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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】点火装置組立体及び点火装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/264 20060101AFI20240528BHJP
   B01J 7/00 20060101ALI20240528BHJP
   F42B 3/12 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
B60R21/264
B01J7/00 A
F42B3/12
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020152670
(22)【出願日】2020-09-11
(65)【公開番号】P2022046988
(43)【公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福島 彬
(72)【発明者】
【氏名】升本 貴也
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-106016(JP,A)
【文献】特開2002-172996(JP,A)
【文献】特開2011-201524(JP,A)
【文献】特開2012-076489(JP,A)
【文献】国際公開第2020/179113(WO,A1)
【文献】特開2004-217059(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/264
B01J 7/00
F42B 3/12
B60R 22/195
B60R 22/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
点火器本体と、当該点火器本体を保持する点火器カラー部材と、を有する点火装置と、
前記点火器カラー部材が固定された筒状固定部を有するハウジングと、
を備え、
前記筒状固定部は、当該筒状固定部の先端側が径方向内側に折り曲げられた、かしめ固定部を有し、
前記点火器カラー部材は、
内側に前記点火器本体に接続されるコネクタを挿入可能なコネクタ接続空間が形成された筒状且つ金属製の筒状壁部であって、前記かしめ固定部にかしめられた筒状壁部と、
樹脂製の樹脂領域部と金属製の金属領域部とを含み、前記筒状壁部の先端側から延在すると共に前記コネクタ接続空間の開口端を形成する開口端形成部と、
前記開口端形成部に形成され、前記かしめ固定部の先端面と対向するかしめ先端面対向領域部と、
を含み、
前記かしめ先端面対向領域部の少なくとも一部が前記金属領域部によって形成されている、
点火装置組立体。
【請求項2】
前記かしめ先端面対向領域部の周方向における一部が、前記樹脂領域部によって形成されている、
請求項1に記載の点火装置組立体。
【請求項3】
前記かしめ先端面対向領域部の周方向に沿って、前記金属領域部及び前記樹脂領域部が交互に設けられている、
請求項2に記載の点火装置組立体。
【請求項4】
前記かしめ先端面対向領域部において、前記金属領域部における周方向の総長さが、前記樹脂領域部における周方向の総長さよりも長い、
請求項2又は3に記載の点火装置組立体。
【請求項5】
前記金属領域部及び前記樹脂領域部は、前記かしめ先端面対向領域部の周方向における複数箇所にそれぞれ設けられており、
各金属領域部における周方向の長さは、各樹脂領域部における周方向の長さよりも長い、
請求項2から4の何れか一項に記載の点火装置組立体。
【請求項6】
前記かしめ先端面対向領域部における内壁面の周方向に沿って、前記コネクタに設けられた係止用突起を嵌合可能な嵌合溝が設けられている、
請求項1から5の何れか一項に記載の点火装置組立体。
【請求項7】
前記開口端形成部の部材厚さが、前記かしめ先端面対向領域部において最小となっている、
請求項1から6の何れか一項に記載の点火装置組立体。
【請求項8】
前記点火器カラー部材は、更に、前記樹脂領域部と一体に樹脂成形されると共に前記筒状壁部における基端側に向かって前記樹脂領域部から延在することで前記筒状壁部における内壁面を部分的に被覆する樹脂被覆部を含み、
前記樹脂被覆部は、前記コネクタ接続空間を画定する樹脂内壁面を有し、
前記筒状壁部における内壁面のうち、前記樹脂被覆部によって被覆されていない金属内
壁面に対して前記樹脂内壁面が面一に接続されている、
請求項1から7の何れか一項に記載の点火装置組立体。
【請求項9】
前記開口端形成部が環状に形成されると共に、その外径が前記筒状壁部の外径よりも小さく、
前記かしめ固定部は、前記筒状壁部の先端面を固定している、
請求項1から8の何れか一項に記載の点火装置組立体。
【請求項10】
前記点火器本体は、前記コネクタ接続空間に向かって伸びる一対の導電ピンを有し、
前記コネクタ接続空間には、前記コネクタの非挿入時に前記一対の導電ピンを短絡状態に維持するための金属製の短絡部材と、前記短絡部材を保持する樹脂製のホルダ部材が装着されており、
前記ホルダ部材は、前記筒状壁部及び前記開口端形成部に沿って配置されると共に互いに対向配置される一対のホルダ壁面部を有し、当該一対のホルダ壁面部に挟まれた領域に前記コネクタを挿入可能な中空のコネクタ挿入部が形成されており、
前記かしめ先端面対向領域部のうち、前記一対のホルダ壁面部に対向配置される領域の少なくとも一部が前記金属領域部によって形成されている、
請求項1から9の何れか一項に記載の点火装置組立体。
【請求項11】
前記ハウジングの内部には、前記点火器本体の作動時に点火されるガス発生剤が収容されている、
請求項1から10の何れか一項に記載の点火装置組立体。
【請求項12】
点火器本体と、当該点火器本体を保持する点火器カラー部材と、を有し、ハウジングの筒状固定部に固定される点火装置であって、
前記点火器カラー部材は、
内側に前記点火器本体に接続されるコネクタを挿入可能なコネクタ接続空間が形成された筒状且つ金属製の筒状壁部であって、前記筒状固定部の先端側が径方向内側に折り曲げられてなるかしめ固定部にかしめられる筒状壁部と、
樹脂製の樹脂領域部と金属製の金属領域部とを含み、前記筒状壁部の先端側から延在すると共に前記コネクタ接続空間の開口端を形成する開口端形成部と、
前記開口端形成部に形成され、前記かしめ固定部の先端面と対向するかしめ先端面対向領域部と、
を含み、
前記かしめ先端面対向領域部の少なくとも一部が前記金属領域部によって形成されている、
点火装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点火装置組立体及び点火装置に関する。
【背景技術】
【0002】
点火装置と、当該点火装置が固定されたハウジングを備えた点火装置組立体として、シートベルトのプリテンショナー用やエアバッグ用のインフレータが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ガス発生剤の燃焼による燃焼ガスと加圧ガスによりエアバッグを膨張させる方式のインフレータが開示されている。特許文献1に開示されたインフレータは、筒状のハウジングの開口端部が径方向内側に折り曲げられ、点火装置のカラー部材がハウジングの端部にかしめられることによってハウジングの開口端部に点火装置が固定されている。点火装置のカラー部材は、一般に、内側に点火器本体に接続されるコネクタを挿入可能なコネクタ接続空間が形成された筒状且つ金属製の筒状壁部に、絶縁樹脂材料を介して点火器本体が保持されている。
【0004】
ところで、カラー部材におけるコネクタ接続空間の開口端部側の領域は、接続されるコネクタに適合するように設計を行う必要があり、また、その内周面にはコネクタ側の突起を固定する嵌合溝が形成されることが多い。そのため、加工コストが嵩み易い金属ではなく、金属製の筒状壁部における先端側に射出成形等なされた樹脂材料によってコネクタ接続空間の開口端部を形成することが多く行われている。
【0005】
これに関連して、特許文献2には、エアバッグのインフレータ用の点火装置が開示されている。特許文献2に開示された点火装置は、その内側にコネクタを挿入する凹部が形成されると共に点火器を保持する筒状の金属本体部12と、当該金属本体部12から延在する筒状のプラスチック接続部16を含むカラー部材を備え、プラスチック接続部16によってコネクタを挿入する凹部の開口端が形成されている。また、プラスチック接続部16の内壁面には、コネクタを嵌合するための溝24が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-226222号公報
【文献】米国出願公開2009/0114109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ハウジングの開口端部を折り曲げ、かしめによって点火装置のカラー部材を固定することによって点火装置組立体を組み立てる場合、ハウジングの折り曲げられた開口端部の先端面がコネクタ接続空間の開口端を形成する樹脂製の開口端形成部に当接した際に、開口端形成部が径方向内側に変形する虞がある。特に、カラー部材における樹脂製の開口端形成部のうち、コネクタを嵌合するための溝が形成されている部分は薄肉化されているため、ハウジングの開口端部における先端面が押し付けられた際に変形し易く、コネクタ接続空間に対してコネクタを外部から挿入することが困難になる虞がある。
【0008】
本開示の技術は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、点火器本体及び点火器カラー部材を有する点火装置において、かしめによって点火器カラー部材をハウジングに固定する際、点火器カラー部材におけるコネクタ接続空間の開口端を形成する開口端形成部の変形を低減する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本開示の技術は、以下の構成を採用した。即ち、本開示の技術の一態様は、点火器本体と、当該点火器本体を保持する点火器カラー部材と、を有する点火装置と、前記点火器カラー部材が固定された筒状固定部を有するハウジングと、を備え、前記筒状固定部は、当該筒状固定部の先端側が径方向内側に折り曲げられた、かしめ固定部を有し、前記点火器カラー部材は、内側に前記点火器本体に接続されるコネクタを挿入可能なコネクタ接続空間が形成された筒状且つ金属製の筒状壁部であって、前記かしめ固定部にかしめられた筒状壁部と、樹脂製の樹脂領域部と金属製の金属領域部とを含み、前記筒状壁部の先端側から延在すると共に前記コネクタ接続空間の開口端を形成する開口端形成部と、前記開口端形成部に形成され、前記かしめ固定部の先端面と対向するかしめ先端面対向領域部と、を含み、前記かしめ先端面対向領域部の少なくとも一部が前記金属領域部によって形成されている、点火装置組立体である。
【0010】
ここで、前記かしめ先端面対向領域部の周方向における一部が、前記樹脂領域部によって形成されていても良い。
【0011】
また、前記かしめ先端面対向領域部の周方向に沿って、前記金属領域部及び前記樹脂領域部が交互に設けられていても良い。
【0012】
また、前記かしめ先端面対向領域部において、前記金属領域部における周方向の総長さが、前記樹脂領域部における周方向の総長さよりも長くても良い。
【0013】
また、前記金属領域部及び前記樹脂領域部は、前記かしめ先端面対向領域部の周方向における複数箇所にそれぞれ設けられており、各金属領域部における周方向の長さは、各樹脂領域部における周方向の長さよりも長くても良い。
【0014】
また、前記かしめ先端面対向領域部における内壁面の周方向に沿って、前記コネクタに設けられた係止用突起を嵌合可能な嵌合溝が設けられていても良い。
【0015】
また、前記開口端形成部の部材厚さが、前記かしめ先端面対向領域部において最小となっていても良い。
【0016】
ここで、前記点火器カラー部材は、更に、前記樹脂領域部と一体に樹脂成形されると共に前記筒状壁部における基端側に向かって前記樹脂領域部から延在することで前記筒状壁部における内壁面を部分的に被覆する樹脂被覆部を含み、前記樹脂被覆部は、前記コネクタ接続空間を画定する樹脂内壁面を有し、前記筒状壁部における内壁面のうち、前記樹脂被覆部によって被覆されていない金属内壁面に対して前記樹脂内壁面が面一に接続されていても良い。
【0017】
また、本開示に係る点火装置組立体において、前記開口端形成部が環状に形成されると共に、その外径が前記筒状壁部の外径よりも小さく、前記かしめ固定部は、前記筒状壁部の先端面を固定していても良い。
【0018】
また、前記点火器本体は、前記コネクタ接続空間に向かって伸びる一対の導電ピンを有し、前記コネクタ接続空間には、前記コネクタの非挿入時に前記一対の導電ピンを短絡状態に維持するための金属製の短絡部材と、前記短絡部材を保持する樹脂製のホルダ部材が装着されており、前記ホルダ部材は、前記筒状壁部及び前記開口端形成部に沿って配置されると共に互いに対向配置される一対のホルダ壁面部を有し、当該一対のホルダ壁面部に挟まれた領域に前記コネクタを挿入可能な中空のコネクタ挿入部が形成されており、前記
かしめ先端面対向領域部のうち、前記一対のホルダ壁面部に対向配置される領域の少なくとも一部が前記金属領域部によって形成されていても良い。
【0019】
また、本開示に係る点火装置組立体において、前記ハウジングの内部には、前記点火器本体の作動時に点火されるガス発生剤が収容されていても良い。
【0020】
また、本開示の技術の一態様は、点火器本体と、当該点火器本体を保持する点火器カラー部材と、を有し、ハウジングの筒状固定部に固定される点火装置であって、前記点火器カラー部材は、内側に前記点火器本体に接続されるコネクタを挿入可能なコネクタ接続空間が形成された筒状且つ金属製の筒状壁部であって、前記筒状固定部の先端側が径方向内側に折り曲げられてなるかしめ固定部にかしめられる筒状壁部と、樹脂製の樹脂領域部と金属製の金属領域部とを含み、前記筒状壁部の先端側から延在すると共に前記コネクタ接続空間の開口端を形成する開口端形成部と、前記開口端形成部に形成され、前記かしめ固定部の先端面と対向するかしめ先端面対向領域部と、を含み、前記かしめ先端面対向領域部の少なくとも一部が前記金属領域部によって形成されている、点火装置であっても良い。
【発明の効果】
【0021】
本開示の技術によれば、点火器本体及び点火器カラー部材を有する点火装置において、かしめによって点火器カラー部材をハウジングに固定する際、点火器カラー部材におけるコネクタ接続空間の開口端を形成する開口端形成部の変形を低減する技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、実施形態1に係るインフレータの軸方向の概略断面図である。
図2図2は、実施形態1に係る点火装置における軸方向の概略断面図である。
図3図3は、実施形態1に係る点火器カラー部材を先端側から眺めた概略図である。
図4図4は、実施形態1に係る点火器カラー部材の第1領域に対応するA-A断面を示す図である。
図5図5は、実施形態1に係る点火器カラー部材の第2領域に対応するB-B断面を示す図である。
図6図6は、実施形態1に係る第2ハウジングの筒状固定部に点火装置を固定する状況を説明する図である。
図7図7は、実施形態1の変形例1に係るかしめ先端面対向領域部における樹脂領域部及び金属領域部の配置態様を説明する図である。
図8図8は、実施形態1の変形例2に係るかしめ先端面対向領域部における樹脂領域部及び金属領域部の配置態様を説明する図である。
図9図9は、実施形態1の変形例3に係る点火器カラー部材を先端側から眺めた概略図である。
図10図10は、実施形態1の変形例3に係る点火器カラー部材の第3領域に対応するC-C断面を示す図である。
図11図11は、図5に示す点火器カラー部材7の第2領域R2に対応するB-B断面の変形例を示す図である。
図12図12は、実施形態2に係る点火器カラー部材を先端側から眺めた概略図である。
図13図13は、ホルダ部材を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、図面を参照して本開示の実施形態に係る点火装置及び点火装置組立体について説明する。なお、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であって、
本発明の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本開示は、実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0024】
<実施形態1>
図1は、実施形態1に係る点火装置組立体の一例であるインフレータ1の軸方向の概略断面図である。インフレータ1は、例えばエアバッグ用のインフレータであり、作動時にエアバッグ(図示せず)を膨張させる作動用のガスをエアバッグに供給する装置である。インフレータ1は、加圧ガス部2、ガス発生器3、ディフュザー部4等を備えている。
【0025】
加圧ガス部2は、外殻を形成する筒状の第1ハウジング21を有し、第1ハウジング21の内部に加圧ガスが充填された加圧ガス室22が形成されている。加圧ガス室22に充填された加圧ガスは、例えば、アルゴン、ヘリウム、或いはこれらの混合物からなる加圧ガスであっても良い。第1ハウジング21の側面には、加圧ガスの充填孔23が形成されており、充填孔23を通じて加圧ガスを加圧ガス室22に充填した状態で、閉塞ピン24により充填孔23が閉塞されている。
【0026】
ガス発生器3は、外殻を形成する筒状の第2ハウジング31を有し、第2ハウジング31の内部に形成された燃焼室32にガス発生剤33が収容されている。燃焼室32に収容されるガス発生剤33は特に限定されないが、例えば、硝酸グアニジン(41重量%)、塩基性硝酸銅(49重量%)及びバインダーや添加物からなる公知のものを用いることができる。また、ガス発生剤33は、例えば顆粒状、ペレット状、円柱状、ディスク状等、種々の形状を採用できる。
【0027】
ガス発生器3は、第2ハウジング31の一端側に固定された点火装置5を備えている。図1の符号34は、第2ハウジング31の一端側に形成された筒状固定部である。筒状固定部34は筒状の開口端であり、筒状固定部34の先端側が径方向内側に折り曲げられることで、かしめ固定部35が形成されている。点火装置5は、筒状固定部34のかしめ固定部35をかしめることで、第2ハウジング31に固定されている。
【0028】
図2は、実施形態1に係る点火装置5における軸方向の概略断面図である。点火装置5は、点火器本体6と、点火器本体6を保持する点火器カラー部材7、点火器本体6及び点火器カラー部材7を一体に接合する樹脂接合部9等を含んで構成されている。
【0029】
点火器本体6は、点火薬(図示せず)が収容された着火部61、及び一対の導電ピン62を有する電気式の点火器である。一対の導電ピン62には、着火部61に収容された点火薬を着火するための着火電流が供給されるようになっている。また、一対の導電ピン62の基端側は、電気的絶縁状態に保持されると共に着火部61の内部に挿入されており、一対の導電ピン62の基端同士を連結するように図示しないブリッジワイヤ(抵抗体)が連架されている。ブリッジワイヤは、例えばニクロム線等であってもよい。また、点火薬としては、ZPP(ジルコニウム・過塩素酸カリウム)、ZWPP(ジルコニウム・タングステ
ン・過塩素酸カリウム)、THPP(水素化チタン・過塩素酸カリウム)、鉛トリシネート等を採用してもよい。なお、点火薬は、ブリッジワイヤに接触した状態で着火部61内に収容されている。
【0030】
点火器カラー部材7は、内側にコネクタ接続空間71が形成された筒状且つ金属製の筒状壁部72と、当該筒状壁部72の先端側から延在すると共にコネクタ接続空間71の開口端を形成する開口端形成部73を有している。コネクタ接続空間71は、コネクタを挿入可能な空間である。図2に示すように、点火器本体6の一対の導電ピン62は、着火部61からコネクタ接続空間71に向かって伸びており、コネクタ接続空間71の内部に配
置されている。
【0031】
ここで、点火器カラー部材7の筒状壁部72は、概略円筒形状を有している。図2に示す符号CLは、点火器カラー部材7の中心軸である。以下では、筒状壁部72の軸方向において、点火器本体6の着火部61に対して近位に位置する方の端部を基端部と定義し、着火部61に対して遠位に位置する方の端部を先端部と定義する。図2における符号721は、筒状壁部72の先端面である。点火装置5は、点火器カラー部材7における筒状壁部72の先端面721を筒状固定部34のかしめ固定部35によってかしめられることによって第2ハウジング31に固定される。また、樹脂接合部9は、例えば、点火器本体6及び点火器カラー部材7の筒状壁部72間に射出成形された樹脂材料によって形成されている。例えば、射出成形金型内にそれぞれ配置した点火器本体6及び点火器カラー部材7の周りに、加熱溶融させた樹脂材料を射出注入して、点火器本体6及び点火器カラー部材7と樹脂材料を一体化することで、点火装置5を形成することができる。
【0032】
また、点火器カラー部材7の開口端形成部73は、概略円筒形状を有し、樹脂製の樹脂領域部と金属製の金属領域部とを含んで構成されている。開口端形成部73における樹脂領域部及び金属領域部の詳細については後述する。点火器カラー部材7における筒状壁部72及び開口端形成部73は同軸に配置されており、開口端形成部73の外径は筒状壁部72の外径よりも小さい。
【0033】
ここで、図2における符号74は、開口端形成部73の「かしめ先端面対向領域部」である。また、符号75は、開口端形成部73の先端側に位置する開口端部である。かしめ先端面対向領域部74は、図1に示すように点火装置5を第2ハウジング31に固定する際、筒状固定部34のかしめ固定部35における先端面35A(図1を参照)と対向する部位である。本実施形態においては、図2に示すように点火器カラー部材7の開口端形成部73におけるかしめ先端面対向領域部74に、嵌合溝76が形成されている。嵌合溝76は、かしめ先端面対向領域部74の内壁面に設けられており、これによって嵌合溝76がコネクタ接続空間71に面して配置されている。嵌合溝76は、かしめ先端面対向領域部74における内壁面の周方向に沿って延在し、コネクタ(図示せず)に設けられた係止用突起を嵌合可能な溝である。嵌合溝76は、かしめ先端面対向領域部74における内壁面の周方向に沿って環状に形成されていても良い。また、嵌合溝76は、かしめ先端面対向領域部74における内壁面の複数箇所に断続的に形成されていても良い。また、図2に示すように、点火器カラー部材7の開口端形成部73は、その部材厚さが、嵌合溝76が形成されるかしめ先端面対向領域部74において最小である。また、開口端形成部73の先端側に連なる開口端部75は、樹脂材料によって形成されている。そのため、コネクタ接続空間71にコネクタを装着する際、コネクタの係止用突起によって開口端形成部73の開口端部75が径方向外側に撓むことによって、嵌合溝76に対して係止用突起を容易に嵌合させることができる。
【0034】
更に、図1を参照してガス発生器3を説明すると、ガス発生器3の第2ハウジング31は、加圧ガス部2の第1ハウジング21の一端側に形成された第1接合部25に対して、例えば抵抗溶接等によって接合されている。また、加圧ガス部2における加圧ガス室22とガス発生器3における燃焼室32との間に形成される第1連通孔36は、ガス発生器3の作動前において椀状の第1破裂板37で閉塞されており、これによって燃焼室32の内部が常圧に保持されている。例えば、第1破裂板37は、その周縁部37Aが第2ハウジング31に抵抗溶接されている。また、第1破裂板37には、ガス通過孔38Aを有するキャップ38が、加圧ガス室22側から第1破裂板37を覆うように被せられている。キャップ38は、その開口周縁部が外側に折り曲げられたフランジ部を有しており、当該フランジ部が第2ハウジング31の他端側に固定されている。
【0035】
また、図1に示すように、加圧ガス部2の第1ハウジング21の他端側に形成された第2接合部26には、ディフュザー部4が接続されている。ディフュザー部4は、インフレータ1の作動時に燃焼ガス及び加圧ガスを外部に排出させるためのガス排出孔41が複数設けられたキャップ体であって、例えば抵抗溶接等によって第1ハウジング21の第2接合部26に接合されている。また、加圧ガス部2における加圧ガス室22とディフュザー部4との間の第2連通孔42は第2破裂板43で閉塞されており、これによってディフュザー部4の内部が常圧に保持されている。例えば、第2破裂板43は、その周縁部43Aがディフュザー部4に抵抗溶接されている。
【0036】
以上のように構成されるインフレータ1を作動させる際には、外部電源に接続されたコネクタを通じて点火装置5(点火器本体6)における一対の導電ピン62に着火電流が供給される。その結果、ブリッジワイヤが発熱し、着火部61内の点火薬が着火、燃焼し、燃焼生成物(例えば、火炎)が生成される。そして、点火薬の燃焼生成物(例えば、火炎)が着火部61から放出され、燃焼室32に収容されているガス発生剤33が点火される。その結果、ガス発生剤33が燃焼し、燃焼ガスが生成される。そして、高温の燃焼ガスによる燃焼室32内の圧力上昇に伴って第1破裂板37が開裂すると、燃焼ガスが加圧ガス室22内に流入する。その結果、加圧ガス室22内が圧力上昇することによって第2破裂板43が開裂し、加圧ガス及び燃焼ガスがディフュザー部4のガス排出孔41から外部に排出され、エアバッグへと供給される。
【0037】
次に、第2ハウジング31におけるかしめ固定部35にかしめられる、点火装置5を構成する点火器カラー部材7について、その詳細構造について説明する。以下に説明するように、本開示に係る点火器カラー部材7は、かしめ先端面対向領域部74の少なくとも一部が金属製の金属領域部によって形成されている。
【0038】
図3は、実施形態1に係る点火器カラー部材7を先端側から眺めた概略図である。点火器カラー部材7の周方向において、斜めハッチングが付されている領域を「第1領域R1」と呼び、格子ハッチングが付されている領域を「第2領域R2」と呼ぶ。図4は、実施形態1に係る点火器カラー部材7の第1領域R1に対応するA-A断面を示す図である。図5は、実施形態1に係る点火器カラー部材7の第2領域R2に対応するB-B断面を示す図である。なお、図3図5において、点火装置5における点火器本体6及び樹脂接合部9の図示を省略している。
【0039】
図4に示すA-A断面を有する第1領域R1においては、点火器カラー部材7におけるかしめ先端面対向領域部74が樹脂製の樹脂領域部74Aによって形成されている。一方、図5に示すB-B断面を有する第2領域R2においては、点火器カラー部材7におけるかしめ先端面対向領域部74が金属製の金属領域部74Bによって形成されている。すなわち、本実施形態における点火器カラー部材7におけるかしめ先端面対向領域部74は、周方向における一部が樹脂領域部74Aによって形成され、残部が金属領域部74Bによって形成されている。なお、図4及び図5において、薄いハッチングが付された領域は金属材料によって形成されている領域を示し、濃いハッチングが付された領域は樹脂材料によって形成されている領域を示している。
【0040】
すなわち、点火器カラー部材7の第2領域R2においては、点火器カラー部材7の筒状壁部72及びかしめ先端面対向領域部74(金属領域部74B)が一体の金属材料で形成されており、開口端部75が樹脂材料によって形成されている。一方、点火器カラー部材7の第1領域R1においては、点火器カラー部材7の筒状壁部72が金属材料で形成されており、かしめ先端面対向領域部74(樹脂領域部74A)及び開口端部75が一体の樹脂材料で形成されている。また、図4に示す例では、点火器カラー部材7における筒状壁部72の内周側に、かしめ先端面対向領域部74の樹脂領域部74Aと一体に樹脂成形さ
れた樹脂被覆部77が設けられている。樹脂被覆部77は、筒状壁部72における基端側に向かってかしめ先端面対向領域部74(樹脂領域部74A)から延在することで筒状壁部72における内壁面を部分的に被覆しており、コネクタ接続空間71を画定する樹脂内壁面77Aを有している。また、図4に示す符号72Aは、筒状壁部72における内壁面のうち、樹脂被覆部77によって被覆されていない金属内壁面である。図4に示す例では、点火器カラー部材7の筒状壁部72における金属内壁面72Aに対して、樹脂内壁面77Aが面一に接続されている。これによれば、筒状壁部72における金属内壁面72Aと樹脂内壁面77Aと面一であるため、コネクタ接続空間71に対してコネクタを円滑に挿入することができる。
【0041】
以上のように、本実施形態における点火器カラー部材7は、かしめ先端面対向領域部74の周方向に沿って、樹脂領域部74A及び金属領域部74Bが交互に設けられている。図3に示す例では、かしめ先端面対向領域部74の周方向において、樹脂領域部74A及び金属領域部74Bが2カ所ずつ交互に配置されており、各樹脂領域部74A,金属領域部74Bが周方向に延在する中心角は何れも90°となっている。すなわち、各樹脂領域部74A,金属領域部74Bがかしめ先端面対向領域部74の周方向に沿って延在する長さ(円弧長さ)は互いに等しい。但し、点火器カラー部材7における樹脂領域部74A及び金属領域部74Bの態様は、他の実施形態において後述するように種々の態様を採用することができる。
【0042】
図6は、実施形態1に係る第2ハウジング31の筒状固定部34に点火装置5を固定する状況を説明する図である。図6において、点火装置5における点火器本体6及び樹脂接合部9の図示を省略している。また、図6に示す点火器カラー部材7は、第2領域R2に対応するB-B断面を示している。
【0043】
第2ハウジング31の筒状固定部34に点火装置5を固定する際には、図6の上段に示すように、第2ハウジング31の筒状固定部34に点火装置5における点火器カラー部材7を挿入する。そして筒状固定部34の先端側を径方向内側に折り曲げることで形成されたかしめ固定部35によって、筒状壁部72の先端面721を固定する。これにより、図6の下段に示すように、筒状固定部34のかしめ固定部35に筒状壁部72の先端面721が当接した状態で点火装置5が第2ハウジング31に取り付けられる。その際、筒状壁部72の先端面721に沿って配置される筒状固定部34のかしめ固定部35は、その先端面35Aが開口端形成部73のかしめ先端面対向領域部74に対向して配置されるため、かしめ先端面対向領域部74に対してかしめ固定部35の先端面35Aが当接し、干渉する場合がある。
【0044】
これに対して、本実施形態においては、図3乃至図5で説明したように開口端形成部73のかしめ先端面対向領域部74の周方向に沿って樹脂領域部74A及び金属領域部74Bが交互に形成されている。金属領域部74Bは金属によって形成されているため、かしめ固定部35の先端面35Aが押し付けられたとしても、変形することを抑制できる。そして、開口端形成部73のかしめ先端面対向領域部74は、周方向の一部が樹脂製の樹脂領域部74Aによって形成されているものの、樹脂領域部74A及び金属領域部74Bが交互に形成されている。そのため、かしめ先端面対向領域部74の樹脂領域部74Aにかしめ固定部35の先端面35Aが押し付けられた際に、当該樹脂領域部74Aが変形したとしても、その両側の金属領域部74Bによって、かしめ先端面対向領域部74全体としては径方向内側への撓み変形量を軽減することができる。その結果、開口端形成部73における開口端部75の開口領域(コネクタ接続空間71における開口面積)が減少することを抑制できる。これにより、コネクタがコネクタ接続空間71に対して挿入しにくくなることを抑制できる。
【0045】
また、本実施形態においては、かしめ先端面対向領域部74の周方向における一部が、樹脂領域部74Aによって形成されているため、点火器カラー部材7を形成する樹脂部分と金属部分との接触面積を確保することができる。より具体的には、点火器カラー部材7における開口端部75の樹脂材料が、第1領域R1におけるかしめ先端面対向領域部74を形成する金属領域部74Bに対して回転することを抑制できる。
【0046】
また、本実施形態においては、かしめ先端面対向領域部74における内壁面の周方向に沿ってコネクタ接続空間71に面するように嵌合溝76が形成されているため、開口端形成部73の部材厚さがかしめ先端面対向領域部74において最小になっている。このように薄肉化されたかしめ先端面対向領域部74は、本来的に構造的な弱点となりやすいと言える。これに対して、本実施形態においてはかしめ先端面対向領域部74の少なくとも一部を金属領域部74Bによって形成することで、上記構造的な弱点が顕在化することを抑制することができる。
【0047】
<変形例>
ここで、点火器カラー部材7におけるかしめ先端面対向領域部74の周方向に沿って配置される樹脂領域部74A及び金属領域部74Bの態様は、種々の態様を採用することができる。図7及び図8は、実施形態1の変形例1及び2に係るかしめ先端面対向領域部74における樹脂領域部74A及び金属領域部74Bの配置態様を説明する図である。図7及び図8には、点火器カラー部材7を先端側から眺めた状態が概略的に示されている。また、図7及び図8においては、図3と同様、かしめ先端面対向領域部74が樹脂領域部74Aによって形成された「第1領域R1」を斜めハッチングで示し、かしめ先端面対向領域部74が金属領域部74Bによって形成された「第2領域R2」を格子ハッチングで示している。また、図7及び図8において、点火装置5における点火器本体6及び樹脂接合部9の図示を省略している。
【0048】
図7に示す変形例1では、点火器カラー部材7における周方向に第1領域R1及び第2領域R2が交互に2箇所ずつ形成されており、各第1領域R1に対応する中心角に比べて各第2領域R2に対応する中心角の方が大きい。その結果、かしめ先端面対向領域部74の周方向における複数箇所にそれぞれ設けられた各金属領域部74Bにおける周方向の長さが、各樹脂領域部74Aにおける周方向の長さよりも長くなっている。言い換えると、かしめ先端面対向領域部74の周方向において、金属領域部74Bにおける周方向の総長さが、樹脂領域部74Aにおける周方向の総長さよりも長くなる。その結果、第2ハウジング31における筒状固定部34のかしめ固定部35を点火器カラー部材7における筒状壁部72に固定する際、かしめ固定部35の先端面35Aが開口端形成部73におけるかしめ先端面対向領域部74に干渉しても、かしめ先端面対向領域部74をより一層撓みにくくすることができる。
【0049】
次に、図8に示す変形例2では、点火器カラー部材7における開口端形成部73の2箇所に、開口端形成部73が溝状に切り欠かれた空隙部(切欠き)78が形成されている。従って、本変形例においては、空隙部78が形成されている部分は、開口端形成部73が形成されていない。そして、図8に示す例では、点火器カラー部材7のうち、空隙部78が形成されていない領域に第1領域R1及び第2領域R2が形成されている。なお、本変形例において、点火器カラー部材7の周方向に形成される第1領域R1及び第2領域R2、及び空隙部78の位置、数、範囲等は特に限定されない。但し、上記のように、かしめ先端面対向領域部74の金属領域部74Bにおける周方向の総長さを樹脂領域部74Aや空隙部78における周方向の総長さよりも長くすると好適である。これにより、第2ハウジング31における筒状固定部34に点火器カラー部材7を固定する際に、点火器カラー部材7のかしめ先端面対向領域部74がより一層撓みにくくなる。
【0050】
また、本実施形態における点火器カラー部材7のかしめ先端面対向領域部74は、少なくとも一部が金属領域部74Bによって形成されていれば良い。そのため、かしめ先端面対向領域部74の全体が金属領域部74Bによって形成されていても良い。例えば、かしめ先端面対向領域部74が全周に亘る断面が、図5に示すB-B断面によって構成されていても良い。このような態様によれば、第2ハウジング31における筒状固定部34に点火器カラー部材7を固定する際に、点火器カラー部材7のかしめ先端面対向領域部74がより一層撓みにくくなる。
【0051】
なお、点火器カラー部材7におけるかしめ先端面対向領域部74の全体を金属領域部74Bによって形成する場合、点火器カラー部材7を形成する樹脂部分と金属部分との接触面積が少なくなり、これに起因して金属部分に対する樹脂部分の固定強度を確保しにくくなるとも考えられる。そのような場合には、以下に説明する変形例3に係る態様を採用しても良い。
【0052】
図9は、実施形態1の変形例3に係る点火器カラー部材7を先端側から眺めた概略図である。図示の第2領域R2は実施形態1と同様である。図示の第3領域R3は、かしめ先端面対向領域部74の外周側が金属領域部74Bによって形成され、内周側が樹脂領域部74Aによって形成されている領域である。図10は、実施形態1の変形例3に係る点火器カラー部材7の第3領域R3に対応するC-C断面を示す図である。なお、図9及び図10において、点火装置5における点火器本体6及び樹脂接合部9の図示を省略している。
【0053】
図9に示すように、変形例3に係る点火器カラー部材7は、周方向に第2領域R2及び第3領域R3が交互に形成されている。点火器カラー部材7の第2領域R2における断面構造は、図5で説明した通りである。一方、点火器カラー部材7の第3領域R3における断面構造は、図10に示すように、かしめ先端面対向領域部74の外周側に金属領域部74Bが配置されており、当該金属領域部74Bの内周側に樹脂領域部74Aが配置されている。また、点火器カラー部材7の第2領域R2におけるかしめ先端面対向領域部74を形成する金属領域部74Bと、第3領域R3におけるかしめ先端面対向領域部74を形成する金属領域部74Bが環状に連なっている。
【0054】
更に、本変形例における点火器カラー部材7は、第3領域R3において、かしめ先端面対向領域部74の樹脂領域部74Aが、樹脂被覆部77及び開口端部75と一体に連なって形成されている。そのため、点火器カラー部材7を形成する樹脂部分と金属部分との接触面積を確保し、金属部分に対する樹脂部分の固定強度を高めることができる。また、本変形例における点火器カラー部材7は、嵌合溝76が第2領域R2(図5を参照)のみに形成されており、第3領域R3には嵌合溝76が形成されていない。これによれば、点火器カラー部材7の第3領域R3に対応するかしめ先端面対向領域部74において、金属領域部74Bの内周側に配置される樹脂領域部74Aの樹脂厚さを確保しやすくなり、金属領域部74Bに対する樹脂領域部74Aの固定強度を高めることができる。なお、本変形例に示すように、嵌合溝76は、必ずしもかしめ先端面対向領域部74の全周に亘って形成する必要は無く、コネクタ接続空間71に装着するコネクタに設けられる係止用突起に対応する位置に設けられていれば良い。また、樹脂領域部74Aの樹脂厚さが確保されれば、嵌合溝76を第3領域R3のみに形成することもできる。
【0055】
また、図11は、図5に示す点火器カラー部材7の第2領域R2に対応するB-B断面の変形例を示す図である。図11において、点火装置5における点火器本体6及び樹脂接合部9の図示を省略している。図11に示す変形例に係るB-B断面では、開口端部75が樹脂領域部75A及び金属領域部75Bを含んで構成されている。そして、図11に示すように、かしめ先端面対向領域部74(金属領域部74B)を形成する金属材料が開口
端形成部73の先端まで伸びていることで開口端部75の金属領域部75Bを形成しており、当該金属領域部75Bの内側に樹脂領域部75Aが形成されている。なお、図11に示すB-B断面を採用する変形例に係る点火器カラー部材7の第1領域R2に対応するA-A断面は、図4に示す断面構造を採用することができる。この場合、A-A断面においては、図4に示すようにかしめ先端面対向領域部74(樹脂領域部74A)、開口端部75、及び樹脂被覆部77が一体の樹脂材料で形成されることになる。そして、B-B断面における開口端部75の樹脂領域部75Aを形成する樹脂材料は、A-A断面における開口端部75を形成する樹脂材料と周方向に沿って一体に連続的に形成することができる。そのため、点火器カラー部材7を構成する金属部分と樹脂部分とをしっかりと固定することができる。
【0056】
<実施形態2>
次に、実施形態2に係る点火装置5について説明する。実施形態2に係る点火装置5は、点火器カラー部材7の態様が実施形態1と相違し、他の態様は実施形態1と同様である。以下では、実施形態1との相違点を中心に説明する。
【0057】
図12は、実施形態2に係る点火器カラー部材7を先端側から眺めた概略図である。図12において、点火装置5における点火器本体6の図示を省略している。また、図12においても、かしめ先端面対向領域部74が樹脂領域部74Aによって形成された「第1領域R1」を斜めハッチングで示し、かしめ先端面対向領域部74が金属領域部74Bによって形成された「第2領域R2」を格子ハッチングで示している。本実施形態における点火器カラー部材7は、図13に示すホルダ部材8をコネクタ接続空間71に装着可能に構成されている。
【0058】
図13に示すホルダ部材8は、樹脂によって形成されたホルダ本体部81と、金属製の短絡部材82等を備えている。ホルダ本体部81は、全体として概略円筒形状の外形を有し、ベース部80及び当該ベース部80から立設する一対のホルダ壁面部83,83を含んで構成されている。ベース部80には開口部80Aが形成されており、点火器本体6における一対の導電ピン62を挿通することが可能になっている。また、ホルダ本体部81における一対のホルダ壁面部83,83に挟まれた領域には、コネクタを挿入可能な中空のコネクタ挿入部84が形成されている。ホルダ部材8における一対のホルダ壁面部83,83は、ホルダ部材8をコネクタ接続空間71に挿入した状態で、点火器カラー部材7における筒状壁部72及び開口端形成部73に沿って配置される。
【0059】
また、図13に示すように、ホルダ本体部81における一方のホルダ壁面部83の上端部には、点火器カラー部材7の開口端形成部73に形成された係合部79(図12を参照)と係合可能な固定部85が設けられている。ホルダ本体部81における固定部85は、その半径方向外側に向けて形成された凸部として形成されている。一方、点火器カラー部材7の開口端形成部73に形成された係合部79は、固定部85を嵌合可能な凹部(切り欠き部)として形成されている。ホルダ部材8を点火器カラー部材7におけるコネクタ接続空間71に装着する際、ホルダ本体部81における固定部85を点火器カラー部材7の係合部79に嵌合させることによって、コネクタ接続空間71に対するホルダ部材8の挿入位置が規制されると共に、挿入後におけるホルダ部材8の回転が規制される。
【0060】
また、図13に示すように、ホルダ本体部81には金属製の短絡部材82が設けられている。短絡部材82は、コネクタ挿入部84内を臨むように設けられており、ホルダ部材8をコネクタ接続空間71に装着した際、点火器本体6における一対の導電ピン62と弾性的に接触することによって一対の導電ピン62を短絡させる。これにより、インフレータ1の運搬時や保管時等に、インフレータ1(点火装置5)が誤作動を起こすことを抑制できる。また、点火器カラー部材7のコネクタ接続空間71にホルダ部材8を装着した状
態で、ホルダ部材8のコネクタ挿入部84にコネクタが挿入された際には、コネクタが短絡部材82に押し当てられる。その結果、一対の導電ピン62と弾性接触していた短絡部材82が一対の導電ピン62から離れ、コネクタと導電ピン62の導通が得られるようになる。なお、ホルダ部材8のホルダ壁面部83に突起を形成しておき、ホルダ部材8をコネクタ接続空間71に装着する際、ホルダ壁面部83の突起を嵌合溝76に嵌合することで点火器カラー部材7にホルダ部材8を固定しても良い。
【0061】
ここで、図12に示す符号Rwは、点火器カラー部材7のかしめ先端面対向領域部74における「ホルダ壁面対向領域」を示している。また、符号Rhは、点火器カラー部材7のかしめ先端面対向領域部74における「ホルダ壁面非対向領域」を示している。ホルダ壁面対向領域Rwは、かしめ先端面対向領域部74の一部であり、点火器カラー部材7のコネクタ接続空間71にホルダ部材8を装着した状態において一対のホルダ壁面部83,83に対向配置される領域である。本実施形態においては、かしめ先端面対向領域部74におけるホルダ壁面対向領域Rwの少なくとも一部が金属領域部74Bによって形成されている。また、ホルダ壁面非対向領域Rhは、かしめ先端面対向領域部74のうち、ホルダ壁面対向領域Rw以外の部位であり、点火器カラー部材7のコネクタ接続空間71にホルダ部材8を装着した状態において一対のホルダ壁面部83,83間に形成された切り欠き部86(図13を参照)に対向配置される。
【0062】
ここで、かしめ先端面対向領域部74におけるホルダ壁面対向領域Rwは、その内側にホルダ部材8の各ホルダ壁面部83,83が配置される。そのため、第2ハウジング31における筒状固定部34に対して点火器カラー部材7を固定する際にホルダ壁面対向領域Rwが径方向内側に撓んでしまうと、それに伴って各ホルダ壁面部83,83もコネクタ挿入部84側に押し込まれてしまい、コネクタ挿入部84の開口幅を正規の寸法通りに確保できなくなる虞がある。これに対して、かしめ先端面対向領域部74におけるホルダ壁面対向領域Rwの少なくとも一部を金属領域部74Bによって形成することにより、上記不具合を起こりにくくすることができる。
【0063】
一方、かしめ先端面対向領域部74におけるホルダ壁面非対向領域Rhは、ホルダ部材8の切り欠き部86に対向配置される領域であるため、ホルダ壁面非対向領域Rhが多少内側に撓んでも、ホルダ部材8におけるコネクタ挿入部84へのコネクタの挿入に殆ど影響を及ぼさない。そのため、図12に示す例では、かしめ先端面対向領域部74におけるホルダ壁面非対向領域Rhを樹脂領域部74Aによって形成している。
【0064】
また、図12に示す例では、かしめ先端面対向領域部74におけるホルダ壁面対向領域Rwは、ホルダ壁面対向領域Rwの周方向における両端部側が金属領域部74Bによって形成され、その間に挟まれた領域が樹脂領域部74Aによって形成されている。この場合、ホルダ壁面対向領域Rwのうち、金属領域部74Bにおける周方向の総長さを樹脂領域部74Aにおける周方向の総長さに比べて長くすると良い。このような態様によれば、ホルダ壁面対向領域Rwの周方向において、樹脂領域部74Aが占有する領域に比べて金属領域部74Bが占有する領域を大きくすることができる。これにより、ホルダ部材8における各ホルダ壁面部83,83がコネクタ挿入部84側に押し込まれることを、好適に抑制することができる。勿論、かしめ先端面対向領域部74におけるホルダ壁面対向領域Rwの全体を金属領域部74Bによって形成しても良く、これによって各ホルダ壁面部83,83の倒れ込みをより一層好適に抑制できる。
【0065】
以上、本開示に係る点火装置及び点火装置組立体の実施形態について説明したが、本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。また、上記実施形態においては、点火装置及び点火装置組立体をエアバッグ用のインフレータに適用する場合を例に説明したが、シートベルトのプリテンショナ
ー用のガス発生器、或いはその他の点火装置組立体に適用してもよい。また、インフレータのハウジング以外のハウジングを、点火装置を取り付ける取り付け対象物としても良い。
【符号の説明】
【0066】
1・・・インフレータ
2・・・加圧ガス部
3・・・ガス発生器
4・・・ディフュザー部
5・・・点火装置
6・・・点火器本体
7・・・点火器カラー部材
9・・・樹脂接合部
34・・・筒状固定部
35・・・かしめ固定部
71・・・コネクタ接続空間
72・・・筒状壁部
73・・・開口端形成部
74・・・かしめ先端面対向領域部
74A・・樹脂領域部
74B・・金属領域部
75・・・開口端部
76・・・嵌合溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13