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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】ソーラパネル付き時計
(51)【国際特許分類】
   G04C 10/02 20060101AFI20240528BHJP
   G04G 19/00 20060101ALI20240528BHJP
   H01L 31/0216 20140101ALI20240528BHJP
   H02S 40/20 20140101ALI20240528BHJP
【FI】
G04C10/02 A
G04G19/00 B
H01L31/04 240
H02S40/20
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020205833
(22)【出願日】2020-12-11
(65)【公開番号】P2022092867
(43)【公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 慎也
(72)【発明者】
【氏名】小俣 照幸
(72)【発明者】
【氏名】中西 耕平
(72)【発明者】
【氏名】金丸 善一
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特許第4948730(JP,B2)
【文献】特開2014-38008(JP,A)
【文献】特開昭56-1580(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00 - 99/00
G04C 1/00 - 99/00
G04G 3/00 - 99/00
H01L 31/0216
H02S 40/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透過する光に位相差を与える位相差板と、該位相差板の上方に配置され、特定方向に偏光した光成分を透過する偏光板と、を含む文字板と、
互いに分割領域を介して隣接して配置される複数のソーラセルを含み、前記文字板を透過した光が入射されることで発電するソーラパネルと、
平面視において、前記分割領域と重なるように配置され、前記ソーラセルの発電領域を構成する部材よりも光吸収性の高い光吸収部材と、
を有し、
前記偏光板及び前記位相差板を透過して前記ソーラパネルに入射された光は前記ソーラパネルの上面で反射され、当該反射された光は前記位相差板を透過して前記偏光板で吸収され、
前記光吸収部材は、平面視において前記分割領域が延びる方向に沿うように形成されている、
ソーラパネル付き時計。
【請求項2】
前記ソーラパネルは、下部電極層と、該下部電極層の上方に設けられる半導体層と、該半導体層の上方に設けられる、光透過性を有する上部電極層と、前記分割領域に隣接すると共に、前記半導体層と前記上部電極層との間に設けられる絶縁層と、を含み、
前記光吸収部材は、平面視において前記絶縁層と重なるように設けられている、
請求項1に記載のソーラパネル付き時計。
【請求項3】
前記上部電極層の上方に設けられると共に、前記上部電極層を保護する封止層を有し、
前記封止層の屈折率は、1.5~1.7である、
請求項2に記載のソーラパネル付き時計。
【請求項4】
前記上部電極層の屈折率は、1.8~2.1である、
請求項3に記載のソーラパネル付き時計。
【請求項5】
前記封止層の上面のうち、前記分割領域に対応する部分と、前記ソーラパネルの発電領域に対応する部分とは、面一に形成されている、
請求項3又は4に記載のソーラパネル付き時計。
【請求項6】
前記光吸収部材は、前記絶縁層よりも光吸収性が高い、
請求項~5のいずれか1項に記載のソーラパネル付き時計。
【請求項7】
前記光吸収部材の算術平均粗さは、0.01μm~1μmである、
請求項1~6のいずれか1項に記載のソーラパネル付き時計。
【請求項8】
前記光吸収部材は、樹脂材料からなり、前記分割領域に充填されている、
請求項1~7のいずれか1項に記載のソーラパネル付き時計。
【請求項9】
前記光吸収部材は、前記ソーラパネルの表面上に設けられている、
請求項1~7のいずれか1項に記載のソーラパネル付き時計。
【請求項10】
前記光吸収部材は、前記文字板の下面に設けられている、
請求項1~7のいずれか1項に記載のソーラパネル付き時計。
【請求項11】
前記光吸収部材は、樹脂と、着色顔料とを含む、
請求項1~10のいずれか1項に記載のソーラパネル付き時計。
【請求項12】
前記光吸収部材は、光散乱材を含まない、
請求項1~11のいずれか1項に記載のソーラパネル付き時計。
【請求項13】
前記光吸収部材は、前記ソーラパネルの発電領域よりも光を散乱しにくい材料からなる、
請求項1~12のいずれか1項に記載のソーラパネル付き時計。
【請求項14】
前記ソーラパネルは、可撓性を有するフィルム基板を含む、
請求項1~13のいずれか1項に記載のソーラパネル付き時計。
【請求項15】
前記ソーラパネルは、金属製の基板を含む、
請求項1~13のいずれか1項に記載のソーラパネル付き時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソーラパネル付き時計に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ソーラセルの手前に配設されており、光を透過する円偏光板を有する時計が開示されている。この構成によると、ソーラセル表面で反射してきた光を円偏光板で遮断できる。その結果、ソーラセルが外部から視認されることを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2001/037350号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、円偏光板は、特定の位相の光を吸収することができるが、当該特定の位相から位相がずれた光を透過することとなる。特に、複数のソーラセル間の領域においては光散乱が生じる場合があり、反射光の位相がずれてしまう。そのため、ソーラセルで反射した光が円偏光板を透過し、外部に漏れ出してしまう場合がある。その結果、複数のソーラセル間の領域が外部から視認されることとなり、時計のデザイン性が低下してしまうおそれがある。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、ソーラパネルの分割領域が外部から視認されてしまうことを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係るソーラパネル付き時計は、透過する光に位相差を与える位相差板と、該位相差板の上方に設けられており、特定方向に偏光した光成分を透過する偏光板とを、少なくとも含む文字板と、互いに分割領域を介して隣接して配置される複数のソーラセルを含み、前記文字板を透過した光が入射されることで発電するソーラパネルと、平面視において、少なくとも前記分割領域と重なるように設けられており、前記ソーラセルの発電領域を構成する部材よりも光吸収性の高い光吸収部材と、を有する。
【0007】
(2)(1)において、前記ソーラパネルは、下部電極層と、該下部電極層の上方に設けられる半導体層と、該半導体層の上方に設けられる、光透過性を有する上部電極層と、前記分割領域に隣接すると共に、前記半導体層と前記上部電極層との間に設けられる絶縁層と、を含み、 前記光吸収部材は、平面視において前記絶縁層と重なるように設けられている、ソーラパネル付き時計。
【0008】
(3)(2)において、前記光吸収部材は、前記絶縁層よりも光吸収性が高い、ソーラパネル付き時計。
【0009】
(4)(1)~(3)のいずれかにおいて、前記光吸収部材の算術平均粗さは、0.01μm~1μmである、ソーラパネル付き時計。
【0010】
(5)(1)~(4)のいずれかにおいて、前記光吸収部材は、樹脂材料からなり、前記分割領域に充填されている、ソーラパネル付き時計。
【0011】
(6)(1)~(4)のいずれかにおいて、前記光吸収部材は、前記ソーラパネルの表面上に設けられている、ソーラパネル付き時計。
【0012】
(7)(1)~(4)のいずれかにおいて、前記光吸収部材は、前記文字板の下面に設けられている、ソーラパネル付き時計。
【0013】
(8)(1)~(7)のいずれかにおいて、前記光吸収部材は、樹脂と、着色顔料とを含む、ソーラパネル付き時計。
【0014】
(9)(1)~(8)のいずれかにおいて、前記光吸収部材は、光散乱材を含まない、ソーラパネル付き時計。
【0015】
(10)(1)~(9)のいずれかにおいて、前記光吸収部材は、前記ソーラパネルの発電領域よりも光を散乱しにくい材料からなる、ソーラパネル付き時計。
【0016】
(11)(1)~(10)のいずれかにおいて、前記上部電極層の上方に設けられると共に、前記上部電極層を保護する封止層を有し、前記封止層の屈折率は、1.5~1.7である、ソーラパネル付き時計。
【0017】
(12)(11)において、前記上部電極層の屈折率は、1.8~2.1である、ソーラパネル付き時計。
【0018】
(13)(11)又は(12)において、前記封止層の上面のうち、前記分割領域に対応する部分と、前記ソーラパネルの発電領域に対応する部分とは、面一に形成されている、ソーラパネル付き時計。
【0019】
(14)(1)~(13)のいずれかにおいて、前記ソーラパネルは、可撓性を有するフィルム基板を含む、ソーラパネル付き時計。
【0020】
(15)(1)~(13)のいずれかにおいて、前記ソーラパネルは、金属製の基板を含む、ソーラパネル付き時計。
【発明の効果】
【0021】
上記本発明の(1)~(15)の側面によれば、ソーラパネルの分割領域が外部から視認されてしまうことを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本実施形態に係るソーラパネル付き時計を示す平面図である。
図2図1に示すII-II切断線で切り取った時計の切断面を示す断面図である。
図3】本実施形態のソーラパネルを示す平面図である。
図4図3に示すIV-IV切断線で切り取ったソーラパネル及び文字板の断面を示す断面図である。
図5】本実施形態の第1の変形例のソーラパネル及び文字板の切断面を示す断面図である。
図6】本実施形態の第2の変形例のソーラパネル及び文字板の切断面を示す断面図である。
図7】本実施形態の第3の変形例のソーラパネル及び文字板の切断面を示す断面図である。
図8】本実施形態の第4の変形例のソーラパネル及び文字板の切断面を示す断面図である。
図9】本実施形態の第5の変形例のソーラパネル及び文字板の切断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態(以下、本実施形態という)について図面に基づき詳細に説明する。
【0024】
[ソーラパネル付き時計1の概要]
図1は、本実施形態に係るソーラパネル付き時計(以下、単に時計という)1を示す平面図である。図1には、時計1の外装ケース(時計ケース)である胴10、胴10内に配置された文字板3、時刻を示す指針である時針15、分針16、秒針17が示されている。また、文字板3には所定の位置に時字18が設けられている。また、胴10の12時側及び6時側の側面からは、バンドを固定するためのバンド固定部11が伸びている。また、胴10の3時側の側面にはユーザが種々の操作を行うためのボタン12、竜頭13が配置されている。なお、図1に示した時計のデザインは一例である。
【0025】
図2は、図1に示すII-II切断線で切り取った切断面を示す断面図である。なお、図2においては竜頭13の図示は省略しており、また、指針の配置を分かりやすくするため、分針16が9時の方向を、また時針15及び秒針17が3時の方向をそれぞれ指している状態での断面を示している。
【0026】
図2に示すように、時計1は、文字板3を覆うようにガラス等の透明材料により形成された風防30を有し、風防30は胴10に取り付けられている。また、風防30の反対側においては裏蓋19が胴10に取り付けられている。
【0027】
本明細書では、以降、図1における紙面手前側(図2における上側)を上側、図1における紙面奥側(図2における下側)を下側と呼ぶ。また、各部材における上側の面を上面、下側の面を下面と呼ぶ。
【0028】
文字板3の下側には、ソーラパネル2が配置されている。ソーラパネル2は、文字板3を透過して入射される光により発電する。そのため、文字板3はある程度光を透過する材質で形成される。図1に示すように、本実施形態においては、外形が略円形のソーラパネル2を文字板3の下側に配置した例を示す。
【0029】
図2に示すように、時計1は、さらに、ソーラパネル2の下側に設けられるムーブメント40を有する。ムーブメント40は、指針を駆動するための輪列とモータ、時刻を計時する水晶振動子を含む時計回路、時計1全体を制御するコントローラ等を地板と呼ばれる枠に一体に組み付けたものである。ムーブメント40は、ムーブメント40に取り付けられた不図示の蓄電池から電力を得て動作する。蓄電池は、ムーブメント40に電力を供給すると共に、ソーラパネル2により発電された電力を蓄積するものであり、例えば、ボタン型のリチウム二次電池である。
【0030】
本実施形態においては、ソーラパネル2は、ムーブメント40に一体的に設けられている。また、ムーブメント40には指針軸が文字板3の上面から突出するように設けられており、その先端に秒針17、分針16、時針15が取り付けられている。そして、それらを覆うようにして風防30が胴10に固定されている。
【0031】
なお、本実施形態においては、ソーラパネル付き時計1として腕時計を示すが、これに限らず、懐中時計等であってもよい。
【0032】
[ソーラパネル2]
次に、図3図4を参照して、ソーラパネルの構成について説明する。図3は、本実施形態のソーラパネルを示す平面図である。図4は、図3に示すIV-IV切断線で切り取ったソーラパネル及び文字板の切断面を示す断面図である。
【0033】
ソーラパネル2は、分割領域Dを介して互いに隣接して配置される複数のソーラセルCを含む。図3においては、平面形状が略扇状の4つのソーラセルCを含むソーラパネル2を示している。すなわち、ソーラパネル2は、分割領域Dを介して4つのソーラセルCに区画されている。分割領域Dは、後述の下部電極層22、半導体層23、上部電極層24等が設けられていない領域であって、後述の絶縁層27間に位置する領域である。
【0034】
ソーラパネル2は、図4に示すように、基板21と、基板21上に設けられる下部電極層22と、下部電極層22上に設けられる半導体層23と、半導体層23上に設けられる上部電極層24とを含む。
【0035】
なお、図示は省略するが、ソーラパネル2は、下部電極層22及び上部電極層24を蓄電池と電気的に接続する配線や、4つのソーラセルCを互いに互いに直列又は並列接続する配線等を有しているとよい。
【0036】
基板21は、可撓性を有するフィルム基板であってもよいし、ステンレス鋼(SUS)等の金属であってもよい。
【0037】
半導体層23は、入射光を電気に変換する機能を有する層であり、例えば、アモルファスシリコン等からなるとよい。アモルファスシリコンを用いることにより、可視光の入射による発電効率を向上させることができる。そのため、室内等、太陽光が当たらない場所においても効率的に発電を行うことが可能となる。ただし、これに限られるものではなく、結晶シリコン等、他の半導体を半導体層23として用いてもよい。
【0038】
上部電極層24は、光透過性を有する透明電極からなるとよい。上部電極層24は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、FTO(Fluorine-doped Tin Oxide)等からなるとよい。また、下部電極層22は、例えば、Al(アルミニウム)、Au(金)、Ag(銀)等からなるとよい。
【0039】
また、ソーラパネル2は、上部電極層24上に設けられる第1の封止層25と、第1の封止層25上に設けられる第2の封止層26とを含む。第1の封止層25及び第2の封止層26は、上部電極層24を保護する層である。第1の封止層25及び第2の封止層26は、光透過性を有する、絶縁性の透明樹脂等からなるとよい。なお、第1の封止層25と第2の封止層26とは、光透過性を有するものであれば、異なる材料からなるものであってもよいし、同じ材料からなるものであってもよい。
【0040】
図4においては、第1の封止層25が、上部電極層24上であって、各ソーラセルCにそれぞれ設けられており、第2の封止層26が、第1の封止層25上であって、分割領域Dを介して離間して設けられる各ソーラセルCを架け渡すようにソーラパネル2の略全面に設けられている例を示す。
【0041】
さらに、ソーラパネル2は、分割領域Dに隣接すると共に、半導体層23と上部電極層24との間に設けられる絶縁層27を含む。
【0042】
本実施形態において、絶縁層27は光透過性を有しない材料からなる。すなわち、本実施形態において、ソーラパネル2のうち、平面視において絶縁層27が設けられる領域(以下、分割周辺領域Pと呼ぶ)及び分割領域Dは、発電に寄与しない非発電領域の一部を構成する。
【0043】
[文字板3]
次に、図4を参照して、文字板3の構成について説明する。文字板3は、位相差板31と、位相差板31上に設けられる偏光板32とを含む。なお、これに限らず、文字板3は、文字板3の厚みを調整するための厚み調整層等、光透過性を有する層や基板をさらに有していても構わない。
【0044】
位相差板31は、入射光に位相差を与える機能を備える板である。本実施形態においては、位相差板31として、位相差板31に対して直交する方向から入射された入射光にπ/2(λ/4)の位相差を与える機能を備える板を採用する。
【0045】
偏光板32は、特定方向に偏光した光だけを透過させる直線偏光板である。本実施形態においては、偏光板32が、進行方向に対して直交する第1の軸方向に振動する直線偏光のみを透過させ、進行方向及び第1の軸方向に対して直交する第2の軸方向に振動する直線偏光を吸収する例について説明する。
【0046】
位相差板31と偏光板32とは、互いに重ねて設けられることにより、いわゆる円偏光板として機能している。
【0047】
[発電領域に入射される入射光]
ここで、図4を参照して、文字板3を透過して、ソーラパネル2の発電領域に入射される入射光L1ついて説明する。なお、本実施形態においては、ソーラパネル2のうち、分割周辺領域P及び分割領域D以外の領域が、発電に寄与する発電領域であるとする。なお、図4においては、光の進行方向を矢印で示している。
【0048】
まず、入射光L1は、偏光板32の上面に入射される。偏光板32へ入射された入射光L1のうち第2の軸方向に振動する直線偏光は、偏光板32において吸収される。一方、偏光板32に入射された入射光L1のうち第1の軸方向に振動する直線偏光は、偏光板32を透過する。偏光板32を透過した第1の軸方向に振動する直線偏光L11は、位相差板31の上面に入射される。
【0049】
位相差板31の上面に入射された直線偏光L11は、位相差板31を透過すると共に、π/2(λ/4)の位相差が与えられる。これにより、位相差板31を透過した光は、円偏光となる。本実施形態においては、位相差板31を透過した光は右回り円偏光であるとする。位相差板31を透過した右回り円偏光L12は、ソーラパネル2へ入射される。
【0050】
右回り円偏光L12は、第2の封止層26、第1の封止層25、及び上部電極層24を透過して、半導体層23に入射される。半導体層23に入射された右回り円偏光L12の一部はソーラパネル2に吸収されて発電に寄与し、他の一部は半導体層23の上面で反射される。半導体層23で反射された反射光は、左周り円偏光L13となる。
【0051】
半導体層23で反射された左回り円偏光L13は、上部電極層24、第1の封止層25、及び第2の封止層26を透過して、位相差板31の下面に入射される。位相差板31へ入射された左回り円偏光L13は、位相差板31を透過すると共に、π/2(λ/4)の位相差が与えられて、第2の軸方向に振動する直線偏光L14となる。
【0052】
さらに、位相差板31を透過した直線偏光L14は、偏光板32の下面に入射される。偏光板32は第2の軸方向に振動する直線偏光を吸収するため、位相差板31を透過して偏光板32の下面に入射された直線偏光L14は、偏光板32に吸収される。すなわち、ソーラパネル2で反射された光は、文字板3の外部へ漏れ出さない。そのため、ユーザは、ソーラパネル2の発電領域を、文字板3を介して黒色として視認することとなる。
【0053】
[非発電領域に入射される入射光]
ソーラパネルにおいては、分割領域D及び分割周辺領域Pを覆うように絶縁層(以下、被覆絶縁層という)が形成される構成を採用することが考えられるが、その場合、被覆絶縁層に入射された光が散乱し、光の位相がずれてしまう。すなわち、ソーラパネル2で反射された反射光のうち、被覆絶縁層で反射された光が所望の位相とならないこととなる。具体的には、被覆絶縁層で反射された光が円偏光ではなく、楕円偏光となってしまう。これにより、ソーラパネル2で反射された反射光の一部が偏光板32を透過して外部に漏れ出してしまう。その結果、被覆絶縁層が文字板3を介して外部から透けて見え、デザイン性が低下するという問題が生じ得る。
【0054】
また、分割領域Dに隣接して絶縁層27が設けられる構成においては、絶縁層27の厚みに応じて、第2の封止層26に段差が形成されることとなる。これにより、第2の封止層26の表面に凹凸が生じることとなる。図4においては、分割領域Dにおいて、第2の封止層26の表面に溝gが形成されている例を示している。分割領域Dにおけるソーラパネル2の上面(最上層)が平面でないことより、分割領域Dにおける光反射性能が発電領域と異なることとなる。そのため、分割領域Dにおける反射光が、文字板3を透過して外部に漏れ出してしまう。その結果、被覆絶縁層が文字板3を介して外部から透けて見え、デザイン性が低下するという問題が生じ得る。
【0055】
そこで、本実施形態においては、被覆絶縁層として光吸収部材28を用いることにより、ソーラパネル2で反射された光が外部に漏れ出すことを抑制する構成を採用した。
【0056】
光吸収部材28は、光散乱性が低く、特に可視光に対する光吸収性の高い黒色顔料を含む樹脂からなるとよい。なお、可視光とは、波長が400nm~800nm程度の光である。
【0057】
図4においては、光吸収部材28が、平面視において分割周辺領域Pに重なるように上部電極層24上に設けられると共に、分割領域Dに充填されている例について示す。すなわち、本実施形態においては、図4に示すように、被覆領域A(光吸収部材28が設けられる領域)が、平面視において少なくとも分割領域Dと分割周辺領域Pとに重なる例について示す。また、光吸収部材28は、分割周辺領域P及び分割領域Dが延びる方向に沿うように延びて形成されているとよい。すなわち、本実施形態においては、光吸収部材28は、図3に示す分割周辺領域P及び分割領域Dの形状に沿うように線状に形成されているとよい。
【0058】
図4を参照して、被覆領域Aに入射される入射光L2について説明する。入射光L2は、偏光板32に入射される。偏光板32に入射された入射光L2のうち第2の軸方向に振動する直線偏光は、偏光板32において吸収される。一方、偏光板32に入射された入射光L2のうち第1の軸方向に振動する直線偏光は、偏光板32を透過する。偏光板32を透過した第1の軸方向に振動する直線偏光L21は、位相差板31の上面に入射される。
【0059】
位相差板31の上面に入射された直線偏光L21は、位相差板31を透過すると共に、π/2(λ/4)の位相差が与えられる。これにより、位相差板31を透過した光は、円偏光となる。本実施形態においては、位相差板31を透過した光は右回り円偏光であるとする。位相差板31を透過した右回り円偏光L22は、ソーラパネル2へ入射される。
【0060】
右回り円偏光L22は、第2の封止層26を透過して、光吸収部材28に入射される。これにより、右回り円偏光L22は、光吸収部材28で吸収されることとなる。そのため、右回り円偏光L22は、上述の右回り円偏光L12のように半導体層23において反射されることが抑制される。すなわち、被覆領域Aに入射された光が、ソーラパネル2で反射されて外部に漏れ出すことが抑制される。
【0061】
そのため、分割領域Dが、文字板3を介して外部から視認されることが抑制される。その結果、時計1のデザイン性が低下することが抑制される。また、分割領域Dは、発電に寄与しない領域であることより、光吸収部材28を設けても、ソーラパネル2における発電量が低下することもない。
【0062】
なお、本実施形態においては、図4を参照して、半導体層23において反射された反射光について説明したが、実際には、ソーラパネル2に入射された光の一部は、上部電極層24、第1の封止層25、第2の封止層26でも反射される。上部電極層24において反射される光が散乱することを抑制するため、上部電極層24と第1の封止層25との屈折率は近い方が好ましい。また、第1の封止層25は、複屈折性を有しない樹脂からなるとよい。具体的には、例えば、第1の封止層25の屈折率は1.5~1.7であるとよい。また、上部電極層24の屈折率は1.8~2.1であるとよい。
【0063】
また、本実施形態においては、上述のように、光吸収部材28が可視光に対する光吸収性の高い顔料を含む構成を採用した。これにより、室内明かりによりソーラパネル2を発電させる場合において、ソーラパネル2で反射された可視光が外部に漏れ出すことを抑制できる。すなわち、室内において時計1を使用する際に、ソーラパネル2の分割領域D等が文字板3を介して外部から視認されてしまうことを抑制できる。
【0064】
ただし、これに限られるものではなく、光吸収部材28は、少なくとも、ソーラパネル2のうち発電領域を構成する部材よりも光吸収性の高い材料からなるとよい。言い換えると、光吸収部材28は、ソーラパネル2のうち発電領域を構成する部材よりも光散乱を生じにくい材料からなるとよい。具体的には、光吸収部材28の上面の算術平均粗さRaは、0.01μm~1μmであるとよい。また、光吸収部材28は、光散乱材を含んでいないとよい。なお、算術平均粗さとは、表面の凸凹の平均値を基準線として、基準線からの距離の平均値を表すものである。算術平均粗さが小さいほど、凹凸が少なく、滑らかな平面であるといえる。
【0065】
なお、本実施形態においては、絶縁層27の材料を、光吸収部材28と同じ材料とした。すなわち、絶縁層27は、ソーラパネル2のうち発電領域を構成する部材よりも光吸収性の高い材料からなり、その算術平均粗さは、0.01μm~1μmである。ただし、これに限られず、絶縁層27は、光吸収部材28よりも光透過性の高い材料からなるものであってもよい。言い換えると、絶縁層27が、光吸収部材28よりも光吸収性が低い材料からなるものであってもよい。絶縁層27が、光吸収部材28よりも光吸収性が低い場合、分割周辺領域Pに入射された光が絶縁層27で反射し、反射光が外部に漏れ出すことで絶縁層27が視認されてしまうおそれがある。しかしながら、本実施形態においては、平面視において絶縁層27と重なるように光吸収部材28を設ける構成を採用しているため、絶縁層27に到達する前に光は光吸収部材28で吸収される。そのため、分割周辺領域Pが、文字板3を介して外部から視認されることが抑制される。
【0066】
なお、複数のソーラセルCは、例えば、1つの略円形状のセルを、レーザ光等を照射することにより、セルの一部を除去することで分離、生成されるものであるとよい。すなわち、レーザ光等を照射することにより分割領域Dを形成すると共に、複数のソーラセルCを形成するとよい。または、複数のソーラセルCは、予め生成された独立した略扇状の複数のセルを、分割領域Dを介して互いに離間するように配置することにより、基板21上に形成されてもよい。
【0067】
[第1の変形例]
次に、図5を参照して、本実施形態の第1の変形例について説明する。図5は、本実施形態の第1の変形例のソーラパネル及び文字板の切断面を示す断面図である。図5においては、図4と同様の切断線で切り取った切断面を示している。すなわち、第1の変形例のソーラパネルのうち分割周辺領域P及び分割領域Dを通る切断線で切り取った切断面を示している。なお、図1図4を参照して説明した構成と同じ機能を有する構成については、同じ符号を用いて、その詳細な説明は省略する。
【0068】
第1の変形例においては、分割領域Dにおけるソーラパネル2の表面が平面となる構成を採用した。具体的には、光吸収部材28を上部電極層24上に設けると共に、第1の封止層25の上面を光吸収部材28の上面と面一となるように設けた。そして、第2の封止層26を、第1の封止層25及び光吸収部材28上に設けた。これにより、第2の封止層26の上面が平面となっている。すなわち、第2の封止層26の上面のうち、分割領域Dに対応する部分と、発電領域に対応する部分とは、面一に形成されている。
【0069】
第1の変形例においては、ソーラパネル2の表面、特に分割領域Dの表面に凹凸がないことより、分割領域Dにおいて光散乱が生じにくい。そのため、ソーラパネル2で反射した反射光が外部に漏れ出してしまう可能性をより低減することができる。
【0070】
[第2の変形例]
次に、図6を参照して、本実施形態の第2の変形例について説明する。図6は、本実施形態の第2の変形例のソーラパネル及び文字板の切断面を示す断面図である。図6においては、図4及び図5と同様の切断線で切り取った切断面を示している。すなわち、第2の変形例のソーラパネルのうち分割周辺領域P及び分割領域Dを通る切断線で切り取った切断面を示している。なお、図1図4を参照して説明した構成と同じ機能を有する構成については、同じ符号を用いて、その詳細な説明は省略する。
【0071】
第2の変形例においては、図6に示すように、第2の封止層26上に光吸収部材28を設けた。光吸収部材28は、平面視において、分割周辺領域P及び分割領域Dに重なるように設けられている。そのため、図6に示すように、分割周辺領域P及び分割領域Dへの入射光L2のうち文字板3を透過した右回り円偏光L22は、光吸収部材28で吸収される。このため、分割周辺領域P及び分割領域Dに入射された光がソーラパネル2で反射されて文字板3を介して外部に漏れ出すことを抑制できる。
【0072】
[第3の変形例]
次に、図7を参照して、本実施形態の第3の変形例について説明する。図7は、本実施形態の第3の変形例のソーラパネル及び文字板の切断面を示す断面図である。図7においては、図4図5、及び図6と同様の切断線で切り取った切断面を示している。すなわち、第3の変形例のソーラパネルのうち分割周辺領域P及び分割領域Dを通る切断線で切り取った切断面を示している。なお、図1図4を参照して説明した構成と同じ機能を有する構成については、同じ符号を用いて、その詳細な説明は省略する。
【0073】
第3の変形例においては、図7に示すように、文字板3の下面に光吸収部材38を設けた。具体的には、光吸収部材38は、文字板3の位相差板31の下面であって、平面視において、分割周辺領域P及び分割領域Dに重なるように設けられている。そのため、図7に示すように、文字板3のうち分割周辺領域P及び分割領域Dと重なる領域に入射された入射光L2は、ソーラパネル2に到達する前に、光吸収部材38で吸収される。このため、ソーラパネル2のうち分割周辺領域P及び分割領域Dで光が反射することを抑制できる。その結果、文字板3を介して外部に漏れ出す光が生じることを抑制できる。
【0074】
[第4の変形例]
次に、図8を参照して、本実施形態の第4の変形例について説明する。図8は、本実施形態の第4の変形例のソーラパネル及び文字板の切断面を示す断面図である。図8においては、図4等と同様の切断線で切り取った切断面を示している。すなわち、第4の変形例のソーラパネルのうち分割周辺領域P及び分割領域Dを通る切断線で切り取った切断面を示している。なお、図1図4を参照して説明した構成と同じ機能を有する構成については、同じ符号を用いて、その詳細な説明は省略する。
【0075】
第4の変形例においては、図8に示すように、第2の封止層26上であって、平面視において分割領域Dと重なる領域のみに光吸収部材28を設けた。すなわち、第4の変形例においては、分割領域Dと被覆領域Aとが平面視において一致する領域となっている。図8に示すように、分割領域D(被覆領域A)への入射光L2のうち文字板3を透過した右回り円偏光L22は、光吸収部材28で吸収される。このため、分割領域D(被覆領域A)に入射された光がソーラパネル2で反射されて文字板3を介して外部に漏れ出すことを抑制できる。
【0076】
また、第4の変形例においては、絶縁層27は、光吸収部材28と同じ材料からなるとよい。すなわち、分割周辺領域Pへの入射光は、絶縁層27で吸収されるとよい。これにより、分割周辺領域Pに入射された光がソーラパネル2で反射されて文字板3を介して外部に漏れ出すことを抑制できる。
【0077】
第4の変形例においては、光吸収部材28の量を最小限としたため、材料コストを抑制できる。また、第4の変形例においては、非発電領域を分割領域Dと分割周辺領域Pのみとすることができるため、図4で示した構成と比較して発電領域を大きくすることができる。その結果、発電効果を最大化することができる。なお、図8においては、分割領域Dと被覆領域Aとが平面視において一致する例を示したが、これに限らず、被覆領域Aの方が分割領域Dよりも大きくてもよい。この場合において、被覆領域Aは、平面視において分割周辺領域Pの全部に重なるのではなく、分割周辺領域Pの一部に重なるように設けられているとよい。
【0078】
[第5の変形例]
次に、図9を参照して、本実施形態の第5の変形例について説明する。図9は、本実施形態の第5の変形例のソーラパネル及び文字板の切断面を示す断面図である。図9においては、図4等と同様の切断線で切り取った切断面を示している。すなわち、第5の変形例のソーラパネルのうち分割周辺領域P及び分割領域Dを通る切断線で切り取った切断面を示している。なお、図1図4を参照して説明した構成と同じ機能を有する構成については、同じ符号を用いて、その詳細な説明は省略する。
【0079】
第5の変形例においては、図9に示すように、文字板3の下面であって、平面視において分割領域Dと重なる領域のみに光吸収部材38を設けた。すなわち、第5の変形例においては、分割領域Dと被覆領域Aとが平面視において一致する領域となっている。図9に示すように、文字板3のうち分割領域D(被覆領域A)と重なる領域に入射された入射光L2は、ソーラパネル2に到達する前に、光吸収部材38で吸収される。このため、分割領域D(被覆領域A)に入射された光がソーラパネル2で反射されて文字板3を介して外部に漏れ出すことを抑制できる。
【0080】
また、第5の変形例においては、絶縁層27は、光吸収部材38と同じ材料からなるとよい。すなわち、分割周辺領域Pへの入射光は、絶縁層27で吸収されるとよい。これにより、分割周辺領域Pに入射された光がソーラパネル2で反射されて文字板3を介して外部に漏れ出すことを抑制できる。
【0081】
第5の変形例においては、第4の変形例と同様に、光吸収部材38の量を最小限としたため、材料コストを抑制できる。また、第5の変形例においては、非発電領域を分割領域Dと分割周辺領域Pのみとすることができるため、図7で示した構成と比較して発電領域を大きくすることができる。その結果、発電効果を最大化することができる。なお、図9においては、分割領域Dと被覆領域Aとが平面視において一致する例を示したが、これに限らず、被覆領域Aの方が分割領域Dよりも大きくてもよい。この場合において、被覆領域Aは、平面視において分割周辺領域Pの全部に重なるのではなく、分割周辺領域Pの一部に重なるように設けられているとよい。
【符号の説明】
【0082】
1 ソーラパネル付き時計、10 胴、11 バンド固定部、12 ボタン、13 竜頭、15 時針、16 分針、17 秒針、18 時字、19 裏蓋、2 ソーラパネル、21 基板、22 下部電極層、23 半導体層、24 上部電極層、25 第1の封止層、26 第2の封止層、27 絶縁層、29 光吸収部材、3 文字板、31 位相差板、32 偏光板、38 光吸収部材、30 風防、40 ムーブメント、C ソーラセル、D 分割領域、P 分割周辺領域、L1,L2 入射光。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9