(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】長尺状医療部材を安定させるための固定装置およびカテーテルアセンブリの固定方法
(51)【国際特許分類】
A61M 25/02 20060101AFI20240528BHJP
A61M 25/00 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
A61M25/02 502
A61M25/00 650
(21)【出願番号】P 2021561824
(86)(22)【出願日】2020-04-16
(86)【国際出願番号】 US2020028583
(87)【国際公開番号】W WO2020214856
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2023-03-16
(32)【優先日】2019-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511300891
【氏名又は名称】バード・アクセス・システムズ,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100116322
【氏名又は名称】桑垣 衛
(72)【発明者】
【氏名】ハウエル、グレード ハロルド
【審査官】川上 佳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/197367(WO,A1)
【文献】特表2015-529115(JP,A)
【文献】特開平10-181966(JP,A)
【文献】特開2008-136565(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/02
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の皮膚表面上において長尺状医療部材を安定させるための固定装置であって、
保持具であって、
前記固定装置の中心軸線と位置合わせされた溝部を画定するとともに、前記長尺状医療部材の一部分を受容するように構成された保持具本体部と、
前記保持具本体部を支持している装着翼部と、を有する保持具と、
前記装着翼部を支持しているアンカーパッドであって、アンカーパッドの下面の一部分に配置された接着層を有し、外縁部と、該外縁部の横方向反対側に位置する内縁部とを画定しているアンカーパッドと、
前記接着層上に配置されて前記外縁部から前記内縁部に延びる第1の部分と、内縁部に沿って前記第1の部分に接続されて内縁部から外縁部に延びる第2の部分とを有する剥離ライナーであって、外縁部に近接する位置において前記第1の部分に対して第2の部分を解放可能に固定するように構成された留め機能部を有する剥離ライナーと、を備え
、
前記留め機能部は、前記第2の部分に位置するフラップであり、該フラップは、前記第1の部分または前記アンカーパッドを挟むように前記固定装置の前記中心軸線に向かって延びている、固定装置。
【請求項2】
前記第1の部分が前記第2の部分と前記接着層との間に配置され、第2の部分が、前記外縁部から横方向外側に延在してプルタブを画定している、請求項1に記載の固定装置。
【請求項3】
前記
フラップは、前記第2の部分に打ち抜かれているフラップ
であり、前記剥離ライナーの第1の部分またはアンカーパッドのいずれか一方に対して第2の部分を解放可能に固定させるように構成されている、請求項1または2に記載の固定装置。
【請求項4】
患者の皮膚表面上において長尺状医療部材を安定させるための固定装置であって、
保持具であって、
前記固定装置の中心軸線と位置合わせされた溝部を画定するとともに、前記長尺状医療部材の一部分を受容するように構成された保持具本体部と、
前記保持具本体部を支持している装着翼部と、を有する保持具と、
前記装着翼部を支持しているアンカーパッドであって、アンカーパッドの下面の一部分に配置された接着層を有し、外縁部と、該外縁部の横方向反対側に位置する内縁部とを画定しているアンカーパッドと、
前記接着層上に配置されて前記外縁部から前記内縁部に延びる第1の部分と、内縁部に沿って前記第1の部分に接続されて内縁部から外縁部に延びる第2の部分とを有する剥離ライナーであって、外縁部に近接する位置において前記第1の部分に対して第2の部分を解放可能に固定するように構成された留め機能部を有する剥離ライナーと、を備え、
前記留め機能部が、前記剥離ライナーの第1の部分に配置された開口部を有し、前記第2の部分の上面が前記接着層に接触できるように構成されていることによって、接着層に対して解放可能に第2の部分を固定させる
、固定装置。
【請求項5】
前記アンカーパッドが、布地の上層と、アンカーパッドの一部分上に延在するとともに前記布地の上層と前記接着層との間に配置された中心発泡体層とを有している、請求項1~4のいずれか一項に記載の固定装置。
【請求項6】
前記アンカーパッドの基端側縁部から延びるとともに、前記固定装置の中心軸線と位置合わせされて前記長尺状医療部材と
前記患者の
前記皮膚表面との間に配置される保護パッドをさらに備えた、請求項1~5のいずれか一項に記載の固定装置。
【請求項7】
前記保護パッドが、中心発泡体層と、保護パッドの上面に配置された剥離剤とを有しており、保護パッドが、前記長尺状医療部材によって引き起こされる
前記皮膚表面の擦過傷を抑制するように構成されている、請求項6に記載の固定装置。
【請求項8】
前記保護パッドが、保護パッドと前記アンカーパッドとの間に設けられた引き裂き線をさらに有し、該引き裂き線が、アンカーパッドから保護パッドを選択的に解放するように構成されている、請求項6に記載の固定装置。
【請求項9】
前記長尺状医療部材が、ミッドラインカテーテル、透析カテーテル、中心静脈カテーテル(CVC)、末梢挿入型中心静脈カテーテル(PICC)、末梢静脈カテーテル(PIV)、フォーリーカテーテル、尿路カテーテル、栄養チューブまたはバルーンカテーテルである、請求項1~8のいずれか一項に記載の固定装置。
【請求項10】
カテーテルの挿入部位を介してカテーテルアセンブリの内側部分を患者の体内に挿入した後に前記カテーテルアセンブリの外側部分を安定させる固定装置であって、
溝部を画定している保持具本体部と、
前記保持具本体部を支持している第1の装着翼部および第2の装着翼部であって、第1の装着翼部および第2の装着翼部の先端側縁部が前記カテーテルの挿入部位を越えて先端側に延びている第1の装着翼部および第2の装着翼部と、
前記第1の装着翼部を支持している第1のアンカーパッドおよび前記第2の装着翼部を支持している第2のアンカーパッド
であって、前記第1のアンカーパッドおよび前記第2のアンカーパッドの一方は該アンカーパッドの下面に配置された接着層を含む、第1のアンカーパッドおよび第2のアンカーパッドと、
前記接着層上に配置された第1の部分と、前記第1の部分に接続された第2の部分とを有する剥離ライナーであって、前記第1の部分に対して第2の部分を解放可能に固定するように構成された留め機能部を有する剥離ライナーと、
前記第1のアンカーパッドおよび前記第2のアンカーパッドの基端側に配置され、前記カテーテルアセンブリの外側部分と患者の皮膚表面との間に配置される保護パッドと、を備え
、
前記留め機能部は、前記第2の部分に位置するフラップであり、該フラップは、前記第1の部分または前記アンカーパッドを挟むように前記固定装置の前記中心軸線に向かって延びている、固定装置。
【請求項11】
前記第1の装着翼部および前記第1のアンカーパッドが、前記挿入部位の近傍の
前記皮膚表面の第1の部分に接着され、前記第2の装着翼部および前記第2のアンカーパッドが、前記挿入部位の近傍の
前記皮膚表面の第2の部分に接着され、該第2の部分が前記皮膚表面の第1の部分の反対側に位置し、前記第1の装着翼部および第2の装着翼部が、前記カテーテルアセンブリに対して、第1の装着翼部と第2の装着翼部との間に配置された挿入部位を安定させる、請求項10に記載の固定装置。
【請求項12】
前記第1の装着翼部または第2の装着翼部のいずれか一方が、該第1の装着翼部または第2の装着翼部のいずれか一方に展性を付与する溝部を有している、請求項10または11に記載の固定装置。
【請求項13】
前記第1の装着翼部または第2の装着翼部の前記溝部における厚さが、0.254mm(0.010インチ)から0.508mm(0.020インチ)の間である、請求項12に記載の固定装置。
【請求項14】
前記保持具本体部、第1の装着翼部および第2の装着翼部が、前記カテーテルアセンブリの揺れまたはピストン運動を抑制するように構成されている、請求項10~13のいずれか一項に記載の固定装置。
【請求項15】
前記保持具本体部のノーズ部が、該ノーズ部と前記挿入部位との間に抗菌ディスクを保持するように構成された切り欠き部を有している、請求項10~14のいずれか一項に記載の固定装置。
【請求項16】
前記ノーズ部が、前記カテーテルアセンブリの張力緩和部を所定の角度に曲げるように構成され、カテーテルアセンブリの外側部分の軸線が前記患者の
前記皮膚表面に対して実質的に平行に延びる、請求項15に記載の固定装置。
【請求項17】
前記第1の装着翼部および第2の装着翼部が、該第1の装着翼部と第2の装着翼部との間に前記抗菌ディスクを受容するように構成されている、請求項15に記載の固定装置。
【請求項18】
前記保持具本体部に対する前記カテーテルアセンブリの回転を抑制するとともに前記保持具本体部に対して
前記カテーテルアセンブリを位置合わせするように構成された回転防止機能部をさらに備えた、請求項10~17のいずれか一項に記載の固定装置。
【請求項19】
前記回転防止機能部が、前記カテーテルアセンブリに配置された突出部、位置合わせリングまたは係止タブのうちのいずれか1つと係合するように構成されたポケット、位置合わせ溝部または係止窓のうちのいずれか1つを含む、請求項18に記載の固定装置。
【請求項20】
前記保持具本体部が、透明、半透明または半透過性の材料のいずれか1つで形成され、臨床医が保持具本体部の下側に位置する前記カテーテルアセンブリの位置を観察できるように構成されている、請求項10~19のいずれか一項に記載の固定装置。
【請求項21】
前記保持具本体部が、前記溝部と保持具本体部の外面との間を連通させる観察窓を有しており、該観察窓が、観察窓の下側に位置する前記カテーテルアセンブリの外側部分を使用者が観察できるように構成されている、請求項10~20のいずれか一項に記載の固定装置。
【請求項22】
前記カテーテルアセンブリが、カテーテルアセンブリの外側部分が前記保持具本体部と正しく位置合わせされていることを示すために、前記観察窓と位置合わせされるように構成された着色部を有している、請求項21に記載の固定装置。
【請求項23】
前記保護パッドが、前記カテーテルアセンブリの外側部分に起因する前記皮膚表面への外傷を抑制するように構成されている、請求項10~22のいずれか一項に記載の固定装置。
【請求項24】
カテーテルアセンブリを固定する方法であって、
固定装置を提供することであって、該固定装置が、
前記カテーテルアセンブリの少なくとも一部分を受容するように構成された溝部を画定している保持具本体部と、
前記保持具本体部を支持している装着翼部と、
前記装着翼部に接続しているとともに、下面に接着層が配置されているアンカーパッドと、
前記接着層上に配置された第1の部分と、第1の縁部に沿って前記第1の部分と一体的に形成され、前記第1の縁部の反対側の第2の縁部まで横方向外向きに延びている第2の部分とを有する剥離ライナー
であって、留め機能部をさらに含み、前記留め機能部は、前記第2の部分に位置するフラップであり、該フラップは、前記第1の部分または前記アンカーパッドを挟むように前記固定装置の前記中心軸線に向かって延びている、剥離ライナーと、を備えることと、
前記カテーテルアセンブリの一部分を前記溝部内に受容させることと、
前記固定装置の底面を患者の皮膚表面に対して配置することと、
前記第2の部分を横方向外向きに付勢することと、
前記第1の縁部から前記第2の縁部まで、前記剥離ライナーの第1の部分を接着層から剥がすことと、
前記保持具本体部を
前記患者の
前記皮膚表面に接着することと、からなる方法。
【請求項25】
前記剥離ライナーの
前記第1の部分に対して
前記剥離ライナーの
前記第2の部分を
前記フラップによって解放可能に固定する
ことをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記
フラップは、前記剥離ライナーの
前記第2の部分に打ち抜かれたフラップである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
カテーテルアセンブリを固定する方法であって、
固定装置を提供することであって、該固定装置が、
前記カテーテルアセンブリの少なくとも一部分を受容するように構成された溝部を画定している保持具本体部と、
前記保持具本体部を支持している装着翼部と、
前記装着翼部に接続しているとともに、下面に接着層が配置されているアンカーパッドと、
前記接着層上に配置された第1の部分と、第1の縁部に沿って前記第1の部分と一体的に形成され、前記第1の縁部の反対側の第2の縁部まで横方向外向きに延びている第2の部分とを有する剥離ライナーであって、留め機能部をさらに含む剥離ライナーと、を備えることと、
前記カテーテルアセンブリの一部分を前記溝部内に受容させることと、
前記固定装置の底面を患者の皮膚表面に対して配置することと、
前記第2の部分を横方向外向きに付勢することと、
前記第1の縁部から前記第2の縁部まで、前記剥離ライナーの第1の部分を接着層から剥がすことと、
前記保持具本体部を前記患者の前記皮膚表面に接着することと、を含み、
前記留め機能部が、前記剥離ライナーの第1の部分に配置された開口部であり、該開口部によって、前記接着層の一部分が前記剥離ライナーの第2の部分に接触できる
、方法。
【請求項28】
前記第2の部分が、前記第2の縁部を越えて横方向外側に延びてプルタブを画定している、請求項24~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記カテーテルアセンブリの第2の部分と前記患者の
前記皮膚表面との間に保護パッドを配置することをさらに含み、該保護パッドが前記アンカーパッドの基端側縁部から基端側に延びるとともにアンカーパッドに解放可能に接続されている、請求項24~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記保持具本体部のノーズ部と
前記皮膚表面との間で長手方向基端側に抗菌ディスクをスライドさせることをさらに含み、前記ノーズ部が、前記抗菌ディスクに当接して前記抗菌ディスクをノーズ部と
前記皮膚表面との間に保持するように角度が付けられている、請求項24~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記装着翼部を第1の位置から第2の位置に曲げることをさらに含み、装着翼部が、再配置されるまで前記第2の位置に装着翼部が留まるように展性を付与すべく構成された溝部を有している、請求項24~30のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺状医療部材を安定させるための固定装置およびカテーテルアセンブリの固定方法に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
本発明の目的は、拡張アンカーパッドおよび剥離ライナー留め機能部を備えたカテーテル固定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0003】
要約すると、本発明の実施形態は、カテーテルアセンブリ等の医療器具の外側部分を患者の皮膚表面に対して固定させるように構成された固定装置に関する。固定装置は、カテーテルアセンブリの外側部分を所定の位置に確実かつ取り外し可能に保持するために用いられる保持具を有している。一実施形態において、保持具は、皮膚表面に対して接着される接着パッド等のアンカーパッドに取り付けられる。以下の記載において、固定装置は、カテーテル保持システムまたはカテーテル保持アセンブリと称される場合もある。
【0004】
一実施形態では、保持具は、溝部を画定している本体部と、本体部から延びる少なくとも1つの装着翼部または足場とを有している。装着翼部は、挿入部位まで、もしくは挿入部位を先端側に越えた位置まで延びるように構成されて、固定装置に対して挿入部位および近傍の皮膚表面を安定させ、揺れまたはピストン運動を防止する。装着翼部は、装着翼部に展性を付与するように構成された溝部をさらに有し、このため、患者の様々な部位に合うように翼部を成形できる。保持具は、カテーテルを保持具内の所定の位置に案内し、揺れやピストン運動をさらに防止するための様々な係止機能部および回転防止機能部も有している。固定装置は、カテーテルに接続された医療用ライン等によって引き起こされる擦過傷を抑制するための保護パッドをさらに備えている。また、固定装置は、保持具に対するカテーテルの出入りが妨げられないように、ライナーを格納位置に保持する留め機能部を有している。
【0005】
本明細書に記載される固定装置は、患者の皮膚表面上において長尺状医療部材を安定させるための固定装置であって、保持具であって、固定装置の中心軸線と位置合わせされた溝部を画定するとともに、長尺状医療部材の一部分を受容するように構成された保持具本体部と、保持具本体部を支持している装着翼部と、を有する保持具と、装着翼部を支持しているアンカーパッドであって、アンカーパッドの下面の一部分に配置された接着層を有し、外縁部と、外縁部の横方向反対側に位置する内縁部とを画定しているアンカーパッドと、接着層上に配置されて外縁部から内縁部に延びる第1の部分と、内縁部に沿って第1の部分に接続されて内縁部から外縁部に延びる第2の部分とを有する剥離ライナーであって、外縁部に近接する位置において第1の部分に対して第2の部分を解放可能に固定するように構成された留め機能部を有する剥離ライナーと、を備えている。
【0006】
いくつかの実施形態において、第1の部分は、第2の部分と接着層との間に配置され、第2の部分は、外縁部から横方向外側に延在してプルタブを画定している。留め機能部は、第2の部分に打ち抜かれているフラップを有し、剥離ライナーの第1の部分またはアンカーパッドのいずれか一方に対して第2の部分を解放可能に固定させるように構成されている。留め機能部は、剥離ライナーの第1の部分に配置された開口部を有し、第2の部分の上面が接着層に接触できるように構成されていることによって、接着層に対して解放可能に第2の部分を固定させる。アンカーパッドは、布地の上層と、アンカーパッドの一部分上に延在するとともに布地の上層と接着層との間に配置された中心発泡体層とを有している。
【0007】
いくつかの実施形態において、固定装置は、アンカーパッドの基端側縁部から延びるとともに、固定装置の中心軸線と位置合わせされて長尺状医療器具と患者の皮膚表面との間に配置される保護パッドをさらに備えている。保護パッドは、中心発泡体層と、保護パッドの上面に配置された剥離剤とを有している。保護パッドは、長尺状医療器具によって引き起こされる皮膚表面の擦過傷を抑制するように構成されている。保護パッドは、保護パッドとアンカーパッドとの間に設けられた引き裂き線をさらに有し、引き裂き線は、アンカーパッドから保護パッドを選択的に解放するように構成されている。長尺状医療器具は、ミッドラインカテーテル、透析カテーテル、中心静脈カテーテル(「CVC」)、末梢挿入型中心静脈カテーテル(「PICC」)、末梢静脈カテーテル(「PIV」)、フォーリーカテーテル、尿路カテーテル、栄養チューブまたはバルーンカテーテルである。
【0008】
また、カテーテル挿入部位を介してカテーテルアセンブリの内側部分を患者の体内に挿入した後にカテーテルアセンブリの外側部分を安定させる固定装置も開示される。この固定装置は、溝部を画定している保持具本体部と、保持具本体部を支持している第1の装着翼部および第2の装着翼部であって、第1の装着翼部および第2の装着翼部の先端側縁部がカテーテル挿入部位を越えて先端側に延びている第1の装着翼部および第2の装着翼部と、第1の装着翼部を支持している第1のアンカーパッドおよび第2の装着翼部を支持している第2のアンカーパッドと、第1のアンカーパッドおよび第2のアンカーの基端側に配置され、カテーテルアセンブリの外側部分と患者の皮膚表面との間に配置される保護パッドと、を備えている。
【0009】
いくつかの実施形態において、第1の装着翼部および第1のアンカーパッドは、挿入部位の近傍の皮膚表面の第1の部分に接着され、第2の装着翼部および第2のアンカーパッドは、挿入部位の近傍の皮膚表面の第2の部分に接着され、第2の部分が皮膚表面の第1の部分の反対側に位置し、第1の装着翼部および第2の装着翼部が、カテーテルアセンブリに対して、第1の装着翼部と第2の装着翼部との間に配置された挿入部位を安定させる。第1の装着翼部または第2の装着翼部のいずれか一方は、装着翼部に展性を付与する溝部を有している。装着翼部の溝部における厚さは、0.254mm(0.010インチ)から0.508mm(0.020インチ)の間である。保持具本体部、第1の装着翼部および第2の装着翼部が、カテーテルアセンブリの揺れまたはピストン運動を抑制するように構成されている。保持具本体部のノーズ部は、ノーズ部と挿入部位との間に抗菌ディスクを保持するように構成された切り欠き部を有している。
【0010】
いくつかの実施形態において、ノーズ部は、カテーテルアセンブリの張力緩和部を所定の角度に曲げるように構成され、カテーテルアセンブリの外側部分の軸線が患者の皮膚表面に対して実質的に平行に延びる。第1の装着翼部および第2の装着翼部は、第1の装着翼部と第2の装着翼部との間に抗菌ディスクを受容するように構成されている。いくつかの実施形態において、固定装置は、保持具に対するカテーテルアセンブリの回転を抑制するとともに保持具に対してカテーテルアセンブリを位置合わせするように構成された回転防止機能部をさらに備えている。回転防止機能部は、カテーテルアセンブリに配置された突出部、位置合わせリングまたは係止タブのうちのいずれか1つと係合するように構成されたポケット、位置合わせ溝部または係止窓のうちのいずれか1つを含む。保持具本体部は、透明、半透明または半透過性の材料のいずれか1つで形成され、臨床医が保持具本体部の下に位置するカテーテルアセンブリの位置を観察できるように構成されている。保持具本体部は、溝部と保持具本体部の外面との間を連通させる観察窓を有しており、観察窓が、観察窓の下側に位置するカテーテルアセンブリの外側部分を使用者が観察できるように構成されている。カテーテルアセンブリは、カテーテルアセンブリの外側部分が保持具本体部と正しく位置合わせされていることを示すために、観察窓と位置合わせされるように構成された着色部を有している。保護パッドは、カテーテルアセンブリの外側部分に起因する皮膚表面への外傷を抑制するように構成されている。
【0011】
さらに、カテーテルアセンブリを固定する方法も開示される。この方法は、固定装置を提供することであって、固定装置が、カテーテルアセンブリの少なくとも一部分を受容するように構成された溝部を画定している保持具本体部と、保持具本体部を支持している装着翼部と、装着翼部に接続しているとともに、下面に接着層が配置されているアンカーパッドと、接着層上に配置された第1の部分と、第1の縁部に沿って第1の部分と一体的に形成され、第1の縁部の反対側の第2の縁部まで横方向外向きに延びている第2の部分とを有する剥離ライナーとを備えることと、カテーテルアセンブリの一部分を溝部内に受容することと、固定装置の底面を患者の皮膚表面に対して配置することと、第2の部分を横方向外向きに付勢することと、第1の縁部から第2の縁部まで、剥離ライナーの第1の部分を接着層から剥がすことと、保持具を患者の皮膚表面に接着することと、からなる。
【0012】
いくつかの実施形態では、剥離ライナーの第2の部分が、第2の縁部に近接する位置において、剥離ラインの第1の部分に対して剥離ライナーの第2の部分を解放可能に固定するように構成された留め機能部をさらに有している。留め機能部は、剥離ライナーの第2の部分に打ち抜かれたフラップである。留め機能部は、剥離ライナーの第1の部分に配置された開口部であり、開口部によって、接着層の一部分が剥離ライナーの第2の部分に接触できる。第2の部分は、第2の縁部を越えて横方向外側に延びてプルタブを画定している。いくつかの実施形態において、上記の方法は、カテーテルアセンブリの第2の部分と患者の皮膚表面との間に保護パッドを配置することをさらに含み、保護パッドがアンカーパッドの基端側縁部から基端側に延びるとともにアンカーパッドに解放可能に接続されている。いくつかの実施形態において、上記の方法は、保持具本体部のノーズ部と皮膚表面との間で長手方向基端側に抗菌ディスクをスライドさせることをさらに含み、ノーズ部が、ディスクに当接してディスクをノーズ部と皮膚表面との間に保持するように角度が付けられている。いくつかの実施形態においては、上記の方法は、装着翼部を第1の位置から第2の位置に曲げることをさらに含み、装着翼部が、再配置されるまで第2の位置に装着翼部が留まるように展性を付与すべく構成された溝部を有している。
【0013】
本発明の実施形態の上記および他の特徴は、以下の記載および添付の特許請求の範囲から完全に明らかとなるか、または、以下に記載される本発明の実施形態の実施から明らかとなる。
【0014】
添付の図面に示す本開示の特定の実施形態を参照して、本開示のより詳細な説明を以下に記載する。これらの図面は、本発明の代表的な実施形態のみを示しており、本発明の範囲を限定するものではない。本発明の例示的な実施形態について、以下の添付の図面を参照して、詳細を具体的に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1A】本明細書に開示の実施形態に係る、カテーテル固定装置の前面斜視図。
【
図1B】本明細書に開示の実施形態に係る、
図1Aのカテーテル固定装置の後面斜視図。
【
図1C】本明細書に開示の実施形態に係る、
図1Aのカテーテル固定装置の平面図。
【
図1D】本明細書に開示の実施形態に係る、
図1Aの固定装置の側面図。
【
図1E】本明細書に開示の実施形態に係る、
図1Aの固定装置の保持具を示す側面図。
【
図1F】本明細書に開示の実施形態に係る、
図1Aのカテーテル固定装置の分解図。
【
図2A】本明細書に開示の実施形態に係る、保持具の斜視図。
【
図2B】本明細書に開示の実施形態に係る、保持具の上側平面図。
【
図2C】本明細書に開示の実施形態に係る、保持具の後面図。
【
図2D】本明細書に開示の実施形態に係る、
図2Cの保持具の詳細拡大図。
【
図2E】本明細書に開示の実施形態に係る、保持具の側面図。
【
図2F】本明細書に開示の実施形態に係る、保持具の下側平面図。
【
図2G】本明細書に開示の実施形態に係る、カテーテルが配置された状態のカテーテル固定装置を示す斜視図。
【
図2H】本明細書に開示の実施形態に係る、アンカーパッドを備えた保持具およびカテーテルの下側分解図。
【
図3A】本明細書に開示の実施形態に係る、カテーテル固定装置の前面斜視図。
【
図3B】本明細書に開示の実施形態に係る、
図3Aのカテーテル固定装置のアンカーパッドを示す詳細拡大図。
【
図3C】本明細書に開示の実施形態に係る、
図3Aのカテーテル固定装置の平面図。
【
図3D】本明細書に開示の実施形態に係る、
図3Aのカテーテル固定装置の下側平面図。
【
図3E】本明細書に開示の実施形態に係る、
図3Aのカテーテル固定装置の下面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下で参照する図面においては、類似する構造には同様の符号が付されている。図面は、本発明の例示的な実施形態の模式的な概略図であり、限定的なものではなく、また、必ずしも寸法比率が等しいものではない。本明細書に開示される特定の実施形態が備える特徴は、特定の実施形態から分離して、本明細書に記載の別の実施形態の任意の数の特徴と容易に組み合わせや置換を行うことができる。
【0017】
本明細書で使用される用語は、いくつかの特定の実施形態の説明を目的とするものであり、これらの用語は、本明細書に記載される概念の範囲を限定するものではない。序数(例えば、第1、第2、第3等)は、特徴または工程のグループ内の異なる特徴またはステップを区別または識別するために使用されるものであり、順序や数値を限定するものではない。例えば、「第1」、「第2」および「第3」の特徴または工程は、必ずしもその順序である必要はなく、当該特徴または工程を含む特定の実施形態は、必ずしも3つの特徴または工程に限定されない。「左」、「右」、「上」、「下」、「前」、「後」等の表現は、説明の便宜上使用されるものであり、特定の固定位置、向きまたは方向を限定するものではない。このような表現は、相対的な位置、向きまたは方向を示すために用いられる。単数形の「1つの」および「その」は、内容が明らかに異なることを示していない限り、複数の対象物を含む。また、特許請求の範囲を含め、本明細書で使用される「含む」、「持っている」および「有する」という言葉は、「備えている」という表現と同じ意味を有するものとする。
【0018】
「基端側」について、例えば、本明細書に開示されるカテーテルの「基端部」または「基端側端部」は、カテーテルが患者に対して使用されるときに臨床医の近くに位置する部分を含む。同様に、例えば、カテーテルの「基端側の長さ」は、カテーテルが患者に対して使用されるときに臨床医の近くに位置するカテーテルの長さを含む。例えば、カテーテルの「基端」は、患者に対してカテーテルが使用されるときに臨床医の近くに位置する端部を含む。カテーテルの基端部、基端側端部または基端側長さは、カテーテルの基端を含んでいてもよい。しかしながら、カテーテルの基端部、基端側端部または基端側長さは、カテーテルの基端を含んでいなくてもよい。すなわち、文脈と矛盾しない限り、カテーテルの基端部、基端側端部または基端側長さは、カテーテルの末端部分または末端長さではない。
【0019】
「先端側」については、例えば、本明細書に開示されるカテーテルの「先端部」または「先端側端部」は、カテーテルが患者に対して使用されるときに患者の近くまたは体内に位置するカテーテルの部分である。同様に、例えば、カテーテルの「先端側の長さ」は、カテーテルが患者に対して使用されるときに患者の近くまたは体内に位置するカテーテルの長さを含む。例えば、カテーテルの「先端」は、カテーテルが患者に対して使用されるときに、患者の近くまたは体内に位置するカテーテルの端部を含む。カテーテルの先端部、先端側端部または先端側長さは、カテーテルの先端を含んでいてもよい。しかしながら、カテーテルの先端部、先端側端部または先端側長さは、カテーテルの先端を含んでいなくてもよい。すなわち、文脈と矛盾しない限り、カテーテルの先端部、先端側端部または先端側長さは、カテーテルの末端部分または末端長さではない。
【0020】
固定システムの理解を助けるため、以下の座標表現を使用する(例えば、
図1Aを参照)。「長手方向軸線」は、概して、医療部材が貫通する保持具の溝部の軸線と略平行に延びる軸線である。「横方向軸線」は長手方向軸線に垂直をなす。「横断方向軸線」は、長手方向軸線と横方向軸線の両方に対して垂直に延びる。さらに、本明細書において、「長手方向」は、長手方向軸線に概して平行な方向を指し、「横方向」は、横方向軸線に概して平行な方向を指し、「横断方向」は、横断方向軸線に概して平行な方向を指す。本明細書における「軸方向」という用語は溝部の軸線を基準とし、したがって、本明細書における「長手方向」という用語と実質的に同義である。本明細書における「ヨー」、「ピッチ」および「ロール」という用語は、それぞれ、横断方向軸線、横方向軸線および長手方向軸線の周囲における、装置の中心点を中心とした回転運動を指す。
【0021】
他に定義しない限り、本明細書中で使用される全ての科学技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。
本発明の実施形態は、血管に到達するため等の所望の目的のために患者の体内にカテーテルアセンブリの内側部分を配置した後に、カテーテルアセンブリの外側部分を皮膚表面に対して固定させるように構成された固定装置に概して関する。固定装置は、カテーテルアセンブリの外側部分を所定の位置に確実かつ取り外し可能に保持するために使用されるカテーテル保持具を有している。一実施形態では、カテーテル保持具は、皮膚表面に対して接着される接着パッド等のアンカーパッドまたはベースに装着されて、固定装置を形成している。固定装置は、カテーテル保持システムまたはカテーテル保持アセンブリとも称される。以下ではミッドラインカテーテルに関して説明するが、患者の皮膚表面に装着されるように構成されているか、皮膚表面に装着可能な他のカテーテル、管状医療器具または長尺状医療器具についても、本明細書の教示を適用できる。このような器具の例としては、透析カテーテル、中心静脈カテーテル(「CVC」)、末梢挿入型中心静脈カテーテル(「PICC」)、末梢静脈カテーテル(「PIV」)、フォーリーカテーテル、尿路カテーテル、栄養チューブおよびバルーンカテーテルが挙げられる。一実施形態では、カテーテル固定装置は、挿入部位を越えて先端側に延びる支持翼部または装着翼部を有し、挿入部位の内側および外側の両方において、カテーテルの揺れまたはピストン運動を抑制している。装着翼部は、固定装置の位置に応じて、皮膚表面の様々な曲率に合わせて支持翼部の成形を容易に行うための溝部をさらに有していてもよい。一実施形態では、アンカーパッドの下側接着面に配置された剥離ライナーが、装置の横方向の縁部に固定される留め機能部を有している。これによって、剥離ライナーの一部分が、保持具に対するカテーテルの出入りを妨げることがない。以下の実施形態において、カテーテル固定装置のさらに別の態様について説明する。
【0022】
図1A~3Eに、カテーテル固定装置(「固定装置」)100の様々な実施形態の詳細を示す。
図1A~1Cに示すように、固定装置100は、左アンカーパッド110Aおよび右アンカーパッド110B等のアンカーパッド110、保護パッド110Cおよび保持具200を有している。保持具200は、カテーテルシステム(「カテーテル」)300、延長セット、医療IVラインおよびこれらの組み合わせ等の長尺状医療部材の一部分を保持するように構成されている。一般的に、カテーテルシステム300はカテーテルハブ310を有している。カテーテルハブ310は、カテーテルハブ310から先端方向に延びる長尺状のカテーテルチューブ320を支持している。カテーテル300は、カテーテルチューブ320をさらに支持する張力緩和部330を有していてもよい。カテーテルハブ310の基端は、回転ナット72、ルアーロック(図示せず)または類似の好適な接続具を用いて、延長セット70等の医療用ラインに接続される。カテーテル300は、基端から先端まで延びる管腔を有し、医療用ラインと患者の血管系とを連通させる。
【0023】
一実施形態においては、アンカーパッド110が、中心発泡体部124および布地重なり部126を含み、底面に接着層が設けられる。接着層は、左剥離ライナー130Aおよび右剥離ライナー130B等の保護剥離ライナー130によって覆われている。詳細は後述するが、各剥離ライナー130は、第1の部分132、第2の部分134、プルタブ136、留め機能部138またはこれらの組み合わせ等を有している。
【0024】
また、保持具200は、左装着翼部210Aおよび右装着翼部210B等の少なくとも1つの装着翼部210によって支持されている本体部220を有している。本体部220が画定している中心溝部230は、カテーテルハブ310等の長尺状の医療部材の少なくとも一部分を保持するように構成されているが、カテーテル300、延長セット70、回転ナット72またはこれらの組み合わせ等のいずれの部分を保持していてもよい。溝部230は、カテーテルハブ310の少なくとも横方向および横断方向の動きを抑制する。さらに、保持具200は、装置100に対するカテーテルハブ310の長手方向の動きを抑制する1つまたは複数の当接部を有していてもよい。保持具200は、長手方向に延在して溝部230と連通することによってカテーテルハブ310の出入りを可能にしている長尺状の開口232をさらに有している。例えば
図2Hに示すように、開口232は、保持具の下面側に配置してもよいが、一実施形態においては、開口232が、保持具200の側面または上面に配置される。一実施形態では、保持具200は、本発明の趣旨から逸脱することなく、保持具内に医療部材をさらに固定するための様々なストラップ、ラッチ、留め具等を有する。一実施形態では、保持具200がポリカーボネートプラスチックで形成されるが、同様の好適な特性を備えた他の材料も用いてもよい。
【0025】
例えば
図1Cに示されるように、一実施形態では、装着翼部210の先端側縁部、アンカーパッド110またはこれらの組み合わせが、カテーテル挿入部位80よりも先端側に延びている。そのため、それぞれ左右のアンカーパッド110Aおよび110Bに固定されている左装着翼部210Aおよび右装着翼部210Bが、挿入部位80の周囲の皮膚表面に固定される。これによって、装着翼部210Aおよび210Bは、固定装置100に対して挿入部位80および周囲の皮膚表面50を安定させ、カテーテル300の「揺れ」または「ピストン運動」を防止できる。詳細を以下に述べる。
【0026】
図1Cに示すように、装着翼部210は、固定装置が皮膚に接着されたときに、固定装置100の中心点を中心としたヨー運動40を抑制または防止するように構成されている。さらに、装着翼部210Aおよび210Bは、互いに対するヨー運動を抑制または防止するように構成されている。同様に、
図1Dに示すように、装着翼部210Aおよび210Bは、皮膚に接着された固定装置100のピッチ運動42を抑制または防止するように構成されている。このため、左装着翼部210Aと右装着翼部210Bとの間に固定された挿入部位80は、固定装置100に対して安定しており、カテーテルが「揺れる」こと、すなわち、固定装置100の中心点を中心として横断方向軸線(
図1C)または横方向軸線(
図1D)を中心に回転することが防止される。例えば、固定装置100によって保持されているカテーテルハブ310に医療用ライン等が取り付けられている場合、臨床医が回転ナット72を回しながら所定の位置まで押すときに圧力が加えられる。この圧力は長手方向先端側に働く力であり、水平面および/または長手方向に垂直な平面を経て保持具本体部220を中心にカテーテルを回動させる。この力は、カテーテル300を挿入部位80に対して移動させ、挿入部位80の内側または外側でカテーテルチューブ320のねじれを引き起こす可能性がある。カテーテルチューブ320のねじれは、カテーテルチューブ320内の流れを妨げて患者に不快感をもたらすおそれがある。
【0027】
また、固定装置100に対して挿入部位80を安定させるように装着翼部210が構成されていることによって、カテーテル300の「ピストン運動」も防止される。例えば、
図1Eに示すように、装着翼部210は、挿入部位80に対するカテーテルの長手方向軸線に沿った動きを防止するように構成されている。このため、固定装置では、保持具200と挿入部位80との間でカテーテルチューブ320が圧縮した場合に発生する、カテーテルチューブ320の「Z字状ねじれ」が防止される。このようなねじれは、前述したように、流体の流れを妨げて不快感を与える可能性がある。一実施形態では、装着翼部210Aおよび210Bは、挿入部位80を出入りするカテーテルチューブ320の「ピストン」運動を防止するように構成されている。これによって、挿入部位80への微生物や細菌等の侵入を防ぎ、感染を抑制する。
【0028】
図1A~1Dおよび1Fに示すように、以下に詳細を記載する一実施形態において、保持具本体部220および装着翼部210A,210Bは、抗菌ディスク(「ディスク」)60、例えば、GuardIVa(登録商標)止血パッドまたは類似の抗菌止血手当用品を受容および保持するように構成されている。ディスク60は、円形の外周64を有する実質的に平らな円柱である。ディスク60は、おおよそ2.54cm(1インチ)の直径を有しているが、寸法はこれより大きくても小さくてもよい。ディスク60は、上面から下面まで延びる中心開口部66を有している。ディスクはさらに、外周64と中心開口部66とを接続するスリット62も有している。スリット62は、カテーテル300の一部分、例えば、カテーテルチューブ320や張力緩和部330等がスリット62を通って中心開口部66に受容されるように構成されている。ディスク60は、保持具200のノーズ部222と患者の皮膚表面50との間において所定の位置に固定される。詳細は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2017/0326340号明細書に記載されている。
【0029】
図1Fは、カテーテル固定装置100、カテーテル300および抗菌ディスク60の分解図である。例示的な使用方法において、カテーテル300の先端部が、患者の血管系に到達するように患者に挿入される。次に、保持具200を含む固定装置100が、カテーテル300の外側部分、例えばカテーテルハブ310および張力緩和部330まで下げられて、患者の皮膚表面に対して外側部分を安定させる。保護パッド110Cは、擦過傷を抑制するために、カテーテルハブ330と患者の皮膚表面との間に配置される。挿入部位80が装着翼部210の各先端部の間に配置されることによって、固定装置100に対して、挿入部位80および周囲の皮膚が安定する。次に、プルタブ136を横方向外向きに引っ張ることによって剥離ライナー130が取り除かれる。このようにプルタブ136を引っ張ることによって、剥離ライナー130の第1の部分132が横方向内縁部から剥離し、接着層128が患者の皮膚表面に接着可能となる。次に、抗菌ディスク60が長手方向基端側にスライドされて挿入部位80上に配置される。カテーテルチューブ320の患者の体外に位置している部分および張力緩和部330は、スリット66を通って中心開口部66に入り、ノーズ部222および装着翼部210A,210Bによって所定の位置に保持される。
【0030】
図2A~2Hに、固定装置100の例示的な保持具200の様々な詳細を示す。
装着翼部
保持具本体部220は、左右の装着翼部210A,210B等の装着翼部210によって支持されている。例えば、左装着翼部210Aは、保持具本体部220の左下部分に結合され、右装着翼部210Bは、保持具本体部220の右下部分に結合される。各装着翼部210A,210Bは、保持具本体部220の中心軸線90から横方向外向きおよび長手方向先端側に延び、一実施形態においては、装着翼部210A,210Bの最も先端側の部分は、保持具本体部220の先端を越えて延びている。一実施形態では、
図2Bに示すように、各装着翼部210A,210Bは平面視において湾曲した外周または「配置領域」を画定している。しかしながら、装着翼部210の外周の形状は、角張った形状または他の様々な形状を有していてもよく、これらも本発明の範囲内である。さらに、
図2Bに示すように、装着翼部210Aは実質的に装着翼部210Bの「鏡像」形状を有している。しかしながら、一実施形態では、左右の装着翼部210A,210Bは非対称であり、すなわち、互いに異なるサイズおよび形状を有する。
【0031】
左右の装着翼部210A,210Bは、それぞれ、左右のアンカーパッド110A,110Bに結合されている。一実施形態においては、装着翼部210の下面の少なくとも一部が、アンカーパッド110の上面に取り付けられている。装着翼部210は、接着、接合、溶接または類似の好適な手法によってアンカーパッド110に結合される。例えば
図1A、2H、3Cおよび3Dに示すように、アンカーパッド110A,110Bは横方向に離間して配置されており、医療部材が、装置100の下側を通ってアンカーパッド110A,110Bの間を出入りできるようになっている。一実施形態では、左右のアンカーパッド110A,110Bは一体的に形成されて単一のアンカーパッド110を形成している。例えば、医療部材が、上側を通って保持具200に出入りされる場合は、単一のアンカーパッド110が用いられる。
【0032】
溝部
図2Bおよび2Cに示されるように、一実施形態では、装着翼部210は、溝部212、例えば、左溝部212Aおよび右溝部212Bを有している。溝部212は、長手方向に延在して一体成型ヒンジを形成している。溝部212は、装着翼部の基端側縁部から先端側縁部まで延在し、装置100の中心軸線90から横方向にずれた位置に設けられている。一実施形態では、溝部212の長手方向軸線は、アンカーパッド110の内縁部と実質的に位置合わせされているが、装着翼部210の他の横方向位置に設けられてもよい。
【0033】
一実施形態では、溝部212は、装着翼部210が所定の角度に成形されて所定の位置に留まることができるような寸法を有しており、このため、装着翼部210に展性が付与されている。前述したように、保持具200は、ポリカーボネートプラスチックで形成できる。装着翼部210に形成された溝部212は、翼部の厚みを薄くした部分を形成している。装着翼部の厚みを薄くすると、装着翼部の弾性が減少し、展性が高まる。このため、横方向に垂直な平面を経て所定の角度を有するように翼部を成形でき、再度成形されるまで所定の角度に維持できる。本明細書において、弾性とは、力が加えられると翼部が変形し、力が取り除かれると元の形状に戻る特性を指す。これに対して、展性は、力が加えられると変形し、力が取り除かれても変形した形状に維持される特性を指す。
【0034】
一実施形態において、溝部212における翼部210の厚さ、すなわち厚さ(x)は、0.127mm(0.005インチ)から0.889cm(0.035インチ)の間である。一実施形態では、溝部212における翼部210の厚さ(x)は、0.254mm(0.010インチ)から0.508mm(0.020インチ)の間である。厚さ(x)は、翼部の弾性を減少させて、装着翼部210に展性を付与することができる厚さである。さらに、厚さ(x)は、所望の角度に成形された後に翼部の位置が維持される厚さである。一実施形態では、溝部212の断面は、V字形またはU字形であるが、他の断面形状であってもよい。一実施形態では、溝部212の横方向の幅および/または長手方向の長さも、所望の展性を与えるように変更される。一実施形態では、保持具は、透明または半透明のポリカーボネート材料で形成され、溝部212を含む装着翼部が第1の位置から第2の位置に配置されると、ポリカーボネート材料が屈曲して白く変色するため、翼部がすでに成形されていることがわかる。一実施形態では、溝部の展性によって、装着翼部210は、再配置されるまで第2の位置に留まることができる。
【0035】
一実施形態では、装着翼部210が2つ以上の溝部212を有している。
図2Dに示すように、一実施形態では、第1の左溝部212Aが装着翼部210の上面に形成され、第2の左溝部212Cが装着翼部210の下面に形成される。一実施形態では、上面の溝部212Aおよび下面の溝部212Cは、横方向に位置合わせされている。一実施形態では、上面の溝部212Aおよび下面の溝部212Cは、横方向にずれた位置に設けられている。
【0036】
一実施形態では、
図2Bに示されるように、溝部214は装着翼部210の一部分のみを横断している。例えば、溝部214Aは、装着翼部210の基端側縁部から、装着翼部210の先端側縁部よりも基端側の地点まで先端方向に延びている。同様に、溝部214Bは、装着翼部210の先端側縁部から、基端側縁部よりも先端側の地点まで基端方向に延びている。溝部214Cは、装着翼部の中間点を通って延在している。溝部214A~214Cの数や組み合わせを変化させることによって、溝部の「格子」を形成できる。また、溝部212A~212C、214A~214Cの数および組み合わせ等を変化させることによって、装着翼部210の展性を異ならせることができる。
【0037】
溝部212は、患者の皮膚表面の様々な曲率に合わせて装着翼部210を成形できるという効果をもたらしている。特に、成形された装着翼部210は、皮膚表面に貼られた後でもその形状を維持できる。これに対し、溝部212を有しない装着翼部は、弾性的に元の形状、すなわち実質的に平坦な状態に戻るため、装着翼部が接着されている皮膚表面が変形する。さらに、溝部212が設けられていることによって、様々な状況、体の位置または患者の種類に対して、同じ装置を使用できる。例えば、子供の手首は、大人の脚よりも曲率半径が小さい。また、高齢者の皮膚はより繊細で、かつ、変形しやすい。このように、装置100は、溝部212を有していることによって、患者の様々な部位に快適に接着でき、上記のような差異に対応することができる。
【0038】
ノーズによる把持および撓曲
一実施形態では、
図1E、2Eおよび2Fに示されるように、保持具本体部220がノーズ部(「ノーズ」)222をさらに有している。
【0039】
図2Aおよび2Eに示すように、一実施形態において、ノーズ部222は「切り欠き」凹部224を画定している。この凹部224は、ノーズ222と皮膚表面との間で横断方向に延在し、左装着翼部210Aと右装着翼部210Bとの間で横方向に延在している。凹部224は、抗菌ディスク60を受容するように構成されている。換言すると、凹部224を備えた保持具200は、挿入部位80に配置された抗菌ディスク60を妨害することなく、カテーテル300の一部分を保持および安定させるように構成されている。一実施形態では、ノーズ部222に下向きの角度を付けて抗菌ディスク60に当接させ、ノーズ222と皮膚表面との間の締まり嵌めを構成してディスク60を保持している。保持具200は、ディスク60を所定の位置に固定できるとともに、必要に応じて、固定装置100やカテーテル300等を妨害することなく臨床医がディスク60を交換できるという効果をもたらしている。
【0040】
一実施形態では、角度の付いたノーズ部222は、カテーテル張力緩和部330を拘束してわずかに下向きに曲げるように構成される。
図1Eに示されるように、ノーズ222によってもたらされる下向きの屈曲の角度(θ)は前もって定められている角度であるが、様々な要因に合わせて変更可能である。また、ノーズ222に角度が付けられていることによって、カテーテルハブ310を皮膚表面50に対して略平行に配置できる。カテーテルハブ310が患者の皮膚表面に対して略平坦状に配置されることによって、カテーテルハブ310を皮膚表面に対してさらに安定して配置させることができ、カテーテルの揺れやピストン運動が防止されるとともに、一端が飛び出すことが防止されるという効果がもたらされる。さらに、カテーテルハブ310および関連する延長セット等が皮膚表面に対して平行に位置合わせされることによって、高さを低くできるため、ハブ310が皮膚表面から突出して衣類、包帯等の物体に引っ掛かることが防止される。例示的な保持具および関連する構造の詳細は、米国特許第7014627号明細書および第8740852号明細書ならびに米国特許出願公開第2017/0326340号明細書に記載されている。これらの文献は、参照によりその全体が本出願に組み込まれる。
【0041】
カテーテルハブの回転防止
図2F~2Hに示すように、保持具200は、長手方向軸線を中心としたカテーテル300の回転または「ロール」を抑制する1つまたは複数の回転防止機能部を有していてもよい。一実施形態では、保持具200は、ポケット228、例えば、左ポケット228Aおよび右ポケット228Bを有しており、カテーテル300に設けられた突出部349、例えば、左突出部228Aおよび右突出部228Bを受容できるように構成されている。突出部349は、長手方向軸線に対して垂直に突出し、ポケット228と係合して、長手方向軸線を中心としてカテーテル300が保持具200に対して回転することを抑制する。一実施形態では、突出部349は、ポケット228にスナップ嵌合、締まり嵌合、圧入または類似の係合手段によって係合し、カテーテル300を保持具200内に固定している。一実施形態では、保持具200が、カテーテル300に設けられた位置合わせリング350を受容するように構成された位置合わせ溝部236をさらに有している。一実施形態では、位置合わせリング350は、カテーテルハブ330の周囲で環状に配置される。位置合わせ溝部236は、カテーテル300を保持具200内に正しく確実に着座させるとともに、保持具200に対するカテーテル300の長手方向の動きを抑制するように、位置合わせリング350を受容するように構成される。
【0042】
一実施形態においては、保持具200は、カテーテル300から突出している係止タブ352を受容するように構成された係止窓234をさらに有している。一実施形態では、係止タブ352は、カテーテル300の長手方向軸線に対して垂直に、カテーテルハブ310から突出している。係止タブ352は、係止窓234と係合して、保持具200に対するカテーテル300の動き、例えば、回転運動、横方向運動、長手方向運動およびこれらの組み合わせを抑制する。突出部349、ポケット228、係止タブ352、係止窓234、位置合わせリング350および位置合わせ溝部236等の1つまたは複数の回転防止機能部は、カテーテル300の動きを抑制して、カテーテルチューブ320の揺れ、ピストン運動および/またはねじれを抑制するという効果をもたらしている。さらに、1つまたは複数の回転防止機能部によって、臨床医は、視覚による確認を行わなくても、すなわち触覚による確認によって、カテーテル300が保持具200内に正しく着座していることを判断できる。これによって、固定装置100内にカテーテル300を正しく配置しやすくなるという効果が得られる。
【0043】
一実施形態では、カテーテル300が保持具200内に正しく着座したことを臨床医が視覚的に容易に確認できるように、保持具200やカテーテルアセンブリ300等の色とは異なる色を係止タブ352が有している。
図2Gに示すように、一実施形態では、保持具200は、透明、半透明または半透過性の材料で形成され、臨床医が、保持具200の下に配置されたカテーテル300の位置を確認できる。このため、保持具200に対してカテーテル300を容易に位置合わせできる。一実施形態では、保持具200は、溝部230と保持具200の外面との間を連通させる観察窓238または開口部を有しており、これによって、保持具200の下に配置されたカテーテル300を臨床医が観察できる。一実施形態では、カテーテル300の着色された部分が観察窓238と位置合わせされ、カテーテル300が保持具200内に正しく着座していることが示される。その結果、固定装置100内にカテーテル300を正しく配置しやすくなるという効果が得られる。
【0044】
本明細書に記載の1つまたは複数の回転防止機能部が設けられていることによって、使用者は、医療用ライン、注射器、延長セット等に対するカテーテルハブ310の取り外しを片手のみで行うことができる。カテーテルハブ310に接続されるコネクタをカテーテルハブ310に対して完全に係合または解放するためには、ある種のねじり運動が必要となる場合が多い。従来、臨床医は、カテーテルハブを片方の手で取り付け/取り外しながら、もう一方の手でカテーテルを安定させる必要があった。本明細書に開示の実施形態においては、カテーテル300が安定して配置され、使用者が片手でカテーテルハブに部材を取り外しできるようになっている。
【0045】
アンカーパッド
図3A~3Eに、アンカーパッド110および関連する構造の様々な詳細を示す。
図3Aおよび3Bに示すように、アンカーパッド110は、1つまたは複数の材料層から形成される。例えば、アンカーパッド110は、発泡体部124を有し、ポリエステル繊維、医療用ガーゼ等の被覆布地部126を有している。接着層128は、固定装置100を患者の皮膚表面50に接着できるように、皮膚に面したアンカーパッド110の底面に設けられる。一実施形態では、発泡体層124は、アンカーパッド100の一部にわたって延在している。一実施形態では、布地部126は、アンカーパッド110の一部分上に延在している。一実施形態では、接着層128は、アンカーパッドの一部分上に延在している。取り扱い時および輸送中に接着層128を保護するために、剥離ライナー130が接着層128上に配置される。
【0046】
一実施形態では、
図3Aおよび3Cに示すように、アンカーパッド110の外周122は、布地部126によって画定され、発泡体部124はアンカーパッド110の一部分のみに延在する。接着層128は、布地層126、発泡体層124またはこれらの組み合わせの下面に延在している。任意選択的に、アンカーパッド110の外周122は、発泡体部124によって画定されてもよく、布地部126はアンカーパッド110の一部分上に延在してもよい。
【0047】
一実施形態では、装着翼部210は、アンカーパッド110の上面に配置されて、アンカーパッド110に固定されている。一実施形態では、装着翼部210は、アンカーパッド110を形成している1つまたは複数の層の間に配置されて固定される。例えば、装着翼部210の一部分は、布地層126と発泡体層124との間、または発泡体層と接着層128との間に配置される。この場合、装着翼部210は、装着翼部210の上面および下面の両方でアンカーパッド110に装着される。これによって、装着翼部210がアンカーパッド110にさらに確実に固定される。上記のアンカーパッド構成の組み合わせおよび他の組み合わせも、本発明の範囲内に入る。
【0048】
一実施形態では、アンカーパッド110が、扇状縁部116、例えば、左扇状縁部116Aおよび右扇状縁部116Bを有している。扇状縁部116は、抗菌ディスク60および/または装着翼部210の一部分の曲率半径に一致するように構成される。ディスク60は、アンカーパッド110A,110Bのそれぞれの扇状縁部116A,116Bの間で受容され、挿入部位80の周囲の皮膚に接触する。
【0049】
保護パッド
図3A、3Cおよび3Dに示すように、一実施形態では、固定装置100が保護パッド110Cをさらに有している。保護パッド110Cは、左アンカーパッド110Aまたは右アンカーパッド110Bのいずれか、あるいは両方と一体的に形成してもよい。一実施形態では、保護パッド110Cは、アンカーパッド110A,110Bの構造とは別個の構造である。保護パッド110Cは、アンカーパッド110と類似の材料で形成してもよい。例えば、保護パッド110Cは発泡材料で形成される。一実施形態では、保護パッド110Cの下面の少なくとも一部分に接着層が配置されている。一実施形態では、保護パッド110Cは、アンカーパッド110A,110Bと同じ厚さを有する。一実施形態では、保護パッド110Cは、アンカーパッド110A,110Bとは異なる厚さを有している。一実施形態では、保護パッド110Cはアンカーパッド110A,110Bよりも厚く形成されているため、カテーテル300、延長セット70、保持具200またはこれらの組み合わせと、患者の皮膚との間のクッション性が向上されている。
【0050】
一実施形態においては、
図3Cおよび3Dに示されるように、保護パッド110Cは、左または右のアンカーパッド110A,110Bのいずれかに取り外し可能に取り付けられている。
図3Cおよび3Dに示すように、保護パッド110Cは引き裂き線118を有しており、これによって、アンカーパッド110から保護パッド110Cを容易に取り外すことができる。一実施形態では、一体的に形成された保護パッド110Cおよびアンカーパッド110に、穿孔、刻み目、レーザーカットライン等の引き裂き線118が形成される。一実施形態では、保護パッド110Cとアンカーパッド110とが別個の構造として形成され、接着、接合、溶接または引き裂き線118に沿った分離を容易に行える類似の好適な手法によって、引き裂き線118に沿って結合される。
【0051】
一実施形態では、保護パッド110Cの横方向中心軸線は、装置100の横方向中心軸線90と実質的に位置合わせされている。保護パッド110Cは、アンカーパッド110A,110Bの基端側縁部112から基端方向に延びている。一実施形態では、保護パッド110Cは、回転ナット72よりも基端側の地点まで延びている。また、保護パッド110Cは、中心軸線からカテーテル300の横方向縁部まで横方向に延びている。一実施形態では、保護パッド110Cは、回転ナット72の横方向最も外側の縁部まで延びる。一実施形態では、保護パッド110Cは、カテーテル300、延長セット70、回転ナット72またはこれらの組み合わせの最も外側の縁部を越えて延び、その結果、保護パッド110Cの幅は、医療部材の幅よりも大きい。保護パッド110Cは、カテーテル300に対する延長セット70の接続部の実質的に下側に位置するように配置される。
【0052】
保護パッド110Cは、保持具200、延長セット70、回転ナット72またはルアーロック等によって引き起こされる擦過傷、褥瘡等から患者の皮膚を保護するという効果をもたらす。例えば、回転ナット72は、把持を容易にするために突起またはリブを有している場合が多いが、このような突起は、患者の皮膚に直接押し付けられたり擦られたりすると、褥瘡を引き起こす可能性がある。延長セット70、カテーテルハブ310もしくは保持具200の他の部分またはこれらの間の接続部分にも、患者に対して同様の問題を引き起こすおそれのある突起や縁部等が設けられている場合もある。保護パッド110Cは、このような外傷から患者の皮膚を保護する。さらに、保護パッド110Cは、パッドが不要である場合や医療部材の邪魔になる場合は、容易に取り外すことができる。
【0053】
保護パッド110Cは、その上面の少なくとも一部に配置された剥離剤をさらに有している。一実施形態では、剥離剤は、上面に配置された層として形成されるか、保護パッド110Cを形成する材料に混合される。剥離剤は、接着剤が保護パッド110Cの上面に付着することを防止する。例えば、固定装置100の一部は、バリアとして機能して感染を防ぐポリウレタン製の手当用品で覆われている場合がある。このような手当用品は、装置、カテーテル、関連構造および患者の皮膚表面に接着するための接着性下面を有している場合が多い。手当用品が除去される際には、保護パッド110Cの上面に手当用品が接着されることが剥離剤によって防止される。その結果、手当用品が除去されるときに、手当用品と保護パッドの間に配置された医療部材の一部が妨害されないため、患者の不快感、カテーテルの脱落、流体の流れの妨害等が回避される。
【0054】
剥離ライナー
図3A~3Eを参照して、一実施形態においては、アンカーパッド110の下面に剥離ライナー130が配置されている。例えば、左剥離ライナー130Aおよび右剥離ライナー130Bは、それぞれ、左アンカーパッド110Aおよび右アンカーパッド110Bの下面に配置されている。一実施形態では、剥離ライナー130A,130Bは、第1の部分132および第2の部分134をそれぞれ有している。第1の部分132は、アンカーパッド110の外縁部144から装置100の中心軸線90に向かって、アンカーパッドの横方向内縁部142まで横方向に延びている。一実施形態では、第1の部分132は、アンカーパッド110の下面全体および下面上に配置された接着層を覆うように、アンカーパッド110の外周形状に似た外周形状を有している。一実施形態では、第1の部分132の外周は、少なくとも1つの縁部に沿ってアンカーパッド110の外周を越えて延びている。このため、剥離ライナー130は、アンカーパッドの縁面およびその上に配置された接着層も保護している。例えば、
図3Cに示すように、右剥離ライナー130Bの第1の部分132Bは、右アンカーパッド110Bの外周形状に似た外周形状を有し、さらに、第1の部分132Bの右側の外周は、アンカーパッド110の外周116を越えて横方向に延びて、アンカーパッド110の側面を保護している。
【0055】
一実施形態では、剥離ライナー130の第1および第2の部分132,134は、アンカーパッド110の横方向内縁部142に沿って配置された接合線に沿って取り付けられる。一実施形態では、接合線は、中心軸線90の近傍の剥離ライナー130の縁部に沿って延びているが、剥離ライナー130の他の縁部であっても本発明の範囲内である。一実施形態では、第1および第2の部分132,134は別々に形成され、接着、接合、溶接、機械的留め具または類似の好適な取り付け手段を用いて接合線に沿って取り付けられる。一実施形態では、第1および第2の部分132,134が単一の一体成型品130として形成され、接合線142は、折り畳み、刻み目、穿孔、レーザー切断または類似の好適な方法によって一体成型品130に形成される。
【0056】
一実施形態において、第2の部分134は、横方向内縁部142に沿った接合線から、アンカーパッド110の横方向外縁部144まで延びる。一実施形態では、第2の部分134は、アンカーパッド110の横方向外縁部144を越えて横方向に延びる。例えば、
図3Cに示すように、右剥離ライナー130Bの第2の部分134Bは、横方向内縁部142Bに配置された接合線から、アンカーパッド110Bの横方向外縁部144Bを横方向に越えた地点まで延びている。一実施形態では、第2の部分134の外周形状は、第1の部分132の外周形状に類似しているため、2つの部分が結合されて互いに折り合わされたときに、第1および第2の部分132,134は実質的に類似の外周形状を有している。一実施形態においては、第1および第2の部分132,134が、互いに異なる外周形状を有している。一実施形態では、第2の部分134は、横方向内縁部142から横方向外縁部144を越えて延びて、右プルタブ136B等のプルタブ136を形成している。一実施形態では、プルタブ136は、単一の一体成型品として第2の部分134と一体的に、同じ材料から形成される。一実施形態では、プルタブ136は、第2の部分134とは別個の構造であり、接着、接合、溶接または類似の好適な取り付け手段を用いて接続される。このように、プルタブ136は、剥離ライナー130の材料とは異なる材料で形成してもよく、異なる色、質感または機械的特性等の異なる特性を有していてもよい。
【0057】
留め機能部
図1A、1Bおよび3C~3Eに示されるように、一実施形態では、剥離ライナー130が、アンカーパッド110の横方向外縁部144の近傍に位置する留め機能部138を有している。留め機能部138は、第2の部分134、プルタブ136またはこれらの組み合わせを、使用者がアクセス可能であり、第2の部分134が溝部230の開口232を塞ぐことを防止する所定の位置に維持するように構成される。一実施形態では、留め機能部138は、アンカーパッド110の横方向外縁部144、第1の部分132の横方向外縁部またはこれらの組み合わせに対して第2の部分134を解放可能に取り付けることができる。一実施形態では、留め機能部138は、第2の部分134に取り付けられたフラップであり、中心軸線90に向かって延びる。一実施形態では、留め機能部138は、第2の部分134とは別個の構造であり、接着、接合、溶接または類似の好適な取り付け手段を用いて取り付けられる。
【0058】
図3Dに示すように、留め機能部138は、剥離ライナー130の一部分に形成されたU字形の切れ目であってもよい。フラップの他の形状およびサイズも本発明の範囲内である。一実施形態では、留め機能部138のフラップは、剥離ライナーの第2の部分134に実質的にU字形の打ち抜きフラップを形成することによって、第2の部分138と一体的に形成される。
【0059】
図3Eに示すように、一実施形態では、留め機能部138が、剥離ライナーの第1の部分132の開口部140として形成される。例えば、留め機能部138Aは、左剥離ライナーの第1の部分132Aに配置された開口部140Aを有している。開口部によって、アンカーパッド110Aの下面に配置された接着層128の一部分が露出される。剥離ライナーの第2の部分134Bは、折り返されて開口部140A上に配置される。第2の部分134Aの表面がアンカーパッド110Aの接着層128の一部分に接着されることによって、第2の部分134Aがアンカーパッド110Aに対して解放可能に取り付けられる。一実施形態では、留め機能部138は、剥離ライナーの第1および第2の部分132,134の間に配置された接着箇所を有している。
【0060】
本明細書に記載される留め機能部138の実施形態は、第1の部分132およびアンカーパッド110の近傍に第2の部分134を保持する。このため、第2の部分134が装置から下向きに突出して、物体に引っ掛かったり、下側の長手方向開口232を塞いだりすることが防止されている。例えば、
図1A、1Bおよび2Hに示されるように、留め機能部138の実施形態は、第2の部分134を第1の部分132に対して実質的に平坦に保持しているため、装置の保持具200に対して医療部材の出入りを行うための経路に障害が存在しない。
【0061】
使用方法
例示的な使用方法では、本明細書に記載されるように、保持具200、アンカーパッド110および剥離ライナー130を含むカテーテル固定装置100が提供される。カテーテル300の先端部は、患者の血管系に挿入される。次に、カテーテル300の外側部分が、固定装置100によって安定して保持される。装置100がカテーテルの外側部分まで下げられる際に、剥離ライナーの第2の部分134は、留め機能部138によって略水平方向に維持されるため開口232を塞ぐことがない。留め機能部138はまた、剥離ライナーの第1の部分およびアンカーパッド110を越えて横方向に延びるプルタブ138の位置を維持する。
【0062】
固定装置100が患者の皮膚表面に正しく配置された状態で、臨床医は、プルタブ136をつかみ、剥離ライナーの第2の部分134を横方向外向きに付勢する。これによって、留め機能部138が、剥離ライナーの第1の部分132/アンカーパッド110から外れる。横方向内縁部142の接合線で第1の部分132にも取り付けられている第2の部分134は、横方向内縁部142から横方向外縁部144に向かってアンカーパッド110から第1の部分を剥離し、患者の皮膚表面に対して、接着層を露出させる。左右のアンカーパッドは、順番に患者の皮膚に接着される。
【0063】
本発明の実施形態は、本開示の精神から逸脱することなく、他の特定の形態で具体化できる。記載された実施形態は、すべての点で例示としてみなされ、限定的ではない。したがって、実施形態の範囲は、上記の説明ではなく、添付の特許請求の範囲によって示される。特許請求の範囲の意味および同等性の範囲内にあるすべての変更は、それらの範囲内に含まれる。