(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】既知の場所を有する複数のセンサー対応RFIDタグを使用する反応器条件の無線による監視およびプロファイリング
(51)【国際特許分類】
G06K 19/07 20060101AFI20240528BHJP
G06K 7/10 20060101ALI20240528BHJP
G06K 19/077 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
G06K19/07 160
G06K7/10 148
G06K7/10 236
G06K19/07 230
G06K19/077 280
(21)【出願番号】P 2020538613
(86)(22)【出願日】2019-01-09
(86)【国際出願番号】 US2019012882
(87)【国際公開番号】W WO2019139974
(87)【国際公開日】2019-07-18
【審査請求日】2022-01-04
(32)【優先日】2018-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】590002105
【氏名又は名称】シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フォクト,カスパー・ジョーセフ
(72)【発明者】
【氏名】フックス,デイビッド・ウィン
【審査官】石坂 知樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-348496(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0242629(US,A1)
【文献】国際公開第2014/062066(WO,A1)
【文献】特表2010-506901(JP,A)
【文献】特表2010-506704(JP,A)
【文献】特表2002-535118(JP,A)
【文献】特開昭59-022189(JP,A)
【文献】特開2006-085411(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/07
G06K 7/10
G06K 19/077
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応器容器内の条件を無線で監視し、プロファイリングするためのシステムであって、システムが、
反応域を画定する反応器容器であって、反応域内に、
金属成分を有する触媒粒子を含む触媒床がある、反応器容器と、
触媒床内の既知の場所に配設され、触媒粒子によって取り囲まれる複数のセンサー対応RFIDタグであって、
複数のセンサー対応RFIDタグの各センサー対応RFIDタグは、固有の非可変識別コードでエンコードされ、
複数のセンサー対応RFIDタグの各センサー対応RFIDタグは、反応域内の条件を検知し、インテロゲーション信号を受信し、およびインテロゲーション信号に応答して、固有の非可変識別コードおよびセンサー対応RFIDタグに関連付けられている条件を表す情報を含むRFIDトランスポンダ信号を送信するように構成されている、センサー対応RFIDタグと、
複数のセンサー対応RFIDタグの各センサー対応RFIDタグに無線により連結され、インテロゲーション信号を送信し、およびインテロゲーション信号に応答して、複数のセンサー対応RFIDタグの各センサー対応RFIDタグによって送信されるRFIDトランスポンダ信号を受信するように構成されたRFIDリーダーアンテナと、を含み、
それにより、反応域全体の特定の場所での条件を決定し、プロファイリングすることができる、システム。
【請求項2】
前記触媒粒子が無機酸化物成
分を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
センサー対応RFIDタグが、環境またはプロセス条件を検知し、環境またはプロセス条件を表す信号入力をRFIDタグに提供するためのセンサー手段に動作可能に接続されているRFIDタグを含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記RFIDリーダーアンテナが、
前記反応器容器の
前記反応域内に位置付けられている、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記反応器容器が、供給物流を
前記反応域に導入するための流体連通を提供する入口手段と、
前記反応域から流出物流を除去するための流体連通を提供する出口手段と、を含む、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
条件が、圧力、温度、化学組成、蒸気および液体の組成、密度、流量、pH、振動、放射、磁束、光強度および音強度からなる条件の群から選択される、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記RFIDリーダーアンテナが、インテロゲーション信号を
前記RFIDリーダーアンテナに提供し、
前記RFIDリーダーアンテナによって受信される複数のセンサー対応RFIDタグの各センサー対応RFIDタグによって送信された各RFIDトランスポンダ信号を受信するためのリーダーに動作可能に接続されている、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記RFIDリーダーアンテナと共に構成され、複数のセンサー対応RFIDタグのセンサー対応RFIDタグの各々によって送信されたRFIDトランスポンダ信号を処理することを提供して、
前記反応器容器の
前記反応域内の条件の三次元プロファイリングを表す出力を提供する計算手段をさらに含む、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
RFIDリーダーアンテナが、反応器容器の反応域の外に位置付けられている、請求項3に記載のシステム。
【請求項10】
反応器容器が、供給物流を反応域に導入するための流体連通を提供する入口手段と、反応域から流出物流を除去するための流体連通を提供する出口手段と、を含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
条件が、圧力、温度、化学組成、蒸気および液体の組成、密度、流量、pH、振動、放射、磁束、光強度および音強度からなる条件の群から選択される、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
RFIDリーダーアンテナが、インテロゲーション信号をRFIDリーダーアンテナに提供し、RFIDリーダーアンテナによって受信される複数のセンサー対応RFIDタグの各センサー対応RFIDタグによって送信された各RFIDトランスポンダ信号を受信するためのリーダーに動作可能に接続されている、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
RFIDリーダーアンテナと共に構成され、複数のセンサー対応RFIDタグのセンサー対応RFIDタグの各々によって送信されるRFIDトランスポンダ信号を処理することを提供して、容器の反応域内のプロセス条件の三次元プロファイリングを表す出力を提供する計算手段をさらに含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
反応器容器内の条件を無線で監視し、プロファイリングする方法であって、方法が、
反応域を画定する反応器容器であって、反応域内に、
金属成分を有する触媒粒子を含む触媒床がある、反応器容器と、触媒床内の既知の場所に配設され、触媒粒子によって取り囲まれる複数のセンサー対応RFIDタグとを提供することであって、
複数のセンサー対応RFIDタグのセンサー対応RFIDタグの各々が、固有の非可変識別コードでエンコードされ、センサー対応RFIDタグに関連付けられている触媒床内の条件を測定するように、およびインテロゲーション信号に応答して、固有の非可変識別コードおよびそれに関連付けられている条件を表す情報を含む応答信号を送信するようにさらに構成されている、提供することと、
RFIDリーダーアンテナによって、センサー対応RFIDタグの各々によって受信されるインテロゲーション信号を送信することと、
インテロゲーション信号に応答して、複数のセンサー対応RFIDタグのセンサー対応RFIDタグの各々が、その固有の非可変識別コードおよびセンサー対応RFIDタグに関連付けられている条件を表す情報を含むその関連付けられているRFIDトランスポンダ信号を送信することと、
RFIDリーダーアンテナによって、複数のセンサー対応RFIDタグの関連付けられているRFIDトランスポンダ信号の各々を受信することと、
関連付けられているRFIDトランスポンダ信号を処理することと、を含み、
それにより、反応域全体の条件を決定し、プロファイリングすることができる、方法。
【請求項15】
前記触媒粒子が無機酸化物成
分を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
センサー対応タグが、環境またはプロセス条件を検知し、環境またはプロセス条件を表す信号入力をRFIDタグに提供するためのセンサー手段に動作可能に接続されているRFIDタグを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記RFIDリーダーアンテナが、
前記反応器容器の
前記反応域内に位置付けられている、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記反応器容器が、供給物流を
前記反応域に導入するための流体連通を提供する入口手段と、
前記反応域から流出物流を除去するための流体連通を提供する出口手段と、を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
条件が、圧力、温度、化学組成、蒸気および液体の組成、密度、流量、pH、振動、放射、磁束、光強度および音強度からなる条件の群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記RFIDリーダーアンテナが、インテロゲーション信号を
前記RFIDリーダーアンテナに提供し、
前記RFIDリーダーアンテナによって受信される複数のセンサー対応RFIDタグの各センサー対応RFIDタグによって送信された各RFIDトランスポンダ信号を受信するためのリーダーに動作可能に接続されている、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記RFIDリーダーアンテナと共に構成され、複数のセンサー対応RFIDタグのセンサー対応RFIDタグの各々によって送信されたRFIDトランスポンダ信号を処理することを提供して、
前記反応器容器の
前記反応域内の条件の三次元プロファイリングを表す出力を提供する計算手段をさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
RFIDリーダーアンテナが、反応器容器の反応域の外に位置付けられている、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
反応器容器が、供給物流を反応域に導入するための流体連通を提供する入口手段と、反応域から流出物流を除去するための流体連通を提供する出口手段と、を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
条件が、圧力、温度、化学組成、蒸気および液体の組成、密度、流量、pH、振動、放射、磁束、光強度および音強度からなる条件の群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
RFIDリーダーアンテナが、インテロゲーション信号をRFIDリーダーアンテナに提供し、RFIDリーダーアンテナによって受信される複数のセンサー対応RFIDタグの各センサー対応RFIDタグによって送信された各RFIDトランスポンダ信号を受信するためのリーダーに動作可能に接続されている、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
RFIDリーダーアンテナと共に構成され、複数のセンサー対応RFIDタグのセンサー対応RFIDタグの各々によって送信されたRFIDトランスポンダ信号を処理することを提供して、反応器容器の反応域内の条件の三次元プロファイリングを表す出力を提供する計算手段をさらに含む、請求項25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年1月11日に出願された係属中の米国仮特許出願第62/616,148号の利益を主張し、その開示全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、反応器などのプロセス容器内の条件の無線監視および三次元プロファイリングのためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
触媒の入った反応器容器は、製油所および化学プラントでは一般的である。これらの反応器を操作する場合、この容器内のプロセス条件を測定するかまたは監視することが望ましい。これは、この情報が反応器内の反応条件を制御することに役立つためである。反応器容器内の条件を測定するための現在の方法では、外部ディスプレイにセンサー測定情報を送信するセンサーへの電気的接続または空気圧接続などの物理的接続を有する必要がある。こうした測定手段の一例は、温度を測定するために熱電対を使用することである。熱電対を使用して反応器容器内のある場所での温度を測定するには、サーモウェルが必要である。サーモウェルは、容器の壁を通して取り付けられ、温度が容器内で測定されるある場所まで延在している。
【0004】
反応器容器内での場所においてプロセス条件を測定し、かつ観察し、また、遠隔場所で収集および処理するためにその情報を無線で送信する能力を有することが望ましい。容器によって画定される反応域の容積全体にわたって、条件の三次元プロファイルを提供することができることがさらに望ましい。本発明者らは、圧力、温度、流体組成、蒸気および液体の組成、pH、および流量などの反応器容積内の条件のいくつかを測定し、測定された情報を、遠隔で収集および処理するために無線で送信するために、センサー対応の無線周波数識別(RFID)タグを使用することを提唱している。
【0005】
環境条件を測定するために使用されるセンサー対応RFIDタグの例は、US7,397,370に記載されている。本特許では、複数の無線周波数識別(「RFID」)アセンブリを使用して環境を監視することを提供するシステムを提示する。本システムは、関連付けられた固有の識別(「ID」)コードを有し、環境に関する情報を検知するためのセンサーと共に構成されているRFIDタグと、検知した情報を処理システムに無線送信するアンテナと、を含み得る。処理システムによって受信される送信情報としては、検知された環境情報および関連付けられた識別コードが挙げられ、こうした情報は、環境および監視される環境の変化の監視をもたらすために処理される。
【0006】
変化する環境条件を測定し、かつ追跡するためのセンサー対応RFIDタグの使用について説明している別の参照文献は、US8,106,778である。この特許では、無線周波数識別(RFID)を使用して可変条件を追跡することが可能な方法およびシステムを開示している。RFIDセンサータグは、場所、温度、圧力、および湿度などの様々な条件を測定するために使用される。RFIDリーダーデバイスによって送信されたインテロゲーション信号に応答して、RFIDセンサータグは、測定条件を表す可変データに関連付けられたタグ識別データを含む信号を送信する。応答信号には可変データおよび非可変データの両方が含まれているため、測定条件をタグ識別データに関連付けることができる。RFIDリーダーデバイスはまた、複数のRFIDタグのうちの1つから各々複数の応答信号を受信し得る。この場合、複数の応答信号のうちの少なくとも1つとしては、複数のRFIDタグのうちのそれぞれの1つにおける測定条件を表す可変データ、および複数のRFIDタグのうちのそれぞれの1つのタグ識別データを挙げることができる。
【0007】
特許公開第US2007/0215709号では、センサーと組み合わせたRFID回路を含むRFIDベースのセンサーを開示している。センサー要素は、センサーがさらされている周囲環境の物理的条件への曝露に基づいて導電状態を変化させるように構成されている。これらの物理的条件としては、ガス、光、音、温度、圧力、水分、および/または環境の他の条件の有無を挙げることができる。RFIDインテロゲーターによって送信されたRF信号に応答して、RFIDベースのセンサーは、RFIDインテロゲーターが受信するように、識別(ID)コードおよび1つ以上の物理的条件へのRFIDベースのセンサーの現在または以前の曝露に関連付けられた他の情報を送信する。RFIDベースのセンサーはまた、RFIDインテロゲーターによって送達されるRFエネルギーによって電力が供給され得る。
【0008】
米国特許第9,317,795号には、表面上に配設された検知要素のアレイを含むRFID検知システムを開示している。各検知要素としては、RFIDマイクロチップ、マイクロチップに動作可能に連結されているアンテナ、およびアンテナ上に配設された感圧材料が挙げられる。RFIDリーダーシステムは、各検知要素にインテロゲーション信号を提供し、マットの検知要素の感圧材料が圧縮されたときに、連結されているアンテナを介してRFIDリーダーに信号を返送する。
【0009】
これらの刊行物では、センサー対応RFIDタグを使用して、反応器容器内のプロセスもしくは環境の条件を測定すること、またはさらに受信、処理、使用するために反応器容器内の測定条件に関連する情報を無線で転送することについてはいずれも開示または示唆していない。実際に、当業者は、RF信号の大きな歪みもしくは減衰、またはその両方がなく、ある容積の触媒粒子または炭化水素を含む容器を介してRF信号を送信することが可能であとは期待していない。これは、信号が触媒粒子の中を通るときに、かなりの濃度の触媒金属を含む触媒粒子が、RFIDタグおよびRFインテロゲーターによって送信されるRF波の歪みまたは深刻な減衰を引き起こすと以前は考えられていたためである。
【0010】
これらの刊行物ではさらに、反応器容器によって画定されている反応域内での物理的条件の無線による監視および三次元プロファイリングを提供することについていずれも開示または教示していない。
【0011】
しかし、本発明者らは、反応器内の特定の場所での環境またはプロセス条件の局所的な検知または測定を行うこと、ならびに、反応器を通して、反応器内の測定条件を表す情報を含むRF波の受信機に対して無線送信を行うことを提供するシステムおよび方法を発明した。これにより、ある容積内の条件の三次元プロファイリングが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】米国特許第7397370号明細書
【文献】米国特許第8106778号明細書
【文献】米国特許出願公開第2007/0215709号明細書
【文献】米国特許第9317795号明細書
【発明の概要】
【0013】
したがって、反応器容器内のプロセス条件を無線で監視し、プロファイリングするためのシステムが提供される。このシステムの反応器容器は、触媒粒子を含む触媒床と、触媒床内の既知の場所に配設された複数のセンサー対応RFIDタグと、を含む反応域を画定する。RFIDリーダーアンテナは、各センサー対応RFIDタグに無線で連結または結合され、インテロゲーション信号を送信すること、およびインテロゲーション信号に応答して送信されるRFIDトランスポンダ信号を受信することが可能である。複数のセンサー対応RFIDタグのセンサー対応RFIDタグの各々は、固有の非可変識別コードでエンコードされ、かつ反応域内の反応器条件を検知すること、インテロゲーション信号を受信すること、およびインテロゲーション信号に応答して、固有の非可変識別コードおよびセンサー対応RFIDタグに関連付けられている反応器条件を表す情報を含むRFIDトランスポンダ信号を送信することが可能である。このシステムでは、反応域全体の特定の場所でのプロセス条件の決定および三次元プロファイリングを提供する。
【0014】
反応器容器内のプロセス条件を無線で監視し、プロファイリングする方法も提供される。この反応器容器は、反応域を画定し、触媒粒子を含む触媒床、および触媒床内の既知の位置に配設された複数のセンサー対応RFIDタグを含む。この方法は、センサー対応RFIDタグの各々によって受信されるインテロゲーション信号をRFIDリーダーアンテナが送信することを含む。このインテロゲーション信号に応答して、センサー対応RFIDタグの各々は、固有の非可変識別コードおよびセンサー対応RFIDタグに関連付けられている周囲条件を表す情報を含む、その関連付けられたRFIDトランスポンダ信号を送信する。RFIDリーダーアンテナは、関連付けられているRFIDトランスポンダ信号の各々を受信し、関連付けられているRFIDトランスポンダ信号を処理する。この方法では、反応域全体の特定の場所でのプロセス条件の決定および三次元プロファイリングを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】反応器容器の反応域内の条件を無線で監視し、三次元プロファイリングするための本発明のシステムの実施形態を表す概略図である。
【
図2】
図1に描写する反応器容器のA-A断面の平面図である。
【
図3】触媒床内の既知の場所に配設された複数のセンサー対応RFIDタグと、複数のセンサー対応RFIDタグの各センサー対応RFIDタグに無線により連結され、複数のセンサー対応RFIDタグのセンサー対応RFIDタグの各々によって送信されたRF信号に含まれる情報を処理するためのコンピューターに接続されているRFIDリーダー/インテロゲーターとを含む、無線反応器監視、三次元プロファイリングシステムのある要素を例解している図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態は、反応器容器内の条件を無線で監視し、反応器容器によって画定されている反応器域全体の条件の三次元プロファイルを提供するためのシステムおよび方法の両方を含む。
【0017】
この特許出願と同時に提出されるのは、「SP2119-Wireless Monitoring and Profiling Of Reactor Conditions Using Arrays Of Sensor-Enabled RFID Tags Placed At Known Reactor Heights,」、「SP2066-Wireless Reactor Monitoring System Using Passive Sensor Enabled RFID Tag」および「SP2102-Wireless Monitoring and Profiling Of Reactor Conditions Using Plurality Of Sensor-Enabled RFID Tags And Multiple Transceivers,」という名称で、それぞれシリアル番号62/616,185、62/616,166、および62/616,155を有する3つの関連する仮特許出願である。
【0018】
反応器容器内の測定条件としては、反応器容器内の様々な場所での圧力または温度などのプロセスまたは環境条件を挙げることができる。測定条件としては、蒸気および液体の割合(パーセンテージ)、流量、pH、および反応器容器内に含まれるかまたは反応器容器内を通過する流体の化学組成などの他のパラメーターをさらに挙げることができる。
【0019】
本発明は、反応器容器の反応域全体の特定または既知の場所に配置されたセンサー対応RFIDタグを使用して、反応器内の条件を遠隔により測定すること、および測定された情報を電波送信によってトランシーバーおよび処理システムに無線送信すること、を提供する。処理システムとしては、センサー対応RFIDタグによって送信された信号に含まれる情報を処理して、反応器容器内の条件の三次元プロファイルを提供するための、関連付けられたプログラムコードを有するコンピューターなどの手段が挙げられる。これを行うためには、本発明は、反応器容器の反応域内および反応域全体にわたる場所に存在する1つ以上の環境条件を測定するかまたは検知するための手段を各々提供する複数のセンサー対応RFIDタグの使用を必要とする。
【0020】
本明細書では、各センサー対応RFIDタグは、パッシブRFIDタグで構成されているか、またはパッシブRFIDタグに動作可能に接続されているセンサーを含むデバイスである。センサーは、反応器容器内の環境もしくはプロセスの条件またはパラメーターを検知するための手段と、特に測定条件またはパラメーターを表す情報を含む信号入力を、接続されたRFIDタグに提供するための手段と、を提供する。当技術分野で教示されているパッシブRFIDタグとしては、RFIDリーダーアンテナ(トランシーバ)からインテロゲーション信号を受信するため、およびインテロゲーション信号の受信に応答してトランスポンダ信号を送信するためのトランスポンダアンテナに結合されている集積回路が挙げられる。
【0021】
センサー対応RFIDタグは、パッシブであるため、システムのRFIDリーダーアンテナによって送信されたインテロゲーション信号の受信に応答して、RFIDトランスポンダ信号を送信する。上記のように、センサーはRFIDタグと一体化されており、反応域内の1つ以上の条件を検知することができる。RFIDセンサーのセンサー構成要素は、当業者に既知である任意の好適なセンサーの群から選択され得る。センサーによって検知されるか、または測定される環境条件またはパラメーターの例としては、圧力、温度、化学組成、蒸気および液体の組成、密度、流量、pH、振動、放射、磁束、光強度、および音強度が挙げられる。好ましいセンサー要素としては、温度センサー、圧力センサー、化学センサー、湿度センサー、pHセンサー、流量センサー、液体/蒸気センサーおよびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるものが挙げられる。
【0022】
一体化されたセンサーおよびRFIDタグは、反応器の条件を検知するため、インテロゲーション信号を受信するため、およびインテロゲーション信号に応答して、測定された反応器の条件を表す情報を含むRFIDトランスポンダ信号を送信するための手段を提供する。特許公開第US2013/0057390号、同第US9,563,833号、同第US9,412,061号、同第US9,035,766号、およびWO03/098175には、センサー対応RFIDタグの例を提示している。これらの特許刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0023】
本発明の必要な特徴は、センサー対応RFIDタグの各々が、固有の非可変識別コードでエンコードされることである。トランシーバー信号の受信に応答して、各センサー対応RFIDタグが、固有のタグ識別データを、関連付けられたセンサーによって測定されたかまたは検知された可変データと共に送信するため、これは重要である。固有の非可変タグ識別コードを表す情報、およびRFIDセンサーによって測定されたかまたは検知された反応器の環境条件を表す可変情報を両方とも送信することにより、送信された可変情報を特定のセンサーに関連付けることを提供する。センサー対応RFIDタグは、反応域全体もしくは反応域内、または反応器の触媒床(複数可)内の既知の場所に配設されるため、非可変タグID情報および関連付けられた可変環境条件情報の両方を有することで、情報を処理して、反応器域の三次元プロファイリングを提供することが可能になる。
【0024】
したがって、センサー対応RFIDタグは、固有の不変識別コードでエンコードされ、反応域内のその周囲付近の反応器の条件を検知することができる。センサー対応のRFIDタグは、トランシーバーからインテロゲーション信号を受信して、インテロゲーション信号に応答して、固有の非可変識別コードおよびセンサー対応RFIDタグに関連付けられている測定された反応器の条件の両方を表す情報を含むRFIDトランスポンダ信号を送信することができる。
【0025】
本発明の反応器容器は、当業者に既知である任意の好適な材料で作製された任意の好適な容器であり得る。多くの用途において、反応器容器は、一般に、触媒を含み、その中に反応物または供給原料が導入される容積を画定する。本発明の一実施形態において、反応器容器は、反応域を画定し、反応域内には、触媒粒子を含む触媒床がある。また、反応域としては、積層床(stacked bed)として既知であるものなど、触媒の複数の床を挙げることができる。反応域は、触媒粒子もしくは支持体粒子、またはその両方で完全に充填されるなど、触媒または触媒床の任意の好適な配置によって充填され得る。
【0026】
反応器容器はさらに、反応域への流体連通をもたらす入口と、炭化水素などの供給物流を反応域に導入するための手段と、を備えてもよい。反応器容器はまた、反応域からの流体連通をもたらす出口と、反応生成物などの流出物流を反応域から除去するための手段と、を備えてもよい。
【0027】
水、炭化水素および他の化学物質など、任意の種類の供給物流または流体を、反応器容器の反応域に導入するか、または反応器容器の反応域に含めてもよい。炭化水素の例としては、ナフサ、ケロシン、ディーゼル、軽油、および残油などの重油が挙げられる。典型的には、反応域は、好ましくは列挙された炭化水素のいずれかなど、前述の流体のいずれかと共に、触媒粒子の1つ以上の床を含む。
【0028】
反応域内の触媒粒子は、任意の形状の押出成形物(例えば、円筒、二葉、三葉、および四葉など)、球、ボール、不規則な凝集体、丸薬、粉末など、産業界で典型的に使用される任意のサイズおよび形状であってもよい。触媒粒子のサイズは0.1mm~200mmの範囲であり得るが、より典型的には、触媒粒子のサイズは0.5mm~100mm、または1mm~20mmの範囲であり得、また任意の組成を有し得る。
【0029】
一般的な触媒組成物としては、シリカ、アルミナ、シリカ-アルミナ、およびチタニアなどの無機酸化物成分が挙げられる。触媒組成物は、クロム、モリブデン、タングステン、レニウム、鉄、コバルト、ニッケル、パラジウム、白金、金、銀、および銅などの遷移金属のいずれかなどの触媒金属成分をさらに含むことができる。触媒粒子の金属成分の濃度は、その実際の状態に関係なく、金属に基づいて60重量%以上までであり得、典型的には、金属濃度は、その実際の状態に関係なく、金属に基づいて0.1~30重量%の範囲である。
【0030】
本発明の別の特徴は、反応器の反応域内の条件の三次元プロファイリングを提供するために単一のRFIDリーダーアンテナまたはトランシーバーのみ必要とされることである。複数のトランシーバーが本発明のシステムまたは本発明のプロセスの要素として使用され得るが、複数のセンサー対応RFIDタグを反応域内および反応域全体または反応器容器の触媒床(複数可)内の既知の場所に配設することにより、単一のRFIDリーダーアンテナを使用して、反応器容積または反応域のプロファイリングを提供することを可能にする。
【0031】
本発明の実施形態では、複数のセンサー対応RFIDタグは、反応域の触媒床内に配置され、その結果、センサー対応RFIDタグの各々は、触媒粒子によって取り囲まれる。典型的な反応器では、深さおよび幅の幾何学的寸法により触媒床が画定される。深さおよび幅によって画定可能である反応器の場合、触媒床の典型的な深さは0.5~20メートルの範囲であり、触媒床の典型的な有効幅は0.5~20メートルの範囲である。したがって、センサー対応RFIDタグは、20メートル以上までの厚さを有する触媒粒子の層またはエンベロープによって取り囲まれ得、約0.5~約20メートルの触媒粒子の床厚を通過するためには、インテロゲーション信号およびトランスポンダ信号が必要である。
【0032】
RFIDリーダーアンテナは、反応域の触媒床内のセンサー対応RFIDタグから遠隔である任意の場所に配置される。ただし、RFIDリーダーアンテナは、複数のセンサー対応RFIDタグのセンサー対応RFIDタグの各々に無線で連結されているかまたは結合されている。RFIDリーダーアンテナは、複数のセンサー対応RFIDタグのセンサー対応RFIDタグの各々へのインテロゲーター信号の送信が可能になり、かつ複数のセンサー対応RFIDタグのセンサー対応RFIDタグの各々からの応答性のトランスポンダ信号の受信が可能になるように構成される。
【0033】
RFIDリーダーアンテナは、反応域内に位置付けることが好ましい。これにより、インテロゲーター信号およびトランスポンダ信号が反応器容器の壁の中を通る必要がなくなるためである。しかし、本発明のシステムの別の実施形態では、RFIDアンテナは、反応器容器の外に位置付けられるかまたは配置される。
【0034】
RFIDリーダーアンテナは、RFIDリーダーアンテナにインテロゲーション信号を提供し、複数のセンサー対応RFIDタグのセンサー対応RFIDタグの各々によって送信されたRFIDトランスポンダ信号を受信することを提供するリーダーに動作可能に接続される。コンピューター手段は、RFIDトランスポンダ信号の各々によって運ばれる情報を処理すること、および反応域全体の条件に関する三次元プロファイル情報に関連する出力を表示するか、またはそうでなければ提供することをもたらす。
【0035】
ここで、
図1を参照すると、これは、反応器容器12内のプロセス条件を無線で監視し、プロファイリングするための本発明のシステム10の実施形態の概略図である。反応器容器12は、反応域14を画定する。反応域14は、触媒床16を含み、触媒粒子18が充填され、触媒粒子18を含む。反応器容器12は、導管24に動作可能に接続されている入口ノズル22を備える。入口ノズル22は、導管24を通って流体連通するための手段、および供給物を反応域14に導入するための手段を提供する。反応器容器12はまた、導管28に動作可能に接続されている出口ノズル26を備え、導管28を通って流体連通するための手段および反応域14から流出物を除去するための手段を提供する。
【0036】
図1には、反応域14内に位置付けられたRFIDリーダーアンテナ30を含む本発明のシステム10の一実施形態を示す。図には、RFIDリーダーアンテナ30は、触媒床16の表面32上に位置するように示されているが、RFIDリーダーアンテナ30は、触媒床16の触媒粒子の境界内である、およびそれらの触媒粒子によって取り囲まれているなど、反応域14内のいずれの場所にも配置され得ることが理解される。あるいは、図示されていないが、RFIDリーダーアンテナ30は、反応器容器12の外の任意の場所に配置されてもよい。
【0037】
しかし、反応域14全体および触媒床16内に分布された複数のセンサー対応RFIDタグ40を共に提供するセンサー対応RFIDタグ40の各々に無線で連結されるかまたは結合されるように、RFIDリーダーアンテナ30を位置付けることが重要である。
【0038】
断面A-Aの平面図を
図2に示す。各センサー対応RFIDタグ40の位置は、
図1および
図2に示されており、複数のセンサー対応RFIDタグ40が、触媒床16内の既知の場所にどのように配置され得るかまたは配設され得るかを例解している。図には、順序付けられた平面アレイに、および反応域14の触媒床16内の様々な高さの順序付けられた位置に配置された、センサー対応RFIDタグ40を描写している。しかし、センサー対応RFIDタグ40は、そのような順序付けられたパターンで配置されている必要はない。ただし、各センサー対応RFIDタグ40の場所は、識別されているかまたは識別可能であり、その場所は複数のセンサー対応RFIDタグ40の特定のセンサー対応RFIDタグ40に関連付けることができる。したがって、各センサー対応RFIDタグ40の場所を知ることで、RFIDリーダーアンテナ30によって受信されるようにRFIDトランスポンダ信号を送信することによって、それぞれのセンサー対応RFIDタグ40に関連付けられた非可変タグID情報および1つ以上の測定された環境条件情報の伝達が可能になる。
【0039】
本発明のシステム10の動作において、RFIDリーダーアンテナ30は、インテロゲーション信号42を複数のセンサー対応RFIDタグの各センサー対応RFIDタグ40に送信する。これは、RFIDリーダーアンテナ30からセンサー対応RFIDタグ40の第1の平面アレイの各センサー対応RFIDタグ40までのみ延在している別個の個別の矢印によって
図1に描写されている。しかし、インテロゲーション信号42は、実際に、触媒床16全体に広がっている複数のセンサー対応RFIDタグ40のすべてのセンサー対応RFIDタグ40に同時に送信される単一の電波であることが認識されている。複数のセンサー対応RFIDタグの各センサー対応RFIDタグ40が、インテロゲーション信号42を受信する。各センサー対応RFIDタグ40は、インテロゲーション信号42の受信に応答して、各々、RFIDトランスポンダ信号を送信し、そのRFIDトランスポンダ信号には、特定のセンサー対応RFIDタグ40にエンコードされた固有の非可変識別コードを表す情報およびセンサー対応RFIDタグ40によって検知されたかまたは測定され、それらに関連付けられている可変反応器条件を表す情報が含まれている。
【0040】
RFIDリーダーアンテナ30は、ケーブルによってリーダー50に動作可能に接続される。リーダー50は、RFIDリーダーアンテナ30にインテロゲーション信号42を提供するための手段と、RFIDリーダーアンテナ30からRFIDトランスポンダ信号44を受信するための手段と、を提供する。コンピューター52およびリーダー50は、リーダー50とコンピューター52との間で伝達するための手段を提供するケーブル54によって一緒に構成される。コンピューター52は、RFIDリーダーアンテナ30によって受信されたRFIDトランスポンダ信号44を処理するための手段、ならびにメモリ内に表示または保存するために、反応域14全体の測定された環境条件および反応域14全体の測定された環境条件の三次元プロファイルに関する出力情報56を提供するための手段を提供する。
【0041】
図2には、
図1に示される反応器容器12のA-A断面の平面図を示す。
【0042】
図2には、複数のセンサー対応RFIDタグ40の各々が、反応器容器12の反応器域14内の既知の場所にどのように配置され得るかを例解している。
【0043】
図3は、触媒粒子18の環境58によって取り囲まれている複数のセンサー対応RFIDタグ40のうちのいくつかのセンサー対応RFIDタグ40を含む拡大詳細図を表す。
図3はさらに、RFIDリーダーアンテナ30およびリーダー50などの本発明のシステム10の特定の他の要素との関係を示す。
【0044】
センサー対応RFIDタグ40の各々は、集積回路62を含むパッシブRFIDタグ60を含む。集積回路62は、特定のセンサー対応RFIDタグ40に関連付けられ、そのタグを表す非可変識別コードの保存を提供する。センサー対応RFIDタグ40は、環境58の少なくとも1つの条件を表す、センサー64からの可変入力情報の受信を提供する。
【0045】
センサー64は、パッシブRFIDタグ60で構成され、接続66によってパッシブRFIDタグ60に動作可能に接続される。センサー64は、要素68、または測定された環境条件を表す、集積回路62へのアナログまたはデジタル入力を提供できる任意の他の好適な検知手段を使用することにより、環境58の条件を検知することまたは検出することが可能になる。集積回路62では、接続66を介して提供されるセンサー入力信号に応答するRFIDトランスポンダ信号44の変調を提供し、これにより、RFIDトランスポンダ信号44は、環境58内の測定条件を表す情報を含むかまたは運ぶようになる。環境58内には、触媒粒子18を含む。
【0046】
集積回路62は、RFIDタグアンテナ70に動作可能に接続され、個々のタグ識別コード情報に加えて、センサー対応RFIDタグ40を取り囲むまたは包囲する環境58内の少なくとも1つの条件を表す、センサー64からの可変入力情報を運ぶRFIDトランスポンダ信号44を送信するための手段を提供する。センサー対応RFIDタグ40は、RFIDリーダーアンテナ30が送信したインテロゲーション42の受信に応答して、RFIDトランスポンダ信号44を送信する。