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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】電線支持装置
(51)【国際特許分類】
   H02G 7/02 20060101AFI20240528BHJP
   H02G 7/04 20060101ALI20240528BHJP
   H02G 1/04 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
H02G7/02
H02G7/04
H02G1/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020191045
(22)【出願日】2020-11-17
(65)【公開番号】P2022080078
(43)【公開日】2022-05-27
【審査請求日】2023-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】391001538
【氏名又は名称】日本カタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 明弘
(72)【発明者】
【氏名】井上 良太
(72)【発明者】
【氏名】船間 政広
【審査官】岩田 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-125094(JP,A)
【文献】特開2008-253061(JP,A)
【文献】特開平1-064512(JP,A)
【文献】特開2007-221998(JP,A)
【文献】特開2000-102152(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 7/02
H02G 7/04
H02G 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄塔の間に架設される電線を当該電線に張力を与えた状態で支持する電線支持装置であって、
前記電線の端部と前記鉄塔との間に配置され、前記電線が延びる方向に長さを変えることにより当該電線の弛度を調整することが可能な構成を有するバーニヤ金具と、
前記バーニヤ金具の両側の端部を前記電線の端部および前記鉄塔にそれぞれ連結する連結金具と、
を備えており、
前記連結金具は、当該連結金具が接続される相手側部材に設けられた凸状のリンク部が挿入可能なリンク挿入溝を有するクレビス部を有し、
前記クレビス部は、前記リンク部が前記リンク挿入溝に挿入された状態で軸回転できるように、当該リンク部とリンク結合し、
前記クレビス部における前記リンク挿入溝の奥側には、当該リンク挿入溝に連続して、弛度調整用工具を前記連結金具に取り付けるために棒状部材を挿入することが可能な棒状部材挿入空間が形成されている、
ことを特徴とする電線支持装置。
【請求項2】
前記リンク部は、前記連結金具との接触部分を有し、
前記リンク部が前記リンク挿入溝に挿入された状態では、前記接触部分が前記連結金具に接触することにより、前記リンク部の前記連結金具に対する相対的な軸回転を規制する、
請求項1に記載の電線支持装置。
【請求項3】
前記リンク部は、前記バーニヤ金具の端部に設けられている、
請求項2に記載の電線支持装置。
【請求項4】
前記バーニヤ金具は、
長尺の一対の外側プレートであって、その板厚方向に離間して配置された一対の外側プレートと、
前記一対の外側プレートの隙間にスライド自在に挿入された内側プレートと、
前記内側プレートを前記外側プレートに固定するための棒状の固定部材と
を有し、
前記外側プレートは、
該外側プレートの長手方向に所定の第1ピッチの間隔で形成された複数の第1貫通孔と、当該外側プレートの側縁において前記第1貫通孔に対応する位置に形成された複数の第1表示部と
を有し、
前記内側プレートは、
該内側プレートの長手方向に前記第1ピッチと異なる所定の第2ピッチの間隔で形成された複数の第2貫通孔と、
当該内側プレートの側縁において前記第2貫通孔に対応する位置に形成された複数の第2表示部と
を有し、
前記固定部材は、前記第1貫通孔および前記第2貫通孔が連通している位置において当該第1貫通孔および当該第2貫通孔を貫通した状態で、前記内側プレートを前記外側プレートに固定する、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電線支持装置。
【請求項5】
前記バーニヤ金具には、前記棒状部材を取り付けることが可能な取付孔が形成されている、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電線支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電線支持装置に関する。さらに詳しくは、鉄塔の間に架設される電線を当該電線に張力を与えた状態で支持する電線支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄塔の間に架設される電線を当該電線に張力を与えた状態で支持する電線支持装置として、特許文献1などに記載されているように、電線の弛度(すなわち弛み具合)を調整するために伸縮自在のバーニヤ金具を備えた電線支持装置が知られている。
従来の電線支持装置(81)は、図14図15に示されるように、複数の電線(51)のそれぞれの端部と鉄塔(61)との間に設けられている。ここで、図14図15に示される例では、4本の電線(51)は、水平方向Xおよび垂直方向Zにおいて互いに離間して上下に2本ずつ配置されている。
【0003】
図14図15において、それぞれの電線(51)の端部には、地上の工場などであらかじめ圧縮クランプ(52)が固定されている。鉄塔(61)には、がいし装置に接続されたヨーク(62)が設けられている。電線支持装置(81)は、電線(51)の圧縮クランプ(52)と鉄塔(61)のヨーク(62)との間を導通可能に接続する。
【0004】
電線支持装置(81)は、バーニヤ金具(82)と、バーニヤ金具(82)両側の一対の第1連結金具(83)と、複数の第2連結金具(84)とを備えており、これらは導通可能な材料、例えば鉄系材料または合金などで製造される。
【0005】
バーニヤ金具(82)は、長尺の一対の外側プレート(82a)と、一対の外側プレート(82a)の隙間にスライド自在に挿入された内側プレート(82b)と、内側プレート(82b)を外側プレート(82a)に固定するためのボルト(82c)とを有する。ボルト(82c)は、外側プレート(82a)および内側プレート(82b)にそれぞれピッチが異なるように形成された貫通孔が連通している位置において、これらの貫通孔を貫通した状態で、内側プレート(82b)を外側プレート(82a)に固定する。
【0006】
一対の第1連結金具(83)は、バーニヤ金具(82)の両側の端部にリンク結合されている。具体的には、図16図17に示されるように、第1連結金具(83)は、U字型の鉤型のクレビス部(85)を有する。クレビス部(85)は、第1連結金具(83)が接続された相手側部材(ここではバーニヤ金具(82))側の凸状のリンク部(82d)が挿入可能なリンク挿入溝(85a)を有する。図16に示される凸状のリンク部(82d)は、バーニヤ金具(82)の内側プレート(82b)の端部に設けられている。クレビス部(85)は、ボルトなどによって当該リンク部(82d)とリンク結合する。
また、第1連結金具(83)には、クレビス部(85)のリンク挿入溝(85a)から離間した位置に弛度調整用工具(71)を取り付けるためのボルト(75)を挿入可能なボルト挿入孔(86)、(87)が形成されている。ボルト挿入孔(86)は、垂直方向(図16の紙面垂直方向)に延びて第1連結金具(83)を貫通している。ボルト挿入孔(87)は、水平方向(図17の紙面垂直方向)に延びて第1連結金具(83)を貫通している。
【0007】
複数の第2連結金具(84)は、第1連結金具(83)と鉄塔(61)のヨーク(62)との間、および第1連結金具(83)と電線(51)の圧縮クランプ(52)との間を連結する。第2連結金具(84)は、電線の弛度またはバーニヤ金具(82)の最大長さなどの条件を考慮して、第1連結金具(83)と電線(51)の圧縮クランプ(52)との間に、複数個(図14図15では3個)設けられている。図16図17に示されるように、第2連結金具(84)の軸方向両側の端部には、U字状のクレビス部が、それぞれ形成されている。第2連結金具(84)両側のU字状のクレビス部には、ヨーク(62)の凸状のリンク部(62a)および第1連結金具(83)の凸状のリンク部(82d)が、それぞれリンク結合されている。
【0008】
弛度調整用工具(71)は、一対の第1連結金具(83)の距離を変更することにより電線(51)の弛度を調整することが可能な構成を有する。弛度調整用工具(71)には、例えば、油圧工具が用いられ、具体的には、一対のスイングアーム(72)と、支持ロッド(73)と、油圧シリンダ(74)とを有する(図15を参照)。一対のスイングアーム(72)は、支持ロッド(73)の両端部にそれぞれ回転自在に支持されている。一対のスイングアーム(72)の先端側の端部は、それぞれボルト(75)を介して第1連結金具(83)にリンク結合されている。これら一対のスイングアーム(72)の根元側(すなわち第1連結金具(83)から遠い側)の端部には、油圧シリンダ(74)の両端部がそれぞれ連結されている。油圧シリンダ(74)は、油圧により伸縮することにより、一対のスイングアーム(72)を、支持ロッド(73)の両端部に設けられたピンを回転中心として旋回させる。
【0009】
図16に示されるように、ボルト(75)が垂直方向に延びるボルト挿入孔(86)に挿入されることにより、図14に示されるように、スイングアーム(72)が水平方向Xに延びる状態で、弛度調整用工具(71)を第1連結金具(83)に取り付けることが可能である。一方、図17に示されるように、ボルト(75)が水平方向に延びるボルト挿入孔(87)に挿入されることにより、図15に示されるように、スイングアーム(72)が垂直方向Zに延びる状態で、弛度調整用工具(71)を第1連結金具(83)に取り付けることが可能である。
【0010】
電線(51)の弛度を調整する場合には、まずバーニヤ金具(82)のボルト(82c)を取り外して内側プレート(82b)と外側プレート(82a)との連結を解除し、弛度調整用工具(71)の油圧シリンダ(74)の駆動力により、一対のスイングアーム(72)を旋回させて、当該一対のスイングアーム(72)の先端側端部にボルト(75)を介して連結された一対の第1連結金具(83)の距離を変更する。これにより、電線(51)の弛度を所定の弛度に調整することが可能である。弛度調整後は、バーニヤ金具(82)のボルト(82c)を取り付けて内側プレート(82b)と外側プレート(82a)とを連結すれば、電線(51)の架設作業は終了する。
【0011】
プレハブ架線工法、すなわち、地上の工場においてあらかじめ電線を所定の長さに切断して圧縮クランプを取り付けたものを鉄塔の間に架設する工法では、延線等の影響による電線の伸びのバラツキが大きい。
一方、第1連結金具(83)は、リンク挿入溝(85a)から離間した位置にボルト挿入孔(86)、(87)が形成された構造であるため、第1連結金具(83)の長さを短くすることが困難である。そのため、使用可能なバーニヤ金具の長さが制限される。その結果、バーニヤ金具(82)による電線(51)の弛度の調整範囲が制限される。これによって、第2連結金具(84)を増設して弛度を調整する手間が増大し、施工性の向上が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開平6-169519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記したような従来技術の問題点を解決すべく、バーニヤ金具による電線の弛度の調整範囲を拡大することが可能であり、連結金具を増設して弛度を調整する手間が減少して、施工性が向上することが可能な電線支持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の請求項1に係る電線支持装置は、鉄塔の間に架設される電線を当該電線に張力を与えた状態で支持する電線支持装置であって、前記電線の端部と前記鉄塔との間に配置され、前記電線が延びる方向に長さを変えることにより当該電線の弛度を調整することが可能な構成を有するバーニヤ金具と、前記バーニヤ金具の両側の端部を前記電線の端部および前記鉄塔にそれぞれ連結する連結金具と、を備えており、前記連結金具は、当該連結金具が接続される相手側部材に設けられた凸状のリンク部が挿入可能なリンク挿入溝を有するクレビス部を有し、前記クレビス部は、前記リンク部が前記リンク挿入溝に挿入された状態で軸回転できるように、当該リンク部とリンク結合し、前記クレビス部における前記リンク挿入溝の奥側には、当該リンク挿入溝に連続して、弛度調整用工具を前記連結金具に取り付けるために棒状部材を挿入することが可能な棒状部材挿入空間が形成されている、ことを特徴とする電線支持装置に関する。
【0015】
本発明の請求項2に係る電線支持装置は、前記リンク部は、前記連結金具との接触部分を有し、前記リンク部が前記リンク挿入溝に挿入された状態では、前記接触部分が前記連結金具に接触することにより、前記リンク部の前記連結金具に対する相対的な軸回転を規制する、請求項1に記載の電線支持装置に関する。
【0016】
本発明の請求項3に係る電線支持装置は、前記リンク部は、前記バーニヤ金具の端部に設けられている、請求項2に記載の電線支持装置に関する。
【0017】
本発明の請求項4に係る電線支持装置は、前記バーニヤ金具は、長尺の一対の外側プレートであって、その板厚方向に離間して配置された一対の外側プレートと、前記一対の外側プレートの隙間にスライド自在に挿入された内側プレートと、前記内側プレートを前記外側プレートに固定するための棒状の固定部材とを有し、前記外側プレートは、該外側プレートの長手方向に所定の第1ピッチの間隔で形成された複数の第1貫通孔と、当該外側プレートの側縁において前記第1貫通孔に対応する位置に形成された複数の第1表示部とを有し、前記内側プレートは、該内側プレートの長手方向に前記第1ピッチと異なる所定の第2ピッチの間隔で形成された複数の第2貫通孔と、当該内側プレートの側縁において前記第2貫通孔に対応する位置に形成された複数の第2表示部とを有し、前記固定部材は、前記第1貫通孔および前記第2貫通孔が連通している位置において当該第1貫通孔および当該第2貫通孔を貫通した状態で、前記内側プレートを前記外側プレートに固定する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電線支持装置に関する。
【0018】
本発明の請求項5に係る電線支持装置は、前記バーニヤ金具には、前記棒状部材を取り付けることが可能な取付孔が形成されている、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電線支持装置に関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の請求項1に係る電線支持装置によれば、バーニヤ金具の両側の端部を電線の端部および鉄塔にそれぞれ連結する連結金具において、当該連結金具のクレビス部のリンク挿入溝の奥側には、当該リンク挿入溝に連続して、弛度調整用工具を連結金具に取り付けるためにボルトなどの棒状部材が挿入可能な棒状部材挿入空間が形成されている。このように連結金具におけるリンク挿入溝および棒状部材挿入空間が連続して形成されることにより、当該連結金具の長さを短くすることが可能である。そのため、従来よりも長尺のバーニヤ金具を採用することが可能になり、その結果、バーニヤ金具による電線の弛度の調整範囲を拡大することが可能になる。また、これによって、連結金具を増設して弛度を調整する手間が減少し、施工性が向上する。
【0020】
本発明の請求項2に係る電線支持装置によれば、リンク部は、連結金具との接触部分を有する。リンク部がリンク挿入溝に挿入された状態では、リンク部の接触部分が前記連結金具に接触することにより、リンク部は連結金具に対する相対的な軸回転が規制される。これにより、作業者は、弛度調整作業中にリンク部を連結金具に対して軸回転しないように支持する必要がなくなり、施工性が向上する。
【0021】
本発明の請求項3に係る電線支持装置によれば、バーニヤ金具の端部に設けられたリンク部がリンク挿入溝に挿入された状態では、リンク部の接触部分が連結金具に接触することにより、リンク部およびそれを有するバーニヤ金具では、連結金具に対する相対的な軸回転が規制される。これにより、作業者は、弛度調整作業中にバーニヤ金具を連結金具に対して軸回転しないように支持する必要がなくなり、バーニヤ金具の長さを調整する作業の施工性が向上する。
【0022】
本発明の請求項4に係る電線支持装置によれば、バーニヤ金具の外側プレートには、その側縁において複数の第1貫通孔に対応する位置に複数の第1表示部が形成され、一方、内側プレートには、その側縁において複数の第2貫通孔に対応する位置に複数の第2表示部が形成されている。
電線の弛度を調整するために、バーニヤ金具の内側プレートを一対の外側プレートの間でスライドさせてバーニヤ金具の長さを変えたときに、一対の外側プレートに形成された複数の第1貫通孔と内側プレートに形成された複数の第2貫通孔とはピッチが異なるので、第1貫通孔および第2貫通孔が連通する位置が一義的に決まる。この第1貫通孔および第2貫通孔が連通している位置は、外側プレートの側縁に形成された第1表示部と内側プレートの側縁に形成された第2表示部とが一致する位置を探すことによって、外部から容易に確認することが可能である。これにより、ボルトなどの固定部材を、互いに連通している第1貫通孔および第2貫通孔に貫通することにより、内側プレートを外側プレートに固定する作業の施工性を向上することが可能である。
【0023】
本発明の請求項5に係る電線支持装置によれば、弛度調整用工具を取り付けるための棒状部材は、連結金具の棒状部材挿入空間の他に、バーニヤ金具に形成された取付孔にも取り付けることが可能である。そのため、弛度調整用工具を取付可能な位置が増えることにより、弛度の調整範囲をさらに拡大することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態1に係る電線支持装置が電線と鉄塔との間に配置された状態を示す平面図である。
図2図1の電線支持装置、電線および鉄塔の側面図である。
図3図1の第1連結金具の第1クレビス部の垂直方向に延びるボルト挿入空間に、弛度調整用工具を取り付けるためのボルトが挿入された状態を示す拡大平面図である。
図4図1の第1連結金具の第2クレビス部の水平方向に延びるボルト挿入空間に、ボルトが挿入された状態を示す拡大側面図である。
図5】本発明の実施形態2に係る電線支持装置において、バーニヤ金具の内側プレートのリンク部に直線状の接触部分が形成されている構造を示す図であって、(a)は、第1連結部付近の拡大平面図、(b)は、第1連結部内部においてリンク部の接触部分とボルトとが広範囲に接触している状態を示す断面説明図である。
図6】上記実施形態2の比較例として、第1連結部内部においてリンク部とボルトとの接触部分が小さいことを示す断面説明図である。
図7】本発明の実施形態3に係る電線支持装置において、バーニヤ金具の外側プレートの側縁に第1表示部分が形成された構造を示す図であって、(a)は、外側プレートの正面図、(b)は、その上面図である。
図8】上記実施形態3におけるバーニヤ金具の内側プレートの側縁に第2表示部分が形成された構造を示す図であって、(a)は、内側プレートの正面図、(b)は、その上面図である。
図9】上記実施形態3における外側プレートの第1貫通孔および第1表示部が、内側プレートの第2貫通孔および第2表示部に一致している状態を示す図あって、(a)は、バーニヤ金具の上面図、(b)は、バーニヤ金具の正面図である。
図10】本発明の実施形態4に係る電線支持装置におけるバーニヤ金具に、ボルト取付孔が追加されている構造を示す側面図である。
図11】本発明の実施形態7に係る電線支持装置が電線と鉄塔との間に配置された状態を示す図であって、(a)は、平面図、(b)は、側面図である。
図12】本発明の実施形態8に係る電線支持装置が電線と鉄塔との間に配置された状態を示す図であって、(a)は、平面図、(b)は、側面図である。
図13】本発明の実施形態9に係る電線支持装置が電線と鉄塔との間に配置された状態を示す図であって、(a)は、平面図、(b)は、側面図である。
図14】従来の電線支持装置を介して複数の電線が鉄塔のヨークに連結された状態を示す平面図である。
図15図14の電線支持装置、電線、およびヨークの側面図である。
図16図14の第1連結金具付近の拡大平面図である
図17図15の第1連結金具付近の拡大側面図である
【発明を実施するための形態】
【0025】
つぎに図面を参照しながら本発明の電線支持装置の実施形態についてさらに詳細に説明する。
図1~2に示されるように、本実施形態の電線支持装置(1)は、鉄塔(61)の間に架設される電線(51)を当該電線(51)に張力を与えた状態で支持する装置である。
【0026】
電線支持装置(1)は、図14図15に示される従来の電線支持装置(81)と同様に、複数の電線(51)のそれぞれの端部と鉄塔(61)との間に設けられている。ここで、図1~2に示される実施形態においても、上記の図14図15の例と同様に、4本の電線(51)は、水平方向Xおよび垂直方向Zにおいて互いに離間して上下に2本ずつ配置されている。それぞれの電線(51)の端部には、地上の工場などであらかじめ圧縮クランプ(52)が固定されている。鉄塔(61)には、がいし装置に接続されたヨーク(62)が設けられている。電線支持装置(1)は、電線(51)の圧縮クランプ(52)と鉄塔(61)のヨーク(62)との間を導通可能に接続する。
【0027】
電線支持装置(1)は、バーニヤ金具(2)と、バーニヤ金具(2)両側の一対の第1連結金具(3)と、複数の第2連結金具(4)とを備えており、これらは導通可能な材料、例えば、鉄系材料または合金などで製造される。
【0028】
バーニヤ金具(2)は、電線(51)の端部と鉄塔(61)との間に配置され、電線(51)が延びる方向に長さを変えることにより、当該電線(51)の弛度を調整することが可能な構成を有する。
バーニヤ金具(2)は、上記の図14図17に示されるバーニヤ金具(82)と基本的に同じ構成を有する。
具体的には、バーニヤ金具(2)は、図1図4に示されるように、板厚方向に離間して配置された長尺の一対の外側プレート(2a)であって、その板厚方向に離間して配置された一対の外側プレート(2a)と、一対の外側プレート(2a)の隙間にスライド自在に挿入された内側プレート(2b)と、内側プレート(2b)を外側プレート(2a)に固定するための棒状の固定部材であるボルト(2c)と、を有する。なお、棒状の固定部材として、ボルト(2c)以外にもピンなどを用いてもよい。
【0029】
それぞれの外側プレート(2a)には、複数の第1貫通孔(2e)が、該外側プレート(2a)の長手方向に所定の第1ピッチ(p1)の間隔で、形成されている。
一方、内側プレート(2b)には、複数の第2貫通孔(2f)が、該内側プレート(2b)の長手方向に上記の第1ピッチ(p1)と異なる所定の第2ピッチ(p2)の間隔で、形成されている。
【0030】
ボルト(2c)は、外側プレート(2a)および内側プレート(2b)にそれぞれピッチが異なるように形成された第1貫通孔(2e)および第2貫通孔(2f)が連通している位置において、これらの貫通孔(2e)、(2f)を貫通した状態で、内側プレート(2b)を外側プレート(2a)に固定する。
【0031】
第1連結金具(3)は、バーニヤ金具(2)の両側の端部を電線(51)の端部および鉄塔(61)にそれぞれ連結する。
第1連結金具(3)は、その軸方向両側において相手側部材と接続できるように、第1クレビス部(11)および第2クレビス部(12)を有する(図3を参照)。第1クレビス部(11)および第2クレビス部(12)は、いずれもU字型で鉤型の部分であり、第1連結金具(3)の軸方向(すなわち、長手方向)に対して互いに直交した(すなわち、90度ずれた)位置に配置されている。
【0032】
第1クレビス部(11)は、図3に示されるように、当該第1連結金具(3)が接続される相手側部材(ここではバーニヤ金具(2)の内側プレート(2b))に設けられた凸状のリンク部(2d)を挿入可能なリンク挿入溝(11a)を有する。第1クレビス部(11)のリンク挿入溝(11a)は、第1連結金具(3)の軸方向(すなわち、長手方向)に開口し、垂直方向(図3の紙面垂直方向)に延びている。
第1クレビス部(11)は、内側プレート(2b)のリンク部(2d)がリンク挿入溝(11a)に挿入された状態で軸回転できるように、当該リンク部(2d)とリンク結合する。すなわち、リンク部(2d)および第1クレビス部(11)には、ボルトなどの棒状部材が貫通しているので、リンク部(2d)は、ボルトを回転中心として回転可能である。
【0033】
第1クレビス部(11)におけるリンク挿入溝(11a)の奥側には、当該リンク挿入溝(11a)に連続して、弛度調整用工具(71)を第1連結金具(3)に取り付けるために棒状部材の一種であるボルト(75)を挿入可能なボルト挿入空間(11b)が、さらに形成されている。なお、棒状部材として、ボルト(75)以外にもピンなどの棒状体を使用してもよい。
第1クレビス部(11)のボルト挿入空間(11b)は、リンク挿入溝(11a)と同様に、垂直方向(図3の紙面垂直方向)に延び、第1連結金具(3)を貫通している。
【0034】
一方、第2クレビス部(12)は、図4に示されるように、当該第1連結金具(3)が接続される相手側部材(ここでは第2連結金具(4))に設けられた凸状のリンク部(4a)を挿入可能なリンク挿入溝(12a)を有する。第2クレビス部(12)のリンク挿入溝(12a)は、第1連結金具(3)の軸方向(すなわち、長手方向)に開口し、水平方向(図4の紙面垂直方向)に延びている。
第2クレビス部(12)においても、第1クレビス部(11)と同様に、第2連結金具(4)のリンク部(4a)がリンク挿入溝(12a)に挿入された状態で軸回転できるように、当該リンク部(4a)とリンク結合する。
【0035】
第2クレビス部(12)におけるリンク挿入溝(12a)の奥側には、第1クレビス部(11)と同様に、当該リンク挿入溝(12a)に連続して、弛度調整用工具(71)を第1連結金具(3)に取り付けるためにボルト(75)を挿入可能なボルト挿入空間(12b)が、さらに形成されている。
第2クレビス部(12)のボルト挿入空間(12b)は、リンク挿入溝(12a)と同様に、水平方向(図4の紙面垂直方向)に延び、第1連結金具(3)を貫通している。
【0036】
複数の第2連結金具(4)は、第1連結金具(3)と鉄塔(61)のヨーク(62)との間、および第1連結金具(3)と電線(51)の圧縮クランプ(52)との間を連結する。第2連結金具(4)には、図1図4に示されるように、その軸方向の一方の端部において、U字状のクレビス部が形成されている。このクレビス部には、相手側部材であるヨーク(62)の凸状のリンク部(62a)または圧縮クランプ(52)の凸状のリンク部(52a)が、リンク結合されている。第2連結金具(4)の他方の端部には、凸状のリンク部(4a)が形成されている。このリンク部(4a)は、前述の第1連結金具(3)の第2クレビス部(12)のリンク挿入溝(12a)に挿入され、当該第2クレビス部(12)にリンク結合している。
【0037】
弛度調整用工具(71)は、一対の第1連結金具(3)の距離を変更することにより電線(51)の弛度を調整することが可能な構成を有する。弛度調整用工具(71)には、上記図14図15と同様に、例えば、油圧工具が用いられ、具体的には、弛度調整用工具(71)は、一対のスイングアーム(72)と、支持ロッド(73)と、油圧シリンダ(74)とを有する。
【0038】
なお、弛度調整用工具(71)は、油圧を用いて弛度を調整する油圧工具以外にも他の構成の工具でもよい。例えば、作業者が手動操作するためのレバーを有し、手動操作で弛度を調整するレバーブロック(登録商標)などの工具も、弛度調整用工具として用いてもよい。
【0039】
図3に示されるように、ボルト(75)が第1クレビス部(11)の奥側の垂直方向に延びるボルト挿入空間(11b)に挿入されることにより、図1に示されるように、弛度調整用工具(71)のスイングアーム(72)が水平方向Xに延びる状態で、弛度調整用工具(71)を第1連結金具(3)に取り付けることが可能である。なお、リンク部(2d)がリンク挿入溝(11a)を閉じていることによって、ボルト挿入空間(11b)に挿入されたボルト(75)は、リンク挿入溝(11a)を通して第1連結金具(3)から脱落するおそれがない。
【0040】
一方、図4に示されるように、ボルト(75)が第2クレビス部(12)の奥側の水平方向に延びるボルト挿入空間(12b)に挿入されることにより、図2に示されるように、スイングアーム(72)が垂直方向Zに延びる状態で、弛度調整用工具(71)を第1連結金具(3)に取り付けることが可能である。この場合も、リンク部(4a)がリンク挿入溝(12a)を閉じていることによって、ボルト挿入空間(12b)に挿入されたボルト(75)は、リンク挿入溝(12a)を通して第1連結金具(3)から脱落するおそれがない。
【0041】
電線(51)の弛度を調整する方法は、上記図14図15と同様に、従来と同じ手順で行われる。すなわち、まずバーニヤ金具(2)のボルト(2c)を取り外して内側プレート(2b)と外側プレート(2a)との連結を解除し、弛度調整用工具(71)の油圧シリンダ(74)の駆動力により、一対のスイングアーム(72)を旋回させて、当該一対のスイングアーム(72)の先端側端部にボルト(75)を介して連結された一対の第1連結金具(3)の距離を変更する。これにより、電線(51)の弛度を所定の弛度に調整することが可能である。弛度調整後は、バーニヤ金具(2)のボルト(2c)を取り付けて内側プレート(2b)と外側プレート(2a)とを連結すれば、電線(51)の架設作業は終了する。
【0042】
以上のように、本発明の実施形態1に係る電線支持装置(1)では、バーニヤ金具(2)の両側の端部を電線(51)の端部および鉄塔(61)にそれぞれ連結する第1連結金具(3)において、当該第1連結金具(3)の第1クレビス部(11)のリンク挿入溝(11a)の奥側には、当該リンク挿入溝(11a)に連続して、弛度調整用工具(71)を第1連結金具(3)に取り付けるためにボルト(75)が挿入可能なボルト挿入空間(11b)が、形成されている。このように第1連結金具(3)におけるリンク挿入溝(11a)およびボルト挿入空間(11b)が連続して形成されることにより、当該第1連結金具(3)の長さを短くすることが可能である。また、第2クレビス部(12)のリンク挿入溝(12a)の奥側にも、当該リンク挿入溝(12a)に連続してボルト挿入空間(12b)が形成されているので、これによっても当該第1連結金具(3)の長さを短くすることが可能である。そのため、従来よりも長尺のバーニヤ金具(2)を採用することが可能になり、その結果、バーニヤ金具(2)による電線(51)の弛度の調整範囲を拡大することが可能になる。また、これによって、第1連結金具(3)を増設して弛度を調整する手間が減少し、施工性が向上する。
【0043】
[実施形態2]
本発明の実施形態2にかかる電線支持装置(1)においては、図5に示されるように、バーニヤ金具(2)の内側プレート(2b)の端部のリンク部(2d)には、第1連結金具(3)との接触部分(2g)が形成されている。なお、電線支持装置(1)のその他の構成は、上記実施形態1の構成と共通しているので、説明を省略する。
【0044】
接触部分(2g)が第1連結金具(3)に接触することにより、リンク部(2d)の第1連結金具(3)に対するボルト(13)を回転中心とする相対的な軸回転を規制する。
【0045】
実施形態2に係る電線支持装置(1)では、リンク部(2d)は、第1連結金具(3)との接触部分(2g)を有する。リンク部(2d)がリンク挿入溝(11a)に挿入された状態では、リンク部(2d)の接触部分(2g)が第1連結金具(3)に接触することにより、リンク部(2d)では、第1連結金具(3)に対するボルト(13)を回転中心とする相対的な軸回転が規制される。これにより、作業者は、弛度調整作業中にリンク部(2d)を第1連結金具(3)に対して軸回転しないように支持する必要がなくなり、施工性が向上する。
【0046】
とくに、実施形態2では、リンク部(2d)は、バーニヤ金具(2)の端部(具体的には、内側プレート(2b)の端部)に設けられている。そのため、バーニヤ金具(2)の端部に設けられたリンク部(2d)がリンク挿入溝(11a)に挿入された状態では、リンク部(2d)の接触部分(2g)が第1連結金具(3)に接触することにより、リンク部(2d)およびそれを有するバーニヤ金具(2)の内側プレート(2b)では、第1連結金具(3)に対する相対的なボルト(13)を回転中心とする軸回転が規制される。これにより、作業者は、弛度調整作業中にバーニヤ金具(2)の内側プレート(2b)を第1連結金具(3)に対して軸回転しないように支持する必要がなくなり、バーニヤ金具(2)の長さを調整する作業の施工性が向上する。
【0047】
ここで、実施形態2の比較例として、図6に示されるように、バーニヤ金具(2)の端部のリンク部(2d)が接触部分を有さない形状の場合、リンク部(2d)の円弧状の外周部分は、第1連結金具(3)に接触することができない。そのため、リンク部(2d)およびそれを有するバーニヤ金具(2)は、第1連結金具(3)に対する相対的な軸回転をするおそれがある。したがって、作業者は、弛度調整作業中にリンク部(2d)を第1連結金具(3)に対して軸回転しないように支持する必要があり、施工性の向上が難しくなる。このような点を考慮すれば、上記の実施形態2の電線支持装置のように、リンク部(2d)が接触部分(2g)を有することによって、弛度作業中におけるリンク部(2d)およびそれを有するバーニヤ金具(2)の軸回転を効果的に規制できることが理解される。
【0048】
なお、本発明では、接触部分は、バーニヤ金具(2)の端部に設けられたリンク部(2d)に形成されることに限定されるものではなく、第1連結金具(3)に接触可能な他のリンク部、例えば、接触部分は、第2連結金具(4)のリンク部(4a)(図4参照)であってもよい。その場合も、リンク部(4a)に形成された接触部分が第1連結金具(3)に接触することにより、リンク(4a)の軸回転を規制することが可能である。
なお、接触部分(2g)の形状は特に限定されず、リンク部(2d)およびそれを有するバーニヤ金具(2)の内側プレート(2b)が、第1連結金具(3)に対する相対的なボルト(13)を回転中心とする軸回転が規制されるように、接触部分(2g)が第1連結金具(3)に接触する形状であれば、いかなる形状であっても良い。
【0049】
[実施形態3]
本発明の実施形態3に係る電線支持装置では、図9(a)~(b)に示されるように、バーニヤ金具(2)の外側プレート(2a)および内側プレート(2b)には、第1貫通孔(2e)および第2貫通孔(2f)が連通する位置を外部から容易に確認できるように、溝状の第1表示部(2h)および第2表示部(2j)が形成されている。
【0050】
すなわち、図7(a)~(b)に示されるように、外側プレート(2a)は、上記のように該外側プレート(2a)の長手方向に所定の第1ピッチの間隔で形成された複数の第1貫通孔(2e)の他に、当該外側プレート(2a)の側縁において第1貫通孔(2e)に対応する位置に形成された複数の第1表示部(2h)を有する。
【0051】
第1表示部(2h)は、外側プレート(2a)の側縁、具体的には、第1貫通孔(2e)を挟むように当該外側プレート(2a)の幅方向両側(図7(a)における上下両側)にそれぞれ形成された溝である。なお、第1表示部(2h)は、第1貫通孔(2e)の位置を示すものであればよく、溝以外の形状、例えば、点や三角形などの形状でもよい。
また、外側プレート(2a)の側縁には、個々の第1表示部(2h)を区別するために第1マークとして、例えば「1」、「2」などの数字マーク(2i)が形成されている。
【0052】
一方、内側プレート(2b)は、図8(a)~(b)に示されるように、上記のように該内側プレート(2b)の長手方向に第1ピッチと異なる所定の第2ピッチの間隔で形成された複数の第2貫通孔(2f)の他に、当該内側プレート(2b)の側縁において、第2貫通孔(2f)に対応する位置に形成された複数の第2表示部(2j)を有する。
【0053】
第2表示部(2j)は、上記の第1表示部(2h)と同様に、内側プレート(2b)の側縁、具体的には、第2貫通孔(2f)を挟むように当該内側プレート(2b)の幅方向両側(図8(a)における上下両側)にそれぞれ形成された溝である。なお、第2表示部(2j)についても、第2貫通孔(2f)の位置を示すものであればよく、溝以外に点などの形状でもよい。
また、内側プレート(2b)の側縁には、個々の第2表示部(2j)を区別するために第2マーク、例えば「A」、「B」などの英字マーク(2k)が形成されている。
【0054】
これらの外側プレート(2a)の数字マーク(2i)と内側プレート(2b)の英字マーク(2k)との組合せから、電線の弛度を調整する調整量(例えば、「3」と「D」の組合せの場合には-10mm、「5」と「F」の組合せの場合には10mmなど)を容易に把握することが可能である。
数字マーク(2i)と英字マーク(2k)との組合せから弛度調整量をさらに容易に把握できるように、あらかじめ換算表を作成しておくのが好ましい。換算表は、例えば、縦方向に数字マーク(2i)を並べ、横方向に英字マーク(2k)を並べ、これらの数字マーク(2i)と英字マーク(2k)とで構成されたマトリックス上において、これらの組合せに対応する弛度調整量をそれぞれ表示すればよい。このような換算表を見れば、数字マーク(2i)と英字マーク(2k)との組合せから、弛度調整量を容易に把握することが可能である。
バーニヤ金具(2)のその他の構成は、上記実施形態1の構成と共通しているので、説明を省略する。
【0055】
実施形態3に係る電線支持装置(1)では、バーニヤ金具(2)の外側プレート(2a)には、その側縁において複数の第1貫通孔(2e)に対応する位置に複数の第1表示部(2h)が形成されている。一方、内側プレート(2b)には、その側縁において複数の第2貫通孔(2f)に対応する位置に、複数の第2表示部(2j)が形成されている。
図9(a)、(b)に示されるように、電線(51)の弛度を調整するために、バーニヤ金具(2)の内側プレート(2b)を一対の外側プレート(2a)の間でスライドさせてバーニヤ金具(2)の長さを変えたときに、一対の外側プレート(2a)に形成された複数の第1貫通孔(2e)と内側プレート(2b)に形成された複数の第2貫通孔(2f)とはピッチが異なるので、第1貫通孔(2e)および第2貫通孔(2f)が連通する位置が一義的に決まる。この第1貫通孔(2e)および第2貫通孔(2f)が連通している位置は、外側プレート(2a)の側縁に形成された第1表示部(2h)と内側プレート(2b)の側縁に形成された第2表示部(2j)とが一致する位置を探すことによって、外部から容易に確認することが可能である。これにより、ボルト(2c)などの固定部材を、互いに連通している第1貫通孔(2e)および第2貫通孔(2f)に貫通することにより、内側プレート(2b)を外側プレート(2a)に固定する作業の施工性を向上させることが可能である。
【0056】
[実施形態4]
図10に示される本発明の実施形態4に係る電線支持装置では、ボルト(75)を取り付ける位置を増やすために、上記の第1連結金具(3)以外にも、バーニヤ金具(2)において、ボルト(75)を取り付けることが可能な取付孔(2l)が形成されている。取付孔(2l)は、例えば、バーニヤ金具(2)の外側プレート(2a)または内側プレート(2b)のいずれかにおいて、バーニヤ金具(2)の長手方向に並んで複数個形成されている。
実施形態4に係る電線支持装置(1)では、弛度調整用工具(71)を取り付けるためのボルト(75)は、第1連結金具(3)のボルト挿入空間(11b、12b)の他に、バーニヤ金具(2)に形成された取付孔(2l)にも取り付けることが可能である。そのため、弛度調整用工具(71)を取付可能な位置が増えることにより、弛度の調整範囲をさらに拡大することが可能である。
【0057】
[実施形態5]
上記実施形態1では、バーニヤ金具(2)の両端部に第1連結金具(3)が連結されているが、本発明はこれに限定されるものではない。当該両端部における第1連結金具(3)のうちのいずれか一方の第1連結金具(3)については、当該バーニヤ金具(2)の端部に合体してもよい。この場合、電線支持装置の部品点数を減少させることが可能である。
【0058】
[実施形態6]
上記実施形態1では、バーニヤ金具(2)の両端部の第1連結金具(3)の第1および第2クレビス部(11)、(12)においてリンク挿入溝(11a)、(12a)の奥側に連続してボルト挿入空間(11b)、(12b)が形成されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、第2連結金具(4)のクレビス部のリンク挿入溝の奥側に連続して、ボルト挿入空間を形成してもよい。その場合も、第2連結金具(4)の長さが短くなることにより、長尺のバーニヤ金具(2)を採用することが可能になり、その結果、バーニヤ金具(2)による電線(51)の弛度の調整範囲を拡大することが可能になる。
【0059】
[実施形態7]
図11に示される本発明の実施形態7に係る電線支持装置では、ボルト(75)を取り付ける位置を増やすために、第1連結金具(3)以外にも、第2連結金具(4)において、ボルト(75)を取り付けることが可能な取付孔(2l)が形成されている(図11(a)参照)。
実施形態7に係る電線支持装置(1)では、弛度調整用工具(71)を取り付けるためのボルト(75)は、第1連結金具(3)のボルト挿入空間(11b、12b)の他に、第2連結金具(4)に形成された取付孔(2l)にも取り付けることが可能である。そのため、弛度調整用工具(71)を取付可能な位置が増えることにより、弛度の調整範囲をさらに拡大することが可能である。
なお、図11(b)に示されるように、4本の電線を支持する場合、上方の2本の電線と下方の2本の電線では適した弛度が異なるため、通常は下方の2本の電線を支持する電線支持装置の全長を、上方の電線支持装置の全長よりも長くする。そのため、下方の電線支持装置の全長を長くするために、延長金具(9)を設けても良い。
【0060】
[実施形態8]
図12に示される本発明の実施形態8に係る電線支持装置では、ボルト(75)を取り付ける位置を増やすために、第1連結金具(3)以外にも、第2連結金具(4)において、ボルト(75)を取り付けることが可能な取付孔(2l)が形成されている(図12(a)参照)。
さらに、実施形態8に係る電線支持装置(1)では、鉄塔(61)側の第1連結金具(3)と第2連結金具(4)とが離間しており、第1連結金具(3)が平面視略H字状を呈している。
実施形態8に係る電線支持装置(1)では、弛度調整用工具(71)を取り付けるためのボルト(75)は、第1連結金具(3)のボルト挿入空間(11b、12b)の他に、第2連結金具(4)に形成された取付孔(2l)にも取り付けることが可能である。そのため、弛度調整用工具(71)を取付可能な位置が増えることにより、弛度の調整範囲をさらに拡大することが可能である。
なお、図12(b)に示されるように、4本の電線を支持する場合、上方の2本の電線と下方の2本の電線とでは適した弛度が異なるため、通常は下方の2本の電線を支持する電線支持装置の全長を、上方の電線支持装置の全長よりも長くする。そのため、下方の電線支持装置の全長を長くするために、延長金具(9)を設けても良い。
【0061】
[実施形態9]
図13に示される本発明の実施形態9に係る電線支持装置(1)は、2本の電線を支持するための電線支持装置である。
実施形態9に係る電線支持装置では、ボルト(75)を取り付ける位置を増やすために、第1連結金具(3)以外にも、第2連結金具(4)において、ボルト(75)を取り付けることが可能な取付孔(2l)が形成されている(図13(a)参照)。
実施形態9に係る電線支持装置(1)では、弛度調整用工具(71)を取り付けるためのボルト(75)は、第1連結金具(3)のボルト挿入空間(11b、12b)の他に、第2連結金具(4)に形成された取付孔(2l)にも取り付けることが可能である。そのため、弛度調整用工具(71)を取付可能な位置が増えることにより、弛度の調整範囲をさらに拡大することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、鉄塔の間に架設される電線を当該電線に張力を与えた状態で支持する電線支持装置に広く適用することが可能である。本発明によって、連結金具におけるリンク挿入溝および棒状部材挿入空間が連続して形成されることにより、当該連結金具の長さを短くすることが可能である。そのため、従来よりも長尺のバーニヤ金具を採用することが可能になり、その結果、バーニヤ金具による電線の弛度の調整範囲を拡大することが可能になる。また、これによって、連結金具を増設して弛度を調整する手間が減少し、施工性が向上する。
【符号の説明】
【0063】
1 電線支持装置
2 バーニヤ金具
2a 外側プレート
2b 内側プレート
2c ボルト(固定部材)
2d リンク部
2e 第1貫通孔
2f 第2貫通孔
2g 接触部分
2h 第1表示部
2i 数字マーク
2j 第2表示部
2k 英字マーク
3 第1連結金具
4 第2連結金具
11 第1クレビス部
11a リンク挿入部
11b ボルト挿入部
12 第2クレビス部
12a リンク挿入部
12b ボルト挿入部
13 ボルト
51 電線
52 圧縮クランプ
52a リンク部
61 鉄塔
62 ヨーク
62a リンク部
71 弛度調整工具
72 スイングアーム
73 支持ロッド
74 油圧シリンダ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17