(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】駆動装置
(51)【国際特許分類】
F16H 3/10 20060101AFI20240528BHJP
F16D 41/08 20060101ALI20240528BHJP
F16D 41/07 20060101ALI20240528BHJP
F16D 41/12 20060101ALI20240528BHJP
F16H 3/089 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
F16H3/10
F16D41/08 A
F16D41/07 Z
F16D41/12 C
F16H3/089
(21)【出願番号】P 2020143474
(22)【出願日】2020-08-27
【審査請求日】2023-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000102784
【氏名又は名称】NSKワーナー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002435
【氏名又は名称】弁理士法人井上国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077919
【氏名又は名称】井上 義雄
(74)【代理人】
【識別番号】100172638
【氏名又は名称】伊藤 隆治
(74)【代理人】
【識別番号】100153899
【氏名又は名称】相原 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100159363
【氏名又は名称】井上 淳子
(72)【発明者】
【氏名】岡田 伸治
(72)【発明者】
【氏名】山田 隆哉
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第202946622(CN,U)
【文献】特開2007-298145(JP,A)
【文献】特開2020-118250(JP,A)
【文献】実開昭55-142738(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2017/0343061(US,A1)
【文献】特開2019-178741(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 3/10
F16D 41/08
F16D 41/07
F16D 41/12
F16H 3/089
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源側の入力軸と、
駆動輪側の出力軸と、
前記駆動源からの駆動力を前記入力軸から前記出力軸へ伝達する変速機構と、を有する車両用の駆動装置であって、
前記変速機構は、前記駆動力を低速回転として前記入力軸から前記出力軸へ伝達する第1のクラッチと、前記駆動力を高速回転として前記入力軸から前記出力軸へ伝達する第2のクラッチとを備え、前記第1のクラッチと前記第2のクラッチとを選択的に切り替えて、前記駆動力を前記入力軸から前記出力軸へ伝達し、
前記第1のクラッチは、前記出力軸に設けられ、前記入力軸の一方の回転のみを前記出力軸に伝達する一方向クラッチであり、
前記第2のクラッチは、前記出力軸に設けられ、前記入力軸の両方向の回転を前記出力軸に伝達する状態と、前記入力軸の両方向の回転を前記出力軸に非伝達の状態とを切り替え可能な二方向クラッチであ
り、
前記二方向クラッチは、前記入力軸と連結された外輪と、前記出力軸と一体回転する内輪と、前記外輪と前記内輪との間でトルク伝達可能なラチェット機構とを有し、
前記ラチェット機構は、前記内輪の外周面に設けられた複数の歯部と、前記外輪に設けられ前記歯部と噛み合うことにより前記外輪に対する前記内輪の一方の回転をロックする第1の爪部材と、前記外輪に設けられ前記歯部と噛み合うことにより前記外輪に対する前記内輪の他方の回転をロックする第2の爪部材とを備え、
前記二方向クラッチが前記外輪に対してロックする前記内輪の回転方向を切り替えるための切り替え機構を備え、
前記切り替え機構は、前記第1の爪部材と前記歯部との噛み合いを阻止するための第1の部分と、前記第2の爪部材と前記歯部との噛み合いを阻止するための第2の部分とを周方向に複数有する部材を、前記外輪および前記内輪の中心軸線を中心に回転させ、前記第1の爪部材と前記歯部との間の空間および前記第2の爪部材と前記歯部との間の空間にそれぞれ移動可能とすることを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
駆動源側の入力軸と、
駆動輪側の出力軸と、
前記駆動源からの駆動力を前記入力軸から前記出力軸へ伝達する変速機構と、を有する車両用の駆動装置であって、
前記変速機構は、前記駆動力を低速回転として前記入力軸から前記出力軸へ伝達する第1のクラッチと、前記駆動力を高速回転として前記入力軸から前記出力軸へ伝達する第2のクラッチとを備え、前記第1のクラッチと前記第2のクラッチとを選択的に切り替えて、前記駆動力を前記入力軸から前記出力軸へ伝達し、
前記第1のクラッチは、前記出力軸に設けられ、前記入力軸の一方向の回転と他方向の回転の両方の回転を前記出力軸に伝達する状態と、前記入力軸の一方向の回転のみを前記出力軸に伝達する状態と、前記入力軸の一方向の回転と他方向の回転の両方の回転を前記出力軸に非伝達とする状態とを切り替え可能な第1の二方向クラッチであり、
前記第2のクラッチは、前記出力軸に設けられ、前記入力軸の一方向の回転と他方向の回転の両方の回転を前記出力軸に伝達する状態と、前記入力軸の一方向の回転のみを前記出力軸に伝達する状態と、前記入力軸の一方向の回転と他方向の回転の両方の回転を前記出力軸に非伝達とする状態とを切り替え可能な第2の二方向クラッチであり、
前記第1の二方向クラッチが前記駆動力を伝達している際は、前記第2の二方向クラッチを前記駆動力の非伝達状態とし、前記第2の二方向クラッチが前記駆動力を伝達する際は、前記第1の二方向クラッチを前記駆動力の非伝達状態と
し、
前記第1の二方向クラッチおよび前記第2の二方向クラッチはそれぞれ、前記入力軸と連結された外輪と、前記出力軸と一体回転する内輪と、前記外輪と前記内輪との間でトルク伝達可能なラチェット機構とを有し、
前記ラチェット機構は、前記内輪の外周面に設けられた複数の歯部と、前記外輪に設けられ前記歯部と噛み合うことにより前記外輪に対する前記内輪の一方の回転をロックする第1の爪部材と、前記外輪に設けられ前記歯部と噛み合うことにより前記外輪に対する前記内輪の他方の回転をロックする第2の爪部材とを備え、
前記第1の二方向クラッチが前記外輪に対してロックする前記内輪の回転方向を切り替えるための第1の切り替え機構および前記第2の二方向クラッチが前記外輪に対してロックする前記内輪の回転方向を切り替えるための第2の切り替え機構を備え、
前記第1の切り替え機構および第2の切り替え機構はそれぞれ、前記第1の爪部材と前記歯部との噛み合いを阻止するための第1の部分と、前記第2の爪部材と前記歯部との噛み合いを阻止するための第2の部分とを周方向に複数有する部材を、前記外輪および前記内輪の中心軸線を中心に回転させ、前記第1の爪部材と前記歯部との間の空間および前記第2の爪部材と前記歯部との間の空間にそれぞれ移動可能とすることを特徴とする駆動装置。
【請求項3】
前記第1の二方向クラッチと前記第2の二方向クラッチとが選択的に切り替わる際、前記第2の二方向クラッチ、または前記第1の二方向クラッチと前記第2の二方向クラッチの両方は、前記入力軸の一方向の回転のみを前記出力軸へ伝達する状態であることを特徴とする請求項2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記第1の二方向クラッチおよび前記第2の二方向のクラッチはそれぞれ、前記入力軸の一方向の回転のみを前記出力軸に伝達する第1状態と、前記入力軸の一方向の回転と他方向の回転の両方の回転を非伝達とする第2状態と、前記入力軸の一方向の回転と他方向の回転の両方の回転を前記出力軸に伝達可能な第4状態とを切り替え可能であり、
前記第1の二方向クラッチと前記第2の二方向クラッチとは、前記第1の二方向クラッチが前記第4の状態から前記第1または第2の状態に切り替わった後に、前記第2の二方向クラッチが前記第2の状態から前記第1または第4の状態に切り替わるように制御されることを特徴とする請求項
2または3に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記駆動源は、電動モータを含むことを特徴とする請求項1から
4の何れか一項に記載の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動源の駆動力を伝達するための車両用の駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等の車両の駆動装置において、電動モータの駆動力を伝達する駆動装置が多岐に亘って開発されている。特許文献1には、エンジンと電動モータで走行可能なハイブリッド車両に用いられる駆動装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
駆動源として電動モータを含む車両のこのような駆動装置は、車両や電動モータの高性能化或いは変速機を含めた制御の複雑化に伴い、配置スペースの増大および重量の増大が懸念されている。
【0005】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、駆動源からの駆動力を伝達するための車両用の駆動装置において、配置スペースの増加を抑制し、軽量化を図ることができる駆動装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の駆動装置は、
駆動源側の入力軸と、
駆動輪側の出力軸と、
前記駆動源からの駆動力を前記入力軸から前記出力軸へ伝達する変速機構と、を有する車両用の駆動装置であって、
前記変速機構は、前記駆動力を低速回転として前記入力軸から前記出力軸へ伝達する第1のクラッチと、前記駆動力を高速回転として前記入力軸から前記出力軸へ伝達する第2のクラッチとを備え、前記第1のクラッチと前記第2のクラッチとを選択的に切り替えて、前記駆動力を前記入力軸から前記出力軸へ伝達し、
前記第1のクラッチは、前記出力軸に設けられ、前記入力軸の一方の回転のみを前記出力軸に伝達する一方向クラッチであり、
前記第2のクラッチは、前記出力軸に設けられ、前記入力軸の両方向の回転を前記出力軸に伝達する状態と、前記入力軸の両方向の回転を前記出力軸に非伝達の状態とを切り替え可能な二方向クラッチであり、
前記二方向クラッチは、前記入力軸と連結された外輪と、前記出力軸と一体回転する内輪と、前記外輪と前記内輪との間でトルク伝達可能なラチェット機構とを有し、
前記ラチェット機構は、前記内輪の外周面に設けられた複数の歯部と、前記外輪に設けられ前記歯部と噛み合うことにより前記外輪に対する前記内輪の一方の回転をロックする第1の爪部材と、前記外輪に設けられ前記歯部と噛み合うことにより前記外輪に対する前記内輪の他方の回転をロックする第2の爪部材とを備え、
前記二方向クラッチが前記外輪に対してロックする前記内輪の回転方向を切り替えるための切り替え機構を備え、
前記切り替え機構は、前記第1の爪部材と前記歯部との噛み合いを阻止するための第1の部分と、前記第2の爪部材と前記歯部との噛み合いを阻止するための第2の部分とを周方向に複数有する部材を、前記外輪および前記内輪の中心軸線を中心に回転させ、前記第1の爪部材と前記歯部との間の空間および前記第2の爪部材と前記歯部との間の空間にそれぞれ移動可能とすることを特徴とする。
また、本発明の駆動装置は、
駆動源側の入力軸と、
駆動輪側の出力軸と、
前記駆動源からの駆動力を前記入力軸から前記出力軸へ伝達する変速機構と、を有する車両用の駆動装置であって、
前記変速機構は、前記駆動力を低速回転として前記入力軸から前記出力軸へ伝達する第1のクラッチと、前記駆動力を高速回転として前記入力軸から前記出力軸へ伝達する第2のクラッチとを備え、前記第1のクラッチと前記第2のクラッチとを選択的に切り替えて、前記駆動力を前記入力軸から前記出力軸へ伝達し、
前記第1のクラッチは、前記出力軸に設けられ、前記入力軸の一方向の回転と他方向の回転の両方の回転を前記出力軸に伝達する状態と、前記入力軸の一方向の回転のみを前記出力軸に伝達する状態と、前記入力軸の一方向の回転と他方向の回転の両方の回転を前記出力軸に非伝達とする状態とを切り替え可能な第1の二方向クラッチであり、
前記第2のクラッチは、前記出力軸に設けられ、前記入力軸の一方向の回転と他方向の回転の両方の回転を前記出力軸に伝達する状態と、前記入力軸の一方向の回転のみを前記出力軸に伝達する状態と、前記入力軸の一方向の回転と他方向の回転の両方の回転を前記出力軸に非伝達とする状態とを切り替え可能な第2の二方向クラッチであり、
前記第1の二方向クラッチが前記駆動力を伝達している際は、前記第2の二方向クラッチを前記駆動力の非伝達状態とし、前記第2の二方向クラッチが前記駆動力を伝達する際は、前記第1の二方向クラッチを前記駆動力の非伝達状態とし、
前記第1の二方向クラッチおよび前記第2の二方向クラッチはそれぞれ、前記入力軸と連結された外輪と、前記出力軸と一体回転する内輪と、前記外輪と前記内輪との間でトルク伝達可能なラチェット機構とを有し、
前記ラチェット機構は、前記内輪の外周面に設けられた複数の歯部と、前記外輪に設けられ前記歯部と噛み合うことにより前記外輪に対する前記内輪の一方の回転をロックする第1の爪部材と、前記外輪に設けられ前記歯部と噛み合うことにより前記外輪に対する前記内輪の他方の回転をロックする第2の爪部材とを備え、
前記第1の二方向クラッチが前記外輪に対してロックする前記内輪の回転方向を切り替えるための第1の切り替え機構および前記第2の二方向クラッチが前記外輪に対してロックする前記内輪の回転方向を切り替えるための第2の切り替え機構を備え、
前記第1の切り替え機構および第2の切り替え機構はそれぞれ、前記第1の爪部材と前記歯部との噛み合いを阻止するための第1の部分と、前記第2の爪部材と前記歯部との噛み合いを阻止するための第2の部分とを周方向に複数有する部材を、前記外輪および前記内輪の中心軸線を中心に回転させ、前記第1の爪部材と前記歯部との間の空間および前記第2の爪部材と前記歯部との間の空間にそれぞれ移動可能とすることを特徴とする。
また、本発明の駆動装置は、前記第1の二方向クラッチから前記第2の二方向クラッチへ前記駆動力の選択を移行する過渡期で、またはその逆の前記第2の二方向クラッチから前記第1の二方向クラッチへ前記駆動力の選択を移行する過渡期で、前記第2の二方向クラッチが、または前記第1の二方向クラッチと前記第2の二方向クラッチのどちらもが前記入力軸の一方向の回転のみを前記出力軸へ伝達する状態であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、駆動源からの駆動力を伝達するための車両用の駆動装置において、配置スペースの増加を抑制し、軽量化を図ることができる駆動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る駆動装置の構成を示すスケルトン図である。
【
図2】
図2は、一方向クラッチの要部を示す断面図である。
【
図3】
図3は、二方向クラッチの要部を示す断面図である。
【
図4】
図4は、第2実施形態に係る駆動装置の構成を示すスケルトン図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係る駆動装置を、図面を参照しつつ説明する。
本発明の実施形態に係る駆動装置は、駆動源を電動モータとする車両に用いられ、電動モータの駆動力を2速変速の変速装置を介して低速回転または高速回転として出力軸へ伝達するタイプのものである。
【0010】
まず、実施形態に係る駆動装置に係る方向について定義する。実施形態において、軸方向とは電動モータの駆動軸に連結された入力軸、および電動モータの駆動力が出力される出力軸の軸方向のことをいい、軸方向、径方向、周方向とは、入力軸および出力軸に関する軸方向、径方向、周方向のことをいう。また、軸方向について、
図1、4においては紙面右方側を軸方向一方側とし、紙面左方側を軸方向他方側とし、
図2、3においては紙面手前側を軸方向一方側とし、紙面奥側を軸方向他方側とする。周方向について、
図2、3において、紙面に向かって時計方向に回転する方向を周方向一方とし、紙面に向かって反時計方向に回転する方向を周方向他方とする。
【0011】
(第1実施形態)
まず、本発明の第1実施形態に係る駆動装置について説明する。
図1は、第1実施形態に係る駆動装置の構成を示すスケルトン図である。
図2は、一方向クラッチの要部を示す断面図である。
図3は、二方向クラッチの要部を示す断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係る駆動装置1は、電動モータ3の駆動軸に連結された入力軸5と、入力軸5と平行に配置された出力軸7とを有している。出力軸7には、後述する一方向クラッチ9または二方向クラッチ11を介して、入力軸5を介して電動モータ3からの駆動力が伝達される。
【0012】
入力軸5には、電動モータ3からの回転すなわち駆動力を低速回転として出力軸7に伝達するための第1連結ギヤ13と、電動モータ3からの駆動力を高速回転として出力軸7に伝達するための第2連結ギヤ15とが、入力軸5と同軸に設けられている。第1連結ギヤ13と第2連結ギヤ15とは軸方向に並んで設けられている。第2連結ギヤ15は第1連結ギヤ13よりも大きな径を有している。第1連結ギヤ13と第2連結ギヤ15とは、それぞれ入力軸5と相対回転不能に、入力軸5に設けられている。
【0013】
出力軸7には、外輪17と内輪19とを有する一方向クラッチ9(
図2参照)と、外輪21と内輪23とを有する二方向クラッチ11(
図3参照)とが、出力軸7と同軸に、軸方向に異なる位置に設けられている。一方向クラッチ9および二方向クラッチ11の詳細な構成は後述する。一方向クラッチ9の外輪17は、第1連結ギヤ13の径方向外方に配置され、第1連結ギヤ13と常に接続している。一方向クラッチ9の内輪19は出力軸7に嵌合され、内輪19と出力軸7とは一体に回転する。第1連結ギヤ13と一方向クラッチ9とで低速変速機構部25を構成している。
【0014】
二方向クラッチ11の外輪21は、第2連結ギヤ15の径方向外方に配置され、第2連結ギヤ15と常に接続している。二方向クラッチ11の内輪23は出力軸7に嵌合され、内輪23と出力軸7とは一体に回転する。第2連結ギヤ15と二方向クラッチ11とで高速変速機構部27を構成している。低速変速機構部25と高速変速機構部27とで2速変速の変速装置を構成している。また、二方向クラッチ11における、外輪21に対する内輪23のどちらか一方向の回転/固定、両方向の回転/固定の切り替えは、外部装置である切り替え機構62によって行われる。切り替え機構62は、例えばアクチュエータ等を用いることができる。
【0015】
一方向クラッチ9よりも軸方向一方側の出力軸7の部分には、第3連結ギヤ29が出力軸7と同軸に設けられている。第3連結ギヤ29は出力軸7に固定されており、出力軸7と一体に回転する。第3連結ギヤ29は、例えば車両等の駆動輪である30に連結されており、車両等の駆動輪である30へ電動モータ3からの駆動力を伝達している。
【0016】
図2は、一方向クラッチ9の要部を示す断面図である。一方向クラッチ9は、所謂スプラグタイプである。
一方向クラッチ9は環状の外輪17と、外輪17に対して径方向内方に外輪17と同軸に且つ外輪17と相対回転可能に配置された環状の内輪19と、外輪17と内輪19との間に介装された複数のスプラグ31と、外輪17と内輪19との間でスプラグ31に対して起き上がりモーメントを与えるリボンスプリング33と、外輪17と内輪19との間でスプラグ31を保持する一対の内径側保持器35および外径側保持器37とを備えている。なお、
図2においては、一方向クラッチ9の周方向に並んだ3つのスプラグ31とその周辺部分を示している。
【0017】
外輪17の外周側には、入力軸5の第1連結ギヤ13が噛み合うギヤ39が形成されている。外輪17のギヤ39と第1連結ギヤ13とは常に噛み合っている。したがって外輪17と第1連結ギヤ13とは常に接続された状態であり、入力軸5と一方向クラッチ9の外輪17とは相互に反対方向に回転する。
【0018】
スプラグ31は、
図2に示すように、中央部がくびれた、略径方向を長手方向とするひょうたん型をしている。複数のスプラグ31は、周方向に等間隔で配置されている。スプラグ31は、内輪19および外輪17の径方向に対して所定角度傾いて配置されている。また、スプラグ31は、重心が外輪17側のカム半径中心より周方向一方側にある形態をとる。スプラグ31は、内輪19の外周面と外輪17の内周面とに噛み合うことにより、内輪19と外輪17との間で電動モータ3からの駆動力を伝達する。
【0019】
リボンスプリング33は、内径側保持器35と外径側保持器37との間に配置されている。リボンスプリング33は、スプラグ31に対し、起き上がりモーメントを付与している。詳細には、リボンスプリング33は、スプラグ31の長手方向が内輪19および外輪17の径方向に近づく方向にスプラグ31を回転させ、スプラグ31が内輪19の外周面と外輪17の内周面とに接触する方向にスプラグ31を付勢している。すなわちリボンスプリング33は、各スプラグ31を内輪19と外輪17との噛み合い方向に付勢している。
【0020】
内径側保持器35は、内輪19の外周面とリボンスプリング33との間に配置されている。内径側保持器35は、スプラグ31の周方向内方側部分の移動を制限し、スプラグ31の過度の傾きを抑制している。外径側保持器37は、外輪19の内周面とリボンスプリング33との間に配置されている。外径側保持器37は、スプラグ31の周方向外方側部分の移動を制限し、スプラグ31の過度の傾きを抑制している。
【0021】
一方向クラッチ9は、上述したように、外輪17が入力軸5の第1連結ギヤ13と常に接続されている。一方向クラッチ9は、外輪17が
図2において周方向他方すなわち反時計方向に回転すると、これに伴い、スプラグ31は長手方向が内輪19および外輪17の径方向に近づく方向に回転する。すなわちスプラグ31は起き上がり、内輪19の外周面と外輪17の内周面とに噛み合う。これにより内輪19と外輪17とは、反時計方向に一体に回転する。こうして、外輪17から入力された電動モータ3からの駆動力は、スプラグ31を介して内輪19に伝達され、内輪19から出力軸7に伝達される。
【0022】
図3は、二方向クラッチ11の要部を示す断面図である。
図3に示すように、本実施形態に係る二方向クラッチ11は、環状の外輪21と、外輪21に対して径方向内方に外輪21と同軸に且つ外輪21と相対回転可能に配置された環状の内輪23と、外輪21と内輪23との間でトルク伝達を可能とするトルク伝達機構と、を有している。本実施形態におけるトルク伝達機構はラチェット機構であり、外輪21の内周部に周方向に亘って所定間隔で設けられた複数の第1の爪部材41および複数の第2の爪部材43を備えている。なお、
図3においては、1つの第1の爪部材41と、第1の爪部材41と周方向に隣り合う一つの第2の爪部材43とを示している。
【0023】
内輪23の外周部には、複数の歯部45が周方向の全周に亘って等間隔に形成されている。歯部45は、径方向外方に突出し軸方向に延在している。歯部45は、第1の爪部材41および第2の爪部材43が噛み合うラチェット歯を構成している。具体的には、歯部45の周方向一方側は、第1の爪部材41と噛み合う第1の噛み合い部45aを構成し、歯部45の周方向他方側は、第2の爪部材43と噛み合う第2の噛み合い部45bを構成している。
【0024】
外輪21の外周側には、入力軸5の第2連結ギヤ15が噛み合うギヤ47が形成されている。外輪21のギヤ47と第2連結ギヤ15とは常に噛み合っている。したがって外輪21と第2連結ギヤ15とは常に接続された状態であり、入力軸5と二方向クラッチ11の外輪21とは相互に反対方向に回転する。
【0025】
第1の爪部材41は、外輪21の内周部に設けられた逃げ部49に保持されている。逃げ部49は、外輪21の内周面に内向きに開口する凹部である。第1の爪部材41は所定の周方向長さを有し、周方向一方側部分である本体部51と、周方向他方側部分であって本体部51から周方向他方側へ突出する爪部53とから構成されている。第1の爪部材41は、本体部51が逃げ部49に回動可能に保持され、重心が回転中心と同一か、逃げ部49側にあり、爪部53がコイル状の、あるいはそれ以外のタイプでも良いスプリング55によって径方向内方へ付勢されている。第1の爪部材41は、本体部51を中心として爪部53が径方向に揺動可能に、逃げ部49に保持されている。
【0026】
第1の爪部材41は、揺動すると爪部53が径方向内方へ移動し、内輪23の歯部45の第1の噛み合い部45aと噛み合い、これにより第1の爪部材41は歯部45と噛み合い状態になる。第1の爪部材41は歯部45と噛み合うことにより、外輪21に対する内輪23の時計方向への相対回転をロックする。一方、外輪21に対して内輪23が反時計方向へ相対回転する際は、第1の爪部材41は、爪部53がスプリング55の付勢力に抗して内輪23の歯部45によって径方向外側へ押され、歯部45と非噛み合い状態となり、内輪23の当該回転を許容する。
【0027】
第2の爪部材43は、第1の爪部材41と同様に、外輪21の内周部に設けられた逃げ部57に保持され、爪部59がスプリング61によって付勢されているが、周方向の向きが第1の爪部材41とは反対になっている。これにより、第2の爪部材43は、第1の爪部材41とは逆に、爪部59が内輪23の歯部45の第2の噛み合い部45bと噛み合うことにより歯部45と噛み合い状態となり、外輪21に対する内輪23の反時計方向への相対回転をロックし、歯部45と非噛み合い状態において外輪21に対する内輪23の時計方向への相対回転を許容する。
【0028】
このように、外輪21の内周側に保持された第1の爪部材41および第2の爪部材43と、スプリング55、61と、内輪23に形成された複数の歯部45とで、ラチェット機構が構成されている。
【0029】
本実施形態においては、二方向クラッチ11は、内輪23の歯部45に対する外輪21の第1の爪部材41の噛み合い状態または非噛み合い状態と、内輪23の歯部45に対する外輪21の第2の爪部材43の噛み合い状態または非噛み合い状態との組み合わせを変更することによって、外輪21に対してロックする内輪23の回転方向、言い換えると外輪21に対して回転可能な内輪23の回転方向を切り替えている。
【0030】
このような、外輪21に対してロックする内輪23の回転方向を切り替えるための切り替え機構62は、次のように種々の構成を取り得る。
例えば、第1の爪部材41の爪部53と歯部45との噛み合いを阻止するための部材および第2の爪部材43の爪部59と歯部45との噛み合いを阻止するための部材を、アクチュエータ等を用いてそれぞれ軸方向に移動可能とし、第1の爪部材41の爪部53と歯部45との間および第2の爪部材43の爪部59と歯部45との間の空間に挿脱可能な構成とすることもできる。
また、例えば、第1の爪部材41の爪部53と歯部45との噛み合いを阻止するための部分および第2の爪部材43の爪部59と歯部45との噛み合いを阻止するための部分を周方向に複数有する環状部材を、アクチュエータ等を用いて外輪21および内輪23の中心軸線を中心に回転させ、前記各噛み合いを阻止するための部分を外輪21と内輪23との間の空間で周方向に移動させ、第1の爪部材41の爪部53と歯部45との間の空間、および第2の爪部材43の爪部59と歯部45の間の空間にそれぞれ移動可能な構成とすることもできる。
【0031】
このような、外輪21に対してロックする内輪23の回転方向を切り替える切り替え機構62によって、本実施形態の二方向クラッチ11は、内輪23の歯部45に対する第1の爪部材41および第2の爪部材43の噛み合い状態と非噛み合い状態との組み合わせを変更することによって、以下の4つの状態を取り得る。
【0032】
二方向クラッチ11の第1の状態は、第1の爪部材41がスプリング55の付勢力によって内輪23の歯部45に噛み合い、第2の爪部材43が内輪23の歯部45に対して非噛み合いの状態である。この状態において、内輪23は外輪21に対して周方向他方への回転が可能であり、周方向一方への回転がロックされた状態である。この状態において外輪21が
図3において周方向他方すなわち反時計方向に回転すると、内輪23と外輪21とは一体となって反時計方向に回転する。また、この状態は、後述するように、電動モータ3からの駆動力を出力軸7に伝達する時の状態である。低速側のギアから高速側のギアへ駆動力を移していく過渡期、また高速走行時に電動モータ3の駆動力を遮断して空走する際に有効である。
【0033】
二方向クラッチ11の第2の状態は、第1の爪部材41および第2の爪部材43が、両方とも内輪23の歯部45に対して非噛み合いの状態である。この状態において、内輪23は外輪21に対して周方向一方への回転も周方向他方への回転もロックされておらず、周方向一方と周方向他方の何れの方向への回転も可能である。この状態は、後述するように、入力軸5と出力軸7とが切り離されることにより、出力軸7の回転による出力軸7からの駆動力が電動モータ3へ伝達されない状態である。
【0034】
二方向クラッチ11の第3の状態は、第1の爪部材41が内輪23の歯部45に対して非噛み合いの状態であり、第2の爪部材43がスプリング61の付勢力によって内輪23の歯部45に噛み合っている状態である。この状態において、内輪23は外輪21に対して周方向一方への回転が可能であり、周方向他方への回転がロックされた状態である。
二方向クラッチ11の第4の状態は、第1の爪部材41および第2の爪部材43の両方が内輪23の歯部45に対して噛み合っている状態である。この状態においては、内輪23は外輪21に対して、両方向の回転がロックされた状態である。この状態は、後述するように、電動モータ3からの駆動力を出力軸7に伝達する時の状態であり、両方向回転がロックされているので駆動輪からの逆入力を電動モータ3へ伝達することも可能である。
【0035】
次に、本実施形態に係る駆動装置1の作動について説明する。なお、以下の作動の説明は、
図1~3において、軸方向一方側を正面とし、駆動装置1を正面から見た状態での作動を説明する。
低速回転の場合、本実施形態においては、電動モータ3と連結された入力軸5は、周方向一方へ回転する。入力軸5が周方向一方への回転を始めると、切り替え機構62によって二方向クラッチ11は第2の状態または第3の状態に制御される。すなわち二方向クラッチ11は、第2連結ギヤ15と噛み合っている外輪21が周方向他方へ回転するが、外輪21に対して内輪23は空転し、外輪21の回転は内輪23には伝達されない。一方、この時入力軸5の回転は第1連結ギヤ13を介して低速回転として一方向クラッチ9の外輪17に伝達される。
【0036】
一方向クラッチ9の外輪17が周方向他方へ回転すると、スプラグ31が起き上がり、内輪19の外周面と外輪17の内周面とに噛み合う。これにより一方向クラッチ9の内輪19と外輪17とは、一体となって周方向他方に回転する。こうして、一方向クラッチ9の外輪17から入力された電動モータ3からの駆動力は、スプラグ31を介して内輪19に伝達され、内輪19と一体回転する出力軸7に伝達される。すなわち電動モータ3からの駆動力は低速変速機構部25を介して出力軸7に伝達される。出力軸7に伝達された電動モータ3からの駆動力は、第3連結ギヤ29を介して後段の機構、例えば車両等の駆動輪30に伝達され、車両は前進する。このとき車両の速度は低速域である。
【0037】
電動モータ3の回転速度が上昇して車両の速度が所定の高速域に入ると、切り替え機構62によって二方向クラッチ11は第1の状態に切り替わる。すなわち二方向クラッチ11の内輪23が空転状態から固定状態に切り替わる。したがって入力軸5の回転は第2連結ギヤ15と外輪21とを介して高速回転として二方向クラッチ11の内輪23に伝達される。なお、車両の速度の低速域と高速域とは、第1連結ギヤ13と第2連結ギヤ15とのギヤ比等によって適宜設定される。また、車両の速度が高速域に入った際に、二方向クラッチ11を第4の状態に制御して内輪23を固定状態としても良い。また、高速域においては、一方向クラッチ9の内輪19と嵌合する出力軸7の回転速度は、一方向クラッチ9の外輪17の回転速度よりも速い状態である。したがって一方向クラッチ9は、内輪19すなわち出力軸7が外輪17に対して空転している状態である。
【0038】
入力軸5の回転が二方向クラッチ11の内輪23に伝達され、車両が加速されている状態すなわち入力軸5の回転速度が上昇している状態においては、二方向クラッチ11は上述した第1の状態に制御される。すなわち第1の爪部材41が内輪23の歯部45に噛み合い、第2の爪部材43が歯部45に対して非噛み合いの状態である。この状態において、二方向クラッチ11は、内輪23と外輪21とが一体となって周方向他方に回転する。こうして、二方向クラッチ11の外輪21から入力された電動モータ3からの駆動力は、第1の爪部材41を介して内輪23に伝達され、内輪23と一体回転する出力軸7に伝達される。すなわち電動モータ3からの駆動力は高速変速機構部27を介して出力軸7に伝達される。出力軸7に伝達された電動モータ3からの駆動力は、第3連結ギヤ29を介して後段の機構に伝達され、さらに車両の駆動輪に伝達される。このとき車両の加速を中断すると二方向クラッチ11が空転するので、車両は空走することが可能である。
【0039】
本実施形態の駆動装置1は、車両が高速で安定して走行している状態または下り坂を走行している状態において、電動モータ3からの駆動力を用いずに慣性によって走行することができる。この場合、二方向クラッチ11は上述した第2の状態に制御される。すなわち第1の爪部材41および第2の爪部材43が、両方とも内輪23の歯部45に対して非噛み合いの状態である。このように電動モータ3と出力軸7とが切り離されることにより、出力軸7の回転による出力軸7からの駆動力が電動モータ3へ伝達されない状態になるとともに、高速走行時における電動モータ3の負荷が低減される。
【0040】
以上に説明したように、本実施形態の駆動装置1は、一方向クラッチ9および二方向クラッチ11を用いることにより、2速変速の変速装置の構造を簡素化することができる。その結果、本実施形態の駆動装置1は大型化を抑制でき、配置スペースの増加を抑制するとともに、軽量化を図ることができる。
【0041】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る駆動装置101について説明する。
第2実施形態に係る駆動装置101は、第1実施形態に係る駆動装置1とは低速変速機構部125の構成が異なっている。他の構成は第1実施形態と同様である。第2実施形態は、第1実施形態の
図1~3を援用し、第1実施形態と異なる構成を中心に説明する。
【0042】
図4は、第2実施形態に係る駆動装置101の構成を示すスケルトン図である。
図4に示すように、本実施形態に係る駆動装置101は、出力軸7に2つの二方向クラッチ11、111が設けられている。すなわち本実施形態に係る駆動装置101は、第1実施形態における一方向クラッチ9に代えて二方向クラッチ111を備えている。二方向クラッチ111は、
図3に示す構成と同様である。
【0043】
本実施形態の駆動装置101においては、低速変速機構部125の二方向クラッチ111は、第1実施形態と同様の切り替え機構162によって、第1の状態すなわち第1の爪部材141が内輪123の歯部145に噛み合い、第2の爪部材143が歯部145に対して非噛み合いの状態と、第2の状態すなわち第1の爪部材141と第2の爪部材143の両方が内輪123の歯部145に対して非噛み合いの状態と、第3の状態すなわち第1の爪部材141が内輪123の歯部145に対して非噛み合いの状態であり、第2の爪部材143が歯部145に噛み合っている状態と、第4の状態すなわち第1の爪部材141と第2の爪部材143の両方が歯部145に対して噛み合っている状態とを切り替えている。
【0044】
本実施形態の駆動装置101は、低速変速機構部125に二方向クラッチ111を用いることにより、電動モータ3の正転と逆転とに対応することが可能となっている。
なお、以下の駆動装置101の作動の説明は、援用する
図1~3、および
図4において、軸方向一方側を正面とし、駆動装置101を正面から見た状態での作動を説明する。
【0045】
本実施形態の駆動装置101は、例えば、二方向クラッチ111が上記第1の状態または第4の状態に制御された場合、入力軸5が周方向一方への回転を始めると、入力軸5の回転は第1連結ギヤ13を介して低速回転として二方向クラッチ111の外輪121に伝達され、二方向クラッチ111は、内輪123と外輪121とが一体となって周方向他方に回転する。こうして、二方向クラッチ111の外輪121から入力された電動モータ3からの駆動力は、第1の爪部材141を介して内輪123に伝達され、内輪123と一体回転する出力軸7に伝達される。出力軸7に伝達された駆動力は、第3連結ギヤ29を介して後段の例えば車両等の駆動輪30へ伝達される。なお、この時二方向クラッチ11は、切り替え機構62によって第2の状態または第3の状態に制御される。すなわち二方向クラッチ11は、外輪21に対して内輪23は空転している。
【0046】
電動モータ3の回転速度が上昇して車両の速度が高速域に入ると、二方向クラッチ111は、低速域において第4の状態に制御されていた場合は第1の状態または第2の状態に切り替わり、第1の状態に制御されていた場合はそのまま第1の状態が保持されるか、または第2の状態に切り替わる。また、高速域に入ると、二方向クラッチ11は第1実施形態と同様に、切り替え機構62によって第1の状態に切り替わる。なお、この時二方向クラッチ11を第4の状態に制御しても良い。すなわち二方向クラッチ11の内輪23が空転状態から固定状態に切り替わる。こうして電動モータ3からの駆動力が出力軸7に伝達される。高速域における高速変速機構部27の作動は、第1実施形態と同様である。なお、高速域においては、二方向クラッチ111の内輪123と嵌合する出力軸7の回転速度は、二方向クラッチ111の外輪121の回転速度よりも速い状態である。したがって二方向クラッチ111は内輪123すなわち出力軸7が外輪121に対して空転している状態である。
【0047】
一方、本実施形態の駆動装置101が逆転の場合は、電動モータ3が逆転する時、二方向クラッチ111は上記第3、または上記第4の状態に制御される。これにより、入力軸5が周方向他方への回転を始めると、入力軸5の回転は第1連結ギヤ13を介して低速回転として二方向クラッチ111の外輪121に伝達され、二方向クラッチ111は、内輪123と外輪121とが一体となって周方向一方に回転する。こうして、二方向クラッチ111の外輪121から入力された電動モータ3からの駆動力は、第2の爪部材143を介して内輪123に伝達され、外輪121と一体回転する出力軸7に伝達される。出力軸7に伝達された電動モータ3からの駆動力は、第3連結ギヤ29を介して、例えば車両等の駆動輪30へ伝達される。なお、この時二方向クラッチ11は、第1の状態または第2の状態に制御される。すなわち二方向クラッチ11は、外輪21に対して内輪23は空転している。また、この場合、車両の速度が高速域に入ると、二方向クラッチ11は、上記第3の状態または上記第4の状態に切り替わり、電動モータ3からの駆動力を出力軸7に伝達する。なお、二方向クラッチ111は、低速域において第4の状態に制御されていた場合は第3の状態または第2の状態に切り替わり、第3の状態に制御されていた場合はそのまま第3の状態が保持されるか、または第2の状態に切り替わる。また、高速域においては、二方向クラッチ111の内輪123と嵌合する出力軸7の回転速度は、二方向クラッチ111の外輪121の回転速度よりも速い状態である。したがって二方向クラッチ111は内輪123すなわち出力軸7が外輪121に対して空転している状態である。
【0048】
このように、本実施形態の駆動装置101は、低速変速機構部125に二方向クラッチ111を用いることにより、駆動装置101自体の正転と逆転とに対応することが可能となっている。その結果、車両の前進用と後進用の駆動源および駆動装置をそれぞれ設ける必要がなく、更なる配置スペースの増加の抑制および軽量化を図ることができる。
【0049】
以上説明したように、本発明の第1および第2実施形態によれば、駆動源の駆動力を伝達するための駆動装置において、配置スペースの増加を抑制し、軽量化を図ることができる駆動装置を提供することができる。
【0050】
なお、本発明の駆動装置は、上記第1および第2実施形態に限定されるものではなく、適宜変更が可能である。例えば駆動源は電動モータ3に代えてエンジンとしても良いし、電動モータ3とエンジンとを両方用いる駆動源としても良い。また、一方向クラッチ9は、ローラ型、ラチェット型、或いはカム型のものを用いても良い。
【符号の説明】
【0051】
1、101 駆動装置
3 電動モータ
5 入力軸
7 出力軸
9 一方向クラッチ
11、111 二方向クラッチ
13 第1連結ギヤ
15 第2連結ギヤ
17 外輪
19 内輪
21、121 外輪
23、123 内輪
25、125 低速変速機構部
27 高速変速機構部
29 第3連結ギヤ
31 スプラグ
41、141 第1爪部材
43、143 第2爪部材
45、145 歯部
49、57 逃げ部
53、59 爪部
55、61 スプリング