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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】内視鏡用処置具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/221 20060101AFI20240528BHJP
【FI】
A61B17/221
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020147970
(22)【出願日】2020-09-03
(65)【公開番号】P2022042551
(43)【公開日】2022-03-15
【審査請求日】2023-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小杉 知輝
(72)【発明者】
【氏名】村上 友朗
【審査官】白川 敬寛
(56)【参考文献】
【文献】実公昭61-007685(JP,Y2)
【文献】特開2006-314714(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0078243(US,A1)
【文献】特開2004-135945(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/22-17/221
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡用処置具であって、
可撓性を有する管状のシースと、
前記シース内に前記シースの軸方向に沿って進退可能に配置された操作ワイヤと、
前記操作ワイヤの先端に接続されたバスケット部であって、複数のワイヤから構成され、前記操作ワイヤが基準位置にあるときに、前記シース内に縮径した状態で収容され、前記操作ワイヤが前記基準位置から先端側に移動したときに、前記シースの先端から突出して拡径するように構成されたバスケット部と、
前記バスケット部を構成する前記複数のワイヤの先端をまとめて保持する先端チップと、
を備え、
前記先端チップの基端面と前記シースの先端面との一方には、凸部が形成され、前記先端チップの前記基端面と前記シースの前記先端面との他方には、前記操作ワイヤが前記基準位置にあるときに前記凸部と嵌合可能な凹部が形成されており、
前記操作ワイヤが前記基準位置にあるときに前記凸部と前記凹部とが互いに嵌合している状態で前記シースが周方向に回転すると記シースと前記先端チップとが一体となって回転するように構成されている、内視鏡用処置具。
【請求項2】
請求項1に記載の内視鏡用処置具であって、
前記凹部の個数は、前記凸部の個数と同じまたは前記凸部の個数より多い、内視鏡用処置具。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の内視鏡用処置具であって、
前記シースの先端部は、前記シースの前記先端部以外の部分の軸方向に対して湾曲している、内視鏡用処置具。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の内視鏡用処置具であって、
前記凸部は、底部から頂部に向けて先細りする形状であり、
前記凹部は、頂部から底部に向けて先細りする形状である、内視鏡用処置具。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の内視鏡用処置具であって、
前記凹部は、前記シースの周方向に延びる切り欠きを有する形状であり、
前記凸部は、前記凹部と嵌合した状態で前記凹部に対して前記シースの周方向に相対回転すると前記凹部の前記切り欠きに係合する突起部を有する形状である、内視鏡用処置具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、バスケット型の内視鏡用処置具に関する。
【背景技術】
【0002】
胆管等の体腔内の結石等の異物を破砕したり回収したりするための医療用器具として、バスケット型の内視鏡用処置具が知られている(例えば、特許文献1参照)。バスケット型の内視鏡用処置具は、可撓性を有する管状のシースと、シース内にシースの軸方向に沿って進退可能に配置された操作ワイヤと、操作ワイヤの先端に接続されたバスケット部とを備える。バスケット部は、複数のワイヤから構成されており、操作ワイヤが所定の基準位置にあるときには、シース内に縮径した状態で収容されている。以下、このようなバスケット部または内視鏡用処置具の状態を、「縮径状態」という。また、医師等の手技者による操作に伴い操作ワイヤが上記基準位置から先端側に移動すると、バスケット部は、シースの先端から突出して籠状に拡径した状態となる。以下、このようなバスケット部または内視鏡用処置具の状態を、「拡径状態」という。バスケット部を構成する複数のワイヤの先端は、先端チップによってまとめて保持されている。
【0003】
バスケット型の内視鏡用処置具を用いた施術の際には、縮径状態の内視鏡用処置具を内視鏡チャネルに挿通し、体腔内の異物付近において操作ワイヤを先端側に押し出すことによってバスケット部を拡径状態とし、籠状になったバスケット部内に異物を捕捉した後、操作ワイヤを基端側に引き寄せることによって異物を先端チップとシースの先端との間で挟んで破砕したり、異物を捕捉した状態で回収したりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-107183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば体腔内の異物が比較的大きい場合には、内視鏡用処置具の先端に設けられた先端チップを異物の横をすり抜けて奥側に進入させるために、先端チップを周方向に回転させることが望まれることがある。しかしながら、従来の内視鏡用処置具では、先端チップがバスケット部を介して操作ワイヤに接続されており、手技者が操作ワイヤを周方向に回転させても該回転トルクが先端チップに円滑に伝達されないため、先端チップを所望の通りに回転させることができないことがある。また、従来の内視鏡用処置具では、シースと先端チップとは何ら一体化されていないため、手技者がシースを周方向に回転させても該回転トルクが先端チップに伝達されることはない。このように、従来の内視鏡用処置具では、先端チップを周方向に回転させるための操作性の点で向上の余地がある。
【0006】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0008】
(1)本明細書に開示される内視鏡用処置具は、シースと、操作ワイヤと、バスケット部と、先端チップとを備える。シースは、可撓性を有する管状の部材である。操作ワイヤは、前記シース内に前記シースの軸方向に沿って進退可能に配置されている。バスケット部は、前記操作ワイヤの先端に接続されており、複数のワイヤから構成されている。バスケット部は、前記操作ワイヤが基準位置にあるときに、前記シース内に縮径した状態で収容され、前記操作ワイヤが前記基準位置から先端側に移動したときに、前記シースの先端から突出して拡径するように構成されている。先端チップは、前記バスケット部を構成する前記複数のワイヤの先端をまとめて保持する。前記先端チップの基端面と前記シースの先端面との一方には、凸部が形成され、前記先端チップの前記基端面と前記シースの前記先端面との他方には、前記操作ワイヤが前記基準位置にあるときに前記凸部と嵌合可能な凹部が形成されている。本内視鏡用処置具によれば、互いに嵌合可能な凸部および凹部の存在により、操作ワイヤが基準位置にあるときに(すなわち、縮径状態のときに)、シースを周方向に回転させると、先端チップがシースと一体となって周方向に回転する。従って、本内視鏡用処置具によれば、先端チップを周方向に回転させるための操作性を向上させることができる。
【0009】
(2)上記内視鏡用処置具において、前記凹部の個数は、前記凸部の個数と同じまたは前記凸部の個数より多い構成としてもよい。本内視鏡用処置具によれば、凹部の個数が凸部の個数と同じまたは前記凸部の個数より多いため、凸部を凹部に容易に嵌合させることができる。そのため、本内視鏡用処置具によれば、先端チップとシースとの嵌合に要する時間を短縮することができ、内視鏡用処置具を用いた手技の効率を向上させることができる。
【0010】
(3)上記内視鏡用処置具において、前記シースの先端部は、前記シースの前記先端部以外の部分の軸方向に対して湾曲している構成としてもよい。本内視鏡用処置具によれば、操作ワイヤが基準位置にあるときに(すなわち、縮径状態のときに)、シースを周方向に回転させることにより、先端チップを所望の向きに向けることができる。そのため、例えば胆管等の体腔の分岐点において、内視鏡用処置具を進入させるべき体腔を容易に選択することができる。従って、本内視鏡用処置具によれば、内視鏡用処置具を用いた手技の効率を効果的に向上させることができる。
【0011】
(4)上記内視鏡用処置具において、前記凸部は、底部から頂部に向けて先細りする形状であり、前記凹部は、頂部から底部に向けて先細りする形状である構成としてもよい。本内視鏡用処置具によれば、凸部を凹部に極めて容易に嵌合させることができる。そのため、本内視鏡用処置具によれば、先端チップとシースとの嵌合に要する時間を効果的に短縮することができ、内視鏡用処置具を用いた手技の効率を効果的に向上させることができる。
【0012】
(5)上記内視鏡用処置具において、前記凹部は、前記シースの周方向に延びる切り欠きを有する形状であり、前記凸部は、前記凹部と嵌合した状態で前記凹部に対して前記シースの周方向に相対回転すると前記凹部の前記切り欠きに係合する突起部を有する形状である構成としてもよい。本内視鏡用処置具によれば、操作ワイヤを基端側に引き寄せることによって凸部と凹部とを嵌合させ、さらに、シースを先端チップに対して周方向に相対回転させることによって凸部の突起部を凹部の切り欠きに係合させることにより、いわゆるロック状態となり、先端チップとシースとを引き離す方向の荷重が加えられても両者の嵌合が解除されることを抑制することができる。従って、本内視鏡用処置具によれば、先端チップを周方向に回転させるための操作性を効果的に向上させることができる。
【0013】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、内視鏡用処置具やその製造方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態における内視鏡用処置具100の構成を概略的に示す説明図
図2】第1実施形態における内視鏡用処置具100の構成を概略的に示す説明図
図3】第1実施形態の内視鏡用処置具100における先端チップ40およびシース10の詳細構成を示す説明図
図4】第1実施形態の内視鏡用処置具100における先端チップ40およびシース10の詳細構成を示す説明図
図5】第1実施形態の内視鏡用処置具100における先端チップ40およびシース10の詳細構成を示す説明図
図6】第2実施形態の内視鏡用処置具100aの構成を概略的に示す説明図
図7】第3実施形態の内視鏡用処置具100bの構成を概略的に示す説明図
図8】第3実施形態の内視鏡用処置具100bの構成を概略的に示す説明図
図9】第4実施形態の内視鏡用処置具100cの構成を概略的に示す説明図
図10】第4実施形態の内視鏡用処置具100cの構成を概略的に示す説明図
図11】第5実施形態の内視鏡用処置具100dの構成を概略的に示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0015】
A.第1実施形態:
A-1.内視鏡用処置具100の構成:
図1および図2は、第1実施形態における内視鏡用処置具100の構成を概略的に示す説明図である。図1には、後述する縮径状態の内視鏡用処置具100の縦断面構成(YZ断面)が示されており、図2には、後述する拡径状態の内視鏡用処置具100の縦断面構成(YZ断面構成)が示されている。図1および図2では、内視鏡用処置具100の一部分の図示が省略されている。また、図1および図2において、Z軸正方向側が、体内に挿入される先端側(遠位側)であり、Z軸負方向側が、医師等の手技者によって操作される基端側(近位側)である。本明細書では、内視鏡用処置具100およびその各構成部材について、先端側の端部を「先端」といい、先端およびその近傍を「先端部」といい、基端側の端部を「基端」といい、基端およびその近傍を「基端部」という。
【0016】
本実施形態の内視鏡用処置具100は、いわゆるバスケット型の内視鏡用処置具であり、胆管等の体腔BC内に挿入され、結石等の異物FBを破砕したり回収したりするために用いられる医療用器具である。内視鏡用処置具100は、シース10と、操作ワイヤ20と、バスケット部30と、先端チップ40と、基端チップ50と、操作部60とを備える。
【0017】
シース10は、可撓性を有する長尺の管状部材である。シース10は、例えば樹脂や金属により形成された可撓性のチューブ11と、チューブ11の先端に接合され、例えば金属(ステンレス等)により形成された略円環状のシースチップ14とを有する。操作ワイヤ20は、長尺のワイヤ部材であり、シース10内の空間12に、シース10の軸方向(図1および図2の例では、Z軸方向)に沿って進退可能に配置されている。
【0018】
操作部60は、本体部61と、操作パイプ62と、把持部63とを有する。操作パイプ62は、操作ワイヤ20の基端に接続された棒状の部材である。把持部63は、操作パイプ62の基端に接続され、手技者により把持される部材である。本体部61は、シース10の基端に接続された略円筒状の部材である。本体部61の中空部65は、シース10の空間12と連通しており、該中空部65には、操作パイプ62が軸方向に進退可能に収容されている。なお、本体部61には、図示しない注射器等を取り付けてシース10の空間12内に薬液等を送液できるように構成された送水口66が設けられている。
【0019】
バスケット部30は、操作ワイヤ20の先端に接続されており、複数の(本実施形態では4本の)ワイヤ32から構成されている。各ワイヤ32は、例えば金属により形成されている。バスケット部30を構成する複数のワイヤ32の先端は、先端チップ40によってまとめて保持されている。また、バスケット部30を構成する複数のワイヤ32の基端は、操作ワイヤ20の先端に設けられた基端チップ50によってまとめて保持されている。これにより、バスケット部30は、基端チップ50を介して操作ワイヤ20の先端に接続されている。先端チップ40および基端チップ50は、例えば金属(ステンレス等)により形成されている。
【0020】
バスケット部30を構成する複数のワイヤ32は、湾曲して外側に向けて膨らむように自己付勢されている。そのため、図1に示すように、操作ワイヤ20が比較的基端側の位置(以下、「基準位置」という。)に位置するためにバスケット部30がシース10の空間12内に収容された状態では、バスケット部30はシース10の内周面によって押圧されて縮径した状態となる。以下、このようなバスケット部30または内視鏡用処置具100の状態を、縮径状態という。また、図2に示すように、手技者による操作部60の操作に伴い操作ワイヤ20が基準位置から先端側に移動すると、バスケット部30がシース10の先端から突出し、上記自己付勢力によって拡径し、籠状になる。以下、このようなバスケット部30または内視鏡用処置具100の状態を、拡径状態という。このように、内視鏡用処置具100は、操作ワイヤ20の進退に伴い、バスケット部30が縮径した状態でシース10内の空間12に収容された縮径状態と、バスケット部30がシース10の先端から突出して拡径した拡径状態と、の間を切り替え可能に構成されている。
【0021】
A-2.先端チップ40およびシース10の詳細構成:
図3から図5は、第1実施形態の内視鏡用処置具100における先端チップ40およびシース10の詳細構成を示す説明図である。図3には、縮径状態における先端チップ40およびシース10の外観構成が示されており、図4には、拡径状態における先端チップ40およびシース10の外観構成が示されており、図5には、図3のV-Vの位置における断面構成(XY断面構成)が示されている。
【0022】
図3から図5に示すように、先端チップ40は、最先端部41と、柱状部42とを有する。最先端部41は、先端チップ40において最先端側に位置し、先端方向に向かって外径が小さくなっていく略半球状の部分である。柱状部42は、最先端部41における基端面の中心付近から基端側に延びる略円柱状の部分である。柱状部42の外径は、最先端部41の基端の外径より小さい。上述したように、バスケット部30を構成する複数のワイヤ32の先端は、先端チップ40によってまとめて保持されているが、より詳細には、複数のワイヤ32の先端は、先端チップ40の柱状部42によってまとめて保持されている。
【0023】
また、先端チップ40の基端面には、凸部43が形成されている。凸部43は、最先端部41における基端面から基端側に延びる柱状の部分である。凸部43のXY断面形状は、任意の形状とすることができるが、例えば略矩形である。本実施形態では、先端チップ40は、柱状部42の外周廻りに略等間隔に配置された4つの凸部43を有する(図5参照)。なお、周方向に隣り合う2つの凸部43の間の空間を、凹部45と捉えることもできる。すなわち、先端チップ40の基端面には、4つの凹部45が形成されている。
【0024】
図3および図4に示すように、シース10の先端を構成するシースチップ14は、最基端部15を有する。最基端部15は、シースチップ14において最基端側に位置する略円筒状の部分である。また、シースチップ14の先端面には、凸部16が形成されている。凸部16は、最基端部15における先端面から先端側に延びる柱状の部分である。凸部16のXY断面形状は、任意の形状とすることができるが、例えば略扇形である。本実施形態では、シースチップ14は、最基端部15の外周廻りに略等間隔に配置された4つの凸部16を有する(図5参照)。各凸部16は、先端チップ40に形成された各凸部43と、先端チップ40の周方向に隣り合っている。なお、周方向に隣り合う2つの凸部16の間の空間を、凹部17と捉えることもできる。すなわち、シースチップ14の先端面には、4つの凹部17が形成されている。
【0025】
図3および図5に示すように、操作ワイヤ20が上記基準位置まで引き寄せられ、内視鏡用処置具100(バスケット部30)が縮径状態にあるときに、先端チップ40の凸部43とシースチップ14の凹部17とは互いに嵌合可能である。すなわち、図3および図5に示す状態では、先端チップ40の各凸部43は、シースチップ14の各凹部17に嵌まっている。先端チップ40の凸部43とシースチップ14の凹部17とが互いに嵌合すると、結果として、先端チップ40とシースチップ14とが嵌合し、先端チップ40とシースチップ14とが一体的に回転する状態となる。なお、この状態は、シースチップ14の凸部16と先端チップ40の凹部45とが互いに嵌合している状態(シースチップ14の各凸部16が先端チップ40の各凹部45に嵌まっている状態)と換言することができる。
【0026】
A-3.内視鏡用処置具100の動作:
本実施形態の内視鏡用処置具100を用いた体腔BC内の異物FBの破砕方法の一例は、以下の通りである。まず、操作部60を操作して操作ワイヤ20を基端側に引き寄せることにより、内視鏡用処置具100(バスケット部30)を縮径状態(図1および図3に示す状態)とする。このとき、先端チップ40の凸部43とシースチップ14の凹部17とは互いに嵌合している。この状態の内視鏡用処置具100を、予め患者の体腔BC内に挿入された内視鏡装置のチャネルに挿入し、異物FBの付近まで進入させる。さらに、先端チップ40が異物FBの横をすり抜けて異物FBより奥側まで到達するように、内視鏡用処置具100を進行させる。このとき、異物FBが比較的大きいために先端チップ40の通過が容易ではない場合には、手技者は操作部60を操作することによりシース10を周方向に回転させる。上述したように、縮径状態では先端チップ40の凸部43とシースチップ14の凹部17とが互いに嵌合しているため、シース10を周方向に回転させると、先端チップ40は、シース10(シースチップ14)と一体となって周方向に回転する。そのため、異物FBが比較的大きい場合であっても、円滑に、先端チップ40を異物FBより奥側まで進行させることができる。
【0027】
次に、操作ワイヤ20を先端側に押し出すことによって、シース10の先端からバスケット部30を突出させて拡径させる(図2参照)。その後、操作ワイヤ20を基端側に引き寄せることによって、拡径したバスケット部30の内部空間に異物FBを捕捉する。この状態で、操作ワイヤ20を基端側にさらに引き寄せることによって、先端チップ40とシースチップ14とで異物FBを挟み込んで締め付け、異物FBを破砕する。以上の方法により、内視鏡用処置具100を用いて体腔BC内の異物FBを破砕することができる。なお、異物FBを破砕する代わりに、バスケット部30内に異物FBを補足した状態で基端側に搬送することにより、異物FBを回収してもよい。
【0028】
A-4.第1実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の内視鏡用処置具100は、シース10と、操作ワイヤ20と、バスケット部30と、先端チップ40とを備える。シース10は、可撓性を有する管状の部材である。操作ワイヤ20は、シース10内にシース10の軸方向に沿って進退可能に配置されている。バスケット部30は、操作ワイヤ20の先端に接続されており、複数のワイヤ32から構成されている。バスケット部30は、操作ワイヤ20が基準位置にあるときに、シース10内に縮径した状態で収容され、操作ワイヤ20が基準位置から先端側に移動したときに、シース10の先端から突出して拡径するように構成されている。先端チップ40は、バスケット部30を構成する複数のワイヤ32の先端をまとめて保持する。また、本実施形態の内視鏡用処置具100では、先端チップ40の基端面に凸部43が形成され、シース10の先端を構成するシースチップ14の先端面に、操作ワイヤ20が基準位置にあるときに(すなわち、縮径状態のときに)凸部43と嵌合可能な凹部17が形成されている。なお、本実施形態の内視鏡用処置具100では、シース10の先端を構成するシースチップ14の先端面に凸部16が形成され、先端チップ40の基端面に、操作ワイヤ20が基準位置にあるときに(すなわち、縮径状態のときに)凸部16と嵌合可能な凹部45が形成されていると捉えることもできる。
【0029】
そのため、本実施形態の内視鏡用処置具100では、互いに嵌合可能な凸部43および凹部17(または、凸部16および凹部45)の存在により、操作ワイヤ20が基準位置にあるときに(すなわち、縮径状態のときに)、シース10を周方向に回転させると、先端チップ40がシース10と一体となって周方向に回転する。従って、本実施形態の内視鏡用処置具100によれば、先端チップ40を周方向に回転させるための操作性を向上させることができる。
【0030】
また、第1実施形態の内視鏡用処置具100では、シースチップ14に形成された凹部17の個数が先端チップ40に形成された凸部43の個数と同じであるため、凸部43を凹部17に容易に嵌合させることができる。そのため、第1実施形態の内視鏡用処置具100によれば、先端チップ40とシースチップ14(シース10)との嵌合に要する時間を短縮することができ、内視鏡用処置具100を用いた手技の効率を向上させることができる。
【0031】
B.第2実施形態:
図6は、第2実施形態の内視鏡用処置具100aの構成を概略的に示す説明図である。図6には、第2実施形態の内視鏡用処置具100aにおける先端チップ40aおよびシースチップ14の詳細構成が示されている。以下では、第2実施形態の内視鏡用処置具100aの構成のうち、上述した第1実施形態の内視鏡用処置具100と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0032】
第2実施形態の内視鏡用処置具100aは、先端チップ40aに形成された凸部43の個数が、第1実施形態の内視鏡用処置具100と異なっている。具体的には、第2実施形態の内視鏡用処置具100aでは、先端チップ40aに形成された凸部43の個数は1つである。なお、シースチップ14に形成された凹部17の個数は、第1実施形態と同様に4つである。そのため、第2実施形態では、凹部17の個数は凸部43の個数より多い。
【0033】
このように、第2実施形態の内視鏡用処置具100aでは、シースチップ14に形成された凹部17の個数が先端チップ40aに形成された凸部43の個数より多いため、凸部43を凹部17に容易に嵌合させることができる。そのため、第2実施形態の内視鏡用処置具100aによれば、先端チップ40aとシースチップ14(シース10)との嵌合に要する時間を短縮することができ、内視鏡用処置具100aを用いた手技の効率を向上させることができる。
【0034】
C.第3実施形態:
図7および図8は、第3実施形態の内視鏡用処置具100bの構成を概略的に示す説明図である。図7には、第3実施形態における縮径状態の内視鏡用処置具100bの先端チップ40bおよびシースチップ14bの外観構成が示されており、図8には、第3実施形態における拡径状態の内視鏡用処置具100bの先端チップ40bおよびシースチップ14bの外観構成が示されている。以下では、第3実施形態の内視鏡用処置具100bの構成のうち、上述した第1実施形態の内視鏡用処置具100と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0035】
第3実施形態の内視鏡用処置具100bは、先端チップ40bに形成された凸部43bの形状、および、シースチップ14bに形成された凹部17bの形状が、第1実施形態の内視鏡用処置具100と異なっている。具体的には、第3実施形態の内視鏡用処置具100bでは、先端チップ40bに形成された凸部43bは、底部(最先端部41との境界位置)から頂部に向けて先細りする形状である。本実施形態では、凸部43bは、先端チップ40bの径方向視で略台形状である。また、シースチップ14bに形成された凹部17bは、頂部から底部(最基端部15との境界位置)に向けて先細りする形状である。なお、このことは、シースチップ14bに形成された凸部16bが、底部(最基端部15との境界位置)から頂部に向けて先細りする形状であると換言することができる。本実施形態では、凹部17bは、先端チップ40bの径方向視で略台形状である。
【0036】
このように、第3実施形態の内視鏡用処置具100bでは、先端チップ40bに形成された凸部43bが、底部から頂部に向けて先細りする形状であり、シースチップ14bに形成された凹部17bが、頂部から底部に向けて先細りする形状であるため、凸部43bを凹部17bに極めて容易に嵌合させることができる。そのため、第3実施形態の内視鏡用処置具100bによれば、先端チップ40bとシースチップ14b(シース10)との嵌合に要する時間を効果的に短縮することができ、内視鏡用処置具100bを用いた手技の効率を効果的に向上させることができる。
【0037】
D.第4実施形態:
図9および図10は、第4実施形態の内視鏡用処置具100cの構成を概略的に示す説明図である。図9には、第4実施形態における縮径状態の内視鏡用処置具100cの先端チップ40cおよびシースチップ14cの外観構成が示されており、図10には、第4実施形態における拡径状態の内視鏡用処置具100cの先端チップ40cおよびシースチップ14cの外観構成が示されている。以下では、第4実施形態の内視鏡用処置具100cの構成のうち、上述した第1実施形態の内視鏡用処置具100と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0038】
第4実施形態の内視鏡用処置具100cは、先端チップ40cに形成された凸部43cの形状、および、シースチップ14cに形成された凹部17cの形状が、第1実施形態の内視鏡用処置具100と異なっている。具体的には、第4実施形態の内視鏡用処置具100cでは、シースチップ14cに形成された凹部17cは、シース10の周方向に延びる切り欠き18を有する形状である。本実施形態では、切り欠き18は、凹部17cにおける底部の位置に設けられている。また、先端チップ40cに形成された凸部43cは、凸部43cが凹部17cと嵌合した状態で凹部17cに対してシース10の周方向に相対回転すると凹部17cの切り欠き18に係合するような突起部46を有する形状である。本実施形態では、突起部46は、凸部43cにおける頂部の位置に設けられている。
【0039】
このように、第4実施形態の内視鏡用処置具100cでは、シースチップ14cに形成された凹部17cが切り欠き18を有する形状であり、先端チップ40cに形成された凸部43cが切り欠き18に係合する突起部46を有する形状である。そのため、操作ワイヤ20を基端側に引き寄せることによって先端チップ40cに形成された凸部43cとシースチップ14cに形成された凹部17cとを嵌合させ、さらに、シースチップ14c(シース10)を先端チップ40cに対して周方向に相対回転させることによって先端チップ40cの凸部43cの突起部46を凹部17cの切り欠き18に係合させることにより、いわゆるロック状態となり、先端チップ40cとシースチップ14cとを引き離す方向の荷重が加えられても両者の嵌合が解除されることを抑制することができる。従って、第4実施形態の内視鏡用処置具100cによれば、先端チップ40cを周方向に回転させるための操作性を効果的に向上させることができる。
【0040】
E.第5実施形態:
図11は、第5実施形態の内視鏡用処置具100dの構成を概略的に示す説明図である。図11には、第5実施形態における縮径状態の内視鏡用処置具100dの縦断面構成(YZ断面)が示されている。以下では、第5実施形態の内視鏡用処置具100dの構成のうち、上述した第1実施形態の内視鏡用処置具100と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0041】
第5実施形態の内視鏡用処置具100dは、シース10dの構成が、第1実施形態の内視鏡用処置具100と異なっている。具体的には、第5実施形態の内視鏡用処置具100dでは、シース10dの先端部P1が、シース10dの先端部P1以外の部分(以下、「主部P2」という。)の軸方向に対して湾曲している。なお、本実施形態では、シース10dの先端部P1は、シースチップ14と、チューブ11dの先端部とから構成されており、シース10dの主部P2は、チューブ11dの先端部以外の部分から構成されている。すなわち、本実施形態では、チューブ11dの先端部が湾曲している結果、シース10dの先端部P1が湾曲している。また、シース10dの先端部P1が主部P2の軸方向に対して湾曲しているとは、シース10dの先端が主部P2の中心軸の延長上に位置しないことを意味し、シース10dが所定の位置で折れ曲がった形態(図11に示す形態)や、シース10dにおける所定の位置より先端側が一定または変化する曲率で曲線状に曲がっている形態等を含む。なお、本実施形態では、縮径状態において、バスケット部30の全体が、シース10dの先端部P1内に収まっている。
【0042】
このように、第5実施形態の内視鏡用処置具100dでは、シース10dの先端部P1がシース10dの主部P2の軸方向に対して湾曲しているため、縮径状態においてシース10dを周方向に回転させることにより、先端チップ40を所望の向きに向けることができる。そのため、例えば図11に示すように、胆管等の体腔BCの分岐点BIにおいて、内視鏡用処置具100dを進入させるべき体腔BCを容易に選択することができる。従って、第5実施形態の内視鏡用処置具100dによれば、内視鏡用処置具100dを用いた手技の効率を効果的に向上させることができる。
【0043】
なお、ガイドワイヤを併用することによっても、内視鏡用処置具を進行させるべき体腔BCを容易に選択することができるが、その場合には、手技が煩雑になると共にコスト面でも不利となり、さらに、内視鏡用処置具の先端にガイドワイヤ案内手段を設ける必要があるために、内視鏡用処置具の通過性が低下する。また、先端チップを湾曲させることによっても、内視鏡用処置具を進行させるべき体腔BCを容易に選択することができるが、その場合には、先端チップの前面投影面積が大きくなって内視鏡用処置具の通過性が低下する。第5実施形態の内視鏡用処置具100dによれば、それらの問題を生じさせることなく、内視鏡用処置具100dを用いた手技の効率を効果的に向上させることができる点で、それらの構成より有利である。
【0044】
F.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0045】
上記実施形態における内視鏡用処置具100の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、バスケット部30は、4本のワイヤ32により構成されているが、バスケット部30を構成するワイヤ32の本数が他の本数(例えば、6本、8本等)であってもよい。また、上記実施形態では、バスケット部30を構成する複数のワイヤ32の基端が、操作ワイヤ20の先端に設けられた基端チップ50によってまとめて保持されているが、該複数のワイヤ32における基端より先端側の所定の箇所が他のチップ部材によってまとめて保持されていてもよい。このような構成では、該複数のワイヤ32における先端チップ40と該他のチップとの間に位置する部分が、バスケット部30として機能する。このような構成においても、バスケット部30は、操作ワイヤ20の先端に接続されていると言える。
【0046】
上記実施形態において、先端チップ40に形成された凸部43(および凹部45)の個数や、シースチップ14に形成された凹部17(および凸部16)の個数は、あくまで一例であり、任意に変更可能である。また、上記実施形態において、先端チップ40に複数の凸部43(および凹部45)が形成されている場合、または、シースチップ14に複数の凹部17(および凸部16)が形成されている場合、各凸部43(および凹部45)または凹部17(および凸部16)は周方向に略均等に配置されているが、必ずしもこのような略均等配置である必要はない。
【0047】
上記第3実施形態では、先端チップ40bに形成された凸部43bは、先端チップ40bの径方向視で略台形状であるが、底部から頂部に向けて先細りする形状である限りにおいて、他の形状(例えば、側面が曲面となるように先細りする形状)であってもよい。同様に、上記第3実施形態では、シースチップ14bに形成された凹部17bは、先端チップ40bの径方向視で略台形状であるが、頂部から底部に向けて先細りする形状である限りにおいて、他の形状(例えば、側面が曲面となるように先細りする形状)であってもよい。
【0048】
上記第4実施形態では、シースチップ14cに形成された凹部17cにおいて、切り欠き18が凹部17cにおける底部の位置に設けられているが、切り欠き18は、凸部43cの突起部46と係合可能である限りにおいて、他の位置(例えば、凹部17cにおける頂部と底部との中間の位置)に設けられてもよい。同様に、上記第4実施形態では、先端チップ40cに形成された凸部43cにおいて、突起部46が凸部43cにおける頂部の位置に設けられているが、突起部46は、凹部17cの切り欠き18と係合可能である限りにおいて、他の位置(例えば、凸部43cにおける頂部と底部との中間の位置)に設けられてもよい。また、凹部17cの切り欠き18は複数設けられてよく、同様に切り欠き18と係合可能である限りにおいて、突起部46は複数設けられてもよい。
【0049】
上記実施形態では、シース10がチューブ11とシースチップ14とを有し、シースチップ14に、先端チップ40の凸部43と嵌合する凹部17が形成されているが、シース10がシースチップ14を有さず、チューブ11の先端面に、先端チップ40の凸部43と嵌合する凹部が形成されていてもよい。
【0050】
上記第5実施形態では、縮径状態において、バスケット部30の全体が、シース10dの先端部P1内に収まっているが、バスケット部30における先端側の一部分のみがシース10dの先端部P1内に収まり、バスケット部30における残りの一部分がシース10dの主部P2内に収容されるとしてもよい。
【0051】
上記実施形態では、チューブ11は、樹脂や金属により形成された可撓性の管状構造で形成されるが、コイル体で形成されるとしてもよい。
【0052】
上記実施形態では、先端チップ40の基端面に凸部43が形成され、シースチップ14の先端面に凹部17が形成され、凸部43と凹部17とが互いに嵌合可能である構成を採用しているが、上述したように、該構成は、先端チップ40の基端面に凹部45が形成され、シースチップ14の先端面に凸部16が形成され、凹部45と凸部16とが互いに嵌合可能である構成と換言することができる。すなわち、先端チップ40の基端面とシースチップ14(シース10)の先端面との一方に、凸部が形成され、先端チップ40の基端面とシースチップ14(シース10)の先端面との他方に、操作ワイヤ20が基準位置にあるときに(縮径状態にあるときに)該凸部と嵌合可能な凹部が形成されている構成であればよい。
【符号の説明】
【0053】
10:シース 11:チューブ 12:空間 14:シースチップ 15:最基端部 16:凸部 17:凹部 18:切り欠き 20:操作ワイヤ 30:バスケット部 32:ワイヤ 40:先端チップ 41:最先端部 42:柱状部 43:凸部 45:凹部 46:突起部 50:基端チップ 60:操作部 61:本体部 62:操作パイプ 63:把持部 65:中空部 66:送水口 100:内視鏡用処置具 BC:体腔 BI:分岐点 FB:異物 P1:先端部 P2:主部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11