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特許7495426凍結乾燥容器用充填治具、システム及び使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】凍結乾燥容器用充填治具、システム及び使用方法
(51)【国際特許分類】
   F26B 5/06 20060101AFI20240528BHJP
   F26B 25/06 20060101ALI20240528BHJP
   A61J 1/00 20230101ALI20240528BHJP
【FI】
F26B5/06
F26B25/06
A61J1/00 Z
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2021555164
(86)(22)【出願日】2020-03-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-13
(86)【国際出願番号】 US2020022128
(87)【国際公開番号】W WO2020185916
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】62/818,214
(32)【優先日】2019-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/952,752
(32)【優先日】2019-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/971,072
(32)【優先日】2020-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506313866
【氏名又は名称】テルモ ビーシーティー バイオテクノロジーズ,エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Terumo BCT Biotechnologies, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン、ナサニエル ティー.
(72)【発明者】
【氏名】サミット、リラン エイ.
(72)【発明者】
【氏名】ブリッジス、デニス エイ.
(72)【発明者】
【氏名】ラヴィンカ、デニス ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】パラキニンカス、ケスタス ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ワイマー、カーク エル.
(72)【発明者】
【氏名】グローバー、マイケル ローレンス
(72)【発明者】
【氏名】グエン、アレキサンダー デュ
(72)【発明者】
【氏名】クワイアット、マーガレット ブイ.
【審査官】広瀬 雅治
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-522176(JP,A)
【文献】特表2001-522634(JP,A)
【文献】特開2005-058694(JP,A)
【文献】特開昭51-055061(JP,A)
【文献】特開2004-097246(JP,A)
【文献】特開2018-061719(JP,A)
【文献】国際公開第2018/046221(WO,A1)
【文献】特表2017-517335(JP,A)
【文献】米国特許第04597188(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 5/06
F26B 25/06
A61J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャーシと、
充填インジケータと、
蓋と、
を備える凍結乾燥に使用されるガス充填治具であって、
前記シャーシと前記蓋とは、長手方向に沿って置かれる可撓性凍結乾燥容器を受容するキャビティを形成し、
前記可撓性凍結乾燥容器にはガスが充填され、
前記充填インジケータは、前記可撓性凍結乾燥容器のガスの充填量を示す、
ガス充填治具。
【請求項2】
請求項1記載のガス充填治具において、
前記シャーシは、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)を含む、
ガス充填治具。
【請求項3】
請求項1又は2記載のガス充填治具において、
前記充填インジケータは、機械式インジケータである、
ガス充填治具。
【請求項4】
請求項3記載のガス充填治具において、
前記機械式インジケータは、直動式インジケータである、
ガス充填治具。
【請求項5】
請求項4記載のガス充填治具において、
前記直動式インジケータは、複数の色を使用して適正充填状態及び過充填状態を示すように構成される、
ガス充填治具。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のガス充填治具において、
前記充填インジケータは、少なくとも1つのセンサを備える、
ガス充填治具。
【請求項7】
請求項6記載のガス充填治具において、
前記少なくとも1つのセンサは、光学式センサ、誘導式センサ、静電容量式センサの中から選択される、
ガス充填治具。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のガス充填治具において、
前記蓋は、少なくとも1つのヒンジで、前記シャーシに接続される、
ガス充填治具。
【請求項9】
請求項8記載のガス充填治具において、
前記少なくとも1つのヒンジは、ピボットヒンジである、
ガス充填治具。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載のガス充填治具において、
さらに、凍結乾燥容器と協働するように構成されたハンドルを有する、
ガス充填治具。
【請求項11】
可撓性凍結乾燥容器と、
凍結乾燥機と、
ガス充填治具と、
を備える、流体を凍結乾燥するシステムであって、
前記ガス充填治具は、
シャーシと、
充填インジケータと、
蓋と、を有し、
前記シャーシと前記蓋とは、長手方向に沿って置かれる前記可撓性凍結乾燥容器を受容するキャビティを形成し、
前記可撓性凍結乾燥容器にはガスが充填され、
前記充填インジケータは、前記可撓性凍結乾燥容器のガスの充填量を示す、
流体を凍結乾燥するシステム。
【請求項12】
請求項11記載の流体を凍結乾燥するシステムにおいて、
さらに、凍結乾燥用ローディングトレイを備える、
流体を凍結乾燥するシステム。
【請求項13】
請求項11又は12記載の流体を凍結乾燥するシステムにおいて、
前記充填インジケータは、機械式インジケータである、
流体を凍結乾燥するシステム。
【請求項14】
請求項13記載の流体を凍結乾燥するシステムにおいて、
前記機械式インジケータは、直動式インジケータである、
流体を凍結乾燥するシステム。
【請求項15】
請求項14記載の流体を凍結乾燥するシステムにおいて、
前記直動式インジケータは、複数の色を使用して適正充填状態及び過充填状態を示すように構成される、
流体を凍結乾燥するシステム。
【請求項16】
流体を凍結乾燥する方法であって、
流体を可撓性の凍結乾燥容器に投入するステップと、
前記凍結乾燥容器の一部をガス充填治具の内部に配置するステップと、
ガスを前記凍結乾燥容器に投入するステップと、
前記ガス充填治具の充填インジケータからの表示に基づいて、適正なガス充填量を判断するステップと、
前記凍結乾燥容器を凍結乾燥機に装着するステップと、
前記流体を凍結乾燥するステップと、
を有する、
流体を凍結乾燥する方法。
【請求項17】
請求項16記載の流体を凍結乾燥する方法において、
さらに、前記凍結乾燥容器を凍結乾燥用ローディングトレイに配置するステップを有する、
流体を凍結乾燥する方法。
【請求項18】
請求項16又は17記載の流体を凍結乾燥する方法において、
前記凍結乾燥容器は、通気性セクションと非通気性セクションとを有する可撓性マルチパート凍結乾燥容器である、
流体を凍結乾燥する方法。
【請求項19】
請求項18記載の流体を凍結乾燥する方法において、
前記流体を可撓性の前記凍結乾燥容器に投入するステップは、前記流体を前記凍結乾燥容器の前記非通気性セクションに投入するステップを含む、
流体を凍結乾燥する方法。
【請求項20】
請求項16~19のいずれか1項に記載の流体を凍結乾燥する方法において、
前記充填インジケータは、直動式インジケータである、
流体を凍結乾燥する方法。
【請求項21】
請求項20記載の流体を凍結乾燥する方法において、
前記直動式インジケータは、複数の色を使用して適正充填状態及び過充填状態を示すように構成される、
流体を凍結乾燥する方法。
【請求項22】
請求項16~21のいずれか1項に記載の流体を凍結乾燥する方法において、
前記流体を凍結乾燥するステップは、
前記流体を凍結するステップと、
前記凍結乾燥容器から閉塞を除去するステップと、
熱エネルギーを加え且つ真空にするステップと、
を含む、
流体を凍結乾燥する方法。
【請求項23】
請求項16記載の流体を凍結乾燥する方法において、
さらに、前記凍結乾燥容器を通気性セクションと非通気性セクションとの間で閉塞するステップを有する、
流体を凍結乾燥する方法。
【請求項24】
請求項16記載の流体を凍結乾燥する方法において、
さらに、前記凍結乾燥容器の一部を前記ガス充填治具の蓋の上方に配置して、ハンドルと協働させるステップを有する、
流体を凍結乾燥する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年3月14日に米国特許商標局に出願された米国仮特許出願第62/818,214号(タイトル:マルチパート凍結乾燥容器及びその使用方法)、2019年12月23日に米国特許商標局に出願された米国仮特許出願第62/952,752号(タイトル:凍結乾燥用ローディングトレイ組立体及びシステム)、及び2020年2月6日に米国特許商標局に出願された米国仮特許出願第62/971,072号(タイトル:凍結乾燥容器用充填治具、システム及び使用方法)の優先権を主張するものであり、該米国仮特許出願の全体は、ここでの開示により明確に本出願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、米国国防総省から授与された契約番号H92222-16-C-0081に基づく米国政府の支援を受けて行われた。米国政府は本発明に一定の権利を有する。
【0003】
本発明は、ヒト又は動物の血液又は血漿等の複合流体の凍結乾燥に関するものである。特に、本発明は、関連するシステム及び方法を含む、凍結乾燥プロセスで使用される可撓性凍結乾燥容器を準備するためのガス充填治具を説明するものである。ガス充填治具は、可撓性凍結乾燥容器を収容し、オペレータにガス充填表示を提供するように構成された剛性ハウジングである。本システムは、ガス充填治具、凍結乾燥容器、及び凍結乾燥機を含む。本方法は、凍結乾燥プロセスにガス充填治具を組み込むことに関する。
【背景技術】
【0004】
流体を凍結乾燥させる様々な方法が知られている。そのような方法の一例は、「凍結乾燥容器及びその使用方法」と題されたWeimerらの米国特許出願公開第2019/0106245号明細書に記載されている。記載された方法では、凍結乾燥される流体を収容する可撓性凍結乾燥容器にガスが添加される。ガスは、形成される氷ケーキの上方に蒸気空間を形成する目的で、凍結ステップの前に、可撓性凍結乾燥容器に添加される。形成された氷ケーキの上方に蒸気空間を設けることで、昇華・脱離時の蒸気の流れを促進することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在、可撓性凍結乾燥容器に正しいガス量を入力するための簡単で正確な手段は存在しない。現行のガス充填手順は一般的に手動で行われており、従って、煩雑で不正確であると考えられている。この不正確さによって、バッチ式凍結乾燥プロセスにおいて、一貫性が欠けることになり、プロセスが一定しない可能性が生じる。従って、本発明は、血液又は血液製剤等の生体液の凍結乾燥においてガス充填ステップを実行するために使用される現行の装置及び技術の改良について記載する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の特定の実施形態は、上記事項を考慮して提供されるが、本明細書で論じられる特定の問題は、本発明の実施形態の適用性を決して限定するものとして解釈されるべきではない。
【0007】
この節は、本発明のいくつかの実施形態の態様を簡略化した形で紹介するために提供されており、請求される発明の全ての重要又は必須の要素の網羅的なリストを含むものではなく、請求項の範囲を限定するものでもない。
【0008】
本発明の一態様では、凍結乾燥において使用されるガス充填治具が提供される。該ガス充填治具は、シャーシと、充填インジケータと、蓋と、を備える。シャーシと蓋とは、長手方向に沿って置かれる可撓性凍結乾燥容器を受容するキャビティを形成する。
【0009】
本発明の他の態様では、流体を凍結乾燥するシステムが提供される。該システムは、凍結乾燥容器と、凍結乾燥機と、ガス充填治具と、を備える。ガス充填治具は、シャーシと、充填インジケータと、蓋と、を有する。
【0010】
本発明のさらに他の態様では、流体を凍結乾燥する方法が提供される。該方法は、流体を可撓性凍結乾燥容器に投入するステップと、前記凍結乾燥容器の一部をガス充填治具内に配置するステップと、ガスを前記凍結乾燥容器に投入するステップと、前記ガス充填治具の充填インジケータからの表示に基づいて、適正なガス充填量を判断するステップと、前記凍結乾燥容器を凍結乾燥機に装着するステップと、前記流体を凍結乾燥するステップと、を有する。
【0011】
本発明の他の実施形態は、流体を凍結乾燥するための追加の方法及び装置及びシステムを含む。流体は、ヒト又は動物の血漿を含む任意の適切な液体である。
【0012】
非制限的且つ非包括的な実施形態は、添付図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、関連技術に係る可撓性マルチパート凍結乾燥容器の図である。
図2図2は、関連技術に係る凍結乾燥機の図である。
図3図3は、本発明の一実施形態に係るガス充填治具の平面図である。
図4図4A図4Cは、本発明の実施形態に係るガス充填治具の正面図である。
図5図5は、本発明の一実施形態に係るガス充填治具の側面図である。
図6図6は、本発明の一実施形態に係る、可撓性凍結乾燥容器を収容するガス充填治具の斜視図である。
図7図7は、本発明の一実施形態に係る、流体を凍結乾燥するためのシステムの図である。
図8図8は、本発明の一実施形態に係る、凍結乾燥プロセスを説明するワークフローの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書に記載されている原理は、以下の詳細な説明及び添付の図面に描かれている実施形態を参照することによってさらに理解することができる。特定の特徴が、特定の実施形態に関して以下に示され、説明されるが、本発明は、提供される特定の特徴又は実施形態に限定されない。さらに、以下の実施形態は、ヒト又は動物の血液又は血液成分等の生体液を凍結乾燥することに関して説明される。しかしながら、そのような記述は単なる例示である。当業者であれば、本発明の実施形態が、多くの状況において正しいガス充填量の決定に関連して使用され得ることを理解するであろう。
【0015】
本発明の実施形態は、主に、凍結乾燥される流体の準備に利用される独立型治具に関するものである。より詳細には、その中に可撓性凍結乾燥容器を配置することが可能であり、該可撓性凍結乾燥容器に対して適切なガス充填量が達成されたことをオペレータに知らせるガス充填治具が記載される。
【0016】
本明細書に記載されている装置及び技術を使用して、凍結乾燥のために任意の適切な流体を準備し、凍結乾燥することができる。適切な流体としては、ヒト又は動物の血液のような生体液又は血漿のような血液製剤が挙げられる。
【0017】
列挙された実施形態の様々な利点は、本明細書を通して言及される。
【0018】
図1は、関連技術に係る可撓性マルチパート凍結乾燥容器の図である。
【0019】
図1を参照すると、凍結乾燥容器100は、ポート領域104を含む非通気性セクション102、通気性膜108を含む通気性セクション106、及び閉塞ゾーン110を含む。
【0020】
動作時には、凍結乾燥容器100は、非通気性セクション102のポート領域104に配置されたポートを介して流体を交換する。流体の交換は、液体血漿を容器に最初に充填する際、並びに、凍結乾燥後に再構成して患者へ輸液するために行われる容器への滅菌水の充填の際に行われる。非通気性セクション102及び通気性セクション106は、剥離可能シールによって、又は、非通気性セクション102と通気性セクション106との間の移行部を包含する閉塞ゾーン110における容器の閉塞の形成によって、互いに隔離される。この点において、閉塞ゾーン(すなわち、剥離可能シール及び/又は閉塞の位置)110は、非通気性セクション102と通気性セクション106との間の境界を定義する。
【0021】
図2は、関連技術に係る凍結乾燥機の図である。
【0022】
図2を参照すると、凍結乾燥機200は、タイミング/温度制御装置202と液圧式棚システム204とを備える。
【0023】
図2に示す凍結乾燥機は、本発明の実施形態と併せて使用するのに適した従来の凍結乾燥機の一般的な図である。好適な従来の凍結乾燥機の典型的な構成要素は、タイミング/温度制御装置と、冷蔵システムと、真空システムと、凝縮器と、凍結乾燥及び封栓(stoppering)が可能な液圧式棚システムを含むチャンバと、を有する。
【0024】
図3は、本発明の一実施形態に係るガス充填治具の平面図である。
【0025】
図3を参照すると、ガス充填治具300は、プラットフォーム304と側壁306とヒンジ308とを含むシャーシ302と、蓋310と、充填インジケータ312と、ハンドル314と、を備える。
【0026】
シャーシ302は、プラットフォーム304、側壁306、及びヒンジ308からなる。蓋310は、ヒンジ308を介してシャーシ302に取り付けられている。充填インジケータ312は蓋310の底面側に、及びハンドル314は蓋310の上面側に、それぞれ取り付けられている。
【0027】
シャーシ302の長辺寸法(長さ)と短辺寸法(幅)は、それぞれ「L」と「W」で示される。図3に示す実施形態では、シャーシ302の長辺寸法は約26cmであり、シャーシ302の短辺寸法は約17cmである。図示されているように、「LL」と表記されている蓋310の長辺寸法は、シャーシ302の長辺寸法と基本的に一致している。「WL」と表記される蓋310の短辺寸法は、同様に、シャーシ302の短辺寸法と基本的に一致している。
【0028】
実施形態では、シャーシ302や蓋310のサイズ及び形状、及びそれらの関係はいずれも限定されない。例えば、シャーシ302の長辺寸法は15cm~50cmの間(例えば25cm~30cmの間)であってもよく、シャーシの短辺寸法は10cm~30cmの間(例えば15cm~20cmの間)であってもよい。同様に、蓋310の長辺寸法は、15cm~50cmの間(例えば25cm~30cmの間)であってもよく、蓋310の短辺寸法は、10cm~30cmの間(例えば15cm~20cmの間)であってもよい。
【0029】
図3に示す実施形態では、プラットフォーム304、側壁306及びヒンジ308は、ポリカーボネート(PC)とアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)のブレンドからなる。PC/ABSは、その強靭さと耐衝撃性の点で好ましい。プラットフォーム304は、PC/ABSの固体片であるが、側壁306及びヒンジ308は、質量を減らすために、従来の技術を用いて射出成形され中空化されている。蓋310は、透明な熱可塑性樹脂(例えば、アクリル)である。熱可塑性樹脂は、その耐久性と低コストのために好ましい。透明であることにより、オペレータは、ガス充填プロセスの間、凍結乾燥容器を視覚的に検査することができる。
【0030】
図3の実施形態では、ヒンジ308は、ピボットヒンジタイプである。各ヒンジ308は、蓋310に取り付けられる上部ヒンジマウント及びプラットフォーム314に取り付けられる下部ヒンジマウントからなる。上部及び下部ヒンジ308の各マウントは、それらの間の枢軸接続を構成する合わせピン(dowel)の一部を収容するように構成されたカップ部を備える。限定はされないが、他の実施形態においては、他のピボットヒンジ、金属バットヒンジ又は掘り込み型ヒンジ(Mortise hinge)等、様々な従来のヒンジを使用することができる。充填インジケータ312は、配置された凍結乾燥容器の正しいガス充填量を視覚的に判断する手段をオペレータに提供するように構成された機械式ゲージである。ハンドル314は、プラスチック製で、従来のキャビネットのドアの引き手や引き出しの引き手に似ている。
【0031】
ガス充填治具300の個々の構成要素には、様々な代替材料を使用することができる。選択される材料としては、繰り返し使用される条件下で弾力性を維持すべきであり、限定はされないが、例えば、プラスチック、金属、及び金属合金が挙げられる。好ましい実施形態では、治具構成要素は、従来のねじを用いて互いに取り付けられるが、任意の他の従来の技術、ハードウェア、接着剤等を用いて互いに取り付けられるか或いは接着されてもよい。
【0032】
種々の実施形態において、バンパー又は同様の部材を側壁306と蓋310との間に配置して、蓋310の閉鎖時の衝撃を吸収し、それによって治具300の寿命を延ばすことができる。そのようなバンパーの実施形態は、エチレンプロピレンジエンモノマーゴム(EPDM)等の高密度合成ゴムを含む、様々な材料のうちのいずれかで構成されてよいが、これらに限定されない。バンパーに使用するために選択された材料は、衝撃吸収性と耐久性があることが望ましい。
【0033】
図4A図4Cは、本発明の実施形態に係るガス充填治具の正面図である。
【0034】
図4A図4Cを参照すると、ガス充填治具400は、プラットフォーム404と側壁406とヒンジ408とを含むシャーシ402と、蓋410と、第1指の示部414と第2の指示部416とを含む充填インジケータ412と、ハンドル418と、を備える。
【0035】
図4Aは、閉じた状態の充填治具400の図である。図4Bは、適正充填状態を示す充填治具400の図である。図4Cは、過充填状態を示す充填治具400の図である。
【0036】
図4A図4Cに示される実施形態では、シャーシ402は、プラットフォーム404、側壁406、及びヒンジ408から構成されており、それら構成要素は蓋410を協働して支持する。組み立てられた構成要素内に形成された治具キャビティは、その長手方向の軸に沿って、気体が充填される可撓性凍結乾燥容器の一部を受容するように構成されている。
【0037】
図4Aに示すように、「W」で示されるシャーシ402の幅は約17cmである。側壁406の幅及びヒンジの幅はそれぞれ、約1.5cmである。しかしながら、実施形態では、側壁406の幅及びヒンジ408の幅のいずれも限定されず、いずれも0.5cm~5cmの間(例えば2cm~4cmの間)であってよい。図示のように、プラットフォーム404の幅は、シャーシの幅と一致している。しかしながら、実施形態では、プラットフォーム404の幅は限定されず、10cm~30cmの間(例えば15cm~20cmの間)であってもよい。異なる構成のシャーシを有するさらに他の実施形態では、プラットフォーム404の幅はシャーシの幅と一致しなくてもよい。
【0038】
「H」で示される治具400の全高は、約3.5cmである。しかしながら、実施形態では、治具の高さは限定されず、2cm~8cmの間(例えば3cm~5cmの間)であってよい。治具の全高には、蓋410の厚さとプラットフォーム404の厚さが含まれる。図示されているように、蓋410の厚さとプラットフォーム404の厚さのそれぞれは、約0.5cmである。しかしながら、実施形態では、蓋410の厚さもプラットフォーム404の厚さも限定されず、いずれも0.1cm~1cmの間(例えば0.3cm~0.7cmの間)であってよい。側壁406の高さとヒンジ408の高さはそれぞれ約2.5cmである。しかしながら、実施形態では、側壁406の高さもヒンジ408の高さも限定されず、1cm~5cmの間(例えば2cm~3cmの間)であってよい。
【0039】
「HC」で示される内部キャビティの高さは、約2.5cmである。実施形態では、内部キャビティの高さは限定されず、2cm~6cmの間(例えば3cm~5cmの間)であってよい。図4Aに示すように、内部キャビティの高さは、側壁の高さ及びヒンジ408の高さに一致しているが、異なる構成のシャーシからなる他の実施形態では、内部キャビティの高さは、側壁406の高さやヒンジ408の高さに一致しなくてもよい。「WC」で示される内部キャビティの幅は、約14cmである。しかしながら、実施形態では、内部キャビティの幅は限定されず、8cm~20cmの間(例えば12cm~16cmの間)であってよい。内部キャビティの長さは、図示されていないが、一般的にシャーシの長さと一致しており、実施形態では、シャーシ長さに応じて変化してもよい。実施形態では、治具の寸法のいずれも、互いの関係を含めて、限定されず、変更可能である。
【0040】
以下で図4A図4Cを参照して説明すると、充填インジケータ412は、蓋410の底面側に取り付けられた鉛直方向に向く直動式インジケータ(linear indicator)である。充填インジケータ412は、第1の指示部414及び第2の指示部416を含む従来のGo/No-Goゲージ(go/no-go gauge)と考えてよく、第1の部分は、適正充填状態を示し、第2の部分は、過充填状態を示す。しかしながら、他の実施形態では、充填インジケータ412の位置及び構成は限定されず、本発明の範囲から逸脱することなければ、変更されてもよい。
【0041】
図4Aは、閉位置にある充填治具400を示している。すなわち、蓋410は、シャーシ402上で静置されており、充填インジケータ412は、側壁406の端部の陰になって、視界から遮られた状態である。この閉位置では、充填インジケータ412は、いかなる充填状態も示さない。
【0042】
図4Bは、適正充填状態を示す充填治具400の図である。すなわち、可撓性凍結乾燥容器が治具キャビティ内に配置され、気体で充填されている。その結果、蓋410が持ち上げられ、凍結乾燥容器に所望の量の気体が充填されたことを示すように構成された充填インジケータ412の第1の指示部414が露出している。例示的な実施形態では、適正充填状態を示すために緑色が使用される。しかし、他の実施形態では、第1の指示部に使用される視覚的インジケータの種類は限定されず、他の色やはっきりと認識できる表面質感等、任意の適切な視覚的インジケータであってもよい。
【0043】
図4Cは、過充填状態にある充填治具400を示している。すなわち、可撓性凍結乾燥容器が治具キャビティ内に配置され、ガスが過充填されている。その結果、蓋410が適正充填状態を超えて持ち上げられ、凍結乾燥容器に所望の量を超える量のガスが充填されたことを示すように設計された充填インジケータ412の第2の指示部416が露出している。例示的な実施形態では、過充填状態を示すために赤色が使用される。しかしながら、他の実施形態では、第2の指示部に使用される視覚的インジケータの種類は限定されず、適正充填状態に使用されるインジケータとは異なる任意の適切な視覚的インジケータを使用してもよい。例えば、他の色や異なる表面質感等を、過充填状態を示すために使用してもよい。
【0044】
実施形態では、シャーシ402は、異種材料からなる構成要素を含んでもよい。例えば、プラットフォーム404はプラスチックから構成されるのに対し、側壁406及びヒンジ408は金属から構成される、或いはその逆であってもよい。さらに他の実施形態では、プラットフォーム404及び側壁406は、単一の構成部材として形成されてもよい。様々なさらなる材料の選択及び設計の組み合わせは、本発明の範囲内であり、当業者であれば容易に想定することができる。
【0045】
図4A図4Cに示すように、ハンドル418は、従来のキャビネットドアの引き手や引き出しの引き手に似ている。ハンドル418は、操作者が素手又は手袋をした手で蓋410を操作できるようなサイズである。ハンドル418は、蓋410の略中央に、治具400のキャビティの長手方向の軸に垂直に配置されている。この構成では、可撓性凍結乾燥容器の一部をその長手方向軸に沿って治具キャビティに装着し、可撓性容器の残部をハンドル418の空隙スペースに固定できるような方法で蓋410の端部で折り返すことが可能である(図6参照)。そのような実施形態では、切り欠き、くぼみ、又は任意の他の適切な機能要素のような特殊な機能要素が、容器を固定する際にハンドル418と協働するように、可撓性容器に組み込まれてもよい。可撓性容器全体をこのように充填治具400に固定できることによって、充填手順の前に、組み合わされた治具と容器の正確な重量を測定するプロセスを簡略化することができる。
【0046】
図5は、本発明の一実施形態に係るガス充填治具の側面図である。
【0047】
図5を参照すると、ガス充填治具500は、切り欠き部504を含む側壁502と、充填インジケータ506と、蓋508と、ハンドル510と、を備える。
【0048】
図示されているように、蓋508が閉位置にあるとき、充填インジケータ506は、側壁502の一部に隣接し、そこから最小距離だけ離れて置かれている。充填インジケータ506と側壁502の前記一部との間の最小距離を維持することにより、所定の充填状態において充填インジケータ506のうちの充填指示部1つだけがオペレータに見えるようになり、従って、オペレータのエラーの可能性を低減することができる。特に、側壁502は、質量を低減し、コストを低減するために、切り欠き部504を有する。
【0049】
他の実施形態では、充填インジケータ506は、異なる構成であってもよく、さらに他の種々の技術を使用したり追加したりしてもよい。例えば、充填インジケータ506は、1つ又は複数の治具部材に組み込まれてもよく、カメラ、センサ、光、又はガス充填プロセスの視覚的表示を提供したり、視覚的又は電子的な監視又は検査を実行したりする他の従来の電気的又は機械的手段のうちの1つ又は複数を含んでもよい。カメラ、センサ、ライトの種類は特に限定されない。例えば、含まれるセンサは、光学式センサ、誘導式センサ、静電容量式センサのいずれかの中から選択することができる。
【0050】
図6は、本発明の一実施形態に係る、可撓性マルチパート凍結乾燥容器を収容するガス充填治具の斜視図である。
【0051】
図6を参照すると、ガス充填治具600は、可撓性マルチパート凍結乾燥容器602を収容する様子が示されている。
【0052】
図示されているように、凍結乾燥容器602の非透過性部分は、治具600のキャビティに装着され、ガスで充填される。従って、蓋はシャーシから持ち上げられた状態で示されており、充填インジケータが上向きに延びて適正充填状態を示すことができる。ガス透過性膜を含む凍結乾燥容器602の一部は、ガス充填治具600の蓋を覆うように折り返され、ハンドルの空隙スペースに固定される。ハンドルにおける凍結乾燥容器602の固定は、凍結乾燥容器602の機能構成要素とそれに対応する治具ハンドルの機能構成要素との間の協働によって達成される。
【0053】
充填治具600は、凍結乾燥の凍結ステップの間及びその後に、容器材料に「固着する」氷の量を減らすために、オペレータが凍結乾燥容器602内に所望の蒸気空間を作ることをアシストする。材料及び設計の選択は、凍結乾燥容器602内に蒸気空間を形成することにより、容器の圧力が0.3ポンド/平方インチ(Psi)~1.0Psiの間(例えば0.5Psi(約26mmHG))に達するようにすることを考慮に入れるべきである。
【0054】
図7は、本発明の一実施形態に係る、流体を凍結乾燥させるシステムの図である。
【0055】
図7を参照すると、システム700は、ガス充填治具702と、凍結乾燥容器704と、凍結乾燥用ローディングトレイ706と、凍結乾燥機708と、を含む。
【0056】
システム700は、それぞれの実施形態で、異なっていてもよい。例えば、システム700は、凍結乾燥用ローディングトレイ706を完全に除いてもよい。他の実施形態では、システム700は、図示されたものとは異なる構成の構成要素を採用してもよい。例えば、凍結乾燥機708は、別体のシステム構成要素である冷凍庫と組み合わせて使用されてもよい。同様に、異なって構成された凍結乾燥容器704は、異なる構成のシステム構成要素をもたらす可能性があるが、これは本発明の範囲内であり、当業者であれば容易に想定することができる。さらに他の実施形態では、各システム構成要素に対する凍結乾燥容器の適切な位置決め及び固定を確実にするために、様々な位置決め及び固定のための機能要素をシステム構成要素に組み込んでもよい。
【0057】
以下に示す例示的なワークフローでは、本発明のガス充填治具の実施形態が凍結乾燥プロセスにどのように採り入れられるかを説明する。
【0058】
図8は、本発明の一実施形態に係る、凍結乾燥プロセスを説明するワークフローの概略図である。
【0059】
図8を参照すると、ステップ802で、対象流体(例えば、血漿)は、可撓性凍結乾燥容器の非通気性セクションに注入される。ステップ804では、凍結乾燥容器の非通気性セクションがガス充填治具に装着される。ステップ806では、凍結乾燥容器の非通気性セクションにガスが注入される。ステップ808では、ガス充填治具の充填インジケータからの適切な充填表示に基づいて、適切なガス充填量が判断される。このステップでは、ガスは好ましくは窒素であるが、空気、他の不活性ガス、又はpH調整ガス(例えばCO2)のような他のガスが導入されてもよい。ステップ810では、凍結乾燥容器が、ローディングトレイ又は他のローディング装置に、任意で取り付けられる。ステップ812では、凍結乾燥容器が凍結乾燥機に装着される。ステップ814では、凍結乾燥容器内の液体が凍結され、非通気性セクションに薄い均一厚さを有する氷の構造が形成される。ステップ816では、凍結乾燥容器から閉塞が取り除かれ、凍結乾燥容器の非通気性セクションと通気性セクションとの間に通路が存在するようになる。このステップにおいては、閉塞の除去は、例えば、剥離可能なシールの開封又は機械式クランプの取り外しを含む。ステップ818において、真空にして且つ熱エネルギーを加えることによって、昇華及び脱離が達成され、固相から直接気相への氷構造の相変化が引き起こされる。氷構造から放出された蒸気は、形成された通路を経由して凍結乾燥容器の空洞部分を通って流れ、凍結乾燥容器の通気性セクションを通って逃げていく。その結果、非通気性セクションには、凍結乾燥された血漿ケーキが残る。ステップ820では、オプションとして、凍結乾燥容器が不活性ガスで充填され、凍結乾燥容器の圧力を、大気圧の分圧(partial atmospheric pressure)まで上げる。ステップ822において、凍結乾燥容器は閉塞され、非通気性セクションと通気性セクションとが分離されることで、凍結乾燥物の汚染が防止される。ステップ824では、凍結乾燥容器の非通気性材料に恒久的なシーム(閉じ目)(seam)が任意に形成される。ステップ826では、凍結乾燥容器が恒久的なシームで任意に分割され、非通気性セクションに凍結乾燥された最終製剤が残る。
【0060】
本明細書において様々な特定の実施形態が列挙されたが、当業者は、本発明の範囲を逸脱することなく、特定の用途のために様々な変形及び最適化を実施できることを理解するであろう。例えば、他の実施形態では、充填治具は、複数の凍結乾燥容器を同時に充填するように構成されてもよい。同様に、治具は、任意の特定の凍結乾燥容器の固有の寸法に対応するように構成されてもよい。さらに他の実施形態では、ガス充填治具及び他のシステム構成要素は、タブ、ピン、クリップ、又は凍結乾燥容器を正しい位置に固定するように構成された他の従来の取り付け手段を含んでもよい。さらに、本発明は、血液又は血液製剤の凍結乾燥に限定されない。すなわち、本発明の原理は、多くの流体の凍結乾燥に適用可能である。従って、本発明の方法及びシステムの構成、動作、及び詳細において、様々な変形や変更を行うことができることは、当業者には明らかであろう。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8