(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】巨細胞性動脈炎の治療
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20240528BHJP
A61K 31/573 20060101ALI20240528BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240528BHJP
A61P 9/14 20060101ALI20240528BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240528BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240528BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240528BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240528BHJP
C07K 16/22 20060101ALN20240528BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240528BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61K31/573
A61P9/10
A61P9/14
A61P29/00
A61P37/02
A61P37/06
A61P43/00 121
C07K16/22
C12N15/13 ZNA
(21)【出願番号】P 2021524369
(86)(22)【出願日】2019-11-07
(86)【国際出願番号】 US2019060255
(87)【国際公開番号】W WO2020097321
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2022-11-07
(31)【優先権主張番号】PCT/US2019/044231
(32)【優先日】2019-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517020643
【氏名又は名称】キニクサ ファーマシューティカルズ, リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】パオリーニ, ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ガンディ, ローハン
【審査官】原口 美和
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-520987(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/395
A61K 31/573
A61P 9/10
A61P 9/14
A61P 29/00
A61P 37/02
A61P 37/06
A61P 43/00
C07K 16/22
C12N 15/13
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療を必要とする対象において巨細胞性動脈炎(GCA)を治療するための組成物であって、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)拮抗薬を含
み、前記GM-CSF拮抗薬がヒトGM-CSFRαに特異的な抗体である、組成物。
【請求項2】
前記抗GM-CSFRα抗体が、マブリリムマブである、請求項
1に記載の組成物。
【請求項3】
前記対象が、50~85歳である、請求項1
または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記巨細胞性動脈炎が、新規発症の疾患である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記巨細胞性動脈炎が、再発性疾患である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記巨細胞性動脈炎が、難治性疾患である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記治療が、GCAに関連する
少なくとも一つの疾患症状
の予防、低減または改善をもたらす、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記治療が、GCAに関連する症状の排除をもたらす、請求項
7に記載の組成物。
【請求項9】
前記治療が、動脈炎症を低減し、および/またはGCA病変に関連する遺伝子の発現を低減する、請求項
7または
8に記載の組成物。
【請求項10】
GCA病変に関連する遺伝子の前記発現の低減は、GM-CSF、GM-CSFRα、JAK2、IL-6、CD83、PU.1、HLA-DRA、CD3E、TNFα、IL-1β、またはそれらの組み合わせから選択されるタンパク質および/またはメッセンジャーRNA(mRNA)の発現の低減をもたらす、請求項
9に記載の組成物。
【請求項11】
前記治療が、浸潤したマクロファージの低減もしくは除去、血管外膜におけるT細胞の低減、側頭動脈の栄養血管におけるGM-CSFRα発現の低減、炎症性浸潤の密度の低減、および/または血管壁リモデリングの低減もしくは安定化をもたらす、請求項
7~1
0のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記治療が
、動脈壁におけるGM-CSFまたはINF-γ陽性の細胞の低減をもたらす、請求項
7~1
1のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記治療が、GCAを有さない対象に匹敵する遺伝子発現レベルに戻す、請求項
7~1
2のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記治療が、インターフェロンシグナル伝達、IL-6シグナル伝達、および/またはGM-CSFシグナル伝達に関連する遺伝子の遺伝子発現レベルを元に戻す、請求項1
3に記載の組成物。
【請求項15】
前記治療が、INF-γ、INF-αR1、INF-γR1、INF-γR2、IFI30、IFI35、PRKCD、B2M、IFNAR1、CIITA、PTPN2、PTPN11、IRF1、IFR5、IRF8、GBP1、GBP5、STAT1、STAT2、FCγR1A/B、ICAM1、VCAM1、TYK2、CD44、IP6K2、DDX58、PTPN6、またはそれらの組み合わせから選択されるインターフェロンシグナル伝達に関連する遺伝子の遺伝子発現レベルを元に戻す、請求項
14に記載の組成物。
【請求項16】
前記治療が、PTPN11、TYK2、STAT1、IL-11RA、IL-6、またはそれらの組み合わせから選択されるIL-6シグナル伝達に関連する遺伝子の遺伝子発現レベルを元に戻す、請求項
14に記載の組成物。
【請求項17】
前記治療が、IL-2RB、IL-2RG、GM-CSFRα、JAK3、STAT5A、SYK、PTPN11、HCK、FYN、INPP5D、BLNK、PTPN6、またはそれらの組み合わせから選択されるGM-CSFシグナル伝達に関連する遺伝子の遺伝子発現レベルを元に戻す、請求項
14に記載の組成物。
【請求項18】
巨細胞性動脈炎に関連する前記
少なくとも一つの疾患症
状が、発熱、疲労、体重減少、頭痛、側頭の圧痛、および顎の不規則運動;一過性単眼視力喪失(TMVL)および前部虚血性視神経症(AION)、大動脈瘤および
/または脈管炎を含む、請求項
7~
17のいずれかに記載の組成物。
【請求項19】
前記対象が、前記組成物の投与前に血清炎症マーカーCRP≧1mg/dLを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
GM-CSF拮抗薬を含む前記組成物が、150mgの用量で投与されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
GM-CSF拮抗薬を含む前記組成物が、2週間に1回投与されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
前記組成物が、静脈内投与または皮下投与によって投与されることを特徴とする、請求項
2に記載の組成物。
【請求項23】
前記対象が、追加の治療剤と併用投与されることを特徴とする、請求項1~2
2のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
前記追加の治療剤が、コルチコステロイドである、請求項2
3に記載の組成物。
【請求項25】
前記コルチコステロイドがプレドニゾンである、請求項
24に記載の組成物。
【請求項26】
前記コルチコステロイドの用量が、前記GM-CSF拮抗薬での治療の過程にわたって減らされる、請求項24または25に記載の組成物。
【請求項27】
前記追加の治療剤が
、併用投与されるコルチコステロイドであ
り、前記併用投与されるコルチコステロイドの用量が、26週間の前記GM-CSF拮抗薬での治療の過程にわたって減らされる、請求項
23に記載の組成物。
【請求項28】
GM-CSF拮抗薬を含む前記組成物の投与が、血清炎症マーカーCRPを<1mg/dLに低減する、請求項1~
27のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
GM-CSF拮抗薬を含む前記組成物の投与が、ESR≦30mm/時に低減する、請求項1~
28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
GM-CSF拮抗薬を含む前記組成物の投与が、GCAに関連する症状の持続的寛解をもたらす、請求項1~
29のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項31】
前記寛解が、併用投与されるコルチコステロイドの低減と共に持続する、請求項3
0に記載の組成物。
【請求項32】
前記持続的寛解が、実質的にコルチコステロイドを含まない、請求項3
1に記載の組成物。
【請求項33】
前記持続的寛解が、コルチコステロイドを含まない、請求項3
2に記載の組成物。
【請求項34】
GM-CSF拮抗薬を含む前記組成物の投与が、26週間の持続的寛解を達成している患者をもたらす、請求項1~3
3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項35】
前記抗GM-CSFRα抗体が、配列番号6によって定義される軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、配列番号7によって定義される軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、および配列番号8によって定義される軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)、ならびに配列番号3によって定義される重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、配列番号4によって定義される重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、および配列番号5によって定義される重鎖相補性決定領域3(HCDR3)を含む、請求項
1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年8月6日に出願された米国仮特許出願第62/883,378号、および2018年11月9日に出願された米国仮特許出願第62/758,127号、2018年12月19日に出願された第62/782,194号、および2019年1月28日に出願された第62/797,813号の優先権を腫瘍する、2019年7月30日に出願された国際特許出願第PCT/US2019/44231号の利益および優先権を主張するものであり、これらの各々の内容は、本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表の参照による組み込み
2019年11月4日に作成され、サイズが3.77KBである「KPL-034WO2_SL_ST25.txt」という名称のテクストファイルの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
巨細胞性動脈炎(GCA)は、原発性全身性血管炎の最も一般的な形態であると考えられている。疾患は、頸動脈の頭側枝の偏向を伴う中から大血管の炎症により特徴付けられる。米国におけるこの疾患の有病率は、約75,000~150,000であると推定される。リスク要因には、年齢、性別、人種および地理的地域、家族歴ならびにリウマチ性多発筋痛症などの他の疾患および健康状態との関連が含まれる。治療を受けないままでいると、GCAは、失明に至り、大動脈瘤および脳卒中を引き起こし、致死的となる可能性があり得る。
【0004】
疾患の病因はあまり知られていない。現在の患者ケアには、疑いのある診断後に患者をステロイド治療することが含まれる。GCAの一般的に受け入れられている疾患管理の過程は、高用量のコルチコステロイド療法であり、通常、40~60mg/日の経口プレドニゾン用量で始まる。一部の患者に有効であるにもかかわらず、ステロイドに関連する合併症を考慮すると、用量が低減され、ステロイド節約治療の選択肢が必要とされ、多くの患者は、疾患フレアを経験し続けるため、コルチコステロイドの離脱が不可能である。したがって、現場で対処されるべき高いアンメットメディカルニーズが存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、特に、GCAをする方法を提供する。一態様では、本発明は、疾患の病態生理における顆粒球コロニー刺激因子の役割の近年の見解に基づく。本発明は、GCAをするための方法であって、治療を必要とする対象に、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)拮抗薬を含む組成物を投与することを含む方法を提供する。本明細書で使用される場合、「GM-CSF拮抗薬」は、GM-CSFまたはその受容体(GM-CSFR)と相互作用して、そうでなければ、GM-CSFのその同族受容体への結合から生じるシグナル伝達を(部分的もしくは完全に)低減または遮断する阻害剤、化合物、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、または抗体を指す。一部の実施形態では、GM-CSF拮抗薬は、抗GM-CSF抗体である。一部の実施形態では、GM-CSF拮抗薬は、顆粒球-マクロファージコロニー-刺激因子受容体アルファ(GM-CSFRα)拮抗薬である。GM-CSF受容体拮抗薬は、ヒトGM-CSFRαに特異的な抗体である。抗GM-CSFRα抗体は、ヒトまたはヒト化抗体である。
【0006】
一部の実施形態では、抗GM-CSFRα抗体は、マブリリムマブである。マブリリムマブおよびそのバリアントの単離および特徴決定は、先行の知見、例えば、国際公開第2007/110631号において記載され、これは、参照により完全に取り込まれる。一部の実施形態では、抗GM-CSFRα抗体は、配列番号6によって定義される軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、配列番号7によって定義される軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、および配列番号8によって定義される軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)、ならびに配列番号3によって定義される重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、配列番号4によって定義される重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、および配列番号5によって定義される重鎖相補性決定領域3(HCDR3)を含む。
【0007】
一部の実施形態では、抗体は、前述の特許出願に記載される抗GM-CSFRα抗体のバリアントである。一部の実施形態では、抗GM-CSFRα抗体は、配列番号2と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域、および配列番号1と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む。一部の実施形態では、軽鎖可変領域は、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有し、重鎖可変領域は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有する。
【0008】
一実施形態では、本発明の方法は、50~85歳の患者集団におけるGCAをする。一実施形態では、巨細胞性動脈炎は、新規発症疾患である。別の実施形態では、巨細胞性動脈炎は、再発性疾患である。別の実施形態では、巨細胞性動脈炎は、難治性疾患である。
【0009】
一部の実施形態では、抗GM-CSFRα抗体は、メトトレキサートまたはコルチコステロイド、およびそれらの組み合わせなどの免疫調節薬を含む他の薬剤と併用して投与され、抗GM-CSFRαモノクローナル抗体での治療後、このような併用薬のうちの一つまたは複数から任意選択的に離脱される。一実施形態では、抗GM-CSFRα抗体療法は、コルチコステロイドと共投与される。一部の実施形態では、コルチコステロイドは、プレドニゾンである。一部の実施形態では、対象は、抗GM-CSFRα抗体療法を、ステロイドテーパと共に投与され、すなわち、対象は、抗GM-CSFRαモノクローナル抗体療法が開始された後に、コルチコステロイドの併用投与から徐々に離脱する。一部の実施形態では、対象のステロイド併用投与からの下降または離脱の成功は、抗GM-CSFRα抗体療法の有効性の尺度である。一部の実施形態では、(1)対象のステロイド併用投与(ステロイドテーパ)からの下降または離脱、および(2)一つまたは複数の症状の再発の不存在下での患者の臨床安定性の維持の両方の態様は、抗GM-CSFRα抗体療法の有効性の尺度である。
【0010】
一部の実施形態では、抗GM-CSFRα抗体での対象の治療は、GCAに付随する疾患症状の少なくとも一つの進行を低減もしくは改善するか、または遅延もしくは停止させる。一部の実施形態では、は、GCAに付随する疾患症状の予防をもたらす。GCAに付随する症状には、発熱、疲労、体重減少、頭痛、側頭の圧痛、および顎の不規則運動、一過性単眼視力喪失(TMVL)および前部虚血性視神経症(AION)、大動脈瘤および血管炎が含まれる。一実施形態では、疾患のバイオマーカーは、血清炎症マーカーCRP≧1mg/dLである。一実施形態では、疾患のバイオマーカーは、ESR≧30mm/時間である。一実施形態では、抗GM-CSFRα抗体の投与は、血清炎症マーカーCRP<1mg/dLおよび/またはESR≦30mm/時間の低下をもたらす。一実施形態では、抗GM-CSFRα抗体の投与は、血清炎症マーカーCRP<1mg/dLおよび/またはESR≦30mm/時間の26週間以上の持続した低下をもたらす。
【0011】
一部の実施形態では、は、GCAに付随する症状の排除をもたらす。一部の実施形態では、は、動脈炎症を低減し、および/またはGCA病変に関連する遺伝子の発現を低減する。一部の実施形態では、GCA病変に関連する遺伝子の発現の低減は、GM-CSF、GM-CSFRα、JAK2、IL-6、CD83、PU.1、HLA-DRA、CD3E、TNFα、IL-1β、またはそれらの組み合わせから選択されるタンパク質および/またはメッセンジャーRNA(mRNA)の発現の低減をもたらす。したがって、一部の実施形態では、は、GM-CSFの発現を低減する。一部の実施形態では、は、GM-CSFαの発現を低減する。一部の実施形態では、は、JAK2の発現を低減する。一部の実施形態では、は、IL-6の発現を低減する。一部の実施形態では、は、CD83の発現を低減する。一部の実施形態では、は、PU.1の発現を低減する。一部の実施形態では、は、HLA-DRAの発現を低減する。一部の実施形態では、は、CD3Eの発現を低減する。一部の実施形態では、は、TNFαの発現を低減する。一部の実施形態では、は、IL-1βの発現を低減する。
【0012】
一部の実施形態では、は、浸潤したマクロファージの低減もしくは除去、血管外膜におけるT細胞の低減、側頭動脈の栄養血管におけるGM-CSFR発現の低減、炎症性浸潤の密度の低減、および/または血管壁リモデリングの低減もしくは安定化をもたらす。一部の実施形態では、は、動脈壁におけるGM-CSFまたはINF-γについて陽性の細胞の低減をもたらす。一部の実施形態では、は、動脈壁におけるGM-CSFについて陽性の細胞の低減をもたらす。一部の実施形態では、は、動脈壁におけるINF-γについて陽性の細胞の低減をもたらす。一部の実施形態では、は、動脈壁におけるGM-CSFおよびINF-γについて陽性の細胞の低減をもたらす。
【0013】
一部の実施形態では、は、GCAを有さない対象に匹敵する遺伝子発現レベルを標準に戻す。一部の実施形態では、は、インターフェロンシグナル伝達、IL-6シグナル伝達および/またはGM-CSFシグナル伝達に関連する遺伝子の遺伝子発現レベルを標準に戻す。一部の実施形態では、は、INF-γ、INF-αR1、INF-γR1、INF-γR2、IFI30、IFI35、PRKCD、B2M、IFNAR1、CIITA、PTPN2、PTPN11、IRF1、IFR5、IRF8、GBP1、GBP5、STAT1、STAT2、FCγR1A/B、ICAM1、VCAM1、TYK2、CD44、IP6K2、DDX58、PTPN6、またはそれらの組み合わせから選択されるインターフェロンシグナル伝達に関連する遺伝子の遺伝子発現レベルを標準に戻す。一部の実施形態では、は、PTPN11、TYK2、STAT1、IL-11RA、IL-6、またはそれらの組み合わせから選択されるIL-6シグナル伝達に関連する遺伝子の遺伝子発現レベルを標準に戻す。一部の実施形態では、は、IL-2RB、IL-2RG、GM-CSFRα、JAK3、STAT5A、SYK、PTPN11、HCK、FYN、INPP5D、BLNK、PTPN6、またはそれらの組み合わせから選択されるGM-CSFシグナル伝達に関連する遺伝子の遺伝子発現レベルを標準に戻す。
【0014】
一部の実施形態では、併用投与されたコルチコステロイドの用量は、GM-CSF拮抗薬での治療の過程にわたって次第に少なくされる。一部の実施形態では、ステロイドテーパは、26週間にわたって塗られる。一部の実施形態では、ステロイドテーパは、52週間にわたって塗られる。一部の実施形態では、ステロイドテーパは、26週間~52週間の任意の期間にわたって塗られる。
【0015】
一実施形態では、抗GM-CSFRα抗体を含む組成物は、約150mgの用量で投与される。一部の実施形態では、抗GM-CSFRαを含む組成物は、150mgの用量で投与される。一部の実施形態では、抗GM-CSFRα抗体を含む組成物は、皮下投与される。一部の実施形態では、抗GC-CSFRα抗体を含む組成物は、静脈内投与される。一部の実施形態では、抗GM-CSFRα抗体を含む組成物は、2週間に1回投与される。一部の実施形態では、抗GM-CSFRα抗体を含む組成物は、1週間に1回投与される。一部の実施形態では、マブリリムマブは、150mgの用量で週に1回、静脈内投与または皮下投与により投与される。一部の実施形態では、マブリリムマブは、150mgの用量で2週に1回、静脈内投与または皮下投与により投与される。
【0016】
一実施形態では、GCAをするための抗GM-CSFRα抗体の治療上有効な用量は、0.1mg/kg、0.3mg/kg、0.5mg/kg、0.7mg/kg、1mg/kg、1.25mg/kg、1.5mg/kg、1.75mg/kg、2mg/kg、5mg/kg、7.5mg/kg、または10mg/kg以上である。
【0017】
一部の実施形態では、0.5~2.5mg/kgの治療有効用量は、皮下投与によって送達される。
【0018】
一部の実施形態では、治療有効用量は、週に1回投与される。一部の実施形態では、治療有効用量は、週に2回投与される。一部の実施形態では、治療有効用量は、週に2回投与される。
【0019】
一部の実施形態では、対象は、追加の治療剤を併用投与される。一部の実施形態では、追加の治療剤は、コルチコステロイドである。一部の実施形態では、コルチコステロイドは、プレドニゾンである。一部の実施形態では、追加の治療剤は、26週間にわたって塗られる、併用投与されるコルチコステロイドである。
【0020】
一部の実施形態では、抗GM-CSFRα抗体を含む組成物の投与は、血清炎症マーカーCRPを<1mg/dLに低減する。一部の実施形態では、抗GM-CSFRα抗体を含む組成物の投与は、ESR≦30mm/時間に低減する。一部の実施形態では、抗GM-CSFRα抗体を含む組成物の投与は、GCAに付随する症状の持続的寛解をもたらす。一部の実施形態では、抗GM-CSFRα抗体を含む組成物の投与は、患者に、約26週間、GCAに付随する症状の持続的寛解をもたらす。一部の実施形態では、抗GM-CSFRα抗体を含む組成物の投与は、患者に、26週間、GCAに付随する症状の持続的寛解をもたらす。
【0021】
一部の実施形態では、寛解は、併用投与されるコルチコステロイドの低減と共に持続する。一部の実施形態では、持続的寛解は、コルチコステロイドを実質的に含まない。一部の実施形態では、持続的寛解は、コルチコステロイドを含まない。
【0022】
上記の全ての実施形態は、本発明の全ての態様に適用可能であることは、理解されるべきである。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
巨細胞性動脈炎(GCA)を治療する方法であって、治療を必要とする対象に、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)拮抗薬を含む組成物を投与することを含む、方法。
(項目2)
前記GM-CSF拮抗薬が、GM-CSF受容体拮抗薬である、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記GM-CSF受容体拮抗薬が、ヒトGM-CSFRαに特異的な抗体である、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記抗GM-CSFRα抗体が、マブリリムマブである、項目3に記載の方法。
(項目5)
前記GM-CSF拮抗薬が、GM-CSFに特異的な抗体である、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記抗GM-CSF抗体が、ナミルマブ、オチリマブ、ギムシルマブ、レンジルマブ、またはTJM-2である、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記対象が、50~85歳である、項目1~6のいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
前記巨細胞性動脈炎が、新規発症の疾患である、項目1に記載の方法。
(項目9)
前記巨細胞性動脈炎が、再発性疾患である、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記巨細胞性動脈炎が、難治性疾患である、項目1に記載の方法。
(項目11)
コルチコステロイドを、それを必要とする対象に併用投与することをさらに含む、項目1~10のいずれかに記載の方法。
(項目12)
前記併用投与されたコルチコステロイドの用量が、前記GM-CSF拮抗薬を用いた前記治療の過程にわたって減らされる、項目1~11のいずれかに記載の方法。
(項目13)
前記治療が、GCAに関連する前記疾患症状の少なくとも一つの予防、低減または改善をもたらす、項目1に記載の方法。
(項目14)
前記治療が、GCAに関連する症状の排除をもたらす、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記治療が、動脈炎症を低減し、および/またはGCA病変に関連する遺伝子の発現を低減する、項目13または14に記載の方法。
(項目16)
GCA病変に関連する遺伝子の前記発現の低減は、GM-CSF、GM-CSFRα、JAK2、IL-6、CD83、PU.1、HLA-DRA、CD3E、TNFα、IL-1β、またはそれらの組み合わせから選択されるタンパク質および/またはメッセンジャーRNA(mRNA)の発現の低減をもたらす、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記治療が、浸潤したマクロファージの低減もしくは除去、血管外膜におけるT細胞の低減、側頭動脈の栄養血管におけるGM-CSFRα発現の低減、炎症性浸潤の密度の低減、および/または血管壁リモデリングの低減もしくは安定化をもたらす、項目13~16のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
前記治療が、前記動脈壁におけるGM-CSFまたはINF-γ陽性の細胞の低減をもたらす、項目13~17のいずれか一項に記載の方法。
(項目19)
前記治療が、GCAを有さない対象に匹敵する遺伝子発現レベルに戻す、項目13~18のいずれか一項に記載の方法。
(項目20)
前記治療が、インターフェロンシグナル伝達、IL-6シグナル伝達、および/またはGM-CSFシグナル伝達に関連する遺伝子の遺伝子発現レベルを元に戻す、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記治療が、INF-γ、INF-αR1、INF-γR1、INF-γR2、IFI30、IFI35、PRKCD、B2M、IFNAR1、CIITA、PTPN2、PTPN11、IRF1、IFR5、IRF8、GBP1、GBP5、STAT1、STAT2、FCγR1A/B、ICAM1、VCAM1、TYK2、CD44、IP6K2、DDX58、PTPN6、またはそれらの組み合わせから選択されるインターフェロンシグナル伝達に関連する遺伝子の遺伝子発現レベルを元に戻す、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記治療が、PTPN11、TYK2、STAT1、IL-11RA 、IL-6、またはそれらの組み合わせから選択されるIL-6シグナル伝達に関連する遺伝子の遺伝子発現レベルを元に戻す、項目20に記載の方法。
(項目23)
前記治療が、IL-2RB、IL-2RG、GM-CSFRα、JAK3、STAT5A、SYK、PTPN11、HCK、FYN、INPP5D、BLNK、PTPN6、またはそれらの組み合わせから選択されるGM-CSFシグナル伝達に関連する遺伝子の遺伝子発現レベルを元に戻す、項目20に記載の方法。
(項目24)
巨細胞性動脈炎に関連する前記疾患症状の前記少なくとも一つが、発熱、疲労、体重減少、頭痛、側頭の圧痛、および顎の不規則運動;一過性単眼視力喪失(TMVL)および前部虚血性視神経症(AION)、大動脈瘤および脈管炎を含む、項目1~23のいずれかに記載の方法。
(項目25)
前記対象が、前記組成物の投与前に血清炎症マーカーCRP≧1mg/dLを有する、項目1に記載の方法。
(項目26)
GM-CSF拮抗薬を含む前記組成物が、150mgの用量で投与される、項目1に記載の方法。
(項目27)
GM-CSF拮抗薬を含む前記組成物が、2週間に1回投与される、項目1に記載の方法。
(項目28)
マブリリムマブが、静脈内投与または皮下投与によって投与される、項目4に記載の方法。
(項目29)
前記対象が、追加の治療剤と併用投与される、項目1~28のいずれか一項に記載の方法。
(項目30)
前記追加の治療剤が、コルチコステロイドである、項目29に記載の方法。
(項目31)
前記コルチコステロイドがプレドニゾンである、項目30に記載の方法。
(項目32)
前記追加の治療剤が、26週間にわたって減らされる、併用投与されるコルチコステロイドである、項目11または12に記載の方法。
(項目33)
GM-CSF拮抗薬を含む前記組成物の投与が、血清炎症マーカーCRPを<1mg/dLに低減する、項目1~32のいずれか一項に記載の方法。
(項目34)
GM-CSF拮抗薬を含む前記組成物の投与が、ESR≦30mm/時に低減する、項目1~33のいずれか一項に記載の方法。
(項目35)
GM-CSF拮抗薬を含む前記組成物の投与が、GCAに関連する症状の持続的寛解をもたらす、項目1~34のいずれか一項に記載の方法。
(項目36)
前記寛解が、併用投与されるコルチコステロイドの低減と共に持続する、項目35に記載の方法。
(項目37)
前記持続的寛解が、実質的にコルチコステロイドを含まない、項目36に記載の方法。
(項目38)
前記持続的寛解が、コルチコステロイドを含まない、項目37に記載の方法。
(項目39)
GM-CSF拮抗薬を含む前記組成物の投与が、26週間の持続的寛解を達成している患者をもたらす、項目1~38のいずれか一項に記載の方法。
(項目40)
前記抗GM-CSFRα抗体が、配列番号6によって定義される軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、配列番号7によって定義される軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、および配列番号8によって定義される軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)、ならびに配列番号3によって定義される重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、配列番号4によって定義される重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、および配列番号5によって定義される重鎖相補性決定領域3(HCDR3)を含む、項目3に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図面は、説明を目的とするに過ぎず、限定を目的とはしない。
【0024】
【
図1】
図1は、医療従事者が現在従っているGCA治療アルゴリズムを説明するグラフである。
【0025】
【
図2】
図2は、実施例1に記載される抗GM-CSFRα抗体(グラフィック説明において抗体として指定される)を使用して、本明細書に記載されるGCA臨床研究デザインを描写するグラフィック説明である。
【0026】
【
図3】
図3は、GCA患者における抗GM-CSFRα抗体(グラフィック説明において抗体として指定される)の使用の有効性および安全性に関する、第2相の無作為化二重盲検プラセボ対照の多施設臨床試験のデザインのグラフィック説明を示す。
【0027】
【
図4】
図4は、巨細胞性動脈炎を有する対象(GCA+)、または巨細胞性動脈炎を有さない対照対象(対照)由来の培養された側頭動脈生検におけるハウスキーピング遺伝子のものと比較した、Pu.1 mRNAのmRNA発現レベルを示す。
【0028】
【
図5】
図5は、巨細胞性動脈炎を有する対象(GCA+)、または巨細胞性動脈炎を有さない対照対象(対照)由来の培養された側頭動脈生検におけるハウスキーピング遺伝子のものと比較した、CD83 mRNAのmRNA発現レベルを示す。
【0029】
【
図6A】
図6Aおよび6Bは、GCAを有さない対象から得られた側頭動脈と比較して、GCAを有する対象の側頭動脈から得られた選択された遺伝子発現レベルを示すグラフを示す。データは、GM-CSF-およびT
H1関連遺伝子の発現が、GCAを有さない対象(塗りつぶしていない棒)と比較して、GCAを有する対象(影を付けた棒)において増加することを示す。
【0030】
【
図7A】
図7Aおよび7Bは、巨細胞性動脈炎を有する対象(GCA)、または巨細胞性動脈炎を有さない対照対象(対照)由来の培養された側頭動脈生検におけるハウスキーピング遺伝子GUSbのものと比較した、GM-CSF(
図7A)およびGM-CSF受容体アルファ(GM-CSFRα)(
図7B)のmRNA発現レベルを示す。
図7Cは、巨細胞性動脈炎を有する対象(GCA+)、または巨細胞性動脈炎を有さない対照対象(対照)由来の新鮮側頭動脈生検におけるハウスキーピング遺伝子GUSbのものと比較した、インターフェロン-γのmRNA発現レベルを示す。
【0031】
【
図8A】
図8Aは、GCAを有さない対象と比較して、GCA患者から得られた動脈の遺伝子発現に対するマブリリムマブの作用を評価するために使用された側頭動脈培養モデルを示す、一般化された概略図である。
図8Bは、マブリリムマブまたはプラセボのいずれかに曝露されたGCAを有する対象由来の培養された側頭動脈から得られたデータを示す。GCAと対照動脈の両方について、各血管を、二つのセクションに分け、一つのセクションは、マブリリムマブで、もう一つのセクションは、プラセボで処置された。
図8Bは、GCA動脈をマブリリムマブと共に培養することにより、CD83、PU.1、HLA-DRA、CD3ε、TNFα、およびCXCL10の発現の減少が生じることを示す。同じ患者試料に由来するデータ点は、線で繋げる。
【0032】
【
図9A】
図9Aは、IgG対照抗体または抗GM-CSFRα抗体でインビボで処置された、炎症を起こした移植ヒト動脈におけるCD3
+ T細胞についての免疫組織化学(IHC)染色を示す。
【0033】
【
図9B】
図9Bは、強拡大視野(HPF)当たりのCD3
+細胞の列挙によって測定されたT細胞浸潤物の密度を示すグラフを示す。
【0034】
【
図10】
図10は、IgG対照抗体または抗GM-CSFRα抗体で処置された炎症した動脈における微小血管数および内膜層の厚さを定量化するグラフである。
【0035】
【
図11】
図11は、IgG対照抗体または抗GM-CSFRα抗体で処置された炎症した動脈由来の遺伝子発現ヒートマップである。各行は、遺伝子を表し、各列は、マウスを表す。発現レベルは、0~4にスケール化される。「ns」は、有意ではないことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
定義
本発明がより容易に理解されるように、ある特定の用語が以下で最初に定義される。以下の用語および他の用語の追加の定義は、明細書全体を通して記載される。本発明の背景を説明し、かつその実施に関するさらなる詳細を提供するために本明細書で参照される刊行物および他の参考資料は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0037】
アミノ酸:本明細書で使用される際に、「アミノ酸」という用語は、その最も広い意味で、ポリペプチド鎖に組み込まれ得る任意の化合物および/または物質を指す。一部の実施形態では、アミノ酸は、一般構造H2N-C(H)(R)-COOHを有する。一部の実施形態では、アミノ酸は、天然に生じるアミノ酸である。一部の実施形態では、アミノ酸は合成アミノ酸であり、一部の実施形態では、アミノ酸はD-アミノ酸であり、一部の実施形態では、アミノ酸はL-アミノ酸である。「標準アミノ酸」とは、天然に生じたペプチドに通常見られる20個の標準L-アミノ酸のうちのいずれかを指す。「非標準アミノ酸」とは、合成的に調製されるか天然源から得られるかにかかわらず、標準アミノ酸以外の任意のアミノ酸を指す。本明細書で使用される際に、「合成アミノ酸」は、化学修飾されたアミノ酸を包含し、そのようなものとしては、以下に限定されないが、塩、アミノ酸誘導体(例えばアミドなど)および/または置換体が挙げられる。アミノ酸は、ペプチド中のカルボキシ末端アミノ酸および/またはアミノ末端アミノ酸を含めて、メチル化、アミド化、アセチル化、保護基、および/または他の化学基との置換によって修飾することができ、それらの修飾は、その活性に不利な影響を及ぼすことなくペプチドの循環半減期を変更することができる。アミノ酸は、ジスルフィド結合に関与する場合がある。アミノ酸は、一つまたは複数の翻訳後修飾、例えば、一つ以上の化学物質(例えば、メチル基、塩酸基、アセチル基、リン酸基、ホルミル部分、イソプレノイド基、硫酸基、ポリエチレングリコール部分、脂質部分、炭水化物部分、ビオチン部分等)との会合を含み得る。「アミノ酸」という用語は、「アミノ酸残基」と互換的に使用され、遊離アミノ酸および/またはペプチドのアミノ酸残基を指し得る。この用語が遊離アミノ酸を指すのかまたはペプチドの残基を指すのかは、用語が使用される文脈から明らかになるものとなる。
【0038】
寛解:本明細書で使用される際に、用語「寛解」は、ある状態の予防、低減、もしくは緩和、または対象の状態の改善を意味する。寛解は、疾患症状の完全な回復または完全な予防を含むが、これらを求めるものではない。一部の実施形態では、寛解は、関連する疾患組織に欠損した関連タンパク質またはその活性のレベルの増加を含む。
【0039】
およそまたは約:本明細書で使用される場合、目的とする一つ以上の値に適用される「およそ」または「約」という用語は、提示される参照値と同様の値を指す。特定の実施形態では、「およそ」または「約」という用語は、特に明記しない限り、または文脈からそうでないことが明らかでない限り(そのような数が可能値の100%を超える場合を除く)、記述された参照値のいずれかの方向(より大きいかまたは小さい)で25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、またはそれ未満の値の範囲を指す。
【0040】
送達:本明細書で使用される際に、用語「送達」は、局所送達および全身送達の両方を包含する。
【0041】
半減期:本明細書で使用される場合、「半減期」という用語は、核酸またはタンパク質濃度または活性等の量が、ある期間の最初に測定されたその値の半分に下がるのに必要な時間である。
【0042】
改善する、増加させる、または減少させる:本明細書で使用される際に、用語「改善」、「増加」、もしくは「低減」、または文法的等価物は、ベースライン測定値、例えば、本明細書に記載される治療の開始前の同一個体における測定値、または例えばプラセボ投与される対象など本明細書に記載される治療を行わない対照対象(または複数の対照対象)における測定値などに対する、相対的な値を標示する。「対照対象」とは、治療されている対象と同じ疾患形態に罹患しており、治療されている対象とほぼ同じ年齢の対象である。
【0043】
中和:本明細書で使用される場合、中和とは、中和抗体が結合するタンパク質の生物学的活性の低減または阻害、この場合には、GM-CSFまたはGM-CSFR、例えば、GM-CSFR-介在性応答によって測定されるGM-CSFR-結合、またはGM-CSFR-介在性応答によって測定されるGM-CSFR-シグナル伝達の減少または阻害を意味する。生物学的活性の低減または阻害は、部分的または総合的でありうる。抗体がGM-CSFまたはGM-CSFRを中和する程度は、その中和効力と称される。
【0044】
患者:本明細書で使用される際に、用語「患者」とは、提供される組成物が、例えば、実験、診断、予防、美容、および/または治療の目的のために投与され得る、任意の生物を指す。典型的な患者としては、動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類、および/またはヒト等の哺乳類)が挙げられる。一部の実施形態では、患者は、ヒトである。ヒトには、出生前形態および出生後形態が含まれる。
【0045】
医薬的に許容される:本明細書で使用される際に、用語「医薬的に許容される」は、妥当な医学的判断の範囲内で、過度な毒性、炎症刺激、アレルギー応答、または他の問題もしくは合併症を伴うことなく、合理的なベネフィット/リスクの比率に相応で、ヒトおよび動物の組織に接触させて使用することに適した物質を指す。
【0046】
実質的同一性:「実質的同一性」という語句は、本明細書では、アミノ酸または核酸の配列間の比較を指すために使用される。当業者には理解されるものとなるように、二つの配列は、対応する位置に同一の残基を含有する場合、一般に「実質的に同一」であると考えられる。この技術分野でよく知られているように、アミノ酸配列または核酸配列は、ヌクレオチド配列のBLASTN、およびアミノ酸配列のBLASTP、ギャップドBLAST、およびPSI-BLASTなどの市販のコンピュータプログラムで利用可能なものを含めた、様々なアルゴリズムのいずれかを用いて比較することができる。そのような例示的なプログラムは、Altschul等、Basic local alignment search tool、J.Mol.Biol.、215(3):403-410、1990;Altschul、等、Methods in Enzymology;Altschul等、Nucleic Acids Res.25:3389-3402、1997;Baxevanis等、Bioinformatics:A Practical Guide to the Analysis of Genes and Proteins、Wiley、1998; and Misener、等、(eds.)、Bioinformatics Methods and Protocols(Methods in Molecular Biology、Vol.132)、Humana Press、1999に記載されている。同一の配列を同定することに加えて、上述のプログラムは、典型的には、同一性の程度の指標を提供する。一部の実施形態では、二つの配列は、それらの対応する残基の少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上が関連する残基の長さにわたって同一である場合、実質的に同一であるものと考えられる。一部の実施形態では、関連する長さは完全な配列である。一部の実施形態では、関連する長さは、少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500またはそれ以上の残基である。
【0047】
皮下送達に適する:本明細書で使用される際に、本発明の医薬組成物に関連するような「皮下送達に適する」または「皮下送達のための処方」という語句は、一般に、そのような組成物の安定性、粘性、忍容性、及び溶解性、並びにそれに含有される有効量の抗体を標的送達部位に送達するためのそのような組成物の能力を指す。
【0048】
対象:本明細書で使用される際に、用語「対象」は、ヒトまたは任意の非ヒト動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、または霊長類)を指す。ヒトには、出生前形態および出生後形態が含まれる。多くの実施形態では、対象は、ヒトである。対象は、患者であり得る。疾患の診断または治療のために医療提供者に受診するヒトを指す。「対象」という用語は、本明細書では「個体」または「患者」と互換的に使用される。対象は、疾患または障害に罹患している場合があるか、またはそれに罹り易いが、疾患または障害の症状を呈する場合も呈さない場合もある。
【0049】
実質的に:本明細書で使用される場合、「実質的に」という用語は、目的とする特徴または特性の全てまたはほぼ全ての範囲または程度を呈する質的状態を指す。生物学技術分野の当業者であれば、生物学的および化学的現象が、完了すること、および/または完了に至ること、または絶対的結果を達成もしくは回避することが、仮にあったとしても稀であることを理解する。したがって、用語「実質的に」は、本明細書において、多くの生物学的および化学的現象に固有の潜在的な完全性の欠如を捉えるのに用いられる。
【0050】
全身分布または全身送達:本明細書で使用される場合、「全身分布」、「全身送達」という用語、または文法的同義語は、全身または全生物に影響を及ぼす送達または分布機構またはアプローチを指す。典型的には、全身分布または送達は、身体の循環系、例えば、血流を介して達成される。「局所分布または局所送達」の定義と比較される。
【0051】
標的組織:本明細書で使用される際に、用語「標的組織」は、治療される疾患または障害の影響を受ける任意の組織を指す。一部の実施形態では、標的組織には、疾患に関連する病態、症状、または特徴を呈する組織が含まれる。
【0052】
治療有効量:本明細書で使用される場合、治療剤の「治療有効量」という用語は、疾患、障害、および/または状態に罹患しているか、またはそれに罹り易い対象に投与されたときに、疾患、障害、および/または状態の症状(複数可)を治療する、診断する、予防する、および/またはその発症を遅延させるのに十分な量を意味する。当業者であれば、治療有効量が、典型的には、少なくとも一つの単位用量を含む投薬レジメンにより投与されることを理解する。
【0053】
治療すること:本明細書で使用される場合、「治療する」、「治療」、または「治療すること」という用語は、特定の疾患、障害、および/または状態の一つ以上の症状または特徴を部分的にまたは完全に緩和する、改善する、軽減する、抑制する、予防、その発症を遅延させる、その重症度を低下させる、および/またはその発生率を低下させるために使用される任意の方法を指す。疾患の徴候を示していない対象、および/または疾患の初期の徴候のみを示している対象に対して、その疾患に関連する病態を発症させるリスクを減少させることを目的として、治療が行われる場合がある。
【0054】
詳細な説明
本発明は、特に、巨細胞性動脈炎(GCA)を治療する方法を提供する。方法は、治療を必要とする対象に、GM-CSF拮抗薬(例えば、抗GM-CSFRαまたは抗GM-CSF抗体)を、治療上有効な用量および投与間隔で、対照と比較してGCAの一つまたは複数の症状を改善する、安定化させるか、または低減するのに十分な治療期間投与する工程を含む。この投与の文脈で使用される対照は、抗体の投与前の時点における症状の状態である。
【0055】
本発明の様々な態様が、以下のセクションで詳細に記載される。セクションの使用は、本発明を限定することを意味しない。各セクションは、本発明の任意の態様に適用することができる。本出願において、「または」の使用は、別段の記述がない限り、「および/または」を意味する。
【0056】
巨細胞性動脈炎
巨細胞性動脈炎(GCA)は、生命維持組織、特に血管を標的とする、自己炎症性/自己免疫性疾患である。T細胞およびマクロファージによって駆動される異常な免疫応答は、血管壁の破壊をもたらし、最終的に血管閉塞および臓器虚血を引き起こす不適応修復機構を誘発する。病理学的徴候は、視神経を供給する血管を含む、大動脈およびその2~5番目の分枝で生じる。GCAは、血管の炎症および単球、マクロファージ、およびマクロファージの多核形成融合物である凝集物の巨細胞への浸潤により特徴付けられる。それは、頭痛、虚血性視力喪失、顎および他の筋肉の不規則運動を引き起こす、大~中サイズの動脈の炎症性疾患である(Dejaco Cら、Nat Rev Rheumatol.2017、13(10):578~592頁)。治療を受けないまま放置すると、GCAは、単眼または両眼の失明、大動脈瘤、心筋梗塞、ならびにまれに脳卒中および死亡につながる可能性がある(Weyand CM、およびGoronzy JJ.、N Engl J Med.2014、371(1):50~7頁)。GCAは、広範かつ変動性のある兆候および症状を呈する(WeyandおよびGoronzy、2014)。早期の臨床兆候および症状には、頭痛の新たな発症、視覚障害の突然の発症、顎の不規則運動、発熱、疲労、体重減少、一過性単眼視力喪失(TMVL)および前部虚血性視神経症(AION)が含まれる。診断は通常、臨床兆候および症状に基づいて暫定的に行われ、その後、カラードップラー超音波(CDUS)または側頭動脈生検(TAB)によって確認される(Dejaco Cら、Ann Rheum Dis.2018年6月22日、doi:10.1136/annrheumdis-2017-212649)。米国(US)では、GCA発症の生涯リスクは、女性ではおよそ1%、男性では0.5%と推定されている(Crowson CSら、Arthritis Rheum.2011年3月、63(3):633~9頁)。GCAは一般的に、50歳を超える成人が罹患し、女性と男性の不均衡は3:1である(WeyandおよびGoronzy、2014)。50歳を超える集団における立証されたGCAの報告されている有病率は、地理的に有意に変動し、欧州連合(EU)では100,000人当たり24~200人、米国では100,000人当たり24~278人の範囲である(Salvarani Cら、Arthritis Rheum 2004、51:264~8頁;Lawrence RCら、Arthritis Rheum.2008、58:26~35頁;Lee JIら、Clinic Rev Allergy Immunol 2008、35:88~95頁)。
【0057】
現在の治療様式は、患者におけるGCAの診断時のステロイドの投与を含む。
図1は、無併発性の疾患概要を呈している患者(
図1の左側)で、医師が従う現在のGCA治療アルゴリズム、および患者が、進行した症状、例えば、視力喪失を呈している(
図1の右側)ときに従うアルゴリズムを説明する。グルココルチコイドは、炎症マーカーを正常化するので、治療の主流である。概して、ステロイド療法に対する高い応答は、大多数の患者で見られ、療法の最初の数日以内に改善が明らかになる。しかし、多くの患者は、疾患の再発を予防するためにこの療法の長期コースを受け、長期使用は、緑内障、体液貯留、高血圧、気分変化、記憶変化、その他の心理的作用、体重増加、および糖尿病を含む、有意かつ重篤な副作用と関連する(Roberts JおよびClifford A、Ther Adv Chronic Dis.、2017年4月8日(4-5):69~7頁)。有意な割合(約50%)の患者が、疾患の再発またはさらなる慢性疾患に罹患し、症状を制御するために高用量のプレドニゾンを数年間必要とする。一部の患者に有効である一方、多くの場合、患者は、用量が低減されるにつれて疾患フレアを経験し続けるため、コルチコステロイドから離脱することができない(Dejacoら、2017;Salvaraniら、2012)(Dengら、Circulation.2010年2月23日、121(7):906~915頁)。106人のGCSを有する患者を、4.5~10.1年にわたり追跡したある試験コホートでは、68人(64%)の患者が、少なくとも1回の再発を経験し、38人(36%)が、コルチコステロイド離脱中または後に、2回以上の再発を経験した(Alba MAら、 Medicine (Baltimore).2014;93(5):194~201頁)。研究によると、患者のサブセットは、長期間の高用量のステロイド療法にもかかわらず、視覚症状を生じ続けることが示唆されている。別の研究によると、側頭動脈生検の結果は、生検前にコルチコステロイドを投与されなかった患者の31%(286人中89人)、および生検前にコルチコステロイドを投与された患者の35%(249人中86人)で、動脈炎が陽性であった(P=0.4、差の95%信頼区間、-4.7%~11.5%)(Achkarら、Ann Intern Med.1994年6月15日、120(12):987~92頁)。これらのデータは、ステロイドが、すべての患者における根底にある疾患プロセスに影響を与えないことを示唆している。
【0058】
疾患の疫学病理学は、主に血管壁損傷の機序に関する情報の不足のため、長い間十分に理解されていなかった。しかしながら、病原現象に対する手がかりは、組織浸潤細胞の機能を理解することから導き出され得る。GCAにおける動脈損傷は、主に活性化マクロファージ、浸潤T細胞から構成される肉芽腫の形成と関連しており、その結果、血管病変は、T細胞依存性であることが見出される。SCIDマウスにおける実験上の証拠は、グルココルチコイド治療が、T細胞媒介性の病態を阻害するが、組織浸潤性マクロファージ機能を適切に抑制しないことを示唆している。マクロファージは、GM-CSFシグナル伝達によって生成され、維持される鍵となる細胞タイプであり、それゆえ、多くの患者が長期の慢性治療を必要とし、コルチコステロイドを離脱することができない理由を説明し得る(Brack Aら、J Clin Invest.1997、99(12):2842~50頁)。受容体でのGM-CSFシグナル伝達の遮断は、慢性血管炎症から生じる長期的な後遺症を低減し、ステロイド依存性を低減することによって、これらの患者にさらなる利益をもたらすことができる。インターロイキン-6受容体阻害剤であるACTEMRA(登録商標)(トシリズマブ)は、最近、コルチコステロイドのテーパと併用するためにGCAにおいて米国および欧州で市販される承認を受けているが、患者の50%弱が、26週間のコルチコステロイドテーパ後にトシリズマブの52週間にわたって持続的な寛解を達成しなかった(Stone JHら、N Engl J Med.2017;377(15):1494~1495頁)。したがって、GCAを有する患者を治療するための改善された治療選択肢のアンメットニーズが依然として存在する。
【0059】
GM-CSF生物学
GM-CSFは、広範囲の造血細胞型の生存および増殖を強化するI型炎症促進性サイトカインである。これは、骨髄細胞(例えば、好中球、好塩基球、好酸球、単球、およびマクロファージ)の分化および増殖の誘導物質として最初に特定された成長因子である(Wicks IPおよびRoberts AW.Nat Rev Rheumatol.2016、12(1):37~48頁)。異なるアプローチを用いた研究により、GM-CSF過剰発現では、病理学的変化がほぼ常に続いていることが示されている(Hamilton JAら、Growth Factors.2004、22(4):225~31頁)。GM-CSFは、血管の活性化された内皮を介して骨髄細胞の輸送を増強し、炎症中の血管における単球およびマクロファージの蓄積にも関与し得る。GM-CSFはまた、炎症組織における単球およびマクロファージならびに常在組織マクロファージの活性化、分化、生存、および増殖を促進する。これは、M1マクロファージおよび単球由来樹状細胞(MoDC)への浸潤性単球の分化を促進することによって、炎症組織における抗原提示細胞の表現型を調節する。さらに、マクロファージおよびMoDCによるIL-23の産生は、IL-6およびIL-1などの他のサイトカインとの組み合わせで、T細胞分化を調節する。
【0060】
M-CSF(マクロファージ-コロニー刺激因子)と共に、GM-CSFは、GCAの血管炎性病変における鍵となるエフェクター細胞である、組織球性および多核巨細胞になるマクロファージの数および機能を調節する。GM-CSFによって活性化されたマクロファージは、一連のエフェクター機能を獲得し、それらすべてが炎症マクロファージとして同定される。GM-CSF活性化マクロファージは、T細胞および他の炎症性細胞を組織微小環境に動員する、TNF、IL-1β、IL-6、IL-23およびIL-12、ならびにCCL5、CCL22、およびCCL24などのケモカインを含む炎症促進性サイトカインを産生する。これらの所見は、GCAにおけるこのシグナル伝達経路に拮抗する確固たる根拠を提供する。
【0061】
GM-CSF受容体は、ヘマトポエチン受容体スーパーファミリーのメンバーである。これは、アルファおよびベータサブユニットからなる、ヘテロ二量体である。アルファサブユニットは、GM-CSFに高度に特異的であるのに対し、ベータサブユニットは、IL-3およびIL-5を含む他のサイトカイン受容体と共有される。これは、ベータ受容体サブユニットのより広範な組織分布に反映される。アルファサブユニットであるGM-CSFRαは、主に、好中球、マクロファージ、好酸球、樹状細胞、内皮細胞、および呼吸器上皮細胞などの骨髄細胞および非造血細胞上で発現される。全長GM-CSFRαは、I型サイトカイン受容体ファミリーに属し、22個のアミノ酸のシグナルペプチド(位置1~22)、298個のアミノ酸の細胞外ドメイン(位置23~320)、位置321~345の膜貫通型ドメイン、および短い55個のアミノ酸の細胞内ドメインからなる、400個のアミノ酸のI型膜糖タンパク質である。シグナルペプチドを切断して、378個のアミノ酸タンパク質としてGM-CSFRαの成熟形態がもたらされる。ヒトおよびマウスGM-CSFRαの相補的DNA(cDNA)クローンが利用可能であり、タンパク質レベルでは、受容体サブユニットは、36%の同一性を有する。GM-CSFは、αサブユニット単独(Kd1~5nM)に対し比較的低い親和性で結合することができるが、βサブユニット単独に対しては全く結合することができない。しかしながら、αおよびβサブユニットの両方の存在は、高親和性リガンド受容体複合体(Kd約100pM)をもたらす。GM-CSFシグナル伝達は、GM-CSFRα鎖へのその最初の結合を介して生じ、次いで、より大きなサブユニットである共通のβ鎖と架橋して、JAK-STAT経路をリン酸化する高親和性相互作用を生じる。この相互作用はまた、チロシンリン酸化およびMAPキナーゼ経路の活性化を介してシグナル伝達することができる。
【0062】
病理学的には、GM-CSFは、炎症性疾患、呼吸器疾患、および自己免疫性疾患を悪化させる役割を果たすことが示されている。したがって、GM-CSFRαへのGM-CSF結合の中和は、GM-CSFRを介して媒介される疾患および状態を治療するための治療アプローチである。したがって、本発明は、ヒトGM-CSFのGM-CSFRαへの結合を阻害する、および/または例えば、ヒトGM-CSFまたはGM-CSFRαに結合する結合メンバー(例えば、抗体)などの受容体へのGM-CSFリガンド結合から生じるシグナル伝達を阻害する結合メンバーに関する。リガンド結合の際、GM-CSFRは、JAJAK2/STAT5、MAPK経路、およびPI3K経路を含む、複数の下流シグナル伝達経路の刺激を誘発し、これらはすべて、骨髄細胞の活性化および分化に関連する。結合メンバーは、GM-CSFRを介したGM-CSFシグナル伝達の可逆的阻害剤であってもよい。
【0063】
治療
本発明の一態様は、必要とする対象に、有効用量のGM-CSF拮抗薬(例えば、GM-CSFRα拮抗薬)を有効な用量間隔で、有効な期間投与することによるGCAの治療方法を提供する。一部の実施形態では、GM-CSF拮抗薬は、治療用抗GM-CSFモノクローナル抗体である。国際公開第2006/122797として公開された2006年5月17日に出願された国際出願第PCT/EP2006/004696号、および国際公開第2017/076804号として公開された国際出願第PCT/EP2016/076225号に記載された抗GM-CSFモノクローナル抗体は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。一部の実施形態では、GM-CSFRα拮抗薬は、治療用抗GM-CSFRαモノクローナル抗体である。抗GM-CSFRαモノクローナル抗体は、国際公開第2007/110631号として公開された2007年3月27日に出願された国際特許出願第PCT/GB2007/001108号、2010年10月10日に出願された欧州特許出願第120770487号、2007年3月27日に出願された米国特許出願第11/692,008号、2008年9月25日に出願された米国特許出願第12/294,616号、2013年7月12日に出願された米国特許出願第13/941,409号、2010年11月30日に出願された米国特許出願第14/753,792号、国際公開第2013/053767号として公開された、2012年10月10日に出願された国際特許出願第PCT/EP2012/070074号、国際公開第2015/177097号として公開された、2015年5月18日に出願された国際特許出願PCT/EP2015/060902、および2017年5月23日に出願された国際特許出願第PCT/EP2017/062479号に記載され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。一実施形態では、GM-CSFRαモノクローナル抗体は、マブリリムマブである。国際公開第2007/110631号は、GM-CSFRαの生物学的活性を高い効力で中和する能力を共有する抗GM-CSFRα抗体であるマブリリムマブおよびそのバリアントの単離および特徴を報告している。これらの抗体の機能的特性は、少なくとも部分的に、ヒトGM-CSFRαの226位~230位のTyr-Feu-Asp-Phe-Glnモチーフに結合し、それによってGM-CSFRαとそのリガンドGM-CSFとの間の会合を阻害する原因であると考えられる。マブリリムマブは、GM-CSFRαを標的とすることによってマクロファージの活性化、分化、および生存を調節するように設計されたヒトIgG4モノクローナル抗体である。これは、GM-CSFRαの生物活性の強力な中和剤であり、RA患者の滑膜関節内の白血球に、GM-CSFRαを結合させることによって治療効果を発揮し、これにより、低減した細胞生存および活性化を導くことが示された。これらまでにインビボ使用についてのGM-CSFRα抗体マブリリムマブの安全性プロファイルが、関節リウマチ(RA)についての第II相臨床試験において確立された。
【0064】
GCA患者は、二つのカテゴリー:新規発症疾患を有する患者、および再発疾患を有する患者に分類することができる。最初のカテゴリーでは、GCAの初期診断は治療開始後6週間以内に行われる。診断は、Westergrenの赤血球沈降速度(ESR)によって行うことができ、ESRは>30mm/時、または血清C反応性タンパク質(CRP)レベルは≧1mg/dLである。他の症状には、GCAの頭蓋症状(新規発症の局所性頭痛、頭皮または側頭動脈の圧痛、虚血に関連する視力喪失、またはそうでなければ咀嚼の際の説明されていない口もしくは顎の痛み、顎の不規則運動もしくは四肢の不規則運動、炎症性の朝のこわばりに関連する肩および/もしくは腰帯の痛みとして定義されるPMRの症状)が含まれうる。より積極的な診断は、TABまたは超音波によって実施され得る。さらに、大動脈または他の大血管のMRI、CT/CTA、またはPET-CTなどの血管造影または断面撮像研究による大血管性血管炎の証拠が注目される。再発群は、治療開始から6週間(>6週間)より長い時点でのGCAの診断によって特徴付けられる。患者は、臨床的期待(難治性非寛解)に従って疾患の診断を受けたため、寛解を有しないとして特徴付けられ得る。再発カテゴリー患者のサブセットは、治療開始時にGCAの症状を経験するか、または全く呈し得ない(最初の1時間でCRP<1.0またはESR<20mmのGCA症状(複数可)の解消)。
【0065】
一実施形態では、本発明による方法は、例えば、抗GM-CSFRαモノクローナル抗体(例えば、マブリリムマブ)、または抗GM-CSFモノクローナル抗体(例えば、ナミルマブ、オチリマブ、ギムシルマブ、レンジルマブもしくはTJM-2)などの治療有効量のGM-CSF拮抗薬を投与することによって、新規発症GCAを有する対象を治療することを含む。一実施形態では、本発明による方法は、例えば、抗GM-CSFRαモノクローナル抗体(例えば、マブリリムマブ)、または抗GM-CSFモノクローナル抗体(例えば、ナミルマブ、オチリマブ、ギムシルマブ、レンジルマブもしくはTJM-2)などの治療有効量のGM-CSF拮抗薬を投与することによって、再発GCAを有する対象を治療することを含む。一実施形態では、本発明による方法は、例えば、抗GM-CSFRαモノクローナル抗体(例えば、マブリリムマブ)、または抗GM-CSFモノクローナル抗体(例えば、ナミルマブ、オチリマブ、ギムシルマブ、レンジルマブもしくはTJM-2)などの治療有効量のGM-CSF拮抗薬を投与することによって、難治性GCAを有する対象を治療することを含む。一実施形態では、本発明による方法は、対象を、有効用量のマブリリムマブで、対照と比較して、GCAの一つまたは複数の兆候および/または症状を改善、安定化、または低減させるのに十分な治療期間、投与間隔で治療することを含む。「治療する」または「治療」という用語は、本明細書で使用される際には、疾患もしくは障害に関連する一つもしくは複数の兆候および/もしくは症状の寛解、疾患もしくは障害の一つもしくは複数の兆候および/もしくは症状の開始または進行の予防もしくは遅延、ならびに/または疾患もしくは障害の一つもしくは複数の兆候および/もしくは症状の重症度もしくは頻度の低減を指す。
【0066】
特定の実施形態では、治療有効量のGM-CSF拮抗薬(例えば、抗GM-CSFRαモノクローナル抗体または抗GM-CSFモノクローナル抗体)を投与される対象は、メトトレキサートまたはコルチコステロイド、およびその組み合わせ、コルチコステロイド、およびその組み合わせなどの免疫調節薬を含む、他の薬剤と併用して治療されてもよく、GM-CSF拮抗薬(例えば、抗GM-CSFRαモノクローナル抗体または抗GM-CSFモノクローナル抗体)での治療後にかかる併用薬の一つまたは複数から場合により離脱する。一部の実施形態では、対象は、GM-CSF拮抗薬療法(例えば、抗GM-CSFRαモノクローナル抗体療法または抗GM-CSFモノクローナル抗体療法)が開始された後に、コルチコステロイドから徐々に離脱する。一実施形態では、コルチコステロイドは、プレドニゾンである。別の実施形態では、コルチコステロイドは、メチルプレドニゾロンである。
【0067】
GM-CSF拮抗薬治療(例えば、抗GM-CSFRα治療または抗GM-CSF治療)は、経口で(例えば、ナノボディ)、注射による(例えば、皮下、静脈内、動脈内、関節内、腹腔内もしくは筋肉内)、吸入による、膀胱内経路による(膀胱内への点滴注入)、または局所的(例えば、眼内、鼻腔内、直腸、創傷内もしくは皮膚)に投与され得る。治療は、パルス注入によって、特に阻害剤の用量を減らしながら投与され得る。投与経路は、治療の物理化学的特徴によって、疾患の特別な考慮事項によって、または有効性を最適化するか、もしくは副作用を最小化するための要件によって決定することができる。一部の実施形態では、GM-CSF拮抗薬(例えば、抗GM-CSFRαモノクローナル抗体または抗GM-CSFモノクローナル抗体)の皮下注射は、上腕、大腿部の前面、腹部の下部分、上背部または殿部の上部範囲で施され得る。一部の実施形態では、注射部位が交替される。
【0068】
特定の実施形態では、治療は、GCAに付随する症状の低減または排除をもたらす。一部の実施形態では、治療は、動脈炎症を低減し、および/またはGCA病変に関連する遺伝子の発現を低減する。したがって、特定の実施形態では、治療は、GM-CSF、GM-CSFRα、JAK2、IL-6、CD83、PU.1、HLA-DRA、CD3E、TNFα、IL-1β、またはそれらの組み合わせのうちの一つまたは複数のタンパク質および/またはRNA発現の減少をもたらす。一部の実施形態では、治療は、浸潤マクロファージの低減または除去をもたらす。別の実施形態では、治療は、血管外膜におけるT細胞を低減する。一実施形態では、治療は、側頭動脈の栄養血管におけるGM-CSFRα発現の低減をもたらす。一部の実施形態では、炎症性浸潤の密度は、抑えられ、および/または血管壁リモデリング(例えば、内膜過形成、管腔狭窄および組織虚血)は、退縮、改善、安定化または低減される。一実施形態では、治療は、動脈壁におけるGM-CSFまたはINF-γについて陽性の細胞の低減をもたらす。他の実施形態では、治療は、インターフェロンシグナル伝達、IL-6シグナル伝達、またはGM-CSFシグナル伝達に関連する一つまたは複数の遺伝子の、遺伝子発現レベルを標準に戻すか、または遺伝子発現レベル(すなわち、GCAを有する対象とGCAを有さない対象との間の発現レベル)を改善する。インターフェロンシグナル伝達に関連する遺伝子には、限定されるものではないが、INF-γ、INF-αR1、INF-γR1、INF-γR2、IFI30、IFI35、PRKCD、B2M、IFNAR1、CIITA、PTPN2、PTPN11、IRF1、IFR5、IRF8、GBP1、GBP5、STAT1、STAT2、FCγR1A/B、ICAM1、VCAM1、TYK2、CD44、IP6K2、DDX58およびPTPN6が含まれる。IL-6シグナル伝達に関連する遺伝子には、PTPN11、TYK2、STAT1、IL-11RA、およびIL-6が含まれるが、これらに限定されない。GM-CSFシグナル伝達に関連する遺伝子としては、IL-2RB、IL-2RG、GM-CSFRα、JAK3、STAT5A、SYK、PTPN11、HCK、FYN、INPP5D、BLNK、およびPTPN6が挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
投与量
GCAを治療するためのGM-CSF拮抗薬(例えば、抗GM-CSFRα抗体または抗GM-CSFモノクローナル抗体)の治療有効用量は、様々な投与量で生じ得る。一部の実施形態では、治療有効用量は、0.1mg/kg、0.3mg/kg、0.5mg/kg、0.7mg/kg、1mg/kg、1.25mg/kg、1.5mg/kg、1.75mg/kg、2mg/kg、2.5mg/kg、3.5mg/kg、4mg/kg、もしくは5mg/kg、または10mg/kg以上である。
【0070】
一部の実施形態では、治療有効用量は、およそ0.1~10mg/kg、およそ0.2~10mg/kg、およそ0.3~10mg/kg、およそ0.4~10mg/kg、およそ0.5~10mg/kg、およそ0.6~10mg/kg、およそ0.7~10mg/kg、およそ0.8~10mg/kg、およそ0.9~10mg/kg、およそ1~10mg/kg、およそ2~10mg/kg、およそ3~10mg/kg、およそ5~10mg/kg、またはその間の任意の範囲である。一部の実施形態では、およそ0.3~5mg/kg、またはおよそ0.3~4mg/kg、またはおよそ0.3~3mg/kgである。一部の実施形態では、治療有効用量は、約0.5~2.5mg/kgである。
【0071】
一部の実施形態では、投与は、初回ボーラスまたは負荷用量、続いて少なくとも1回の維持用量を含む。一部の実施形態では、初回ボーラスまたは負荷用量は、少なくとも1回の維持用量よりも多い。一部の実施形態では、初回ボーラスまたは負荷用量は、少なくとも1回の維持用量の投与量よりも少なくとも1倍、2倍、3倍、4倍、または5倍多い投与量である。一部の実施形態では、初回ボーラスまたは負荷用量は、少なくとも1回の維持用量の投与量よりも2倍多い投与量である。
【0072】
一部の実施形態では、固定用量は、初回用量および/または維持用量として使用される。適切な固定用量は、約30mg、約35mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約85mg、約90mg、約95mg、約100mg、約105mg、約110mg、約115mg、約120mg、約125mg、約130mg、約135mg、約140mg、約145mg、約150mg、約155mg、約160mg、約165mg、約170mg、約175mg、約180mg、約185mg、約190mg、約195mg、約200mg、約210mg、約220mg、約225mg、約230mg、約240mg、約250mg、約260mg、約270mg、約280mg、約290mg、約300mg、約310mg、約320mg、約330mg、約340mg、約350mg、約360mg、約370mg、約380mg、約390mgまたは約400mg以上であり得る。特定の実施形態では、開始用量および/または維持用量として使用される固定用量は、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg、100mg、105mg、110mg、115mg、120mg、125mg、130mg、135mg、140mg、145mg、150mg、155mg、160mg、165mg、170mg、175mg、180mg、185mg、190mg、195mg、200mg、210mg、220mg、225mg、230mg、240mg、250mg、260mg、270mg、280mg、290mg、300mg、310mg、320mg、330mg、340mg、350mg、360mg、370mg、380mg、390mgまたは400mgである。一部の実施形態では、適切な固定用量範囲は、50~500mg、100~400mg、150~400mg、200~400mg、250~400mg、300~350mg、320~400mg、または350~400mgである。一部の実施形態では、適切な固定用量は、150mgである。一部の実施形態では、適切な固定用量は、単一の注射器において提供される。適切な固定用量は、単回注射で、または複数回注射によって(例えば、皮下又は静脈内)投与され得る。
【0073】
一部の実施形態では、有効用量のGM-CSF拮抗薬(例えば、抗GM-CSFRα抗体または抗GM-CSFモノクローナル抗体)を用いた治療は、コルチコステロイド治療を伴う。患者は、GM-CSF拮抗薬療法(例えば、抗GM-CSFRα抗体療法または抗GM-CSFモノクローナル抗体療法)での治療前にコルチコステロイドの投与を受けている場合がある。併用ステロイド用量は、約25mg、または約30mg、または約40mg、または約50mg、または約60mg、または約70mg、または約80mg、または約100mg、または約110mg、または約120mg、または約125mgのプレドニゾンを含み得る。一部の実施形態では、併用用量は、25mg、または30mg、または40mg、または50mg、または60mg、または70mg、または80mg、または100mg、または110mg、または120mg、または125mgのプレドニゾンである。
【0074】
投与間隔
GCAの治療におけるGM-CSF拮抗薬(例えば、抗GM-CSFRα抗体または抗GM-CSFモノクローナル抗体)の投与間隔は、様々な期間で行われ得る。本発明の一部の実施形態では、投与間隔は毎日である。一部の実施形態では、投与間隔は、隔日である。一部の実施形態では、投与間隔は、1週間に複数回である。一部の実施形態では、投与間隔は、週1回である。一部の実施形態では、投与間隔は、2週間に1回である。一部の実施形態では、投与間隔は、3週間に1回である。一部の実施形態では、投与間隔は、4週間に1回である。一部の実施形態では、投与間隔は、5週間に1回である。
【0075】
治療期間
GM-CSF拮抗薬(例えば、抗GM-CSFRα抗体または抗GM-CSFモノクローナル抗体)を用いたGCAの治療期間は、期間が変動し得る。一部の実施形態では、治療期間は、少なくとも1ヶ月である。一部の実施形態では、治療期間は、少なくとも2ヶ月である。一部の実施形態では、治療期間は、少なくとも3ヶ月である。一部の実施形態では、治療期間は、少なくとも6ヶ月である。一部の実施形態では、治療期間は、少なくとも9ヶ月である。一部の実施形態では、治療期間は、少なくとも1年である。一部の実施形態では、治療期間は、約20週間である。一部の実施形態では、治療期間は、約21週間、または約22週間、または約23週間、または約24週間、または約25週間、または約26週間、または約27週間、約28週間、または約29週間、または約30週間、または約31週間、または約32週間、または約33週間、または約34週間、または約35週間、または約36週間、または約37週間、または約38週間、または約39週間、または約40週間、または約41週間、または約42週間、または約43週間、または約44週間、または約45週間、または約46週間、または約47週間、または約48週間、または約49週間、または約50週間、または約51週間、または約52週間である。一部の実施形態では、治療期間は、約26週間である。一実施形態では、治療期間は、26週間である。一実施形態では、治療期間は、52週間である。一部の実施形態では、治療期間は、21週間、または22週間、または23週間、または24週間、25週間、26週間、27週間、28週間、29週間、または30週間、または31週間、または32週間、または33週間、または34週間、または35週間、36週間、37週間、38週間、39週間、40週間、または41週間、または42週間、または43週間、または44週間、または45週間、46週間、47週間、48週間、49週間、または50週間、または51週間、または52週間である。一実施形態では、治療期間は、26週間である。一実施形態では、治療期間は、52週間である。一部の実施形態では、治療期間は、少なくとも2年である。一部の実施形態では、治療期間は、対象の生涯を通じて継続する。
【0076】
薬物動態および薬力学
アトピー性皮膚炎を有する対象の血清中の抗GM-CSFRα抗体濃度-時間プロファイルの評価は、全身の血清中抗GM-CSFRα抗体濃度-時間プロファイルを測定することによって直接評価することができる。典型的には、抗GM-CSFRα抗体の薬物動態及び薬力学のプロファイルは、治療された対象の血液を定期的にサンプリングすることによって評価される。以下の標準的な略語は、関連する薬物動態パラメータを表すために使用される。
C
max 最大濃度
t
max 最大濃度までの時間
AUC
0-t 時間ゼロから最終測定可能濃度までの濃度-時間曲線下の面積(AUC)であって、濃度を増加させるための線形台形規則及び濃度を減少させるための対数規則を用いて計算される。
AUC
0-∞ 以下の式を用いて計算された時間ゼロから無限大までのAUC:
【数1】
式中、C
tは最終測定可能濃度であり、λ
Zは見かけの終末相の消失速度定数である。
λ
Z 見かけの終末相の消失速度定数であり、ここでλ
Z は、終末相の間のログ濃度対時間プロファイルの線形回帰の傾きの大きさである
t
1/2 見かけの終末相の消失半減期(可能な場合)であり、ここで
t
1/2=自然対数(ln)(2)/λ
Z
CL クリアランス
Vd 分布の体積(IV用量投与のみ)
Vd/F 見かけの分布の体積(SC用量投与のみ)
【0077】
通常、抗GM-CSFRα抗体の投与の開始に対する実際の血液試料の採集時間が、PK解析に使用される。例えば、血液試料は、通常、抗GM-CSFRα抗体の投与前15または30分以内に回収され(投与前ベースラインもしくは時間0)および投与後1、4、8もしくは12時間または1日(24時間)、2、3、4、5、6、7、10、14、17、21、24、28、31、38、45、52、60、70もしくは90日以内に回収される。
【0078】
様々な方法を使用して、血清中抗GM-CSFRα抗体濃度を測定することができる。非限定的な例として、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)法が使用される。
【0079】
薬物動態パラメータは、治療中の任意の段階で、例えば、1日目、2日目、3日目、4日目、5日目、6日目、1週目、2週目、3週目、4週目、5週目、6週目、7週目、8週目、9週目、10週目、11週目、12週目、13週目、14週目、15週目、16週目、17週目、18週目、19週目、20週目、21週目、22週目、23週目、24週目、またはそれ以降に評価されうる。一部の実施形態では、薬物動態パラメータは、治療中の1ヶ月目、2ヶ月目、3ヶ月目、4ヶ月目、5ヶ月目、6ヶ月目、7ヶ月目、8ヶ月目、9ヶ月目、10ヶ月目、11ヶ月目、12ヶ月目、13ヶ月目、14ヶ月目、15ヶ月目、16ヶ月目、17ヶ月目、18ヶ月目、19ヶ月目、20ヶ月目、21ヶ月目、22ヶ月目、23ヶ月目、24ヶ月目、またはそれ以降に評価されてもよい。
【0080】
副作用
マブリリムマブ(CAM-3001)は、長期安全性試験を実施した関節リウマチ(RA)に関する第II相臨床試験を完了し、これらは、2012年10月10日に出願された国際出願第PCT/EP2012/070074号(国際公開第2013/053767号)、およびPCT/EP2015/060902(国際公開第2015177097号)で報告されており、両方が、参照により本明細書に組み込まれる。両方の場合で、薬剤は、忍容性良好であった。
【0081】
一部の実施形態では、最大150mgの用量で、最大約150週間の期間のGM-CSF拮抗薬(例えば、抗GM-CSFRα抗体または抗GM-CSF抗体)の投与は、対象において重篤な副作用を生じない。一部の実施形態では、最大150mgの用量で、最大約52週間のGM-CSF拮抗薬(例えば、抗GM-CSFRα抗体または抗GM-CSF抗体)の投与は、重篤な感染症、または重篤な感染症を生じない。一部の実施形態では、GM-CSF拮抗薬(例えば、抗GM-CSFRα抗体または抗GM-CSFモノクローナル抗体)の投与は、逆の肺機能または血液機能をもたらさない。臨床試験のデータによると、同様のパーセンテージの肺AEが、有効な群とプラセボ群で生じた。肺胞蛋白症(PAP)またはPAPを示唆する症例はなかった。二つの肺炎症例が報告された:(i)プラセボ群では、胸水を伴った非重篤な感染を呈し、(ii)30mg用量群では、重篤な感染を呈した。その他に重篤な感染症はなかった。胆石症に起因してALT>3×ULNおよびビリルビン>2×ULNであるが、他の臨床的に意義のある臨床検査異常のない、一つの症例が存在した。アナフィラキシー反応は報告されなかった。中止につながる二つの過敏症AE(30mgでの薬剤過敏症および150mgでの血管浮腫)が観察された。
【0082】
GM-CSF拮抗薬
任意のGM-CSF拮抗薬を使用して、本発明を実施することができる。GM-CSF拮抗薬は、GM-CSF受容体アルファまたはGM-CSF受容体ベータとの相互作用からGM-CSFを遮断することによって、またはこれらのタンパク質のヘテロ二量体の形成を遮断することによって機能し得、そのためGM-CSF結合および/またはシグナル伝達を遮断し、それによってサイトカインの産生ならびに/または単球およびマクロファージの活性化を低減する。したがって、本発明によるGM-CSF拮抗薬は、GM-CSFまたはGM-CSFR受容体(すなわち、GM-CSFRαもしくはGM-CSFRβ)のうちの一つまたは複数のいずれかの結合剤(例えば、抗体もしくは化合物)、あるいはGM-CSF生物活性に影響を及ぼす様式でこれらの相互作用と干渉することができる薬剤であってもよい。本明細書では、GM-CSF拮抗薬への言及は、GM-CSFまたはその受容体の一つに対する拮抗薬のいずれかを意味するとすることができる。
【0083】
抗GM-CSF抗体
一部の実施形態では、本発明により提供される本発明の組成物および方法を使用して、必要とする対象に抗GM-CSF抗体またはそのフラグメントが送達される。これらの方法で投与される抗GM-CSF抗体は、IgGサブクラス抗体であってもよく、一部の実施形態では、IgG1、IgG2、またはIgG4サブクラス抗体であってもよい。抗GM-CSF抗体は、モノクローナル抗体であってもよい。本発明の特定の実施形態では、抗GM-CSF抗体は、ナミルマブである。一部の実施形態では、抗GM-CSF抗体は、オチリマブである。一部の実施形態では、抗GM-CSF抗体は、ギムシルマブである。一部の実施形態では、抗GM-CSF抗体は、レンジルマブである。一部の実施形態では、抗GM-CSF抗体は、TJM-2である。
【0084】
抗GM-CSF受容体アルファ(GM-CSFRα)抗体
一部の実施形態では、本発明により提供される発明の組成物および方法を使用して、必要とする対象に抗GM-CSFRα抗体が送達される。本発明の特定の実施形態では、抗GM-CSFRα抗体は、マブリリムマブである。マブリリムマブの単離および特徴は、国際公開第2007/110631号および国際公開第2013/053767号に記載されており、両方が、参照によりその全体が完全に組み込まれる。マブリリムマブは、GM-CSFRにより仲介されるシグナル伝達、すなわちGM-CSF活性化細胞シグナル伝達を特異的に阻害するヒトIgG4モノクローナル抗体である。特定の実施形態において、抗体は、二つの軽鎖および二つの重鎖からなる。重鎖可変ドメイン(VH)は、配列番号1において同定されるアミンの酸配列を含む。軽鎖可変ドメイン(VL)は、配列番号2において同定されるアミンの酸配列を含む。重鎖および軽鎖はそれぞれ、相補性決定領域(CDR)およびフレームワーク領域を以下の配置で含む:
FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4
【0085】
マブリリムマブ抗体の重鎖は、それぞれ、配列番号3、4および5におけるアミノ酸配列により同定されるCDR:HCDR1、HCDR2、HCDR3を含む。軽鎖は、それぞれ、配列番号6、7および8におけるアミノ酸配列により同定されるCDR:LCDR1、LCDR2、LCDR3を含む。
抗GM-CSFRα重鎖可変領域アミノ酸配列
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKVSGYTLTELSIHWVRQAPGKGLEWM
GGFDPEENEIVYAQRFQGRVTMTEDTSTDTAYMELSSLRSEDTAVYYCAIVGSFSPLTLGLWGQGTMVTVSS(配列番号1)
抗GM-CSFRα軽鎖可変領域アミノ酸配列
QSVLTQPPSVSGAPGQRVTISCTGSGSNIGAPYDVSWYQQLPGTAPKLLIYHNNKRPSGVPDRFSGSKSGTSASLAITGLQAEDEADYYCATVEAGLSGSVFGGGTKLTVL(配列番号2)
抗GM-CSFRα重鎖可変領域CDR1(HCDR1)アミノ酸配列
ELSIH(配列番号3)
抗GM-CSFRα重鎖可変領域CDR2(HCDR2)アミノ酸配列
GFDPEENEIVYAQRFQG(配列番号4)
抗GM-CSFRα重鎖可変領域CDR3(HCDR3)アミノ酸配列
VGSFSPLTLGL(配列番号5)
抗GM-CSFRα軽鎖可変領域CDR1(LCDR1)アミノ酸配列
TGSGSNIGAPYDVS(配列番号6)
抗GM-CSFRα軽鎖可変領域CDR2(LCDR2)アミノ酸配列
HNNKRPS(配列番号7)
抗GM-CSFRα軽鎖可変領域CDR3(LCDR3)アミノ酸配列
ATVEAGLSGSV(配列番号8)
【0086】
一部の実施形態では、GCA治療のための抗GM-CSFRα抗体は、全体が参照により組み込まれる、出願国際公開第2007/11063号および国際公開第2013053767号に開示されるGM-CSFα結合メンバーから選択される、マブリリムマブのバリアントである。
【0087】
一部の実施形態では、GCA治療のための抗GM-CSFRα抗体は、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7および配列番号8のうちの一つまたは複数と少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の同一性を有するCDRアミノ酸配列を含む。
【0088】
一部の実施形態では、抗GM-CSFRα抗体は、配列番号2と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域、配列番号1と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む。本発明の一部の実施形態では、抗GM-CSFRα抗体は、配列番号2と少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有する軽鎖可変領域アミノ酸配列を有し、および配列番号1と少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の同一性を有する重鎖可変領域アミノ酸配列を有する。本発明の一部の実施形態では、抗GM-CSFRα抗体は、配列番号2に記載されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域、および配列番号1に記載されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む。本発明の一部の実施形態では、抗GM-CSFRα抗体の重鎖定常領域は、IgG1抗体に由来するCH3領域に融合されたIgG4抗体に由来するCH1、ヒンジ、およびCH2領域を含む。本発明の一部の実施形態では、抗GM-CSFRα抗体の重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、またはIgG4重鎖定常領域であるか、またはこれらに由来する。本発明の一部の実施形態では、抗GM-CSFRα抗体の軽鎖定常領域は、ラムダまたはカッパー軽鎖定常領域であるか、またはこれらに由来する。
【0089】
一部の実施形態では、抗GM-CSFRα阻害剤は、マブリリムマブ抗体のフラグメントである。一部の実施形態では、阻害剤は、配列番号3、4、5、6、7、または8のCDR配列のうちの少なくともいずれか一つを含む一本鎖可変フラグメント(ScFv)を含む。一部の実施形態では、阻害剤は、配列番号3、4、5、6、7、または8のCDR配列のうちの少なくともいずれか一つを含む融合分子である。一部の実施形態では、抗GM-CSFRα阻害剤配列は、配列番号3、4、5、6、7、または8のCDR配列のうちの少なくとも一つを含む二重特異性抗体である。
【0090】
医薬組成物
一態様では、本発明は、SC投与を意図する液体生成物である、抗GM-CSF抗体(例えば、抗GM-CSFRα抗体)を含む医薬組成物を提供する。一部の実施形態では、医薬組成物は、2℃~8℃(36℃~46°F)で保存される。一実施形態では、薬剤は、50mM酢酸ナトリウム、70mM塩化ナトリウム、4%(重量/体積[w/v])トレハロース二水和物、0.05%(w/v)ポリソルベート80、pH5.8中150mg/mLで製剤化される。一部の実施形態では、医薬品は、1.0mLの公称充填体積で、テフロン(登録商標)面エラストマーストッパーで栓をされ、針ガード、プランジャーロッドおよび拡張フィンガーフランジを備えた予め充填されたシリンジにおいて、無菌の液体として供給される。各シリンジは、150mg(名目上)の有効治験薬を含有する。
【実施例】
【0091】
本発明の特定の方法を、特定の実施形態に従って具体的に説明してきたが、以下の実施例は、本発明の方法を説明する役割を果たすに過ぎず、それを制限することを意図するものではない。
【0092】
実施例1:抗GM-CSFRα抗体による巨細胞性動脈炎の治療
この実施例の試験を、GCAを有する対象を治療する際の抗GM-CSFRα抗体の有効性を評価するために設計する。
【0093】
試験設計
この例示的な無作為化、二重盲検、プラセボ対照試験設計では、抗GM-CSFRα抗体(マブリリムマブ)を、マブリリムマブの有効性および安全性を評価するために、GCA(早期発症および再発/難治性)と臨床的に診断された対象に26週間ステロイドテーパと併用する。試験設計を、
図2に例示する。試験は、スクリーニング期間(最大6週間)、対象が盲検化マブリリムマブまたはプラセボを受ける二重盲検プラセボ対照期間、最後の対象が26週間の時点に到達するまでの26週間のコルチコステロイドのテーパ投与からなり、26週間の時点の結果が分析され、さらに26週間の期間の非盲検延長(OLE)からなる。
【0094】
試験の探索的目的は、(同意対象における)生検で血管壁炎症の低減を評価すること、またはベースラインと比較して26週目で画像化すること、および血液薬力学(PD)バイオマーカーと臨床応答の評価との間の関連を評価することを含む。超音波検査を、12週目および26週目、ならびに6か月毎に行う。
【0095】
対象は、本試験に組み入れる前にステロイド(プレドニゾンまたは同等物)の投与を受けることは許可される。対象は、GCAについての現在の標準治療(SoC)の実践に沿って併用薬を受ける。かかる薬剤には、試験期間中、3か月毎の、低用量アスピリン(SoC当たり許容される用量)、パントプラゾール(40mg/日)、カルシウム(1000mg/日)、コレカルシフェロール(800U/日)、および静脈内(IV)イバンドロネート3mgを含む。
対象がGCAのフレアを経験しない限り、対象は、皮下(SC)マブリリムマブまたはプラセボ、ならびに最大26週間にわたって漸減する経口プレドニゾンの併用投与を受ける。フレア時、対象は、盲検療法のままであり、ステロイドの用量を増加するか、または場合により、フレア時、対象は、治験薬を中止し、SoCを投与し、対象を、治験の残りの期間にわたって追跡する。
【0096】
対象は、少なくとも26週間、マブリリムマブまたはプラセボの投与を受ける(対象が治療を早期に中止する場合を除く)。すべての対象には、さらに6カ月間、非盲検のマブリリムマブ延長試験を提供する。
【0097】
安全対策は、有害事象および臨床検査分析(化学、血液学、尿検査、肝臓プロファイル、脂質パネル、ヘモグロビンA1c[HbA1c]、および抗薬剤抗体を含む)、バイタルサイン測定、心電図(ECG)、および身体検査所見を含む。
【0098】
薬物製剤
マブリリムマブ
マブリリムマブは、SC投与を目的とした液体製剤である。これは、2℃~8℃(36℃~46°F)で保存しなければならない。マブリリムマブを、50mM酢酸ナトリウム、70mM塩化ナトリウム、4%トレハロース二水和物、0.05%(重量/体積[w/v])ポリソルベート80、pH5.8中150mg/mLで製剤化する。治験薬は、1.0mLの公称充填体積で、テフロン(登録商標)面エラストマーストッパーで栓をし、針ガード、プランジャーロッドおよび拡張フィンガーフランジを備えた予め充填したシリンジにおいて、無菌の液体として供給する。各シリンジは、150mg(名目上)の有効治験薬を含有する。
【0099】
プラセボ
マブリリムマブプラセボは、SC投与を目的とした液体製剤である。これは、2℃~8℃(36℃~46°F)で保存しなければならない。マブリリムマブプラセボを、50mM酢酸ナトリウム、70mM塩化ナトリウム、4%トレハロース二水和物、0.05%(w/v)ポリソルベート80、pH5.8中で製剤化する。プラセボは、1.0mLの公称充填体積で、テフロン(登録商標)面エラストマーストッパーで栓をし、針ガード、プランジャーロッドおよび拡張フィンガーフランジを備えた予め充填したシリンジにおいて、無菌の液体として供給する。
【0100】
プレドニゾン
1mg、または2.5mg、5mg、10mg、20mg、もしくは50mgのプレドニゾンUSPのいずれかを含有する経口投与用のプレドニゾン錠USPが、入手可能である。各錠剤は、次の非有効成分:ラクトース一水和物、ステアリン酸マグネシウム、微結晶セルロース、プレゼラチン化デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、およびステアリン酸(1mg、2.5mg、および5mgのみ)を含有する。
【0101】
試験治療
二重盲検期間中、対象に、プロトコルに特異的なコルチコステロイドのテーパに加えて、2週間ごとに、盲検マブリリムマブ150mgまたはプラセボをSC注射により投与する。
【0102】
経口プレドニゾンは、対象の過去のステロイド処置、疾患状態、および治験責任医師の裁量に応じて、0日目に20mg/日から60mg/日(含む)の用量で開始する。次に、表1に示す以下のテーパリングスケジュール(GCAフレアの不存在下)に従って、プレドニゾン用量をその後の26週間にわたって減らし、対象は、0日目のプレドニゾン用量に応じて異なるポイントで減らし始める。
【0103】
処置期間は、各対象がいつ登録されるかに応じて異なり得、最初の登録対象は、後で登録する対象よりも長い期間、治療を受けている。すべての対象が26週間の治療を完了し、26週間の結果を分析する時まで、一部の対象(募集プロセスの早期に登録する対象)は、約21か月間、盲検化マブリリムマブまたはプラセボの投与を受ける。26週間の分析の結果に応じて、すべての対象に、さらに6か月間非盲検マブリリムマブを提供する。したがって、およその総処置期間は、最大27か月となる。
【表1】
【0104】
対象の組み入れ基準
対象の年齢は50~85歳で、書面によるインフォームドコンセントを提供することができる。
【0105】
新規発症GCA患者サブセットを、試験開始である0日目の6週間以内に診断されたものを分類し、活性な疾患状態を、以下により特徴付ける:
(a)30mm/時を超える赤血球沈降速度(ESR)のWestergren法、または血液CRP≧レベル1mg/dL、これと共に、
(b)以下のうちの少なくとも一つ、
i) GCAの明確な頭蓋症状(新規発症の局所性頭痛、頭皮または側頭動脈の圧痛、虚血に関連する視力喪失、またはそうでなければ咀嚼時の原因不明の口または顎の痛み)
ii) 四肢の不規則運動などのGCAの明確な頭蓋外症状
iii) 炎症性の朝のこわばりに関連する、肩帯および/または腰帯の疼痛として定義されるPMRの症状;
(c)および以下のうちの少なくとも一つ:
i.TABまたは超音波により明らかになるGCAの特徴
ii.大動脈または他の大血管のMRI、CT/CTAまたはPET-CTなどの血管造影または断面撮像研究による大血管性血管炎の証拠。
【0106】
再発性GCA患者サブセットは、試験開始である0日目の6週間より前に診断を受けたものとして分類され、以下により特徴付けられる
1.a) 臨床兆候および症状、Westergren ESR>30mm/時またはCRP>1mg/dL;または
b) 臨床的期待に従って疾患の診断を受けてから寛解なし(難治性非寛解)
2.0日目のGCAの寛解(GCA症状(複数可)の解消および最初の1時間でのCRP<1.0またはESR<20mm)により、対象が試験に安全に参加し、プロトコルで規定した開始用量(すなわち、≦60mg/日)でのプレドニゾンテーパの開始を含むプロトコルで規定した手順に従うことができる。
3.スクリーニング時、活性GCAの処置のために、プレドニゾンを最大60mg/日経口投与されているか、または投与することができる対象。
4.対象がメトトレキサートを使用している場合、0日目より6週間より前に開始した場合、最大25mg/週の経口または非経口メトトレキサートが許可され、患者が寛解を達成した時点で使用を中止する意図をもって安定または減少するべきである。
5.対象は、治験責任医師の決定に応じて抗血小板療法を受ける意思がある。
6.対象は、治験責任医師の決定に応じて、コルチコステロイド誘発性骨減少症/骨粗しょう症の予防のための治療を受ける意思がある。
【0107】
女性対象は、月経の中止から少なくとも12カ月後と定義(代替的な医学的原因がない)される閉経後であるか、または子宮全摘出術、両側卵管切除術、両側卵巣摘出術もしくは卵管結紮術後の永続的な不妊であるか、あるいは対象が確認した精管を切除術した男性パートナーを有するか、あるいは妊娠しておらず、授乳しておらず、かつスクリーニング時から最終治験薬投与の12週後まで有効な避妊法(すなわち、ホルモン避妊薬、IUDまたはコンドームとペッサリーもしくはペッサリーと殺精子剤もしくはコンドームと殺精子剤などの二重バリア法)を使用するように同意している。
【0108】
男性対象は、精管切除術を文書で記録しているか、二重バリア避妊法(コンドームとペッサリーもしくはペッサリーと殺精子剤もしくはコンドームとペッサリーなど)を使用することに同意するか、または0日目から安全性追跡来院まで、妊娠可能なパートナーとコンドームとホルモン避妊薬またはコンドームとIUDを使用する必要しなければならない。男性は、0日目から安全性追跡調査来院まで精子の寄付を控えることに同意する。
【0109】
試験の評価
血液試料を、静脈穿刺またはカニューレ挿入により採取し、抗GM-CSFRα抗体の血清濃度を、検証済みの分析法を用いて決定する。すべての統計解析を、SAS(登録商標)バージョン9.4以上を使用して行う。すべての臨床試験データを、対象データリストに提示する。記述統計量には、対象数(n)、平均、標準偏差(SD)、第1四分位数(Q1)、中央値、第3四分位数(Q3)、連続変数の最小および最大、ならびにカテゴリー変数および順序変数の頻度およびパーセンテージが含まれる。記述統計量(必要に応じて、算術平均、標準偏差、最小値、中央値、最大値、幾何平均、および幾何変動係数)を、抗GM-CSFRα抗体の血清中濃度及びPKパラメータについて列挙し、要約する。
【0110】
抗GM-CSFRα抗体の用量比例性を、用量群間で検討する。AUC0-∞、AUC0-t、及びCmax推定値は、必要に応じて、パワーモデルアプローチまたは分散分析(ANOVA)モデルを用いて用量比例性について検定する。
【0111】
試験中に以下の臨床応答評価も実施した。有効性測定を、以下によって実施した:
- 臨床検査分析(例えば、CRP、ESR)
- 例えば、11点疼痛数値評価尺度(NRS)、および慢性疾患療法の機能評価(FACIT[疲労])を含む、臨床GCA評価
- 超音波、MRI、CT/CTA、PET-CT、TAB(適用可能なら)を含む、撮像研究(適用可能である)
- クオリティオブライフ(QoL)質問票(例えば、EQ-5D、Health Survey[SF-36]からすぐ)。
【0112】
試験の主要評価項目解析は、新規発症または再発/難治性GCAを有する対象における26週間にわたる持続的な寛解維持のため、26週間のステロイドテーパと組み合わせた、マブリリムマブとプラセボの有効性を評価することである。持続的寛解を、二重盲検処置の開始から26週目以降までフレア(上で定義)の不在として定義する。主要評価項目は、26週間の二重盲検基準期間(二重盲検治療の開始から26週間以内の最初のフレア発生までの期間)内の寛解期間である。その期間中にフレアを経験しない対象は、26週目の来院時に打ち切る。26週間の二重盲検期間中にフレアを経験する前に脱落したか、または追跡不能となった対象は、最後の利用可能な来院時に打ち切る。26週間の二重盲検期間中、寛解状態のままであり、フレアが生じ、フレアの発生前に追跡不能となった対象の数およびパーセンテージを、各処置群について要約する。寛解期間を、各処置群の生存関数を推定するためのカプラン・マイヤー法を用いて計算した25百分位数、50百分位数(中央値)、および75百分位数によって要約する。百分位数についての95%信頼区間(CI)も計算する。対数順位検定を使用して、寛解期間(生存寛解曲線の同等性を検定する)に関して、マブリリムマブとプラセボを比較する。26週での寛解のカプラン・マイヤー推定値は、対応する95%CIと共に治療群別に提示する。処置効果の大きさを説明するために、プラセボと比較したマブリリムマブのハザード比、および対応する95%CIを、処置および無作為化層を共変量とするCox比例ハザードモデルに基づいて計算する。持続的寛解の主要解析は、mITT集団について行い、感受性解析としてPP集団について繰り返す。
【0113】
副次的有効性評価項目として、二重盲検治療期間全体の寛解期間を、上述の方法と同じ方法を用いて解析する。二重盲検処置中にフレアを経験しない対象は、二重盲検治療期間の最終来院時に打ち切る。二重盲検期間中の任意の時点でフレアを経験する前に脱落したか、または追跡不能となった対象は、最後の利用可能な来院時に打ち切る。新規発症および再発性/難治性のGCAを有する対象における、本試験の副次的目的は、以下の通りである。
- 累積コルチコステロイド用量に対するマブリリムマブ対プラセボの効果を評価すること。
- 健康に関連した生活の質(HRQoL)に対するマブリリムマブ対プラセボの効果を評価すること。
- マブリリムマブの安全性および忍容性を評価すること。
- マブリリムマブの薬物動態(PK)を評価すること。
- 病院不安および鬱尺度(HADS)は、不安と鬱の状態を検出するために使用される一般的なリッカート尺度である。質問票の14項目は、不安に関連する7項目及びうつ病に関連する7項目を含む。質問票の各項目を、0~21の各パラメータの合計スコアを0~3の尺度で採点する。
【0114】
追加の副次的有効性評価項目には、治療群によって記述的に解析する以下の二項式評価項目が含まれる。処置群の比較は、無作為化した層に対するコクラン-マンテル-ヘンツェル検定対照を使用して行う。26週目に正常なESRを有する対象のパーセンテージ
・ 無作為化処置終了時に正常なESRを有する対象のパーセンテージ
・ 26週目に正常なCRPを有する対象のパーセンテージ
・ 無作為化処置終了時に正常なCRPを有する対象のパーセンテージ
以下の連続的な副次的有効性評価項目を、処置群によって記述的に解析する。解析項目には、必要に応じて、治療手段の差について両側95% CIを含める。
・ ステロイド用量ゼロまでの時間
・ 26週目および二重盲検処置期間終了時の累積ステロイド用量
・ 経時的な臨床GCA評価(NRSおよびFACITを含む)の変化
・ 経時的なクオリティオブライフの変化。
以下の探索的評価項目について、同じ方法を用いる:
・ 26週目の生検(同意対象における)または撮像における血管壁炎症の低減
【0115】
試験中、全ての有害事象および重度の有害事象について、消失するまで追跡調査を行う。フレア/再発の疑いがある場合、治験責任医師は、開発業務受託機関(CRO)が指定する医学専門家に相談して、診断精密検査の要素をレビューおよび調和させる必要がある。フレア/再発を、CRPが正常から1mg/dL以上にまで、および/またはESRが最初の1時間で20mm未満から30mm以上に、治験責任医師によって新たなGCA、悪化GCA、または再発GCAとされる以下の兆候または症状のうちの少なくとも一つとして定義する:
頭蓋症状:
- 頭皮または側頭動脈の新規または再発性の頭痛または疼痛または圧痛
- 虚血性網膜症、視神経症、複視、一過性黒内障などの視覚兆候/症状
- 舌、咬筋、または悪化する側頭動脈の兆候および症状の新規または再発性不規則運動
- 治験責任医師の意見による、GCAに関連する一過性虚血性発作(TIA)または脳卒中
頭蓋外症状:
- 炎症性の朝のこわばりに関連する、肩帯および/または腰帯の疼痛として定義される古典的PMR様症状
- 末梢循環における(すなわち、四肢の一方における)新規または再発性の不規則運動
- 大動脈もしくは他の大血管のMRI、CT/CTA、またはPET-CT、あるいは側頭動脈の超音波を介して検出した、新規または悪化している血管造影異常。
【0116】
支持的所見には、1週間を超える38℃を超える体温の持続する毎日の再発熱、慢性貧血、または原因不明の体重減少などのGCAの悪化に関連する治験責任医師の意見における他の症状を含み得る。
【0117】
フレア/再発の治験責任医師の診断に関連する診断的精密検査(すなわち、主要評価項目)のすべての項目は、CROが指定する医療専門家とレビューし、速やかに電子症例報告書(eCRF)に入力するべきである。
【0118】
頭蓋症状または虚血に関連する視力喪失が存在する場合、または新規発症の大血管血管性血管炎(例えば鎖骨下動脈)の明らかな証拠がある場合に、フレア/再発を重度と定義する。PMRに起因するその他のすべての事象のフレア/再発では、血管またはその他の症状を、軽度とみなすべきである。
【0119】
フレアの症例を、治験責任医師の判断および標準治療(SoC)に従って処置して、対象の最善の治療を確実にする。概して、対象は、割り当てられたマブリリムマブまたはプラセボの投与を継続すべきであり、また通常、最大60mg/日である治験責任医師が決定した、増大した用量の同時投与プレドニゾンも受けるべきである。GCAフレアを処置するのに使用するすべての併用薬の用量を、eCRFに入力しなければならない。フレア、特に重篤なフレアが、プレドニゾン60mg/日よりも高い用量のコルチコステロイドを必要とする場合、治験責任医師の判断により、臨床的寛解に達するまで、ステロイド離脱療法を許容する(すなわち、プレドニゾン>60mg/日もしくは同等の用量、またはIVコルチコステロイド)。
【0120】
GCAにおける抗GM-CSFRα抗体の有効性および安全性を試験するための第II相無作為化二重盲検プラセボ対照試験
グローバル、多施設、第2相、無作為化、プラセボ対照、プルーフ・オブ・コンセプト試験を、GCA対象における26週間のコルチコステロイド(CS)テーパとの抗GM-CSFRα抗体(マブリリムマブ)の有効性および安全性を評価するよう設計した。GCA(頭蓋/頭蓋外)、赤血球沈降速度>30mm/時間、もしくはC反応性タンパク質≧1mg/dLの明確な兆候および/または症状を有し、側頭動脈生検または撮像によるGCAの診断を有する、50~85歳のおよそ60名の対象を、新規発症または再発/難治性疾患により階層化し、無作為化(3:2比)し、抗GM-CSFRα抗体150mgまたはプラセボに2週間ごとに皮下投与される。対象に、マブリリムマブまたはプラセボを26週間投与する(対象が処置を早期に中止する場合を除く)。
【0121】
主要有効性評価項目は、GCAフレアまでの時間である(上で定義した)。副次的評価項目には、0mg/日のCS投与までの時間、26週目およびWashout安全性追跡終了時の累積CS用量、臨床GCA評価の変化、およびクオリティオブライフの変化が含まれる。安全性測定には、有害事象の発生、臨床検査変数、および肺モニタリングが含まれる。
図3は、試験の概略を示す。評価項目の詳細な説明を、上で提供する。
【0122】
実施例2:側頭動脈生検の巨細胞動脈生検におけるGM-CSF経路の特性
二つの独立した供給源の側頭動脈生検を利用した。まず、GCA(n=18)および対照(n=5)の生検を、TH1、TH17、およびGM-CSFシグナル伝達(RNAスコープ;RS)を表す5つのmRNA転写物について分析した。代表的なTH1、TH17、およびGM-CSF関連mRNA転写物のRS画像について、半定量的スコアリングを行った。追加のGCAおよび対照生検を得て、GM-CSF-およびTH1関連転写物のサブセットについてRT-PCRによって分析した(実施例3においてさらに記載)。追加のGCA(n=3)および対照(n=3)の生検を得て、GM-CSFおよびGM-CSFRαタンパク質レベルを、免疫蛍光により検出し、共焦点顕微鏡により分析した。
【0123】
GM-CSFおよびGM-CSFRαmRNAの発現ならびにGM-CSFシグナル伝達およびT
H1関連遺伝子の発現は、対照と比較してGCA生検において上方制御されることが示された。T
H17関連遺伝子は上昇せず(データは示さず)、コルチコステロイド処置の併用に起因するようであった。
図4に示すように、GM-CSFシグナル伝達の下流の転写因子であるPu.1は、対照と比較してGCA生検において増加した(RS、RT-PCR)。核に局在したPU.1タンパク質の増大したレベル(この転写因子の活性化を示す)も、免疫組織化学染色によって対照動脈と比較してGCA動脈において観察した(データは示していない)。
図5に示すように CD83 mRNAは、対照と比較してGCA生検でも上方制御された(RS、RT-PCR)。側頭動脈血管壁の三つの層すべてにわたるGM-CSF-およびT
H1関連遺伝子(RS)の発現レベルを、GCA陽性対象由来の生検およびGCA陰性(対照)対象由来の生検において決定した。
図6Aに示すように、GM-CSF関連遺伝子のmRNAレベルは、対照生検(塗りつぶしていない棒)と比較して、GCA生検(影を付けた棒)において上方制御された。
図6Bに示すように、T
H1関連遺伝子のmRNAレベルは、対照生検(塗りつぶしていない棒)と比較して、GCA生検(影を付けた棒)において上方制御された。
【0124】
実施例3:RT-PCRおよび免疫蛍光染色による巨細胞性動脈炎生検のGM-CSFおよびGM-CSF受容体発現解析
この例示的研究では、側頭動脈生検におけるGM-CSF mRNA、GM-CSFRαmRNA、およびINF-γmRNAの発現レベルを、対照試料と比較してGCA患者試料において調査した。
【0125】
巨細胞性動脈炎は、主に単球およびマクロファージ関連疾患であり、GCA病理がGM-CSFおよびその受容体の高発現と関連し得ると理解されている。GM-CSFシグナル伝達は、単球-マクロファージの走化性および活性化の誘導を助ける。INF-γは、Th1細胞系統によって産生される特性サイトカインであり、クラスタ形成および細胞間接着を促進することによって多核巨細胞形成に関与する。GM-CSF、GM-CSF受容体アルファ(GM-CSFRα)およびINF-γ転写物の発現を、以下に記載する試験で測定した。
【0126】
GCA患者(n=10)または対照対象(疾患のない対象)(n=10)のいずれか由来の凍結ヒト側頭動脈切片を、TRIzolで均質化し、RNAを、慣習的な方法を使用して抽出した。ランダムヘキサマープライミングアーカイブキット(Applied Biosystems社、フォスターシティ、カリフォルニア州)を使用して、mRNAをcDNAに逆転写した。リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を、GM-CSF、GM-CSFRα、INF-γおよびGUSbを検出するのに特異的なTaqmanプローブ(Applied Biosystems社)を使用して行った。GM-CSF、GM-CSFRαまたはINF-γ遺伝子発現を、比較ΔCt法を使用して各試料について内因性対照GUSbの発現に正規化し、GUSb発現に関して相対的単位で表した。
【0127】
図7Aおよび
図7Bに示すように、GM-CSFおよびGM-CSFRα発現は、対照と比較してGCA試料において実質的に高かった。これらのデータは、GM-CSF経路が、GCA病理において重要な役割を果たしていることを裏付け、本発明の受容体拮抗薬によるGM-CSF経路の阻害が、疾患の結果に正の影響を与え得ることを示唆する。同様に、
図7Cに示すように、INFγ発現を、対照試料と比較して、GCA試料において上昇した。
【0128】
GCA患者およびGCAを有さない対照対象から得た側頭葉動脈の免疫蛍光分析を行い、GM-CSFおよびGM-CSFRαの存在および局在性を評価した。免疫蛍光分析から取得したデータを、GM-CSFαが、非炎症対照生検ならびにGCA動脈において管腔内皮上で発現したが、対照と比較してGCA動脈では発現が上昇したことを示す。GM-CSFは対照動脈に実質的に存在しないが、GCA動脈の炎症した動脈壁に広く発現している。データは、GM-CSFおよびGM-CSFRαの両方が、GCA病変に存在することをさらに示す。さらに、免疫蛍光分析により、GM-CSFマーカーとCD68マーカーの両方に対して陽性である、炎症を起こしたGCA動脈の培地層付近に浸潤したマクロファージの存在が明らかになった。
【0129】
GCA患者の側頭動脈におけるGM-CSF経路およびTH1経路の活性化を、独立した分析技術によって示した。さらに、罹患組織における活性GM-CSFシグナル伝達を、血管壁におけるPu.1の発現の増加によって証明した。これらのデータは、GCA病態生理学におけるGM-CSF経路と関係し、例えば、マブリリムマブなどのGM-CSFRα拮抗薬の処置を必要とする患者に投与することによって、GCAの治療をさらに支持する。
【0130】
実施例4:マブリリムマブへの曝露後のGCA動脈遺伝子発現
GCAを有する対象およびGCA(対照)を有さない対象由来の側頭動脈を単離し、切片化し、マトリゲルに包埋し、プラセボまたはマブリリムマブのいずれかの存在下で培養した。確立したプロトコルが、側頭動脈細胞培養に使用され、Corbera-Bellaltaら、Ann Rheum Dis.、2014:73:616~623頁に詳細に記載され、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。使用した側頭動脈培養条件を示す概略図を、
図8Aに示す。
【0131】
単離した動脈を、プラセボまたはマブリリムマブの存在下で上記の通り5日間培養した。培養期間後、動脈をmRNA発現解析のために処理した。マブリリムマブを用いたエクスビボGCA動脈培養物の処理は、CD3ε、CD83、HLA-DR、TNFα、およびCXCL10(INF-γに応答して分泌されるケモカイン)を含む、GCAで上昇することが示された炎症遺伝子の発現を抑制し、これは、GCA病態生理に関連する遺伝子に対するマブリリムマブの生物学的効果を示す。(
図8B)。これらのデータは、マブリリムマブが、GCAに関連する遺伝子の発現を低減することを明確に示す。
【0132】
実施例5:GCAマウスキメラモデルに移植したヒト側頭動脈生検
ヒト動脈-NSGマウスキメラモデルを使用して、血管炎性動脈で発生する血管の炎症およびリモデリングを抑制する抗GM-CSFRα抗体(マブリリムマブ)の有効性を評価した。本実施例で使用するヒト動脈-NSGマウスキメラモデルは、Zhangら、Circulation、2018:137(18):1934~1948頁に詳細に記載されている。簡潔に述べると、正常な側頭動脈または軸索を、NSG免疫不全マウスに移植した。その後、GCA患者由来のPBMCを、キメラマウスに養子移植した。約7~10日後、移植したヒト動脈の血管炎は、血管壁病変に浸潤する組織浸潤細胞で明らかであった。移植したヒト動脈由来の組織切片は、高密度の細胞浸潤を示した。正常なヒト対照由来のPBMCを移植する場合、血管炎は観察しなかった。興味深いことに、組み換えGM-CSF(rGM-CSF)50μgを、このようなキメラマウスに投与したとき、動脈における組織炎症が増強した。組織抑制性T細胞の数は、rGM-CSF注射後に2倍になった。炎症細胞の密度の増加は、IL-1β、IL-6、およびIFN-γの組織遺伝子発現の平行な増加を伴った。
【0133】
実施例6:GCA治療における抗GM-CSFRα抗体のインビボ有効性
本実施例において、GCAの治療におけるGM-CSF拮抗薬であるマブリリムマブのインビボ有効性を、上記のヒト動脈-NSGマウスキメラモデルで評価した。マウスの各群について、対照IgG抗体または抗GM-CSFRα抗体を、確立した血管炎中に腹腔内投与した(GCA PBMCの養子移植の7日後)。この実験では、キメラマウスにおける血管炎を、GCA患者由来のPMBCの養子移植のみによって誘発し、マウスにrGM-CSFを投与しなかった。7日目にキメラマウスを処置することは、定常状態血管炎の処置を模倣する。各実験において、マウスに、同じ動脈由来のセグメントを移植し、同じ患者由来のPMBCの養子移植を受け、その結果、血管炎は、各治療群で同等であった。1週間の処置期間後、動脈を回収し、免疫組織化学およびトランスクリプトーム分析により調べた。
【0134】
図9Aに示すように、CD3
+T細胞の免疫組織化学染色は、IgG対照抗体を投与したマウスと比較して、抗GM-CSFRα抗体を投与したマウスにおいて、組織浸潤性CD3
+T細胞が有意に減少したことを示す。T細胞枯渇効果も、炎症を起こした動脈組織内のT細胞数を列挙することによって調べた。
図9Bに示すように、高出力視野当たりの組織抑制T細胞の数は、IgG対照処置マウスと比較して、抗GM-CSFRα抗体処置マウスで約50%低かった(P<0.001の統計的有意性を伴う)。これらのデータは、キメラマウスの抗GM-CSFRα抗体での処置が、アイソタイプ抗体陰性対照群と比較して強力な抗炎症効果を示したことを説明する。
【0135】
GCAの影響を受けると、大動脈および中動脈は、微小血管の高密度ネットワークを発生させ、血管新生をもたらす。動脈内のT細胞はまた、動脈の内膜(内層)層の厚さによって測定した、内膜過形成を促進する。
図10に示されるように、抗GM-CSFRαで処置したマウスにおける微小血管の数は、対照IgGで処置したマウスと比較して有意に低減した。さらに、IgG対照抗体を投与したマウスと比較して、抗GM-CSFRα抗体を投与したマウスでは、内膜厚の測定値が、約40%低下した(P<0.001の統計的有意を伴う)。これらの結果は、抗GM-CSFRαで処置したマウスにおける炎症性浸潤の密度を抑制し、壁リモデリングプロセスを阻害したことを説明する。
【0136】
次に、IgG対照または抗GM-CSFRαで処置したマウスの動脈組織における遺伝子発現特性を評価し、ヒートマップとしてプロットし、ここで、行は遺伝子を表し、列はマウスを表す。
図11は、IgG対照で処置したマウスにおける炎症誘発性サイトカインの組織トランスクリプトームが、抗GM-CSFRαで処置したマウスの組織トランスクリプトームと比較して有意に増加したことを示す。例えば、抗GM-CSFR抗体で処置したマウスにおいて、IL-1β、IL-6、およびIFN-γの組織遺伝子発現が有意に減少した。抗GM-CSFRα抗体で処置したマウスにおけるIFN-γの発現の低減は、これは、Th1細胞系統(脈管形成能を有する細胞系統)によって産生される特性サイトカインであり、クラスタ形成および細胞間接着を促進することによって多核巨細胞形成に関与するので、GCAの処置に特に重要である。さらに、IFN-γ産生Th1細胞は、グルココルチコイド療法に比較的非応答であり、ステロイドで処置した患者において持続し、IFN-γの過剰産生は、疾患の慢性における重要な機序であると考えられる。これらの結果は、抗GM-CSFRα抗体が、炎症を起こした動脈における先天的および適応免疫応答を抑制できることを説明する。
【0137】
全体的に、これらのインビボデータは、GM-CSF拮抗薬(例えば、抗GM-CSFRα抗体)の投与が、GCA病理の重要な態様である血管炎症、内膜過形成、および血管新生を処置するのに使用され得ることを示唆している。
【0138】
均等物
当業者は、日常的な実験作業を越えない手法を使用して、本明細書に記載される本発明の特定の実施形態の多くの均等物を認識するか、または確認できるものとなる。本発明の範囲は、上記の記載に限定されることは意図されず、むしろ以下の特許請求の範囲に記述されるとおりである。
【配列表】