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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】熱伝導性シリコーン組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20240528BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240528BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20240528BHJP
   C08K 5/549 20060101ALI20240528BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20240528BHJP
   C09K 5/14 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
C08L83/07
C08K3/013
C08K3/22
C08K5/549
C08L83/05
C09K5/14 102E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021573527
(86)(22)【出願日】2019-06-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-17
(86)【国際出願番号】 CN2019092285
(87)【国際公開番号】W WO2020252773
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ホン、トーポー
(72)【発明者】
【氏名】シン、チョン
(72)【発明者】
【氏名】リウ、チーティン
【審査官】前田 直樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/155950(WO,A1)
【文献】特開2011-089079(JP,A)
【文献】特開2013-189498(JP,A)
【文献】特開2009-235279(JP,A)
【文献】国際公開第2018/025600(WO,A1)
【文献】特開2001-261963(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08K
C09K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)25℃で10~100,000mm/sの動粘度を有し、1分子当たり2~12個の炭素原子を有する少なくとも2つのケイ素原子結合アルケニル基を有する100質量部の液体オルガノポリシロキサンと、
(B)5~50μmの平均粒径を有する100~500質量部の熱伝導性充填剤と、
(C)少なくとも0.1μm及び5μm未満の平均粒径を有する10~100質量部の熱伝導性充填剤と、
(D)以下の一般式:
【化1】
(式中、Rが1~6個の炭素原子を有するアルキル基又は1~3個の炭素原子を有するアルコキシ基であり、Rが同じ若しくは異なる水素原子又は1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり、Rが同じであるか又は異なり、以下の一般式:
-R-SiR (OR(3-a)
-R-O-Rによって表される基から選択され、
式中、Rが1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり、Rが1~3個の炭素原子を有するアルキル基であり、Rが2~6個の炭素原子を有するアルキレン基又は4~12個の炭素原子を有するアルキレンオキシアルキレン基であり、Rが2~6個の炭素原子を有するアルキレン基であり、Rが、1~6個の炭素原子を有するアルキル基、2~6個の炭素原子を有するアルケニル基、又は2~6個の炭素原子を有するアシル基であり、「a」が0、1、又は2である)によって表される0.1~5質量部のカルバシラトラン誘導体と、を含み、
前記成分(B)が、水酸化アルミニウムであり、及び
前記成分(C)が、水酸化アルミニウムである、熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項2】
成分(D)が、以下の式:
【化2】
によって表されるカルバシラトラン誘導体である、請求項1に記載の熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項3】
(E)1分子当たり少なくとも1つのケイ素原子結合水素原子を有し、成分(A)の100質量部当たり1~30質量部の量で、部分(I)を形成するオルガノシロキサンを更に含む、請求項1に記載の熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項4】
(F)部分(II)を形成する、触媒量のヒドロシリル化反応触媒を更に含む、請求項1に記載の熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項5】
(G)25℃で1~100mm/sの動粘度を有し、成分(A)の100質量部当たり1~30質量部の量で、アルケニル基及びケイ素原子結合水素原子を含まない液体オルガノシロキサンを更に含む、請求項3又は4に記載の熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項6】
請求項に記載の部分(I)及び請求項に記載の部分(II)を含む硬化性熱伝導性シリコーン組成物であって、前記組成物が、
(A)25℃で10~100,000mm/sの動粘度を有し、1分子当たり2~12個の炭素原子を有する少なくとも2つのケイ素原子結合アルケニル基を有する100質量部の液体オルガノポリシロキサンと、
(B)5~50μmの平均粒径を有する100~500質量部の熱伝導性充填剤と、
(C)少なくとも0.1μm及び5μm未満の平均粒径を有する10~100質量部の熱伝導性充填剤と、
(D)以下の一般式:
【化3】
(式中、Rが1~6個の炭素原子を有するアルキル基又は1~3個の炭素原子を有するアルコキシ基であり、Rが同じ若しくは異なる水素原子又は1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり、Rが同じであるか又は異なり、以下の一般式:
-R-SiR (OR(3-a)
-R-O-Rによって表される基から選択され、
式中、Rが1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり、Rが1~3個の炭素原子を有するアルキル基であり、Rが2~6個の炭素原子を有するアルキレン基又は4~12個の炭素原子を有するアルキレンオキシアルキレン基であり、Rが2~6個の炭素原子を有するアルキレン基であり、Rが、1~6個の炭素原子を有するアルキル基、2~6個の炭素原子を有するアルケニル基、又は2~6個の炭素原子を有するアシル基であり、「a」が0、1、又は2である)によって表される0.1~5質量部のカルバシラトラン誘導体と、
(E)1分子当たりの少なくとも1つのケイ素原子結合水素原子を有する1~30質量部のオルガノシロキサンと、
(F)触媒量のヒドロシリル化反応触媒と、を含み、
前記成分(B)が、水酸化アルミニウムであり、及び
前記成分(C)が、水酸化アルミニウムである、硬化性熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項7】
(G)25℃で1~100mm/sの動粘度を有し、成分(A)の100質量部当たり1~30質量部の量で、アルケニル基及びケイ素原子結合水素原子を含まない液体オルガノシロキサンを更に含む、請求項に記載の硬化性熱伝導性シリコーン組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性シリコーン組成物に関し、より具体的には、高熱伝導性を示すために多量の熱伝導性充填剤を含有するにもかかわらず、優れた貯蔵安定性及び取り扱い性を示す熱伝導性シリコーン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒドロシリル化反応によって硬化することができる熱伝導性シリコーン組成物は、優れた耐熱性を有する熱伝導性シリコーン材料を形成し、したがって様々な用途で使用される。例えば、このような熱伝導性シリコーン組成物として、特許文献1は、オルガノポリシロキサン、10μm以下の平均粒径を有する水酸化アルミニウム粉末、酸化アルミニウム粉末、白金又は白金化合物、及び硬化剤を含む熱伝導性シリコーンゴム組成物について記載する。
【0003】
特許文献2は、0.5~5μmの平均粒径を有する水酸化アルミニウム粉末と、6~20μmの平均粒径を有する水酸化アルミニウム粉末と、を含む1~15μmの平均粒径を有する水酸化アルミニウム粉末混合物(混合後)、オルガノポリシロキサン、及び0.5~100μmの平均粒径を有する酸化アルミニウム粉末を含む熱伝導性シリコーングリース組成物について記載する。
【0004】
特許文献3は、1分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、1分子当たり少なくとも2つのケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、70質量%以下の水酸化アルミニウム粉末で構成される熱伝導性充填剤、及び白金系触媒を含む熱伝導性シリコーン組成物について記載する。
【0005】
特許文献4は、1分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、1分子当たり少なくとも2つのケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、25質量%以下のアルミナ及び60質量%以下の水酸化アルミニウム粉末で構成される熱伝導性充填剤、並びに白金系触媒を含む熱伝導性シリコーン組成物について記載する。
【0006】
このような熱伝導性シリコーン組成物は、ケイ素原子結合水素原子及び白金塩基触媒を有するオルガノポリシロキサンが1つの部分に存在せず、ケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンは、白金塩基触媒とは異なる部分に存在する、2つの部分で調製される。
【0007】
このような熱伝導性シリコーン組成物の熱伝導性を増加させるために、組成物中の水酸化アルミニウムの含有量を増加させる必要がある。しかしながら、これは、シリコーン組成物の各部分の貯蔵安定性及び取り扱い性に関して問題をもたらし、すなわち、水酸化アルミニウムがシリコーン組成物から沈殿し、ケークになる。
【0008】
一方、特許文献5は、1分子当たり少なくとも2つのケイ素原子結合アルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、両方の分子鎖末端にのみケイ素原子結合水素原子を有するSiH官能性ジオルガノポリシロキサン、1分子当たり少なくとも3つのケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン、カルバシラトラン誘導体、及び白金触媒を含むシリコーンゴム組成物について記載する。
【0009】
しかしながら、上記の文献は、具体的には、5~50μmの平均粒径を有する水酸化アルミニウム粉末と、少なくとも0.1μm及び5μm未満の平均粒径を有する水酸化アルミニウムと、を含む熱伝導性シリコーン組成物を説明する。代替的に、上記の文献は、高熱伝導性を示すために多量の熱伝導性充填剤を含有するにもかかわらず、優れた貯蔵安定性及び取り扱い性を示す熱伝導性シリコーン組成物への関心がない。
【0010】
先行技術文献
特許文献
特許文献1:特開平05-140456(A)号公報
特許文献2:特開2010-100665(A)号公報
特許文献3:特開2011-089079(A)号公報
特許文献4:特開2011-178821(A)号公報
特許文献5:米国特許出願公開第2001/0034403(A1)号
【発明の概要】
【0011】
発明が解決しようとする課題
本発明の目的は、高熱伝導性を示すために多量の熱伝導性充填剤を含有するにもかかわらず、優れた貯蔵安定性及び取り扱い性を示す熱伝導性シリコーン組成物を提供することである。
【0012】
課題を解決するための手段
本発明の熱伝導性シリコーン組成物は、
(A)25℃で10~100,000mm/sの動粘度を有し、1分子当たり2~12個の炭素原子を有する少なくとも2つのケイ素原子結合アルケニル基を有する100質量部の液体オルガノポリシロキサンと、
(B)5~50μmの平均粒径を有する100~500質量部の熱伝導性充填剤と、
(C)少なくとも0.1μm及び5μm未満の平均粒径を有する10~100質量部の熱伝導性充填剤と、
(D)以下の一般式:
【化1】
(式中、Rは1~6個の炭素原子を有するアルキル基又は1~3個の炭素原子を有するアルコキシ基であり、Rは同じ若しくは異なる水素原子又は1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり、Rは同じであるか、又は異なり、以下の一般式:
-R-SiR (OR(3-a)
-R-O-Rによって表される基から選択され、
式中、Rは1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり、Rは1~3個の炭素原子を有するアルキル基であり、Rは2~6個の炭素原子を有するアルキレン基又は4~12個の炭素原子を有するアルキレンオキシアルキレン基であり、Rは2~6個の炭素原子を有するアルキレン基であり、Rは、1~6個の炭素原子を有するアルキル基、2~6個の炭素原子を有するアルケニル基、又は2~6個の炭素原子を有するアシル基であり、「a」は0、1、又は2である)によって表される0.1~5質量部のカルバシラトラン誘導体と、を含む。
【0013】
組成物において、成分(B)は、典型的には、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、又は酸化亜鉛から選択される。
【0014】
組成物において、成分(C)は、典型的には、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、又は酸化亜鉛から選択される。
【0015】
組成物において、成分(B)及び(C)は、典型的には、成分(A)の存在下で表面処理剤で表面処理され、次いで成分(D)は成分(A)~(C)の混合物に添加される。
【0016】
表面処理剤は、典型的には、ヘキサメチルジシラザン、テトラメチルジビニルジシラザン、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、又はジクロロジメチルシランから選択される。
【0017】
組成物において、成分(D)は、典型的には、以下の式:
【化2】
によって表されるカルバシラトラン誘導体である。
【0018】
熱伝導性シリコーン組成物は、(E)1分子当たり少なくとも1つのケイ素原子結合水素原子を有し、成分(A)の100質量部当たり1~30質量部の量で、部分(I)を形成するオルガノシロキサンを含んでもよく、更に、(G)25℃で1~100mm/sの動粘度を有し、成分(A)の100質量部当たり1~30質量部の量で、アルケニル基及びケイ素原子結合水素原子を含まない液体オルガノシロキサンを含んでもよい。
【0019】
熱伝導性シリコーン組成物は、(F)部分(II)を形成する、触媒量のヒドロシリル化反応触媒を含んでもよく、更に、(G)25℃で1~100mm/sの動粘度を有し、成分(A)の100質量部当たり1~30質量部の量で、アルケニル基及びケイ素原子結合水素原子を含まない液体オルガノシロキサンを含んでもよい。
【0020】
本発明の硬化性熱伝導性シリコーン組成物は、上記の部分(I)及び上記の部分(II)を含み、前述の組成物は、
(A)25℃で10~100,000mm/sの動粘度を有し、1分子当たり2~12個の炭素原子を有する少なくとも2つのケイ素原子結合アルケニル基を有する100質量部の液体オルガノポリシロキサンと、
(B)5~50μmの平均粒径を有する100~500質量部の熱伝導性充填剤と、
(C)少なくとも0.1μm及び5μm未満の平均粒径を有する10~100質量部の熱伝導性充填剤と、
(D)以下の一般式:
【化3】
(式中、Rは1~6個の炭素原子を有するアルキル基又は1~3個の炭素原子を有するアルコキシ基であり、Rは同じ若しくは異なる水素原子又は1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり、Rは同じであるか又は異なり、以下の一般式:
-R-SiR (OR(3-a)
-R-O-Rによって表される基から選択され、
式中、Rは1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり、Rは1~3個の炭素原子を有するアルキル基であり、Rは2~6個の炭素原子を有するアルキレン基又は4~12個の炭素原子を有するアルキレンオキシアルキレン基であり、Rは2~6個の炭素原子を有するアルキレン基であり、Rは、1~6個の炭素原子を有するアルキル基、2~6個の炭素原子を有するアルケニル基、又は2~6個の炭素原子を有するアシル基であり、「a」は0、1、又は2である)によって表される0.1~5質量部のカルバシラトラン誘導体と、
(E)1分子当たりの少なくとも1つのケイ素原子結合水素原子を有する1~30質量部のオルガノシロキサンと、
(F)触媒量のヒドロシリル化反応触媒と、を含む。
【0021】
組成物において、成分(B)は、典型的には、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、又は酸化亜鉛から選択される。
【0022】
組成物において、成分(C)は、典型的には、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、又は酸化亜鉛から選択される。
【0023】
硬化性熱伝導性シリコーン組成物は、(G)25℃で1~100mm/sの動粘度を有し、成分(A)の100質量部当たり1~30質量部の量で、アルケニル基及びケイ素原子結合水素原子を含まない液体オルガノシロキサンを含んでもよい。
【0024】
発明の効果
本発明の熱伝導性シリコーン組成物は、高熱伝導性を示すために多量の熱伝導性充填剤を含有するにもかかわらず、優れた貯蔵安定性及び取り扱い性を示す。
【0025】
定義
「含むこと(comprising)」又は「含む(comprise)」という用語は、本明細書において、それらの最も広い意味で、「含むこと(including)」、「含む(include)」、「から本質的になる(consist(ing)essentially of)」、及び「からなる(consist(ing)of)」)という見解を意味し、包含するように使用されている。実例を列記する「例えば(for example)」「例えば(e.g.,)」、「例えば/など(such as)」及び「が挙げられる(including)」の使用は、列記されている例のみに限定しない。したがって、「例えば(for example)」又は「例えば(such as)」は、「例えば、それらに限定されないが(for example,but not limited to)」又は「例えば、それらに限定されないが(such as,but not limited to)」を意味し、他の類似した、又は同等の例を包含する。本明細書で使用されている「約(about)」という用語は、機器分析により測定した、又は試料を取り扱った結果としての数値のわずかな変動を、合理的に包含若しくは説明する働きをする。このようなわずかな変動は、数値の±0~25%、±0~10%、±0~5%、又は±0~2.5%程度であり得る。更に、「約」という用語は、ある範囲の値に関連する場合、数値の両方に当てはまる。更に、「約」という用語は、明確に記載されていない場合であっても、数値に当てはまることがある。
【0026】
添付の特許請求の範囲は、詳細な説明に記載されている表現、及び特定の化合物、組成物又は方法に限定されず、これらは、添付の特許請求の範囲内にある特定の実施形態の間で変化し得ることが、理解されるべきである。様々な実施形態の詳細な特徴又は態様について記載している、本明細書で依拠とされたいずれかのマーカッシュ群に関しては、異なる、特別な、及び/又は想定外の結果が、他の全マーカッシュ要素とは無関係のそれぞれのマーカッシュ群の各要素から得ることができることは理解されるべきである。マーカッシュ群の各要素は、個々に、及び、又は組み合わされて依拠とされ得、添付の特許請求の範囲内で、特定の実施形態に適切な根拠を提供し得る。
【0027】
本発明の様々な実施形態の記載を依拠とする任意の範囲及び部分的範囲は、独立して、及び包括的に、添付の特許請求の範囲内にあることも理解されるべきであり、整数値及び/又は分数値を含む全ての範囲を、そのような値が本明細書で明確に書かれていなくても、説明し、想定することが理解される。当業者であれば、列挙された範囲及び部分的範囲が、本発明の様々な実施形態を十分に説明し、可能にし、そのような範囲及び部分的範囲は、更に関連性がある2等分、3等分、4等分、5等分などに描かれ得ることを容易に認識する。単なる一例として、「0.1~0.9」の範囲は、更に、下方の3分の1、すなわち、0.1~0.3、中央の3分の1、すなわち、0.4~0.6、及び上方の3分の1、すなわち、0.7~0.9に描かれ得、これらは、個々に、及び包括的に、添付の特許請求の範囲内であり、個々に、及び/又は包括的に依拠とされ得、添付の特許請求の範囲内で、具体的な実施形態を十分に裏付けることができる。更に、範囲を定義する、又は修飾する言葉、例えば「少なくとも」、「超」「未満」「以下」などに関して、そのような言葉は、部分範囲及び/又は上限若しくは下限を含むと理解されるべきである。別の例として、「少なくとも10」の範囲は、少なくとも10~35の部分範囲、少なくとも10~25の部分範囲、25~35の部分範囲などを本質的に含み、各部分範囲は、個々に、及び/又は包括的に依拠とされ得、添付の特許請求の範囲内で、特定の実施形態を十分に裏付けるものである。最終的に、開示した範囲内の個々の数が依拠とされ得、添付の特許請求の範囲内で、特定の実施形態を十分に裏付けることができる。例えば、「1~9」の範囲は、様々な個々の整数、例えば3、並びに、小数点を含む個々の数(又は分数)、例えば4.1を含み、これは、依拠とされ得、添付の特許請求の範囲内で、特定の実施形態を十分に裏付けることができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の熱伝導性シリコーン組成物について詳細に説明する。
【0029】
成分(A)は、本組成物中の主成分であり、1分子当たり2~12個の炭素原子を有する少なくとも2つのケイ素原子結合アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンである。アルケニル基の例としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、及びドデセニル基が挙げられ、その中でもビニル基が好ましい。更に、成分(A)中のアルケニル基以外のケイ素原子に結合する基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、及びドデシル基などの1~12個の炭素原子を有するアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、及びナフチル基などの6~20個の炭素原子を有するアリール基;ベンジル基、フェネチル基、及びフェニルプロピル基などの7~20個の炭素原子を有するアラルキル基;並びに、上記基の中の水素原子の一部又は全部がフッ素原子、塩素原子、又は臭素原子などのハロゲン原子で置換された基が挙げられる。更に、成分(A)中のケイ素原子は、本発明の目的を損なわない範囲で、少量のヒドロキシル基又はアルコキシ基、例えばメトキシ基又はエトキシ基を有してもよい。
【0030】
成分(A)の分子構造の例としては、直鎖状構造、一部分岐を有する直鎖状構造、分岐鎖状構造、環状構造、及び三次元網状構造が挙げられる。成分(A)は、これらの分子構造を有するオルガノポリシロキサンの1種であってもよく、又はこれらの分子構造を有する2種以上のオルガノポリシロキサンの混合物であってもよい。
【0031】
成分(A)の例としては、分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端がメチルフェニルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン及びメチルフェニルシロキサンのコポリマー、分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン及びメチルフェニルシロキサンのコポリマー、分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン及びメチルビニルシロキサンのコポリマー、分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン及びメチルビニルシロキサンのコポリマー、分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたメチル(3,3,3-トリフルオロプロピル)ポリシロキサン、分子鎖両末端がシラノール基で封鎖されたジメチルシロキサン及びメチルビニルシロキサンのコポリマー、分子鎖両末端がシラノール基で封鎖されたジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端がシラノール基で封鎖されたジメチルシロキサン及びメチルフェニルシロキサンのコポリマー、式:CHSiO3/2によって表されるシロキサン単位及び式:(CHSiO2/2によって表されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン、式:CSiO3/2によって表されるシロキサン単位及び式:(CHSiO2/2によって表されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン、式:(CHSiO1/2によって表されるシロキサン単位、式:CHSiO3/2によって表されるシロキサン単位、及び式:(CHSiO2/2によって表されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン、式:(CHSiO1/2によって表されるシロキサン単位、式:(CH(CH=CH)SiO1/2によって表されるシロキサン単位、式CHSiO3/2によって表されるシロキサン単位、及び式:(CHSiO2/2によって表されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン、並びにこれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。
【0032】
代替的に、成分(A)の25℃での動粘度は、約10~約100,000mm/sの範囲、好ましくは10~50,000mm/sの範囲、代替的に10~10,000mm/sの範囲、代替的に50~10,000mm/sの範囲である。これは、成分(A)の動粘度が上記範囲の下限以上である場合、シリコーン組成物を硬化させることによって得られたシリコーン製品の機械的特性が改善され、成分(A)の動粘度が上記範囲の上限以下である場合、シリコーン組成物の取り扱い性が改善されるという理由による。
【0033】
成分(B)は、約5~約50μmの平均粒径を有し、好ましくは約5~約40μmの平均粒径を有し、代替的に約5~約30μmの平均粒径を有し、代替的に約10~約40μmの平均粒径を有し、代替的に約10~約20μmの平均粒径を有する熱伝導性充填剤である。これは、成分(B)の平均粒径が上記の範囲である場合、シリコーン組成物の熱伝導性特性が改善されるという理由による。
【0034】
成分(B)は限定されないが、好ましくは、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、又は酸化亜鉛から選択される。
【0035】
成分(B)の含有量は、成分(A)の100質量部に対して、約100~約500質量部の範囲、好ましくは約100~約400質量部の範囲、代替的に約100~約300質量部の範囲、代替的に約150~約300質量部の範囲、代替的に約150~約250質量部の範囲である。これは、成分(B)の含有量が上記範囲の下限以上である場合、シリコーン組成物の熱伝導性特性が改善され、成分(B)の含有量が上記範囲の上限以下である場合、硬化性シリコーン組成物の取り扱い性が改善されるという理由による。
【0036】
成分(C)は、少なくとも0.1μm及び約5μm未満の平均粒径を有し、好ましくは約0.1~約4μmの平均粒径を有し、代替的に約0.1~約3μmの平均粒径を有し、代替的に約0.5~約4μmの平均粒径を有し、代替的に約0.5~約3μmの平均粒径を有する熱伝導性充填剤である。これは、成分(C)の平均粒径が上記の範囲である場合、シリコーン組成物の熱伝導性特性が改善されるという理由による。
【0037】
成分(C)は限定されないが、好ましくは、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、又は酸化亜鉛から選択される。
【0038】
成分(C)の含有量は、成分(A)の100質量部に対して、約10~約100質量部の範囲、好ましくは約20~約100質量部の範囲、代替的に約30~約100質量部の範囲、代替的に約40~約100質量部の範囲、代替的に約50~約100質量部の範囲である。これは、成分(C)の含有量が上記範囲の下限以上である場合、シリコーン組成物の熱伝導性特性が改善され、成分(D)の含有量が上記範囲の上限以下である場合、硬化性シリコーン組成物の取り扱い性が改善されるという理由による。
【0039】
成分(B)及び(C)は、典型的には、成分(A)の存在下で、好ましくは60~250℃での加熱下、又は100~200℃で加熱下で表面処理剤で表面処理される。
【0040】
表面処理剤は限定されないが、オルガノジシラザン、アルケニル基含有アルコキシシラン、アルキル基含有ルキオキシシラン、アルコキシ官能性オリゴシロキサン、環状ポリオルガノシロキサン、ヒドロキシル官能性オリゴシロキサン、オルガノクロロシラン、又はこれらの少なくとも2つの任意の組み合わせによって例示される。オルガノジシラザンは、ヘキサメチルジシラザン、1,3-ジビニル-トリメチルジシラザン、又はこれらの任意の2つ以上の混合物であってもよい。アルケニル基含有アルコキシシランは、ビニルトリメトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルメチルジメトキシシアン、又はこれらの任意の2つ以上の混合物であってもよい。アルキル基含有アルコキシシランは、メチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、テトラデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、又はこれらの少なくとも2つの任意の組み合わせであってもよい。アルコキシ官能性オリゴシロキサンは、(CHO)Si[(OSi(CH]C17、(CHO)Si[(OSi(CH1017、(CHO)Si[(OSi(CH]C1225、(CHO)Si[(OSi(CH101225、又はこれらの少なくとも2つの任意の組み合わせであってもよい。ヒドロキシル官能性オリゴシロキサンは、ジメチルシロキサン又はメチルフェニルシロキサンであってもよい。オルガノクロロシランは、メチルトリクロロシラン、ジエチルジクロロシラン、又はトリメチルクロロシランであってもよい。
【0041】
表面処理剤の量は、成分(B)及び(C)を処理するのに十分な任意の量である。特定の量は、選択される特定の処理剤、並びに処理される成分(B)及び(C)のための未処理の熱伝導性充填剤の表面積及び量などの要因に応じて変化してもよい。処理有効量は、成分(A)~(C)の質量に基づいて、0.01質量%~20質量%、代替的に0.1質量%~15質量%、代替的に0.5質量%~5質量%の範囲であってもよい。
【0042】
成分(D)は、以下の一般式:
【化4】
によって表されるカルバシラトラン誘導体である。
【0043】
式中、Rは1~6個の炭素原子を有するアルキル基又は1~3個の炭素原子を有するアルコキシ基である。アルキル基は、メチル基、エチル基、及びプロピル基によって例示されるが、経済効率及び耐熱性の観点からメチル基が好ましい。アルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、及びプロポキシ基によって例示される。
【0044】
式中、Rは同じ若しくは異なる水素原子又は1~6個の炭素原子を有するアルキル基である。アルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、及びヘキシル基によって例示されるが、経済効率及び耐熱性の観点からメチル基が好ましい。
【0045】
式中、Rは同じであるか又は異なり、以下の一般式:
-R-SiR (OR(3-a)
-R-O-Rによって表される基から選択される。
【0046】
式中、Rは1~6個の炭素原子を有するアルキル基である。アルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、及びヘキシル基によって例示されるが、メチル基が好ましい。
【0047】
式中、Rは1~3個の炭素原子を有するアルキル基である。アルキル基は、メチル基、エチル基、及びプロピル基によって例示される。
【0048】
式中、Rは2~6個の炭素原子を有するアルキレン基又は4~12個の炭素原子を有するアルキレンオキシアルキレン基である。アルキレン基は、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、及びオクチレン基によって例示されるが、経済効率の観点から、エチレン基及びプロピレン基が好ましい。アルキレンオキシアルキレン基は、エチレンオキシエチレン基、プロピレンオキシエチレン基、ブチレンオキシプロピレン基、及びプロピレンオキシプロピレン基によって例示されるが、経済効率の観点から、エチレンオキシプロピレン基及びプロピレンオキシプロピレン基が好ましい。
【0049】
式中、Rは2~6個の炭素原子を有するアルキレン基である。アルキレン基は、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、及びオクチレン基によって例示されるが、経済効率の観点から、エチレン基及びプロピレン基が好ましい。
【0050】
式中、Rは、1~6個の炭素原子を有するアルキル基、2~6個の炭素原子を有するアルケニル基、又は2~6個の炭素原子を有するアシル基である。アルキル基は、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、及びヘキセニル基によって例示されるが、アリル基が好ましい。アシル基は、アセチル基、プロピオニル基、アクリル基、メタクリル基、ブチリル基、イソブチリル基によって例示されるが、アセチル基が好ましい。
【0051】
式中、「a」は0、1、又は2であり、好ましくは0又は1である。
【0052】
成分(D)のカルバシラトラン誘導体は、以下の式:
【化5】
によって表される化合物によって例示される。
【0053】
このようなカルバシラトラン誘導体を合成する方法は、公知である。日本特許第3831481(B2)号及び米国特許第8,101,677(B2)号の開示は、カルバシラトラン誘導体の調製を示すために参照により本明細書に組み込まれる。
【0054】
成分(D)の含有量は、成分(A)の100質量部のオルガノポリシロキサンに対して、約0.1~約5質量部の量、好ましくは約0.1~約3質量部の量、代替的に約0.1~約2質量部の量である。これは、成分(D)の含有量が上記範囲の下限以上である場合、シリコーン組成物のチキソトロピック特性が改善され、成分(D)の含有量が上記範囲の上限以下である場合、シリコーン材料の熱伝導性特性が改善されるという理由による。
【0055】
組成物は、組成物の硬化性を改善するために、1分子当たり少なくとも1つのケイ素原子結合水素原子を有するオルガノシロキサンを含み、部分(I)を形成してもよい。成分(E)中の水素原子以外のケイ素原子に結合する基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、及びドデシル基などの1~12個の炭素原子を有するアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、及びナフチル基などの6~20個の炭素原子を有するアリール基;ベンジル基、フェネチル基、及びフェニルプロピル基などの7~20個の炭素原子を有するアラルキル基;並びに、上記基の中の水素原子の一部又は全部がフッ素原子、塩素原子、又は臭素原子などのハロゲン原子で置換された基が挙げられる。更に、成分(E)中のケイ素原子は、本発明の目的を損なわない範囲で、少量のヒドロキシル基又はアルコキシ基、例えばメトキシ基又はエトキシ基を有してもよい。
【0056】
成分(E)の分子構造の例としては、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、分岐鎖状、環状、及び三次元網状構造が挙げられ、分子構造は、好ましくは一部分岐を有する直鎖状、分岐鎖状、又は三次元網状構造である。
【0057】
このような成分(E)の例としては、分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたメチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン-メチルハイドロジェンシロキサンコポリマー、分子鎖両末端がジメチルハイドロジェンシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端がジメチルハイドロジェンシロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン-メチルハイドロジェンシロキサンコポリマー、分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたメチルハイドロジェンシロキサン-ジフェニルシロキサンコポリマー、分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたメチルハイドロジェンシロキサン-ジフェニルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー、(CHHSiO1/2単位及びSiO4/2単位とからなるコポリマー、(CHHSiO1/2単位、SiO4/2単位、及び(C)SiO3/2単位からなるコポリマー、並びにこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0058】
成分(E)の含有量は、成分(A)の100質量部に対して、1~30質量部の範囲内、好ましくは1~25質量部の範囲内、代替的に1~20質量部の範囲内、及び代替的に5~25質量部の範囲内である。これは、成分(E)の含有量が上記範囲の上限以下である場合、シリコーン材料の機械的特性が良好であるのに対し、成分(E)の含有量が上記範囲の下限以上である場合、組成物の硬化性が良好であるという理由による。
【0059】
本組成物は、本組成物の硬化を促進するために、(F)ヒドロシリル化触媒を含み、部分(II)を形成してもよい。成分(F)の例としては、白金族元素触媒及び白金族元素化合物触媒が挙げられ、具体例としては、白金系触媒、ロジウム系触媒、パラジウム系触媒、及びこれらの少なくとも2種の組み合わせが挙げられる。特に、本組成物の硬化を劇的に促進できる点で、白金系触媒が好ましい。これらの白金系触媒の例としては、白金微粉末;白金黒;塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸;塩化白金酸/ジオレフィン錯体;白金/オレフィン錯体;白金ビス(アセトアセテート)及び白金ビス(アセチルアセトネート)などの白金/カルボニル錯体;塩化白金酸/ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、及び塩化白金酸/テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン錯体などの塩化白金酸/アルケニルシロキサン錯体;白金/ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、及び白金/テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン錯体などの白金/アルケニルシロキサン錯体;塩化白金酸とアセチレンアルコールとの錯体;及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。特に、白金-アルケニルシロキサン錯体は、本組成物の硬化を促進できる点で好ましい。
【0060】
白金-アルケニルシロキサン錯体に使用されるアルケニルシロキサンの例としては、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、アルケニルシロキサンのメチル基の一部がエチル基、フェニル基などによって置換されたアルケニルシロキサンオリゴマー、及びアルケニルシロキサンのビニル基がアリル基、ヘキセニル基などによって置換されたアルケニルシロキサンオリゴマーが挙げられる。特に、生成される白金-アルケニルシロキサン錯体の安定性が良好であるという点で、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンが好ましい。
【0061】
白金-アルケニルシロキサン錯体の安定性を改善するために、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3-ジアリル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3-ジビニル-1,3-ジメチル-1,3-ジフェニルジシロキサン、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラフェニルジシロキサン、又は1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサンなどのアルケニルシロキサンオリゴマー、又はジメチルシロキサンオリゴマーなどのオルガノシロキサンオリゴマーに、これらの白金-アルケニルシロキサン錯体を溶解させることが好ましく、当該錯体をアルケニルシロキサンオリゴマーに溶解することが特に好ましい。
【0062】
成分(F)の含有量は、本組成物の硬化を促進する触媒量であるが、好ましくは、本組成物を基準とした質量単位で、本成分中に白金族金属が約0.01~約1,000ppmとなる量である。具体的には、含有量は、好ましくは、本組成物を基準とした質量単位で、成分(F)中の白金族金属の含有量が、約0.01~約500ppmの範囲、代替的に約0.1~約100ppmの範囲となる量である。これは、成分(F)の含有量が上記範囲の下限以上である場合、組成物の硬化性が良好であるのに対し、成分(F)の含有量が上記範囲の上限以下である場合、硬化物の着色が抑制されるという理由による。
【0063】
組成物は、分子中にアルケニル基及びケイ素原子結合水素原子を有さないオルガノシロキサン(G)を含んでもよい。成分(G)中のケイ素原子に結合した基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、及びドデシル基などの1~12個の炭素原子を有するアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、及びナフチル基などの6~20個の炭素原子を有するアリール基;ベンジル基、フェネチル基、及びフェニルプロピル基などの7~20個の炭素原子を有するアラルキル基;並びに、上記基の中の水素原子の一部又は全部がフッ素原子、塩素原子、又は臭素原子などのハロゲン原子で置換された基が挙げられる。更に、成分(G)中のケイ素原子は、本発明の目的を損なわない範囲で、少量のヒドロキシル基又はアルコキシ基、例えばメトキシ基又はエトキシ基を有してもよい。
【0064】
成分(G)の分子構造の例としては、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、分岐鎖状、環状、及び三次元網状構造が挙げられ、分子構造は、好ましくは一部分岐を有する直鎖状、分岐鎖状、又は三次元網状構造である。
【0065】
このような成分(G)の例としては、分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン、分子鎖両末端がジメチルヒドロキシシロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン、分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたメチルフェニルシロキサン、分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン-メチルフェニルシロキサンのコポリマー、及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0066】
成分(G)の含有量は、限定されるものではないが、好ましくは、成分(A)の100質量部に対して、約1~約100質量部、代替的に約5~約100質量部、代替的に約1~約50質量部の量である。これは、成分(G)の含有量が上記範囲の下限以上である場合、組成物の粘度を低減させることができ、成分(H)の含有量が上記範囲の上限以下である場合、シリコーン材料の機械的特性が改善されるという理由による。
【0067】
組成物は、環境温度における可使時間を延長し、貯蔵安定性を高めるために(H)ヒドロシリル化反応阻害剤を含んでもよい。成分(H)の例としては、1-エチニル-シクロヘキサン-1-オール、2-メチル-3-ブチン-2-オール、2-フェニル-3-ブチン-2-オール、2-エチニル-イソプロパン-2-オール、2-エチニル-ブタン-2-オール、及び3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オールなどのアセチレンアルコール;トリメチル(3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オキシ)シラン、ジメチルビス(3-メチル-1-ブチン-オキシ)シラン、メチルビニルビス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)シラン、及び((1,1-ジメチル-2-プロピニル)オキシ)トリメチルシランなどのシリル化アセチレンアルコール;ジアリルマレエート、ジメチルマレエート、ジエチルフマレート、ジアリルフマレート、及びビス(2-メトキシ-1-メチルエチル)マレエート、モノ-オクチルマレエート、モノ-イソオクチルマレエート、モノ-アリルマレエート、モノ-メチルマレエート、モノ-エチルフマレート、モノ-アリルフマレート、及び2-メトキシ-1-メチルエチルマレエートなどの不飽和カルボン酸エステル;2-イソブチル-1-ブテン-3-イン、3,5-ジメチル-3-ヘキセン-1-イン、3-メチル-3-ペンテン-1-イン、3-メチル-3-ヘキセン-1-イン、1-エチニルシクロヘキセン、3-エチル-3-ブテン-1-イン、及び3-フェニル-3-ブテン-1-インなどのエン-イン化合物;並びにこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0068】
成分(H)の含有量は、本組成物を基準とした質量単位で、本成分中に約0.1~10,000ppmの量である。具体的には、含有量は、本組成物を基準とした質量単位で、好ましくは、本成分中に約1~約5,000ppmの量、代替的に約10~約500ppmの量である。これは、成分(H)の含有量が上記範囲の下限以上である場合、本組成物の貯蔵安定性が良好であるのに対し、成分(H)の含有量が上記範囲の上限以下である場合、低温における本組成物の硬化性が良好であるという理由による。
【0069】
組成物は、補強性充填剤及び/又は非補強性充填剤を含んでもよい。充填剤の例としては、微粉化された処理又は未処理の沈殿シリカ、又はヒュームドシリカ、沈殿又は粉砕炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、微粉化カオリンなどの粘土、石英粉末、ケイ酸ジルコニウム、珪藻土、珪灰石、葉ろう石(pyrophylate)、及びヒュームド又は沈殿二酸化チタン、酸化セリウム、酸化マグネシウム粉末、酸化亜鉛、酸化鉄などの金属酸化物の1つ以上が挙げられる。これらはまた、ガラス繊維、タルク、アルミナイト、硫酸カルシウム(硬石膏)、石膏、硫酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム(ブルーサイト)、グラファイト、硫酸バリウムの一形態であるバーライト、マラカイトなどの炭酸銅、ザラカイト(zarachite)などの炭酸ニッケル、毒重石などの炭酸バリウム、ストロンチアナイトなどの炭酸ストロンチウム、又は同様の無機充填剤を含んでもよい。
【0070】
補強性充填剤及び/又は非補強性充填剤の含有量は、限定されるものではないが、好ましくは、成分(A)の100質量部に対して、約1~約200質量部、代替的に約5~約150質量部、代替的に約10~約150質量部の量である。これは、補強性充填剤及び/又は非補強性充填剤の含有量が上記範囲の下限以上である場合、シリコーン材料の耐熱性及び機械的特性を向上させることができ、補強性充填剤及び/又は非補強性充填剤の含有量が上記範囲の上限以下である場合、組成物の粘度を低減させることができるという理由による。
【0071】
本発明の熱伝導性シリコーン組成物は、全ての成分を環境温度で組み合わせることによって調製することができる。先行技術に記載されている、混合技術及び装置のいずれかをこの目的に用いることができる。使用する具体的な装置は、成分及び最終的な組成物の粘度によって決定される。混合中に成分を冷却することが、早期硬化を避けるために望ましい場合がある。
【実施例
【0072】
以下、実施例及び比較例を使用して、本発明の熱伝導性シリコーン組成物について詳細に説明する。しかし、本発明は、以下に列挙する実施例の説明により限定されるものではない。
【0073】
<粘度>
粘度は、Brookfield Synchro-lectric粘度計などの回転粘度計を使用して測定された。測定される実質的に全ての材料は本質的に非ニュートン性であるため、異なるスピンドル又は速度を用いて得られた結果の間に相関性は予想されないはずである。結果は一般にセンチポアズで記録する。この方法は、ASTM D 1084:HBDV-III、NO.3 SPINDLE、100RPMに基づく。
【0074】
<ショアA硬度>
硬化性熱伝導性シリコーン組成物を空気循環オーブン内で120℃で1時間熱硬化させることにより、硬化シリコーン材料を得た。デュロメータ測定のため、硬化シリコーン材料を少なくとも6mmの厚さになるよう積層した。25℃での硬化シリコーン材料のショアA硬度を、試験方法ASTM D2240-05(2010)(ゴム特性デュロメータ硬度の標準試験方法)に従って決定した。
【0075】
<接着性>
接着性は、重ね剪断ラミネートを分離するために必要な引っ張り量を測定することによって決定される。25℃での硬化シリコーン材料の接着性を、試験方法ASTM 1002:混合物A及びB(1:1)を添加し真空を使用することによって脱気する方法、によって決定した。8枚の重ね剪断Alパネル(Alclad2024T3、1インチ×3インチ(2.5cm×7.6cm)及び既知の厚さ、Q Panel Company、Cleveland,OH)を洗浄する。IPAを使って、4枚のパネルを金型の下段に配置し、混合試料を各パネルに適用し、指定されたギャップ(0.9mm)を得るように各パネルの上に第2のパネルを直接置き、次いで、それらを120℃のオーブンに1時間置く。試料を硬化させた後に(結合領域は10mm×25.4mm)、それらを取り出し、試験試料の端から余分な材料を切り取り、次いでInstron機器で試験する。結果は、ポンド/平方インチで報告される。接着剤又は凝集破壊の量が推定される。
【0076】
<沈下確認>
提示された材料の沈下量確認は、標準的な方法ではない。手順は以下のように説明することができる。5kgの材料を5L円筒容器に入れ、その容器を一定期間(1ヶ月/3ヶ月)常温で放置した後、各計画された時間に材料の沈下量を確認する。沈下確認の場合、定規を使用して容器内の材料に浸漬し、定規が硬質材料層に接触したときに停止し、軟質材料の高さとして定規のマーク(H1)を読み取る。第2のステップは、全体的な材料層の高さ(H2)を得るために、定規を円筒容器底部に完全に浸漬することである。H=H2-H1としてハードケーキング沈下レイを達成することができる。
【0077】
以下の成分を使用して、実施例及び比較例で熱伝導性シリコーン組成物を調製した。
成分(a-1):約450mm/sの粘度を有し、分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で末端ブロックされるジメチルポリシロキサン。
成分(a-2):約70mm/sの動粘度を有し、分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で末端ブロックされるジメチルポリシロキサン。
成分(b-1):約15μmの平均粒径を有する水酸化アルミニウム粉末。
成分(c-1):約1μmの平均粒径を有する水酸化アルミニウム粉末。
成分(d-1):以下の式:
【化6】
によって表されるカルバシラトラン誘導体。
成分(e-1):約7mm/sの動粘度を有し、分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で末端ブロックされるジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサンコオリゴマー。
成分(e-2):約65mm/sの動粘度を有し、分子鎖両末端がジメチルハイドロジェンシロキシ基で末端ブロックされるジメチルポリシロキサン。
成分(f-1):1,3-ジエテニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン溶液中の1,3-ジエテニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンとの白金錯体(白金含有量=0.1質量%)
成分(g-1):1,1,1,3,3,5,5,7,7,7-デカメチルテトラシロキサン
メチルトリメトキシシラン
3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン
1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルテトラシクロシロキサン
【0078】
[実施例1]
1185質量部の成分(a-1)、1610質量部の成分(a-2)、及び119質量部のメチルトリメトキシシランを室温でミキサー内で混合した。次に、2489質量部の成分(c-1)を混合物と10分間混合した。次に、3回に分けて合計5808質量部の成分(b-1)を混合物と80分間混合した。次に、混合物を混合し、窒素ガス雰囲気中で室温から120℃まで加熱し、次いで、減圧下で120℃で1時間混合した。次に、混合物を減圧下で40℃に冷却した。最後に、742質量部の成分(a-2)、23.7質量部の成分(d-1)、24.65質量部の成分(f-1)、及び300質量部の成分(g-1)を20分間混合して調製し、熱伝導性シリコーン組成物(1)を生成した。熱伝導性シリコーン組成物(1)の特性を決定し、結果を表1に列挙した。
【0079】
[実施例2]
1950質量部の成分(a-1)、464質量部の成分(a-2)、及び59質量部のメチルトリメトキシシランを室温でミキサー内で混合した。次に、2497質量部の成分(c-1)を混合物と10分間混合した。次に、3回に分けて合計5827質量部の成分(b-1)を混合物と80分間混合した。次に、混合物を混合し、窒素ガス雰囲気中で室温から120℃まで加熱し、次いで、減圧下で120℃で1時間混合した。次に、混合物を減圧下で40℃に冷却した。最後に、24質量部の成分(d-1)、308質量部の成分(e-1)、768.3質量部の成分(e-2)、300質量部の成分(g-1)、30質量部のメチルトリメトキシシラン、36質量部の3-アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、及び6.5質量部の1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルテトラシクロシロキサンを20分間混合して調製し、熱伝導性シリコーン組成物(2)を生成した。熱伝導性シリコーン組成物(2)の特性を決定し、結果を表1に列挙した。
【0080】
1:1の質量比でのエージング前後で、熱伝導性シリコーン組成物(1)及び(2)を混合することによって、硬化性熱伝導性シリコーン組成物を調製した。硬化性熱伝導性シリコーン組成物のシリコーン材料の特性を決定し、結果を表1に列挙した。
【0081】
[比較例1]
成分(d-1)を添加しないことを除いて、実施例1と同様に、熱伝導性シリコーン組成物(3)を調製した。熱伝導性シリコーン組成物(3)の特性を決定し、結果を表1に列挙した。
【0082】
[比較例2]
成分(d-1)を添加しないことを除いて、実施例2と同様に、熱伝導性シリコーン組成物(4)を調製した。熱伝導性シリコーン組成物(4)の特性を決定し、結果を表1に列挙した。
【0083】
1:1の質量比でのエージング前後で、熱伝導性シリコーン組成物(3)及び(4)を混合することによって、硬化性熱伝導性シリコーン組成物を調製した。硬化性熱伝導性シリコーン組成物のシリコーン材料の特性を決定し、結果を表1に列挙した。
【0084】
【表1】
【0085】
産業上の利用可能性
本発明の熱伝導性シリコーン組成物は、高熱伝導性を示すために多量の熱伝導性充填剤を含有するにもかかわらず、優れた貯蔵安定性及び取り扱い性を示す。したがって、熱伝導性シリコーン組成物は、電気/電子装置用の熱伝導性材料において有用である。