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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】加湿器リザーバ
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/16 20060101AFI20240528BHJP
【FI】
A61M16/16 A
【請求項の数】 25
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022084612
(22)【出願日】2022-05-24
(62)【分割の表示】P 2019527347の分割
【原出願日】2017-11-21
(65)【公開番号】P2022117997
(43)【公開日】2022-08-12
【審査請求日】2022-06-21
(31)【優先権主張番号】2016904769
(32)【優先日】2016-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500046450
【氏名又は名称】レスメド・プロプライエタリー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・バイヤー
(72)【発明者】
【氏名】ベルンド・クリストフ・ラング
(72)【発明者】
【氏名】マルク・ベルティネッティ
(72)【発明者】
【氏名】ヨハン・セバスティアン・ブルツ
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト・アイブル
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・カスパルバウアー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・キルヒベルガー
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス・ニコル
(72)【発明者】
【氏名】イェンス・ロスフス
【審査官】村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/058255(WO,A1)
【文献】特開2000-337670(JP,A)
【文献】特開平05-277190(JP,A)
【文献】特表2003-506161(JP,A)
【文献】特表2005-538802(JP,A)
【文献】特表2010-529400(JP,A)
【文献】国際公開第2013/135318(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸可能なガスの流れを発生させ、且つ呼吸可能なガスの流れを加湿する装置のための水リザーバであって、前記水リザーバは、前記装置の水リザーバドックによって取り外し可能に受容されるために構成されており、前記水リザーバドックが加熱板を備えており、前記水リザーバは、
液体の体積を保持するような構造にされたキャビティを形成する下壁及び側壁を含むリザーバベースと、
前記リザーバベースへ設けられた伝導性部位であって、前記伝導性部位の少なくとも一部は、使用時に前記加熱板から前記液体の体積への熱の熱伝導が可能となるように、前記水リザーバが前記水リザーバドックによって取り外し可能に受容される場合に前記加熱板と熱係合するように適合される、伝導性部位と、
を含み、
前記伝導性部位は、エラストマー材料を含む薄膜を含み、
前記薄膜は、前記液体の体積へ露出された前記水リザーバの底内面を形成するように構成された少なくとも一部を含む第1の側部と、前記第1の側部に対向する第2の側部とを含み、前記第2の側部は、前記水リザーバが前記水リザーバドックによって取り外し可能に受容される場合に前記加熱板と熱係合することを可能にするために、前記加熱板へ露出可能な前記水リザーバの底露出外面を形成するように構成された少なくとも一部を含み、
前記リザーバベースの前記下壁及び前記側壁の少なくとも一部は、前記液体の体積に露出された前記水リザーバの内面を形成しており、
前記リザーバベースの前記下壁は、穴を含み、
前記薄膜は、前記穴を密閉して覆うように固定され、
前記薄膜の周縁部は、前記薄膜が前記下壁の前記内面の少なくとも一部と重複するように前記穴の縁部を超えて延びる、水リザーバ。
【請求項2】
前記薄膜の前記周縁部は、前記薄膜が前記リザーバベースの前記側壁のうちの1つ又は複数の側壁の内面の少なくとも一部と重複するように、前記リザーバベースの前記側壁のうちの1つ又は複数の側壁まで延びている、請求項に記載の水リザーバ。
【請求項3】
前記薄膜は、前記リザーバベースの前記下壁及び前記側壁の壁厚さよりも小さい壁厚さを含む、請求項1又は2に記載の水リザーバ。
【請求項4】
前記薄膜は、前記リザーバベースから別個かつ区別可能な構造として設けられる、請求項1~のいずれか一項に記載の水リザーバ。
【請求項5】
前記薄膜の前記第2の側部は、前記水リザーバが前記水リザーバドックによって取り外し可能に受容される場合に前記加熱板と直接的に係合するように構築され且つ配置された接触面を提供する、請求項1~のいずれか一項に記載の水リザーバ。
【請求項6】
前記薄膜は、前記リザーバベースへ固定される事前形成された構造を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の水リザーバ。
【請求項7】
前記薄膜は、シリコーンを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の水リザーバ。
【請求項8】
前記薄膜は、概して平面状である、請求項1~のいずれか一項に記載の水リザーバ。
【請求項9】
前記薄膜上に延びるような構造および配置にされた1つ以上のリブをさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載の水リザーバ。
【請求項10】
前記リザーバベースは、ベース上側ボディ及びベース下部プレートを含み、
前記ベース上側ボディ及び前記ベース下部プレートは、前記薄膜と共に前記キャビティを形成する、請求項1~9のいずれか一項に記載の水リザーバ。
【請求項11】
水の侵入を防止するために前記ベース上側ボディと前記ベース下部プレートとの間にシール要素をさらに備える、請求項10に記載の水リザーバ。
【請求項12】
リザーバ蓋をさらに含み、前記リザーバ蓋は、前記水リザーバを開口構成と閉鎖構成との間で変換させることが可能なように、前記リザーバベースへ移動可能に接続される、請求項1~11のいずれか一項に記載の水リザーバ。
【請求項13】
前記リザーバ蓋は、前記水リザーバ中への前記呼吸可能なガスの流れを受容するように構成された入口と、加湿された状態の前記呼吸可能なガスの流れを前記水リザーバから送達するように構成された出口と、を備え、
前記入口及び前記出口は、共通の方向に向いている、請求項12に記載の水リザーバ。
【請求項14】
前記薄膜は、約0.5mm未満の壁厚さを有する、請求項1~13のいずれか一項に記載の水リザーバ。
【請求項15】
前記薄膜は、前記リザーバベースの前記下壁及び/又は前記側壁に適合および重複するような形状にされる、請求項1~14のいずれか一項に記載の水リザーバ。
【請求項16】
前記薄膜は、熱伝導率を向上させるために1つ以上の添加剤を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の水リザーバ。
【請求項17】
前記薄膜は、セラミック粉末添加剤を備える、請求項1~16のいずれか一項に記載の水リザーバ。
【請求項18】
前記薄膜は、金属粉末添加剤を備える、請求項1~17のいずれか一項に記載の水リザーバ。
【請求項19】
前記薄膜は、複数の層を備える、請求項1~18のいずれか一項に記載の水リザーバ。
【請求項20】
前記薄膜は、金属層と少なくとも1つのプラスチック層とを備える、請求項19に記載の水リザーバ。
【請求項21】
前記少なくとも1つのプラスチック層は、前記金属層の両側にプラスチック層を備える、請求項20に記載の水リザーバ。
【請求項22】
前記薄膜は、前記薄膜の一の側に塗布された熱伝導材料のコーティングを備える、請求項1~21のいずれか一項に記載の水リザーバ。
【請求項23】
呼吸可能なガスの流れを加湿する装置であって、
水リザーバドックと、
前記水リザーバドックに設けられた請求項1~22のいずれか一項に記載の水リザーバと、
を備える、装置。
【請求項24】
前記水リザーバドックは、前記水リザーバを少なくとも部分的に受容するようにキャビティを形成する、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記水リザーバドックは、前記水リザーバに設けられた伝導性部位を熱的に係合するように適合された加熱板を含む、請求項23または24に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1 関連出願の相互参照
本出願は、2016年11月22日に出願されたオーストラリア国仮出願第2016904769号の恩恵を主張する。本明細書中、同文献それぞれの全体を参考のため援用する。
2 技術の背景
2.1 技術の分野
【0002】
本技術は、呼吸関連疾患の検出、診断、治療、予防および改善のうち1つ以上に関する。本技術はまた、医療デバイスまたは装置と、その使用とに関する。
【背景技術】
【0003】
2.2 関連技術の説明
2.2.1 ヒトの呼吸器系およびその疾患
身体の呼吸器系は、ガス交換を促進させる。鼻および口腔は、患者の気道への入口を形成する。
【0004】
これらの気道は、一連の分岐する管を含み、これらの管は、肺の奥深くに進むほど狭く、短くかつ多数になる。肺の主要な機能はガス交換であり、空気から酸素を静脈血中へ取り入れさせ、二酸化炭素を退出させる。気管は、右および左の主気管支に分かれ、これらの主気管支はさらに分かれて、最終的に終末細気管支となる。気管支は、伝導のための気道を構成するものであり、ガス交換には関与しない。気道がさらに分割されると呼吸細気管支となり、最終的には肺胞となる。肺の肺胞領域においてガス交換が行われ、この領域を呼吸ゾーンと呼ぶ。以下を参照されたい:非特許文献1。
【0005】
一定範囲の呼吸器疾患が存在している。特定の疾患は、特定の発症(例えば、無呼吸、呼吸低下および過呼吸)によって特徴付けられ得る。
【0006】
呼吸器疾患の例には、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)、チェーン・ストークス呼吸(CSR)、呼吸不全、肥満過換気症候群(OHS)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、神経筋疾患(NMD)および胸壁疾患が含まれる。
【0007】
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は、睡眠呼吸障害(SDB)の1つの形態であり、睡眠時の上通気道の閉鎖または閉塞などの発症によって特徴付けられる。これは異常に小さい上気道と、舌の領域の筋緊張の通常の喪失、睡眠時の軟口蓋および後口咽頭壁の正常損失の組み合わせの結果である。このような状態に起因して、罹患患者の呼吸停止が典型的には30~120秒にわたり、ときには一晩に200~300回も呼吸が停止する。その結果、日中の眠気が過度になり、心血管疾患および脳損傷の原因になり得る。この症候は一般的な疾患であり、特に中年の過体重の男性に多いが、患者に自覚症状は無い。特許文献1(Sullivan)を参照されたい。
【0008】
チェーン・ストークス呼吸(CSR)は、別の形態の睡眠呼吸障害である。CSRは、患者の呼吸調節器の疾患であり、CSRサイクルとして知られる換気の漸増および漸減が交互に周期的に続く。CSRは、動脈血の脱酸素および再曝気の繰り返しによって特徴付けられる。反復低酸素症のため、CSRは有害であり得る。患者によっては、CCRは、重症不眠、交感神経活動の増加、および後負荷の増加の原因となる、反復性睡眠覚醒を随伴する。特許文献2(Berthon-Jones)を参照されたい。
【0009】
呼吸不全とは、呼吸器障害の総称であり、患者の需要を満たすための充分な酸素吸気または充分なCO呼気を肺が行うことができていないことを指す。呼吸不全は、以下の疾患のうちいくつかまたは全てを包含し得る。
【0010】
呼吸不全(一種の呼吸不全)の患者は、運動時に異常な息切れを経験することがある。
【0011】
肥満低呼吸症候群(OHS)は、低換気の他の既知の原因がない場合、重症の肥満と覚醒時慢性高炭酸ガス血症の組み合わせとして定義される。症状には、呼吸困難、起床時の頭痛と過剰な日中の眠気が含まれる。
【0012】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、特定の共通する特性を有する下気道疾患のグループのうちのいずれも包含する。これには空気の動きに対する抵抗の増加、呼吸の呼気相の延長および肺における正常な弾性の減少が含まれる。COPDの例として、気腫および慢性気管支炎がある。COPDの原因としては、慢性喫煙(第一危険因子)、職業被ばく、空気汚染および遺伝因子がある。症状を挙げると、労作時の呼吸困難、慢性咳および痰生成がある。
【0013】
神経筋疾患(NMD)は、内在筋病理を直接介してまたは神経病理を間接的に介して筋肉機能を損なう多数の疾病および病気を包含する広範な用語である。NMD患者の中には、進行性の筋肉障害によって特徴付けられる者もあり、結果的に歩行不可能、車椅子への束縛、嚥下困難、呼吸筋力低下に繋がり、最終的には呼吸不全による死亡に繋がる。神経筋肉障害は、以下の急速進行性と緩徐進行性とに区分され得る:(i)急速進行性障害:数ヶ月かけて悪化する筋肉障害によって特徴付けられ、数年内に死亡に繋がる(例えば、ティーンエージャーにおける筋萎縮性側索硬化症(ALS)およびデュシェンヌ筋ジストロフィー(DMD));(ii)可変性または緩徐進行性障害:数年かけて悪化する筋肉障害によって特徴付けられ、平均余命が若干低減するだけである(例えば、肢帯、顔面肩甲上腕型および筋強直性筋ジストロフィー)。NMDにおける呼吸不全症状を以下に挙げる:全身衰弱の増加、嚥下障害、労作および安静時の呼吸困難、疲労、眠気、起床時の頭痛、および集中および気分の変化の困難。
【0014】
胸壁障害は、胸郭変形の1つのグループであり、呼吸筋肉と胸郭との間の連結の無効性の原因となる。これらの障害は、拘束性障害によって主に特徴付けられ、長期の炭酸過剰性呼吸不全の可能性を共有する。脊柱側弯症および/または脊柱後側弯症は、深刻な呼吸不全を引き起こし得る。呼吸不全の症状を以下に挙げる:労作時の呼吸困難、末梢浮腫、起座呼吸、反復性胸部感染症、起床時の頭痛、疲労、睡眠の質の低下、および食欲不振。
【0015】
このような状態を治療または改善するために、一定範囲の治療が用いられている。さらに、その他の点では健常人も、呼吸器疾患の予防治療を有利に利用することができる。しかし、これらにおいては、複数の欠陥がある。
2.2.2 治療法
【0016】
多様な療法(例えば、持続的気道陽圧(CPAP)治療法、非侵襲的換気(NIV)および侵襲的換気(IV))が上記の呼吸器疾患の1つ以上の治療のために用いられている。
【0017】
持続的気道陽圧(CPAP)療法が、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)の治療において用いられている。その作用機構としては、例えば軟口蓋および舌を押して後口咽頭壁へ前進または後退させることにより、持続陽圧呼吸療法が空気スプリントとして機能し、これにより上気道の閉鎖を防止し得る。CPAP治療によるOSAの治療は自発的なものであり得るため、このような患者が治療の提供に用いられるデバイスについて以下のうち1つ以上に気づいた場合、患者が治療を遵守しないことを選択する可能性がある:不快、使用困難、高価、美観的な魅力の無さ。
【0018】
非侵襲的換気(NIV)は、換気補助を上気道を通じて患者へ提供して、呼吸機能の一部または全体を行うことにより患者の呼吸の補助および/または身体中の適切な酸素レベルの維持を提供する。換気補助が、非侵襲的患者インターフェースを介して提供される。NIVは、OHS、COPD、NMD、および胸壁障害などの形態のCSRおよび呼吸不全の治療に用いられている。いくつかの形態において、これらの治療の快適性および有効性が向上し得る。
【0019】
侵襲的換気(IV)は、自身で有効に呼吸することができなくなった患者に対して換気補助を提供し、気管切開管を用いて提供され得る。いくつかの形態において、これらの治療の快適性および有効性が向上し得る。
2.2.3 治療システム
【0020】
これらの治療は、治療システムまたはデバイスによって提供され得る。このようなシステムおよびデバイスは、疾患を治療することなく診断するためにも、用いられ得る。
【0021】
治療システムは、呼吸圧力治療デバイス(RPTデバイス)、空気回路、加湿器、患者インターフェース、およびデータ管理を含み得る。
【0022】
別の形態の治療システムとして、下顎再位置決めデバイスがある。
2.2.3.1 患者インターフェース
【0023】
患者インターフェースは、例えば気道入口への空気流れを提供することにより呼吸装具へのインターフェースを装着者へ提供するために、用いられ得る。空気流れは、鼻および/または口腔へのマスク、口腔への管、または患者気管への気管切開管を介して提供され得る。適用される療法に応じて、患者インターフェースは、例えば患者の顔の領域との密閉部を形成し得、これにより、療法実行のための雰囲気圧力と共に充分な分散の圧力において(例えば、例えば雰囲気圧力に対して約10cmHOの陽圧において)ガス送達を促進する。酸素送達などの他の治療形態において、患者インターフェースは、約10cmHOの陽圧において気道へのガス供給の送達を促進するのに充分な密閉を含まない場合がある。
【0024】
特定の他のマスクシステムは、本分野において機能的に不適切であり得る。例えば、純然たる装飾目的のマスクの場合、適切な圧力を維持することができない場合がある。水中水泳またはダイビングに用いられるマスクシステムは、外部からのより高い圧力からの水侵入から保護することと、周囲よりも高い圧力において内部の空気を維持しないこととを行うように、構成され得る。
【0025】
特定のマスクは、本技術において臨床的に好ましく無い場合があり得る(例えば、マスクが鼻を介して気流を遮断し、口を介した気流のみを通過させる場合)。
【0026】
特定のマスクにおいて、患者がマスク構造の一部を口に挿入し、唇を介して密閉状態を生成および維持しなければならない場合、本技術において不快であるかまたは非実際的である場合がある。
【0027】
特定のマスクは、睡眠時(例えば、横向きにベッドに寝て枕の上に頭を置いた状態で睡眠する場合)における使用においては非実際的である場合がある。
【0028】
患者インターフェースの設計においては、複数の課題がある。顔は、複雑な三次元形状を有する。鼻および頭のサイズおよび形状は、個人によって大きく異なる。頭部には骨、軟骨および軟組織が含まれるため、顔の異なる領域は、機械的力に対して異なる反応を示す。すなわち、顎部または下顎は、頭蓋骨の他の骨に相対して動き得る。頭部全体は、呼吸治療期間を通じて動き得る。
【0029】
これらの課題に起因して、いくつかのマスクの場合、特に装着時間が長い場合または患者がシステムに不慣れである場合、押しつけがましい、美観的に望ましくない、コストが高い、フィット感が悪い、使用が困難、および不快感があるなどの理由のうち1つ以上がある。誤ったサイズのマスクが用いられた場合、コンプライアンスの低下、快適性の低下および患者予後の低下に繋がり得る。飛行士専用のマスク、個人用保護装具(例えば、フィルターマスク)、SCUBAマスクの一部として設計されたマスク、または麻酔投与用マスクは、その元々の用途には耐えられるものの、このようなマスクの場合、長時間(例えば、数時間)にわたって装着するには望ましくないほど不快な場合がある。このような不快感に起因して、治療に対する患者の承諾が低下する可能性がある。これは、マスクを睡眠時に装着する必要がある場合、特に当てはまる。
【0030】
CPAP治療は、患者が治療を承諾している場合、特定の呼吸疾患の治療においては極めて効果的である。マスクが不快である場合または使用が難しい場合、患者は、治療を承諾しない場合がある。患者はマスクを定期的に洗浄するよう推奨されることが多いため、マスクの清浄が難しい(例えば、組立または分解が困難である場合)、患者は、マスクを清浄することができず、患者の承諾に影響が出る場合がある。
【0031】
他の用途(例えば、飛行士)用のマスクの場合、睡眠呼吸障害の治療の使用には不適である場合があるため、睡眠呼吸障害の治療の使用のために設計されたマスクは、他の用途に適している場合がある。
【0032】
これらの理由のため、睡眠時のCPAP送達のための患者インターフェースは、明瞭な分野を形成する。
2.2.3.1.1 シール形成構造
【0033】
患者インターフェースはシール形成構造を含み得る。患者インターフェースは、患者の顔と直接接触するため、シール形成構造の形状および構成は、患者インターフェースの有効性および快適性に直接影響を持ち得る。
【0034】
患者インターフェースは、使用時にシール形成構造を顔と係合させる場所の設計意図に従って、部分的に特徴付けられ得る。患者インターフェースの一形態において、シール形成構造は、左鼻孔の周囲にシールを形成するための第1のサブ部分と、右鼻孔の周囲にシールを形成するための第2のサブ部分とを含み得る。患者インターフェースの一形態において、シール形成構造は、使用時において双方の鼻孔を包囲する単一の要素を含み得る。このような単一の要素は、例えば顔の上唇領域および鼻ブリッジ領域上に載置されるように、設計され得る。患者インターフェースの一形態において、シール形成構造は、使用時に例えば顔の下唇領域上にシールを形成することにより口腔領域を包囲する要素を含み得る。患者インターフェースの一形態において、シール形成構造は、使用時に双方の鼻孔および口領域を包囲する単一の要素を含み得る。これらの異なる種類の患者インターフェースは、その製造業者によって鼻マスク、フルフェイスマスク、鼻枕、鼻パフおよび口鼻マスクなどの多様な名称によって公知であり得る。
【0035】
患者の顔の一領域において有効であり得るシール形成構造は、例えば患者の顔の異なる形状、構造、変化性および感受性領域に起因して、別の領域において不適切であり得る。例えば、患者の前額上に載置される水泳用ゴーグルの密閉部は、患者の鼻上における使用には不適切である場合がある。
【0036】
特定のシール形成構造は、広範囲の異なる顔形状およびサイズに対して1つの設計が適合し、快適でありかつ有効になるように、大量製造用に設計され得る。密閉部を形成するためには、患者の顔の形状と、大量製造された患者インターフェースのシール形成構造との間の不整合がある範囲まで、一方または双方を適合させる必要がある。
【0037】
1つの種類のシール形成構造は、患者インターフェースの周囲を包囲して延び、シール形成構造が患者の顔に対向して係合している状態で力が患者インターフェースへ付加された際、患者の顔を密閉することを意図する。このシール形成構造は、空気または流体充填クッションを含み得るか、または、ゴムなどのエラストマーによって構成された弾力性のある密閉要素の成形されたかまたは形成された表面を含み得る。この種のシール形成構造により、フィット感が不適切である場合、シール形成構造と顔との間に隙間が発生し、密閉を達成するには、患者インターフェースを顔に押しつけるためにさらなる力が必要になる。
【0038】
別の種類のシール形成構造は、陽圧がマスク内に付加された際に患者の顔に対して自己気密作用を提供するように、マスクの周囲の周辺に配置された薄材のフラップシールを使用する。先述の種類のシール形成部分と同様に、顔とマスクとの間の整合が良くない場合、密閉を達成するために必要なさらなる力が必要になり得るか、またはマスクから漏洩が発生し得る。さらに、シール形成構造の形状が患者の形状と整合しない場合、使用時においてシール形成部分に折り目または座屈が発生し、漏洩の原因になる。
【0039】
別の種類のシール形成構造は、例えば鼻孔中へ挿入される摩擦嵌め要素を含み得るが、これらのシール形成部分を不快であると感じる患者も存在する。
【0040】
別の形態のシール形成構造は、密閉を達成するために接着部を用い得る。患者の中には、常に接着部を自身の顔に貼り付けるかまたは取り外すことが不便であると感じる患者もいる。
【0041】
一定範囲の患者インターフェースシール形成構造の技術について、(ResMed Limitedへ譲渡された以下の特許出願:特許文献3;特許文献4;特許文献5)に開示がある。
【0042】
鼻枕の一形態が、Puritan Bennettによって製造されたAdam回路において見受けられる。別の鼻枕または鼻パフが、Puritan-Bennett Corporationへ譲渡された特許文献6(Trimbleら)の主題になっている。
【0043】
ResMed Limitedは、鼻枕を用いた以下の製品を製造している:SWIFT(登録商標)鼻枕マスク、SWIFT(登録商標)II鼻枕マスク、SWIFT(登録商標)LT鼻枕マスク、SWIFT(登録商標)FX鼻枕マスクおよびMIRAGELIBERTY(登録商標)フルフェイスマスク。ResMed Limitedへ譲渡された以下の特許出願において、鼻枕マスクの実施例についての記載がある:特許文献7(特に、ResMed LimitedのSWIFT(登録商標)鼻枕の様相を記載)、特許文献8(特に、ResMed LimitedのSWIFT(登録商標)LT鼻枕の様相を記載);特許文献9および特許文献10(特に、ResMed LimitedのMIRAGE LIBERTY(登録商標)フルフェイス型マスクの様相を記載);特許文献11(特に、ResMed LimitedのSWIFT(登録商標)FX鼻枕の様相を記載)。
2.2.3.1.2 位置決めおよび安定化
【0044】
陽圧空気治療に用いられる患者インターフェースのシール形成構造は、密閉を妨害する空気圧力の対応する力を受ける。そのため、シール形成構造を位置決めすることと、顔の適切な部分に対して密閉を維持することとを行うために、多様な技術が用いられている。
【0045】
1つの技術において、接着部が用いられる。例えば、特許文献12を参照されたい。しかし、接着部を用いた場合、不快感がある場合がある。
【0046】
別の技術において、1つ以上のストラップおよび/または安定化ハーネスが用いられる。多数のこのようなハーネスの場合、フィット感が悪い、かさばる、不快および扱いにくいなどの点のうち1つ以上が当てはまる。
2.2.3.2 呼吸圧力治療(RPT)デバイス
【0047】
呼吸圧力治療(RPT)デバイスは、例えば気道入口への空気送達流れを生成することにより、上記した複数の治療のうち1つ以上の送達に用いられ得る。この空気流れは、加圧され得る。RPTデバイスの例を挙げると、CPAPデバイスおよび人工呼吸器がある。
【0048】
空気圧生成器は、広範な用途(例えば、工業規模換気システム)において公知である。しかし、医療用途のための空気圧生成器は、より一般的な空気圧生成器(例えば、医療機器の信頼性要件、サイズ要件および重量要件)では満足できない特定の要件を有する。加えて、医療治療向けに設計されたデバイスであっても、以下のうち1つ以上に関連して欠陥を免れない場合がある:快適性、ノイズ、使いやすさ、有効性、サイズ、重量、製造可能性、コストおよび信頼性。
【0049】
特定のRPTデバイスの特殊な要件の一例として、音響ノイズがある。
【0050】
従来のRPTデバイスのノイズ出力レベルの表(試料1個のみをISO3744に指定の試験方法を用いてCPAPモードにおいて10cmHOにて測定)。
【0051】
【表1】
【0052】
睡眠呼吸障害の治療に用いられる1つの公知のRPTデバイスとして、S9睡眠治療システム(製造元:ResMed Limited)がある。RPTデバイスの別の実施例として、人工呼吸器がある。人工呼吸器(例えば、成人および小児用人工呼吸器のResMed Stellar(登録商標)シリーズ)の場合、複数の状態(例を非限定的に挙げると、NMD、OHSおよびCOPD)の治療のための一定範囲のための患者のための侵襲的および非侵襲的な非依存的呼吸のための補助を提供し得る。
【0053】
ResMed Elisee(登録商標)150人工呼吸器およびResMedVSIII(登録商標)人工呼吸器は、複数の状態の治療のための成人患者または小児用患者に適した侵襲的および非侵襲的な依存的呼吸の補助を提供し得る。これらの人工呼吸器により、単一または二重の肢回路を用いた容積通気モードおよび気圧通気モードが得られる。RPTデバイスは典型的には、圧力生成器(例えば、電動送風機または圧縮ガスリザーバ)を含み、患者の気道へ空気流れを供給するように構成される。場合によっては、空気流れは、患者の気道へ陽圧で供給され得る。RPTデバイスの出口は、空気回路を介して上記したような患者インターフェースへ接続される。
【0054】
デバイスの設計者には、無数の選択肢が提示され得る。設計基準同士が対立することが多くあるため、特定の設計選択肢が慣例からほど遠くなるかあるいは避けられないことがある。さらに、特定の態様の快適性および有効性は、1つ以上のパラメータの些細な変更から大きく影響を受ける可能性もある。
2.2.3.3 加湿器
【0055】
空気流れの送達を加湿無しで行った場合、気道の乾燥に繋がり得る。加湿器をRPTデバイスおよび患者インターフェースと共に用いた場合、加湿ガスが生成されるため、鼻粘膜の乾燥が最小化され、患者気道の快適性が増加する。加えて、より冷涼な気候においては、概して患者インターフェースの周囲の顔領域へ温風を付加すると、冷風の場合よりも快適性が高まる。
【0056】
一定範囲の人工的加湿機器およびシステムが公知であるが、医療加湿器の特殊な要件を満たせていない。
【0057】
医療加湿器は、典型的には患者が(例えば病院において)睡眠時または安静時にあるときに、必要な場合に周囲空気に相対して空気流れの湿度および/または温度を増加させるように、用いられる。枕元に置かれる医療加湿器は、小型である場合がある。医療加湿器は、患者へ送達される空気流れの加湿および/または加熱のみを行うように構成され得、患者の周囲の加湿および/または加熱は行わない。例えば、部屋ベースのシステム(例えば、サウナ、エアコン、または蒸発冷却器)は、呼吸により患者体内に取り込まれる空気も加湿し得るものの、これらのシステムの場合、部屋全体も加湿および/または加熱するため、占有者にとって不快感であり得る。さらに、医療加湿器の場合、工業用加湿器よりも安全面での制約がより厳しい場合もある。
【0058】
多数の医療加湿器が公知であるものの、このような医療加湿器の場合、1つ以上の欠陥を被り得る。すなわち、このような医療加湿器の場合、加湿が不適切なものもあれば、患者にとって使用が困難または不便であるものもある。
2.2.3.4 データ管理
【0059】
臨床的理由により、呼吸治療が処方された患者が「コンプライアンスを遵守している」(例えば、患者が自身のRPTデバイスを特定の「コンプライアンスルール」に則っているか)を決定するためのデータを入手する場合がある。CPAP治療についてのコンプライアンスルールの一例として、患者がコンプライアンスを遵守しているとみなすためには、患者が連続30日間のうち少なくとも21日間にわたってRPTデバイスを一晩あたり少なくとも4時間にわたって使用する必要がある。患者のコンプライアンスを決定するためには、RPTデバイスのプロバイダ(例えば、ヘルスケアプロバイダ)は、RPTデバイスを用いた患者の治療を記述するデータを手作業で入手し、所定期間にわたる使用率を計算し、これをコンプライアンスルールと比較し得る。ヘルスケアプロバイダが患者が自身のRPTデバイスをコンプライアンスルールに則って使用したと決定すると、当該ヘルスケアプロバイダは、患者がコンプライアンスを遵守している旨を第三者に通知し得る。
【0060】
患者の治療において、治療データの第三者または外部システムへの通信から恩恵を受ける他の態様があり得る。
【0061】
このようなデータを通信および管理するための既存のプロセスの場合、高コスト、時間がかかること、エラーの発生し易さのうち1つ以上が発生し得る。
2.2.3.5 下顎の再位置決め
【0062】
下顎再位置決めデバイス(MRD)または下顎前方固定デバイス(MAD)は、睡眠時無呼吸およびいびきの治療選択肢の1つである。これは、歯科医または他の供給業者から利用可能である調節可能な口腔用器具であり、下顎部(下顎)を睡眠時に前方位置に保持する。MRDは、取り外し可能なデバイスであり、患者の睡眠前に口腔内に挿入され、睡眠後に取り外される。そのため、MRDは、常時装着用途を想定した設計はされていない。MRDは、カスタム仕様にしてもよいし、あるいは、標準形態で製造してもよく、患者の歯に適合するように設計された咬合印象部位を含む。この下顎からの機械的突出部は、舌の後ろ側の空間を拡張させ、咽頭壁上へ張力を付加して、気道崩壊を低減させ、口蓋振動を低減させる。
【0063】
特定の実施例において、下顎前方固定デバイスは、上顎または上顎骨上の歯と係合するかまたは嵌め合うように意図された上側スプリントと、上顎または下顎上の歯と係合するかまたは嵌め合うように意図された下側スプリントとを含み得る。上側スプリントおよび下側スプリントは、一対の接続ロッドを介して相互に横方向に接続される。この1組の接続ロッドは、上側スプリントおよび下側スプリント上において対称に固定される。
【0064】
このような設計において、接続ロッドの長さは、MRDが患者の口腔中に配置されたときに下顎が前方位置に保持されるように、選択される。接続ロッドの長さは、下顎の突出レベルを変化させるように、調節され得る。歯科医は、突出レベルを下顎に合わせて決定することができ、その結果、接続ロッドの長さが決定される。
【0065】
下顎を上顎骨に対して前方に押し出すように構成されているMRDもあれば、ResMed Narval CC(登録商標)MRDなどの他のMADのように、下顎を前方位置に保持するように設計されているものもある。このデバイスにより、歯科的副作用および側頭/下顎間の関節(TMJ)の副作用も低下または最小化される。そのため、このデバイスは、歯のうち1つ以上の任意の移動を最小化または回避するように構成される。
2.2.3.6 通気技術
【0066】
いくつかの形態の治療システムは、吐き出された二酸化炭素を押し出すための通気部を含み得る。この通気部により、患者インターフェースの内部空間(例えば、プレナムチャンバ)から患者インターフェースの外部(例えば、周囲)へのガス流れが可能になり得る。
【0067】
この通気部は、オリフィスを含み得、マスク使用時において、ガスがオリフィスを通じて流れ得る。多数のこのような通気部の場合、音がうるさい。他の場合、使用時において閉塞し得るため、押し出しが不十分になる。いくつかの通気部の場合、例えば音または気流集中に起因して、患者1000と同床者1100の睡眠を妨げる場合がある。
【0068】
ResMed Limitedは、複数の向上したマスク通気技術を開発している。下記を参照されたい:特許文献13;特許文献14;特許文献15;特許文献16;特許文献17。
【0069】
従来のマスクのノイズの表(ISO17510-2:2007、1mにおける10cmHO圧力)
【0070】
【表2】
【0071】
【表3】
【0072】
(*試料1個のみをISO3744に指定の試験方法を用いてCPAPモードにおいて10cmHOにて測定)
【0073】
多様な対象の音圧値を以下に羅列する
【0074】
【表4】
【0075】
2.2.4 診断システムおよび監視システム
睡眠ポリグラフ(PSG)は、心肺疾患の診断および監視のための従来のシステムであり、典型的には、システム適用のために専門家臨床スタッフを必要とすることが多い。PSGにおいては、多様な身体信号(例えば、脳波検査(EEG)、心電図検査(ECG)、電気眼球図記録(EOG)、筋電図描画法(EMG))を記録するために、典型的には15~20個の接触覚センサーを人体上に配置する。睡眠時呼吸障害のPSGのためには、患者を専門病院において二晩にわたって観察する必要があった。すなわち、第一夜は純然たる診断のためであり、第二夜は、臨床医による治療パラメータのタイトレーションのために必要であった。そのため、PSGは高コストであり、利便性も低い。PSGは、家庭における睡眠テストには特に不向きである。
臨床専門家は、患者の診断または監視をPSG信号の視覚的観察に基づいて適切に行い得る。しかし、臨床専門家が居ないまたは臨床専門家への支払いができない状況がある。患者の状態について臨床専門家によって意見が異なる場合がある。さらに、或る臨床専門家は、時期によって異なる基準を適用し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0076】
【文献】米国特許第4,944,310号
【文献】米国特許第6,532,959号
【文献】国際公開第1998/004、310号
【文献】国際公開第2006/074、513号
【文献】国際公開第2010/135、785号
【文献】米国特許第4、782、832号
【文献】国際公開第2004/073、778号
【文献】米国特許出願第2009/0044808号
【文献】国際公開第2005/063、328号
【文献】国際公開第2006/130、903号
【文献】国際公開第2009/052、560号
【文献】米国特許出願公開第2010/0000534号
【文献】国際公開第1998/034、665号
【文献】国際公開第2000/078、381号
【文献】米国特許第6、581、594号
【文献】米国特許出願公開第2009/0050156号
【文献】米国特許出願公開第2009/0044808号
【非特許文献】
【0077】
【文献】「Respiratory Physiology」, by John B. West, Lippincott Williams & Wilkins, 9th edition published 2012
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0078】
3 技術の簡単な説明
本技術は、呼吸器疾患の診断、改善、治療または予防において用いられる医療機器の提供に関連し、これらの医療機器は、向上した快適性、コスト、有効性、使い易さおよび製造可能性のうち1つ以上を有する。
【0079】
本技術の第1の態様は、呼吸器疾患の診断、改善、治療または予防に用いられる装置に関連する。
【0080】
本技術の別の態様は、呼吸障害の診断、改善、治療または予防において用いられる方法に関連する。
【0081】
本技術の特定の形態の一態様は、呼吸治療についての患者のコンプライアンスを向上させる方法および/または装置を提供することである。
【0082】
本技術の一態様は、加熱板と熱係合するように適合された非金属製の薄膜ベースを含む水リザーバを含む加湿器に関する。水リザーバの薄膜ベースは、水リザーバの熱伝達特性および信頼性の保持または向上をもたらしつつ水リザーバの生産コストを低減させる配置構成を提供するような構造にされる。一実施例において、薄膜ベースは、良好な熱接触および良好な加湿器性能の提供および例えば加湿器要求および性能に応じた適切な材料選択が可能になるように、充分に肉薄かつ平坦であり得る。
【0083】
本技術の一態様は、呼吸可能なガスの流れを加湿する装置のための水リザーバに関する。水リザーバは、液体の体積(volume)を保持するような構造にされたキャビティおよびベースへ設けられた伝導性部位を含むリザーバベースを含む。伝導性部位は、加熱板から液体の体積(volume)への熱の熱伝導が可能となるように、加熱板と熱係合するように適合される。伝導性部位は、非金属製材料を含む薄膜を含み、薄膜は、約1mm未満の壁厚さを含む。
【0084】
一実施例において、薄膜の厚さは、約0.5mm未満であり得る。一実施例において、薄膜は、シリコーン、ポリカーボネートまたは他の熱可塑性材料またはエラストマー材料を含み得る。一実施例において、薄膜は、リザーバベースと別個かつ区別可能な構造として設けられ得る。一実施例において、薄膜は、リザーバベースへ固定されるかまたは他の方法で固定された事前形成された構造を含む。一実施例において、リザーバベースは、薄膜を受容するような構造にされた穴を含み得る。一実施例において、薄膜は、穴の形状に対応する形状を含み得る。一実施例において、薄膜は、概して平面状であり得る。一実施例において、薄膜は、液体の体積へ露出された水リザーバの底内面を形成するように適合された第1の側部と、第1の側部に対向する第2の側部であって、加熱板へ露出された水リザーバの底外面を形成するように適合された第2の側部とを含み得る。一実施例において、薄膜の第2の側部は、加熱板と直接係合するような構造および配置にされた接触面を提供し得る。一実施例において、薄膜の非金属製材料は、リザーバベースの材料に類似し得る。一実施例において、薄膜の厚さは、リザーバベースの壁の壁厚さ未満であり得る。一実施例において、水リザーバは、1つ以上のリブをさらに含み得る。これら1つ以上のリブは、薄膜を加熱板へ押圧するように適合された力を生成するように薄膜上に延びるような構造および配置にされる。一実施例において、リザーバベースは、ベース上側ボディ、ベース下部プレートおよび薄膜を含み得る。ベース上側ボディ、ベース下部プレートおよび薄膜により、キャビティが形成される。一実施例において、水リザーバは、リザーバ蓋をさらに含み得る。リザーバ蓋は、水リザーバが開口構成と閉鎖構成との間で変換可能となるように、リザーバベースへ移動可能に接続される。
【0085】
本技術の別の態様は、呼吸可能なガスの流れを加湿する装置のための水リザーバに関する。水リザーバは、液体の体積を保持するような構造にされたキャビティおよびベースへ設けられた伝導性部位を含むリザーバベースを含む。伝導性部位は、加熱板から液体の体積への熱の熱伝導が可能となるように、加熱板と熱係合するように適合される。伝導性部位は、非金属製材料を含む薄膜を含む。薄膜は、リザーバベースと別個かつ区別可能な構造として提供され、薄膜は、リザーバベースの壁の壁厚さ未満の壁厚さを含む。一実施例において、薄膜は、リザーバベースへ固定されるかまたは他の方法で固定された事前形成された構造を含み得る。
【0086】
本技術の一形態の一態様は、装置の製造方法である。
【0087】
本技術の特定の形態の一態様は、例えば医療トレーニングを受けたことの無い人、あまり器用ではない人や洞察力の欠いた人、またはこの種の医療デバイスの使用経験が限られた人にとって使い易い医療デバイスである。
【0088】
本技術の一形態の一態様は、患者の家庭において例えば石けん水などによって洗浄することが可能な患者インターフェースであり、特殊な清浄器具は不要である。本技術の一形態の一態様は、患者の家庭において例えば石けん水などによって洗浄することが可能な加湿器タンクであり、特殊な清浄器具は不要である。
【0089】
本明細書中に記載される方法、システム、デバイスおよび装置により、プロセッサにおける機能(例えば、特定目的用コンピュータのプロセッサ、呼吸モニターおよび/または呼吸治療装置の機能)の向上が可能になり得る。さらに、記載の方法、システム、デバイスおよび装置により、呼吸状態(例えば、睡眠障害呼吸)の自動管理、監視および/または治療の技術分野における向上が可能になる。
【0090】
もちろん、上記態様の一部は、本技術の下位態様を形成し得る。また、下位態様および/または態様のうち多様な1つを多様に組み合わせることができ、本技術のさらなる態様または下位態様も構成し得る。
【0091】
本技術の他の特徴は、以下の詳細な説明、要約、図面および特許請求の範囲中に含まれる情報に鑑みれば明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
4 図面の簡単な説明
本技術を、添付図面中に非限定的に一実施例として例示する。図面中、類似の参照符号は、以下の類似の要素を含む:
4.1 治療システム
図1A図1Aは、患者インターフェース3000を装着している患者1000を含むシステムを示す。このシステムは、鼻枕の形態をとり、RPTデバイス4000から供給される陽圧の空気を受容する。RPTデバイス4000からの空気は、加湿器5000によって加湿され、空気回路4170に沿って患者1000へと移動する。同床者1100も図示される。患者は、仰臥位睡眠位置において睡眠している。
図1B図1Bは、患者インターフェース3000を装着している患者1000を含むシステムを示す。このシステムは、鼻マスクの形態をとり、RPTデバイス4000から供給される陽圧の空気を受容する。RPTデバイスからの空気は、加湿器5000によって加湿され、空気回路4170に沿って患者1000へと移動する。
図1C図1Cは、患者インターフェース3000を装着している患者1000を含むシステムを含む。患者インターフェース3000は、フルフェイスマスクをとり、陽圧の空気供給をRPTデバイス4000から受容する。RPTデバイスからの空気は、加湿器5000によって加湿され、空気回路4170に沿って患者1000へと移動する。患者は、側臥位睡眠位置において睡眠している。4.2 呼吸システムおよび顔の解剖学的構造
図2A図2Aは、鼻腔および口腔、喉頭、声帯ひだ、食道、気管、気管支、肺、肺胞嚢、心臓および横隔膜を含むヒト呼吸器系の概要を示す。
図2B図2Bは、鼻腔、鼻骨、外側鼻軟骨、大鼻翼軟骨、鼻孔、上唇、下唇、喉頭、硬口蓋、軟口蓋、中咽頭、舌、喉頭蓋、声帯ひだ、食道および気管を含むヒトの上気道の図である。4.3 患者インターフェース
図3A図3Aは、本技術の一形態による鼻マスクの形態の患者インターフェースを示す。
図3B図3Bは、構造を1つの点において切断した模式的断面図である。この点における外向き法線が図示される。この点における曲率は、正の符号と、3Cに示す曲率の大きさと比較して比較的大きな大きさとを有する。
図3C図3Cは、構造を1つの点において切断した模式的断面図である。この点における外向き法線が図示される。この点における曲率は、正の符号と、図3Bに示す曲率の大きさと比較して比較的小さな大きさとを有する。
図3D図3Dは、構造を1つの点において切断した模式的断面図である。この点における外向き法線が図示される。この点における曲率の値はゼロである。
図3E図3Eは、構造を1つの点において切断した模式的断面図である。この点における外向き法線が図示される。この点における曲率は、負の符号と、図3Fに示す曲率の大きさと比較して比較的小さな大きさとを有する。
図3F図3Fは、構造を1つの点において切断した模式的断面図である。この点における外向き法線が図示される。この点における曲率は、負の符号と、図3Eに示す曲率の大きさと比較して比較的大きな大きさとを有する。
図3G図3Gは、2つの枕を含むマスク用クッションを示す。クッションの外面が図示される。表面の縁部が図示される。ドーム領域およびサドル領域が図示される。
図3H図3Hは、マスク用クッションを示す。クッションの外面が図示される。表面の縁部が図示される。点Aと点Bとの間の表面上の経路が図示される。AとBとの間の直線距離が図示される。2つのサドル領域およびドーム領域が図示される。
図3I図3Iは、構造の表面を示し、この表面中には一次元穴が開いている。図示の平面曲線は、一次元穴の境界を形成する。
図3J図3Jは、図3Iの構造を通じた断面図である。図示の表面は、図3Iの構造中の二次元穴を境界付ける。
図3K図3Kは、二次元穴および一次元穴を含む図3Iの構造の斜視図である。また、図3Iの構造中の二次元穴を境界付ける表面が図示される。
図3L図3Lは、クッションとしての可膨張性ブラダーを有するマスクを示す。
図3M図3Mは、図3Lのマスクの断面図であり、ブラダーの内面を示す。内面により、マスク中の二次元穴が境界付けられる。
図3N図3Nは、図3Lのマスクを通じたさらなる断面を示す。内面も図示される。
図3O図3Oは、左手の法則を示す。
図3P図3Pは、右手の法則を示す。
図3Q図3Qは、左耳螺旋を含む左耳を示す。
図3R図3Rは、右耳螺旋を含む右耳を示す。
図3S図3Sは、右手螺旋を示す。
図3T図3Tは、マスクの異なる領域内の密閉膜の縁部によって規定された空間曲線のねじれのサインを含むマスクの図である。4.4 RPTデバイス
図4A図4Aは、本技術の一形態に従ったRPTデバイス4000を示す。4.5 加湿器
図5図5は、本技術の一実施例によるRPTデバイスおよび一体化加湿器の斜視図であり、加湿器と本技術の一実施例による空気回路との係合を例示する。
図6図6は、加湿器リザーバと本技術の一実施例によるリザーバドックとの係合を例示する図5のRPTデバイスおよび一体化加湿器の斜視図である。
図7図7は、図5のRPTデバイスおよび一体化加湿器の別の斜視図である。
図8図8は、加湿器リザーバと本技術の一実施例によるリザーバドックとの係合を例示する図5のRPTデバイスおよび一体化加湿器の別の斜視図である。
図9図9は、本技術の一実施例による加湿器リザーバの様々な様子を示し、図9は閉じた形の加湿器リザーバを示す。
図10図10は、本技術の一実施例による加湿器リザーバの様々な様子を示し、図10は閉じた形の加湿器リザーバを示す。
図11図11は、本技術の一実施例による加湿器リザーバの様々な様子を示し、図11は閉じた形の加湿器リザーバを示す。
図12図12は、本技術の一実施例による加湿器リザーバの様々な様子を示し、図12は開いた形の加湿器リザーバを示す。
図13図13は、本技術の一実施例による加湿器リザーバのリザーバベースの上面斜視図である。
図14図14は、図13のリザーバベースの底面斜視図である。
図15図15は、図13のリザーバベースの分解図である。
図16図16は、本技術の一実施例による図13のリザーバベースを含む加湿器リザーバの断面図である。
図17図17は、本技術の一実施例による図13のリザーバベースのベース底部プレートおよび伝導性部位の断面図である。
図18図18は、本技術の別の実施例による加湿器リザーバのリザーバベースの上面斜視図である。
図19図19は、図18のリザーバベースの底面斜視図である。
図20図20は、本技術の一実施例による図18のリザーバベースのベース底部プレートおよび伝導性部位の断面図である。
図21図21は、本技術の一形態による加湿器の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0093】
5 本技術の実施例の詳細な説明
本技術についてさらに詳細に説明する前に、本技術は、本明細書中に記載される異なり得る特定の実施例に限定されるのではないことが理解されるべきである。本開示中に用いられる用語は、本明細書中に記載される特定の実施例を説明する目的のためのものであり、限定的なものではないことも理解されるべきである。
【0094】
以下の記載は、1つ以上の共通の特性および/または特徴を共有し得る多様な実施例に関連して提供される。任意の1つの実施例の1つ以上の特徴は、別の実施例または他の実施例の1つ以上の特徴と組み合わせることが可能であることが理解されるべきである。加えて、これらの実施例のうちのいずれかにおける任意の単一の特徴または特徴の組み合わせは、さらなる実施例を構成し得る。
5.1 治療
【0095】
一形態において、本技術は、呼吸器疾患の治療方法を含む。本方法は、患者1000の気道の入口へ陽圧を付加するステップを含む。
【0096】
本技術の特定の実施例において、陽圧における空気供給が鼻孔の片方または双方を介して患者の鼻通路へ提供される。
【0097】
本技術の特定の実施例において、口呼吸が制限されるか、限定されるかまたは妨げられる。
5.2 治療システム
【0098】
一形態において、本技術は、呼吸障害の治療のための装置またはデバイスを含む。装置またはデバイスは、加圧空気を患者インターフェース3000への空気回路4170を介して患者1000へ供給するRPTデバイス4000を含み得る(例えば、図1A~1Cを参照されたい)。
5.3 患者インターフェース
【0099】
図3Aに示したように、本技術の一様態による非侵襲的患者インターフェース3000は、以下の機能態様を含む:シール形成構造3100、プレナムチャンバ3200、位置決めおよび安定化構造3300、通気孔3400、空気回路4170への接続のための一形態の接続ポート3600、および前額支持部3700。いくつかの形態において、機能様態が、1つ以上の物理的コンポーネントによって提供され得る。いくつかの形態において、1つの物理的コンポーネントは、1つ以上の機能様態を提供し得る。使用時において、シール形成構造3100は、気道への陽圧での空気供給を促進するように、患者の気道の入口を包囲するように配置される。
【0100】
患者インターフェースが最低レベルの陽圧を快適に気道へ送達できない場合、患者インターフェースは呼吸圧力治療に不適切であり得る。
【0101】
本技術の一形態による患者インターフェース3000は、周囲に対して少なくとも6cmHOの陽圧で空気供給を提供できるように構築および配置される。
【0102】
本技術の一形態による患者インターフェース3000は、周囲に対して少なくとも10cmHOの陽圧で空気供給を提供できるように構築および配置される。
【0103】
本技術の一形態による患者インターフェース3000は、周囲に対して少なくとも20cmHOの陽圧で空気供給を提供できるように構築および配置される。
5.4 RPTデバイス
【0104】
本技術の一態様によるRPTデバイス4000は、機械、空気圧式、および/または電気部品を含み、1つ以上のアルゴリズム(図4Aを参照)を実行するように構成される。RPTデバイス4000は、例えば本文書中のいずれかに記載の呼吸状態のうち1つ以上の治療のために患者の気道へ送達される空気流れを生成するように構成され得る。
【0105】
一形態において、RPTデバイス4000は、少なくとも6cmHOまたは少なくとも10cmHOまたは少なくとも20cmHOの陽圧を維持しつつ、空気流れを-20L/分~+150L/分の範囲で送達できるように構築および配置される。
【0106】
電源は、RPTデバイス4000の外部ハウジングの内部または外部に配置され得る。
【0107】
本技術の一形態において、電源は、RPTデバイスにのみ電力を供給する。本技術の別の形態において、電源から、電力がRPTデバイス4000および加湿器5000双方へ提供される。
【0108】
本技術の一形態において、RPTデバイス4000は、RPTデバイス4000の制御に適した1つまたは複数のプロセッサを含む中央コントローラを含む。
【0109】
適切なプロセッサは、ARM HoldingsからのARM(登録商標)Cortex(登録商標)-Mプロセッサに基づいたプロセッサであるx86INTELプロセッサを含み得る(例えば、ST マクロ電子からのS(登録商標)32シリーズのマイクロコントローラ)。本技術の特定の代替形態において、32ビットRISC CPU(例えば、ST MICRO電子SからのSTR9シリーズマクロコントローラ)または16ビットRISC CPU(例えば、TEXAS INSTRUMENTSによって製造されたマクロコントローラのMSP430ファミリーからのプロセッサ)も適切であり得る。
【0110】
本技術の一形態において、中央コントローラは、専用電子回路である。
【0111】
一形態において、中央コントローラは、特定用途向け集積回路である。別の形態において、中央コントローラは、個別電子コンポーネントを含む。
【0112】
中央コントローラは、1つ以上の変換器、1つ以上の入力デバイスおよび加湿器5000から入力信号(単数または複数)を受信するように、構成され得る。
【0113】
中央コントローラは、出力信号(単数または複数)を出力デバイス、治療装置コントローラ、データ通信インターフェースおよび加湿器5000のうち1つ以上へ提供するように、構成され得る。
【0114】
本技術のいくつかの形態において、中央コントローラは、本明細書中に記載の1つ以上の方法を具現するように、構成される(例えば、非一時的なコンピュータで読出可能な記録媒体のような(例えば、メモリ)中に記録されたコンピュータプログラムとして表現された1つ以上のアルゴリズム)。本技術のいくつかの形態において、中央コントローラは、RPTデバイス4000と一体化され得る。しかし、本技術のいくつかの形態において、いくつかの方法が、遠隔配置されたデバイスによって行われ得る。例えば、遠隔配置されたデバイスは、記録されたデータ(例えば、本明細書中に記載のセンサーのうちいずれかからのもの)の分析により、人工呼吸器の制御設定を決定し得るか、または、呼吸関連イベントを検出し得る。
5.5 空気回路
【0115】
本技術の一態様による空気回路4170は、使用時において空気流れが2つのコンポーネント(例えば、RPTデバイス4000および患者インターフェース3000)間に移動するように、構築および配置された導管またはチューブである。
【0116】
詳細には、空気回路4170は、空気圧式ブロックの出口および患者インターフェースと流体接続し得る。空気回路は、空気送達チューブと呼ばれ得る。いくつかの場合において、吸息および呼気のための回路の別個の肢があり得る。他の場合において、単一の肢が用いられる。
【0117】
いくつかの形態において、空気回路4170は、(例えば空気温度の維持または上昇のために)空気回路中の空気を加熱するように構成された1つ以上の加熱要素を含み得る。加熱要素は、加熱ワイヤ回路の形態をとり得、1つ以上の変換器(例えば、温度センサー)を含み得る。一形態において、加熱ワイヤ回路は、空気回路4170の軸周囲にらせん状に巻かれ得る。加熱要素は、コントローラ(例えば、中央コントローラ)と連通し得る。加熱ワイヤ回路を含む空気回路4170の一実施例について、米国特許出願第8,733,349号に記載がある。本明細書中、同文献全体を参考のため援用する。
5.6 加湿器
5.6.1 加湿器の概要
【0118】
本技術の一形態において、患者へ送達されるべき空気またはガスの絶対湿度を周囲空気に相対して変化させるための加湿器が提供される。典型的には、加湿器は、患者気道へ送達される前に空気流れの(周囲空気に相対する)絶対湿度を増加させかつ温度を増加させるために、用いられる。
【0119】
図5図8は、本技術の一実施例によるRPTデバイス4000および一体化加湿器5000を示す。図示の例において、加湿器5000は、水リザーバ5110を受容するような構造にされた水リザーバドック5130を含む。図示のように、水リザーバドック5130は、内部に水リザーバ5110を受容するように形成されたキャビティ5160を含む。例えば、水リザーバ5110は、横方向において水リザーバドック5110から挿入可能/取り外し可能であり得る。
【0120】
図示の例において、RPTデバイス4000は、加湿器5000と一体化される。この配置構成として、水リザーバドック5130は、水リザーバ5110を空気圧経路へ接続させるような構造にされる。図5および図8に最良に示すように、リザーバドック5130は、空気流れを水リザーバ5110へ送達させるためのドック空気出口5168と、水リザーバ5110において加湿された空気流れを受容するドック空気入口5170と、加湿された空気の流れを空気回路4170へ移動させるための加湿器出口5172とを含む。キャビティ5160は、水リザーバ5110の蓋のうち少なくとも一部を被覆するように構成された上部と、加熱板5120を含む下部とを含み得る。
【0121】
しかし、別の配置構成において、リザーバドック5130を別個にRPTデバイス4000へ設けてもよいことが理解されるべきである。このような配置構成において、リザーバドック5130をRPTデバイス4000へ接続させるために(例えば、直接的結合または空気回路を介した結合のために)さらなるインターフェースが用いられ得る。
【0122】
別の配置構成において、水リザーバドック5130は、実質的に水平な面中に開口部を含み得るため、水リザーバ5110を水リザーバドック5130の上部または下部から挿入することができる。
【0123】
かかるRPTデバイス4000および一体化加湿器5000のさらなる実施例および詳細について、国際公開第2014/138804号(出願日:2014年9月18日)に記載がある。本明細書中、同文献全体を参考のため援用する。
5.6.2 加湿器コンポーネント
5.6.2.1 水リザーバ
【0124】
図9図12は、水リザーバまたはタブ5110の一形態を示す。水リザーバまたはタブ5110は、リザーバベース5112と、リザーバ蓋5114と、コンプライアント部5116を含む中間部とを含む。水リザーバ5110は、空気流れの加湿のために蒸発させるべき一定量の液体(例えば、水)を収容または保持するように構成されたキャビティ(例えば、ベースより提供される)を含み得る。水リザーバ5110は、少なくとも呼吸治療セッション期間(例えば、一晩の睡眠)にわたって適切な加湿を提供するための所定の最大量の水を収容するように、構成され得る。典型的には、リザーバ5110は、数百ミリリットルの水(例えば、300ミリリットル(ml)、325ml、350mlまたは400ml)を収容するように、構成される。他の形態において、加湿器5000は、外部水源(例えば、建物の水供給システム)から水供給を受容するように、構成され得る。
【0125】
一態様によれば、水リザーバ5110は、空気流れがRPTデバイス4000を通過する際にRPTデバイス4000からの空気流れを加湿するように、構成される。一形態において、水リザーバ5110は、空気流れがリザーバ5110中の一定量の水と接触しつつ、空気流れのリザーバ5110中の蛇行経路の移動を促進するように、構成され得る。
【0126】
リザーバ5110は、例えばリザーバ5110がその通常の動作方向(例えば、任意のアパチャを通じておよび/またはそのサブコンポーネント間に)から変位および/または回転した時にリザーバ5110からの液体放出を抑制するようにも構成され得る。加湿器5000によって加湿すべき空気流れは加圧されていることが多いため、リザーバ5110は、漏洩および/または流れインピーダンスを通じた空気圧の損失を防止するようにも、構成され得る。
【0127】
図示の例において、リザーバ蓋5114は、リザーバ5110中への空気流れを受容する入口5118と、リザーバ5110からの空気流れの送達のための出口5122とを含む。リザーバ蓋5114は、リザーバ5110を図9図11に示すような閉鎖構成と図12に示すような開口構成との間で転換することができるように、旋回可能にヒンジ5158によってベース5112へ接続される。水リザーバ5110がその閉鎖構成である場合、コンプライアント部5116は、ベース5112と蓋5114との間において密閉係合されるため、ベース5112および蓋5114が密閉され、リザーバ5110からの水漏れが防止される。コンプライアント部5116は、他の機能(例えば、リザーバ5110と加熱板5120との間の熱接触向上)も行い得る。
【0128】
リザーバベース5112は、リザーバ5110が保持できるように構成された、所与の最大の液体の体積を保持する容器として構成され得る。一形態において、ベース5112は、例えば過剰充填防止フィーチャなどのさらなるフィーチャを含み得る。(例えば、図13に示すように過剰充填を示す、水リザーバ5110中の少なくとも1つのオリフィス5138)
【0129】
一形態において、リザーバベース5112は、例えば図13に示すような内側リップ5224および/または外側リップ5226をさらに含み得る。一態様によれば、内側リップ5224および/または外側リップ5226は、(例えば中間部が圧縮されたときまたは中間部が振動下に有る場合に)中間部(例えば、コンプライアント部5116)とベース5112との間のインターフェースを通じて液体がリザーバ5110から漏れる事態を防止し得る。
【0130】
一形態において、リザーバベース5112は、ベース上側ボディ5146、ベース下部プレート5148および伝導性部位5152を含む。ベース上側ボディ5146は、ベース下部プレート5148および伝導性部位5152により、容器が形成される(例えば図15を参照)。しかし、リザーバベース5112は、任意の部品によって構築され得ることが理解されるべきである。
【0131】
一実施例において、ベース上ボディ5146、ベース下プレート5148および/または蓋5114は、液体の体積の保持に適した生体適合性材料(例えば、プラスチックまたは熱可塑性ポリマー(例えば、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)またはポリカーボネート材料))から構築され得る。
【0132】
一実施例において、密閉要素を例えばベース上ボディ5146とベース下プレート5148との間に設けることにより、水リザーバ5110から(特にベース5112から)の水漏れを防止することができる。
【0133】
水リザーバのさらなる実施例および詳細について、国際公開第2014/138804号(出願日:2014年9月18日)に記載がある。本明細書中、同文献全体を参考のため援用する。
5.6.2.2 伝導性部位
【0134】
本技術の一実施例によれば、リザーバ5110は、加熱板5120からリザーバ5110中の一定量の液体への効率的な熱伝達を可能にするように構成された伝導性部位5152を含む。伝導性部位5152は、加熱板から液体の体積への熱の熱伝導を可能にするように加熱板5152と熱係合または接触するような構造および配置された熱伝導性材料を含む。
【0135】
図13図20の図示の例において、伝導性部位5152は、加湿器5000の加熱板5120と熱結合するように構成された熱伝導性の非金属製材料を含む薄膜(膜ベースまたはベース導体膜とも呼ばれる)を含む。
【0136】
一実施例において、薄膜5152の熱伝導性の非金属製材料は、シリコーン、ポリカーボネートまたは他の熱可塑性材料またはエラストマー材料を含み得る。
【0137】
一実施例において、薄膜5152の厚さは、約0.05mm~1.5mm(例えば、0.10mm~0.125mm)であり得る。一実施例において、薄膜の厚さは、約1mm未満(例えば、約0.5mm未満)であり得る。一形態において膜は、厚さが約0.4mmであるシリコーン(LSR)膜を含み得る。
【0138】
図示の例において、ベース下プレート5148は、ベース下プレートの周囲に延びる側壁5149.1と、側壁5149.1に接合する下壁5149.2とを含む(例えば、図17を参照)。薄膜5152は、液体保持のための容器を形成するように設けられるか、または他の様態で下壁5149.2中へ設けられる。図示の例において、下壁5149.2は、薄膜5152を受容するような構造にされた穴5149.3を含む(例えば、図15を参照)。薄膜5152は、容器のベースのうち少なくとも一部を形成しかつ水リザーバ5110からの水漏れを防止するように、動作位置において穴5149.3内にかつ/または穴5149.3にわたって密閉固定される。
【0139】
例えば、薄膜5152は、穴5149.3の縁を形成する内面が薄膜5152の周囲における縁に固定されるように、穴5149.3の形状に対応する形状を含み得る。あるいは、薄膜5152は、穴5149.3の形状と異なる形状を含み得、その場合、薄膜5152の周囲における縁は、穴5149.3の縁を超えて延びる(例えば、薄膜5152がベース下プレート5148の下壁5149.2と重複する)。図示の例において、薄膜5152は、加熱板5120の形状(例えば、矩形)に概して対応する形状を含むが、他の適切な形状も可能である(例えば、正方形、円形、楕円)。
【0140】
図示のように、薄膜5152は、水へ露出されたリザーバ5110の底内面を形成するように適合された第1の側部5152.1を含む。薄膜5152は、第1の側部5152.1に対向する第2の側部5152.2を含む。第2の側部5152.2は、加熱板5120へ露出されたリザーバ5110の底外面を形成するように適合される。例えば、薄膜5152の第2の側部5152.2により、加熱板5120と直接係合するような構造および配置にされた接触面が得られる。
【0141】
図示の例において、薄膜5152は、概して平面状であり、リザーバの下部に設けられる。しかし、薄膜5152は、非平面形状を含み得、リザーバの他の領域に設けてもよい(例えば、水に露出されたリザーバの側壁に沿って設けられ得る)。一実施例において、薄膜5152は、ベース下プレート5148の1つ以上の壁と重複し得る(例えば、ベース下プレート中の穴にわたって延び、ベース下プレート5148の下部および/または側壁に適合および重複するような形状にされた薄膜)。
【0142】
一実施例において、膜5152は、ベース下プレート5148からの別個かつ区別可能な構造として設けられ、動作位置においてベース下プレート5148へ固定されるかまたは他の様態で設けられる(例えば、膜5152は、ベース下プレート5148へ固定された事前形成された構造を含む)。
【0143】
一実施例において、膜5152は、事前形成された後、ベース下プレート5148へインサート成形され得る。別の例において、膜5152は、事前形成された後、(例えば接着剤または溶接により)ベース下プレート5148へ固定され得る。さらに別の例において、膜5152をベース下プレート5148へオーバーモールドすることにより、膜5152をベース下プレート5148へ設けることができる。
【0144】
一実施例において、ベース下プレート5148を排除してもよいし、あるいは膜を他の様態において支持または強化してもよい(例えば、膜よりもより高剛性の材料の少なくとも1つの補強ストリップが、膜へ埋設されるかまたは他の様態において設けられる)。一実施例において、膜がリザーバの下部全体を構成するように、膜がベース上ボディ5146へ設けられ得る。
【0145】
事前形成された膜5152がベース下プレート5148へ設けられる(例えば、インサート成形または接着される)配置構成において、膜は、熱可塑性ポリカーボネート膜材料(例えば、厚さ約0.1mmのMakrofolDE1-4材料)を含み得、ベース下プレート5148は、熱可塑性ポリカーボネート材料(例えば、Makrolon2458(またはMakrolon2258)材料)を含み得る。しかし、事前形成された膜および/またはベース下プレートは、他の適切な材料も含み得ることが理解されるべきである。
【0146】
一実施例において、熱伝導率向上のために膜に1つ以上の添加剤が充填され得、その場合、(例えば機械的安定性の向上のために)膜がより肉厚になり得る。
【0147】
例えば、膜はセラミック粉末または金属粉末が充填されたプラスチックを含んでもよいし、あるいは、膜は、複数の膜または層(例えば、金属膜の片側または両側にプラスチック膜と共に金属膜を含むサンドイッチ構造)を含んでもよい。
【0148】
一実施例において、熱伝導性の材料(例えば、金属)による粉末コーティングまたはスプレー塗装を加熱板5120に対向する膜の第2の側部5152.2へ付与することにより、熱伝導率向上が可能になる。
【0149】
一実施例において、膜5152は、ベース下プレート5148の下壁および/または側壁の厚さと異なる厚さを含み得る。例えば、膜の壁厚さは、ベース下プレート5148の下壁および/または側壁の壁厚さ未満である。このような配置構成により、所望の性能特性(例えば、大流量における性能、加湿速度、加熱時間)を達成するように、膜厚さを適切に選択することができる。
【0150】
一実施例において、膜5152は、ベース上ボディ5146および/またはベース下プレートの材料と同様の材料を含み得、膜5152は、ベース上ボディ5146および/またはベース下プレート5148の壁の壁厚さ未満の壁厚さを含む。
【0151】
一実施例において、図18図20に示すように、リザーバ5110に対し、1つ以上のリブ5175が設けられ得る。これらのリブ5175は、薄膜5152を加熱板5120へ押圧させるように適合された力を生成するように薄膜5152上に延びるような構造および配置にされる。
【0152】
代替的にまたは追加的に、加湿器に対し、加熱板5120を薄膜5152へ押圧させるような構造および配置にされたバネ状の要素が設けられ得る。
【0153】
リザーバの薄膜ベース5152により、リザーバ熱伝達特性および信頼性を保持するかまたは向上させつつリザーバの生産コストを低下させる配置構成が得られる。例えば、薄膜ベースの場合、良好な熱接触および良好な加湿器性能が得られかつ例えば加湿器要求および性能に応じた適切な材料の選択が可能になるように充分に肉薄かつ平坦にすることができる点において、有利である。
【0154】
一実施例において、薄膜ベースの場合、薄膜ベースの非金属特性(例えば、熱可塑性特性またはエラストマー材料特性)により、防食処理(例えば、耐水処理)が得られ、また、(例えば、加湿用水用の密閉リザーバを形成するために)ベース下プレート5148との密閉接続が得られるため、有利であり得る。また、薄膜ベースの非金属特性(例えば、熱可塑性材料またはエラストマー材料の特性)により、複雑な形状をとるような薄膜ベースの製造の促進が可能になり得る。例えば、必要な場合に加湿器の設計要求を満たすような複雑な形状に薄膜ベースを成形することができる。さらに、リザーバが使い捨て型である場合、リザーバの生産コスト低減は特に望ましい。そのような場合、リザーバは、一定の製品寿命のみにわたって使用されることが意図され、病院、患者またはユーザにより、リザーバの定期的交換が行われる。
5.6.2.3 加湿器リザーバドック
【0155】
上記したように、加湿器5000は、加湿器リザーバ5110を受容するように構成された(図5図8に示すような)加湿器リザーバドック5130を含み得る。いくつかの配置において、加湿器リザーバドック5130は、リザーバ5110を加湿器リザーバドック5130内に保持するように構成されたロック機能を含み得る。
5.6.2.4 水位インジケータ
【0156】
加湿器リザーバ5110は、水位インジケータを含み得る。いくつかの形態において、水位インジケータは、加湿器リザーバ5110中の水の量についての1つ以上の兆候を患者1000または介護者などのユーザへ提供し得る。水位インジケータから提供されるこれら1つ以上の兆候は、最大の所定量の水、その任意の一部の通知を含み得る(例えば、25%、50%または75%または量(例えば、200ml、300mlまたは400ml))。
5.6.2.5 加湿器変換器(単数または複数)
【0157】
図21に示すように、加湿器5000は、RPTデバイス4000内に提供された変換器の代わりに、またはそれに加えて、1つ以上の加湿器変換器(センサー)5210を含み得る。加湿器変換器5210は、図21に示すような空気圧センサー5212、空気流量変換器5214、温度センサー5216または湿度センサー5218のうち1つ以上を含み得る。加湿器変換器5210は、1つ以上の出力信号を生成し得る。これらの出力信号は、コントローラ(例えば、RPTデバイス4000の中央コントローラおよび/または中央加湿器コントローラ5250)へ通信され得る。いくつかの形態において、加湿器変換器は、出力信号をコントローラへ通信しつつ、加湿器5000の外部に(例えば、空気回路4170内に)配置され得る。
5.6.2.5.1 圧力変換器
【0158】
1つ以上の圧力変換器5212が、RPTデバイス4000内に設けられた圧力センサーに加えてまたはRPTデバイス内に設けられた圧力センサーの代わりに加湿器5000へ設けられ得る。
5.6.2.5.2 流量変換器
【0159】
RPTデバイス4000内に設けられた流量センサーに加えてまたはRPTデバイス内に設けられた流量センサーの代わりに、1つ以上の流量変換器5214が加湿器5000へ設けられ得る。
5.6.2.5.3 温度変換器
【0160】
加湿器5000は、1つ以上の温度変換器5216を含み得る。1つ以上の温度変換器5216は、1つ以上の温度(例えば、加熱要素5240の温度および/または加湿器出口の空気流れ下流の温度)を測定するように構成され得る。いくつかの形態において、加湿器5000は、周囲空気の温度を検出する温度センサー5216をさらに含み得る。
5.6.2.5.4 湿度変換器
【0161】
一形態において、加湿器5000は、周囲空気などのガスの湿度を検出する1つ以上の湿度センサー5218を含み得る。いくつかの形態において、湿度センサー5218は、加湿器5000から送達されるガスの湿度を測定するように、加湿器出口に向かって配置され得る。湿度センサーは、絶対湿度センサーであってもよいし、あるいは相対湿度センサーであってもよい。
5.6.2.6 加熱要素
【0162】
いくつかの場合において、加熱要素5240は、加湿器リザーバ5110中の水量および/または空気流れへの水量のうち1つ以上へ熱入力を提供する加湿器5000へ設けられ得る。加熱要素5240は、電気抵抗加熱トラックなどの熱生成コンポーネントを含み得る。加熱要素5240の1つの適切な実施例として、例えばPCT特許出願国際公開第2012/171072号に記載の層状加熱要素がある。本明細書中、同文献全体を参考のため援用する。
【0163】
いくつかの形態において、加熱要素5240は、加湿器ベース中へ設けられ得る。加湿器ベース5006において、主に伝導により熱が加湿器リザーバ5110へ送られ得る。
5.6.2.7 加湿器コントローラ
【0164】
本技術の1つの配置によれば、加湿器5000は、図21に示すような加湿器コントローラ5250を含み得る。一形態において、加湿器コントローラ5250は、RPTデバイス4000の中央コントローラの一部であり得る。別の形態において、加湿器コントローラ5250は、中央コントローラと通信し得る別個のコントローラであり得る。
【0165】
一形態において、加湿器コントローラ5250は、特性(例えば、温度、湿度、圧力および/または流量)の測定を入力として受信し得る(例えばリザーバ5110中および/または加湿器5000中の空気流れ、水の測定)。加湿器コントローラ5250は、加湿器アルゴリズムの実行または実施ならびに/あるいは1つ以上の出力信号の送達を行うようにも、構成され得る。
【0166】
図21に示すように、加湿器コントローラ5250は、1つ以上のコントローラを含み得る(例えば、中央加湿器コントローラ5251、加熱空気回路4171の温度を制御するように構成された加熱空気回路コントローラ5254および/または加熱要素5240の温度を制御するように構成された加熱要素コントローラ5252)。
5.7 用語集
【0167】
本技術の開示目的のため、本技術の特定の形態において、以下の定義のうち1つ以上が適用され得る。本技術の他の形態において、別の定義も適用され得る。
5.7.1 一般
【0168】
空気:本技術の特定の形態において、空気は大気を意味し得、本技術の他の形態において、空気は、他の呼吸可能なガスの組み合わせ(例えば、酸素を豊富に含む大気)を意味し得る。
【0169】
雰囲気:本技術の特定の形態において、「雰囲気」という用語は、(i)治療システムまたは患者の外部、および(ii)治療システムまたは患者を直接包囲するものを意味するものとしてとられるべきである。
【0170】
例えば、加湿器に対する雰囲気湿度とは、加湿器を直接包囲する空気の湿度であり得る(例えば、患者が睡眠をとっている部屋の内部の湿度)。このような雰囲気湿度は、患者が睡眠をとっている部屋の外部の湿度と異なる場合がある。
【0171】
別の実施例において、雰囲気圧力は、身体の直接周囲または外部の圧力であり得る。
【0172】
特定の形態において、雰囲気(例えば、音響)ノイズは、例えばRPTデバイスから発生するかまたはマスクまたは患者インターフェースから発生するノイズ以外の、患者の居る部屋の中の背景ノイズレベルとみなすことができる。雰囲気ノイズは、部屋の外の発生源から発生し得る。
【0173】
自動的な気道陽圧(APAP)療法:SDB発症の兆候の存在または不在に応じて、例えば、呼吸間に最小限界と最大限界との間で治療圧力を自動的に調節することが可能なCPAP療法。
【0174】
持続的気道陽圧(CPAP)療法:治療圧力が患者の呼吸サイクルを通じてほぼ一定である呼吸圧療法。いくつかの形態において、気道への入口における圧力は、呼息時において若干上昇し、吸息時において若干低下する。いくつかの形態において、圧力は、患者の異なる呼吸サイクル間において変動する(例えば、部分的な上気道閉塞の兆候の検出に応答して増加され、部分的な上気道閉塞の通知の不在時において低減される)。
【0175】
流量:単位時間あたりに送出される空気の瞬時の量(または質量)。流量とは、瞬間の量を指し得る。場合によっては、流量について言及した場合、スカラー量(すなわち、大きさのみを有する量)を指す。他の場合において、流量について言及した場合、ベクトル量(すなわち、大きさおよび方向両方を持つ量)を指す。流量には、符号Qが付与され得る。「流量」を簡略的に「流れ」もしくは「気流」と呼ぶ場合もある。
【0176】
患者の呼吸の実施例において、流量は、患者の呼吸サイクルの吸気部分に対してノミナルに陽圧であり得るため、患者の呼吸サイクルの呼気部分に対して負であり得る。合計流量Qtは、RPTデバイスから退出する空気の流量である。通気流量Qvは、吐き出されたガスの流出を可能にするために通気孔から退出する空気の流量である。漏洩流量Qlは、患者インターフェースシステムまたは他の場所からの漏洩の流量である。呼吸流量Qrは、患者の呼吸器系中に受容される空気の流量である。
【0177】
加湿器:「加湿器」という単語は、患者の医療呼吸状態を改善するために治療上有益な量の水(HO)蒸気を空気流れへ提供することが可能な物理的構造を備えて構築、配置または構成された加湿装置を意味するものとして解釈される。
【0178】
漏洩:「漏洩」という用語は、意図しない空気流れとしてとられる。一実施例において、漏洩は、マスクと患者の顔との間のシールが不完全であることに起因して発生し得る。別の実施例において、漏洩は、周囲に対するスイベルエルボーにおいて発生し得る。
【0179】
ノイズ伝導(音響):本文書において、伝導ノイズとは、空気圧式経路(例えば、空気回路および患者インターフェースおよびその内部の空気)によって患者へ搬送されるノイズを指す。一形態において、伝導ノイズは、空気回路の端部における音圧レベルを測定することにより、定量化され得る。
【0180】
ノイズ放射(音響):本文書において、放射ノイズとは、周囲空気によって患者へ搬送されるノイズを指す。一形態において、放射ノイズは、当該対象の音響パワー/圧力レベルをISO3744に従って測定することにより、定量化され得る。
【0181】
ノイズ通気(音響):本文書において、通気ノイズとは、任意の通気(例えば、患者インターフェース中の通気穴)を通じた空気流れにより生成されるノイズを指す。
【0182】
患者:呼吸器疾患に罹患しているかまたはしていない人。
【0183】
圧力:単位面積あたりの力。圧力は、多様な単位で表現測定され得る(例えば、cmHO、g-f/cm、及びヘクトパスカル)。1cmHOは、1g-f/cmに等しく、およそ0.98ヘクトパスカルである。本明細書において、他に明記無き限り、圧力はcmHOの単位で付与される。
【0184】
患者インターフェース中の圧力には記号Pmが付与され、現時点においてマスク圧力Pmが達成すべき目標値を表す治療圧力には記号Ptが付与される。
【0185】
呼吸圧力治療(RPT):雰囲気に対して典型的には陽圧である治療圧力における空気供給の気道入口への付加。
【0186】
人工呼吸器:患者が呼吸動作の一部または全てを行い際に圧力補助を提供する機械的デバイス。
5.7.1.1 材料
【0187】
シリコーンまたはシリコーンエラストマー:合成ゴム。本明細書において、シリコーンについて言及される場合、液体シリコーンゴム(LSR)または圧縮成形シリコーンゴム(CMSR)を指す。市販のLSRの一形態として、Dow Corningによって製造されるSILASTIC(この登録商標下において販売される製品群に含まれる)がある。別のLSR製造業者として、Wackerがある。他に逆の明記無き限り、例示的形態のLSRのASTMD2240によって測定した場合のショアA(またはタイプA)押込み硬さは、約35~約45である。
【0188】
ポリカーボネート:ビスフェノールAカーボネートの熱可塑性ポリマーである。
5.7.1.2 機械的特性
【0189】
弾性:弾性変形時にエネルギーを吸収することおよび除荷時にエネルギーを解放することが可能な材料の能力。
【0190】
弾性のある:除荷時に実質的に全てのエネルギーを解放する。例えば特定のシリコーンおよび熱可塑性エラストマーを含む。
【0191】
硬度:材料自体の変形に抵抗する能力(例えば、ヤング係数または規格化されたサンプルサイズ上において測定された押込硬さスケールによって記述されたもの)。
「軟性」材料は、シリコーンまたは熱可塑性エラストマー(TPE)を含み得、例えば指圧力下において容易に変形し得る。
「硬質」材料は、ポリカーボネート、ポリプロピレン、鋼またはアルミニウムを含み得、例えば指圧力下において容易に変形し得ない。
【0192】
構造または構成要素の剛度(または剛性):構造または構成要素が負荷を受けたときに変形に抵抗する能力。負荷は、力またはモーメントであり得る(例えば、圧縮、伸張、屈曲またはねじれ)。構造または構成要素は、異なる方向において異なる抵抗を提供し得る。
【0193】
フロッピー構造または構成要素:自重を支持させられた際に比較的短期間(例えば、1秒)以内に形状を変化させる(例えば、屈曲する)構造または構成要素。
【0194】
剛性の構造または構成要素:使用時において典型的に遭遇する負荷を受けた際に実質的に形状変化の無い構造または構成要素。このような用途の実施例として、患者インターフェースを例えばおよそ20~30cmHOの圧力の負荷において患者気道入口に対して密閉した様態でセットアップおよび維持することがあり得る。
【0195】
一実施例として、I形ばりは、第2の直交方向と比較した第1の方向において、異なる曲げ剛性(曲げ負荷に対する抵抗)を含み得る。別の実施例において、構造または構成要素は、第1の方向においてはフロッピーであり得、第2の方向においては剛性であり得る。
5.7.2 患者インターフェース
【0196】
窒息防止弁(AAV):マスクシステムの構成要素またはサブアセンブリであり、フェールセーフ様態での雰囲気中への開口により、患者による過度のCOの再呼吸の危険性を低減させる。
【0197】
エルボー:エルボーは、内部を移動する空気の流れの軸を方向付けて、角度を通じて方向を変化させる構造の実施例である。一形態において、角度はおよそ90度であり得る。別の形態において、角度は、90度超過または未満であり得る。エルボーは、ほぼ円形の断面を持ち得る。別の形態において、エルボーは、楕円または矩形の断面を持ち得る。特定の形態において、エルボーは、噛み合い構成要素に対して例えば約360度で回転可能であり得る。特定の形態において、エルボーは、噛み合い構成要素から例えばスナップ接続を介して取り外すことが可能であり得る。特定の形態において、エルボーは、製造時にワンタイムスナップを介して噛み合い構成要素へ組み付けることが可能である一方、患者が取り外すことはできない。
【0198】
フレーム:フレームは、ヘッドギアを接続する2つ以上の点間の引張荷重を支持するマスク構造を意味するものとしてとられる。マスクフレームは、マスク中の非気密負荷支持構造であり得る。しかし、いくつかの形態のマスクフレームは、気密であってもよい。
【0199】
ヘッドギア:ヘッドギアは、頭部上において使用されるように設計された、一形態の位置決めおよび安定化構造を意味するものとしてとられる。例えば、ヘッドギアは、患者インターフェースを呼吸治療の送達のために患者の顔上の所定位置に配置および保持するように構成された1つ以上の支柱、タイおよび補剛材の集合を含み得る。いくつかのタイは、柔らかい可撓性の弾性材料(例えば、発泡材料および布地の層状複合材)によって形成される。
【0200】
膜:膜は、典型的には肉薄の要素を意味するものとしてとられ、好適には屈曲に対して実質的に抵抗せずかつ伸縮に対しては抵抗する。
【0201】
プレナムチャンバ:マスクプレナムチャンバは、空間の容積を少なくとも部分的に封入する壁を有する患者インターフェースの一部を意味するものとしてとられ、容積中の空気は、加圧されて使用時において気圧を超える。シェルは、マスクプレナムチャンバの壁の一部を形成し得る。
【0202】
シール:名詞(「シール」)として用いられる場合は構造を指し得、動詞(「密閉(する)」)として用いられる場合はその効果を指し得る。2つの要素は、別個の「シール」要素自体を必要とすることなく両者間において「シール」するかまたは「密閉」効果を得るように、構築および/または配置され得る。
【0203】
シェル:シェルは、屈曲、引っ張りおよび圧縮剛性を有する曲線状の比較的肉薄構造を意味するものとしてとられる。例えば、マスクの曲線状構造壁は、シェルであり得る。いくつかの形態において、シェルはファセットされ得る。いくつかの形態において、シェルは気密であり得る。いくつかの形態において、シェルは気密でない場合もある。
【0204】
補剛材:補剛材は、別の構成要素の剛軟度を少なくとも1つの方向において増加させるように設計された構造構成要素を意味するものとしてとられる。
【0205】
支柱:支柱は、別の構成要素の圧縮抵抗を少なくとも1つの方向において増加させるように設計された構造構成要素を意味するものとしてとられる。
【0206】
スイベル(名詞):構成要素のサブアセンブリであり、共通軸の周囲において好適には独立して好適には低トルク下において回転するように構成される。一形態において、スイベルは、少なくとも360度の角度で回転するように構成され得る。別の形態において、スイベルは、360度未満の角度で回転するように構成され得る。空気送達導管の文脈において用いられる場合、構成要素のサブアセンブリは好適には、一対組み合わせの円筒導管を含む。使用時において、スイベルからの空気流れの漏れはほとんど無い。
【0207】
タイ(名詞):張力に抵抗するように設計された構造。
【0208】
通気:(名詞):マスクまたは導管の内部の周囲空気への空気流れを可能にする構造であり、吐き出されたガスの臨床的に有効な洗い流しを可能にする。例えば、臨床的に有効な洗い流しにおいては、約10リットル/分~約100リットル/分の流量がマスク設計および治療圧力に応じて用いられ得る。
5.7.3 構造の形状
【0209】
本技術による製品は、1つ以上の三次元機械構造(例えば、マスククッションまたはインペラ)を含み得る。三次元構造は、二次元表面によって制限され得る。これらの表面は、関連付けられた表面の方向、位置、機能または他の何らかの特性を記述するためのラベルを用いて区別され得る。例えば、構造は、前表面、後表面、内面および外面のうち1つ以上を含み得る。別の実施例において、シール形成構造は、顔接触(例えば、外側の)表面と、別個の非顔接触(例えば、下側または内側の)表面を含み得る。別の実施例において、構造は、第1の表面および第2の表面を含み得る。
【0210】
三次元構造の形状および表面の説明を容易にするために、構造の表面を通じた点pにおける断面について先ず検討する。図3B図3Fを参照されたい。図3B図3Fは、表面上における点pにおける断面例と、その結果得られる平面曲線の例とを示す。図3B図3Fは、pにおける外向き法線ベクトルも示す。pにおける外向き法線ベクトルは、表面から離隔方向に延びる。いくつかの実施例において、架空の小さな人が表面上に直立している観点から、この表面について説明する。
5.7.3.1 一次元における曲率
【0211】
pにおける平面曲線の曲率は、符号(例えば、正、負)および大きさ(例えば、pにおいて曲線に接する円形の1/半径)を持つものとして記述され得る。
【0212】
正の曲率:pにおける曲線が外向き法線に向かって曲がる場合、その点における曲率は、正の値を持つものとしてとられる(この架空の小さな人が点pから立ち去る場合、上り坂を歩行する必要がある)。図3B図3Cと比較して比較的大きな正の曲率)および図3C図3Bと比較して比較的小さな正の曲率)を参照されたい。このような曲線を、凹状と呼ぶことが多い。
【0213】
ゼロ曲率:pにおける曲線が直線である場合、曲率はゼロとしてとられる(この架空の小さな人が点pから立ち去る場合、上向きでも下向きでもない水平面を歩行することができる)。図3Dを参照されたい。
【0214】
負の曲率:pにおける曲線が外向き法線から離隔方向に曲がる場合、その点およびその方向における曲率は、負の値を持つものとしてとられる(この架空の小さな人が点pから立ち去る場合、下り坂を歩行する必要がある)。図3E図3Fと比較して比較的小さな負の曲率)および図3F図3Eと比較して比較的大きな負の曲率)を参照されたい。このような曲線は、凸状と呼ばれることが多い。
5.7.3.2 二次元表面の曲率
【0215】
本技術による二次元表面上の所与の点における形状の記述は、複数の垂直断面を含み得る。複数の断面は、外向き法線(「法平面」)を含む面において表面を切断し得、各断面は、異なる方向においてとられ得る。各断面の結果、対応する曲率を有する平面曲線が得られる。その点における異なる曲率は、同一符号または異なる符号を持ち得る。その点における曲率はそれぞれ、(例えば、比較的小さな)大きさを有する。図3B図3F中の平面曲線は、特定の点におけるこのような複数の断面の例であり得る。
【0216】
主要な曲率および方向:曲線の曲率が最大値および最小値をとる法平面の方向を主要な方向と呼ぶ。図3B図3Fの実施例において、最大曲率は図3Bにおいて発生し、最小は図3Fにおいて発生するため、図3Bおよび図3Fは、主要な方向における断面である。pにおける主要な曲率は、主要な方向における曲率である。
【0217】
表面の領域:表面上の連結された点の集合。領域内のこの1組の点は、類似の特性(例えば、曲率または符号)を持ち得る。
【0218】
サドル領域:(上り坂または下り坂を歩行し得る架空の人が向く方向に応じて)各点において主要な曲率が反対の符号(すなわち、片方が正の符号および他方が負の符号)を有する領域。
【0219】
ドーム領域:各点において主要な曲率が同一符号(双方とも正(「凹状ドーム」)または双方とも負(「凸状ドーム」))を持つ領域。
【0220】
円筒型領域:1つの主要な曲率がゼロ(または、例えば製造公差内のゼロ)をとり、他方の主要な曲率が非ゼロである領域。
【0221】
平面領域:主要な曲率双方がゼロであるか(または例えば製造交差内のゼロである)表面の領域。
【0222】
表面の縁部:表面または領域の境界または限界。
【0223】
経路:本技術の特定の形態において、「経路」は、数学的-トポロジー的意味合いにおける経路(例えば、表面上におけるf(0)からf(1)への連続空間曲線)を意味するものとしてとられる。本技術の特定の形態において、「経路」は、例えば表面上の1組の点を含むルートまたはコースとして記述され得る。(架空の人の経路は、表面上において歩行する場所であり、庭の経路に類似する)。
【0224】
経路長さ:本技術の特定の形態において、「経路長さ」とは、表面に沿ったf(0)からf(1)への距離(すなわち、表面上の経路に沿った距離)を指すものとしてとられる。表面上の2つの点間において1つよりも多くの経路があり得、このような経路は、異なる経路長さを持ち得る。(架空の人の経路長さは、表面上を経路に沿って歩行する距離である)。
【0225】
直線距離:直線距離は、表面上の2つの点間の距離であるが、表面は考慮しない。平面領域上において、表面上の2つの点間の直線距離と同一の経路長さを有する表縁上の距離がある。非平面表面上において、2つの点間の直線距離と同一の経路長さを有する経路は存在し得ない。(架空の人にとって、直線距離は、「カラスが飛ぶ」距離に対応する)。
5.7.3.3 空間曲線
【0226】
空間曲線:平面曲線と異なり、空間曲線は、任意の特定の平面内に必ずしも存在しない。空間曲線は閉鎖され得る。すなわち、終点を有さない。空間曲線は、三次元空間の一次元ピースとみなされ得る。DNA螺旋の鎖上を歩行している架空の人物は、空間曲線に沿って歩行する。典型的なヒトの左耳は、左手螺旋を含む(図3Qを参照)。典型的なヒトの右耳は、右手螺旋を含む(図3Rを参照)。図3Sは、右手螺旋を示す。構造の縁部(例えば、膜または羽根車の縁部)は、空間曲線をたどり得る。一般的に、空間曲線は、空間曲線上の各点における曲率およびねじれによって記述され得る。ねじれとは、平面から発生する曲線の様態の尺度である。ねじれは、符号および大きさを有する。空間曲線上の点におけるねじれは、当該点における接線ベクトル、法線ベクトルおよび従法線ベクトルに対して特徴付けられ得る。
【0227】
接線単位ベクトル(または単位接線ベクトル):曲線上の各点について、当該点におけるベクトルは、当該点からの方向および大きさを指定する。接線単位ベクトルとは、当該点における曲線と同じ方向を向く単位ベクトルである。架空の人物が曲線に沿って飛行しており、特定の点において自身の車両から落ちた場合、接線ベクトルの方向は、その人物が移動しているはずの方向である。
【0228】
単位法線ベクトル:架空の人物が曲線に沿って移動している場合、この接線ベクトルそのものが変化する。接線ベクトルが変化している方向と同じ方向を向く単位ベクトルは、単位主法線ベクトルと呼ばれる。これは、接線ベクトルに対して垂直である。
【0229】
従法線単位ベクトル:従法線単位ベクトルは、接線ベクトルおよび主法線ベクトル双方に対して垂直である。その方向は、右手の法則(例えば図3Pを参照)または表すあるいは左手の法則(図3O)によって決定され得る。
【0230】
接触平面:単位接線ベクトルおよび単位主法線ベクトルを含む平面。図3Oおよび図3Pを参照されたい。
【0231】
空間曲線のねじれ:空間曲線の点におけるねじれとは、当該点における従法線単位ベクトルの変化速度の大きさである。これは、曲線の接触平面からの逸脱の程度を測定する。平面内にある空間曲線のねじれはゼロである。空間曲線の接触平面からの逸脱が比較的少量である場合、その空間曲線のねじれの大きさは比較的小さい(例えば、緩やかに傾斜する螺旋状経路)。空間曲線の接触平面からの逸脱が比較的大量である場合、その空間曲線のねじれの大きさは比較的大きい(例えば、急勾配に傾斜する螺旋状経路)。図3Sを参照して、T2>T1であるため、図3Sの螺旋の最上部コイルの近隣のねじれの大きさは、図3Sの螺旋の最下部コイルのねじれの大きさよりも大きい。
【0232】
図3Pの右手の法則を参照して、右手従法線の方向に向かって曲がる空間曲線は、右手方向に正のねじれとしてみなされ得る(例えば、図3Sに示すような右手螺旋)。右手従法線方向から離隔方向を向く空間曲線は、右手の負のねじれを持つものとしてみなされ得る(例えば、左手螺旋)。
【0233】
同様に、左手の法則(図3Oを参照)を参照して、左手従法線方向を向く空間曲線は、左手の正のねじれ(例えば、左手螺旋)を持つものとしてみなされ得る。よって、左手の正の方向は、右手の負の方向に相当する。図3Tを参照されたい。
5.7.3.4 穴
【0234】
表面は、一次元穴を持ち得る(例えば、平面曲線または空間曲線によって境界付けられた穴)。穴を含む肉薄構造(例えば、膜)の場合、この構造は、一次元穴を有するものとして記述され得る。例えば、図3Iに示す構造の表面中の一次元穴が平面曲線によって境界付けられる様子を参照されたい。
【0235】
構造は、二次元穴(例えば、表面によって境界付けられた穴)を持ち得る。例えば、可膨張性タイヤは、タイヤ内面によって境界付けられた二次元穴を有する。別の実施例において、空気またはゲルのための空洞を備えたブラダーは、二次元穴を持ち得る。例えば図3Lのクッション、および二次元穴を境界付ける内面が示される図3Mおよび図3Nにおける図3Lの例示的断面を参照されたい。さらに別の実施例において、導管は、(例えばその入口またはその出口において)一次元穴を含み得、導管の内面によって境界付けられた二次元穴を含み得る。図3Kに示す構造を通じておりかつ図示のように表面によって境界付けられた二次元穴も参照されたい。
5.8 他の注意事項
【0236】
本特許文書の開示の一部は、著作権保護が与えられる内容を含む。著作権所有者は、何者かが本特許文書または本特許開示をファックスにより再生しても、特許庁の特許ファイルまたは記録に記載されるものであれば目的のものであれば異論は無いが、その他の目的については全ての著作権を保持する。
【0237】
他に文脈から明確に分かる場合および一定の範囲の値が提供されていない限り、下限の単位の1/10、当該範囲の上限と下限の間、および記載の範囲の他の任意の記載の値または介入値に対する各介入値は本技術に包含されることが理解される。介入範囲中に独立的に含まれるこれらの介入範囲の上限および下限が記載の範囲における制限を特に超えた場合も、本技術に包含される。記載の範囲がこれらの制限のうち1つまたは双方を含む場合、これらの記載の制限のいずれかまたは双方を超える範囲も、本技術に包含される。
【0238】
さらに、本明細書中に値(単数または複数)が本技術の一部として具現される場合、他に明記無き限り、このような値が近似され得、実際的な技術的実行が許容または要求する範囲まで任意の適切な有効桁までこのような値を用いることが可能であると理解される。
【0239】
他に明記しない限り、本明細書中の全ての技術用語および科学用語は、本技術が属する分野の当業者が一般的に理解するような意味と同じ意味を持つ。本明細書中に記載の方法および材料に類似するかまたは等しい任意の方法および材料を本技術の実践または試験において用いることが可能であるが、限られた数の例示的方法および材料が本明細書中に記載される。
【0240】
特定の材料が構成要素の構築に好適に用いられるものとして記載されているが、特性が類似する明白な代替的材料が代替物として用いられる。さらに、それとは反対に記載無き限り、本明細書中に記載される任意および全ての構成要素は、製造可能なものとして理解されるため、集合的にまたは別個に製造され得る。
【0241】
本明細書中及び添付の特許請求の範囲において用いられるように、単数形である「a」、「an」および「the」は、文脈から明らかにそうでないことが示されない限り、その複数の均等物を含む点に留意されたい。
【0242】
本明細書中に記載される公開文献は全て、これらの公開文献の対象である方法および/または材料の開示および記載、参考のために援用される。本明細書中に記載の公開文献は、本出願の出願日前のその開示内容のみのために提供するものである。本明細書中のいずれの内容も、本技術が先行特許のためにこのような公開文献に先行していない、認めるものと解釈されるべきではない。さらに、記載の公開文献の日付は、実際の公開文献の日付と異なる場合があり、個別に確認が必要であり得る。
【0243】
「comprises」および「comprising」という用語は、要素、構成要素またはステップを非排他的な意味合いで指すものとして解釈されるべきであり、記載の要素、構成要素またはステップが明記されていない他の要素、構成要素またはステップと共に存在、利用または結合され得ることを示す。
【0244】
詳細な説明において用いられる見出しは、読者の便宜のためのものであり、本開示または特許請求の範囲全体において見受けられる内容を制限するために用いられるべきではない。これらの見出しは、特許請求の範囲または特許請求の範囲の制限の範囲の解釈において用いられるべきではない。
【0245】
本明細書中の技術について、特定の実施例を参照して述べてきたが、これらの実施例は本技術の原理および用途を例示したものに過ぎないことが理解されるべきである。いくつかの場合において、用語および記号は、本技術の実施に不要な特定の詳細を示し得る。例えば、「first(第1の)」および「second(第2の)」(など)という用語が用いられるが、他に明記無き限り、これらの用語は任意の順序を示すことを意図しておらず、別個の要素を区別するために用いられる。さらに、本方法におけるプロセスステップについての記載または例示を順序付けて述べる場合があるが、このような順序は不要である。当業者であれば、このような順序が変更可能でありかつ/またはその態様を同時にまたはさらに同期的に行うことが可能であることを認識する。
【0246】
よって、本技術の意図および範囲から逸脱することなく、例示的な実施例において多数の変更例が可能であり、また、他の配置構成が考案され得ることが理解されるべきである。
【符号の説明】
【0247】
[参照符号のリスト]
5.9 参照符号のリスト
特徴アイテム 番号
患者 1000
同床者 1100
患者インターフェース 3000
シール形成構造 3100
プレナムチャンバ 3200
安定化構造 3300
通気 3400
接続ポート 3600
前額支持部 3700
RPTデバイス 4000
空気回路 4170
加湿器 5000
水リザーバ 5110
リザーバベース 5112
リザーバリード 5114
コンプライアント部5116
入口 5118
加熱板 5120
出口 5122
水リザーバドック 5130
オリフィス 5138
ベース上側ボディ 5146
ベース底部プレート 5148
側壁 5149.1
底壁 5149.2
穴 5149.3
薄膜 5152
第1の側面 5152.1
第2の側面 5152.2
ヒンジ 5158
キャビティ 5160
ドック空気出口 5168
ドック空気入口 5170
加湿器出口 5172
リブ 5175
加湿器変換器 5210
空気圧力センサー 5212
流量変換器 5214
温度センサー 5216
湿度センサー 5218
内側リップ 5224
外側リップ 5226
加熱要素 5240
加湿器コントローラ 5250
中央加湿器コントローラ 5251
加熱要素コントローラ 5252
空気回路コントローラ 5254
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図3I
図3J
図3K
図3L
図3M
図3N
図3O
図3P
図3Q
図3R
図3S
図3T
図4A
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21