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特許7495372インピーダンス算出装置及び電池管理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】インピーダンス算出装置及び電池管理システム
(51)【国際特許分類】
   G01R 27/02 20060101AFI20240528BHJP
   G01R 31/389 20190101ALI20240528BHJP
   G01R 31/382 20190101ALI20240528BHJP
   G01R 31/385 20190101ALI20240528BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240528BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
G01R27/02 A
G01R31/389
G01R31/382
G01R31/385
H01M10/48 P
H01M10/48 301
H01M10/44 P
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021063473
(22)【出願日】2021-04-02
(65)【公開番号】P2022158510
(43)【公開日】2022-10-17
【審査請求日】2023-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】堀 哲也
(72)【発明者】
【氏名】北川 昌明
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-65832(JP,A)
【文献】国際公開第2021/045172(WO,A1)
【文献】特開2021-22473(JP,A)
【文献】国際公開第2019/215786(WO,A1)
【文献】特開2018-159586(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 27/02
G01R 31/36
H01M 10/48
H01M 10/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池(40)を備える電源システム(10)に適用され、所定のインピーダンス算出期間において、前記蓄電池に交流信号を印加して前記蓄電池のインピーダンス(Z)を算出するインピーダンス算出装置(60,81)であって、
前記インピーダンス算出期間とは異なる誤差算出期間に、前記蓄電池のインピーダンスの実数成分と虚数成分との少なくとも一方が規定値となる規定周波数(Ftg1)の前記交流信号を印加して、前記蓄電池のインピーダンス誤差を算出する誤差算出部と、
前記インピーダンス算出期間に、前記蓄電池のインピーダンスを算出するインピーダンス算出部と、
前記インピーダンス誤差に基づいて、前記インピーダンス算出部により算出された前記蓄電池のインピーダンスを補正する補正部と、を備えるインピーダンス算出装置。
【請求項2】
前記規定周波数は、前記蓄電池のオーミック抵抗(RH)を算出するオーミック周波数(Ftg1)であり、
前記誤差算出部は、前記インピーダンス誤差として、前記オーミック周波数の前記交流信号を印加して算出された前記蓄電池のインピーダンスにおける虚数成分を前記規定周波数に対応する規定角周波数で割った値である誤差パラメータ(Σm)を算出し、
前記補正部は、前記誤差パラメータに基づいて、前記インピーダンス算出部により算出された前記蓄電池のインピーダンスを補正する請求項1に記載のインピーダンス算出装置。
【請求項3】
前記蓄電池の温度、前記蓄電池のSOC、及び前記蓄電池への圧力の少なくとも1つの電池パラメータを取得するパラメータ取得部を備え、
前記誤差算出部は、前記パラメータ取得部により取得された前記電池パラメータに基づいて前記規定周波数を設定し、設定された前記規定周波数の前記交流信号を印加して前記インピーダンス誤差を算出する請求項1または2に記載のインピーダンス算出装置。
【請求項4】
前記蓄電池は、インバータ(30)を介して回転電機(20)との間で電力の入出力を行うものであり、
前記インバータと前記蓄電池との間の経路を開放又は閉鎖する負荷側スイッチ(SW1,SW2)を備え、
前記誤差算出部は、前記負荷側スイッチの開放期間に前記インピーダンス誤差を算出する請求項1から3までのいずれか一項に記載のインピーダンス算出装置。
【請求項5】
前記インピーダンス算出部は、前記負荷側スイッチの開放期間に前記蓄電池のインピーダンスを算出する請求項4に記載のインピーダンス算出装置。
【請求項6】
前記蓄電池は、インバータ(30)を介して回転電機(20)との間で電力の入出力を行うものであり、
前記インバータと前記蓄電池との間の経路を開放又は閉鎖する負荷側スイッチ(SW1,SW2)を備え、
前記誤差算出部は、前記負荷側スイッチの閉鎖期間に、前記蓄電池と前記回転電機との間に流れる前記蓄電池の充放電電流を用いて前記インピーダンス誤差を算出する請求項1から3までのいずれか一項に記載のインピーダンス算出装置。
【請求項7】
前記インピーダンス算出部は、前記負荷側スイッチの閉鎖期間に前記蓄電池のインピーダンスを算出する請求項6に記載のインピーダンス算出装置。
【請求項8】
前記蓄電池は、インバータ(30)を介して回転電機(20)との間で電力の入出力を行うとともに、前記電源システム外部の充電器により充電可能とされており、
前記インバータと前記蓄電池との間の経路を開放又は閉鎖する負荷側スイッチ(SW1,SW2)と、
前記充電器が接続される接続端子(TC1,TC2)と前記蓄電池との間の経路を開放又は閉鎖する充電器側スイッチ(SW3,SW4)と、を備え、
前記誤差算出部は、前記負荷側スイッチの開放期間であって、かつ前記充電器側スイッチの閉鎖期間に、前記充電器から前記蓄電池に流れる前記蓄電池の充電電流を用いて前記インピーダンス誤差を算出する請求項1から3までのいずれか一項に記載のインピーダンス算出装置。
【請求項9】
前記インピーダンス算出部は、前記負荷側スイッチの開放期間であって、かつ前記充電器側スイッチの閉鎖期間に前記蓄電池のインピーダンスを算出する請求項8に記載のインピーダンス算出装置。
【請求項10】
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載のインピーダンス算出装置(81)を含み、前記蓄電池を充電する充電器(80)と、
外部装置(91)と、
を備える電池管理システム(100)であって、
前記インピーダンス算出装置は、前記外部装置との間で、前記補正部により補正された前記蓄電池のインピーダンスを含む電池情報を受送信する通信部(84)を備え、
前記外部装置は、前記電池情報を、前記蓄電池を識別する識別情報に関連付けて記憶する、電池管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電池のインピーダンスを算出するインピーダンス算出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蓄電池の状態を監視する装置として、蓄電池のインピーダンスを用いるものが知られている。この装置では、蓄電池に交流信号を印加し、その状態で蓄電池のインピーダンスを算出する。そして、算出されたインピーダンスに基づいて蓄電池の劣化など、蓄電池の状態を監視する。
【0003】
この装置では、蓄電池のインピーダンスを算出する際に蓄電池に交流信号を印加するため、蓄電池に交流信号を印加する電気経路に電流が流れ、その電流によって磁束が発生する。この磁束により蓄電池を含む電圧応答検出回路に誘導起電力が発生すると、インピーダンスの算出精度が低下する。誘導起電力によるインピーダンスの算出精度の低下を抑制する技術として、4端子法を用いたものが知られている(例えば、特許文献1)。この技術では、第1,第2の測定対象物の抵抗値を算出する場合に、第1の測定対象物に第1の直流電流を供給する第1の電気経路と、第2の測定対象物に第2の直流電流を供給する第2の電気経路とを並置する。そして、第1,第2の電気経路に、互いに逆極性で大きさが等しい第1,第2の直流電流を同時に流通させる。これにより、第1,第2の直流電流の過渡的状態に起因して第1,第2の測定対象物に発生する磁束を互いに打ち消すことができ、各電気経路に誘導起電力が発生しないようにすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-2199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記技術では、電気経路の配置や電気経路に流れる直流電流に対する制約が大きく、使用できる装置に制限が生じる等の不都合が生じる。蓄電池のインピーダンスを算出する技術については、未だ改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、蓄電池のインピーダンスを精度よく算出できるインピーダンス算出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための第1の手段は、蓄電池を備える電源システムに適用され、所定のインピーダンス算出期間において、前記蓄電池に交流信号を印加して前記蓄電池のインピーダンスを算出するインピーダンス算出装置であって、前記インピーダンス算出期間とは異なる誤差算出期間に、前記蓄電池のインピーダンスの実数成分と虚数成分との少なくとも一方が規定値となる規定周波数の前記交流信号を印加して、前記蓄電池のインピーダンス誤差を算出する誤差算出部と、前記インピーダンス算出期間に、前記蓄電池のインピーダンスを算出するインピーダンス算出部と、前記インピーダンス誤差に基づいて、前記インピーダンス算出部により算出された前記蓄電池のインピーダンスを補正する補正部と、を備える。
【0008】
蓄電池のインピーダンスを算出するインピーダンス算出装置では、蓄電池に交流信号を印加して蓄電池のインピーダンスを算出する処理が実施される。この場合、例えば蓄電池に交流信号を印加する電気経路を流れる電流により発生した磁束により蓄電池を含む応答信号検出回路に誘導起電力が発生すると、インピーダンスの算出精度が低下する。
【0009】
その点、上記構成では、誤差算出期間に、蓄電池のインピーダンスの実数成分と虚数成分との少なくとも一方が規定値となる規定周波数の交流信号を蓄電池に印加して蓄電池のインピーダンス誤差を算出する。つまり、規定周波数の交流信号を印加して算出されたインピーダンスの実数成分及び虚数成分の少なくとも一方と規定値との間に差分が生じていれば、その差分により誘導起電力によるインピーダンス誤差を算出することができる。そして、誤差算出期間と異なるインピーダンス算出期間に蓄電池のインピーダンスを算出した場合には、このインピーダンス誤差に基づいて蓄電池のインピーダンスを補正するようにした。これにより、誘導起電力の影響を抑制して蓄電池のインピーダンスを精度よく算出することができる。
【0010】
第2の手段では、前記規定周波数は、前記蓄電池のオーミック抵抗を算出するオーミック周波数であり、前記誤差算出部は、前記インピーダンス誤差として、前記オーミック周波数の前記交流信号を印加して算出された前記蓄電池のインピーダンスにおける虚数成分を前記規定周波数に対応する規定角周波数で割った値である誤差パラメータを算出し、前記補正部は、前記誤差パラメータに基づいて、前記インピーダンス算出部により算出された前記蓄電池のインピーダンスを補正する。
【0011】
蓄電池を含む電圧変動回路に規定誤差以上の影響を与える誘導起電力が発生していない場合、オーミック周波数の交流信号を蓄電池に印加して算出されるインピーダンスの実数成分がオーミック抵抗となり、虚数成分がゼロとなる。上記構成では、インピーダンス誤差を算出する場合に、オーミック周波数の交流信号を蓄電池に印加するようにした。そのため、算出されたインピーダンスの虚数成分がゼロでなければ、その虚数成分を用いて誤差パラメータを算出することができる。
【0012】
第3の手段では、前記蓄電池の温度、前記蓄電池のSOC(State Of Charge)、及び前記蓄電池への圧力の少なくとも1つの電池パラメータを取得するパラメータ取得部を備え、前記誤差算出部は、前記パラメータ取得部により取得された前記電池パラメータに基づいて前記規定周波数を設定し、設定された前記規定周波数の前記交流信号を印加して前記インピーダンス誤差を算出する。
【0013】
規定周波数は、蓄電池の温度、SOC、及び蓄電池への圧力により変動するものである。上記構成では、蓄電池の温度、SOC、及び蓄電池への圧力の少なくとも1つの電池パラメータを取得し、当該電池パラメータに対応する規定周波数の交流信号を印加して、蓄電池のインピーダンス誤差を算出する。そのため、蓄電池の温度、SOC、及び蓄電池への圧力の変動による影響を抑制して、蓄電池のインピーダンスを精度よく算出することができる。
【0014】
第4の手段では、前記蓄電池は、インバータを介して回転電機との間で電力の入出力を行うものであり、前記インバータと前記蓄電池との間の経路を開放又は閉鎖する負荷側スイッチを備え、前記誤差算出部は、前記負荷側スイッチの開放期間に前記インピーダンス誤差を算出する。
【0015】
インピーダンス誤差は、例えばインバータを構成する平滑コンデンサやインバータを構成するスイッチの浮遊容量の影響など、インバータに流れる電流の影響を受ける。そのため、インバータの通電期間にインピーダンス誤差が算出されると、インピーダンス誤差の算出精度が低下する。その点、上記構成では、インバータと蓄電池との間に設けられた負荷側スイッチの開放期間にインピーダンス誤差を算出するようにした。これにより、インバータに流れる電流の影響を抑制して、インピーダンスを算出するための交流信号による誘導起電力によるインピーダンス誤差を算出することができ、蓄電池のインピーダンスを精度よく算出することができる。
【0016】
第5の手段では、前記インピーダンス算出部は、前記負荷側スイッチの開放期間に前記蓄電池のインピーダンスを算出する。
【0017】
インピーダンス誤差と同様に、インピーダンスは、インバータに流れる電流の影響を受ける。その点、上記構成では、負荷側スイッチの開放期間に蓄電池のインピーダンスを算出するようにした。これにより、インバータに流れる電流の影響を抑制してインピーダンスを算出することができ、蓄電池のインピーダンスを精度よく算出することができる。
【0018】
第6の手段では、前記蓄電池は、インバータを介して回転電機との間で電力の入出力を行うものであり、前記インバータと前記蓄電池との間の経路を開放又は閉鎖する負荷側スイッチを備え、前記誤差算出部は、前記負荷側スイッチの閉鎖期間に、前記蓄電池と前記回転電機との間に流れる前記蓄電池の充放電電流を用いて前記インピーダンス誤差を算出する。
【0019】
インバータを介して回転電機との間で電力の入出力を行う蓄電池が存在する。上記構成では、インバータと蓄電池との間に設けられた負荷側スイッチの閉鎖期間にインピーダンス誤差を算出するようにした。これにより、蓄電池と回転電機との間に流れる蓄電池の充放電電流を利用してインピーダンス誤差を算出することができる。
【0020】
第7の手段では、前記インピーダンス算出部は、前記負荷側スイッチの閉鎖期間に前記蓄電池のインピーダンスを算出する。
【0021】
インピーダンスは、インバータに流れる電流の影響を受け、その電流の影響がインピーダンス誤差の算出時と異なると、インピーダンス誤差によるインピーダンスの補正精度が低下する。その点、上記構成では、インピーダンス誤差の算出時と同様に、負荷側スイッチの閉鎖期間に蓄電池のインピーダンスを算出するようにした。これにより、インバータに流れる電流の影響を抑制してインピーダンスを算出することができ、蓄電池のインピーダンスを精度よく算出することができる。また、上記構成によれば、蓄電池の充放電中にインピーダンスを算出することができる。
【0022】
第8の手段では、前記蓄電池は、インバータを介して回転電機との間で電力の入出力を行うとともに、前記電源システム外部の充電器により充電可能とされており、前記インバータと前記蓄電池との間の経路を開放又は閉鎖する負荷側スイッチと、前記充電器が接続される接続端子と前記蓄電池との間の経路を開放又は閉鎖する充電器側スイッチと、を備え、前記誤差算出部は、前記負荷側スイッチの開放期間であって、かつ前記充電器側スイッチの閉鎖期間に、前記充電器から前記蓄電池に流れる前記蓄電池の充電電流を用いて前記インピーダンス誤差を算出する。
【0023】
蓄電池が、インバータを介して回転電機との間で電力の入出力を行うとともに、電源システム外部の充電器により充電可能とされることがある。上記構成では、充電器による蓄電池の充電期間にインピーダンス誤差を算出するようにした。これにより、充電器から蓄電池に流れる蓄電池の充電電流を利用してインピーダンス誤差を算出することができる。また、充電器による蓄電池の充電期間では充電器側スイッチが閉鎖されているとともに負荷側スイッチが開放されているため、例えばインバータを構成する平滑コンデンサやインバータを構成するスイッチの浮遊容量の影響など、インバータに流れる電流の影響を抑制してインピーダンス誤差を算出することができる。
【0024】
第9の手段では、前記インピーダンス算出部は、前記負荷側スイッチの開放期間であって、かつ前記充電器側スイッチの閉鎖期間に前記蓄電池のインピーダンスを算出する。
【0025】
インピーダンスは、インバータに流れる電流の影響を受ける。上記構成では、負荷側スイッチの開放期間であってかつ充電器側スイッチの閉鎖期間に蓄電池のインピーダンスを算出するようにした。これにより、充電器から蓄電池に流れる蓄電池の充電電流を利用してインピーダンスを算出することができるとともに、この充電電流がインバータ側に漏れ出ることによるノイズ等の影響を抑制してインピーダンスを算出することができる。
【0026】
第10の手段では、上記インピーダンス算出装置を含み、前記蓄電池を充電する充電器と、外部装置と、を備える電池管理システムであって、前記インピーダンス算出装置は、前記外部装置との間で、前記補正部により補正された前記蓄電池のインピーダンスを含む電池情報を受送信する通信部を備え、前記外部装置は、前記電池情報を、前記蓄電池を識別する識別情報に関連付けて記憶する。
【0027】
上記構成では、充電器にインピーダンス算出装置が含まれているため、複数の電源システムに含まれる複数の蓄電池に対して、充電器に含まれる共通のインピーダンス算出装置を用いてインピーダンス誤差を算出し、インピーダンスを補正することができる。また、上記構成では、外部装置において、補正後のインピーダンスを含む電池情報が蓄電池の識別情報に関連付けて記憶されるようにした。そのため、ある蓄電池が異なる充電器で充電された場合でも、それらの充電器から送信された電池情報は、外部装置において識別情報により互いに関連付けられる。これにより、外部装置において、同一の蓄電池に対する電池情報を一括して管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】第1実施形態に係る電源システムの全体構成図。
図2】内部抵抗の等価回路モデルと、インピーダンスの周波数特性とを示す図。
図3】第1実施形態に係る補正処理の手順を示すフローチャート。
図4】誘導起電力を発生させる閉回路を示す図。
図5】ファラデーの法則及びビオ・サバールの法則の説明図。
図6】算出周波数の対数値とインピーダンスの虚数成分との対応関係を示す図。
図7】第1実施形態の変形例に係る電源システムの全体構成図。
図8】第2実施形態に係る補正処理の手順を示すフローチャート。
図9】第3実施形態に係る電源システムの全体構成図。
図10】第4実施形態に係る電源システムの全体構成図。
図11】第4実施形態に係る補正処理の手順を示すフローチャート。
図12】第5実施形態に係る電池管理システムの全体構成図。
図13】その他の実施形態に係る電池管理システムの全体構成図。
図14】その他の実施形態に係る電池管理システムの全体構成図。
図15】その他の実施形態に係る電池管理システムの全体構成図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(第1実施形態)
以下、本発明に係るインピーダンス算出装置を車両(例えば、ハイブリッド車や電気自動車)の電源システム10に適用した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0030】
図1に示すように、電源システム10は、回転電機としてのモータ20と、インバータ30と、蓄電池40と、電流モジュレーション回路50と、インピーダンス算出装置としての制御装置60と、を備えている。
【0031】
モータ20は、車載主機であり、図示しない駆動輪と動力伝達可能とされている。本実施形態では、モータ20として、3相の永久磁石同期モータを用いている。
【0032】
インバータ30は、モータ20の相巻線の相数と同数の上下アームを有するフルブリッジ回路を含み、各アームに設けられたスイッチ(半導体スイッチング素子)がスイッチング操作されることにより、各相巻線において通電電流が調整される。また、インバータ30は、フルブリッジ回路に並列に接続された平滑コンデンサ及び抵抗素子を含む。
【0033】
インバータ30の各スイッチは、制御装置60に接続されており、制御装置60は、モータ20における各種の検出情報や、力行駆動及び回生発電の要求に基づいて、各スイッチをスイッチング操作する。これにより、蓄電池40は、インバータ30を介してモータ20との間で電力の入出力を行う。具体的には、蓄電池40は、モータ20の力行駆動時に放電し、インバータ30を介してモータ20に電力を供給する。また、モータ20は、モータ20の回生発電時に、駆動輪からの動力に基づいて発電を行い、インバータ30を介して発電電力を蓄電池40に供給し、蓄電池40を充電する。
【0034】
蓄電池40は、例えば百V以上となる端子間電圧を有し、複数の電池セルが直列接続されて構成された組電池である。電池セルは、例えば、リチウムイオン蓄電池である。蓄電池40は、電池セルの集合体41とともに、内部抵抗42を有している。
【0035】
蓄電池40の正極端子に接続される正極側電源経路L1には、インバータ30等の電気負荷の正極側端子が接続されている。同様に、蓄電池40の負極端子に接続される負極側電源経路L2には、インバータ30等の電気負荷の負極側端子が接続されている。蓄電池40と電気負荷との間における正極側電源経路L1及び負極側電源経路L2には、システムメインリレースイッチとしての第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2が設けられており、第1,第2スイッチSW1,SW2により、電気負荷の通電及び通電遮断が切り替え可能に構成されている。なお、本実施形態において、第1,第2スイッチSW1,SW2が「負荷側スイッチ」に相当する。
【0036】
蓄電池40は、例えば家庭用の商用電源などの電源システム10外部の充電器80により充電可能に構成されている。蓄電池40は、第1接続端子TC1及び第2接続端子TC2に接続されており、第1,第2接続端子TC1,TC2を介して充電器80に接続可能に構成されている。
【0037】
第1接続端子TC1は、正極側充電経路L3を介して正極側電源経路L1に接続されている。正極側電源経路L1において、正極側充電経路L3と正極側電源経路L1との接続点PAは、第1スイッチSW1よりも蓄電池40側に位置している。正極側充電経路L3において、第1接続端子TC1と接続点PAとの間には、第3スイッチSW3が設けられている。また、第2接続端子TC1は、負極側充電経路L4を介して負極側電源経路L2に接続されている。負極側電源経路L2において、負極側充電経路L4と負極側電源経路L2との接続点PBは、第2スイッチSW2よりも蓄電池40側に位置している。負極側充電経路L4において、第2接続端子TC2と接続点PBとの間には、第4スイッチSW4が設けられている。なお、本実施形態において、第3,第4スイッチSW3,SW4が「充電器側スイッチ」に相当する。
【0038】
電流モジュレーション回路50は、蓄電池40を電源として、蓄電池40から出力される電力により蓄電池40に所定の交流信号を出力させる回路である。交流信号は、例えば正弦波信号である。電流モジュレーション回路50は、半導体スイッチ素子51(例えば、MOSFET)と、この半導体スイッチ素子51に直列に接続された抵抗52とを有する。半導体スイッチ素子51のドレイン端子は、正極側電源経路L1に接続され、半導体スイッチ素子51のソース端子は、抵抗52の一端に直列に接続されている。また、抵抗52の他端は、負極側電源経路L2に接続されている。半導体スイッチ素子51は、ドレイン端子とソース端子との間において通電量を調整可能に構成されている。
【0039】
また、電流モジュレーション回路50には、抵抗52の両端に接続された電流検出アンプ54が設けられている。電流検出アンプ54は、抵抗52に流れる電流を検出し、その検出値をフィードバック信号として出力する。
【0040】
また、電流モジュレーション回路50には、フィードバック回路53が設けられている。フィードバック回路53には、制御装置60から、指示信号が入力されるとともに、電流検出アンプ54からフィードバック信号が入力されるように構成されている。フィードバック回路53は、指示信号とフィードバック信号とを比較し、その結果を半導体スイッチ素子51のゲート端子に出力するように構成されている。
【0041】
半導体スイッチ素子51は、フィードバック回路53からの信号に基づいて、指示信号により指示された交流信号としての正弦波信号を蓄電池40から出力させるように、ゲート・ソース間に印加する電圧を調整して、ドレイン・ソース間の電流量を調整する。なお、指示信号により指示される波形と、実際に抵抗52に流れる波形との間に誤差が生じている場合、半導体スイッチ素子51は、フィードバック回路53からのフィードバック信号に基づいて、その誤差が補正されるように、電流量を調整する。これにより、抵抗52に流れる正弦波信号が安定化する。
【0042】
電源システム10は、電圧センサ61と、電流センサ62と、温度センサ63と、圧力センサ64と、を備えている。
【0043】
電圧センサ61は、蓄電池40に並列接続されており、蓄電池40の正極端子と負極端子との間の端子間電圧である変動電圧Vsを検出する。なお、制御装置60から指示信号が入力されていない場合、変動電圧Vsは、蓄電池40の直流電圧となる。電流センサ62は、電流モジュレーション回路50のうち、半導体スイッチ素子51と抵抗52との直列接続体に対して負極側電源経路L2側に直列接続されており、蓄電池40から抵抗52に流れる電流、つまり蓄電池40に流れる電流である変動電流Imを検出する。なお、制御装置60が、電流検出アンプ54からのフィードバック信号を検出する場合には、このフィードバック信号から変動電流Imを検出することが可能であり、電流センサ62を省略することが可能となる。
【0044】
温度センサ63は、蓄電池40の温度である電池温度TBを検出する。圧力センサ64は、蓄電池40への圧力、具体的には蓄電池40の内圧である電池圧力PRを検出する。各センサ61~64の検出値は、制御装置60に入力される。
【0045】
制御装置60は、CPU、ROM、RAM、フラッシュメモリ等からなる周知のマイクロコンピュータを備えている。制御装置60は、蓄電池40からの電力供給により作動し、ROM内の演算プログラムや制御データを参照して、車両を制御するための種々の機能を実現する。具体的には、制御装置60は、第1~第4スイッチSW1~SW4の開閉状態を制御する。また、制御装置60は、入力された検出値に基づいて電流モジュレーション回路50に指示信号を入力し、蓄電池40に交流信号を出力させて蓄電池40の内部抵抗42を算出する。
【0046】
図2の上側に、蓄電池40の内部抵抗42の等価回路モデルを示す。本実施形態において、等価回路モデルは、オーミック抵抗モデル、反応抵抗モデル及び拡散抵抗モデルの各抵抗モデルの直列列接続体として表されている。オーミック抵抗モデルは、蓄電池40を構成する電極や電解液での通電抵抗を表すものであり、コイル成分LXと第1抵抗成分RAとの直列接続体として表される。反応抵抗モデルは、電極における電極界面反応による抵抗を表すものであり、第2抵抗成分RBと容量成分CXとの並列接続体として表される。拡散抵抗モデルは、電極表面に塗布された電極活物質内部へのリチウムイオンの拡散に伴う抵抗を表すものであり、第2抵抗成分RBに直列接続された第3抵抗成分RCとして表される。つまり、蓄電池40は、内部抵抗42の等価回路モデルの回路成分として、抵抗成分RA~RC、コイル成分LX及び容量成分CXを有しており、これらの成分により内部抵抗42の値は複素インピーダンスであるインピーダンスZBとして表される。制御装置60は、このインピーダンスZBを算出する。
【0047】
図2の下側に、インピーダンスZBの周波数特性を示す。インピーダンスZBは、指示信号により指示された交流信号の周波数Fにより変化し、低周波領域においては、インピーダンスZBの実数成分ZRは、印加する周波数Fが低くなるほど大きくなる。また、インピーダンスZBの虚数成分ZIは、第1特定周波数Ftg1でゼロとなる。以下、第1特定周波数Ftg1のインピーダンスZBをオーミック抵抗RHと呼ぶ。第1特定周波数Ftg1よりも高い周波数範囲では、オーミック抵抗モデルが支配的となり、印加する周波数Fが高くなるほど虚数成分ZIの絶対値が大きくなる(虚数成分ZIが大きくなる)。なお、本実施形態において、第1特定周波数Ftg1が「規定周波数、オーミック周波数」に相当する。
【0048】
一方、第1特定周波数Ftg1よりも低い周波数範囲において、虚数成分ZIは第2特定周波数Ftg2において極大値となる。第1特定周波数Ftg1よりも低く第2特定周波数Ftg2よりも高い周波数範囲では、反応抵抗モデルが支配的となり、印加する周波数Fが低くなるのに伴って、虚数成分ZIの絶対値が増加した後に減少する。また、第2特定周波数Ftg2よりも低い周波数範囲では、拡散抵抗モデルが支配的となり、印加する周波数Fが低くなるほど虚数成分ZIの絶対値が大きくなる(虚数成分ZIが小さくなる)。
【0049】
また、図1に示すように、制御装置60は、IGスイッチ65に接続されている。IGスイッチ65は、車両の起動スイッチである。制御装置60は、IGスイッチ65の開閉状態を監視する。
【0050】
ところで、インピーダンスZBは、誘導起電力Vidの影響を受けることが知られている。ここで誘導起電力Vidは、例えば正極側電源経路L1や負極側電源経路L2などの電気経路に電流が流れることにより磁束が発生し、この磁束により蓄電池40を含む電圧応答検出回路に誘起される電磁誘導起電力である。本実施形態のように、蓄電池40のインピーダンスZBを算出するために蓄電池40に交流信号を出力させる電源システム10では、蓄電池40に交流信号を出力させる際に電気経路に電流が流れ、蓄電池40に誘導起電力Vidが発生する。蓄電池40に誘導起電力Vidが発生すると、インピーダンスZBの算出精度(確度)が低下する。
【0051】
図2の下側では、蓄電池40に誘導起電力Vidが発生していない場合のインピーダンスZBが実線で示されており、誘導起電力Vidが発生している場合のインピーダンスZが破線で示されている。以下、誘導起電力Vidが発生していない場合のインピーダンスZBを特定インピーダンスZBという。
【0052】
図2に示すように、インピーダンスZでは、第1特定周波数Ftg1で虚数成分ZIがゼロとならない。本発明者らは、第1特定周波数Ftg1でインピーダンスZの虚数成分ZIがゼロとならない原因について検討を重ね、その原因が誘導起電力Vidによる誤差(差分)ΔZであることを見出した。本発明者らは、この点に着目し、第1特定周波数Ftg1におけるインピーダンスZの虚数成分ZIである誤差ΔZに基づいてインピーダンスZを補正することで、インピーダンスZを精度よく算出できるとの知見を得た。
【0053】
上知見に基づいて、本実施形態では、誤差算出期間TGに、特定インピーダンスZBの虚数成分ZIがゼロとなる第1特定周波数Ftg1の交流信号を蓄電池40に印加して誤差ΔZを算出する。つまり、第1特定周波数Ftg1の交流信号を印加して算出されたインピーダンスZの虚数成分ZIがゼロでなければ、その虚数成分ZIを誘導起電力Vidによる誤差ΔZとして算出することができる。そして、誤差算出期間TGと異なるインピーダンス算出期間TIに蓄電池40のインピーダンスZを算出した場合には、この誤差ΔZに基づいて蓄電池40のインピーダンスZを補正する補正処理を実施するようにした。これにより、誘導起電力Vidによる影響を抑制して蓄電池40のインピーダンスZを精度よく算出することができる。
【0054】
図3に、本実施形態の補正処理のフローチャートを示す。制御装置60は、所定の制御周期毎に補正処理を繰り返し実施する。
【0055】
制御処理を開始すると、まずステップS10では、インピーダンス算出期間TIであるか否かを判定する。例えば、充電器80による蓄電池40の充電期間では、IGスイッチ65が開状態に切り替えられており、インバータ30が停止している。本実施形態では、充電器80による蓄電池40の充電期間に誤差算出期間TGが設定されている形態を例示する。誤差算出期間TGであると判定し、ステップS10で否定判定すると、ステップS12において、第1,第2スイッチSW1,SW2を開状態とする。つまり、本実施形態では、第1,第2スイッチSW1,SW2の開放期間に誤差ΔZを算出する。
【0056】
蓄電池40の充電期間では、第1,第2接続端子TC1,TC2に充電器80が接続される。そして、第3,第4スイッチSW3,SW4が閉状態とされて蓄電池40が充電される。蓄電池40の充電が終了すると、第3,第4スイッチSW3,SW4が開状態とされる。本実施形態では、第1,第2接続端子TC1,TC2と充電器80との接続期間において、蓄電池40の充電開始前の第3,第4スイッチSW3,SW4の開放期間、または蓄電池40の充電終了後の第3,第4スイッチSW3,SW4の開放期間に誤差ΔZを算出する。つまり、本実施形態では、第1,第2接続端子TC1,TC2と充電器80との接続期間であって、且つ第3,第4スイッチSW3,SW4の開放期間に誤差ΔZを算出する。そのため、ステップS12では、第1,第2スイッチSW1,SW2とともに第3,第4スイッチSW3,SW4を開状態とする。
【0057】
ステップS14では、温度センサ63を用いて蓄電池40の電池温度TBを取得し、ステップS16では、圧力センサ64を用いて蓄電池40の電池圧力PRを取得する。続くステップS18では、蓄電池40のSOCを算出する。蓄電池40のSOCは、例えば蓄電池40の通電停止期間であれば、電圧センサ61から取得される電圧値である開路電圧OCVに基づいて算出することができる。なお、本実施形態において、ステップS14~S18の処理が「パラメータ取得部」に相当する。
【0058】
ステップS20では、ステップS14~S18で取得された電池温度TB、電池圧力PR、及びSOCに基づいて、蓄電池40のオーミック抵抗RHを算出する第1特定周波数Ftg1を設定する。第1特定周波数Ftg1は、電池温度TB、電池圧力PR、及びSOCに相関する周波数である。
【0059】
例えばステップS14では、規定時間において温度センサ63により検出される電池温度TBの変動量が所定の変動量範囲内の場合、電池温度TBが平衡状態であることから、その平均値を蓄電池40の電池温度TBとして取得する。そして、ステップS20では、取得された電池温度TBに対応する指示信号を電流モジュレーション回路50に印加する。具体的には、制御装置60の記憶部66には、電池温度TB、電池圧力PR、及びSOCなどの電池パラメータごとに、第1特定周波数Ftg1と電池パラメータとの関係を示す相関情報が記憶されている。ステップS20では、記憶部66に記憶された相関情報を用いて、ステップS14~S18で取得された電池温度TB、電池圧力PR、及びSOCに対応する第1特定周波数Ftg1を設定する。
【0060】
ステップS22では、ステップS20で設定した第1特定周波数Ftg1の交流信号を蓄電池40に印加して蓄電池40のインピーダンスZを算出する。なお、ステップS22では、第1特定周波数Ftg1の交流信号を蓄電池40に印加する際に、蓄電池40に誘導起電力Vidが発生しているため、誘導起電力Vidが発生していない場合のインピーダンスZBではなく、誘導起電力Vidが発生している場合のインピーダンスZが算出される。
【0061】
ステップS24では、ステップS22で算出したインピーダンスZの虚数成分ZIである誤差ΔZを算出する。続くステップS26では、ステップS24で算出した誤差ΔZを、第1特定周波数Ftg1に対応する角周波数である特定角周波数ωmで割った値である誤差パラメータΣmを算出し、補正処理を終了する。算出された誤差パラメータΣmは、制御装置60の記憶部66に記憶される。特定角周波数ωm及び誤差パラメータΣmは、下記の(式1),(式2)のように表される。なお、本実施形態において、特定角周波数ωmは「規定角周波数」に相当し、誤差パラメータΣmは「インピーダンス誤差」に相当する。
【0062】
ωm=2π×Ftg1・・・(式1)
Σm=ΔZ/ωm・・・(式2)
本実施形態では、(式2)において、誤差ΔZが虚数成分ZIのみの値となっている。なお、算出された誤差パラメータΣmが、所定の規定範囲に含まれていない場合には、再度誤差パラメータΣmを算出するようにしてもよい。本実施形態において、ステップS24の処理が「誤差算出部」に相当する。
【0063】
一方、ステップS10において、誤差算出期間TGでない場合にインピーダンス算出期間TIと判定し、ステップS10で肯定判定してステップS28に進む。ステップS28では、車両が走行中であるか否かを判定する。車両が走行中であるか否かは、図示されない車速センサ等を用いて判定される。例えば、車両の走行中では、蓄電池40の温度を推定するために、インピーダンスZを算出することがある。車両の走行中にインピーダンスZを算出する場合、ステップS28で肯定判定し、続くステップS30において、第1,第2スイッチSW1,SW2を閉状態とするとともに、第3,第4スイッチSW3,SW4を開状態とする。
【0064】
また例えば、車両の停止中では、蓄電池40のSOCを算出するために、インピーダンスZを算出することがある。車両の停止中にインピーダンスZを算出する場合、ステップS10で否定判定し、続くステップS32において、第1~第4スイッチSW1~SW4を閉状態とする。
【0065】
ステップS34では、蓄電池40のインピーダンスZを算出する算出周波数F0を設定する。ここで算出周波数F0は、車両の走行状態及びインバータ30の作動状態に基づいて設定される。算出周波数F0は、車両の走行起因の振動における周波数やインバータ作動に起因する電気的信号の周波数からなるべく離れた周波数で、かつインピーダンスZの算出目的を満たす周波数とすることが好ましい。
【0066】
ステップS36では、ステップS34で設定した算出周波数F0の交流信号を蓄電池40に印加して蓄電池40のインピーダンスZを算出する。なお、本実施形態において、ステップS36の処理が「インピーダンス算出部」に相当する。
【0067】
ステップS38では、ステップS24で算出した誤差パラメータΣmに基づいてステップS36で算出したインピーダンスZを補正して、補正処理を終了する。具体的には、誤差パラメータΣmに、算出周波数F0に対応する角周波数である算出周波数ω0を乗じた値である補正値HVを算出する。そして、ステップS36で算出したインピーダンスZから補正値HVを減算することで、ステップS36で算出したインピーダンスZを補正する。算出周波数ω0及び補正値HVは、下記の(式3),(式4)のように表される。
【0068】
ω0=2π×F0・・・(式3)
HV=ω0×Σm・・・(式4)
なお、本実施形態において、ステップS38の処理が「補正部」に相当する。
【0069】
続いて、図4図6に、補正処理の一例を示す。図4は、誤差算出期間TGにおける電源システム10の簡略化した構成図を示す。誤差算出期間TGでは、第1,第2スイッチSW1,SW2が開状態とされている。なお、図4では、理解を容易とするために、モータ20、第1,第2接続端子TC1,TC2、第3,第4スイッチSW3,SW4、制御装置60、温度センサ63、圧力センサ64、及びIGスイッチ65の記載が省略されている。
【0070】
誤差算出期間TGにおいて、電流モジュレーション回路50により第1特定周波数Ftg1の交流信号が蓄電池40に印加されると、蓄電池40に誘導起電力Vidが発生する。この場合に、I-V法により算出される蓄電池40のインピーダンスZは、電圧センサ61により検出される変動電圧Vs及び電流センサ62により検出される変動電流Imを用いて、下記の(式5)のように表される。
【0071】
Z=(Vs+Vid)/Im=Vs/Im+Vid/Im・・・(式5)
上記の(式5)の右辺において、第1項は、特定インピーダンスZBを表す。また、第2項は、誘導起電力Vidによる誤差ΔZを表す。
【0072】
ここで誤差ΔZについて検討する。誤差ΔZを構成する誘導起電力Vidは、ファラデーの法則により、下記の(式6)のように表される。
【0073】
【数1】
ここでSは、図5に示すように、誘導起電力Vidを発生させる閉回路LCによって囲まれた任意の局面を示し、tは、時刻を示し、B(x,t)は、その局面S上の点xにおける磁束密度ベクトルを示す。図4に示すように、電源システム10では、誘導起電力Vidを発生させる閉回路LCとして、例えば蓄電池40、電流モジュレーション回路50、及び電流センサ62により構成される第1閉回路LC1と、蓄電池40、第1,第2スイッチSW1,SW2、及びインバータ30により構成される第2閉回路LC2とが含まれる。また、B(x,t)は、ビオ・サバールの法則により、下記の(式7)のように表される。
【0074】
【数2】
ここでμ0は、真空の透磁率を示し、μrは、点xにおける非透磁率を示し、I(t)は、閉回路LCに流れる電流を示す。例えば、第1閉回路LC1におけるI(t)は、変動電流Im(t)となり、第2閉回路LC2における電流I(t)は、インバータ30に流れる電流であるインバータ電流Ie(t)となる。上記の(式7)を(式6)に代入するとともに、局面Sが時刻tにより変動しない、つまり閉回路LCが時刻tにより変動しないものであるとすると、誘導起電力Vidは、下記の(式8)のように表される。
【0075】
【数3】
(式8)のうち、時刻tにより変動しない部分、つまり閉回路LCの形状により決まる部分を誤差パラメータΣとする((式9)参照)。また、電流I(t)を、任意の位相βを有する正弦波電流として(式10)のように表す。この場合、誘導起電力Vidは、下記の(式11)のように表される。
【0076】
【数4】
ここでωは、電流I(t)の角周波数を示す。(式11)に示す誘導起電力Vidは、閉回路LCごとに発生し、電源システム10では、第1閉回路LC1及び第2閉回路LC2により誘導起電力Vidが発生し得る。第1特定周波数Ftg1の交流信号を蓄電池40に印加した場合に第1閉回路LC1により発生する誘導起電力Vid(LC1)は、特定角周波数ωm、変動電流Im(t)、及び誤差パラメータΣmを用いて、(式12)のように表される。また、第2閉回路LC2により発生する誘導起電力Vid(LC2)は、インバータ電流Ie(t)の角周波数ωe、インバータ電流Ie(t)、第2閉回路LC2の誤差パラメータΣe、及び変動電流Im(t)とインバータ電流Ie(t)との位相差Δeを用いて、(式13)のように表される。
【0077】
【数5】
上記の(式12),(式13)を用いて、誤差ΔZは(式14)のように表される。
【0078】
【数6】
ここで誤差算出期間TGでは、第1,第2スイッチSW1,SW2が開状態とされているため、インバータ電流Ie(t)がゼロとなる。そのため、上記の(式14)の右辺において、第2項はゼロとなる。従って、特定インピーダンスZBを用いて、インピーダンスZは(式15)のように表される。
【0079】
Z=ZB-jωmΣm・・・(式15)
上記(式15)によれば、以下のことを理解することができる。すなわち、誤差算出期間TGに第1特定周波数Ftg1の交流信号を蓄電池40に印加した場合、特定インピーダンスZBの虚数成分ZIはゼロとなる。そのため、算出されたインピーダンスZの虚数成分ZIがゼロでなければ、その虚数成分ZIである誤差ΔZを特定角周波数ωmで割ることにより、誤差パラメータΣmが算出される。
【0080】
上述したように、誤差パラメータΣmは、時刻tにより変動せず、第1閉回路LC1の形状により決まる値である。つまり、第1閉回路LC1の形状が一定であれば、誤差パラメータΣmは時刻tによらず一定の値となる。そのため、誤差算出期間TGにおいて誤差パラメータΣmを算出することができれば、誤差算出期間TGと異なるインピーダンス算出期間TIにおいて、誤差算出期間TGにおいて算出された誤差パラメータΣmを用いて第1閉回路LC1により発生する誘導起電力Vidを補正することができる。
【0081】
例えば車両停止中におけるインバータ30の停止期間など、第2閉回路LC2により発生する誘導起電力Vid(LC2)がゼロとなるインピーダンス算出期間TIに算出されたインピーダンスZの位相をθ(β=θ)とする。また、特定インピーダンスZBの位相をα(β=α)とする。この場合、インピーダンスZの実数成分ZR、虚数成分ZI、及び位相θは、インピーダンス算出期間TIにおける算出周波数ω0を用いて下記の(式16)~(式18)のように表される。
【0082】
【数7】
上記(式16)~(式18)によれば、実数成分ZR、虚数成分ZI、及び位相θのいずれも変動電流Im(t)に依存しない。そのため、変動電流Im(t)を大きくした場合でも、上記の(式4)で示した補正値HV、及び上記の(式16)~(式18)を用いることで、インピーダンス算出期間TIに算出されるインピーダンスZを補正することができる。
【0083】
図6は、算出周波数F0の対数値とインピーダンスZの虚数成分ZIとの対応関係を示す。図6に示すように、白丸で示す補正前の虚数成分ZIは、黒丸で示す補正後の虚数成分ZIに比べて小さく算出される。そのため、誤差パラメータΣmを用いることで、インピーダンスZの虚数成分ZIが大きくなるようにインピーダンスZを補正することができる。また、(式4)及び(式15)~(式17)に示すように、補正値HVは算出周波数ω0、つまり算出周波数F0に比例するため、補正後の虚数成分ZIと補正前の虚数成分ZIとの差は、算出周波数F0が高くなるほど大きくなっている。そのため、誤差パラメータΣmを用いることで、特に算出周波数F0の高周波数領域において、誘導起電力Vidの影響を抑制してインピーダンスZを精度よく算出することができる。
【0084】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0085】
・本実施形態では、誤差算出期間TGに、蓄電池40の特定インピーダンスZBの虚数成分ZIがゼロとなる第1特定周波数Ftg1の交流信号を蓄電池40に印加して、交流信号とその交流信号に対する応答信号を用いて、誤差ΔZを算出する。つまり、第1特定周波数Ftg1の交流信号を印加して算出されたインピーダンスZの虚数成分ZIがゼロでなければ、その虚数成分ZIを誘導起電力Vidによる誤差ΔZとして算出することができる。そして、誤差算出期間TGと異なるインピーダンス算出期間TIに蓄電池40のインピーダンスZを算出した場合には、この誤差ΔZに基づいて蓄電池40のインピーダンスZを補正するようにした。これにより、誘導起電力Vidによる影響を抑制して蓄電池40のインピーダンスZを精度よく算出することができる。
【0086】
具体的には、蓄電池40を含む電圧変動回路に規定誤差以上の影響を与える誘導起電力Vidが発生していない場合、オーミック周波数である第1特定周波数Ftg1の交流信号を蓄電池40に印加して算出されるインピーダンスZの実数成分ZRがオーミック抵抗RHとなり、虚数成分ZIがゼロとなる。本実施形態では、誤差ΔZを算出する場合に、第1特定周波数Ftg1の交流信号を蓄電池40に印加するようにした。そのため、算出されたインピーダンスZの虚数成分ZIがゼロでなければ、その虚数成分ZIを誤差ΔZとして算出することができる。
【0087】
・第1特定周波数Ftg1は、電池温度TB、電池圧力PR、及び蓄電池40のSOCにより変動する。本実施形態では、電池温度TB、電池圧力PR、及び蓄電池40のSOCなどの電池パラメータを取得し、これらの電池パラメータに対応する第1特定周波数Ftg1の交流信号を印加して、蓄電池40の誤差ΔZを算出する。そのため、電池温度TB、電池圧力PR、及び蓄電池40のSOCの変動による影響を抑制して、蓄電池40のインピーダンスZを精度よく算出することができる。
【0088】
・誤差ΔZは、例えばインバータ30を構成する平滑コンデンサやインバータ30を構成するスイッチの浮遊容量の影響など、インバータ30に流れる電流の影響を受ける。そのため、第1,第2スイッチSW1,SW2が閉鎖されたインバータ30の通電期間に誤差ΔZが算出されると、誤差ΔZの算出精度が低下する。その点、本実施形態では、第1,第2スイッチSW1,SW2の開放期間に誤差ΔZを算出するようにした。これにより、インバータ30に流れる電流の影響を抑制して、インピーダンスZを算出するための交流信号に起因した誘導起電力Vidによる誤差ΔZを算出することができ、蓄電池40のインピーダンスZを精度よく算出することができる。
【0089】
・誤差ΔZと同様に、インピーダンスZは、インバータ30に流れる電流の影響を受ける。その点、本実施形態では、車両の停止中であれば、第1,第2スイッチSW1,SW2の開放期間にインピーダンスZを算出するようにした。これにより、インバータ30に流れる電流によるノイズ等の影響を抑制してインピーダンスZを算出することができ、蓄電池40のインピーダンスZを精度よく算出することができる。
【0090】
・また、車両の走行中であれば、第1,第2スイッチSW1,SW2が閉鎖されたインバータ30の通電期間にインピーダンスZを算出するようにした。これにより、インピーダンスZを算出するための交流信号に起因した誘導起電力Vidによる誤差ΔZを算出した後に、インバータ30の通電期間の誤差ΔZを検出することができ、インバータ30に流れる電流の影響を算出することができる。
【0091】
(第1実施形態の変形例)
閉回路LCは、蓄電池40に接続された閉回路に限られない。例えば、図1の電流モジュレーション回路50において、抵抗52と電流検出アンプ54とにより構成される変動電流Imの検出回路も、誘導起電力Vidを発生させる閉回路LCとなる。
【0092】
また、図7に示すように、電源システム10に近接して、蓄電池40に接続されていない外部閉回路LCXが存在する場合には、外部閉回路LCXも誘導起電力Vidを発生させる閉回路LCとなる。なお、外部閉回路LCXは、車両の内部に設けられていてもよければ、車両の外部に設けられていてもよい。第1特定周波数Ftg1の交流信号を蓄電池40に印加した場合に外部閉回路LCXにより発生する誘導起電力Vid(LCX)は、外部閉回路LCXに流れる外部電流Ix(t)の角周波数ωx、外部電流Ix(t)、外部閉回路LCXの誤差パラメータΣx、及び変動電流Im(t)と外部電流Ix(t)との位相差Δxを用いて、(式19)のように表される。
【0093】
【数8】
上記の(式12),(式19)を用いて、誤差ΔZは(式20)のように表される。
【0094】
【数9】
従って、特定インピーダンスZBを用いて、インピーダンスZは(式21)のように表される。
【0095】
【数10】
(式20)に示すように、誤差ΔZは、閉回路LC毎の誤差の加算値として表される。そのため、外部閉回路LCXが存在しない状態において、あるいはシミュレーション当により、上記の(式15)を用いて(式21)の右辺うち、第1項及び第2項の合計値を求めることができれば、(式21)の右辺の第3項から誤差パラメータΣx及び位相差Δxの影響分を算出することができる。その結果、外部閉回路LCXが存在する場合においても、インピーダンス算出期間TIに算出されるインピーダンスZを補正することができる。
【0096】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図8を参照しつつ説明する。
【0097】
本実施形態では、制御処理において、モータ20の力行駆動時、又は回生発電時に誤差ΔZ及びインピーダンスZを算出する点で、第1実施形態と異なる。
【0098】
図8に、本実施形態の補正処理のフローチャートを示す。制御処理を開始すると、まずステップS40では、モータ20が力行駆動中、又は回生発電中であるか否かを判定する。例えば、制御装置60は、図示されない回転角センサを用いてモータ20の回転速度を取得し、この回転速度に基づいて、モータ20が力行駆動中、又は回生発電中であるか否かを判定する。
【0099】
モータ20の力行駆動時、又は回生発電時では、蓄電池40とモータ20との間に蓄電池40の充放電電流が流れる。本実施形態では、モータ20の力行駆動時、又は回生発電時に誤差算出期間TG及びインピーダンス算出期間TIが設定されている形態を例示する。ステップS40で肯定判定すると、ステップS10に進む。一方、ステップS40で否定判定すると、制御処理を終了する。
【0100】
ステップS10では、インピーダンス算出期間TIであるか否かを判定する。誤差算出期間TGであると判定し、ステップS10で否定判定すると、ステップS42において、第1,第2スイッチSW1,SW2を閉状態とする。つまり、本実施形態では、第1,第2スイッチSW1,SW2の閉鎖期間に、蓄電池40の充放電電流を用いて誤差ΔZを算出する。一般に、モータ20の力行駆動時、又は回生発電時には、第1,第2接続端子TC1,TC2に充電器80が接続されていない。そのため、ステップS42では、第3,第4スイッチSW3,SW4を開状態とし、ステップS14に進む。
【0101】
一方、インピーダンス算出期間TIであると判定し、ステップS10で肯定判定すると、ステップS30に進む。つまり、本実施形態では、第1,第2スイッチSW1,SW2を閉状態とし、第1,第2スイッチSW1,SW2の閉鎖期間に蓄電池40の充放電電流を用いてインピーダンスZを算出するとともに、第3,第4スイッチSW3,SW4を開状態とする。
【0102】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0103】
・蓄電池40は、インバータ30を介してモータ20との間で電力の入出力を行う。本実施形態では、第1,第2スイッチSW1,SW2の閉鎖期間に誤差ΔZを算出するようにした。これにより、蓄電池40とモータ20との間に流れる蓄電池40の充放電電流を利用して誤差ΔZを算出することができる。
【0104】
インピーダンスZは、インバータ30に流れる電流の影響を受け、その電流の影響が誤差ΔZの算出時と異なると、誤差ΔZによるインピーダンスZの補正精度が低下する。その点、本実施形態では、誤差ΔZの算出時と同様に、第1,第2スイッチSW1,SW2の閉鎖期間にインバータ30を算出するようにした。これにより、インバータ30に流れる電流の影響を抑制してインピーダンスZを算出することができ、インピーダンスZを精度よく算出することができる。また、本実施形態によれば、蓄電池40の充放電中にインピーダンスZを算出することができる。
【0105】
(第3実施形態)
以下、第3実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図9を参照しつつ説明する。
【0106】
本実施形態では、蓄電池40に電力を入力することにより蓄電池40に所定の交流信号を出力させる点で、第1実施形態と異なる。図9に示すように、電源システム10は、電流モジュレーション回路50に代えて発信装置67を備えている。発信装置67は、電流センサ62の正極側電源経路L1側において電流センサ62に対して直列接続されており、制御装置60からの指示信号により蓄電池40に所定の交流信号を出力する。
【0107】
以上詳述した本実施形態によれば、上記第1実施形態の効果と同様の効果を得ることができる。
【0108】
(第4実施形態)
以下、第4実施形態について、第3実施形態との相違点を中心に図10図11を参照しつつ説明する。
【0109】
本実施形態では、発信装置67及び電流センサ62が充電器80側に設けられている点で、第3実施形態と異なる。図10に示すように、発信装置67及び電流センサ62は、第1,第2接続端子TC1,TC2に充電器80が接続された状態で、充電器80と第2接続端子TC2との間に直列接続される。発信装置67は、制御装置60からの指示信号により蓄電池40に所定の交流信号を出力し、電流センサ62は、変動電流Imを検出し、検出した変動電流Imを制御装置60に入力する。
【0110】
図11に、本実施形態の補正処理のフローチャートを示す。本実施形態では、制御処理において、充電器80による蓄電池40の充電期間に誤差ΔZ及びインピーダンスZを算出する点で、第3実施形態と異なる。
【0111】
制御処理を開始すると、まずステップS50では、充電器80による蓄電池40の充電期間であるか否かを判定する。例えば、制御装置60は、電流センサ62から入力される変動電流Imに基づいて、充電器80による蓄電池40の充電期間であるか否かを判定する。
【0112】
蓄電池40の充電期間では、充電器80から蓄電池40に蓄電池40の充電電流が流れる。本実施形態では、蓄電池40の充電期間に誤差算出期間TG及びインピーダンス算出期間TIが設定されている形態を例示する。ステップS50で肯定判定すると、ステップS10に進む。一方、ステップS50で否定判定すると、制御処理を終了する。
【0113】
ステップS10では、インピーダンス算出期間TIであるか否かを判定する。誤差算出期間TGであると判定し、ステップS10で否定判定すると、ステップS52において、第1,第2スイッチSW1,SW2を開状態とし、第3,第4スイッチSW3,SW4を閉状態として、ステップS14に進む。つまり、本実施形態では、第1,第2スイッチSW1,SW2の開放期間に、蓄電池40の充電電流を用いて誤差ΔZを算出する。
【0114】
一方、インピーダンス算出期間TIであると判定し、ステップS10で肯定判定すると、ステップS54において、第1,第2スイッチSW1,SW2を開状態とし、第3,第4スイッチSW3,SW4を閉状態として、ステップS34に進む。つまり、本実施形態では、第1,第2スイッチSW1,SW2を開放期間に、蓄電池40の充放電電流を用いてインピーダンスZを算出する。
【0115】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0116】
・蓄電池40が、インバータ30を介してモータ20との間で電力の入出力を行うとともに、電源システム10外部の充電器80により充電可能とされることがある。本実施形態では、充電器80による蓄電池40の充電期間に誤差ΔZを算出するようにした。これにより、充電器80から蓄電池40に流れる蓄電池40の充電電流を利用して誤差ΔZを算出することができる。また、蓄電池40の充電期間では、第3,第4スイッチSW3,SW4が閉鎖されているとともに第1,第2スイッチSW1,SW2が開放されているため、例えばインバータ30を構成する平滑コンデンサやインバータ30を構成するスイッチの浮遊容量の影響など、インバータ30に流れる電流の影響を抑制して誤差ΔZを算出することができる。
【0117】
・インピーダンスZは、インバータ30に流れる電流の影響を受ける。本実施形態では、第1,第2スイッチSW1,SW2の開放期間であってかつ第3,第4スイッチSW3,SW4の閉鎖期間にインピーダンスZを算出するようにした。これにより、充電器80から蓄電池40に流れる蓄電池40の充電電流を利用してインピーダンスZを算出することができるとともに、この充電電流がインバータ30に漏れ出ることによるノイズ等の影響を抑制してインピーダンスZを算出することができる。
【0118】
(第5実施形態)
以下、第5実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図12を参照しつつ説明する。
【0119】
本実施形態では、電源システム10の制御装置60ではなく、充電器80の充電制御装置81により誤差ΔZが算出される点で、第1実施形態と異なる。以下、本発明に係る電池管理システムを、車両の電源システム10に備えられた蓄電池40を管理する電池管理システム100に適用した第4実施形態について説明する。
【0120】
図12に示すように、電池管理システム100は、充電器80と、外部装置としての管理サーバ90と、データ解析装置91と、ユーザインターフェース92とを備えている。
【0121】
充電器80は、電源システム10に接続して電源システム10の蓄電池40を充電するものであり、インピーダンス算出装置としての充電制御装置81と、定電流源82と、電流センサ83とを備えている。以下、区別のために、電流センサ62を第1電流センサ62と呼び、電流センサ83を第2電流センサ83と呼ぶ。
【0122】
定電流源82は、充電経路L8を介して電源システム10の第1接続端子TC1及び第2接続端子TC2に接続可能に構成されており、充電制御装置81からの充電指示により蓄電池40に充電電流を流し、蓄電池40を充電する。第2電流センサ83は、充電経路L8において、定電流源82に対して直列接続されており、充電電流を検出する。本実施形態では、第2電流センサ83として、電源システム10の第1電流センサ62よりも高精度の電流センサが用いられている。
【0123】
充電制御装置81は、CPU、ROM、RAM、フラッシュメモリ等からなる周知のマイクロコンピュータを備えている。充電制御装置81は、定電流源82からの電力供給により作動し、ROM内の演算プログラムや制御データを参照して、蓄電池40を充電するための種々の機能を実現する。具体的には、充電制御装置81は、定電流源82に充電指示を出力するとともに、通信部84を介して電源システム10の制御装置60に充電を開始する旨を通知する。制御装置60は、通信部68を介して上記通知を受け取ると、第1,第2スイッチSW1,SW2を開放するとともに、第3,第4スイッチSW3,SW4を閉鎖する。
【0124】
また、充電制御装置81は、蓄電池40を管理するための種々の機能を実現する。具体的には、充電制御装置81は、充電器80による蓄電池40の充電期間に、制御装置60に誤差ΔZを算出する旨を通知する。制御装置60は、上記通知を受け取ると、電流モジュレーション回路50に指示信号を入力し、充電電流に基づいて変動電流Im及び変動電圧Vsを生成させる。制御装置60は、第1電流センサ62を用いて変動電流Imの虚数成分を取得し、電圧センサ61を用いて変動電圧Vsの実数成分及び虚数成分を取得する。制御装置60は、取得したこれらの値を充電制御装置81に送信する。
【0125】
充電制御装置81は、制御装置60から変動電流Imの虚数成分と、変動電圧Vsの実数成分及び虚数成分を取得する。また、充電制御装置81は、第2電流センサ83を用いて変動電流Imの実数成分を取得する。なお、通信部68,84を介した制御装置60と充電制御装置81の同期処理により、第1電流センサ62、電圧センサ61、及び第2電流センサ83は、同期して変動電圧Vs及び変動電流Imを取得することができる。充電制御装置81は、これらの値を用いて誤差ΔZを算出し、算出した誤差ΔZを用いてインピーダンスZを補正する。なお、補正に用いられるインピーダンスZは、蓄電池40の充電期間であって、誤差ΔZを算出する期間とは異なる期間に算出されてもよければ、蓄電池40の充電期間前に制御装置60により測定され、記憶部66に記憶されていたものを用いてもよい。
【0126】
そして、充電制御装置81は、通信部84を介して、電池情報JDを管理サーバ90に送信する。電池情報JDには、誤差ΔZ及び補正後のインピーダンスZの他、これらの値を算出した蓄電池40を識別する識別情報JS及び算出した時刻を特定する情報が含まれる。識別情報JSとしては、蓄電池40の製造番号の他、電源システム10が搭載された車両の車両番号(車両登録番号)を用いることができる。
【0127】
管理サーバ90は、例えばデータサーバであり、充電制御装置81から送信された電池情報JDを記憶する。管理サーバ90は、電池情報JDに含まれている識別情報JSを用いて、電池情報JDを識別情報JSに関連付けて記憶する。そのため、同一の蓄電池40に対する電池情報JDが異なる充電制御装置81から送信された場合でも、識別情報JSを用いてそれらの電池情報JDを関連付けて記憶することができる。
【0128】
データ解析装置91は、通信部93を介して管理サーバ90に記憶された電池情報JDを解析する。具体的には、データ解析装置91は、蓄電池40毎、つまり車両毎に、補正後のインピーダンスZの変化を解析し、蓄電池40の劣化度合や劣化速度を解析する。これにより、例えば車種による蓄電池40の劣化速度の違いを検出することができる。
【0129】
また、充電制御装置81は、通信部84を介して、充電情報JEをユーザインターフェース92に送信する。ユーザインターフェース92は、車両の所有者の携帯端末であり、例えばスマートフォンやタブレット端末である。また、充電情報JEには、蓄電池40の蓄電状態を示すSOC(State Of Charge)、蓄電池40の充電に必要な充電時間、及び蓄電池40に充電可能な電力の最大値に関する情報が含まれる。これらの情報は、算出された補正後のインピーダンスZに基づいて充電制御装置81で算出される。
【0130】
車両の所有者は、ユーザインターフェース92を介して充電情報JEを確認し、例えば蓄電池40に充電可能な電力の最大値に基づいて、蓄電池40の劣化度合を認識することができる。また、車両の所有者は、蓄電池40の充電時間を確認し、充電が間に合わない場合には、充電制御装置81に対して充電電流を増加させるように指示することができる。更に、車両の所有者は、充電が間に合わない場合には、充電制御装置81に対して充電を途中で停止させるように指示することができる。これにより、充電制御装置81は、車両の所有者自身の予定の変更に柔軟に対応することができる。
【0131】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0132】
・本実施形態では、充電器80の充電制御装置81により誤差ΔZが算出されるため、複数の電源システム10に含まれる複数の蓄電池40に対して、充電器80に含まれる共通の充電制御装置81を用いて誤差ΔZを算出し、インピーダンスZを補正することができる。
【0133】
・本実施形態では、管理サーバ90において、補正後のインピーダンスZを含む電池情報JDが蓄電池40の識別情報JSに関連付けて記憶されるようにした。そのため、ある蓄電池40が異なる充電器80で充電された場合でも、それらの充電器80から送信された電池情報JDは、管理サーバ90において識別情報JSにより互いに関連付けられる。これにより、管理サーバ90において、同一の蓄電池40に対する電池情報JDを一括して管理することができる。
【0134】
・本実施形態では、充電器80による蓄電池40の充電期間に誤差ΔZを算出するようにした。充電期間に誤差ΔZを算出することで、誤差ΔZに必要な時間が長い場合でも誤差ΔZを算出することができ、誤差ΔZを算出可能な機会を確保することができる。
【0135】
・車載の第1電流センサ62では、車両走行中に蓄電池40に流れる電流を検出するために、その電流測定レンジを広く維持する必要があり、その全ての範囲において検出精度を上げることが難しい。本実施形態では、充電器80に設けられる第2電流センサ83として、電源システム10の第1電流センサ62よりも高精度の電流センサを用いるようにした。そのため、第2電流センサ83を用いて変動電流Imの実数成分を取得することで、誤差ΔZを精度よく算出することができる。
【0136】
(第5実施形態の変形例)
電流モジュレーション回路50の代わりに充電器80の定電流源82を用いて、蓄電池40に所定の交流信号を出力させるようにしてもよい。この場合、電流モジュレーション回路50は無くてもよい。また、定電流源82は、充電制御装置81からの充電指示により蓄電池40に一定電圧を印加し、蓄電池40を充電する定電圧源であってもよい。
【0137】
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0138】
・蓄電池40は、リチウムイオン蓄電池に限られず、鉛蓄電池やニッケル水素蓄電池であってもよい。
【0139】
・上記各実施形態では、蓄電池40が、電池セルの集合体41により構成されている例を示したが、単セルにより構成されていてもよい。また、図13に示すように、複数の蓄電池40が直列接続されていてもよい。この場合、電圧センサ61は、蓄電池40毎に設けられており、対応する蓄電池40の変動電圧Vsを検出する。制御装置60は、各電圧センサ61から変動電圧Vsを取得する。また、制御装置60は、各蓄電池40に設けられた温度センサ63及び圧力センサ64から電池温度TB及び電池圧力PRを取得し、各蓄電池40のインピーダンスZを算出する。図14に示すように、蓄電池40に電力を入力することにより蓄電池40に所定の交流信号を出力させる場合も同様である。これにより、各蓄電池40の誤差ΔZだけでなく、複数の蓄電池40全体の誤差ΔZも求めることができる。
【0140】
更に、電流モジュレーション回路50及び電流センサ62を含む電源システム10では、図15に示すように、電流モジュレーション回路50及び電流センサ62も、蓄電池40毎に設けられていてよい。電流モジュレーション回路50は、第1特定周波数Ftg1の交流信号を対応する蓄電池40に印加する。電流モジュレーション回路50と電流センサ62との少なくとも一方は、対応する蓄電池40の変動電流Imを検出する。制御装置60は、各蓄電池40に設けられた電流モジュレーション回路50と電流センサ62との少なくとも一方から変動電流Imを取得し、各蓄電池40のインピーダンスZを算出する。
【0141】
・規定周波数は、第1特定周波数Ftg1、つまりオーミック周波数に限られず、蓄電池40のインピーダンスZの実数成分ZRと虚数成分ZIとも少なくとも一方が規定値となる周波数γであればよい。この場合、誤差ΔZが虚数成分ZIだけでなく実数成分ZRにも生じることがある。誤差ΔZが虚数成分ZI及び実数成分ZRに生じる場合には、虚数成分ZIの誤差に対応する式と、実数成分ZRの誤差に対応する式との連立方程式を用いることで、誤差パラメータΣm及び周波数γを求めることができる。
【0142】
・上記第1実施形態では、誤差算出期間TG以外の期間のうち、車両の走行中と停止中とのいずれもがインピーダンス算出期間TIとなり得る例を示したが、これに限られず、車両の停止中のみをインピーダンス算出期間TIとしてもよい。これにより、第1,第2スイッチSW1,SW2を閉状態としてインピーダンスZを算出することができ、低ノイズ環境下で蓄電池40のインピーダンスZを精度よく算出することができる。
【0143】
・上記第1実施形態では、誤差算出期間TGを充電器80による蓄電池40の充電期間としたがこれに限られない。例えば、誤差算出期間TGは、蓄電池40の工場出荷時における所定の検査期間であってもよい。
【0144】
また、誤差算出期間TGは、蓄電池40が搭載された車両のメンテナンス時における所定の検査期間であってもよい。これらの誤差算出期間TGでは、車両に搭載される前、または車両に搭載された状態の蓄電池40に対して、外部電源から第1特定周波数Ftg1の交流信号を印加して誤差ΔZを算出する。
【0145】
また、IGスイッチ65が開状態に切り替えられている期間を誤差算出期間TGとし、IGスイッチ65が閉状態に切り替えられている期間をインピーダンス算出期間TIとしてもよい。さらに、インバータ30の停止期間を誤差算出期間TGとし、インバータ30の作動期間をインピーダンス算出期間TIとしてもよい。
【0146】
・上記第1実施形態では、規定周波数としてオーミック周波数である第1特定周波数Ftg1を例示したが、これに限られない。規定周波数は、蓄電池40の特定インピーダンスZBの虚数成分ZIが規定値となることが解っている周波数であればよい。この場合に、誤差ΔZは、インピーダンスZの虚数成分ZIから特定インピーダンスZBの虚数成分ZIと補正式を用いることによって算出することができる。
【0147】
・上記第1実施形態では、電池パラメータとして、電池温度TB、電池圧力PR、及びSOCを取得する例を示したが、これに限られない。電池温度TB、電池圧力PR、及びSOCの電池パラメータのうち、少なくとも1つの電池パラメータが取得されればよい。
【0148】
・上記実施形態では、電源システム10に1つの蓄電池40が備えられている例を示したが、これに限られず、直列接続され、又は並列接続された複数の蓄電池40が備えられていてもよい。
【0149】
・上記実施形態では、電源システム10の制御装置60及び充電器80の充電制御装置81により誤差ΔZを算出する例を示したが、これに限られず、誤差ΔZを算出するための専用装置により誤差ΔZを算出するようにしてもよい。
【0150】
・本開示に記載の制御装置及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御装置及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御装置及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0151】
10…電源システム、40…蓄電池、60…制御装置、Ftg1…第1特定周波数、Z…インピーダンス。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15