(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】カプセル化粒子分画装置、それらのシステム及び使用方法
(51)【国際特許分類】
B01D 61/14 20060101AFI20240528BHJP
B01D 63/02 20060101ALI20240528BHJP
B01D 63/14 20060101ALI20240528BHJP
B01D 63/08 20060101ALI20240528BHJP
B01D 63/10 20060101ALI20240528BHJP
B01D 63/16 20060101ALI20240528BHJP
B01D 69/08 20060101ALI20240528BHJP
B01D 69/06 20060101ALI20240528BHJP
B01D 61/18 20060101ALI20240528BHJP
B01D 69/00 20060101ALI20240528BHJP
B01D 69/12 20060101ALI20240528BHJP
B01D 71/06 20060101ALI20240528BHJP
B01D 71/80 20060101ALI20240528BHJP
A61M 1/02 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
B01D61/14 500
B01D63/02
B01D63/14
B01D63/08
B01D63/10
B01D63/16
B01D69/08
B01D69/06
B01D61/18
B01D69/00
B01D69/12
B01D71/06
B01D71/80
A61M1/02 107
(21)【出願番号】P 2020554107
(86)(22)【出願日】2019-04-04
(86)【国際出願番号】 US2019025551
(87)【国際公開番号】W WO2019195396
(87)【国際公開日】2019-10-10
【審査請求日】2022-03-25
(32)【優先日】2018-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518381525
【氏名又は名称】テラポア テクノロジーズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ドリン,レイチェル エム.
(72)【発明者】
【氏名】ロビンズ,スペンサー ダブリュ.
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/189697(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0217012(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0327649(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0229969(US,A1)
【文献】特表2016-514049(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0336058(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00-71/82
C02F 1/44
A61M 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのタイプの血液細胞を含む液体を分画する方法であって、以下の:
少なくとも1つのタイプの血液細胞を含む液体を、少なくとも1つのメソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料と接触させる工程
であって、ここで、前記メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料は、ブロック共重合体と、直径が1nm~200nmの範囲であるメソ細孔とを含む、二次元又は三次元構造である、
前記少なくとも1つのタイプの血液細胞を分離又は除去する工程、かつ、
前記少なくとも1つのタイプの血液細胞を回収し又は取り戻す工程、
を含む、方法。
【請求項2】
前記メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料の平均孔径に対する、前記少なくとも1つのタイプの血液細胞の最大直径の比率(λ)が少なくとも40である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料は、非対称断面構造を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
さらに、
前記メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料を横切って圧力差が印加される工程を含み、前記液体の分画が促進される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料の断面構造が非対称であり、前記材料の最も選択的な部分が、前記少なくとも1つのタイプの血液細胞を含む液体と接触する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
液体の分画中又は分画後に最小限の粒子溶解が存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つのメソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料が、プリーツパック、カセット内の1つ以上の平面シート、螺旋巻きモジュール、中空繊維、中空繊維モジュール、シリンジフィルター、マイクロ遠心分離管、遠心分離管、スピンカラム、マルチプルウェルプレート、真空フィルター、又はピペットチップを含む装置内又は装置としてパッケージされる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記1以上のメソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料又は
前記少なくとも1つのメソポーラス等多孔質材料を含む装置が、前記少なくとも1つのタイプの血液細胞を含む液体の分画中に用いられる、
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つのメソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料が、少なくとも1つのジブロック共重合体;少なくとも1つのトリブロック共重合体;テトラブロック、ペンタブロック、ヘプタブロック、デカブロック等を含む、少なくとも1つの高次ブロック共重合体;又は複合体構造を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つのメソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料を、前記少なくとも1つのタイプの血液細胞を含み、さらに、少なくとも1つの保存剤を含む、液体と接触させる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つのタイプの血液細胞を含む液体を分画する装置であって、以下の、
(a)少なくとも1つのメソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料、
(b)前記液体を前記メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料に接触させうる注入口、及び
(c)分画された前記液体を通過させる出口、
を含む、装置。
【請求項12】
装置が、ひだ付きカプセル、平面シートカセット、螺旋巻きモジュール、中空繊維モジュール、シリンジフィルター、マイクロ遠心分離管、遠心分離管、スピンカラム、マルチプルウェルプレート、真空フィルター、平面シート、又はピペットチップのいずれか1つである、請求項1
1記載の装置。
【請求項13】
少なくとも1つの
前記メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料が非対称断面を含み、ここで、少なくとも第1のメソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料の最も選択的なメソポーラス部分が入口に面して、いかなる流入する前記少なくとも1つのタイプの血液細胞を含む液体も前記メソポーラス等多孔質
ブロック共重合体材料の前記最も選択的な部分と最初に接触する、請求項1
1記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年4月4日に出願された米国仮出願第62/652,682号の利益を主張し、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
技術分野
本開示は、メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料を用いて、カプセル化粒子を含む液体分画する方法に関する。本開示はまた、カプセル化粒子を含む液体を分画するメソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料を含む装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カプセル化粒子としては、細胞、ウイルス、小胞、リポソーム、液胞、リソソーム、エキソソーム、及びポリマーソーム等の構造があげられるが、これらに限定されない。より一般的には、当該カプセル化粒子は、ガス、液体、又は固体、又はガス、液体、又は固体のいかなる組み合わせを含み得る、その内部内容物を封入化する外部バリアを含む。液体からカプセル化粒子を分離には、当該粒子が一般に破裂、変形、及びケーキングを受けやすいため、特に困難である。カプセル化粒子を分離する1つの一般的な戦略は、フィルター/膜を用いる濾過である。当該分離用のフィルターを選択する場合、膜/フィルターの孔径は、カプセル化粒子を排除する程度に十分小さく、目詰まり及び低体積フラックスを防ぐ程度に十分大きくなければならない。
【0003】
血液分画は、カプセル化粒子を分離する一般的な例であり、血液細胞は血液血漿から分離される。血液分画は、臨床的血液分析、患者ケア用の血漿タンパク質の単離、及び製薬生産を含む、様々な用途で用いられる。血液細胞の血漿からの分離は、多くの用途に通常用いられる。
【0004】
血液分画の一般的な技術は、特に臨床分析では遠心分離である。遠心分離は遠心分離機が必要とし、これはすべての環境では実用的でない。例えば、自動化血液分析装置に、遠心分離機を含む場合、保守が必要な追加の構成要素を導入するため、費用及びバルクが増大する。遠心分離機は、ポイントオブケアで用いるにも不便である。
メンブレン/フィルターを用いた血液分画に特異的な方法である血液濾過は、カプセル化粒子の分離に関連する課題が示される。赤血球の最大直径は約8μmであるが、加圧下で変形し、約3μmの孔を通過しうる。全血を約3μmの孔で濾過すると、赤血球は変形し、孔栓という孔に固着する。細孔が詰まると、流れが低下するため、流れを高めるのに圧力を高めると、細胞は溶解してしまい、その内容物が排出されて望ましくない。細孔の目詰まりの緩和に、一般に約800nm~約2μmの範囲のより小さな細孔を用いることができる。しかしながら、孔径を小さくすると、赤血球が膜表面にケーキ状になり、フラックスが低下し、さらには完全体積フラックス喪失が起こることも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第6241886号公報
【文献】米国特許第7927810号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】Brail et al. (TransfusionMedicine Reviews, Vol IX, No. 2, 1995 pp 145-166)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
さらに、いくつかの血液濾過方法は沈降に依存し、血液細胞が膜を通過する駆動力をほとんど、又は全く提供しない。具体的には、これらの方法では、血液試料を、入口側からほとんど加圧できないか、又は血液濾過装置の出口側から真空にすることができず、さもなければ、圧力差により、細胞溶解が起こる。膜との接触時に血液試料を分離させる圧力又は真空等の駆動力がなければ、押出ができず、従って失われる大量の血漿が膜内に付着するため、血漿の収率は低くなる。さらに、血漿のホールドアップ体積を最小限にするため、当該沈降フィルターはしばしば、いかなる種類の封入又は筺体も伴わずに用いられ、血漿は単に膜の底部を拭き取り、いくつかの収集容器に滴下されるだけであり、このような設定は不便であり、血漿は、膜のシート上の全血に汚染されやすい状態となる。
【0008】
非特許文献1及び特許文献1はともに、孔径(非特許文献1)又は孔径である平均水圧径(特許文献1)が実質的に3μmの場合、赤血球が膜を通過しうることを示す。特許文献2は、赤血球が2μmの孔を通過しうることを示す。特許文献1は、血液が500nm以下のフィルターを詰まらせ、圧力を上げるとさらに溶解が起こるため、500nmという低い水力学的直径が有用であることを示す。特許文献2は、孔径を50nmまで小さくしうることに言及し、他の血液成分が、孔が50nm未満のフィルターを目詰まりさせることを示すが、特許文献2は、孔径が200nmまで小さくなることのみを示す。さらに、特許文献2は、多孔性が高まるとさらなる溶血につながるために有害であることを示す。
【0009】
ブロック共重合体膜は、孔径分布が狭く、孔密度が高く、かつ孔径が1nm~200nmの範囲で調整可能な、濾過について多くの広範に有用な特性がある。関連技術は、孔サイズがより小さく、かつ孔密度がより高いというブロック共重合体膜に関連する性質が、全血中の血液細胞等のカプセル化粒子の濾過を悪化させることを教示する。驚くべきことに、本開示の材料及び装置は、予想されるセイルを溶解せず、加圧下で血液が濾過されうる。当業者にとって、この改良は、カプセル化粒子を含む液体の広範囲の分画に有益である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料の一例の説明図である。
【0011】
【
図2】本開示の様々な態様による一実施形態の概略図であり、カプセル化粒子を含む液体は、メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料との接触により分画されることを示す図である。
【0012】
【
図3】本開示の様々な態様による別の実施形態の概略図であり、カプセル化粒子を含む液体は、メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料との接触により分画され、ここで、液体は、加圧される。
【0013】
【
図4】本開示の様々な態様によるさらに別の実施形態の概略図であり、カプセル化粒子を含む液体が、メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料との接触により分画され、ここで真空がメソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料に適用される。
【0014】
【
図5】本開示の様々な態様によるさらに別の実施形態の概略図であり、カプセル化粒子を含む液体は、メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料との接触により第1分画され、次いで、当該分画された液体は、第2メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料との接触により第2分画される。
【0015】
【
図6】本開示の様々な態様によるさらに別の実施形態の概略図であり、カプセル化粒子を含む液体は、メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料との接触により第1分画され、ここで、液体は加圧され、次いで、当該分画された液体は、第2メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料との接触により、第2分画される。
【0016】
【
図7】本開示の様々な態様によるさらに別の実施形態の概略図であり、カプセル化粒子を含む液体は、メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料との接触により第1分画され、次いで、当該分画された液体は、第2メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料との接触により、第2分画され、ここで、第2メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料の出口又はその近傍で減圧され、両方の膜全体に圧力差を提供する。
【0017】
【
図8】本開示の様々な態様によるさらに別の実施形態の概略図であり、カプセル化粒子を含む液体は、クロスフローモードでメソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料との接触により第1分画され、次いで、透過物は、クロスフローモードで第2メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料との接触により第2分画される。
【0018】
【
図9】本開示の様々な態様によるさらに別の実施形態の概略図であり、ここで、カプセル化粒子を含む液体は、クロスフローモードでメソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料との接触により第1分画され、次いで、保持液は、クロスフロー7モードで第2メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料との接触により分画される。
【0019】
【
図10】本開示の様々な態様による例示的な装置の説明図である。
【0020】
【
図11】本開示の様々な態様による別の例示的な装置の説明図である。
【0021】
【
図12】本開示の様々な態様による、さらに別の例示的な装置の説明図である。
【0022】
【
図13】本開示の様々な態様による、さらに別の例示的な装置の説明図である。
【0023】
【
図14】本開示の様々な態様による、さらに別の例示的な装置の説明図である。
【0024】
【
図15】本開示の様々な態様による、さらに別の例示的な装置の説明図である。
【0025】
【
図16】本開示の様々な態様による、さらに別の例示的な装置の説明図である。
【0026】
【
図17】本開示の様々な態様による、さらに別の例示的な装置の説明図である。
【0027】
【
図18】本開示の様々な態様による、さらに別の例示的な装置の説明図である。
【0028】
【
図19】本開示の様々な態様による、さらに別の例示的な装置の説明図である。
【0029】
【
図20】メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料(B、ソリッドブラック)を通した濾過後の希釈全血溶液(A、破線)及び希釈透過物のUV-可視スペクトルである。
【0030】
【
図21】メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料(B、右)を通して濾過した後、カラー又は血球が顕著に存在しないことと比較した、全血(A、左)を示す光学顕微鏡像である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下の実施形態の説明は、単に例示的であり、本開示の主題、それらの適用、又は用途を限定することを意図するものではない。
【0032】
全体を通して適用されるように、範囲は、範囲内にあるすべての値を記述するための簡略化として用いられる。範囲内のいかなる値も範囲の終端として選択することができる。
【0033】
本明細書及び添付の特許請求の範囲の適用上、別段の指示がない限り、量、パーセント(%)又は比率、及び明細書及び特許請求の範囲において使用される他の数値を表す全ての数値は、明示的に表示されているか否かを問わず、すべての場合に用語「約(about)」により修正されているものと理解されるべきである。当該用語は、一般に、記載された数値に対する合理的な量の偏差として当業者が考慮するであろう(すなわち、同等の機能又は結果を備える)数字の範囲を示す。例えば、当該用語は、±10%の偏差、±5%の偏差、あるいは±1%の偏差を含むと解釈することができるが、ただし、そのような偏差は、値の最終関数又は結果を変化させるものではない。従って、反義的に示されない限り、本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載された数値パラメータは、本発明によって得られようとする所望の特性に依存して変化し得る近似値である。
【0034】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられる、「a」、「an」及び「the」(原文)という単数形は、明示的かつ明確に1つの参照に限定されない限り、複数の参照を含むことに留意されたい。本明細書で用いられる、用語「含む・挙げる(include)」及びその文法的変形は非限定的であることを意図し、リスト中の項目の記載は、列挙された項目に置換や挿入されうる他の類似の項目を除外するものではない。例えば、本明細書及び以下の特許請求の範囲で用いられる、用語「含む・備える(comprise)」(ならびに「含まれる」等の形態、誘導体、又はその変形)、用語「含む・挙げる(include)」(ならびに「含まれる・挙げられる」等の形態、誘導体、又は変形)及び「有する・備える(has)」(その形態、誘導体、又はその変形)は包括的(すなわち、オープンエンド)であり、他の追加的な要素や工程が除かれるものではない。従って、当該用語は、列挙された要素又は工程をカバーするだけでなく、明示的に列挙されていない他の要素又は工程も含むことができる。さらに、本明細書中で用いられる、用語「a」又は「an」(原文)は「1」を意味し得るが、「1以上」、「少なくとも1」及び「1以上」の意味とも一致する。従って、「a」又は「an」が先行する要素は、さらなる制約なしに、追加の同一要素の存在を妨げない。
【0035】
本開示は、カプセル化粒子を含む液体を分画する、少なくとも1つのメソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料を含む装置に関する。また、本開示は、少なくとも1つのメソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料を用いてカプセル化粒子を含む液体を分画する方法に関する。
【0036】
本開示の文脈では、「等多孔質」とは、孔径分布が実質的に狭いことを意味する。
【0037】
本開示の文脈では、「メソポーラス」とは、孔径が約1~約200ナノメートルであることを意味する。
【0038】
本開示の文脈では、「カプセル化粒子」とは、その内部内容物をカプセル化する外部バリアを含む粒子を意味し、内部内容物は、気体、液体、又は固体、又は気体、液体、又は固体のいかなる組み合わせをも含み得る。
【0039】
本開示の文脈では、メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料の「選択的部分」は、多孔性を含む材料の一部として定義することができる。本開示の文脈では、メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料の「最も選択的部分」は、平均孔径が最小である材料の選択的部分と定義することができる。本開示の文脈では、メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料の「最小選択的部分」は、平均孔径が最大である材料の選択的部分と定義することができる。
【0040】
本開示の文脈では、「保持液」とは、多孔質材料を通過しない液体を意味する。
【0041】
本開示の文脈では、「透過液」とは、多孔質材料を通過する液体を意味する。
【0042】
本開示の様々な態様では、イソソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料は、直径が約1nm~約200nmの範囲のメソ細孔を備えることができる。いくつかの例では、メソ細孔は、直径が約3nm~約200nmの範囲であり得る。他の例では、メソ細孔は、直径が約5nm~約200nmの範囲であり得る。さらに他の例では、メソ細孔は、直径が約5nm~約100nmの範囲であり得る。さらに他の例では、メソ細孔は、直径が約10nm~約100nmの範囲であり得る。さらに他の例では、メソ細孔は、直径が約5nm~約49nmの範囲であり得る。さらに他の例では、メソ細孔は、直径が約20nm~約49nmの範囲であり得る。さらに他の例では、メソ細孔は、直径が約1nm~約49nmの範囲であり得る。さらに他の例では、メソ細孔は、直径が約5nm~約50nmの範囲であり得る。さらに他の例では、メソ細孔は、直径が約5nm~約15nmの範囲であり得る。
【0043】
ブロック共重合体膜は、孔径分布(等多孔率)が狭く、孔密度が高く、及び孔径が約1nm~約200nmの範囲の調整可能な、濾過用の多くの有用な特性を備える。
【0044】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのメソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料の最も選択的な層は、カプセル化粒子を含む流入液体に面し、最も選択的な層の平均孔径は、カプセル化粒子の少なくとも1つの最大直径よりも有意に小さい。これらの実施形態の文脈では、相対直径は、メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料の平均孔径(d
PORE)に対するカプセル化粒子の最大直径(d
PART)のラムダ(λ)といわれる比(ここで、λ=d
PART/d
PORE)を通して定義することができる。少なくとも1つの実施形態では、λは少なくとも約40である。場合によっては、λは少なくとも100である。他の例では、λは少なくとも約150である。さらに他の例では、λは少なくとも約200である。さらに他の例では、λは少なくとも約300である。さらに他の例では、λは少なくとも約350である。さらに他の例では、λは少なくとも約375である。さらに他の例では、λは少なくとも約400である。さらに他の例では、λは少なくとも約500である。さらに他の例では、λは少なくとも約600である。さらに他の例では、λは少なくとも約700である。さらに他の例では、λは少なくとも約800である。さらに他の例では、λは少なくとも約850である。さらに他の例では、λは少なくとも約900である。一実施形態では、λは少なくとも約1000である。さらに他の例では、λは少なくとも約1500である。さらに他の例では、λは少なくとも約15000である。いくつかの実施形態では、λは、最大で30,000である。たとえば、λはせいぜい25,000である。別の例では、λはせいぜい20,000である。さらに別の例では、λは、本開示に従った18,000の実施例が表1に見出される。
【表1】
【0045】
いくつかの実施形態では、例えば、
図1に示されるように、メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料は、二次元(例えば、シート、フィルム)又は三次元構造(例えば、チューブ、モノリス)であり、ブロック共重合体20及びメソ細孔10を含む材料を含む。メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料は、断面構造が非対称又は対称であり得る。本開示の目的のために、そして濾過産業において一般に定義されるように、対称膜は、その厚さを通して均一である孔構造があり、非対称膜は、厚さを通して孔構造が変化する。
【0046】
少なくとも1つの実施形態では、例えば、
図2に示されるように、少なくとも1つのメソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料200を、カプセル化粒子210を含む液体と接触させ、液体の少なくとも1つの成分を分離又は除去させ、透過物220を、第1分画液体230として回収する。
【0047】
いくつかの実施形態では、例えば、
図3に示されるように、少なくとも1つのメソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料300を、カプセル化粒子310を含む液体と接触させ、加圧源320を用いてメソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料300全体に圧力差を適用し、液体の少なくとも1つの成分を分離又は除去させ、透過物330を第1分画液体50として回収する。
【0048】
いくつかの実施形態では、例えば、
図4に示されるように、少なくとも1つのメソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料400を、カプセル化粒子410を含む液体と接触させ、真空源420を用いてメソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料400全体に圧力差を適用し、液体の少なくとも1つの成分を分離又は除去させ、透過物430を、第1分画液体440として回収する。
【0049】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのメソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料を、カプセル化粒子を含む液体と接触させ、メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料全体に可変又は間欠的圧力差を適用し、液体の少なくとも1つの成分を分離又は除去させる。可変又は間欠的圧力差は、表面でのあらゆるビルドアップを妨げるのに役立ちうる。
【0050】
少なくとも1つの実施形態では、少なくとも1つのメソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料であって、メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料の断面構造が対称である、少なくとも1つのメソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料を、カプセル化粒子を含む液体と接触させて、液体の少なくとも1つの成分を分離又は除去させる。
【0051】
少なくとも1つの実施形態では、メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料の断面構造が非対称である少なくとも1つのメソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料を、カプセル化粒子を含む液体と接触させ、液体の少なくとも1つの成分を分離又は除去させる。
【0052】
少なくとも1つの実施形態では、メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料の断面構造が非対称である少なくとも1つのメソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料を、カプセル化粒子を含む液体と接触させ、当該液体は、最初にメソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料の最も選択的な部分と接触し、液体の少なくとも1つの成分を分離又は除去させる。
【0053】
少なくとも1つの実施形態では、本開示の様々な態様による装置は、少なくとも1つのメソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料を備える。
【0054】
少なくとも1つの実施形態では、本開示の様々な態様による装置は、少なくとも1つのメソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料、当該液体を当該メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料と接触させうる注入口、及び分画された液体を通過させうる排出口を備える。
【0055】
少なくとも1つの実施形態では、本開示の様々な態様による装置は、少なくとも1つのメソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料、当該液体を前記メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料と接触させうる注入口、当該分画された液体を通過させうる出口、当該装置からガスを除去する通気口を備える。
【0056】
少なくとも1つの実施形態では、本開示の様々な態様による装置は、少なくとも1つのメソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料、当該液体を当該メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料と接触させうる注入口、当該分画された液体を通過させうる出口と、濾過されない液体を除去する保持液出口を備える。
【0057】
少なくとも1つの実施形態では、本開示の様々な態様による装置は、少なくとも1つのメソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料、当該液体を当該メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料と接触させうる注入口、当該分画された液体を通過させうる出口、及び当該分画された液体を捕捉する受容容器を備える。
【0058】
少なくとも1つの実施形態では、本開示の様々な態様による装置は、少なくとも1つのメソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料と、当該液体を当該メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料と接触させうる注入口、当該分画された液体を通過させうる出口、当該装置からガスを除去する通気口、濾過されない液体を除去する保持液出口、分画された液体を捕捉する受容容器とのうちの少なくとも2つを含む。
【0059】
少なくとも1つの実施形態では、本開示の様々な態様による装置は、少なくとも1つのメソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料と当該液体を当該メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料と接触させうる注入口、当該分画された液体を通過させうる出口、当該装置からガスを除去する通気口、濾過されない液体を除去する保持液出口、分画された液体を捕捉する受容容器を含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、本開示の様々な態様による装置は、非対称断面を含む少なくとも1つのメソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料を含み、少なくとも第1メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料の最も選択的なメソポーラス部分は、流入液体が最初に前記メソポーラス等多孔質材料の最も選択的な部分と接触するように、入口に面する。
【0061】
いくつかの実施形態では、本開示の様々な態様による装置は、注入口を含み、当該注入口は、メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料のハウジングの一部であり得る。例えば、少なくとも1つの実施形態では、注入口は、シリンジフィルターの成形プラスチック部品であり得る。他の実施形態では、注入口は、メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料の露出表面であることができ、液体を導入してメソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料と接触させることができる。例えば、少なくとも1つの実施形態では、注入口は、メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料の最も選択的な部分であり得、ここで、メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料は、平面シート膜である。
【0062】
いくつかの実施形態では、本開示の様々な態様による装置は、出口を含み、当該出口は、メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料のためのハウジングの一部であり得る。例えば、少なくとも1つの実施例では、出口は中空繊維モジュールのプラスチック部品であってもよい。他の実施形態では、出口は、メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料の露出表面であってよく、液体はメソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料から排出しうる。例えば、少なくとも1つの実施形態では、出口は、メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料の最小選択的部分であり得、ここで、メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料は、複数ウェルプレートの底部に取り付けられた平面シート膜である。
【0063】
いくつかの実施形態では、本開示の様々な態様による装置は、液体が導入された時点又は導入後に装置からガスを除去するベントを備える。少なくとも1つの実施形態では、ベントは、開口又は閉鎖可能な開口であってもよい。例えば、少なくとも1つの実施形態では、ベントは、開状態、部分的に開状態、又は閉状態の間で遷移するように手動又は遠隔操作することができるハウジング内に組み込まれたバルブである。少なくとも1つの実施形態では、ベントは、開口、部分的開口、及び閉鎖を可能にする取り外し可能なキャップ、カバー、又は取付具があるハウジングの成形部品である。少なくとも1つの実施形態では、ベントは、外部弁、継手、コネクタ、カバー、又はキャップが接続され、開状態と閉状態との間でベントを測定するために使用され得る開口又は接続である。
【0064】
いくつかの実施形態では、本開示の様々な態様による装置は、分画された液体を捕捉する受容容器を含む。いくつかの実施形態では、受容容器は、装置の一体化された部分である。いくつかの実施形態では、受容容器は、装置の取り外し可能部分である。
【0065】
少なくとも1つの実施形態では、少なくとも1つのメソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料であって、前記メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料の断面構造が非対称である、少なくとも1つのメソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料は、カプセル化粒子を含む液体と接触し、前記液体は、最初に前記メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料の前記最も選択的な部分と接触し、圧力差が前記メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料全体に印加され、前記液体の少なくとも1つの成分が分離又は除去される。加圧は、例えば、シリンジ上に見出されるプランジャの手動又は機械的作動によって適用することができる。加圧は、例えば、ポンプ又は加圧容器から駆動される気体又は液体によっても適用することができる。
【0066】
少なくとも1つの実施形態では、少なくとも1つのメソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料を、カプセル化粒子を含む液体と接触させ、ここで、少なくとも1つの成分を、メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料全体に印加される圧力差と、又は印加されずに、カプセル化粒子の溶解を最小限にしつつ、分離又は除去する。一例では、カプセル化粒子溶解は、溶解粒子の約1%未満である。別の例では、カプセル化粒子溶解は、溶解粒子の約5%未満である。さらに別の例では、カプセル化粒子溶解は、溶解粒子の約10%未満である。真空は、例えば、シリンジ上にプランジャを手動又は機械的に延伸して適用することができる。真空は、例えば、真空ポンプから適用することもできる。いくつかの実施形態では、真空は、装置出口から直接印加される。例えば、シリンジを装置出口に接続し、吸引して真空にすることができる。いくつかの例では、あるポートでの真空適用及び別のポートを通る液体回収を可能にするため、出口にスプリッタを含めることができる。そのような実施形態の一例は、真空濾過装置であり、ここで、真空接続部は、装置出口の上にあり、受容容器でカプセル化される。この実施例では、真空は分画に寄与するが、出口は真空源の下にあるので、分画された液体は、真空源に直接吸引されずに回収することができる。
【0067】
少なくとも1つの実施形態では、少なくとも1つのメソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料を全血と接触させ、全血の少なくとも1つの成分を分離又は除去する。
【0068】
少なくとも1つの実施形態では、少なくとも1つのメソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料を、全血を含む液体と接触させ、全血の少なくとも1つの成分を分離又は除去する。
【0069】
少なくとも1つの実施形態では、少なくとも1つのメソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料を、少なくとも1つのタイプの血液細胞を含む液体と接触させて、少なくとも1つのタイプの血液細胞を分離又は除去する。
【0070】
少なくとも1つの実施形態では、少なくとも1つのメソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料を、血液を含み、及びさらにEDTA、シュウ酸塩、クエン酸ナトリウム、ヨード酢酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、及びヘパリンを含むが、これらに限定されない少なくとも1つの保存剤をさらに含む、液体と接触させ、血液の少なくとも1つの成分を分離又は除去させる。
【0071】
少なくとも1つの実施形態では、少なくとも1つのメソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料は、EDTA、シュウ酸塩、クエン酸ナトリウム、ヨード酢酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、及びヘパリンを含むが、これらに限定されない、少なくとも1つの保存剤で吸収される。
【0072】
いくつかの実施形態では、メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料は、例えば、プリーツパック、カセット内の1つ以上の平面シート、螺旋巻きモジュール、中空繊維、中空繊維モジュール、シリンジフィルター、マイクロ遠心分離管、遠心チューブ、スピンカラム、マルチプルウェルプレート、真空フィルター、又はピペットチップを含む装置として又は装置内にパッケージされる。一実施形態では、当該装置は、本開示の2つ以上の異なる材料を利用することができる。
【0073】
いくつかの態様では、カプセル化粒子を含む液体から分離又は除去される少なくとも1つの成分が、メソポーラス等多孔質ブロック共重合体と接触した後に回収又は取り戻される。
【0074】
いくつかの態様では、メソポーラス等多孔質材料を含む2つ以上のメソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料又は装置が、1又はそれ以上のサイズのカプセル化粒子を含む液体の分画中に用いられる。例えば、
図5に示される実施形態では、カプセル化粒子500を含む液体をメソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料510と接触させ、透過物520を最初に分画した液体530として回収する。第1分画液体530をその後、第2メソポーラス等多孔質材料540と接触させて、透過液550は、第2分画液体560として回収する。
【0075】
図6に示す一実施形態では、例えば、カプセル化粒子600を含む液体をメソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料610と接触させ、加圧源620を用いて加圧し、第1透過物630を第1分画液体640として回収する。第1分画液体640をその後、第2メソポーラス等多孔質材料650と接触させて、第2透過液660を、第2分画液体670として回収する。
【0076】
図7に示される一実施形態では、例えば、カプセル化粒子700を含む液体をメソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料710と接触させ、第1透過物720を、第1分画液体730として回収する。第1分画液体730を、続いて、第2メソポーラス等多孔質材料740と接触させ、真空源760を用いて膜全体を真空処理する。第2透過液770は、第2分画液体780として回収される。
【0077】
一実施形態の例では、メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料を含むシリンジフィルター装置を、カプセル化粒子を含む液体と接触させ、シリンジフィルター装置全体に圧力勾配を適用し、より大きな粒子の分離を容易にする。続いて、透過物を、ピペットチップにパッケージされた表面官能化モノリシックメソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料と接触させ、メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料全体に圧力差を加え、幾つかの小さな粒子の分離を容易にする。最後に、保持された血液タンパク質を、メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料から回収することができる。
【0078】
いくつかの実施形態では、メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料を含む少なくとも1つのメソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料又は装置が、交差流又は接線流モードで動作し、カプセル化粒子を含む液体は、材料のメソポーラス等多孔質選択部分に対して接線方向に通される。いくつかのそのような実施形態では、メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料を含む2又はそれ以上のメソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料又は装置が、カプセル化材料を含む液体の分離に用いられる。
【0079】
一実施形態では、例えば、
図8に示すように、カプセル化粒子800を含む液体を、第1メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料810に交差流モードで接触させて最初に分離され、ここで、第1保持液820は、第1供給材料830に循環して戻され、第1分離由来の第1透過液840は、第1分画液体850として回収される。次に、第1分画液体850を交差流モードで第2メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料860と接触させ、そこで第2保持液870を第2供給材料880に循環させ、第2分離由来の第2透過液890を第2分画液体895として収集する。
【0080】
一実施形態では、例えば、
図9に示されるように、カプセル化粒子900を含む液体は、第1メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料910を交差流モードで接触させて最初に分離され、第1保持液920は、第2メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料930によってさらに交差流モードで分離され、第2保持液940は、いかなる第1保持液920の供給液に循環させることができる。第1メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料910を用いて第1分離から得られた第1透過液950を、第1分画液体960として回収する。第2メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料930を用いて、第1保持液920、及び場合によっては、第2保持液940のさらなる分離から得られた第2透過液970も、分画液体980として回収される。例示的な別の実施形態では、カプセル化粒子を含む液体は、まず、クロスフローモードでメソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料によって分離され、次に、第1分離由来の保持液を、クロスフローモードで第2メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料と接触されて、さらなる分離を行う。
【0081】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのメソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料は、ジブロック共重合体を含む。
【0082】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのメソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料は、トリブロック共重合体を包含する。そのような一実施形態では、少なくとも1つのメソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料は、A-B-Aトリブロック共重合体を含む。そのような一実施形態では、少なくとも1つのメソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料は、A-B-Cトリブロック共重合体を含む。材料がメソポーラス及び等多孔質であり、少なくとも1つのブロック共重合体を含む限り、いかなるブロック構造も適当である。
【0083】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのメソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料は、テトラブロック又は高次共重合体、例えば、ペンタブロック、ヘプタブロック等を含む。材料がメソポーラス及び等多孔質であり、少なくとも1つのブロック共重合体を含む限り、いかなるブロック構造、例えば、A-B-A-B、A-B-C-A、A-B-C-B、A-B-C-D、A-B-A-C-D-E、A-B-A-B-A-B-A、A-B-C-A-B-A-C-D等が適当である。
【0084】
適当なブロック化学のいくつかの例としては、ポリ(イソブチレン)、ポリ(イソプレン)、ポリブタジエン)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(エーテルスルホン)、ポリ(スルホン)、ポリ(ヒドロキシスチレン)、ポリ(メチルスチレン)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(N,N-ジメチルアクリルアミド)、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリ(スチレンスルホネート)、ポリ(スチレン)、ポリ(エチレン)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(2-(ペルフルオロヘキシル)エチルメタクリレート)、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリ(ブミリデンフッ化物)、ポリ(ペンタフルオロスチレン)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(2-ビニルピリジン)、ポリ(4-ビニルピリジン)、ポリ(3-ビニルピリジン)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(ジメチルアミノエチルメタクリレート)、ポリ(グリシジルメタクリレート)、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(乳酸)、ポリ(アクリロニトリル)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(nーブチルアクリレート)、ポリ(アミド酸)、ポリ(イソシアネート)、ポリ(シアノアクリル酸エチル)、ポリ(アリルアミン塩酸塩)、又はその置換同等物があげられるが、これらに限定されない。
【0085】
いくつかの例では、適当なメソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料は、Mnが、約1×103~約1×107g/molであるものを含み、より高次のジブロック、トリブロック、又はマルチブロック共重合体(すなわち、テトラブロック、ペンタブロック等)を含む。ブロック共重合体の多分散指数(PDI)は分子サイズの不均一性の尺度であり,ブロック共重合体試料中のモル質量の分布を示した。それは平均モル質量(Mw)と数平均モル質量(Mn)の比である。本明細書に開示されるBCPの少なくとも1つの実施形態のPDIは、約1.0~約3.0の範囲である。
【0086】
いくつかの実施形態では、適当なメソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料は、A-B、B-A、B-A-B、A-B-A-B、B-A-B-A、又はA-B-Aの形態の構造がある少なくとも1つのジブロック共重合体又はマルチブロック共重合体を含み、ここで、A及びBは、2つの異なるタイプのブロック化学を表す。好ましい態様では、Aは親水性及び/又は水素結合ブロックであり、Bは疎水性ブロックである。適当な水素結合及び/又は親水性ブロックとしては、ポリビニルピリジン、ポリエチレンオキシド、ポリアクリル酸、ポリ(ヒドロキシスチレン)、ポリアクリレート及びポリメタクリレート、置換ポリアクリレート及び置換ポリメタクリレートが含まれるが、これらに限定されない。親水性ブロックのより具体的な例としては、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(ビニルピリジン)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、セルロース及びキトサン等の天然由来のポリマー、ポリ(エーテル)、ポリ(無水マレイン酸)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(スチレンスルホネート)、ポリ(アリルヒドロクロリド)、ポリ(スルホン)、ポリ(エーテルスルホン)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)が挙げられる。水素結合ブロックのより具体的な例としては、ポリ(ビニルピリジン)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(メタクリレート)、ポリ(メタクリレートメチル)、ポリ(メタクリレートジメチルエチルアミノエチル)、ポリ(メタクリル酸ジメチルアミノエチル)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(ヒドロキシスチレン)、ポリ(ジメチルアクリルアミド)があげられる。適当な疎水性ブロックとしては、ポリスチレン類、例えばポリスチレン、並びに、ポリ(α-メチルスチレン)、ポリプロピレン類、ポリ(塩化ビニル)、ポリブタジエン、ポリ(イソプレン)、ポリ(エチレン-stat-ブチレン)、ポリ(エチレン-alt-プロピレン)、及びポリテトラフルオロエチレン類等のポリ(アルキル置換スチレン)が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、上記の置換類似体が好適である。
【0087】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのメソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料は、複合体構造を含む。この文脈では、「複合体」ブロック構造又はポリマー構造は、少なくとも1つのブロックにおける、又はブロックに隣接する、複数のモノマー、化学、立体配置、又は構造を意味する。異なるブロック共重合体出発材料の組み合わせは、本開示の他の複合体アーキテクチャである。複合体構造の非限定的な例としては、勾配ブロック、ブロック中のモノマーの混合物、環状ブロック又は全体の環状構造、分岐ブロック、樹枝状構造、ブロック共重合体の混合物などが挙げられる。複合体であるか否かを問わず、材料がメソポーラス及び等多孔質であり、少なくとも1つのブロック共重合体を含む限り、いかなるブロック構造も適当である。
【0088】
場合によっては、本開示の様々な態様による装置は、例えば、
図10に示すような、入口1020、ブロック共重合体材料1040、及び出口190を有する平面シート1000とすることができる。
【0089】
いくつかの例では、本開示の様々な態様による装置は、例えば、入口1120、ブロック共重合体材料1140、出口1160、及びベント1180があるシリンジフィルター1100であり得る。当該装置の構成は、
図11に示されうる。
【0090】
場合によっては、本開示の様々な態様による装置は、例えば、入口1220、ブロック共重合体材料1240、出口1260、及び保持ポート1280があるクロスフローモジュール1200とすることができ、そのような装置の構成は、
図12に示すようでありうる。
【0091】
いくつかの例では、本開示装置の様々な態様による装置は、例えば、入口1320、ブロック共重合体材料1340、出口1360、及び受容容器1380があるスピンカラム1300であり得、そのような装置の構成は、
図13に示されるようなものであり得る。
【0092】
いくつかの例では、本開示の様々な態様による装置は、例えば、入口1420、ブロック共重合体材料1440、出口1460、及びベント1480があるひだ付きカプセル1400であり得る。このような装置の構成は、
図14に示すようにすることができる。
【0093】
いくつかの例では、本開示の様々な態様による装置は、例えば、入口1520、ブロック共重合体材料1540、及び出口1560、及びベント又は保持ポート1580がある螺旋巻きモジュール1500であり得、そのような装置の構成は、
図15に示されるようなものであり得る。
【0094】
いくつかの例では、本開示の様々な態様による装置は、例えば、入口1620、ブロック共重合体材料1640、及び出口1660がある中空繊維モジュール1600であり得る。このような装置の構成は、
図16に示されるようなものであり得る。
【0095】
場合によっては、装置は、例えば、入口1720、ブロック共重合体材料1740、及び出口1780があるピペットチップ1700であってもよく、そのような装置の構成は、
図17に示されるようにすることができる。
【0096】
いくつかの例では、本開示の様々な態様による装置は、例えば、入口1820、ブロック共重合体材料1840、出口1860、及び受容容器1880がある複数のウェルプレート1800であり得る;そのような装置の構成は、
図18に示されるようなものであり得る。
【0097】
いくつかの例では、装置は、例えば、入口1920、ブロック共重合体材料1940、出口1960、及びベント1980及び保持ポート1990があるクロスフローモジュール1900であってもよく、そのような装置の構成は、
図19に示すようにすることができる。
【0098】
開示例:一実施形態の例では、ブロック共重合体ポリ(イソプレン)-ブロック-ポリ(スチレン)-ブロック-ポリ(4-ビニルピリジン)を含むメソポーラス等多孔質材料を用いて、血液を含む液体を分画する。材料は、0.7cm
2の活性領域のディスクであり、断面構造が非対称であるフィルムである。最も選択的な孔がある円盤の側面の孔は直径約20nmで、これが最も選択的な部分である。この例の最も選択的な部分である膜の側面は、最初に血液を含む液体と接触する。液体は、10mM PBS緩衝液中の全血の1:6希釈である。液体はシリンジに充填され、手動で加圧される。ほとんど無色の透過物が回収される。血液成分の複数の強い紫外線-可視吸収のため、ストックと透過物を等量に希釈して紫外線-可視スペクトルを測定する。
図20は、希釈ストック(
図20A、破線)及び希釈透過物(
図20B、実線)の紫外線-可視スペクトルを示す。当該スペクトルで注目すべきことは、メソポーラス等多孔質ブロック共重合体材料の濾過時、赤血球及びそれらの可視吸収化合物を含む全ての吸収性化学種、ならびに280nmでのタンパク質吸収をほぼ完全に除去することである。透過物中の残留可視吸収種(約400nm)の最大吸収量は、希釈全血ストックに対する吸収極大の1%未満であり、非常に少量の赤血球細胞溶解に起因し、着色化合物を放出させる。
図21に示すように、希釈全血(
図21A、左)は全体を通して血球を示し、一方、非希釈透過物(
図21B、右)は赤血球を示さず、無色である。溶血が顕著な場合、例えば、血液を急速凍結させると、たとえ無傷の赤血球が観察されなくても、液体は光学顕微鏡下で明るい赤色に見え、画像は
図21Bで観察されたものよりもはるかに暗い。加圧にもかかわらず溶血がごくわずかであることは驚くべきことであり、現在の血液濾過器を超える利点がある。供給原料を加圧して圧力差を可能にすること、又は関連して、出口で真空を印加して、ホールドアップ体積が最小となりえ及び処理速度が最大になりえ、生産能及び分画歩留まりが高まる。
【表2】
【表3】