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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】熱帯低気圧の影響の予想
(51)【国際特許分類】
   G01W 1/10 20060101AFI20240528BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALI20240528BHJP
【FI】
G01W1/10 Z
G06Q50/10
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021533251
(86)(22)【出願日】2019-12-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-01
(86)【国際出願番号】 US2019065263
(87)【国際公開番号】W WO2020123397
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-12-07
(31)【優先権主張番号】62/777,444
(32)【優先日】2018-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517012925
【氏名又は名称】アキュウェザー,インク.
【氏名又は名称原語表記】ACCUWEATHER,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 智史
(72)【発明者】
【氏名】マイヤーズ, ジョエル エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】モス, マーシャル
(72)【発明者】
【氏名】ポーター, ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】ルート, マイケル
【審査官】佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第08280633(US,B1)
【文献】特開2003-085361(JP,A)
【文献】特開平10-161993(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01W1/00-1/18
G06Q10/00-10/10
30/00-30/08
50/00-50/20
50/26-99/00
G16Z99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予報熱帯低気圧の影響を予想するための方法であって、
過去の熱帯低気圧の経済的影響を識別する工程と、
前記過去の熱帯低気圧のそれぞれによって影響を受けた各経済の規模を識別する工程と、
それぞれの過去の熱帯低気圧の時点における前記影響を受けた経済の規模に基づいて
前記経済的影響を調整する工程と、
前記過去の熱帯低気圧のそれぞれの気象状態を識別する工程と、
前記過去の熱帯低気圧のそれぞれの前記調整された経済的影響と前記過去の熱帯低気圧のそれぞれの前記過去の気象状態との相関関係を決定する工程と、
識別された気象状態のそれぞれに対する複数の範囲を格納する工程と、
予報熱帯低気圧を識別する工程と、
前記予報熱帯低気圧の予想進路を識別する工程と、
前記予報熱帯低気圧の前記予想進路に沿った各国または地域を識別する工程と、
前記予報熱帯低気圧の前記予想進路に沿った国または地域毎に、
前記予報熱帯低気圧を原因として引き起こされる前記国または地域における予報気象状態を識別する工程と、
前記国または地域における前記予報気象状態を前記複数の気象状態のそれぞれに対する前記複数の範囲と比較する工程と、
前記複数の範囲との前記国または地域における前記予報気象状態の前記比較に基づいて、前記国または地域における前記予報熱帯低気圧を特徴付ける工程と、
ユーザへの表示のために前記特徴付けを出力する工程と
を含む方法。
【請求項2】
予報熱帯低気圧の予想される影響に対する複数の範囲を格納する工程と、
前記予報熱帯低気圧の前記予想進路における地理的地域の1つまたは複数の人口統計学的特性を決定する工程と、
前記予報熱帯低気圧を原因として引き起こされる前記予報気象状態のうちの1つまたは複数と、前記予報熱帯低気圧の前記予想進路における前記地理的地域の前記1つまたは複数の人口統計学的特性とに基づいて、前記国または地域における前記予報熱帯低気圧の影響を予想する工程と、
前記国または地域における前記予報熱帯低気圧の前記予想される影響を予想される影響
に対する前記複数の範囲と比較する工程とをさらに含み、
前記国または地域における前記予報熱帯低気圧の前記特徴付けは、さらに、予想される影響に対する前記複数の範囲との前記国または地域における前記予報熱帯低気圧の前記予想される影響の比較に基づく、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記予報熱帯低気圧の前記予想進路における前記地理的地域の1つまたは複数の地理的特性を決定することをさらに含み、
前記予想される影響は、さらに、前記予報熱帯低気圧の前記予想進路における前記地理的地域の前記1つまたは複数の地理的特性に基づいて予想される、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記予報熱帯低気圧の前記予想進路における前記地理的地域の1つまたは複数の地質的特性を決定することをさらに含み、
前記予想される影響は、さらに、前記予報熱帯低気圧の前記予想進路における前記地理的地域の前記1つまたは複数の地質的特性に基づいて予想される、
請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記予想される影響は、前記予報熱帯低気圧の予想される経済的影響である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
記過去の熱帯低気圧のそれぞれの前記調整された経済的影響と前記過去の熱帯低気圧のそれぞれの前記過去の気象状態との相関関係を決定することは、前記過去の熱帯低気圧のそれぞれの前記調整された経済的影響と前記過去の熱帯低気圧のそれぞれの前記過去の気象状態との前記相関関係に基づいて熱帯低気圧の前記経済的影響を推定するモデルを生成することを含む
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記過去の熱帯低気圧のそれぞれの影響を受けた地理的地域の人口統計学的特性を識別する工程と、
前記過去の熱帯低気圧のそれぞれの前記調整された経済的影響と前記過去の熱帯低気圧のそれぞれの影響を受けた前記地理的地域の前記人口統計学的特性との相関関係を決定する工程とをさらに含み、
熱帯低気圧の前記経済的影響を推定する前記モデルは、前記過去の熱帯低気圧のそれぞれの前記調整された経済的影響と前記過去の熱帯低気圧のそれぞれの影響を受けた前記地理的地域の前記人口統計学的特性との相関関係にさらに基づいて生成される、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記予報熱帯低気圧の前記予想進路における前記国または地域の前記地理的地域の地理的特性を識別する工程と、
前記過去の熱帯低気圧のそれぞれの影響を受けた前記地理的地域の地理的特性を識別する工程と、
前記過去の熱帯低気圧のそれぞれの前記調整された経済的影響と前記過去の熱帯低気圧のそれぞれの影響受けた前記地理的地域の前記地理的特性との相関関係を決定する工程とをさらに含み、
熱帯低気圧の前記経済的影響を推定する前記モデルは、前記過去の熱帯低気圧のそれぞれの前記調整された経済的影響と前記過去の熱帯低気圧のそれぞれの影響を受けた前記地理的地域の前記地理的特性との前記相関関係にさらに基づいて生成され、
前記国または地域における前記予報熱帯低気圧の前記推定される経済的影響は、前記予報熱帯低気圧の前記予想進路における前記国または地域の前記地理的地域の前記地理的特性にさらに基づく、
請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記予報熱帯低気圧の前記予想進路における前記国または地域の前記地理的地域の地質的特性を識別する工程と、
前記過去の熱帯低気圧のそれぞれの影響を受けた前記地理的地域の地質的特性を識別する工程と、
前記過去の熱帯低気圧のそれぞれの前記調整された経済的影響と前記過去の熱帯低気圧のそれぞれの影響を受けた前記地理的地域の前記地質的特性との相関関係を決定する工程とをさらに含み、
熱帯低気圧の経済的影響を推定する前記モデルは、前記過去の熱帯低気圧のそれぞれの前記調整された経済的影響と前記過去の熱帯低気圧のそれぞれの影響を受けた前記地理的地域の前記地質的特性との相関関係にさらに基づいて生成され、
前記国または地域における前記予報熱帯低気圧の前記推定される経済的影響は、前記予報熱帯低気圧の前記予想進路における前記国または地域の前記地理的地域の前記地質的特性にさらに基づく、
請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記複数の範囲との前記予報気象状態の前記比較と、前記比較に基づく前記予報熱帯低気圧の前記特徴付けとは、人間の介入なくハードウェア・コンピュータ・プロセッサによって実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
予報熱帯低気圧の影響を予想するためのシステムであって、
複数の気象状態のそれぞれに対する複数の範囲と、
予報熱帯低気圧と前記予報熱帯低気圧の予想進路とを含む予報気象状態と
を格納する1つまたは複数のデータベースと、
過去の熱帯低気圧の経済的影響を識別し、
前記過去の熱帯低気圧のそれぞれによって影響を受けた各経済の規模を識別し、
それぞれの過去の熱帯低気圧の時点における前記影響を受けた経済の規模に基づいて
前記経済的影響を調整し、
前記過去の熱帯低気圧のそれぞれの気象状態を識別し、
前記過去の熱帯低気圧のそれぞれの前記調整された経済的影響と前記過去の熱帯低気圧のそれぞれの前記過去の気象状態との相関関係を決定し、
前記予報熱帯低気圧の前記予想進路に沿った各国または地域を識別し、
前記予報熱帯低気圧の前記予想進路に沿った国または地域毎に、
前記予報熱帯低気圧を原因として引き起こされる前記国または地域における予報気象状態を識別し、
前記国または地域における前記予報気象状態を前記複数の気象状態のそれぞれに対する前記複数の範囲と比較し、
前記複数の範囲との前記国または地域における前記予報気象状態の前記比較に基づいて、前記国または地域における前記予報熱帯低気圧を特徴付け、
ユーザへの表示のために前記特徴付けを出力する
1つまたは複数のサーバと
を含むシステム。
【請求項12】
前記1つまたは複数のデータベースは、予報熱帯低気圧の予想される影響に対する複数の範囲を格納し、
前記1つまたは複数のサーバは、
前記予報熱帯低気圧の前記予想進路における地理的地域の1つまたは複数の人口統計学的特性を決定し、
前記予報熱帯低気圧を原因として引き起こされる前記予報気象状態のうちの1つまたは複数と、前記予報熱帯低気圧の前記予想進路における前記地理的地域の前記1つまたは複数の人口統計学的特性とに基づいて、前記国または地域における前記予報熱帯低気圧の影響を予想し、
前記国または地域における前記予報熱帯低気圧の前記予想される影響を予想される影響に対する前記複数の範囲と比較し、
さらに、予想される影響に対する前記複数の範囲との前記国または地域における前記予報熱帯低気圧の前記予想される影響の比較に基づいて、前記国または地域における前記予報熱帯低気圧を特徴付けるように構成される、
請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記1つまたは複数のサーバは、さらに、
前記予報熱帯低気圧の前記予想進路における前記地理的地域の1つまたは複数の地理的特性を決定し、
さらに、前記予報熱帯低気圧の前記予想進路における前記地理的地域の前記1つまたは複数の地理的特性に基づいて前記影響を予想するように構成される、
請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記1つまたは複数のサーバは、さらに、
前記予報熱帯低気圧の前記予想進路における前記地理的地域の1つまたは複数の地質的特性を決定し、
さらに、前記予報熱帯低気圧の前記予想進路における前記地理的地域の前記1つまたは複数の地質的特性に基づいて前記影響を予想するように構成される、
請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
前記予想される影響は、前記予報熱帯低気圧の予想される経済的影響である、請求項12に記載のシステム。
【請求項16】
前記1つまたは複数のサーバは、
記過去の熱帯低気圧のそれぞれの前記調整された経済的影響と前記過去の熱帯低気圧のそれぞれの前記過去の気象状態との前記相関関係に基づいて熱帯低気圧の経済的影響を推定するモデルを生成することによって、前記過去の熱帯低気圧のそれぞれの前記調整された経済的影響と前記過去の熱帯低気圧のそれぞれの前記過去の気象状態との相関関係を決定する
請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記1つまたは複数のサーバは、さらに、
前記過去の熱帯低気圧のそれぞれの影響を受けた地理的地域の人口統計学的特性を識別し、
前記過去の熱帯低気圧のそれぞれの前記調整された経済的影響と前記過去の熱帯低気圧のそれぞれの影響を受けた前記地理的地域の前記人口統計学的特性との相関関係を決定し、
前記過去の熱帯低気圧のそれぞれの前記調整された経済的影響と前記過去の熱帯低気圧のそれぞれの影響を受けた前記地理的地域の前記人口統計学的特性との前記相関関係にさらに基づいて熱帯低気圧の経済的影響を推定する前記モデルを生成するように構成される、
請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記1つまたは複数のサーバは、さらに、
前記予報熱帯低気圧の前記予想進路における前記国または地域の前記地理的地域の地理的特性を識別し、
前記過去の熱帯低気圧のそれぞれの影響を受けた前記地理的地域の地理的特性を識別し、
前記過去の熱帯低気圧のそれぞれの前記調整された経済的影響と前記過去の熱帯低気圧のそれぞれの影響を受けた前記地理的地域の前記地理的特性との相関関係を決定し、
前記過去の熱帯低気圧のそれぞれの前記調整された経済的影響と前記過去の熱帯低気圧のそれぞれの影響を受けた前記地理的地域の前記地理的特性との前記相関関係にさらに基づいて前記熱帯低気圧の経済的影響を推定する前記モデルを生成し、
前記予報熱帯低気圧の前記予想進路における前記国または地域の前記地理的地域の前記地理的特性にさらに基づいて、前記国または地域における前記予報熱帯低気圧の前記経済的影響を推定するように構成される、
請求項16に記載のシステム。
【請求項19】
前記1つまたは複数のサーバは、さらに、
前記予報熱帯低気圧の前記予想進路における前記国または地域の地理的地域の地質的特性を識別し、
前記過去の熱帯低気圧のそれぞれの影響を受けた前記地理的地域の地質的特性を識別し、
前記過去の熱帯低気圧のそれぞれの前記調整された経済的影響と前記過去の熱帯低気圧のそれぞれの影響を受けた前記地理的地域の前記地質的特性との相関関係を決定し、
前記過去の熱帯低気圧のそれぞれの前記調整された経済的影響と前記過去の熱帯低気圧のそれぞれの影響を受けた前記地理的地域の前記地質的特性との前記相関関係にさらに基づいて前記熱帯低気圧の経済的影響を推定するモデルを生成し、
前記予報熱帯低気圧の前記予想進路における前記国または地域の前記地理的地域の前記地質的特性にさらに基づいて、前記国または地域における前記予報熱帯低気圧の前記経済的影響を推定するように構成される、
請求項16に記載のシステム。
【請求項20】
前記1つまたは複数のサーバは、人間の介入なく、前記予報気象状態を前記複数の範囲と比較し、前記比較に基づいて前記予報熱帯低気圧を特徴付ける、請求項11に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は2018年12月10日に出願された米国仮特許出願第62/777,444号に基づく優先権を主張するものであり、その内容全体を参照により本明細書に援用する。
【背景技術】
【0002】
熱帯低気圧は、低気圧中心、閉じた低気圧性の大気循環、強風、および大雨をもたらす渦巻き状の雷雲によって特徴付けられる、急速に回転する暴風圏である。その場所および強さに応じて、熱帯低気圧は、ハリケーン、台風、熱帯暴風雨、サイクロン暴風、弱い熱帯低気圧、(単に)サイクロンなどの異なる呼び名で呼ばれる。大西洋および北東太平洋で発生する熱帯低気圧は、一般に「ハリケーン」と呼ばれる。北西太平洋で発生する熱帯低気圧は、一般に「台風」と呼ばれる。南太平洋またはインド洋において、匹敵する暴風雨は、一般に「熱帯低気圧」または「強力なサイクロン性嵐」と呼ばれる。
【0003】
熱帯低気圧は、人類に知られている最も強力な自然災害に含まれている。熱帯低気圧の間は、熱帯低気圧に関連した影響のいくつかによって、交通機関、水、エネルギー、および通信システムなどの重要なインフラストラクチャとともに、住宅、商業建築物、工業建築物、公共建築物が損傷を受ける、または破壊される場合がある。風と水は、他の自然作用と組み合わされると、非常に破壊的および致命的で損害が大きくなり得る、熱帯低気圧に関連した双子の危険である。
【0004】
また、個人、住宅、および共同体への影響に加えて、熱帯低気圧は、特に河口および沿岸の生息地などの環境にも甚大な影響をもたらす。熱帯低気圧は、林冠を完全に枯らして森林生態系において劇的な構造の変化を引き起こし得る強力な風を発生させる。動物は、熱帯低気圧によって命を落とすか、もしくは強風、高潮、および集中豪雨によって引き起こされる生息地および食糧の入手可能性の変化によって間接的に影響を受け得る。1989年のハリケーン・ヒューゴの通過後に個体数が元の規模の半数にまで減少したアカビタイボウシインコ(Amazona vittatta)など、絶滅危惧種は大幅に影響を受ける場合がある。ハリケーン・ギルバートは、メキシコのイスラ・コスメルでのみ発見されるコスメルツグミモドキ(Toxostoma guttatum)を1988年に絶滅寸前まで追い込んだ。
【0005】
熱帯低気圧に関連した様々な暴風雨の構成要素(例えば、高潮、膨張波、地滑りなど)は、大量の土砂を移動させ、最終的には沿岸の地形を再形成する場合がある。アイバン(2004年)、カトリーナおよびリタ(2005年)、グスタフおよびアイク(2008年)などのハリケーンは、一部の地域において約100m(328フィート)の海岸線位置変化をもたらした。ハリケーン・カトリーナおよびハリケーン・リタのみによる土地の滅失は、約73平方マイルとなると推定された。
【0006】
沿岸部生息地における環境条件を変化させることによって、熱帯低気圧は、直後から長期にわたる範囲での一連の直接的および間接的な生態学的応答を発生させる。環境的影響に関しては、類似した熱帯低気圧は2つとしてない。暴風雨の前進速度、規模、強度、降水量などの個々の特性は、熱帯低気圧の影響の種類および時間範囲において大きな役割を果たす。上記のような要素の多くに依存して、熱帯暴風雨でも、死者を出す可能性があり、建物およびインフラストラクチャに深刻な被害を及ぼし得る。
【0007】
サファ・シンプソン・ハリケーン・ウィンド・スケール(SSHWS:Saffer-Simpson Hurricane Wind Scale)は、熱帯低気圧の強度を測定するために、気象学者によって使用されるツールである。トルネードを測定するために使用される改良藤田スケールと同様に、SSHWSは、暴風雨中の持続風速に基づいて熱帯低気圧を各分類に分ける。
【0008】
ハリケーンとして分類されるには、熱帯低気圧は、1分間で少なくとも74mph(33m/s;64kts;119km/h)の最大持続風速を有する必要がある。分類は、以下のように最大持続風速に基づく分類1から分類5を有する。
【表1】
【0009】
残念ながら、熱帯低気圧の真の損害、破壊、および命を脅かす可能性の指標として現時点の風速および予報風速のみを使用することは、歴史的文献をみると、不正確であり精度が低いとみられてきた。そのため、例えば高潮、洪水、土砂マス・ウェスティング(地滑りなど)からの可能性のある影響を、一般の人々、政府職員、第一対応者に伝えようとした場合に、風速のみでは不十分である。さらに、風速だけでは、熱帯低気圧からの経済的影響を詳細に明らかにすることはできない。熱帯低気圧からの真の潜在被害、破壊的および経済的な影響を正確かつ高精度に明確化するために、暴風雨および暴風雨の予想進路における自然作用に関連した他の変動要素を考慮する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、それぞれの暴風雨の風速のみを考慮する従来技術の方法よりも正確で高精度に予報熱帯低気圧を特徴付けるシステムおよび方法が必要である。さらに、人間が主観的な決定を行うのではなく数学的な規則を使用した処理が必要である。現在の暴風雨または予報暴風雨の潜在被害および破壊のより完全な状況を示すことによって、本開示のシステムおよび方法は政府職員、第一対応者、および一般の人々に対してより多くの情報を提供し、熱帯低気圧の発生前または発生時の危機的時期により良い判断を下すことができるようにする。そのような利点のすべては、生命を救う上で役立ち、潜在被害を財産までにとどめる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
従来技術の上記および他の欠点を克服するため、複数の気象状態のそれぞれに対して複数の範囲を格納し、予報熱帯低気圧を識別し、前記予報熱帯低気圧の予想進路を識別し、前記予報熱帯低気圧の前記予想進路に沿った各国または地域を識別し、前記予報熱帯低気圧の前記予想進路に沿った国または地域毎に、前記予報熱帯低気圧を原因として引き起こされる前記国または地域における予報気象状態を識別し、前記国または地域における前記予報気象状態を前記複数の気象状態のそれぞれに対する前記複数の範囲と比較し、前記複数の範囲との前記国または地域における前記予報気象状態の比較に基づいて、前記国または地域における前記予報熱帯低気圧を特徴付け、ユーザへの表示のために前記特徴付けを出力する、熱帯低気圧分析システムが提供される。
【0012】
前記熱帯低気圧分析システムは、さらに、予報熱帯低気圧の予想される影響に対して複数の範囲を格納し、前記予報熱帯低気圧の前記予想進路における地理的地域の1つまたは複数の人口統計学的特性を決定し、前記予報熱帯低気圧を原因として引き起こされる前記予報気象状態のうちの1つまたは複数と、前記予報熱帯低気圧の前記予想進路における地理的地域の1つまたは複数の人口統計学的特性とに基づいて、前記国または地域における前記予報熱帯低気圧の影響を予想し、前記国または地域における前記予報熱帯低気圧の予想される影響を予想される影響の複数の範囲と比較してもよい。それらの実施形態において、前記国または地域における前記予報熱帯低気圧の特徴付けは、さらに、予想される影響の前記複数の範囲との前記国または地域における前記予報熱帯低気圧の前記予想される影響の比較に基づく。
【0013】
前記熱帯低気圧分析システムは、さらに、前記予報熱帯低気圧の前記予想進路における前記地理的地域の1つまたは複数の地理的または地質的特性を決定してもよい。それらの実施形態において、前記予報熱帯低気圧の前記予想される影響は、さらに、前記予報熱帯低気圧の前記予想進路における前記地理的地域の1つまたは複数の地理的または地質的特性に基づいて予想される。
【0014】
いくつかの実施形態において、前記予報熱帯低気圧の前記予想される影響は、前記予報熱帯低気圧の前記予想される経済的影響でもよい。それらの実施形態において、前記予報熱帯低気圧の前記予想される経済的影響は、過去の熱帯低気圧の経済的影響を識別し、前記過去の熱帯低気圧のそれぞれによって影響を受けた各経済の規模を識別し、それぞれの過去の熱帯低気圧の時点における前記影響を受けた経済の規模に基づいて前記経済的影響を調整し、前記過去の熱帯低気圧のそれぞれの気象状態を識別し、前記過去の熱帯低気圧のそれぞれの前記調整された経済的影響と前記過去の熱帯低気圧のそれぞれの前記過去の気象状態との相関関係を決定し、前記過去の熱帯低気圧のそれぞれの前記調整された経済的影響と前記過去の熱帯低気圧のそれぞれの前記過去の気象状態との相関関係に基づいて熱帯低気圧の経済的影響を推定するモデルを生成することによって推定される。それらの実施形態において、熱帯低気圧の経済的影響を推定する前記モデルは、前記過去の熱帯低気圧のそれぞれの前記調整された経済的影響と前記過去の熱帯低気圧のそれぞれの影響を受けた地理的地域の人口統計学的、地理的または地質的特性との相関関係にさらに基づいて生成されてもよい。
【0015】
上記の実施形態のいずれかにおいて、前記複数の範囲との前記予報気象状態の比較と、前記比較に基づく前記予報熱帯低気圧の前記特徴付けとは、人間の介入なくハードウェア・コンピュータ・プロセッサによって実行されてもよい。
【0016】
上述した実施形態のすべては、予報最大持続風速のみに依存する既存の方法(サファ・シンプソン・ハリケーン・ウィンド・スケール)と比べて重要な技術的利点および公共の安全上の利点を提供する。複数の予報気象状態(さらに、いくつかの実施形態では予報熱帯低気圧の予想進路における地理的地域の特性)に基づいて各熱帯低気圧を特徴付けることによって、熱帯低気圧分析システムは、予報熱帯低気圧によってもたらされる生命および財産への脅威をより正確に予想し、さらにより完全に伝えることができる。
【0017】
例示の実施形態の態様は、添付図面を参照することによってより良好に理解される場合がある。図面中の構成要素は、必ずしも縮尺に従っておらず、その代わり例示の実施形態の原理を強調して示している。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の例示の実施形態による熱帯低気圧分析システム100を示すブロック図である。
【0019】
図2】本発明の例示の実施形態による熱帯低気圧分析システムのアーキテクチャの概要を示す図である。
【0020】
図3】本発明の例示の実施形態による、過去の熱帯低気圧の過去の経済的影響をモデル化する処理を示すフローチャートである。
【0021】
図4】本発明の例示の実施形態に、現在または予報熱帯低気圧のそれぞれによってもたらされる脅威を特徴付ける処理を示すフローチャートである。
【0022】
図5】本発明の例示の実施形態による、ユーザに対して表示するために予報熱帯低気圧の特徴付けを出力するグラフィカル・ユーザ・インタフェースの図である。
【0023】
図6】本発明の例示の実施形態による、ユーザに対して表示するために予報熱帯低気圧の特徴付けを出力するグラフィカル・ユーザ・インタフェースの別の図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下において本発明の例示の実施形態の様々な図を示す図面を参照する。図面および本明細書における図面の説明において、便宜上、特定の用語が使用されるが、本発明の実施形態を限定することを意図したものではない。さらに、図面および以下の説明において、全体的に、同様の番号は同様の要素を示す。
【0025】
システムアーキテクチャ
図1は、本発明の例示の実施形態による熱帯低気圧分析システム100を示すブロック図である。
【0026】
図1に示すように、熱帯低気圧分析システム100は、1つまたは複数のデータベース110、分析エンジン180、およびグラフィカル・ユーザ・インタフェース190を含む。1つまたは複数のデータベース110は、過去気象データ112、過去気象影響データ114、および予報気象状態116を含む。さらに、1つまたは複数のデータベース110は、人口統計学的データ124、地理的データ126、および/または地質的データ128を含んでもよい。いくつかの実施形態において、1つまたは複数のデータベース110は、過去人口統計学的データ134も含んでもよい。いくつかの実施形態において、1つまたは複数のデータベース110は、過去地理的データ136、および過去地質的データ138をさらに含んでもよい。
【0027】
過去気象データ112は、過去の熱帯低気圧の進路および時間を示す情報を含む。過去の熱帯低気圧のそれぞれに対して、過去気象データ112は、過去の熱帯低気圧に起因して発生した多数の個々の気象状態によって計測された際の過去のそれぞれの熱帯低気圧の深刻度を示す情報も含む。過去の熱帯低気圧のそれぞれに対して、例えば、過去気象データ112は、風速(例えば最大持続風速)、降雨量(例えば過去の熱帯低気圧を原因とする総積算降雨量、過去の熱帯低気圧を原因とする日別最大降雨量など)、高潮、沿岸部浸水、熱帯低気圧積算エネルギー(ACE:accummulated cyclone energy)、地上気圧、高温、低温などを示す情報を含んでもよい。過去気象データ112は、公的に利用可能な情報源(例えばアメリカ海洋大気庁(NOAA:National Oceanic and Atmospheric Administration)、民間の情報源(例えばAccuWeather,Inc.社、AccuWeather Enterprise Solution,Inc.社)などから入手されてもよい。
【0028】
過去気象影響データ114は、過去の熱帯低気圧のそれぞれの経済的影響を示す情報を含む。過去の熱帯低気圧のそれぞれの経済的影響は、建物および農作物に対する直接的な損害とともに、過去の熱帯低気圧を原因とする間接的な破壊(例えば、停電、機会損失売上、船舶遅延データ、消費者支出の減少、小売店およびサービス提供場所への訪問の減少、走行速度の増加など)を含んでもよい。過去気象影響データ114は、NOAA Storm Events Database(郡、州、連邦の防災当局からの情報を集約)、地域の警察当局、skywarnスポッター、アメリカ国立気象局(NWS:National Weather Service)損害調査、新聞切り抜きサービス、保険事業、一般大衆など)、業界固有の商業的および非商業的実体からの情報(例えば保険金請求情報など)、サードパーティの情報源など、公的に利用可能な情報源から入手されてもよい。分析エンジン180は、長期経済的成長における過去の熱帯低気圧のそれぞれの影響を推定するために、Solomon M.HsinangおよびAmir S.Jinaによって開発されたモデル(例えばHsiang等著、「The Causal Effect of Environmental Catastrophe on Long-Run Economic Growth:Evidence From 6,700 Cyclones」、NBER Working Paper No.20352、2014年7月発行参照)などの経済予想モデルも使用してもよい。熱帯低気圧分析システム100は、過去の熱帯低気圧の顧客固有の影響を判断するために、顧客固有データ(顧客から入手)も使用してもよい。
【0029】
人口統計学的データ124は、例えば、地理的地域(例えば予報熱帯低気圧の予想進路における地理的地域など)の単位領域毎の人口密度、人口年齢レベル、人口教育レベル、収入レベル、世帯規模、および/または不動産部門(住居、商業、および工業)の集中度などを含んでもよい。これらの人口統計要素を示す情報は、例えばアメリカ合衆国国勢調査局、世界銀行などの1つまたは複数のサードパーティから入手されてもよい。以下に説明するように、熱帯低気圧分析システム100は、過去の熱帯低気圧の影響をモデル化するために過去の熱帯低気圧の進路における地理的地域の人口統計も利用してもよい(さらに予報熱帯低気圧の影響を予想するためにそのモデルを使用してもよい)。地理的地域の人口統計は時間の経過とともに変化する可能性があるため、熱帯低気圧分析システム100は過去の熱帯低気圧の進路における地理的地域の人口統計を示す過去人口統計学的データ134も格納してもよい。この過去人口統計学的データ134は、同様に、サードパーティ(例えばアメリカ合衆国国勢調査局、世界銀行など)から入手されてもよく、または現在入手可能な情報に基づいて推定されてもよい。
【0030】
地理的データ126は、例えば、地理的地域(すなわち過去の熱帯低気圧の進路における地理的地域および予報熱帯低気圧の予報進路における地理的地域)の地形、地形傾斜、および/または地形方位を示す情報を含んでもよい。地理的データ126は、サードパーティから入手されてもよい。地理的データ126は、例えば合成開口レーダー(SAR:synthetic-aperture radar)、ランドサット衛星などからの画像に基づいて決定されてもよい。地理上の地形、地形傾斜、および/または地形方位が時間の経過とともに有意に変化したと決定される場合、熱帯低気圧分析システム100は、過去の熱帯低気圧の進路における地理的地域の地形および/または地勢を示す過去地理的データ136も格納してもよい。この過去人口統計学的データ136は、同様に、サードパーティから入手されてもよく、過去の画像から決定されてもよく、または現在入手可能な情報に基づいて推定されてもよい。
【0031】
地質的データ128は、地理的地域(すなわち、過去の熱帯低気圧の進路における地理的地域および予報熱帯低気圧の予報進路における地理的地域)の岩盤の特性および露出、地盤種別、土壌安定性データ、および場所固有の地震活動度を示す情報を含んでもよい。地質的データ128は、アメリカ地質調査所(USGS:United States Geological Survey)、土壌保護局(NRCS:Natural Resources Conservation Service)、アメリカ合衆国農務省(USDA:United States Department of Agriculture)などの1つまたは複数のサードパーティから入手されてもよい。地理的地域の地質状態が時間の経過とともに顕著に変化したと決定された場合、熱帯低気圧分析システム100は、過去の熱帯低気圧の進路における地理的地域の地質特性を示す過去地質的データ138も格納してもよい。この過去地質的データ138は、同様に、サードパーティから入手されてもよく、現在入手可能な情報に基づいて推定されてもよい。
【0032】
予報気象状態116は、予報熱帯低気圧に関連した予報気象状態の予想場所、予想時間、予想規模を示す情報を含む。予報気象状態116は、風速(例えば最大持続風速)、降雨量(例えば総積算降雨量、日別最大降雨量など)、高潮、沿岸部浸水、熱帯低気圧積算エネルギー、地上気圧、高温、低温などを含んでもよい。予報気象状態116および事象は、AccuWeather,Inc.社、AccuWeather Enterprise Solution,Inc.社、アメリカ国立気象局(NWS)、国立ハリケーンセンター(NHC:National Hurricane Center)、その他の政府機関(カナダ環境省、イギリス気象庁、日本気象庁など)、個人企業(Weather Decision Technologies,Inc.社)などから入手されてもよい。予報気象状態116は、現在の気象状態に基づいて天気を予想するために大気および海洋の数値天気予想モデル(またはモデルのアンサンブル)を使用して決定されてもよい。
【0033】
図2は、本発明の例示の実施形態による熱帯低気圧分析システム100のアーキテクチャ200の概要を示す図である。
【0034】
図2に示すように、アーキテクチャ200は、1つまたは複数のネットワーク230を介して1つまたは複数のパーソナル・システム250および1つまたは複数のモバイル・コンピュータ・システム260などの複数のリモート・コンピュータ・システム240に接続された、1つまたは複数のサーバ210と、1つまたは複数の格納装置220とを含んでもよい。
【0035】
1つまたは複数のサーバ210は、内部格納装置212と、プロセッサ214とを含んでもよい。1つまたは複数のサーバ210は、例えばアプリケーション・サーバと、リモート・コンピュータ・システム240によってアクセス可能なウェブサイトをホストするウェブ・サーバとを含むあらゆる適切なコンピューティング装置でもよい。1つまたは複数の格納装置220は、外部格納装置、および/または1つまたは複数のサーバ210の内部格納装置212を含んでもよい。1つまたは複数の格納装置220は、さらに、外部ハード・ディスク・アレイまたは固体メモリなどの非一時的コンピュータ可読格納媒体を含んでもよい。ネットワーク230は、インターネット、携帯電話網、ワイド・エリア・ネットワーク(WAN)、ローカル・エリア・ネットワーク(LAN)などのあらゆる組み合わせを含んでもよい。ネットワーク230を介した通信は、有線および/または無線接続によって実現されてもよい。リモート・コンピュータ・システム240は、ネットワーク230を介してデータを送信および/または受信するように構成されるあらゆる適切な電子装置でもよい。リモート・コンピュータ・システム240は、例えば、パーソナル・コンピュータ、ノートブック・コンピュータ、スマートフォン、パーソナル・デジタル・アシスタント(PDA)、タブレット、ノートブック・コンピュータ、可動式天気検出器、世界測位衛星(GPS)受信機、ネットワーク接続車両、ウェアラブル装置などのネットワーク接続コンピューティング装置でもよい。パーソナル・コンピュータ・システム250は、内部格納装置252、プロセッサ254、出力装置256、および入力装置258を含んでもよい。1つまたは複数のモバイル・コンピュータ・システム260は、内部格納装置262、プロセッサ264、出力装置266、および入力装置268を含んでもよい。内部格納装置212、252、および/または262は、プロセッサ214、254、または264によって実行されると本明細書に記載の特徴の関連部分を実行するソフトウェア命令を格納するために、ハード・ディスクまたは固体メモリなどの1つまたは複数の非一時的コンピュータ可読格納媒体を含んでもよい。プロセッサ214、254、および/または264は、中央演算装置(CPU)、グラフィックス・プロセッシング・ユニット(GPU)などを含んでもよい。プロセッサ214、254、および264は、単一の半導体チップまたは複数のチップとして実現されもよい。出力装置256および/または266は、ディスプレイ、スピーカー、外部ポートなどを含んでもよい。ディスプレイは、液晶ディスプレイ(LCD)、発光ポリマー・ディスプレイ(LPD)、発光ダイオード・ディスプレイ(LED)、有機発光ダイオード・ディスプレイ(OLED)など、可視光を出力するように構成されるあらゆる適切な装置でもよい。入力装置258および/または268は、キーボード、マウス、トラックボール、スチール・カメラまたはビデオ・カメラ、タッチパッドなどを含んでもよい。タッチパッドは、タッチ・センシティブ・ディスプレイまたはタッチ・スクリーンを形成するためにディスプレイ上に配置されてもよく、またはディスプレイと一体化されてもよい。
【0036】
図1に戻って参照すると、1つまたは複数のデータベース110は、単一の実体のある装置または複数の実体のある装置に格納されているか否かにかかわらず、体系的に構成された情報の集まりでもよく、例えば1つまたは複数の格納装置220に格納されてもよい。分析エンジン180は、内部格納装置212、252、および/または262のうちの1つまたは複数に格納されプロセッサ214、254、または264のうちの1つまたは複数によって実行されるソフトウェア命令によって実現されてもよい。グラフィカル・ユーザ・インタフェース190は、ユーザが熱帯低気圧分析システム100への送信のために情報を入力することを可能とし、および/または熱帯低気圧分析システム100から受信した情報をユーザへ出力するあらゆるインタフェースでもよい。グラフィカル・ユーザ・インタフェース190は、内部格納装置212、252、および/または262のうちの1つまたは複数に格納されてプロセッサ214、254、または264のうちの1つまたは複数によって実行されるソフトウェア命令によって実現されてもよい。
【0037】
過去の熱帯低気圧の影響をモデル化
現在の熱帯低気圧および予報熱帯低気圧によってもたらされる脅威を特徴付けるために、本システムは現在の熱帯低気圧および予報熱帯低気圧のそれぞれの経済的影響を予想してもよい。従来、現在の天気事象および予報天気事象の経済的影響は、主観的判断を行う人間(例えば気象学者、気候特性者、経済学者)によって推定されてきた。しかしながら、それらの主観的判断は、数多くの欠点を有する。人(または人のグループ)がそれらの主観的判断を行う際にかかる時間の増加に加えて、それらの主観的判断は、それらの判断を行う人(または複数の人)の技能レベルおよび性質に依存するため、一貫性も欠く。従来技術におけるそれらの欠点を克服するため、熱帯低気圧分析システム100は、現在の熱帯低気圧および予報熱帯低気圧のそれぞれの推定経済的影響を予想するために特定の数学的規則を用いてもよい。熱帯低気圧分析システム100は、過去の熱帯低気圧の過去の経済的影響をモデル化することによってそれらの数学的規則を識別してもよい。
【0038】
図3は、本発明の例示の実施形態による、過去の熱帯低気圧の過去の経済的影響をモデル化するための処理300を示すフローチャートである。モデリング処理300は、分析エンジン180を実行する1つまたは複数のサーバ210によって実行されてもよい。以下に説明するように、モデリング処理300に含まれるいくつかの動作は、任意であり、熱帯低気圧分析システム100の実施形態のいくつかにのみ含まれてもよい。さらに、当業者が認識するように、モデリング処理300の動作は、必ずしも図3にて示し以下で説明する順序で実行される必要はない。
【0039】
ステップ302で過去の熱帯低気圧の経済的影響が識別される。上述したように、1つまたは複数のデータベース110に格納された過去気象影響データ114は、過去の熱帯低気圧の経済的影響を示す情報を含む。過去の熱帯低気圧のそれぞれの経済的影響は、建物および農作物に対する直接的な損害とともに、過去の熱帯低気圧が原因となる間接的な破壊(例えば、停電、機会損失売上、船舶遅延データ、消費者支出の減少、小売店およびサービス提供場所への訪問の減少、走行速度の増加など)を含んでもよい。過去の熱帯低気圧のそれぞれの経済的影響は、Solomon M.HsinangおよびAmir S.Jinaによって開発されたモデル(例えばHsiang等著、「The Causal Effect of Environmental Catastrophe on Long-Run Economic Growth:Evidence From 6,700 Cyclones」、NBER Working Paper No.20352、2014年7月発行参照)などの経済予想モデルも使用して判断されるような長期経済的成長に対する過去の熱帯低気圧のそれぞれの影響も含んでもよい。
【0040】
熱帯低気圧は、暴風雨がその進路に沿って移動するにつれて変化する特性を有する動的な天気事象である。例えば、熱帯低気圧における持続風は、暴風雨が海洋上に集まるにつれて典型的に増加し、その後、暴風雨が海および/または陸地をわたって移動するにつれて消散する。熱帯低気圧がその寿命における2つの異なる期間に2つの異なる地域(または国)に上陸した場合、同一の熱帯低気圧がそれらの場所において非常に異なる気象状態を発生させると考えられる(さらに、非常に異なる経済的影響をもたらすと考えられる)。実際、1つの国または地域における熱帯低気圧の経済的影響は、その熱帯低気圧が別の国または地域に上陸した場合のその熱帯低気圧の気象状態とは全く無関係である場合もある。したがって、熱帯低気圧分析システム100は、2つの異なる地域または国に上陸した熱帯低気圧を2つの個別の暴風雨として扱ってもよく、第1の国におけるその熱帯低気圧の気象状態(および経済的影響)と気象状態(および経済的影響)を分離して格納してもよい。
【0041】
過去の熱帯低気圧の経済的影響(ステップ302で識別)は、ステップ304において、過去の熱帯低気圧のそれぞれの時点において影響を受けた経済の規模に基づいて調整される。そのような過去の熱帯低気圧は、異なる場所で、過去の異なる時に発生したものである。それらの過去の熱帯低気圧の経済的影響は、影響を受けた期間における影響を受けた地理的地域の経済の規模に基づいて顕著に変化した可能性がある。一方、処理300の目的は、それらの過去の熱帯低気圧が上陸した時および場所に関係なく過去の熱帯低気圧が原因となった気象状態の経済的影響をモデル化することである。したがって、過去の熱帯低気圧の経済的影響は、影響を受けた経済の規模を考慮して調整を行い過去の熱帯低気圧の過去の気象状態を原因とする経済的影響を分離するために、過去の熱帯低気圧のそれぞれの時点における影響を受けた経済の規模に基づいて調整される。
【0042】
ステップ306において、過去の熱帯低気圧の気象状態が識別される。上述したように、1つまたは複数のデータベース110に含まれる過去気象データ112は、過去の熱帯低気圧に起因して発生した多数の個別の気象状態によって計測されたようなそれぞれの過去の熱帯低気圧の深刻度を示す情報を含む。過去の熱帯低気圧のそれぞれに対して、例えば、過去気象データ112は、風速(例えば最大持続風速)、降雨量(例えば過去の熱帯低気圧によって引き起こされた総積算降雨量、過去の熱帯低気圧によって引き起こされた日別最大降雨量など)、高潮、沿岸部浸水、熱帯低気圧積算エネルギー(ACE)、地上気圧、高温、低温などを示す情報を含んでもよい。過去気象データ112は、公的に利用可能な情報源(例えばアメリカ海洋大気庁(NOAA:National Oceanic and Atmospheric Administration)Storm Events Database)、民間の情報源(例えばAccuWeather,Inc.社、AccuWeather Enterprise Solution,Inc.社)などから入手されてもよい。
【0043】
ステップ314において、過去の熱帯低気圧のそれぞれによって影響された地理的地域の人口統計学的特性が識別されてもよい。過去の熱帯低気圧のそれぞれの時点における影響を受けた経済の規模に基づいて調整された場合でも、熱帯低気圧分析システム100は、過去の熱帯低気圧の経済的影響が影響を受けた地理的地域の人口統計学的特性の1つまたは複数に依存したと決定してもよい。上述したように、1つまたは複数のデータベース110に格納された人口統計学的データ124は、例えば、過去の熱帯低気圧の進路における地理的地域の単位領域毎の人口密度、人口年齢レベル、人口教育レベル、収入レベル、世帯規模、および/または不動産部門(住居、商業、および工業)の集中度などを含んでもよい。入手可能であれば、熱帯低気圧分析システム100は、代わりとして、過去人口統計学的データ134として1つまたは複数のデータベース110に格納された(過去の熱帯低気圧のそれぞれの期間における)過去の人口統計学的特性を利用してもよい。
【0044】
ステップ316において、過去の熱帯低気圧のそれぞれの影響を受けた地理的地域の地理的特性が識別されてもよい。上述したように、1つまたは複数のデータベース110に格納された地理的データ126は、例えば、過去の熱帯低気圧の進路における地理的地域の地形、地形傾斜、および/または地形方位を示す情報を含んでもよい。入手可能であれば、熱帯低気圧分析システム100は、代わりとして、過去地理的データ136として1つまたは複数のデータベース110に格納された(過去の熱帯低気圧のそれぞれの期間における)過去地理的特性を利用してもよい。
【0045】
ステップ316において、過去の熱帯低気圧のそれぞれの影響を受けた地理的地域の地質的特性が識別されてもよい。上述したように、1つまたは複数のデータベース110に格納された地質的データ128は、例えば、過去の熱帯低気圧の進路における地理的地域の岩盤の特性および露出、地盤種別、土壌安定性データ、および場所固有の地震活動度を示す情報を含んでもよい。入手可能であれば、熱帯低気圧分析システム100は、代わりとして、過去地質的データ138として1つまたは複数のデータベース110に格納された(過去の熱帯低気圧のそれぞれの期間における)過去地質的特性を利用してもよい。
【0046】
ステップ360において、過去の熱帯低気圧のそれぞれの調整された経済的影響(ステップ304で決定)と過去の熱帯低気圧のそれぞれの過去の気象状態(ステップ306で決定)との相関関係、いくつかの実施形態では、影響を受けた地理的地域の人口統計学的特性(ステップ314で決定)、影響を受けた地理的地域の地理的特性(ステップ316で決定)、および/または影響を受けた地理的地域の地質的特性(ステップ318で決定)の相関関係が決定される。これらの相関関係を決定するために、分析エンジン180は、それらの相関関係を決定する方法に対する明示的な命令でプログラミングせずに相関関係を識別するために上述したデータ・セットを教師データとして使用する人工知能(例えば機械学習アルゴリズム)の一形態を用いてもよい。分析エンジン180は、過去の熱帯低気圧のそれぞれの調整された経済的影響と過去の気象状態と他の独立変数との間の相関関係を識別するために、あらゆる統計的モデリング技術を用いてもよい。例えば、分析エンジン180は、以下の式で示すように、複数のリグレッサー(独立変数)を使用する、調整された経済的影響Y(従属変数)のための回帰アルゴリズムを使用してもよい。
【数1】
ただし、Xkはk番目の予想因子(例えば、気象状態、人口統計学的特性、地理的特性、および/または地質的特性)、βkは予想因子Xkと過去の熱帯低気圧の調整された経済的影響Yとの相関関係に基づいて分析エンジン180によって決定された回帰係数である。
【0047】
もしくは、熱帯低気圧分析システム100は、過去のそれぞれの熱帯低気圧の深刻度(各暴風雨の調整された経済的影響によって決定されるような深刻度)に基づいて過去の熱帯低気圧をグループ分けし、その後、各グループの熱帯低気圧と相関する過去の気象状態(さらに、任意で、他の独立変数)を識別してもよい。それらの実施形態において、過去の熱帯低気圧は、ステップ330において調整された経済的影響によって分類され、ステップ334において過去の熱帯低気圧がグループに分けられるように、ステップ332において閾値が設定される。
【0048】
過去の熱帯低気圧が深刻度に基づいてグループ分けされる実施形態において、ステップ360で分析エンジン180は、統計的モデリングを使用して、各グループの範囲内の調整された経済的影響を有する過去の熱帯低気圧と相関する過去の気象状態(さらに、任意で、他の独立変数)を識別する。好適な実施形態において、熱帯低気圧の経済的影響を顕著に予想すると認められる独立変数毎に、分析エンジン180は一連の範囲を識別し、その場合、各範囲は、各グループに含められる熱帯低気圧の経済的影響と相関する。
【0049】
例えば、以下の表は、2019年の米ドルにおける経済的影響と、分析エンジン180が上記のグループ内の経済的影響を有する熱帯低気圧を予想可能であると決定する場合がある独立変数(この例では、平均降雨量、最大持続風速、高潮)とに基づいて熱帯低気圧をグループ分けしたものである。
【表2】
【0050】
経済的影響を予想可能である場合がある独立変数のいくつかは、2つ以上の気象状態/特性に依存してもよい。例えば、平均降雨量(上記)は、洪水に起因する経済的影響を予想可能な場合がある。しかしながら、熱帯低気圧の進路の地理的地域における予報平均降雨量と地質的特性(例えば地盤種別)との組み合わせは、洪水に起因する経済的影響をより正確に予想可能である場合がある。2つ以上の気象状態/特性の組み合わせは、事象の気候特性をより良好にとらえる場合があり、予報熱帯低気圧の長期経済的影響を予想可能である場合がある。
【0051】
予報熱帯低気圧の予想影響の特徴付け
現在の方法によって使用される風速の大きさに加えて、熱帯低気圧分析システム100は、現在の熱帯低気圧および予報熱帯低気圧のそれぞれによってもたらされる脅威をより良好に特徴付けるためにさらなる構成要素を利用する。
【0052】
図4は、本発明の例示の実施形態による、現在の熱帯低気圧または予報熱帯低気圧のそれぞれによってもたらされる脅威を特徴付けるための処理400を示すフローチャートである。以下の説明は、予報熱帯低気圧の予報気象状態(および予想される進路)を識別することを含む。しかしながら、当業者が認識するように、現在の気象状態(および現在の進路)を使用して現在の熱帯低気圧を特徴付けるために、同一の特徴付け処理400が実行されてもよい。特徴付け処理400は、分析エンジン180を実行する1つまたは複数のサーバ210によって実行されてもよい。以下に説明するように、特徴付け処理400に含まれるいくつかの動作は任意のものであり、熱帯低気圧分析システム100の実施形態のいくつかにおいてのみ含まれる。さらに、当業者が認識するように、特徴付け処理400の動作は、必ずしも図4にて示し以下で説明する順序で実行される必要はない。
【0053】
ステップ402において、予報熱帯低気圧が識別される。上述したように、分析エンジン180は、現在の気象状態に基づいて天気を予想するために大気および海洋の数値天気予想モデル(またはモデルのアンサンブル)を使用して予報された場合のある、サードパーティによって入手された予報気象状態116を分析することによって予想熱帯低気圧を識別してもよい。
【0054】
ステップ402において、予報熱帯低気圧の予想進路が識別される。当業者が認識するように、予想進路は、予報熱帯低気圧の可能な進路の確率的決定を表すように円錐形をしていてもよい。
【0055】
ステップ406において、予想進路に沿った各国/地域が識別される。上述したように、熱帯低気圧は、暴風雨がその進路に沿って移動するにつれて変化する特性を有する動的天気事象である。熱帯低気圧がその寿命における2つの異なる期間において2つの異なる地域(または国)に上陸した場合、同一の熱帯低気圧がそれらの場所で大幅に異なる気象状態を発生させると考えられる(さらに大幅に異なる経済的影響をもたらすと考えられる)。したがって、熱帯低気圧分析システム100は、それぞれの地塊および/または群島を個別の国/地域(例えば、東カリブ、プエルトリコ、ハイチおよびドミニカ共和国、キューバ、バハマ、アメリカ合衆国本土など)として扱い、予報熱帯低気圧が上陸すると予想される国/地域毎に特徴付け処理400の残りのステップを個別に実行してもよい。その結果、熱帯低気圧分析システム100は、同一の熱帯低気圧を、2つの異なる国または地域に上陸する際に異なる2つの分類になると予測されると特徴付けてもよい。例えば、熱帯低気圧がバハマに上陸した際には分類4のハリケーンになると予想され、同一の暴風雨がアメリカ合衆国本土に上陸する時までに分類2のハリケーンになると予想されてもよい。
【0056】
ステップ408において、予報気象状態116が識別される。上述したように、予報気象状態116はサードパーティにより入手してもよく、現在の気象状態に基づいて天気を予想するために大気および海洋の数値天気予想モデル(またはモデルのアンサンブル)を使用して予報されてもよい。予報熱帯低気圧が国/地域に上陸すると予想されない場合、熱帯低気圧分析システム100は、その国/地域で発生すると予報される予報気象状態を識別してもよい。
【0057】
いくつかの実施形態において、ステップ412において、予報熱帯低気圧の予想進路の地理的地域の人口統計学的(および/または地理的および/または地質学的)特性が決定される。上述したように、人口統計学的データ124は、例えば、予報熱帯低気圧の予想進路における地理的地域の単位領域毎の人口密度、人口年齢レベル、人口教育レベル、収入レベル、世帯規模、および/または不動産部門(住宅、商業、および工業)の集中度などを含んでもよい。地理的データ126は、例えば、予報熱帯低気圧の予想進路における地理的地域の地形、地形傾斜、および/または地形方位を示す情報を含んでもよい。地質的データ128は、例えば、予報熱帯低気圧の予想進路における地理的地域の岩盤の特性および露出、地盤種別、土壌安定性データ、および場所固有の地震活動度を示す情報を含んでもよい。
【0058】
いくつかの実施形態において、ステップ414で、予報熱帯低気圧の経済的影響が推定される。予想される経済的影響は、予報熱帯低気圧の予報気象状態と国/地域の人口統計学的(または他の)特性とを主観的に評価することによって推定されてもよい。他の実施形態において、予想される経済的影響は、例えば、モデリング処理300を使用して分析エンジン180によって開発されたモデルを使用して、分析エンジン180によって決定されてもよい。
【0059】
ステップ420において、予報熱帯低気圧の予報気象状態114(さらに、いくつかの実施形態において、予想進路における地理的地域の特性)は、閾値(例えば、上述のモデリング処理300によって識別される閾値のうちのいくつか)と比較される。例えば、熱帯低気圧分析システム100は、予報熱帯低気圧の予報気象状態114を以下の閾値と比較してもよい。
【表3】
【0060】
モデリング処理300を参照して上述したように、閾値のいくつかが使用されて、2つ以上の気象状態/特性に依存する予想影響に基づいて予報熱帯低気圧を特徴付ける。例えば、平均降雨量(上記)の代わりに、分析エンジン180は、例えば、熱帯低気圧進路の地理的地域の予報平均降雨量と地質的特性(例えば土壌種別)との組み合わせに基づいて、予想される洪水を推定し、予想された洪水を洪水閾値と比較してもよい。別の例において、分析エンジン180は、例えば、熱帯低気圧の予想進路の地理的地域の予報平均降雨量と地質的特性(例えば土壌種別)と人口統計学的データ124(例えば人口密度)との組み合わせに基づいて、洪水の影響を受けた人々および/または建物を推定してもよい。さらに、分析エンジン180は、事象(2つ以上の特性によって決定される)の予想気候特性を気候閾値と比較してもよい。
【0061】
いくつかの実施形態において、ステップ430で、分析エンジン180は、予報熱帯低気圧の予想進路の地理的地域の予報気象状態および/または特性のいずれかによって示される最上位の分類を選択することによって、予報熱帯低気圧を分類してもよい。例えば、サファ・シンプソン・ハリケーン・ウィンド・スケールにおいて分類2として分類されてもよい(最大持続風速が96~110マイル毎時になると予報されるため)熱帯低気圧に関して、例えば、平均降雨量が15インチと22インチとの間となると予想される場合、または高潮が10フィートと15フィートとの間となると予想される場合、または経済的影響が400億ドルと990億ドルとの間となると予想される場合に、分析エンジン180は、同一の予報熱帯低気圧を分類3の暴風雨として特徴付けてもよい。
【0062】
他の実施形態において、分析エンジン180は、ステップ442において、単一の予報気象状態(例えばサファ・シンプソン・ハリケーン・ウィンド・スケールで使用されるような最大持続風速)に基づいて分類を選択することによって予報熱帯低気圧を分類し、1つまたは複数の追加の構成要素(予報熱帯低気圧の予想進路の地理的地域の追加の予報気象状態および/または特性)の大きさがある所定の範囲内にあるかを決定し、その追加の構成要素と関連する所定の量だけ、その特徴付けを増加または減少してもよい。例えば、予報熱帯低気圧は、以下のように最大持続風速に基づいて分類を選択することによって最初に特徴付けされてもよい。
【表4】
【0063】
上記の実施形態において、1つの追加要素は、日毎の現在の最大降雨量および/または予報最大降雨量でもよく、分析エンジン180は、以下の範囲とそれらの範囲に関連した調整を用いてもよい。
【表5】
【0064】
追加的または代替的に、追加要素は、日毎の降雨量が10+インチを有する現在の日数および/または予報日数でもよく、分析エンジン180は、以下の範囲とそれらの範囲に関連した調整を用いてもよい。
【表6】
【0065】
追加的または代替的に、追加要素は、熱帯低気圧の現在の熱帯低気圧積算エネルギー(ACE)または予報熱帯低気圧積算エネルギー(ACE)でもよく、分析エンジン180は、以下の範囲とそれらの範囲に関連した調整を用いてもよい。
【表7】
【0066】
追加的または代替的に、追加要素は、熱帯低気圧の現在の地上気圧または予報地上気圧でもよく、開示のシステムは、以下の範囲とそれらの範囲に関連した調整を用いてもよい。
【表8】
【0067】
追加的または代替的に、追加要素は、熱帯低気圧の現在の高潮または予報高潮でもよく、分析エンジン180は、以下の範囲とそれらの範囲に関連した調整を用いてもよい。
【表9】
【0068】
追加的または代替的に、追加要素は、熱帯低気圧の予報進路における地理的地域の沿岸部浸水でもよく、分析エンジン180は、以下の範囲とそれらの範囲に関連した調整を用いてもよい。
【表10】
【0069】
追加的または代替的に、追加要素は、熱帯低気圧の予報進路における地理的地域のMelton地形指標でもよく、分析エンジン180は、以下の範囲とそれらの範囲に関連した調整を用いてもよい。
【表11】
【0070】
追加的または代替的に、追加要素は、熱帯低気圧の予報進路における地理的地域の土壌液化指標でもよい。
【0071】
追加的または代替的に、追加要素は、熱帯低気圧の予報進路における地理的地域の製造指標および/またはインフラストラクチャ密度を含んでもよい。
【0072】
追加的または代替的に、追加要素は、熱帯低気圧の予報進路における地理的地域の人口密度でもよく、分析エンジン180は、以下の範囲とそれらの範囲に関連した調整を用いてもよい。
【表12】
【0073】
代替の実施形態において、熱帯低気圧分析システム100は、各気象状態(または特性)の各範囲と関連した所定の係数を格納し、関連係数を識別するために、予報熱帯低気圧の各予報気象状態(さらに、任意で、予報熱帯低気圧の予想進路における地理的地域の特性)を各範囲の閾値と比較し、予報熱帯低気圧の初期特徴付けに関連係数を乗算してもよい。
【0074】
最後に、代替の実施形態において、熱帯低気圧分析システム100は、各気象状態(または特性)の重みを示す各気象状態(または特性)と関連付けられた所定の係数を格納し、予報熱帯低気圧の各予報気象状態(さらに、予報熱帯低気圧の予想進路における地理的地域の特性)に、その気象状態(または特性)の重みを示す気象状態(または特性)と関連付けられた係数を乗算することによって、各予報熱帯低気圧を特徴付けてもよい。
【0075】
熱帯低気圧分析システム100は、さらに、丸める(例えば切り上げ、最も近い整数に切り上げる)ことによって、または熱帯低気圧分析システム100によって出力される特徴付けが消費者になじみのあるサファ・シンプソン・ハリケーン・ウィンド・スケールと同一の尺度(分類1から分類5)を使用するように、他の規則(例えば、5以上の調整された特徴付けを有する熱帯低気圧は分類5である、など)を使用することによって、小数または端数を使用した調整特徴付けを調整してもよい。
【0076】
分析エンジン180は、例えば、グラフィカル・ユーザ・インタフェース190、1つまたは複数のネットワーク230などを介して、予想熱帯低気圧の特徴付けを出力する。図5および図6は、ユーザに対して表示するための予報熱帯低気圧の特徴付けを示す図である。
【0077】
上述した実施形態のすべては、予報最大持続風速のみに依存した既存の方法(サファ・シンプソン・ハリケーン・ウィンド・スケール)と比較した場合に重要な技術的利点および公共の安全上の利点を提供する。複数の予報気象状態116(さらにいくつかの実施形態では、予報熱帯低気圧の予想進路における地理的地域の特性)に基づいて各熱帯低気圧を特徴付けることによって、熱帯低気圧分析システム100は、予報熱帯低気圧によってもたらされる生命および財産への脅威をより正確に予想し、さらにより完全に伝えることができる。
【0078】
好適な実施形態を説明したが、本開示を検討した当業者は、本発明の範囲内において他の実施形態も実現可能であることを容易に理解するであろう。特定の技術の開示も、限定的ではなく例示的なものである。したがって、本発明は、特許請求の範囲によってのみ限定されると解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6