示)が設けられており、センサへの検出指示の送信やセンサによる検出結果の送信にもリモートI/O60が用いられる。特に本実施形態の産業用ロボットでは、リモートI/O60として、RS-485によるインタフェースを用いている。RS-485によるインタフェースでは、マルチポイントでのシリアルデータ通信が可能であり、このインタフェースを用いることによって、サーボドライバ55だけではなくハンド13Aに設けられる各種のセンサ類も、デイジーチェーン接続によりロボットコントローラ70に電気的に接続することが可能である。このとき、サーボドライバ55の数やセンサの数が増えたとしても、手首軸34Aの内部を通る信号線62の本数や芯数が増加することはない。
【0030】
次に、本実施形態の産業用ロボットに設けられるサーボモータについて説明する。以上の説明から明らかなように、ハンド13Aには2個のサーボモータ53が設けられ、ハンド13Bにも2個のサーボモータ53が設けられている。これらのサーボモータ53は、いずれもハンド基部14に設けられているサーボドライバ55によってサーボ制御される。これらのサーボモータ53とは別に、ロボット本体には、レール21上を移動するために基台22に内蔵されたサーボモータと、回転軸31の周りでの回転を実現するために基台22に内蔵されたサーボモータと、昇降機構24において昇降のために設けられているサーボモータと、ハンド13Aの前進及び後退のために支持部26に設けられたサーボモータと、もう1つのハンド13Bの前進及び後退のために支持部26に設けられたサーボモータとの5個のサーボモータが設けられている。これらの5個のサーボモータは、アーム11A,11B,12A,12Bの位置及び姿勢の少なくとも一方を変化させるサーボモータであって、ロボットコントローラ70に内蔵されているサーボドライバによってサーボ制御されている。手首軸34A,34Bの周りでハンド13A,13Bをそれぞれ回転させるためにサーボモータを設けることもあるが、手首軸34A,34Bの周りでの回転のためのサーボモータもロボットコントローラ70に内蔵されるサーボドライバによってサーボ制御される。
【0031】
結局、この実施形態の産業用ロボットにおいてロボットコントローラ70には、ハンド基部14の4個のサーボモータ53を除いた5個あるいは7個のサーボモータをそれぞれサーボ制御により駆動する5個あるいは7個のサーボドライバが必要となる。一般的なロボットコントローラに設けられるサーボドライバの数には上限があり、仮にフォークピッチの変更に用いられるサーボモータ53のサーボ制御もロボットコントローラ70で行おうとするとさらに4個のサーボドライバがロボットコントローラ70に必要となり、サーボドライバの個数についての制約から一般的なロボットコントローラでは実現不可能となる可能性がある。本実施形態では、フォークピッチの変更に必要なサーボドライバ55をハンド基部14に設けることにより、一般的なロボットコントローラを用いつつ、サーボモータ53を用いてフォークピッチの変更を行うことを可能にしている。ハンド13A,13Bにおいてフォークピッチの変更のために移動するフォーク15の本数を増減する場合であっても、それに応じでハンド基部14に設けらられるサーボモータ53及びサーボドライバ55の数を増減させればよいので、ロボットコントローラにおけるサーボドライバの数を増減させる必要はない。
【0032】
次に、ハンド基部14に設けられるサーボドライバ55への駆動用の電力の供給について説明する。サーボドライバ55がサーボモータ53をサーボ制御により駆動するためにはサーボドライバ55に対して駆動用の電力を供給する必要がある。本実施形態では、電源71から例えば単相200Vの交流電力がロボットコントローラ70に供給され、ロボットコントローラ70の内部に設けられている非常停止スイッチ72を経て電源線61を介してハンド基部14に供給されている。単相交流を供給するので、手首軸34Aを通してハンド基部14に接続する電源線61は、2本の導体配線から構成されている。ここでハンド基部14に設けられる2個のサーボモータ53をサーボ駆動するサーボドライバをロボットコントローラ70に設けるとすると、サーボモータ53は一般に三相モータであるからモータの1個当たり3本の電力用の導体配線を必要とし、合計で6個の導体配線を手首軸34Aに通す必要が生じる。さらに、エンコーダ54の検出結果を出力する信号線も手首軸34Aに通す必要もある。ロボットのアームの先端側に位置する手首軸34Aにこのように大量の電力用の導体配線や信号線を配置することは、手首軸34Aにおける配線用の空間が限定されることにより、一般には困難である。本実施形態では、2本の導体配線からなる電源線61を手首軸34Aに通せばよいので、サーボモータ53をハンド基部14に容易に設けることができる。ハンド基部14において移動するフォーク15の本数を増やし、それに応じてサーボモータ53及びサーボドライバ55の数を増やしたとしても、手首軸34Aに通される導体配線の本数は増加しない。
【0033】
次に、ロボットコントローラ70内に設けられる非常停止スイッチ72について説明する。第1の実施形態の産業用ロボットでは、電源71からの電力は、ロボットコントローラ70内に設けられた非常停止スイッチ72を介してハンド基部14内のサーボドライバ55に供給されている。非常停止スイッチ72は、サーボドライバ55への駆動用の電力の供給を遮断するために設けられており、ロボットコントローラ70における非常停止状態に連動してサーボドライバ55への駆動用の電力の供給を遮断する。これにより、ロボットの全体を非常停止させる必要が生じたときにサーボドライバ55も非常停止してフォーク15の移動も停止することとなり、例えばメンテナンス時などにおける産業用ロボットの安全性が向上する。
【0034】
第1の実施形態のロボットでは、信号線62とリモートI/O60を介してロボットコントローラ70からサーボドライバ55に指令を送信している。したがって、このロボットの教示(ティーチング)を行うときは、ロボットコントローラ70に対してペンダントを接続し、ペンダントへの入力に基づいてロボットコントローラ70において位置指令などの動作指令やサーボドライバ55内のテーブルを選択するための指令を生成してリモートI/O60経由でその指令をサーボコントローラ55に供給することとなる。なお、ハンド13A,13Bにおいて、フォーク15における指令位置からの多少のずれなどの軽微なエラーが発生した場合には、リモートI/O60を介してフォーク15を原点に移動させる指令をサーボドライバ55に供給すればよい。
【0035】
以上説明した第1の実施形態の産業用ロボットでは、ハンド13A,13Bの各々のハンド基部14に、フォーク15をハンド基部14に沿って移動させるサーボモータ53とこのサーボモータ53をサーボ制御により駆動するサーボドライバ55を設けることにより、フォーク15を迅速かつ正確に所望の位置まで移動させてフォークピッチの変更を行うことができる。その結果、フォークピッチの変更に要する時間が短縮され、ロボットの動作中にフォークピッチの変更を行うことが可能となってシステムのサイクルタイムが短縮され、多品種混合生産を効率的に行うことが可能になる。サーボドライバ55をハンド基部14に設けているので、電力の供給のために手首軸34A,34Bに通す導体配線の本数を最小のものとすることができ、手首軸34A,34Bにおける配線スペースが限られているときであっても、サーボモータ33によるフォーク15の駆動が可能となる。さらに、ロボットコントローラ70としてサーボドライバの搭載数が多いものを使用する必要がなくなり、既設の産業用ロボットにおいてハンド13A,13Bを交換するだけでフォークピッチの変更が可能な構成とすることができる。サーボモータ53に取り付けられるエンコーダ54としてアブソリュート形のものを用いることにより、ロボット本体やロボットコントローラ70の電源が切断されたのちにロボットを始動するときに、原点復帰動作を行う必要がなくなる。RS-485によるインタフェースからなるリモートI/O60をハンド基部14に設けることにより、サーボモータ53やサーボドライバ55の増設も容易に行うことができるようになる。
【0036】
次に、本発明の第2の実施形態の産業用ロボットについて説明する。第1の実施形態のロボットは、ハンド基部14に設けられているセンサなどのための既設のリモートI/O60を利用してサーボドライバ55に対して制御用信号(テーブル選択のための指令、動作指定及び動作確認など)を供給するように構成されている。制御用信号はその伝送のために要する帯域が狭いので、リモートI/O60を介しても十分に伝送することができる。またサーボドライバ55には、その内部に保持されているテーブルの編集や、内部状態の取得、異常情報の取得、さらには外部からのサーボドライバ55のリセットなどのためにデータ通信用の通信端子が設けられている。しかしながらサーボドライバ55におけるデータ通信は、それに要する帯域が広いので、リモートI/O60を介して行うことは難しい。そのため、精度の高い絶対位置情報を特にリアルタイムで取得することが難しくなる。また、サーボドライバに対する各種の設定(例えば内蔵テーブルの編集や初期値の設定など)を行うためには、ハンド13A,13Bに設けられているサーボドライバ55への直接作業が必要となり、作業性が悪くなるともに、ハンド13A,13Bはロボットにおいて駆動される部分であることから、安全確保のために配慮を必要とする。そこでこの第2の実施形態の産業用ロボットでは、ロボットコントローラ70側からハンド13A,13Bに設けられているサーボドライバ55に対し、動作指令などの伝達のための制御用信号だけでなく、サーボドライバ55の設定や状態読み出しなどのためのデータ通信も行えるようにしている。
【0037】
図4は、第2の実施形態のロボットにおけるハンド13A,13Bを説明する図であって、ハンド13A,13Bは同一の構成であるので、ハンド13Aの構成を示している。図5は、第2の実施形態において用いられるロボットコントローラ70の内部構成を示している。なお図5は、ロボットコントローラ70が実行する制御に関する論理的な構成を示すので、ロボットコントローラ70の内部構成のうち、例えば非常停止スイッチ72などの電源関係の構成は示されていない。第2の実施形態のロボットにおけるロボット本体は、第1の実施形態でのロボット本体と同様のものであるが、ロボットコントローラ70からハンド基部14内のサーボドライバ55に接続するデータ通信線65が設けられている点で相違する。ハンド13Aに接続するデータ通信線65は、上述の信号線62と同様に、昇降機構24、第1アーム11A及び第2アーム12Aの内部に配置され、手首軸34Aを通って、ハンド13Aのハンド基部14内に設けられている2つのサーボモータ55のそれぞれのデータ通信用の端子に接続する。ハンド13Bに接続するデータ通信線65も同様である。データ通信線65は、サーボドライバ55のデータ通信用の端子のインタフェース規格に応じた信号インタフェースの通信線であり、例えば、RS-485によるデータ通信線である。データ通信線65は大電流を流す配線ではないので線径は小さく、したがって、データ通信線65を付加したからといって、手首軸34A内の配線用の空間が圧迫されることはない。また、RS-485によるデータ通信線であれば、接続するサーボドライバ55の数が増えても配線本数が増えることはない。
【0038】
本実施形態のロボットでは、ロボットコントローラ70は、図4に示すように、データ通信線65を介したサーボドライバ55とのデータ通信を行うためのデータ処理部であるドライバ通信部81と、ハンド13A,13Bに設けられたサーボモータ53も含めてロボットの各軸のサーボモータの動作制御を動作制御部82と、不揮発性メモリとして構成されて動作制御部82での動作制御に必要なデータやパラメータを格納する登録データ格納部83と、揮発性メモリである共有メモリ86と、信号線62を介してハンド基部14のリモートI/O60と通信するリモートI/O制御部87と、を備えている。ドライバ通信部81、動作制御部82及び登録データ格納部83は、ロボットコントローラ70に実装されるアプリケーションプログラム80を構成する。共有メモリ86は、ドライバ通信部81及び動作制御部82の両方からアクセス可能である。このロボットコントローラ70には、教示やロボットの操作のために、ペンダント通信線74を介してペンダント73が接続されてもよい。さらにロボットコントローラ70では、このロボットコントローラ70に対する上位の制御装置である外部制御装置から、ロボットへの作業位置や動作種類を指定する指令が、例えばネットワークを介して動作制御部82に与えられてもよい。
【0039】
ドライバ通信部81は、データ通信線65を介するデータ通信を行うためのデータ処理部として機能するものであり、ハンド基部14に設けられているサーボドライバ55から、対応するサーボモータ53の位置情報と、それらのサーボドライバ55に既に設定されている設定値とを取得して、共有メモリ86に格納する機能を有する。ドライバ通信部81は、ハンド基部14のサーボドライバ55において異常が発生したことを検知したとき、そのサーボドライバ55から詳細情報を取得する機能も有する。サーボドライバ55における異常の発生は、データ通信線65を介して検知できることもあるが、ハンド基部14のリモートI/O60から信号線62を介してリモートI/O制御部87において検出されることもある。異常の発生をデータ通信線65または信号線62のいずれを介して検出したによらず、ドライバ通信部81は、データ信号線65を介してサーボドライバ55から詳細情報を取得して共有メモリ86に格納する。さらにドライバ通信部81は、ペンダント73からの指令により、共有メモリ86に記録されている各サーボドライバ55の設定値をデータ通信線65を介して対応するサーボドライバ55に送信してそのサーボドライバ55に設定する機能を有する。ドライバ通信部81は、ロボットにおける重篤な異常、例えば、原点を失うなどのエラーが生じた場合、ペンダント73からの指令により、データ通信線65を介してサーボドライバ55のリセットを行う機能も有する。なお、ハンド13A,13Bにおいてフォーク15における指令位置からの多少のずれなどの軽微なエラーが発生した場合には、実際のモータ位置と共有メモリ86に格納されている現在位置との間にずれが生じるが、その場合、リモートI/O60を介してフォーク15を原点に移動させる指令をサーボドライバ55に供給することにより、実際のモータ位置が原点位置となるとともに共有メモリ86に格納される現在位置も原点位置となって、エラーから復帰することができる。
【0040】
動作制御部82は、ロボットにおけるハンド基部14に設けられているサーボドライバ55以外のサーボドライバに関し、外部制御装置からの指令により、登録データ格納部83に登録された位置へのロボットの動作の実行と管理とを行う。上述したように、ロボットの各軸のサーボモータを駆動するサーボドライバのうち、ハンド基部14に設けられているサーボドライバ55以外のサーボドライバはロボットコントローラ70内に設けられており、動作制御部82は、これらのサーボドライバを直接制御し、これらのサーボドライバに対応するサーボモータの位置情報を共有メモリ86に記録する。ハンド基部14に設けられているサーボドライバ55に関し、動作制御部82は、外部制御装置から指定されたフォークピッチとなるよう各サーボモータ53を駆動するための指令を、リモートI/O制御部87に対して出力する。その結果、この指令は、リモートI/O制御部87から信号線62、ハンド基部14のリモートI/O60を介して、サーボドライバ55に与えられる。さらに動作制御部82は、共有メモリ86に格納されている各サーボモータの現在位置を取得し、登録データ格納部83に格納されている情報との一致を確認する機能を有する。登録データ格納部83は、不揮発性メモリとして構成されるものであって、例えば、ロボットの動作目標位置(教示位置)、ロボットを動作させるための条件設定値、各サーボモータの駆動位置などを格納する。
【0041】
ペンダント73は、一般的なロボットコントローラ70に接続されて使用されるものと同様の機能を有し、ロボットの教示やロボットコントローラ70に対する指令の入力に使用される。特に本実施形態では、ペンダント73は、ハンド基部14に設けられたサーボドライバ55に対し、フォークピッチ変換のための駆動指令を入力することができる。この駆動指令は、リモートI/O制御部87、信号線62及びリモートI/O60を介してサーボドライバ55に出力される。また、ペンダント73は、ハンド基部14のサーボモータ53も含めて各サーボモータの位置情報を共有メモリ86から取得し、各サーボドライバへの設定値を共有メモリ86に格納することができる。共有メモリ86に格納された各サーボドライバへの設定値は、ハンド基部14のサーボドライバ55以外のサーボドライバについては、一般的なロボットコントローラの場合と同様に、動作制御部によってそれらのサーボドライバに設定される。これに対し、ハンド基部14のサーボドライバ55の設定値は、ペンダント73からドライバ通信部81に対する書込み指令により、共有メモリ86からドライバ通信部81によって読み出され、データ通信線65を介してサーボドライバ55に設定される。サーボドライバ55に格納されているテーブルの編集を行うときは、そのテーブルの内容を共有メモリ86に読み出した上で、共有メモリ86に読み出されているテーブルの内容をペンダント73を用いて編集し、ドライバ通信部81を介して編集後のテーブルをサーボドライバ55に転送して格納すればよい。さらにペンダント73は、共有メモリ86を介してドライバ通信部81に対し、ハンド基部14のサーボドライバ55のリセットを指令する機能を有する。
【0042】
このような本実施形態のロボットでは、ハンド基部14のリモートI/O60に接続する信号線62とは別個のデータ通信線65を設けてハンド基部14のサーボドライバ55とロボットコントローラ70との間でデータ通信を行えるようにしたことにより、ロボットが搬送対象物を搬送しているときであっても、サーボモータ53についての精度の高い位置情報や状態情報をロボットコントローラ70側で随時取得することが可能になる。その結果、サーボモータ53についてより精度の高い制御を実施することが可能になり、異常発生時にエラーコードなどを容易に取得できるようになる。また、ハンド基部14に設けられているサーボドライバ55への設定値の書き込みを、サーボドライバ55に対する直接作業を行うことなく、例えばペンダント73を用いてロボットコントローラ70の側から行うことができる。その結果、ロボットにおけるメンテナンス作業の作業性及び安全性が向上する。また本実施形態のロボットでは、ペンダント73から共有メモリ86の格納値を参照することにより、ハンド基部14のサーボモータ53について、その位置をペンダント73においても確認可能であって、正確な位置に基づいて教示を行うことができる。ペンダント73からハンド基部14のサーボドライバ55内のテーブルの編集を行うことができ、サーボドライバ55に設定値を設定できるので、教示も含めて作業性が向上する。さらに、ロボットコントローラ70自体に設けられているサーボドライバの数を超えるサーボドライバをペンダント73から制御することが可能になり、ロボットに設けられるサーボモータの数が多い場合であってもこれらのサーボモータを操作することができる。
【0043】
以上説明した各実施形態において産業用ロボットは、2つのハンドを備えるダブル・ハンド・ロボットであるが、本発明は、単一のハンドしか備えない産業用ロボットにも3以上のハンドを備える産業用ロボットにも適用可能である。また、ハンドに設けられるフォークの数は2以上であれば任意の本数とすることができ、それらのフォークの中でサーボモータによりハンド基部に沿って移動可能とされるフォークの本数も2に限定されるものではない。ハンドに設けられるすべてのフォークを移動可能としても、一部のフォークのみを移動可能としてもよい。移動可能とされるフォークの本数に応じてサーボモータ及びサーボドライバの数を増減することが好ましい。
【符号の説明】
【0044】
11A,11B…第1アーム;12A,12B…第2アーム;13A,13B…ハンド;14…ハンド基部;15,16…フォーク;21…レール;22…基台;23…回転台;24…昇降機構;24A…固定部;24B…移動部;25…カバー;26…支持部;31…回転軸;32…共通軸;33A,33B…軸;34A,34B…手首軸;52…ボールねじ;53…サーボモータ;54…エンコーダ;55…サーボドライバ;60…リモートI/O;61…電源線;62…信号線;65…データ通信線;70…ロボットコントローラ;71…電源;72…非常停止スイッチ;73…ペンダント;74…ペンダント通信線;80…アプリケーションプログラム;81…ドライバ通信部;82…動作制御部;83…登録データ格納部;86…共有メモリ;87…リモートI/O制御部。
図1
図2
図3
図4
図5