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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】靴
(51)【国際特許分類】
   A43B 7/14 20220101AFI20240528BHJP
   A43B 13/14 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
A43B7/14 Z
A43B13/14 B
A43B13/14 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021550922
(86)(22)【出願日】2019-10-04
(86)【国際出願番号】 JP2019039312
(87)【国際公開番号】W WO2021064987
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000310
【氏名又は名称】株式会社アシックス
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(72)【発明者】
【氏名】猪股 貴志
(72)【発明者】
【氏名】脇田 大樹
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 智一郎
【審査官】大光 太朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-135824(JP,A)
【文献】特開2007-089734(JP,A)
【文献】特開平09-248201(JP,A)
【文献】特開2007-236918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 7/14
A43B 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソールと、前記ソールの上方に設けられるアッパーと、を備え、
前記ソールの上面に、外足の側方を支持する外足側巻上部と、内足の側方を支持する内足側巻上部と、が設けられ、
前記外足側巻上部は、本靴の前後方向で少なくとも第5中足骨に対応する対応領域において上向きに延び、
前記対応領域において、前記内足側巻上部の外壁面部は、前記ソールの接地面部に対して略垂直に延び、前記外足側巻上部の外壁面部は、前記接地面部と鋭角に傾斜する方向に延び、
前記外足側巻上部および前記内足側巻上部の少なくとも一方は、低剛性部と前記低剛性部より剛性が高い高剛性部とを有し、
前記低剛性部は、前記外足側巻上部および前記内足側巻上部の前後方向の中間部からつま先側に延び、
前記高剛性部は、前記低剛性部の後端から踵側に延びることを特徴とする靴。
【請求項2】
前記高剛性部の後端は、接足面部から上方に離れている、請求項1に記載の靴。
【請求項3】
前記対応領域において、前記内足側巻上部の外壁面部と前記接地面部との接続部の正面視の断面半径は、前記外足側巻上部の外壁面部と前記接地面部との接続部の正面視の断面半径より大きいことを特徴とする請求項1または2に記載の靴。
【請求項4】
前記対応領域において、前記内足側巻上部の内壁面部と接足面部との接続部の正面視の断面半径は、前記外足側巻上部の内壁面部と前記接足面部との接続部の正面視の断面半径より大きいことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の靴。
【請求項5】
前記外足側巻上部は、本靴の前後長を100%とするとき、少なくともつま先から20%以上で50%以下の範囲に設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の靴。
【請求項6】
前記ソールは、上面視で、前記アッパーの外足部から幅方向に張り出す外足側張出部を有し、
前記外足側張出部は、少なくとも前記対応領域に設けられており、
前記対応領域において、前記ソールの内足側外形線の前記アッパーの内足部からの幅方向張出量は、前記外足側張出部の前記アッパーの外足部からの幅方向張出量より小さいか、または、ゼロ以下であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の靴。
【請求項7】
前記外足側張出部は、本靴の前後長を100%とするとき、少なくともつま先から20%以上で50%以下の範囲に設けられていることを特徴とする請求項6に記載の靴。
【請求項8】
前記ソールの上面に内足の側方を支持する内足側巻上部が設けられ、
前記ソールの下面に地面と接するための接地面部が設けられ、
前記対応領域において、前記接地面部の前記外足側巻上部の稜線からの幅方向突出寸法は、前記接地面部の前記内足側巻上部の稜線からの幅方向突出寸法よりも大きいことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の靴。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴に関する。
【背景技術】
【0002】
ソールの側面に巻上部を有する靴が知られている。例えば、特許文献1には、アウターソールとミッドソールとスタビライザーとを備える靴が記載されている。この靴のスタビライザーには、アウターソールとミッドソールの間で挟まれる基板部と、基板部から靴の側面に沿って上方に巻き上がる巻上部とが設けられている。スタビライザーの基板部は、足の第5中足骨の骨頭から基節骨の概ね全体を下方から覆っており、巻上部は、中足骨骨頭を足の外側から覆っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-135824号公報
【文献】米国特許第4449306号明細書
【文献】国際公開2013/168258号明細書
【文献】特開2000-253904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、スポーツ用の靴に関して以下の認識を得た。バレーボールなどインドアスポーツでは、走行しながら急激に方向転換したり急停止したりするフットワークが多用される。このフットワークの際に足の外足側に横方向の強い荷重がかかると、外足側のサポート性が不足する靴では、足がソールの外足側から横滑りすることがある。足が靴内で横滑りすると、フットワークが乱れるので横滑りを抑制することが望ましい。
【0005】
特許文献1に記載の靴では、外足の側面を支持するために、中足骨の骨頭を側面から覆う巻上部が設けられている。発明者らの研究によれば、この靴の足側面のサポート範囲は、フットワーク時の荷重分布に対して前方に偏っていることがわかった。これらから、本発明者らは、特許文献1に記載の靴には、足側面のサポート範囲の適正化の観点で改善の余地があることを認識した。
このような課題は、バレーボール用の靴に限らず他の種類の靴についても生じうる。
【0006】
本発明は、こうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、足側面のサポート範囲の前後バランスを改善可能な靴を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の靴は、ソールと、ソールの上方に設けられるアッパーと、を備える。ソールの上面に、外足の側方を支持する外足側巻上部が設けられ、外足側巻上部は、本靴の前後方向で少なくとも第5中足骨に対応する対応領域において上向きに延びる。
【0008】
なお、以上の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、装置、プログラム、プログラムを記録した一時的なまたは一時的でない記憶媒体、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、足側面のサポート範囲の前後バランスを改善可能な靴を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態に係る靴を概略的に示す側面図である。
図2図1の靴を概略的に示す平面図である。
図3図1の靴のソールを概略的に示す平面図である。
図4図1の靴のソールを概略的に示す側面図である。
図5図1の靴のソールを概略的に示す底面図である。
図6図5のソールのE-E線に沿った断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を好適な実施形態をもとに各図面を参照しながら説明する。実施形態、変形例では、同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0012】
また、第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。
【0013】
[実施の形態]
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係る靴100の構成を説明する。図1は、実施の形態に係る靴100を概略的に示す側面図である。この図は、靴100を外足側から視た図である。図1を含め、以下の図では、特に説明しない限り右足用の靴を示すが、本明細書の説明は、左足用の靴にも同様に適用される。図2は、靴100を概略的に示す平面図である。
【0014】
本実施形態の靴100は、例えばバレーボールやバスケットボールなどのスポーツ用のシューズとして使用できる。また、靴100は、テニスなどの別のスポーツ用のシューズとしても使用できる。また、靴100は、歩行や走行用の靴としても使用できる。
【0015】
靴100は、ソール10と、ソール10の上方に設けられるアッパー50とを備える。アッパー50は、ソール10の上方に接着等の手段により固定される。アッパー50は、シュータン60を有し、例えばシューレース(不図示)によって緊締される。
【0016】
以下、靴100を水平面Fhに載置した状態(以下、「水平状態」という)で、アッパー50の幅方向を単に「幅方向」といい、アッパー50の幅方向中心線Laに沿った方向を「前後方向」といい、鉛直な方向を「上下方向」という。幅方向と前後方向と上下方向とは互いに直交する。幅方向および前後方向は水平面Fhに平行な方向である。
【0017】
また、幅方向中心に沿ってアッパー50の踵からつま先側に向かう方向を「前側」、「前方」といい、その反対方向を「後側」、「後方」という。また、幅方向に沿って、外足側から内足側に向かう方向を「内側」、「内方」といい、その反対方向を「外側」、「外方」という。また、上下方向に沿って、ソール10からアッパー50に向かう方向を「上側」、「上方」といい、その反対側を「下側」、「下方」という。
【0018】
(ソール)
図3図6を参照してソール10を説明する。図3は、ソール10を示す平面図である。図3では、ソール10の上面視の最外形の輪郭を表す線(以下「ソール外形線22」という)を実線で示し、アッパー50の上面視の最外形の輪郭を表す線(以下「アッパー外形線52」という)を破線で示している。図4は、外足側から見たソール10の側面図である。
【0019】
アッパー外形線52は、中心線Laから内側のアッパー内足側外形線52jと、中心線Laから外側のアッパー外足側外形線52eとを含む。ソール外形線22は、中心線Laから内側のソール内足側外形線22jと、中心線Laから外側のソール外足側外形線22eとを含む。
【0020】
本明細書では、図3に示すように、前後方向で第5中足骨M5(小指の中足骨)に対応する領域を対応領域Acという。対応領域Acは、前後方向で第5中足骨M5の骨頭(中足骨頭)から第5中足骨M5の骨底(中足骨底)までの領域である。より詳しくは、対応領域Acは、第5中足骨M5の骨頭から骨底までの前後範囲を幅方向に延長した帯状の領域である。
【0021】
図4に示すように、ソール10は、ソール下面部12と、ソール上面部14と、巻上部16とを有する。ソール下面部12は、地面に接するための接地面部12sを有し、ソール10の下面に設けられる。ソール上面部14は、足裏に接するための接足面部14sを有し、ソール10の上面に設けられる。巻上部16は、足の周囲を支持する。図4では、接足面部14sを破線で示している。なお、接地面部12sは地面に限らず床面や路面などにも接する。また、接足面部14sは、直接的に足に接する場合もあるし、インナーソールやインソールを介して間接的に足に接する場合もある。
【0022】
(巻上部)
巻上部を説明する。バレーボール、バスケットボール、テニスなどの競技では横方向に素早く切返す動作が求められる。その際、高い横荷重が足にかかるため、足がソールからこぼれ落ちそうになる。このような状況では、地面に伝える横方向の力がロスされるためにパフォーマンスが低下する。巻上部16は、足側面を囲むようにソール上面部14から上向きに延びる。巻上部16を有することにより、足がソールにしっかりと支持されるので、足からの力の損失を減らすことができる。
【0023】
本実施形態の巻上部16は、アッパー50の表面に沿って上方に突き出す形状を有しており、その一部は巻き上がる形状を有してもよい。巻上部16は、アッパー50に固定されていなくてもよいが、この例では固定されている。本実施形態の巻上部16は、前側巻上部16fと、外足側巻上部16eと、内足側巻上部16jとを含む。前側巻上部16fは、ソール上面部14の前側の縁に沿って設けられ、アッパー50の前端部50fに沿って上向きに延びて、足の前側を支持する。
【0024】
外足側巻上部16eは、ソール10の上面に、外足の側方を支持するために設けられる。本実施形態の外足側巻上部16eは、ソール上面部14の外足側の縁に沿って設けられ、アッパー50の外足部50eに沿って上向きに延びて、足の外足側を支持する。外足側巻上部16eを有することにより、外足側面にかかる幅方向の荷重をサポートし、外足側への横滑りを抑制できる。外足側巻上部16eは、対応領域Acを含む前後範囲にわたって設けられ、少なくとも対応領域Acにおいて上向きに延びる。この場合、外足側面のサポート範囲の前後バランスを改善できる。一例として、外足側巻上部16eは、足側面を支持する内壁面部16vを有し上方に立ち上がる壁部であってもよい(図6も参照)。
【0025】
一例として、外足側巻上部16eは、靴100の前後長L1を100%とするとき、少なくともつま先から20%以上で50%以下の範囲に形成されていてもよい。この場合、外足側巻上部16eが、当該範囲を含む前後領域にわたって形成されるので、広い範囲の外向き荷重に対して足側面を支持できる。
【0026】
外足側巻上部16eの稜線(以下「外足側稜線18e」という)の高さは、前後方向に一定であってもよいが、この例では上下に変化している。外足側巻上部16eは、一部が切り欠かれていてもよい。本実施形態では、靴100の前後長を100%とするとき、つま先から70%までの範囲における外足側稜線18eの頂部18pは、対応領域Acにおいて第5中足骨M5の骨頭よりも後方に形成される。この場合、外足側稜線18eの頂部18pを適切な位置に配置できる。
【0027】
内足側巻上部16jは、ソール10の上面に、内足の側方を支持するために設けられる。本実施形態の内足側巻上部16jは、ソール上面部14の内足側の縁に沿って設けられ、アッパー50の内足部50jに沿って上向きに延びて、足の内足側を支持する。内足側巻上部16jを有することにより、内足側面にかかる幅方向の荷重をサポートし、内足側への横滑りを抑制できる。内足側巻上部16jが高すぎると、足の内側への屈曲が窮屈になりダッシュがしにくくなる。このため、本実施形態では、内足側巻上部16jの稜線(以下「内足側稜線18j」という)は、対応領域Acにおいて外足側稜線18eよりも低く形成されている。この場合、足の内側への屈曲が容易になる。
【0028】
本実施形態では、内足側巻上部16jの内足側稜線18jの頂部18qは、対応領域Acに形成されている。頂部18qは、外足側稜線18eの頂部18pよりも低く形成されている。この場合、足の屈曲がより容易になる。一例として、内足側巻上部16jは、足側面を支持する内壁面部16wを有し上方に立ち上がる壁部であってもよい(図6も参照)。
【0029】
本実施形態では、外足側巻上部16eおよび内足側巻上部16jは、柔軟性が高く低剛性な素材で形成された低剛性部16b、16cと、低剛性部16b、16cより剛性が高い高剛性部16m、16nとを有している。低剛性部16b、16cは、外足側巻上部16eおよび内足側巻上部16jの前後方向の中間部からつま先側に延び、高剛性部16m、16nは、低剛性部16b、16cの後端から踵側に延びる。高剛性部16m、16nは、接足面部14sの側方から後方斜め上向きに延びる帯形状を有する。高剛性部16m、16nの後端は、接足面部14sから上方に離れている。高剛性部16m、16nは、可撓性が低く、変形しにくいため、横荷重が加わった際のアッパー50の変形が抑制され、ソール10に対する足位置が強力に支持される。
【0030】
(ソール張出部)
ソール張出部を説明する。足に横荷重がかかる際の力のロスを減らすために、本実施形態のソール10は、上面視で、アッパー50から幅方向に張り出す張出部20を有する。本実施形態の張出部20は、アッパー50の外足部50eから幅方向に張り出す外足側張出部20eと、アッパー50の内足部50jから幅方向に張り出す内足側張出部20jとを含む。ソール外足側外形線22eは外足側張出部20eの外形線である。ソール内足側外形線22jは内足側張出部20jの外形線である。
【0031】
外足側張出部20eを有することにより、外足側に横向き荷重がかかった際に、靴100の姿勢変化を抑制できる。外足側張出部20eは、少なくとも対応領域Acを含む前後範囲にわたって設けられてもよい。この場合、外足側面のサポート範囲の前後バランスを改善できる。
【0032】
一例として、外足側張出部20eは、靴100の前後長L1を100%とするとき、少なくともつま先から20%以上で50%以下の範囲に設けられてもよい。この場合、広範囲な外向き荷重に対して靴100の姿勢変化を抑制できる。本実施形態の外足側張出部20eは、外足部50eの前後範囲全体に設けられている。
【0033】
対応領域Acにおいて、外足側張出部20eのアッパー50の外足部50eからの幅方向張出量Beは靴100の前後長に対して3%以上であってもよい。この場合、靴100の荷重に対する姿勢変化をさらに抑えられることが示唆されている。同じ観点から、幅方向張出量Beは、靴100の前後長に対して6%以上であることがより好ましい。屈曲性を確保する観点から、幅方向張出量Beは10%以下であることが好ましい。
【0034】
内足側張出部20jを有することにより、内足側に横向き荷重がかかった際に、靴100の姿勢変化を抑制できる。本実施形態の内足側張出部20jは、内足部50jの前足部と後足部とに設けられ、中足部の一部には設けられていない。内足側張出部20jが設けられていない領域では、ソール内足側外形線22jはアッパー50の内足部50jから幅方向に後退しており、ソール内足側外形線22jの内足部50jからの幅方向張出量Bjは、ゼロ以下(マイナス)である。
【0035】
対応領域Acにおいて、ソール内足側外形線22jのアッパー50の内足部50jからの幅方向張出量Bjは、外足側張出部20eの幅方向張出量Beよりも小さいか、または、ゼロ以下であってもよい。この場合、靴100の内足側を支点とするフットワークに対する靴100の姿勢の変化を円滑化できる。
【0036】
ソール10をさらに説明する。図5は、ソール10の底面図である。図6は、ソール10のE-E線に沿った縦断面を示す断面図である。図6に示すように、ソール10は、接地面部12sと、凹部12dと、外壁面部16y、16xと、稜線18j、18eと、内壁面部16w、16vと、接足面部14sとを有する。上述したように、接地面部12sは地面に接するための部分で、この例では、凹部12dを挟んで前側と後ろ側に設けられている。凹部12dは、接地面部12sから上向きに凹んだ部分である。
【0037】
外壁面部16y、16xは、巻上部16j、16eの外壁面である。内壁面部16w、16vは、巻上部16j、16eの内壁面である。稜線18j、18eは、外壁面部16y、16xと内壁面部16w、16vの上端交点に形成される。上述したように、接足面部14sは足裏に接するための平坦な部分で、内壁面部16w、16vの各根本部分の間に接続されている。
【0038】
本実施形態のソール10の対応領域Acにおける寸法関係を説明する。これらの寸法関係それぞれは、外足側について、方向転換や急停止するフットワークの際に外足側にかかる横荷重に対するサポート性を確保して足の横滑りを抑制できる。また、内足側について、屈曲を容易にするとともに、内足側を支点とするフットワークに対する姿勢の変化を滑らかにできる。したがって、これらの1つまたは複数の寸法関係を備えることでこれらの効果を実現できる。
【0039】
(1)対応領域Acにおいて、頂部18qの高さHjは、頂部18pの高さHeよりも低い。
(2)対応領域Acにおいて、頂部18qの接足面部14sからの高さGjは、頂部18pの接足面部14sからの高さGeよりも低い。
(3)対応領域Acにおいて、外壁面部16yと接地面部12sの接続部の正面視の断面半径(コーナRj)は、外壁面部16xと接地面部12sの接続部の正面視の断面半径(コーナRe)より大きい。
【0040】
(4)対応領域Acにおいて、内壁面部16wと接足面部14sの接続部の正面視の断面半径(コーナRn)は、内壁面部16vと接足面部14sの接続部の正面視の断面半径(コーナRm)より大きい。
(5)対応領域Acにおいて、接地面部12sの外足側巻上部16eの稜線18eからの幅方向突出寸法Deは、接地面部12sの内足側巻上部16jの稜線18jからの幅方向突出寸法Djよりも大きい。
(6)内足側の外壁面部16yと接地面部12sのなす角度(例えば80°~100°)は、外足側と外壁面部16xと接地面部12sのなす角度(例えば55°~75°)より大きい。つまり、内足側の外壁面部16yは略垂直であるのに対し、外足側と外壁面部16xは鋭角に傾斜している。
【0041】
以上、本発明の実施形態の例について詳細に説明した。上述した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施形態の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除などの多くの設計変更が可能である。上述の実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態の」「実施形態では」等との表記を付して説明しているが、そのような表記のない内容に設計変更が許容されないわけではない。
【0042】
[変形例]
以下、変形例について説明する。変形例の図面および説明では、実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。実施形態と重複する説明を適宜省略し、実施の形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0043】
実施形態の説明では、前側巻上部16fと、外足側巻上部16eと、内足側巻上部16jとが一体である例を示したが、これらは別体に形成されてもよい。
【0044】
実施形態の説明では、ソール10が一体に形成される例を示したが、本発明はこれに限定されない。ソール10は、アウトソール、ミッドソール、インソールなど複数の部材で構成されてもよいし、スタビライザを備えてもよい。特に、スタビライザを外足側張出部20eに設けることにより、地面に反発力を効率的に伝えることができるため、足側面のサポート範囲の前後バランスを一層改善できる。
【0045】
実施形態の説明では、内足側張出部20jが設けられる例を示したが、内足側張出部20jは必須ではなく、内足側張出部20jを設けないことも可能である。
【0046】
実施形態の説明では、靴100がシュータン60とシューレースを有する例を示したが、これらを有することは必須ではなく、別の緊締構造を備えてもよい。
【0047】
上述の各変形例は上述の実施形態と同様の作用・効果を奏する。
【0048】
上述した実施形態と変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる各実施形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、靴に関連し靴に利用することができる。
【符号の説明】
【0050】
10 ソール、 12 ソール下面部、 12s 接地面部、 14 ソール上面部、 16e 外足側巻上部、 16j 内足側巻上部、 18e 外足側稜線、 18j 内足側稜線、 18p、18q 頂部、 20e 外足側張出部、 20j 内足側張出部、 100 靴。
図1
図2
図3
図4
図5
図6