(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】印刷用データ生成装置及びインク塗布装置の制御装置
(51)【国際特許分類】
G06F 3/12 20060101AFI20240528BHJP
B41J 29/38 20060101ALI20240528BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240528BHJP
B41J 2/21 20060101ALI20240528BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20240528BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
G06F3/12 352
B41J29/38
B41J2/01 401
B41J2/21
G06F3/12 314
G06F3/12 378
B05C5/00 101
B05C11/10
(21)【出願番号】P 2020095681
(22)【出願日】2020-06-01
【審査請求日】2023-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105887
【氏名又は名称】来山 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】谷内 華菜
【審査官】佐賀野 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-229563(JP,A)
【文献】特開2016-076214(JP,A)
【文献】特表2005-538431(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/09- 3/12
B41J 29/00- 29/70
H04N 1/00
B41J 2/01
B41J 2/21
B05C 5/00
B05C 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットヘッドからインクを吐出して被描画表面にインクを塗布するインク塗布装置に与えられ、インク塗布位置を指定する印刷用データを生成する印刷用データ生成装置であって、
前記印刷用データは、
前記被描画表面に画定された複数の単位領域のそれぞれにおけるインク塗布位置を指定する基礎画像データと、
前記被描画表面における前記複数の単位領域のそれぞれの位置を指定する位置情報と、
前記複数の単位領域のそれぞれを前記複数の基礎画像データのいずれかに関連付ける関連付け情報と
を含み、
前記複数の単位領域のうち、単位領域内における複数のインク塗布位置の分布が同一の単位領域に対して、共通の前記基礎画像データを関連付けて前記印刷用データを生成する印刷用データ生成装置。
【請求項2】
前記複数の単位領域のそれぞれに複数の描画領域が画定されており、
前記複数の描画領域のそれぞれに対して描画情報が設定されており、
前記描画情報は、前記被描画表面における描画領域の位置、描画領域の範囲、及び描画領域内におけるインク塗布位置の分布規則を指定する情報を含んでおり、
前記描画情報に基づいて前記基礎画像データを生成する請求項1に記載の印刷用データ生成装置。
【請求項3】
前記インク塗布装置は、前記被描画表面に対して前記インクジェットヘッドを第1方向に移動させながらインクを吐出するスキャン動作を、前記第1方向に対して直交する第2方向に関して異なる位置でそれぞれ実行し、
前記複数の描画領域は、前記第1方向及び前記第2方向をそれぞれ行方向及び列方向とする行列状に配置されており、
前記第2方向に並ぶ複数の描画領域をまとめて1つの単位領域とする
請求項2に記載の印刷用データ生成装置。
【請求項4】
さらに、1つの単位領域に含める複数の描画領域をユーザに指定させる機能を持つ請求項1または2に記載の印刷用データ生成装置。
【請求項5】
インクを液滴化して吐出するインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドに対向する位置に基板を配置し、前記インクジェットヘッドと前記基板との一方を他方に対して移動させる移動機構と
を備えたインク塗布装置を制御し、
前記基板の被描画表面におけるインク塗布位置を指定する印刷用データに基づいて、前記インクジェットヘッド及び前記移動機構を制御して前記被描画表面のインク塗布位置にインクを塗布する制御装置であって、
前記印刷用データは、
前記被描画表面に画定された複数の単位領域のそれぞれにおけるインク塗布位置を指定する基礎画像データと、
前記被描画表面における前記複数の単位領域のそれぞれの位置を指定する位置情報と
を含み、
前記複数の単位領域のうち、単位領域内における複数のインク塗布位置の分布が同一の単位領域に対して、共通の1つの前記基礎画像データが関連付けられている制御装置。
【請求項6】
前記被描画表面に対して前記インクジェットヘッドを第1方向に移動させながらインク
を吐出するスキャン動作を、前記第1方向に対して直交する第2方向に関して異なる位置でそれぞれ実行し、
前記複数の単位領域のそれぞれに複数の描画領域が画定されており、前記複数の描画領域は、前記第1方向及び前記第2方向をそれぞれ行方向及び列方向とする行列状に配置されており、
前記第2方向に並ぶ複数の描画領域をまとめて1つの単位領域とされている請求項5に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷用データ生成装置、及びインク塗布装置の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
抵抗膜式タッチパネルに、2枚の導電膜の短絡を防止するためのドットスペーサが用いられる。ドットスペーサは、面内に規則的に分布する絶縁材料からなる複数のドットで構成される。下記の特許文献1に、インクジェットプリンタを用いてドットスペーサ形成面にインクを吹き付けてドットスペーサを形成する技術が開示されている。インクジェットプリンタを用いて所望のパターンを描画する場合、インクジェットヘッドからのインクの吐出を制御するために、ラスタ形成の画像データが用いられる。ラスタ形式の画像データは、一般的にはCADを用いて作成されたベクタ形式のデータを変換することにより生成される。ラスタ形式の画像データは、インクを塗布すべき表面のほぼ全域に配置される複数のピクセルで定義される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インクを塗布すべき範囲が広くなり、解像度が高くなると、印刷用の画像データ(印刷用データ)のピクセル数が膨大な個数になる。ピクセル数が多くなると、ベクタ形式の画像データをラスタ形式の画像データに変換する時間が長大化する。さらに、印刷用データのデータ容量が大きくなる。
【0005】
本発明の目的は、印刷用データのデータ容量を削減することが可能な印刷用データ生成装置及びインク塗布装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一観点によると、
インクジェットヘッドからインクを吐出して被描画表面にインクを塗布するインク塗布装置に与えられ、インクの塗布位置を指定する印刷用データを生成する印刷用データ生成装置であって、
前記印刷用データは、
前記被描画表面に画定された複数の単位領域のそれぞれにおけるインク塗布位置を指定する基礎画像データと、
前記被描画表面における前記複数の単位領域のそれぞれの位置を指定する位置情報と、
前記複数の単位領域のそれぞれを前記複数の基礎画像データのいずれかに関連付ける関連付け情報と
を含み、
前記複数の単位領域のうち、単位領域内における複数のインク塗布位置の分布が同一の単位領域に対して、共通の1つの前記基礎画像データを関連付けて前記印刷用データを生成する印刷用データ生成装置が提供される。
【0007】
本発明の他の観点によると、
インクを液滴化して吐出するインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドに対向する位置に基板を配置し、前記インクジェットヘッドと前記基板との一方を他方に対して移動させる移動機構と
を備えたインク塗布装置を制御し、
前記基板の被描画表面におけるインク塗布位置を指定する印刷用データに基づいて、前記インクジェットヘッド及び前記移動機構を制御して前記被描画表面のインク塗布位置にインクを塗布する制御装置であって、
前記印刷用データは、
前記被描画表面に画定された複数の単位領域のそれぞれにおけるインク塗布位置を指定する基礎画像データと、
前記被描画表面における前記複数の単位領域のそれぞれの位置を指定する位置情報と
を含み、
前記複数の単位領域のうち、単位領域内における複数のインク塗布位置の分布が同一の単位領域に対して、共通の1つの前記基礎画像データが関連付けられている制御装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
複数の単位領域のうち、単位領域内における複数のインク塗布位置の分布が同一の単位領域に対して、共通の1つの基礎画像データを関連付けるため、印刷用データのデータ容量を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1Aは、一実施例による印刷用データ生成装置、及び印刷用データ生成装置で生成された画像データを用いて描画を行うインク塗布装置の概略正面図であり、
図1Bは、可動テーブル、インク吐出ユニット、及び撮像装置の平面視における位置関係を示す図である。
【
図2】
図2は、基板の表面に形成するパターンを配置する描画領域を示す平面図である。
【
図3】
図3Aは、被描画表面と、その内部の1つの描画領域とを示す図であり、
図3Bは、描画情報に含まれる種々の情報を示す図表である。
【
図4】
図4A及び
図4Bは、それぞれ2種類の基礎画像データを構成するピクセルをピクセル座標系の二次元平面上に示す図である。
【
図5】
図5は、印刷用データに含まれる情報を模式的に示す図である。
【
図6】
図6は、被描画表面内の複数の単位領域の配置の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、被描画表面内の複数の単位領域の配置の他の例を示す図である。
【
図8】
図8Aは、他の実施例による印刷用データ生成装置で生成される印刷用データで指定される被描画表面内の複数の描画領域及び単位領域の位置関係を示す図であり、
図8Bは、単位領域と基礎画像データとの関連付けを示す図である。
【
図9】
図9は、本実施例によるインク塗布装置でドットパターンを形成するときの基板に対するインクジェットヘッドの移動軌跡を示す図である。
【
図10】
図10は、
図5に示した印刷用データを用いてインク塗布を行う場合のインクジェットヘッドの移動軌跡を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1A~
図7を参照して、一実施例による印刷用データ生成装置について説明する。
図1Aは、本実施例による印刷用データ生成装置、及び印刷用データ生成装置で生成された印刷用データを用いて描画を行うインク塗布装置の概略正面図である。基台10の上に移動機構11によって可動テーブル12が支持されている。x軸及びy軸が水平方向を向き、z軸が鉛直下方を向くxyz直交座標系を定義する。移動機構11は、制御装置50により制御されて、可動テーブル12をx方向及びy方向の二方向に移動させる。移動機構11として、例えば、X方向移動機構11XとY方向移動機構11Yとを含むXYステージを用いることができる。X方向移動機構11Xは基台10に対してY方向移動機構11Yをx方向に移動させ、Y方向移動機構11Yは、基台10に対して可動テーブル12をy方向に移動させる。
【0011】
可動テーブル12の上面(保持面)に、インク塗布対象である基板20が保持される。基板20は、例えば真空チャックにより可動テーブル12に固定される。移動機構11は、可動テーブル12に保持された基板20をxy面に平行な方向に移動させる。可動テーブル12の上方にインク吐出ユニット30及び撮像装置40が、例えば門型の支持部材13によって支持されている。インク吐出ユニット30及び撮像装置40は、基台10に対して昇降可能に支持されている。インク吐出ユニット30は、基板20に対向する複数のノズルを有する。各ノズルは、基板20の表面に向かって光硬化性(例えば紫外線硬化性)のインクを液滴化して吐出する。インクの吐出は、制御装置50によって制御される。
【0012】
撮像装置40は、基板20の上面(インクが塗布される表面)を撮像する。基板20の上面のうち、撮像装置40の画角の範囲内に位置する領域が、撮像装置40によって撮像される。
【0013】
制御装置50は、記憶部51及び制御部52を含む。記憶部51に、インクを塗布すべき位置を指定する情報(以下、画像データという。)が記憶されている。画像データは、基板20の表面上の複数の位置にそれぞれ対応付けられた複数のピクセルで構成される。各ピクセルに、インク塗布の有無を指定する情報を対応付けることにより、インクを着弾させるべきピクセルが指定される。本明細書において、画像データの複数のピクセルにそれぞれ対応する基板上の位置を、単に、「ピクセル」という場合がある。
【0014】
制御部52は、この画像データに基づいて移動機構11及びインク吐出ユニット30を制御することにより、基板20の表面の所定の位置に、インクを着弾させる。これにより、基板20の表面にインクからなるドットパターンや膜パターンが形成される。本明細書において、ドットのうち、1つのピクセルに着弾したインクが他のピクセルに着弾したインクと連続せず、孤立しているものを「孤立したドット」という。
【0015】
印刷用データ生成装置60が、ユーザが入力した種々の情報に基づいて印刷用データを生成する。生成された印刷用データが、制御装置50に入力される。印刷用データ生成装置60から制御装置50への印刷用データの入力は、リムーバブルメディア、LAN等の通信ネットワーク、ブルートゥース(登録商標)等の近距離無線通信等を用いて行われる。
【0016】
図1Bは、可動テーブル12、インク吐出ユニット30、及び撮像装置40の平面視における位置関係を示す図である。可動テーブル12の保持面に基板20が保持されている。基板20の上方にインク吐出ユニット30及び撮像装置40が支持されている。インク吐出ユニット30は、インクジェットヘッド31及び硬化用光源33を含む。インクジェットヘッド31の、基板20に対向する面に、複数のノズル32が設けられている。複数のノズル32は、x方向に関して等間隔に並んでいる。この間隔は、例えば600dpiの解像度に相当する寸法である。なお、複数のノズル32は、x方向に平行な1本の直線上に配置される必要はなく、x方向と平行な基準線からy方向に規則的にずれた位置に配置されてもよい。例えば千鳥状に配置されていてもよい。
【0017】
硬化用光源33は、y方向に関してインクジェットヘッド31の両側にそれぞれ配置されており、基板20に塗布されたインクを硬化させるための光を基板20に照射する。例えば、インクが紫外線硬化型のものであり、硬化用光源33は紫外線を基板20に照射する。硬化用光源33は、基板20に塗布されたインクを硬化させる硬化装置として機能する。
【0018】
移動機構11が、制御装置50によって制御されることにより、可動テーブル12をx方向及びy方向に移動させる。さらに、制御装置50は、インクジェットヘッド31の各ノズル32からのインクの吐出を制御する。
【0019】
基板20をy方向に移動させながら(言い換えると、基板20に対してインクジェットヘッド31をy方向に相対的に移動させながら)、インクジェットヘッド31からインクを吐出することにより、x方向に関して例えば600dpiの解像度で、インクを基板20に塗布することができる。基板20に着弾したインクは、基板20の移動方向の下流側に位置する硬化用光源33から放射される光により硬化される。基板20をy方向に移動させながら、インクジェットヘッド31から基板20にインクを着弾させる動作を、「スキャン動作」ということとする。y方向をスキャン方向という。
【0020】
1回のスキャン動作で、インクジェットヘッド31をy方向に少なくとも1往復させてもよい。このとき、往路と復路とでノズル32のピッチの1/2だけインクジェットヘッド31を基板20に対してx方向にずらすことにより、1200dpiの解像度でインクを基板20に着弾させることができる。インクジェットヘッド31のずらし量をノズル32のピッチの1/4にして、インクジェットヘッド31を2往復させることにより、2400dpiの解像度でインクを基板20に着弾させることができる。このように、解像度を高めるためにインクジェットヘッド31をy軸の負の向き及び正の向きに複数回移動させる場合でも、複数回の移動をまとめて1回のスキャン動作という。
【0021】
制御装置50は、1回のスキャン動作が終了すると、可動テーブル12をx方向に移動させる。言い換えると、基板20に対してインクジェットヘッド31をx方向に相対的に移動させる。この動作を、「シフト動作」ということとする。x方向をシフト方向という。スキャン動作とシフト動作とを繰り返すことにより、基板20の全域にインクを塗布することができる。基板20に対するインクジェットヘッド31のx方向への相対的な移動量は、x方向の両端に位置する2つのノズル32の間の距離とほぼ等しくすればよい。なお、両端近傍の一部のノズル32をインクの吐出に使用しない場合には、実際に使用するノズル32のうち両端に位置するノズル32の間の距離とほぼ等しくすればよい。
【0022】
シフト動作を行うことなく複数回のスキャン動作を行うことにより、1つのピクセルにインクを複数回着弾させることができる。すなわち、インクを重ね塗りすることができる。インクを重ね塗りすることにより、孤立したドットをより高くすることができ、膜をより厚くすることができる。
【0023】
硬化用光源33から基板20に光を照射した状態でスキャン動作を行うと、インクジェットヘッド31から吐出されたインクは、基板20に着弾した後、直ちに仮硬化される。具体的には、インクの着弾後、インクの着弾点が、硬化用光源33から照射されている光の経路内に移動するまでの短い時間でインクが仮硬化される。インクが仮硬化されるまでは、基板20に着弾したインクは基板20の面内方向に広がる。この広がりの程度は、基板20の表面の親液性の程度に依存する。インクが仮硬化した後は、基板20の面内方向へのインクの広がりは生じない。
【0024】
図2は、基板20の表面に形成するパターンを配置する描画領域を示す平面図である。本実施例では、抵抗膜式タッチパネルに用いられるドットスペーサを形成する。1枚の基板20に8枚のタッチパネルが多面取りされる。基板20のインクを塗布すべき表面を、被描画表面23ということとする。8枚のタッチパネルのそれぞれに対応して、被描画表面23に正方形または長方形の描画領域25が定義されている。被描画表面23の4つの縁、及び描画領域25の各々の4つの縁は、x方向(シフト方向)またはy方向(スキャン方向)と平行である。x方向を行方向とし、y方向を列方向としたとき、8個の描画領域25は4行2列の行列状に配置されている。
【0025】
一例として、被描画表面23の一つの頂点をxy座標の原点Oと定義する。
図2において、左上の頂点を原点Oと定義する。描画領域25のそれぞれに、描画領域25に対する相対位置が固定された基準点24が定義されている。基準点24として、例えば描画領域25のそれぞれの4つの頂点のうち原点Oに最も近い頂点を採用する。
図2において、被描画表面23のそれぞれの左上の頂点が基準点24となる。xy座標系において、基準点24の位置を指定することにより、被描画表面23における描画領域25の位置を指定することができる。
【0026】
被描画表面23にピクセル座標系が定義され、被描画表面23上に配置されるピクセルの位置が、ピクセル座標で指定される。被描画表面23上に配置される複数のピクセルのうち、xy座標系の原点Oを一つの頂点とするピクセルをピクセル座標系の原点(0,0)と定義する。ピクセルのピッチは、被描画表面23に形成すべきパターンの解像度によって設定される。xy座標で1つの位置が指定されると、その位置をピクセル座標系の1つのピクセルに対応付けることができる。
【0027】
描画領域25のそれぞれに複数の孤立したドットが配置される。印刷用データ生成装置60(
図1A)が生成した印刷用データが、被描画表面23に配置される複数のドット22の位置を指定する。制御装置50は、印刷用データに基づいて移動機構11及びインクジェットヘッド31を制御することにより、被描画表面23の所定の位置にインクを塗布する。
【0028】
1回のスキャン動作でインクを塗布することができる領域をパス領域21という。複数のパス領域21がx方向に並んで配置されている。
図2では、4個のパス領域21によって被描画表面23のインクを塗布すべき全域がカバーされている。なお、必要なパス領域21の個数は、基板20の大きさ、及びインクジェットヘッド31の大きさによって変動する。
【0029】
次に、
図3A及び
図3Bを参照して、描画領域25の範囲及び描画領域25に形成すべきドットパターンを指定する情報(以下、描画情報という。)について説明する。
【0030】
図3Aは、被描画表面23と、その内部の1つの描画領域25とを示す図である。被描画表面23の左上の頂点がxy座標系の原点Oに相当する。被描画表面23内に描画領域25が配置されている。描画領域25は、周縁部25Aと内奥部25Bとに区分されている。描画領域25の内部であって、かつ内奥部25Bの外部の領域が周縁部25Aである。周縁部25Aの左上の頂点が、描画領域25の基準点24に一致する。内奥部25Bの左上の頂点を内奥部25Bの基準点24Bとする。
【0031】
描画領域25のそれぞれが1つの単位領域28を構成する。単位領域28が、以下に説明する基礎画像データ90(
図3B)を生成する単位となる。被描画表面23における単位領域28の位置を指定する基準となる基準点29として、描画領域25の基準点24を採用する。
【0032】
図3Bは、描画情報に含まれる種々の情報を示す図表である。1つの描画領域25に対して設定される描画情報は、被描画表面23における描画領域25の位置、描画領域25の範囲、及び描画領域25内におけるインク塗布位置(ドット)の分布規則を指定する情報を含む。描画領域25の位置を指定する情報として、描画領域25の基準点24(
図3A)の位置を指定する情報が用いられる。描画領域25の範囲を指定する情報として、描画領域25のx方向の寸法及びy方向の寸法を指定する情報が用いられる。インク塗布位置の分布規則を指定する情報として、周縁部25Aに配置されるドットのx方向及びy方向のピッチ(ドットピッチ)、描画領域25の基準点24に対する内奥部25Bの基準点24Bの相対位置、内奥部25Bのx方向及びy方向の寸法、及び内奥部25Bのx方向及びy方向のドットピッチを指定する情報が用いられる。
【0033】
印刷用データ生成装置60(
図1A)は、描画情報に含まれるこれらの情報をユーザに入力させる。さらに、印刷用データ生成装置60は、ユーザが入力した描画情報のうち、描画領域25の基準点24の位置情報以外の情報に基づいて基礎画像データ90を生成する。基礎画像データ90は、複数のピクセル70で構成されるラスタ形式の画像データであり、複数のピクセル70のそれぞれに、インク塗布の有無(ドットを配置するか否か)を指定する情報が割り当てられる。
【0034】
印刷用データ生成装置60(
図1A)は、描画情報のうち基準点24の位置情報以外の情報が同一である複数の描画領域25に対して、共通の1つの基礎画像データ90を生成する。
【0035】
図4A及び
図4Bは、それぞれ2種類の基礎画像データ90A、90Bを構成するピクセル70をピクセル座標系の二次元平面上に示す図である。基礎画像データ90A、90Bは、それぞれ対応する単位領域28(
図3A)に配置される複数のドット71の位置を指定する。
図4A及び
図4Bにおいて、ドット71が配置されるピクセル70を黒く塗り潰している。ドット71を配置するピクセル70を、単にドット71という場合がある。また、
図4A及び
図4Bにおいて、周縁部25Aにハッチングを付している。
【0036】
周縁部25A及び内奥部25Bに、それぞれ複数のドット71がx方向及びy方向に等ピッチで規則的に配置されている。
図4Aに示した例では、内奥部25Bに配置されているドット71のピッチが、周縁部25Aに配置されているドット71のピッチより広い。
図4Bに示した例では、その逆に、内奥部25Bに配置されているドット71のピッチが、周縁部25Aに配置されているドット71のピッチより狭い。なお、
図4A、
図4Bに示したドットの配置以外の分布規則で複数のドット71を配置してもよい。例えば、単位領域28の全域に均一に複数のドット71を配置してもよい。
【0037】
図5は、印刷用データ95に含まれる情報を模式的に示す図である。印刷用データ95は、基礎画像データ90A、90B(
図4A、
図4B)、及び複数の単位領域28のそれぞれを定義する情報を含む。単位領域28のそれぞれを定義する情報は、被描画表面23における単位領域28の位置を指定する情報(以下、位置情報という。)を含む。単位領域28の位置は、基準点29の位置で指定される。基準点29の位置は、例えば、被描画表面23上に定義されるピクセル座標で指定される。
【0038】
単位領域28を定義する情報は、さらに、複数の単位領域28のそれぞれを、基礎画像データ90A、90Bのいずれか一方に関連付ける情報(以下、関連付け情報という。)を含む。単位領域28を基礎画像データに関連付けるとは、複数の単位領域28のそれぞれを指定する情報から、複数の基礎画像データのうち1つの基礎画像データにアクセスすることができるようにすることを意味する。例えば、関連付け情報として、複数の基礎画像データのうち1つを特定する識別情報、または基礎画像データが格納されているアドレスを指すポインタ等を採用することができる。
図5において、単位領域28と基礎画像データ90A、90Bとの関連付けを、基礎画像データ90A、90Bのいずれかから単位領域28に向かう矢印91で表している。複数の単位領域28のそれぞれに配置する複数のドットの位置が、当該単位領域28に関連付けられた基礎画像データ90Aまたは90Bによって指定される。
【0039】
基礎画像データ90Aが関連付けられている単位領域28内に、基礎画像データ90Aで指定されるドットパターンを形成し、基礎画像データ90Bが関連付けられている単位領域28内に、基礎画像データ90Bで指定されるドットパターンを形成するように、制御装置50(
図1A)が移動機構11及びインクジェットヘッド31を制御する。
【0040】
次に、上記実施例の優れた効果について説明する。
通常は、印刷用データとして、被描画表面23(
図2)の全域に対して生成したラスタ形式の画像データが用いられる。本実施例では、8個の単位領域28のうちドットパターンが同一の複数の単位領域28に対して1つの基礎画像データ90(
図3B)を生成している。基礎画像データ90でドットの位置を指定する対象となる単位領域28の面積は、被描画表面23の全域の面積より小さい。このため、基礎画像データ90のデータ容量は、被描画表面23の全域に対して生成したラスタ形式の画像データのデータ容量より少ない。また、実施例による印刷用データ95(
図5)に含まれる複数の基礎画像データ90A、90Bの合計のデータ容量も、被描画表面23の全域に対して生成したラスタ形式の画像データのデータ容量より少ない。
【0041】
印刷用データ95(
図5)に含まれる単位領域28の位置を指定する情報、及び単位領域28を複数の基礎画像データ90A、90Bのいずれかに関連付ける情報のデータ容量は、基礎画像データ90A、90Bのデータ容量に比べて十分少ない。このため、上記実施例による印刷用データ生成装置60(
図1A)で印刷用データを生成することにより、印刷用データのデータ容量を削減することができる。
【0042】
さらに、上記実施例では、ドットパターンが同一の複数の単位領域28に対して、1つの共通の基礎画像データ90を生成するため、全ての単位領域28のそれぞれに対して画像データを生成して印刷用データとする場合と比べて、印刷用データの生成時間を短縮することができる。
【0043】
次に、
図6を参照して、他の優れた効果について説明する。
図6は、被描画表面23内の複数の単位領域28の配置の一例を示す図である。
図5に示した例では、8個の単位領域28が4行2列の行列状に配置されている。これに対して
図6に示した例では、1列目の1行目及び2行目の位置に単位領域28が配置されていない。
【0044】
左から1番目及び2番目のパス領域21には、2つの単位領域28が配置されており、3番目及び4番目のパス領域21には、4つの単位領域28が配置されている。
図6において、基板20に対するインクジェットヘッド31の移動の軌跡を矢印付き折れ線で示す。
【0045】
制御装置50(
図1A)は、基準点29の位置及び基礎画像データ90A、90Bから、パス領域21ごとに、y方向に関して単位領域28が配置されている範囲を求める。スキャン動作において、単位領域28が配置されていない範囲は、インクジェットヘッド31によるスキャンを行わない。スキャン動作において、被描画表面23のy方向の全範囲をスキャンする場合と比べて、インクジェットヘッド31の移動距離が短くなる。これにより、インク塗布時間を短くすることが可能になる。
【0046】
次に、
図7を参照して、他の優れた効果について説明する。
図7は、被描画表面23内の複数の単位領域28の配置の他の例を示す図である。
図7に示した例では、1列目の2行目の位置に単位領域28が配置されていない。スキャン動作において、y方向に関して単位領域28が配置されてない範囲をインクジェットヘッド31が通過するときには、インクジェットヘッド31の移動速度を速める。
図7において、移動速度を速めてインクジェットヘッド31を移動させる範囲を、インクジェットヘッド31の軌跡を示す矢印付き折れ線より太い矢印で示している。
【0047】
パス領域21の一部分においてインクジェットヘッド31の移動速度を速めることにより、インク塗布時間を短くすることが可能になる。
【0048】
次に、上記実施例の変形例について説明する。
上記実施例では、
図5に示すように2つの基礎画像データ90A、90Bを生成しているが、複数の単位領域28のドットパターンが3種類以上に分類される場合には、基礎画像データ90を、ドットパターンの種類の数に応じて3つ以上生成すればよい。
【0049】
次に、
図8A~
図9を参照して、他の実施例について説明する。以下、
図1A~
図5に示した実施例と共通の構成については説明を省略する。
【0050】
図8Aは、本実施例による印刷用データ生成装置60(
図1A)が生成する印刷用データで指定される被描画表面23内の複数の描画領域25及び単位領域28の位置関係を示す図である。8個の描画領域25が4行2列の行列状に配置されている。
図8Aにおいて、描画領域25にハッチングを付している。また、ドットパターンが同一の描画領域25に同一のハッチングを付している。1行目及び2行目の単位領域28のドットパターンが同一であり、3行目及び4行目の単位領域28のドットパターンが同一である。1行目の単位領域28と3行目の単位領域28とは、ドットパターンが異なっている。
【0051】
図1A~
図5に示した実施例では、1つの描画領域25が1つの単位領域28(
図5)を構成している。これに対して本実施例では、x方向に並ぶ2つの描画領域25が1つの単位領域28を構成しており、合計4つの単位領域28がy方向に並んで配置されている。単位領域28の基準点29は、
図8Aにおいて左側の描画領域25の基準点24に一致する。
【0052】
1つの単位領域28に関連付けられる基礎画像データ90(
図3B)は、単位領域28を構成する2つの描画領域25の描画情報に基づいて生成する。
図8Aにおいて右側の描画領域25に配置するドットの、単位領域28内における位置は、左側の描画領域25の基準点24に対する右側の描画領域25の基準点24の相対位置を考慮して決定することができる。
【0053】
図8Bは、単位領域28と基礎画像データ90C、90Dとの関連付けを示す図である。1行目及び2行目の単位領域28に、基礎画像データ90Cが関連付けられており、3行目及び4行目の単位領域28に、基礎画像データ90Dが関連付けられている。
【0054】
図9は、本実施例によるインク塗布装置でドットパターンを形成するときの基板20に対するインクジェットヘッド31の移動の軌跡を示す図である。
図9において、インクジェットヘッド31の移動の軌跡を矢印付き折れ線で示す。インクを塗布すべき領域が、3つのパス領域21でカバーされる。中央のパス領域21は、左側の列の描画領域25の一部分と、右側の描画領域25の一部分とを含んでいる。
【0055】
次に、本実施例の優れた効果について説明する。
本実施例においても、
図1A~
図5に示した実施例と同様に、複数の単位領域28で1つの基礎画像データ90が供用されるため、印刷用データのデータ容量を削減することができる。
【0056】
さらに、
図5に示した印刷用データ95を用いてインクの塗布を行う場合と比べて、本実施例のより優れた効果について、
図10を参照して説明する。
【0057】
図10は、
図5に示した印刷用データ95を用いてインク塗布を行う場合のインクジェットヘッド31の移動の軌跡を示す図である。1つの描画領域25が1つの単位領域28を構成している。単位領域28ごとに基準点29が設定されている。単位領域28内のインク塗布位置は、基準点29に対する相対位置で指定されている。
【0058】
従って、制御装置50(
図1A)は、1列目の単位領域28にインクを塗布するときと、2列目の単位領域28にインクを塗布するときとでは、異なる基準点29に基づいてインク塗布位置を決定する。このため、1列目の単位領域28と2列目の単位領域28とに、1回のスキャン動作でインクを同時に塗布することが困難である。
【0059】
左から2番目のパス領域21に対してスキャン動作を行う際に、1列目の単位領域28の一部分にインクを塗布するため、基準点29を異にする2列目の単位領域28に同時にインクを塗布することができない。2列目の単位領域28にインクを塗布するためには、3回目及び4回目のスキャン動作を行わなければならない。このため、合計で4回のスキャン動作を行わなければならない。
【0060】
これに対して本実施例では、
図9に示すように、x方向に並ぶ2つの描画領域25をまとめて1つの単位領域28にしているため、x方向に並ぶ2つの描画領域25に跨る領域に対して1つの基準点29が対応付けられる。制御装置50は、この1つの基準点と1つの基礎画像データ90とに基づいてインクジェットヘッド31を制御することにより、x方向に並ぶ2つの描画領域25に跨る領域に対して1回のスキャン動作でインクを塗布することができる。このため、3回のスキャン動作で全ての描画領域25にインクを塗布することができる。
【0061】
本実施例では、
図10に示した場合と比べて、スキャン動作を行う回数を少なくすることが可能になる。その結果、インク塗布時間を短縮することが可能になる。
【0062】
次に、
図8A~
図9に示した実施例の変形例について説明する
図8Aに示した例では、x方向に並ぶ描画領域25の個数が2個である。x方向に並ぶ描画領域25の個数が3個以上の場合には、x方向に並ぶ3個以上の描画領域25をまとめて1つの単位領域28にすればよい。また、x方向に並ぶ描画領域25の個数が4個以上の場合、x方向に並ぶ全ての描画領域25をまとめて1つの単位領域28にしてもよいし、一部の複数の描画領域25をまとめて1つの単位領域28にしてもよい。
【0063】
印刷用データ生成装置60(
図1A)は、1つの単位領域28に含める複数の描画領域25をユーザに指定させるようにするとよい。例えば、描画領域25ごとに設定される描画情報(
図3B)に、複数の単位領域28のうち当該描画領域25を含める単位領域28を指定する情報を含めるとよい。
【0064】
各実施例は例示であり、異なる実施例で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。複数の実施例の同様の構成による同様の作用効果については実施例ごとには逐次言及しない。さらに、本発明は上述の実施例に制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0065】
10 基台
11 移動機構
11X X方向移動機構
11Y Y方向移動機構
12 可動テーブル
13 支持部材
20 基板
21 パス領域
23 被描画表面
24 基準点
24B 内奥部の基準点
25 描画領域
25A 周縁部
25B 内奥部
28 単位領域
29 単位領域の基準点
30 インク吐出ユニット
31 インクジェットヘッド
32 ノズル
33 硬化用光源
40 撮像装置
50 制御装置
51 記憶部
52 制御部
60 印刷用データ生成装置
70 ピクセル
71 ドット
90、90A、90B、90C、90D 基礎画像データ
91 関連付けを示す矢印
95 印刷用データ