(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】ガイドプレート組立体及びディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体
(51)【国際特許分類】
F16D 65/092 20060101AFI20240528BHJP
B61H 5/00 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
F16D65/092 C
F16D65/092 D
B61H5/00
(21)【出願番号】P 2020123017
(22)【出願日】2020-07-17
【審査請求日】2023-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000000516
【氏名又は名称】曙ブレーキ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 祐一
(72)【発明者】
【氏名】荒井 優子
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-185036(JP,A)
【文献】特開2008-106850(JP,A)
【文献】特開2007-162780(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 49/00-71/04
B61H 1/00-15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制動トルクを受けるガイドプレートと、制動時にディスクロータと接触する摩擦材と、前記摩擦材の裏面に固着された裏板部とを有し、前記ガイドプレートのガイド孔部に揺動自在に支持される少なくとも1つのライニング組立体と、前記ガイド孔部に挿通された前記ライニング組立体を
前記ガイドプレートに対してロータ軸方向に移動可能かつ抜け落ちないように保持
してアッセンブリするための抜け落ち防止機構と、前記裏板部の裏面側に設けられ、ライニングホルダにより前記ディスクロータへ押圧された前記ライニング組立体を揺動可能に支持するための凸部と、を備えたことを特徴とするガイドプレート組立体。
【請求項2】
前記裏板部のプレート嵌合部と前記ガイド孔部とがそれぞれ非円形状に形成されて嵌合することによって、前記ガイド孔部内での前記ライニング組立体の回転が阻止される、ことを特徴とする請求項1に記載のガイドプレート組立体。
【請求項3】
前記プレート嵌合部の外周面及び前記ガイド孔部の内周面には、前記ガイド孔部内での前記ライニング組立体の回転を阻止する回り止め用の平坦面が形成される、ことを特徴とする請求項2に記載のガイドプレート組立体。
【請求項4】
前記ガイドプレートの表面又は裏面と、前記裏板部との間には、前記ライニング組立体を前記ガイドプレートに対して前記ロータ軸方向に沿う何れか一方に付勢するばね部材が配置される、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のガイドプレート組立体。
【請求項5】
前記抜け落ち防止機構は、
前記裏板部の表面側に一体成形されて前記ガイド孔部よりも大きな外径の抜け止めフランジ部と、前記ガイド孔部の開口形状よりも大きい外形状を有して前記裏板部の裏面に取り付けられるロックプレート
とを有する、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のガイドプレート組立体。
【請求項6】
前記裏板部に圧入されることで前記ロックプレートを前記裏板部の裏面に固定するジョイント部材からなる前記凸部を有する、ことを特徴とする請求項5に記載のガイドプレート組立体。
【請求項7】
前記ロックプレートが、リベットにより前記裏板部の裏面に固定される、ことを特徴とする請求項5に記載のガイドプレート組立体。
【請求項8】
前記ロックプレートが、ブラインドリベットにより前記裏板部の裏面に固定される、ことを特徴とする請求項5に記載のガイドプレート組立体。
【請求項9】
前記裏板部を貫通した先端のハトメにより前記ロックプレートを前記裏板部の裏面に固定するジョイント部材からなる前記凸部を有する、ことを特徴とする請求項5に記載のガイドプレート組立体。
【請求項10】
前記抜け落ち防止機構は、前記裏板部の裏面側に一体成形されて前記ガイド孔部よりも大きな外径の抜け止めフランジ部と、前記裏板部のプレート嵌合部の外周面に形成された環状溝に装着されるスナップリングとを有する、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のガイドプレート組立体。
【請求項11】
前記ガイドプレートの裏面側には、減衰層が設けられる、ことを特徴とする請求項1~
10の何れか1項に記載のガイドプレート組立体。
【請求項12】
請求項1~
11の何れか1項に記載のガイドプレート組立体と、前記ガイドプレートの周縁部分に嵌合して前記ガイドプレート組立体を着脱自在に保持する溝部が設けられ、表面で前記凸部を揺動可能に支持する前記ライニングホルダと、を備えたことを特徴とするディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体。
【請求項13】
請求項1~
11の何れか1項に記載のガイドプレート組立体と、前記ガイドプレートの周縁部分に嵌合して前記ガイドプレート組立体を着脱自在に保持する溝部が設けられ、表面で前記凸部を揺動可能に支持するトルク受けプレートと、前記トルク受けプレートの裏面に設けられ、蟻溝状の固定溝が設けられた前記ライニングホルダへ、溝端から挿入されるアンカープレートと、を備えたことを特徴とするディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体。
【請求項14】
前記裏板部のプレート嵌合部が前記ガイド孔部に挿入装着され、前記ディスクロータと前記摩擦材との接触時に作用する前記制動トルクが、前記プレート嵌合部から前記ガイドプレートに伝達され、更に前記ガイドプレートのアンカーピン係合部からアンカーピンにより前記ライニングホルダのアンカーピン嵌合部に伝達される、ことを特徴とする請求項
12に記載のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体。
【請求項15】
前記裏板部のプレート嵌合部が前記ガイド孔部に挿入装着され、前記ディスクロータと前記摩擦材との接触時に作用する前記制動トルクが、前記プレート嵌合部から前記ガイドプレートに伝達され、更に前記ガイドプレートのアンカーピン係合部からアンカーピンにより前記トルク受けプレートのアンカーピン嵌合部に伝達され、更に前記トルク受けプレートの前記アンカープレートからアンカープレート固定部材により前記ライニングホルダの固定部に伝達される、ことを特徴とする請求項
13に記載のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体。
【請求項16】
前記アンカーピン係合部が、半円形状に形成されて前記制動トルクを受ける、ことを特徴とする請求項
14又は15に記載のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体。
【請求項17】
複数の前記アンカーピン係合部のうちで、ブレーキキャリパに取り付けられた際に鉛直方向下側に位置する前記アンカーピン係合部が、円形状に形成されて前記制動トルクを受ける、ことを特徴とする請求項
14又は15に記載のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体。
【請求項18】
前記ライニングホルダの前記表面側には、前記凸部と対向する減衰層が設けられる、ことを特徴とする請求項
12に記載のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体。
【請求項19】
前記トルク受けプレートの前記表面側には、前記凸部と対向する減衰層が設けられる、
ことを特徴とする請求項
13に記載のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体。
【請求項20】
前記ライニングホルダの前記表面
側には、前記凸部と対向する減衰層が設けられ、前記減衰層には、円形状に形成された前記アンカーピン
嵌合部を貫通した前記アンカーピンに貫通されるアンカーピン係合穴が形成される、ことを特徴とする請求
項14に記載のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体。
【請求項21】
前記トルク受けプレートの前記表面側には、前記凸部と対向する減衰層が設けられ、前記減衰層には、円形状に形成された前記アンカーピン嵌合部を貫通した前記アンカーピンに貫通されるアンカーピン係合穴が形成される、ことを特徴とする請求項15に記載のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体。
【請求項22】
前記減衰層は、前記ライニングホル
ダに対して締結部材によって固定される、ことを特徴とする請求
項18に記載のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体。
【請求項23】
前記減衰層は、前記トルク受けプレートに対して締結部材によって固定される、ことを特徴とする請求項19に記載のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体。
【請求項24】
前記減衰層は、前記ライニングホル
ダに対して接着剤によって固定される、ことを特徴とする請求
項18に記載のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体。
【請求項25】
前記減衰層は、前記トルク受けプレートに対して接着剤によって固定される、ことを特徴とする請求項19に記載のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイドプレート組立体及びディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両用のディスクブレーキ装置としては、車軸に固定されるディスクロータと、このディスクロータに対峙して配置されるディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体と、ディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体をディスクロータに向かって進退駆動するアクチュエータを内蔵して車体フレームに固定されるブレーキキャリパとを備えるものが使用されている。
【0003】
このようなディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体には、ブレーキキャリパに取付けられるライニングホルダと、ライニングホルダに取付けられてディスクロータ側の面にライニング要素(ライニング組立体)を組み付けたライニングキャリアプレート(ガイドプレート)とを有するブレーキライニング(ガイドプレート組立体)を備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上記ブレーキライニングにおいて、ライニングキャリアプレートに配置されるライニング要素は、摩擦ライニング(摩擦材)を有し、摩擦ライニングがキャリア要素(裏板部)に取り付けられている。これらライニング要素は、キャリア要素が個々にピン等でライニングキャリアプレートに取付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記ブレーキライニングは、ライニング要素が組み付けられたライニングキャリアプレートが制動時の押し付け力と制動トルクそれぞれの伝達部材とされる。そこで、ライニングキャリアプレートには十分な強度を持たせる必要があり、ライニングキャリアプレートの質量が大きくなる要因となっていた。
また、摩擦ライニングが焼結等により取り付けられたキャリア要素(裏板部)をピン等でライニングキャリアプレートに保持する構成のため、ライニングキャリアプレートにライニング要素が組み付けられたブレーキライニングは、ブレーキライニング全体の厚みが厚くなっていた。
【0007】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、軽量で小型のガイドプレート組立体及びディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 制動トルクを受けるガイドプレートと、制動時にディスクロータと接触する摩擦材と、前記摩擦材の裏面に固着された裏板部とを有し、前記ガイドプレートのガイド孔部に揺動自在に支持される少なくとも1つのライニング組立体と、前記ガイド孔部に挿通された前記ライニング組立体をロータ軸方向に移動可能かつ抜け落ちないように保持するための抜け落ち防止機構と、前記裏板部の裏面側に設けられ、ライニングホルダにより前記ディスクロータへ押圧された前記ライニング組立体を揺動可能に支持するための凸部と、を備えたことを特徴とするガイドプレート組立体。
【0009】
上記(1)の構成のガイドプレート組立体によれば、ガイドプレートのガイド孔部に揺動自在に支持されたライニング組立体は、裏板部の裏面側に設けられた凸部を介して、ライニングホルダによりディスクロータへ押圧される。即ち、ライニングホルダによる制動時の押し付け力は、ライニング組立体により直接、ディスクロータに伝達される。そこで、ガイドプレートには、制動時の押し付け力が伝達されず、制動トルクのみが伝達される。従って、ガイドプレートには、制動時の押し付け力を支持できる大きな強度を持たせる必要がなく、ガイドプレートを軽量化することができる。
また、ライニング組立体は、抜け落ち防止機構により、ロータ軸方向に移動可能かつ抜け落ちないようにガイドプレートに保持される。そこで、本構成のガイドプレート組立体は、複数のライニング組立体をガイドプレートにアッセンブリすることができる。従って、ガイドプレート組立体のハンドリングが容易となりメンテナンス性が向上する。
【0010】
(2) 前記裏板部のプレート嵌合部と前記ガイド孔部とがそれぞれ非円形状に形成されて嵌合することによって、前記ガイド孔部内での前記ライニング組立体の回転が阻止される、ことを特徴とする上記(1)に記載のガイドプレート組立体。
【0011】
上記(2)の構成のガイドプレート組立体によれば、ライニング組立体の回転を阻止するための回り止めが、非円形状に形成された裏板部のプレート嵌合部とガイド孔部とが嵌合することで達成される。そこで、部品点数を増加させることなくライニング組立体の回り止めが可能となる。即ち、ライニング組立体が回転すると、ディスクロータに十分な制動力を作用させることができなくなるため、ガイドプレートに対してライニング組立体を回転不能にすることが望ましい。
【0012】
(3) 前記プレート嵌合部の外周面及び前記ガイド孔部の内周面には、前記ガイド孔部内での前記ライニング組立体の回転を阻止する回り止め用の平坦面が形成される、ことを特徴とする上記(2)に記載のガイドプレート組立体。
【0013】
上記(3)の構成のガイドプレート組立体によれば、ライニング組立体の回転を阻止するための回り止めが、プレート嵌合部の外周面及びガイド孔部の内周面に形成された平坦面同士が係合することで達成される。そこで、部品点数を増加させることなくライニング組立体の回り止めを容易に形成することができる。
【0014】
(4) 前記ガイドプレートの表面又は裏面と、前記裏板部との間には、前記ライニング組立体を前記ガイドプレートに対して前記ロータ軸方向に沿う何れか一方に付勢するばね部材が配置される、ことを特徴とする上記(1)~(3)のいずれか1つに記載のガイドプレート組立体。
【0015】
上記(4)の構成のガイドプレート組立体によれば、ばね部材がガイドプレートの表面と裏板部との間に配置される場合、裏板部の凸部と、ライニングホルダ或いはライニングホルダに取付けられたトルク受けプレートとの間に隙間が生じることにより、ばね部材が弾性変形してライニング組立体の厚さ方向の寸法公差を吸収すると共に、ライニング組立体のガタツキが防止される。このため、本構成のガイドプレート組立体では、ディスクロータに対する各ライニング組立体の接触性にばらつきの生じることが防止されると共に、異音の発生が抑制される。従って、各ライニング組立体は、厚さ方向の寸法公差の影響を受けずに、安定した制動特性を維持することができる。
また、ばね部材がガイドプレートの裏面と裏板部との間に配置される場合、ばね部材の付勢力により裏板部の凸部がライニングホルダ或いはトルク受けプレートに押し付けられた状態となり、ブレーキ時の応答性が向上する。
【0016】
(5) 前記抜け落ち防止機構は、前記ガイド孔部の開口形状よりも大きい外形状を有して前記裏板部の裏面に取り付けられるロックプレートを有する、ことを特徴とする上記(1)~(4)のいずれか1つに記載のガイドプレート組立体。
【0017】
上記(5)の構成のガイドプレート組立体によれば、ガイド孔部よりも大きな外径の抜け止めフランジ部を裏板部の表面側に一体形成し、ロックプレートを裏板部の裏面に取り付けることで、ガイド孔部に挿通されたライニング組立体をロータ軸方向に移動可能かつ抜け落ちないように保持することができる。従って、抜け落ち防止機構を容易に構成することができる。
【0018】
(6) 前記裏板部に圧入されることで前記ロックプレートを前記裏板部の裏面に固定するジョイント部材からなる前記凸部を有する、ことを特徴とする上記(5)に記載のガイドプレート組立体。
【0019】
上記(6)の構成のガイドプレート組立体によれば、裏板部の裏面側に設けられる凸部が、ロックプレートを裏板部の裏面に固定するジョイント部材により構成される。そこで、ジョイント部材を裏板部の裏面側に圧入してロックプレートを固定することで、ガイド孔部に挿通されたライニング組立体を抜け落ちないように保持すると共に、裏板部の裏面側に凸部を容易に構成することができる。
【0020】
(7) 前記ロックプレートが、リベットにより前記裏板部の裏面に固定される、ことを特徴とする上記(5)に記載のガイドプレート組立体。
【0021】
上記(7)の構成のガイドプレート組立体によれば、安価なリベットによりロックプレートを裏板部の裏面に容易に固定することができる。
【0022】
(8) 前記ロックプレートが、ブラインドリベットにより前記裏板部の裏面に固定される、ことを特徴とする上記(5)に記載のガイドプレート組立体。
【0023】
上記(8)の構成のガイドプレート組立体によれば、ブラインドリベットによりロックプレートを裏板部の裏面に容易に固定することができる。ブラインドリベットによりロックプレートが固定されたガイドプレート組立体は、リベットを固定するためのリベット用凹部を摩擦材に設ける必要がなく、ディスクロータに対する摩擦材の接触面積が低下することはない。
【0024】
(9) 前記裏板部を貫通した先端のハトメにより前記ロックプレートを前記裏板部の裏面に固定するジョイント部材からなる前記凸部を有する、ことを特徴とする上記(5)に記載のガイドプレート組立体。
【0025】
上記(9)の構成のガイドプレート組立体によれば、先端にハトメを有するジョイント部材によりロックプレートを裏板部の裏面に容易に固定することで、ガイド孔部に挿通されたライニング組立体を抜け落ちないように保持すると共に、裏板部の裏面側に凸部を容易に構成することができる。
【0026】
(10) 前記ガイドプレートの裏面側には、減衰層が設けられる、ことを特徴とする上記(1)~(9)の何れか1つに記載のガイドプレート組立体。
【0027】
上記(10)の構成のガイドプレート組立体によれば、ライニングホルダに取付けられた際、ライニング組立体とライニングホルダとの間を伝搬する振動が、減衰層により減衰される。減衰層は、ライニングホルダと裏板部の凸部との接触によるノイズの低減に寄与する。これにより、制動過程時に生じる振動が減衰され、スキール騒音(所謂ブレーキ鳴き)が抑制される。また、ガイドプレート組立体に減衰層を設けることにより、手扱いがよくなる。
【0028】
(11) 上記(1)~(10)の何れか1つに記載のガイドプレート組立体と、前記ガイドプレートの周縁部分に嵌合して前記ガイドプレート組立体を着脱自在に保持する溝部が設けられ、表面で前記凸部を揺動可能に支持する前記ライニングホルダと、を備えたことを特徴とするディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体。
【0029】
上記(11)の構成のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体によれば、複数のライニング組立体がガイドプレートにアッセンブリされたガイドプレート組立体は、ライニングホルダに着脱自在に保持される。そこで、本構成のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体は、ガイドプレート組立体にアッセンブリされた複数のライニング組立体の交換が容易となりメンテナンス性が向上する。
【0030】
(12) 上記(1)~(10)の何れか1つに記載のガイドプレート組立体と、前記ガイドプレートの周縁部分に嵌合して前記ガイドプレート組立体を着脱自在に保持する溝部が設けられ、表面で前記凸部を揺動可能に支持するトルク受けプレートと、前記トルク受けプレートの裏面に設けられ、蟻溝状の固定溝が設けられた前記ライニングホルダへ、溝端から挿入されるアンカープレートと、を備えたことを特徴とするディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体。
【0031】
上記(12)の構成のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体によれば、複数のライニング組立体がガイドプレートにアッセンブリされたガイドプレート組立体は、アンカープレートを有するトルク受けプレートに着脱自在に保持される。そこで、本構成のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体は、ライニングホルダの蟻溝状の固定溝にトルク受けプレートのアンカープレートを挿入することで、ガイドプレートの形状が異なる複数種のガイドプレート組立体をライニングホルダに着脱自在に取付けることができる。
【0032】
(13) 前記裏板部のプレート嵌合部が前記ガイド孔部に挿入装着され、前記ディスクロータと前記摩擦材との接触時に作用する前記制動トルクが、前記プレート嵌合部から前記ガイドプレートに伝達され、更に前記ガイドプレートのアンカーピン係合部からアンカーピンにより前記ライニングホルダのアンカーピン嵌合部に伝達される、ことを特徴とする上記(11)に記載のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体。
【0033】
上記(13)の構成のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体によれば、アンカーピンを介してライニングホルダに固定されたガイドプレート組立体は、アンカーピンを取り外すだけで交換可能となるため、交換部品の軽量化が可能となりメンテナンス性が向上する。
【0034】
(14) 前記裏板部のプレート嵌合部が前記ガイド孔部に挿入装着され、前記ディスクロータと前記摩擦材との接触時に作用する前記制動トルクが、前記プレート嵌合部から前記ガイドプレートに伝達され、更に前記ガイドプレートのアンカーピン係合部からアンカーピンにより前記トルク受けプレートのアンカーピン嵌合部に伝達され、更に前記トルク受けプレートの前記アンカープレートからアンカープレート固定部材により前記ライニングホルダの固定部に伝達される、ことを特徴とする上記(12)に記載のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体。
【0035】
上記(14)の構成のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体によれば、ライニングホルダの固定部にアンカープレート固定部材によりアンカープレートが固定されたトルク受けプレートに対して、アンカーピンを介して固定されたガイドプレート組立体は、アンカーピンを取り外すだけで交換可能となるため、交換部品の軽量化が可能となりメンテナンス性が向上する。
【0036】
(15) 前記アンカーピン係合部が、半円形状に形成されて前記制動トルクを受ける、ことを特徴とする上記(13)又は(14)に記載のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体。
【0037】
上記(15)の構成のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体によれば、制動方向に対向して制動トルクを受けるアンカーピン係合部が半円形状に形成されることで、アンカーピン係合部を円形状に形成した場合よりもガイドプレートが大型化するのを抑制できる。
【0038】
(16) 複数の前記アンカーピン係合部のうちで、ブレーキキャリパに取り付けられた際に鉛直方向下側に位置する前記アンカーピン係合部が、円形状に形成されて前記制動トルクを受ける、ことを特徴とする上記(13)又は(14)に記載のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体。
【0039】
上記(16)の構成のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体によれば、アンカーピン係合部が円形状に形成されることで、アンカーピン係合部はそれぞれの制動方向に対向して制動トルクを受けることができる。
また、ブレーキキャリパに取り付けられた際に鉛直方向上側に円形状のアンカーピン係合部が位置すると、ガイドプレート組立体を着脱する際に鉛直方向上側に配置されたアンカーピンも着脱しなければならず、作業性がよくない。これに対し、ブレーキキャリパに取り付けられた際に鉛直方向下側に円形状のアンカーピン係合部が位置し、鉛直方向上側に半円形状のアンカーピン係合部が位置する場合には、鉛直方向下側に配置されたアンカーピンを着脱するだけでよく、着脱作業が容易となる。
【0040】
(17) 前記ライニングホルダの前記表面側には、前記凸部と対向する減衰層が設けられる、ことを特徴とする上記(11)に記載のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体。
【0041】
上記(17)の構成のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体によれば、ガイドプレート組立体がライニングホルダに取付けられた際、ライニング組立体とライニングホルダとの間を伝搬する振動が、減衰層により減衰される。減衰層は、ライニングホルダと裏板部の凸部との接触によるノイズの低減に寄与する。これにより、制動過程時に生じる振動が減衰され、スキール騒音(所謂ブレーキ鳴き)が抑制される。
【0042】
(18) 前記トルク受けプレートの前記表面側には、前記凸部と対向する減衰層が設けられる、ことを特徴とする上記(12)に記載のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体。
【0043】
上記(18)の構成のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体によれば、ガイドプレート組立体がトルク受けプレートに取付けられた際、ライニング組立体とトルク受けプレートとの間を伝搬する振動が、減衰層により減衰される。減衰層は、トルク受けプレートと裏板部の凸部との接触によるノイズの低減に寄与する。これにより、制動過程時に生じる振動が減衰され、スキール騒音(所謂ブレーキ鳴き)が抑制される。
【0044】
(19) 前記ライニングホルダの前記表面側又は前記トルク受けプレートの前記表面側には、前記凸部と対向する減衰層が設けられ、前記減衰層には、円形状に形成された前記アンカーピン係合部を貫通した前記アンカーピンに貫通されるアンカーピン係合穴が形成される、ことを特徴とする上記(13)又は(14)に記載のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体。
【0045】
上記(19)の構成のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体によれば、減衰層のアンカーピン係合穴がアンカーピンに貫通されることで、減衰層はライニングホルダ又はトルク受けプレートに固定される。
【0046】
(20) 前記減衰層は、前記ライニングホルダ又は前記トルク受けプレートに対して締結部材によって固定される、ことを特徴とする上記(17)又は(18)に記載のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体。
【0047】
上記(20)の構成のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体によれば、減衰層はライニングホルダ又はトルク受けプレートに締結部材によって固定される。
【0048】
(21) 前記減衰層は、前記ライニングホルダ又は前記トルク受けプレートに対して接着剤によって固定される、ことを特徴とする上記(17)又は(18)に記載のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体。
【0049】
上記(21)の構成のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体によれば、減衰層はライニングホルダ又はトルク受けプレートに接着剤によって固定される。
【発明の効果】
【0050】
本発明に係るガイドプレート組立体及びディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体によれば、軽量で小型のガイドプレート組立体及びディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体を実現できる。
【0051】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るガイドプレート組立体を表側から見た斜視図である。
【
図2】
図1に示したガイドプレート組立体を裏側から見た斜視図である。
【
図3】(a)は
図1に示したライニング組立体の断面図であり、(b)は
図1に示したライニング組立体の分解斜視図である。
【
図4】
図1に示したガイドプレートに取り付けられるライニング組立体を説明するための要部分解斜視図である。
【
図5】(a)及び(b)は
図1に示したライニング組立体の変形例を説明するための要部断面図及び要部分解斜視図である。
【
図6】(a)~(c)は
図1に示したライニング組立体の他の変形例を説明するための正面図、A-A断面図及び分解斜視図であり、(d)は(c)に示したジョイント部材を説明する斜視図である。
【
図7】(a)及び(b)は
図1に示したライニング組立体の他の変形例を説明するための正面図及びB-B断面図であり、(c)は
図1に示したライニング組立体の別の変形例を説明するための断面図である。
【
図8】(a)及び(b)は
図1に示したライニング組立体の他の変形例を説明するための正面図及びC-C断面図である。
【
図9】(a)及び(b)は本発明の第2実施形態に係るトルク受けプレートを表側から見た斜視図及び裏側から見た斜視図である。
【
図10】本第2実施形態に係るトルク受けプレート及び本第1実施形態に係るガイドプレート組立体の斜視図である。
【
図11】(a)は本第2実施形態に係るトルク受けプレートに本第1実施形態に係るガイドプレート組立体が組み付けられたディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体を表側から見た斜視図であり、(b)は(a)のD-D断面図である。
【
図12】
図11に示したディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体がライニングホルダに組み付けられた状態を説明する概略斜視図である。
【
図14】
図1に示した本第1実施形態の変形例に係るガイドプレート組立体を示す斜視図である。
【
図15】(a)及び(b)は本発明の第3実施形態に係るライニングホルダを表側から見た斜視図及び裏側から見た斜視図である。
【
図16】本第3実施形態に係るライニングホルダに本第1実施に係るガイドプレート組立体が組み付けられたディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体を表側から見た斜視図である。
【
図17】本発明の第4実施形態に係るガイドプレート組立体を裏側から見た斜視図である。
【
図18】
図17に示したガイドプレート組立体の分解斜視図である。
【
図19】(a)は本発明の第5実施形態に係るトルク受けプレートを表側から見た斜視図であり、(b)は本第5実施形態の変形例に係るトルク受けプレートを表側から見た斜視図である。
【
図20】(a)は本発明の第6実施形態に係るライニングホルダを表側から見た斜視図であり、(b)は本第6実施形態の変形例に係るライニングホルダを表側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照して説明する。
本実施形態に係るガイドプレート組立体を備えたディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体(以下、単に「摩擦パッド組立て体」と言う)は、鉄道車両用のディスクブレーキ装置に使用されるもので、車軸上のディスクロータに対峙して配置され、車体フレームに固定されたブレーキキャリパに内蔵のアクチュエータによりディスクロータに向かって進退駆動される。勿論、本発明のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体は、鉄道車両用のディスクブレーキ装置に限定されるものではない。
【0054】
図1及び
図2は、本発明の第1実施形態に係るガイドプレート組立体1を表側及び裏側から見た斜視図である。
図3の(a)は
図1に示したライニング組立体10の断面図であり、
図3の(b)は
図1に示したライニング組立体10の分解斜視図である。
図4は、
図1に示したガイドプレート3に取り付けられるライニング組立体10を説明するための要部分解斜視図である。
【0055】
本第1実施形態に係るガイドプレート組立体1は、
図1~
図4に示すように、制動トルクを受けるガイドプレート3と、ガイドプレート3のガイド孔部5に揺動自在に支持された少なくとも1つ(本実施形態では20個)のライニング組立体10と、を備えている。
ガイドプレート3は、ガイド孔部5が所定の離間間隔で複数(20孔)形成されており、各ガイド孔部5にライニング組立体10が装着される。ガイドプレート3は、制動時に各ガイド孔部5に装着されたライニング組立体10に作用する制動トルクを受け止めることができる所定の板厚を有した平板材で形成される。
【0056】
図示しないブレーキキャリパに取り付けられた際に鉛直方向上側に位置するガイドプレート3の長手方向上端部には、半円形状に形成されたアンカーピン係合部7が形成されている。また、ブレーキキャリパに取り付けられた際に鉛直方向下側に位置するガイドプレート3の長手方向下端部には、円形状に形成されたアンカーピン係合部9が形成されている。
【0057】
ライニング組立体10は、制動トルクを受けるガイドプレート3に揺動自在に支持されて、後述するライニングホルダ140(301)によりディスクロータへ押圧される。
ライニング組立体10は、
図3に示すように、略円板状に成型された摩擦材11と、この摩擦材11の裏面に固着された裏板部12と、裏板部12の裏面側に設けられ、ライニングホルダ140(301)によりディスクロータへ押圧されたライニング組立体10を揺動可能に支持するための凸部20と、ガイド孔部5に挿通されたライニング組立体10をロータ軸方向Xに移動可能かつ抜け落ちないように保持するための抜け落ち防止機構と、を備えている。
【0058】
摩擦材11は、制動時にディスクロータに押圧される。ライニング組立体10は、プレート嵌合部15がガイド孔部5に嵌合されていることで、ディスクロータに摩擦材11が押圧された時に作用する制動トルクをプレート嵌合部15からガイドプレート3に伝達する。
【0059】
裏板部12には、外周面がガイドプレート3に貫通形成された略円形のガイド孔部5に揺動自在に嵌合するプレート嵌合部15と、裏板部12の表面側に位置してガイド孔部5よりも大きな外径の抜け止めフランジ部13と、が一体形成されている。
プレート嵌合部15の外周面には、
図3の(b)に示すように、平坦面16が形成され、ガイド孔部5の内周面には、
図4に示すように、平坦面6が形成されている。そこで、ガイド孔部5に挿通されたプレート嵌合部15の平坦面16は、ガイド孔部5の平坦面6に係合する。即ち、平坦面16及び平坦面6によって非円形状に形成された裏板部12のプレート嵌合部15とガイド孔部5とが嵌合することで、ガイド孔部5内でのライニング組立体10の回転を阻止するための回り止めが達成される。
なお、プレート嵌合部15は、ガイド孔部5との摺接によるライニング組立体10の揺動動作が円滑になるように、ガイド孔部5側に凸の曲面状に形成されることが望ましい。
【0060】
裏板部12の裏面には、ガイド孔部5の開口形状よりも大きい外形状を有する円形板状のロックプレート17が固定されている。ロックプレート17は、ガイドプレート3のガイド孔部5にプレート嵌合部15が挿通された後、裏板部12の裏面に設けた固定穴14に対して貫通孔17aを貫通したフランジ付ピン状のジョイント部材22の軸部を圧入することで、裏板部12の裏面に固定されている。
ジョイント部材22は、裏板部12の裏面側に突出する頭部が、ライニング組立体10を揺動可能に支持するための凸部20となる。
【0061】
裏板部12の裏面にロックプレート17が固定されることで、ガイドプレート3の表面3a側からガイド孔部5に挿通されたライニング組立体10は、裏板部12の抜け止めフランジ部13とロックプレート17とによって、ガイドプレート3に対してロータ軸方向Xに移動可能かつ抜け落ちないように保持される。即ち、抜け落ち防止機構が、これら抜け止めフランジ部13及びロックプレート17によって構成されている。
【0062】
プレート嵌合部15には、環状のばね部材25が嵌着される。ばね部材25は、円環状の板ばねよりなる。ばね部材25の外径は、ガイド孔部5よりも大きく設定されている。各ライニング組立体10は、
図4に示すように、プレート嵌合部15がガイドプレート3の表面3a側からガイド孔部5に挿入装着される。そこで、プレート嵌合部15に嵌着されたばね部材25は、ガイドプレート3と抜け止めフランジ部13との間に挟まれる。
【0063】
本第1実施形態に係るガイドプレート組立体1は、複数個のライニング組立体10を平面状に敷き並べた形態となる。ガイドプレート組立体1は、ライニング組立体10の抜け止めフランジ部13とガイドプレート3との間に挟まれたばね部材25が、弾性変形してライニング組立体10の厚さ方向の寸法公差を吸収する。このため、ガイドプレート組立体1では、ディスクロータに対する各ライニング組立体10の接触性にばらつきの生じることが防止される。従って、各ライニング組立体10は、厚さ方向の寸法公差の影響を受けずに、安定した制動特性を維持することができる。
【0064】
また、裏板部12の裏面側には、凸部20が設けられている。そこで、ガイドプレート3のガイド孔部5に揺動自在に支持されたライニング組立体10は、裏板部12の裏面側に設けられた凸部20を介して、ライニングホルダ140(301)によりディスクロータへ押圧される。
【0065】
従って、本第1実施形態に係るガイドプレート組立体1によれば、ガイドプレート3のガイド孔部5に揺動自在に支持されたライニング組立体10は、裏板部12の裏面側に設けられた凸部20を介して、ライニングホルダ140(301)によりディスクロータへ押圧される。そして、ライニングホルダ140(301)による制動時の押し付け力は、ライニング組立体10により直接、ディスクロータに伝達される。
そこで、ガイドプレート3には、制動時の押し付け力が伝達されず、制動トルクのみが伝達される。従って、ガイドプレート3には、制動時の押し付け力を支持できる大きな強度を持たせる必要がなく、ガイドプレート3を軽量化することができる。
【0066】
更に、本第1実施形態に係るライニング組立体10は、裏板部12の抜け止めフランジ部13とロックプレート17とからなる抜け落ち防止機構により、ロータ軸方向Xに移動可能かつ抜け落ちないようにガイドプレート3に保持される。
そこで、本第1実施形態のガイドプレート組立体1は、複数のライニング組立体10をガイドプレート3にアッセンブリすることができる。従って、ガイドプレート組立体1のハンドリングが容易となりメンテナンス性が向上する。
【0067】
また、本第1実施形態に係るガイドプレート組立体1では、裏板部12のプレート嵌合部15とガイド孔部5とがそれぞれ非円形状に形成されて嵌合することによって、ガイド孔部5内でのライニング組立体10の回転が阻止される。さらに詳しくは、プレート嵌合部15の外周面及びガイド孔部5の内周面には、ガイド孔部5内でのライニング組立体10の回転を阻止する回り止め用の平坦面16及び平坦面6がそれぞれ形成されている。
そこで、本第1実施形態に係るガイドプレート組立体1によれば、ライニング組立体10の回転を阻止するための回り止めが、プレート嵌合部15の外周面及びガイド孔部5の内周面に形成された平坦面16,6同士が係合することで達成される。そこで、部品点数を増加させることなくライニング組立体10の回り止めを容易に形成することができる。即ち、ライニング組立体10が回転すると、ディスクロータに十分な制動力を作用させることができなくなるため、ガイドプレート3に対してライニング組立体10を回転不能にすることが望ましい。
【0068】
また、本第1実施形態に係るガイドプレート組立体1では、ガイドプレート3の表面3aと、裏板部12の抜け止めフランジ部13との間には、ライニング組立体10をガイドプレート3に対してロータ軸方向Xに沿う何れか一方であるディスクロータ側(
図3の(a)における左側)に付勢するばね部材25が配置されている。
そこで、本第1実施形態に係るガイドプレート組立体1によれば、ばね部材25がガイドプレート3の表面3aと裏板部12との間に配置されるので、後述するライニングホルダ301或いはトルク受けプレート101と裏板部12の凸部20との間に隙間が生じることにより、ばね部材25が弾性変形してライニング組立体10の厚さ方向(ロータ軸方向X)の寸法公差を吸収する。このため、本第1実施形態のガイドプレート組立体1では、ディスクロータに対する各ライニング組立体10の接触性にばらつきの生じることが防止されると共に、異音の発生が抑制される。従って、各ライニング組立体10は、厚さ方向の寸法公差の影響を受けずに、安定した制動特性を維持することができる。
【0069】
また、本第1実施形態に係るガイドプレート組立体1によれば、裏板部12の裏面側に設けられる凸部20が、ロックプレート17を裏板部12の裏面に固定するジョイント部材22により構成される。即ち、ジョイント部材22は、裏板部12の裏面側に突出する頭部が、ライニング組立体10を揺動可能に支持するための凸部20となる。そこで、ジョイント部材22を裏板部12の裏面に設けた固定穴14に圧入してロックプレート17を固定することで、ガイド孔部5に挿通されたライニング組立体10を抜け落ちないように保持すると共に、裏板部12の裏面側に凸部20を容易に構成することができる。
【0070】
図5の(a)及び(b)は、
図1に示したライニング組立体10の変形例を説明するための要部断面図及び要部分解斜視図である。
変形例に係るライニング組立体10は、
図5の(a)及び(b)に示すように、ガイドプレート3の裏面3bと、裏板部12の裏面に固定されたロックプレート17との間に、ライニング組立体10をガイドプレート3に対してロータ軸方向Xに沿う何れか他方であるディスクロータと反対側(
図5の(a)における右側)に付勢するばね部材25を配置することもできる。
このような構成のガイドプレート組立体1によれば、ばね部材25がガイドプレート3の裏面3bと裏板部12との間に配置されるので、ばね部材25の付勢力により裏板部12の凸部20が後述するライニングホルダ301或いはトルク受けプレート101に押し付けられた状態となり、ブレーキ時の応答性が向上する。
【0071】
図6の(a)~(c)は、
図1に示したライニング組立体10の他の変形例を説明するための正面図、A-A断面図及び分解斜視図であり、(d)は(c)に示したジョイント部材32を説明する斜視図である。なお、上記ライニング組立体10と同様の構成部材については、同符号を付して詳細な説明を省略する。
【0072】
他の変形例に係るライニング組立体10Aは、
図6の(a)~(c)に示すように、裏板部12の段付き固定穴14Aを貫通した先端のハトメ33によりロックプレート17を裏板部12の裏面に固定するジョイント部材32からなる凸部20を有する。
ジョイント部材32は、
図6の(d)に示すように、ロックプレート17の貫通孔17a及び裏板部12の段付き固定穴14に軸部を挿通した後、摩擦材11に形成した開口11a側から治具を挿入し、先端のハトメ33を外側に折り曲げて段部に係止させる。そこで、ジョイント部材32は、ロックプレート17を裏板部12の裏面に固定すると共に、裏板部12の裏面側に突出する頭部が、ライニング組立体10Aを揺動可能に支持するための凸部20となる。
【0073】
従って、本構成のライニング組立体10Aによれば、先端にハトメ33を有するジョイント部材32によりロックプレート17を裏板部12の裏面に容易に固定することで、ガイド孔部5に挿通されたライニング組立体10Aを抜け落ちないように保持すると共に、裏板部12の裏面側に凸部20を容易に構成することができる。
【0074】
図7の(a)及び(b)は
図1に示したライニング組立体10の他の変形例を説明するための正面図及びB-B断面図であり、(c)は
図1に示したライニング組立体10の別の変形例を説明するための断面図である。なお、上記ライニング組立体10と同様の構成部材については、同符号を付して詳細な説明を省略する。
【0075】
他の変形例に係るライニング組立体10Bは、
図7の(a)及び(b)に示すように、裏板部12の裏面側に設けられる凸部20が、ジョイント部材43により構成されている。ジョイント部材43は、裏板部12の凹部12aに載置される円板状の基部43aと、基部43aより小径のロックプレート17の貫通孔17aに貫通されるピン状の軸部43bとを有する。ジョイント部材43は、基部43aを裏板部12の凹部12aに載置した後、軸部43bを貫通孔17aに挿通させたロックプレート17を裏板部12の裏面に固定することで、裏板部12の裏面側に固定される。即ち、ジョイント部材43は、裏板部12の裏面側に突出する軸部43bが、ライニング組立体10Bを揺動可能に支持するための凸部20となる。
【0076】
本構成のロックプレート17は、ロックプレート17の固定孔17bと裏板部12の固定穴14とを貫通させたリベット45により裏板部12の裏面に固定される。
そこで、安価なリベット45によりロックプレート17を裏板部12の裏面に容易に固定することができる。但し、摩擦材11には、リベット45を固定するためのリベット用凹部18を設ける必要がある。
【0077】
別の変形例に係るライニング組立体10Cは、
図7の(c)に示すように、裏板部12の裏面側に設けられる凸部20が、上記ライニング組立体10Bと同様に、ジョイント部材43により構成されている。
ライニング組立体10Cのロックプレート17は、ロックプレート17の固定孔17bと裏板部12の固定穴14とを貫通させたブラインドリベット53により裏板部12の裏面に固定される。
【0078】
そこで、ブラインドリベット53によりロックプレート17が固定されたライニング組立体10Cは、上記ライニング組立体10Bのようにリベット45を固定するためのリベット用凹部18を摩擦材11に設ける必要がなく、ディスクロータに対する摩擦材11の接触面積が低下することはない。
【0079】
図8の(a)及び(b)は、
図1に示したライニング組立体10の他の変形例を説明するための正面図及びC-C断面図である。なお、上記ライニング組立体10と同様の構成部材については、同符号を付して詳細な説明を省略する。
他の変形例に係るライニング組立体10Dは、
図8の(a)及び(b)に示すように、ガイド孔部5を挿通可能な外径を有する略円板状に成型された摩擦材11と、この摩擦材11の裏面に固着された裏板部12Aと、裏板部12Aの裏面側に設けられ、ライニングホルダ140(301)によりディスクロータへ押圧されたライニング組立体10Dを揺動可能に支持するための凸部20と、ガイド孔部5に挿通されたライニング組立体10Dをロータ軸方向Xに移動可能かつ抜け落ちないように保持するための抜け落ち防止機構と、を備えている。
【0080】
凸部20は、裏板部12Aの裏面に設けた固定穴14に圧入されて裏面側に突出するジョイント部材22の頭部により構成されている。ジョイント部材22は、裏板部12Aと別体で構成されることにより、ライニング組立体10Dを揺動可能に支持するための凸部20として、耐摩耗性等に優れた最適な材質を選択することができる。
【0081】
裏板部12Aには、外周面がガイドプレート3に貫通形成された略円形のガイド孔部5に揺動自在に嵌合するプレート嵌合部15と、裏板部12Aの裏面側に位置してガイド孔部5よりも大きな外径の抜け止めフランジ部13と、が一体形成されている。
プレート嵌合部15の外周面には、スナップリング51が装着される環状溝19を形成する。
【0082】
裏板部12Aにおけるプレート嵌合部15の環状溝19には、ガイド孔部5の開口形状よりも大きい外形状を有すると共に、プレート嵌合部15の外径より小さい内形状を有するスナップリング51が装着されている。
裏板部12Aにおけるプレート嵌合部15の環状溝19にスナップリング51が装着されることで、ガイドプレート3の裏面3b側からガイド孔部5に挿通されたライニング組立体10Dは、裏板部12Aの抜け止めフランジ部13とスナップリング51とによって、ガイドプレート3に対してロータ軸方向Xに移動可能かつ抜け落ちないように保持される。即ち、抜け落ち防止機構が、これら抜け止めフランジ部13及びスナップリング51によって構成されている。
【0083】
プレート嵌合部15に嵌着されたばね部材25は、ガイドプレート3とスナップリング51との間に挟まれ、弾性変形してライニング組立体10Dの厚さ方向の寸法公差を吸収する。
【0084】
図9の(a)及び(b)は、本発明の第2実施形態に係るトルク受けプレート101を表側から見た斜視図及び裏側から見た斜視図である。
図10は、本第2実施形態に係るトルク受けプレート101及び本第1実施形態に係るガイドプレート組立体1の斜視図である。
図11の(a)は本第2実施形態に係るトルク受けプレート101に本第1実施形態に係るガイドプレート組立体1が組み付けられたディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体100を表側から見た斜視図であり、
図11の(b)は
図11の(a)のD-D断面図である。
【0085】
本第2実施形態に係るトルク受けプレート101は、
図9の(a)及び(b)に示すように、ガイドプレート3の周縁部分に嵌合してガイドプレート組立体1を着脱自在に保持する複数の溝部105が設けられ、表面101aでライニング組立体10の凸部20を揺動可能に支持する。トルク受けプレート101の裏面101bには、蟻溝状の固定溝141が設けられたライニングホルダ140(
図13参照)へ、溝端から挿入されるアンカープレート120を備えている。
トルク受けプレート101の長手方向両端部には、円形状の穴に形成された一対のアンカーピン嵌合部110が形成されている。
【0086】
図10に示すように、ガイドプレート組立体1は、トルク受けプレート101の長手方向一端側からガイドプレート3の周縁部分が溝部105に嵌合される。
図11の(a),(b)に示すように、ガイドプレート3の裏面3bがトルク受けプレート101の表面101aに対向するように重ね合わされることで、ディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体100が構成される。
【0087】
トルク受けプレート101の溝部105に保持されたガイドプレート3は、
図11の(b)に示すように、トルク受けプレート101の表面101aとの間に、ライニング組立体10を揺動可能とする内部空間Sを画成している。
ガイドプレート組立体1は、トルク受けプレート101の一対のアンカーピン嵌合部110にそれぞれ嵌挿されたアンカーピン130が、ガイドプレート3のアンカーピン係合部9を貫通すると共にアンカーピン係合部7に係合することで、トルク受けプレート101に固定される。
【0088】
図12は、
図11に示したディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体100がライニングホルダ140に組み付けられた状態を説明する概略斜視図である。
図13は、
図12におけるE-E断面図である。
ディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体100は、
図12及び
図13に示すように、キャリパーのライニングホルダ140に取り付けられる。トルク受けプレート101の裏面101bには、アンカープレート120がリベット133によって固定される。ディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体100は、このアンカープレート120が、ライニングホルダ140におけるブレーキパッド取付部143(ライニングホルダ140のディスクロータ側取付面)に形成された蟻溝状の固定溝141に、溝端から挿入されることにより取り付けられる。
【0089】
ディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体100は、トルク受けプレート101の裏面101bが、このライニングホルダ140のブレーキパッド取付部143に密着する。
ガイドプレート3のガイド孔部5に揺動自在に支持されたライニング組立体10は、裏板部12の裏面側に設けられた凸部20を介して、ライニングホルダ140によりディスクロータへ押圧される。そして、ライニングホルダ140による制動時の押し付け力は、ライニング組立体10により直接、ディスクロータに伝達される。そこで、ガイドプレート3には、制動時の押し付け力が伝達されず、制動トルクのみが伝達される。
【0090】
ディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体100によれば、複数のライニング組立体10がガイドプレート3にアッセンブリされたガイドプレート組立体1は、アンカープレート120を有するトルク受けプレート101に着脱自在に保持される。そこで、本構成のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体100は、ライニングホルダ140の蟻溝状の固定溝141にトルク受けプレート101のアンカープレート120を挿入することで、ガイドプレート3の形状が異なる複数種のガイドプレート組立体1をライニングホルダ140に着脱自在に取付けることができる。
【0091】
ディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体100は、裏板部12のプレート嵌合部15がガイドプレート3のガイド孔部5に挿入装着され、ディスクロータと摩擦材11との接触時に作用する制動トルクが、プレート嵌合部15からガイドプレート3に伝達され、更にガイドプレート3のアンカーピン係合部7,9からアンカーピン130によりトルク受けプレート101のアンカーピン嵌合部110に伝達され、更にトルク受けプレート101のアンカープレート120からアンカープレート固定部材145によりライニングホルダ140の固定部であるブレーキパッド取付部143に伝達される。
【0092】
そこで、ライニングホルダ140のブレーキパッド取付部143にアンカープレート固定部材145によりアンカープレート120が固定されたトルク受けプレート101に対して、アンカーピン130を介して固定されたガイドプレート組立体1は、アンカーピン130を取り外すだけで交換可能となるため、交換部品の軽量化が可能となりメンテナンス性が向上する。
【0093】
また、ディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体100によれば、制動方向に対向して制動トルクを受けるガイドプレート3のアンカーピン係合部7が半円形状に形成されることで、円形状に形成したアンカーピン係合部9よりもガイドプレート3が大型化するのを抑制できる。
【0094】
また、ディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体100では、ガイドプレート3における複数のアンカーピン係合部7,9のうちで、ブレーキキャリパに取り付けられた際に鉛直方向下側に位置するアンカーピン係合部9が、円形状に形成されて制動トルクを受ける。
そこで、ディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体100によれば、アンカーピン係合部9が円形状に形成されることで、アンカーピン係合部9はそれぞれの制動方向に対向して制動トルクを受けることができる。
【0095】
また、ブレーキキャリパに取り付けられた際に鉛直方向上側に円形状のアンカーピン係合部9が位置すると、ガイドプレート組立体1を着脱する際に鉛直方向上側に配置されたアンカーピン130も着脱しなければならず、作業性がよくない。これに対し、ブレーキキャリパに取り付けられた際に鉛直方向下側に円形状のアンカーピン係合部9が位置し、鉛直方向上側に半円形状のアンカーピン係合部7が位置する場合には、鉛直方向下側に配置されたアンカーピン130を着脱するだけでよく、着脱作業が容易となる。なお、鉛直方向上側のアンカーピン係合部7を省略し、鉛直方向下側のアンカーピン係合部9のみで制動トルクを受けることもできる。
【0096】
図14は、
図1に示した本第1実施形態の変形例に係るガイドプレート組立体1Aを示す斜視図である。なお、上記ガイドプレート組立体1と同様の構成部材については、同符号を付して詳細な説明を省略する。
ガイドプレート組立体1Aは、
図14に示すように、ガイドプレート3Aの長手方向両端部に形成された一対のアンカーピン係合部7,7がそれぞれ半円形状に形成される。そこで、ガイドプレート組立体1Aは、上記ガイドプレート組立体1よりも小型・軽量化することができる。
【0097】
図15の(a)及び(b)は本発明の第3実施形態に係るライニングホルダ301を表側から見た斜視図及び裏側から見た斜視図である。
図16は、本第3実施形態に係るライニングホルダ301に本第1実施に係るガイドプレート組立体1が組み付けられたディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体200を表側から見た斜視図である。
【0098】
本第3実施形態に係るライニングホルダ301は、
図15の(a)及び(b)に示すように、ガイドプレート3の周縁部分に嵌合してガイドプレート組立体1を着脱自在に保持する複数の溝部305が設けられ、表面301aでライニング組立体10の凸部20を揺動可能に支持する。ライニングホルダ301の裏面301bには、キャリパーに取付けられるブレーキパッド取付部320が設けられている。
ライニングホルダ301の長手方向両端部には、円形状の穴に形成された一対のアンカーピン嵌合部310が形成されている。
【0099】
ガイドプレート組立体1は、ライニングホルダ301の長手方向一端側からガイドプレート3の周縁部分が溝部305に嵌合される。そして、
図16に示すように、ガイドプレート3の裏面3bがライニングホルダ301の表面301aに対向するように重ね合わされることで、ディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体200が構成される。
【0100】
ライニングホルダ301の溝部305に保持されたガイドプレート3は、ライニングホルダ301の表面301aとの間に、ライニング組立体10を揺動可能とする内部空間Sを画成している。
ガイドプレート組立体1は、ライニングホルダ301の一対のアンカーピン嵌合部310にそれぞれ嵌挿されたアンカーピン130が、ガイドプレート3のアンカーピン係合部9を貫通すると共にアンカーピン係合部7に係合することで、ライニングホルダ301トルク受けプレート101に固定される。
【0101】
ガイドプレート3のガイド孔部5に揺動自在に支持されたライニング組立体10は、裏板部12の裏面側に設けられた凸部20を介して、ライニングホルダ301によりディスクロータへ押圧される。そして、ライニングホルダ301による制動時の押し付け力は、ライニング組立体10により直接、ディスクロータに伝達される。そこで、ガイドプレート3には、制動時の押し付け力が伝達されず、制動トルクのみが伝達される。
【0102】
ディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体200によれば、複数のライニング組立体10がガイドプレート3にアッセンブリされたガイドプレート組立体1は、ライニングホルダ301に着脱自在に保持される。そこで、本構成のディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体200は、ガイドプレート組立体1の交換が容易となりメンテナンス性が向上する。
【0103】
ディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体200は、裏板部12のプレート嵌合部15がガイドプレート3のガイド孔部5に挿入装着され、ディスクロータと摩擦材11との接触時に作用する制動トルクが、プレート嵌合部15からガイドプレート3に伝達され、更にガイドプレート3のアンカーピン係合部7,9からアンカーピン130によりライニングホルダ301のアンカーピン嵌合部310に伝達される。
【0104】
そこで、ディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体200によれば、アンカーピン130を介してライニングホルダ301に固定されたガイドプレート組立体1は、アンカーピン130を取り外すだけで交換可能となるため、交換部品の軽量化が可能となりメンテナンス性が向上する。
【0105】
図17は、本発明の第4実施形態に係るガイドプレート組立体1Bを裏側から見た斜視図である。
図18は、
図17に示したガイドプレート組立体1Bの分解斜視図である。なお、上記ガイドプレート組立体1Aと同様の構成部材については、同符号を付して詳細な説明を省略する。
【0106】
本第4実施形態に係るガイドプレート組立体1Bは、
図17に示すように、ガイドプレート3Aの裏面3b側に、ライニング組立体10の凸部20を覆う減衰層70が設けられる。
減衰層70は、均一な厚みで形成される。減衰層70は、
図18に示すように、ガイドプレート3Aの裏面3bに沿うことで、ガイドプレート3Aと略相似形状で形成されている。減衰層70には、ガイドプレート3Aの裏面3bに設けたスペーサ75を介して締結部材80により固定するための固定穴71が穿設されている。減衰層70の表面は、ガイドプレート3Aの裏面3bと平行な平坦面となる。減衰層70は、締結部材80によってガイドプレート3Aの裏面3bに固定される。
【0107】
減衰層70には、例えば金属支持板と弾性材が貼りあわせて積層された状態の積層シムを用いることができ、減衰層70は、面内および面直方向に適切な弾性率を持つ積層構造となる。積層構造は、例えば弾性材であるゴム、金属支持板であるステンレス鋼板、弾性材である粘着材、金属支持板である冷間圧延鋼板、及び弾性材であるゴムを順に貼り合わせて積層させた構造とすることができる。勿論、減衰層70は、本実施形態の積層構造に限定されるものではなく、ライニング組立体10とライニングホルダ140(301)との間を伝搬する振動を減衰させることにより、ノイズの低減が可能となるものであれば種々の積層構造或いは単層構造を採り得る。
【0108】
本第4実施形態に係るガイドプレート組立体1Bによれば、ライニングホルダ140(301)に取付けられた際、ライニング組立体10とライニングホルダ140(301)との間を伝搬する振動が、減衰層70により減衰される。減衰層70は、ライニングホルダ140(301)と裏板部12の凸部20との接触によるノイズの低減に寄与する。これにより、制動過程時に生じる振動が減衰され、スキール騒音(所謂ブレーキ鳴き)が抑制される。
【0109】
図19の(a)は本発明の第5実施形態に係るトルク受けプレート101Aを表側から見た斜視図であり、
図19の(b)は本第5実施形態の変形例に係るトルク受けプレート101Bを表側から見た斜視図である。なお、上記トルク受けプレート101と同様の構成部材については、同符号を付して詳細な説明を省略する。
【0110】
本第5実施形態に係るトルク受けプレート101Aは、
図19の(a)に示すように、表面101a側に、ライニング組立体10の凸部20と対向する減衰層70が設けられる。
減衰層70は、均一な厚みで形成される。減衰層70は、トルク受けプレート101Aの表面101aに沿うことで、トルク受けプレート101Aと略相似形状で形成されている。減衰層70の表面は、トルク受けプレート101Aの表面101aと平行な平坦面となる。減衰層70には、円形状に形成されたトルク受けプレート101Aのアンカーピン嵌合部110を貫通したアンカーピン130に貫通されるアンカーピン係合穴73が形成される。そこで、減衰層70は、アンカーピン130によってトルク受けプレート101Aの表面101aに固定される。
【0111】
本第5実施形態の変形例に係るトルク受けプレート101Bは、
図19の(b)に示すように、減衰層70が、締結部材80によってトルク受けプレート101Bの表面101aに固定される。なお、減衰層70は、トルク受けプレート101Bに対して接着剤によって固定されてもよい。
【0112】
これらトルク受けプレート101A,101Bによれば、ガイドプレート組立体1がトルク受けプレート101A(101B)に取付けられた際、ライニング組立体10とトルク受けプレート101A(101B)との間を伝搬する振動が、減衰層70により減衰される。減衰層70は、トルク受けプレート101A(101B)と裏板部12の凸部20との接触によるノイズの低減に寄与する。これにより、制動過程時に生じる振動が減衰され、スキール騒音(所謂ブレーキ鳴き)が抑制される。
【0113】
図20の(a)は本発明の第6実施形態に係るライニングホルダ301Aを表側から見た斜視図であり、
図20の(b)は本第6実施形態の変形に係るライニングホルダ301Bを表側から見た斜視図である。なお、上記ライニングホルダ301と同様の構成部材については、同符号を付して詳細な説明を省略する。
【0114】
本第6実施形態に係るライニングホルダ301Aは、
図20の(a)に示すように、表面301a側に、ライニング組立体10の凸部20と対向する減衰層70が設けられる。
減衰層70は、均一な厚みで形成される。減衰層70は、ライニングホルダ301Aトの表面301aに沿うことで、ライニングホルダ301Aと略相似形状で形成されている。減衰層70の表面は、ライニングホルダ301Aの表面301aと平行な平坦面となる。減衰層70には、円形状に形成されたライニングホルダ301Aのアンカーピン嵌合部310を貫通したアンカーピン130に貫通されるアンカーピン係合穴73が形成される。そこで、減衰層70は、アンカーピン130によってライニングホルダ301Aの表面301aに固定される。
【0115】
本第6実施形態の変形例に係るライニングホルダ301Bは、
図20の(b)に示すように、減衰層70が、締結部材80によってライニングホルダ301Bの表面301aに固定される。なお、減衰層70は、ライニングホルダ301Bに対して接着剤によって固定されてもよい。
【0116】
従って、本実施形態に係るガイドプレート組立体1,1A,1B及びディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体100,200によれば、軽量で小型のガイドプレート組立体及びディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体を実現できる。
【0117】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0118】
1…ガイドプレート組立体
3…ガイドプレート
5…ガイド孔部
10…ライニング組立体
11…摩擦材
12…裏板部
13…抜け止めフランジ部
15…プレート嵌合部
17…ロックプレート
20…凸部
22…ジョイント部材
25…ばね部材
100…ディスクブレーキ用摩擦パッド組立て体