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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】車両用エアガイド
(51)【国際特許分類】
   B60K 11/04 20060101AFI20240528BHJP
【FI】
B60K11/04 K
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020158419
(22)【出願日】2020-09-23
(65)【公開番号】P2022052190
(43)【公開日】2022-04-04
【審査請求日】2023-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 識夫
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 亮介
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0000778(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102011000635(DE,A1)
【文献】特開2001-80371(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0073321(KR,A)
【文献】韓国登録特許第10-1154302(KR,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0031699(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に装備されるラジエータの前方に配備され、車幅方向に延びる横面部と上下方向に延びる縦面部を有し、内側に前記ラジエータに至る矩形状のエア流路を形成する車両用エアガイドであって、
前記横面部と前記縦面部のうち長辺側の面部に、前方からの入力に対して外凸状の折れ線が前記長辺側の面部の長手方向に沿って形成される硬質材部が設けられ、
前記横面部と前記縦面部の連結部に、前記硬質材部の折れに追従して変形する軟質材部が設けられていることを特徴とする車両用エアガイド。
【請求項2】
前記硬質材部は、樹脂材又は金属材で構成され、
前記軟質材部は、エラストマーで構成されていることを特徴とする請求項1記載の車両用エアガイド。
【請求項3】
前記長辺側の面部は、前方からの入力が加わる前端部が後端部に対して車両正面からみて外側に位置することを特徴とする請求項1又は2記載の車両用エアガイド。
【請求項4】
前記硬質材部は、折れ線となる溝が前記長手方向に沿って設けられていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1記載の車両用エアガイド。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の車両用エアガイドを備える車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用エアガイド及び車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用エアガイドは、車両に装備されるラジエータの前方に配置して、車両前方からのエア(走行風)をラジエータに向けてガイドするものであり、ラジエータの前方に配置したときに、車幅方向に延びる第1の平板状部材と、上下方向に延びる第2の平板状部材と、これらを連結する連結部を備えるものが知られている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-180742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の車両用エアガイドは、車幅方向に延びる第1の平板状部材と上下方向に延びる第2の平板状部材とで矩形状の枠形状をなしており、車両正面の軽衝突時や歩行者衝突時の入力に対して、受動的に破損はするものの、一定の抗力を有する構造になっている。
【0005】
このような構造の車両用エアガイドにおいて、衝突時に歩行者などに与える衝突荷重を軽減するには、平板状部材の材質を柔らかくするか、或いは、平板状部材を各辺で分割して、平板状部材相互の連結部における角部で抗力が上がることを抑えることなどが考えられる。
【0006】
しかしながら、平板状部材の材質を柔らかくすると、それ自体が変形しやすくなって、平板状部材の車幅方向又は上下方向の延長幅が大きくなる大型のエアガイドには採用し難くなると共に、衝突時の入力でエアガイドが潰れてしまい、ラジエータへのエア流通路を塞いでしまう問題があった。また、平板状部材の各辺を分割すると、分割箇所でのエア漏れが生じることになり、特に衝突時の変形では分割箇所でのエア漏れが大きくなって、エアガイドの本来の機能であるエアをラジエータに導く機能が損なわれてしまう問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題を解決することを課題としている。すなわち、エアガイドの本来の機能を損なうことなく、衝突荷重を軽減することができ、また、衝突時に変形した場合であっても、ラジエータへのエアの流通を確保することができる車両用エアガイドを提供すること、などが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するために、本発明による車両用エアガイドは、以下の構成を具備するものである。
【0009】
車両に装備されるラジエータの前方に配備され、車幅方向に延びる横面部と上下方向に延びる縦面部を有し、内側に前記ラジエータに至る矩形状のエア流路を形成する車両用エアガイドであって、前記横面部と前記縦面部のうち長辺側の面部に、前方からの入力に対して外凸状の折れ線が前記長辺側の面部の長手方向に沿って形成される硬質材部が設けられ、前記横面部と前記縦面部の連結部に、前記硬質材部の折れに追従して変形する軟質材部が設けられていることを特徴とする車両用エアガイド。
【発明の効果】
【0010】
このような特徴を備えた本発明の車両用エアガイドは、エアガイドの本来の機能を損なうことなく、衝突荷重を軽減することができる。また、本発明の車両用エアガイドは、衝突時に変形した場合であっても、ラジエータへのエアの流通を確保することができるので、衝突後もオーバーヒートに至らず、修理工場等への自走が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態にかかる車両用エアガイドの一部構成を示した斜視図。
図2】(a)が図1に示した車両用エアガイドの縦端面図。(b)が図1に示した車両用エアガイドに前方から入力が加わった状態の縦端面図。
図3】軟質材部の形状を示した説明図((a)が斜視図、(b)が平面図、(c)が側面図)。
図4】車両用エアガイドの具体的な構成例を示した説明図(斜視図)。
図5】車両用エアガイドの具体的な構成例を示した説明図(縦端面図)。
図6】車両用エアガイドの具体的な構成例を示した説明図(衝突時縦端面図)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。各図において、図示矢印のX方向が車両の前後方向を示し、Y方向が車幅方向を示し、Z方向が上下方向を示している。
【0013】
図1に示すように、車両用エアガイド1は、車両に装備された図示省略のラジエータの前方に配備され、車幅方向に延びる横面部1Aと上下方向に延びる縦面部1Bを有し、内側に前述したラジエータに至る矩形状のエア流路を形成している。
【0014】
図1に示した例では、横面部1Aの車幅方向の長さが縦面部1Bの上下方向の長さより長い横長形状になっていて、横面部1Aと縦面部1Bのうちの長辺側の面部は、横面部1Aになっているが、これに限らず、縦面部1Bの上下方向の長さが横面部1Aの車幅方向の長さより長い縦長形状であって、横面部1Aと縦面部1Bのうちの長辺側の面部が、縦面部1Bであってもよい。
【0015】
そして、図1に示した車両用エアガイド1は、横面部1Aと縦面部1Bのうち長辺側の面部である横面部1Aに、横長状の硬質材部10が設けられており、横面部1Aと縦面部1Bの連結部(角部)1Cに、軟質材部20が設けられている。なお、図1に示した例では、横面部1Aと縦面部1Bは、連結部1Cに設けられた軟質材部20を除く部分は、硬質材部10で形成されている。
【0016】
また、車両用エアガイド1における長辺側の面部である横面部1Aは、車両前方側の端部である前端部aが、ラジエータ側の端部である後端部bに対して、車両正面からみて外側(上側)に位置している。すなわち、図2(a)に示すように、横面部1Aの前端部aは、横面部1Aの後端部bより高さhだけ外側に位置している。
【0017】
このような車両用エアガイド1においては、図2(b)に示すように、横面部1Aの前方から入力fが前端部aに加わると、長辺側の面部である横面部1Aは、硬質材部10において、外凸状の折れ線Pが長手方向に沿って形成されるように変形する。この際、このような折れ線Pを積極的に形成させるために、折れ線Pになる溝などを横面部1Aの長手方向に沿って形成しておいてもよい。
【0018】
そして、入力fによって横面部1Aに折れ線Pが形成される際に、横面部1Aと縦面部1Bの連結部1Cに設けられている軟質材部20は、横面部1Aにおける硬質材部10の折れに追従して柔軟に変形し、連結部1Cの分断を抑制する。
【0019】
ここで、横面部1Aと縦面部1Bの連結部1Cに設けられている軟質材部20は、少なくとも、横面部1Aにおける硬質材部10の折れ線Pに沿った折れを阻害しない形状が必要になる。軟質材部20の形状例を図3に示すが、必要最小限の形状として、連結部1Cの後端部から角度A°で横面部1Aと縦面部1Bの前端部に延びる三角形状を有している。この際の角度A°は、横面部1Aにおける後端部と連結部1Cの交差角度(図示B°)と、縦面部1Bにおける後端部と連結部1Cの交差角度(図示C°)とから下記式で求めることができる。
【0020】
A°=0.5×B°-0.5×C°+45°
【0021】
このような角度A°の三角形状の軟質材部20を、連結部1Cを挟んで、横面部1Aと縦面部1Bに設けることで、前端部aに入力fが加わった場合に、横面部1Aにおいて外凸状に折れる折れ線Pを効果的に形成でき、図2(b)に示すように、横面部1Aの内側(下側)に形成されるエア流路を閉塞することなく、衝突時の抗力を抑制することができる。
【0022】
特に、車両用エアガイド1においては、横面部1Aと縦面部1Bのうち長辺側の面部である横面部1Aに折れ線Pが形成されるようにしているので、折れ線Pをより長く形成して抗力の抑止効果を高めることができる。なお、図1図3に示した例では、横面部1Aが長辺側になっているが、縦面部1Bを長辺側の面部にした縦長状の車両用エアガイド1の場合には、長辺側になる縦面部1Bに折れ線Pが形成される。
【0023】
車両用エアガイド1において、硬質材部10は、例えば、樹脂材又は金属材で形成することができ、軟質材部20は、ゴム材又はエラストマー材で形成することができる。硬質材部10と軟質材部20の2種類の材料から構成される車両用エアガイド1は、2色成型又はインサート成型によって形成することができる。
【0024】
なお、前述した実施形態では、横面部1Aと縦面部1Bを平面状に形成しているが、横面部1Aと縦面部1Bには適宜の凹凸を設けることができる。
【0025】
図4図6は、より具体的な車両用エアガイド1の構成例を示している。車両Mの前部に装着される車両用エアガイド1は、図示省略したラジエータの前方に配置され、車体内で上枠体1Xと下枠体1Yを組み合わせることで、その内側に矩形状のエア流路を形成している。
【0026】
車両用エアガイド1の上枠体1Xと下枠部1Yは、前述したように、一対の横面部1Aと一対の縦面部1Bを備えており、横面部1Aと縦面部1Bの端に連結部(角部)1Cが形成されている。
【0027】
車両用エアガイド1の上枠体1Xは、硬質材部10として支持部11とパネル部12と腕部13を備えている。支持部11は、上枠体1Xをその後方に位置するラジエータを囲う車体に支持固定する部位であり、横面部1Aの後方側には全幅に渡って支持部11が配置されている。パネル部12は、支持部11の前側に一体に設けられた矩形状の部位であり、部分的に前方に突出した状態で横面部1Aの一部になっている。腕部13は、支持部11の左右両端から斜め下に向けて張り出すように設けられ、縦面部1Bの一部になっている。
【0028】
また、車両用エアガイド1の上枠体1Xは、硬質材部10として形成される支持部11とパネル部12と腕部13を除く部分が、軟質材部20によって構成されている。これによって、軟質材部20は、少なくとも横面部1Aと縦面部1Bの連結部1Cに設けられており、一部が横面部1Aを構成し、他の一部が縦面部1Bを構成している。
【0029】
上枠体1Xにおける横面部1Aの一部であるパネル部12には、図示のY方向に沿った線状の溝mが上面側に形成されており、硬質材部10における支持部11とパネル部12の境にも溝mが下面側に形成されている。
【0030】
車両用エアガイド1の下枠部1Yは、実質的には上枠部1Xと同様であり、硬質材部10として形成される支持部14とパネル部15と腕部16を備え、硬質材部10として形成される部位を除く部分が、軟質材部20によって構成されている。そして、硬質材部10における支持部14とパネル部15の境に溝mが上面側に形成されている。
【0031】
このような上枠体1Xと下枠体1Yによって構成される車両用エアガイド1に、前方から衝突時の入力が加わると、図6に示すように、前述した各所に設けられる溝mが折れ線Pになって、横面部1Aを変形させる。上枠体1Xにおいては、2つの溝mが折れ線Pになることで、パネル部12が上凸状に折れて、横面部1Aがエア流路側に倒れることを抑止している。
【0032】
以上、説明した本発明の実施形態にかかる車両用エアガイド1は、前方から入力が加わった場合に、軟質材部20の存在で、横面部1Aと縦面部1Bの連結部1Cが分離してエア漏れが生じることを抑止することができ、また、連結部1Cを含む適所に軟質材部20を設けていることで、長辺側の横面部1Aを長手方向に沿って外凸状に屈折させて、エア流路を塞ぐことなく、抗力を抑制することができる。これによって、本発明の実施形態に係る車両用エアガイド1は、エア(走行風)をラジエータに導くというエアガイド本来の機能を損なうことなく、衝突荷重を軽減することができ、また、衝突時に変形した場合であっても、ラジエータへのエアの流通を確保することができる。
【0033】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0034】
1:車両用エアガイド,1X:上枠体,1Y:下枠体,
1A:横面部,1B:縦面部,1C:連結部,
10:硬質材部,
11,14:支持部,12,15:パネル部,13,16:腕部,
20:軟質材部,
a:前端部,b:後端部,f:入力,m:溝,P:折れ線,M:車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6