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特許7495382コンピュータにより実行される歯科修復物設計
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】コンピュータにより実行される歯科修復物設計
(51)【国際特許分類】
   A61C 5/70 20170101AFI20240528BHJP
   A61C 13/00 20060101ALI20240528BHJP
   A61C 13/08 20060101ALI20240528BHJP
   A61C 13/36 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
A61C5/70
A61C13/00 Z
A61C13/08 Z
A61C13/36
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021154801
(22)【出願日】2021-09-22
(62)【分割の表示】P 2019233176の分割
【原出願日】2014-08-26
(65)【公開番号】P2021191543
(43)【公開日】2021-12-16
【審査請求日】2021-10-18
(31)【優先権主張番号】61/869,922
(32)【優先日】2013-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】14/468,946
(32)【優先日】2014-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513149090
【氏名又は名称】ジェームズ アール. グライドウェル デンタル セラミックス,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100103182
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 真美
(74)【代理人】
【識別番号】100187964
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 剛
(72)【発明者】
【氏名】ニコルスキー,セルゲイ ブラディミロヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】アゼルニコフ,セルゲイ
(72)【発明者】
【氏名】ラミレス,ショーン アンドリューズ
【審査官】岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-253100(JP,A)
【文献】特開平09-019443(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0070554(US,A1)
【文献】特表2007-521068(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 5/70
A61C 13/00
A61C 13/08
A61C 13/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科修復物についての最小距離を判断するコンピュータにより実行される方法であって、
支台歯および対向する歯列の一部を含む、咬み合う患者の歯列の仮想3次元表示を得るステップと、
前記仮想3次元表示の前記支台歯に代えて、前記支台歯よりも大きいオフセット面コンポーネントを形成するステップと、
前記歯科修復物についての最小距離パラメータを得るステップと、
前記オフセット面コンポーネントと前記対向する歯列との間の距離を測定し、当該距離と前記最小距離パラメータとを比較するステップと、
前記最小距離パラメータが達成されるかどうか判断するステップと、
仮想ショートコーピングモデルを提供するステップであって、前記仮想ショートコーピングモデルは、前記最小距離パラメータを達成するために、前記支台歯を減少させる突出領域を表示し、前記仮想ショートコーピングモデルは、前記支台歯が減少されてそこを通って突出する前記突出領域のための空間を含む、ステップと
を含む、コンピュータにより実行される方法。
【請求項2】
前記最小距離パラメータが達成されない場合、歯科修復物についての最小距離パラメータを達成するための提案を提供するステップをさらに含む、請求項1に記載のコンピュータにより実行される方法。
【請求項3】
前記歯科修復物の前記最小距離パラメータを達成するために、前記突出領域を前記仮想ショートコーピングモデルの高さに減少させるステップをさらに含む、請求項1に記載のコンピュータにより実行される方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2013年8月26日出願の米国仮出願番号第61/869,922号およ
び2014年8月26日出願の米国特許出願第14/468,946号の優先権の利益を
主張し、全出願の内容は参照することにより本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
CAD/CAM歯科医療(歯科医療におけるコンピュータ支援による設計およびコンピ
ュータ支援による製造)とは、CADまたはCAM技術を使用して、クラウン、ベニア、
インレーおよびアンレー、固定橋義歯、歯科インプラント修復物、ならびに歯列矯正用器
具を含むさまざまな歯科修復物を提供する歯科医療分野である。CAD/CAM歯科医療
は早くも1980年代半ばに使用されていたが、初期製品は扱いにくい新製品と考えられ
ており、使用可能な製品を製造するには極端に時間を必要とした。この非効率により歯科
医院では使用されず、大型の歯科技工室にその使用が制限された。改善された付属技術、
ソフトウェア、および材料として、歯科技工室および歯科実務におけるCAD/CAMの
使用が増えた。歯科修復物技術における進歩には、口腔内イメージング技術をはじめとす
るイメージング技術の使用、および機械的部品または電気的部品のみとは対照的なデジタ
ルまたはコンピュータ制御される部品の組み込みが含まれる。
【0003】
「チェアサイド(chairside)」CAD/CAM修復物は、補綴が通常即日で合着また
は結合されるという点で従来の歯科医療とは異なる。クラウン等の従来の補綴は、歯科技
工室または院内歯科技工室が修復物を作っている間の1週間から数週間の間、間に合わせ
のものを置く。後日患者は間に合わせのものを除去してもらい、技工室で作成したクラウ
ンを所定位置に接着または結合してもらうために戻る。ソフトウェアおよび院内CAD/
CADシステムにおける進歩により効率がもたらされ、技工室および歯科医は場合によっ
てはたった1時間で完成品のインレーを作ることができるようになる。CAD/CAM修
復物は通常、支台歯形成において保存性もより高い。結合は下にある象牙質よりも歯のエ
ナメル質での方がより効果的であるため、エナメル層が取り除かれないように注意が払わ
れる。
【0004】
典型的なCAD/CAM歯科処置においては、まず支台歯の写真を撮り、3次元デジタ
ルモデルとして保存し、次にソフトウェアを使用して周囲の歯と比較をしながら修復物形
状を概算する。施術者は次に、3DCADソフトウェアを使用してこのモデルを改良する
。設計段階が完了すると、1つ以上の工作機械を使用して固体ブロック材料から実際の修
復物を切削する切削ユニットに情報を送信する。修復物を、修復物と歯それ自体との両方
に結合するセメントまたはその他の接着剤を使用して歯に結合する。
【0005】
治療する歯科医は、クラウン、インレー、アンレーまたはベニアとして修復される歯を
準備する。場合によっては、歯は次に薄膜状の反射防止造影剤により粉末噴霧される。形
成される歯およびその周囲の歯が次に3Dイメージングカメラによって画像化され、コン
ピュータにアップロードされる。または、直接スキャンされるかまたはスキャンされるモ
デルに形成され得る印象(impression)を採得し、次に歯科医または歯科技工室によりコ
ンピュータにアップロードされる。ソフトウェアを使用して、修復物を設計して歯をその
適切な形状および機能に修復することが可能である。この修復物についてのこのデータは
ファイルに保存され、切削マシンに送信される。修復物は次に固体セラミック、ガラス、
ガラスセラミック、または複合材料ブロックから切削することができる。切削時間は、修
復物の複雑性および切削ユニットのバージョンによってわずか数分間から30分以上まで
さまざまであり得る。
【0006】
3Shapeにより提供されるスキャナ等の市販の箱型またはモデルスキャナは、歯科
医または歯科技工室による患者の歯列モデルのスキャンのために使用できる。また、Fast
Scan(登録商標)(IOS Technologies、Inc.)、CEREC(登録商標)(Sirona)、E
4D(D4D Technologies)、True Definition Scanner(3M ESPE)、Trios(登録商標)
(3Shape)、およびiTero(商標)(Cadent/Align Technology、Inc.)を含む現在市販さ
れているいくつかの口腔内イメージング技術および製品がある。これらの口腔内スキャナ
は、患者の口腔状態の画像情報の正確な収集および歯科用診療台から技工室またはチェア
サイドの切削機への送信を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下は歯科修復物を設計するコンピュータにより実行される方法および記載された方法
を実行するシステムについて記載する。
【0008】
本明細書で記載されるシステムおよび方法の第1の態様によると、患者のために歯科修
復物を設計するコンピュータにより実行される方法が提供され、本方法は、少なくとも1
本の支台歯を含む患者の歯列の少なくとも一部の仮想3次元表示を用意すること、仮想3
次元表示の形成用マージンを識別すること、仮想3次元表示に位置合わせさせて仮想歯ラ
イブラリの歯列弓形態を配置すること、および仮想歯ライブラリから得られた歯の設計に
基づいて初期修復物設計を提案することを含む。第1の態様のいくつかの実施例では、歯
科修復物を設計する方法は、初期修復物設計を改良して最終修復物設計を得ることをさら
に含む。第1の態様のさらに他の実施例では、歯科修復物を設計する方法は、最終修復物
設計を使用して最終修復物を製造することをさらに含む。
【0009】
本明細書に記載されるシステムおよび方法の別の態様によると、コンピュータに歯科修
復物設計プロセスを実行させるプログラムを保存する非一時的なコンピュータ可読媒体が
提供され、本歯科修復物設計プロセスは、少なくとも1本の支台歯を含む患者の歯列の少
なくとも一部の仮想3次元表示を用意することと、仮想3次元表示の形成用マージンを識
別することと、仮想3次元表示に位置合わせさせて仮想歯ライブラリの歯列弓形態を配置
することと、仮想歯ライブラリから得られた歯の設計に基づいて初期修復物設計を提案す
ることとを含む。第1の態様のいくつかの実施例では、歯科修復物を設計する方法は、初
期修復物設計を改良して最終修復物設計を得ることをさらに含む。第1の態様のさらに他
の実施例では、歯科修復物を設計する方法は、最終修復物設計を使用して最終修復物を製
作することをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】口腔内スキャンシステムの実施形態の正面図である。
図2A】ダブルコード圧排技法を示す支台歯の側面断面図である。
図2B】ダブルコード圧排技法を示す支台歯の側面断面図である。
図3】支台歯ならびにその周囲の歯および対合歯の仮想3次元モデルの視覚的表示の一例である。
図4】歯科修復物設計システムの実施形態の構成図である。
図5A】マージン線を引くプロセスを示す、図3の仮想3次元モデルの視覚的表示の一例である。
図5B】マージン線を引くプロセスを示す、図3の仮想3次元モデルの視覚的表示の一例である。
図5C】マージン線を引くプロセスを示す、図3の仮想3次元モデルの視覚的表示の一例である。
図5D】マージン線を引くプロセスを示す、図3の仮想3次元モデルの視覚的表示の一例である。
図6A】患者の歯列の仮想3次元モデルの表示およびオフセット面コンポーネントの実施形態の例示である。
図6B】患者の歯列の仮想3次元モデルの表示およびオフセット面コンポーネントの実施形態の例示である。
図6C】患者の歯列の仮想3次元モデルの表示およびオフセット面コンポーネントの実施形態の例示である。
図7A】患者の歯列の仮想3次元モードの表示およびオフセット面コンポーネントの実施形態である。
図7B】患者の歯列の仮想3次元モードの表示およびオフセット面コンポーネントの実施形態である。
図8A】仮想ショートコーピングモデルの表示である。
図8B】仮想ショートコーピングモデルの表示である。
図8C】仮想ショートコーピングモデルの表示である。
図9A】歯ライブラリの仮想3次元モデルの平面図である。
図9B図9Aの歯ライブラリの歯の斜視図である。
図9C】歯ライブラリを配置し、支台歯および周囲の歯列の仮想3次元モデルと位置合わせするプロセスに含まれるステップの視覚的表示の一例である。
図9D】歯ライブラリを配置し、支台歯および周囲の歯列の仮想3次元モデルと位置合わせするプロセスに含まれるステップの視覚的表示の一例である。
図10】歯ライブラリを支台歯および周囲の歯列の仮想モデルと位置合わせするプロセスにおけるステップの一例の視覚的表示である。
図11】歯ライブラリを支台歯および周囲の歯列の仮想モデルと位置合わせするプロセスにおけるステップの一例の視覚的表示である。
図12】歯科修復物を設計するコンピュータにより実行される自動プロセスの一実施形態のワークフローチャートである。
図13A】咬頭が識別された患者の上顎および下顎のスキャンモデルの表示である。
図13B】スキャンモデルに弧線をフィッティングするステップの一例の視覚的表示である。
図13C】患者の歯列のスキャンモデルおよびライブラリ歯列弓形態(library arch form)を配置し、レジストレーションするステップの一例の視覚的表示である。
図13D】患者の歯列のスキャンモデルおよびライブラリ歯列弓形態を配置し、レジストレーションするステップの一例の視覚的表示である。
図13E】患者の歯列のスキャンモデルおよびライブラリ歯列弓形態を配置し、レジストレーションするステップの一例の視覚的表示である。
図13F】患者の歯列のスキャンモデルおよびライブラリ歯列弓形態を配置し、レジストレーションするステップの一例の視覚的表示である。
図13G】患者の歯列のスキャンモデルおよびライブラリ歯列弓形態を配置し、レジストレーションするステップの一例の視覚的表示である。
図14A】患者の歯列のスキャンモデルおよびライブラリ歯列弓形態をレジストレーションするステップの一例の視覚的表示である。
図14B】患者の歯列のスキャンモデルおよびライブラリ歯列弓形態をレジストレーションするステップの一例の視覚的表示である。
図15】修復物を設計するプロセスに含まれるステップの視覚的表示の一例である。
図16】修復物を設計するプロセスに含まれるステップの視覚的表示の一例である。
図17A】歯科修復物設計プログラムが備える接点編集機能の視覚的表示の一例である。
図17B】歯科修復物設計プログラムが備える接点編集機能の視覚的表示の一例である。
図18】歯科修復物設計プログラムにより設計される修復物の視覚的表示の一例である。
図19】歯科修復物設計プログラムにより設計される修復物の視覚的表示の一例である。
図20】歯科修復物を製作するのに適した修復物製造切削機の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上述の図面により本明細書で開示される実施形態が説明されるが、発明を実施するため
の形態で述べられるように、その他の実施形態も考慮される。本開示は、限定のためでは
なく説明として例示的実施形態を提示する。当業者は本開示の原理の範囲および趣旨に含
まれる複数のその他の変更および実施形態を考案することが可能である。
【0012】
歯科修復物を設計する方法およびシステムの例示的実施形態が提供される。本明細書に
記載される歯科修復物を設計するコンピュータにより実行される方法は、設計プロセスの
出発点として患者の口腔状態の少なくとも一部の電子画像を用いる。電子画像を使用して
、コンピュータにより実行される歯科修復物設計システムを使用して、好適な歯科修復物
を設計し、切削機等の修復物製作マシンへ命令を与える。次に、製作マシンを使用して、
歯科修復物を製造し、歯科修復物は次に歯科医により患者の口内に設置されてよい。
【0013】
本明細書に記載されるコンピュータにより実行される方法の最初のステップは、患者の
口腔状態の少なくとも一部の電子画像を提供することである。いくつかの実施形態では、
電子画像は患者の歯の直接口腔内スキャンにより得られる。これは通常、例えば、歯科医
院または診療所で行われ、歯科医または歯科技工士により実施される。その他の実施形態
において、電子画像は患者の歯の印象をスキャンするか、患者の歯の物理的モデルをスキ
ャンするか、または当業者に公知の他の方法により間接的に得られる。これは通常、例え
ば、歯科技工室で行われ、技工室の技工士により実施される。したがって、本明細書記載
の方法は、チェアサイド、歯科技工室、またはその他の環境における使用に好適かつ適用
可能である。
【0014】
技工室環境では、電子画像は通常、患者の歯から採得した物理的印象をスキャンするか
、または例えば物理的印象から形成された患者の歯の物理的モデルをスキャンすることに
よって得られる。これらのプロセスの詳細は本発明の記載の範囲を超えており、歯科修復
物設計および製造の当業者により理解されるであろう。
【0015】
チェアサイド用途では、患者から電子画像情報を取得するためのいくつかのシステムお
よび方法がある。典型的なシステムは口腔内スキャンシステムを備える。CEREC(登録商
標)(Sirona)、E4D(D4D Technologies)、True Definition Scanner(3M ESPE)、
Trios(登録商標)(3Shape)、およびiTero(商標)(Cadent/Align Technology,
Inc.)を含む市販されているいくつかの口腔内イメージング技術および製品がある。好ま
しい口腔内スキャンシステムはカリフォルニア州サンディエゴのIOS Technologies,Inc.
により製造されたFastScan(登録商標)口腔内スキャンシステムである。
【0016】
図1は、本明細書に記載される歯科修復物を設計する方法での使用に好適な口腔内スキ
ャンシステム100の実施形態を示す。図示される口腔内スキャンシステム100は、マ
イクロプロセッサまたはコンピュータ102のハウジングとしての機能を果たすベースユ
ニット101と、スキャンデバイス103と、タッチスクリーン104の形態のユーザイ
ンターフェースとを備える。示される実施形態では、システム100は、タッチスクリー
ン104と連動してユーザがシステム100と情報をやりとりできるスタイラス105の
形態のユーザ入力デバイスをさらに備える。図1の実施形態に示す追加の特徴は、スキャ
ンデバイス103保管のためにベースユニット101の上面に位置する受け台106と、
ユーザによって容易にベースユニットを移動可能にするためのホイール107と、任意で
消毒剤容器108とを含む。
【0017】
スキャンデバイス103は、患者にほとんどまたはまったく不快感を与えずに患者の口
腔状態の好適な口腔内画像を得るのに十分な臨床的アクセスを提供する輪郭およびサイズ
を有するプローブを有するワンド(wand)109を備える。ワンド109はコード110
によりコンピュータ102に接続されている。
【0018】
患者の歯列が準備されると、スキャンシステム100を使用して準備した顎のデジタル
印象をキャプチャする。一実施形態では、支台歯(preparation tooth)は図2A~2B
に示すダブルコード圧排技法(two-cord retraction technique)を使用して周囲の歯肉
から適切に分離される。支台歯の周囲の歯肉からの適切な分離は、形成用マージンのより
明瞭なスキャンを得るのに役立ち得る。図2Aでは、2本の歯肉圧排コード201、20
2が患者の支台歯203と周囲の歯肉204との間に挿入されている。図2Bに示すよう
に、スキャン直前に、上側圧排コード201は最大圧排を提供するために取り除かれ、下
側圧排コード202は出血を制御するために適所に残される。いくつかの実施形態では、
スキャン前に口腔内スプレーを使用して支台歯ならびに隣接歯および対合歯をコーティン
グする。
【0019】
一実施形態では、患者の解剖学的構造の好適な画像を得るために複数回のスキャン(例
えば、四半部毎に3~5回のスキャン)が行われる。例えば、咬合スキャン、舌側スキャ
ンおよび頬側スキャンを形成顎(preparation jaw)および対合顎(opposing jaw)の両
方でとってよい。次いで、咬み合っている顎のスキャンを頬側視点から1回とって、形成
顎と対合顎との適切な咬合関係を確立してもよい。加えて、いくつかの実施形態では、歯
間腔スキャンを追加して隣接歯の接触領域をキャプチャする。
【0020】
スキャンデバイス103およびその使用法についてのさらなる詳細は本開示の範囲を超
えているため、本明細書では詳細に記述しない。スキャンプロセスが完了すると、スキャ
ンシステム100は、例えば図3の300で示すように、複数のスキャンを組み合わせて
支台歯ならびにその隣接歯および対合歯のデジタルモデルにする。図示される実施形態で
は、形成顎301および対合顎302のスキャンは第1の表示(例えば第1の色)で示し
、咬合スキャンは第2の表示(例えば、第2の色)で示す。図3に示すように、咬合スキ
ャンは形成顎301および対合顎302のスキャンにレジストレーションされ、重ねられ
るべきである。そうすると、モデルは適切な形態になり、図3の304に見えるように、
支台歯に使用される修復物の設計に使用するのに好適である。
【0021】
ここで図4を参照し、歯科修復物設計システム400の一実施形態の簡略化構成図を説
明する。本システム400は通常、コンピュータ401を備え、コンピュータ401はマ
イクロプロセッサ、集積回路、またはその他の好適な計算装置を含み得る。コンピュータ
401は通常、プロセッサ402、メモリ403、およびネットワークまたは通信インタ
フェース404を含む。プロセッサ402は、メモリ403および通信インタフェース4
04を含むいくつかの周辺装置と通信する。通信インタフェース404は、通信ネットワ
ークまたはその他のデータ処理システムで情報を送信する能力を提供する。入力インタフ
ェースまたはモジュール405はコンピュータ401に電子接続されている。入力インタ
フェース405はキーボード、マウス、タッチスクリーン、スタイラスパッド、フットペ
ダル、ジョイスティック、またはその他の好適なユーザ入力インタフェースを含んでよい
。他の種類のユーザインターフェース入力装置、例えば音声認識システムを使用してもよ
い。ユーザインターフェース出力装置、例えばモニタ406もまた提供される。インタフ
ェース出力装置は、プリンタ、ならびにディスプレイコントローラおよびコントローラに
接続されたディスプレイデバイスを含むディスプレイサブシステムをさらに含んでよい。
ディスプレイ装置は、ブラウン管(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)等のフラット
パネルデバイス、または投射装置であってよい。ディスプレイサブシステムはまた、音声
出力等の非視覚的表示も提供できる。
【0022】
メモリ403は基本プログラミング、コマンド、およびシステム400の機能性を付与
するその他のソフトウェアを維持する。メモリ403は通常、プログラム実行中の命令お
よびデータの保存用のメインランダムアクセスメモリ(RAM)ならびに固定命令が保存
されるリードオンリーメモリ(ROM)を含む複数のメモリを含む。ファイルストレージ
サブシステムは、プログラムおよびデータファイル用のパーシステント(不揮発性)スト
レージを提供することができ、通常少なくとも1つのハードディスクドライブおよび少な
くとも1つのフロッピーディスクドライブ(関連する取り外し可能なメディアを有する)
を含む。CD-ROMドライブおよび光学ドライブ(すべて、関連する取り外し可能なメ
ディアを有する)等のその他のデバイスがあってもよい。また、システムは、取り外し可
能なメディアカートリッジを有する種類のドライブを備えてよい。取り外し可能なメディ
アカートリッジは例えば、ハードディスクカートリッジまたはフレキシブルディスクカー
トリッジであってよい。1以上のドライブはローカルエリアネットワーク上のサーバ、ク
ラウドデータセンター、またはインターネットのワールドワイドウェブ上のサイト等のリ
モート位置に位置してもよい。
【0023】
口腔内歯科用スキャンシステム100からの患者記録407の形態のデータは歯科修復
物システムコンピュータ401に送られる。いくつかの実施形態では、患者記録407は
前述したように、識別情報および患者の歯列の電子モデルを含む。修復物が設計されると
、修復物設計を含む電子記録408の形態のデータが、以下で完全に説明されるように、
切削機等の製作システムに送られる。
【0024】
<修復物の設計および製作のためのマージンの線引き>
次に図5A~5Dを参照すると、歯科修復物を設計する方法は、上述の設計システム4
00に維持されるコンピュータプログラムを使用して行われる。モニタ406またはその
他のスクリーンを使用してプログラムのユーザインターフェースを見、入力インタフェー
ス405を使用してモニタ406に表示される機能の選択および機能の変更等のコマンド
を実行する。以下の説明では、入力インタフェース405としてコンピュータマウスを使
用した仮想歯科モデルの操作を説明する。その他の入力インタフェース405デバイスは
記載されるシステムおよび方法の代替的実施形態に使用してもよいと理解すべきである。
プログラムは計算を実行するか、またはモニタ406にユーザが行ったコマンドに対応す
る変更を示す。
【0025】
図5Aに示す本方法の第1のステップでは、患者記録のスキャンモデル500をモニタ
406に表示する。スキャンモデル500は、支台歯504、周囲の歯肉、隣接歯、およ
び対合歯の仮想表示を含む。支台歯のマージン501をモデルで識別する。中心のマウス
ホイールをスクロールすることによってモデル500をズームインおよびズームアウトす
る。ポインタをモデルの特定の領域に置きスクロールすることによって、この領域を拡大
できる。マウスホイールを押し、マウスを動かすことによって、ポインタ位置を中心にモ
デル500を回転させる。マウスの右ボタンを押しマウスを動かすことによって、モデル
500をスクリーンにパンする。最後に、マウスの左ボタンを使用してスクリーン上の各
種ツールおよびオブジェクトを選択する。
【0026】
マージン501の線引きを開始するために、ユーザはマージン501上をズームインし
、マージン線の輪郭が容易に見えるようにモデル500を回転させる。ユーザはカーソル
をマージン501上の点に置き、マウスの左ボタンを押す。これにより第1のマージン点
を配置する。プログラムは次に、スキャン画像の品質に基づいてできる限りマージン50
1の輪郭をたどろうとする。次に、ユーザはマージン501に沿ってさらなる点を配置し
、経路を完了させる。
【0027】
マージン501がつながると、ユーザは個々の点に移動できる。図5Bに示すように、
一実施形態では、点が選択されると断面ウィンドウ505が開いて、ユーザがマージン5
01上の点の適切な配置を特定するのを手助けする。
【0028】
図5Cを参照すると、マージン501の大きなセクションを再配置する必要がある場合
、再配置を行うために変更ツールが提供される。ユーザは既存のマージン501の最後の
正確な点に新しい点502を配置し、次に所望に応じて新しい点503を配置する。変更
経路は、既存マージン501の既存点で終える。
【0029】
一実施形態では、マージン全体を全体的に緩やかにし平滑にするためにスムージングツ
ールが提供される。
【0030】
場合によっては、スキャン画像はモデルの一部ではないアーチファクトを含んでいる場
合がある。これらのアーチファクトは唾液の気泡、余剰粉末、またはスキャンプロセス中
の患者の歯列に存在していた他の材料に由来しうる。これらのアーチファクトはプログラ
ムが備える気泡ツールを使用して除去することができる。気泡ツールを起動させる(enga
ge)ために、ユーザは気泡ツールアイコンをクリックし、これによってインジケータ(例
えば色付き円)をモデル500の部分に現れさせる。次に、ユーザはアーチファクト上に
インジケータを置き、マウスの左ボタンを押す。影響を受けている領域のサイズは、効果
編集ボタンをクリックし、次に左ボタンを押したままマウスを動かすことによって変更で
きる。編集される領域は、モデル上に表示されるインジケータのサイズによって表示され
る。
【0031】
支台歯504のマージン501全体の線が完了すると、例えば図5Dに示されるように
モデル500に視覚的に表示される。この時点で、ユーザは修復物の設計を開始できる。
本明細書に記載される実施形態では、修復物は、後述のように歯列弓形態内の歯の位置を
考慮に入れることにより設計される。
【0032】
<対合歯列までの距離>
支台歯の咬合面と対合歯列の咬合面との最適な距離は、修復物設計の一部として確立さ
れ、修復物の最適な厚みを確保する。この距離要件は、修復物設計に選択される材料、接
着剤を修復物クラウンに取り付けるために必要とされる空間量、ならびに患者および医師
の好み等の因子に依存し得る。例えば、歯科修復物材料によっては、完成品の修復物でそ
の他の材料よりも大きな最小厚さ要件を有するため、支台歯と対合歯列との間のより大き
な距離が必要とされる。
【0033】
図6A、6B、および6Cを参照すると、支台歯603と対合歯列608との間の最小
距離パラメータが達成されたかどうかを判断するための方法が提供される。マージン線6
01が識別された後、オフセット面コンポーネント602がスキャンモデル600の支台
歯603から生成される。一実施形態では、図6Bの図示から明らかなようにオフセット
面コンポーネント602の断面は、クラウン等の歯科修復物設計の内部表面のサイズおよ
び/または形状にほぼ対応する。例えば、支台歯と歯科修復物との間に入れられる接着剤
または取り付け材料の厚みにほぼ等しい空間またはオフセット604を提供すべく、歯科
修復物の内部表面は支台歯よりも十分に大きい。さらに、歯科修復物の内部表面は支台歯
よりも大きくし、支台歯の特徴607の半径よりも大きい最小ドリル半径に対する補償を
提供してもよい。したがって、オフセット面コンポーネント602のサイズは、歯科修復
物を支台歯603に取り付けるのに必要とされ得る接着剤または取り付け材料オフセット
604にほぼ等しい量だけ、また最小ドリル半径補償606の量だけ支台歯603よりも
大きい。
【0034】
スキャンモデル700の上部歯列弓701および下部歯列弓702は、図7Aおよび7
Bに示すように咬合側で評価し、オフセット面コンポーネント603、703と対合歯列
704の表面との距離が十分かどうか判断する。オフセット面コンポーネントと対合歯列
との最も近い点605を評価して、所与の材料についての距離パラメータが満たされてい
るか判断する。一実施形態では、距離要件が満たされてない点705が識別され、任意で
マークされる。一実施形態において、支台歯と対合歯列との距離要件が満たされてない点
は、図7Aおよび7Bに示されるようにスポット705として出力装置で可視化されても
よい。
【0035】
支台歯と対合歯列との確立された距離パラメータが満たされてないいくつかの実施形態
では、修復物材料を取り替えるか、対合歯列に変更を加えるか、または支台歯に変更を加
えることにより距離を大きくしてもよい。第1の最小距離パラメータが不十分であった場
合に、異なる厚さ要件を有する代替材料の提案を生成できる方法が提供される。代替材料
の厚さパラメータを評価して、ある材料を他に替えたときに最小距離要件が満たされるか
どうか判断する。
【0036】
さらなる実施形態では、距離要件は対合歯列の面積を小さくすることによって達成され
得る。対合歯列の減少に関する減少提案が生成され得る。あるスポットまたは領域を対合
歯列に位置決めでき、減少領域をマークして可視化できる。この情報は、最小厚さ要件を
満たすことができるように、例えば研削によって対合歯列が提案されるように減少できる
かどうか判断するために患者の医師へと通信されてよい。
【0037】
いくつかの実施形態では、距離パラメータを満たすために支台歯の一部を減少させるこ
とが好ましい場合がある。したがって、支台歯の減少に関する提案が生成され得る。一実
施形態において、最小距離要件を満たすために支台歯を減少させる位置をスキャンモデル
上で特定し、任意で例えばスポットとしてマークし、歯科医が可視化させて、面積を減少
させ距離要件を達成する。
【0038】
さらなる実施形態では、図8A、8B、および8Cを参照して、CADプロセスはまた、患者の歯列のスキャンモデル800にショートコーピングモデル801を生成するために実施されてもよい。ショートコーピングモデル801は、最小距離要件を達成するために減少される支台歯802の突出領域803を示す。一実施形態では、仮想ショートコーピングモデル801はCADプロセスにより形成され、そこから物理的ショートコーピングが3次元プリントまたは切削等のCAMプロセスにより生成される。CADおよびCAMプロセスによって形成されたショートコーピングは支台歯802に嵌合し、支台歯が減少されてそこを通って突出する領域のための空間804を含む。患者の実際の歯列に配置されると、ショートコーピング801は、必要に応じて支台歯802の空間804を通って突出する分だけを減少させるためのガイドとして使用でき、歯科修復物の最小距離要件を達成する。例えば、図8Bおよび8Cで明らかなように、突出領域はショートコーピング801の高さまで減少される。有利には、CADおよびCAMプロセスにより製作されたショートコーピングは、患者の物理的モデルの準備なしで形成できる。
【0039】
<歯列弓形態の配置>
ここで図5D、および9A~9Dを参照すると、マージン線501および909がモデ
ル500上で識別されると、設計プログラムはスキャンモデル908の支台歯907に隣
接する歯列に最も合致するライブラリ歯901を歯ライブラリ900から探し、後述のよ
うに、これを歯901が位置する歯列弓906の自然な構造を考慮に入れつつ自然に配置
する。歯ライブラリ901は、個々の歯の形状を含み、各歯はいくつかの標識点および方
向を有する。図9Aおよび9Bに示すように、各歯901は、表示される咬合方向902
、頬側方向903、表示される上部904、およびそのクラウンと歯根との間で歯901
を分割する分割線905を有する。図9Aを参照した一実施形態では、ライブラリ歯は口
の中の歯の解剖学的湾曲に対応するライブラリ歯列弓形態における初期配列を有し、全体
的なライブラリ歯列弓形態の形状または湾曲を提供する。一実施形態では、ライブラリ歯
は理想的な歯の歯列弓湾曲に対応した全体的形状を有するライブラリ歯列弓形態に位置合
わせされる。
【0040】
一実施形態では、上述のライブラリ歯列弓形態906の配置は少なくとも以下の4つの
ステップを含む。
支台歯の位置、頬側方向903、および咬合方向902に基づいたライブラリ歯列弓
形態906の初期位置合わせ、
ライブラリ歯列弓形態906のスキャンへのフィッティング、
スキャンに対するライブラリ歯の個々の歯の位置の改善、ならびに
隣接歯を使用した各形成のためのライブラリ歯の位置の補間。
これらのステップはそれぞれ以下で詳述される。
【0041】
<歯列弓の初期配置>
図9Cおよび9Dを参照すると、ライブラリ歯列弓形態906の配置に関連する第1の
ステップは、支台歯907の位置、頬側方向903、および咬合方向902に基づくライ
ブラリ歯列弓906の初期配置である。ライブラリ歯およびスキャンの初期位置合わせは
、以下の基準、すなわち
支台歯907の歯番号、
スキャンの咬合方向、
支台歯907の頬側/顔側方向、および
ライブラリ歯901の咬合方向および頬側/顔側方向
に基づく。
【0042】
モデル/スキャン908上のマージン線909の中心は選択したライブラリ歯901の
中心と位置合わせされ、どちらの対の方向も歯ライブラリ900の配向により規定される
【0043】
スキャン内に存在していない(歯チャートに選択されていない、または「隙間のある欠
損」とマークされている)ライブラリ歯は以下のステップから除外される。加えて、「隙
間のない欠損」とマークされる歯がいくつかある場合、これらの歯はライブラリ歯列弓形
態906から除去され、ライブラリ歯列弓形態はこれらの隙間を埋めるために詰められる
【0044】
モデル/スキャンデータ500が2つ以上の形成を有する場合、それらの形成のうち1
つだけを初期配置に使用する。両方の顎で形成を行う場合、各顎は顎毎に規定された形成
に基づいて独立して配置される。
【0045】
<歯列弓のスキャンへのフィッティング>
次に、図9Dに示すように、いくつかの実施形態では、歯列弓906の初期配置後、歯
科修復物プログラムを使用して、次の基準、すなわち、
近心変位(変位毎0.5mmで5ステップ)、
均等目盛り(準備線中心に対して)(0.92 … 1.08)、
頬側変位(ステップ毎0.5mmで5ステップ)、および
準備線中心を回転中心とする咬合軸周りの回転(ステップ毎2.5度で3ステップ)
を使用して歯列弓906のより良い位置を見つけようと試みる。
【0046】
繰り返す度に歯列弓形態906を4つの方向のうちいずれかに変位させ、スナッピング
品質(下記で定義)を各変位で計算する。すべて繰り返した後に、最も良いスナッピング
品質の位置がこのステップの結果となる。
【0047】
本明細書で定義されるように、歯列弓についての「スナッピング品質」は歯ライブラリ
の歯の表面点からスキャン面までの平均距離に基づき、平均距離が短ければ短いほどスナ
ッピング品質は良い。
【0048】
<個々の歯の位置の改善>
いくつかの実施形態では、例えば図10に示すように、各歯(例えば1001および1
002)をスキャン1000に位置合わせするためにいくらかの試みがなされる。いくつ
かの実施形態において、患者の歯列のスキャンモデルに対応するライブラリ歯列弓形態の
一部は、ライブラリ歯列弓形態およびライブラリ歯のさらなる修正のためにライブラリ歯
列弓形態の残りから分けるかセグメンテーションしてもよい。
【0049】
歯科修復物プログラムは7つの次元(3つのモニタ、3つの回転、および1つのスケー
ル)で最良の歯の位置を探す。特に、スキャンに含まれるどの歯についても
頬側変位、
咬合変位、
近遠心変位、
ねじれ角度、
先端角度、
回転角度、および
スケール
の7つの基準を使用してその位置を最適化する。
【0050】
各最適化ステップでは、歯をすべての方向に移動させる(+/-1mm頬側、+/-1
mm咬合、+/-1mm近遠心、+/-1°ねじれ角度、+/-1°先端角度、+/-1
°回転角度、および+/-1%スケール)。毎回スナッピング品質を予測する。より良い
位置が見つからなかった場合、規定されたイプシロン値に達して繰り返しを中断するまで
モーションステップは2倍小さくなる。
【0051】
<隣接歯を使用した各形成のためのライブラリ歯の位置の補間>
図11に示すように、修復される歯、すなわち支台歯1104がスナッピングすべきも
のを有しないため、その位置はその隣接歯の所与の位置および配向から補間される。例え
ば、スキャン1100が並んだ2つの支台歯を有する(例えば1104および1105)
場合、どの歯も隣のより近い歯の重みにより変形(位置、配向、およびスケール)を補間
した。例えば、支台歯1104および1105が良いスナッピング品質の隣接歯1106
および1107を有する場合、形成用のライブラリ歯1104は歯番号1106から64
%、歯番号1107から33%補間された位置を有することになる。
【0052】
支台歯が良好なスナッピング品質の隣接歯を1本のみ有する場合、この支台歯に対する
提案は、マージン線中心を中心としたものになり、唯一の隣接歯として配向される。
【0053】
補間後、どの支台歯も隣接歯との間隙を閉鎖するようにスケーリングされ、空間に収め
られる。
【0054】
設計プログラムのライブラリ歯列弓形態の配置が患者の歯列のスキャンに対して最適な
配置をもたらさない一実施形態では、ユーザはライブラリ歯列弓形態の配置を調整しても
よい。一実施形態において、ライブラリ歯は仮想ワイヤと関連づけられ、図11で明らか
なように、仮想ワイヤ1108に配置される。ユーザはユーザ入力インタフェースツール
を用いて、ワイヤと関連づけられたワイヤ点1109をつかみ、例えば、マウスで点をク
リックすることでワイヤを操作できる。点を動かす際に、ワイヤの移動により、ワイヤ上
のライブラリ歯が移動し、ユーザはスキャンモデルに対するライブラリ歯列弓形態の配置
位置を改善しようと試みることができる。したがって、一実施形態において、ユーザは手
作業でライブラリ歯の配置またはライブラリ歯列弓形態の湾曲を調整して、患者の歯列の
自然な歯列弓により近づくように合致させる。
【0055】
<ライブラリ歯列弓形態の配置のための自動プロセス>
いくつかの実施形態において、プログラム、複数のプログラムまたはモジュールの形態
の自動のコンピュータにより実行されるプロセスにより、ユーザインタラクションが最小
限でコンピュータにより自動化された歯科修復物設計提案を提供するが、所望であればユ
ーザ入力の機会を任意で与える1つ以上のアルゴリズムを自動で実施する。図12に概説
されるワークフローを参照すると、歯科修復物設計提案を生成するコンピュータにより実
施される方法1200は、スキャンモデルの自動特徴検出1201、検出された特徴への
自動弧線フィッティング1202、スキャンモデルに対するライブラリ歯列弓形態の自動
スケーリング1203、ライブラリ歯列弓とスキャンモデルとの自動剛体レジストレーシ
ョン1204および/または非剛体レジストレーション1205、ならびに修復物設計提
案1206プロセスのためのプロセスを含む。ライブラリ歯列弓形態とスキャンモデルと
の自動剛体レジストレーション1204および非剛体レジストレーション1205の成功
を評価する(1207および1208)コンピュータプログラムまたはモジュールは所望
により含めてもよく、成功していなければ、自動でユーザが入力するよう促す。さらなる
実施形態では、スキャンセグメンテーションのための任意のコンピュータにより実行され
るプロセスをさらに実施してもよい。
【0056】
<咬頭検出>
一実施形態において、歯科修復物設計提案プロセスは、スキャンモデルの検出された特
徴とライブラリ歯列弓形態との対応関係に基づくスキャンモデルへのライブラリ歯列弓形
態906の初期配置のためのコンピュータにより実行されるプロセスを含む。一実施形態
において、特徴検出アルゴリズムは、自動で患者のスキャンモデル上に存在する特徴を検
出するために実施される。1つの方法は、患者の歯のスキャンモデルに位置する咬頭を検
出することを含む。一実施形態において、咬頭は、患者の歯の一部のみ、例えば、支台歯
に隣り合うかまたは最も近接した2本の歯で検出される。一実施形態において、咬頭は、
支台歯の一方の側に位置する少なくとも1本の隣接歯および支台歯の反対側に位置する少
なくとも2本の隣接歯で検出される。
【0057】
本明細書に用いる場合、図13A~13Fに図示されるように咬頭1301および13
02は歯の咬合側または切歯の隆起を含む。一般に、犬歯(cupside)1303とも称さ
れる犬歯(canine tooth)はそれぞれ1つの咬頭を有するが、双頭歯1304とも称され
る小臼歯は通常2つまたは3つの咬頭1301および1302を有する。臼歯1305は
通常4つまたは5つの咬頭を有する。
【0058】
コンピュータにより実施される歯の咬頭の検出のための一方法は、スキャンモデル内の
最大湾曲を計算することによりピークを位置決めするアルゴリズムを含む。本方法では、
歯の咬合曲線および咬合面1306は検出される咬頭1301および1302により識別
できる。代替的実施形態では、アルゴリズムは、歯の咬合1306方向におけるピークの
高さを計算して咬頭を検出するコンピュータにより実施される方法のために使用してよい
。ユーザの利便性のために、コンピュータにより検出された咬頭は、患者の上顎1307
のスキャンモデル1300および支台歯1309を有する患者の下顎1308のスキャン
モデルの表示で見られるように点1301および1302として識別されマークできる。
【0059】
スキャンモデル上で識別される点の密度を制限するか、または咬頭の予測される数に対
応するスキャンモデルのある領域内で特定される点の数を制限する規則を有する特徴検出
アルゴリズムが実施できる。支台歯が歯科修復物に適合するように変更を加えられ、その
ため自然な咬頭が除去または減少されると、その支台歯の咬頭識別およびマークプロセス
ステップは抜かす規則を実施できる。
【0060】
一実施形態では、モニタ等のユーザ出力装置406で自動特徴検出の結果を見た際に、
ユーザはアルゴリズムにより咬頭として不適切に識別された外れ点を位置決めできる。ユ
ーザは入力インタフェースを実施して外れ点または逸脱点1301および1302を取り
除き、誤って位置決めされた点をユーザが視覚的に識別した咬頭に再配置するか、または
点を自動的に検出または識別されなかった歯の咬頭に置くことができる。
【0061】
同様に、ライブラリ歯列弓形態のライブラリ歯のための1組の咬頭および/または咬合
面は、スキャンモデルとの後のレジストレーションのために標識付け保存できる。
【0062】
<弧線フィッティング>
一実施形態において、弧線は患者のスキャンモデルで識別された特徴の場所を計算する
ことにより規定される。弧線フィッティングプロセスを使用して、弧線を検出された特徴
、例えば歯の咬頭にフィッティングできる。図13Bは、コンピュータにより実行される
プロセスによって患者のスキャンモデルの歯で自動識別された頬側に位置する咬頭130
1から自動で計算された頬側弧線1310を示す。弧線は支台歯のスキャンモデル(図示
されている)と、所望により対合歯列のスキャンモデルで計算され、フィッティングされ
てよい。図13Bは、患者のスキャンモデルで識別された舌側に位置する咬頭1302か
ら計算され、舌側咬頭にフィッティングされた舌側弧線1311の配置をさらに示す。頬
側弧線1310および舌側弧線1311により、患者の解剖学的構造の全体形状に関する
情報が提供でき、これを使用して、ライブラリ歯列弓をスキャンモデルに自動でレジスト
レーションし、置き換えられる歯の自然な形状および配向により近づけるように似せる歯
科修復物設計提案を提供することができる。
【0063】
本方法はさらに、ユーザにモニタ等の出力装置406に弧線の配置を可視化させる選択
肢を与える。一実施形態では、弧線の特徴を調整するためにユーザ入力インタフェースを
介してユーザ入力について選択肢が与えられる。例えば、ユーザがスキャンモデル上の弧
線が短すぎるかまたは自動プロセスによりきちんと規定されていないかを目視で検出する
一実施形態では、ユーザはマウスまたはキーボード等の入力装置を手動で使用し、スキャ
ンモデルの弧線の位置、湾曲または長さを調整できる。
【0064】
同様に、ライブラリ歯列弓形態1314の頬側弧線1312および舌側弧線1313は
ライブラリ歯1315の頬側咬頭1301および舌側咬頭1302に基づいて計算され、
図13Cに示されるように、ライブラリ歯列弓形態のライブラリ歯の頬側に向いた咬頭お
よび舌側に向いた咬頭にフィッティングされる。ライブラリ歯の弧線は、ライブラリ歯列
弓形態を患者のスキャンモデルとレジストレーションする際に使用するためのデータセッ
トとして保存される。
【0065】
<レジストレーションおよびライブラリ歯列弓形態スケーリング>
ライブラリ歯列弓形態のスキャンモデルへの自動レジストレーションは剛体レジストレ
ーションプロセス1204および非剛体レジストレーションプロセス1205の両方を含
んでよい。剛体レジストレーションプロセスは、ライブラリ歯列弓形態の形状を変えずに
ライブラリ歯列弓形態とスキャンモデルとをレジストレーションすることを含む。非剛体
レジストレーションプロセスは、ライブラリ歯列弓形態の形状を変えてスキャンモデルと
の対応関係を最適化することを含む。剛体レジストレーションプロセスおよび非剛体レジ
ストレーションプロセスの両方は、ユーザによる入力なしで、コンピュータプログラムモ
ジュールを介して自動で行ってよい。
【0066】
剛体レジストレーションプロセス(図12のフローチャートの1204)は、ライブラ
リ歯列弓形態のライブラリ歯の配向または位置は変えない、頬側弧線および舌側弧線それ
ぞれについてのデータセットの対応関係によるライブラリ歯列弓形態とスキャンモデルと
の自動レジストレーションのためのステップを含んでよい。図13Bおよび図13Cを参
照すると、例えば、ライブラリ歯列弓形態の頬側弧線および舌側弧線(1313および1
312)をスキャンモデルの頬側弧線および舌側弧線(1310および1311)に重な
り合わせるかフィッティングして、ライブラリ歯列弓形態の全体的形状を変えることなく
弧線上の点をレジストレーション上の対応関係にすることによって、ライブラリ歯列弓形
態1314はスキャンモデルにほぼレジストレーションできる。
【0067】
一実施形態では、スキャンモデルとレジストレーションされるライブラリ歯列弓形態は
サイズ変更するかまたはスケーリングしてスキャンモデルのサイズにほぼ対応させられる
。倍率は、弧線に沿った複数の点を測定したときにスキャンモデルの頬側弧線と舌側弧線
との平均距離を計算し、同様に複数の点でライブラリ歯列弓の頬側弧線と舌側弧線との平
均距離を計算することによって得ることができる。ライブラリ歯列弓倍率は以下のように
計算できる。
S=ds/dl
【0068】
式中、dlはライブラリ歯列弓形態の頬側弧線1312と舌側弧線1313との平均距
離であり、dsはスキャンモデルの頬側弧線と舌側弧線との平均距離である。
【0069】
ライブラリ歯列弓形態の頬側弧線および舌側弧線(1312および1313)はサイズ
変更するか、またはある倍率で変形させ、スキャンモデルの弧線サイズにほぼ対応させる
ため、ライブラリ歯列弓形態のスキャンモデルとの位置決めを最適化できる。図13D
よび13Eは、ライブラリ歯列弓形態1314のスキャンモデルへの自動位置合わせを含
む剛体レジストレーションプロセスを示す。図13Eは、それぞれの頬側弧線と舌側弧線
との平均距離に基づきスキャンモデルのおよそのサイズにライブラリ歯列弓形態をスケー
リングすることによって、ライブラリ歯列弓形態1314の舌側弧線1313とスキャン
モデルの舌側弧線1311との対応関係を最適化するステップの一実施形態を示す、領域
1316のズームインビューを提供する。スキャンモデルとライブラリ歯列弓形態の舌側
弧線間の間隙1317および/またはスキャンモデルとライブラリ歯列弓形態の頬側弧線
間の間隙は、配置およびサイズ変更によるライブラリ歯列弓形態とスキャンモデルとの完
全な位置合わせがなされていないことを示し得る。一実施形態では、さらなる変形を実施
して対応関係を最適化してよい。
【0070】
自動非剛体レジストレーションプロセス(図13Fおよび13G)を適用して、ライブ
ラリ歯列弓形態の形状を変形させるかまたは曲げ、初期位置合わせステップ後のライブラ
リ歯列弓形態とスキャンモデルの弧線間の間隙を小さくすることができる。非剛体レジス
トレーション1205プロセスは、ライブラリ歯列弓形態全体で一様に全体的および/ま
たは局所的な変形または曲げステップを適用することを含んでよい。一実施形態において
、全体的曲げプロセスは、ライブラリ歯列弓形態を変形させライブラリ歯列弓形態の歯列
弓の全体形状を変化させて、ライブラリ歯列弓形態およびスキャンモデルの弧線上の点間
の対応関係を高めるかまたは確立することを含む。図13Fおよび13Gで明らかなよう
に、ライブラリ歯列弓形態およびスキャンモデルの舌側弧線1313間の距離は、図13
Dおよび13Eに示される弧線間の距離と比較すると非剛体レジストレーションプロセス
が行われた後は縮められている。
【0071】
局所的変形または曲げプロセスステップを、ライブラリ歯をスキャンモデルにスナッピ
ングしてライブラリ歯列弓形態の一部または個々のライブラリ歯に適用してもよい。本発
明で使用する場合、「スナッピング」は、ライブラリ歯列弓形態およびスキャンモデル上
の点の疎サンプル間の対応関係に関するスナップ許容値レベルを確立することによって行
うことができる。各ライブラリ歯の配置または形状は、個別に変形されてスキャンモデル
の対応する歯間のより高い対応関係を確立できる。
【0072】
剛体レジストレーションプロセスおよび非剛体レジストレーションプロセスの成功を判
断するための自動プロセスステップは、図12の1207および1208の図表に示され
るように実施してよい。図12に例示される自動修復物プロセスの次のモジュールに進む
ために必要な対応関係のレベルを示すアルゴリズムを実施してもよい。例えば、局所的変
形プロセスはライブラリ歯1314とスキャンモデル1308の歯との対応関係をより近
づけるようにしてもよいが、図14Aで明らかなように、全体的な歯列弓の連続性が欠け
得る。低下した歯列弓の連続性により、図14Aの歯間空間により示される最適歯間接触
距離が失われ得、またはスキャンモデルの歯は欠損しているとみなされ得る。
【0073】
ライブラリ歯列弓形態およびスキャンモデル上の位置合わせされた点間の対応関係閾値
が非剛体レジストレーション後も得られない場合、剛体レジストレーションプロセスが再
び自動で実行され、第1のまたは初期の全体的および/または局所的変形プロセスで得ら
れた第1のセットの対応関係値から開始する。このように、剛体レジストレーションなら
びに非剛性全体的および局所的変形プロセスを繰り返して、ライブラリ歯列弓形態および
スキャンモデルの舌側弧線および頬側弧線上の点間の対応関係を最適化できる。複数回繰
り返される全体的および局所的変形プロセスは自動的に行われ、最適歯間接触距離を得る
ためにライブラリ歯列弓形態とスキャンモデルとのレジストレーションおよび、図14B
に示すように歯列弓形態の最終配置とを改善する。
【0074】
任意により、自動レジストレーションプロセスはユーザによりモニタ上で可視化されて
もよい。ユーザが手動でレジストレーションプロセスを手助けするのが望ましい場合、本
明細書に記載される手動のライブラリ歯列弓形態配置手順が行われてよい。例えば、許容
可能なレベルの対応関係を得るための自動ライブラリ歯列弓形態剛体レジストレーション
プロセス1204が失敗した場合、ライブラリ歯列弓形態をスキャンモデルにフィッティ
ングさせる手動プロセス1209は、本明細書に記載される基準を使用してユーザによっ
て行われてよい。手動でライブラリ歯列弓を配置するユーザ入力ステップ後、自動プロセ
スは非剛体レジストレーションプロセスステップのために再開されてよい。さらに、最適
な対応関係を得るための自動ライブラリ歯列弓形態非剛体レジストレーションプロセス1
205が失敗した場合、個々の歯の配置を改善する手動最適化プロセス1210は本明細
書に記載される最適化ステップに従ってユーザにより行われてよい。
【0075】
ライブラリ歯列弓形態位置のスキャンモデルへのレジストレーションおよび最適化後、
設計修復物が支台歯のために提案される。
【0076】
<修復物の設計>
上述の歯列弓形態906の中のライブラリ歯901の選択に基づいて歯科修復物プログ
ラムは修復物用の提案を提示する。このセクションでは、提案される修復物に変更を加え
、修復物設計を製造するために切削機または他の製作場所に送るプロセスについて記載す
る。
【0077】
例えば、図15に示す一実施形態では、ユーザは、ライブラリ歯1501がダイまたは
歯列弓形態1506内の隣接する歯列に適合される前に配置するために全体的な位置調整
を行うことができる。正確な配置は必要とされない。むしろ、ユーザは、プログラムがで
きるだけ最良の修復物提案を提供できるように一般的ガイダンスを提供する。いくつかの
操作ツールが図15に示される図に示される。ライブラリ歯1501の上、下、および各
側にある球1502を使用して歯を回転させる。矢印1503を使用して歯をスケーリン
グする。バー1504を使用して歯を並進移動させる。これらの各ツールは例えばマウス
のコントロール下でポインタを使用して、ユーザによりアクセスされてよい。ユーザがラ
イブラリ歯1501の全体的な回転、サイズおよび位置に満足したら、プログラムは修復
物を提案する。
【0078】
図16は、歯科修復物プログラムにより提供される歯列弓形態1606の初期修復物提
案1601を示す。ユーザは修復物1601、形成顎および対合顎の可視性を制御できる
。歯チャートアイコンをクリックすることにより、これらのアイテムの可視性をトグル式
にオンおよびオフにする。歯チャートをダブルクリックすることによりこのアイテムは半
透明になる。
【0079】
提案された修復物1601はさらなる変更を必要としても必要としなくてもよい。変更
を必要とする場合、まず大きな変更を加え、次に最後に最終調整を行う自動接点編集機能
(後述)を用いて終えることが好ましい。一実施形態では、歯科修復物設計プログラムは
、これらの大きな変更を行うためのいくつかのプログラミングツール(例えば、フリーフ
ォームツール、スムージングツール、追加ツール、除去ツール、および移動/回転/スケ
ールツール)を含む。
【0080】
<大きな変更>
一実施形態では、初期変更は修復物1501または1601の配向およびスケールに対
してのものである。変更が必要であれば、ユーザは移動/回転/スケールツールを使用し
てよい。球1502を使用して修復物を回転させ、矢印1503を使用して修復物をスケ
ーリングし、バー1504を使用して修復物を並進移動させる。(図15参照)。次に、
ユーザは頬側輪郭および舌側輪郭を確認してよい。変更はフリーフォームツールまたは他
のツールにより行うことができる。咬頭配置は、オンにされた対合顎の可視性により確認
され、調整はフリーフォームツールまたは他のツールにより行うことができる。
【0081】
一実施形態では、色はモニタ406に表示される修復物1501または1601の画像
上のインジケータとして使用される。例えば、一実施形態において、対比色が修復物15
01または160のどこかの部分に表示された場合、これは、この領域が製造業者により
修復物に推奨される最小厚さよりも薄いことを示し、修正すべきであることを示す。追加
ツール、スムージングツール、またはフリーフォームツールはこのために使用できる。
【0082】
記載されたこの実施形態では、フリーフォームツール、スムージングツール、追加ツー
ル、および除去ツールはそれぞれ、修復物1501または1601上をクリックしたとき
に示される円により示される修復物1501または1601の特定の領域に作用する。こ
の効果を受ける領域のサイズは、モニタ406上にアイコンとして表示される効果編集ツ
ールにより変更できる。ユーザが修復物1501または1601上にカーソルを置いた状
態でアイコンをクリックし、マウスの左ボタンをクリックし、マウスを上下に移動させる
と、これによりこの効果を受ける領域のサイズを調整する。
【0083】
<接点の編集>
次に図17A~17Bを参照すると、歯科修復物設計プログラムは、自動で咬合接点、
近心接点、および遠心接点を調整する接点編集機能1701を備える。本プログラムは所
望であれば、最初に無効にできる所定の接点値を提示する。咬合を調整するために、ユー
ザは所望の接点値を入力し、接点固定ボタンを押す。接点は自動で割り当てられた仕様に
合わせて調整される。
【0084】
近心接点および遠心接点は同様にして調整される。ユーザは、接点編集ウィンドウ17
01内の近心ボタンまたは遠心ボタンを押すことによって、近心/遠心接点インジケータ
をオンに切り替える。近心接点および遠心接点は一緒にまたは別個に調整可能である。ユ
ーザは所望の接点値を入力し接点固定ボタンを押す。
【0085】
一実施形態では、接点領域1802は形成顎の可視性をオフすることによって見ること
ができるため、図18に示すように修復物1801のビューを切り離すことができる。
【0086】
さらなる実施形態において、歯の位置決めのための所定の接点値または範囲が確立され
るプロセスが提供され、「合格」/「失敗」等のプロンプトがユーザ出力装置に表示され
、設計提案の接点値が計算されて所定の範囲内にあるかどうか示すことができる。計算さ
れた接点値は所定の接点値範囲外であると判断された場合、実際の数値を表示する代わり
に「狭い」または「広い」等のプロンプトが自動的に表示されて、提案された修復物の接
点値が所定の接点値未満またはそれを超える値であるかどうかを示す。さらなる実施形態
において、提案される設計提案の接点値を評価し、提案される設計提案が所定の接点値範
囲内であるかどうか計算し、ライブラリ歯の配置を自動で調整して設計提案を調整し、所
定範囲内である接点値を得るための自動手順が提供される。
【0087】
<切削スプルーの配置>
図19を参照して、ユーザが設計された修復物1901に満足すれば、切削スプルー1
902を配置するために完成品の修復物1901が表示される。クラウン修復物に切削ス
プルー1902が自動で修復物1901の輪郭の高さで舌側面に置かれる。これは図19
に示される。これは典型的には切削プロセスの好ましい位置である。しかし、ユーザは必
要に応じて別の所望の位置にスプルー1902を自由に移動できる。一実施形態では、修
復物設計プログラムはマージンを保護する制限を含むため、ユーザがスプルー1902を
マージンに近づけすぎないようにする。
【0088】
<製造ファイルの製作センターへの送信>
歯科修復物設計が完了すると、歯科修復物を製造するための命令が設計から生成され、
製作マシンに送信される。例えば、一実施形態において、ユーザがスプルー1902の位
置に満足すると、ユーザは歯科修復物プログラムに、切削機または他の製作機構への命令
を提供するための製造ファイル408の生成を開始するよう命令できる。これらの命令は
次に修復物製作デバイスまたは方法への入力として使用される。
【0089】
例えば、図20に示すように、切削機2000は、歯科修復物設計システム400から
受信した中間データセット情報および最終データセット情報に基づき歯科器具を製作する
ように構成される。簡単な剛性箱構造により、当該構造に直接設置された静的設置線形Z
軸2001、線形ステージに支持される動的設置B回転軸2002、およびB回転軸中心
からずらされた対向する静的設置A回転軸2003からなる動作制御機構を支持する。ス
ピンドル2004はさらに動的設置された回転軸に支持される。スピンドル2004は線
形Z軸2001の移動によりスピンドル回転に対して軸方向に並進移動できる。静的設置
されたA回転軸2003は、「インデクサ」2005と称される別の回転軸を支持する。
インデクサ2005は機械加工される材料を支持する。インデクサ2005により複数の
角度からの被加工物へのアクセスが可能になり、電気駆動式または空気圧駆動式の開ルー
プまたは閉ループであってよく、非同時位置決めまたは他の軸との完全同期動作のために
使用されてよい。またこれは圧電アクチュエータまたは被加工物を超音波で励起する他の
手段を支持してもよい。好適なチェアサイド切削マシンは、2012年6月13日出願の
同時係属の米国特許出願シリアル番号第13/495,620号に開示され、その全体が
参照として本明細書に組み込まれる。切削マシンおよびその使用の詳細がその明細書に記
載され、ここでは再度記載しない。
【0090】
いくつかの実施形態において、切削機2000はチェアサイド切削機であってよく、歯
科医またはその他のユーザに容易にアクセス可能であってよい。分散環境を使用するその
他の実施形態では、切削機2000またはその他の製作マシンはリモート位置に位置し、
設計システム400からネットワークまたはその他の通信機構によりデータセット情報を
受信する。歯科医または製造業者は適切な切削可能コンポーネントを選択し、これを切削
マシン2000内に置く(図20参照)。このような設置の後、切削マシンは送信された
製造指示に従ってコンポーネントを完成品の修復物へと切削し、マンドレルの分離および
研磨またはろう付けのみ必要とする。
【0091】
さまざまな代替、変形、および均等物が上記コンポーネントの代わりに使用できる。歯
の最終位置はコンピュータ支援技術を使用して決定されてよいが、ユーザは、独立して1
本以上の歯を操作すると同時に指示書の制約を満たすことによって歯をそれらの最終位置
へと移動できる。
【0092】
また、本明細書で記載される技術はハードウェアまたはソフトウェアで、またはその2
つの組み合わせで実施されてよい。本技術は、それぞれがプロセッサ、プロセッサにより
読み取り可能な記憶媒体(揮発性メモリおよび不揮発性メモリならびに/または記憶素子
を含む)、ならびに好適な入力装置および出力装置を備えるプログラム可能なコンピュー
タ上で実行されるコンピュータプログラムで実施されてよい。プログラムコードは入力装
置を使用して入力されるデータに適用されて記載される機能を実行し、出力情報を生成す
る。出力情報は1つ以上の出力装置に適用される。
【0093】
各プログラムは、コンピュータシステムに連動して動作するようにハイレベルな手続き
型言語またはオブジェクト指向プログラミング言語で実施され得る。しかし、このプログ
ラムは所望であればアセンブリ言語またはマシン言語で実施できる。いずれの場合も言語
はコンパイラ型言語またはインタープリタ型言語であってよい。
【0094】
このようなコンピュータプログラムはそれぞれ記憶媒体またはデバイス(例えば、CD
-ROM、ハードディスク、または磁気ディスケット)に保存可能であり、これは記憶媒
体またはデバイスがコンピュータに読み取られ、記載される手順を実行するときにコンピ
ュータを構成し、動作させる汎用または専用のプログラム可能なコンピュータに読み取ら
れる。本システムはまた、コンピュータ可読記憶媒体として実装され、コンピュータプロ
グラムによって構成され、ここでこのように構成された記憶媒体によってコンピュータを
特定の予め定義された方法で動作させる。いくつかの実施形態において、本システムは、
一時的な伝搬信号のみを除くコンピュータ可読媒体のいずれかまたはすべてを意味する「
非一時的な」コンピュータ可読記憶媒体で実施される。
【0095】
特定の実施形態の観点から前述のシステムおよび方法について説明した。他の実施形態
は以下の特許請求の範囲に包含されるものである。例えば、歯模型は、対応する患者およ
び治療する臨床医にアクセスを制限するためハイパテキスト転送プロトコル(http)
ウェブサイトにポストしてもよい。さらなる例として、記載されたプロセスの実践はスキ
ャンデバイス(口腔内等)および/またはコンピュータおよび/または製作施設および/
または歯科技工室および/またはサーバ等のデバイスで複数の方法で分散されてもよく、
または機能のすべてを専用独立型デバイスに組み込んでもよい。このような変更と組み合
わせはすべて、本開示の範囲内にあることを意図している。
【0096】
いくつかの実施形態において、自動でコンピュータにより実行されるプロセスが提供さ
れ、それによって、本明細書に記載されるプロセスの個々のモジュールまたはステップは
、ユーザから離れているか知らない場所にあるサーバ上で実行され、ユーザ側の入力また
は知識は最小限でプロセスまたは設計ステップを実行できる。例えば、クラウドコンピュ
ーティング環境の一実施形態では、本明細書に記載されるプロセスは、ユーザにより操作
される製品ではなくサービスとして実施されてよく、ソフトウェアおよび情報はネットワ
ーク上で提供されてよい。一実施形態において、例えば歯科技工室または歯科医院内のロ
ーカルコンピュータに保存される患者の歯列のスキャンモデルを含む患者記録は、リモー
トサーバによってネットワークインタフェースを介して送信または受信され、クラウドコ
ンピューティング環境で処理されてもよい。クラウドコンピューティング環境では、計算
、ソフトウェア保存、データアクセスおよびデータ保存のサービスはリモートサーバ上に
存在してよく、プロセスはユーザ側の入力が最小限で行われ得る。一実施形態において、
ライブラリ歯列弓形態、ライブラリ歯、およびライブラリ歯咬頭のデータファイルはユー
ザから離れた場所に保存されてもよい。
【0097】
一実施形態において、第1のコンピュータからユーザインターフェースを介して患者の
スキャンモデルを得ることと、クラウドコンピューティング環境で、支台歯のマージン線
を引くこと、スキャンモデルの咬頭を識別すること、ならびにスキャンモデルの咬頭に頬
側弧線および舌側弧線をフィッティングすることから選択される少なくとも1つの方法ス
テップを実行することと、クラウドコンピューティング環境で、倍率を計算すること、患
者の歯列とほぼ対応するようにライブラリ歯列弓形態をスケーリングすること、ならびに
スキャンモデルとライブラリ歯列弓形態の頬側弧線および舌側弧線をレジストレーション
することから選択される少なくとも1つの方法ステップを実行することと、ならびに修復
物設計を提案することとを含むコンピュータにより実行される方法が提供される。別の実
施形態では、設計提案等のクラウドコンピューティングプロセスから生成された情報は、
患者の口内に置かれる物理的歯科修復物を作成するためにネットワークインタフェースを
介してユーザに送信されるか、または切削機等の製造デバイスに送信されてよい。
【0098】
さらなる実施形態において、コンピュータにより実行される方法は、ユーザインターフ
ェースを介して支台歯を含む患者の歯列の仮想3次元表示を得ることと、支台歯用の仮想
歯科修復物を形成することとを含む歯科修復物を設計することのために提供され、修復物
を形成するステップは、支台歯のマージン線を引くこと、患者の歯列の3次元表示上の咬
頭を識別すること、患者の歯列の咬頭に頬側弧線および舌側弧線をフィッティングするこ
と、患者の歯列の弧線に対応するようにライブラリ歯列弓形態の一対の頬側弧線および舌
側弧線をスケーリングすること、患者の歯列の仮想3次元表示とライブラリ歯列弓形態と
をレジストレーションすること、ならびに修復物設計を提案することを含み、仮想歯科修
復物を形成するプロセスステップのうち少なくとも1つはクラウドコンピューティング環
境で実行される。
【0099】
また、前述のシステムおよび方法は1つ以上の実施形態を参照して示され、説明されたが、当業者は上述のおよびその他の形態および詳細ならびにプロセスステップの順序の変更が以下の特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく行われ得ることを理解するであろう。さらに、プロセス、モジュール、プログラム、規則、ステップ等の要素は別個のコンポーネントとして、または他のコンポーネントと組み合わせて実施されてよいため、本開示の原理の範囲および趣旨に含まれる。本発明の態様は次の通りである。
[態様1]
患者のために歯科修復物を提供するコンピュータにより実行される方法であって、 少なくとも1本の支台歯および前記支台歯に隣接する少なくとも1本の隣接歯を含む患者の歯列の少なくとも一部の仮想3次元表示を用意するステップと、
前記仮想3次元表示の前記支台歯の形成用マージンを識別するステップと、 前記支台歯の修復物設計を設計するステップであって、
前記隣接歯の前記仮想3次元表示に最も合致するライブラリ歯を仮想歯ライブラリから探して、前記仮想歯ライブラリのライブラリ歯列弓形態を提供する工程であって、前記ライブラリ歯列弓形態は、前記支台歯に対応するライブラリ歯と、前記隣接歯の前記仮想3次元表示に最も合致する前記ライブラリ歯とを含む、工程と、
前記仮想3次元表示に合うように前記ライブラリ歯列弓形態を配置する工程と、
前記隣接歯に対応する前記ライブラリ歯を前記3次元表示の前記隣接歯に位置合わせする工程と、
前記隣接歯に対応する前記ライブラリ歯に基づき、前記支台歯に対応する前記ライブラリ歯の位置、配向、およびスケールを補間する工程とを含むステップと、
前記支台歯の前記修復物設計を提案するステップとを含む、コンピュータにより実行される方法。
[態様2]
前記方法はさらに、前記修復物設計を変更して最終修復物設計を得るステップを含む、態様1に記載のコンピュータにより実行される方法。
[態様3]
前記方法はさらに、前記最終修復物設計を使用して最終修復物を製造するステップを含む、態様2に記載のコンピュータにより実行される方法。
[態様4]
前記方法はさらに、前記ライブラリ歯列弓形態を前記仮想3次元表示にフィッティングするステップを含み、
前記フィッティングするステップは、前記ライブラリ歯列弓形態を近心にシフトさせる工程、前記ライブラリ歯列弓形態を均一にスケーリングする工程、前記ライブラリ歯列弓形態を頬側にシフトさせる工程、および、前記ライブラリ歯列弓形態を咬合方向のまわりに回転させる工程のうちの1つ以上を含む、請求項1に記載のコンピュータにより実行される方法。
[態様5]
前記隣接歯に対応する前記ライブラリ歯を位置合わせする工程は、前記隣接歯に対応する前記ライブラリ歯を頬側にシフトさせる工程、前記隣接歯に対応する前記ライブラリ歯を咬合方向にシフトさせる工程、前記隣接歯に対応する前記ライブラリ歯を近遠心にシフトさせる工程、および、前記隣接歯に対応する前記ライブラリ歯をスケーリングする工程のうち1つ以上を含む、態様1に記載のコンピュータにより実行される方法。
【符号の説明】
【0100】
100 口腔内歯科用スキャンシステム
101 ベースユニット
102 コンピュータ
103 スキャンデバイス
104 タッチスクリーン
105 スタイラス
106 受け台
107 ホイール
108 消毒剤容器
109 ワンド
110 コード
201 歯肉圧排コード
202 歯肉圧排コード
203 支台歯
204 歯肉
301 形成顎
302 対合顎
400 歯科修復物設計システム
401 コンピュータ
402 プロセッサ
403 メモリ
404 通信インタフェース
405 入力インタフェース
406 モニタ、ユーザ出力装置
407 患者記録
408 製造ファイル、電子記録
500 スキャンモデル、スキャンデータ
501 マージン線
504 支台歯
505 断面ウィンドウ
600 スキャンモデル
601 マージン線
602 オフセット面コンポーネント
603 支台歯、オフセット面コンポーネント
604 オフセット
607 特徴
608 対合歯列
700 スキャンモデル
701 上部歯列弓
702 下部歯列弓
703 オフセット面コンポーネント
704 対合歯列
705 スポット
800 スキャンモデル
801 仮想ショートコーピングモデル
802 支台歯
803 突出領域
804 空間
900 歯ライブラリ
901 ライブラリ歯
902 咬合方向
903 頬側方向
904 上部
905 分割線
906 ライブラリ歯列弓形態
907 支台歯
908 スキャンモデル
909 マージン線
1000 スキャン
1100 スキャン
1104 ライブラリ歯、 支台歯
1106 隣接歯
1107 歯番号
1108 仮想ワイヤ
1109 ワイヤ点
1201 自動特徴検出
1202 自動弧線フィッティング
1203 自動スケーリング
1204 自動剛体レジストレーション
1205 非剛体レジストレーション
1206 修復物設計提案
1209 手動プロセス
1210 手動最適化ステップ
1300 スキャンモデル
1301 頬側咬頭、逸脱点
1302 舌側咬頭
1304 双頭歯
1305 臼歯
1306 咬合面
1307 上顎
1308 下顎
1309 支台歯
1310 頬側弧線
1311 舌側弧線
1312 頬側弧線
1313 舌側弧線
1314 ライブラリ歯列弓形態
1315 ライブラリ歯
1316 領域
1501 ライブラリ歯、修復物
1502 球
1503 矢印
1504 バー
1506 歯列弓形態
1601 修復物、初期修復物提案
1606 歯列弓形態
1701 接点編集機能
1801 修復物
1802 接点領域
1901 修復物
1902 切削スプルー
2000 切削マシン
2001 線形Z軸
2002 動的設置回転B軸
2003 A軸回転
2004 スピンドル
2005 インデクサ
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図9D
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図13D
図13E
図13F
図13G
図14A
図14B
図15
図16
図17A
図17B
図18
図19
図20