(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】フレキシタンクを利用した液体輸送方法
(51)【国際特許分類】
B65D 90/12 20060101AFI20240528BHJP
B65D 88/22 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
B65D90/12 Z
B65D88/22 A
(21)【出願番号】P 2022142885
(22)【出願日】2022-09-08
【審査請求日】2024-04-09
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 効果確認試験 試験を行った日 令和4年5月6日 試験を行った場所 釜石鉱山株式会社
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517436464
【氏名又は名称】三八五通運株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100146927
【氏名又は名称】船越 巧子
(74)【代理人】
【識別番号】100188640
【氏名又は名称】後藤 圭次
(72)【発明者】
【氏名】山口 武夫
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-104525(JP,A)
【文献】特開2018-199504(JP,A)
【文献】特開2007-30742(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0339827(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0297348(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0102629(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 88/00-90/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシタンクをコンテナに搭載してなる液体の輸送方法であって、
フレキシタンク自体にラッシングベルトを縦・横方向双方に複数本かけてぐるぐる巻き状態とし固体に近い状態に固縛する一次固縛工程、
一次固縛されたフレキシタンクをコンテナ床面の荷崩れ防止金具を使用してラッシングベルトをかけ床面に押さえ付ける形で固縛する二次固縛工程、
とからなるフレキシタンクを利用した液体輸送方法において、
フレキシタンクとラッシングベルトの間に緩衝材を介在させることにより、フレキシタンクの固縛位置におけるラッシングベルトの食い込みによるタンク内側の凸状の突出を抑えることを特徴とするフレキシタンクを利用した液体輸送方法。
【請求項2】
上記緩衝材を輸送方向前方の固縛位置にあるラッシングベルト近傍のみに配置することを特徴とする請求項1記載のフレキシタンクを利用した液体輸送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体輸送方法に関し、詳しくはフレキシタンクを用いた輸送方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
国内における液体輸送は、少量の場合は一斗缶(18リットル)やペール缶(20リットルが主流)、200リットル程度ではドラム缶、1,000リットル程度になるとIBC(Intermediate Bulk Container:中容量コンテナ)を使用し、自動車やコンテナで行われている。
容量が大きい場合は、タンクローリー(トラック及びトレーラー)、タンクコンテナによる輸送が主流となっている。
【0003】
また最近では、飲料や動植物油などの輸送において、フレキシタンクを利用した輸送が注目されてきている。フレキシタンクは、欧州にて国際海上コンテナを使用して液体を輸送する容器として平成12年(2000年)頃から使用され始め、現在では危険品を除く液体の運搬において一般的に使用されている。
【0004】
天然水や保存水の場合、ペットボトルに充填し段ボール箱詰めされパレットに積載し、鉄道コンテナ又はトラック便での輸送が行われている。
原料水の場合は、ドラム缶(200リットル入り)や、マキシコン(IBCの一種:1,000リットル入り)と呼ばれる立方体の容器に内袋を設置して充填し輸送している。鉄道コンテナを利用する場合、ドラム缶23本、マキシコンは4基を1コンテナに積載できる。
【0005】
原料水の受注の増大に伴い、積載効率、荷役作業効率、抜き取り効率の向上に向けた改善策を講じることが必要となってきた。
ドラム缶による輸送は積載効率は比較的良好であるが、1回当りの納入数量単位が大きい場合には、ドラム缶への充填、コンテナへの積載、取り降ろし、納入先におけるドラム缶からの抜き取り作業等、荷役作業に非常に手間を要するという問題点がある。
【0006】
マキシコンによる輸送は積載量が大きいものの、容器の重量が大きいため積載率が低くなるという問題があり、また荷役作業には手間を要し、輸送費用が嵩むなどの問題も生じる。
【0007】
以上のように、原料水の効率的な輸送システムの構築に当たっては、積載率の向上、荷役作業効率の改善等の観点から種々の輸送手段を検討する必要があった。
積載率の向上、荷役作業効率の改善といった観点からすれば、タンクローリーやタンクコンテナによる輸送も考えられるが、付加価値の小さい原料水の輸送には輸送費用からみて適しているとはいえない。
【0008】
そこで本発明者はフレキシタンクを利用した輸送に着目した。
フレキシタンクは、ポリエチレンなどのフレキシブルな素材からなる大容量の容器であり、コンテナに載置し輸送することによりその積載効率の向上を図ることができる。
【0009】
しかし、液体の輸送にあたってフレキシタンクに充填すると、その状態は固体ではなく流体に近いため、輸送中に生じる様々な力によりフレキシタンク変形を伴うことがある。輸送中にフレキシタンクの変形が起れば、部分的に過大な加重がかかることによる容器破損が考えられる。
【0010】
フレキシタンクの安全な輸送手段としては、フレキシタンクの外側に剛性の構造体を形成して保護することが考えられている(特許文献1)。特許文献1記載の技術は、フレキシタンクの保護の面では効果があると思われるが、取扱性にそれほどの改善が期待できるものではなく、輸送費用などの点からせっかくのフレキシタンクの良さを生かすことができない。
【0011】
本発明者はフレキシタンクを利用した液体の輸送において、フレキシタンクをラッシングベルトにより固縛して固体に近い状態にし(一次固縛工程)、その状態でコンテナの床面に押さえつける形で固縛する(二次固縛工程)ことによって、液体輸送における上記の課題を解決し得ることを見出し、先に出願し特許(特許第6495425号:特許文献2)を取得した。
【0012】
本発明者は、当該特許技術をさらに改良すべく使用状況を見守っていたところ、固縛したフレキシタンクによる飲料水の鉄道コンテナ輸送中に液漏れを起こした事例があり、漏水対策をする必要が生じた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特表2013-501685号公報
【文献】特許第6495425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、ラッシングベルトにより固縛したフレキシタンクを利用した液体の輸送システムにおける改良に係るものであり、上記漏水の発生という問題点を解決し、安定した液体の輸送方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
鉄道コンテナ輸送において、段ボール製品が希にではあるが「擦れ」が発生し包装の損傷が発生することがある。これは列車輸送中の継続的かつ長時間にわたる微振動が原因であると考えられている。
【0016】
漏水を生じたフレキシタンクを詳細に点検したところ、漏水はタンク外袋(ポリプロピレン製クロス)が固縛位置でのラッシングベルトとの擦れに由来するものではなく、固縛位置に相当する箇所のタンク内袋(ポリエチレン製)の内表面にある摩擦によるとみられる損傷に由来するものであることが分かった。また、損傷はタンクの進行方向前方の上部に集中して生じていた。
図3は漏水したフレキシタンク内袋の検品結果であり、×印が損傷個所である。
【0017】
本発明者は、タンク内袋の内表面にみられる損傷について次のように推測した。
フレキシタンクをラッシングベルトにより固縛すると、外袋はベルトによる固縛により凹状に、内袋内側は凸状となり、外袋の凹部も内袋の凸部も「鋭角」に近い状態になっている。(
図4参照)
列車輸送中の継続的な振動によりタンク内でわずかに液体の移動が起こるが、液体が内袋の凸部を越えて移動した先で内袋と液体との間に摩擦が発生する。
この摩擦力は微々たるものであろうが、輸送は長時間にわたり継続されるので、その摩擦の累積によりタンク内袋の内表面が損傷し、さらに損傷が外袋にまで至ったのではないかと考えた。
また、進行方向前方へ移動する液体の流れと凸部を越えて移動する液体の流れの干渉により、損傷がタンクの進行方向前方の上部に集中して生じたのではないかと考えた。
【0018】
この推測に基づいて、内袋内側の凸部を緩やかにする、もしくは、凸部をなくすことを試みた。すなわち、フレキシタンクをベルトによりタンクを固縛する際に、ベルトとタンクの間に緩衝材(毛布・その上に厚手のダンボール)を介在させ、固縛による外袋の凹部、内袋の凸部を極めて緩やかにした。(
図5参照)
そして、この固縛フレキシタンクを漏水の対策をしてコンテナに納め、鉄道輸送による試験を行った。その結果、漏水が生じることはなく輸送を良好に行うことができた。
【0019】
本発明者は、フレキシタンクに固縛ベルトを用いた液体の輸送方法において、上記のように固縛位置に緩衝材を介在させることによって上記課題を解決し得ることを見出し、本発明に至った。
【0020】
本発明は、フレキシタンクを固体に近い状態に固縛し、その状態でコンテナに固定してなるフレキシタンクを利用した液体の輸送方法において、固縛位置に緩衝材を介在させることを特徴とし、以下の技術を基礎とする。
【0021】
(1)フレキシタンクをコンテナに搭載してなる液体の輸送方法であって、フレキシタンク自体にラッシングベルトを縦・横方向双方に複数本かけてぐるぐる巻き状態とし固体に近い状態に固縛する一次固縛工程、一次固縛されたフレキシタンクをコンテナ床面の荷崩れ防止金具を使用してラッシングベルトをかけ床面に押さえ付ける形で固縛する二次固縛工程、とからなるフレキシタンクを利用した液体輸送方法において、
フレキシタンクとラッシングベルトの間に緩衝材を介在させることにより、フレキシタンクの固縛位置におけるラッシングベルトの食い込みによるタンク内側の凸状の突出を抑えることを特徴とするフレキシタンクを利用した液体輸送方法。
【0022】
(2)上記緩衝材を、輸送方向前方の固縛位置にあるラッシングベルト近傍のみに配置することを特徴とする(1)記載のフレキシタンクを利用した液体輸送方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明の固縛手段を採用して液体輸送を行えば、積載率の向上、荷役作業効率の改善、発着荷役施設等への設備投資の低減ができることに加え、長時間輸送でも液体の漏洩事故の発生を阻止することができるという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図2】
図2は、特許第6495425におけるフレキシタンクの固縛状態を示す図である。
【
図3】
図3は、漏水したタンクの損傷位置を示す図である。
【
図4】
図4は、フレキシタンクに直接ラッシングベルトをかけた状態を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施例(フレキシタンクに緩衝材を配置した状態)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
フレキシタンクによる液体の輸送にあたって、フレキシタンクに充填してもその状態は固体ではなく流体に近いため、輸送中の様々な力でフレキシタンクが大きな変形を伴う状態にある。輸送中にフレキシタンクが変形を起した場合、部分的に過大な加重がかかることにより容器破損の危険性が増すと考えられる。
それ故、フレキシタンクを用いて液体を輸送する場合、安全に輸送するためにはより固体に近い状態にすることが必要となる。
【0026】
そのために、一次固縛として、フレキシタンク自体を事前にラッシングベルトで縦・横方向双方にぐるぐる巻きにし、ある程度固体に近い状態とする。その際、フレキシタンクの内側のラッシングで締め付けられている部分が内側に凸状に突出することを防ぐために、固縛位置に緩衝材を当て、緩衝材が介在した状態でラッシングベルトを架ける。
これにより、固縛位置における内側での凸状の突出を抑えることができ、内容物である液体が凸部を越えて移動した際に生じる摩擦が低減され、内袋の損傷を防止することができる。
【0027】
緩衝材としては、毛布や厚手のダンボール、その他ラッシングベルトの食い込みを緩やかにでき、タンク外袋を傷つけることのない梱包資材を使用することができ、それらを併用するとより効果的である。
【0028】
ついで、固縛されて流動性が制御され、ある程度固体に近い状態にしたフレキシタンクを、二次固縛としてコンテナ床面の荷崩れ防止金具を使用してラッシングベルトを横や斜めにかけ、床面に抑え付ける形で固縛しより固体の状態に近づくようにする。
【実施例】
【0029】
本発明の実施例の一つを第5図に示す。フレキシタンク1に緩衝材として厚手の毛布(緩衝材6)を当て、さらに厚手のダンボール(緩衝材7)を載せてから、タンク固縛用ラッシングベルト3で締め付けを行った状態を示している。
その結果、液体の漏洩事故が生じることはなく、無事輸送を行うことができた。
緩衝材が介在している位置においては、内部に凹凸が少なくなり、フレキシタンク内装材が液体との間で摩擦を生じることはないため、損傷は発生していなかった。
緩衝材を介在させる位置は、必ずしも固縛位置全部である必要はなく、輸送方向前方の固縛位置のみでも有効であった。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明によって、フレキシタンクを利用した液体の輸送において、漏洩事故を起こすことなく効率的な輸送システムを構築することができ、積載率の向上と荷役作業効率の改善を図ることができ、実用的価値の高いものである。
【符号の説明】
【0031】
1 フレキシタンク
2 コンテナ床面
3 ラッシングベルト(タンク固縛用)
4 ラッシングベルト(荷崩れ防止金具用)
5 荷崩れ防止金具
6、7 緩衝材