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特許7495448鋳造法で酸化ガリウム単結晶を成長させる方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】鋳造法で酸化ガリウム単結晶を成長させる方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/16 20060101AFI20240528BHJP
   C30B 11/00 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
C30B29/16
C30B11/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022114917
(22)【出願日】2022-07-19
(65)【公開番号】P2023162087
(43)【公開日】2023-11-08
【審査請求日】2022-07-19
(31)【優先権主張番号】202210441289.5
(32)【優先日】2022-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】523057459
【氏名又は名称】杭州▲か▼仁半導体有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100218280
【弁理士】
【氏名又は名称】安保 亜衣子
(74)【代理人】
【識別番号】100108914
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 壯兵衞
(74)【代理人】
【識別番号】100173864
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 健治
(72)【発明者】
【氏名】夏 寧
(72)【発明者】
【氏名】張 輝
(72)【発明者】
【氏名】馬 可可
(72)【発明者】
【氏名】劉 瑩瑩
(72)【発明者】
【氏名】楊 徳仁
【審査官】宮脇 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-193466(JP,A)
【文献】特開2022-024897(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第114108083(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第114086249(CN,A)
【文献】特開2020-105069(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 11/00-11/14
29/00-29/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶シードを使用せずに鋳造法で酸化ガリウム単結晶を成長させる方法であって、
前記方法は、
固体酸化ガリウムを完全に溶融するまで加熱し、酸化ガリウムの融点まで降温させ、且つ溶融物状態のままで30分間以上保温するステップ1)と、
ステップ1)で得られた前記酸化ガリウム溶融物を固体酸化ガリウム単結晶が得られるまで勾配で降温させるステップ2)とを含み、
前記勾配で降温させることは、ステップ1)で得られた前記酸化ガリウム溶融物を10~90℃/hの第1勾配で1500℃~1700℃の第1温度まで降温させ、次に前記第1勾配の降温速度よりも速い第2勾配の降温速度で室温まで降温させ続け、酸化ガリウム単結晶を得ることであり
前記ステップ1)では、固体酸化ガリウムを第1温度まで加熱してから、成長雰囲気中に体積分率2%以上の酸素が存在し、前記成長雰囲気は不活性ガスを含む
ことを特徴とする鋳造法で酸化ガリウム単結晶を成長させる方法。
【請求項2】
前記第2勾配の降温速度は20℃/時間以上であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップ1)では、加熱して第1温度に達する前、又は第1温度に達した時に、成長雰囲気中の酸素の体積分率が2%以上に達するように酸素を導入することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ステップ2)では、第1勾配で第1温度まで降温させ続ける時、成長雰囲気中の酸素を不活性ガスで置換することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記不活性ガスはアルゴン、窒素、二酸化炭素のうちの1つ以上から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体技術の分野に属し、具体的には、鋳造法で酸化ガリウム単結晶を成長させる方法及び酸化ガリウム単結晶を含む半導体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体材料は、半導体産業の礎石であり、現代の情報技術の発展を推進する重要なエンジンである。酸化ガリウム(β-Ga2O3)は次世代の超ワイドバンドギャップ半導体材料として、バンドギャップが大きく(4.8eV)、透過範囲(260nm~2500nm)が広く、破壊電界強度が高く(8MV/cm)、Baliga品質係数が大きく、物理化学的性質が安定である等の利点を有する。近年の研究により、酸化ガリウム単結晶基板はパワーデバイス、光電子デバイス及びセンサ等の分野で重要な応用価値があり、ワイドバンドギャップ半導体材料である炭化ケイ素及び窒化ガリウムの重要な代替品の1つであることが示されている。気相法(成長速度約10-1mm/h)でしか大規模に製造できない炭化ケイ素及び窒化ガリウム結晶に比べて、酸化ガリウム結晶は溶融法(成長速度約10mm/h)で大量に製造でき、材料の製造コストを効果的に削減する。したがって、酸化ガリウム結晶は非常に広い応用見通しを有する(他に示されない限り、本明細書の全ての酸化ガリウムはβ-Ga2O3である)。
【0003】
結晶は単結晶と多結晶の2種類に分けられる。単結晶は、その結晶構造内の原子又は分子が一定の規則に従って周期的に繰り返し配列されているものである。多結晶は、多くの小さな結晶粒からなり、結晶粒の配列は不規則である。単結晶と多結晶の構造上の違いにより、同種の材料の単結晶は多結晶より機械的強度及び破壊電圧等の性能が高い。現在の多くの研究により、酸化ガリウム材料は、単結晶の条件下でのみ、電子デバイスにおいてその軽薄で、高圧に耐え、且つ安定した性能を発揮できることが示されている。
【0004】
バルク酸化ガリウム単結晶(bulk gallium oxide single crystal)は、酸化ガリウムナノ粒子(0次元)、ナノワイヤ(1次元)及び単結晶薄膜(2次元)等の低次元材料と異なり、3次元を有する固体材料(図1に示す)であり、その3次元のサイズがいずれも10mmレベル以上である。現在、バルク酸化ガリウム単結晶は、様々な溶融法、例えば、フローティングゾーン法(floating zone、FZ法)、熱交換法(heat exchange、HEM法)、ブリッジマン法(Bridgman、HB又はVB法)、チョクラルスキー法(Czochralski、CZ法)、及び縁部限定薄膜供給結晶成長法(edge-defined film-fed growth、EFG法)で製造できる。酸化ガリウム単結晶を得るこれらの方法の共通点は、酸化ガリウム単結晶シード(seed)を使用する必要があることであり、成長過程においてシードは静止しているか又は一方向に移動しており、酸化ガリウム単結晶がシードに沿って成長し始めるように誘導することができる。
【0005】
従来の酸化ガリウム単結晶の成長方法のうちのチョクラルスキー法(例えば、特許文献1)及び縁部限定薄膜供給結晶成長法(例えば、特許文献2)を例とし、酸化ガリウム単結晶は、成長過程において系外から、例えば特定の結晶方向(例えば<010>方向)又は特定の形状(細い棒状又はシート状)の酸化ガリウム単結晶シードを導入し、シードを降下させて酸化ガリウム溶融物の表面に接触させた後、シードを上昇させて成長条件を制御し、溶融物をシードの下端で徐々に凝固させて単結晶を成長させ、成長させて得られた単結晶が溶融物の液面及び坩堝から取り出されるまで上昇し続ける。上記のことから分かるように、フローティングゾーン法、ブリッジマン法、チョクラルスキー法、縁部限定薄膜供給結晶成長法等を含むが、これらに限定されない従来の酸化ガリウム単結晶の製造方法では、単結晶シード(seed)又はシード添加(種添加)(seeding)過程を使用することは、現在、酸化ガリウム単結晶を得るために必要な条件である。図2は、チョクラルスキー法で製造された酸化ガリウム単結晶の画像であり、左端に明らかな左側の細い又は鋭い部分があることは、成長過程においてシードを使用したことを示している(例えば、非特許文献1)。図3は、縁部限定薄膜供給結晶成長法で製造された酸化ガリウム単結晶の画像であり、左側の鋭い部分は成長過程においてシードを使用したことを示している(例えば、非特許文献2)。図2及び図3から明らかなように、チョクラルスキー法又は縁部限定薄膜供給結晶成長法で製造された酸化ガリウム単結晶の左側には、明らかなテーパ状の細い部分又は鋭い部分があり、これは、酸化ガリウム単結晶の成長には、シード添加(seeding)過程があり、それは、必ず外部から導入された単結晶シード(seed)を使用することが証明された。
【0006】
特に強調すべきこととして、酸化ガリウム単結晶シードを得ることは非常に困難であり、一方では商用の酸化ガリウム単結晶基板はシードとして使用できず、他方では商用の酸化ガリウム単結晶基板は厚さが薄すぎて重量に耐えることができず、シードとして使用できないため、現在、市販の酸化ガリウム単結晶シードはほとんどない。したがって、シードとして使用される酸化ガリウム単結晶を製造するためには、酸化ガリウム単結晶シードを製造する前置ステップが必要である。現在、複数回の成長試行を通じてバルク酸化ガリウム結晶を得ることしかできず、さらにその中から単結晶部分を切り出し、加工製造して単結晶シードを得る。シードが短く、再利用できないことが多い。酸化ガリウム単結晶シードの加工製造も困難であり、一方では、酸化ガリウム単結晶には2つの劈開面(cleavage plane)があるため、バルク酸化ガリウム結晶から切り出すと劈開現象が生じやすく(例えば、非特許文献3)、劈開現象とは、結晶が応力を受けた後、それ自体の結晶構造により、結晶が一定の結晶面に沿って滑らかな平面に割れる現象であり、他方では、シードを研磨して孔を開ける時に割れ破砕現象が生じやすく、これらの現象によりシードが使用できなくなる。また、通常、シードは薄く(直径又は辺の長さは一般に5mm以下)、且つ成長過程において単結晶全体の重量に耐える必要があるため、破断のリスクが高い。シードに欠陥があるか又は結晶成長操作が不適切であると、単結晶全体が脱落して溶融物内に戻り、結晶成長が失敗する。
【0007】
種酸化ガリウム単結晶シードがあっても、大きなサイズのバルク酸化ガリウム単結晶を得ることは非常に困難であり、高品質(結晶欠陥が少なく、ロッキングカーブの半値幅≦150arcsec)の大きなサイズのバルク酸化ガリウム単結晶を得ることはより困難である。大きなサイズのバルク酸化ガリウム単結晶は、直径2インチ(50.8mm)以上、厚さ10mm以上のバルク酸化ガリウム単結晶酸化ガリウム単結晶である。酸化ガリウム自体の融点が高く(約1800℃)、高温下で非常に揮発及び分解しやすく、結晶成長装置に対する要求が高く、チョクラルスキー法又は縁部限定薄膜供給結晶成長法に従って酸化ガリウム単結晶を成長させるフローは非常に複雑であり、シードの製造、材料の溶融、シードの添加、ネッキング、ショルダリング、等径成長、仕上げ、降温等の成長ステップ(フローは図4を参照する)を含み、各ステップはいずれも異なるプロセスパラメータ(成長雰囲気、加熱パワー、引き上げ速度、結晶回転速度等を含む)を用いる必要があり、プロセスは複雑で時間がかかり、そのうち、シードの添加と等径成長の2つの重要なステップはまだ多くの技術的問題がある(例えば、非特許文献4)。シードを添加する時、一方では、適切な溶融物温度を探す必要があり、溶融物温度が高すぎるとシードが溶融し、温度が低すぎるとシードが液面に接触して溶融物の表面が迅速に結晶化し、他方では、シードを添加することは、溶融物の表面温度が最も低いコールドコア位置に接触することを保証する必要があり、コールドコア位置にシードを播種しない場合、螺旋又は双晶の現象が発生しやすく、単結晶の品質が悪くなる。等径成長は単結晶成長の主な重量増加段階であり、この段階では単結晶の成長速度が最も速いが、単結晶の直径を一定に維持するために加熱パワー、引き上げ速度等のプロセスパラメータをリアルタイムに調整する必要があり、単結晶成長の熱場制御に対する要求も高い。上記の技術的問題は、経験豊富な結晶成長要員及びより多くの研究によってさらに最適化して解決する必要があり、現在、良い解決手段はない。
【0008】
シードを用いた酸化ガリウム単結晶の成長方法では、単結晶のサイズが2インチ以上に拡大すると、気泡欠陥、劈開割れ、双晶及び螺旋成長等の問題が生じやすくなり、不安定な要因が多く、チョクラルスキー法で高品質のバルク酸化ガリウム単結晶を得ることは困難である(例えば、非特許文献5、非特許文献5の図1c及び1dでは、結晶の直径は25mm未満、長さは35mm未満である)。また、縁部限定薄膜供給結晶成長法はチョクラルスキー法を基礎として1セットの貴金属金型を追加して成長を支援する必要があり、通常、金型には1本のスリット構造が含まれて溶融物を毛細管作用によって金型の頂端まで上昇させる。縁部限定薄膜供給結晶成長法で得られた単結晶のサイズは金型の頂縁部の性質及びサイズによって決定されるため、通常、酸化ガリウム単結晶はシート状であり、厚さは一般に2~4mmである(例えば、非特許文献6を参照し、詳細は非特許文献6の縁部限定薄膜供給結晶成長法結晶の図7及び図8を参照する)。[010]結晶方向シード、成長方向及び金型の制限により、縁部限定薄膜供給結晶成長法によるシート状結晶は厚さ10mm以上の大きなサイズのバルク酸化ガリウム単結晶を得ることが困難であり、そのうち、主成長面(-201)面及び(001)面(成長方向に平行)のみを大きなサイズの単結晶基板(直径2インチ以上)に加工でき、(010)面(成長方向に垂直)の大きなサイズの酸化ガリウム単結晶基板を得ることができない。しかし、現在の酸化ガリウム半導体デバイスの製造は、高品質で大きなサイズの(010)面の酸化ガリウム単結晶基板が必要である。
【0009】
上記のことから分かるように、従来の酸化ガリウム単結晶の成長方法は、酸化ガリウム単結晶シードを使用する必要があり、成長プロセスが複雑であり、多くの要因を制御する必要があり、結晶成長技術者に対する要求が高く、巨大な技術的障壁が存在し、高品質の直径2インチ以上の大きなサイズのバルク酸化ガリウム単結晶の大規模な製造を制限する。
【0010】
鋳造法(casting)は溶融法に属し、通常、固体原料を液体に溶融し、次に液体を金型又は坩堝等の容器に注入し、冷却して凝固させて固体物質を得る方法である。しかし、鋳造法では一般に多結晶材料(例えば、特許文献3、4及び5)が得られ、これは、通常の鋳造法では、成長過程における材料の冷却と凝固を制御しにくく、溶融物において多点核形成して多結晶を形成しやすく、体積が大きな単結晶方向の単結晶を成長させることができないためである。したがって、学界及び産業界では鋳造法を用いて単結晶材料を成長させる前例がない。現在、鋳造単結晶シリコンの分野では、鋳造法を用いて同様の単結晶材料を成長させることができるが(例えば、特許文献6)、実際に得られた単結晶シリコンは準単結晶又は擬似単結晶であり、厳密な意味での単結晶ではなく、坩堝の側壁と接触する結晶部分は、通常、多結晶シリコンを形成し、且つ鋳造単結晶シリコンには大量の結晶粒界等の欠陥がまだ存在する(例えば、非特許文献7及び非特許文献8)。その方法は、坩堝の底部に無転位シリコン単結晶シードを敷設し、さらにシード上に多結晶シリコン材料を敷設し、黒鉛抵抗加熱方式を用いて昇温させ、材料を溶融させた後に各シードから単結晶シリコンを成長させ始める。現在の装置及び技術によれば、鋳造法はバルク酸化ガリウム単結晶の成長に直接適用できず、以下の理由がある。まず、酸化ガリウムの融点(1800℃)はシリコンの融点(1410℃)よりはるかに高く、従来の成長装置は簡単に適用できず、第2に、酸化ガリウムの結晶成長過程において酸素が発生し、従来の黒鉛抵抗加熱及び黒鉛保温材料を使用できず(黒鉛は酸素に遭遇すると燃焼ひいては爆発する)、最後に、現在の鋳造法によれば、坩堝の底部に大量の酸化ガリウム単結晶シードを敷設する必要があり、結晶を下から上へ成長させ、このように初期成長段階で多くの核形成点及び不純物欠陥が発生しやすく、多結晶を形成し、高品質で単一配向のバルク酸化ガリウム単結晶を形成することは困難である。したがって、現在、単結晶シードのない条件で、鋳造法を用いて大きなサイズのバルク酸化ガリウム単結晶を成長させる技術的方法は存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】中国特許出願公告第104372408号明細書
【文献】中国特許出願公開第103290471号明細書
【文献】中国特許出願公開第101935867号明細書
【文献】中国特許出願公開第102560641号明細書
【文献】中国特許出願公開第106676628号明細書
【文献】中国特許出願公告第101597788号明細書
【非特許文献】
【0012】
【文献】ブレビン,J.D.他4名(Blevins,J.D.,Stevens,K.,Lindsey,A,Foundos,G.,&Sande,L.)『大口径半絶縁性酸化ガリウム(Ga2O3)基板の開発(Development of Large Diameter Semi-Insulating Gallium Oxide(Ga2O3)Substrates.)』,米国電気電子学会(IEEE),半導体製造におけるトランザクション(Transactions on Semiconductor Manufacturing),2019年,第32巻,第4号,466頁~472頁(2019,32(4),pp.466-472)
【文献】倉又朗人 他5名(Kuramata,A.;Koshi,K.;Watanabe,S.;Yamaoka,Y.;Masui,T.;Yamakoshi,S.),『EFG(edge-defined film-fed growth)により成長した高品質β-Ga2O3単結晶(High-quality β-Ga2O3 single crystals grown by edge-defined film-fed growth)』,ジャパニーズ・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジクス(Japanese Journal of Applied Physics),2016年,第55巻,第12号,1202A2(2016,55(12).1202A2)
【文献】ガラズカ,Z.他9名(Galazka,Z.;Uecker,R.;Irmscher,K.;Albrecht,M.;Klimm,D.;Pietsch,M.;Brutzam,M.;Bertram,R.;Ganschow,S.;Fornari,R.),『β-Ga2O3単結晶のチョクラルスキー法による成長とその特徴(Czochralski growth and characterization of β-Ga2O3 single crystals)』,クリスタル・リサーチ・アンド・テクノロジー(Crystal Research and Technology),2010年,第45巻,第12号,1229頁~1236頁(2010,45(12),pp.1229-1236)
【文献】ガラズカ,Z.他9名(Galazka,Z.;Uecker,R.;Klimm,D.;Irmscher,K.;Naumann,M.;Pietsch,M.;Kwasniewski,A;Bertram,R.;Ganschow,S.;Bickermann,M.),『チョクラルスキー法によるバルクβ-Ga2O3単結晶のスケールアップ(Scaling-Up of Bulkβ-Ga2O3 Single Crystals by the Czochralski Method)』,ソリッド・ステート・サイエンス アンド テクノロジーのECSジャーナル(ECS Journal of Solid State Science and Technology),2017年,第6巻,第2号,Q3007~Q3011(2017,6(2),Q3007-Q3011)
【文献】ムー,W.他6名(Mu, W.; Jia, Z.; Yin, Y.; Fu, B.; Zhang, J.; Zhang, J.; Tao, X.),『チョクラルスキー法及びEFG法により成長した超ワイドバンドギャップβ-Ga2O3の固相-液相界面適正化と特性(Solid-liquid interface optimization and properties of ultra-wide bandgap β-Ga2O3 grown by Czochralski and EFG methods)』,クリスタル・エンジニアリング・コミュニケーションズ(CrystEngComm),2019年,第21巻,第17号,2762頁~2767頁(2019, 21(17),pp.2762-2767)
【文献】陶緒堂 他2名,『ワイドバンドギャップ半導体酸化ガリウム結晶及びデバイス研究の進展[J]』,中国材料の進展,202039(02),113頁~123頁
【文献】蘇柳 他4名,『準単結晶シリコン技術の研究進展[J]』,ケイ酸塩通報,201231(03),609頁~612頁
【文献】張放,『鋳造系単結晶シリコンにおける転位の制御方法及びメカニズム研究[D]』,浙江大学,2019年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来の酸化ガリウム単結晶の成長技術における、単結晶シードを使用する必要があり、成長プロセスが複雑で、直径のサイズが小さい等の問題に対し、本発明は、単結晶シードを使用せず、プロセスが簡単で、成長可能な直径が2インチ以上で、厚さが10mmを超える大きなサイズのバルク酸化ガリウム単結晶の鋳造成長方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(A)上記目的を達成するために、本発明の第1の態様は、鋳造法で酸化ガリウム単結晶を成長させる方法であって、(a)固体酸化ガリウムを完全に溶融するまで加熱し、酸化ガリウムの融点まで降温させ、且つ融成物状態のままで30分間以上保温するステップ1)と、(b)ステップ1)で得られた酸化ガリウム溶融物を固体酸化ガリウム単結晶が得られるまで勾配で降温させるステップ2)とを含み、(c)その勾配で降温させることは、ステップ1)で得られた酸化ガリウム溶融物を第1勾配で第1温度まで降温させ、次に第2勾配で室温まで降温させ続け、酸化ガリウム単結晶を得ることであり、(d)第1勾配と第2勾配は等しくても等しくなくてもよく、(e)ステップ1)では、固体酸化ガリウムを第1温度まで加熱してから、成長雰囲気中に体積分率2%以上の酸素が存在し、その成長雰囲気は不活性ガスを含む、鋳造法で酸化ガリウム単結晶を成長させる方法であることを要旨とする。
【0015】
ここで、ステップ1)で得られた酸化ガリウム溶融物を一定時間(通常30分間以上、好ましい保温時間は30~50分間)保温する必要があり、第1勾配で降温させる過程において、上記方法は、単結晶シードを使用せず、温度が最も低い溶融物の表面のコールドコアで最初に核形成結晶化を開始し、単結晶シードを使用して結晶成長を誘導する必要がない。溶融物の表面に大きな単結晶が既に形成され、又は単結晶が完全に形成された場合、これは第1温度範囲であり、成長雰囲気中に体積分率2%以上の酸素が存在する必要があり、降温速度を調整して第2勾配で室温まで降温させる。これらの条件は、溶融物を安定させ、溶融物の対流を減少させる役割を果たすことができ、溶融物の表面温度の変動による核形成への影響を避ける同時に、溶融物内に固体粒子がまだ存在し、降温時での多点核形成により単結晶を形成できないことを防止し、高温に達した時、酸素体積分率を高めて結晶成長炉内で不活性ガスと酸素の混合雰囲気を形成し、酸化ガリウムの揮発と分解を抑制するだけでなく、低温時での酸素によるイリジウム坩堝への酸化損失も避ける。温度が勾配に沿って徐々に下がるにつれて(第1勾配)、単結晶は溶融物の表面に沿って徐々に成長し始め(第1温度範囲)、この時、成長速度が速すぎて多結晶を形成することを避けるために、降温速度を調整する必要があり(第2勾配)、単結晶が上から下へ成長し始め、最後に大きなサイズのバルク酸化ガリウム単結晶を形成する。本発明によれば、直径2インチ以上、厚さ10mm以上のバルク酸化ガリウム単結晶を成長させ、さらには直径4インチ以上、厚さ10mm以上のバルク酸化ガリウム単結晶を成長させることができる。
【0016】
上記室温(Room temperature)は、一般に25℃±5℃である。
【0017】
好ましくは、上記固体酸化ガリウムの純度は≧99.999%である。固体酸化ガリウムは純度≧99.999%を選択することで、酸化ガリウム結晶を成長させる時に、不純物の導入を減らし、得られた酸化ガリウム結晶の品質を向上させることができる。
【0018】
本発明に記載の固体酸化ガリウムは酸化ガリウム粉末であってもよく、酸化ガリウム固体であってもよい。
【0019】
好ましくは、上記酸化ガリウム固体の製造方法は、酸化ガリウム粉末を一定の圧力で材料ケーキにプレスし、その材料ケーキを高温で酸化ガリウム固体に焼結することを含む。
【0020】
本発明の酸化ガリウム固体は、市販の酸化ガリウム固体を直接用いてもよく、上記製造方法を用いて製造してもよい。酸化ガリウム粉末を材料ケーキにプレスすることで、製造容器(イリジウム坩堝)内の原料の体積を効果的に減らし、複数回の材料の充填と溶融を避けることができる。
【0021】
酸化ガリウム結晶の製造過程全体において、温度を一定に保持するために、保温材料は酸化ジルコニウム繊維レンガを選択し、適切な温度勾配の形成が酸化ガリウム単結晶の成長に直接影響を与える。
【0022】
さらに、上記方法は単結晶シードを使用しない。
【0023】
さらに、上記第1勾配の降温速度は10℃/時間以上である。
【0024】
さらに、上記第1勾配の降温速度は10~90℃/時間であり、好ましくは、第1勾配の降温速度は10~40℃/時間である。ここで、上記第1勾配の降温速度が速すぎると多結晶が直接形成され、単結晶を得ることができない。
【0025】
さらに、上記第2勾配の降温速度は第1勾配より速い。
【0026】
さらに、上記第2勾配の降温速度は20℃/時間以上である。
【0027】
さらに、上記第2勾配の降温速度は20~100℃/時間であり、好ましくは、第2勾配の降温速度は20~60℃/時間である。ここで、第2勾配の降温速度は速すぎてはならず、速すぎると結晶の割れを引き起こしやすい。
【0028】
さらに、上記ステップ1)では、加熱して第1温度に達する前、又は第1温度に達した時に、成長雰囲気中の酸素の体積分率が2%以上に達するように酸素を導入する。
【0029】
さらに、上記成長雰囲気中の酸素の体積分率は2~10%であり、好ましくは、成長雰囲気中の酸素の体積分率は5%である。
【0030】
さらに、上記ステップ2)では、第1勾配で第1温度まで降温させ続ける時、成長雰囲気中の酸素を不活性ガスで置換する。
【0031】
さらに、その不活性ガスはアルゴン、窒素、二酸化炭素のうちの1つ以上から選択される。
【0032】
結晶成長炉の酸素含有雰囲気を不活性ガスに置換することで、炉内の酸素を減らし、酸素成分によるイリジウム坩堝への酸化損傷を避けることができる。
【0033】
さらに、上記第1温度は1500~1700℃である。
【0034】
さらに、上記酸化ガリウム単結晶は、直径2インチ以上、厚さ10mm以上のバルク酸化ガリウム単結晶である。
【0035】
本発明はまた、酸化ガリウム単結晶を提供し、その酸化ガリウム単結晶は上記方法で製造される。
【0036】
(B)本発明の第2の態様は、半導体デバイスであって、その半導体デバイスは上記方法により製造された酸化ガリウム単結晶を含む、ことを要旨とする。
【0037】
従来の様々な酸化ガリウム成長技術(チョクラルスキー法及び縁部限定薄膜供給結晶成長法等を含む)をまとめると、直径が2インチより大きいバルク酸化ガリウム単結晶を得るためには、単結晶シードを使用する必要があり、単結晶シードは必然的にシードの加工製造の様々な問題、及び成長過程においてシードにバルク単結晶を成長させるように制御する各複雑な成長プロセスをもたらす。本発明は、上記の技術的偏見を克服し、単結晶シードを使用せずに、大きなサイズの(直径が2インチより大きく、さらには3~4インチより大きい)バルク酸化ガリウム単結晶を得る。
【0038】
また、本発明はさらに、従来技術が鋳造法を用いて大きなサイズのバルク酸化ガリウム単結晶を製造できないという偏見を克服する。
【0039】
酸化ガリウム材料自体の熱伝導性が低いため、通常、デバイスを使用する際に欠点と考えられるが、鋳造法で成長する過程において、酸化ガリウムの熱伝導性が低いため、溶融物の温度が比較的安定した変化を保持しやすく、さらに保温及び勾配降温条件を厳密に制御することで、溶融物の過冷却度及び固液界面の安定性を良好に制御でき、即ち、材料の冷却凝固過程を制御する。酸化ガリウム自体はコールドコア位置で自発的に核形成しやすいため、外来のシードを添加して核形成を誘発することなく、溶融物は上から下へ徐々に単結晶に凝固できる。溶融物中の不純物イリジウムの密度が重いため、通常、溶融物の下層で上から下へ成長して不純物濃度が大きい下層領域を最後に結晶させ、さらに多点核形成の可能性を避ける。
【0040】
成長温度の正確な制御及び成長雰囲気の変化制御により、結晶成長コストを削減し、結晶成長時間を短縮し、プロセスの難易度を低下させることは、バルク酸化ガリウム単結晶の成長サイズ及びコストの問題を解決する効果的な方法の1つである。
【発明の効果】
【0041】
本発明の有益な効果は以下のとおりである。
【0042】
1、本発明が提供する鋳造法で酸化ガリウム単結晶を成長させる方法は、外部から単結晶シードを導入して使用する必要がなく、鋳造法によって坩堝内でバルク酸化ガリウム単結晶を直接成長させ、バルク単結晶の厚さは10mm以上に達することができ、直径は2インチ以上を含む任意のサイズに達することができ、加工して様々な結晶面の大きなサイズの単結晶基板を得ることができる。
【0043】
2、本発明が提供する鋳造法で酸化ガリウム単結晶を成長させる方法は、単結晶シードを製造して使用する必要がなく、且つ種添加、ネッキング、ショルダリング、等径成長、仕上げ等の変化要因が多い人的操作を省略し、結晶成長過程を大幅に簡略化し、正確な手順によって自動的に制御して完了することができ、結晶成長時間及び処理時間も効果的に短縮し、本発明の方法は装置に対する要求が低く、結晶成長コストを削減する。
【0044】
3、本発明が提供する鋳造法で酸化ガリウム単結晶を成長させる方法は、坩堝内の温度勾配が小さいため、坩堝内の酸化ガリウム単結晶の熱応力も小さく、取り出した酸化ガリウム単結晶が割れにくく、アニールする必要がない。本発明の方法は、チョクラルスキー法及び縁部限定薄膜供給結晶成長法で得られた酸化ガリウム結晶に必要なアニールステップを避け、材料の処理時間をさらに短縮する。
【0045】
4、本発明が提供する鋳造法で酸化ガリウム単結晶を成長させる方法は、成長温度の効果的な制御、不活性雰囲気と酸素の混合成長雰囲気、及び少ない成長時間を利用して、酸化ガリウム結晶の成長過程における融点に達した後の揮発と分解の問題を克服し、坩堝に対する腐食と損耗を減らす。
【0046】
5、本発明が提供する方法で得られた酸化ガリウム単結晶を加工してパワーデバイス、光電デバイス及びセンサ等の半導体デバイスの分野で使用でき、高効率で低コストの大きなサイズの酸化ガリウム単結晶基板の大量生産を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1図1は、異なる次元の酸化ガリウム単結晶材料の概略図である。
図2図2は、チョクラルスキー法で製造された酸化ガリウム単結晶の画像である。
図3図3は、縁部限定薄膜供給結晶成長法で製造された酸化ガリウム単結晶の画像である。
図4図4は、チョクラルスキー法による成長フローチャートである。
図5図5は、本発明が提供する鋳造法による成長フローチャートである。
図6図6は、実施例1で得られた酸化ガリウム単結晶基板によって測定された高分解能X線ロッキングカーブ図である。
図7図7は、実施例2で得られた酸化ガリウム単結晶基板及び対応する高分解能X線ロッキングカーブ図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、具体的な実施例を参照しながら本発明をさらに説明し、以下の実施例では、いずれも本発明が提供する鋳造法で酸化ガリウム単結晶を成長させる方法を用いて、固体酸化ガリウム原料を金属坩堝に入れて中間周波数誘導によって完全に溶融した溶融物まで加熱し、単結晶シードを使用せず、上記第1温度、融点保持時間、成長雰囲気及び勾配降温条件を制御することにより、上記溶融物を徐々に凝固させ、鋳造して成長させた酸化ガリウム単結晶の直径は2インチ以上で、厚さは10mm以上である。
【0049】
以下の実施例は、本発明の好ましい具体的な実施方法に過ぎず、本発明の保護範囲を限定するものとして理解されるべきではなく、当業者が本発明に開示された技術的範囲内で、本発明の解決手段に従って行った置換又は本質的でない改善は、すべて本発明の保護範囲に属する。
【0050】
チョクラルスキー法と縁部限定薄膜供給結晶成長法に比べて、本発明は、酸化ガリウム結晶の成長プロセスを効果的に簡略化し(フローは図4及び図5を参照する)、一方では、製造しにくい単結晶シードを使用して結晶の成長を誘導する必要がなく、他方では、種添加、ネッキング,ショルダリング、等径成長、仕上げ等の大量のプロセスパラメータの調整を必要とする成長ステップを省略し、成長時間を節約する。通常の鋳造法に比べて、底部に単結晶シードを敷設する必要がなく、単結晶を自発的に核形成・成長させ、不純物及び欠陥が多い底部を避け、それにより結晶品質を向上させる。
【0051】
酸化ガリウムの融点の検出:酸化ガリウムの融点は赤外線温度計によって測定することができ、通常、温度保持が発生した段階は酸化ガリウムの融点範囲であり、本発明で実際に測定した酸化ガリウムの融点は約1800℃である。
【0052】
酸素体積分率の検出:成長雰囲気中の酸素の体積分率は、酸素含有量測定器によってリアルタイムに検出することができる。
【0053】
単結晶の品質の検出:高分解能X線ロッキングカーブによって結晶のピーク型及び半値幅数値をテストする。ロッキングカーブピーク型の対称性が良好であるほど、半値幅数値が小さく、単結晶の品質が高い。
【実施例
【0054】
実施例1
【0055】
実施例1は、酸化ガリウム単結晶の成長方法であって、具体的なステップは以下のとおりである。
【0056】
(1)純度が99.999%の市販の酸化ガリウム粉末を20MPaの圧力で円筒状の材料ケーキにプレスし、1200℃で以下10時間焼結し、焼結された材料ブロックをф100mm×100mmの容器(例えばイリジウム坩堝)に入れ、材料ブロックの入った容器を保温材料を含む結晶成長炉に入れ、結晶成長炉を密封し、機械ポンプを利用して≦1Paまで真空引きした後にアルゴンを充填して炉内の気圧を1気圧にし、循環冷却水装置を起動した。
【0057】
ここで、固体酸化ガリウムは上記方法で製造して得られ、充填効率を向上させることができ、購入した固体酸化ガリウムを直接用いてもよい。上記方法で製造して得られた固体酸化ガリウムの原料、即ち酸化ガリウム粉末の純度は、好ましくは99.999%である。純度が99.999%の酸化ガリウムを原料として選択することで、酸化ガリウム結晶を成長させる際に不純物が導入することを減らし、得られた酸化ガリウム結晶の品質を向上させることができ、酸化ガリウム粉末を材料ケーキにプレスすることで坩堝中の原料の体積を効果的に減らし、複数回の材料の充填と溶融を避けることができ、結晶成長炉を真空引きし、不活性ガス導入して炉内の酸素を減らして、空気中の高酸素成分によるイリジウム坩堝への酸化損傷を避けることができ、保温材料は酸化ジルコニウム繊維レンガを選択し、適切な温度勾配の形成が酸化ガリウム単結晶の成長に直接影響を与える。以上のことは、以下に述べる実施例2~13及び比較例1~5のいずれにも適用される。
【0058】
ここで、製造容器のサイズは結晶のサイズに影響されず、他のサイズを選択できる。
【0059】
(2)中間周波数誘導加熱装置を起動し、100~200℃/時間の速度で昇温して坩堝(製造容器)中の原料を溶融させ、赤外線温度計を用いて坩堝及び材料ブロックの温度を監視し、材料ブロックの温度が第1温度である1500℃に達した時、体積分率2%の酸素を一度に導入し、加熱パワーを上げ続けて材料ブロックを完全に溶解させ、溶融物の温度を酸化ガリウムの融点より5~10℃高くし、0.5~2時間保持し、加熱パワーを下げて溶融物を酸化ガリウムの融点まで降温させ、30分間保持した。
【0060】
(3)中間周波数誘導電力を下げ、10℃/時間の第1勾配でゆっくりと降温し、坩堝の表面の溶融物を徐々に凝固させて酸化ガリウム結晶に成長させ、結晶成長過程において、結晶成長炉内のアルゴンと酸素の雰囲気を保持し、炉内の微正圧状態を保持し、赤外線温度計ガンを用いて測定した坩堝内の結晶温度が1500℃まで下がった時に炉内のガスをアルゴンに置換した。
【0061】
(4)降温速度を50℃/時間の第2勾配に上げて、結晶を徐々に降温させた。炉内の温度が室温まで完全に降温すると、酸化ガリウム単結晶が得られた。
【0062】
実施例1で得られた酸化ガリウム単結晶は、単結晶が透明状を呈し、明らかな割れ及び気泡がなく、単結晶部分のサイズがф100mm×50mmに達し、スライス、研削、研磨等の加工によって4インチレベルの単結晶基板を得ることができる。
【0063】
本実施例で得られた(100)面の酸化ガリウム単結晶基板の高分解能X光線ロッキングカーブをテストし、図6に示すように、ロッキングカーブは比較的対称であり、半値幅は150arcsecであり、単結晶の品質が高いことを示している。
【0064】
実施例2
【0065】
実施例2は、大きなサイズの酸化ガリウム単結晶の成長方法であって、具体的なステップは以下のとおりである。
【0066】
(1)純度が99.999%の市販の酸化ガリウム粉末を30MPaの圧力で円筒状の材料ケーキにプレスし、1200℃で以下12時間焼結し、焼結された材料ブロックをф50mm×50mmのイリジウム坩堝に入れ、材料ブロックの入ったイリジウム坩堝を酸化ジルコニウム繊維レンガの保温材料を含む結晶成長炉に入れ、結晶成長炉を密封し、機械ポンプを利用して≦1Paまで真空引きした後にアルゴンを充填して炉内の気圧を1気圧にし、循環冷却水装置を起動した。
【0067】
(2)中間周波数誘導加熱装置を起動し、100~200℃/時間の速度で昇温して坩堝中の原料を溶融させ、材料ブロックの温度が第1温度である1600℃に達した時、体積分率5%の酸素を導入し、加熱パワーを上げ続けて材料ブロックを完全に溶解させ、溶融物の温度を酸化ガリウムの融点より60℃高くし、2時間保持した。加熱パワーを下げて溶融物の温度を酸化ガリウムの融点まで降温させ、30分間保持した。
【0068】
(3)中間周波数誘導電力を下げ、20℃/時間の第1勾配でゆっくりと降温し、坩堝の表面の溶融物を徐々に凝固させて酸化ガリウム結晶に成長させ、炉内の微正圧状態を保持し、結晶温度が1600℃まで下がった時に炉内のガスをアルゴンに置換した。
【0069】
(4)降温速度を30℃/時間の第2勾配に上げて、結晶を徐々に降温させた。炉内の温度が室温まで完全に降温すると、酸化ガリウム単結晶が得られた。
【0070】
実施例2で得られた酸化ガリウム単結晶は、単結晶が透明状を呈し、明らかな割れ及び気泡がなく、単結晶部分のサイズがф50mm×20mmに達し、スライス、研削、研磨等の加工によって2インチレベルの単結晶基板を得ることができる。
【0071】
本実施例で得られた(100)面の酸化ガリウム単結晶基板及び対応する高分解能X光線ロッキングカーブをテストし、図7に示すように、ロッキングカーブは左右対称であり、半値幅は47.5arcsecであり、単結晶の品質が高いことを示している。
【0072】
実施例3
【0073】
実施例3は、大きなサイズの酸化ガリウム単結晶の成長方法であって、具体的なステップは以下のとおりである。
【0074】
(1)純度が99.999%の市販の酸化ガリウム粉末を30MPaの圧力で円筒状の材料ケーキにプレスし、1200℃で以下12時間焼結し、焼結された材料ブロックをф80mm×80mmのイリジウム坩堝に入れ、材料ブロックの入ったイリジウム坩堝を酸化ジルコニウム繊維レンガの保温材料を含む結晶成長炉に入れ、結晶成長炉を密封し、機械ポンプを利用して≦1Paまで真空引きした後にアルゴンを充填して炉内の気圧を1気圧にし、循環冷却水装置を起動した。
【0075】
(2)中間周波数誘導加熱装置を起動し、100~200℃/時間の速度で昇温して坩堝中の原料を溶融させ、材料ブロックの温度が第1温度である1700℃に達した時、体積分率10%の酸素を導入し、加熱パワーを上げ続けて材料ブロックを完全に溶解させ、溶融物の温度を酸化ガリウムの融点より100℃高くし、2時間保持した。加熱パワーを下げて溶融物の温度を酸化ガリウムの融点まで降温させ、50分間保持した。
【0076】
(3)中間周波数誘導電力を下げ、15℃/時間の第1勾配でゆっくりと降温し、坩堝の表面の溶融物を徐々に凝固させて酸化ガリウム結晶に成長させ、結晶温度が1700℃まで下がった時に炉内のガスをアルゴンに置換した。
【0077】
(4)降温速度を40℃/時間の第2勾配に上げて、結晶を徐々に降温させた。炉内の温度が室温まで完全に降温すると、酸化ガリウム単結晶が得られた。
【0078】
実施例3で得られた酸化ガリウム単結晶は、単結晶が透明状を呈し、明らかな割れ及び気泡がなく、単結晶部分のサイズがф80mm×40mmに達し、スライス、研削、研磨等の加工によって3インチレベルの単結晶基板を得ることができる。
【0079】
実施例4~13
【0080】
実施例4~13は、実施例1の製造方法を用いて酸化ガリウム単結晶を製造し、一部の実験パラメータ、例えば第1温度、融点保持時間、酸素体積分率、第1勾配、不活性ガス置換、第2勾配等を変更し、具体的には、以下の表1に示すとおりであり、最終的にいずれも明らかな割れのない大きなサイズのバルク酸化ガリウム単結晶を得ることができる。加工して得られた(100)、(010)及び(001)面の酸化ガリウム単結晶基板は割れ、双晶及び気泡の問題がなく、高分解能X線ロッキングカーブのテストから、半値幅の数値はいずれも150arcsec未満であり、単結晶の品質が高いことを示している。
【0081】
【表1】
【0082】
比較例1
【0083】
比較例1は、第1勾配が100℃/時間の速度で室温まで直接降温した(第2勾配を行わなかった)ことを除いて、実施例1と同じ成長方法及び装置が用いられ、坩堝の表面の溶融物を徐々に凝固させて酸化ガリウム結晶に成長させ、炉内の温度が室温まで完全に降温した時、結晶成長炉を開いて坩堝を取り出して、坩堝内の結晶は多結晶で使用できなかったことが検出された。
【0084】
比較例1では、実施例1に比べて、勾配降温を行わず、且つ降温速度が速すぎたことが、単結晶を形成できなかった主な原因であった。
【0085】
比較例2
【0086】
比較例2は、第1勾配が200℃/時間の速度で室温まで直接降温した(第2勾配を行わなった)ことを除いて、実施例1と同じ成長方法及び装置が用いられ、坩堝の表面の溶融物を徐々に凝固させて酸化ガリウム結晶に成長させ、炉内の温度が室温まで完全に降温した時、結晶成長炉を開いて坩堝を取り出して、坩堝内の結晶は多結晶で使用できなかったことが検出された。
【0087】
比較例2では、実施例1に比べて、勾配降温を行わず、且つ降温速度が速すぎたことが、単結晶を形成できなかった主な原因であった。
【0088】
比較例3
【0089】
比較例3は、第1温度まで昇温した時に酸素を導入しなかったことを除いて、実施例1と同じ成長方法及び装置が用いられ、坩堝の表面の溶融物を徐々に凝固させて酸化ガリウム結晶に成長させ、炉内の温度が室温まで完全に降温した時、坩堝を取り出して、結晶の中心に大きな結晶性不純物があり、多結晶が形成されることが検出された。
【0090】
比較例3では、実施例1に比べて、単結晶の成長過程において酸素ガスを導入しなかったため、酸化ガリウムが大量に揮発及び分解し、坩堝材料と反応して浮遊物を形成し、坩堝の中心に集まり、単結晶を形成できなかった。
【0091】
比較例4
【0092】
比較例4は、第1温度まで昇温した時に1%の酸素のみを導入したことを除いて、実施例1と同じ成長方法及び装置が用いられ、坩堝の表面の溶融物を徐々に凝固させて酸化ガリウム結晶に成長させ、炉内の温度が室温まで完全に降温した時、坩堝を取り出して、結晶の中心に大きな結晶性不純物があり、多結晶が形成されたことが検出された。
【0093】
比較例4では、実施例1に比べて、単結晶の成長過程において十分な量の酸素を導入しなかったため、酸化ガリウムが大量に揮発及び分解し、坩堝材料と反応して浮遊物を形成し、坩堝の中心に集まり、単結晶を形成できなかった。
【0094】
比較例5
【0095】
比較例5は、酸化ガリウムが溶融した後に直接降温し始め、保持手順がなかったことを除いて、実施例1と同じ成長方法及び装置が用いられ、坩堝の表面の溶融物を徐々に凝固させて酸化ガリウム結晶に成長させ、炉内の温度が室温まで完全に降温した時、坩堝を取り出して、多結晶として検出した。
【0096】
比較例5では、実施例1に比べて、酸化ガリウムの融点を30分間保持しなかったため、溶融物内に酸化ガリウム固体粒子がまだ存在し、降温時での多点核形成により単結晶を形成できなかった。
【0097】
上記の実施例1~13及び比較例1~5から分かるように、酸化ガリウム溶融物の保温手順、合理的な勾配降温及び適切な体積分率は、鋳造法で大きなサイズのバルク酸化ガリウム単結晶を得るために必要な条件である。本発明は、上記例示に限定されるものではなく、本発明を改善又は変換した解決手段はいずれも本発明の添付の請求項の保護範囲に含まれるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7