(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】治療用干渉粒子による免疫不全ウイルス感染を処置するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/867 20060101AFI20240528BHJP
C12N 15/49 20060101ALI20240528BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20240528BHJP
C07K 14/155 20060101ALI20240528BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20240528BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240528BHJP
A61P 31/18 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
C12N15/867 Z
C12N15/49 ZNA
C12N7/01
C07K14/155
A61K35/76
A61K45/00
A61P31/18
(21)【出願番号】P 2021574334
(86)(22)【出願日】2020-06-12
(86)【国際出願番号】 US2020037488
(87)【国際公開番号】W WO2020252305
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-02-09
(32)【優先日】2019-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517352418
【氏名又は名称】ザ ジェイ. デビッド グラッドストーン インスティテューツ、 ア テスタメンタリー トラスト エスタブリッシュド アンダー ザ ウィル オブ ジェイ. デビッド グラッドストーン
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】ワインバーガー、レオール エス.
(72)【発明者】
【氏名】タナー、エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】チョン、スン-ヨン
【審査官】福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0015759(US,A1)
【文献】国際公開第2018/112225(WO,A1)
【文献】PLOS Genetics,2016年,Vol.12, No.5, e1005986,pp.1-14
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-15/90
C07K 1/00-19/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Genbank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
干渉し、条件付きで複製し、条件付きで伝達する、組換えヒト免疫不全ウイルス(HIV)構築物であって、前記構築物は、
a)長い末端反復、Gagリーダ配列、Ψパッケージングシグナル、中央ポリプリントラクト(cPPT)、rev応答エレメント(RRE)配列、ポリプリントラクト(PPT)、主要スプライスドナー(MSD)、A3、及びA7を含むシス作用エレメント;及び
b)HIVヌクレオチド配列における1つ以上の変更であって、前記1つ以上の変更により、
Env、Pol、Tat、Vpr、Nef、及びVifのそれぞれが機能しなくなり、それにより前記構築物はそれ自体ではウイルスの複製及び産生ができなくなるが、ヘルパーウイルスとして機能するために複製能を有するHIVを要する、HIVヌクレオチド配列における1つ以上の変更、
を含み、
前記
1つ以上の変更は、逆転写酵素(RT)遺伝子をトランケートするHIV Polをコードするヌクレオチド配列における欠失を含む、構築物。
【請求項2】
前記シス作用エレメントが、D4、A4、及びA5をさらに含む、請求項1に記載の構築物。
【請求項3】
前記長い末端反復が、長い3’末端反復又は長い5’末端反復である、請求項1又は2に記載の構築物。
【請求項4】
Rev
およびVp
uのそれぞれを非機能的にする1つ以上の変更をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の構築物。
【請求項5】
前記構築物によってコードされるゲノムRNA(gRNA)が、野生型HIVに感染した宿主細胞に存在する場合、前記野生型HIV gRNAよりも速い速度で産生され、それにより、前記野生型HIV gRNAに対して前記構築物によってコードされる前記gRNAの比率が、前記細胞内
で1よりも大きくなる、請求項1~4のいずれか一項に記載の構築物。
【請求項6】
前記構築物が前記野生型HIVよりも高い伝達頻度を有する、請求項5に記載の構築物。
【請求項7】
前記構築物が基本再生産数(R0)>1を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の構築物。
【請求項8】
前記構築物が、遺伝子産物をコードするいかなる異種ヌクレオチド配列も含まない、請求項1~7のいずれか一項に記載の構築物。
【請求項9】
前記構築物が、野生型HIVに感染した宿主細胞に存在する場合、野生型HIVよりも高い効率でパッケージ化される、請求項1~8のいずれか一項に記載の構築物。
【請求項10】
前記シス作用エレメントが、HIVタンパク質コード配列内に包埋された少なくとも1つのシスエレメントを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の構築物。
【請求項11】
HIVスプライスドナー部位における欠失又は変異を含む1つ以上の変更をさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の構築物。
【請求項12】
D2及びD3スプライスドナー部位が欠失している、請求項10に記載の構築物。
【請求項13】
HIVスプライスアクセプター部位における欠失又は変異を含む1つ以上の変更をさらに含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の構築物。
【請求項14】
A1及びA2スプライスアクセプター部位が欠失している、請求項13に記載の構築物。
【請求項15】
前記HIVヌクレオチド配列における前記1つ以上の変更が
、HIV Vifをコードするヌクレオチド配列の1つ以上のヌクレオチドの欠失又は変異、HIV Vprをコードするヌクレオチド配列の1つ以上のヌクレオチドの欠失又は変異、HIV Tatをコードするヌクレオチド配列の1つ以上のヌクレオチドの欠失又は変異、及びHIV Nefをコードするヌクレオチド配列の1つ以上のヌクレオチドの欠失又は変異を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の構築物。
【請求項16】
前記構築物が、配列番号1の参照HIV配列に対して付番された位置3159~4780、4904~5737、及び8786~9048に対応するヌクレオチドの欠失を含む、請求項15に記載の構築物。
【請求項17】
前記構築物が、配列番号1の参照HIV配列に対して付番された位置1~634、635~789、686~823、790~2292、2085~3158、4781~4903、5738~5849、5830~6044、5872~5880、5969~6044、6045~6060、6061~6306、6221~8785、7759~7992、8369~8414、8369~8643、及び9049~9709に対応するヌクレオチドを含む、請求項16に記載の構築物。
【請求項18】
前記構築物が、配列番号2のヌクレオチド配列、又は配列番号2のヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むか、又はそれからなる、請求項16又は17に記載の構築物。
【請求項19】
HIV Revをコードするヌクレオチド配列の1つ以上のヌクレオチドの欠失又は変異、
およびHIV Vpuをコードするヌクレオチド配列の1つ以上のヌクレオチドの欠失又は変
異をさらに含む、請求項16~18のいずれか一項に記載の構築物。
【請求項20】
前記構築物が、配列番号1の参照HIV配列に対して付番された位置3159~5737、3159~4780、4904~5737、5850~6341、及び8786~9048に対応するヌクレオチドの欠失を含む、請求項19に記載の構築物。
【請求項21】
前記構築物が、配列番号1の参照HIV配列に対して付番された位置1~634、635~789、686~823、790~2292、2085~3158、4781~4903、5738~5849、6342~8785、7759~7992、8369~8414、8369~8643、及び9049~9709に対応するヌクレオチドを含む、請求項20に記載の構築物。
【請求項22】
前記構築物が、配列番号3のヌクレオチド配列、又は配列番号3のヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むか、又はそれからなる、請求項20又は21に記載の構築物。
【請求項23】
前記構築物が、配列番号1の参照HIV配列に対して付番された位置3159~5630、及び8786~9048に対応するヌクレオチドの欠失を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の構築物。
【請求項24】
前記構築物が、配列番号1の参照HIV配列に対して付番された位置1~634、635~789、686~823、790~2292、2085~3158、5631~5849、4778~4898、5850~6044、5969~6044、6045~6060、6061~6306、6221~8785、7759~7992、8369~8414、8369~8643、9049~9709に対応するヌクレオチドを含む、請求項23に記載の構築物。
【請求項25】
前記構築物が、配列番号4のヌクレオチド配列、又は配列番号4のヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むか、又はそれからなる、請求項24に記載の構築物。
【請求項26】
配列番号1の参照HIV配列に対して付番された位置5850~6341に対応するヌクレオチドの欠失をさらに含む、請求項23~25のいずれか一項に記載の構築物。
【請求項27】
前記構築物が、配列番号1の参照HIV配列に対して付番された位置1~634、635~789、686~823、790~2292、2085~3158、5631~5849、4778~4898、6342~8785、7759~7992、8369~8414、8369~8643、9049~9709に対応するヌクレオチドを含む、請求項26に記載の構築物。
【請求項28】
前記構築物が、配列番号5のヌクレオチド配列、又は配列番号5のヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むか、又はそれからなる、請求項26又は27に記載の構築物。
【請求項29】
前記構築物が、HIV Vifをコードするヌクレオチド配列の欠失を含む、請求項1~28のいずれか一項に記載の構築物。
【請求項30】
前記構築物が、HIV Vprをコードするヌクレオチド配列の欠失を含む、請求項1~29のいずれか一項に記載の構築物。
【請求項31】
前記構築物が、HIV Tatをコードするヌクレオチド配列の欠失を含む、請求項1~30のいずれか一項に記載の構築物。
【請求項32】
前記構築物が、HIV Revをコードするヌクレオチド配列の欠失を含む、請求項1~31のいずれか一項に記載の構築物。
【請求項33】
前記構築物が、HIV Vpuをコードするヌクレオチド配列の欠失を含む、請求項1~32のいずれか一項に記載の構築物。
【請求項34】
前記構築物が、HIV Envをコードするヌクレオチド配列の欠失を含む、請求項1~33のいずれか一項に記載の構築物。
【請求項35】
前記構築物が、HIV Nefをコードするヌクレオチド配列の欠失を含む、請求項1~34のいずれか一項に記載の構築物。
【請求項36】
前記構築物が、HIV Gagをコードするヌクレオチド配列の欠失を含む、請求項1~35のいずれか一項に記載の構築物。
【請求項37】
請求項1~36のいずれか一項に記載の構築物及び薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項38】
請求項37に記載の医薬組成物であって、前記医薬組成物は、
HIVに感染した個体を処置するためにその治療有効量が前記個体に投与されるものである、医薬組成物。
【請求項39】
請求項37に記載の医薬組成物であって、前記医薬組成物は、個体におけるヒト免疫不全ウイルスのウイルス量を低減するためにその有効量が前記個体に投与されるものである、医薬組成物。
【請求項40】
請求項1~36のいずれか一項に記載の構築物及びウイルスエンベロープタンパク質を含む粒子。
【請求項41】
前記エンベロープタンパク質がgp120を含む、請求項40に記載の粒子。
【請求項42】
前記エンベロープタンパク質が非HIVタンパク質である、請求項40に記載の粒子。
【請求項43】
請求項40~42のいずれか一項に記載の粒子及び薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項44】
請求項37又は43に記載の医薬組成物を含む容器を含む、
HIVによる感染症を処置するためのキット。
【請求項45】
前記容器がシリンジである、請求項44に記載のキット。
【請求項46】
請求項43に記載の医薬組成物であって、前記医薬組成物は、
HIVに感染した個体を処置するためにその治療有効量が前記個体に投与されるものである、医薬組成物。
【請求項47】
請求項43に記載の医薬組成物であって、前記医薬組成物は、個体におけるヒト免疫不全ウイルスのウイルス量を低減するためにその有効量が前記個体に投与されるものである、医薬組成物。
【請求項48】
請求項38、39、46および47のいずれか一項に記載の医薬組成物であって、前記医薬組成物は、ウイルス複製、ウイルスプロテアーゼ活性、ウイルス逆転写酵素活性、細胞中へのウイルス侵入、ウイルスインテグラーゼ活性、ウイルスRev活性、ウイルスTat活性、ウイルスNef活性、ウイルスVpr活性、ウイルスVpu活性、ウイルスPol活性、及びウイルスVif活性から選択される免疫不全ウイルス機能を阻害する有効量の薬剤とともに前記個体に投与されるものである、医薬組成物。
【請求項49】
前記個体が、HIV感染と診断されているか、又は一般集団よりもHIVに感染するリスクが高いと考えられている、請求項48に記載の医薬組成物。
【請求項50】
前記医薬組成物は、HIVに感染した細胞のゲノムに組み込まれた潜伏HIVを再活性化する有効量の薬剤とともに前記個体に投与されるものである、請求項49に記載の医薬組成物。
【請求項51】
請求項1~36のいずれか一項に記載の構築物を含む、単離された体液。
【請求項52】
前記体液が血液又は血漿である、請求項51に記載の単離された体液。
【請求項53】
干渉し、条件付きで複製する、変異
体HI
V構築物を生成する方法であって、前記方法は、
a)請求項1~36のいずれか一項に記載の構築物を第1の非ヒト動物個体に導入することと;
b)請求項1~36のいずれか一項に記載の構築物が前記第1の非ヒト動物個体から伝達された第2の非ヒト動物個体から生物学的試料を入手することであって、前記第2の非ヒト動物個体に存在する前記構築物は、請求項1~36のいずれか一項に記載の構築物の変異体である前記入手することと;
c)前記第2の非ヒト動物個体から前記変異体構築物をクローニングすることと、
を含む、方法。
【請求項54】
請求項1~36のいずれか一項に記載の構築物を含む、単離された細胞。
【請求項55】
粒子を生成する方法であって、請求項1~36のいずれか一項に記載の構築物で
HIVに感染した細胞をトランスフェクトし、前記構築物を前記粒子にパッケージングするのに好適な条件下で前記細胞をインキュベートすることを含み、
前記方法はインビトロで実施される、方法。
【請求項56】
請求項40~43のいずれか一項に記載の粒子を含む、単離された細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療用干渉粒子による免疫不全ウイルス感染を処置するための組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
抗レトロウイルス剤の変革的な成功にもかかわらず、3700万人がHIV/AIDSと共に生活している。現在の介入には高度な患者の関与が必要であるが、多くの感染者、特に資源に乏しい環境にいる感染者は、一貫したケアにアクセスすることができない。2003年に、ワインバーガー(Weinberger)らは、患者の負担を低減するための戦略を提案した。ウイルスの存在下で増幅し、HIV感染連鎖に入り、高リスク個体に遭遇する可能性を高める、伝染性抗ウイルス剤である(ワインバーガー、2003年および2011年)。治療用干渉粒子(TIP)と呼ばれるこの概念は、欠陥干渉粒子(DIP)、野生型ウイルスからの複製及び/又はパッケージングタンパク質を乗っ取り、それによりウイルスの増殖に干渉する、複製欠陥ウイルスゲノムからインスピレーションを得ている(
図1A)。DIPは、元は1970年代にウイルス対策として提案されたが(ファン(Huang)及びバルティモア(Baltimore))、治療期間が限られているため、目標に届かなかった。RNAウイルスの場合、DIPの複製及び感染には、野生型ウイルスによる持続的な重複感染が必要であり、そうでない場合、DIP RNAは分解によって急速に排除される。一方、TIPは、高い伝達率(すなわち、R
0>1)と宿主細胞ゲノムへの組み込みの組み合わせにより、持続性について明確に改変されている(ワインバーガー(Weinberger)、メッツガー(Metzger)、イゴール(Igor))。シミュレーションによると、これらの持続性基準を満たし、患者におけるウイルス量を1ログ低減するTIPの単回投与により、患者のAIDS進行の可能性及び感染伝播のリスクが大幅に低減され得ることが示唆される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示は、干渉し(interfering)、条件付きで複製する(conditionally replicating)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)構築物;構築物を構成する感染性粒子;及び構築物又は粒子を含む組成物を提供する。構築物、粒子、及び組成物は、個体におけるHIVウイルス量を減少させる方法において有用であり、その方法もまた提供される。
【0004】
一態様では、干渉し、条件付きで複製し、条件付きで伝達する(conditionally transmitting)、組換えヒト免疫不全ウイルス(HIV)構築物が提供され、構築物は、a)長い末端反復、Gagリーダ配列、Ψパッケージングシグナル、中央ポリプリントラクト(cPPT)、rev応答エレメント(RRE)配列、ポリプリントラクト(PPT)、主要スプライスドナー(MSD)、A3、及びA7を含むシス作用エレメント;及びb)HIVヌクレオチド配列における1つ以上の変更(alterations)を含み、ここで、1つ以上の変更により、Pol、Tat、Vpr、Nef、及びVifのそれぞれが機能しなくなり、その結果、構築物はそれ自体ではウイルスの複製及び産生ができなくなるが、ヘルパーウイルスとして機能するために複製能を有するHIV(replication-competent HIV)を要する。
【0005】
特定の実施形態では、シス作用エレメントは、D4、A4、及びA5をさらに含む。
特定の実施形態では、長い末端反復は、長い3’末端反復又は長い5’末端反復である。
【0006】
特定の実施形態では、構築物は、Rev、Vpu、及びEnvのそれぞれを非機能的にする1つ以上の変更をさらに含む。
特定の実施形態では、構築物によってコードされるゲノムRNA(gRNA)は、野生型HIVに感染した宿主細胞に存在する場合、野生型HIV gRNAよりも速い速度で産生され、その結果、野生型HIV gRNAに対する構築物によってコードされるgRNAの比率は、細胞内で約1よりも大きくなる。
【0007】
特定の実施形態では、構築物は、野生型HIVよりも高い伝達頻度を有する。
特定の実施形態では、構築物は、基本再生産数(basic reproductive ratio)(R0)>1を有する。
【0008】
特定の実施形態では、構築物は、遺伝子産物をコードするいかなる異種ヌクレオチド配列も含まない。
特定の実施形態では、構築物は、野生型HIVに感染した宿主細胞に存在する場合、野生型HIVよりも高い効率でパッケージ化される。
【0009】
特定の実施形態では、シス作用エレメントは、HIVタンパク質コード配列内に包埋された少なくとも1つのシスエレメントを含む。
特定の実施形態では、構築物は、HIVスプライスドナー又はアクセプター部位における欠失又は変異を含む1つ以上の変更をさらに含む。例えば、1つ以上のD2及びD3スプライスドナー部位並びにA1及びA2スプライスアクセプター部位を欠失させてもよい。いくつかの実施形態では、D2及びD3スプライスドナー部位並びにA1及びA2スプライスアクセプター部位は全て欠失している。
【0010】
特定の実施形態では、HIVヌクレオチド配列における1つ以上の変更は、HIV Polをコードするヌクレオチド配列の1つ以上のヌクレオチドの欠失又は変異、HIV Vifをコードするヌクレオチド配列の1つ以上のヌクレオチドの欠失又は変異、HIV Vprをコードするヌクレオチド配列の1つ以上のヌクレオチドの欠失又は変異、HIV Tatをコードするヌクレオチド配列の1つ以上のヌクレオチドの欠失又は変異、及びHIV Nefをコードするヌクレオチド配列の1つ以上のヌクレオチドの欠失又は変異を含む。
【0011】
特定の実施形態では、構築物は、配列番号1の参照HIV配列に対して付番された位置3159~5737、3159~4780、4904~5737、及び8786~9048に対応するヌクレオチドの欠失を含む。特定の実施形態では、構築物は、配列番号1の参照HIV配列に対して付番された位置1~634、635~789、686~823、790~2292、2085~3158、4781~4903、5738~5849、5830~6044、5872~5880、5969~6044、6045~6060、6061~6306、6221~8785、7759~7992、8369~8414、8369~8643、及び9049~9709に対応するヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、構築物は、配列番号2のヌクレオチド配列、又はそれに対して少なくとも約80~100%の配列同一性(81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%の配列同一性などの、これらの範囲内の任意のパーセント同一性を含む)を示すヌクレオチド配列を含む。
【0012】
特定の実施形態では、構築物は、HIV Revをコードするヌクレオチド配列の1つ以上のヌクレオチドの欠失又は変異、HIV Vpuをコードするヌクレオチド配列の1つ以上のヌクレオチドの欠失又は変異、及びHIV Envをコードするヌクレオチド配列の1つ以上のヌクレオチドの欠失又は変異をさらに含む。特定の実施形態では、構築物は、配列番号1の参照HIV配列に対して付番された位置3159~4780、4904~5737、5850~6341、及び8786~9048に対応するヌクレオチドの欠失を含む。特定の実施形態では、構築物は、配列番号1の参照HIV配列に対して付番された位置1~634、635~789、686~823、790~2292、2085~3158、4781~4903、5738~5849、6342~8785、7759~7992、8369~8414、8369~8643、及び9049~9709に対応するヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、構築物は、配列番号3のヌクレオチド配列、又はそれに対して少なくとも約80~100%の配列同一性(81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%の配列同一性などの、これらの範囲内の任意のパーセント同一性を含む)を示すヌクレオチド配列を含むか、又はそれからなる。
【0013】
特定の実施形態では、構築物は、配列番号1の参照HIV配列に対して付番された位置3159~5630及び8786~9048に対応するヌクレオチドの欠失を含む。特定の実施形態では、構築物は、配列番号1の参照HIV配列に対して付番された位置1~634、635~789、686~823、790~2292、2085~3158、5631~5849、4778~4898、5850~6044、5969~6044、6045~6060、6061~6306、6221~8785、7759~7992、8369~8414、8369~8643、9049~9709に対応するヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、構築物は、配列番号4のヌクレオチド配列、又はそれに対して少なくとも約80~100%の配列同一性(81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%の配列同一性などの、これらの範囲内の任意のパーセント同一性を含む)を示すヌクレオチド配列を含むか、又はそれからなる。
【0014】
特定の実施形態では、構築物は、配列番号1の参照HIV配列に対して付番された位置5850~6341に対応するヌクレオチドの欠失をさらに含む。特定の実施形態では、構築物は、配列番号1の参照HIV配列に対して付番された位置1~634、635~789、686~823、790~2292、2085~3158、5631~5849、4778~4898、6342~8785、7759~7992、8369~8414、8369~8643、9049~9709に対応するヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、構築物は、配列番号5のヌクレオチド配列、又はそれに対して少なくとも約80~100%の配列同一性(81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%の配列同一性などの、これらの範囲内の任意のパーセント同一性を含む)を示すヌクレオチド配列を含むか、又はそれからなる。
【0015】
特定の実施形態では、構築物は、HIV Polをコードするヌクレオチド配列における欠失、HIV Vifをコードするヌクレオチド配列の欠失、HIV Vprをコードするヌクレオチド配列の欠失、HIV Tatをコードするヌクレオチド配列の欠失、HIV Revをコードするヌクレオチド配列の欠失、HIV Vpuをコードするヌクレオチド配列の欠失、HIV Envをコードするヌクレオチド配列の欠失、HIV Nefをコードするヌクレオチド配列の欠失、若しくはHIV Gagをコードするヌクレオチド配列の欠失、又はそれらの組み合わせを含む。
【0016】
別の態様では、本明細書に記載の構築物を含む組成物が提供される。いくつかの実施形態では、組成物は、薬学的に許容される賦形剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、組成物は、別のHIV抗ウイルス治療剤をさらに含む。
【0017】
別の態様では、ヒト免疫不全ウイルスに感染した個体を処置する方法が提供され、方法は、本明細書に記載の構築物を含む治療有効量の医薬組成物を個体に投与することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、ウイルス複製、ウイルスプロテアーゼ活性、ウイルス逆転写酵素活性、細胞中へのウイルス侵入、ウイルスインテグラーゼ活性、ウイルスRev活性、ウイルスTat活性、ウイルスNef活性、ウイルスVpr活性、ウイルスVpu活性、ウイルスPol活性、及びウイルスVif活性から選択される免疫不全ウイルス機能を阻害する有効量の薬剤を個体に投与することをさらに含む。
【0018】
別の態様では、個体におけるヒト免疫不全ウイルスのウイルス量を低減する方法が提供され、方法は、本明細書に記載の構築物を含む有効量の医薬組成物を個体に投与することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、ウイルス複製、ウイルスプロテアーゼ活性、ウイルス逆転写酵素活性、細胞中へのウイルス侵入、ウイルスインテグラーゼ活性、ウイルスRev活性、ウイルスTat活性、ウイルスNef活性、ウイルスVpr活性、ウイルスVpu活性、ウイルスPol活性、及びウイルスVif活性から選択される免疫不全ウイルス機能を阻害する有効量の薬剤を個体に投与することをさらに含む。
【0019】
別の態様では、粒子が提供され、粒子は、本明細書に記載の構築物及びウイルスエンベロープタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、エンベロープタンパク質は、gp120を含む。他の実施形態では、エンベロープタンパク質は非HIVタンパク質である。
【0020】
別の態様では、本明細書に記載の構築物を含む粒子及びウイルスエンベロープタンパク質を含む組成物が提供される。いくつかの実施形態では、組成物は、薬学的に許容される賦形剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、組成物は、別のHIV抗ウイルス治療剤をさらに含む。
【0021】
別の態様では、ヒト免疫不全ウイルスによる感染を処置するためのキットが提供され、キットは、本明細書に記載の構築物を含む医薬組成物を含む容器(例えば、シリンジ)を含む。
【0022】
別の態様では、ヒト免疫不全ウイルスによる感染を処置するためのキットが提供され、キットは、本明細書に記載の構築物とウイルスエンベロープタンパク質とを含む粒子を含む医薬組成物を含む容器(例えば、シリンジ)を含む。
【0023】
別の態様では、ヒト免疫不全ウイルスに感染した個体を処置する方法が提供され、方法は、本明細書に記載の粒子を含む治療有効量の医薬組成物を個体に投与することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、ウイルス複製、ウイルスプロテアーゼ活性、ウイルス逆転写酵素活性、細胞中へのウイルス侵入、ウイルスインテグラーゼ活性、ウイルスRev活性、ウイルスTat活性、ウイルスNef活性、ウイルスVpr活性、ウイルスVpu活性、ウイルスPol活性、及びウイルスVif活性から選択される免疫不全ウイルス機能を阻害する有効量の薬剤を個体に投与することをさらに含む。
【0024】
別の態様では、個体におけるヒト免疫不全ウイルスのウイルス量を低減する方法が提供され、方法は、本明細書に記載の粒子を含む有効量の医薬組成物を個体に投与することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、ウイルス複製、ウイルスプロテアーゼ活性、ウイルス逆転写酵素活性、細胞中へのウイルス侵入、ウイルスインテグラーゼ活性、ウイルスRev活性、ウイルスTat活性、ウイルスNef活性、ウイルスVpr活性、ウイルスVpu活性、ウイルスPol活性、及びウイルスVif活性から選択される免疫不全ウイルス機能を阻害する有効量の薬剤を個体に投与することをさらに含む。
【0025】
特定の実施形態では、本明細書に記載の方法は、HIV感染と診断されているか、又は一般集団よりもHIVに感染するリスクが高いと考えられる個体を処置するために使用される。そのような個体は、HIVに感染した細胞のゲノムに組み込まれた潜伏HIVを再活性化する有効量の薬剤でさらに処置されてもよい。
【0026】
別の態様では、本明細書に記載の構築物を含む単離された体液が提供され、例えば、血液又は血漿を含むがこれらに限定されない。
別の態様において、干渉し、条件付きで複製する、変異体ヒト免疫不全ウイルス(HIV)構築物を生成する方法が提供され、方法は、a)本明細書に記載の構築物を第1の個体に導入すること;b)構築物が第1の個体から伝達された第2の個体から生物学的試料を入手することであって、第2の個体に存在する構築物は、第1の個体に導入された構築物の変異体(variant)である入手すること;及びc)第2の個体から変異体構築物をクローニングすることを含む。
【0027】
別の態様では、本明細書に記載の構築物を含む単離された細胞が提供される。
別の態様では、粒子を生成する方法が提供され、方法は、ヒト免疫不全ウイルスに感染した細胞を本明細書に記載の構築物でトランスフェクトし、構築物を粒子にパッケージングするのに好適な条件下で細胞をインキュベートすることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1A】HIV治療用干渉粒子(TIP)の概念を示す。(
図1A)(弱い)LTRプロモータによって駆動される9つの遺伝子(Gag、Pol、Vif、Vpu、Vpr、Env、Tat、Rev、Nef)をコードするHIVゲノムの模式図。ゲノム(左のDNA)に組み込まれた後、TatはLTR(矢印)をトランス活性化してHIV RNAを生成し、最終的にウイルスカプシドを形成するパッケージングタンパク質を生成し、HIV RNAは、HIVパッケージングシグナル(Ψ)がウイルスゲノムRNA(gRNA)に存在する場合にパッケージ化される。
【
図1B】HIV治療用干渉粒子(TIP)の概念を示す。(
図1B)HIV TIPは、パッケージングに必要なΨ、LTR、及びその他のウイルスシスエレメントを輸送するように再改変された、簡素化されたバージョンのHIVゲノムである。したがって、TIP RNAは、HIVタンパク質(例えば、Tat)も発現する細胞によってのみ作製できる。TIPは、二重感染細胞でHIVよりも実質的に多くのgRNAコピーを産生するように改変されている(予備データを参照)。HIV gRNAよりもTIP gRNAの方が不釣り合いに多く、HIVのパッケージング材料は、HIVではなくTIPを封入することで主に浪費されている。したがって、TIPはHIV放出数を低下させ、感染細胞をHIV産生から主にTIP産生に変換し、それにより、HIVセットポイントウイルス量を低下させる(
図2を参照)。
【
図2A】TIPが患者のHIVウイルス量を低下させ、サハラ以南アフリカでの従来の介入よりも優れていると予測されていることを示す。(
図2A)患者のウイルス量の数学的モデルにより、細胞内パッケージングリソースについてHIVを化学量論的に打ち負かす、TIPが干渉し、条件付きで動員して、臨床的進行及び伝達に強い相関関係でHIVセットポイントウイルス量を低下させることが予測される。
【
図2B】TIPが患者のHIVウイルス量を低下させ、サハラ以南アフリカでの従来の介入よりも優れていると予測されていることを示す。(
図2B)UNAIDS産婦人科クリニックのデータセットに基づいた、マラウイにおけるHIV/AIDSに対するTIP介入(intervention)の予測される影響。TIP介入は以下と比較される:(i)全個体の楽観的な80%接種率に展開される、RV144「タイ(Thai)」ワクチン試験から報告された保護レベルに基づく30%予防ワクチン(ワクチン1)の導入;(ii)楽観的な95%接種率による潜在的な50%の予防ワクチン(ワクチン2)、及び(iii)全感染の75%が、伝達を阻止する効果99.9%で処置される、楽観的な抗レトロウイルス剤の「試験及び処置」キャンペーン。HIVウイルス量を0.5~1.5ログのみ低減するTIPは、高リスク群の固有のターゲティングにより、有病率を大幅に低減し得る。HIVセットポイントを1ログ低減するTIPは、約5%のHIV/AIDS有病率をもたらし、1.5ログの低減は1%未満の有病率を達成する。重要なことに、これらのモデルはHIV耐性の進化を考慮していないため、ワクチン及び抗ウイルスの予測は楽観的である(optimistic)(メッツガー(Metzger)ら著、2011年)。
【
図3A】長期リアクター培養からのHIV F1 DIPの検出を示す。(
図3A)長期HIV培養のための細胞補充を伴う自動リアクターの模式図。
【
図3B】長期リアクター培養からのHIV F1 DIPの検出を示す。(
図3B)HIV-GFP感染における感染したCEM細胞の振動。
【
図3C】長期リアクター培養からのHIV F1 DIPの検出を示す。(
図3C)80日目の生存細胞における約2.5kbの「F1」欠失プロウイルスの検出。
【
図4】TIPスクリーニングのためのランダム化されたバーコード(barcoded)欠失ライブラリを構築するための一般的な方法を示す。分子クローンからバーコードTIP候補ライブラリを構築する方法の模式的サイクル:インビトロレトロトランスポゾンのサイクル[1]、ランダムに挿入されたレトロトランスポゾンのエキソヌクレアーゼ媒介切除[2]、欠失を作製するための酵素的チューバック(chewback)(Δ)[3]、及び再ライゲーション中のバーコード[4]。(ワインバーガー(Weinberger)及びノットン(Notton)著、2017年)
【
図5A】ライブラリの欠失がHIVのゲノムに及ぶことを示す。(
図5A)HIV分子クローン、pNL4-3にわたるトランスポゾン挿入部位の分布(約10
4個のコロニーから)。
【
図5B】ライブラリの欠失がHIVのゲノムに及ぶことを示す。(
図5b)選択されたシス(RRE、LTR)及びトランスエレメント(gag、pol、env)で注釈が付けられた基礎pNL4-3マップ。120,000変異体ライブラリの15%のサブセットが示される。大腸菌(E.coli)でpNL4-3プラスミドを維持するために必要なori/β-lacに欠失がないことに留意されたい(ワインバーガー(Weinberger)及びノットン(Notton)著、2017年)。
【
図6A】ランダム欠失ライブラリからのHIVにおけるシス作用エレメント(cis-acting elements)の同定を示す。(
図6A)高MOI継代スキーム。HIV欠失変異体(mutants)(薄い灰色のビリオン)の多様なライブラリは、NL43 HIV(濃い灰色のビリオン)の存在下、許容T細胞株(MT-4)で継代される。必要な全てのシス作用エレメントを保持している欠失変異体のみが、HIVによって次世代の標的細胞に動員される。
【
図6B】ランダム欠失ライブラリからのHIVにおけるシス作用エレメントの同定を示す。(
図6B)MT-4(25k変異体)で12継代した後、生存変異体の遺伝子型は、HIVゲノムにマッピングされたバーコードタグ及び欠失遺伝子型のディープシーケンシングによって評価される(
図6Cに示される)。欠失深度が低い領域は、欠失に耐性のないシス作用エレメント(5’LTR、5’gag、cPPT、RRE、3’LTR)の存在を示し、欠失深度が高い領域は、欠失に耐性があり(トランス作用エレメント)、欠失してTIPを生成できる。
【
図6C】ランダム欠失ライブラリからのHIVにおけるシス作用エレメントの同定を示す。(
図6B)MT-4(25k変異体)で12継代した後、生存変異体の遺伝子型は、HIVゲノムにマッピングされたバーコードタグ及び欠失遺伝子型のディープシーケンシングによって評価される(
図6Cに示される)。欠失深度が低い領域は、欠失に耐性のないシス作用エレメント(5’LTR、5’gag、cPPT、RRE、3’LTR)の存在を示し、欠失深度が高い領域は、欠失に耐性があり(トランス作用エレメント)、欠失してTIPを生成できる。
【
図7】HIVスプライシングが転写後であることを示す。潜伏期逆転(TNF)とそれに続くアクチノマイシンD(ActD)による転写停止後の、HIV非スプライシング、単一スプライシング、及び多重スプライシング転写物(US、SS、MS)の単一分子RNA蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)(ハンセン(Hansen)ら著、2018年)。
【
図8A】F1
cPPT組換え体がHIVに干渉することを示す。(
図8A)NL43 HIV-BFP(nefのレポータ)及びnefのGFPレポータをコードするF1
cPPTの模式図。
【
図8B】F1
cPPT組換え体がHIVに干渉することを示す。(
図8B)F1(TIP+細胞)又はシャム(ナイーブ細胞)で形質導入され、次いでHIV-BFPに感染した、MT-4細胞の2色フローサイトメトリー。1ラウンド目及び2ラウンド目の感染(2及び4dpi)のデータが示される。2ラウンド目の感染時に明らかなHIVへのF1干渉(4dpiでBFPの低減)。
【
図8C】F1
cPPT組換え体がHIVに干渉することを示す。(
図8C)2dpiのナイーブ又はF1+細胞からナイーブMT-4細胞へのウイルス上清移入後のHIV力価(増殖)。プロトタイプTIPは、HIV力価(%BFP+細胞及び細胞変性効果によって定量化される)を大幅に低減する。
【
図8D】F1
cPPT組換え体がHIVに干渉することを示す。(
図8D)RT-qPCR:上清のHIV gRNAはF1によって低減され、HIVはF1 gRNAを動員する。これは、HIV gRNAを約60:40で打ち負かし、パッケージ化する。初代細胞及びヒト化マウスのデータにつき図**-**を参照されたい。
【
図9】F1
cPPTがHIV感染によって動員され、自己動員しないことを示す。MT-4共培養アッセイのフローサイトメトリー分析:HIV感染の存在下又は非存在下で、F1
cPPTGFP形質導入細胞又は対照GFP+細胞と共培養したナイーブmCherry標的細胞。
【
図10A】F1
cPPTがR
0>1を示し、HIVのR
0を低減することを示す。(
図10A)約10%のF1
cPPTCEM細胞(GFP+)及び88%のmCherry+標的CEMを播種し、低MOIでHIV-BFPに感染させたスピナーフラスコでのHIV及びTIPの伝播率。%BFP+及びGFP+/mCherry+二重陽性細胞をフローサイトメトリーで監視した。細胞が200万細胞/mLに達したときに細胞を1:4に希釈した。
【
図10B】F1
cPPTがR
0>1を示し、HIVのR
0を低減することを示す。(
図10B)単一ラウンドの伝播からの計算されたHIV及びF1
cPPTTIPのR
0。上、mCherry標識細胞へのHIV及びTIPの伝播。下、R
0値の表。
【
図11】F1
cPPTが長期培養におけるHIV伝播に安定的に干渉することを示す。CEM細胞(黒)でのHIV又は50%F1
cPPT形質導入CEM細胞(緑)でのHIVのリアクター培養物のフローサイトメトリー分析。25~35日目の推定上の共進化性「ブリップ(blip)」に注意されたい。
【
図12A】F1欠失がRTを包含するが、RT活性だけではF1表現型を説明するには不十分であることを示す。(
図12A)F1欠失の模式図。
【
図12B】F1欠失がRTを包含するが、RT活性だけではF1表現型を説明するには不十分であることを示す。(
図12B)ビリオンにおけるRT酵素活性。
【
図12C】F1欠失がRTを包含するが、RT活性だけではF1表現型を説明するには不十分であることを示す。(
図12C)感受性細胞におけるBFP発現によって決定されるHIV感染力価。
【
図13A】F1欠失がGagのプロテアーゼ切断を破壊することを示す。(
図13A)Gagプロセシングの模式図。
【
図13B】F1欠失がGagのプロテアーゼ切断を破壊することを示す。(
図13B)ウイルス上清中のp24のFLAQアッセイ(左)及びp24に正規化されたHIV又はF1
cPPTgRNAのいずれかに特異的なプライマーを用いたRT-qPCR(右)。
【
図13C】F1欠失がGagのプロテアーゼ切断を破壊することを示す。(
図13C)抗p24抗体によってアッセイされた、示された比率のHIV又はF1でトランスフェクトされた293T細胞のウエスタンブロット。
【
図14A】F1のトランケート型GagPolタンパク質がビリオン粒子中にパッケージングされていることを示す。(
図14A)野生型HIV及びF1 gag-polコード領域の模式図であり、Gag-Polタンパク質サイズが示されている。Gag-Polタンパク質は、gag配列内のフレームシフトシグナルによって作製される。
【
図14B】F1のトランケート型GagPolタンパク質がビリオン粒子中にパッケージングされていることを示す。(
図14B)精製されたビリオン粒子のウエスタンブロット分析。293T細胞に、野生型プロテアーゼ又はプロテアーゼ不活性化変異(D25A)をコードする完全長HIV又はF1構築物をトランスフェクトして、ビリオンで検出される未切断のGag及びGag-Polタンパク質を検出した。トランスフェクションの2日後、上清を精製し、ショ糖勾配で濃縮し、ビリオンタンパク質を抗gag(p24)抗体を使用したリコール(LICOR)(商標)ウエスタンブロットで分析した。
【
図15A】HIV-1ビリオンの形態形成の段階を示す。以下を示す薄切片EM画像:(
図15A)成熟した感染性HIV-1ビリオン。
【
図15B】HIV-1ビリオンの形態形成の段階を示す。以下を示す薄切片EM画像:(
図15B)AMOTを欠く細胞に集合するビリオン、膜包囲前に停止。
【
図15C】HIV-1ビリオンの形態形成の段階を示す。以下を示す薄切片EM画像:(
図15C)TSG101を欠く細胞に集合するビリオン、出芽前に停止。
【
図15D】HIV-1ビリオンの形態形成の段階を示す。以下を示す薄切片EM画像:(
図15D)NHP2L1を欠く細胞から放出されるビリオン、成熟前に停止。
【
図16】HIVビリオン中のタンパク質のLC MS/MS質量分析検出を示す。HEK293T細胞で産生されたビリオンは、ろ過した培養上清を20%スクロース層で超遠心分離することにより精製した。得られたペレットをトリプシンで消化し、LC-MS/MS分析に供した。HIVタンパク質は太字で示される。
【
図17A】RNAパッケージングのSVAイメージングを示す。(
図17A)構築物の模式図。HIV NL43はBSL(緑)をコードし、F1はMSL(赤)をコードする。
【
図17B】RNAパッケージングのSVAイメージングを示す。(
図17B)細胞内のHIV
BSL及びHIV
MSLの代表的なSVA TIRFイメージング(チェン(Chen)ら著、2016年)。矢印は、ホモ二倍体のHIV
BSL又はHIV
MSLビリオン(2色)及びヘテロ二倍体のHIV
BSL-HIV
MSLビリオン(3色、中央の矢印)を示す。
【
図18A】F1
cPPTがHIV-2系統の実験室株(SIVmac239)に干渉することを示す。(
図18A)CEMx174細胞のSIVmac239感染がF1
cPPTTIPを実質的にトランス活性化することを示すフローサイトメトリーヒストグラム。形質導入された非感染CEMx174細胞では、GFP活性は中程度(緑色)であるが、SIV感染はF1
cPPTを実質的にトランス活性化する(ピンク、2dpiからのデータ)。
【
図18B】F1
cPPTがHIV-2系統の実験室株(SIVmac239)に干渉することを示す。(
図18B)CEMx174(左)又はF1 TIP
cPPT形質導入CEMx174細胞(右)のいずれかからのウイルス上清(2dpiから)で処置されたCEMx174細胞に対するウイルス細胞変性効果によって測定されるSIV増殖。F1 TIPは、1ラウンドの感染でSIVの増殖を大幅に低減する(エラーバーは、生物学的重複実験からのSTDEVを示す)。
【
図19A】F1 TIPがhu-PBLマウスモデルにおいてHIVを阻害し、CD4細胞を保護することを示す。(
図19A)マウスの生着、感染及び分析のための実験的タイムライン。
【
図19B】F1 TIPがhu-PBLマウスモデルにおいてHIVを阻害し、CD4細胞を保護することを示す。(
図19B)感染後1週間(左)及び2週間(右)での、HIV感染を有する及び有しない、TIP処置マウス及び対照マウスにおけるCD4+T細胞濃度。F1
splice*TIPは、F1 p51コード領域の初期に二重終止コドンを含む。箱ひげプロット、各条件につきn=8。星印は、グループ内(すなわち、+/-感染)又は非TIPマウスとTIPマウスの間で計算されたp値を示す。
*p≦0.03、
**p≦0.003、マンホイットニー検定。
【
図19C】F1 TIPがhu-PBLマウスモデルにおいてHIVを阻害し、CD4細胞を保護することを示す。(
図19C)ddPCRによって測定された感染後1週間の感染マウスから収集されたマウス血清中のウイルス量。点=マウス個体;線=平均。検出閾値を下回る値の試料は、x軸上にグラフ化される。
**p<0.001、一元配置分散分析とそれに続くテューキの多重比較検定。
【
図19D】F1 TIPがhu-PBLマウスモデルにおいてHIVを阻害し、CD4細胞を保護することを示す。(
図19D)マウス血清中の完全長HIV及びTIPゲノムの頻度。WT及びTIPゲノムは、感染後1週間のddPCRによって定量化された。各バーは、HIVに感染した1匹のマウスを表す。
【
図20】hu-NSGマウスが約100日間にわたり安定したHIVセットポイントを示すことを示す。ART前(0~4週)、ART中(4~10週、影付き領域)、及びART後(10~14週)のhu-HSPC-NSGマウスにおける血漿ウイルスRNA(コピー/ml)動態。マウス1匹あたり50~100lの血液しか採取されなかったため、アッセイ感度は約750~800RNAコピー/ml(点線)である。黒丸は未処置マウスのvRNAレベルを示し、白丸はART処置動物のレベルを示す。(サティーサン(Satheesan)ら著、2018年、ジャーナル・オブ・バイロロジー(J.Virol.)、第92巻、第7号、pii:e02118-17)。
【発明を実施するための形態】
【0029】
定義
「免疫不全ウイルス」という用語は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ネコ免疫不全ウイルス、及びサル免疫不全ウイルスを含む。本明細書で使用される「ヒト免疫不全ウイルス」という用語は、ヒト免疫不全ウイルス-1(HIV-1)、ヒト免疫不全ウイルス-2(HIV-2)、並びに多様なHIVサブタイプ及び疑似種のうちのいずれをも指す。
【0030】
本明細書で言及される場合、「シュードタイプエンベロープ」は、レトロウイルスコアビリオンと共に自然発生するもの以外のエンベロープタンパク質であり、レトロウイルスコアビリオンをカプセル化する(表現型的に混合されたウイルスを生じる)。
【0031】
「ウイルス」とは、タンパク質及び核酸からなり、宿主細胞の遺伝子機構を使用してウイルス核酸で特定されたウイルス産物を産生する、感染性物質である。「核酸」は、一本鎖又は二本鎖、線状又は環状であり、任意選択により、DNA又はRNAポリマーに組み込むことができる合成、非天然、又は修飾ヌクレオチドを含む、DNA又はRNAのポリマーを指す。DNAポリヌクレオチドは、好ましくは、ゲノム又はcDNA配列から構成される。
【0032】
「ウイルスの野生型株」は、本明細書に記載されるような人工の変異を含まない株であり、すなわち、野生型ウイルスは、自然から(例えば、ウイルスに感染したヒトから)単離することができる任意のウイルスである。野生型ウイルスは実験室で培養することができるが、それでも、他のウイルスの非存在下でも、自然から単離されたもののような子孫ゲノム又はビリオンを生成することができる。
【0033】
本明細書で使用されるとき、「処置(treatment)」、「処置すること(treating)」などの用語は、所望の薬理的及び/又は生理的効果を得ることを指す。効果は、疾患若しくはその症状を完全に若しくは部分的に予防する点で予防的であってもよく、且つ/又は疾患及び/若しくは疾患に起因し得る有害作用に対する部分的若しくは完全な治癒の点で治療的であってもよい。本明細書で使用される「処置」は、哺乳動物における、特にヒトにおける、疾患のいずれの処置(treatment)をも包含し、(a)疾患の素因があり得るが、それを有すると未だに診断されていない対象において疾患が生じるのを予防すること、(b)疾患を阻害すること、すなわち、その発達を止めること、及び(c)疾患を軽減すること、すなわち、疾患の退縮を引き起こすことを含む。
【0034】
「個体」、「対象」、「宿主」、及び「患者」という用語は、本明細書で交換可能に使用され、ネズミ科動物(ラット、マウス)、非ヒト霊長類、ヒト、イヌ科動物、ネコ科動物、有蹄動物(例えば、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ)などを含むが、これらに限定されない哺乳動物を指す。
【0035】
「治療有効量」又は「効果的量」は、疾患を処置するために哺乳動物(例えば、ヒト)又は他の対象に投与されるとき、その疾患に対するそのような処置を達成するのに十分である、薬剤(例えば、本明細書に記載の構築物、粒子など)の量を指す。「治療有効量」は、化合物又は細胞、疾患及びその重症度、並びに処置されるべき対象の年齢、体重などに応じて変動し得る。
【0036】
「共投与」及び「と組み合わせて」という用語は、同時に、並行に、又は具体的な時限のない範囲での順次のいずれかでの、2つ以上の治療剤の投与を含む。一実施形態では、薬剤は、細胞中若しくは対象の体内に同時に存在するか、又はそれらの生物学的若しくは治療的効果を同時に発揮する。一実施形態では、治療剤は、同じ組成物又は単位剤形中にある。他の実施形態では、治療剤は、別個の組成物又は単位剤形中にある。特定の実施形態では、第1の薬剤は、第2の治療剤の投与の前に(例えば、分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、又は12週間前)、それと併用で、又はその後に(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、又は12週間後)、投与することができる。
【0037】
本明細書で使用されるとき、「薬学的組成物」は、哺乳動物(例えばヒト)などの対象への投与に好適な組成物を包含することが意図される。一般的に、「薬学的組成物」は、滅菌されており、対象内で望ましくない反応を引き出す可能性のある汚染物質がない(例えば、薬学的組成物中の化合物は、薬学的グレードである)。薬学的組成物は、それを必要とする対象又は患者への、経口、頬側、直腸、非経口、腹腔内、皮内、気管内などを含むいくつかの異なる投与経路を介した投与のために、設計することができる。
【0038】
本発明がさらに説明される前に、本発明が、説明される特定の実施形態に限定されず、したがって、当然のことながら、異なり得ることを理解されたい。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書で使用される専門用語が、特定の実施形態を説明する目的のためにすぎず、限定するものとしては意図されないこともまた理解されたい。
【0039】
値の範囲が提供される場合、文脈上そうでないとする明確な指示がない限り下限の単位の小数第1位までの、その範囲の上限と下限の間の、且つその指定範囲における任意の他の指定された又は介在する値である各介在値が、本発明内に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限及び下限は、指定範囲における任意の具体的な除外限度を条件として、独立して、より小さい範囲に含まれてもよく、それもまた本発明内に包含される。指定範囲が限度の一方又は両方を含む場合、それらの含まれた限度の一方又は両方を除外する範囲もまた本発明に含まれる。
【0040】
別途規定されない限り、本明細書で使用される全ての学術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の専門家によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載される方法及び物質と同様又は同等のいずれの方法及び物質もまた、本発明の実践又は試験で使用することができるが、好ましい方法及び物質がここでは記載される。本明細書で言及される全ての刊行物は、刊行物が引用される関連となる方法及び/又は物質を開示及び記載するために、参照により本明細書に組み込まれる。
【0041】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上そうでないとする明確な指示がない限り、複数形の指示対象を含むことに留意しなければならない。したがって、例えば、「干渉粒子(an interfering particle)」への言及は、複数のそのような粒子を含み、「シス作用エレメント(the cis-acting element)」への言及は、1つ以上のシス作用エレメント及び当業者に公知のその均等物への言及を含み、その他も同様である。特許請求の範囲は、いずれの任意選択による要素を除外するように起草され得ることにさらに留意されたい。したがって、この記述は、特許請求の範囲の要素の列挙に関連する「のみ(solely)」、「のみ(only)」などの排他的専門用語の使用、又は「否定的」限定の使用のための、先行的基礎としての機能を果たすことが意図される。
【0042】
明確さのために別個の実施形態の文脈において記載される、本発明の特定の特色はまた、単一の実施形態と組み合わせて提供され得ることが理解される。逆に、簡潔さのために単一の実施形態の文脈において記載される、本発明の種々の特色もまた、別個に又は任意の好適な部分的組み合わせで提供され得る。本発明に関連する実施形態の全ての組み合わせは、本発明によって具体的に包含され、あたかも全ての組み合わせが個別に明示的に開示されたかのごとく、本明細書に開示される。さらに、種々の実施形態及びその要素の全ての部分的組み合わせもまた、あたかもありとあらゆるそのような部分的組み合わせが本明細書に個々に且つ明示的に開示されたかのごとく、本発明によって具体的に包含され、本明細書に開示される。
【0043】
本明細書で考察される刊行物は、本出願の出願日前にそれらを開示するためのみに提供される。本明細書のいかなる部分も、本発明が、先願発明に基づいて、そのような刊行物に先行する権利を有さないという承認として解釈されるべきではない。さらに、提供される刊行物の日付は、実際の刊行物の日付と異なる場合があり、それらはそれぞれ確認される必要があり得る。
【0044】
本開示は、干渉し、条件付きで複製する、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)構築物;構築物を構成する感染性粒子;及び構築物又は粒子を含む組成物を提供する。構築物、粒子、及び組成物は、個体におけるHIVウイルス量を減少させる方法において有用であり、その方法もまた提供される。
【0045】
干渉構築物
本開示は、干渉し、条件付きで複製する、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)構築物を提供する。簡単にするために、干渉し、条件付きで複製するHIV構築物は、「干渉構築物(interfering constructs)」又は「TIP」と呼ばれる。対象干渉構築物は条件付きで複製され、例えば、対象干渉構築物は、哺乳動物宿主に存在する場合、野生型HIVの非存在下で、それ自体のコピーを含む感染性粒子を形成することはできない。対象干渉構築物は、パッケージングに必要な適切なポリペプチドが提供される場合、実験室においてインビトロで(例えば、インビトロ細胞培養で)、感染性粒子にパッケージ化することができる。感染性粒子は、干渉構築物を宿主細胞、例えば、インビボ宿主細胞に送達することができる。インビボ宿主細胞(哺乳動物対象の宿主細胞)内に入ると、干渉構築物は、宿主細胞のゲノムに組み込まれるか、又は細胞質に留まることができる。干渉構築物は、野生型HIVの存在下でのみインビボ宿主細胞で複製することができる。干渉構築物を含むインビボ宿主細胞が野生型HIVに感染すると、干渉構築物は野生型HIVよりも実質的により効率的に複製し(例えば、転写及びパッケージングされ)、それにより野生型HIVを打ち負かす。その結果、HIVウイルス量は個体において大幅に低減される。
【0046】
本開示の干渉構築物は、RNA構築物、又はDNA構築物(例えば、RNAのDNAコピー)であり得る。
本開示の干渉構築物は、異種ヌクレオチド配列、例えば、HIVに由来しない配列を含まない。本開示の干渉構築物は、遺伝子産物をコードする異種ヌクレオチド配列を含まない。遺伝子産物には、ポリペプチド及びRNAが含まれる。「異種」とは、天然の野生型HIVには通常は存在しないヌクレオチド配列を指す。
【0047】
対象干渉構築物は、HIVシス作用エレメントを含み、変更が1つ以上のコードHIVトランス作用性ポリペプチドを非機能的にするようなHIVヌクレオチド配列の変更を含む。「非機能的」とは、コードされたポリペプチドのトランケーション又は内部欠失のために、又はポリペプチド全体が欠如しているために、HIVトランス活性化ポリペプチドがその通常の機能を実行しないことを意味する。HIVヌクレオチド配列の「変更」には、1つ以上のヌクレオチドの欠失及び/又は1つ以上のヌクレオチドの置換が含まれる。
【0048】
場合によっては、野生型HIVに感染している宿主細胞(例えば、個体の宿主細胞)に存在する場合、対象干渉構築物は、対象干渉構築物を含まない同じ型の宿主細胞における野生型HIVの複製速度よりも、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、又は10倍を超えて速い速度で複製する。
【0049】
場合によっては、野生型HIVに感染している宿主細胞(例えば、個体の宿主細胞)に存在する場合、対象干渉構築物は、野生型HIVに感染しているが対象干渉構築物を含まない宿主細胞における野生型HIV転写物の量と比較して、細胞内の野生型HIV転写物の量を少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、又は少なくとも約90%低減する。
【0050】
場合によっては、野生型HIVに感染している宿主細胞(例えば、個体の宿主細胞)に存在する場合、対象干渉構築物は、宿主細胞の細胞質における野生型HIVコードRNAに対する干渉構築物コードRNAの比(重量比、例えば、μg:μg)が1より大きくなるように、干渉構築物コードRNAの産生をもたらす。場合によっては、野生型HIVに感染している宿主細胞(例えば、個体の宿主細胞)に存在する場合、対象干渉構築物は、宿主細胞の細胞質における野生型HIVコードRNAに対する干渉構築物コードRNAの比(重量比、例えば、μg:μg)が、少なくとも約1.5:1~少なくとも約102:1となるように、又は102:1より大きくなるように、例えば、約1.5:1~約2:1、約2:1~約5:1、約5:1~約10:1、約10:1~約25:1、約25:1~約50:1、約50:1~約75:1、約75:1~約100:1となるように、又は100:1より大きくなるように、干渉構築物コードRNAの産生をもたらす。
【0051】
場合によっては、野生型HIVに感染している宿主細胞(例えば、個体の宿主細胞)に存在する場合、対象干渉構築物は、宿主細胞の細胞質における野生型HIVコードRNAに対する干渉構築物コードRNAの比(例えば、モル比)が1より大きくなるように、干渉構築物コードRNAの産生をもたらす。場合によっては、野生型HIVに感染している宿主細胞(例えば、個体の宿主細胞)に存在する場合、対象干渉構築物は、宿主細胞の細胞質における野生型HIVコードRNAに対する干渉構築物コードRNAの比(例えば、モル比)が、少なくとも約1.5:1~少なくとも約102:1となるように、又は102:1より大きくなるように、例えば、約1.5:1~約2:1、約2:1~約5:1、約5:1~約10:1、約10:1~約25:1、約25:1~約50:1、約50:1~約75:1、約75:1~約100:1となるように、又は100:1より大きくなるように、干渉構築物コードRNAの産生をもたらす。
【0052】
宿主細胞の細胞質における野生型HIVコード化RNAに対する干渉構築物コード化RNAの比を測定するために、任意の都合の良い方法を使用することができる。好適な方法は、例えば、干渉構築物でコードされたRNA及び野生型HIVでコードされたRNAの両方のqRT-PCRを介して転写物数を直接測定すること;干渉構築物でコードされたRNA及び野生型HIVでコードされたRNAによってコードされるタンパク質のレベルを測定すること(例えば、ウエスタンブロット、ELISA、質量分析などを介して);干渉構築物でコードされたRNA及び野生型HIVでコードされたRNAに関連する検出可能な標識のレベルを測定すること(例えば、RNAによってコードされ、RNAから翻訳されるタンパク質に融合される蛍光タンパク質の蛍光)を含み得る。このような測定は、例えば、共トランスフェクション後に、任意の都合の良い細胞型を使用して実行することができる。
【0053】
いくつかの実施形態では、干渉構築物コードRNAは、パッケージ化されている。いくつかの実施形態では、干渉構築物コードRNAは、パッケージ化されていない。場合によっては、干渉構築物コードRNAは、パッケージ化されたRNA及びパッケージ化されていないRNAの両方を含む。場合によっては、野生型HIVに感染している宿主細胞(例えば、個体の宿主細胞)に存在する場合、対象干渉構築物は、野生型gRNA HIVゲノムと二量体化する。場合によっては、野生型HIVに感染している宿主細胞(例えば、個体の宿主細胞)に存在する場合、対象干渉構築物は、野生型gRNA HIVゲノムと二量体化し、野生型HIVの二量体化を阻害する。
【0054】
野生型HIV及び対象干渉構築物は両方、宿主細胞によって(例えば、個体の宿主細胞において)感染性粒子にパッケージ化することができる。場合によっては、宿主細胞が対象干渉構築物及び野生型HIVの両方を含む場合、宿主細胞によって産生された干渉構築物含有粒子:野生型HIV含有粒子の比は、1より大きい。場合によっては、宿主細胞が対象干渉構築物及び野生型HIVの両方を含む場合、宿主細胞によって産生された干渉構築物含有粒子:野生型HIV含有粒子の比は、少なくとも約1.5:1~少なくとも約102:1であるか、又は102:1より大きく、例えば、約1.5:1~約2:1、約2:1~約5:1、約5:1~約10:1、約10:1~約25:1、約25:1~約50:1、約50:1~約75:1、約75:1~約100:1であるか、又は100:1より大きい。
【0055】
野生型HIVゲノムは、およそ9700ヌクレオチド長であり、例えば、約9700ヌクレオチド~約9800ヌクレオチド長である。対照的に、対象干渉構築物は、約1000ヌクレオチド(nt)~約9700nt、例えば、約1000nt~約2000nt、約2000nt~約3000nt、約3000nt~約4000nt、約4000nt~約5000nt、約5000nt~約6000nt、約6000nt~約7000nt、約7000nt~約8000nt、約8000nt~約9000nt、又は約9000nt~約9700ntなどの、HIVゲノム全長の一部であるゲノムを有する。場合によっては、対象干渉構築物は、約2500ヌクレオチド(nt)~約9500nt、例えば、約2500nt~約3500nt、約3000nt~約4000nt、約3500nt~約4500nt、約4000nt~約5000nt、約4500nt~約5500nt、約5000nt~約6000nt、約5500nt~約6500nt、約6000nt~約7000nt、約6500nt~約7500nt、約7000nt~約8000nt、約7500nt~約8500nt、約8000nt~約9000nt、又は約8500nt~約9500ntの長さを有する。
【0056】
対象干渉構築物は、1より大きい基本再生産数(basic reproductive ratio)(R0)(「基本再生産数(basic reproductive number)」とも呼ばれる)を示し得る。R0は、感染期間中に1つのケースが平均して生成するケースの数である。R0が1の場合、感染は集団に伝播する可能性がある。したがって、対象干渉構築物は、集団内のある個体から別の個体に伝播する能力を有する。場合によっては、対象干渉構築物(又は対象干渉粒子)は、約2~約5、約5~約7、約7~約10、約10~約15、又は15超のR0を有する。
【0057】
シス作用エレメント
本開示の干渉構築物は、レンチウイルスシス作用エレメントを含む。シス作用エレメントは、例えば、レンチウイルスΨ(psi)パッケージングシグナル;レンチウイルスrev応答エレメント(rre);レンチウイルスの長い末端反復(LTR);及びHIVタンパク質コード配列内に包埋されたシスエレメントを含む。HIV-1シス作用エレメントのヌクレオチド配列は当技術分野で公知である。例えば、次のWebサイトを参照されたい:hiv.lanl.gov。
【0058】
レンチウイルスΨパッケージングシグナル配列は当技術分野で公知である。例えば、レバー(Lever)ら著、1989年、ジャーナル・オブ・バイロロジー(J.Virol.)、第63巻、p.4085;及びマクブライド(McBride)ら著、1998年、ジャーナル・オブ・バイロロジー(J.Virol.)第71巻、p.4544を参照されたい。Ψパッケージングシグナルの長さは約80ntから約150ntであり、4つのステムループ(SL)構造:SL1-SL4を含む。レンチウイルスΨ(psi)パッケージングシグナル配列は、任意の既知の野生型Ψパッケージングシグナル配列と、少なくとも約85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%のヌクレオチド配列同一性を有し得る。
【0059】
HIV-1 SL-1(当技術分野ではHIV-1_DISとしても知られる)は、以下の配列を有し得る:
5’-GGACUCGGCUUGCUGAAGYGCRCWCRGCAAGAGGCGAGRG-3’(配列番号6)。
【0060】
HIV-1 SL2(当技術分野ではHIV-1_SDとしても知られる)は、以下の配列を有し得る:
5’-RGCGACUGGUGAGUACGCH-3’(配列番号7)。
【0061】
HIV-1 SL3は、以下の配列を有し得る:
5’-UGACUAGCGGAGGCUAGAAGGAG-3’(配列番号8)。
HIV-1 SL4は、以下の配列を有し得る:
5’-UGGGUGCGAGAGCGUCARUA-3’(配列番号9)。
【0062】
上記の配列では、YはC又はTであり;WはA又はTであり;RはA又はGであり;HはA、C、又はTである。
レンチウイルスのrev応答エレメント(rre)は、HIV-1ゲノムの約nt7709~8063内にあり、長さは約240nt~約355ntである。例えば、カレン(Cullen)ら著、1991年、ジャーナル・オブ・バイロロジー(J.Virol.)、第65巻、p.1053;カレン(Cullen)ら著、1991年、セル(Cell)、第58巻、p.423~426;及びマリム(Malim)ら著、1989年、ネイチャー(Nature)、第338巻、第6212号、p.254~7を参照されたい。好適なレンチウイルスrreは、任意の既知の野生型HIV-1 rre配列と、少なくとも約85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%のヌクレオチド配列同一性を有するヌクレオチド配列を含み得る。
【0063】
HIV-1LTR配列は当技術分野で公知である。好適なレンチウイルス5’-LTR又は3’-LTRは、任意の既知の野生型HIV-1 5’LTR又は3’LTR配列と、少なくとも約85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%のヌクレオチド配列同一性を有するヌクレオチド配列を含み得る。
【0064】
いくつかの実施形態では、干渉し、条件付きで複製する、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)構築物は、長い末端反復、Gagリーダ配列、Ψパッケージングシグナル、中央ポリプリントラクト(cPPT)、rev応答エレメント(RRE)配列、ポリプリントラクト(PPT)、主要スプライスドナー(MSD)、及びA3、及びA7を含むシス作用エレメントを含む。いくつかの実施形態では、シス作用エレメントは、D4、A4、及びA5をさらに含む。いくつかの実施形態では、構築物は、長い3’末端反復、長い5’末端反復、又はそれらの組み合わせを含む。
【0065】
特定の実施形態では、構築物は、HIVスプライスドナー又はアクセプター部位における欠失又は変異を含む1つ以上の変更をさらに含む。例えば、1つ以上のD2及びD3スプライスドナー部位並びにA1及びA2スプライスアクセプター部位を欠失させてもよい。いくつかの実施形態では、D2及びD3スプライスドナー部位並びにA1及びA2スプライスアクセプター部位は欠失している。
【0066】
特定の実施形態では、構築物は、Rev、Vpu、及びEnvのそれぞれを非機能的にする1つ以上の変更をさらに含む。
二量体化開始シグナル
レンチウイルスは二倍体であり、ゲノムRNA(gRNA)は対でビリオンにパッケージ化され、gRNAを二量体化させることでRNAの2つのコピーのカプシド形成が達成される。このgRNA対形成は、HIV-1ゲノムのステムループ1(SL1)内に位置し、コンセンサス配列GCGCGCを有する、二量体化開始シグナル(DIS)と呼ばれる6ヌクレオチドのパリンドロームで開始される。
【0067】
本開示の干渉構築物は、例えば、コンセンサス配列GCGCGCを有する野生型DISを含み得る。他の場合において、本開示の干渉構築物は、単一ヌクレオチド変異を有するDISを含む(例えば、GCGCGC→GCGAGC)。GCGAGC DISにより、HIV-1のホモ二量体化が低減される。
【0068】
トランス作用エレメント
本開示の干渉構築物は、HIVヌクレオチド配列における1つ以上の変更を含み、ここで、1つ以上の変更により、Pol、Tat、Vpr、Nef、及びVifのそれぞれが機能しなくなり、その結果、構築物はそれ自体ではウイルスの複製及び産生ができなくなるが、ヘルパーウイルスとして機能するために複製能を有するHIVを要する。野生型HIV-1ゲノムは、3つのクラスのRNA:スプライシングされていないRNA;不完全にスプライシングされたRNA;完全にスプライシングされたRNAを生じる。
【0069】
スプライシングされていないRNA:スプライシングされていない9kbの一次転写物は、Gag及びGag-Pol前駆体タンパク質を生成するために発現させるか、ゲノムRNAとして機能するようにビリオンにパッケージ化することができる。不完全にスプライシングされたRNA。これらのmRNAは、HIV RNAゲノムの5’末端に最も近いスプライスドナー部位を、ウイルスの中央領域にあるスプライスアクセプターのいずれかと組み合わせて使用する。これらのRNAは、Env、Vif、Vpu、Vpr、及びTatの単一エクソン型を発現する可能性がある。これらのヘテロmRNAは4~5kbの長さで、HIVの第2のイントロンを保持する。
【0070】
完全にスプライシングされたRNA。これらのmRNAは、HIVの両方のイントロンをスプライシングし、Rev、Nef、及び2エクソン型のTatを発現する可能性を有する。これらのヘテロmRNAは、Revタンパク質の発現を要しない。
【0071】
場合によっては、HIVヌクレオチド配列の変更は、スプライスドナー及び/又はスプライスアクセプターの1つ以上のヌクレオチドの欠失である。例えば、シュワルツ(Schwartz)ら著、1990年、ジャーナル・オブ・バイロロジー(J.Virol.)、第64巻、p.2519を参照されたい。例えば、場合によっては、変更は、主要な5’スプライスドナーの1つ以上のヌクレオチドの欠失又は置換である。HIVの5’主要スプライスドナーのヌクレオチド配列は公知である。例えば、ハリソン(Harrison)及びレバー(Lever)著、1992年、ジャーナル・オブ・バイロロジー(J.Virol.)、第66巻、p.4144を参照されたい。
【0072】
本開示の干渉構築物は、いくつかの実施形態では、HIVの1つ以上のスプライスドナー及び/又はスプライスアクセプター配列における1つ以上のヌクレオチドの欠失を含み得、その結果、Env、Gag、Pol、Tat、Rev、Vpr、Nef、Vif、及びVpuの1つ以上が産生されない。本開示の干渉構築物は、いくつかの実施形態では、HIVの1つ以上のスプライスドナー及び/又はスプライスアクセプター配列における1つ以上のヌクレオチドの変異を含み得、その結果、Env、Gag、Pol、Tat、Rev、Vpr、Nef、Vif、及びVpuの1つ以上が産生されない。場合によっては、Env、Gag、Pol、Tat、Rev、Vpr、Nef、Vif、及びVpuのいずれも産生されない。場合によっては、Env、Vif、Vpu、Vpr、及びTatが産生されない。場合によっては、Pol、Tat、Vpr、Nef、及びVifのいずれも産生されない。場合によっては、Env、Pol、Tat、Rev、Vpr、Nef、Vif、及びVpuのいずれも産生されない。
【0073】
場合によっては、本開示の干渉構築物は、D1、D2、D3、及びD4から選択されるHIVスプライスドナーにおける1つ以上のヌクレオチドの欠失又は置換を含む。場合によっては、本開示の干渉構築物は、A1、A2、A3、A4、A5、A6、及びA7から選択されるHIVスプライスアクセプターにおける1つ以上のヌクレオチドの欠失又は置換を含む。例えば、HIVゲノムにおけるエクソンの位置に対するHIVスプライスドナーD1~D4及びスプライスアクセプターA1~A7の組織化について、マンダル(Mandal)ら著(2010年、ジャーナル・オブ・バイロロジー(J.Virol.)、第84巻、p.12790)の
図1を参照されたい。
【0074】
場合によっては、本開示の干渉構築物は、HIV主要スプライスドナーにおける1つ以上のヌクレオチドの欠失又は置換を含み、ここで、主要なスプライスドナー(D1)を囲む例示的な野生型配列には、
【0075】
【0076】
が含まれ、;
ここで、大文字で太字の「G」は主要なスプライスドナーである。例えば、ハリソン(Harrison)及びレバー(Lever)著、1992年、ジャーナル・オブ・バイロロジー(J.Virol.)、第66巻、p.4144の
図8を参照されたい。主要なスプライスドナーは、gagイニシエータATGの5’のおよそ50ヌクレオチド(例えば、45ヌクレオチド~55ヌクレオチド)である。
【0077】
場合によっては、本開示の干渉構築物は、HIVスプライスドナーD2における1つ以上のヌクレオチドの欠失又は置換を含む。HIVスプライスドナーD2を囲む例示的なヌクレオチド配列は、5’-AAGGUGAAGGG-3’(配列番号15)である。場合によっては、本開示の干渉構築物は、HIVスプライスドナーD3における1つ以上のヌクレオチドの欠失又は置換を含む。HIVスプライスドナーD3を囲む例示的なヌクレオチド配列は、5’-AAGGUAGGUCA-3’(配列番号16)である。場合によっては、本開示の干渉構築物は、HIVスプライスドナーD4における1つ以上のヌクレオチドの欠失又は置換を含む。HIVスプライスドナーD4を囲む例示的なヌクレオチド配列は、5’-CUAGACUAGAG-3’(配列番号17)である。例えば、マンダル(Mandal)ら著、2010年、ジャーナル・オブ・バイロロジー(J.Virol.)、第84巻、p.12790を参照されたい。HIVスプライスドナーD4を囲む別の例示的なヌクレオチド配列は、5’-GCAGUAAGUAG-3’(配列番号18)である。例えば、カムラー(Kammler)ら著、2006年、レトロウイルス学(Retrovirol.)、第3巻、p.89を参照されたい。
【0078】
場合によっては、本開示の干渉構築物は、HIVスプライスアクセプター配列における1つ以上のヌクレオチドの欠失又は置換を含む。HIVスプライスアクセプター配列を囲むヌクレオチド配列は、当技術分野で公知である。例えば、シュワルツ(Schwartz)ら著、1990年、ジャーナル・オブ・バイロロジー(J.Virol.)、第64巻、p.2519の
図7を参照されたい。
【0079】
例えば、配列:
【0080】
【0081】
において、大文字で太字の「AG」は、5’-3’からスプライスアクセプター4A、4B、5、7A、7B、及び7を示す。revイニシエータATGには下線が引かれている。
【0082】
HIVスプライスアクセプターA7を囲む例示的なヌクレオチド配列が、カムラー(Kammler)ら著、2006年、レトロウイルス学(Retrovirol.)、第3巻、p.89の
図2Aに示されている。HIVスプライスアクセプターA5を囲む例示的なヌクレオチド配列が、カムラー(Kammler)ら著、2006年、レトロウイルス学(Retrovirol.)、第3巻、p.89の
図4Aに示されている。HIVスプライスアクセプターA1~A7を囲む例示的なヌクレオチド配列が、カムラー(Kammler)ら著、2006年、レトロウイルス学(Retrovirol.)、第3巻、p.89の
図5Aに示されている。
【0083】
例示的な干渉構築物
干渉構築物の非限定的な例は、
図1D、2A、及び4Aに模式的に示される。例示的な干渉構築物は、「F1pol」(配列番号2)、「F1polスプライス」(配列番号3);「F1vpr」(配列番号4);及び「F1vprスプライス」(配列番号5)と呼ばれる。例示的な干渉構築物は、
図7A-7Eに示される。
【0084】
特定の実施形態では、干渉し、条件付きで複製する、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)構築物は、HIVヌクレオチド配列における1つ以上の変更を含み、ここで、1つ以上の変更により、Pol、Tat、Vpr、Nef、及びVifのそれぞれが機能しなくなり、その結果、構築物はそれ自体ではウイルスの複製及び産生ができなくなるが、ヘルパーウイルスとして機能するために複製能を有するHIVを要する。
【0085】
特定の実施形態では、HIVヌクレオチド配列における1つ以上の変更は、HIV Polをコードするヌクレオチド配列の1つ以上のヌクレオチドの欠失又は変異、HIV Vifをコードするヌクレオチド配列の1つ以上のヌクレオチドの欠失又は変異、HIV Vprをコードするヌクレオチド配列の1つ以上のヌクレオチドの欠失又は変異、HIV Tatをコードするヌクレオチド配列の1つ以上のヌクレオチドの欠失又は変異、及びHIV Nefをコードするヌクレオチド配列の1つ以上のヌクレオチドの欠失又は変異を含む。
【0086】
特定の実施形態では、構築物は、配列番号1の参照HIV配列に対して付番された位置3159~4780、4904~5737、及び8786~9048に対応するヌクレオチドの欠失を含む。特定の実施形態では、構築物は、配列番号1の参照HIV配列に対して付番された位置1~634、635~789、686~823、790~2292、2085~3158、4781~4903、5738~5849、5830~6044、5872~5880、5969~6044、6045~6060、6061~6306、6221~8785、7759~7992、8369~8414、8369~8643、及び9049~9709に対応するヌクレオチドを含む。
【0087】
特定の実施形態では、構築物は、配列番号2のヌクレオチド配列、又はそれに対して少なくとも約80~100%の配列同一性(81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%の配列同一性などの、これらの範囲内の任意のパーセント同一性を含む)を示すヌクレオチド配列を含む。
【0088】
特定の実施形態では、構築物は、HIV Revをコードするヌクレオチド配列の1つ以上のヌクレオチドの欠失又は変異、HIV Vpuをコードするヌクレオチド配列の1つ以上のヌクレオチドの欠失又は変異、及びHIV Envをコードするヌクレオチド配列の1つ以上のヌクレオチドの欠失又は変異をさらに含む。特定の実施形態では、構築物は、配列番号1の参照HIV配列に対して付番された位置3159~4780、4904~5737、5850~6341、及び8786~9048に対応するヌクレオチドの欠失を含む。特定の実施形態では、構築物は、配列番号1の参照HIV配列に対して付番された位置1~634、635~789、686~823、790~2292、2085~3158、4781~4903、5738~5849、6342~8785、7759~7992、8369~8414、8369~8643、及び9049~9709に対応するヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、構築物は、配列番号3のヌクレオチド配列、又はそれに対して少なくとも約80~100%の配列同一性(81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%の配列同一性などの、これらの範囲内の任意のパーセント同一性を含む)を示すヌクレオチド配列を含む。
【0089】
特定の実施形態では、構築物は、配列番号1の参照HIV配列に対して付番された位置3159~5630及び8786~9048に対応するヌクレオチドの欠失を含む。特定の実施形態では、構築物は、配列番号1の参照HIV配列に対して付番された位置1~634、635~789、686~823、790~2292、2085~3158、5631~5849、4778~4898、5850~6044、5969~6044、6045~6060、6061~6306、6221~8785、7759~7992、8369~8414、8369~8643、9049~9709に対応するヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、構築物は、配列番号4のヌクレオチド配列、又はそれに対して少なくとも約80~100%の配列同一性(81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%の配列同一性などの、これらの範囲内の任意のパーセント同一性を含む)を示すヌクレオチド配列を含む。
【0090】
特定の実施形態では、構築物は、配列番号1の参照HIV配列に対して付番された位置5850~6341に対応するヌクレオチドの欠失をさらに含む。特定の実施形態では、構築物は、配列番号1の参照HIV配列に対して付番された位置1~634、635~789、686~823、790~2292、2085~3158、5631~5849、4778~4898、6342~8785、7759~7992、8369~8414、8369~8643、9049~9709に対応するヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、構築物は、配列番号5のヌクレオチド配列、又はそれに対して少なくとも約80~100%の配列同一性(81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%の配列同一性などの、これらの範囲内の任意のパーセント同一性を含む)を示すヌクレオチド配列を含む。
【0091】
前述の付番は、HIV-1 pNL4-3株の参照ゲノム配列(配列番号1)に関連しているが、他のHIV株及び任意のタイプ、サブタイプ(HIV-1グループ:M、N、O、P及びHIV-2)、又はクレード(HIV-1 M:A1、A2、A3、A4、A6、B、C、D、F1、F2、G、H、J、及びK;HIV-2:A、B、C、F及びG)の分離株もまた、本発明に包含されることが意図されていることを理解されたい。
【0092】
特定の実施形態では、構築物は、HIV Polをコードするヌクレオチド配列における欠失、HIV Vifをコードするヌクレオチド配列の欠失、HIV Vprをコードするヌクレオチド配列の欠失、HIV Tatをコードするヌクレオチド配列の欠失、HIV Revをコードするヌクレオチド配列の欠失、HIV Vpuをコードするヌクレオチド配列の欠失、HIV Envをコードするヌクレオチド配列の欠失、HIV Nefをコードするヌクレオチド配列の欠失、若しくはHIV Gagをコードするヌクレオチド配列の欠失、又はそれらの組み合わせを含む。
【0093】
干渉粒子
本開示は、干渉構築物を含む粒子をさらに含む。このような粒子は、本明細書において「干渉粒子(interfering particle)」と呼ばれる。干渉粒子は、宿主細胞に感染及び侵入することができる。
【0094】
本開示の干渉粒子は、場合によっては、HIVエンベロープタンパク質(例えば、gp120及びgp41)を含むであろう。他の場合には、本開示の干渉粒子は、非HIVエンベロープタンパク質を含み、すなわち、干渉構築物はシュードタイプ化される。
【0095】
本開示の干渉粒子は、場合によっては、HIVエンベロープタンパク質(例えば、gp120及びgp41)を含み、その結果、パッケージ化された干渉粒子は、野生型HIVで使用されるのと同じ受容体(CCR5)を介して細胞に感染する。CCR5は、主にT細胞、マクロファージ、樹状細胞及びミクログリアに発現される。したがって、いくつかの実施形態では、対象干渉粒子は、主にT細胞、マクロファージ、樹状細胞、及びミクログリアに感染する。
【0096】
シュードタイプ化干渉構築物
上記のように、場合によっては、対象干渉構築物がシュードタイプ化される。例えば、場合によっては、対象干渉構築物がVSV-Gでシュードタイプ化される。VSV-Gシュードタイプ化レトロウイルスは、広範な宿主範囲(汎親和性)を示し、狭宿主性及び広宿主性のレトロウイルスによる感染に耐性のある細胞に効率的に感染することができる。(イー(Yee)ら著、2004年、米国科学アカデミー紀要(Proc.Natl.Acad.Sci.USA、第91巻、p.9564~9568))。VSV-Gの任意の好適な血清型(例えば、インディアナ、ニュージャージー、チャンディプラ、パイリー)及び株(例えば、VSVインディアナ、サンファン)を使用できる。安定的なVSV-Gシュードタイプ化レトロウイルスパッケージング細胞株は、大規模なウイルス調製物(例えば、10~50リットルの上清)の生成を可能にし、1mlあたり107~1011レトロウイルス粒子の範囲のレトロウイルスストックを生成する。
【0097】
いくつかの実施形態では、本開示の干渉構築物は、シンドビスウイルスエンベロープ糖タンパク質でシュードタイプ化される。例えば、米国特許第8,187,872号明細書を参照されたい。
【0098】
細胞株
任意の好適な細胞株を使用して、対象干渉構築物をパッケージングして、干渉構築物を含む感染性粒子(「干渉粒子」)を生成するために使用するパッケージング細胞を調製することができる。一般的に、細胞は哺乳動物細胞である。特定の実施形態では、パッケージング細胞株を産生するために使用される細胞は、ヒト細胞である。使用できる好適なヒト細胞株には、例えば、293細胞が含まれる(グラハム(Graham)ら著、1977年、ジャーナル・オブ・ジェネラルバイロロジー(J.Gen.Virol.)、第36巻、p.59~72、tsa 201細胞(ハインツェル(Heinzel)ら著、1988年、ジャーナル・オブ・バイロロジー(J.Virol.)、第62巻、p.3738)、及びNIH3T3細胞(アメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC)))。本発明における使用のための他の好適なパッケージング細胞株には、Psi-2細胞(マン(Mann)ら著、1983年、セル(Cell)、第33巻、p.153~159;FLY(コゼット(Cossett)ら著、1993年、バイロロジー(Virol.)、第193巻、p.385~395;BOSC 23細胞(ペア(Pear)ら著、1993年、米国科学アカデミー紀要(PNAS)、第90巻、p.8392~8396;PA317細胞(ミラー(Miller)ら著、1986年、分子細胞生物学(Molec.and Cell.Biol.)、第6巻、p.2895~2902;Kat細胞株(フィナー(Finer)ら著、1994年、血液(Blood)、第83巻、p.43~50;GP+E細胞及びGP+EM12細胞(マーコビッツ(Markowitz)ら著、1988年、ジャーナル・オブ・バイロロジー(J.Virol.)、第62巻、p.1120~1124、及びPsi Crip及びPsi Cre細胞(米国特許第5,449,614号明細書;ダノス・O(Danos,O.)及びマリガン(Mulligan)ら著、1988年、米国科学アカデミー紀要(PNAS)、第85巻、p.6460~6464)などの、他のヒト細胞株由来(例えば、胚性細胞株由来)のパッケージング細胞株及びマウス細胞株由来のパッケージング細胞株が含まれる。パッケージング細胞株は、汎親和性、広宿主性、又は狭宿主性の宿主範囲を有するレトロウイルス粒子を産生することができる。例示的なパッケージング細胞株は、分裂細胞及び非分裂細胞に感染することができるレンチウイルス粒子(例えば、HIV-1、HIV-2及びSIV)などのレトロウイルス粒子を産生する。
【0099】
組成物
本開示は、対象干渉構築物又は対象干渉粒子を含む、医薬組成物及び生物学的組成物を含む、組成物を提供する。簡単にするために、対象干渉構築物及び対象干渉粒子は、以下、集合的に「活性剤」と呼ばれる。
【0100】
本開示は、対象干渉構築物又は対象干渉粒子を含む組成物を提供する。対象干渉構築物組成物又は対象干渉粒子組成物は、対象干渉構築物又は対象干渉粒子に加えて、塩、例えば、NaCl、MgCl2、KCl、MgSO4など;緩衝剤、例えば、トリス緩衝液、N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸)(HEPES)、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸ナトリウム塩(MES)、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、N-トリス[ヒドロキシメチル]メチル-3-アミノプロパンスルホン酸(TAPS)など;可溶化剤;洗剤、例えば、Tween(登録商標)-20などの非イオン性洗剤;ヌクレアーゼ阻害剤;グリセロール;などの1つ以上を含み得る。
【0101】
医薬組成物
活性剤は、いくつかの実施形態では、薬学的に許容される賦形剤と共に製剤化される。多種多様な薬学的に許容される賦形剤は、当技術分野で既知であり、本明細書で詳述される必要はない。薬学的に許容される賦形剤は、例えば、A.ジェンナーロ(A.Gennaro)著、2000年、「レミントン:薬局の科学とプラクティス(Remington:The Science andPractice of Pharmacy)」、第20版、リッピンコット(Lippincott)、ウィリアムス(Williams)及びウィルキンス(Wilkins)著、医薬剤形及び薬剤送達システム(Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems)、1999年、H.C.アンセル(H.C.Ansel)ら著、第7版、リッピンコット(Lippincott)、ウィリアムス(Williams)及びウィルキンス(Wilkins)著、及び医薬賦形剤ハンドブック(Handbook of Pharmaceutical Excipients)、2000年、A.H.キッブ(A.H.Kibbe)ら編、第3版、アメリカ薬学協会(Amer.Pharmaceutical Assoc.)を含む、様々な刊行物に十分に記載されている。製剤の次の説明に関して、「活性剤」は、上述される活性剤、及び任意選択により1つ以上のさらなる治療剤を含む。
【0102】
対象方法において、活性剤は、宿主に、所望の程度の免疫不全ウイルス転写の低減をもたらすことが可能な、任意の好都合な手段を使用して投与され得る。したがって、活性剤は、治療的投与のために多様な製剤中に組み込むことができる。例えば、活性剤は、適切な、薬学的に許容される担体又は希釈剤との組み合わせによって、薬学的組成物へと製剤化することができ、また錠剤、カプセル、粉末、顆粒、軟膏、溶液、坐剤、注射、吸入剤、及びエアロゾルなどの固体、半固体、液体、又は気体形態で、調製物へと製剤化されてもよい。例示的な実施形態では、活性剤は、ゲルとして、溶液として、又は膣内投与に好適な何らかの他の形態で製剤化される。さらに例示的な実施形態では、活性剤は、ゲルとして、溶液として、又は直腸(例えば、直腸内)投与に好適な何らかの他の形態で製剤化される。
【0103】
薬学的剤形において、活性剤は、その薬学的に許容される塩の形態で投与され得るか、又はそれはまた、単独で、若しくは適切な会合で、並びに他の薬学的に活性化合物と組み合わせて使用されてもよい。次の方法及び賦形剤は、例示的なものにすぎず、決して限定的ではない。
【0104】
いくつかの実施形態では、活性は、水性緩衝液中で製剤化される。好適な水性緩衝液には、約5mM~約100mMまでの様々な強度の、酢酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、及びリン酸塩緩衝液が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、水性緩衝液は、等張性溶液を提供する試薬を含む。そのような試薬は、塩化ナトリウム、及び糖、例えば、マンニトール、デキストロース、スクロースなどを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、水性緩衝液は、ポリソルベート20又は80などの非イオン性界面活性剤をさらに含む。任意選択により、製剤は、防腐剤をさらに含んでもよい。好適な防腐剤には、ベンジルアルコール、フェノール、クロロブタノール、塩化ベンザルコニウムなどが含まれるが、これらに限定されない。多くの場合、製剤は、約4℃で保管される。製剤はまた、凍結乾燥されてもよく、その場合それらは、一般的に、スクロース、トレハロース、ラクトース、マルトース、マンニトールなどの凍結保護物質を含む。凍結乾燥製剤は、長期間にわたって、周囲温度であってさえ、保管することができる。
【0105】
経口調製物について、活性剤は、単独で、又は錠剤、粉末、顆粒、若しくはカプセルを作製するための適切な添加剤と、例えば、ラクトース、マンニトール、トウモロコシデンプン、若しくはジャガイモデンプンなどの従来の添加剤と;結晶性セルロース、セルロース誘導体、アカシア、トウモロコシデンプン、若しくはゼラチンなどの結合剤と;トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、若しくはカルボキシメチルセルロースナトリウムなどの崩壊剤と;タルク若しくはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤と;並びに所望される場合、希釈剤、緩衝剤、湿潤剤、防腐剤及び香味剤と組み合わせて、使用することができる。
【0106】
活性剤は、注射のために、それらを、植物油若しくは他の同様の油、合成脂肪酸グリセリド、高級脂肪酸若しくはプロピレングリコールのエステルなどの水性又は非水性溶媒中に溶解、懸濁、又は乳化させることによって、並びに所望される場合、可溶化剤、張性薬剤、懸濁剤、乳化剤、安定剤、及び防腐剤などの従来の添加剤と共に、調製物へと製剤化することができる。
【0107】
活性剤は、吸入を介して投与されるべきエアロゾル製剤で利用することができる。活性剤は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素などの加圧された許容される噴霧剤へと製剤化することができる。
【0108】
さらに、活性剤は、乳化基剤又は水溶性基剤などの多様な基剤と混合することによって、坐剤へと作製することができる。活性剤は、坐剤を介して直腸投与することができる。坐剤は、体温で融解するが、室温では固体化される、ココアバター、カルボワックス、及びポリエチレングリコールなどのビヒクルを含む可能性がある。
【0109】
シロップ、エリキシル、及び懸濁液などの、経口又は直腸投与のための単位剤形が提供されてもよく、各投与量単位、例えば、茶さじ量、食さじ量、錠剤、又は坐剤は、1つ以上の活性剤を含有する既定量の組成物を含有する。同様に、注射又は静脈内投与のための単位剤形は、滅菌水、生理食塩水、又は別の薬学的に許容される担体中の溶液としての組成物中に、活性剤を含んでもよい。
【0110】
シロップ、エリキシル、ゲル、及び懸濁液などの、膣内又は直腸内投与のための単位剤形が提供されてもよく、ここで各投与量単位、例えば、茶さじ量、食さじ量、錠剤、単位ゲル体積、又は坐剤は、1つ以上の活性剤を含有する既定量の組成物を含有する。
【0111】
本明細書で使用される「単位剤形」という用語は、ヒト及び動物対象のための単位用量として好適な、物理的に個別の単位を指し、各単位は、薬学的に許容される希釈剤、担体、又はビヒクルとの関連で、所望の効果をもたらすのに十分な量に算出された既定量の活性剤を含有する。所与の活性剤のための明細は、一部には、用いられる特定の化合物及び達成されるべき効果、及び宿主における各化合物に関連する薬力学に依存するであろう。他の投与様式もまた、対象発明と共に使用されるであろう。例えば、活性剤は、坐剤、並びに場合によっては、エアロゾル及び鼻腔内組成物に製剤化することができる。坐剤について、ビヒクル組成物は、ポリアルキレングリコール、又はトリグリセリドなどの、伝統的な結合剤及び担体を含むであろう。そのような坐剤は、約0.5%~約10%(w/w)、例えば、約1%~約2%の範囲の活性成分を含有する混合物から形成されてもよい。
【0112】
活性剤は、注射物質として投与することができる。典型的には、注射用組成物は、液体溶液又は懸濁液として調製されるが、注射前の液体ビヒクル中の溶液、又はその中の懸濁液に好適な固体形態がまた調製されてもよい。調製物はまた、乳化されてもよく、又はリポソームビヒクル中にカプセル封入された活性成分であってもよい。
【0113】
活性剤は、いくつかの実施形態では、膣送達のために製剤化されるであろう。膣内投与のための対象製剤は、膣内生体付着性錠剤、膣内生体付着性微粒子、膣内クリーム、膣内ローション、膣内泡状物質、膣内軟膏、膣内ペースト、膣内溶液、又は膣内ゲルとして製剤化される活性剤を含む。
【0114】
活性剤は、いくつかの実施形態では、直腸送達のために製剤化されるであろう。直腸内投与のための対象製剤は、直腸内生体付着性錠剤、直腸内生体付着性微粒子、直腸内クリーム、直腸内ローション、直腸内泡状物質、直腸内軟膏、直腸内ペースト、直腸内溶液、又は直腸内ゲルとして製剤化される活性剤を含む。活性剤を含む対象製剤は、賦形剤(例えば、スクロース、デンプン、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、グルコース、セルロース、タルク、リン酸カルシウム、又は炭酸カルシウム)、結合剤(例えば、セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリプロピルピロリドン、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、アラビアガム、ポリ(エチレングリコール)、スクロース、又はデンプン)、崩壊剤(例えば、デンプン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルデンプン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、重炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、又はクエン酸カルシウム)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸、タルク、又はラウリル硫酸ナトリウム)、香味剤(例えば、クエン酸、メントール、グリシン、又はオレンジ粉末)、防腐剤(例えば、安息香酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メチルパラベン、又はプロピルパラベン)、安定剤(例えば、クエン酸、クエン酸ナトリウム、又は酢酸)、懸濁剤(例えば、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、又はステアリン酸アルミニウム)、分散剤(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、希釈剤(例えば、水)、及びベースワックス(例えば、ココアバター、白色ワセリン、又はポリエチレングリコール)のうちの1つ以上を含む。
【0115】
活性剤を含む錠剤は、好適な薄膜形成剤、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、又はエチルセルロースでコーティングされてもよく、それに対する好適な賦形剤、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ジエチルフタレート、又はグリセロール三酢酸塩などの軟化剤;スクロース、ソルビトール、キシリトール、グルコース、又はラクトースなどの充填剤;水酸化チタンなどの着色剤などが、任意選択により添加されてもよい。
【0116】
好適な賦形剤ビヒクルは、例えば、水、食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、及びそれらの組み合わせである。さらに、所望される場合、ビヒクルは、湿潤剤若しくは乳化剤又はpH緩衝剤などの少量の補助材料を含有してもよい。そのような剤形を調製する実際の方法は、既知であるか、又は当業者に明らかとなろう。例えば、レミントン薬科学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)、マック出版社(Mack Publishing Company)、ペンシルベニア州イーストン、第17版、1985年を参照されたい。投与されるべき組成物又は製剤は、いずれにせよ、処置されている対象における所望の状態を達成するのに十分な薬剤の量を含有するであろう。薬学的に許容される賦形剤などのビヒクル、アジュバント、担体又は希釈剤は、公衆にとって容易に入手可能である。さらに、pH調整剤及び緩衝剤、張性調整剤、安定剤、湿潤剤薬剤などの薬学的に許容される補助材料は、公衆にとって容易に入手可能である。
【0117】
生物学的組成物
本開示は、a)対象干渉構築物又は対象干渉粒子;及びb)体液、を含む生物学的組成物を提供する。好適な体液には、例えば、血液又は血液画分が含まれる。血液画分には、例えば、血清及び血漿が含まれる。場合によっては、体液は個体から分離されている。場合によっては、体液は、1つ以上の処理ステップ、例えば、HCV、HIVなどの病原体の除去に供されている。
【0118】
処置及び予防方法
本開示は、個体におけるヒト免疫不全ウイルスのウイルス量を低減する方法を提供する。この方法は、一般的に、有効量の対象干渉構築物、対象干渉構築物を含む医薬製剤、対象干渉粒子、又は対象干渉粒子を含む医薬製剤を個体に投与することを含む。
【0119】
場合によっては、対象方法は、有効量の対象干渉粒子、又は対象干渉粒子を含む製剤を、それを必要とする個体に投与することを含む。場合によっては、対象干渉粒子の有効量は、個体に、1回以上の用量で、単剤療法又は組み合わせ療法において投与されるとき、個体における免疫不全ウイルス量を、干渉粒子での処置の不在下での個体における免疫不全ウイルス量と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、又は80%を超えて低減するのに有効である量である。
【0120】
場合によっては、対象方法は、有効量の対象干渉粒子を、それを必要とする個体に投与することを含む。いくつかの実施形態では、対象干渉粒子の「有効量」は、個体に、1回以上の用量で、単剤療法又は組み合わせ療法において投与されるとき、個体におけるCD4+T細胞の数を、干渉粒子での処置の不在下での個体におけるCD4+T細胞の数と比較して、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、又は10倍を超えて増加させるのに有効である量である。
【0121】
多様な方法のいずれかを使用して、処置法が有効であるかどうかを決定することができる。例えば、本発明の方法が、免疫不全ウイルス(例えば、HIV)ウイルス量を低減すること、及び/又は免疫不全ウイルス(例えば、HIV)感染症を処置することにおいて有効であるかどうかを決定する方法は、ウイルス量を、例えば、免疫不全ウイルス(例えば、HIV)ポリヌクレオチド配列に特異的なプライマーを用いるポリメラーゼ鎖反応(PCR)を使用して、例えば、生物学的試料中の免疫不全ウイルス(例えば、HIV)の量を測定することによって測定すること;免疫不全ウイルス(例えば、HIV)によってコードされるポリペプチド、例えば、p24、gp120、逆転写酵素を、例えば、そのポリペプチドに特異的な抗体を用いる酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)などの免疫学的アッセイを使用して検出及び/又は測定すること、及び個体におけるCD4+T細胞数を測定することを含むが、これらに限定されない、免疫不全ウイルス(例えば、HIV)感染症の兆候についての任意の既知の試験である。
【0122】
製剤、投与量、及び投与経路
宿主に導入する前に、干渉構築物又は干渉粒子は、治療的及び予防的処置方法における使用のための様々な組成物に製剤化することができる。特に、干渉構築物又は干渉粒子は、適切な薬学的に許容される担体又は希釈剤と組み合わせることによって医薬組成物を作製することができ、ヒト用又は動物用のいずれかに適切であるように製剤化することができる。簡単にするために、対象干渉構築物及び対象干渉粒子は、以下、集合的に「活性剤」又は「有効成分」と呼ばれる。
【0123】
したがって、対象処置方法における使用のための組成物は、例えば、薬学的に許容される担体と組み合わせて、対象干渉構築物又は対象干渉粒子を含み得る。好適な投与方法と同様に、薬学的に許容される担体は当業者に周知である。担体の選択は、部分的には、特定のベクターによって、及び組成物を投与するために使用される特定の方法によって決定されるであろう。当業者はまた、組成物を投与する様々な経路が利用可能であり、投与に複数の経路を使用することができるが、特定の経路が別の経路よりも迅速且つより効果的な反応を提供できることを理解するであろう。したがって、対象干渉構築物組成物又は対象干渉粒子組成物の多種多様な好適な製剤が存在する。
【0124】
対象干渉構築物又は対象干渉粒子の組成物は、単独で、又は他の抗ウイルス化合物と組み合わせて、非経口投与に好適な製剤を作製することができる。このような製剤は、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、及び製剤を目的のレシピエントの血液と等張性にする溶質を含有し得る水性及び非水性の等張性滅菌注射液、並びに懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤、及び防腐剤を含み得る水性及び非水性の滅菌懸濁液を含み得る。製剤は、アンプル及びバイアルなどの単位用量又は複数回用量の密封容器で提供でき、凍結乾燥(freeze-dried)(凍結乾燥(lyophilized))状態で保管でき、使用直前に注射用の滅菌液体担体(例えば、水)の添加のみを要する。注射可能な溶液及び懸濁液は、本明細書に記載されるように、滅菌粉末、顆粒、及び錠剤から調製することができる。
【0125】
経口投与に好適な製剤は、水、生理食塩水、又はフルーツジュースなどの希釈剤に溶解した有効量の対象干渉構築物又は対象干渉粒子などの液体溶液;それぞれが所定量の活性剤(対象干渉構築物又は対象干渉粒子)を固体又は顆粒として含むカプセル、小袋又は錠剤;水性液体中の溶液又は懸濁液;及び水中油型エマルジョン又は油中水型エマルジョンであり得る。錠剤形態は、ラクトース、マンニトール、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、微結晶性セルロース、アカシア、ゼラチン、コロイド状二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、及び他の賦形剤、着色剤、希釈剤、緩衝剤、保湿剤、防腐剤、香味剤、及び薬理学的に適合性のある担体のうちの1つ以上を含み得る。
【0126】
吸入による投与に好適なエアロゾル製剤も作製することができる。エアロゾル製剤は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素などの加圧された許容される噴霧剤中に入れることができる。
【0127】
同様に、経口投与に好適な製剤は、フレーバの有効成分、通常はスクロース及びアカシア又はトラガカントを含み得るロゼンジ形態;ゼラチン及びグリセリン、又はスクロース及びアカシアなどの不活性ベース中に有効成分(対象干渉構築物又は対象干渉粒子)を含むトローチ;及び好適な液体担体中に活性剤を含むマウスウォッシュ;並びに活性剤に加えて、当技術分野で公知の担体を含むクリーム、エマルジョン、ゲルなどを含み得る。
【0128】
局所適用に好適な製剤は、クリーム、軟膏、又はローションの形態であり得る。
直腸投与用の製剤は、例えば、ココアバター又はサリチル酸塩を含む、好適な基剤を有する坐剤として提示することができる。膣内投与に好適な製剤は、有効成分に加えて、当技術分野で適切であることが知られているような担体を含む、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム(foam)、又はスプレー製剤として提示することができる。同様に、有効成分は、コンドームのコーティングとして潤滑剤と組み合わせることができる。
【0129】
本発明の文脈において動物、特にヒトに投与される用量は、合理的な時間枠にわたって感染した個体に治療的応答をもたらすのに十分でなければならない。用量は、処置に利用される特定の干渉構築物又は干渉粒子の効力、病状の重症度、並びに感染個体の体重及び年齢によって決定される。用量のサイズは、使用される特定の干渉構築物又は干渉粒子の使用に伴い得る有害な副作用の存在によっても決定される。可能な限り、有害な副作用を最小限に抑えることが常に望ましい。
【0130】
投与量は、錠剤、カプセル、液体製剤の単位体積などの単位剤形であり得る。本明細書で使用される「単位剤形」という用語は、ヒト及び動物対象のための単位投与量として好適な、物理的に個別の単位を指し、各単位は、薬学的に許容される希釈剤、担体、又はビヒクルとの関連で、所望の効果をもたらすのに十分な量に算出された既定量の干渉構築物又は干渉粒子を、単独で又は他の抗ウイルス剤と組み合わせて含有する。本開示の単位剤形の仕様は、使用される特定の構築物又は粒子、及び達成される効果、並びに宿主中の各構築物又は粒子に関連する薬力学に依存する。投与される用量は、「抗ウイルス有効量」又は個々の患者において「有効レベル」を達成するために必要な量であり得る。
【0131】
一般的に、投与された構築物又は粒子の組織濃度を1日あたり約50mg/kg~約300mg/kg体重にするのに十分な対象干渉構築物又は対象干渉粒子の量を投与することができ、例えば、1日あたり約100mg/kg~約200mg/kg体重の量である。特定の用途、例えば、局所、眼又は膣用途では、複数の1日用量を投与することができる。さらに、投与回数は、送達の手段及び投与される特定の干渉構築物又は干渉粒子に応じて変化するであろう。
【0132】
組み合わせ療法
いくつかの実施形態では、対象干渉構築物又は干渉粒子(又はそれを含む組成物)は、1つ以上の追加の治療剤との組み合わせ療法で投与される。好適なさらなる治療剤には、免疫不全ウイルスの1つ以上の機能を阻害する薬剤、免疫不全ウイルス感染症の症状を治療する又は寛解させる薬剤、免疫不全ウイルス感染症に続発して生じ得る感染症を治療する薬剤などが含まれる。
【0133】
治療剤には、例えば、ベータ-ラクタム抗生物質、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、ネオマイシン、グラミシジン、バシトラシン、スルホンアミド、ニトロフラゾン、ナリジクス酸、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、ベタメタゾン、デキサメタゾン、フルオコルトロン、プレドニゾロン、トリアムシノロン(triamcinolone)、インドメタシン、スリンダク、アシクロビル、アマンタジン、リマンタジン、組換え可溶性CD4(rsCD4)、抗受容体抗体(例えば、ライノウイルスに対する)、ネビラピン、シドホビル(ビスタイド(Vistide)(商標))、ホスホノギ酸三ナトリウム(ホスカルネット(Foscarnet)(商標))、ファムシクロビル、ペンシクロビル、バラシクロビル、核酸/複製阻害剤、インターフェロン、ジドブジン(AZT、レトロビル(Retrovir)(商標))、ジダノシン(ジデオキシイノシン、ddI、ヴァイデックス(Videx)(商標))、スタブジン(d4T、ゼリット(Zerit)(商標))、ザルシタビン(ジデオキシシトシン、ddC、ハイビッド(Hivid)(商標))、ネビラピン(ビラミューン(Viramune)(商標))、ラミブジン(エピビル(Epivir)(商標)、3TC)、プロテアーゼ阻害剤、サクイナビル(インビラーゼ(Invirase)(商標)、フォートベイス(Fortovase)(商標))、リトナビル(ノービア(Norvir)(商標))、ネルフィナビル(ビラセプト(Viracept)(商標))、エファビレンツ(サスティバ(Sustiva)(商標))、アバカビル(ザイアジェン(Ziagen)(商標))、アンプレナビル(アゲネラーゼ(Agenerase)(商標))インジナビル(クリキシバン(Crixivan)(商標))、ガンシクロビル、AzDU、デラビルジン(レスクリプター(Rescriptor)(商標))、カレトラ(Kaletra)、トリジビル(Trizivir)、リファンピン、クラシロマイシン(clathiromycin)、エリスロポエチン、コロニー刺激因子(G-CSF及びGM-CSF)、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、ヌクレオシド阻害剤、アドリアマイシン、フルオロウラシル、メトトレキセート、アスパラギナーゼ、及びそれらの組み合わせが含まれる。抗HIV薬剤は、1つ以上のHIVタンパク質の機能を特異的に標的とする、前述の一覧のものである。
【0134】
いくつかの実施形態では、対象活性剤は、2つ以上の抗HIV薬剤との組み合わせ療法で投与される。例えば、対象活性剤は、1、2、又は3つのヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(例えば、コンビビル(Combivir)、エピビル(Epivir)、ハイビッド(Hivid)、レトロビル(Retrovir)、ヴァイデックス(Videx)、ゼリット(Zerit)、ザイアジェン(Ziagen)など)との組み合わせ療法で投与することができる。対象活性剤は、1つ又は2つの非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(例えば、レスクリプター(Rescriptor)、サスティバ(Sustiva)、ビラミューン(Viramune)など)との組み合わせ療法で投与することができる。対象活性剤は、1つ又は2つのプロテアーゼ阻害剤(例えば、アゲネラーゼ(Agenerase)、クリキシバン(Crixivan)、フォートベイス(Fortovase)、インビラーゼ(Invirase)、カレトラ(Kaletra)、ノービア(Norvir)、ビラセプト(Viracept)など)との組み合わせ療法で投与することができる。対象活性剤は、プロテアーゼ阻害剤及びヌクレオシド逆転写酵素阻害剤との組み合わせ療法で投与することができる。対象活性剤は、プロテアーゼ阻害剤、ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、及び非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤との組み合わせ療法で投与することができる。対象活性剤は、プロテアーゼ阻害剤及び非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤との組み合わせ療法で投与することができる。プロテアーゼ阻害剤、ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、及び非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤のうちの1つ以上との対象活性剤の他の組み合わせが企図される。
【0135】
いくつかの実施形態では、対象処置方法は、a)対象活性剤;並びにb)ウイルス複製、ウイルスプロテアーゼ活性、ウイルス逆転写酵素活性、細胞中へのウイルス侵入、ウイルスインテグラーゼ活性、ウイルスRev活性、ウイルスTat活性、ウイルスNef活性、ウイルスVpr活性、ウイルスVpu活性、及びウイルスVif活性から選択される免疫不全ウイルス機能を阻害する薬剤を投与することを含む。
【0136】
いくつかの実施形態では、対象処置方法は、a)対象活性剤;並びにb)HIV阻害剤(ここで好適なHIV阻害剤には、1つ以上のヌクレオシド/ヌクレオチド逆転写酵素阻害剤(NRTI)、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTI)、プロテアーゼ阻害剤(PI)、融合阻害剤、インテグラーゼ阻害剤、ケモカイン受容体(例えば、CXCR4、CCR5)阻害剤、及びヒドロキシ尿素が含まれるが、これらに限定されない)を投与することを含む。ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤には、アバカビル(ABC、ザイアジェン(ZIAGEN)(商標))、ジダノシン(ジデオキシイノシン(ddI)、ヴァイデックス(VIDEX)(商標))、ラミブジン(3TC、エピビル(EPIVIR)(商標))、スタブジン(d4T、ゼリット(ZERIT)(商標)、ゼリット XR(ZERIT XR)(商標))、ザルシタビン(ジデオキシシチジン(ddC)、ハイビッド(HIVID)(商標))、ジドブジン(ZDV、かつてはアジドチミジン(AZT)として知られた、レトロビル(RETROVIR)(商標))、アバカビル、ジドブジン、及びラミブジン(トリジビル(TRIZIVIR)(商標))、ジドブジン及びラミブジン(コンビビル(COMBIVIR)(商標))、及びエムトリシタビン(エムトリバ(EMTRIVA)(商標))が含まれるが、これらに限定されない。ヌクレオチド逆転写酵素阻害剤は、テノホビルジソプロキシルフマル酸塩(ビリアード(VIREAD)(商標))を含む。HIVのための非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤には、ネビラピン(ビラミューン(VIRAMUNE)(商標))、メシル酸デラビルジン(レスクリプター(RESCRIPTOR)(商標))、及びエファビレンツ(サスティバ(SUSTIVA)(商標))が含まれるが、これらに限定されない。
【0137】
HIV感染症を治療するためのプロテアーゼ阻害剤(PI)には、アンプレナビル(アゲネラーゼ(AGENERASE)(商標))、メシル酸サキナビル(フォートベイス(FORTOVASE)(商標)、インビラーゼ(INVIRASE)(商標))、リトナビル(ノービア(NORVIR)(商標))、硫酸インジナビル(クリキシバン(CRIXIVAN)(商標))、メシル酸ネルフマビル(nelfmavir mesylate)(ビラセプト(VIRACEPT)(商標))、ロピナビル及びリトナビル(カレトラ(KALETRA)(商標))、アタザナビル(レヤタズ(REYATAZ)(商標))、並びにホスアンプレナビル(レキシバ(LEXIVA)(商標))が含まれる。融合阻害剤は、ウイルスと細胞との間の融合が生じるのを予防し、したがって、HIV感染症及び分裂増殖を予防する。融合阻害剤には、エンフビルチド(フゼオン(FUZEON)(商標))、ラレザリ(Lalezari)ら著、ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(New England J.Med.)、第348巻、p.2175~2185、2003年、及びマラビロク(シーエルセントリ(SELZENTRY)(商標)、ファイザー(Pfizer))が含まれるが、これらに限定されない。
【0138】
インテグラーゼ阻害剤は、インテグラーゼの作用を遮断して、HIV-1遺伝物質が宿主DNA中に組み込まれるのを予防し、それによってウイルス複製を停止する。インテグラーゼ阻害剤には、ラルテグラビル(アイセントレス(ISENTRESS)(商標)、メルク(Merck))、及びエルビテグラビル(GS 9137、ギリアド・サイエンシズ(Gilead Sciences))が含まれるが、これらに限定されない。
【0139】
成熟阻害剤には、例えば、ベビリマット(3β-(3-カルボキシ-3-メチル-ブタノイルオキシ)lup-20(29)-エン-28-オイック酸)、及びビベコン(Vivecon)(MPC9055)が含まれる。
【0140】
いくつかの実施形態では、対象処置方法は、a)対象活性剤;並びにb)(1)アンプレナビル、アタザナビル、ホスアンプレナビル、インジナビル、ロピナビル、リトナビル、ネルフィナビル、サクイナビル、チプラナビル、ブレカナビル、ダルナビル、TMC-126、TMC-114、モゼナビル(DMP-450)、JE-2147(AG1776)、L-756423、RO0334649、KNI-272、DPC-681、DPC-684、GW640385X、DG17、PPL-100、DG35、及びAG 1859から選択されるHIVプロテアーゼ阻害剤、(2)カプラビリン、エミビリン(emivirine)、デラビリジン(delaviridine)、エファビレンツ、ネビラピン、(+)カラノリドA、エトラビリン、GW5634、DPC-083、DPC-961、DPC-963、MIV-150、及びTMC-120、TMC-278(リルピビリン(rilpivirene))、エファビレンツ、BILR 355 BS、VRX 840773、UK-453061、及びRDEA806から選択される逆転写酵素のHIV非ヌクレオシド阻害剤、(3)ジドブジン、エムトリシタビン、ジダノシン、スタブジン、ザルシタビン、ラミブジン、アバカビル、アムドキソビル、エルブシタビン(elvucitabine)、アロブジン、MIV-210、ラシビル、D-d4FC、エムトリシタビン、ホスファジド(phosphazide)、フォジブジンチドキシル(fozivudine tidoxil)、アプリシチビン(apricitibine)(AVX754)、アムドキソビル、KP-1461、及びフォサルブジンチドキシル(fosalvudine tidoxil)(かつてはHDP 99.0003)から選択される逆転写酵素のHIVヌクレオシド阻害剤、(4)テノホビル及びアデホビルから選択される逆転写酵素のHIVヌクレオチド阻害剤、(5)クルクミン、クルクミンの誘導体、チコリ酸、チコリ酸の誘導体、3,5-ジカフェオイルキナ酸、3,5-ジカフェオイルキナ酸の誘導体、アウリントリカルボン酸、アウリントリカルボン酸の誘導体、コーヒー酸フェネチルエステル、コーヒー酸フェネチルエステルの誘導体、チルホスチン、チルホスチンの誘導体、ケルセチン、ケルセチンの誘導体、S-1360、ジンテビル(zintevir)(AR-177)、L-870812、及びL-870810、MK-0518(ラルテグラビル)、BMS-538158、GSK364735C、BMS-707035、MK-2048、及びBA 011から選択されるHIVインテグラーゼ阻害剤、(6)エンフビルチド、スフビルチド(sifuvirtide)、FB006M、及びTRI-1144から選択されるgp41阻害剤、(7)AMD-070などのCXCR4阻害剤、(8)SP01Aなどの侵入阻害剤、(9)BMS-488043及び/又はブロックエイド(BlockAide)/CRなどのgp120阻害剤、(10)イムニチン(immunitin)などのG6PD及びNADH-オキシダーゼ阻害剤、(11)アプラビロク、ビクリビロク、マラビロク、PRO-140、INCB15050、PF-232798(ファイザー(Pfizer))、及びCCR5 mAb004からなる群から選択されるCCR5阻害剤、(12)BAS-100、SPI-452、REP 9、SP-01A、TNX-355、DES6、ODN-93、ODN-112、VGV-1、PA-457(ベビリマット)、アンプリゲン(Ampligen)、HRG214、シトリン(Cytolin)、VGX-410、KD-247、AMZ 0026、CYT 99007A-221 HIV、DEBIO-025、BAY 50-4798、MDXO10(イピリムマブ)、PBS119、ALG 889、及びPA-1050040(PA-040)から選択される、HIVを治療するための別の薬物、(13)上記のいずれの組み合わせ又は混合物の1つ以上を投与することを含む。
【0141】
さらなる例として、いくつかの実施形態では、対象処置法は、次のものを投与することを伴う:a)対象活性剤、並びにb)次のうちの1つ以上:i)アンプレナビル(アゲネラーゼ(Agenerase)、(3S)-オキソラン-3-イル N-[(2S,3R)-3-ヒドロキシ-4-[N-(2-メチルプロピル)(4-アミノベンゼン)スルホンアミド]-1-フェニルブタン-2-イル]カルバメート)を、600mg若しくは1200mgの量で1日2回、ii)チプラナビル(アプティバス、N-{3-[(1R)-1-[(2R)-6-ヒドロキシ-4-オキソ-2-(2-フェニルエチル)-2-プロピル-3,4-ジヒドロ-2H-ピラン-5-イル]プロピル]フェニル}-5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-スルホンアミド)を、500mgの量で1日2回、iii)インジナビル(idinavir)(クリキシバン(Crixivan)、(2S)-1-[(2S,4R)-4-ベンジル-2-ヒドロキシ-4-{[(1S,2R)-2-ヒドロキシ-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-1-イル]カルバモイル}ブチル]-N-tert-ブチル-4-(ピリジン-3-イルメチル)ピペラジン-2-カルボキサミド)を、800mgの量で1日3回、iv)サクイナビル(インビラーゼ(Invirase)、2S)-N-[(2S,3R)-4-[(3S)-3-(tert-ブチルカルバモイル)-デカヒドロイソキノリン-2-イル]-3-ヒドロキシ-1-フェニルブタン-2-イル]-2-(キノリン-2-イルホルムアミド)ブタンジアミド)を、1,000mgの量で1日2回、v)ロピナビル及びリトナビル(カレタ(Kaleta)(ここでロピナビルは、2S)-N-[(2S,4S,5S)-5-[2-(2,6-ジメチルフェノキシ)アセトアミド]-4-ヒドロキシ-1,6-ジフェニルヘキサン-2-イル]-3-メチル-2-(2-オキソ-1,3-ジアジナン-1-イル)ブタンアミドであり、リトナビルは、1,3-チアゾール-5-イルメチル N-[(2S,3S,5S)-3-ヒドロキシ-5-[(2S)-3-メチル-2-{[メチル({[2-(プロパン-2-イル)-1,3-チアゾール-4-イル]メチル})カルバモイル]アミノ}ブタミド]-1,6-ジフェニルヘキサン-2-イル]カルバメートである)を、133mgの量で1日2回、vi)ホスアンプレナビル(レキシバ(Lexiva)、{[(2R,3S)-1-[N-(2-メチルプロピル)(4-アミノベンゼン)スルホンアミド]-3-({[(3S)-オキソラン-3-イルオキシ]カルボニル}アミノ)-4-フェニルブタン-2-イル]オキシ}ホスホン酸)を、700mg若しくは1400mgの量で1日2回)、vii)リトナビル(ノービア(Norvir))を、600mgの量で1日2回、viii)ネルフィナビル(ビラセプト(Viracept)、(3S,4aS,8aS)-N-tert-ブチル-2-[(2R,3R)-2-ヒドロキシ-3-[(3-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)ホルムアミド]-4-(フェニルスルファニル)ブチル]-デカヒドロイソキノリン-3-カルボキサミド)を、750mgの量で1日3回、若しくは1250mgの量で1日2回、ix)フュージオン(Fuzeon)(アセチル-YTSLIHSLIEESQNQ QEKNEQELLELDKWASLWNWF-アミド、配列番号20)を、90mgの量で1日2回、x)コンビビル(Combivir)を、150mgラミブジン(3TC、2’,3’-ジデオキシ-3’-チアシチジン)及び300mgジドブジン(AZT、アジドチミジン)の量で1日2回、xi)エムトリシタビン(エムトリバ(Emtriva)、4-アミノ-5-フルオロ-1-[(2R,5S)-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-オキサチオラン-5-イル]-1,2-ジヒドロピリミジン-2-オン)を、200mgの量で1日1回、xii)エプジコムを、600mgアバカビル(ABV、{(1S,4R)-4-[2-アミノ-6-(シクロプロピルアミノ)-9H-プリン-9-イル]シクロペンタ-2-エン-1-イル}メタノール)及び300mg 3TCの量で1日1回、xiii)ジドブジン(レトロビル(Retrovir)、AZT若しくはアジドチミジン)を、200mgの量で1日3回、xiv)トリジビル(Trizivir)を、150mg 3TC及び300mg ABV及び300mg AZTの量で1日2回、xv)ツルバダ(Truvada)を、200mgエムトリシタビン及び300mgテノホビル(({[(2R)-1-(6-アミノ-9H-プリン-9-イル)プロパン-2-イル]オキシ}メチル)ホスホン酸)の量で1日1回、xvi)ジダノシン(ヴァイデックス(Videx)、2’,3’-ジデオキシイノシン)を、400mgの量で1日1回、xvii)テノホビル(ビリアード(Viread))を、300mgの量で1日1回、xviii)アバカビル(ザイアジェン(Ziagen))を、300mgの量で1日2回、xix)アタザナビル(レイアタッツ、メチル N-[(1S)-1-{[(2S,3S)-3-ヒドロキシ-4-[(2S)-2-[(メトキシカルボニル)アミノ]-3,3-ジメチル-N’-{[4-(ピリジン-2-イル)フェニル]メチル}ブタンヒドラジド]-1-フェニルブタン-2-イル]カルバモイル}-2,2-ジメチルプロピル]カルバメート)を、300mgの量で1日1回、若しくは400mgの量で1日1回、xx)ラミブジン(エピビル(Epivir))を、150mgの量で1日2回、xxi)スタブジン(ゼリット(Zerit)、2’-3’-ジデヒドロ-2’-3’-ジデオキシチミジン)を、40mgの量で1日2回、xxii)デラビルジン(レスクリプター(Rescriptor)、N-[2-({4-[3-(プロパン-2-イルアミノ)ピリジン-2-イル]ピペラジン-1-イル}カルボニル)-1H-インドール-5-イル]メタンスルホンアミド)を、400mgの量で1日3回、xxiii)エファビレンツ(サスティバ(Sustiva)、(4S)-6-クロロ-4-(2-シクロプロピルエチニル)-4-(トリフルオロメチル)-2,4-ジヒドロ-1H-3,1-ベンゾオキサジン-2-オン)を、600mgの量で1日1回)、xxiv)ネビラピン(ビラミューン(Viramune)、11-シクロプロピル-4-メチル-5,11-ジヒドロ-6H-ジピリド[3,2-b:2’,3’-e][1,4]ジアゼピン-6-オン)を、200mgの量で1日2回)、xxv)ベビリマット、並びにxxvi)ビベコン(Vivecon)。
【0142】
キット、容器、デバイス、送達システム
例えば、経口、膣、直腸、経皮、又は注射用用量(例えば、筋肉内、静脈内、又は皮下注射のため)中の活性剤の単位用量を有するキットが提供される。そのようなキット中には、単位用量を含有する容器に加えて、免疫不全ウイルス(例えば、HIV)感染症を処置する際の、薬物の使用及び付随する便益を説明する、情報提供のためのパッケージ挿入物が存在するであろう。好適な活性剤(対象干渉構築物又は対象干渉粒子)及び単位用量は、本明細書に上述されるものである。多くの実施形態では、対象キットは、対象方法を実践するための指示書又はそれを得るための手段をさらに含み(例えば、ユーザを、指示書を提供するウェブページに導くウェブサイトURL)、これらの指示書は、典型的に基材上に印刷され、その基材は、次のうちの1つ以上であってもよい:パッケージ挿入物、パッケージ材料、製剤容器など。
【0143】
いくつかの実施形態では、対象キットは、患者の服薬遵守を増加させる1つ以上の構成要素又は特色、例えば、活性剤を適切な時間又は間隔で摂取することを念頭に置く際に患者を補助するための、構成要素又はシステムを含む。そのような構成要素には、活性剤を適切な時間又は間隔で摂取することを念頭に置く際に患者を補助するための、カレンダー管理システムが含まれるが、これらに限定されない。
【0144】
本発明は、活性剤を含む送達システムを提供する。いくつかの実施形態では、送達システムは、活性剤を含む製剤の皮下、静脈内、又は筋肉内注射を提供する送達システムである。他の実施形態では、送達システムは、膣又は直腸送達システムである。
【0145】
いくつかの実施形態では、活性剤は、経口投与のためにパッケージ化される。本発明は、活性剤の毎日の投与量単位を含むパッケージ単位を提供する。例えば、パッケージ単位は、いくつかの実施形態では、従来のブリスターパック又は錠剤、丸薬などを含む任意の他の形態である。ブリスターパックは、ボール紙、板紙、ホイル、又はプラスチック裏板により密封されたブリスターパック中に適切な数の単位剤形を含有し、好適な被覆内に密閉されるであろう。各ブリスター容器は、例えば、1日目から開始して、付番されるか、又はラベル付けされてもよい。
【0146】
いくつかの実施形態では、対象の送達システムは、注射デバイスを含む。例示的な、非限定的薬物送達デバイスは、ペン型注射器などの注射デバイス及び針/シリンジデバイスを含む。いくつかの実施形態では、本発明は、有効量の対象活性剤を含む製剤で事前充填された、注射送達デバイスを提供する。例えば、対象送達デバイスは、対象活性剤の単回用量で事前充填された注射デバイスを含む。対象注射デバイスは、再使用可能又は使い捨てであり得る。ペン型注射器は、当技術分野で周知である。本方法における使用に適合させられ得る、例示的なデバイスは、ベクトン・ディッキンソン(Becton Dickinson)からの多様なペン型注射器、例えば、BD(商標)Pen、BD(商標)Pen II、BD(商標)オートインジェクター(Auto-Injector)のうちのいずれか;イノジェクト(Innoject,Inc.)からのペン型注射器;米国特許第5,728,074号明細書、同第6,096,010号明細書、同第6,146,361号明細書、同第6,248,095号明細書、同第6,277,099号明細書、及び同第6,221,053号明細書などに考察される薬品送達ペン型デバイスのいずれでもある。薬剤送達ペンは、使い捨てであってもよく、又は再利用可能で詰め替え可能であってもよい。
【0147】
本発明は、個体の膣又は直腸への、活性剤の膣又は直腸送達のための送達システムを提供する。送達システムは、膣又は直腸中への挿入のためのデバイスを含む。いくつかの実施形態では、送達システムは、製剤の膣又は直腸中への送達のためのアプリケータと、活性剤を含む製剤を含有する容器とを含む。これらの実施形態では、容器(例えば、管)は、製剤をアプリケータ中に送達するために適合させられる。他の実施形態では、送達システムは、膣又は直腸中に挿入されるデバイスを含み、そのデバイスは、活性剤を含む。例えば、デバイスは、活性剤を含む製剤でコーティングされるか、それにより浸漬されるか、又はそれを含有する。
【0148】
いくつかの実施形態では、膣又は直腸送達システムは、対象製剤を含むタンポン又はタンポン様デバイスである。薬物送達タンポンは、当技術分野で既知であり、いずれのそのようなタンポンも対象薬物送達システムと併せて使用することができる。薬物送達タンポンは、例えば、米国特許第6,086,909号明細書に記載される。タンポン又はタンポン様デバイスが使用される場合、活性剤がデバイス中に組み込まれ得る、多数の方法が存在する。例えば、活性剤は、デバイスの先端におけるゲル様生体付着性リザーバ中に組み込むことができる。代替的に、活性剤は、タンポンの先端に位置付けられた粉末物質の形態であり得る。活性剤はまた、例えば、活性剤を薬学的に許容される担体中に溶解させ、薬物溶液をタンポン繊維中に吸収させることによって、タンポンの先端の繊維中に吸収させることもできる。活性剤はまた、タンポンの先端に適用されるコーティング物質中に溶解させることもできる。代替的に、活性剤は、タンポンの先端に関連して配置された挿入可能な坐剤中に組み込むことができる。
【0149】
他の実施形態では、薬物送達デバイスは、膣又は直腸リングである。膣又は直腸リングは、通常、送達されるべき活性剤を含有するエラストマーの別の層によってコーティングされた、不活性エラストマーリングからなる。リングは、ユーザによって、簡便に挿入し、所望の一定期間(例えば、最大7日間)にわたって定置に残し、次いで除去することができる。リングは、任意選択により、活性剤を何ら含有しない第3の外部速度制御エラストマー層を含む可能性がある。任意選択により、第3のリングは、二重放出リングのための第2の活性剤を含有する可能性がある。活性剤は、送達されるべき薬物のためのリザーバとして作用するように、シリコーンエラストマーリング全体にわたってポリエチレングリコール中に組み込むことができる。
【0150】
他の実施形態では、対象の膣又は直腸送達システムは、膣又は直腸スポンジである。活性剤は、文献に記載される円筒状の薬物不含ポリウレタンスポンジ上にコーティングされるシリコーンマトリックス中に組み込まれる。ペッサリー、錠剤、及び坐剤は、本開示の文脈において使用され得る薬物送達システムの他の例である。これらのシステムは、文献に広範に記載されている。
【0151】
生体付着性微粒子は、本開示の文脈において使用するのに好適な、依然として別の薬物送達システムを構成する。このシステムは、多くの坐剤製剤のように膣又は直腸から滲出しない、多相液体又は半固体調製物である。材料は、膣又は直腸の壁に付着し、薬物を一定期間にわたって放出する。これらのシステムのうちの多くは、鼻用の使用のために設計されたが、膣又は直腸でも同様に使用することができる(例えば、米国特許第4,756,907号明細書)。システムは、活性剤を有するミクロスフェア、及び薬物の取り込みを強化するための界面活性剤を含んでもよい。微粒子は、10~100μmの直径を有し、デンプン、ゼラチン、アルブミン、コラーゲン、又はデキストランから調製することができる。
【0152】
別のシステムは、アプリケータとの使用のために適合させられる、対象製剤を含む容器(例えば、管)である。活性剤は、アプリケータを使用して膣又は直腸に適用され得るクリーム、ローション、泡状物質、ペースト、軟膏、及びゲル中に組み込まれる。クリーム、ローション、泡状物質、ペースト、軟膏、及びゲル中の医薬品を調製するためのプロセスは、文献全体を通じて見出すことができる。好適なシステムの例は、ジャーゲンズ(JERGENS)(商標)(アンドリュー・ジャーゲンズ(Andrew Jergens Co.)、オハイオ州シンシナティ)の商標の下に販売される製品などの、グリセロール、セラミド、鉱物油、ワセリン、パラベン、香料、及び水を含有する標準的な無香料ローション製剤である。本発明の組成物における使用に好適な非毒性の薬学的に許容されるシステムは、薬学的製剤の技術分野の専門家に明らかとなり、例は、レミントン薬科学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)、第19版、A.R.ジェンナーロ(A.R.Gennaro)編、1995年に記載される。好適な担体の選定は、所望される特定の膣又は直腸剤形の厳密な性質、例えば、活性成分が、クリーム、ローション、泡状物質、軟膏、ペースト、溶液、又はゲルへと製剤化されるべきであるかどうか、並びに活性成分の素性に依存するであろう。他の好適な送達デバイスは、米国特許第6,476,079号明細書に記載されるものである。
【0153】
処置に好適な対象
本開示の方法は、免疫不全ウイルス感染症を有する、例えば、免疫不全ウイルス感染症を有すると診断された、個体を処置するのに好適である。本開示の方法はまた、HIV感染と診断されていない個体(例えば、HIVにつき試験され、HIVにつき陰性となった個体;及び試験されていない個体)、及び一般集団よりもHIV感染のリスクが高いと考えられている個体(例えば、「リスクのある」個体)における使用に好適である。
【0154】
本開示の方法は、HIV感染症を有する(例えば、HIV感染症を有すると診断された)個体、及び一般集団よりもHIV感染症に接触するリスクが高いとみなされる個体を処置するのに好適である。そのような個体には、健康で無傷の免疫システムを有するが、HIVに感染するようになるリスクがある個体(「リスクのある」個体)が含まれるが、これらに限定されない。リスクがある個体には、一般集団よりも、HIVに感染するようになる可能性がより高い個体が含まれるが、これらに限定されない。HIVに感染するようになるリスクがある個体には、HIVに感染した個体との性行為に起因して、HIV感染症に対するリスクがある個体が含まれるが、これらに限定されない。処置に好適な個体には、HIV-1及び/若しくはHIV-2及び/若しくはHIV-3、又はそれらの任意の変異体に感染した、又はそれらに感染するようになるリスクがある個体が含まれる。
【0155】
変異体を生成する方法
本開示は、干渉し、条件付きで複製する、変異体(variant)HIV構築物を生成する方法を提供する。方法は、一般的に、a)上記の干渉構築物を第1の個体に導入すること;b)干渉構築物が第1の個体から(直接的に又は1以上の干渉個体を介して)伝達された第2の個体から生物学的試料を入手することであって、第2の個体に存在する構築物は、第1の個体に導入された干渉構築物の変異体である入手すること;及びc)第2の個体から変異体構築物をクローニングすることを含む。
【0156】
本開示の例示的な非限定的側面
上記の本主題の実施形態を含む態様は、単独で、又は1つ以上の他の態様又は実施形態と組み合わせて、有益であり得る。前述の説明を制限することなく、1~78の番号が付けられた開示の特定の非限定的な態様を以下に提供する。本開示を読むと当業者には明らかであるように、個別に付番けされた態様はそれぞれ、使用され得、又は先行又は後続の個別に付番された態様のいずれかと組み合わせられ得る。これは、態様の全てのそのような組み合わせにつきサポートを提供することを目的としており、以下に明示的に提供される態様の組み合わせに限定されない。
【0157】
態様1.干渉し、条件付きで複製する、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)構築物であって、同構築物は、
a)長い末端反復、Gagリーダ配列、Ψパッケージングシグナル、中央ポリプリントラクト(cPPT)、rev応答エレメント(RRE)配列、ポリプリントラクト(PPT)、主要スプライスドナー(MSD)、A3、及びA7を含むシス作用エレメント;及び
b)HIVヌクレオチド配列における1つ以上の変更であって、1つ以上の変更により、Pol、Tat、Vpr、Nef、及びVifのそれぞれが機能しなくなり、その結果、構築物はそれ自体ではウイルスの複製及び産生ができなくなるが、ヘルパーウイルスとして機能するために複製能を有するHIVを要する、変更、
を含む、構築物。
【0158】
態様2.シス作用エレメントが、D4、A4、及びA5をさらに含む、態様1に記載の構築物。
態様3.長い末端反復が、長い3’末端反復又は長い5’末端反復である、態様1又はb)に記載の構築物。
【0159】
態様4.Rev、Vpu、及びEnvのそれぞれを非機能的にする1つ以上の変更をさらに含む、態様1~3のいずれか1つに記載の構築物。
態様5.構築物によってコードされるゲノムRNA(gRNA)が、野生型HIVに感染した宿主細胞に存在する場合、野生型HIV gRNAよりも速い速度で産生され、その結果、野生型HIV gRNAに対する構築物によってコードされるgRNAの比率は、細胞内で約1よりも大きくなる、態様1~4のいずれか1つに記載の構築物。
【0160】
態様6.構築物が野生型HIVよりも高い伝達頻度を有する、態様5に記載の構築物。
態様7.構築物が基本再生産数(R0)>1を有する、態様1~5のいずれか1つに記載の構築物。
【0161】
態様8.構築物が、遺伝子産物をコードするいかなる異種ヌクレオチド配列も含まない、態様1~7のいずれか1つに記載の構築物。
態様9.構築物が、野生型HIVに感染した宿主細胞に存在する場合、野生型HIVよりも高い効率でパッケージ化される、態様1~8のいずれか1つに記載の構築物。
【0162】
態様10.シス作用エレメントが、HIVタンパク質コード配列内に包埋された少なくとも1つのシスエレメントを含む、態様1~9のいずれか1つに記載の構築物。
態様11.構築物が、HIVスプライスドナー部位における欠失又は変異を含む1つ以上の変更をさらに含む、態様1~10のいずれか1つに記載の構築物。
【0163】
態様12.D2及びD3スプライスドナー部位が欠失している、態様11の構築物。
態様13.構築物が、HIVスプライスアクセプター部位における欠失又は変異を含む1つ以上の変更をさらに含む、態様1~12のいずれか1つに記載の構築物。
【0164】
態様14.A1及びA2スプライスアクセプター部位が欠失している、態様13の構築物。
態様15.HIVヌクレオチド配列における1つ以上の変更が、HIV Polをコードするヌクレオチド配列の1つ以上のヌクレオチドの欠失又は変異、HIV Vifをコードするヌクレオチド配列の1つ以上のヌクレオチドの欠失又は変異、HIV Vprをコードするヌクレオチド配列の1つ以上のヌクレオチドの欠失又は変異、HIV Tatをコードするヌクレオチド配列の1つ以上のヌクレオチドの欠失又は変異、及びHIV Nefをコードするヌクレオチド配列の1つ以上のヌクレオチドの欠失又は変異を含む、態様1~14のいずれか1つに記載の構築物。
【0165】
態様16.構築物が、配列番号1の参照HIV配列に対して付番された位置3159~4780、4904~5737、及び8786~9048に対応するヌクレオチドの欠失を含む、態様15に記載の構築物。
【0166】
態様17.構築物が、配列番号1の参照HIV配列に対して付番された位置1~634、635~789、686~823、790~2292、2085~3158、4781~4903、5738~5849、5830~6044、5872~5880、5969~6044、6045~6060、6061~6306、6221~8785、7759~7992、8369~8414、8369~8643、及び9049~9709に対応するヌクレオチドを含む、態様16に記載の構築物。
【0167】
態様18.構築物が、配列番号2のヌクレオチド配列、又は配列番号2のヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むか、又はそれからなる、態様16又は17に記載の構築物。
【0168】
態様19.HIV Revをコードするヌクレオチド配列の1つ以上のヌクレオチドの欠失又は変異、HIV Vpuをコードするヌクレオチド配列の1つ以上のヌクレオチドの欠失又は変異、及びHIV Envをコードするヌクレオチド配列の1つ以上のヌクレオチドの欠失又は変異をさらに含む、態様15~18のいずれか1つに記載の構築物。
【0169】
態様20.構築物が、配列番号1の参照HIV配列に対して付番された位置3159~4780、4904~5737、5850~6341、及び8786~9048に対応するヌクレオチドの欠失を含む、態様19に記載の構築物。
【0170】
態様21.構築物が、配列番号1の参照HIV配列に対して付番された位置1~634、635~789、686~823、790~2292、2085~3158、4781~4903、5738~5849、6342~8785、7759~7992、8369~8414、8369~8643、及び9049~9709に対応するヌクレオチドを含む、態様20に記載の構築物。
【0171】
態様22.構築物が、配列番号3のヌクレオチド配列、又は配列番号3のヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むか、又はそれからなる、態様20又は21に記載の構築物。
【0172】
態様23.構築物が、配列番号1の参照HIV配列に対して付番された位置3159~5630、及び8786~9048に対応するヌクレオチドの欠失を含む、態様1~15のいずれかに記載の構築物。
【0173】
態様24.構築物が、配列番号1の参照HIV配列に対して付番された位置1~634、635~789、686~823、790~2292、2085~3158、5631~5849、4778~4898、5850~6044、5969~6044、6045~6060、6061~6306、6221~8785、7759~7992、8369~8414、8369~8643、9049~9709に対応するヌクレオチドを含む、態様23に記載の構築物。
【0174】
態様25.構築物が、配列番号4のヌクレオチド配列、又は配列番号4のヌクレオチド配列に対して少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むか、又はそれからなる、態様23又は24に記載の構築物。
【0175】
態様26.配列番号1の参照HIV配列に対して付番された位置5850~6341に対応するヌクレオチドの欠失をさらに含む、態様23~25のいずれかに記載の構築物。
態様27.構築物が、配列番号1の参照HIV配列に対して付番された位置1~634、635~789、686~823、790~2292、2085~3158、5631~5849、4778~4898、6342~8785、7759~7992、8369~8414、8369~8643、9049~9709に対応するヌクレオチドを含む、態様26に記載の構築物。
【0176】
態様28.構築物が、配列番号5のヌクレオチド配列、又は配列番号5のヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むか、又はそれからなる、態様26又は27に記載の構築物。
【0177】
態様29.構築物が、HIV Polをコードするヌクレオチド配列における欠失を含む、態様1~28のいずれか1つに記載の構築物。
態様30.構築物が、HIV Vifをコードするヌクレオチド配列の欠失を含む、態様1~29のいずれか1つに記載の構築物。
【0178】
態様31.構築物が、HIV Vprをコードするヌクレオチド配列の欠失を含む、態様1~30のいずれか1つに記載の構築物。
態様32.構築物が、HIV Tatをコードするヌクレオチド配列の欠失を含む、態様1~31のいずれか1つに記載の構築物。
【0179】
態様33.構築物が、HIV Revをコードするヌクレオチド配列の欠失を含む、態様1~32のいずれか1つに記載の構築物。
態様34.構築物が、HIV Vpuをコードするヌクレオチド配列の欠失を含む、態様1~33のいずれか1つに記載の構築物。
【0180】
態様35.構築物が、HIV Envをコードするヌクレオチド配列の欠失を含む、態様1~34のいずれか1つに記載の構築物。
態様36.構築物が、HIV Nefをコードするヌクレオチド配列の欠失を含む、態様1~35のいずれか1つに記載の構築物。
【0181】
態様37.構築物が、HIV Gagをコードするヌクレオチド配列の欠失を含む、態様1~36のいずれか1つに記載の構築物。
態様38.態様1~37のいずれか1つの構築物及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
【0182】
態様39.ヒト免疫不全ウイルスによる感染を処置する方法であって、治療有効量の態様38に記載の医薬組成物を個体に投与することを含む、方法。
態様40.個体におけるヒト免疫不全ウイルスのウイルス量を低減する方法であって、有効量の態様38の医薬組成物を個体に投与することを含む、方法。
【0183】
態様41.態様1~37のいずれか1つの構築物及びウイルスエンベロープタンパク質を含む粒子。
態様42.エンベロープタンパク質がgp120を含む、態様41に記載の粒子。
【0184】
態様43.エンベロープタンパク質が非HIVタンパク質である、態様41に記載の粒子。
態様44.態様41~44のいずれか1つの粒子及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
【0185】
態様45.態様38又は44の医薬組成物を含む容器を含む、ヒト免疫不全ウイルスによる感染症を処置するためのキット。
態様46.容器がシリンジである、態様45に記載のキット。
【0186】
態様47.ヒト免疫不全ウイルスによる感染を処置する方法であって、治療有効量の態様44に記載の医薬組成物を個体に投与することを含む、方法。
態様48.個体におけるヒト免疫不全ウイルスのウイルス量を低減する方法であって、有効量の態様44の医薬組成物を個体に投与することを含む、方法。
【0187】
態様49.ウイルス複製、ウイルスプロテアーゼ活性、ウイルス逆転写酵素活性、細胞中へのウイルス侵入、ウイルスインテグラーゼ活性、ウイルスRev活性、ウイルスTat活性、ウイルスNef活性、ウイルスVpr活性、ウイルスVpu活性、ウイルスPol活性、及びウイルスVif活性から選択される免疫不全ウイルス機能を阻害する有効量の薬剤を個体に投与することをさらに含む、態様39、40、47、及び48のいずれか1つに記載の方法。
【0188】
態様50.個体が、HIV感染と診断されているか、又は一般集団よりもHIVに感染するリスクが高いと考えられる、態様49に記載の方法。
態様51.HIVに感染した細胞のゲノムに組み込まれた潜伏HIVを再活性化する有効量の薬剤を個体に投与することをさらに含む、態様50に記載の方法。
【0189】
態様52.態様1~37のいずれか1つの構築物を含む、単離された体液。
態様53.体液が血液又は血漿である、態様52に記載の単離された体液。
態様54.干渉し、条件付きで複製する、変異体ヒト免疫不全ウイルス(HIV)構築物を生成する方法であって、
a)態様1~37のいずれか1つの構築物を第1の個体に導入すること;
b)態様1~37のいずれか1つの構築物が第1の個体から伝達された第2の個体から生物学的試料を入手することであって、第2の個体に存在する構築物は、態様1~37のいずれか1つの構築物の変異体である入手すること;及び
c)第2の個体から変異体構築物をクローニングすること
を含む、方法。
【0190】
態様55.態様1~37のいずれか1つの構築物を含む、単離された細胞。
態様56.粒子を生成する方法であって、態様1~37のいずれかの構築物でヒト免疫不全ウイルスに感染した細胞をトランスフェクトし、構築物を粒子にパッケージングするのに好適な条件下で細胞をインキュベートすることを含む、方法。
【0191】
態様57.態様41~44のいずれか1つの粒子を含む、単離された細胞。
【実施例】
【0192】
次の例は、当業者に本発明の作製及び使用方法の開示及び説明を提供するために提示されるものであり、本発明者らが何を本発明として見なすかについての範囲を限定するようには意図されず、且つそれらが、下記の実験が全ての又は唯一の行われた実験であることを表すことも意図されない。使用された数(例えば、量、温度など)に関する正確性を確実にするための努力がなされてきたが、いくつかの実験的誤差及び偏差が考慮されるべきである。別途指示しない限り、部分は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏度であり、圧力は大気圧又はほぼ大気圧である。標準的な略号が使用され得、例えば、bp、塩基対;kb、キロベース;pl、ピコリットル;s又はsec、秒(second);min、分;h又はhr、時間(hour);aa、アミノ酸;kb、キロベース;bp、塩基対;nt、ヌクレオチド;i.m.、筋肉内(に);i.p.、腹腔内(に);s.c.、皮下(に)などである。
【0193】
実施例1:HIVの伝染性抗ウイルス療法:第1の治療用干渉粒子の発見及び検証
序論
現在の抗レトロウイルス療法(ART)は薬剤ベースであり、生涯にわたる投与(これは患者の行動/アドヒアランスに依存する)が必要であり、治療の中断は、潜伏リザーバからのウイルスのリバウンド、臨床的進行、及びウイルスの変異回避の脅威につながる(メッツガー(Metzger)ら著、2011年;ノットン(Notton)ら著、2014年)。
【0194】
本発明者らは、欠陥干渉粒子(DIP)という歴史的概念(ヘンレ(Henle)及びヘンレ(Henle)著、1943年;ファン(Huang)及びバルティモア(Baltimore)著、1970年)が、耐性に対する高い遺伝的障壁を備えた単回投与療法として機能する治療用干渉粒子(TIP)へと合理的に改変され得る(メッツガー(Metzger)ら著、2011年)という考えを前進させた。DIPと同様に、TIPはサブゲノム欠失変異体であるが、TIPは基本再生産数(R0)>1になるように改変されている(メッツガー(Metzger)ら著、2011年;ルージン(Rouzine)及びワインバーガー(Weinberger)著、2013年)。
【0195】
HIV-1(以下「HIV」)の場合、TIPは分子寄生虫として作用して、HIVから重要な複製機構を奪い、HIVと共に条件付きで複製してHIV放出数を低減すると予測された(
図1)。分子スケールでは、TIPは自己複製に必要な構造遺伝子及びエンベロープ遺伝子(すなわち、トランス作用エレメント)を欠いているが、パッケージング及びカプシド形成のための遺伝的シグナル(すなわち、シス作用エレメント)を保持していると予測された。したがって、TIPは、HIVトランスエレメント(例えば、カプシド、エンベロープ)を利用し、HIVをヘルパーウイルスとして使用して、感染した細胞から動員し得る。ただし、TIPのエビデンスは存在しなかった。
【0196】
疫学モデルからは、TIPがうまく改変できれば、既存及び提案されている介入より大幅に優れたものであり得ると予測された(
図2)。具体的には、TIPはインビボでのHIVセットポイントウイルス量を大幅に低減し(ワインバーガー(Weinberger)ら著、2003年)、より遅い臨床的進行及びより低いHIV伝達をもたらし(メッツガー(Metzger)ら著、2011年)、患者(ルージン(Rouzine)及びワインバーガー(Weinberger)著、2013年)及び高リスク集団(ラスト(Rast)ら著、2016年)におけるHIVの進化及び変異の回避を最小限に抑え得る。TIPは、HIVセットポイントウイルス量を低減することでこれらの利点を実現する。これは、依然として、他の指標(例えば、CD4
+細胞数)にも関わらず、臨床的進行(メラース(Mellors)ら著、1996年)及びウイルス伝達(フレーザ(Fraser)ら著、2007年)の強力な予測因子である。
【0197】
HIVのインビボダイナミクスの数学的モデルは十分に確立されており(ノワック(Nowak)及びメイ(May)著、2000年)、TIPの科学的前提を築いている。モデルは、生産的にHIVに感染している細胞はわずか約1%であるにもかかわらず、これらの細胞の大部分がHIV-TIPに共感染することを示した(ワインバーガー(Weinberger)ら著、2003年)。その理由は、HIV感染細胞の急速な代謝回転である。感染細胞は約1日で死滅し(ペレルソン(Perelson)ら著、1997年)、その結果、慢性セットポイント感染中に毎日1%の細胞の新しいサブセットが感染する。これらのインビボダイナミクスの結果として、モデルは、組み込みTIPプロウイルスを保有するCD4+T細胞が30~50日以内にHIVによって重感染し、トランス活性化されることを示した[急性感染中に細胞のより大きな画分がHIVに感染している場合はより迅速(メッツガー(Metzger)ら著、2011年)]。ちなみに、これは、HIV組換えが迅速である理由についての従来の説明(組換えには、2つの別個のプロウイルスに重感染した細胞から産生されるヘテロ二倍体ビリオンが必要である)と類似しているが、複数のHIVプロウイルスを有する細胞はまれである(ヨセフソン(Josefsson)ら著、2011年)。
【0198】
TIPは、ART中断時のウイルスのリバウンドを制限する「サルベージ療法」を構成し得る。
HIV-1 TIP(及びDIP)は、Tatを欠くレンチウイルスベクターであり、潜在を制御する関連する正のフィードバック回路である。本発明者ら、及び他の研究者らは、そのようなベクターがプロウイルス潜伏期に入り、Tatがトランスで提供されるまで休眠状態を維持することを示した(ラズーキー(Razooky)ら著、2015年;ワインバーガー(Weinberger)ら著、2005年)。したがって、ARTの中断又は失敗中に、HIVが潜伏期を逆転させるか、形質導入された細胞に感染すると、潜在型のDIP/TIPが再活性化され得る。したがって、TIPは、ART中断中のHIVウイルス量を低減するために、ARTを補完するサルベージ療法として機能し得る(メッツガー(Metzger)ら著、2011年)。実際に、分析療法の中断(ATI)は、クリニックでTIPを試験し、最終的には実装するためのアプローチである可能性がある(例えば、現在進行中の24週間のATI臨床試験NCT03617198)。
【0199】
TIPは、変異性逃避に対して高い遺伝的障壁を有する
HIV-1インビボダイナミクスの数学的モデルは、DIP及びTIPは、同じ逆転写酵素機構を使用して変異し、放出数が大きく、野生型ウイルスとの寄生関係を維持するために進化的に選択されているため、従来の治療法よりも本質的にHIV変異性逃避に対する脆弱性が低くなることを示唆している。(ラスト(Rast)ら著、2016年;ルージン(Rouzine)及びワインバーガー(Weinberger)著、2013年)。予備モデルは、圧倒的に、最も可能性の高い変異がTIPの機能喪失イベント(すなわち、TIPが野生型HIVに対する治療効果を失うこと)であることを示す。驚くべきことに、本発明者らのモデルでは、HIVが現在のARTから逃避する2倍の速さでTIPの機能喪失が起こったとしても、TIPは潜在的なワクチンの10倍を超えてAIDS集団の有病率を安定して低減する(メッツガー(Metzger)ら著、2011年)。
【0200】
別の懸念は、TIPが組換えによって病原体の産生を「アップレギュレート」し、細胞からの自身の産生をアップレギュレートするエレメントを得る可能性があることである。本発明者らは、この懸念の進化的淘汰の側面を詳細に調査した(メッツガー(Metzger)ら著、2011年;ラスト(Rast)ら著、2016年;ルージン(Rouzine)及びワインバーガー(Weinberger)著、2013年)。驚くべきことに、これらのモデルでは、TIPを介したHIVのアップレギュレーションにより、患者のTIPウイルス量が増加し、これは実際にさらに低いHIVウイルス量及びHIV集団の有病率を生じた。したがって、TIPは複数のスケールで競合する選択圧に供され、これらの療法の潜在的な進化的破綻を制限する。
【0201】
疫学的予測:TIPは、行動的障害を回避し、高リスク群を標的化し得る。
疫学者は、感染症を効率的に制御するために、高リスクの「コアグループ」及びウイルスの「スーパースプレッダー」を標的にすることの計り知れない可能性を長く認識してきた。しかし、これらの高リスク集団を特定し到達することは非常に困難であることが多く、問題は、主要な集団における不健康な行動(例えば、注射薬物使用者、IDU)、及び高リスク個体が未知のままでいるように動機付ける社会的スティグマ又は犯罪障壁(例えば、IDU、商業的セックスワーカ及びその客、男性と性交する男性、婚外の性的パートナを有する人)によってさらに悪化する。高リスク集団の特定に伴うコスト及び労力の結果、大きな潜在的利益があるにもかかわらず、実際には疾病管理対策の対象となることはしばしば実現不可能であるということを意味している。TIPは、病原体と同じメカニズムとリスク因子を介してこれらの主要な感染集団に到達するために伝播する疾患の根底にある伝達パターンを利用することによって、この障害を克服する(メッツガー(Metzger)ら著、2011年;ノットン(Notton)ら著、2014年)。すなわち、TIPは、高リスク個体を特定し到達するためのコスト及び課題を発生させることなく、標的化制御の利益をもたらすと予測される。現在の予防及び処置のアプローチは、不十分なアドヒアランス及び行動の脱抑制という課題に直面している。そこでは、疾患制御が成功すると、疾患による個人的なリスクの感覚が低減し、リスク行動の増加を生じ得る。脱抑制は依然としてHIVの予防及び制御の懸念事項であり(デューカーズ(Dukers)ら著、2001年)、治療が成功すると実際にHIVの発生率が高まるという逆の結果を生じ得る(ブロワー(Blower)ら著、2000年)。ART又は潜在的ワクチンとは異なり、単回投与療法はこれらの問題を効果的に回避し得、TIPの公衆衛生上の利点は脱抑制に対してユニークに強力である(メッツガー(Metzger)ら著、2011年)。
【0202】
遺伝子毒性:レンチウイルスベクター治療の成功(例えば、CAR-T細胞)により、遺伝子毒性の懸念が低減された
発癌性形質転換につながる挿入型変異誘発の初期の報告により、レトロウイルスの組み込みについては理解できる懸念が残っている(パイク・オバーゼット(Pike-Overzet)ら著、2007年)。しかし、その試験とは異なり、TIPは造血幹細胞(又は任意の前駆細胞)の形質導入に依存せず、最終的に分化したT細胞及び場合によってはマクロファージの形質導入にのみ依存する。血球への遺伝子療法は、CAR T療法及び他のアプローチによって証明されるように、現在、成功した治療戦略である。これは、発癌性形質転換に対するTリンパ球の耐性が原因である可能性がある。T細胞性白血病は、HIVに感染した集団でも非常にまれであり、B細胞性白血病(HIV患者でより一般的)は、これらの細胞へのHIVの組み込みによるものではない。
【0203】
それに関わらず、現代のレンチウイルス療法は強力な安全性の記録を有し、挿入を介した遺伝子毒性の欠如を一貫して示している(アイウチ(Aiuti)ら著、2013年;ビッフィ(Biffi)ら著、2013年;ハセイン・ベイ・アビナ(Hacein-Bey Abina)ら著、2015年;リバイン(Levine)ら著、2006年;マレク(Malech)及びオックス(Ochs)著、2015年;シェラー(Scholler)ら著、2012年)。特に、T細胞(CAR T細胞)のレトロウイルスベクターは、現在、10年の長きにわたる安全性及び有効性のプロファイル(シェラー(Scholler)ら著、2012年)、並びに鎌状赤血球症(リベイル(Ribeil)ら著、2017年)及びSCID-X1乳児(マムカルツ(Mamcarz)ら著、2019年)における最近の成功を有する。したがって、レンチウイルスベクター(例えば、DIP及びTIP)の挿入遺伝子毒性及び発癌は最小限のようである。
【0204】
組換え:レンチウイルスベクターは、細胞培養、マウス、又はヒトにおいて野生型HIVとの組換えを示さない。
疑似二倍体であるレンチウイルスは、逆転写中に組換えることができる2つのゲノムRNA鎖を有する。レンチウイルスの組換えには、配列に有意な相同性が必要であるようであり、1つの完全長9.7kb HIV gRNA及び3~7kbの有意に短縮されたgRNAなどの高度にヘテロ接合性のgRNA鎖間の組換えは、プロウイルス組み込み前の遮断のためにウイルス子孫を産生できない(アン(An)ら著、1999年)。この分子所見は、マウスモデル(デイビス(Davis)ら著、2004年)及びヒト臨床試験(リバイン(Levine)ら著、2006年)のデータと一致しており、どちらも野生型HIVと、より短いレンチウイルスベクターとの間の組換えを検出しなかった。本発明者らの予備データ(下記)も、推定TIP、F1、及びHIV間の組換えを示していない。
【0205】
F1 DIPの発見
TIPは、耐性に対する高い遺伝的障壁を備えた単回投与療法として機能する可能性を有する(メッツガー(Metzger)ら著、2011年;ラスト(Rast)ら著、2016年;ルージン(Rouzine)及びワインバーガー(Weinberger)著、2013年;ワインバーガー(Weinberger)ら著、2003年)。TIP療法の潜在的な利点を考慮して、本発明者らは、HIV TIPの候補を特定することに着手した。理想的には、本発明者らは、既存のDIPを上記の基準を満たすように変更したかったが(すなわち、高伝達及びウイルス増殖の1ログ低減)、文献に記載されているHIV「DIP」は伝達しない。
【0206】
DIPが検出可能なレベルに達するまでに約50日かかり得るHIVのモデルに基づき(ワインバーガー(Weinberger)ら著、2003年)、CEM T細胞でHIVを長期間培養するための連続リアクターシステムを構築した(
図3)。リアクターは感染細胞数にフォン・マグナス(von Magnus)様の振動を発生させ(
図3)、生存細胞で約2.5kbの欠失(フラスコ1のF1と呼ぶ)を検出した。特に、F1の欠失は繰り返し発生し(すなわち、その後の5回の実験で)、以前にシーケンシングされた患者試料には出現しておらず(ブルーナー(Bruner)ら著、2016年;コーン(Cohn)ら著、2015年;ホー(Ho)ら著、2013年;ポラック(Pollack)ら著、2017年)、以下に説明するスクリーニング(
図4~6)は、可能な説明を提供する。
【0207】
HIV F1 DIPのTIPへの改変
予備データは、F1 DIPがHIVに干渉する一方で、トランスでHIVによって効率的に動員されなかったことを示した(すなわち、そのR0<1)。したがって、TIPの基準を満たすために、F1のさらなる改変(engineering)が必要であった。F1をTIPへと改変するために、2つのアプローチ:(i)ランダム欠失ライブラリのスクリーニング、及び(ii)スプライシングアブレーション、を利用した。
【0208】
i)ランダムライブラリスクリーニング。効率的な動員に必要なHIVの領域を体系的に同定するために、本発明者らは、ランダム化された欠失スクリーニング(ワインバーガー(Weinberger)及びノットン(Notton)著、2017年)を利用して、HIV NL4-3のランダム欠失ライブラリを作製及びインデックス付けした(
図4)。簡単に説明すると、トランスポゾンを介したランダム挿入にプラスミドDNAを供し、続いてトランスポゾンを切除し、露出した末端を、エキソヌクレアーゼを介して消化して、それぞれ可変サイズのランダムな遺伝子位置を中心とする欠失を作製した。次に、プラスミドを20ヌクレオチドのランダムDNAバーコードを含むカセットと共に再ライゲーションして、欠失を「インデックス付け(index)」する。インデックス付けは、欠失領域を(ゲノム配列とバーコードの接合部によって)簡単に特定し、ディープシーケンシングによって追跡/定量化できるため、重要である。
【0209】
ランダム化されたバーコードライブラリは、約120,000の変異体をもたらした(
図5に示す完全ライブラリの15%サブセット)。pNL4-3プラスミドの欠失は、プラスミドの複製起点/ベータラクタマーゼを除いてプラスミド全体で発生する。これは、これらの領域の欠失が細菌で強く選択されていることを考慮すると予想される(これらの領域は実験用の天然対照)。平均欠失サイズは1.4kbであったが、最大6kbの範囲であった(ワインバーガー(Weinberger)及びノットン(Notton)著、2017年)。
【0210】
ライブラリのスクリーニングは、ヘルパーウイルスとして作用する複製能を有するHIVの存在下、インビトロで高MOI(MOI=5)継代を繰り返すことによって実施された(すなわち、RNAウイルスの古典的なDIP分離アプローチ)。以前のアプローチと同様に、MOI=5を使用して、トランスで補完される可能性を有する欠陥変異体が、複製能を有するHIVによる重感染時に増幅する機会を有することを確認した(複製能を有するウイルスも選択されるが、その後フィルターで除外される)。バーコードは、12継代後のディープシーケンシングによって分析された(
図6A)。簡単に説明すると、バーコード欠失ライブラリは、293T細胞のウイルス様レンチウイルス粒子にパッケージ化され、T細胞株(MT-4)の形質導入に使用された。その後、細胞から細胞への移入及び無細胞移入の両方によって、MT-4細胞を高MOI(MOI>5)で12回継代した。ウイルスRNAは定期的な時点で上清から分離され、バーコードカセットのイルミナ(Illumina)シーケンシングを介してディープシーケンシングされ、各継代後の欠失深度ランドスケープの計算を可能にした。バーコード欠失が各塩基にまたがる頻度は、DNAディープシーケンシング資料の「読み取り深度」に類似した「欠失深度」によって与えられる。9~12継代の間で、欠失ランドスケープは安定し、単一塩基分解能で、欠失に耐性のないHIVゲノム領域(シス作用エレメント)及び欠失に耐性のある領域(トランス作用エレメント)のマップを生成できるようになった(
図6B)(ワインバーガー(Weinberger)及びノットン(Notton)著、2017年)。ランドスケープは、公知のシス作用エレメント(例えば、RRE、Ψ、cPPT/CTS)を再現し、cPPT/CTSは、polからvprにわたるF1欠失内に直接的に位置するため、最も顕著である(
図3)。cPPT/CTSエレメントは核輸送を補助することが知られているため(ダーダルホン(Dardalhon)ら著、2001年)、本発明者らは、それをF1削除に再挿入して、F1
cPPTを生成した。本発明者らは、これはTIPを構成し得ると仮定した。
【0211】
ii)HIVスプライシングのアブレーション。次に、F1 gRNA産生を強化するために、HIVの調節回路の最近のマッピング(ハンセン(Hansen)ら著、2018年a)を構築し、HIVスプライシングが偏性的に転写後であることを示した(
図7)。本発明者らは、F1
cPPTのスプライスアクセプター部位を変異させて、F1 gRNAスプライシングを制限し、gRNAのみを生成した。以下で言及される全てのF1
cPPTベクターは、変異したスプライスアクセプター部位をコードする。本発明者らは、スプライシングされたHIVg RNAと比較して、F1
cPPTgRNAの細胞内存在量を増やすことにより、F1
cPPTがより効率的にパッケージングされると仮定した。
【0212】
F1
cPPT組換え体。F1
cPPT組換え体(
図8A)はHIVによってトランス補完され(
図8B)、驚くべきことに、HIV感染力価の1ログ低減を誘発した(
図8C)。細胞質及び上清gRNAのRT-qPCR分析により、F1
cPPTが、HIVより多くのgRNAをビリオン粒子にパッケージ化したことが示された(
図8D)。
【0213】
F1
cPPTは、HIVが新しい細胞に動員すること要する。動員効率を定量化するために、本発明者らは、共培養アッセイを開発した。mCherryレポータを安定的に発現するナイーブCEM標的細胞は、F1
cPPT(GFPレポータを輸送)で前形質転換された細胞と共培養した。共培養の2日後、HIV感染の存在下でのみ、二重陽性(mCherry+GFP+)細胞の大きい画分が観察された(
図9)。
【0214】
F1
cPPTは、R
0>1(TIPの基準を満たす)を示す。F1
cPPTのR
0を決定するために、本発明者らは、mCherry標的細胞へのF1
cPPTの伝播を(GFPによって)定量化した。簡単に説明すると、F1
cPPTで形質導入された細胞は、HIV-BFPに感染し、ナイーブmCherry発現細胞で10:90に希釈された。これが行われたのは、R
0の正式な定義が、大多数の細胞が感染しやすい場合(すなわち、初期感染)にのみ当てはまるためである。並行して、mCherry細胞によるF1
cPPTの伝播速度(GFPによる)の動態も測定した。両方のアプローチは、F1
cPPTにつきR
0>1の測定値を与え、HIVのR
0がF1
cPPTの存在下で低減することを示した(
図10)。
【0215】
F1
cPPTは、長期培養においてHIVに効率的に干渉し、共進化の可能性のある兆候を示す。F1
cPPTが複数ラウンドの伝播感染でHIVを阻害できるかを判断するために、CEM T細胞リアクターアプローチ(
図3)を使用した。リアクターに、F1
cPPTで予め形質導入した細胞の画分を播種した。F1
cPPT細胞を1:1で播種すると、リアクターを介して伝播するHIVの実質的な阻害があり(
図11)、F1
cPPTは細胞の50%超に動員された。5%及び10%のF1
cPPTでリアクターに播種すると、HIVへの干渉も示されたが、理論(ルージン(Rouzine)及びワインバーガー(Weinberger)著、2013年;ワインバーガー(Weinberger)ら著、2003年)によると、このような播種画分で完全阻害が見られるまでに50~100日かかると予測される。驚くべきことに、25日目ごろ、F1
cPPTリアクターは、HIV感染細胞の有意な増加を示し、10日後に低下した。これらのタイプの動的な「ブリップ(blips)」は、バクテリオファージと大腸菌(E.coli)の間の共進化的軍拡競争の標準的な特徴である(レンスキー(Lenski)及びレビン(Levin)著、1985年)。
【0216】
F1は、作用の複数のメカニズムによって干渉する。F1がHIVにどのように干渉するか、またそれ自体のgRNAのカプシド形成を強化するために、本発明者らは、一連の生化学的及び変異的研究を開始した。
【0217】
F1トランケーションタンパク質が必要であり、完全なRT欠失は表現型を再現しない。F1欠失は逆転写酵素(RT)遺伝子をトランケートしたため(
図12A)、本発明者らはまずF1を有する及び有しないウイルス上清中のRT活性を分析した。予想通り、RT活性はF1上清で有意に低減された(
図12B)。しかし、RTがF1から完全に欠失した場合(F1ΔRT;F1欠失の拡大)、部分的なHIV干渉のみが生じた(
図12C)。これらのデータは、RTが干渉表現型を完全に説明しておらず、F1がドミナントネガティブタンパク質として部分的に作用しているようであることを示す。
【0218】
F1はGagプロセシングに干渉する。特定の非ヌクレオシドRT阻害剤(例えば、エファビレンツ)はGag-Polポリタンパク質プロセシングを誤調節するため(フィゲイレード(Figueiredo)ら著、2006年)、本発明者らは、F1もGag-Polプロセシングを妨害するか試験した(
図13)。F1培養物が上清中に同様のレベルのp24カプシドタンパク質を産生し、同様のgRNA:p24比を示すにもかかわらず(
図13B)、ウエスタンブロット分析は、Gagタンパク質分解切断における重度の欠陥を示し(
図13C)、これは、Gagプロセシングの欠陥が強力なドミナントネガティブであることと一致する(リー(Ho)ら著、2009年)。全体的なGagポリタンパク質翻訳の顕著な増加は、F1の存在下でも観察され(
図13C)、リボソーム分画によってさらに調査される。
【0219】
F1トランケーションタンパク質は、ビリオン中にパッケージングされている。次に、トランケート型F1タンパク質がビリオン粒子にパッケージ化されているかどうかを試験するためのアッセイを開発した。ビリオン粒子のウエスタンブロット分析は、トランケート型タンパク質がビリオン粒子に存在することを示した(
図14)。
【0220】
F1及びHIVビリオン粒子の電子顕微鏡検査
「ハイブリッド」HIV-F1cPPTビリオン粒子は、変異体F1タンパク質及びRNAゲノムの取り込みがビリオンの超構造に影響を与えるかを決定し、ビリオン形態形成のどの段階が変更されるかを定義するために、サンキスト(Sundquist)研究所(ユタ大学)での電子顕微鏡検査によって特徴付けられる。
【0221】
通常のHIVビリオンの形態形成中に、ウイルスのGagポリタンパク質は原形質膜で集合し、膜中にエンベロープ化され、細胞から出芽し、Gagプロセシング後に成熟した円錐形のウイルスカプシドを集合させる(サンキスト(Sundquist)及びクラウスリッチ(Krausslich)著、2012年)。したがって、成熟した感染性HIV粒子は、薄切片ビリオンの電子顕微鏡写真で見ることができる中央の円錐形のカプシドを含む(
図15A)。この成熟した感染状態に到達できないビリオンは、生合成の異なる段階で止まる可能性があり、サンキスト(Sundquist)研究所は以前に、異なる必須の宿主因子との異常な相互作用のために、(i)エンベロープ化中に失敗した(
図15B)(メルセン(Mercenne)ら著、2015年)、(ii)出芽(
図15C)(ガラス(Garrus)ら著、2001年)、及び(iii)成熟(
図15D)(ハイアット(Hiatt)ら著、2019年)HIVビリオンを特徴づけた。
【0222】
F1cPPTの存在下で産生された薄切片HIVビリオンの形態は、カプシド可視化を最適化するように設計された染色プロトコルを使用して調べられる(フラド(Jurado)ら著、2013年)。対照として、野生型HIV粒子及び純F1cPPTウイルス様粒子(VLP)を並行して調べ、全てのビリオン表現型を定量的にスコアリングする(ハイアット(Hiatt)ら著、2019年;メルセン(Mercenne)ら著、2015年)。薄切片化したF1cPPTDIP/HIVハイブリッド粒子で形態学的欠陥が観察された場合、これらのビリオンは、投影画像及び電子クライオトモグラフィー(ECT)の両方で、クライオEMによって高解像度且つその天然状態で画像化される。後者のアプローチでは、アセンブリの3D空間特性及び成熟異常を視覚化できる。本発明者らは、以前にECT再構成を実施して成熟(ベンジャミン(Benjamin)ら著、2005年)及び未成熟(ライト(Wright)ら著、2007年)のHIV粒子(ジェンセン(Jensen)を使用)を特徴付け、エンベロープ化タンパク質ナノ粒子を設計した(ボッテラー(Votteler)ら著、2016年)(本発明者ら)。HIVビリオンを再構築するためのアプローチは急速に進歩しており(ハーゲン(Hagen)ら著、2016年;マッテイ(Mattei)ら著、2016年;シュール(Schur)ら著、2016年)、本発明者らは、現在、K2検出器及びエネルギーフィルターを備えたタイタン・クリオス(Titan Krios(商標))顕微鏡を使用して、可能な限り最高の解像度の再構成を行うことができる。シリアルEM(SerialEM)(マストロナーデ(Mastronarde)著、2005年)は、低線量モードを使用した傾斜系列取得の自動化に使用され、断層像はIMODソフトウェアパッケージ(クレマー(Kremer)ら著、1996年)を使用して生成及び処理され、セグメンテーション及びレンダリングはアミラ(Amira(商標))(FEI)で実施される。まとめると、これらの実験は、F1トランケーションタンパク質と野生型HIV Gagの共集合が粒子の形態を変化させ、異常が発生する段階を定義し、可能な限り最高の解像度でそれらの構造を視覚化するかを示す。
【0223】
HIV及びF1ビリオンプロテオームの質量分析
F1cPPTがビリオンのタンパク質組成又はポリプロテインのプロセシングを変更することによって干渉するかを評価するために、質量分析ベースのプロテオミクスアプローチを使用して、ビリオンのタンパク質組成及びプロセシング状態をネバン・クローガン(Nevan Krogan)博士(グラッドストーン/カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF))と共に測定する。
【0224】
クローガン(Krogan)研究室(カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF))は、HIVタンパク質間相互作用ネットワークを決定するための質量分析プロテオミクスアプローチを開発し(チョウ(Chou)ら著、2013年;イェーガー(Jager)ら著、2011年a;イェーガー(Jager)ら著、2011年b)、最近、ビリオンのタンパク質組成をアッセイするためにLC-MS/MS質量分析を適用した(
図16)。分析により、ビリオンにパッケージされた予想されるウイルス成分(Gag、Pol、Vpr、及びNef)及び宿主成分(例えば、ALIX、シクロフィリンA、クラスリン)が特定された。HIV Gagペプチドは、大半の切断部位にわたるペプチドを含め、一次配列の85%超を占めていた。
【0225】
本発明者らは、F1cPPTの存在下及び非存在下で産生されたHIVビリオンのタンパク質組成及びタンパク質処理状態の違いを定量化するために同様のアプローチを適用している。HEK293T細胞は、純F1cPPTをパッケージ化するために使用されるか、又はHIV及びF1cPPTハイブリッドを共パッケージ化するために使用される(空のプラスミドは、精製手順によって濃縮された非ビリオンタンパク質を差し引くために使用される)。全ての実験は生物学的に3回実施される。精製されたビリオン又はVLPは、FLAQアッセイを使用してp24で正規化され、トリプシンで消化され、オービトラップ・フュージョンMS(Orbitrap Fusion(商標) MS)システムでLC-MS/MSによって分析される。本発明者らの以前の研究と同様に、ペプチド配列は生の質量スペクトル、マックスクアント(MaxQuant)によって抽出された強度、及びMSスタッツ(MSstats)パッケージを使用して実施された統計分析と照合され、F1cPPTの存在下と非存在下で産生されたビリオンが差次的に豊富なタンパク質及び切断部位にまたがるペプチドが同定される。
【0226】
F1 RNAパッケージングのシングルビリオンイメージング
ビリオンへのRNAパッケージングにおけるF1
cPPTの効果は、SVAのパイオニアであるウェイ・シャウ・フー(Wei-Shau Hu)博士(NCI/NIH)と共にイメージングベースの単一ビリオン分析(SVA)によって測定される(チェン(Chen)ら著、2009年)。SVAイメージングアプローチ(
図17)は、HIVビリオン粒子の90%超が2つのウイルスRNAをパッケージ化することを示した(チェン(Chen)ら著、2009年)。最近では、本発明者らは、SVAを、全内部反射蛍光(TIRF)顕微鏡を使用した生細胞イメージングに拡張して、(i)HIV RNAは細胞質ではなく原形質膜で二量体化すること、(ii)RNA二量体の安定化にはGagタンパク質が必要であること、(iii)二量体化はウイルス集合の初期段階で発生すること、及び(iv)二量体化は2つのRNAではなく2つのRNA-Gag複合体の相互作用によって媒介されることを示した(チェン(Chen)ら著、2016年)。
【0227】
SVAイメージングは、F1又はF1
cPPTの存在下及び非存在下でF1
cPPTRNAパッケージングをHIV RNAパッケージングと比較するために使用される。記載されているように(チェン(Chen)ら著、2009年)、SVAは2つの蛍光タンパク質標識を使用する(
図17A)。HIV(NL43)及びF1/F1
cPPTは、Bglステムループ(BSL)又はMS2ステムループ(MSL)のセットをコードするために再クローン化される。BSL及びMSLは、それぞれRNA結合コートタンパク質Bgl及びMS2によって認識され、その同族のステムループに結合すると、コートタンパク質の点状病巣への局在化が触媒される。Bgl及びMS2コートタンパク質をYFP及びmCherryに融合させると、YFP及びmCherry点をフォローすることでRNAを視覚的に追跡できる。これにより、(i)2つのHIV RNAを含むビリオン(同倍数体)、(ii)2つのF1
cPPTRNAを含むビリオン(同倍数体F1)、及び(iii)1つのHIV及びF1
cPPTRNAを含むビリオン(ヘテロ二倍体)の画分の定量化が可能になる。
【0228】
さらに、説明されているように、セルリアン蛍光タンパク質(CeFP)へのGag融合(タグ付きとタグなしの両方のGagを使用して、ウイルス粒子の正常な形態を確保する)により、HIV及びF1cPPTRNAがGagでどのように局在するかの細胞内動態のTIRF顕微鏡による時空間分析が可能になる(チェン(Chen)ら著、2016年)。F1cPPTRNAの翻訳効率は、フー(Hu)実験室が最近HIVに適合させたポリソーム画分によってもアッセイされる。このようにして、本発明者らは、F1cPPTがHIV RNAとのパッケージングについて単純に化学量論的に競合しているか、又はGag及びカプシドに対する1人あたりのRNA親和性が強化されているかを決定する。
【0229】
広範囲のHIV患者分離株及び細胞にわたるF1干渉を定量化する
形質転換細胞株及びHIV実験室株は便利なツールであるが、インビボでの感染の生物学的複雑性を反映していない。したがって、初代のヒト及び患者の細胞の使用が標準となっている。ここでは、患者の細胞及びウイルス分離株におけるF1cPPTの有効性の調査に焦点を当てる。
【0230】
ドナー由来のαCD3/28活性化初代ヒトCD4
+T細胞における本発明者らの以前のHIV研究(ハンセン(Hansen)ら著、2018年a;ラズーキー(Razooky)ら著、2015年)に基づいて、本発明者らは、F1
cPPTTIPがインビボでヒト初代CD4
+T細胞のHIVに干渉し得ることを確認した(
図19のマウスデータの初期実験)。さらに、本発明者らは、F1
cPPTがHIV-2由来のSIVmac239分子クローンによってトランス活性化され、CEMx174細胞においてSIVに有意に干渉することを見出した(
図18)。HIV-2とHIV-1の間の配列相違を考慮すると、HIV-2に干渉するF1の能力は、HIV-1サブタイプの広い範囲に干渉し得ると議論される。
【0231】
多様なHIV患者ウイルス分離株に対するF1cPPTの効果。患者の細胞は、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のSCOPEコホート(clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT00187512)から取得される。本発明者らが以前に説明したように、患者のCD4+T細胞は、大量(220mL)の採血から分離される(エリクソン(Eriksson)ら著、2013年)。患者間のばらつきを説明するために、F1cPPTは≧10人の患者試料で試験される。細胞はPMA/イオノマイシン活性化され、F1cPPT又はシャムベクターで形質導入され、NIH AIDS試薬データベース(カタログ番号180130)から得られた国際的分離株(サブタイプA、B、C、D及び循環組換え体を含む)のパネルからの10の主要な患者ウイルス分離株に感染させた。健常ドナーからの細胞を使用することもできるが、感染した患者からの細胞での試験は、F1cPPT機能を阻害し得る慢性的に感染したART処置を受けた患者の細胞における潜在的な生理学的差異を説明する。全ての分離株について、患者細胞からのHIV増殖は、プローブベースのqPCRを使用した限界希釈増殖アッセイによって定量化される(ハンセン(Hansen)ら著、2018年a)。F1cPPTビリオンもp24を輸送する(carry)ため、p24を測定する標準QVOAをわずかに変更する。
【0232】
患者細胞からのウイルス増殖に対するF1cPPTの効果。記載されているように(エリクソン(Eriksson)ら著、2013年)、患者細胞からのHIV増殖は、F1cPPT形質導入の存在下/非存在下で直接定量化される。さらに、未処置の患者(ウイルス量>103コピー/mL)からの過去の凍結保存された細胞ストックは、F1cPPT形質導入され、PMA/イオノマイシン活性化され、上記のように増殖が定量化される。ワインバーガー(Weinberger)及びディークス(Deeks)研究室は、潜伏期逆転及びウイルス増殖の定量化において豊富な経験を有する(ダール(Dar)ら著、2014年;エリクソン(Eriksson)ら著、2013年)。患者間のばらつきを説明するために、≧10人の患者試料が試験される。
【0233】
ヒト化マウスモデルにおける経時的なF1干渉及び共進化の定量化
F1cPPT干渉の長期持続時間、共進化のダイナミクス(co-evolutionary dynamics)、及び潜在的な遺伝子毒性は、ジョン・バーネット(John Burnett)(シティ・オブ・ホープ(City of Hope))及びポーラ・キャノン(Paula Cannon)(南カリフォルニア大学)と共にhu-HSPC NSGマウスモデルでアッセイされる。複数の組織断片を共移植するために複雑な外科的処置を必要とする骨髄肝胸腺(BLT)マウス(デントン(Denton)ら著、2012年)と比較して、hu-HSPC NSGマウスはそのような外科手術を必要とせず、実験ごとにより多くの数の動物を研究することができる(FDA承認の重要な考慮事項)。
【0234】
ジム・ライリー(Jim Riley)博士(ペンシルベニア大学)と共に、本発明者らは、最近、HIV hu-PBLマウスモデルで予備実験を完了した(
図19a)。F1
cPPT及びより広範なスプライシングアブレーションを備えたバージョン(F1
splice)はいずれも、1.5~2ログでHIVを阻害し、1ログ超でCD4+T細胞を保護した(
図19b~d)。同様の結果が第2の反復実験で観察された(図示せず)。しかし、hu-PBLは短期モデルであり、マウスは約5~6週間で、移植片対宿主病(GVHD)で死亡する。バーネット(Burnett)及びキャノン(Cannon)研究室は、HIVチャレンジヒト化NOD.Cg-Prkdcscid IL2rgtm1Wjl/SzJ(NSG)マウスでHIV治療戦略を試験するためのインビボモデルシステムを確立した(アッキナ(Akkina)ら著、2016年;ホルト(Holt)ら著、2010年;サティーサン(Satheesan)ら著、2018年)。重要なことに、hu-NSGマウスは、HIV潜伏期を再現し、GVHDなしで約40週間ウイルス血症を維持し、比較的安定的なセットポイントのウイルス血症を確立することができ(
図20)、バーネット(Burnett)博士及びワインバーガー(Weinberger)博士には、共同研究の経歴を有する(ワインバーガー(Weinberger)ら著、2005年)。
【0235】
hu-HSPC NSGマウスの研究:長期のF1干渉を試験するために、記載されているようにhu-NSGマウスを調製する(石川(Ishikawa)ら、2005年)。オス及びメスのマウスは、細胞生着における性別の偏りを説明するために、全ての実験群及び対照群で均等に分配される。生着後12~14週間で、ヒト化マウスをIP注射による100~200ngのp24のHIV-1BaLでチャレンジする。感染後3~4週間で、動物にgp120 envシュードタイプ化F1cPPT又はシャムベクターを108IUの尾静脈注射によりインビボで形質導入する。初期の形質導入効率は、GFP発現についてFACSによってアッセイされ、最近のddPCRアッセイであるインタクトプロウイルス検出アッセイ、IPDA(ブルーナー(Bruner)ら著、2019年)は、インタクトなF1cPPT及びHIVプロウイルスを有する細胞を定量化するように適合されている。
【0236】
HIVウイルス血症、細胞数、及びサイトカインプロファイル(ELISpot/FluorSpotによる)は、F1cPPT及びシャム形質導入マウスの末梢血(眼窩後出血によって収集)から毎週アッセイされる。40週目に、マウスを剖検して脾臓、肝臓、骨髄、腸、及び脳を回収し、ddPCRによるHIV及びF1cPPTgDNAの分析を行う。本発明者らは、これらの組織で持続的なHIV感染を観察した(サティーサン(Satheesan)ら著、2018年)。
【0237】
シーケンシングによる共進化分析:マウスの血液/組織から収集された完全長gDNAは、配列共進化の可能性のあるシグネチャにつき、パックビオ(PacBio(登録商標))RSII単一分子リアルタイム(SMRT)シーケンシングシステム(シティ・オブ・ホープ・シーケンシングコア(City of Hope Sequencing Core))で分析される(例えば、F1及びHIV GagのdN/dS分析)。この分析は、HIV配列サブセットがF1cPPT処置された動物でより急速に進化しているかどうか、及びF1cPPTがその親シーケンスから分岐しているか、又はどのように分岐しているかを決定する。パックビオ(PacBio)テクノロジーは、NGSのディープマスパラレルシーケンシングとロングシーケンシングリード(>10kb)を組み合わせ、最大40の異なる完全長HIV-1ゲノムの混合物を同時にシーケンシングできる(ジラーニア(Dilernia)ら著、2015年)。グラッドストン・ゲノミクス・コア(Gladstone Genomics Core)は、パックビオ(PacBio)データ(トマス(Thomas)ら著、2014年)の分析に豊富な経験を有し、本発明者らの取り組みを支援する。
【0238】
分析的治療中断(ATI):潜在的なヒト臨床試験(NCT03617198)の構造を模倣するために、ARTを受けているhu-NSGマウスでATI研究が実施される。本発明者らは、HIV感染マウスへのARTの経口送達のプロトコルを確立し、ART中の潜伏を示した(
図20):血清中の検出不能なHIV RNA及びART中断後2~4週間の強力且つ迅速なウイルスリバウンド(サティーサン(Satheesan)ら著、2018年)。HIVチャレンジの4週間後、マウスにF1
cPPTを注入し、8週間後にウイルス血症が検出されなくなるまでARTを投与する。ARTは4~6週間後に中断され、HIV vRNAは40週まで定量化されて、F1
cPPTがHIVリバウンドを遅延又は制御するかを判断する。40週目に、組織分析のためにマウスを剖検する。
【0239】
【0240】
【0241】
【0242】
【0243】
【0244】
【0245】
【0246】
【0247】
実施例2:材料及び方法
細胞株。全ての細胞は、5%CO2で、37℃で増殖させた。MT-4(NIH AIDS試薬プログラム、120)及びCEM CD4+(NIH AIDS試薬プログラム、117)細胞は、10%FBS(フィッシャー・サイエンティフィック(Fisher Scientific)、MT35011CV)及び1%Pen /Strep(フィッシャー・サイエンティフィック(Fisher Scientific)、MT30002CI)を補充したRPMI1640(フィッシャー・サイエンティフィック(Fisher Scientific)、MT10040CV)中で維持された。293T(アメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC)、CRL-3216)は、RPMIと同様に補充したDMEM(フィッシャー・サイエンティフィック(Fisher Scientific)、MT10013CV)中で維持された。
【0248】
シミュレーション
バイロスタット(virostat)感染及び分析。バイロスタットが構築されたら、細胞を80~120mLの容量中、約0.5~100万細胞/mLで添加し、安定した細胞濃度及び生存率を確保するために、培養物の細胞密度及び生存率を1~2週間監視した。培養が安定したら、細胞は、複製能を有するHIV(GFP又はBFPのいずれかを発現)に低MOI(実験に応じて約0.01~0.1)で感染させた。感染後の示された日に、フラスコの全内容物(すなわち、細胞及び上清)の3mLをフラスコから取り出して分析した。細胞濃度及び生存率は、バイオラド(Bio-Rad(商標))TC20自動セルカウンター(カタログ#1450102)を使用して決定し、細胞は1%ホルムアルデヒド(トーシミス・リサーチ社(Tousimis Research Corporation)、1008A)中で固定し、蛍光をBD LSR(商標)IIフローサイトメータで測定し、フロージョー(FlowJo(商標))で分析した。バイロスタット上清は、細胞を1,000gで3分間ペレット化し、上清を除去してチューブを洗浄し、-80℃で凍結することにより回収した。下流の分析のために、解凍時に上清をろ過した。元のバイロスタットにつき、ウイルス力価は以下に示すようにTCID50によって決定された。TIP細胞で開始されたバイロスタットの場合、完全長のHIV構築物にBFPタグが含まれているため、BFP+細胞の頻度がウイルス量のプロキシとして使用された。
【0249】
プロウイルスDNAのPCR及びサンガーシーケンシング。ヌクレオスピン組織(NucleoSpin Tissue(登録商標))キット(740052.50)を製造元のプロトコルに従って使用して、約100万個のバイロスタット細胞から全ゲノムDNAを抽出した。PCRは、フュージョン・ハイフィデリティー・PCRマスターミックス(Phusion(商標)High-Fidelity PCR Master Mix)(NEB、M0531S)を使用し、次の条件を使用して、プライマーPolフォワード及びVpuリバース(プライマー表を参照)で実施した:初期変性:98℃で30秒間;30回のサイクル:98℃で10秒間、60℃で30秒間、72℃で4分間;最終伸長:72℃で10分間、4℃で保持。PCR産物を0.8%アガロースゲルで分析し、シーケンシングのために切り出した。PCR産物は、キアクイック(QIAquick(登録商標))ゲル抽出キット(キアゲン(Qiagen(登録商標))、28115)を使用してゲル抽出され、Polフォワード及びVpuリバースプライマーを使用したシーケンシング確認のためにエリムバイオファーム(Elim Biopharm)に送られた(プライマー表を参照)。
【0250】
プラスミド:全てのF1構築物及びその他の欠失変異体の変異を表1~4に示す。クローニングは、都合の良いように様々なPCRクローニング技術によって行われた。必要に応じて、制限クローニングを使用してプラスミド配列を交換した。配列は、エリムバイオファーム(Elim Biopharm)でのサンガーシーケンシングによって確認された。
【0251】
ウイルスストック、レンチウイルス、又は共トランスフェクション競合実験のためのトランスフェクション。完全長のHIVストックの場合、293T細胞にプラスミドpNLENG1-IRES-Nef(レビー(Levy)ら著、2005)又はその誘導体(表1~4を参照)をトランスフェクトした。TIP構築物又はレンチウイルスベクターをパッケージ化するために、トランスファープラスミド、パッケージングプラスミドpCMV-dR8.91(ズフェリー(Zufferey)ら著、1997年)及びシュードタイピングプラスミドpCMV-VSVG(アドジーン(Addgene)、#8454)は、1:2:1の比で混合された一次細胞形質導入のために調製されたTIP構築物を除き、それぞれ4:10:5の質量比で混合した。共トランスフェクションの競合は、示されたモル比でプラスミドを混合し、過剰なpUC19で全ての反応にわたって質量を等しくすることによって実施された。トランスフェクションミックスを作製するために、プラスミドを未補充のDMEM(すなわち、血清又は抗生物質が添加されていない)で10ng/mL全DNAの濃度に希釈し、PEIを30μg/mLの濃度で、トランスフェクションウェル又はディッシュの総用量の約10%の容量(例えば、2mLの培地を有する6ウェルプレートでは200μl)で添加した。トランスフェクションミックスを激しくボルテックスし、室温で10分間インキュベートし、細胞に添加して一晩インキュベートした。翌日、トランスフェクション上清を新鮮な完全DMEMに交換し、トランスフェクションの約48時間後に上清を回収した。遠心分離により細胞破片を除去し、上清を0.45μmフィルターでろ過した。濃縮ウイルスは、6%イオジキサノール勾配(シグマ・アルドリッチ(Sigma Aldrich)、D1556-250mL)を介して20,000rpmで1.5~2時間の超遠心分離(ベックマン・コールター(Beckman Coulter(商標))オプティマ(Optima(商標))XE-90、ロータSW32Ti)によって調製した。
【0252】
ウイルス及びレンチウイルス力価。蛍光タグ付きの完全長HIV及びレンチウイルスは、MT-4で段階希釈して力価を測定し、BD LSR(商標)II又はMACSQuant(登録商標)VYBフローサイトメータで、2dpiでフローサイトメトリーによって分析した。LTRからの発現が弱いレンチウイルスストック(すなわち、Tatを含まない構築物)は、MT-4を形質導入し、形質導入後2日又は3日で完全長HIVに重感染し(トランスでTatを提供するため)、2dpiでレンチウイルス発現が陽性であった感染細胞の割合として測定した。全ての蛍光データは、フロージョー(FlowJo(商標))で分析された。元のバイロスタット力価は、長期感染の過程で変異によってGFPタグが失われた場合に備え、TCID50によって決定された。
【0253】
上清p24濃度。p24の上清濃度は、FLAQ法(ヘイデン(Hayden)ら著、2003年及びゲスナー(Gesner)ら著、2014年)によって決定された。これは、本質的には、フローサイトメトリーによる定量を可能にするために、PE結合抗体を使用してビーズに対して実施されるサンドイッチELISAである。簡単に説明すると、段階希釈した上清試料を、KC57-PE p24抗体(ベックマン・コールター(Beckman Coulter(商標))、6604667)及びヒト抗p24 Gag HIV-1 IIIBポリクローナル抗体(イムノDC(ImmunoDC LLC)、2503)に事前に架橋したポリスチレンビーズと共にインキュベートした。洗浄及び固定後、ビーズ蛍光をBD LSR(商標)IIのフローサイトメトリーで分析し、フロージョー(FlowJo(商標))の標準曲線を使用して蛍光強度を濃度に変換した。
【0254】
形質導入効率の計算。レンチウイルスストック形質導入の効率は、p24(すなわち、カプシドタンパク質)の1ngあたりの形質導入単位(「力価」)として測定された。力価及びp24濃度は上記のように決定された。
【0255】
単一組み込みポリクローナルDIP/TIP細胞株の構築。ポリクローナル細胞株は、低MOIでレンチウイルスをCEMに形質導入し(単一組み込みを確実にするため)、BD FACSAria(商標)IIセルソータを使用してGFP又はBFP発現細胞(使用する構築物に応じて)をバッチ選別することによって作製された。選別する前に、形質導入された集団を5μMのダルナビルで3~5日間処理し、複製能を有する組換え体を排除した。注記:Tatが存在しないため、大半の構築物でGFP又はBFPの発現は非常に低かったが、BD FACSAria(商標)IIではかすかに発現が検出された。
【0256】
細胞株の感染、分析及び上清の回収。TIP構築物(又は対照)で形質導入された細胞株(CEM又はMT-4)に、50万細胞/mLの密度で蛍光標識HIVを重感染させた。感染の頻度は、細胞を1%ホルムアルデヒド(トーシミス・リサーチ社(Tousimis Research Corporation)、1008A)で固定し、BD LSR(商標)IIでフローサイトメトリーによって蛍光細胞を測定し、フロージョー(FlowJo(商標))で分析することによって監視された。単一サイクルの感染分析では、細胞をペレット化し、.45μMフィルター(マイレックス(Millex(登録商標))、SLHV033RS)で上清をろ過することにより、上清を3dpiで収集した。
【0257】
CD4受容体の染色及び分析。細胞は、ブリリアントバイオレット650コンジュゲート抗ヒトCD4抗体(バイオレジェンド(Biolegend)、317436)又はアイソタイプ対照(バイオレジェンド(Biolegend)、400351)で、0.1mLの容量で50万個の細胞に1μlの抗体を使用して染色した。細胞を抗体と共に30分間光線から保護してインキュベートし、1mLのフローバッファー(2%FBS、DPBS中の2mM EDTA)で洗浄し、0.25mLの固定液(フローバッファー中の1%ホルムアルデヒド)に再懸濁した。CD4染色は、BD LSR(商標)IIでのフローサイトメトリーによって評価され、フロージョー(FlowJo(商標))で分析された。
【0258】
RT-qPCRによるウイルスRNAの分析。ウイルスゲノムRNAは、キアampウイルスRNAミニキット(QIAamp(登録商標)Viral RNA Mini Kit)(キアゲン(Qiagen)、52904)を製造元のプロトコルに従って使用して、ろ過した上清から抽出し、MS2 RNA溶液の1:1,000希釈液(シグマ・アルドリッチ(Sigma-Aldrich)、10165948001)2μlも、正規化対照としてスパイクインした。抽出されたウイルスRNAは、常用DNase処理プロトコルに従って、ターボDNAフリーキット(TURBO DNA-free(商標) kit)(サーモフィッシャー・サイエンティフィック(Thermo Fisher Scientific)、AM1907)でDNase処理された。全細胞RNAは、オンカラムDNA消化(RNaseフリーDNase I、キアゲン(Qiagen)、79254)を含む製造元のプロトコルに従って、キアゲンRNeasyミニキット(Qiagen RNeasy(登録商標)Mini Kit)(キアゲン(Qiagen)、74104)を使用して抽出した。RNAは、製造元のプロトコル(gDNAワイプアウトステップを含む)に従ったQuantiTect(登録商標)逆転写キット(キアゲン(Qiagen)、205311)、又はランダムプライマーにつき25℃のインキュベーションの推奨を含むメーカの標準プロトコルに従ったM-MuLV逆転写酵素(NEB、M0253L)及びマウスRNase阻害剤(NEB、M0314S)のいずれかを使用して逆転写した。ただし、試料は70℃で変性され、酵素は80℃で5分間不活化された。全てのcDNA合成には、非RT酵素コントロールが含まれ、反応はランダムヘキサマーでプライミングされた。qPCRは、高速SYBRグリーン(Fast SYBR Green)マスターミックス(サーモフィッシャー・サイエンティフィック(ThermoFisher Scientific)、4385612)を使用し、アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems(商標))7500高速リアルタイムPCRシステムで10μlの反応容量及び200nMの最終プライマー濃度を使用して製造元のプロトコルに従って実行された。全体、完全長、及びTIP gRNA、並びにMS2対照RNAのプライマーは、プライマー表に見出すことができる。完全長RNAの割合は、全体及び完全長のCt値を倍率変化に変換し(完全長のみの試料に正規化)、WT倍率変化を総倍率変化で割ることによって決定された。TIP RNAは、試料中の残存gRNAであると想定された。
【0259】
HIV-1-ヒト化マウスチャレンジ(レズリー(Leslie)ら著、PLoS病原体(PLoS Pathog)、2016年から適合)。NOD.Cg-PrkdcscidIl2rgtm1Wjl/SzJ(NSG)マウスに、2x107の未修飾の初代ヒトCD4 T細胞、又は未修飾且つTIP形質導入された初代ヒトCD4 T細胞の50/50混合物(すなわち、約1x107の非形質導入細胞、及び約1x107のTIP細胞)を生着させ、各動物からの50μLの血液を使用したトゥルーカウント(TruCount)(ベクトン・ディッキンソン(Becton Dickinson))分析により、3週間後にCD45+CD4+細胞の生着を監視した。次に、実験群あたり5匹の対照(非感染)動物及び8匹の試験(感染)動物の群へ、生着に基づいて、マウスを正規化した。マウスを__IU BaL完全長HIVに感染させ、3週間にわたって7日ごとに採血し、CD4+T細胞数をトゥルーカウント(TruCount)で分析した。トゥルーカウント(TruCount)分析は、PerCP-Cy5.5コンジュゲート抗ヒトCD45抗体(イーバイオサイエンス(eBioscience))及びBV421コンジュゲート抗CD4抗体(イーバイオサイエンス(eBioscience))を使用して実施した。利用可能な場合、ウイルス量分析のためにおよそ50μlの血清が保存された。動物はペンシルベニア大学で飼育された。
【0260】
マウス血清RNA抽出。血清からのRNA抽出につき、製造元のプロトコルに従って、BD TRI試薬(モレキュラーリサーチセンター(Molecular Research Center)、TB 126)を使用して、マウス血清からRNAを抽出した。プロトコルを開始する前に、150μlのDPBSを約50μlの血清試料に添加して、容量を約200μlにした。RNAの最終再懸濁は、ヌクレアーゼを含まない水50μl中で実施した。
【0261】
マウスRNA試料のddPCR及び分析。デジタルドロップレットPCR(Digital Droplet(商標)PCR)は、バイオラド(Bio-Rad)QX100液滴発生器(1863002)及びリーダ(1863003)を使用して、製造元のプロトコルに従って実施された。RT-PCR反応は、バイオラドプローブ用ワンステップRT-ddPCRアドバンストキット(Bio-Rad One-Step RT-ddPCR(商標)Advanced Kit for Probes)(バイオラド(BioRad)、1864021)を使用して、以下の反応条件で製造元のプロトコルに従って実施した:900nMプライマー、250nM Taqman標的プローブ、及び1X濃度の血清抽出RNA。サーモサイクリング条件では、初期変性は65℃で5分間、アニーリング及び伸長は56℃で1分5秒間行った。データはクアンタソフト(QuantaSoft(商標))ソフトウェアで取得及び分析した。ddPCRプライマー及びプローブのリストについては、プライマー表を参照されたい。全ての反応は技術的に重複して実施され、検出限界未満の試料(陰性対照によって決定される)はTIP含有量について分析されなかった。
【0262】
統計分析。力価又はqPCRの比較では、独立T検定を使用してp値を取得した。経時的なTIPバイロスタット感染のトラジェクトリーについて、対応t検定を使用した。マウス実験におけるCD4+T細胞濃度については、マンホイットニー検定を使用してグループ内及びグループ間比較を行い、一元配置分散分析及び多重比較のためのテューキ検定によってウイルス量を分析した。
【0263】
バイオグラフィー:
ゲスナー・M(Gesner M)、マイチ・M(Maiti M)、グラント・R(Grant R)、及びカブロイス・M(Cavrois M)著、HIV-1 p24 Gagの高速定量化のための蛍光結合抗原定量化(FLAQ)アッセイ(Fluorescence-linked antigen quantification(FLAQ)assay for fast quantification of HIV-1 p24 Gag)、バイオプロトコル(Bio-protocol)、2014年、第4巻、第24号、e1366。
【0264】
ヘイデン・MS(Hayden MS)、パラシオス・EH(Palacios EH)、及びグラント・RM(Grant RM)著、蛍光結合抗原定量化アッセイを使用したHIV-1 p24及びSIV p27のリアルタイム定量化(Real-time quantitation of HIV-1 p24 and SIV p27 using fluorescence-linked antigen quantification assays)、エイズ(AIDS)、2003年、第17巻、第4号、p.629~631。
【0265】
レズリー・GJ(Leslie GJ)、ワン・J(Wang J)、リチャードソン・MW(Richardson MW)ら著、CXCR4アミノ末端にコンジュゲートしたgp41ヘプタッドリピート-2ドメインからのペプチドによるHIV-1の強力且つ広範な阻害(Potent and broad inhibition of HIV-1 by a peptide from the gp41 heptad repeat-2 domain conjugated to the CXCR4 amino terminus)、PLoS病原体(PLoS Pathogens)、2016年、第12巻、第11号、e1005983。
【0266】
レビー・DN(Levy DN)、アルドロバンディ・GM(Aldrovandi GM)、クッチ・O(Kutsch O)、及びショー・GM(Shaw GM)著、その天然の標的細胞におけるHIV-1組換えのダイナミクス(Dynamics of HIV-1 recombination in its natural target cells)、米国科学アカデミー紀要(PNAS)、2004年、第101巻、第12号、p.4204~9。
【0267】
ズファリー・R(Zufferey R)、ナギー・D(Nagy D)、マンデル・RJ(Mandel RJ)、ナルディーニ・L(Naldini L)、及びトロノ・D(Trono D)著、多重減衰レンチウイルスベクターは、インビボでの効率的な遺伝子送達を実現する(Multiply attenuated lentiviral vector achieves efficient gene delivery in vivo)、ネイチャー・バイオテクノロジー(Nature Biotechnology)、1997年、第15巻、第9号、p.871~5。
【0268】
米国特許第7,572,906号明細書。
メッツガー(Metzger)ら著、2011年、PLoS計算生物学(PLoS Comp.Biol.)、第7巻、e1002015。
【0269】
ダル(Dull)ら著、1998年、ジャーナル・オブ・バイロロジー(J.Virol.)第72巻、p.8463~71。
ファン(Huang)及びバルティモア(Baltimore)著、1970年、ネイチャー(Nature)、第226巻、p.325~7。
【0270】
リバイン(Levine)ら著、2006年、米国科学アカデミー紀要(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)、第103巻、p.17372~7。
ワインバーガー(Weinberger)ら著、2003年、ジャーナル・オブ・バイロロジー(J.Virol.)、第77巻、p.10028~36。
【0271】
本発明は、その具体的な実施形態を参照して記載されたが、本発明の真の趣旨及び範囲から逸脱することなく、種々の変更が行われてもよく、均等物が置換されてもよいことが当業者によって理解されるべきである。さらに、特定の状況、物質、物質の組成、プロセス、プロセスステップを本発明の目的、趣旨、及び範囲に適合させるために、多くの修正が行われてもよい。全てのそのような修正は、本明細書に添付される特許請求の範囲内であることが意図される。
【配列表】