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  • 特許-廃水の処理のためのプロセス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】廃水の処理のためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/72 20230101AFI20240528BHJP
【FI】
C02F1/72 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020528208
(86)(22)【出願日】2018-11-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 EP2018081851
(87)【国際公開番号】W WO2019101710
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2021-11-12
(31)【優先権主張番号】201741042021
(32)【優先日】2017-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】590002105
【氏名又は名称】シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バサク,カウシク
(72)【発明者】
【氏名】ファン・マウリク,アリアン
(72)【発明者】
【氏名】ベルマ,ニシス
(72)【発明者】
【氏名】ヤダブ,アシシュ
【審査官】柴田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-117272(JP,A)
【文献】特開2000-117273(JP,A)
【文献】特開2005-313155(JP,A)
【文献】特開2000-117109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/70- 1/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレンオキシドを生成するための工業プロセスからの炭化水素および塩を含む廃水を処理するプロセスであって、該プロセスによる処理前の前記廃水が、80,000~125,000mg/Lの範囲の化学的酸素要求量を有し、前記廃水を、
前記廃水を含む流れを事前処理して浄化することなく反応器に供給することと、
前記廃水を含む前記流れを、酸素と金属ナノ粒子がドープされた多孔質カーボンビーズを含む触媒との存在下で酸化処理に供することにより、処理された流れを得ることと、
前記処理された流れの一部を、前記処理された流れがガス流と液体流とに分離される分離器に送ることと、
前記液体流の一部を前記反応器に再循環することと、を含む触媒湿式酸化処理に供することを含む、プロセス。
【請求項2】
前記酸化処理工程が、120~300℃で行われる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
連続的な方式で行われる、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
酸素および任意に不活性ガスを含むガス流が前記反応器に供給される、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記酸素および任意に不活性ガスを含むガス流中の酸素の量が、1~100体積%の範囲である、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
前記酸素および任意に不活性ガスを含むガス流が、空気からなるガス流、または空気と追加量の1つ以上の不活性ガスとの組み合わせからなるガス流である、請求項4または5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記酸素および任意に不活性ガスを含むガス流が、酸素濃度が空気中のものよりも高いガス流である、請求項4または5に記載のプロセス。
【請求項8】
前記触媒が、10~300g/(l/時)の範囲の、前記廃水を含む流れの供給速度(1時間当たりのリットル数)当たりの量(グラム)で使用される、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記分離器によって分離された前記液体流の1~99%が前記反応器に再循環される、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業プロセス由来の、炭化水素および塩を含み得る廃水、特にプロピレンオキシドを生成するための工業プロセス由来の廃水を処理するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
工業プロセス由来の、少なくとも炭化水素および(有機および/または無機)塩を含有する廃水の処理または浄化は、通常、比較的費用のかかる手順である。今日の環境法は、特に浄化された廃水を環境に放出する場合の、工業プロセスからの廃水流の浄化に厳しい要求を課している。したがって、工業廃水の浄化方法の選択は、実用的、環境的、経済的考慮事項によって制約される。
【0003】
プロピレンオキシド(PO)の生成プロセスは、浄化に関して特定の課題をもたらす廃水流を発生させる。プロピレンオキシドは、プロピレンを空気または酸素で直接酸化することにより生成することができる。このような直接酸化はPOの収率を低くする傾向があるため、POは、最も一般的には、有機または無機過酸化物からなることの多い化学メディエーターの助けを借りて生成される。
【0004】
比較的大量の廃水が生成される、プロピレンオキシドの生成のための1つの工業プロセスは、スチレンモノマー/プロピレンオキシド(SM/PO)の生成プロセスである。一般に、SM/POプロセスは、(i)エチルベンゼンを酸素または空気と反応させてエチルベンゼンヒドロペルオキシドを形成すること、(ii)このようにして得られたエチルベンゼンヒドロペルオキシドを、エポキシ化触媒の存在下でプロペンと反応させてプロピレンオキシドおよび1-フェニルエタノールを生成すること、および(iii)適切な脱水触媒を用いた脱水により1-フェニルエタノールをスチレンに転化すること、を含む。最後の工程では、水が生成される。この反応水に加えて、脂肪族および芳香族炭化水素、アルデヒド、ケトン、アルコール、フェノール、有機酸などの有機副生成物が生成される。副生成物は、蒸留または吸収などの分離技術によって、または有機酸の場合は、(重)炭酸ナトリウム水溶液および/または水酸化ナトリウム溶液などの塩基性水溶液を使用した中和によって、主生成物から分離される。さらに、上記のプロセスの工程(i)においては空気と共に、そして工程(iii)においては蒸気として追加の水が、さらに工程(iii)において形成された反応水が導入される。これらの流れはまた、工場廃水流の一部になる。
【0005】
SM/PO生成プラントからの廃水には、典型的に、合計1.0~3.5重量%の非塩有機化合物および3.0~6.0重量%の有機塩が含まれる。有機酸の中和に使用される塩基性溶液に依存して、最大3.0重量%の炭酸ナトリウムおよび重炭酸ナトリウム、および/または微量の水酸化ナトリウムをさらに含み得る。
【0006】
SM/POプラントからの廃水の排出量は1時間当たり数万kgになる場合があり、これは追加の浄化処理なしでは排出することはできない。しかしながら、すでに上で示したように、適切な浄化処理の選択は、実用的、環境的および経済的考慮事項により制限されている。
【0007】
プロピレンオキシドの生成に使用できる別のフェニルヒドロペルオキシドは、典型的に、クメン((1-メチルエチル)ベンゼン))を、酸素または空気と反応させることによって得られるクメンヒドロペルオキシド(2-ヒドロペルオキシプロパン-2-イルベンゼン)である。クメンヒドロペルオキシドは、エポキシ化触媒の存在下でプロピレンと反応して、POおよびクミルアルコール(2-フェニルプロパン-2-オール)を生成する。ジメチルフェニルカルビノール(DMPC)とも呼ばれるクミルアルコールは、典型的に、不均一系触媒および水素の助けを借りて、水素化分解によってクメンに転化される。その後、クメンはプロセスで再利用できる。
【0008】
このようなプロセスから生じる廃水は、フェノール性ヒドロキシル基またはカルボニル基を有する酸素含有化合物を含み得る。典型的な汚染物質には、アセトン、エチルメチルケトン、およびジエチルケトンなどのケトン、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、およびプロピオンアルデヒドなどのアルデヒド、エーテル、フェノールおよびメタノールなどの芳香族および非芳香族アルコール、ジクロロプロパンなどの塩素化化合物、ならびに酢酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウムなどの有機ナトリウム塩が含まれ得る。
【0009】
プロピレンオキシドの生成に由来する廃水流の浄化には、そのような流れが他の化学プロセスに由来する廃水流よりも多くの化学的酸素要求量(COD)を有することが多いため、特定の課題が存在する。例えば、酸化プロピレンの生成に由来する廃水流の典型的な開始時COD値は、80,000~125,000mg/Lの範囲である。したがって、このような廃水流の浄化方法では、CODを絶対値およびパーセンテージの観点で大幅に低減できる必要がある。
【0010】
プロピレンオキシドの生成に由来する廃水流の浄化のための工業プロセスで採用される典型的な浄化方法は、高温高圧での空気または酸素による液相酸化(いわゆる湿式空気酸化(WAO)プロセス)を含む。
【0011】
湿式空気酸化は、プロセス流を処理するためのよく知られた技術であり、F.J.Zimmermannによって1930年代に初めて開発された。この技術は、無機汚染物質を酸化し、有機汚染物質を二酸化炭素、水、生分解性短鎖有機化合物に転化するために、高温高圧での酸素含有ガスによるプロセス流の水相酸化を利用する。
【0012】
湿式空気酸化は、プロピレンオキシドの生成に由来する廃水流の浄化のために、典型的に、300℃を超える温度および200バール(20MPa)を超える圧力を使用して行われる。しかしながら、上記の湿式空気酸化プロセスからの流出物は依然としてかなりのCODを有するため、プロピレンオキシドの生成に由来する廃水流の浄化のための工業プロセスは、しばしば追加の下流処理工程を必要とする。
【0013】
例えば、そのようなプロセスは2段階のプロセスを使用することができ、その際、第1の工程は高温高圧の空気または酸素による液相酸化(いわゆる湿式空気酸化(WAO)プロセス)を含み、第2の工程は生化学的処理を含む。
【0014】
いくつかの浄化プロセスでは、生化学的処理の前に活性炭で処理するなど、さらなる任意の工程が存在する場合がある。例えば、US4,066,538Aは、主として水に溶解する有機材料によって生ずる比較的高い化学的酸素要求量(COD)を有する廃水を処理するためのプロセスを記載している。該プロセスは、活性炭での処理と、それに続く生化学的処理操作を含む。
【0015】
Repsolは、プロピレンオキシド/スチレンモノマー工業廃水の処理プロセスを提示しており(CHISA 2002、プラハ、チェコ共和国、2002年8月25~29日)、該プロセスでは、湿式空気酸化からの流出物が、粉末活性炭と生物学的固形物の均質な混合物が廃水を相乗的に処理する、2段階の活性炭処理で処理される。湿式酸化処理が、酸化剤として圧縮酸素ガスを使用して、295℃、95バール(9.5MPa)で1.5時間行われたことが示されている。
【0016】
しかしながら、湿式空気酸化および生化学的処理を含む多段階プロセスはコストが高く、湿式空気酸化中に使用する必要のある極端な操作条件のために、装置の信頼性の問題、腐食、ファウリング、ダウンタイムなどの他の欠点があり、かつ、使用済み活性炭のように他の廃棄物流を生成する可能性がある。したがって、何年にもわたり、プロピレンオキシドの生成プロセスに由来する廃水流の浄化のために記載された様々な代替方法があった。
【0017】
GB2,262,052Aに開示されている浄化プロセスは、塩除去と組み合わせた凍結濃縮を含み、それによって廃水は少なくとも2倍濃縮された廃物、塩結晶および実質的に純粋な水生成物に分離される。しかしながら、凍結濃縮プロセスの経済性は満足のいくものではなく、現在、凍結濃縮プロセスに必要な設備投資は、SM/POプラントに必要な総設備投資の少なくとも10%を占めている。
【0018】
WO99/67003A1は、少なくとも炭化水素および塩を含有する廃水流を処理して、清浄な水生成物、濃縮ブライン生成物および炭化水素に富む生成物を生成するためのプロセスを開示しており、該プロセスは、
(a)廃水供給物を、上から0.05*n~0.15*nの範囲の段階で第1の蒸留塔に供給することであって、ここで、nは第1の蒸留塔の理論段の総数を表し、値20~40の範囲である、該供給すること、
(b)上から0.55*n~0.75*nの範囲の段階で蒸気流を抜き取り、この蒸気流を理論上の段数m(mは3~10の範囲値を有する)を有する第2の蒸留塔の底部に送ること、
(c)清浄な水生成物を第2の蒸留塔からの頂部フラクションとして抜き取り、第2の蒸留塔から底部流を抜き取り、これを、工程(b)の蒸気流の抜き出しの下方で上から0.60*n~0.85*nの範囲の段階で第1の蒸留塔にフィードバックすること、
(d)濃縮ブライン生成物を第1の蒸留塔の底部フラクションとして抜き出すこと、および
(e)炭化水素流を第1の蒸留塔の頂部フラクションとして抜き出すこと、を含むWO99/67003A1のプロセスは、GB2,262,052Aに開示されているような凍結濃縮プロセスよりも10~50%低い資本投資しか必要としない一方、良好な浄化も達成すると言われている。
【0019】
US5,993,673Aは、プロピレンオキシド/スチレンモノマーの生成から、有機酸、過酸化物材料およびエチルベンゼンを含む水性パージ流を浄化するためのプロセスを記載しており、これは、過酸化物質を分解するのに有効な条件で、パージ流を鉄促進アルミナからなる粒子状固体触媒と接触させ、過酸化物含有量が減少した処理された流れを回収することを含む。その後、US5993673Aの処理された流れからエチルベンゼンを取り除き、その後効果的に生物処理することができる。
【0020】
WO01/00534A1は、有機汚染物質を含む廃水処理のための改善されたプロセスを開示しており、このプロセスは、工程(a)として、GB2262052Aに記載されている凍結濃縮プロセス、それに続く(b)得られた水流を逆浸透処理に供することにより、透過液としての浄化水流および保持液としての比較的汚染された水流を生成することを含む。しかしながら、そのような方法は、固形物を扱う回転装置に関連して潜在的な困難をもたらす可能性があり、ファウリングに感応性である可能性がある。
【0021】
WO01/32561A1は、プロピレンオキシドを生成するための工業的プロセスを開示しており、このプロセスは、
(a)廃水を多重効用蒸発処理に供することにより、蒸気頂部フラクションおよび不揮発性汚染物質を含む液体底部フラクションを得ること、および
(b)蒸気頂部フラクションの少なくとも一部をストリッピング処理に供される液体流に濃縮することにより、揮発性廃棄物有機物質および浄化水を含む塔頂流を液体底部流として得ること、を含む。
【0022】
WO01/32561A1のプロセスによって得られた浄化水は、例えば、冷却水として工業プロセスで再利用できるほど十分に純粋であるが、その後の生物処理に供して、地表水への排出のために十分に純粋であり得る純粋な水流を得ることもできる。
【0023】
しかしながら、WO01/32561A1のプロセスは、非常に高い割合の水の蒸発を必要とし、それにより、高エネルギー消費および高容量蒸留塔の使用を必要とする。
【0024】
WO2006/104222A1は、フェノール性水酸基またはカルボニル基を有する廃水を処理する方法を記載しており、フェノール性水酸基またはカルボニル基を有する含酸素化合物を含む廃水にアルカリ剤を添加して、廃水のpHを10以上に調整する工程、およびフェノール性水酸基またはカルボニル基を有する酸素含有化合物が、アルカリ剤が添加された廃水の蒸留により濃縮される、排出液を分離する工程を含む。
【0025】
WO2009/138530Aは、プロピレンオキシドとスチレンの共生成プロセスで生成された水性廃棄物流を再評価する方法であって、該方法は、4.5未満のpHで無機酸による水性廃棄物流の酸性化、40℃を超える温度で結果として生じる2つの相の分離、前の工程で生成された有機相の、過剰の酸の水溶液での洗浄、および得られた2つの相の分離を含む。
【0026】
しかしながら、WO2009/138530Aに記載されている方法には、潜在的な腐食問題、酸の取り扱いと消費、水相に溶解した有機物の管理、潜在的な有機アルコールとのエステル形成を含む多くの困難が存在する。
【0027】
プロピレンオキシドを生成するプロセスから生じる廃水流の浄化に専念している研究の量にもかかわらず、より簡単でより費用効果の高い、機器の信頼性の問題に悩まされず、環境に排出される可能性のある清浄な水流を生成する廃水浄化処理方法の開発が依然として望まれている。特に、絶対的およびパーセンテージの両方の観点から、穏やかな条件下で、有利なCOD低減を伴って、プロピレンオキシドの生成プロセスから生じる廃水流を浄化することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【文献】米国特許第4,066,538号明細書
【文献】英国特許第2,262,052号明細書
【文献】国際公開第99/67003号
【文献】米国特許第5,993,673号明細書
【文献】国際公開第2001/00534号
【文献】国際公開第2001/32561号
【文献】国際公開第2006/104222号
【文献】国際公開第2009/138530号
【発明の概要】
【0029】
驚くべきことに、本発明では、上記の望ましい改善の1つ以上をもたらすことができる廃水処理プロセスが見出され、このプロセスは、反応器での酸化処理後、処理された流れを液体流とガス流とに分離した後、液体流の一部を反応器に再循環することと組み合わせた、廃水の触媒湿式酸化処理を含む。
【0030】
したがって、本発明は、プロピレンオキシドを生成するための工業プロセスからの廃水を処理するプロセスに関し、このプロセスは、廃水を、
廃水を含む流れを反応器に供給することと、
廃水を含む流れを、酸素および触媒の存在下で酸化処理に供することにより、処理された流れを得ることと、
処理された流れの少なくとも一部を、処理された流れがガス流と液体流とに分離される分離器に送ることと、
液体流の一部を反応器に再循環させることと、を含む触媒湿式酸化処理に供することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の廃水処理プロセスの一実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明で処理される廃水は、プロピレンオキシドを生成するための任意のプロセスから誘導され得る。しかしながら、本発明の好ましい実施形態では、廃水は、プロピレンオキシドとスチレンとを共生成するためのプロセスから生じる。これまで、このような廃水流は、CODが非常に高いため、処理が非常に困難であった。
【0033】
前述のように、湿式酸化プロセスは当技術分野で知られており、酸素を酸化剤として使用する、水性環境での可溶性成分または懸濁成分の酸化を含む。空気を酸素源として使用する場合、該プロセスは湿式空気酸化(WAO)プロセスと呼ばれる。
【0034】
湿式空気酸化システムは、典型的に、回転装置を使用して、供給流および空気(または酸素)を必要な動作圧力に上昇させる。反応器流出物からエネルギーを回収し、それを使用して、反応器に入る供給物/空気混合物を予熱するために熱交換器が日常的に使用されている。始動後、酸化反応は発熱性であるため、反応器内で十分なエネルギーを放出して、湿式酸化システムを追加の入熱なしで動作させることができる。
【0035】
前述のように、プロピレンオキシドの生成プロセスからの廃水を浄化するための非触媒湿式酸化プロセスは、高コストであるだけでなく、採用する必要がある極端な動作条件に起因する、機器の信頼性の問題、腐食、ファウリング、ダウンタイムなどの他の欠点に悩まされる。
【0036】
しかしながら、驚くべきことに、本発明の接触湿式酸化プロセスは、非常に高い開始時CODを有する廃水流であっても、それほど極端でない操作条件下で有利に実施できることが見出された。
【0037】
本発明のプロセスの酸化処理工程は、120~350℃の範囲の温度で、1~30MPaの範囲の圧力で行うことができる。しかしながら、有利には、本発明のプロセスの酸化処理工程は、120~300℃の範囲の温度および2~20MPaの範囲の圧力で都合よく実施することができる。好ましくは、酸化処理工程は、150~280℃の範囲、より好ましくは180~240℃の範囲の温度、および2~15MPaの範囲、好ましくは2~12MPaの範囲、最も好ましくは2~8MPaの範囲の圧力で実施することができる。本明細書中では、圧力は、「ゲージ圧」として表される。
【0038】
本発明のプロセスは連続的な方式で行うことができる。
【0039】
本発明のプロセスでは、プロピレンオキシドを生成するための工業プロセスからの廃水を含む流れが反応器に供給される。本発明の好ましい実施形態では、プロセスの後続の酸化処理工程は、本発明のプロセスを実施する前に廃水を事前処理して浄化する必要なく、廃水流が絶対およびパーセンテージの両方の観点で有利なCOD低減を達成するように操作される。
【0040】
本発明のプロセスの酸化処理工程において、廃水を含む流れは、酸素および触媒の存在下で酸化処理に供される。廃水を含む流れを反応器に供給することに加えて、酸素および任意に不活性ガスを含むガス流を反応器に供給してもよい。該ガス流は、別個に反応器に供給してもよく、または廃水流と混合した後に反応器に供給してもよい。該不活性ガスは、任意の不活性ガス、例えば窒素であってよい。
【0041】
酸素および任意に不活性ガスを含む上記のガス流中の酸素の量は、1~100体積%、より適切には10~100体積%、より適切には20~100体積%、より適切には25~100体積%、より適切には25~95体積%、より適切には40~85体積%、最も適切には50~75体積%の範囲であってよい。後者のガス流は、例えば窒素を含む1つまたは複数の不活性ガスを、酸素の量と組み合わせると合計して100体積%になる量で含むことができる。
【0042】
酸素および任意に不活性ガスを含む上記のガス流は、空気からなるガス流であってよい。
【0043】
さらに、酸素および任意に不活性ガスを含む上記のガス流は、空気と、例えば窒素を含む追加量の1つまたは複数の不活性ガスとの組み合わせからなるガス流であってよい。前記の「1つ以上の不活性ガスの追加量」は、空気中に存在する不活性ガスの量を含まない。後者の場合、酸素濃度は空気中よりも低い、つまり21体積%よりも低い。特に、該ガス流中の酸素の量は、1~21体積%未満、より適切には1~20体積%の範囲であり得る。後者のガス流は、例えば窒素を含む1つ以上の不活性ガスを、酸素の量と組み合わせると合計して100体積%になる量で含む。
【0044】
好ましくは、酸素および任意に不活性ガスを含む上記のガス流は、酸素濃度が空気中の酸素濃度よりも高い、すなわち21体積%よりも高いガス流である。該ガス流は、酸素の量が21超~100体積%、適切には25~100体積%、適切には25~95体積%、40~85体積%、最も適切には50~75体積%の範囲であるガス流であってよい。後者のガス流は、例えば窒素を含む1つまたは複数の不活性ガスを、酸素の量と組み合わせると合計して100体積%になる量で含み得る。
【0045】
反応器中の触媒の量は、処理される廃水の開始時COD含有量および浄化が適用された後に必要とされるCOD低減に応じて都合よく選択することができる。しかしながら、触媒は、典型的に、10~300g/(l/時)、より適切には25~250g/(l/時)、より適切には35~200g/(l/時)の範囲の廃水(リットル/時)、より適切には45~150g/(l/時)、最も適切には50~125g/(l/時)の範囲の廃水(1時間当たりのリットル数)を含む流れの供給速度当たりの量(グラム)で使用される。
【0046】
さらに、本発明のプロセスでは、酸化処理工程から得られる処理された流れの少なくとも一部は、処理された流れがガス流と液体流とに分離される分離器に送られる。処理された流れを分離器に送る前に、該流れは、例えば熱交換器によって冷却されてもよい。
【0047】
最後に、本発明のプロセスでは、上記の分離された液体流の一部が反応器に再循環される。反応器に再循環される液体流の一部の相対的割合は、広い範囲で変化し得る。好ましくは、分離器によって分離された液体流の1~99%の1/2が反応器に再循環される。より好ましくは、前記相対割合は、5~95%、より好ましくは15~95%、より好ましくは20~95%、最も好ましくは25~95%の範囲である。反応器に再循環される液体流の一部の該相対的割合は、好ましくは少なくとも1%、より好ましくは少なくとも2%、より好ましくは少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、より好ましくは少なくとも20%、最も好ましくは少なくとも25%である。さらに、反応器に再循環される液体流の一部の前記相対的割合は、好ましくは最大で99%、より好ましくは最大で98%、より好ましくは最大で97%、より好ましくは最大で96%、最も好ましくは最大で95%である。
【0048】
任意に、分離器によって分離された液体流の一部を再循環することに加えて、分離器によって分離されたガス流の一部も反応器に再循環することができる。しかしながら、該液体流の一部のみが反応器に再循環されることが好ましい。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態において、廃水流の開始CODおよび廃水流の意図されたその後の使用に依存して、任意の後処理工程が行われ得る。しかしながら、多くの用途において、本発明の方法により達成される高いCOD低減は、さらなる後処理工程を必要としない程度に十分である。
【0050】
本発明のプロセスで使用した後、個々のサイクル後の触媒の残留触媒活性に応じて、使用済み触媒を再生し、後続のサイクルに使用することができる。
【0051】
上述したように、本発明の廃水処理プロセスは、SM/POプロセスと都合よく統合することができる。
【0052】
本発明の廃水処理プロセスを図1に示す。図1に示すプロセスでは、プロピレンオキシドを生成するための工業プロセスからの廃水を含む流れが、供給ライン1を介して反応器3に供給される。反応器3は、触媒を含み、ダウンフロー構成を有する。あるいはまた、反応器3はアップフロー構成を有してよい。さらに、酸素および窒素を含むガス流は、ライン2経由で別々に反応器3に供給される。反応器3を加熱するために電気ヒーター(図示せず)が使用される。あるいはまた、廃水流およびガス流は、反応器3に入る前に組み合わされて、熱交換器(図示せず)によって加熱されてもよい。反応器3では、廃水が酸素および触媒の存在下で酸化処理される。その結果得られた処理された流れは、ライン4を介して反応器3を出て、熱交換器(図示せず)によって任意に冷却される。次に、任意に冷却され、処理された流れは、液体ガス分離器5に送られ、そこで、該流れは、ガス流と液体流とに分離される。ガス流は、ライン6を介して分離器5を出て、冷却され、炉または他の処理システム(図示せず)に送られてもよい。液体流は、ライン7経由で分離器5を出る。該液体流は2つの副流に分割される。これらの副流の一方は、生成物ライン8を介して除去される。生成物ライン8の流れは、満たす必要のある最終的なCOD仕様に応じて、さらに浄化処理に供される場合がある。もう一方の副流は、再循環ライン9を介して供給ライン1に送られ、廃水流と合流して、反応器3に再循環される。
【0053】
本発明のプロセスの酸化処理工程は、触媒の存在下で行われる。好ましくは、廃水を含む流れが供給される反応器は、触媒を含む。触媒は、酸素の存在下で廃水の湿式空気酸化に適した任意の触媒であってよい。
【0054】
本発明のプロセスの酸化処理工程で使用することができる適切な触媒は、金属ナノ粒子がドープされた多孔質カーボンビーズを含む触媒である。本発明のプロセスで使用するためのそのような触媒は、ポリマービーズ内に組み込まれた1つ以上の金属を含み得る。1つ以上の金属は、例えば、重合工程中にビーズに組み込むことができる。
【0055】
本明細書で使用する場合、「ビーズ」という用語は、粒子またはナノ粒子を指すことができる。粒子またはナノ粒子のサイズは、本明細書に記載されているとおり、または状況が示すとおりである。
【0056】
好ましくは、その中の金属は、アルミニウム、鉄、ニッケル、銅、銀、コバルト、モリブデン、金および白金のうちの1つ以上から選択される。より好ましくは、金属は、鉄、ニッケル、銅およびコバルトの1つ以上から選択される。最も好ましくは、金属は、ニッケル、銅およびコバルトの1つ以上から選択される。銅は触媒において特に好ましい金属である。
【0057】
いくつかの実施形態では、金属またはその塩の組み合わせをビーズに都合よく組み込むことができる。好ましい組み合わせの例には、鉄と銅、銅とニッケル、およびニッケルと鉄が含まれるが、これらに限定されない。
【0058】
金属をポリマービーズに組み込むのに使用できる金属塩の例には、硝酸アルミニウム、塩化第二鉄、硝酸第二鉄、硝酸ニッケル、塩化第二銅、硝酸第二銅、硝酸銀、硝酸コバルト、硝酸モリブデン、塩化金、塩化白金またはそれらの任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0059】
本発明のプロセスにおいて使用され得る上述の触媒は、一般に、当該分野で公知の懸濁重合方法に従って調製され得る。例えば、A.Sharma等のChem.Eng.Sci.65(2010)3591-3601、R.Saraswat等のChem.Eng.J.197(2012)250-260、US2013/0319946A1、P.Khare等のJ.Colloid.Interface Sci.418(2014)216-224、およびUS2015/005626A1は、様々な金属ナノ粒子がドープされた多孔質カーボンビーズの調製について説明している。
【0060】
本発明のプロセスの酸化処理工程で触媒として使用することができる金属ナノ粒子がドープされた多孔質カーボンビーズは、一般に、次の工程を含む方法によって調製することができる。(i)1つ以上の芳香族アルコールモノマーおよび/または非芳香族モノマー、溶媒、重合触媒、架橋剤、懸濁安定剤および1つ以上の金属塩の混合物を、1つ以上の金属またはその塩でドープされたポリマービーズを生成するのに十分な条件下で調製すること、および(ii)工程(i)で生成されたポリマービーズを炭化、活性化、次いで還元して、金属ナノ粒子がドープされた多孔質カーボンビーズを生成すること。
【0061】
工程(i)で都合よく使用することができる芳香族アルコールモノマーは、フェノール、ビニルベンジルアルコール、クレゾールおよびブチルフェノールの1つ以上から選択することができる。特に好ましい芳香族アルコールモノマーはフェノールである。
【0062】
工程(i)において、単独でまたは1つ以上の芳香族アルコールモノマー、または他の非芳香族モノマーと組み合わせて都合よく使用され得る好ましい非芳香族モノマーは、メチルメタクリレート(MMA)である。
【0063】
上述の触媒を調製する際に利用され得る溶媒は限定されず、任意の有機溶媒またはポリマービーズを合成するために使用されるモノマーに適切な溶媒であり得る。都合よく使用できる溶媒の例には、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、パラアルデヒド、およびグリオキサール、またはそれらの任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0064】
重合触媒は、塩基触媒、特にアミン触媒であってよい。好都合に使用できる重合触媒の例には、トリエチルアミン(TEA)、水酸化ナトリウム、水酸化バリウム、ジメチルアミンが含まれ、これらは単独でまたは他の触媒と組み合わせて使用できるが、それらに限定されない。
【0065】
工程(i)で都合よく使用できる架橋剤には、ヘキサメチレンテトラミン(HMTAまたはヘキサミンとしても知られている)、トリエチレンジアミンおよび硫酸、またはそれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0066】
工程(i)で都合よく使用され得る懸濁安定剤は、ポリビニルアルコール(PVA)、アカシアゴム粉末(GAP)およびポリビニルピロリドンのうちの1つ以上から選択され得る。しかしながら、他の懸濁安定剤を使用することもでき、本明細書で提供されるリストは限定するものと見なされるべきではない。
【0067】
工程(i)における成分の添加および混合の順序は限定されない。工程(i)で使用するための成分を同時に一緒に添加することで全反応混合物を得ることができる。あるいはまた、工程(i)で使用するための1つ以上の成分を別個の混合物として調製し、次いでそれらを一緒に加えて、全反応混合物を得ることができる。
【0068】
例えば、本発明のプロセスにおいて使用され得る上記の触媒を調製するための1つの好都合で非限定的な方法は、モノマー、溶媒、および重合触媒を加熱して、加熱した混合物を形成することを含む。いくつかの実施形態では、モノマー、溶媒、および重合触媒は、混合物が均質になるまで、室温(例えば、20~30℃)で混合してもよい。次いで、混合物を約100℃の温度に加熱することができる。混合物は、1、2、3、4、または5℃/分を含むがこれに限定されない任意の速度で加熱できる。混合物を加熱した後、加熱した混合物を溶媒と接触させて、第1の混合物を得ることができる。いくつかの実施形態では、溶媒は水である。いくつかの実施形態では、第1の混合物は、約、または少なくとも10、20、30、40、50、または60分間混合される。次いで、第1の混合物を架橋剤と接触させることができる。第1の混合物を架橋剤と接触させると、架橋された混合物が得られる。いくつかの実施形態では、第1の混合物を架橋剤と接触させた後、混合物は加熱される。いくつかの実施形態では、混合物は、温度が約70、80、90、100、または110℃に達するまで加熱される。温度は、例えば、目標温度に到達するまで、約1、2、3、4、または5℃/分の速度で上昇させることができる。次いで、架橋した混合物を懸濁安定剤と接触させて、第2の混合物を得ることができる。いくつかの実施形態では、懸濁安定剤および架橋混合物は、約、または少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、または60分間混合することができる。次いで、第2の混合物を1つ以上の金属またはその塩と接触させて、第3の混合物を得ることができる。いくつかの実施形態では、その後、第3の混合物を加熱することができる。第3の混合物を加熱した後、混合物を冷却して、ポリマービーズを含む組成物を生成する。複数の金属をビーズに組み込む場合、該金属を順次または同時に添加することができる。例えば、複数の金属がビーズに組み込まれるいくつかの実施形態では、金属は、約、または少なくとも、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10分間隔などの異なる時点で添加され得る。複数の金属がビーズに組み込まれるいくつかの実施形態では、金属は、約1~10、1~9、1~8、1~7、1~6、1~5、1~4、1~3、1~2分間隔で添加され得る。複数の金属がビーズに組み込まれるいくつかの実施形態では、金属は、約2~10、2~9、2~8、2~7、2~6、2~5、2~4、または2~3分間隔で添加され得る。複数の金属がビーズに組み込まれるいくつかの実施形態では、金属は、約3~10、3~9、3~8、3~7、3~6、3~5、3~4分間隔で添加され得る。複数の金属がビーズに組み込まれるいくつかの実施形態では、金属は、約4~10、4~9、4~8、4~7、4~6、または4~5分間隔で添加され得る。複数の金属がビーズに組み込まれるいくつかの実施形態では、金属は、約5~10、5~9、5~8、5~7、または5~6分間隔で添加され得る。
【0069】
複数の金属がビーズに組み込まれる実施形態では、金属は互いに異なる比率で添加され得る。いくつかの実施形態では、第1の金属(またはその塩)は、第2の金属(またはその塩)に対して3:1、1:1、または1:3の比率で添加される。他の比率を使用して、ポリマービーズに組み込まれる各金属の最終的な量に影響を与えることもできる。
【0070】
1つ以上の金属またはその塩を加えた後、反応混合物を加熱し続けることができる。いくつかの実施形態では、混合物は撹拌される。いくつかの実施形態では、混合の速度は一定に保たれる。理論に拘束されることを望まないが、ビーズの固化を回避するために、混合速度は一定に保たれる。1つ以上の金属またはその塩を含む混合物は、例えば、約、または少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10時間加熱することができる。いくつかの実施形態では、混合物は、約1~10、1~9、1~8、1~7、1~6、1~5、1~4、1~3、または1~2時間加熱される。いくつかの実施形態では、加熱後、混合物は放冷される。冷却浴中で混合物をインキュベートすることにより冷却を加速することができ、あるいは反応または反応容器を周囲温度に曝すことにより反応を冷却する。
【0071】
いくつかの実施形態では、1つ以上の金属またはその塩を含むポリマービーズが単離される。反応が室温に達すると、ビーズを分離できる。任意の分離方法を使用できる。いくつかの実施形態では、ポリマービーズを単離することは、ポリマービーズのろ過を含む。いくつかの実施形態では、方法は、ポリマービーズを分画して、実質的に均一な直径のポリマービーズを含む組成物を生成することも含む。サイズに基づいてビーズを分別することにより、特定のサイズまたはサイズの範囲に従ってビーズをグループ化できる。ふるいを使用するがこれに限定されない任意の分画方法を使用することができる。単離されたビーズは、これらに限定されないが、水、アルコール、アセトンなどの様々な溶液で洗浄することもできる。いくつかの実施形態では、ビーズは、水、メタノール、またはアセトン、またはそれらの任意の組み合わせで洗浄される。いくつかの実施形態では、洗浄アルコールは、エタノール、メタノール、イソプロパノール、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0072】
工程(ii)において、工程(i)で形成されたポリマービーズは、例えば、セラミックボート中で十分な温度で十分な時間炭化される。いくつかの実施形態では、ビーズは、900~1100℃の範囲の温度、例えば、約900、1000、1050、または1100℃の温度で炭化される。いくつかの実施形態では、ビーズは、約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、または120分間炭化される。いくつかの実施形態では、ビーズは、N雰囲気中で炭化される。他の不活性ガスも使用できる。いくつかの実施形態では、炭化の前に、ビーズは、約1、2、3、4、または5℃/分の加熱速度で、室温から炭化温度に予熱される。
【0073】
炭化後、ビーズは活性化され得る。ビーズの活性化は、ビーズの炭化に使用するのと同じ炉で行うことできるが、必要というわけではない。いくつかの実施形態では、炭化ビーズは、蒸気によって活性化される。いくつかの実施形態では、ビーズは、800~1100℃の範囲の温度で活性化され得る。いくつかの実施形態では、ビーズは、約800、850、900、950、1000、1050、または1100℃の温度で都合よく活性化され得る。いくつかの実施形態では、炭化ビーズは、約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、または120分間活性化される。いくつかの実施形態では、ビーズは約850℃の温度で炭化され、ビーズは約1000℃の温度で活性化される。
【0074】
次いで、活性化されたビーズを水素による還元に供することができる。ビーズの還元は、ビーズの炭化および活性化に使用されるのと同様の炉で行うことができる。活性化されたビーズは350℃で3時間還元され、それによりビーズ中の金属の酸化物が金属状態に転化される。
【0075】
本明細書に記載されている方法によって生成される金属ナノ粒子がドープされた多孔質カーボンビーズは、様々なサイズを有することができる。しかしながら、ビーズは比較的均一なサイズ分布を有することが好ましい。必要に応じて、サイズを小さくするために、例えば、ミリングまたはろ過によってビーズを操作することができる。
【0076】
好ましくは、本発明のプロセスの酸化処理工程において触媒として使用され得るビーズは、0.1~0.8mmの範囲、より好ましくは0.2~0.8mmの範囲の直径を有する。ビーズの直径は、ふるいを使用して好都合に選択することができる。
【0077】
ビーズは0.3~0.5mm、最も好ましくは約0.5mmの範囲の平均直径を有することが特に好ましい。
【0078】
上述のように、ポリマービーズは、アルミニウム、鉄、ニッケル、銅、銀、コバルト、モリブデン、金および白金またはそれらの塩の1つ以上でドープされる。ポリマービーズが前述の金属またはその塩の2つでドープされている実施形態では、2つの金属またはその塩の比は、好ましくは約1:1、1:2、1:3、または1:4である。
【0079】
前述の金属ナノ粒子がドープされた多孔質カーボンビーズは、プロピレンオキシドを生成するための工業プロセスに由来する廃水を処理するためのプロセスにおける触媒として特定の有効性を有する。したがって、本発明のプロセスにおいて、プロピレンオキシドを生成するための工業プロセスから生じる廃水は、好ましくは、金属ナノ粒子がドープされた多孔質カーボンビーズを含む触媒の存在下で触媒湿式酸化処理に供される。
【0080】
しかしながら、金属ナノ粒子がドープされた多孔質カーボンビーズを含む上述の触媒は、カーボンナノファイバーをさらに含み得る。
【0081】
したがって、上記の触媒は、前述の工程(i)および(ii)を含む方法によって調製することができ、この方法は、金属ナノ粒子がドープされた多孔質カーボンビーズを、炭素源の存在下で化学蒸着(CVD)に供することで、カーボンナノファイバーを含む金属ナノ粒子がドープされた多孔質カーボンビーズを生成する、第3の工程、工程(iii)をさらに含むことができる。
【0082】
上記の炭素源は、アセチレン、ベンゼン、キシレンおよびトルエンから選択することができる。
【0083】
金属ナノ粒子がドープされた多孔質カーボンビーズにカーボンナノファイバーを組み込む方法は、当技術分野で知られている。例えば、P.Khare等のChem.Eng.J.229(2013)72-81およびN.Talreja等のJ.Water Process.Eng.3(2014)34-45は両方とも、多孔質カーボンビーズ上にカーボンナノファイバーを成長させる方法を説明している。
【0084】
典型的なCVDセットアップは、温度コントローラーおよびプログラマーを備えた電気炉内に水平に配置されたニッケル合金管状反応器(ID=30mm、L=0.8m)で構成される。事前に炭化され、活性化され、H2還元された約20gのビーズを、反応器に挿入された有孔ステンレス鋼(SS)ボート上に配置することができる。CVDおよび活性炭ビーズ上のカーボンナノファイバー(CNF)の成長のために、アセチレンガスを流速50sccm(標準温度および圧力でcm/分)で管状反応器に通過させた。カーボンビーズ内に組み込まれた金属ナノ粒子は、CVDの触媒として作用する。CVDは、カーボンナノファイバー(CNF)の形態のマルチスケールカーボン構造でビーズを装飾するために、0.1~0.15MPaの圧力でアセチレンの存在下、350℃で30分間行うことができる。
【0085】
したがって、上記の触媒は、前述の工程(i)、(ii)および(iii)を含む方法によって調製することができ、この方法は、工程(iii)で生成されたカーボンナノファイバーを含む金属ナノ粒子がドープされた多孔質カーボンビーズに酸化剤をドープする第4の工程、工程(iv)をさらに含み得る。
【0086】
好ましくは、該酸化剤は、強塩基と弱酸との塩である。強塩基および弱酸のカリウム塩およびアンモニウム塩は、酸化剤として特に好ましい。より好ましくは、該酸化剤は、KMnO、Kおよび(NHの1つ以上から選択される。
【0087】
工程(iv)を実行するための一般的な手順には、工程(iii)で生成されたカーボンナノファイバーを含む金属ナノ粒子がドープされた多孔質カーボンビーズを、酸化剤を含む水溶液と、40~60℃の範囲の温度で4~12時間の期間混合することが含まれる。
【0088】
工程(iv)で使用するための酸化剤は、水中で都合よく使用することができる。
【0089】
混合後、触媒は次いで使用前にろ過および乾燥されてもよい。
【実施例
【0090】
1)酸化処理触媒の調製
銅ナノ粒子がドープされたポリマービーズを、懸濁重合によって調製した。重合反応は、加熱マントル上に取り付けられ、還流冷却器、温度計および連続撹拌機を備えた2リットルの三口ガラス容器中で行った。
【0091】
重合反応に使用され得る装置の詳細な説明は、Chem.Eng.Sci.3591(2010)に見ることができる。さらに、US2015/0056260A1の図3には、懸濁重合によって金属ナノ粒子がドープされたカーボンビーズを調製するために都合よく使用され得る例示的な装置が示されている。
【0092】
モノマーとしてのフェノール(50g)、溶媒としてのホルムアルデヒド(63ml)および重合触媒としてのトリエチルアミン(TEA)(1.5ml)の溶液を調製した。その後、フェノール、ホルムアルデヒド、TEAの混合物を室温(約30℃℃)で8時間撹拌(370~410rpm)して、均一な溶液を調製した。
【0093】
8時間後、200mlの水を反応混合物に混合した。さらに30分後、3.5gのヘキサメチレンテトラミン(HMTA)を架橋剤として添加し、温度が100℃に達するまで反応混合物を3℃/分で同時に加熱した。HMTA添加後約45分に、3.5gのPVA(95%加水分解ポリビニルアルコール、平均分子量95000)を懸濁安定剤として添加した。
【0094】
25~30分後、4gの硝酸銅(Cu(NO・3HO)を加えた。30分後、ヒーターのスイッチをオフにして反応を停止させた。反応混合物を次いで室温に冷却した。
【0095】
冷却後、反応混合物をろ過して、残留液体から固体ビーズを分離した。次いで、ビーズを、水、メタノールおよびアセトンで2~3回洗浄し、次いで室温で12時間乾燥させた。次いで、形成された銅ナノ粒子がドープされたポリマービーズをふるいにかけ、約50gの収量を得た。
【0096】
実施例1の方法により調製された該銅ナノ粒子がドープされたポリマービーズを、窒素の存在下、900℃で2時間炭化し、次いで、0.1~0.15MPaの圧力の蒸気の存在下、900℃で1時間活性化し、酸化銅がドープされた多孔質活性炭ビーズを形成した。その後、酸化銅がドープされた多孔質活性炭ビーズを、150sccm(標準の温度と圧力でcm/分)の流速と0.1~0.15MPaの圧力の水素の存在下で、350℃で2時間還元して、銅ナノ粒子がドープされた多孔質カーボンビーズを形成した。
【0097】
該銅ナノ粒子がドープされた多孔質カーボンビーズを、次いで、0.1~0.15MPaの圧力でカーボンナノファイバー(CNF)の形態のマルチスケールカーボン構造でビーズを装飾するために、アセチレンの存在下で、100sccm(標準温度および圧力でcm/分)の流速で、350℃で30分間、化学蒸着(CVD)に供した。
【0098】
該銅ナノ粒子がドープされたカーボンナノファイバー多孔質カーボンビーズを、ビーズをKMnOの水溶液と55℃で混合することで、それらにKMnOを含浸させることによって、酸化剤でさらに処理した。0.8gの得られたままの塩を15mlの水中で、室温で混合することにより、KMnO塩溶液を別に調製した。実施例3からの約0.3gのビーズを、ビーカー中で15mlのKMnO水溶液と混合した。ビーズのドーピングは55℃で8時間行った。カリウム塩がドープされたビーズを55℃で30分間真空乾燥した。
【0099】
2)酸化処理実験
上記のセクション1)で調製した触媒ビーズを、実験1~6で使用して、工業用スチレンモノマー/プロピレンオキシド(SM/PO)の生成プロセスから得られた廃水流を処理した。該実験は、該触媒ビーズの存在下で廃水を湿式酸化処理に供することを含んでいた。
【0100】
実験において、廃水流を、ダウンフロー構成を有する、上述の触媒ビーズを含む反応器に供給した。触媒は、該廃水流の供給速度(1時間当たりのリットル数)当たり、実験1~3および6については100g/(l/時)の量(グラム)で、そして実験4~5については75g/(l/時)の量(グラム)で使用した。
【0101】
反応器は、グラスウール上に支持された触媒ビーズを含む垂直管状反応器であった。反応器は、電気ヒーターおよび熱電対を備えたニッケル合金(「インコネル」という商品名で入手可能)反応器(直径73mm×高さ210mm×壁厚7mm)であった。反応温度を維持するために、PID温度コントローラー(PID=Proportional Integral Derivative)を使用した。反応器入口圧力を監視するために圧力計を使用した。
【0102】
液体流(廃水流供給)を開始する前に、酸素および窒素を含むガス流を反応器に別に供給して反応器を加圧した。該ガス流は、純粋な酸素流を空気流と組み合わせることによって生成した。組み合わされたガス流は、空気および(純粋な)酸素の混合物を含み、全圧は、15バールの空気および12バールの(純粋な)酸素からなる27バールであった。
【0103】
液体流を開始した直後、純粋な酸素を供給することによって反応器内の圧力を維持した。該純酸素流は、1sccm(標準温度および圧力でcm/分)の流速を有していた。
【0104】
反応器の圧力は27バールであり、反応器内の温度は以下の表1に示されている。反応器では、廃水を酸素および触媒ビーズの存在下で酸化処理した。反応器を出る結果として得られた処理された流れを、熱交換器(冷却器)によって冷却した。次いで、冷却した処理された流れを、出口ラインのTピースからなる液体-ガス分離器に送られ、ここで、該流れを、ガス流と液体流とに分離した。分離器を出る液体流を2つの副流に分割した。次いで、再循環ラインからのこれらの副流の1方(以下、「再循環流」)を廃水流と合流させ、反応器に再循環した。他方の副流(以下、「非再循環流」)は、生成物ラインから廃棄した。冷却器を含む反応器システム内の圧力は、気液分離器からのガス流の出口にある圧力調整器によって制御した。
【0105】
実験は連続的に行った。実験の開始後、分離器を出る液体流のCOD(化学的酸素要求量)は減少し始めた。各実験は5時間続いた。実験の完了後、新しい実験を開始する前に、反応器と関連する配管を水で洗い流して、堆積物および残留物を除去した。
【0106】
以下の表1は、COD低減の観点からの実験の詳細と廃水処理の結果を示している。2セットの実験を行った。実験1~3では、廃水の初期CODが比較的低かったのに対し、実験4~6では、廃水の初期CODが比較的高かった。
【表1】
【0107】
以下の表2は、プロピレンオキシド(PO)が生成される工業用SM/POの生成プロセスから生成される廃水の典型的な特性を示している。
【表2】
【0108】
実験4~6(表1を参照)では、表2に記載されている開始時CODの初期CODは80,000~125,000の範囲にある。実験1~3で処理された廃水(表1を参照)も、工業用のSM/POの生成プロセスから得られた廃水であったが、この廃水は最初に水で希釈されていたため、初期CODは低かった。
【0109】
分かるように、該実験1~6の全てについて、処理および分離された液体流の一部を反応器に再循環することによって、廃水のCODは有利に大幅に低減される。さらに、実験1~3は、再循環割合を増やすことによって、廃水のCODがさらに低減されることを示している。さらに、特に、実験4~6では、本発明の廃水処理プロセスを適用することにより、SM/POプロセスからの廃水に典型的な比較的高いCODを、(再循環割合はわずか33%で)有利に97~99%に低減することができた。前述は、本発明のプロセスの驚くべき効率を実証している。
図1