IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ベイシス-ソリューションズ,エルエルシーの特許一覧

特許7495437自然発火性化学物質用の低減システム及び使用方法
<>
  • 特許-自然発火性化学物質用の低減システム及び使用方法 図1
  • 特許-自然発火性化学物質用の低減システム及び使用方法 図2
  • 特許-自然発火性化学物質用の低減システム及び使用方法 図3
  • 特許-自然発火性化学物質用の低減システム及び使用方法 図4
  • 特許-自然発火性化学物質用の低減システム及び使用方法 図5
  • 特許-自然発火性化学物質用の低減システム及び使用方法 図6
  • 特許-自然発火性化学物質用の低減システム及び使用方法 図7
  • 特許-自然発火性化学物質用の低減システム及び使用方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】自然発火性化学物質用の低減システム及び使用方法
(51)【国際特許分類】
   A62C 2/04 20060101AFI20240528BHJP
【FI】
A62C2/04 B
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021577262
(86)(22)【出願日】2019-09-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-14
(86)【国際出願番号】 US2019051689
(87)【国際公開番号】W WO2020263292
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2022-09-14
(31)【優先権主張番号】16/452,179
(32)【優先日】2019-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521563954
【氏名又は名称】ベイシス-ソリューションズ,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ラブロカー,ジョージ,アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】マーフィー,ミカエル,カールトン
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0032502(US,A1)
【文献】特開2009-192091(JP,A)
【文献】国際公開第1999/008047(WO,A1)
【文献】特開2007-137958(JP,A)
【文献】特開昭61-161331(JP,A)
【文献】特開2013-082799(JP,A)
【文献】国際公開第2002/014743(WO,A1)
【文献】特表2013-517431(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自然発火性化学物質用の低減システムであって、
少なくとも1つのハザードボリュームと、
少なくとも1つの気化器と、
少なくとも1つの反応カラムと、
自然発火性物質の意図しない放出の存在を検出するように構成された少なくとも1つのセンサと
を備え、
前記少なくとも1つのハザードボリュームと、前記少なくとも1つの気化器と、前記少なくとも1つの反応カラムとが、互いに流体連通しており、
前記少なくとも1つのセンサが、前記システムの動作を開始し、停止し、又は他の方法で変更し、
前記ハザードボリューム内に存在する自然発火性物質は、その内部の不活性ガスによって燃焼が防止され、前記少なくとも1つの反応カラムの酸素制御環境において低減され
前記少なくとも1つのセンサは、低減状態及び低減後状態の間にサンプリングが制限され、自然発火性物質への過度の曝露が防止される、システム。
【請求項2】
前記自然発火性物質の前記燃焼を制御するために窒素ガスが内部に注入され、窒素注入の速度が、少なくとも1つの供給源から少なくとも1つのポートを介した任意の速度である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記少なくとも1つのハザードボリュームから前記少なくとも1つの気化器へと通じる通路には、窒素ガスを導入する先の少なくとも1つの窒素ガス源を介して、酸素がないままである、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記自然発火性物質が、前記通路内に注入された前記窒素ガスを介して、前記少なくとも1つのハザードボリューム内に保持される、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記少なくとも1つの気化器が、内部の前記自然発火性物質と熱的に連通した、少なくとも1つの加熱手段及び少なくとも1つの冷却手段を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記少なくとも1つの気化器から前記少なくとも1つの反応カラムに移動する蒸気が、前記少なくとも1つの気化器の出口に近接して注入される窒素ガスによって覆われる、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記少なくとも1つのハザードボリューム、前記少なくとも1つの気化器、又は通路のいずれかにおける前記自然発火性物質が、少なくとも1つの気化器ヒータ及び/又は少なくとも1つの液溜めヒータによって加熱される、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
窒素、熱、及び時間を使用して、システムへの酸素の注入に先立って、前記自然発火性物質の前記システムを清浄にし、前記酸素が徐々に注入されて、自然発火性物質が確実に存在しないようにする、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記減後状態の前記ハザードボリューム内への酸素の注入が段階的であって、炎又は過度の発熱反応の危険性なしに、低レベルの反応生成物の検出を容易にする、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記少なくとも1つの反応カラムが、蒸気を混合し、内部での固体反応生成物の付着を防止するように構成された旋回羽根を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
自然発火性化学物質用の低減システムであって、
少なくとも1つのハザードボリュームと、
少なくとも1つの反応カラムと、
自然発火性物質の意図しない放出の存在を検出するように構成された少なくとも1つのセンサと
を備え、
前記少なくとも1つのハザードボリュームと前記少なくとも1つの反応カラムとが、互いに流体連通しており、
前記少なくとも1つのセンサが、前記システムの動作を開始し、停止し、又は他の方法で変更し、
前記ハザードボリューム内に存在する自然発火性物質は、その内部での燃焼が防止され、前記少なくとも1つの反応カラムの酸素制御環境において低減され
前記少なくとも1つのセンサは、低減状態及び低減後状態の間にサンプリングが制限され、自然発火性物質への過度の曝露が防止される、システム。
【請求項12】
前記自然発火性物質の前記燃焼を制御するために窒素ガスが内部に注入され、窒素注入の速度が、少なくとも1つの供給源から少なくとも1つのポートを介した任意の速度である、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記少なくとも1つのハザードボリュームから前記少なくとも1つの反応カラムへと通じる通路には、窒素ガスを導入する先の少なくとも1つの窒素ガス源を介して、酸素がないままである、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記少なくとも1つの反応カラムが、蒸気を混合し、内部での固体反応生成物の付着を防止するように構成された旋回羽根を備える、請求項11に記載のシステム。
【請求項15】
前記ハザードボリュームには、潜在的な収集機能を低減又は排除して、少なくとも1つの重力取込み受皿における自然発火性液体の収集を容易にするように構成された密閉空間をさらに備える、請求項11に記載のシステム。
【請求項16】
待機状態と、
準備状態と、
アクセス状態と、を含み、
前記待機状態と、前記準備状態と、前記アクセス状態とのそれぞれが、前記システム内のセンサからの警報の信号によって低減状態に移行することができ、
報状態になると漏出した物質が低減される低減状態となり
漏れ出した自然発火性物質が確実に低減されるようにするために、ある持続時間において設定される低減後状態となり
前記システム内の前記センサを初期化し始めて、内部での制御されていない自然発火性物質の存在を確認する復元状態となる、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
流出し、漏れ出し、又はそうでなければ制御されていない、請求項1に記載のシステムでの自然発火性物質を低減する方法であって、
前記ハザードボリュームにアクセスして、その内部の自然発火性物質を追加又は検査できるようにすることと、
前記ハザードボリュームを閉鎖し、前記ハザードボリュームへのアクセスを制限することと、
前記ハザードボリューム内の環境を制御して、漏出した自然発火性物質の過度の発熱反応を防止することと、
前記システムが、流出した自然発火性物質用の前記システムの前記ハザードボリューム及び他の部分での前記環境、副産物、又は警報状態を構成する他の指標を監視できるようにすることと、
前記システムが、漏れ出した任意の自然発火性物質を低減できるようにすることと、
記漏れ出した自然発火性物質を前記システムから除去することと、
前記漏れ出した自然発火性物質が存在しないことを検証することと、
低減シーケンスからのアクセス又は移行を可能にすることと、
前記漏れ出した自然発火性物質が除去されると標準動作を再開することと
を含む、方法。
【請求項18】
待機状態と、
準備状態と、
アクセス状態と、を含み、
前記待機状態と、前記準備状態と、前記アクセス状態とのそれぞれが、前記システム内のセンサからの警報の信号によって低減状態に移行することができ、
報状態になると漏出した物質が低減される低減状態となり
漏れ出した自然発火性物質が確実に低減されるようにするために、ある持続時間において設定される低減後状態となり
前記システム内の前記センサを初期化し始めて、内部での制御されていない自然発火性物質の存在を確認する復元状態となる、請求項11に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本出願は一般に、不安定な物質向けの安全システムに関し、より詳細には、発火を防止し、漏出した物質の安全で制御された反応を可能にし、その漏出した物質が置かれた区域からのその安全な除去を可能にする、自然発火性化学物質用の低減システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術の説明
不安定な物質向けの安全システムは、当技術分野でよく知られており、予期しない反応が周囲の機器、人々、又はプロセスに及ぼす損傷を軽減するための有効な手段である。自然発火性物質は、化学反応及びそれが可能にする他のプロセスから恩恵を受ける半導体製造産業及び他の産業において使用される。自然発火性物質は、酸素及び/又は水と接触すると自然発火して、こうした物質の偶発的な流出又は漏出が極めて危険になる。
【0003】
自然発火性物質に通例関連付けられた問題のうちの1つが、限定されたその効率と安全性である。たとえば、貯蔵設備又は処理設備からの意図しない流出又は漏出の結果として、所有物への発火損傷がもたらされ、人員の負傷が起こり得る。空中浮遊する燃焼生成物のいかなる排出も、このような施設での大気質の要求条件を危うくし、完全に浄化するまでに長期的な生産損失を引き起こす場合があるので、半導体用途ではリスクが悪化する。
【0004】
したがって、不安定な材料向けの安全システムの領域では長足の進歩を遂げてきたが、数多くの欠点が残ったままである。
【0005】
図面の簡単な説明
本出願の実施形態の独特と考えられる新規の特徴は、添付の特許請求の範囲に記載されている。しかし、実施形態それ自体、並びに好ましい使用モードと、そのさらなる目的及び利点は、添付図面とともに読むとき、以下の詳細な説明を参照することによって最も良好に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本出願の好ましい一実施形態による、自然発火性化学物質の低減システムの図である。
図2図1の好ましい実施形態の正面断面図である。
図3図1のハザードボリュームの簡略化された概略図である。
図4図1のハザードボリュームの好ましい実施形態の正面断面図である。
図5図1の気化器の好ましい実施形態の正面断面図である。
図6図1の反応カラムの好ましい実施形態の正面断面図である。
図7図1のシステムにおける自然発火性物質を低減するためのシーケンスを含む制御プロセスの図である。
図8図1のシステムの好ましい使用法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本出願のシステム及び使用法には、様々な修正形態及び代替形態の余地があり、一例として、その具体的な各実施形態が各図面に示してあり、本明細書において詳細に説明される。しかし、具体的な実施形態の本明細書における説明は、開示された具体的な実施形態に本発明を限定するものではなく、むしろその意図は、添付の特許請求の範囲によって定義される本出願の精神及び範囲内にある、あらゆる修正形態、均等物、及び選択肢を対象として含むことであると理解されたい。
【0008】
好ましい実施形態の説明
本出願のシステム及び使用法の例示的な各実施形態を、以下に提示する。もちろん、実際のいかなる実施形態の開発においても、システム関連及びビジネス関連の制約条件の順守など、開発者の具体的な目標を達成するために、実装形態特有の数多くの決定を下すことになり、それは実装形態ごとに異なることになると理解されよう。さらに、そのような開発努力は複雑で、時間のかかることもあるが、それにもかかわらず、本開示の利益を得る当業者にとっては日常業務となることが理解されよう。
【0009】
本出願によるシステム及び使用方法は、不安定な材料向けの従来の安全システムに通例関連付けられた、前述の問題又は危険性のうちの1つ又は複数を克服する。具体的には、本出願の発明は、漏出した自然発火性物質の燃焼を防止し、反応の副産物を低減及び廃棄できるようにする。このシステム及び使用方法の上記その他の独自の特徴を、以下に説明し、添付図面に示す。
【0010】
このシステム及び使用方法は、添付の説明とともに参照される添付図面から、その構造と動作の両方について理解されよう。このシステムのいくつかの実施形態が本明細書に提示される。あらゆる変形形態及び特定の実施形態が各図面に示してあるわけではないが、様々な実施形態の様々な構成要素、部品、及び特徴は、本出願の範囲内にあるあらゆるものと互いに組み合わせてもよく、及び/又は交換してもよいことを理解されたい。様々な実施形態間での特徴、要素、及び/又は機能の組合せ及びマッチングが、本明細書において明示的に企図されており、したがって、特に説明しない限り、ある1つの実施形態の特徴、要素、及び/又は機能を独立して使用してもよく、又は必要に応じて別の実施形態に組み込んでもよいことを、当業者なら本開示から理解するはずであることも理解されたい。
【0011】
本明細書に記載の好ましい実施形態は、網羅的なものではなく、又は開示された厳密な形態に本発明を限定するものではない。これは、本発明の原理、並びに、その応用及び実用を説明するように選択及び説明されていて、当業者がその教示に従うことができるようになっている。
【0012】
次に各図面を参照すると、同じ参照文字が、いくつかの図を通して、対応する要素又は類似の要素を識別し、図1及び図2はそれぞれ、本出願の好ましい実施形態による自然発火性低減システムの図及び正面断面図を示す。システム101は、従来の不安定な物質制御システムに通例関連付けられた、上記の問題又は危険性のうち1つ又は複数を克服することが理解されよう。
【0013】
企図された実施形態において、システム101は、液体ドレイン管路109又はこのような他の通路を介して気化器105と流体連通して、自然発火性物質を保持するように構成されたハザードボリューム103を備える。このシステム101はさらに、蒸気ダクト111又はこのような他の通路を介して、気化器105及びハザードボリューム103と流体連通した反応カラム107を備える。
【0014】
次に図3を参照すると、ハザードボリューム103の各特徴が示してある。ハザードボリューム103は、密閉することのでき、又は他の方法で、閉鎖されたシステムを作り出すように構成することのできる、容器、チャンバ、区画室、又はキャビネットなど他の任意の空間301であることが企図される。ハザードボリューム103は、密閉空間301へのアクセスを制限する303。このようにして、ハザードボリューム103は、蒸気ダクト111と、排出吸引システムと流体連通している反応カラム107との間の流体連通によって、周囲圧力よりもわずかに低く維持されてもよい。
【0015】
ハザードボリューム103はさらに、漏出したいかなる自然発火性物質をも収集するための重力取込み受皿307を備える。ハザードボリューム103の理想的な構成は、重力取込み受皿307に加えて、貯蔵場所、吸収性物質、囲まれたサブボリューム、狭い通路、又は、液体が増力作用を見いだすことのできる、若しくは蒸気が効果的な除去などを回避することのできる他の任意の表面若しくは特徴など、あらゆる潜在的な収集機能305を最小限に抑える。
【0016】
図4によって示してある好ましい実施形態では、ハザードボリューム103は、漏出した自然発火性液体401が傾斜受皿403に落下し、液溜めヒータ407を備える液溜めブロック405に集まるように構成されたキャビネット413である。液溜めヒータ407の制御は、液溜め温度センサ445によって容易になる。液体ドレイン管路109に連結された液溜め除去ポート409により、液溜め除去バルブ411を通して設備の窒素を用いて除去することによって、この液体ドレイン管路109から酸素及び湿気を排除することができるようになる。傾斜受皿403は、ハザードボリューム格納レベル443までの量の、漏出した自然発火性液体401を保持するように構成される。
【0017】
好ましい実施形態では、ハザードボリューム103内に漏出した任意の自然発火性液体401は、液溜め除去バルブ411がオフになるまで、傾斜受皿403内に集められて保持される。液溜め除去バルブ411がオフになると、自然発火性液体401は、重力によって液体ドレイン管路109を通って気化器105に運ばれる。
【0018】
ハザードボリューム103への、少なくとも2つの窒素注入源と、少なくとも2つの外気導入源が存在する。窒素注入の1次源が、高流量窒素バルブ417を介して高流量ポート415を通って供給される。高流量窒素バルブ417の流量能力は、任意のアクセス用ドア/ポートを閉じた後に、ハザードボリューム103から外気を迅速且つ完全に除去するように選択される。
【0019】
高流量空気バルブ419によって、高流量ポート415を通って、外気導入の1次手段が供給される。任意のアクセス用ドア/ポートを開いて、ハザードボリューム103内の酸素欠乏環境に人間の作業者が曝されるのを防止する前に、ハザードボリューム103への大気中酸素レベルを迅速且つ完全に回復するように、高流量空気バルブ419の流量能力が選択される。高流量窒素バルブ417及び高流量空気バルブ419によって、ハザードボリューム103内に注入されたあらゆるガス成分が、蒸気ダクト111を通って排出される。
【0020】
窒素注入の2次源が、低流量窒素バルブ423によって低流量ポート421を通って供給される。外気注入の2次源が、調整空気バルブ425によって低流量ポート421を通って供給される。ハザードボリューム103内での酸素/窒素の比率を緩やかに変化させるように、低流量窒素バルブ423及び調整空気バルブ425の流量能力が選択される。低流量窒素バルブ423及び調整空気バルブ425によって、ハザードボリューム130内に注入されたあらゆるガス成分が、蒸気ダクト111を通って排出される。
【0021】
ハザードボリューム103の内側にいかなる自然発火性物質が漏出しても、酸素濃度を低レベルに維持することによって発火するのが防止される。漏出検出を容易にするには、酸素濃度をゼロにしてはいけない。発火を防止するのには十分低いが、HSSD(高感度煙検出器)429の検知範囲内で反応生成物を生成するのに十分な低エネルギー反応をもたらすには十分に高い目標酸素濃度を達成し、それを維持するために、低流量窒素バルブ423及び調整空気バルブ425を制御するためのアルゴリズムにおいて使用されるフィードバックデータを提供するように、O2センサ(酸素濃度センサ)427が構成される。
【0022】
O2センサ427において分析されたO2試料は、ハザードボリューム103からO2センサ試料ポート431を通って吸入され、O2センサ戻しポート433を通って戻される。O2センサ除去バルブ435を通した窒素除去を介して、自然発火性化学物質の蒸気による過度の汚染からこのO2センサ427を保護することができる。
【0023】
HSSD(高感度煙検知器)429において分析されたHSSD試料は、ハザードボリューム103からHSSD試料ポート437を通って吸入され、HSSD戻しポート439を通って戻される。HSSD除去バルブ441を通した窒素除去を介して、自然発火性化学物質の蒸気による過度の汚染からこのHSSD 429を保護することができる。
【0024】
次に図5を参照すると、気化器105の好ましい実施形態が示してある。ハザードボリューム液体格納レベル443(図4参照)の下でのハザードボリューム103での格納と、気化器液体格納レベル505の下での気化器105でのボリュームとの組合せによって、ハザードボリューム103内で利用可能な最大漏出容量が収まるように、気化器105のサイズが調整される。
【0025】
好ましい実施形態では、ハザードボリューム103から液体ドレイン管路109を通って気化器105に入る、漏出した自然発火性液体401が収集され、次いで、自然発火性蒸気507を生成する気化器ヒータ501によって加熱される。気化器ヒータ501は、この気化器105のベースに埋め込まれた気化器温度センサ503からのフィードバックを使用して制御される。加熱するのと同時に、除去窒素が、気化器除去バルブ509によって気化器105の空間に注入され、気化器除去チューブ511を通って入る。気化器除去窒素及び自然発火性蒸気507は、気化器ヘッド513において混合されてまとまり、ノズル515を通って反応カラム107へと出る。気化プロセス全体を通して、シュラウドバルブ517を通って流れることができているシュラウド窒素が、シュラウドポート519に入る。このシュラウドガスは、シュラウド環状部521を通って流れ、ノズル515から出る自然発火性蒸気507の周りに環状の不活性シュラウド523を形成する。
【0026】
不安定な化学物質又は自然発火性物質には、その気化速度を安全に制御するための他の条件を必要とするものがあることが理解されよう。したがって、気化器は、前記の化学物質又は物質の、燃焼又は気化を制御するために、このような環境入力に曝されることになると企図される。具体的には、気化器なしでも、又は気化器ヒータを気化器冷却器に置き換えた状態でも、このシステムは機能できることが企図される。
【0027】
次に図6を参照すると、反応カラム107の好ましい実施形態が示してある。気化器105から出た蒸気、及び蒸気ダクト111を通ってハザードボリューム103から出た蒸気が、反応カラム107に入る。反応カラムに入るあらゆる自然発火性蒸気が、外気を使用して完全に反応又は低減される。反応カラム107の上端が、施設又は建物の排出吸引装置などの排出出口と流体連通するように構成される。空気入口環状部601を通って吸入される周囲の低減空気は、周囲温度センサ603を通過した後に、旋回羽根605を通過する。
【0028】
この旋回羽根605は、低減空気に回転速度を与え、これが、反応カラム107に入る他のあらゆる蒸気に回転速度を与える。反応カラム107内の流れの回転は、こうしたタイプの反応で生成される固体が構成部品の表面に付着するのを阻止する、十分に混合された軸対称反応に役立つプロセスを安定化するように働く。低減空気はまず、自然発火性蒸気に接触し、環状の不活性シュラウド523(図5参照)を通り抜けた後に、開始箇所607において低減反応を開始する。自然発火性物質と空気が反応すると、不活性シュラウド523によってこうした構成要素の上方で反応が開始するので、ノズル515又はシュラウド環状部521上に堆積することが阻止された固体の副産物が生じる。
【0029】
自然発火性蒸気507を反応させるのに必要な化学量論量をはるかに超える一定量又は変動量の低減空気を、反応カラム107を通して流して、反応プロセスを熱的に弱め、自然発火性蒸気507の完全な反応を確実にすることができる。このようにして、自然発火性蒸気621が蒸気ダクト111を通ってハザードボリューム103を出て、同軸ダクト609を移動し、環状ポート611を通って反応区域に入るとき、反応の残りが完了するための余剰空気が存在する。
【0030】
環状ポート611を通過する自然発火性蒸気621は、2次低減領域613内の低減空気と混合され、それと反応する。その結果得られる、1次低減領域619及び2次低減領域613での反応の生成物は、反応カラム107に吸入される過剰な低減空気と完全に反応し、それによる熱希釈に起因して比較的冷たい出口ガス615を構成する。出口温度センサ617からのデータは、気化器105内の液体の自然発火性物質への熱入力を制限する2次的な方法として使用される。
【0031】
次に図7を参照すると、本発明の好ましい実施形態の制御プロセス701が示してある。プロセス701は、システム101が、その内部で自然発火性物質を使用するための標準の手順を実施する準備がなされている準備状態703と、ハザードボリューム103を開放するためのアクセス状態705とを含む。HSSD 429、出口温度センサ617において測定される温度を周囲温度603において測定される温度よりも高く上昇させる反応カラム107での予期しない熱応答によって、又は手動起動によって、警報を開始することができる。任意の制御状態からの警報によって、システム101が低減状態709になる。低減状態709に入ると、システム101内での各状態が監視され、そこには反応がないと考えられると、この低減状態709は低減後状態711に移り、次いで復元状態713へと移る。システム101が検査され、排除715の場合は待機状態707に移行し、そうでない場合は低減状態709に戻る。準備状態703又は待機状態707からアクセス状態705に到達することができ、ここで、ハザードボリューム103を開放することができる。低減状態709、低減後状態711、復元状態713、及び排除715の検査が組み合わされて、低減シーケンスを形成する。
【0032】
準備状態703の目的は、ハザードボリューム103を閉鎖及び固定し、内部での目標O2濃度を達成することである。所与の構成における目標O2濃度は、ハザードボリューム103内に存在する特定の自然発火性化学物質に合わせて調整することができるが、以下の条件を満たすように選択される。すなわち、1)自然発火性物質が発火する可能性を排除し、それによってハザードボリューム103内の任意の構成要素への発火の損傷を防止するのに十分低いこと、及び、2)最小量の反応生成物が生成されて、自然発火性化学物質が漏出する場合にHSSD 429を起動するように、ゼロに等しくないことである。
【0033】
通常、準備状態703へは、ハザードボリューム103が開放された後に、アクセス状態705から入る。この準備状態の制御アルゴリズムはまず、たとえばドアが閉鎖及び施錠されているなど、特定の条件が満たされていることを確実にしてもよい。次いで、この制御ルーチンは、まず高流量窒素バルブを動作させることによって、ハザードボリューム103内のO2濃度を目標値まで強制的に到達させる。O2濃度が低下すると、低流量窒素バルブ及び調整空気バルブを使用して、目標O2濃度を達成し、それを維持する。
【0034】
準備状態703にあるとき、液溜め除去バルブ411が常に開いていて、液溜めに急速に到達する自然発火性化学物質の漏出物がその中で反応して、気化器105への流れを妨げることのある固体堆積物を生じることがないように、液体ドレイン管路109が完全に酸素なしになることが確実になる。HSSD 429は、システム101によって連続して監視される。
【0035】
低減状態709は、自然発火性物質の検知された漏洩に対する初期反応、及びその最終的な低減反応についての役割を担う。警報が発生すると、後続の制御状態において必要とされるまで、特定のセンサが自然発火性化学物質の蒸気に必要以上に曝されないよう保護することが有用である。したがって、O2センサ除去バルブ435が開放されて、試料の流れに打ち勝つ。このO2センサ除去によって、O2センサが完全に洗い流され、O2センサ試料ポート431及びO2センサ戻しポート433を通ってハザードボリューム103へと出て、自然発火性物質の蒸気の侵入を防止する。同様に、反応生成物の初期検出後、HSSD 429の試料は有用ではなく、HSSD除去バルブ441を開いて、パージガスが、HSSD 429を完全に洗い流し、HSSD試料ポート437及びHSSD戻しポート439を通ってハザードボリューム103へと出るようにすることによって、自然発火性蒸気から装置を保護することができる。警報が発生すると、高流量窒素バルブ417も直ちに開かれて、目標濃度レベルでのあらゆる残存酸素をハザードボリューム103から除去し、キャビネット413内でのさらなる反応を停止する。高流量窒素がキャビネット413に入ると、あらゆる酸素、微量の反応生成物、及び自然発火性化学物質の蒸気を置換する。置換されたあらゆるガス成分は、蒸気ダクト111を通って反応カラム107に放出される。高流量窒素バルブ419及び/又は低流量窒素バルブ423によって実現するこの窒素除去は、低減状態709全体を通して継続してもよい。
【0036】
警報が発生すると、液溜め除去バルブ411は、直ちに閉じられてもよく、又は特定用途向け条件が満たされるまで開いたまま維持されてもよい。たとえば、気化器ヒータ501が所望の気化器温度設定点を達成するように作動している間、液溜め除去バルブ411を開いたまま保持してもよい。液溜め除去バルブ411を閉じると、漏出した自然発火性液体403を気化器105に排出できるようになる。自然発火性物質の液体403が気化器105に入ると、2つの原因、すなわち、1)気化器ヒータ501からの直接熱入力、及び/又は、2)気化器除去バルブ509によって注入される乾燥窒素による蒸発のうちの一方又は両方によって、蒸気507が生成される場合がある。自然発火性蒸気507及び気化器除去窒素は、気化器ノズル515を出て、反応カラム107を通して吸引される低減空気と反応する。反応カラム107を通る低減空気の質量流量が一定であることに関連して、気化器105を制御することによって、システムが反応カラム107での温度上昇を制御できるようになる。
【0037】
気化器105内に漏出した自然発火性液体403が完全に処理されるまで、低減状態709の前述の各機能が継続する。反応カラム107での熱応答によって、気化器105内の自然発火性液体403の減少を検出することができる。出口温度センサ617と周囲温度センサ603の間の差がゼロに向かう傾向にあると、気化器105内の自然発火性物質が完全に低減したと考えられる。この状態によって、低減後状態711に移行することになる。
【0038】
低減後状態711の目的は、ハザードボリューム103への酸素の再注入の前に、漏出したあらゆる自然発火性残留物質の完全な消散を促進することである。気化器105内の物質が完全に蒸発し、低減されても、液体ドレイン管路109の内壁、液溜めブロック405の内壁、及び場合によってはハザードボリューム103内の他の表面上に液膜が残留する可能性が残る。低減後状態711は、システム101内のあらゆる表面から自然発火性の残留物質を完全に蒸発させることを可能にし、又容易にし、対応する残留蒸気を反応カラム107に導くための期間を与える。
【0039】
低減後状態711全体を通して、気化器ヒータ501及び気化器除去バルブ509は稼働したままである。さらに、低減後状態711全体を通して、HSSD除去バルブ441及びO2センサ除去バルブ435は開いたままである。さらに、液溜めヒータ407が起動されて、ハザードボリューム103で最も低いこの収集点からの完全な蒸発を促進するために、液溜めブロック405において所望の温度を達成し、それを維持する。液溜め除去バルブ411は、低減後状態711全体を通して開いていて、液体管路109及び液溜めブロック405の乾燥を容易にする。事前設定された一定期間が終了すると、低減後状態711は完了したとみなされる。低減後状態711にある間、出口温度センサ617と周囲温度センサ603の間の差が、プログラムされた閾値を超える場合、この制御は、低減状態709に復帰するように構成されてもよいことが企図される。
【0040】
システム101は、低減後状態711が完了すると、復元状態713に入ることになる。この復元状態713の目的は、ハザードボリューム103内に酸素(外気)を緩やかに再注入して、低減後プロセスの有効性を検証することである。この復元状態713の間、O2センサ除去バルブ435及びHSSD除去バルブ441は、そのそれぞれの装置がサンプリングを再開するように閉じられる。調整空気バルブ425は、ハザードボリューム103内の酸素濃度を緩やかに上昇させるように制御される。
【0041】
復元状態713の間にハザードボリューム内に何らかの自然発火性物質が残っている場合、酸素濃度が緩やかに上昇するにつれて、この物質が反応し始めることになる。こうした反応生成物は、HSSD 429によって検知され、低減状態709に戻ることになる。復元状態713が正常に完了することには、HSSD 429が再起動することなく酸素濃度が上昇することが含まれる。
【0042】
ハザードボリューム103が、準備状態703、ただし明らかに異なる制御状態にあるようにこれを保護することができる「安全」状態を実施することは有利になる場合があると企図される。本発明は完全に自動化されてもよいので、この「安全」状態の存在を利用して、自然発火性の漏出が検出され、これが低減されて、準備状態703又はアクセス状態705において標準動作に戻る前に、警報に関連付けられた安全リレーを解除するための手動リセットを必要とすることをユーザに認識させる。本発明を説明する上では、この「安全」状態が待機状態707である。ユーザは、低減リセットコマンドを起動することによって、低減シーケンスの状態に置かれたことを認識することができる。
【0043】
低減シーケンスは、連続した繰返し処理又はループを通して、何度も実施されてよいことが理解されよう。復元状態を正常に通過するまで、こうした繰返し処理が持続して、その結果、HDDS 429がなくてもよく、又は低減状態709への戻りが熱的に開始されてもよい。繰返し処理により、標準動作を再開する前の低減後状態711中に蒸発させるための必要以上に長い期間とは対照的に、自然発火性の残留物質について頻繁に検査できるようになる。
【0044】
次に図8を参照すると、システム101の好ましい使用法が示してある。方法801は、ハザードボリュームにアクセスして、その内部の自然発火性物質を追加又は検査できるようにすることと803)、ハザードボリュームを閉鎖し、このハザードボリュームへのアクセスを制限することと805、ハザードボリューム内の環境を制御して、漏出した自然発火性物質の過度の発熱反応を防止することと807、システムが、漏れ出した自然発火性物質用のシステムのハザードボリューム及び他の部分での環境、その副産物、又は警報状態を構成する他の指標を監視できるようにすることと809、システムが、漏れ出した任意の自然発火性物質を低減できるようにすることと811、残留する漏れ出した自然発火性物質をシステムから除去することと813、漏れ出した自然発火性物質が存在しないことを検証することと815、低減シーケンスからのアクセス又は移行を可能にすることと817、漏れ出した自然発火性物質が除去されると標準動作を再開することと819を含む。
【0045】
これまでに開示された特定の実施形態は、ほんの例示的なものに過ぎず、それというのも、本明細書での各教示の利益を得る当業者には明らかとなる、互いに異なるが同等のやり方で、各実施形態を修正及び実施することができるからである。したがって、これまでに開示された特定の実施形態は、変更又は修正されてもよいことが明らかであり、このようなあらゆる変形形態が、本出願の範囲及び精神の範囲内にあるとみなされる。したがって、本明細書において求められる保護は、この説明に記載された通りである。これまでに、これら各実施形態を示したが、本発明は、こうした実施形態のみに限定されるものではなく、その精神から逸脱することなく様々な変更及び修正を加えてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8