(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】パルプ製造における空気ディフューザ用の洗浄ノズル組立体
(51)【国際特許分類】
D21C 9/04 20060101AFI20240528BHJP
B05B 1/04 20060101ALI20240528BHJP
B05B 1/14 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
D21C9/04
B05B1/04
B05B1/14 Z
(21)【出願番号】P 2020568261
(86)(22)【出願日】2019-06-07
(86)【国際出願番号】 FI2019050445
(87)【国際公開番号】W WO2019234306
(87)【国際公開日】2019-12-12
【審査請求日】2022-03-28
(32)【優先日】2018-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】520102646
【氏名又は名称】アンドリッツ オサケ ユキチュア
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トローネン、パーボ
【審査官】山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】特表平09-508181(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0179745(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0034733(US,A1)
【文献】特表平09-503029(JP,A)
【文献】特開平02-175985(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21C
B05B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース・パルプを洗浄するための空気ディフューザの洗浄液導入ノズル組立体であって、前記組立体は細長いノズルを備え、前記ノズルの壁は、前記ノズルから液体を送達するためのオリフィス・プレートを備えるオリフィス組立体が配置されている、細長い開口部を有する、洗浄液導入ノズル組立体。
【請求項2】
前記オリフィス・プレートは、前記ノズルからパルプ内に所定の流量の前記洗浄液を導入するための開口面積を有する、請求項1に記載の洗浄
液導入ノズル組立体。
【請求項3】
前記ノズルは前記ノズルの壁に、前記オリフィス・プレートを固定するための溝を有する、請求項1又は2に記載の洗浄
液導入ノズル組立体。
【請求項4】
前記オリフィス組立体は、5~35mmの直径を有する複数の穴と、リップ型逆止デバイスと、を有するオリフィス・プレートを備える、請求項1、2、又は3に記載の洗浄
液導入ノズル組立体。
【請求項5】
前記オリフィス組立体は、8~20mmの直径を有する複数の穴と、リップ型逆止デバイスと、を有するオリフィス・プレートを備える、請求項1、2、3又は4に記載の洗浄
液導入ノズル組立体。
【請求項6】
前記オリフィス組立体は、必要とされる洗浄流用の1つ又は複数のスロットと、リップ型逆止デバイスと、を有するオリフィス・プレートを備える、請求項1、2、又は3に記載の洗浄
液導入ノズル組立体。
【請求項7】
前記オリフィス・プレートは、0.4~5mmの直径を有する複数の穴を有する穿孔プレートで形成されている、請求項1、2、又は3に記載の洗浄
液導入ノズル組立体。
【請求項8】
前記オリフィス・プレートは、1~2mmの直径を有する複数の穴を有する穿孔プレートで形成されている、請求項1、2、3又は7に記載の洗浄
液導入ノズル組立体。
【請求項9】
前記オリフィス組立体は複数の逆止弁を有するオリフィス・プレートを備える、請求項1、2、又は3に記載の洗浄
液導入ノズル組立体。
【請求項10】
前記ノズルは前縁、後縁、及び側縁を有し、前記オリフィス・プレートは前記ノズルの前記後縁に位置付けられている、請求項1から9までのいずれか一項に記載の洗浄
液導入ノズル組立体。
【請求項11】
前記ノズルは前縁、後縁、及び側縁を有し、前記オリフィス・プレートは前記ノズルの前記前縁に位置付けられている、請求項1から9までのいずれか一項に記載の洗浄
液導入ノズル組立体。
【請求項12】
前記ノズルは前縁、後縁、及び側縁を有し、前記オリフィス・プレートは前記ノズルの前記側縁に位置付けられている、請求項1から9までのいずれか一項に記載の洗浄
液導入ノズル組立体。
【請求項13】
前記ノズルは前記空気ディフューザの任意の洗浄段用のノズルである、請求項1から12までのいずれか一項に記載の洗浄
液導入ノズル組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルプ工場での化学セルロース・パルプの製造においてセルロース・パルプを洗浄するための、空気ディフューザ洗浄機における、洗浄ノズル組立体に関する。本発明に係る洗浄ノズル組立体は、ブラウン・ストックの洗浄、酸素脱リグニン、及びパルプ漂白に使用される、あらゆるタイプの空気ディフューザに適用できる。
【背景技術】
【0002】
以下の説明では、連続蒸解缶に後続する、2段式のブラウン・ストック空気ディフューザを想定している。蒸解缶の圧力を使用して、パルプをブロー・ラインを通して2段式拡散洗浄機内へとブローする。ディフューザ・タンクの円錐形セクションは、上昇するストックをディフューザにわたって均等に分配できるように設計されている。ディフューザ・タンクの内部には、共通の垂直軸線を中心として同心のスクリーン・リングが配置されている。スクリーン・リングの下側の列は第1の洗浄段を形成し、上側の列は第2の段を構成する。各洗浄段は、等間隔に置かれたスクリーン・リングから成る。各スクリーン・リング間には1~2個の洗浄ノズルが存在し、これらは回転して、洗浄水又は洗浄溶液をスクリーン・リング同士の間にあるパルプ内へと供給する。各スクリーン・リングは、約50~60mm離間させた2つのスクリーン・プレートから成る。
【0003】
1列あたりのリングの数及びそれらの高さは、ディフューザの設計製作及びストック排出特性に応じて決まる。第1の段と第2の段の間に位置付けられた3本、4本、又は6本のアームが、スクリーン組立体を支持し、スクリーンから抽出されたろ液を輸送する役割を果たす。
【0004】
これらのアームはディフューザの中心からタンクの外壁まで放射状に延び、そこにおいて液圧シリンダに結合されている垂直方向のタイ・ロッドで支持される。これらのシリンダによって、スクリーン組立体に垂直方向のストローク・サイクルが与えられる。上昇ストロークの速さは、パルプ塊の上昇流速度よりも僅かに速くなるように調節される。ディフューザは、そのストロークの頂点にしばらくの間保持され、その後、繊維からスクリーンを清掃するために、急速に下降ストロークする(約1秒)。この頂部での遅延及び下降ストロークの間、抽出流は遮断され洗浄流は減少する。
【0005】
濃度約10%のパルプがスクリーン・リング同士の間を上向きに流れる際に、清浄な洗浄ろ液がそれよりも汚れたろ液を置換し、このろ液はスクリーン及びアームを通してろ液タンクへと抽出される。第1の段の抽出された溶液は、コールド・ブロー・ポンプ又は先行する段の洗浄機へと圧送される。第2の段の抽出されたろ液はディフューザに戻され、第1の段の洗浄ろ液として使用される。第2の段での洗浄には、加熱された洗浄水(デッカーろ液、エバポレータ凝縮液、等)が使用される。各段の洗浄ろ液/水は、洗浄ノズルの後縁にある広いスロットを通ってディフューザに入る。第1の段及び第2の段の洗浄ノズルは、中空の中央シャフトと共に、スクリーン・リング同士の中心に位置する円形の経路内で回転する。スクリーン・リングが作り出したパルプ・セグメントの各々への、洗浄ろ液の流量は、洗浄ノズル内のオリフィス・プレートによって制御され、各リング同士の間のパルプの体積に比例する。第1の段の洗浄ノズルは、スクリーン・リングの下方に位置付けられた共通のアーム上に装着されている。このアームは中央シャフトに取り付けられている。中央シャフトは、洗浄ろ液を第1の段及び第2の段の両方へと輸送する役割を果たす。第2の段の洗浄ノズルは、スクリーン・リングの上方の頂部スクレーパ組立体に取り付けられている。
【0006】
既存の洗浄ノズルに関する典型的な問題は以下の通りである。
【0007】
(i)ディフューザ・タンクから来てノズルに逆向きに進入する繊維によって、詰まった状態になる傾向。ノズルを通る洗浄ろ液の流速はかなり低く、繊維を遠ざけておくことができない。特に下側の洗浄ノズル(第1の洗浄段)は詰まりを起こし易い。これは、重力と、ノズルとノズル・アームの間にオリフィス・プレートが位置することとによる。この場合、洗浄ろ液の流れによってノズルへのパルプの進入を防止できなければ、これを妨げるものは何もない。詰まったノズルは十分な量の洗浄水を供給及び分配することができず、したがってディフューザの洗浄効率は著しく低下する。通常は、最も詰まりを起こし易いのは一番外側のノズルである。これは、回転するノズルが高速であり、水流がこのとき低速であればパルプがノズル内に吸い込まれる結果であり得る。下側のノズルが詰まる傾向は、ディフューザ・タンクは空になっていないが洗浄ろ液の供給が止まっている、短時間の供給停止の間にも観察される。
【0008】
(ii)既存の洗浄ノズルは、その構造に起因して、洗浄液を分配する能力が限定されている。
【0009】
(iii)詰まったノズルの洗浄作業は困難且つ時間がかかり、ディフューザのダウンタイムを延ばしその可用性を低下させる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
空気ディフューザ用の新規な洗浄ノズル組立体は、パルプ繊維がディフューザ・タンクからノズル内に入るのを防止するように開発されている。これは、ろ液又は水の所望の流量を調節するためのオリフィスが、ノズルからパルプ内へと洗浄液が放出されるまさにその箇所に、好ましくはノズルの後縁に位置付けられるように、配置されている。オリフィス・プレート/オリフィス組立体はまた、洗浄液をパルプ塊中に直接放出するように、ノズル上のそれ以外の場所に位置付けられてもよい。
【0011】
本発明に係るノズル組立体は、独立請求項の特徴によって特徴付けられる。
【0012】
液体がスクリーン・ユニット及びスクリーン領域の全高に分散され得るため、この新しいタイプのノズルによってパルプ内への洗浄液分配がこれまでよりも著しく均等になり、この結果、置換がより効率的になる。このことは洗浄結果の改善を意味する。
【0013】
空気ディフューザの洗浄段は、等間隔に置かれ共通の垂直軸線を中心に配置された、スクリーン・リングから成る。洗浄ノズルはスクリーン・リング同士の間に配置されており、ノズルはスクリーン・リング同士の間にあるパルプ内に洗浄液を均等に供給するようになっている。ノズルの断面は典型的には、垂直方向に細長い長楕円形である。このノズルは垂直方向に細長い出口開口部を有し、そこにはオリフィス・プレート又はオリフィス組立体が設けられている。ノズル壁の開口した縁部には、オリフィス・プレートをノズル本体に配設する又は取り付けるための、垂直方向の溝が設けられている。
【0014】
垂直方向に細長いノズル本体は、第1の端部と第2の端部とを有する。第1の端部には、ノズルをディフューザ槽内のノズル・アームに取り付けるための、プレート状の延長部が設けられている。第1の端部は、ノズル・アームからノズル内部へと洗浄液を導くことができるように、開口している。オリフィス・プレートを備えた細長い開口部は、第1の端部からある距離のところで始まり、第2の端部まで延在し得る。細長い開口部の長さは、必要とされる液体流量に応じて決まる。
【0015】
ノズルは回転する方向に移動し、したがって、前縁、後縁、及び側縁を有する。オリフィス・プレート/オリフィス組立体は、好ましくは後縁に位置付けられる。これはまた前縁に位置付けられてもよいが、その場合、ノズルに対向して流れるパルプがノズルからの液体の流出を妨げないように、前縁の手前に遮蔽要素が必要になる。遮蔽要素はV形状のプレートであり得る。別法として、オリフィス・プレート/オリフィス組立体はノズルの側縁に位置付けられてもよいが、この場合、遮蔽要素も必要に成る場合がある。
【0016】
洗浄ノズル組立体は典型的には、ノズルと、リップ型逆止デバイスであり得る逆止デバイスを有しても有さなくてもよい、オリフィス・プレートと、を備える。1対のリップがオリフィスからパルプ内へと洗浄液の流れを放出するが、これは、洗浄水又は洗浄ろ液の圧力によってリップが開かれることによる。1対のリップはリップの可撓性に起因して、洗浄流が停止すると直ちに閉じられ、このことによりパルプがノズルに進入するのを防止する。
【0017】
オリフィスは好ましくは、必要とされる流量にとって十分な開口面積を作り出すと共にこの小さい穴に起因してパルプ繊維がノズルに進入するのを防止する小さい穴を有する、穿孔プレート、又は、5~30ミリメートル(mm)、好ましくは8~20mmの直径を有する、流量の調節のための特定数の穴と、繊維がノズルに進入するのを防止するためのリップ型逆止デバイスと、を有する、オリフィス・プレート、のいずれかである。穴のサイズ及び数は、所望の洗浄液流量に必要な開口面積に応じて決まる。
【0018】
穿孔プレートは、0.4~5mm、典型的には1~2mmの直径を有する、複数の小さい穴を有する。パルプは、液体の流出がなければ穿孔プレート上にマットを作り出す。この結果、ノズルへの繊維の進入が防止される。
【0019】
オリフィス組立体は、相補的な形状の可撓性の不浸透性部材を備える、逆止デバイスを更に含み得る。典型的には、逆止デバイスは、向かい合って表面接触して配設されている1対のリップで形成され、パルプ内に洗浄液が導入されないときは貫通経路が存在しないようになっている。流入する液体がリップを分離させ、ノズルからオリフィス・プレートの穴を通ってパルプに至るそれらの間の流れを可能にすることになる。リップ同士の間の閉じた表面接触によって反対方向の流れが防止される。この結果、互いに接触するリップによって、それらの間を通って穴及びノズルの内部に向かう繊維の流れは妨げられるが、パルプに入る液体は、リップを分離させ、それらの間を流れることができる。
【0020】
リップは典型的には硬化ステンレス鋼の薄いプレートで製作され、ねじ又は対応する固止手段でオリフィス・プレートに固定される。リップはまた、プラスチック又は別の可撓性の材料で製作されてもよい。
【0021】
オリフィス・プレートは、特定の洗浄液流量にとって十分なサイズを有する、1つ又は複数のスロットを有してもよい。
【0022】
洗浄ノズルはまた、オリフィス・プレートに取り付けられた複数の逆止弁を備えるオリフィス組立体を有してもよく、この弁は繊維がノズルに進入するのを防止する。逆止弁は市販の製品であっても、この新しいノズル用に用意されたものであってもよい。
【0023】
洗浄ノズル壁は、オリフィス・プレート/オリフィス組立体用の、典型的には2つの、好ましくは垂直方向の溝と、前記プレート/組立体を所定位置に維持するための、ロック用プレート及びねじと、を有する。この新しい洗浄ノズル組立体によってより良好な洗浄結果が得られるが、その理由は、洗浄液がパルプへとより均等に分配され、汚れた溶液の置換が改善されるからである。
【0024】
この新しい洗浄ノズル組立体は、ノズルの清掃及び交換時間を2つの点で大きく低減する。第1に、ディフューザ・タンクからのパルプによってノズルが詰まる可能性がないので、ノズルが長時間清浄に保たれる。第2に、オリフィス・プレート/オリフィス組立体はノズル本体から取り外し可能であり、したがってノズルから引き出すのが用意である。この結果、重いノズル全体を取り外すことなく、ノズルの可能な清掃を行うことができる。これらは必要なダウンタイムを減少させる大きな利点である。
【0025】
この新しい洗浄ノズルはディフューザ洗浄機の全ての段において同様であり、下側及び上側のノズルとして機能する。これを1段式ディフューザとして使用することもできる。
【0026】
この新しい洗浄ノズル組立体は、既存のノズルと交換することで、何ら変更することなくあらゆるタイプの既存のノズル・アームに対して設置可能である。
【0027】
ノズルは空気ディフューザ内に配置されており、空気ディフューザは典型的には、垂直な中央シャフトを有する略直立した槽と、垂直な中央シャフトと同心に装着されている複数の環状スクリーンと、スクリーンから垂直方向に離されて装着されているアーム組立体と、を備える。アーム組立体は中央シャフトに接続され、このシャフトによって回転する。垂直方向に細長いノズルは、アーム組立体に接続されている。ノズルはシャフトによってスクリーン同士の間で回転方向に移動され、洗浄液をスクリーン同士の間のパルプ内に導入する。
【0028】
以下では添付の図面を参照して本発明について更に詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】新しいノズル組立体を適用可能な、従来技術のノズル組立体を有する2段式空気ディフューザの側面図である。
【
図2】新しいノズル組立体を適用可能な、2段式空気ディフューザのスクリーン及び従来技術のノズル組立体を示す詳細斜視図である。
【
図3】従来技術の下側洗浄ノズルの実施例を示す図である。
【
図4】従来技術の上側洗浄ノズルの実施例を示す図である。
【
図5】従来技術のオリフィス・プレートを示す図である。
【
図6】オリフィス・プレートがノズルとノズル・アームの間に位置付けられている、ノズル・アーム内に設置された知られている下側洗浄ノズル組立体を示す図である。
【
図7】オリフィス・プレートとリップ型逆止デバイスとオリフィス組立体用の溝とを有する、新しい洗浄ノズルの好ましい実施例を示す図である。
【
図8】オリフィス・プレートとリップ型逆止デバイスとオリフィス組立体用の溝とを有する、新しい洗浄ノズルの好ましい実施例を示す図である。
【
図9】途中まで引き出された新しい洗浄ノズルのオリフィス/リップ組立体の実施例を示す図である。
【
図10】新しい洗浄ノズルのオリフィス/リップ組立体並びにオリフィスの穴及びリップの封止部を通したパルプへの洗浄液の分配の、詳細断面図である。
【
図11】新しい洗浄ノズルのオリフィス/リップ組立体の断面図である。
【
図12】穿孔されたオリフィス・プレートを有する新しい洗浄ノズルの実施例を示す図である。
【
図13】逆止弁オリフィス・プレート組立体を有する新しい洗浄ノズルの実施例を示す図である。
【
図14】逆止弁オリフィス・プレート組立体を有する新しい洗浄ノズルの実施例を示す図である。
【
図15】知られている洗浄ノズル組立体と新しい洗浄ノズル組立体の洗浄液分配の比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、本発明を適用可能な例示的な空気ディフューザを示す。ディフューザは全体に参照符号1で示されている。ディフューザ1の従来の構成要素は、底部にパルプ入口3を及び頂部にパルプ出口4を有する、略直立した槽を含む。槽内には、槽の中央垂直軸線を画定する中央シャフト9から放射方向外向きに延在する、抽出アーム17(
図2)が装着されている。シャフトの端部は従来型の駆動装置15に接続されている。抽出アームからの置換されたろ液の出口は、7及び8に設けられている。第1の出口7は第2の段のろ液用であり、第2の出口8は第1の段のろ液用である。抽出アーム17の上下の往復運動を行わせるために、液圧シリンダ14、又は類似の機構が設けられている。この往復運動は本質的には、パルプ流の移動の方向19においてはパルプの流速で、またパルプ流の方向とは反対方向においては遥かに高い速さで行われる、これは従来通りである。参照番号18で逆流タンクが、及び参照番号16でろ液タンクが、示されている。
【0031】
抽出アーム17上には複数の環状スクリーンが、例えば、アーム17から上向き及び下向きに延在する第1及び第2のスクリーン2(
図1及び
図2)が、装着されている。スクリーン2の上方には上側のアーム組立体10が配設されている。アーム組立体10が接続されているシャフト9は、駆動端部に接続されたモータによって、アーム組立体10が
図2において矢印19で示す第1の回転方向に回転するように駆動される。アーム組立体10には複数の処理流体導入ノズル11が接続されており、これらは垂直方向に細長く、スクリーン2同士の間に配設されている。ノズル11の断面22(
図4を参照)は典型的には長楕円形であり、アーム組立体10から離れたその第2の端部において、典型的にはノズル11が回転方向19に移動する際に後縁となるノズル11の面に、少なくとも1つの流量導入開口部23を画定する手段を有する。
【0032】
洗浄液はシャフト9の内部を回転するアーム10まで延在する導管5(
図1)からノズル11に供給されるが、この処理液-典型的には洗浄液又は漂白液-は、アーム組立体10を通りその後ノズル11へと流れ、矢印5’が示すように開口部を通して導入されることになる。
【0033】
図1及び
図2に示す2段式ディフューザが提供される場合、第2の洗浄流体を導入するための第2の導管6が少なくとも設けられ、この液体はシャフト9内の導管を通って、液体ノズル13が装着されているアーム組立体12へと流れる。洗浄液6’を導入するためのノズル13は、下部の環状スクリーン2の組と下側のスクリーン2の下方に位置付けられているアーム12との間に配設されている。第1の段の洗浄ノズル11及び第2の段の洗浄ノズル13は、中空の中央シャフト9と共に、スクリーン・リング同士の中心に位置する円形の経路内で回転する。
【0034】
第2の段での洗浄には、加熱された洗浄水(ろ液、エバポレータ凝縮液、等)が使用される。各段の洗浄ろ液/水は、洗浄ノズル11、13(
図2)の後縁にある広いスロット20を通ってディフューザに入る。スクリーン・リングが作り出したパルプ・セグメントの各々への、洗浄ろ液の流量は、洗浄ノズル内のオリフィス・プレートによって制御され、各リング同士の間のパルプの体積に比例する。
【0035】
図3~
図5は、知られているノズルの詳細を示す。
図3に示すように、下側のノズル13の断面22(
図3)は、細長い長楕円形である。ノズルは第1の端部13aと第2の端部13bとを有する。矢印5’が示すように、洗浄液は第1の端部を通ってノズルに流入し、第1の端部及び第2の端部から距離を置いて位置付けられているスロット24を通って、ノズルから排出される。
図4は、同じくその断面が細長い長楕円形である、上側のノズル11を示し、これは第1の端部と第2の端部とを有する。洗浄液は、矢印6’が示すように、第1の端部を通ってノズルへと流入し、第2の端部に位置付けられていスロット23を通って排出される。ノズルは、ノズルとアームの間にオリフィス・プレート25が存在するように、ノズル・アームに取り付けられている。
図5に示すように、オリフィス・プレート25は穴26を有し、この断面積は、ノズルを通過する所望の液体流量との関連において事前に決定される。このようにして、液体の流量が調節される。
図6は、下側のノズル13をアーム12に取り付ける方法を示す。オリフィス・プレート25はノズル13とアーム12の間に位置付けられており、このアームにノズルが取り付けられることになる。洗浄液6’はアーム12からオリフィス・プレートの穴を通ってノズル13へと流れる。ノズルの第1の端部には、取り付け用のプレート状の延長部21が設けられている(
図3、
図4、及び
図6)。上側のノズル11は、対応する方法でアーム10に接続されている。
【0036】
知られている洗浄ノズルに関する問題は、それらが、ディフューザ・タンクから来てノズルに逆向きに進入する繊維によって、詰まった状態になる傾向を有することである。このことは、
図7~
図16に示す本発明に係るノズルを使用することによって回避できる。これらの図は2段式ディフューザの下側のノズルを示しているが、上側のノズルは同じ構成を有し得る。ノズル27の断面は細長い長楕円形である。ノズル27は垂直方向に細長い開口部38を有し、開口部38には、洗浄液をパルプ内へと導入するための複数の穴を有する、オリフィス・プレート28が設けられている。穴の直径は5~35ミリメートル(mm)、好ましくは8~20mmである。穴のサイズ及び数は、所望の洗浄液流量に必要な開口面積に応じて決まる。オリフィス組立体は、相補的な形状の可撓性の不浸透性部材を備える、逆止デバイス30を更に含む。典型的には、逆止デバイスは、向かい合って表面接触して配設されている1対のリップで形成され、パルプ内に洗浄液が導入されないときは貫通経路が存在しないようになっている。流入する液体がリップ35(
図10及び
図11)を分離させ、ノズルからオリフィス・プレートの穴を通ってパルプに至るそれらの間の流れを可能にすることになる。リップ同士の間の閉じた表面接触によって反対方向の流れが防止される。この結果、互いに接触するリップによって、それらの間を通って穴及びノズルの内部に向かう繊維の流れは妨げられるが、パルプに入る液体は、リップを分離させ、それらの間を流れることができる。
【0037】
ノズル壁の開口した縁部には、オリフィス・プレート28をノズル本体27に配設する又は取り付けるための、垂直方向の溝34が設けられている(
図8)。リップ30は、ねじ29又は対応する固止手段で、オリフィス・プレートに取り付けられている。オリフィス・プレート組立体は、ロック用プレート31及びロック用ねじ32によって、所定位置にロックされる。
【0038】
ノズル本体27は、第1の端部27aと第2の端部27bとを有する。第1の端部には、ノズルをノズル・アーム、例えば
図1のアーム12に取り付けるための、プレート状の延長部が設けられている。第1の端部は、ノズル・アームからノズル内部へと洗浄液を導くために開口している。オリフィス・プレート28を備えた細長い開口部38は、第1の端部27aからある距離のところで始まり、第2の端部27bまで延在する。細長い開口部の長さは、必要とされる液体流量によっては、より短くてもよい。
【0039】
図9は、途中まで引き出されたときのオリフィス・プレート/リップ組立体を示す。リップを有しても有さなくてもよいオリフィス・プレートは、それらを清掃又は新しいものと交換する何らかの必要があれば、ノズルから簡単に取り外すことができる。
【0040】
図10は、ノズルの後縁におけるオリフィス・プレート/リップ組立体の上面図を示す。オリフィス・プレートは、ノズル本体27の壁にある溝の中に配設されている。洗浄液は矢印33で示すように、オリフィス・プレートの穴28を通り、更には2つの互いに対向するリップ35の間から流れる。このようにして、
図7に示すように、洗浄液はノズルの長さに沿ってパルプに均等に導入される。
【0041】
図11は、オリフィス組立体28、35がノズル27の前縁に位置付けられている実施例を示す。ノズルには、V形状のプレート40である遮蔽要素が設けられている。これは、プレートとノズルの間に間隙が存在するように、ノズルに取り付けられている。洗浄液は、矢印33’で示すように、ノズルから間隙を通ってパルプ内へと流れる。遮蔽要素は、ノズルに対向して流れるパルプがノズルからの液体の流出を妨げないように、前縁の手前において必要であり得る。
【0042】
図12は、新しいノズルの別の実施例を示す。オリフィス・プレートは穿孔プレート36である。プレートの穴は
図7~
図11の実施例の場合よりも小さく、それらの直径は0.4~5mm、典型的には1~2mmであるが、所望の流量にとって十分な開口面積を作り出す。そのような小さい穴は、パルプ繊維がノズルに進入するのを防止する。
【0043】
図13及び
図14は、新しいノズル27の更に別の実施例を示す。オリフィス・プレートには複数の逆止弁37が設けられており、これらは洗浄液が一方向にのみ流れることを可能にする。このようにして、パルプ繊維が引き起こす何らかの詰まりが防止され得る。
【0044】
図15は、従来技術のノズル13及び新しいノズル27を使用することによる、ディフューザ・スクリーン2への洗浄液の分配を示す。新しいノズルは、スクリーン高さ39及びスクリーン面積に沿って洗浄液33をより均等に分配するが、知られているノズルは、洗浄液をより小さい面積に分配することしかできない。この新しいタイプのノズルによってパルプへの洗浄液分配がこれまでよりも著しく均等になり、この結果、パルプの置換洗浄がより効率的になる。このことにより洗浄結果が改善される。